(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151092
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】炎症改善剤
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20241017BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20241017BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241017BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20241017BHJP
A61K 31/121 20060101ALI20241017BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20241017BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20241017BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L33/105
A61P29/00
A61K31/12
A61K31/121
A61K36/185
C12N15/09 Z ZNA
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064225
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(71)【出願人】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立花 宏文
(72)【発明者】
【氏名】林 哲全
【テーマコード(参考)】
4B018
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MD07
4B018MD57
4B018ME14
4B018MF01
4C088AB12
4C088BA08
4C088BA32
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZB11
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB12
4C206CB19
(57)【要約】
【課題】新規な炎症改善剤の提供。
【解決手段】本発明によれば、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを有効成分とする、炎症改善剤が提供される。本発明によればまた、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを有効成分とする、IL-6産生抑制剤またはTNF-α産生抑制剤が提供される。本発明は、該有効成分をカカオニブ抽出物の形態で用いる場合は、炎症改善を期待して長期間にわたって継続的に摂取しても副作用の懸念がなく、安全性が高い点において有利である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを有効成分とする、炎症改善剤。
【請求項2】
2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを有効成分とする、IL-6産生抑制剤またはTNF-α産生抑制剤。
【請求項3】
2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンをカカオニブ抽出物の形態で含む、請求項1または2に記載の剤。
【請求項4】
単位包装形態である、請求項1または2に記載の剤。
【請求項5】
ヒト1日当たりの有効摂取量の2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを含む、請求項1または2に記載の剤。
【請求項6】
2-ノナノンのヒト1日当たりの有効摂取量が0.0001mg~2mgであり、および/または、アセトフェノンのヒト1日当たりの有効摂取量が0.01mg~100mgである、請求項5に記載の剤。
【請求項7】
食品添加剤である、請求項1または2に記載の剤。
【請求項8】
食品または医薬品である、請求項1または2に記載の剤。
【請求項9】
炎症改善に用いるための、またはIL-6および/もしくはTNF-αの産生抑制に用いるためのカカオニブ抽出物であって、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを有効成分として少なくとも含む、カカオニブ抽出物。
【請求項10】
カカオニブ抽出物中の2-ノナノンの質量比が0.001以上であり、カカオニブ抽出物中のアセトフェノンの質量比が0.003以上である、請求項9に記載のカカオニブ抽出物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炎症改善剤に関する。本発明はまた、IL-6産生抑制剤およびTNF-α産生抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、通常、患者の病的状態を判断する重要な信号とみなされており、有害な刺激に対する組織の反応として定義されている。炎症は、関節炎、喘息、がん、糖尿病、自己免疫疾患等と関連しており、これらの疾患の主な前兆として認識されている。自然免疫応答の中心的な役割を担うマクロファージは、貪食作用、殺菌性の活性酸素、窒素中間体の生成およびサイトカインの産生に関与する。刺激されたマクロファージによって産生される炎症性サイトカインには、インターロイキン6(IL-6:interleukin 6)やTNF-α(tumor necrosis factor α)等が含まれる。これまでにIL-6やTNF-αの産生を抑制するための医薬品等が開発されてきたが、近年もこれらの産生の抑制に有効な成分が見出されている(特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-008435号公報
【特許文献2】国際公開2019/208701号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な炎症改善剤を提供することを目的とする。本発明はまた、新規なIL-6産生抑制剤およびTNF-α産生抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは今般、カカオニブ抽出物によりIL-6およびTNF-αの産生が抑制されることを見出した。本発明者らはまた、2-ノナノンおよびアセトフェノンによりIL-6およびTNF-αの産生がそれぞれ抑制されることを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0006】
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを有効成分とする、炎症改善用組成物または炎症改善剤。
[2]2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを有効成分とする、IL-6産生抑制用組成物もしくはIL-6産生抑制剤またはTNF-α産生抑制用組成物もしくはTNF-α産生抑制剤。
[3]2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンをカカオニブ抽出物の形態で含む、上記[1]または[2]に記載の組成物または剤。
[4]単位包装形態である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の組成物または剤。
[5]ヒト1日当たりの有効摂取量の2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載の組成物または剤。
[6]2-ノナノンのヒト1日当たりの有効摂取量が0.0001mg~2mgであり、および/または、アセトフェノンのヒト1日当たりの有効摂取量が0.01mg~100mgである、上記[5]に記載の組成物または剤。
[7]食品添加剤である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の組成物または剤。
[8]食品または医薬品である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の組成物または剤。
[9]炎症改善に用いるための、またはIL-6および/もしくはTNF-αの産生抑制に用いるためのカカオニブ抽出物であって、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを有効成分として少なくとも含む、カカオニブ抽出物。
[10]カカオニブ抽出物中の2-ノナノンの質量比が0.001以上であり、カカオニブ抽出物中のアセトフェノンの質量比が0.003以上である、上記[9]に記載のカカオニブ抽出物。
【0007】
上記[1]および[2]の組成物を本明細書において「本発明の組成物」と、上記[1]および[2]の剤を本明細書において「本発明の剤」とそれぞれいうことがある。
【0008】
本発明によれば、有効成分である2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンをカカオニブ抽出物の形態で用いる場合は、長期間にわたって継続的に摂取して副作用の懸念がなく、安全性が高い、炎症改善剤ならびにIL-6産生抑制剤およびTNF-α産生抑制剤が提供できる点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、各カカオニブ抽出物で処理した場合のIL-6産生量(
図1A)およびTNF-α産生量(
図1B)を示す(各試験区n=3、数値は平均値±標準誤差、
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001)。図中のCacaoは「カカオニブ抽出物」、LPSは「リポ多糖(Lipopolysaccharide)」、BRAは「ブラジル産カカオ由来」、PERは「ペルー産カカオ由来」、VENは「ベネズエラ産カカオ由来」、-は「処理なし」、+は「処理あり」をそれぞれ示す。
【
図2】
図2は、各カカオニブ抽出物で処理した場合のIL-6発現量(
図2A)およびTNF-α発現量(
図2B)を、β-アクチンに対する相対発現量として示す(各試験区n=3、数値は平均値±標準誤差、
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001)。図中のCacaoは「カカオニブ抽出物」、LPSは「リポ多糖」、BRAは「ブラジル産カカオ由来」、PERは「ペルー産カカオ由来」、VENは「ベネズエラ産カカオ由来」、-は「処理なし」、+は「処理あり」をそれぞれ示す。
【
図3】
図3は、表4に示す各香気成分で処理した場合のIL-6発現量(
図3A)およびTNF-α発現量(
図3B)を、β-アクチンに対する相対発現量として示す(各試験区n=3、数値は平均値±標準誤差、
**P<0.01、
***P<0.001)。図中のFlavorは「香気成分」、LPSは「リポ多糖」をそれぞれ示す。
【発明の具体的説明】
【0010】
本発明の組成物および剤は、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを有効成分とするものである。
【0011】
本発明において、2-ノナノンおよびアセトフェノンは、カカオの植物体またはその加工品から単離、抽出(粗抽出を含む)または精製(粗精製を含む)したものを使用することができる。ここで、カカオの植物体またはその加工品から抽出したものを使用する場合、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンが含まれるカカオ抽出物(好ましくはカカオニブ抽出物)を使用することができる。すなわち、カカオ抽出物(好ましくはカカオニブ抽出物)の形態で2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを有効成分とすることができる。本発明において、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンはまた、化学合成法によって調製したもの、あるいは市販品を使用することもできる。
【0012】
2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを効率よく対象に投与ないし摂取させるためには、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを高濃度で含む組成物(例えば、カカオ抽出物(好ましくはカカオニブ抽出物))を本発明に用いることができる。
【0013】
本発明において、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンが含まれる原料や、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを含有する加工品となりうるカカオの植物体またはその加工品としては、カカオ樹皮、カカオ葉、カカオ豆、カカオニブ、カカオシェル、カカオマス、脱脂カカオマス、ココアパウダー等、植物体の各種部位またはカカオ豆加工品を挙げることができる。カカオマスは、カカオ豆を磨砕したものであり、脱脂カカオマスは、カカオマスから油脂を除去することにより得ることができる。油脂の除去方法は特に制限されず、圧搾等の公知の方法に従って行うことができる。脱脂カカオマスを粉砕すればココアパウダーとなる。また、カカオの植物体またはその加工品を原料として2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンの抽出を行う場合は、抽出効率の観点から、磨砕、粉砕等の微粒化処理が施されているカカオニブ、カカオマスおよびココアパウダーを用いるのが好ましい。なお、本発明においては、カカオの植物体には、意図してないしは意図せずに、カカオの植物体以外の物も含めることができる。また、カカオの植物体またはその加工品を原料として抽出を行う際にも、意図してないしは意図せずに、カカオの植物体以外の物も含めることができる。さらに、カカオマスまたはココアパウダーにも、意図してないしは意図せずに、カカオの植物体以外の物も含めることができる。
【0014】
カカオの植物体またはその加工品を原料とするカカオニブ抽出物の抽出方法は公知であり、例えば、特開2009-183229号公報や特開2011-93807号公報、特開平11-308978号公報の記載のカカオポリフェノールの調製と同様にカカオニブ抽出物を調製することができる。抽出溶媒は、特に限定されるものではないが、水、熱水またはアルコール(エタノール等)を用いることができ、塩酸等を添加した酸性条件下で抽出を行ってもよい。また、カカオの植物体またはその加工品を原料とする2-ノナノンおよびアセトフェノンの精製方法は、合成吸着剤、イオン交換樹脂、限外ろ過、活性白土処理等の公知の方法を使用することができ、特に限定されるものではない。
【0015】
本発明の組成物および剤において、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを高濃度で含有する組成物としてカカオニブ抽出物を使用する場合は、該カカオニブ抽出物中の2-ノナノンの質量比が、0.001以上、0.0011以上、0.0012以上、0.0013以上、0.0014以上、0.0015以上または0.0016以上であるものを使用することができ、該カカオニブ中のアセトフェノンの質量比が、0.003以上、0.0035以上、0.004以上、0.0045以上、0.005以上、0.0055以上または0.006以上であるものを使用することができる。
【0016】
本発明の組成物および剤は、2-ノナノンおよび/もしくはアセトフェノンまたはそれらを含むカカオ抽出物(好ましくはカカオニブ抽出物)のままで提供することができ、あるいは、2-ノナノンおよび/もしくはアセトフェノンまたはそれらを含むカカオ抽出物(好ましくはカカオニブ抽出物)と他の成分とを混合して提供することもできる。本発明の組成物および剤における2-ノナノンまたはアセトフェノンの含有量は、その目的、用途、形態、剤型、症状、体重等に応じて任意に定めることができ、本発明はこれに限定されないが、その含有量(固形分換算)は全体量に対して以下のように定めることができる。すなわち、本発明の組成物および剤における2-ノナノンまたはアセトフェノンの含有量の下限値は0.5質量%とすることができ、好ましくは1質量%、より好ましくは2質量%、3質量%、4質量%または5質量%である。また、上記含有量の上限値は100質量%とすることができ、好ましくは99質量%、より好ましくは90質量%、80質量%、70質量%または60質量%である。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記含有量の範囲は、例えば、0.5~100質量%(好ましくは1~99質量%、より好ましくは2~90質量%または5~60質量%)とすることができる。
【0017】
本発明の組成物および剤中の2-ノナノンおよびアセトフェノンの含有量は、ガスクロマトグラフィーー質量分析(GC/MS)法により測定することができる。
【0018】
本発明の組成物および剤の有効成分である2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンは、IL-6および/またはTNF-αの産生を抑制する作用を有する。すなわち、本発明の組成物および剤は、IL-6および/またはTNF-αの産生を抑制するために用いられる。また、後記実施例で示すように、LPSにより炎症反応を誘発すると、IL-6およびTNF-αが上昇することを確認しており、これらは炎症性サイトカインとして炎症状態の指標となるものである(Navarro-Gonzalez J, et al., Int J Immunopathol Pharmacol., 2010; 23(1): 51-59.、Kalogeropoulos A, et al., J Am Coll Cardiol., 2010; 55(19): 2129-2137.)。したがって、本発明の組成物および剤は、炎症改善に用いることができる。
【0019】
本発明において、「炎症改善」とは、炎症状態を軽減または緩和することを意味し、炎症の悪化を抑制することも含む。炎症状態の改善は、対象から採取した生体試料(例えば、血液)中のIL-6および/またはTNF-αの量または濃度を指標に評価することができる。具体的には、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンの摂取後の対象のIL-6および/またはTNF-αの量または濃度が、該対象の摂取前と比較して下回る場合に、あるいは、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンの摂取後の対象のIL-6および/またはTNF-αの量または濃度が、該対象の摂取前と比較して、例えば、約0.9倍以下である場合に、より好ましくは約0.85倍以下である場合に、より一層好ましくは約0.8倍以下、さらに好ましくは約0.75倍以下、特に好ましくは約0.70倍以下、さらに特に好ましくは約0.65倍以下、約0.6倍以下または約0.5倍以下である場合に、炎症が改善したと評価することができる。
【0020】
IL-6およびTNF-αの量または濃度は、公知の方法により測定することができ、それらの測定方法としては、例えば、抗体やアプタマーを利用したイムノアッセイとして、エンザイムイムノアッセイ(ELISAやEIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)、化学発光イムノアッセイ、質量分析法(例えば、LC/MS、TOF-MS、LC-MS/MS)、ウエスタンブロット等が挙げられ、迅速かつ簡便な検出の観点からELISAおよびEIAが好ましい。
【0021】
また、IL-6およびTNF-αの量または濃度は、それらの遺伝子の発現量、すなわちRNAの量または濃度として測定することもでき、RNAの量または濃度の測定方法としては、例えば、次世代シーケンサーを利用したRNA-seq、定量的PCR(RT-qPCR)、デジタルPCR、マイクロアレイ、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法等が挙げられるが、迅速かつ簡便な検出の観点からRT-qPCRおよびデジタルPCRが好ましい。
【0022】
本発明において炎症を改善する対象並びにIL-6およびTNF-αの産生を抑制する対象は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ等の愛玩動物、ウシ、ウマ等の家畜)が挙げられ、好ましくはヒトである。
【0023】
本発明の組成物および剤は、医薬品および医薬部外品(例えば、医薬組成物)、食品(例えば、食品組成物)、飼料(例えば、ペットフード)等の形態で提供することができ、後記の記載に従い、実施することができる。
【0024】
本発明の有効成分である2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンは、ヒトおよび非ヒト哺乳動物に経口投与することができる。経口剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤が挙げられる。これらの製剤は、当分野で通常行われている手法により、薬学上許容される担体を用いて製剤化することができる。薬学上許容される担体としては、賦形剤、結合剤、希釈剤、添加剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられる。
【0025】
本発明の有効成分である2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを食品として提供する場合には、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンをそのまま食品に含有させることができ、該食品は2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを有効量含有した食品である。ここで、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを「有効量含有した」とは、個々の食品において通常喫食される量を摂取した場合に後述するような範囲で2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンが摂取されるような含有量をいう。また「食品」とは、健康食品、機能性食品、保健機能食品(例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)、特別用途食品(例えば、幼児用食品、妊産婦用食品、病者用食品)およびサプリメントを含む意味で用いられる。
【0026】
「食品」の形態や形状は特に限定されるものではなく、日常摂取する食品やサプリメントであっても、飲料の形態であっても、半液体やゲル状の形態であっても、固形状の形態であってもよいが、例えば、カカオ豆を主原料とする食品が挙げられ、好ましくは油脂加工組成物であり、より好ましくはチョコレート等の油脂加工食品である。また、本発明の有効成分またはカカオニブを含む半固形状の組成物とすることで、咀嚼や嚥下の機能が低下し、経口摂取ないしは経口投与ができないヒトおよび非ヒト哺乳動物に対しても摂取させることができる。
【0027】
前記の通り、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを効率よく摂取させるためには2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを本発明に直接使用することができ、あるいは2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを高濃度で含む組成物(例えば、カカオニブ抽出物)を本発明に使用することができる。したがって、カカオ豆を主原料とする食品およびサプリメントは、例えば、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを高濃度で含むものであることが好ましく、より好ましくは2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを高濃度で含む油脂加工組成物であり、さらに好ましくは2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを高濃度で含むチョコレートである。2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを高濃度で含む油脂加工組成物(特に、チョコレート)は、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノン含有量が高いカカオ由来原料(例えば、カカオニブ、カカオマス、脱脂カカオマス、ココアパウダー、カカオ豆粉砕品)および/またはカカオ抽出物(好ましくはカカオニブ抽出物)を原料として使用することにより製造することができる。本発明において、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを高濃度で含有する、いわゆる高カカオチョコレートを本発明の組成物および剤として用いることができ、高カカオチョコレートの原料にカカオニブ抽出物を使用する場合は、例えば、カカオニブの熱水抽出によりカカオニブ中の含有量として100~1000ppmで得られるカカオニブ抽出物(カカオニブ抽出物中の2-ノナノンの質量比が0.001以上、および/または、カカオニブ抽出物中のアセトフェノンの質量比が0.003以上)を使用することができ、かつ、該チョコレート中のカカオ含有量が55質量%以上(好ましくは70質量%以上)とすることができる。
【0028】
ここで、食品およびサプリメント中の2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンの含有量は2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンの摂取が可能である限り特に限定されるものではないが、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンの効率的な摂取の観点から、チョコレート等の油脂加工組成物中の含有量は組成物の固形分当たり、例えば、2-ノナノンは0.1~99質量%(好ましくは0.5~70質量%、より好ましくは0.8~60質量%、さらに好ましくは1~50質量%、特に好ましくは2~5質量%)とすることができ、アセトフェノンは0.01~99質量%(好ましくは0.1~90質量%、より好ましくは0.5~70質量%、さらに好ましくは0.8~60質量%、さらにより好ましくは1~50質量%、特に好ましくは2~5質量%)とすることができる。
【0029】
本発明で提供される食品としては、チョコレートのようにカカオ豆を主原料とする食品等の油脂加工食品が挙げられる。ここで、油脂加工食品は、カカオニブ、カカオマス、ココアパウダー、ココアバター、油脂等を使用して加工した油脂性菓子を含む意味で用いられる。本発明でいう油脂性菓子とは、日本国公正取引委員会認定のルールであるチョコレート類の表示に関する公正競争規約でいうチョコレート、準チョコレート、チョコレート製品に限定されるものでなく、前記ルールに該当しないテンパータイプ、ノンテンパータイプのファットクリームや、カカオ代用脂を使用したチョコレート等、あらゆる種類の油脂性菓子を含む意味で用いられる。本発明において、油脂性菓子の調製は、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノン(あるいは2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを含むカカオ抽出物(好ましくはカカオニブ抽出物))を配合すること以外は、常法に従って行うことができる。例えば、油脂性菓子の原料を混合した後、ロールミルによるレファイニング(微細化)工程、コンチング工程、必要に応じてテンパリング工程、成型工程、エージング工程等を経て本発明の油脂性菓子を製造することができる。
【0030】
本発明で提供される食品は、有効成分である2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを含有させることができる食品であれば、油脂加工食品に特に限定されない。例えば、パン類、ビスケット類、麺類、クラッカー、栄養補給バー等の澱粉系食品;キャンディー類、ガム類、グミ、スナック等の各種菓子類;牛乳、加工乳、アイスクリーム類、発酵乳(ヨーグルト等)、乳飲料、チーズ類、バター類、クリーム類等の乳および乳製品;プリン、ゼリー、ババロア、ムース等のデザート類;非アルコール飲料、アルコール飲料等の飲料類;ハム、ソーセージ等の畜肉加工品;カマボコ、竹輪、魚肉ソーセージ等の魚肉加工品;ジャム、ピューレ等の果実加工品;ルウ、ソース等の調味料類等が挙げられる。2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンは、各食品の特性、目的に応じ、適当な製造工程の段階で適宜配合することができる。
【0031】
本発明の医薬品および食品は、それを必要とする哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル等)に摂取させ、または投与することができる。2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンの摂取量または投与量は、受容者の性別、年齢および体重、症状、投与時間、剤形、投与経路並びに組み合わせる薬剤等に依存して決定できる。
【0032】
例えば、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを食品として経口摂取させる場合、例えば、ヒト1日当たり(固形分換算)、2-ノナノンを0.0001mg~2mg(好ましくは0.001mg~0.2mg、より好ましくは0.005mg~0.1mg、さらに好ましくは0.01mg~0.05mg)、アセトフェノンを0.01mg~100mg(好ましくは0.1mg~10mg、より好ましくは0.2mg~5mg、さらに好ましくは0.5mg~2mg)の範囲となるようにして摂取させることができる。また、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンはカカオマスの形態で経口摂取させてもよく、この場合、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンが上記の量で摂取されるようにカカオマスを経口摂取させることができ、例えば、成人1日当たり(固形分換算)、カカオマスを0.01g~500g(好ましくは0.1g~250g、より好ましくは0.5g~100g、さらに好ましくは1g~50g)の範囲となるようにして摂取させることができる。本発明においては、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンをチョコレート等の油脂加工食品の形態で経口摂取させてもよく、この場合、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンが上記の量で摂取されるように油脂加工食品を経口摂取させることができ、例えば、チョコレート中に2-ノナノン0.00025質量%(2.5ppm)以上および/またはアセトフェノン0.0125質量%(125ppm)以上含み、かつ、カカオ分70質量%以上であるものを、成人1日当たり4~40g(好ましくは20~30g)を摂取させることができる。上記のいずれの場合において、なお、上記の本発明の有効成分である2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンの摂取量ならびに下記摂取期間等は、本発明の組成物および剤ならびに本発明のカカオニブ抽出物を非治療目的および治療目的のいずれで使用する場合にも適用があり、治療目的の場合には摂取は投与に読み替えることができる。
【0033】
本発明の組成物および剤は、他の経口摂取できる組成物や剤と併用することに制限はない。本発明の組成物および剤は、例えば、炎症改善効果が期待できる素材や組成物と併用することで、炎症改善効果をさらに高めることができる。このような素材や組成物としては、例えば、カカオポリフェノール(カカオマス、ココア、チョコレート等)が挙げられる。
【0034】
本発明の組成物および剤は、炎症改善に有効な1日分の摂取量の2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを含む組成物および剤で提供することができる。この場合、本発明の組成物および剤は、1日分の有効摂取量を摂取できるように包装されていてもよく、1日分の有効摂取量が摂取できる限り、その形態は特に限定されない。
【0035】
典型的には本発明の組成物および剤は単位摂取形態で提供することができ、摂取対象は、1個または複数個の単位摂取形態を摂取することで1日分の有効摂取量を摂取することができる。ここで「単位摂取形態」とは、1回分の摂取に適した、所定量の有効成分を含む形態をいい、ブロック状、板状、スティック状、錠剤、カプセル等に加工された形態や、包装形態が挙げられる。例えば、2-ノナノンの1日分の有効摂取量(摂取目安量)を0.02mgとし、単位摂取形態として0.004mgの2-ノナノンを含む板状のチョコレート製品を想定すると、摂取対象は1日当たり5枚の該チョコレート製品を摂取することが推奨される。また、例えば、アセトフェノンの1日分の有効摂取量(摂取目安量)を1mgとし、単位摂取形態として0.2mgのアセトフェノンを含む板状のチョコレート製品を想定すると、摂取対象は1日当たり5枚の該チョコレート製品を摂取することが推奨される。
【0036】
本発明の組成物および剤を単位摂取形態で提供する場合、1日分の有効摂取量が摂取できるように摂取量に関する情報を一緒に提供することが望ましい。また、1日分の有効摂取量を複数の単位摂取形態で提供する場合には、摂取の便宜上、1日分の有効摂取量に対応する複数の単位摂取形態をセットで提供することもでき、さらには複数日分の有効摂取量に対応する複数の単位摂取形態をセットで提供することもできる。例えば、上記のチョコレート製品の例では、5日分の有効摂取量に相当する25枚の板状のチョコレート製品(個包装されていてもよい)を1セット(容器包装されていてもよい)で提供することができる。
【0037】
本発明の組成物および剤を包装形態で提供する場合、1日分の有効摂取量が摂取できるように摂取量に関する記載が包装になされているか、または当該記載がなされた文書を一緒に提供することが望ましい。また、1日分の有効摂取量を複数包装で提供する場合には、摂取の便宜上、1日分の有効摂取量の複数包装をセットで提供することもできる。
【0038】
本発明の組成物および剤を提供するための包装形態は一定量を規定する形態であれば特に限定されず、例えば、包装紙、袋、パウチ、ソフトバック、紙容器、缶、ボトル、カプセル等の収容可能な容器等が挙げられる。
【0039】
本発明の組成物および剤はその効果をよりよく発揮させるために、少なくとも1週間以上継続的に摂取させることができ、好ましくは2週間以上、より好ましくは3週間以上、さらに好ましくは4週間以上、さらにより好ましくは1ヶ月以上の継続的な摂取である。ここで、「継続的に」とは、毎日投与あるいは少なくとも2日に1回の投与を続けることを意味する。本発明の組成物および剤を包装形態で提供する場合には、継続的摂取のために一定期間(例えば、1週間)の有効摂取量をセットで提供してもよい。
【0040】
本発明の食品には、炎症改善に関する表示が付されてもよい。この場合、消費者に理解しやすい表示とするため本発明の食品には、例えば、以下の一部または全部の表示が付されてもよい。
・炎症の進行を緩やかにする
・慢性炎症をケアする
・抗炎症ケア
【0041】
本発明の別の側面によれば、炎症改善またはIL-6および/もしくはTNF-α産生抑制に用いるためのカカオニブ抽出物が提供される。本発明のカカオニブ抽出物は、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを有効成分として少なくとも含むものである。
【0042】
本発明のカカオニブ抽出物は、炎症改善またはIL-6および/もしくはTNF-α産生抑制の作用を効果的に発揮させる観点から、該カカオニブ抽出物中の2-ノナノンの質量比が、0.001以上、0.0011以上、0.0012以上、0.0013以上、0.0014以上、0.0015以上、0.0016以上を含むものであり、該カカオニブ抽出物中のアセトフェノンの質量比が、0.003以上、0.0035以上、0.004以上、0.0045以上、0.005以上、0.0055以上、0.006以上を含むものとすることができる。本発明のカカオニブ抽出物は、上記に加え、本発明の組成物および剤に関する記載に従って実施することができる。
【0043】
本発明の別の面によればまた、有効量の2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンあるいは2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを含む組成物(カカオニブ抽出物を含む)を、それを必要とする対象(例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳動物)に摂取させるか、あるいは投与することを含む、炎症改善方法あるいはIL-6および/またはTNF-αの産生抑制方法が提供される。本発明の炎症改善方法ならびにIL-6および/またはTNF-αの産生抑制方法は、本発明の組成物および剤に関する記載に従って実施することができる。
【0044】
本発明の別の面によればまた、炎症改善剤あるいはIL-6および/またはTNF-αの産生抑制剤の製造のための、炎症改善剤あるいはIL-6および/またはTNF-αの産生抑制剤としての、あるいは、炎症改善方法あるいはIL-6および/またはTNF-αの産生抑制方法における、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンあるいは2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを含む組成物(カカオニブ抽出物)の使用が提供される。本発明の使用は、本発明の組成物および剤ならびに本発明の方法に関する記載に従って実施することができる。
【0045】
本発明の別の面によればまた、炎症改善またはIL-6および/もしくはTNF-αの産生抑制に用いるための、2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンあるいは2-ノナノンおよび/またはアセトフェノンを含む組成物が提供される。これらの発明は、本発明の組成物および剤に関する記載に従って実施することができる。
【0046】
本発明の方法および使用はヒトを含む哺乳動物における使用であってもよく、治療的使用と非治療的使用のいずれもが意図される。本明細書において、「非治療的」とはヒトを手術、治療または診断する行為(すなわち、ヒトに対する医療行為)を含まないことを意味し、具体的には、医師または医師の指示を受けた者がヒトに対して手術、治療または診断を行う方法を含まないことを意味する。
【実施例0047】
以下の例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0048】
例1:カカオニブ抽出物による炎症改善効果の検討
例1では、カカオニブ抽出物による炎症改善効果を検討した。
【0049】
(1)方法
ア カカオニブ抽出物
カカオニブ抽出物は、液体窒素で凍結したカカオニブ100kgを水蒸気蒸留法にて100℃で抽出した香気成分とその残渣カカオニブから水100kgで抽出したエキスとからなる混合物を使用した。また、カカオニブは、ブラジル産カカオ由来、ペルー産カカオ由来およびベネズエラ産カカオ由来のものをそれぞれ使用した。
【0050】
イ 細胞
細胞は、マウスマクロファージ様細胞であるRAW264.7を使用し、10%ウシ胎児血清(FBS:fetal bovine serum)(Gibco)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM:Dulbecco’s modified Eagle’s medium)にて37℃、水蒸気飽和状態、5%CO2条件下にて培養、継代した。
【0051】
ウ ELISA
RAW264.7細胞をカカオニブ抽出物(5ppm)で1時間処理し、続いてLPS(50nM)で24時間処理した。そして、培養上清中のIL-6およびTNF-αをQuantikine enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) kits(R&D Systems,Inc.)を用いて測定した。
【0052】
エ リアルタイムPCR
RAW264.7細胞を24ウェルプレートに播種し、24時間の前培養後、カカオニブ抽出物(5ppm)で1時間処理し、続いてLPS(50nM)で24時間処理した。TRI reagent(Molecular Research Center, Inc.)のプロトコルに従ってトータルRNAを細胞から抽出した。回収したRNAを鋳型にcDNA(complementary DNA)をPrimeScript RT reagent Kit(Takara Bio Inc.)を用いて合成し、Il-6遺伝子およびTnf-α遺伝子の発現量をリアルタイムPCRにより測定した。内部標準としてβ-アクチンを使用した。表1はプライマーの塩基配列、表2はPCR条件をそれぞれ示す。
【0053】
【0054】
【0055】
オ 統計解析
統計解析はGraphPad Prismを用いてダネットの検定(Dunnett’s test)を行った。
【0056】
(2)結果
結果は、
図1および
図2に示す通りであった。
図1のELISAの結果では、LPSで処理した場合は、LPSで処理しない場合と比較して、IL-6(
図1A)およびTNF-α(
図1B)の産生量がいずれも有意に増加した。そして、LPSで処理した細胞のうち、ベネズエラ産のカカオニブ抽出物で処理した細胞は、カカオ抽出物で処理しなかった細胞と比較して、IL-6(
図1A)およびTNF-α(
図1B)の産生量がいずれも有意に抑制された。
【0057】
図2のリアルタイムPCRの結果では、LPSで処理した場合は、LPSで処理しない場合と比較して、Il-6(
図2A)およびTnf-α(
図2B)の発現量がいずれも有意に増加した。そして、LPSで処理した細胞のうち、ベネズエラ産のカカオニブ抽出物で処理した細胞は、カカオ抽出物で処理しなかった細胞と比較して、Il-6の発現量が有意に抑制されるとともに(
図2A)、Tnf-αの発現量が抑制される傾向にあることが確認された(
図2B)。これらの結果から、ベネズエラ産のカカオニブ抽出物は炎症抑制作用を有することが示された。
【0058】
また、各カカオニブ抽出物に含まれる香気成分をGC/MSで分析した結果を表3に示す。
【0059】
【0060】
例2:各香気成分についての炎症改善効果の検討
例2では、例1で使用したカカオニブ抽出物のうちベネズエラ産に含まれる割合の高かった香気成分11種を含む、各香気成分の炎症改善効果を検討した。
【0061】
(1)方法
ア 香気成分
表4に示す各香気成分を使用した。
【0062】
【0063】
イ 細胞
例1(1)イに記載の細胞と同様の細胞を使用し、同様に培養、継代した。
【0064】
ウ リアルタイムPCR
カカオニブ抽出物(5ppm)に代えて表4に示す各香気成分(1ppm)を使用したこと以外は、例(1)エの記載と同様にして、リアルタイムPCRを行った。
【0065】
エ 統計解析
例(1)オの記載と同様にして、統計解析を行った。
【0066】
(2)結果
結果は、
図3に示す通りであった。
図3Aでは、LPSで処理した細胞(LPS:+)のうち、2-ノナノン(No.4)およびアセトフェノン(No.6)で処理した細胞は、対照の細胞(LPS処理あり(LPS:+)、香気成分処理なし(Flavor:-))と比較して、IL-6が有意に抑制されることが確認された。また、
図3Bでは、LPSで処理した細胞(LPS:+)のうち、2-ノナノン(No.4)およびアセトフェノン(No.6)で処理した細胞は、対照の細胞(LPS処理あり(LPS:+)、香気成分処理なし(Flavor:-))と比較して、TNF-αが抑制傾向にあることが確認された。これらの結果から、2-ノナノンおよびアセトフェノンは炎症改善作用を有することが示された。