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特開2024-151126主蒸気管又は再熱蒸気管の化学洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151126
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】主蒸気管又は再熱蒸気管の化学洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/52 20060101AFI20241017BHJP
   F16L 55/18 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
F22B37/52 B
F16L55/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064272
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】財津 昭則
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆信
(57)【要約】
【課題】厚肉の主蒸気管又は再熱蒸気管を切断したり穴あけにより洗浄用座を設けたりすることなく、主蒸気管又は再熱蒸気管を効率よく十分に主蒸気管又は再熱蒸気管を洗浄することができる化学洗浄方法を提供する。
【解決手段】過熱器又は再熱器に連通する主蒸気管又は再熱蒸気管内を化学洗浄液を用いて化学洗浄する方法において、過熱器又は再熱器の出口管寄近傍において、過熱器又は再熱器を切断し、該出口管寄に連なる切断残り部分に対し仮設循環配管の一端を接続し、 該主蒸気管又は再熱蒸気管の蒸気止弁に通液用部材を設置し、該通液用部材に前記仮設循環配管の他端を接続し、該仮設循環配管に仮設循環ポンプを設置し、洗浄液を主蒸気管又は再熱蒸気管に循環させて主蒸気管又は再熱蒸気管を洗浄することを特徴とする主蒸気管又は再熱蒸気管の化学洗浄方法。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過熱器又は再熱器に連通する主蒸気管又は再熱蒸気管内を化学洗浄液を用いて化学洗浄する方法において、
過熱器又は再熱器の出口管寄近傍において、過熱器又は再熱器を切断し、該出口管寄に連なる切断残り部分に対し仮設循環配管の一端を接続し、
該主蒸気管又は再熱蒸気管の蒸気止弁に通液用部材を設置し、該通液用部材に前記仮設循環配管の他端を接続し、
該仮設循環配管に仮設循環ポンプを設置し、洗浄液を主蒸気管又は再熱蒸気管に循環させて主蒸気管又は再熱蒸気管を洗浄することを特徴とする主蒸気管又は再熱蒸気管の化学洗浄方法。
【請求項2】
前記通液用部材はシールプラグである請求項1の主蒸気管又は再熱蒸気管の化学洗浄方法。
【請求項3】
前記シールプラグは、前記蒸気止弁の内部に固定される部品であって、
第1の固定手段によって前記蒸気止弁内に固定される第1の洗浄管と、第2の洗浄管を含んでT字状を成すとともに第2の固定手段によって前記蒸気止弁内に固定されるT管と、該T管と前記第1の洗浄管とを連結する連結手段によって構成され、
前記第2の固定手段は、前記蒸気止弁内にマグネットによって固定されるベースプレートと、前記T管に螺合挿通されたボルトを含んで構成され、該ボルトの端部を前記蒸気止弁内に固定されたベースプレートに押し付けることによって前記T管を前記蒸気止弁内に固定するシールプラグである、
請求項2の主蒸気管又は再熱蒸気管の化学洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄液の循環による洗浄を終了した後、水洗水を前記主蒸気管又は再熱蒸気管内に供給して水洗する水洗工程を行い、
該水洗工程後、切断された過熱器又は再熱器を前記切断残り部分に溶接することを特徴とする請求項1~3のいずれかの主蒸気管又は再熱蒸気管の化学洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電ボイラ等の主蒸気管又は再熱蒸気管の内面を、化学洗浄液を用いて化学洗浄する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電ボイラの蒸気系の一例を図5に示す。図5において、バーナ1により火炉2で燃料を燃焼させることにより発生した蒸気は、汽水分離器3、ボイラ蒸気連絡管4、過熱器5、主蒸気管6を通って高圧タービン7に供給される。そして、高圧タービン7で仕事をした蒸気は、低温再熱蒸気管8を通って再熱器9に送られて加熱され、高温再熱蒸気管10を通って中圧タービン11及び低圧タービン12に供給されて仕事を行う。低圧タービン12で仕事をした蒸気は復水器13で復水された後、脱気管14、ボイラ給水ポンプ15を通って再び火炉2に戻される。
【0003】
主蒸気管6には、高圧蒸気タービン7への過熱蒸気の供給をON/OFFするための主蒸気止弁6Vが設けられている。高温再熱蒸気管10には、中圧蒸気タービン11への過熱蒸気の供給を制御するための再熱蒸気止弁10Vが設けられている。
【0004】
このような火力発電ボイラの蒸気系において、主蒸気管6又は再熱蒸気管10の内面には、長年の運転に伴って水蒸気酸化スケールが成長し、ある厚さになると一部が剥離・飛散してタービン損傷等のトラブルの原因となる。そのため、これらのスケールを化学洗浄により溶解除去することが行われている。
【0005】
主蒸気管や再熱蒸気管の上流には過熱器や再熱器があるが、この過熱器や再熱器には、洗浄液を流入させることは避けられなければならない。その理由は、過熱器や再熱器は水平部やU字部を有しており、これらの水平部やU字部からは洗浄液の排出が困難であることや、未溶解スラッジがU字部に堆積し排出出来ないためである。
【0006】
従来、主蒸気管や再熱蒸気管の化学洗浄方法としては、過熱器管又は再熱器管(以下「非洗浄域」という)に化学洗浄液が流入してその健全性を損ねることを避けるため、主蒸気管を切断し、仮設配管を接続して主蒸気管のみに化学洗浄液を通液する方法がある(特開昭64-23096号公報、特許文献1)。
【0007】
しかしながら、このような従来の化学洗浄方法では、口径が大きく管肉厚が厚い主蒸気管や再熱蒸気管を化学洗浄に先立ち切断し、また、洗浄後にはこれを復旧する工事を行うため、この切断・復旧に多大な労力と費用及び工期を必要とする。
【0008】
特開2004-278861(特許文献2)には、大口径で厚肉の主蒸気管又は再熱蒸気管を切断することなく、非洗浄域への化学洗浄液の流入を防止して機器の健全性を確保しつつ、安価に且つ効率的に洗浄を行うことができる主蒸気管又は再熱蒸気管の化学洗浄方法として、過熱器管又は再熱器管に連通する主蒸気管又は再熱蒸気管内を化学洗浄液を用いて化学洗浄する方法において、前記主蒸気管又は再熱蒸気管の蒸気流通方向最上流側に位置する上下方向配管の上部に洗浄用座をあけ、該洗浄用座に液面計を取り付ける工程と、前記洗浄用座から前記主蒸気管又は再熱蒸気管内に化学洗浄液を供給する工程とを含み、前記液面計によって前記主蒸気管又は再熱蒸気管内の化学洗浄液の液位を監視し、前記過熱器管又は再熱器管への化学洗浄液の流入を防止する方法が記載されている。
【0009】
洗浄用座を用いた化学洗浄方法は特開2013-170762(特許文献3)にも記載されている。
【0010】
この特許文献2,3の方法では、厚肉の主蒸気管又は再熱蒸気管に洗浄用座をあける必要がある。また、洗浄終了後には、洗浄座を溶接により閉塞する作業が必要である。
【0011】
ところで、蒸気管には過熱蒸気のタービンへの供給を制御するための主蒸気止弁(MSV)や再熱蒸気止弁(RSV)等の蒸気止弁が設けられており、これらの蒸気止弁にはシール部材としてシールリングが使用されている。このシールリングは、蒸気管の化学洗浄に際して使用される化学洗浄液との接触を避ける必要がある部品である。このため、従来、蒸気管の化学洗浄に際しては、蒸気止弁からシールリングを一旦取り外し、仮設の閉止板(仮設治具)を取り付け、蒸気止弁の上蓋には循環用のノズルを取り付けた仮設弁蓋を取り付け、蒸気タービン入口にはヘキサプラグを挿入し、化学洗浄中に仮設の閉止板からリークする洗浄液は蒸気止弁を抜いた箇所に設置したドレン回収ポッド(仮設ドレンポッド)で回収するようにしてから、洗浄を行い、洗浄が終了した後に、仮設の閉止板、仮設弁蓋、ヘキサプラグ、ドレン回収ポッドを取り外し、シールリングを蒸気止弁に再度組み込んで復旧するという作業を行っていた。
【0012】
特開2009-229017(特許文献4)には、蒸気止弁からシールリングを取り外すことなく、低コストで蒸気管を洗浄することができるシールプラグが記載されている。
【0013】
図6は、このシールプラグの一部破断側面図である。このシールプラグ20は、第1の洗浄管である出口管21とT管22とを連結手段であるユニオン継手23によって連結することによって構成されている。
【0014】
上記出口管21の端部外周には、当該出口管21を主蒸気止弁6Vの内部に固定するための第1の固定手段24が設けられている。この第1の固定手段24は、出口管21の端部外周に挿通保持されたリング状のゴム等の弾性体25と、出口管21の端部外周に摺動可能に挿通保持されて前記弾性体25を両側から挟持するリング状の金属プレート26,27と、これらの金属プレート26,27と前記弾性体25を貫通する複数のボルト28と、ボルト28の端部に螺合する長尺のナット29によって構成されている。
【0015】
又、前記T管22は、前記出口管21に対して直角方向に向いた第2の洗浄管である入口管22Aと前記出口管22Aと同方向に向いた水平管22BとでT字状を成しており、水平管22Bの一端は前記ユニオン継手23によって出口管21に連結される。又、T管22の水平管22Bの他端には、当該T管22を主蒸気止弁4の内部に固定するための第2の固定手段30が設けられている。
【0016】
上記第2の固定手段30は、図7の通り、主蒸気止弁6Vの内部にマグネット31によって固定されるベースプレート32と、T管22の水平管22Bの端部に結着された円板状のフランジ33に進退可能に螺合挿通する複数のボルト34を含んで構成されており、各ボルト34の先端には傾動可能なレベリングフット35がそれぞれ取り付けられている。又、前記ベースプレート32の中心にはボルト36とナット37によって前記マグネット31が取り付けられており、ベースプレート32の外周部には複数のボルト38が進退可能に螺合挿通している。そして、各ボルト38の先端には傾動可能なレベリングフット39がそれぞれ取り付けられている。
【0017】
以上のように構成されたシールプラグ20は、主蒸気管6の洗浄に際して図7,8に示すように主蒸気止弁6Vの内部に挿入固定され、その出口管21に主蒸気管6が接続され、T管22の入口管22Aに洗浄配管が接続される。主蒸気管6と洗浄配管とで構成される循環経路に洗浄液を循環させ、主蒸気管6の内面に形成された水蒸気酸化スケールを洗浄液によって溶解除去する。この場合、主蒸気止弁6Vの内部においては、図7に矢印にて示すように、洗浄液はシールプラグ20を通過して流れ、主蒸気止弁6Vの内部に組み付けられたシールリングSRに接触することがない。
【0018】
従って、主蒸気管6の洗浄に際して主蒸気止弁6Vからシールリングを取り外す必要がなく、シールリングを取り付けたまま主蒸気管6の洗浄を行うことができる。図7の符号6a、6bは主蒸気止弁6Vの開口部、6は内周面を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開昭64-23096号公報
【特許文献2】特開2004-278861号公報
【特許文献3】特開2013-170762号公報
【特許文献4】特開2009-229017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、厚肉の主蒸気管又は再熱蒸気管を切断したり穴あけにより洗浄用座を設けたりすることなく、主蒸気管又は再熱蒸気管を効率よく十分に主蒸気管又は再熱蒸気管を洗浄することができる化学洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の主蒸気管又は再熱蒸気管の化学洗浄方法は、過熱器又は再熱器に連通する主蒸気管又は再熱蒸気管内を化学洗浄液を用いて化学洗浄する方法において、過熱器又は再熱器の出口管寄近傍において、過熱器又は再熱器を切断し、該出口管寄に連なる切断残り部分に対し仮設循環配管の一端を接続し、該主蒸気管又は再熱蒸気管の蒸気止弁に通液用部材を設置し、該通液用部材に前記仮設循環配管の他端を接続し、該仮設循環配管に仮設循環ポンプを設置し、洗浄液を主蒸気管又は再熱蒸気管に循環させて主蒸気管又は再熱蒸気管を洗浄する。
【0022】
本発明の一態様では、前記通液用部材はシールプラグである。このシールプラグは、好ましくは、前記蒸気止弁の内部に固定される部品であって、第1の固定手段によって前記蒸気止弁内に固定される第1の洗浄管と、第2の洗浄管を含んでT字状を成すとともに第2の固定手段によって前記蒸気止弁内に固定されるT管と、該T管と前記第1の洗浄管とを連結する連結手段によって構成され、前記第2の固定手段は、前記蒸気止弁内にマグネットによって固定されるベースプレートと、前記T管に螺合挿通されたボルトを含んで構成され、該ボルトの端部を前記蒸気止弁内に固定されたベースプレートに押し付けることによって前記T管を前記蒸気止弁内に固定するシールプラグである。
【0023】
本発明の一態様では、前記洗浄液の循環による洗浄を終了した後、水洗水を前記主蒸気管又は再熱蒸気管内に供給して水洗する水洗工程を行い、該水洗工程後、切断された過熱器又は再熱器を前記切断残り部分に溶接する。
【0024】
なお、本発明において、化学洗浄液としては、洗浄対象とする管内の汚染物の洗浄性に優れたものを用いることができ、例えば、主蒸気管を対象とする場合は、洗浄対象物が酸化鉄を主体とするいわゆる水蒸気酸化スケールであるため、クエン酸、グリコール酸、ギ酸、又はこれらの混合物、エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤、クエン酸アンモニウム等を用いるのが一般的である。化学洗浄液は、予め所定の濃度に調整したものを準備しても良いが、高濃度の薬液を調製しておき、使用時に水で所定濃度になるように希釈して用いるのが一般的である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の主蒸気管又は再熱蒸気管の化学洗浄方法では、厚肉の主蒸気管又は再熱蒸気管を切断したり穴あけ加工したりすることなく主蒸気管又は再熱蒸気管を十分に化学洗浄することができる。
【0026】
本発明によると、主蒸気管又は再熱蒸気管だけでなく、スケール付着により洗浄必要性があるものの洗浄工事の制約等により、従来は非洗浄部とされた出口管寄も、その水平部も含めて洗浄(スケール除去)することが可能となる。出口管寄とその水平部は配管の長さにより洗浄配管全体の30%にも及びこともあり、その部分を洗浄できる効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施の形態を説明するための、ボイラの蒸気フロー図である。
図2図1の一部の拡大図である。
図3】過熱器又は再熱器の切断工程の説明図である。
図4】実施の形態における洗浄工程の説明図である。
図5】ボイラの蒸気系の系統図である。
図6】従来例(特許文献4)の説明図である。
図7】従来例(特許文献4)の説明図である。
図8】従来例(特許文献4)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に図面を参照して本発明の主蒸気管又は再熱蒸気管の化学洗浄方法の実施の形態を説明する。
【0029】
図1は、本発明による主蒸気管又は再熱蒸気管の化学洗浄方法の実施の形態が適用されるボイラの蒸気フローを模式的に示す図、図2図1の過熱器又は再熱器付近を拡大して示す模式的な正面図である。
【0030】
この実施の形態においては、前記図5と同様に、火炉2で燃料を燃焼させることにより発生した蒸気は、汽水分離器3、ボイラ蒸気連絡管4、過熱器5、主蒸気管6を通って高圧タービン7に供給される。そして、高圧タービン7で仕事をした蒸気は、低温再熱蒸気管8を通って再熱器9に送られて加熱され、高温再熱蒸気管10を通って中圧タービン11及び低圧タービン12に供給されて仕事を行う。低圧タービン12で仕事をした蒸気は復水され、火炉2に戻される。この実施の形態では、主蒸気管6及び高温再熱蒸気管10はそれぞれ2本ずつ設けられている。
【0031】
過熱器5又は再熱器9の一端側は入口管寄5a又は9aに接続されており、他端側は出口管寄5b又は9bに接続されている。
【0032】
なお、図1,2に示すように、主蒸気管6及び再熱蒸気管10には、図示のように、略上下方向に延在する部分と、略水平方向に延在する部分とがある。また、過熱器5及び再熱器9にも、略上下方向の部分や略水平方向の部分、あるいはU字状の部分が存在する。出口管寄5b又は9bの少なくとも一部は、略水平方向に延在している。
【0033】
主蒸気管6及び再熱蒸気管10には主蒸気止弁6V、高温再熱蒸気止弁10Vが設けられている。
【0034】
主蒸気管6又は再熱蒸気管10を化学洗浄するには、図3のように、過熱器5又は再熱器9を出口管寄5b又は9bの直近付近で切断する。過熱器5又は再熱器9の出口管寄5b又は9bの直近付近は、略上下方向に延在している。主蒸気管6又は再熱蒸気管10は切断せず、また洗浄座をあけない。
【0035】
また、図4のように、蒸気止弁6V又は10Vにそれぞれ、通液用部材として、図6~8に示した特許文献4のシールプラグ20を装着しておく。
【0036】
次いで、出口管寄5b又は9bに連なっている過熱器又は再熱器の切断残り部分Pに対し、仮設の洗浄配管51の一端を接続する。洗浄配管51の他端側は、洗浄配管52,53に分岐しており、洗浄配管52,53の先端を主蒸気管6又は高温再熱蒸気管10の蒸気止弁6V又は10Vのシールプラグ20のT管22に接続する。
【0037】
洗浄配管51には仮設循環ポンプ55が設けられている。また、図示は省略するが、洗浄配管51には、洗浄液の注液配管と、洗浄座液の排出配管とが接続され、該注液配管及び排出配管にはそれぞれバルブが設けられている。
【0038】
該注液配管から洗浄液を洗浄配管51へ供給し、出口管寄5b又は9bから主蒸気管6又は再熱蒸気管10を洗浄液で満たした後、ポンプ55を作動させて洗浄液を循環させ、主蒸気管6又は再熱蒸気管10を化学洗浄する。
【0039】
化学洗浄後は、洗浄廃液を排出配管から排出する。次いで、注液配管から清浄水を注入し、主蒸気管又は再熱蒸気管を水洗し、水洗排水を排出配管から排出する。
【0040】
その後、洗浄配管51~53(循環配管)及び仮設循環ポンプ55を撤去し、出口管寄5bに連なる切断残り部分Pに対し過熱器5又は再熱器9を溶接により接合する。過熱器5又は再熱器9は小径であるので、溶接は容易である。また、蒸気止弁6V又は10Vのシールプラグを撤去し、蒸気止弁6V又は10Vを復旧させる。
【0041】
このように、この実施の形態によると、主蒸気管6又は再熱蒸気管10を切断することなく、化学洗浄することができる。また、主蒸気管6又は再熱蒸気管10だけでなく、スケール付着により洗浄必要性があるものの洗浄工事の制約等により、従来は非洗浄部とされた出口管寄5b又は9bも、その水平部も含めて洗浄(スケール除去)することが可能となる。
【0042】
上記実施の形態は、本発明の一例であり、本発明は上記以外の態様とされてもよい。例えば、上記実施の形態では、通液用部材としてシールプラグを用いて作業を行っているが、蒸気止弁からシールリングを一旦取り外し、仮設の閉止板(仮設治具)を取り付け、蒸気止弁の上蓋には循環用のノズルを取り付けた仮設弁蓋を取り付け、この仮設弁蓋に洗浄配管を接続し、蒸気タービン入口にはヘキサプラグを挿入し、化学洗浄中に仮設の閉止板からリークする洗浄液は蒸気止弁を抜いた箇所に設置したドレン回収ポッド(仮設ドレンポッド)で回収するようにしてから、洗浄を行い、洗浄が終了した後に、仮設の閉止板、仮設弁蓋、ヘキサプラグ、ドレン回収ポッドを取り外し、シールリングを蒸気止弁に再度組み込んで復旧するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
2 火炉
5 過熱器
5b 出口管寄
6 主蒸気管
6V 主蒸気止弁
7 高圧タービン
9 再熱器
9b 出口管寄
10 高温再熱蒸気管
10V 再熱蒸気止弁
11 中圧タービン
20 シールプラグ
21 シールプラグの出口管
22 シールプラグのT管
51~53 洗浄配管(循環配管)
55 仮設循環ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8