(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151076
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
H01L21/78 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064205
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA36
5F063CB03
5F063CB05
5F063CB07
5F063CB29
5F063CC26
5F063DD76
5F063DG11
5F063DG17
5F063DG32
5F063EE42
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ダイアタッチフィルム(DAF)を支持した拡張テープを放射状に拡張することで、デバイスの間隔を広げて個々のデバイスチップに対応してDAFを適正に分割するウエーハの加工方法を提供する。
【解決手段】方法は、分割予定ラインに分割の起点が形成されたウエーハ10又は分割予定ラインに沿って個々のデバイスチップ12’に分割されたウエーハを準備するウエーハ準備工程と、フレームユニット形成工程と、DAF分割工程を含み、DAF分割工程において、少なくともフレームユニットWAは、冷却チャンバー40内に位置付けられ、冷風Cが冷却チャンバー内に流入すると共に流出することで、DAFの粘性を低減し、フレーム支持部33に対してウエーハ支持部31を突出させてDAFを個々のデバイスチップに対応して分割する際は、冷却チャンバー内に対する冷風の流入を停止して冷風に起因する気流を抑制する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハの加工方法であって、
分割予定ラインに分割の起点が形成されたウエーハ、または分割予定ラインに沿って個々のデバイスチップに分割されたウエーハを準備するウエーハ準備工程と、
ウエーハの裏面にDAFを配設すると共に該DAFを支持した拡張テープを、ウエーハを収容する開口部を備えたフレームに配設してフレームユニットを構成するフレームユニット形成工程と、
該フレームを支持するフレーム支持部と該DAF及び該拡張テープを介してウエーハを支持するウエーハ支持部とにより、相対的に該フレーム支持部に対して該ウエーハ支持部を突出させて該DAFを個々のデバイスチップに対応して分割するDAF分割工程と、
を含み、
該DAF分割工程において、
少なくとも該フレームユニットは冷却チャンバー内に位置付けられ、冷風が該冷却チャンバー内に流入すると共に該冷却チャンバー外に流出することで、DAFの粘性を低減し、
相対的に該フレーム支持部に対して該ウエーハ支持部を突出させてDAFを個々のデバイスチップに対応して分割する際は、該冷却チャンバー内に対する冷風の流入を停止して該冷風に起因する気流を抑制するウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、DAF(ダイアタッチフィルム)と称される特殊接着フィルムを介して配線フレームに配設されて、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
個々のデバイスチップに対応してDAFを配設する技術として、分割予定ラインに沿って溝を形成して、ウエーハの表面に保護テープを配設し、その後、研削装置によってウエーハの裏面を研削し薄化して、ウエーハの裏面に溝を表出することでウエーハを個々のデバイスチップに分割した後、ウエーハの裏面にDAFを配設すると共に、DAFを支持した拡張テープを拡張して個々のデバイスチップに対応してDAFを分割する技術が提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
また、ウエーハの表面に形成された分割予定ラインに対応する内部に、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を位置付けて照射して分割の起点となる改質層を形成した後、ウエーハの裏面にDAFを配設し、DAFを支持した拡張テープを拡張して、ウエーハを個々のデバイスチップに分割すると共に個々のデバイスチップに対応してDAFも分割する技術が提案されている。(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平05-54262号公報
【特許文献2】特開2005-223282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
DAFは、DAFを支持した拡張テープを放射状に拡張してデバイスの間隔を広げることにより、個々のデバイスチップに対応して分割される。しかし、DAFの粘性、柔軟性に起因して、デバイスチップに対応して円滑に分割されないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、DAFを支持した拡張テープを放射状に拡張することで、デバイスの間隔を広げて個々のデバイスチップに対応してDAFを円滑に分割することができるウエーハの加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハの加工方法であって、分割予定ラインに分割の起点が形成されたウエーハ、または分割予定ラインに沿って個々のデバイスチップに分割されたウエーハを準備するウエーハ準備工程と、ウエーハの裏面にDAFを配設すると共に該DAFを支持した拡張テープを、ウエーハを収容する開口部を備えたフレームに配設してフレームユニットを構成するフレームユニット形成工程と、該フレームを支持するフレーム支持部と該DAF及び該拡張テープを介してウエーハを支持するウエーハ支持部とにより、相対的に該フレーム支持部に対して該ウエーハ支持部を突出させて該DAFを個々のデバイスチップに対応して分割するDAF分割工程と、を含み、該DAF分割工程において、少なくとも該フレームユニットは冷却チャンバー内に位置付けられ、冷風が該冷却チャンバー内に流入すると共に該冷却チャンバー外に流出することで、DAFの粘性を低減し、相対的に該フレーム支持部に対して該ウエーハ支持部を突出させてDAFを個々のデバイスチップに対応して分割する際は、該冷却チャンバー内に対する冷風の流入を停止して該冷風に起因する気流を抑制するウエーハの加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のウエーハの加工方法は、分割予定ラインに分割の起点が形成されたウエーハ、または分割予定ラインに沿って個々のデバイスチップに分割されたウエーハを準備するウエーハ準備工程と、ウエーハの裏面にDAFを配設すると共に該DAFを支持した拡張テープを、ウエーハを収容する開口部を備えたフレームに配設してフレームユニットを構成するフレームユニット形成工程と、該フレームを支持するフレーム支持部と該DAF及び該拡張テープを介してウエーハを支持するウエーハ支持部とにより、相対的に該フレーム支持部に対して該ウエーハ支持部を突出させて該DAFを個々のデバイスチップに対応して分割するDAF分割工程と、を含み、該DAF分割工程において、少なくとも該フレームユニットは冷却チャンバー内に位置付けられ、冷風が該冷却チャンバー内に流入すると共に該冷却チャンバー外に流出することで、DAFの粘性を低減し、相対的に該フレーム支持部に対して該ウエーハ支持部を突出させてDAFを個々のデバイスチップに対応して分割する際は、該冷却チャンバー内に対する冷風の流入を停止して該冷風に起因する気流を抑制することから、分割工程において冷却され硬くなったDAFが個々のデバイスチップに対応して円滑に分割される。また、分割工程が実施される際に、冷風の流入が停止されることから、冷却チャンバーにおける気流が抑制されて、DAFが分割される際に飛散する微細なDAFがコンタミとなって冷却チャンバー内を浮遊することが抑制され、デバイスチップの表面に付着して品質を低下させるという問題が解消される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】被加工物であるウエーハ及び保護テープの斜視図である。
【
図2】(a)ウエーハ準備工程により準備されるウエーハの態様を示す斜視図、(b)ウエーハ準備工程により準備される別のウエーハの態様を示す斜視図である。
【
図3】フレームユニット形成工程を実施する際にウエーハとDAFを一体とする態様を示す斜視図である。
【
図4】(a)分割の起点となる改質層が形成されたウエーハから保護テープが剥離される態様を示す斜視図、(b)個々のデバイスチップに分割されたウエーハから保護テープが剥離される態様を示す斜視図である。
【
図5】DAF分割工程を実施するDAF分割装置を示す斜視図である。
【
図6】
図5に示すDAF分割装置によってDAFが分割される態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に基づいて構成されるウエーハの加工方法に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0012】
本実施形態のウエーハの加工方法を実施するに際し、まず、以下に説明するウエーハ準備工程を実施する。本実施形態のウエーハの加工方法によって加工されるウエーハは、例えば、
図1に示すシリコンのウエーハ10である。このウエーハ10は、複数のデバイス12が分割予定ライン14によって区画され表面10aに形成されたウエーハである。このウエーハ10を用意したならば、図示のように、表面10aに、保護テープT1を貼着する。次いで、表面10aに保護テープT1を貼着したウエーハ10を、周知のレーザー加工装置(図示は省略する)に搬送し、上記したウエーハ10の裏面10bから、ウエーハ10に対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を分割予定ライン14の内部に位置付けて照射して、
図2(a)に示すように、該分割予定ライン14に沿って分割の起点となる改質層100を形成する。このようなレーザー加工を、全ての分割予定ライン14に沿って実施することで、全ての分割予定ライン14に沿って分割の起点となる改質層100を備えたウエーハ10Aが形成され、ウエーハ準備工程が完了する。なお、分割予定ライン14に沿って分割の起点を形成する場合、上記した改質層100を形成することに限定されない。例えば、保護テープT1を貼着する前のウエーハ10を用意し、ウエーハ10に対し吸収性を有する波長のレーザー光線をウエーハ10の表面10a側から分割予定ライン14に沿って照射し、アブレーション加工により分割予定ライン14に沿って分割の起点となるレーザー加工溝を形成し、その後保護テープT1を貼着してもよい。
【0013】
ウエーハ準備工程は、上記した形態に限定されない。例えば、上記した分割の起点となる改質層100を形成すること替えて、保護テープT1を貼着する前のウエーハ10を周知の切削装置(図示は省略する)に搬送し、環状の切削ブレードを有する切削手段を、ウエーハ10の表面10aに形成された分割予定ライン14に位置付けて、この分割予定ライン14に沿って表面10a側から、所望の仕上がり厚みに応じて設定される裏面10bに貫通しないハーフカット溝を形成する。次いで、表面10aに保護テープT1を配設し、その後、図示を省略する研削装置によってウエーハ10の裏面10bを研削し薄化して、
図2(b)に示すように、ウエーハ10の裏面10bに該ハーフカット溝が表出した分割溝110を形成することで、ウエーハ10が個々のデバイスチップ12’に分割されたウエーハ10Bを準備するようにしてもよい。
【0014】
さらに、ウエーハ10が個々のデバイスチップ12’に分割されたウエーハ10Bを準備するウエーハ準備工程の具体的な実施態様は、上記した態様に限定されず、次のような方法により実施するものであっても良い。具体的には、
図1に示す保護テープT1が表面10aに貼着されたウエーハ10を用意し、裏面10bを研削して所望の厚みに薄化した後、周知の切削装置(図示は省略する)に搬送し、切削ブレードを有する切削手段を、ウエーハ10の裏面10bの分割予定ライン14に対応する位置に位置づけて、分割予定ライン14に沿って、ウエーハ10の表面10aに達する分割溝110を形成する。このような分割溝110を、全ての分割予定ライン14に沿って形成することによっても、
図2(b)に示すような個々のデバイスチップ12’に分割されたウエーハ10Bを得ることができる。
【0015】
上記したように、ウエーハ準備工程は、分割予定ライン14に分割の起点が形成されたウエーハ10A、または分割予定ライン14に沿って個々のデバイスチップ12’に分割されたウエーハ10Bを準備する工程であり、この後、以下に説明するフレームユニット形成工程を実施する。
【0016】
フレームユニット形成工程を実施するに際し、
図3に示すような、ウエーハ10Aを収容可能な開口部Faを中央に備えた環状のフレームFを用意する。図示のように、該開口部Faの中央にウエーハ10Aよりも僅かに大きい寸法で形成されたシート状のDAF16が位置付けられるように、DAF16が配設された柔軟性を有する拡張テープT2をフレームFに支持する。DAF16の表面16aは粘着性を有しており、DAF16の表面16aに上記したウエーハ10Aの裏面10bを向けて載置し、ウエーハ10A、DAF16、フレームF、及び拡張テープT2を一体とする。ウエーハ10AとDAF16とを一体としたならば、
図4(a)に示すように、ウエーハ10Aの表面10aから保護テープT1を剥離してフレームユニットWAを形成する。なお、本実施形態のフレームユニット形成工程は、上記したウエーハ10Bを使用して実施することもでき、上記した手順を実行することで、
図4(b)に示すように、ウエーハ10B、DAF16、フレームF、及び拡張テープT2を一体とした後、保護テープT1を剥離したフレームユニットWBを形成するものであってもよい。
【0017】
なお、フレームユニット形成工程は、上記した手順により実施することに限定されない。例えば、DAF16を、ウエーハ10A、10Bの裏面10bに予め貼着しておき、その後、フレームFの開口部Faの中央に位置づけて、フレームFに支持された拡張テープT2に貼着してフレームユニットWA、WBを構成するものであってもよい。
【0018】
上記したフレームユニット形成工程によりフレームユニットWA、WBが形成されたならば、以下に説明するDAF分割工程を実施する。
【0019】
DAF分割工程は、
図5、6に示すDAF分割装置20を使用して実施することができる。なお、
図5、6では、フレームユニットWAをDAF分割装置20に搬送したものとして、以下に説明する。
【0020】
図5に示すとおり、本実施形態のDAF分割装置20は、DAF拡張装置30と、冷却チャンバー40とを含み構成されている。DAF拡張装置30は、円盤状の支持基台30aと、支持基台30aの下面中央に配設された円筒状のウエーハ支持部31と、支持基台30aの下面外周に配設され、ウエーハ支持部31に隣接して周方向に均等な間隔をおいて配設された複数のエアシリンダ32と、エアシリンダ32から下方に伸びる昇降ロッド32aの下端に連結された環状のフレーム支持部33と、フレーム支持部33の外周縁部に周方向に間隔をおいて配置された複数のクランプ34とを含む。ウエーハ支持部31の下面に形成されたウエーハ支持面31aは、通気性を有するポーラス部材によって形成されている。ウエーハ支持面31aは、ウエーハ支持部31を介して図示を省略する吸引手段に接続されており、該吸引手段を作動することにより、該ウエーハ支持面31aに負圧を生成することができる。ウエーハ支持部31のウエーハ支持面31aは、上記したウエーハ10A、10Bの直径よりも大きく、フレームFの内径Faよりも小さい。また、フレーム支持部33は、フレームFの寸法に対応して形成されており、フレーム支持部33の平坦な保持面33aにフレームFを密着させることができる。
【0021】
各エアシリンダ32には正圧を供給するエアポンプが接続されており、エアシリンダ32の昇降ロッド32aを上下方向で進退させることが可能である。複数のエアシリンダ32を同時に作動することで、フレーム支持部33がウエーハ支持部31のウエーハ支持面31aとほぼ同じ高さとなる基準位置(
図6(a)を参照)と、ウエーハ支持部31のウエーハ支持面31aがフレーム支持部33に対して突出する状態となる拡張位置(
図6(b)を参照)とに位置付けることができるようになっている。
【0022】
図5、
図6に示すように、冷却チャンバー40は、上方が開放されたチャンバーハウジング41と、チャンバーハウジング41の下面側に配設された冷風流入口42及び冷風流出口43と、を備えている。冷風流入口42には、開閉弁45が配設された冷風導入路44が接続され、該冷風導入路44は、図示を省略する冷風発生器に接続されている。また、冷風流出口43には、冷風流出路46が接続されている。
図6(a)に示すように、冷風流入口42から冷却チャンバー40の内部空間40aに導入された冷風Cは、内部空間40a内を冷却し、冷風流出口43から冷却チャンバー40の外に排出される。なお、該冷風発生器によって導入される冷風Cの温度は、例えば5~10℃である。
図6(a)を参照することで理解されるように、開放端部41aは、フレームFの開口部Faよりも若干大きい寸法であると共にフレームFの外形よりも小さい寸法で形成されている。チャンバーハウジング41の上端を形成する環状の開放端部41aにはパッキンとして機能する樹脂製の環状のOリング41bが形成されており、図示を省略する昇降手段によってチャンバーハウジング41の開放端部41aをフレームFに当接することで、内部空間40aを閉塞状態にすることができる。
【0023】
上記したDAF分割装置20を使用して、本実施形態のDAF分割工程を実施する手順について、
図5、
図6を参照しながら以下に説明する。
【0024】
DAF分割工程を実施するに際し、まず、上記したフレームユニット形成工程により形成されたフレームユニットWAをDAF分割装置20に搬送し、拡張テープT2側を上方に、ウエーハ10A側を下方に向けて、フレームFをフレーム支持部33の保持面33aに位置付けてクランプ34を作動し、フレームユニットWAをDAF拡張装置30に保持する。次いで、図示を省略する吸引手段を作動して、ウエーハ支持部31のウエーハ支持面31aに負圧を生成して、拡張テープT2及びDAF16を介してウエーハ10Aを吸引し支持する。
【0025】
上記したようにウエーハ10Aをウエーハ支持部31に支持させると共に、冷却チャンバー40をDAF拡張装置30の下方に位置付けて、
図6(a)に示すよう、チャンバーハウジング41の開放端部41aをフレームユニットWAのフレームFに当接させ、冷却チャンバー40内にフレームユニットWAを位置付ける。次いで、上記した冷風導入路44の開閉弁45を開放すると共に冷風発生器を作動して、冷却チャンバー40の内部空間40aに冷風Cを流入させて、冷風流出口43から外部に流出させる。このようにして、所定時間冷風Cを、冷却チャンバー40内に流通させることにより、DAF16を冷却して粘性を低減させる。
【0026】
上記したようにDAF16の温度を十分に低下して粘性が低減したならば、冷風発生器を停止すると共に、冷風導入路44の開閉弁45を閉じて、冷却チャンバー40の内部空間40aへの冷風Cの流入を停止する。これにより、冷却チャンバー40の内部空間40aにおける冷風Cに起因する気流が抑制された状態となる。なお、図示はしていないが、冷風流出路にも開閉弁を配設し、冷風Cを該内部空間40aに流入させる際に開とし、冷風Cの流入を停止する際に閉とするようにしてもよい。
【0027】
上記したように、内部空間40aへの冷風Cの流入を停止し、内部空間40a内の気流が落ち着いたならば、ウエーハ支持部31のウエーハ支持面31aに負圧を生成する吸引手段の作動を停止し、DAF拡張装置30のエアシリンダ32を作動して、
図6(b)に矢印R1で示すように、フレーム支持部33を上昇させて、ウエーハ支持部31がフレーム支持部33に対して突出する拡張位置に位置付ける。これにより、拡張テープT2が放射状に拡張されて、ウエーハ10が個々のデバイスチップ12’に分割されると共に、DAF16が個々のデバイスチップ12’に対応して分割される。以上により分割工程が完了し、本実施形態のウエーハの加工方法が完了する。
【0028】
上記したように、分割工程が実施される際には、冷風CによってDAF16が冷却されて、粘性が低減されていることから、DAF16は硬化されている。これにより、分割工程において、硬くなったDAF16が円滑に分割される。また、分割工程が実施される際に、冷風Cの流入が停止されていることから、冷却チャンバー40の内部空間40aにおいて冷風Cに起因する気流が抑制されて、分割の際に飛散する微細なDAF16の破片がコンタミとなって冷却チャンバー内を浮遊することが抑制され、デバイスチップ12’の表面に付着して品質を低下させることがない。なお、本実施形態のDAF分割工程は、上記したフレームユニットWAに替えてフレームユニットWBを使用して実施することも可能である。その場合は、予めウエーハ10が個々のデバイスチップ12’に分割されていることから、上記したDAF分割工程によって、DAF16のみが、個々のデバイスチップ12’に対応して円滑に分割される。
【0029】
本発明は上記した実施形態に限定されない。上記した実施形態では、エアシリンダ32を作動して、フレーム支持部33を上昇させることにより、結果として、ウエーハ支持部31がフレーム支持部33に対して下方に突出するようにしたが、これに替えて、フレーム支持部33の位置を固定した構成とし、ウエーハ支持部31を昇降させる昇降手段を配設し、該昇降手段によりウエーハ支持部31をフレーム支持部33に対して下方に突出するようにしてもよい。すなわち、ウエーハ支持部31とフレーム支持部33とにより、相対的にフレーム支持部33に対してウエーハ支持部31を突出できればよい。
【0030】
また、上記した実施形態では、DAF分割装置20を、DAF拡張装置30と冷却チャンバー40とにより構成する際に、DAF拡張装置30を上方に冷却チャンバー40を下方に配設して、ウエーハ支持部31のウエーハ支持面31aを下方に向け、冷却チャンバー40の開放端部41aを下方から当接させるようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図5に示す構成の上下を反転して、DAF拡張装置30を下方に冷却チャンバー40を上方に配設して、ウエーハ支持部31のウエーハ支持面31aを上方に向け、冷却チャンバー40の開放端部41aを上方から下降して当接させるようにしてもよい。そして、その場合は、フレーム支持部33に対してウエーハ支持部31を相対的に上方に突出させてDAF16を個々のデバイスチップ12’に対応して分割することができる。なお、
図5、6に示す構成であれば、DAF分割工程によってDAF16を分割する際に飛散する微細な破片がコンタミとなってデバイスチップ12’の表面に付着して品質を低下させる問題がより低減されるため、
図5、6に示す構成にすることが望ましい。
【符号の説明】
【0031】
10:ウエーハ
10A:ウエーハ
10B:ウエーハ
10a:表面
10b:裏面
12:デバイス
12’:デバイスチップ
14:分割予定ライン
16:DAF
20:DAF分割装置
30:DAF拡張装置
30a:支持基台
31:ウエーハ支持部
31a:ウエーハ支持面
32:エアシリンダ
32a:昇降ロッド
33:フレーム支持部
33a:保持面
34:クランプ
40:冷却チャンバー
40a:内部空間
41:チャンバーハウジング
41a:開放端部
41b:Oリング
42:冷風流入口
43:冷風流出口
44:冷風導入路
45:開閉弁
46:冷風流出路
100:改質層
110:分割溝
T1:保護テープ
T2:拡張テープ