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特開2024-151086米飯用品質改良剤および米飯の品質改良方法
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  • 特開-米飯用品質改良剤および米飯の品質改良方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151086
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】米飯用品質改良剤および米飯の品質改良方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20241017BHJP
   A23L 29/25 20160101ALI20241017BHJP
【FI】
A23L7/10 B
A23L29/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064219
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000103840
【氏名又は名称】オリエンタル酵母工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】内田 萌
(72)【発明者】
【氏名】河原田 啓希
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 千夏
【テーマコード(参考)】
4B023
4B041
【Fターム(参考)】
4B023LC05
4B023LC08
4B023LE11
4B023LE30
4B023LG01
4B023LK05
4B023LK08
4B023LK17
4B023LP05
4B023LP10
4B023LP13
4B023LP15
4B041LC03
4B041LC07
4B041LD01
4B041LH09
4B041LK23
4B041LK44
4B041LK45
4B041LP01
4B041LP02
4B041LP25
(57)【要約】
【課題】炊飯後の米飯を撹拌した際のほぐれ性を向上させることで米粒が割れるのを抑制し、かつ冷蔵保存した後でも米飯の柔らかさを維持した米飯とすることができる米飯用品質改良剤および米飯の品質改良方法を提供すること。
【解決手段】4-α-グルカノトランスフェラーゼおよびアラビアガムを含有する米飯用品質改良剤である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-α-グルカノトランスフェラーゼおよびアラビアガムを含有することを特徴とする米飯用品質改良剤。
【請求項2】
生米100gに対して、4-α-グルカノトランスフェラーゼ50~1,200Uおよびアラビアガム0.2~3gで用いられる請求項1に記載の米飯用品質改良剤。
【請求項3】
更にグルコアミラーゼを含有し、その使用量が、生米100gに対して、0U超300U以下である請求項1または2に記載の米飯用品質改良剤。
【請求項4】
4-α-グルカノトランスフェラーゼおよびアラビアガムを炊飯時または炊飯後の米飯に作用させることを特徴とする米飯の品質改良方法。
【請求項5】
生米100gに対して、4-α-グルカノトランスフェラーゼ50~1,200Uおよびアラビアガム0.2~3gで用いる請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米飯用品質改良剤および米飯の品質改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の食の多様化、中食需要の拡大により、加工食品のニーズが増大している。特に麺、米飯といった穀類食品は、大量に加工・調理された製品が、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどで販売されている。
【0003】
これら流通・市販される加工食品において、特に問題となるのが加工の利便性と時間の経過による品質劣化である。
【0004】
これまでに、米飯類の老化を抑制し保水性を高めた米飯類を提供し、炊飯時の焦げつき等を防止しほぐれやすく成型性に優れた米飯類を提供する技術として、グルコアミラーゼ及びα-グルコシダーゼを含有する穀類食品改質剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
加工米飯の製造において、米飯のほぐれが良く、食感に優れ、また食感のばらつきが少ない製造方法を提供する技術として、作用至適温度の異なる2種類以上のアミラーゼを使用する炊飯工程を含む加工米飯の製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
チルド状態においても品質の劣化が抑制されたチルド米飯およびその製造法を提供する技術として、プルラン、水溶性ヘミセルロース、アラビアガムから選ばれる1種または2種以上のチルド品質保持剤を含んでなる、チルド米飯が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2018/074582号
【特許文献2】特開2015-80458号公報
【特許文献3】特開2001-29031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
麺、米飯等の穀類加工食品は一般に澱粉を含んでおり、加工・調理の際、食品表面に澱粉質が流出し、食品同士が結着してしまう。その結果、米飯製品の場合、米飯撹拌装置で米粒が割れてしまう、おにぎりの成型機で米粒がつぶれてしまうということが起こる。こういった問題は、生産効率の低下を招き、さらに、できあがった食品も喫食の際に食べ難く、美味しくないという結果を招く。
また、加工食品の廃棄ロス削減や賞味期限延長は社会的な課題となっており、米飯等の穀類加工食品の賞味期限を従来よりも延長するという観点から、老化を抑制し、優れた食感の米飯を提供できる技術の開発が求められている。
【0009】
本発明は、このような要望に応え、現状を打破し、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、炊飯後の米飯を撹拌した際のほぐれ性を向上させることで米粒が割れるのを抑制し、かつ冷蔵保存した後でも米飯の柔らかさを維持した米飯とすることができる米飯用品質改良剤および米飯の品質改良方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は上記課題を解決するため検討した結果、4-α-グルカノトランスフェラーゼ、アラビアガムの2成分を有効成分として用いることで、米飯のほぐれ性を向上させ米粒の割れを抑制し、冷蔵保存した後でも米飯の柔らかさを維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、本発明者らの知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 4-α-グルカノトランスフェラーゼおよびアラビアガムを含有することを特徴とする米飯用品質改良剤である。
<2> 生米100gに対して、4-α-グルカノトランスフェラーゼ50~1,200Uおよびアラビアガム0.2~3gで用いられる前記<1>に記載の米飯用品質改良剤である。
<3> 更にグルコアミラーゼを含有し、その使用量が、生米100gに対して、0U超300U以下である前記<1>または<2>に記載の米飯用品質改良剤である。
<4> 4-α-グルカノトランスフェラーゼおよびアラビアガムを炊飯時または炊飯後の米飯に作用させることを特徴とする米飯の品質改良方法である。
<5> 生米100gに対して、4-α-グルカノトランスフェラーゼ50~1,200Uおよびアラビアガム0.2~3gで用いる前記<4>に記載の方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、炊飯後の米飯を撹拌した際のほぐれ性を向上させることで米粒が割れるのを抑制し、かつ冷蔵保存した後でも米飯の柔らかさを維持した米飯とすることができる米飯用品質改良剤および米飯の品質改良方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、試験例1-1および1-2の切り交ぜ試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(米飯用品質改良剤)
本発明の米飯用品質改良剤は、4-α-グルカノトランスフェラーゼと、アラビアガムとを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
本発明においては、食品及び食品添加物としての使用実績があり食経験が豊富な、4-α-グルカノトランスフェラーゼとアラビアガムの2成分を米飯の品質改良剤の有効成分として使用する。
【0015】
<米飯>
本発明における米飯(「米飯類」と称することもある。)としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、炊飯した白米、赤飯、炊き込みご飯、白米と大麦とを一緒に炊飯して得た麦飯、精米したもち米を炊飯又は蒸して得たおこわ、茶飯、酢飯、栗又は豆等の具材入りご飯等の調理加工米飯が好適に挙げられる。
【0016】
<4-α-グルカノトランスフェラーゼ>
前記4-α-グルカノトランスフェラーゼは、1,4-α-グルカンの一部分を、グルコースまたは1,4-α-D-グルカン等の炭化水素の別の部分に転移させる酵素である。
本発明で使用する4-α-グルカノトランスフェラーゼとしては、食品用途に使用できるもの(グレード)であれば、特に制限はなく、適宜選択することができる。
前記4-α-グルカノトランスフェラーゼは、市販品を適宜使用することができる。
前記4-α-グルカノトランスフェラーゼの前記米飯用品質改良剤における含有量としては、特に制限はなく、その使用量や活性などに応じて適宜選択することができる。
【0017】
<アラビアガム>
前記アラビアガムは、マメ科アラビアゴムノキ(Acacia Senegal Willdenow)又は他同属植物の分泌物を乾燥して得られたもの又はこれを脱塩して得られたものであり、多糖類を主成分とするものである。例えば、Acacia Senegal由来のアラビアガム、Acacia Seyal由来のアラビアガムなどが挙げられ、これらの中でも、Acacia Seyal由来のアラビアガムが好ましい。
本発明で使用するアラビアガムとしては、食品用途に使用できるもの(グレード)であれば、特に制限はなく、適宜選択することができる。
前記アラビアガムは、市販品を適宜使用することができる。
前記アラビアガムの前記米飯用品質改良剤における含有量としては、特に制限はなく、その使用量などに応じて適宜選択することができる。
【0018】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、グルコアミラーゼ、α-アミラーゼ、プロテアーゼ等の酵素;マルトオリゴ糖、マルトトリオース、マルトデキストリン等の食品素材などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。更に、前記米飯用品質改良剤が固形の場合には、澱粉、セルロース、糖類等の賦形剤を、液状の場合には4-α-グルカノトランスフェラーゼ等の酵素の保存安定性のために、アルコール、多価アルコール(グリセリン、プロピレングリコールなど)、糖アルコール(エリトリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど)、水飴やシロップ等の液状の成分を含有させてもよい。
これらの中でも、米飯への品質改良効果を高めるため、グルコアミラーゼを含有させるかまたは併用させることが好ましい。
前記その他の成分の前記米飯用品質改良剤における含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0019】
[グルコアミラーゼ]
前記グルコアミラーゼは、正式名称がグルカン1,4-α-グルコシダーゼといい、糖鎖の非還元末端のα-1,4-結合やα-1,6-結合をエキソ型に加水分解してブドウ糖1分子を産生するアミラーゼである。
本発明で使用するグルコアミラーゼとしては、飲食品用途に使用できるもの(グレード)であれば、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、澱粉を非還元性末端からグルコース(β型)単位で逐次分解を行うエキソ型酵素である、アミログルコシダーゼ、グルクアミラーゼ、S-アミラーゼ、糖化(型)アミラーゼ、澱粉糖化酵素を適宜使用することができる。
前記グルコアミラーゼは、市販品を適宜使用することができる。
前記グルコアミラーゼの前記米飯用品質改良剤における含有量としては、特に制限はなく、その使用量や活性などに応じて適宜選択することができる。
【0020】
前記米飯用品質改良剤は、4-α-グルカノトランスフェラーゼと、アラビアガムと、必要に応じてその他の成分とを同一の包材に含む態様であってもよいし、前記各成分のうち少なくとも1つの成分を異なる包材に入れ、使用前または使用時に各成分を混合して使用する態様であってもよい。また、前記米飯用品質改良剤の形態としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、固形(例えば粉末、顆粒状)、液状またはこれらの組合せが挙げられる。
【0021】
<使用量>
前記米飯用品質改良剤の使用量としては、特に制限はなく、後述する各成分の使用量に応じて、適宜選択することができる。
【0022】
[4-α-グルカノトランスフェラーゼ]
前記4-α-グルカノトランスフェラーゼの使用量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、生米100gに対して、50~1,200U(「U」は活性単位(ユニット)を表す。以下同様)が好ましく、110~800Uがより好ましい。前記4-α-グルカノトランスフェラーゼの使用量が、50U未満であると、米飯に適度な粒感と柔らかさが付与されない可能性があり、1,200Uを超えると米飯が過剰に柔らかく、ほぐれ性および食感を悪化させる可能性がある。
【0023】
本発明において、前記4-α-グルカノトランスフェラーゼの活性単位の定義は、以下の条件下、1分間に反応液2.5mL中に1μmolのグルコースを生成する酵素量を1Uとする。
-条件-
1%マルトテトラオースを含む10mmol/L MES緩衝液(pH6.5)2mLに酵素溶液0.5mLを添加して、40℃で60分間放置する。放置後、沸騰水浴中で5分間加熱した後、流水中で冷却し、生成したグルコースを定量する。
【0024】
[アラビアガム]
前記アラビアガムの使用量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、生米100gに対して、0.2~3gが好ましく、0.3~2.8gがより好ましい。前記アラビアガムの使用量が、0.2g未満であると、米飯に適度なほぐれ性が付与されない可能性があり、3gを超えると米飯が過度にほぐれ成形性が悪くなり、食味が好ましくないものとなる可能性がある。
【0025】
[グルコアミラーゼ]
前記グルコアミラーゼを使用する場合の使用量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、生米100gに対して、0U超300U以下が好ましい。前記グルコアミラーゼの使用量が、前記好ましい範囲内であると、ほぐれ性および食感がより良好である点で、有利である。
【0026】
本発明において、前記グルコアミラーゼの活性単位の定義は、デンプンを基質として、pH4.5、40℃において、30分間に10mgのグルコースを生成する酵素量を1Uとする。
【0027】
(米飯の品質改良方法)
本発明の米飯の品質改良方法は、炊飯時または炊飯後の米飯、好ましくは炊飯時の米飯に、4-α-グルカノトランスフェラーゼと、アラビアガムとを少なくとも作用させ、必要に応じて更にその他の成分を用いる。本発明において、「炊飯時の米飯類に作用させる」とは、炊飯前の生米、すなわち水などの液体に浸漬した状態または浸漬後に水あげした状態の生米に前記品質改良剤を添加し、炊飯時(炊飯の過程)において4-α-グルカノトランスフェラーゼと、アラビアガムとを少なくとも作用させることを意味する。また、本発明において炊飯とは、通常の炊飯器等による加熱の他に、蒸し処理、電子レンジ処理など、通常、米飯の製造に適用される調理手段による処理を意味する。
【0028】
<使用量>
前記米飯の品質改良方法における前記4-α-グルカノトランスフェラーゼおよび前記アラビアガムの使用量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、上記した本発明の(米飯用品質改良剤)の<使用量>の項目に記載した量とすることができる。
【0029】
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、上記した本発明の(米飯用品質改良剤)の<その他の成分>の項目に記載したものなどが挙げられ、その使用量も同様とすることができる。
【0030】
前記米飯の品質改良方法では、上記した本発明の米飯用品質改良剤を好適に用いることができる。
【0031】
本発明の米飯用品質改良剤および米飯の品質改良方法によれば、炊飯後の米飯を撹拌した際のほぐれ性を向上させることで米粒が割れるのを抑制し、かつ冷蔵保存した後でも米飯の柔らかさを維持した米飯とすることができる。
【実施例0032】
以下、試験例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらの試験例に何ら限定されるものではない。
【0033】
(試験例1)
生米300gに、生米に対する加水率が145質量%となる量の水と、生米に対して0.8質量%の炊飯油と、表1に記載の量(生米100gに対する量)の各成分とを添加・混合して炊飯器で炊飯した。
【0034】
<評価>
-ほぐれ性(食感)-
炊飯後の米飯の食感を下記の評価基準により、評価した。なお、評価は10名で行い、最も多かった評価結果を表1に示した。
評価基準
◎(非常に効果あり) : 非常にほぐれ、粒感がある。
○(効果あり) : ほぐれやすく、粒感がある。
△(やや効果あり) : ややほぐれにくく、粒感を感じにくい。
×(効果なし) : ほぐれにくく、粒感がない。
【0035】
-老化(食感)-
炊飯後の米飯を4℃で3日保存した。保存後の米飯18gをレンジアップ(500W、30秒間)し、その米飯の食感を下記の評価基準により、評価した。なお、評価は10名で行い、最も多かった評価結果を表1に示した。
評価基準
◎(非常に効果あり) : 非常に柔らかく、みずみずしさがある。
○(効果あり) : 柔らかく、みずみずしさがある。
△(やや効果あり) : やや硬く、ややパサつき、ぼそつきがある。
×(効果なし) : 硬く、パサつき、ぼそつきがある。
【0036】
【表1】
表1中、「U/100g」は生米100gに対する酵素活性ユニット(U)を示し、「g/100g」は、生米100gに対する量(g)を示す(以下の表2~8中の記載も同様)。
【0037】
表1に示したように、試験例1-1の米飯は、ほぐれ性が良好であり、老化も抑制されていることが確認された。なお、試験例1-4では、釜離れも悪かった。
【0038】
-切り交ぜ試験-
上記評価に加えて、試験例1-1および1-2について、下記の切り交ぜ試験(参考文献:岩井ら、各種処理条件が米飯の「粒立ち」に与える影響、平成29年度大会(一社)日本調理科学会)を行った。
炊飯後の米飯150gをボールに取り、しゃもじを用いて1分間切り交ぜの過攪拌を行った。切り交ぜした米飯2gをシャーレに広げ、割れた粒の数(以下、「割れの数」と称することがある。)と総粒数を目視にて数え、下記式により、割れ率を算出した。
割れ率(%)=割れの数(個)/総粒数(個)×100
「総粒数」とは、割れていない粒の数と割れた粒の数を合計した数のことをいう。なお、割れた粒は、そのもの自体を1粒としてカウントした。例えば、割れていない粒が、2つに割れた場合は、割れた粒の数は2つとなる。
【0039】
切り交ぜ試験の結果、試験例1-2では割れ率が54.5%であったのに対し、試験例1-1では割れ率が22.6%であり、試験例1-1では、試験例1-2と比べて割れ率が顕著に低かった(図1参照)。また、この結果は、上記したほぐれ性の食感の評価結果と相関することも確認された。
【0040】
-老化(物性)-
また、試験例1-1および1-2について、下記の物性評価を行った。
炊飯後の米飯を4℃または20℃で24時間保管した。クリープメーター(RHEONERII CREEP METER RE2-33005C、株式会社山電製)を用い、保管後の米飯について下記の測定条件で荷重を測定し、下記式により対無添加物性変化率を算出した。なお、「無添加の物性変化率」は試験例1-2の物性変化率のこという。老化が進みにくい常温(20℃)で保管した後の米飯の荷重の値に対して、老化が進みやすい冷蔵(4℃)で保管した後の米飯の荷重の値の差が少ないほど老化抑制効果は高いとの評価になるため、対無添加物性変化率の値が小さいほど、老化抑制効果が優れることを示す。
・ 測定条件
・ 1cmプランジャー、20℃、4時間の荷重(歪率40%)
・ 物性変化率(%)=4℃24時間保管後の米飯の荷重の値/20℃24時間保管後の米飯の荷重の値×100
・ 対無添加物性変化率(%)=試験区の物性変化率/無添加の物性変化率×100
【0041】
上記試験の結果、試験例1-1では対無添加物性変化率が79.5%であり、優れた老化抑制効果が確認された。また、この結果は、上記した老化の食感の評価結果と相関することも確認された。
【0042】
(試験例2)
試験例1における表1に記載の各成分を下記の表2に記載の量の各成分に変えた以外は、試験例1と同様にして炊飯米を製造した。また、得られた米飯について、試験例1と同様にしてほぐれ性および老化の食感を評価した。結果を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
-切り交ぜ試験-
上記評価に加えて、試験例2-1、2-2、および2-4について、試験例1と同様にして切り交ぜ試験を行った。
その結果、各試験例の割れ率は、試験例2-1が30.2%、試験例2-2が22.6%、試験例2-4が21.2%であった。
【0045】
-老化(物性)-
また、試験例2-1、2-2、および2-4について、試験例1と同様にして物性評価を行い、対無添加物性変化率を算出した。
その結果、各試験例の対無添加物性変化率は、試験例2-1が75.9%、試験例2-2が79.5%、試験例2-4が84.9%であった。
【0046】
(試験例3)
試験例1における表1に記載の各成分を下記の表3~4に記載の量の各成分に変えた以外は、試験例1と同様にして炊飯米を製造した。また、得られた米飯について、試験例1と同様にしてほぐれ性および老化の食感を評価した。結果を表3~4に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
(試験例4)
試験例1における表1に記載の各成分を下記の表5~6に記載の量の各成分に変えた以外は、試験例1と同様にして炊飯米を製造した。また、得られた米飯について、試験例1と同様にしてほぐれ性および老化の食感を評価した。結果を表5~6に示す。
【0050】
【表5】
【0051】
【表6】
【0052】
試験例4-9は、ほぐれすぎて成形性が悪かった。
【0053】
(試験例5)
試験例1における表1に記載の各成分を下記の表7に記載の量の各成分に変えた以外は、試験例1と同様にして炊飯米を製造した。また、得られた米飯について、試験例1と同様にしてほぐれ性(切り交ぜ試験、食感)および老化(物性、食感)を評価した。結果を表7に示す。
【0054】
【表7】
【0055】
(試験例6)
生米に対して1質量%添加した際に、生米100gに対する各成分の使用量が下記の表8に記載の量となるように調製した製剤を製造した。
炊飯後の米飯に対し、上記で製造した製剤を生米に対する量として1質量%添加、混合した。得られた米飯について、試験例1と同様にしてほぐれ性および老化の食感を評価した。結果を表8に示す。
【0056】
【表8】
【0057】
上記で示したように、本発明によれば、炊飯後の米飯を撹拌した際のほぐれ性を向上させることで米粒が割れるのを抑制し、かつ冷蔵保存した後でも米飯の柔らかさを維持する米飯とすることができることが確認された。
【0058】
なお、上記試験例で用いた成分の詳細は、下記のとおりである。
・ 4-α-グルカノトランスフェラーゼ(グライコトランスフェラーゼ「アマノ」、天野エンザイム株式会社製)
・ アラビアガム(アラビアガムJ、伊那食品工業社製、Acacia Seyal由来)
・ グルコアミラーゼ(デナチームGSA/R、ナガセケムテックス株式会社製)
・ α-グルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼ「アマノ」L、天野エンザイム社製)
・ 耐熱性α-アミラーゼ(クライスターゼE5CC、天野エンザイム社製)
・ α-アミラーゼ(ビオザイムLC、天野エンザイム社製)
・ 6-α-グルカノトランスフェラーゼ(デナチームBBR Light、長瀬産業社製)
図1