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特開2024-151053液体吐出装置、液体吐出方法、及び液体吐出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151053
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】液体吐出装置、液体吐出方法、及び液体吐出プログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20241017BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20241017BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/175 301
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064172
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】藤生 駿佑
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB50
2C056EB51
2C056EB58
2C056EC07
2C056EC42
2C056EC79
2C057AF23
2C057AL31
2C057AM15
2C057AM22
2C057AN01
(57)【要約】
【課題】液体吐出装置内の各処理部や補正部への負荷を低減しつつ、画像補償を行うことを可能とする。
【解決手段】液体吐出装置300は、インク滴を吐出する複数のヘッドをそれぞれ含む複数のヘッド群101A、101Bと、複数のヘッド群101A、101Bにそれぞれインクを供給する複数のタンク102A、102Bと、複数のタンク102A、102B間の液量の差分S1を算出する液量差分算出部307と、液量の差分S1に基づいて、複数のヘッド群101A、101Bの中から駆動波形Dに補正をかけるヘッド群を選択する選択部309と、液量の差分S1に基づいて、選択部309により選択されたヘッド群の駆動波形Dに倍率補正をかける電圧倍率補正部306と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク滴を吐出する複数のヘッドをそれぞれ含む複数のヘッド群と、
前記複数のヘッド群にそれぞれインクを供給する複数のタンクと、
前記複数のタンク間の液量の差分を算出する液量差分算出部と、
前記液量の差分に基づいて、前記複数のヘッド群の中から駆動波形に補正をかけるヘッド群を選択する選択部と、
前記液量の差分に基づいて、前記選択部により選択された前記ヘッド群の前記駆動波形に倍率補正をかける電圧倍率補正部と、
を備える液体吐出装置。
【請求項2】
前記複数のタンクの液量を検出する検出部を備え、
前記液量差分算出部は、前記検出部の検出結果に基づき前記液量の差分を算出する、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
印刷画像情報から前記複数のヘッド群のそれぞれにおけるインク消費量を予測する予測部を備え、
前記選択部は、前記液量差分算出部により算出された前記液量の差分と、前記予測部により予測された前記インク消費量と、に基づき、前記複数のヘッド群の中から前記駆動波形に補正をかける前記ヘッド群を選択する、
請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記電圧倍率補正部は、インク残量が少ない方のタンクからインクを供給されるヘッド群を選択し、該ヘッド群の前記駆動波形を大きくする倍率補正を行う、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記電圧倍率補正部は、インク残量が大きい方のタンクからインクを供給されるヘッド群を選択し、該ヘッド群の前記駆動波形を小さくする倍率補正を行う、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記電圧倍率補正部は、前記液量の差分に基づいて補正倍率の値を算出する、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記電圧倍率補正部は、前記液量の差分と、前記選択部により選択された前記ヘッド群にインクを供給するタンクのインク残量と、に基づき、補正倍率の値を算出する、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
インク滴を吐出する複数のヘッドをそれぞれ含む複数のヘッド群と、
前記複数のヘッド群にそれぞれインクを供給する複数のタンクと、
を備える液体吐出装置における液体吐出方法であって、
前記複数のタンク間の液量の差分を算出する液量差分算出ステップと、
前記液量の差分に基づいて、前記複数のヘッド群の中から駆動波形に補正をかけるヘッド群を選択する選択ステップと、
前記液量の差分に基づいて、前記選択ステップにて選択された前記ヘッド群の前記駆動波形に倍率補正をかける電圧倍率補正ステップと、
を含む液体吐出方法。
【請求項9】
インク滴を吐出する複数のヘッドをそれぞれ含む複数のヘッド群と、
前記複数のヘッド群にそれぞれインクを供給する複数のタンクと、
を備える液体吐出装置における液体吐出プログラムであって、
前記複数のタンク間の液量の差分を算出する液量差分算出機能と、
前記液量の差分に基づいて、前記複数のヘッド群の中から駆動波形に補正をかけるヘッド群を選択する選択機能と、
前記液量の差分に基づいて、前記選択機能により選択された前記ヘッド群の前記駆動波形に倍率補正をかける電圧倍率補正機能と、
をコンピュータに実行させる液体吐出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、液体吐出方法、及び液体吐出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のインクタンクから供給されるインクを吐出するための複数のノズルを有する記録ヘッドを主走査方向に走査しつつ、記録媒体上にドットを形成する画像形成部を制御する画像形成装置がある。このような画像形成装置内の液体吐出装置において、記録ヘッドを制御し目的の画像を形成するためには、連続印刷時など経時変化が生じる場合において印刷画像の劣化を防止する仕組みが必要になる。記録ヘッドにおける経時変化の例として、記録ヘッドへのインク供給経路の内部の状態が変わることで吐出性能が劣化する場合がある。
【0003】
特許文献1には、吐出性能すなわち印刷画像の劣化を防ぐことを目的とする、インク残量情報を元に駆動波形に補正(倍率補正など)をかけることで印刷画像の劣化を防ぐ技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、今までのインク残量による駆動波形への補正(=画像補償)では、1色あたりに複数のタンクから複数のヘッド群にインクを供給している場合には、複数のタンクそれぞれにおいて画像補償を行うため、計算処理部や倍率補正部において負荷が増してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、液体吐出装置内の各処理部や補正部への負荷を低減しつつ、画像補償を行うことを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一観点に係る液体吐出装置は、インク滴を吐出する複数のヘッドをそれぞれ含む複数のヘッド群と、前記複数のヘッド群にそれぞれインクを供給する複数のタンクと、前記複数のタンク間の液量の差分を算出する液量差分算出部と、前記液量の差分に基づいて、前記複数のヘッド群の中から駆動波形に補正をかけるヘッド群を選択する選択部と、前記液量の差分に基づいて、前記選択部により選択された前記ヘッド群の前記駆動波形に倍率補正をかける電圧倍率補正部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
液体吐出装置内の各処理部や補正部への負荷を低減しつつ、画像補償を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図
図2図1中のヘッドモジュール近傍を拡大視した模式図
図3】ヘッドアレイの詳細な構成を示す模式図
図4】センサの構成の一例を示す模式図
図5】タンク間のインク残量差分の推移の一例を示す図
図6】実施形態に係る液体吐出装置の機能ブロック図
図7】ヘッド駆動制御基板及びインク情報計算部のハードウェア構成図
図8】従来の駆動波形補正制御のフローチャートの一例
図9】駆動波形の電圧補正の一例を示す図
図10】実施形態に係る駆動波形補正制御のフローチャートの一例
図11】差分S1と第1のヘッド群向けの補正値X1との関係の一例を示す図
図12】差分S1と第2のヘッド群向けの補正値X2との関係の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
[画像形成装置の基本構成]
図1図2を参照して、実施形態に係る液体吐出装置300が適用される画像形成装置の基本構成について説明する。図1は、実施形態に係る画像形成装置の一例であるインクジェットプリンタ1000の概略構成を示す図である。
【0011】
インクジェットプリンタ1000は、例えば、オンデマンド方式のライン走査型を採用した画像形成装置である。図1に示すように、インクジェットプリンタ1000は、画像形成部210と、給紙部220と、レジスト調整部230と、乾燥部240と、記録媒体反転部250と、排紙部290と、を具備する。次に、当該構成を備えるインクジェットプリンタ1000における画像形成出力動作(印刷動作)の流れの一例を説明する。なお、画像形成部210は、液体吐出装置300の実施形態に相当する。
【0012】
まず給紙部220の給紙スタック221に積載された記録媒体Pが、エアー分離部222によって一枚ずつピックアップされ、画像形成部210の方向に搬送される。給紙部220から搬送された記録媒体Pは、レジスト調整部230に達すると、レジスト調整部230の内部に設けられたレジストローラ対231によって、搬送方向に対する記録媒体Pの傾きが補正される。
【0013】
レジストローラ対231における補正(レジスト調整)がなされた記録媒体Pは、画像形成部210に送られる。そして、円筒形状のドラム211の表面に設けた記録媒体グリッパ212によって記録媒体Pの先端が挟まれて、ドラム211の回転によってヘッドアレイ100Y、100M、100C、100Kに対向する位置へと、記録媒体Pが搬送される。画像形成部210では、円筒形状のドラム211表面に沿って、インクジェット方式によりインクを吐出するヘッドアレイ100Y、100M、100C、100Kが、所定のインク色を充填した状態で放射状に角度をもって配置されている。
【0014】
複数のヘッドアレイ100Y、100M、100C、100Kによって、液体吐出部である液体吐出モジュール(ヘッドモジュール100)が構成されていて、この液体吐出モジュールからドラム211の表面に保持された記録媒体Pの外周面にインク(液体)を吐出することで、記録媒体Pに画像が形成される。ドラム211の外周面には、空吐出受け213が設けられており、ヘッドモジュール100が記録媒体Pにインクを吐出していないときに空吐出されたインクを受け取るようになっている。画像が形成されると記録媒体Pは、乾燥部240に搬送される。
【0015】
ヘッドモジュール100を構成する個々のヘッドアレイ100Y、100M、100C、100Kは、液状の記録材を記録媒体に吐出して記録媒体Pに記録を行う記録ヘッド101(図2など参照)を有する。記録ヘッド101は、例えば底面に複数の印字ノズルが設けられ、この複数の印字ノズルによってノズル面が形成されている。ノズル面に配置される各印字ノズルからは、圧電素子の伸縮によって液滴が吐出される。なお、図1の例では、ヘッドモジュール100が4個のヘッドアレイ100Y、100M、100C、100Kを備える構成を例示しているが、ヘッドモジュール100が備えるヘッドアレイの個数は4個以外でもよい。
【0016】
乾燥部240には乾燥ユニット241が設けられていて、この乾燥ユニット241の下方を記録媒体Pが通過することによって、記録媒体Pの水分が蒸発するようになっている。また、乾燥部240には、記録媒体反転機構251を含む記録媒体反転部250が設けられている。両面印刷時には、記録媒体反転部250で記録媒体Pを反転し反転搬送部252により再度画像形成部210の方向へ搬送する。なお、ドラム211に達する前に画像形成部210内部に設けられたレジストローラ253によって記録媒体Pの傾きが補正される。乾燥部240による乾燥を終えた記録媒体Pは排紙部290に搬送されて、記録媒体Pの端部が整合された状態で積載される。
【0017】
画像形成部210(液体吐出装置300)における液滴吐出動作の制御の一部は、画像形成部210が備える画像形成制御部201において行われるものとする。なお、画像形成制御部201は、インクジェットプリンタ1000の全体の動作を制御してもよい。また、給紙部220、レジスト調整部230、乾燥部240、のそれぞれにおいて個別に制御部を備え、画像形成制御部201と連携することでインクジェットプリンタ1000の全体の動作を制御するように構成してもよい。
【0018】
画像形成制御部201は、ヘッド駆動制御基板103と、インク情報計算部202とを備える。(図3図6参照)
【0019】
図2は、図1中のヘッドモジュール100近傍を拡大視した模式図である。ヘッドモジュール100の各ヘッドアレイ100Y、100M、100C、100Kには、複数のヘッド群101A、101Bが設けられる。また、複数のヘッド群101A、101Bごとに、各ヘッド群にインクを供給するタンク102A、102Bが設けられる。つまり、各ヘッドアレイには、同数のヘッド群とタンクとが設けられる。図2の例では、各ヘッドアレイに2組のヘッド群01A、101Bと、2つのタンク102A、102Bとが設けられる構成を例示している。
【0020】
[液体吐出装置の構成]
図3図7を参照して、実施形態に係る液体吐出装置300の構成について説明する。
【0021】
図3は、ヘッドアレイ100Y、100M、100C、100Kの詳細な構成を示す模式図である。図3では、ヘッドアレイ100Y、100M、100C、100Kのうちの1つの構成を例示しているが、他の3つのヘッドアレイの構成も同様である。
【0022】
各ヘッドアレイ100Y、100M、100C、100Kでは、ヘッド群101Aは、印刷媒体に対して画像形成するための液滴を吐出するための複数のヘッド101A1、101A2、101A3を有する。同様に、ヘッド群101Bは、印刷媒体に対して画像形成するための液滴を吐出するための複数のヘッド101B1、101B2、101B3を有する。なお、図3では、各ヘッド群101A、101Bがそれぞれ3個のヘッドを有する構成を例示するが、ヘッドの数は3個以外でもよい。
【0023】
各ヘッドアレイ100Y、100M、100C、100Kは、ヘッド駆動制御基板103A、103B、103Cと、ハーネス104A、104B、104Cと、インク供給チューブ105A、105B、105Cと、センサ106(検出部)と、を備える。
【0024】
ヘッド駆動制御基板103A、103B、103Cは、ヘッドを駆動するための駆動波形を生成する。ハーネス104A、104B、104Cは、駆動波形を基板103A、103B、103Cからヘッドに伝送する。
【0025】
なお、図3では、ヘッド駆動制御基板103A、103B、103Cと、ハーネス104A、104B、104Cとが、一方のヘッド群101Aの複数のヘッド101A1、101A2、101A3のそれぞれと接続される構成を図示しているが、ヘッド駆動制御基板103A、103B、103Cと、ハーネス104A、104B、104Cとは、他方のヘッド群101Bの複数のヘッド101B1、101B2、101B3にも接続される。
【0026】
インク供給チューブ105A、105B、105Cは、ヘッド群101A、101Bの各ヘッドごとにタンク102A、102Bからインクを供給する。センサ106は、各タンク102A、102Bに設けられ、タンク102A、102B内の液面を検知する。
【0027】
また、各ヘッドアレイ100Y、100M、100C、100Kのその他の構成として、駆動波形を生成するために必要な駆動波形生成情報がヘッド駆動制御基板103A、103B、103Cに入力されている。
【0028】
図4は、センサ106の構成の一例を示す模式図である。図4に示すように、本実施形態では、センサ106は、2種類のセンサ(High)106A及びセンサ(Low)106Bと、フィラー107と、を有する。
【0029】
タンク102A、102Bにはタンクの膨らみ方向の面102A1、102B1にフィラー107があり、フィラー107の下端部107Aとタンク102A、102Bが接している構成である。ここで、タンク102A、102Bの膨らみ方向とは、図4では上方向であり、図2の例では例えば画像形成部210のドラム211の回転軸から遠心側の方向である。
【0030】
フィラー107は、例えばタンク102A、102Bの膨らみ方向に対して直交する方向(図4では水平方向)に延在する基部107Dを有する。この基部107Dから、タンク102A、102Bの膨らみ方向の面102A1、102B1に向けて下端部107Aが突出して設けられる。下端部107Aは、例えばタンク102A、102Bの膨張、収縮方向(図4では上下方向)に沿って延在して形成され、先端部がタンクの膨らみ方向の面102A1、102B1と接触するよう設置されている。フィラー107は、タンク102A、102Bの膨張、収縮に応じて、下端部107Aを介してタンク102A、102Bから外力を受け、これによりタンク102A、102Bの膨張方向及び収縮方向に沿って移動するよう構成されている。図4では、フィラー移動方向として上下方向の矢印が図示されている。
【0031】
また、フィラー107の基部107Dの延在方向の両端部は、それぞれフィラー移動方向の反対方向に屈曲されている。基部107Dの一方の端部はタンク102A、102Bの膨張方向(図4では上方向)に屈曲されて、その上端から再び水平方向に屈曲して延在する先端部107Bが設けられる。また、基部107Dの他方の端部はタンク102A、102Bの収縮方向(図4では下方向)に屈曲されて、その下端から再び水平方向に屈曲して延在する先端部107Cが設けられる。
【0032】
フィラー107の移動方向に対し、センサ(High)106Aとセンサ(Low)106Bがあり、このセンサ106A、106Bは、対象物(この場合はフィラー107の先端部107B、107C)が表面を遮蔽することで電気的に対象物の有無を検知する。
【0033】
センサ106の動作は例えば次のとおりである。図4(A)に示すように、タンク102A、102B内の液量が多くなると、タンク102A、102B自体が膨らみ、フィラー107はタンク102A、102Bとは反対側の方向(図4では上方向)に移動する。その際にフィラーの先端部107Bがセンサ(High)106Aを遮蔽することで、タンクの状態がHighであること(すなわちタンク内のインク残量が相対的に多い状態)を検知する。
【0034】
一方で、図4(B)に示すように、タンク102A、102B内の液量が小さくなると、タンク102A、102B自体が萎み、フィラー107はタンク102A、102Bの方向(図4では下方向)に移動する。その際にフィラーの先端部107Cがセンサ(Low)106Bを遮蔽することで、タンクの状態がLowであること(すなわちタンク内のインク残量が相対的に少ない状態)を検知する。
【0035】
図4の例のように、2種類のセンサ(High)106A及びセンサ(Low)106Bを有する構成の場合には、センサ106は、3段階の液面の状態、すなわち(1)Low以下、(2)Low~Highの間、(3)High以上、を検知することが可能となる。
【0036】
なお、センサ106は、複数のタンク102A、102Bの液量を検出する検出部として機能できればよく、本実施形態に係る検出部の具体的な構成は図4に示すセンサ106の構成に限られない。例えば、複数のタンク102A、102Bの内部にフィラー107を配置して、タンク内のインクの液面に浮かせ、液面の上下動に応じて2種類のセンサ(High)106A及びセンサ(Low)106Bに対する相対的な位置が変化する構成でもよい。この場合、2種類のセンサ(High)106A及びセンサ(Low)106Bは、例えば各タンク102A、102Bの側壁のうち、それぞれフィラー107の先端部107B、107Cが通過する位置に設置される。また、別の構成としては、フィラー107を設けずに、タンク内部の液面の上下方向に複数のセンサを設置して、複数のセンサによって液面の位置を直接計測する構成でもよい。
【0037】
図5は、タンク102A、102B間のインク残量差分の推移の一例を示す図である。図5(A)は、各タンク102A、102Bのインク残量を示すグラフであり、横軸が時間、縦軸がインク量を示す。図5(A)には、タンク102Aのインク残量の推移を実線のグラフAで示し、タンク102Bのインク残量の推移を点線のグラフBで示す。また、図5(A)の縦軸に示す「H」及び「L」は、それぞれ図4を参照して説明したタンク内の液面の状態の「High」及び「Low」に対応する。
【0038】
また、図5(A)では、グラフA、B共に、液面の状態が「Low」のときに該当タンクへのインクの充填が行われて、液面の状態が「Hign」となるまでインクが供給されていることも示されている。
【0039】
図5(B)は、各タンク102A、102Bのインク残量の差分を示すグラフであり、横軸は時間、縦軸がタンク間のインク量差を示す。図5(B)には、タンク102A、102B間のインク残量の差分の推移をグラフCで示す。
【0040】
図5(A)、(B)の横軸の時間は対応しており、図5(B)のグラフCは、図5(A)のグラフBからグラフAを差し引いた値である。このため、図5(A)においてグラフA、Bの液量差が小さい時刻t1では、図5(B)のグラフCは相対的に小さい値となる。一方、図5(A)においてグラフA、Bの液量差が大きい時刻t2では、図5(B)のグラフCは相対的に大きい値となる。また、時刻t1では、グラフBがグラフAより大きい、すなわち、タンク102Bのインク残量がタンク102Aのインク残量より多いので、グラフCに示すインク残量の差分は正の値となる。一方、時刻t2では、グラフAがグラフBより大きい、すなわち、タンク102Aのインク残量がタンク102Bのインク残量より多いので、グラフCに示すインク残量の差分は負の値となる。
【0041】
このように、図5(A)に示すグラフA、Bのように複数のタンク102A、102Bのそれぞれのインク残量を検出し、さらにこれらの検出値を用いて図5(B)に示すグラフCのように各タンク102A、102Bのインク残量の差分を求めることができる。このように求めた差分の極性と値とによって、どのタンクの残量が少なく、どれくらい少ないかが把握可能となる。
【0042】
図6は、実施形態に係る液体吐出装置300の機能ブロック図である。
【0043】
液体吐出装置300は、上述のヘッドモジュール100と、画像形成制御部201とを具備する。画像形成制御部201は、ヘッド駆動制御基板103A、103B、103C(以下では纏めて103とも表記する)と、インク情報計算部202と、を備える。
【0044】
ヘッド駆動制御基板103は、上述のとおり、ヘッドを駆動するための駆動波形を生成して、ヘッドの駆動制御を行う。特に本実施形態では、ヘッド駆動制御基板103は、ヘッドモジュール100の各ヘッドアレイ100Y、100M、100C、100Kにそれぞれ含まれる複数のタンク102A、102Bのインク残量の差分に基づいて、各タンク102A、102Bからインクが供給されるヘッド群101A、101Bへ出力する駆動波形に倍率補正をかけて、ヘッド群101A、101Bの各ヘッドからのインクの吐出量を調整する。
【0045】
インク情報計算部202は、ヘッドモジュールのセンサ106から入力される各タンクのインク液量情報や、印刷画像に関する画像情報に基づく使用インク量情報などに基づき、ヘッド群選択情報やタンク内インク残量情報などのインク情報を算出して、ヘッド駆動制御基板103に出力する。ヘッド群選択情報には、例えば今回の画像形成処理においてどのヘッド群101A、101Bを用いるかを示す情報などが含まれる。タンク内インク残量情報には、ヘッドモジュール100の各ヘッドアレイ100Y、100M、100C、100Kに設けられる複数のタンク102A、102Bのそれぞれのインク残量の情報などが含まれる。
【0046】
ヘッド駆動制御基板103は、画像情報やインク情報を記憶する出力波形制御部301と、出力波形制御部301からの情報を元に駆動波形を生成する駆動波形生成部302と、をもつ。出力波形制御部301は、出力情報記憶領域303と、インク情報記憶領域304と、電圧選択部305とを有する。駆動波形生成部302は電圧倍率補正部306を有する。電圧倍率補正部306は、駆動波形の各電圧値を倍率補正することができる。こうして補正をかけた駆動波形によってヘッドを制御し、所望の吐出をし、画像を形成する。
【0047】
また吐出をすることでタンク内のインク量は減る。その残量をセンサ106等で検知したタンク液量情報はインク情報計算部202に伝達される。インク情報計算部202ではヘッド群の選択情報やタンク内インク残量情報を処理し、ヘッド駆動制御基板の出力波形制御部301に入力する。
【0048】
また大元となる画像情報をインク情報計算部202に事前に入力することで、インク消費量を予測し補正をすること可能となる。
【0049】
これらの機能に関して、インク情報計算部202は、液量差分算出部307と、予測部308と、選択部309とを有する。
【0050】
液量差分算出部307は、複数のタンク102A、102B間の液量の差分を算出する。液量差分算出部307は、センサ106の検出結果(インク液量情報)に基づき液量の差分を算出することができる。
【0051】
予測部308は、印刷画像情報から複数のヘッド群101A、101Bのそれぞれにおけるインク消費量を予測する。
【0052】
選択部309は、液量差分算出部307により算出された複数のタンク102A、102B間の液量の差分と、予測部308により予測された複数のヘッド群101A、101Bのインク消費量と、に基づき、複数のヘッド群101A、101Bの中から駆動波形に補正をかけるヘッド群を選択する。
【0053】
選択部309は、選択結果に基づきヘッド群選択情報を作成する。また、液量差分算出部307からセンサ106の検出結果(インク液量情報)も受け取り、この受け取った除法に基づきタンク内インク残量情報を作成する。選択部309は、作成したヘッド群選択情報及びタンク内インク残量情報を含むインク情報をヘッド駆動制御基板103に出力する。
【0054】
なお、インク情報計算部202は、予測部308を持たずに、選択部309が液量差分算出部307により算出された複数のタンク102A、102B間の液量の差分の情報のみに基づいて、複数のヘッド群101A、101Bの中から駆動波形に補正をかけるヘッド群を選択する構成としてもよい。
【0055】
ヘッド駆動制御基板103の電圧倍率補正部306は、インク情報計算部202の選択部309から入力されたタンク内インク残量情報に基づき、複数のタンク102A、102B間の液量の差分を算出する。電圧倍率補正部306は、算出した液量の差分に基づいて、選択部309により選択されたヘッド群の駆動波形に倍率補正をかける。
【0056】
なお、選択部309からヘッド駆動制御基板103に出力するインク情報に、液量差分算出部307により算出された複数のタンク102A、102B間の液量の差分の情報を含めてもよい。この場合、電圧倍率補正部306は、液量の差分の情報の算出を行わずに、インク情報計算部202の選択部309から入力されたインク情報から液量の差分の情報を抽出して利用することができる。
【0057】
また、電圧倍率補正部306は、上記の算出した液量の差分と、選択部309により選択されたヘッド群にインクを供給するタンクのインク残量と、に基づき、補正倍率の値を算出する。例えば、電圧倍率補正部306は、インク残量が少ない方のタンクからインクを供給されるヘッド群を選択し、該ヘッド群の駆動波形を大きくする倍率補正を行う。
【0058】
なお、電圧倍率補正部306は、液量の差分の情報のみ基づいて補正倍率の値を算出する構成でもよい。
【0059】
図7は、ヘッド駆動制御基板103及びインク情報計算部202のハードウェア構成図である。図7に示すように、ヘッド駆動制御基板103及びインク情報計算部202は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)311、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)3102およびROM(Read Only Memory)313、入力デバイスであるキーボード及びマウス等の入力装置314、ディスプレイ等の出力装置315、ネットワークカード等のデータ送受信デバイスである通信モジュール316、補助記憶装置317、などを含むコンピュータシステムや制御基板として構成することができる。図6を参照して説明したヘッド駆動制御基板103及びインク情報計算部202の各機能は、CPU311、RAM312等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェア(液体吐出プログラム)を読み込ませることにより、CPU311の制御のもとで通信モジュール316、入力装置314、出力装置315を動作させるとともに、RAM312や補助記憶装置317におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0060】
[駆動波形補正制御]
図8図12を参照して、実施形態に係る液体吐出装置300で実施される駆動波形補正制御について説明する。
【0061】
まず図8を参照して、比較例として従来の駆動波形補正制御を説明する。図8は、従来の駆動波形補正制御のフローチャートの一例である。図8に示す従来の駆動波形補正制御は、タンク102A、102Bごとに個別に駆動波形の補正を行う。図8フローチャートに示す一連の制御は、例えば従来のヘッド駆動制御基板103によって実施される。
【0062】
まずステップA001では、複数のタンク102A、102Bからインク液量情報を取得する。
【0063】
ステップA002では、ステップA001にて取得された複数の各タンク102A、102B内のインク液量T1、T2に応じて、タンクごとにそれぞれ補正値を算出する。
【0064】
ステップA003では、ステップA003にて算出された各補正値に応じて、事前に取得したテーブル等を活用し倍率補正を行う。
【0065】
ステップA004では、ステップS003にて倍率補正が施された補正済みの駆動波形を用いて、ヘッドを制御し吐出させ、画像を形成する。
【0066】
図9は、駆動波形の電圧補正の一例を示す図である。図9の横軸は時間を示し、縦軸は駆動波形の電圧値を示す。図9では、基本波形、すなわち電圧補正の倍率が1.0倍の駆動波形Dを実線で示す。電圧補正の倍率が1.5倍の駆動波形Eを点線で示し、0.5倍の駆動波形Fを一点鎖線で示す。
【0067】
図9に示すように、電圧補正では、基準となる基本波形Dに対し、横軸の時間軸は変えず、縦軸の電圧値のみを変える倍率補正をかける。例えば、基本波形より大きくする倍率補正を行うときは、電圧値に1倍より大きい補正値(図9の例では1.5倍)をかけて、基本波形Dに対して全体的に電圧値が相対的に大きくなる駆動波形Eを作成する。一方、基本波形より小さくする倍率補正を行うときは、電圧値に1倍より小さい補正値(図9の例では0.5倍)をかけて、基本波形Dに対して全体的に電圧値が相対的に小さくなる駆動波形Fを作成する。このような電圧補正を行った上で、補正済の駆動波形をヘッド群101A、101Bに出力することで、各ヘッドのピエゾ部分の駆動量を変え、インクの吐出量Mjや吐出速度Vjを変えることができる。
【0068】
なお、図9に示す電圧補正の仕組みは、図8の比較例でも、図10以降に示す本実施形態でも同様である。
【0069】
次に図10図12を参照して、本実施形態に係る駆動波形補正制御(液体吐出方法)を説明する。図10は、実施形態に係る駆動波形補正制御のフローチャートの一例である。
【0070】
ステップA001~A004の各処理については、図8の比較例のフローチャートの処理と同じ内容であるため、説明を省略する。
【0071】
ステップS001では、インク情報計算部202の液量差分算出部307が、ステップA001にてセンサ106により取得された複数の各タンク102A、102B内のインク液量T1、T2から、タンク102A、102B間の液量差分S1(=T2-T1)を算出する(液量差分算出ステップ)。
【0072】
ステップS002では、インク情報計算部202の選択部309が、ステップS001にて算出された液量差分S1の大きさが0か(|S1|=0)、0以外か(|S1|≠0)を判定する(選択ステップ)。すなわち、選択部309は、タンク102A、102B間の液量差分の有無を判定する。
【0073】
液量差分S1が無い場合、すなわち|S1|=0の場合(ステップS002のYes)、ヘッド駆動制御基板103は図8のステップA002~A004の処理を実施して、本制御フローを終了する。すなわち、複数の各タンク102A、102B間で液量の差分が無い場合には、すべてのタンク102A、102Bからインクが供給されるすべてのヘッド群101A、101Bに対して、それぞれ個別に設置された補正値X1、X2を用いて倍率補正が施され(電圧倍率補正ステップ)、補正済の駆動波形を用いて各ヘッドの制御が行われる。
【0074】
一方、液量差分S1が有る場合、すなわち|S1|≠0の場合(ステップS002のNo)、ステップS003に進み、選択部309は複数の各タンク102A、102B間の液量差分S1が正か負かを判定する(選択ステップ)。
【0075】
液量差分S1が正の場合、すなわちS1>0の場合(ステップS003のYes)、タンク102Aのインク残量T1のほうがタンク102Bのインク残量T2より少ないので、ステップS004に進み、インク残量が少ない方のタンク102Aからインクを供給されるヘッド群101Aの駆動波形を大きくする倍率補正が行われる。
【0076】
ステップS004では、ヘッド駆動制御基板103の電圧選択部305が、インク情報記憶領域304に記憶されている液量差分S1と補正値X1との対応関係を含むテーブルなどを用いて、倍率補正の補正値X1を算出する。
【0077】
図11は、タンク102A、102B間の液量差分S1と第1のヘッド群101A向けの補正値X1との関係の一例を示す図である。ステップS004では、例えば図11に示す対応関係など参照して、補正値X1を決定する。図11の横軸は補正値X1を示し、縦軸は差分S1を示す。図11には、差分S1と補正値X1の対応関係の一例を示すグラフGが図示されている。
【0078】
図11に示すように、差分S1が正の方向に大きくなる場合は、インク残量がT2>T1となるため、T1の液量を有するタンク102Aに係るヘッド群101Aへの駆動波形には補正をかけて基本波形Dより大きくする必要がある。このため、図11に示すように、差分S1が正の値の場合には補正値X1も正の値となる。また、差分S1が正の方向に大きくなるほど補正値X1も正の方向に大きくなるため、差分S1と補正値X1との関係は正の相関に近いものとなる。なお、図11の例では、グラフGは線形となっているが、正の相関を満たすことができれば非線形のグラフとしてもよい。
【0079】
図10に戻り、ステップS005では、ヘッド駆動制御基板103の電圧倍率補正部306が、ステップS004にて算出された補正値X1を用いて、液量T1のタンク102Aを有するヘッド群101Aの駆動波形のみを倍率補正する(電圧倍率補正ステップ)。ここでは、ヘッド群101Aへの駆動波形のみが、図9に示した基本波形Dから、基本波形Dより電圧値が相対的に大きい駆動波形Eに補正される。一方、ヘッド群101Bへの駆動波形は倍率補正が行われず基本波形Dのままで維持される。
【0080】
ステップS006では、ステップS003にて選択されたヘッド群101Aが、倍率補正した駆動波形Eを用いてインク吐出制御を行われ、画像が形成される。一方、ステップS003にて選択されなかったヘッド群101Bは、基本波形Dを用いてインク吐出制御が行われる。ステップS006の制御が完了すると本制御フローを終了する。
【0081】
ステップS003の判定の結果、液量差分S1が負の場合、すなわちS1<0の場合(ステップS003のNo)、タンク102Bのインク残量T2のほうがタンク102Aのインク残量T1より少ないので、ステップS007に進み、インク残量が少ない方のタンク102Bからインクを供給されるヘッド群101Bの駆動波形を大きくする倍率補正が行われる。
【0082】
ステップS007では、ヘッド駆動制御基板103の電圧選択部305が、インク情報記憶領域304に記憶されている液量差分S1と補正値X2との対応関係を含むテーブルなどを用いて、倍率補正の補正値X2を算出する。
【0083】
図12は、タンク102A、102B間の液量差分S1と第2のヘッド群101B向けの補正値X2との関係の一例を示す図である。ステップS007では、例えば図12に示す対応関係など参照して、補正値X2を決定する。図12の横軸は補正値X2を示し、縦軸は差分S1を示す。図12には、差分S1と補正値X2の対応関係の一例を示すグラフHが図示されている。
【0084】
図12に示すように、差分S1が負の方向に大きくなる場合は、インク残量がT2<T1となるため、T2の液量を有するタンク102Bに係るヘッド群101Bへの駆動波形には補正をかけて基本波形Dより大きくする必要がある。このため、図12に示すように、差分S1が負の値の場合には補正値X2は正の値となる。また、差分S1が負の方向に大きくなるほど補正値X2は正の方向に大きくなるため、差分S1と補正値X2との関係は負の相関に近いものとなる。なお、図12の例では、グラフHは線形となっているが、負の相関を満たすことができれば非線形のグラフとしてもよい。
【0085】
図10に戻り、ステップS008では、ヘッド駆動制御基板103の電圧倍率補正部306が、ステップS007にて算出された補正値X2を用いて、液量T2のタンク102Bを有するヘッド群101Bの駆動波形のみを倍率補正する(電圧倍率補正ステップ)。ここでは、ヘッド群101Bへの駆動波形のみが、図9に示した基本波形Dから、基本波形Dより電圧値が相対的に大きい駆動波形Eに補正される。一方、ヘッド群101Aへの駆動波形は倍率補正が行われず基本波形Dのままで維持される。
【0086】
ステップS009では、ステップS003にて選択されたヘッド群101Bが、倍率補正した駆動波形Eを用いてインク吐出制御を行われ、画像が形成される。一方、ステップS003にて選択されなかったヘッド群101Aは、基本波形Dを用いてインク吐出制御が行われる。ステップS009の制御が完了すると本制御フローを終了する。
【0087】
次に、本実施形態に係る液体吐出装置300の効果について説明する。
【0088】
まず本実施形態に係る液体吐出装置300の比較例として、本実施形態と同様に同色内において複数の独立したインク供給を行うタンク102A、102Bと、供給経路(例えば図3に示すインク供給チューブ105A、105B、105C)と、それに対応したヘッド群101A、101Bと、を備える従来の液体吐出装置を考える。このような従来の液体吐出装置では、各ヘッド群101A、101Bは供給経路別のインク残量と、その圧力に応じたメニスカスをヘッドのインク吐出口表面に生成する。複数のタンク102A、102Bは、吐出状況には関係なく、各タンク内のセンサ106がインク残量の減少を検知したら、各タンクごとに独立してインクを充填する機構となっている。このため、同色内において異なるヘッド群101A、101Bのインク使用量が異なり、かつ、各タンク102A、102Bごとの充填のタイミングが同時でないことから、ヘッド群101A、101B間で大きなインクタンク量の差が生じる場合がある。その状態での吐出はヘッド群101A、101B間で吐出特性の差異を生み、ヘッド群101A、101B間の濃度ムラなどの画質問題を起こす場合がある。
【0089】
そのような画質問題が起きないように、従来の液体吐出装置でも、インクジェットにおける駆動波形は、生成過程において画像情報や外部の情報、用紙情報など様々な情報を元に最適な駆動波形を生成している。そのため駆動波形生成部302においては、それらの情報を処理しながら駆動波形を生成し補正するため、処理する情報および補正対象は一つでも少ないほうが処理の負荷、時間は少なくできると考えられる。
【0090】
1色ごとに1つのインクタンクからインク液を供給している場合はその系統内でのみの補正で済むが、上述の従来の液体吐出装置のように1色に対して複数のインクタンク102A、102Bを所有する場合、インク情報と補正対象はタンクの数だけ増えてしまう。このように、従来の液体吐出装置では、複数のタンクそれぞれにおいて画像補償を行うため、液体吐出装置内の各処理部や補正部において負荷が増してしまうという問題がある。
【0091】
このような問題に対して、本実施形態に係る液体吐出装置300は、インク滴を吐出する複数のヘッドをそれぞれ含む複数のヘッド群101A、101Bと、複数のヘッド群101A、101Bにそれぞれインクを供給する複数のタンク102A、102Bと、複数のタンク102A、102B間の液量の差分S1を算出する液量差分算出部307と、液量の差分S1に基づいて、複数のヘッド群101A、101Bの中から駆動波形Dに補正をかけるヘッド群を選択する選択部309と、液量の差分S1に基づいて、選択部309により選択されたヘッド群の駆動波形Dに倍率補正をかける電圧倍率補正部306と、を備える。
【0092】
この構成により、複数のタンク102A、102B間のインク液量の差分S1に着目し、タンク量の差分S1に応じて複数のヘッド群101A、101Bの中から特定のヘッド群を選択し、一部のヘッド群にのみ駆動波形に補正をかけることができる。これにより、タンク(=インク情報)が増えても、吐出特性ないし画像を補償できる範囲での最小限の補正を駆動波形にかけることで処理の負荷を少なくすることが可能になる。この結果、本実施形態の液体吐出装置300は、各処理部や補正部への負荷を低減しつつ、画像補償を行うことが可能となる。また、複数のタンク102A、102B間のインク残量の差分S1を用いて補正することで、同色内のヘッド群101A、101Bごとの吐出特性を補正することができるので、同色内の濃度ムラを防ぐことができる。これにより、ヘッド群101A、101Bごとの画質の差を埋めることが可能となり、印刷品質を向上できる。
【0093】
また、本実施形態に係る液体吐出装置300は、複数のタンク102A、102Bの液量を検出するセンサ106を備える。液量差分算出部307は、センサ106の検出結果に基づき液量の差分S1を算出する。
【0094】
この構成により、従来技術で取得可能なインクタンク102A、102Bの残量値を用いて、複数のタンク102A、102B間の液量の差分S1を算出することができる。このように算出した液量差分S1の情報に基づき、駆動波形Dに補正をかけるヘッド群の選択ができるので、複数のタンク102A、102B間の液量の差分S1を検知する要素を新たに追加せずに、より簡易に所望の倍率補正制御を行うことが可能となる。
【0095】
また、本実施形態に係る液体吐出装置300は、印刷画像情報から複数のヘッド群101A、101Bのそれぞれにおけるインク消費量を予測する予測部308を備える。選択部309は、液量差分算出部307により算出された液量の差分S1と、予測部308により予測されたインク消費量と、に基づき、複数のヘッド群101A、101Bの中から駆動波形Dに補正をかけるヘッド群を選択する。
【0096】
この構成により、予測部308によってタンク102A、102B間の液量の差分S1を印刷前に計算できるので、より高精度に液量差分S1を算出でき、駆動波形Dに補正をかけるヘッド群の選択をより適切に行うことが可能となる。
【0097】
また、本実施形態に係る液体吐出装置300では、電圧倍率補正部306は、図10のステップS003~S009に示したように、インク残量が少ない方のタンクからインクを供給されるヘッド群を選択し、該ヘッド群の駆動波形Dを大きくする倍率補正を行う。
【0098】
この構成により、同色の複数のヘッド群101A、101Bにおいて、インク残量が少ない方のタンクからインクが供給されるほうのヘッド群の吐出特性を、他方のヘッド群の吐出特性に近づけることができるので、同色の複数のヘッド群101A、101Bにおける吐出特性を均一化でき、印刷品質を向上できる。
【0099】
また、本実施形態に係る液体吐出装置300では、図11図12に示したように、電圧倍率補正部306は、液量の差分S1に基づいて補正倍率の値(補正値X1、X2)を算出する。
【0100】
この構成により、液量差分S1を補正値X1、X2の算出に用いることでより詳細な倍率補正が可能となるので、より高精度に画像補償を行うことが可能となる。
【0101】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0102】
上記実施形態では、電圧倍率補正部306は、図10のステップS003~S009に示したように、インク残量が少ない方のタンクからインクを供給されるヘッド群を選択し、該ヘッド群の駆動波形Dを大きくする倍率補正を行う構成を例示した。この構成とは反対に、電圧倍率補正部306はインク残量が大きい方のタンクからインクを供給されるヘッド群を選択し、該ヘッド群の駆動波形を小さくする倍率補正を行う構成としてもよい。
【0103】
この構成によっても、同色の複数のヘッド群101A、101Bにおいて、インク残量が大きい方のタンクからインクが供給されるほうのヘッド群の吐出特性を、他方のヘッド群の吐出特性に近づけることができるので、本実施形態と同様に、同色の複数のヘッド群101A、101Bにおける吐出特性を均一化でき、印刷品質を向上できる。
【0104】
また、上記実施形態では、図11図12に示したように、電圧倍率補正部306が液量の差分S1に基づいて補正倍率の値(補正値X1、X2)を算出する構成を例示した。この構成の代わりに、電圧倍率補正部306が、液量の差分S1と、選択部309により選択されたヘッド群にインクを供給するタンクのインク残量と、に基づき、補正倍率の値を算出する構成としてもよい。
【0105】
この構成により、液量差分S1に加えてタンク102A、102Bのインク液量T1、T2を補正値X1、X2の算出に用いることができるので、さらに高精度な倍率補正が可能となり、さらに高精度に画像補償を行うことが可能となる。
【0106】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> インク滴を吐出する複数のヘッドをそれぞれ含む複数のヘッド群と、
前記複数のヘッド群にそれぞれインクを供給する複数のタンクと、
前記複数のタンク間の液量の差分を算出する液量差分算出部と、
前記液量の差分に基づいて、前記複数のヘッド群の中から駆動波形に補正をかけるヘッド群を選択する選択部と、
前記液量の差分に基づいて、前記選択部により選択された前記ヘッド群の前記駆動波形に倍率補正をかける電圧倍率補正部と、
を備える液体吐出装置。
<2> 前記複数のタンクの液量を検出する検出部を備え、
前記液量差分算出部は、前記検出部の検出結果に基づき前記液量の差分を算出する、
前記<1>に記載の液体吐出装置。
<3> 印刷画像情報から前記複数のヘッド群のそれぞれにおけるインク消費量を予測する予測部を備え、
前記選択部は、前記液量差分算出部により算出された前記液量の差分と、前記予測部により予測された前記インク消費量と、に基づき、前記複数のヘッド群の中から前記駆動波形に補正をかける前記ヘッド群を選択する、
前記<2>に記載の液体吐出装置。
<4> 前記電圧倍率補正部は、インク残量が少ない方のタンクからインクを供給されるヘッド群を選択し、該ヘッド群の前記駆動波形を大きくする倍率補正を行う、
前記<1>~<3>のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
<5> 前記電圧倍率補正部は、インク残量が大きい方のタンクからインクを供給されるヘッド群を選択し、該ヘッド群の前記駆動波形を小さくする倍率補正を行う、
前記<1>~<3>のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
<6> 前記電圧倍率補正部は、前記液量の差分に基づいて補正倍率の値を算出する、
前記<1>~<5>のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
<7> 前記電圧倍率補正部は、前記液量の差分と、前記選択部により選択された前記ヘッド群にインクを供給するタンクのインク残量と、に基づき、補正倍率の値を算出する、
前記<1>~<5>のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
<8> インク滴を吐出する複数のヘッドをそれぞれ含む複数のヘッド群と、
前記複数のヘッド群にそれぞれインクを供給する複数のタンクと、
を備える液体吐出装置における液体吐出方法であって、
前記複数のタンク間の液量の差分を算出する液量差分算出ステップと、
前記液量の差分に基づいて、前記複数のヘッド群の中から駆動波形に補正をかけるヘッド群を選択する選択ステップと、
前記液量の差分に基づいて、前記選択ステップにて選択された前記ヘッド群の前記駆動波形に倍率補正をかける電圧倍率補正ステップと、
を含む液体吐出方法。
<9> インク滴を吐出する複数のヘッドをそれぞれ含む複数のヘッド群と、
前記複数のヘッド群にそれぞれインクを供給する複数のタンクと、
を備える液体吐出装置における液体吐出プログラムであって、
前記複数のタンク間の液量の差分を算出する液量差分算出機能と、
前記液量の差分に基づいて、前記複数のヘッド群の中から駆動波形に補正をかけるヘッド群を選択する選択機能と、
前記液量の差分に基づいて、前記選択機能により選択された前記ヘッド群の前記駆動波形に倍率補正をかける電圧倍率補正機能と、
をコンピュータに実行させる液体吐出プログラム。
【符号の説明】
【0107】
300 液体吐出装置
101A、101B ヘッド群
101A1、101A2、101A3、101B1、101B2、101B3 ヘッド
102A、102B タンク
106 センサ(検出部)
306 電圧倍率補正部
307 液量差分算出部
308 予測部
309 選択部
D 駆動波形
S1 タンク間の液量差分
S001 液量差分算出ステップ
S002、S003 選択ステップ
A003、S005、S008 電圧倍率補正ステップ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0108】
【特許文献1】特開2002-19091号公報
図1
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図5
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