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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151153
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】現像装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/113 20060101AFI20241017BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
G03G9/113 361
G03G9/113 352
G03G15/08 390B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064303
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健都
(72)【発明者】
【氏名】長山 将志
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 亨
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智美
【テーマコード(参考)】
2H077
2H500
【Fターム(参考)】
2H077AB02
2H077AB14
2H077AC02
2H077AC16
2H077AD02
2H077AD06
2H077AD18
2H077AD24
2H077AE06
2H077BA08
2H077CA11
2H077EA03
2H077FA12
2H077FA19
2H077GA03
2H077GA04
2H500AB04
2H500AB05
2H500CA04
2H500CA16
2H500CB07
2H500CB08
2H500CB09
2H500CB10
2H500CB18
2H500FA04
(57)【要約】
【課題】長期印刷下において現像装置外へのトナー飛散を抑制でき、安定した画像品質を維持できる現像装置の提供。
【解決手段】磁性キャリア及びトナーを含む2成分現像剤と、現像スリーブと、前記2成分現像剤及び前記現像スリーブを収容するケースと、前記ケースの内側に装着されたエアフィルタと、を備える現像装置であって、前記ケース内に吸引され前記エアフィルタを通じて排出される気流が形成され、前記エアフィルタは、厚さ2~20mm且つ風速10cm/sの圧力損失が2~40Paであり、前記磁性キャリアは、磁性粒子と、前記磁性粒子の表面を被覆する被覆層を含み、前記被覆層は、樹脂及びアンチモン含有粒子を含む現像装置。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性キャリア及びトナーを含む2成分現像剤と、
現像スリーブと、
前記2成分現像剤及び前記現像スリーブを収容するケースと、
前記ケースの内側に装着されたエアフィルタと、
を備える現像装置であって、
前記ケース内に吸引され前記エアフィルタを通じて排出される気流が形成され、
前記エアフィルタは、厚さ2~20mm且つ風速10cm/sの圧力損失が2~40Paであり、
前記磁性キャリアは、磁性粒子と、前記磁性粒子の表面を被覆する被覆層を含み、
前記被覆層は、樹脂及びアンチモン含有粒子を含むことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記気流は、前記現像スリーブと前記ケースとの隙間から前記ケース内に吸引される、請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記エアフィルタは、前記気流の上流側から下流側に向かって厚さ方向に疎から密となる密度勾配を有する、請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記アンチモン含有粒子は、アンチモンをドープした酸化スズを含有する、請求項1に記載の現像装置。
【請求項5】
前記アンチモン含有粒子に含有されるアンチモンは五酸化二アンチモンである、請求項1に記載の現像装置。
【請求項6】
前記アンチモン含有粒子の基体粒子は無機微粒子である、請求項4又は5に記載の現像装置。
【請求項7】
前記基体粒子は酸化アルミニウムである、請求項6に記載の現像装置。
【請求項8】
前記被覆層は、前記アンチモン含有粒子以外の無機微粒子を含む、請求項7に記載の現像装置。
【請求項9】
前記アンチモン含有粒子以外の無機微粒子は白色である、請求項8に記載の現像装置。
【請求項10】
前記アンチモン含有粒子以外の無機微粒子は硫酸バリウムを含有する、請求項8に記載の現像装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント速度の高速化が相まって、キャリアにはトナーへのより速い帯電付与能力が強く要求されている。
長期の印刷で劣化したトナーがキャリアの表面に付着するトナースペントによりキャリアの電気抵抗が変動し、トナーがキャリアと十分に摩擦帯電されず、現像装置外にトナーが堆積してしまうトナー飛散や印刷媒体において印刷しない部分にトナーが現像されてしまう地汚れが問題となっている。
【0003】
トナー飛散の改善として、キャリアの帯電能力を向上させる方法や現像装置の構成によりトナー飛散を抑制する方法がとられている。
例えば、特許文献1には、キャリアの樹脂層に帯電性微粒子を添加することで、数万枚印刷した状況においてもキャリアの帯電付与能力を安定させ、トナー飛散を抑制することが記載されている
特許文献2には、圧力損失の異なる複数のエアフィルタを一体とすることによってエアフィルタの早期目詰まりを防止することが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、キャリアの樹脂層に帯電性微粒子を添加することで、数万枚印刷した状況においてもキャリアの帯電付与能力を安定させることが記載されている。しかし、長期印刷下でキャリア表面をトナーが覆うトナースペントが生じた場合、帯電性微粒子の機能が発揮されずキャリアの帯電が低下し、トナー飛散が生じやすい。
特許文献2では、圧力損失の異なるエアフィルタを一体化させて用いることでエアフィルタの目詰まりを改善させることが記載されている。しかし、キャリアがトナーを保持しきれず一度にトナーが飛散してしまった場合、エアフィルタ表面で目詰まりを起こしてしまい、エアフィルタの機能が損なわれるおそれがある。
【0005】
本発明の一実施の形態の目的は、長期印刷下において現像装置外へのトナー飛散を抑制でき、安定した画像品質を維持できる現像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一実施の形態は、
磁性キャリア及びトナーを含む2成分現像剤と、
現像スリーブと、
前記2成分現像剤及び前記現像スリーブを収容するケースと、
前記ケースの内側に装着されたエアフィルタと、
を備える現像装置であって、
前記ケース内に吸引され前記エアフィルタを通じて排出される気流が形成され、
前記エアフィルタは、厚さ2~20mm且つ風速10cm/sの圧力損失が2~40Paであり、
前記磁性キャリアは、磁性粒子と、前記磁性粒子の表面を被覆する被覆層を含み、
前記被覆層は、樹脂及びアンチモン含有粒子を含む現像装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施の一形態によれば、長期印刷下において現像装置外へのトナー飛散を抑制でき、安定した画像品質を維持できる現像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る現像装置を適用した画像形成装置の一例を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る現像装置の横断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る現像装置を適用した画像形成装置の一例における作像部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
本発明は、
磁性キャリア及びトナーを含む2成分現像剤と、
現像スリーブと、
前記2成分現像剤及び前記現像スリーブを収容するケースと、
前記ケースの内側に装着されたエアフィルタと、
を備える現像装置であって、
前記ケース内に吸引され前記エアフィルタを通じて排出される気流が形成され、
前記エアフィルタは、厚さ2~20mm且つ風速10cm/sの圧力損失が2~40Paであり、
前記磁性キャリアは、磁性粒子と、前記磁性粒子の表面を被覆する被覆層を含み、
前記被覆層は、樹脂及びアンチモン含有粒子を含む現像装置である。
【0011】
本発明の現像装置であれば、長期印刷下において現像装置外へのトナー飛散を抑制でき、安定した画像品質を維持することができる。
【0012】
<現像スリーブ>
前記現像スリーブは磁力を発するものであり、現像スリーブ自体が磁力を発してもよいし、マグネットローラを内包することによって磁力を発してもよい。
前記現像スリーブは、静電潜像担持体に対向する部分を除き、前記ケースに収容されており、前記ケースには、磁性キャリア及びトナーを含む2成分現像剤が収容されている。
前記現像スリーブが発する磁力によって、2成分現像剤に含まれるトナーは磁性キャリアと共に現像スリーブに吸着されて磁気ブラシが形成され、静電潜像担持体に前記磁気ブラシを摺擦させることで、静電潜像担持体の表面に形成された静電潜像が現像され、トナー像が形成される。
【0013】
<ケース>
本発明の現像装置において、前記ケースは、磁性キャリア及びトナーを含む2成分現像剤と現像スリーブを収容する。
本発明の現像装置においては、前記ケース内に吸引され前記エアフィルタを通じて排出される気流が形成される。前記気流は、前記現像スリーブと前記ケースとの隙間から前記ケース内に吸引されることが好ましい。
前記現像スリーブと前記ケースとの間に隙間が存在することで、現像スリーブに2成分現像剤を載せて静電潜像担持体にトナーを移動させて現像させることができ、現像後に2成分現像剤をケースに戻すことができる。現像において、現像スリーブに載せられた2成分現像剤は前記ケースの外側に移動するため、前記ケースと前記現像スリーブの間の隙間やその周辺において、磁性キャリアから離れたトナーが飛散しやすい。
前記現像スリーブと前記ケースの隙間から前記ケース内に吸引される気流(吸引気流)が通ることによって、現像装置外に飛散しそうなトナーをケース内に戻すことでき、現像装置外へのトナー飛散を大幅に減らすことができる。
前記ケース内から排出される気流(排出気流)が前記エアフィルタを通じて排出されることによって、前記排出気流によるケース内からのトナー飛散を抑えることができる。
前記吸引気流及び前記排出気流は、前記現像装置が適用された画像形成装置にファンを設置することによって形成させることが好ましい。また、ケース内に吸引された空気が排出される穴にチューブとポンプを取り付けて空気が排出されるようにすることで、前記吸引気流及び前記排出気流を形成させてもよい。
【0014】
<エアフィルタ>
前記エアフィルタは、厚さ2~20mm且つ風速10cm/sの圧力損失が2~40Paであるエアフィルタである。
また、前記エアフィルタは前記ケースの内側に装着されている。前記排出気流は、前記ケースの内側に装着された前記エアフィルタを通じて排出されることで、前記排出気流によるケース内からのトナー飛散を抑えることができる。前記エアフィルタは、前記ケース内に吸引された空気が排出される部分に装着されることが好ましい。
【0015】
前記エアフィルタは、気流の上流側から下流側(排出側)に向かって厚さ方向に密度勾配を有することが好ましい。前記エアフィルタが厚さ方向に密度勾配を有し、気流の上流側から下流側に向かってエアフィルタの目が細かくなる向きでケースの内側に装着されることにより、よりトナーを詰まりにくくし、エアフィルタの効果を長期間維持できるようにすることができる。
【0016】
前記エアフィルタは、厚さ2~20mmである。前記エアフィルタの厚さが2mm未満であると、エアフィルタが薄すぎるためトナーが漏れやすくなり、トナーが飛散しやすくなってしまう。前記エアフィルタの厚さが20mmより厚いと、エアフィルタにトナーが詰まりやすくなり、エアフィルタから空気が排出されにくくなってケースと現像スリーブの隙間からの吸引気流を維持しにくくなり、現像装置から飛散しそうなトナーを現像装置内に戻しにくくなってしまう。
【0017】
前記エアフィルタの風速10cm/sの圧力損失は、2~40Paであり、5~30Paであることが好ましい。圧力損失が2Pa未満だと、エアフィルタの目が粗くなり、エアフィルタからトナーが漏れやすくなる。40Paより大きいと、エアフィルタの目が細かくなりすぎて、トナーが詰まりやすく、早期にエアフィルタから空気が排出されなくなり、ケースと現像スリーブの隙間からの吸引気流を維持しにくくなってしまう。
【0018】
前記エアフィルタは上記構成であることで、飛散したトナーを前記ケース内部に戻すことができ、トナーを捕集しても目詰まりしにくく、エアフィルタとしての機能を長期的に維持することができる。
【0019】
<2成分現像剤>
前記2成分現像剤は、磁性キャリア及びトナーを含み、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。
前記磁性キャリアと前記トナーについては、以下に詳しく説明する。
【0020】
<<磁性キャリア>>
前記磁性キャリアは、芯材粒子となる磁性粒子と、前記磁性粒子の表面を被覆する被覆層を含み、前記被覆層は、樹脂及びアンチモン含有粒子を含む。アンチモンは導電性に優れるため、前記被覆層に前記アンチモン含有粒子が含まれると、前記磁性キャリアに高い導電性を付与することが可能となる。
なお、本明細書において、アンチモン化合物を「アンチモン」と称することがある。
前記磁性キャリアは、必要に応じて、更にその他の成分を含有してもよい。
【0021】
前記磁性キャリアを前記エアフィルタと組み合わせることにより、エアフィルタに一度に大量のトナーが飛散することを抑制することができるため、エアフィルタの目詰まりが生じにくくなり、エアフィルタの機能を長期間維持できるようになる。
【0022】
<<<磁性粒子>>>
前記磁性キャリアの芯材粒子は磁性粒子であり、前記磁性粒子は、前記被覆層に被覆されている。
前記磁性粒子として使用できる芯材粒子としては、磁性を有する芯材粒子であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、鉄、コバルト等の強磁性金属、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の酸化鉄、各種合金、化合物等の磁性体を樹脂中に分散させた樹脂粒子などが挙げられる。これらの中でも環境面への配慮の点からフェライトが好ましい。
【0023】
前記フェライトとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Mnフェライト、Mn-Mgフェライト、Mn-Mg-Srフェライトなどが挙げられる。これらの中でも、比較的磁化が高いため磁性キャリア1粒あたりの磁気モーメントを最適化しやすく、磁性キャリア付着とゴースト画像の発生をより防止することができる点から、Mnフェライトが好ましい。
【0024】
前記磁性粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm以上100μm以下が好ましく、30μm以上50μm以下がより好ましい。
【0025】
前記磁性粒子のBET比表面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01m/g~0.50m/gが好ましく、0.03m/g~0.35m/gがより好ましく、0.05m/g~0.25m/gが特に好ましい。
【0026】
前記磁性粒子の見掛け密度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2.1g/cm以上2.6g/cm以下が好ましく、2.2g/cm以上2.5g/cm以下がより好ましい。前記見掛け密度が2.1g/cm以上2.6g/cm以下であると、見掛け密度が2.0g/cm以上2.5g/cm以下である磁性キャリアを得ることができる。
【0027】
前記磁性粒子の見掛け密度の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記磁性キャリアの見掛け密度の測定と同様にJIS-Z2504に準拠して測定することができる。
【0028】
前記磁性キャリアの体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20μm以上100μm以下が好ましく、精細な画像形成に対してより好適に用いることができる点から20μm以上60μm以下がより好ましい。前記体積平均粒径が20μm以上であると、キャリア付着を抑えやすく、100μm以下であると、画像の細部の再現性が低下せずにより精細な画像を形成することができる。
【0029】
前記体積平均粒径の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マイクロトラック粒度分布計(モデルHRA9320―X100)、SRAタイプ(日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
【0030】
<<<被覆層>>>
前記磁性キャリアの芯材粒子となる磁性粒子の表面は被覆層で被覆されており、前記被覆層は、樹脂及びアンチモン含有粒子を含み、必要に応じてその他の成分を含むことができる。
【0031】
-アンチモン含有粒子-
前記アンチモン含有粒子におけるアンチモンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、五酸化二アンチモン、三酸化二アンチモンなどが挙げられる。これらの中でも、優れた帯電安定性が得られ、トナー飛散やキャリア付着発生を防止することができ、安全性も高いことから、五酸化二アンチモンが好ましい。
【0032】
前記被覆層における前記アンチモン含有粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記被覆層100質量部に対して、20質量部以上60質量部以下が好ましく、30質量部以上50質量部以下がより好ましい。前記含有量が20質量部以上60質量部以下であると、アンチモン含有粒子の前記被覆層からの脱離や前記被覆層の削れによる各種微粒子の露出を抑えることができ、キャリア付着を抑制することができる。また、前記被覆層における前記アンチモン含有粒子の含有量が上記範囲内であると、前記被覆層において樹脂による被覆面積を増やすことができ、トナーを帯電させた際に、磁性キャリア表面に適度なカウンターチャージを残すことができる。これにより一度に大量のトナーが飛散することを抑制することができ、前記エアフィルタの寿命をさらに伸ばすことができる。
【0033】
また前記アンチモン含有粒子はアンチモンをドープした酸化スズを含有することが好ましく、さらに前記アンチモン含有粒子の基体粒子は無機微粒子であることが好ましい。
前記アンチモンをドープした酸化スズによって、前記アンチモン含有粒子の基体粒子となる前記無機微粒子(以下、無機微粒子Aという)が表面処理されている。これにより前記磁性キャリアの前記被覆層中で前記アンチモン含有粒子が崩れて破片となっても前記被覆層から離脱しにくいため、前記磁性キャリアの電気抵抗の低下を抑制することができる。
【0034】
前記アンチモン含有粒子の基体粒子の表面処理の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、塩化第二スズ及び三塩化アンチモンの塩酸溶液と、水酸化ナトリウム溶液とを、アルミナを分散させた基体粉末懸濁液に並行添加し、pHを調整した後にデカンテーションにて洗浄及びろ過し、乾燥、焼成、及び粉砕することによって、表面処理をすることができる。
【0035】
前記無機微粒子Aとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、金、銀、銅、シリカ、アルミニウム等の金属微粒子、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化カルシウム、ITO、酸化シリコーン、コロイダルシリカ、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化鉄、酸化マンガン、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化セレン、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、ハ二酸化ケイ素、窒化硼素、窒化珪素、チタン酸カリウム、ハイドロタルサイト、アンチモンやタングステンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウムなどが挙げられる。これらの中でも、酸化アルミニウム、及び酸化チタンが好ましく、より優れた帯電安定性が得られ、キャリア付着の発生をより防止することができる点から、酸化アルミニウムがより好ましい。
【0036】
前記アンチモン含有粒子の平均円相当径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、500nm以上1,000nm以下が好ましい。前記アンチモン含有粒子の平均円相当径が500nm以上であると、前記磁性キャリアの抵抗値を効率良く下げやすく、1,000nm以下であると、前記被覆層の表面からの前記アンチモン含有粒子の脱離が発生しにくくなる。
【0037】
前記アンチモン含有粒子の円相当径の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記磁性キャリアの製造前であれば、ナノトラックUPAシリーズ(日機装株式会社製)を用いて測定することができる。前記磁性キャリアの製造後であれば、FIBにて前記磁性キャリアの被覆層を切断して断面をSEM、EDXなどで観察することで確認をすることができる。
具体的には、例えば、前記磁性キャリアを包埋樹脂(Devcon社製、2液混合、30分硬化型エポキシ樹脂)に混ぜ込み、一晩以上置いて硬化させ、機械研磨により大まかな磁性キャリアの断面試料を作製する。作製した前記断面試料にクロスセクションポリッシャー(JEOL製、SM-09010)を用いて、加速電圧5.0kV、ビーム電流120μAの条件で前記磁性キャリア断面の仕上げを行う。仕上げを行った前記断面のうち、被覆層の断面を、走査型電子顕微鏡(Carl Zeiss製、Merlin)を用いて、加速電圧0.8kV、倍率30,000倍の条件で撮影する。撮影した画像をTIFF画像に取り込み、Media Cybernetics社製のImage-Pro Plusを用いて、アンチモン含有粒子100個の円相当径を測定し、その平均値を算出することで、アンチモン含有粒子の平均円相当径を測定することができる。
【0038】
なお、前記アンチモン含有粒子の平均円相当径の確認方法はこれに限られるものではない。また、前記被覆層の平均厚さについても同様に撮影した画像から計測することが可能である。ただし、粒子には粒子毎の個体差、被覆層の厚さには場所による厚さのばらつきが存在することから、1粒に対して1箇所だけの測定に留まらず、統計的に問題のないn数の計測を行なう。なお、被覆層の厚さについては、樹脂部の厚さを測定して、その平均値から求めることができる。なお、前記アンチモン含有粒子及びアンチモン含有粒子以外の無機微粒子上の樹脂部からなる前記被覆層の厚みは測定には含めない。
【0039】
前記アンチモン含有粒子の導電性(以下、「体積抵抗値」と称することがある)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5Ω・cm以上4.0Ω・cm以下が好ましい。前記導電性が4.0Ω・cm以下であると、前記アンチモン含有粒子の被覆層における含有量が少量であっても前記磁性キャリアに高い導電性を付与することができ、前記導電性が0.5Ω・cm以上であると、高い導電性と耐久性との両立がしやすくなる。
【0040】
-樹脂-
前記被覆層に含まれる樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、アミノ樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、被覆層の耐久性をより高くできる点から、シリコーン樹脂、及びアクリル樹脂が好ましく、シリコーン樹脂及びアクリル樹脂を併用することがより好ましい。
【0041】
前記アクリル樹脂は、接着性が高く脆性が低いので耐摩耗性に優れた性質を有するが、表面エネルギーが高いため、スペントが起こりやすいトナーとの組み合わせではトナーのスペントが蓄積することによる帯電量の低下などが生じる場合がある。
一方で、前記シリコーン樹脂は、接着性が低く脆性が高く耐摩耗性が低い。このため、アクリル樹脂及びシリコーン樹脂を併用することで、前記アクリル樹脂及び前記シリコーン樹脂の性質を得ることができ、トナーのスペントが起こりにくく、優れた耐摩耗性を有する被覆層を含む磁性キャリアを得ることができる。
また、前記シリコーン樹脂は表面エネルギーが低いものが好ましい。前記アクリル樹脂とともに使用するシリコーン樹脂として、表面エネルギーが低いシリコーン樹脂を併用することで、トナー成分のスペントがより起こりにくくなる。
【0042】
前記アクリル樹脂としては、アクリル成分を有する樹脂であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記アクリル樹脂単体で用いてもよいし、架橋反応する他成分を少なくとも1つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
前記架橋反応する他成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ樹脂、酸性触媒などが挙げられる。
【0044】
前記アミノ樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グアナミン、メラミン樹脂などが挙げられる。
【0045】
前記酸性触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、完全アルキル化型、メチロール基型、イミノ基型、メチロール基又はイミノ基型等の反応性基を有するものが挙げられる。
【0046】
前記シリコーン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキド、ポリエステル、エポキシ、アクリル、ウレタン等で変性した変性シリコーン樹脂、オルガノシロキサン結合のみからなるストレートシリコーン樹脂などが挙げられる。
【0047】
前記変性シリコーン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、信越化学株式会社製のKR206(アルキド変性)、KR5208(アクリル変性)、ES1001N(エポキシ変性)、KR305(ウレタン変性)、東レ・ダウコーニング・シリコン社製のSR2115(エポキシ変性)、SR2110(アルキド変性)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記ストレートシリコーン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、信越化学株式会社製のKR271、KR255、KR152、東レ・ダウコーニング・シリコン社製のSR2400、SR2406、SR2410などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
前記シリコーン樹脂は、架橋反応する他成分、帯電量調整成分等を組み合わせて用いることも可能である。
【0050】
前記被覆層に含まれる樹脂は、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、及びこれらを併用して使用する場合のいずれかにおいて、シラノール基を縮重合触媒によって縮合することで架橋させることにより、膜強度を高くすることができる。
【0051】
前記縮重合触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チタン系触媒、スズ系触媒、ジルコニウム系触媒、アルミニウム系触媒などが挙げられる。これらの中でも、チタン系触媒が好ましい。
【0052】
前記チタン系触媒としては、シラノール基の縮合反応を促進する効果が大きく、且つ触媒が失活しにくい観点から、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0053】
-カップリング剤-
前記被覆層はカップリング剤を含むことが好ましい。前記カップリング剤は、前記被覆層中に含有することができ、これにより磁性キャリアの基体粒子、好ましくは前記無機微粒子A及び後述する無機微粒子Bを安定して前記被覆層中に分散することができる。
【0054】
前記カップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0055】
前記シランカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、γ-クロルプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロルシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、1,3-ジビニルテトラメチルジシラザン、メタクリルオキシエチルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
前記シランカップリング剤としては、適宜合成してもよいし、市販品を用いてもよい。
【0057】
前記市販品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、AY43-059、SR6020、SZ6023、SH6026、SZ6032、SZ6050、AY43-310M、SZ6030、SH6040、AY43-026、AY43-031、sh6062、Z-6911、sz6300、sz6075、sz6079、sz6083、sz6070、sz6072、Z-6721、AY43-004、Z-6187、AY43-021、AY43-043、AY43-040、AY43-047、Z-6265、AY43-204M、AY43-048、Z-6403、AY43-206M、AY43-206E、Z6341、AY43-210MC、AY43-083、AY43-101、AY43-013、AY43-158E、Z-6920、Z-6940(東レ・シリコーン株式会社製)等が挙げられる。
【0058】
前記シランカップリング剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記シリコーン樹脂に対して、0.1質量%以上10.0質量%以下が好ましい。前記シリコーン樹脂に対する前記シランカップリング剤の含有量が0.1質量%以上であると、前記磁性粒子や前記無機微粒子Aと前記シリコーン樹脂との接着性が向上し、長期間の使用における前記被覆層の脱落を防止することができる。10.0質量%以下であると、長期間の使用におけるトナーのフィルミングを防止することができる。
【0059】
-アンチモン含有粒子以外の無機微粒子-
前記樹脂層はアンチモン含有粒子以外の無機微粒子(以下、無機微粒子Bという)を含むことが好ましい。前記無機微粒子Bとしては、前記アンチモン含有粒子に含まれる前記無機微粒子Aと同じ材料を用いてもよいし、異なる材料を用いてもよい。前記被覆層が、前記無機微粒子Bを含有することで、前記被覆層の摺擦に対する耐久性が向上し、摩耗や削れによる劣化を抑制することができる。
【0060】
前記被覆層の耐久性は、前記アンチモン含有粒子を含むことでも向上するが、前記アンチモン含有粒子の含有量によっては前記磁性キャリアの電気抵抗値が変化してしまうことから、前記無機微粒子Bを含有することによって、前記電気抵抗値を一定に保ったまま被覆層の耐久性を担保することができる。
【0061】
前記無機微粒子Bの色としては、特に制限はないが、被覆層から脱離した場合にもトナーの色味への影響が少ない点から、白色であることが好ましい。
【0062】
前記無機微粒子Bとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、金、銀、銅、シリカ、アルミニウム等の金属微粒子、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化カルシウム、ITO、酸化シリコーン、コロイダルシリカ、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化鉄、酸化マンガン、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化セレン、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、ハ二酸化ケイ素、窒化硼素、窒化珪素、チタン酸カリウム、ハイドロタルサイト、アンチモンやタングステンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等を含有する無機微粒子が挙げられる。特に好ましい材料としては、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム等を含有する無機微粒子が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、優れた帯電安定性が得られ、トナー飛散、キャリア付着、及びゴースト画像の発生を防止することができる点、及び、白色であり、負帯電トナーに対する帯電能力が高い点から、前記無機微粒子Bは硫酸バリウムを含有することが好ましく、硫酸バリウムからなることがより好ましい。また、硫酸バリウムは、白色であり、負帯電トナーに対する帯電能力が高い点からも前記無機微粒子Bとして好ましい。
【0063】
前記無機微粒子Bの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記被覆層100質量部に対して、15質量部以上70質量部以下が好ましく、20質量部以上50質量部以下がより好ましい。
【0064】
前記無機微粒子Bの平均円相当径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、400nm以上900nm以下が好ましく、より優れた帯電安定性が得られる点から600nm以上900nm以下がより好ましい。前記平均円相当径が400nm以上であると、前記無機微粒子Bを前記被覆層の表面から凸状に突出する状態で存在させることができ、トナーとの帯電性を確保することができる。前記平均円相当径が900nm以下であると、前記被覆層の厚みに対する前記無機微粒子Bの大きさが樹脂に十分保持される程度の大きさであるため、前記無機微粒子Bが前記被覆層から脱離しにくくなる。
【0065】
前記無機微粒子Bの平均円相当径の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記アンチモン含有粒子の平均円相当径の測定方法と同様の方法で測定することができる。
【0066】
前記被覆層の平均厚さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.48μm以上が好ましく、0.50μm以上1.00μm以下がより好ましい。前記平均厚さが0.48μm以上であると、前記被覆層の欠損箇所がなく、前記アンチモン含有粒子、前記無機微粒子などを十分に保持することができる。
【0067】
前記被覆層の平均厚さの測定方法としては、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、磁性キャリア断面を観察し、磁性粒子表面を覆う被覆層の樹脂部の厚みを測定して、その平均値から求めることができる。なお、前記アンチモン含有粒子及び前記無機微粒子B上の樹脂部からなる前記被覆層の厚みは測定には含めない。
上記測定方法としては、例えば、前記磁性キャリア粒子において、芯材粒子の表面から被覆層表面までの樹脂部の厚みTを、磁性キャリア表面に沿って任意の50点で測定し、各点で得られる測定値T(μm)を平均してその磁性キャリア粒子の被覆層の平均厚さを算出することで、その磁性キャリア粒子の被覆層の平均厚さを求めることができる。この操作を、100個の磁性キャリア粒子で行い、各磁性キャリア粒子における被覆層の平均厚さの平均値を算出することで、その磁性キャリアの被覆層の平均厚さh(μm)を求めることができる。
【0068】
<<磁性キャリアの製造方法>>
前記磁性キャリアの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、公知の方法によって製造することができる。
具体的には、例えば、前記アンチモン含有粒子、前記樹脂、前記カップリング剤、前記無機微粒子B、有機溶媒、更に必要に応じてその他の成分を混合し、ホモミキサー等を用いて10分間分散して被覆層形成液(以下、「コート液」と称することがある)を調製する。その後、前記被覆層形成液を、前記磁性キャリアの芯材粒子となる磁性粒子の表面に塗布する。前記被覆層形成液を塗布した前記磁性粒子を焼成した後に冷却し、冷却後に目開き100μmの篩を用いて解砕することで、前記磁性キャリアが得られる。
【0069】
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、セルソルブ、ブチルアセテート、合成イソパラフィン系炭化水素などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、トルエンが好ましい。
【0070】
前記有機溶媒の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記被覆層形成液の有機溶媒以外の成分の総量1000~3000質量部に対して、4,000質量部以上9,000質量部以下が好ましい。
【0071】
前記被覆層形成液の塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法などが挙げられる。
前記被覆層形成液の塗布としては、例えば、スピラコーターSP-40(岡田精工株式会社製)等を用いて、60℃の空気雰囲気下、30g/minの条件で塗布することができる。
【0072】
前記焼成の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、外部加熱、内部加熱などによって焼成することができる。前記焼成に用いられる装置としては、例えば、固定式電気炉、流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉、マイクロウエーブを備えた装置などが挙げられる。
前記焼成としては、例えば、電気炉中にて230℃で1時間放置することで焼成することができる。
【0073】
<<トナー>>
前記トナーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、樹脂、及び着色剤を含むことが好ましく、必要に応じてその他の成分を含むことができる。
【0074】
前記トナーに含まれ得る樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリスチレン、ポリp-スチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単独重合体、スチレン-p-クロロスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-α-クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は芳香族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
前記トナーに含まれ得る圧力定着用の樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂等のオレフィン共重合体;エポキシ樹脂、ポリエステル、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体、マレイン酸変性フェノール樹脂、フェノール変性テルペン樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等の黄色顔料、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK等の橙色顔料、ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等の赤色顔料、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等の紫色顔料、コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等の青色顔料、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ等の緑色顔料、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラック等のアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物等の黒色顔料、酸化チタン等の白色顔料等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、透明のトナーの場合は使用しなくてもよい。
【0077】
前記トナーに含まれ得る前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、離型剤、帯電制御剤、外添剤などが挙げられる。
【0078】
前記離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、パラフィンワックス、アミド系ワックス、多価アルコールワックス、シリコーンワニス、カルナウバワックス、エステルワックス等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0079】
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ニグロシン;炭素数が2~16のアルキル基を有するアジン系染料;C.I.Basic Yello 2(C.I.41000)、C.I.Basic Yello 3、C.I.Basic Red 1(C.I.45160)、C.I.Basic Red 9(C.I.42500)、C.I.Basic Violet 1(C.I.42535)、C.I.Basic Violet 3(C.I.42555)、C.I.Basic Violet 10(C.I.45170)、C.I.Basic Violet 14(C.I.42510)、C.I.Basic Blue 1(C.I.42025)、C.I.Basic Blue 3(C.I.51005)、C.I.Basic Blue 5(C.I.42140)、C.I.Basic Blue 7(C.I.42595)、C.I.Basic Blue 9(C.I.52015)、C.I.Basic Blue 24(C.I.52030)、C.I.Basic Blue25(C.I.52025)、C.I.Basic Blue 26(C.I.44045)、C.I.Basic Green 1(C.I.42040)、C.I.Basic Green 4(C.I.42000)等の塩基性染料;これらの塩基性染料のレーキ顔料;C.I.Solvent Black 8(C.I.26150)、ベンゾイルメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルクロライド等の4級アンモニウム塩;ジブチル、ジオクチル等のジアルキルスズ化合物;ジアルキルスズボレート化合物;グアニジン誘導体;アミノ基を有するビニル系ポリマー、アミノ基を有する縮合系ポリマー等のポリアミン樹脂;モノアゾ染料の金属錯塩;サルチル酸;ジアルキルサルチル酸、ナフトエ酸、ジカルボン酸のZn、Al、Co、Cr、Fe等の金属錯体;スルホン化した銅フタロシアニン顔料;有機ホウ素塩類;含フッ素4級アンモニウム塩;カリックスアレン系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0080】
前記外添剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、シリカ、酸化チタン、アルミナ、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素等の無機粒子;ソープフリー乳化重合法により得られる平均粒径が0.05μm~1μmのポリメタクリル酸メチル粒子、ポリスチレン粒子等の樹脂粒子が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0081】
(画像形成ユニット)
本発明に関する画像形成ユニットは、静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、上述した本発明の磁性キャリア及びトナーを含む2成分現像剤を用いて現像する手段とが、一体に支持されるように形成されたものである。
前記画像形成ユニットは、静電潜像担持体、該静電潜像担持体を帯電する帯電器、前記2成分現像剤を備える本発明の現像装置、及び該静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写した後、該静電潜像担持体上に残留したトナーを除去する清掃器を有し、必要に応じて、その他の構成を有してもよい。
その他の構成としては、トナーカートリッジ、サブホッパ等が挙げられる。
前記画像形成ユニットは、複写機、プリンタ等の画像形成装置の本体に対して着脱可能である。
【0082】
(画像形成方法及び画像形成装置)
本発明の画像形成方法としては、静電潜像形成工程と、トナー像形成工程と、転写工程と、定着工程と、を含み、必要に応じてその他の工程を含んでもよい。
本発明の画像形成装置としては、静電潜像形成手段と、トナー像形成手段と、転写手段と、定着手段と、を含み、必要に応じてその他の手段を含んでもよい。
【0083】
前記静電潜像形成工程は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程であり、前記静電潜像形成手段によって実行することができる。
【0084】
前記トナー像形成工程は、前記静電潜像を、前記2成分現像剤を用いて現像してトナー像を形成する工程であり、前記トナー像形成手段によって実行することできる。
前記トナー像形成手段は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、磁気ブラシが形成された前記2成分現像剤を用いて磁気ブラシを形成させ、それを静電潜像担持体に摺擦させて現像し、トナー像を形成する手段が好ましい。
【0085】
前記転写工程は、トナー像を記録媒体に転写する工程であり、前記転写手段によって実行することができる。
【0086】
前記定着工程は、記録媒体に転写されたトナー像を定着させて画像を形成する工程であり、前記定着手段によって実行することできる。
【0087】
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程、制御工程などが挙げられる。
前記その他手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段などが挙げられる。
【0088】
ここで、本発明の現像装置が適用される画像形成装置の一実施態様について、図1~3を参照して説明する。ただし、本発明は、これらの実施形態に何ら限定されるものではない。
なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。また、下記構成部材の数、位置、形状等は図1~3に示した形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数、位置、形状等にすることができる。
【0089】
図1は、本発明の一実施形態に係る現像装置を適用した画像形成装置の一例を示す模式図である。
なお、図1では、画像形成装置の一例として、プリンタが例示されているが、本発明の現像装置が適用可能な画像形成装置はこれに限定されず、複写機、ファクシミリ、複合機などの他の画像形成装置を用いてもよい。
本実施形態の画像形成装置1は、給紙部210と、搬送部220と、作像部230と、転写部240と、定着器250とを備えている。
【0090】
給紙部210は、給紙される紙Pが積載された給紙カセット211と、給紙カセット211に積載された紙Pを一枚ずつ給紙する給紙ローラ212を備えている。
【0091】
搬送部220は、ローラ221と、一対のタイミングローラ222と、排紙ローラ223とを備えている。ローラ221は、給紙ローラ212により給紙された紙Pを転写部240の方向へ搬送する。一対のタイミングローラ222は、ローラ221により搬送された紙Pの先端部を挟み込んで待機し、紙Pを所定のタイミングで転写部240に送り出す。排紙ローラ223、カラートナー像が定着した紙Pを排紙トレイ224に排出する。
【0092】
作像部230は、図1に示すように、所定の間隔をおいて、左方から右方に向かって順に、画像形成ユニットYと、画像形成ユニットCと、画像形成ユニットMと、画像形成ユニットKと、露光器233を備えている。
【0093】
4つの画像形成ユニット(Y,C,M,K)は、それぞれに用いられる2成分現像剤が異なるのみで、機械的な構成は実質的に同一である。前記2成分現像剤は、前記磁性キャリア及び前記トナーを有する。
【0094】
画像形成ユニットYは、イエロートナーを有する2成分現像剤を用いて画像を形成する。画像形成ユニットCは、シアントナーを有する2成分現像剤を用いる。画像形成ユニットMは、マゼンタトナーを有する2成分現像剤を用いる。画像形成ユニットKは、ブラックトナーを有する2成分現像剤を用いる。
なお、画像形成ユニット(Y,C,M,K)のうち、任意の画像形成ユニットを示す場合には、画像形成ユニットという。
【0095】
画像形成ユニット(Y,C,M,K)は、図1中、時計回りに回転可能に設けられている。画像形成ユニット(Y,C,M,K)は、感光体ドラム(231Y,231C,231M,231K)と、帯電器(232Y,232C,232M,232K)と、現像器(180Y,180C,180M,180K)と、清掃器(236Y,236C,236M,236K)とを備えている。
【0096】
感光体ドラム(231Y,231C,231M,231K)では、静電潜像及びトナー像が形成される。なお、感光体ドラム(231Y,231C,231M,231K)のうち、任意の感光体ドラムを示す場合には、感光体ドラム231という。感光体ドラム231は、静電潜像担持体の一例である。
【0097】
帯電器(232Y,232C,232M,232K)は、感光体ドラム(231Y,231C,231M,231K)の表面を一様に帯電させる。なお、帯電器(232Y,232C,232M,232K)のうち、任意の帯電器を示す場合には帯電器232という。
【0098】
現像器(180Y,180C,180M,180K)は、露光器233により感光体ドラム(231Y,231C,231M,231K)の表面に形成された静電潜像を各色のトナーを用いてトナー像に現像する。なお、現像器(180Y,180C,180M,180K)のうち、任意の現像器を示す場合には現像器180という。
【0099】
清掃器(236Y,236C,236M,236K)は、ドクターブレード236aを備え、感光体ドラム(231Y,231C,231M,231K)の表面に残ったトナーをドクターブレード236aにより除去する。なお、清掃器(236Y,236C,236M,236K)のうち、任意の清掃器を示す場合には清掃器236という。
【0100】
また、画像形成ユニット(Y,C,M,K)は、トナーカートリッジ(234Y,234C,234M,234K)と、サブホッパ(160Y,160C,160M,160K)と、を備えている。
【0101】
トナーカートリッジ(234Y,234C,234M,234K)は、各色のトナーを収容する。なお、トナーカートリッジ(234Y,234C,234M,234K)のうち、任意のトナーカートリッジを示す場合にはトナーカートリッジ234という。
【0102】
サブホッパ(160Y,160C,160M,160K)は、トナーカートリッジ(234Y,234C,234M,234K)から供給されたトナーを補給するためのものである。なお、サブホッパ(160Y,160C,160M,160K)のうち、任意のサブホッパを示す場合にはサブホッパ160という。
【0103】
トナーカートリッジ234に収容されたトナーは、吸引ポンプにより排出され、供給管を経由してサブホッパ160に供給される。サブホッパ160は、トナーカートリッジ234から供給されたトナーを搬送して、現像器180に補給する。現像器180は、サブホッパ160により補給されたトナーを用いて、感光体ドラム231上に形成された静電潜像を現像する。
【0104】
感光体231としては、その材質、形状、構造、大きさ、等について特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、その形状としてはドラム状が好適に挙げられ、その材質としては、例えば、アモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体、などが挙げられる。
前記有機感光体としては、アルミドラム等の支持体上に、無金属フタロシアニンやチタニルフタロシアニン等の電荷発生材料をバインダー樹脂に分散させた層(電荷発生層)と電荷輸送材料をバインダー樹脂に分散させた層(電荷輸送層)を積み重ねた積層構造を有する積層型感光体や、支持体上に電荷発生材料及び電荷輸送材料の両方をバインダー樹脂に分散させた単層構造の感光層を有する単層型感光体が挙げられる。単層型感光体では感光層に電荷輸送材料として正孔輸送剤及び電子輸送剤を添加することもできる。
また、支持体と、積層型の電荷発生層や単層型の感光層との間に、下引き層を設けてもよい。
【0105】
帯電器232としては、特に限定されないが、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えた公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器等が挙げられる。
帯電器232は、感光体ドラム231に接触乃至非接触の状態で配置され、直流及び交流電圧を重畳印加することにより、感光体ドラム231の表面を帯電することが好ましい。
また、帯電器232は、ギャップテープを介して感光体ドラム231に非接触に近接配置された帯電ローラであり、直流電圧及び交流電圧を帯電ローラに重畳印加することにより、感光体ドラム231の表面を帯電させることが好ましい。
【0106】
露光器233は、画像情報に基づいて光源233aから発せられたレーザ光Lを、モータにより回転駆動されるポリゴンミラー233b(233bY,233bC,233bM,233bK)により反射させて感光体ドラム231(231Y,231C,231M,231K)に照射する。
【0107】
露光器233は、帯電器232により帯電した感光体ドラム231の表面に、形成すべき像様に露光することが可能であれば、特に限定されない。露光器233としては、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系などの各種露光器が挙げられる。
なお、感光体ドラム231の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0108】
現像器180は、現像剤を用いて現像することが可能であれば、特に限定されない。現像器180としては、現像剤を収容し、静電潜像に現像剤を接触又は非接触的に付与する現像器が好ましく、現像剤入り容器を備えた現像器がさらに好ましい。
現像器180は、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよい。
【0109】
清掃器236は、感光体ドラム231の表面に残留したトナーを除去することが可能であれば、特に限定されない。清掃器236としては、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナなどの清掃部材を備えた清掃器が好ましい。
【0110】
清掃器236によりトナーが除去された感光体ドラム231は、除電されて、残存電位が除去されることにより、感光体ドラム231上で行われる一連の作像プロセスが終了する。
【0111】
転写部240は、駆動ローラ241、従動ローラ242、中間転写ベルト243、一次転写ローラ(244Y,244C,244M,244K)、二次対向ローラ245及び二次転写ローラ246を備えている。
【0112】
駆動ローラ241は、画像形成ユニットYのトナーカートリッジ234Y側に設けられている。従動ローラ242は、画像形成ユニットKのトナーカートリッジ234K側に設けられている。中間転写ベルト243は、駆動ローラ241の駆動に伴い、図1中、反時計回りに回転することが可能に構成されている。
【0113】
一次転写ローラ(244Y,244C,244M,244K)は、中間転写ベルト243を挟んで、感光体ドラム231に対向して設けられている。二次対向ローラ245及び二次転写ローラ246は、トナー像の紙Pへの転写位置において中間転写ベルト243を挟んで対向して設けられている。なお、一次転写ローラ(244Y,244C,244M,244K)のうち、任意の一次転写ローラを示す場合には、一次転写ローラ244という。
【0114】
一次転写ローラ244には、トナーの極性とは逆極性の一次転写バイアスが印加される。一方、中間転写ベルト243は、一次転写ローラ244及び感光体ドラム231の間に挟まれて一次転写ニップが形成される。
【0115】
これにより、感光体ドラム231の表面に形成された各色のトナー像が中間転写ベルト243上に転写(一次転写)される。この場合、中間転写ベルト243が、図1中、矢印方向に回転することにより、感光体ドラム(231Y,231C,231M,231K)上に形成された各色のトナー像が、中間転写ベルト243上に順次転写されてカラートナー像が形成される。
【0116】
転写部240の二次転写ローラ246には、二次転写バイアスが印加される。一方、中間転写ベルト243は、二次対向ローラ245及び二次転写ローラ246の間に挟まれて二次転写ニップが形成される。これにより、二次転写ローラ246及び二次対向ローラ245の間に挟まれた紙Pに、中間転写ベルト243上に形成されたカラートナー像が転写(二次転写)される。
【0117】
定着器250は、ヒータが内部に設けられ、紙Pを加熱する定着ベルト251と、定着ベルト251に対して、回転可能に加圧することによりニップを形成する加圧ローラ252と、を備えている。これにより、紙P上のカラートナー像に熱と圧力が印加されて、カラートナー像が定着する。カラートナー像が定着した紙Pは、排紙ローラ223により排紙トレイ224に排紙され、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0118】
次に、図2及び図3を用いて、本発明の現像装置及び本発明の現像装置が適用された画像形成ユニットの構成の一部をさらに詳しく説明する。
【0119】
図2は、本発明の一実施形態に係る現像装置の横断面図であり、図1の現像器180の横断面図を示す。
現像ローラ185は、本発明の現像装置の一実施形態における現像スリーブの一例である。現像ローラ185は、マグネットローラを内包し、感光体ドラム231に対向する部分を除き、第2収容部183内に収容されている。
現像器180において、第1収容部181に補給されたトナーは、第1搬送スクリュ182及び第2搬送スクリュ184により、磁性キャリアと混合・攪拌されながら、連通孔B2、B3を経由して、第1収容部181及び第2収容部183を、矢印方向に循環する。このとき、循環するトナーは、摩擦帯電により磁性キャリアに吸着する。
現像ローラ185に内包されているマグネットローラの発する磁力により、第2収容部183内を搬送されるトナーは、磁性キャリアと共に現像ローラ185に吸着され、現像に使用される。
現像により現像ローラ185上のトナーを消費した現像剤は、現像ローラ185の回転に伴い、第2収容部183に戻され、第2搬送スクリュ184により第2収容部183内を搬送され、連通孔B3を経由して第1収容部181内に戻される。
【0120】
図3は、本発明の一実施形態に係る現像装置を適用した画像形成装置の一例における作像部の縦断面図であり、図1の画像形成装置における作像部の縦断面図を示す。
図3に示す通り、現像器180は、第1収容部181、第1収容部181に設けられた第1搬送スクリュ182、第2収容部183、第2収容部183に設けられた第2搬送スクリュ184、現像ローラ185、ドクターブレード186、及び濃度検知センサ187を備えている。なお、第1収容部181及び第2収容部183は、予め磁性キャリア188を収容している。
【0121】
第1収容部181には、サブホッパ160と接続した補給口B1が形成されている。
空間190の部分から補給口B1の穴を通じて現像器180の外部へ空気を排出する気流(排出気流193)を形成することにより、現像ローラ185と現像器180の隙間191から、現像器180内に吸引気流192が発生する。その結果、現像剤から外れたトナーや、現像器180の外にある磁気ブラシから飛散したトナーを現像器180内部へと戻すことができる。現像器180のトナー飛散がしやすい部分に、前記エアフィルタを装着することで、現像器180内からのトナー飛散を抑えることができる。図3において、補給口B1の部分にはエアフィルタ189が装着されている。
現像ローラ185と現像器180の隙間191の大きさは任意に選定できるが、大きすぎると吸引速度が小さくなり、トナーの飛散を回避できない場合が発生する可能性が生じ、小さすぎると空気流入速度が速くなりすぎ、場合によっては騒音を発生する可能性が生じる。
エアフィルタ189としては、エアフィルタの風速10cm/sの圧力損失は、2~40Paであれば任意の形態のフィルタを選定できる。エアフィルタの材質としては、紙、布、不織布、または多孔質からなる合成樹脂、極細金属網などで作り、物理濾過、静電吸着法式等でトナーを除去する。
エアフィルタ189は、気流の上流側から下流側(排出側)に向かって厚さ方向に密度勾配を有することが好ましい。密度勾配は、気流の上流側から下流側に向かってエアフィルタの目が細かくなるように装着される。密度勾配は、例えば、上流側から排出側に向けて、大きめの目開き、中程度の目開き及び微細な目開きを有するメッシュフィルタ(網目濾過器)を所定の間隔で配置することで形成することができる。
なお、濃度検知センサ187による検知結果に基づいて、現像剤中のトナーの割合(トナー濃度)が所定の範囲内になるように、サブホッパ160によるトナーの補給が制御されている。
【0122】
現像ローラ185は、感光体ドラム231に対向する部分を除き、第2収容部183内に収容されている。
現像ローラ185は、マグネットローラを内包し、マグネットローラの発する磁力により、第2収容部183内を搬送されるトナーは、磁性キャリアと共に、現像ローラ185に吸着され、現像剤による磁気ブラシが形成される。
図3において、現像ローラ185は、矢印方向に回転し、現像ローラ185に吸着した現像剤は、現像ローラ185の回転に伴って搬送され、ドクターブレード186により厚さが規制される。
厚さが規制された現像剤は、現像ローラ185により、感光体ドラム231に対向する位置に搬送され、静電潜像された感光体ドラム231に摺擦されて感光体ドラム231上に形成された静電潜像にトナーが吸着する。これにより、感光体ドラム231上にトナー像が形成される。現像ローラ185上のトナーを消費した現像剤は、現像ローラ185の回転に伴い、第2収容部183に戻される。
【0123】
なお、図1~3に示す現像器180では、上述した前記磁性キャリア及び前記トナーを含む前記2成分現像剤が用いられる。以下、現像器は、現像部という場合がある。
【実施例0124】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に記載中の「部」は「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表す。
【0125】
(磁性キャリアの製造例1)
樹脂としてのアクリル樹脂溶液(固形分濃度:20質量%)200質量部、及びシリコーン樹脂溶液(商品名:SR2410、ダウ・東レ株式会社製、固形分濃度:40質量%)2,000質量部と、カップリング剤としてのアミノシラン(商品名:SH6020、ダウ・東レ株式会社製、固形分濃度:100質量%)35質量部と、アンチモン含有粒子として、五酸化二アンチモンをドープした酸化スズで表面処理した酸化アルミニウム粒子(アンチモン:五酸化二アンチモン、基体粒子である無機微粒子A:酸化アルミニウム粒子、平均円相当径:0.55μm)700質量部と、無機微粒子Bとしての硫酸バリウム粒子(平均円相当径:0.60μm)570質量部と、有機溶媒としてのトルエン6,000質量部とを混合し、ホモミキサーを用いて10分間分散して被覆層形成液1を得た。
【0126】
スピラコーターSP-40(岡田精工株式会社製)を用いて、60℃の空気雰囲気下、30g/minの条件で前記被覆層形成液1を、磁性キャリアの芯材粒子となる磁性粒子のMnフェライト粒子(体積平均粒径:36μm、見掛け密度:2.4g/cm)の表面に塗布して乾燥させて、前記Mnフェライト粒子の表面に被覆層を形成した。
前記被覆層を形成したMnフェライト粒子を、電気炉中にて230℃で1時間放置して焼成し、その後冷却した。冷却後に目開き100μmの篩を用いて解砕し磁性キャリア1を得た。なお、前記被覆層におけるアンチモン含有粒子の含有量は、前記被覆層100質量部に対して、20質量部であった。
【0127】
得られた磁性キャリア1について、JIS-Z2504に準拠して見掛け密度を測定したところ2.3g/cmであった。また、下記方法によって磁性キャリア1の被覆層の平均厚さを測定したところ0.50μmであった。
【0128】
<磁性キャリアの被覆層の平均厚さ>
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、前記磁性キャリアの断面を観察し、磁性キャリアの芯材粒子の表面から被覆層表面までの樹脂部の厚みT(μm)を、磁性キャリア表面に沿って0.2μm間隔で50点測定し、各点におけるTの測定値を平均してその磁性キャリア粒子の被覆層の平均厚さを算出した。なお、前記アンチモン含有粒子及び前記無機微粒子B上の樹脂部からなる前記被覆層の厚さは測定には含めなかった。
上記操作を、100個の磁性キャリア粒子で行い、各粒子における被覆層の平均厚さの平均値を算出して、その磁性キャリアの被覆層の平均厚さh(μm)とした。
【0129】
また、作製した磁性キャリア及び磁性キャリアの芯材粒子である磁性粒子の見掛け密度、磁性粒子の体積平均粒径、アンチモン含有粒子の平均円相当径、無機微粒子Bの平均円相当径については、下記方法で測定した。
【0130】
<磁性キャリア及び磁性粒子の見掛け密度>
作製した磁性キャリア及び磁性キャリアの芯材粒子である磁性粒子の見掛け密度は、前記磁性キャリアの見掛け密度と同様にJIS-Z2504に準拠した方法で測定した。
【0131】
<磁性粒子の体積平均粒径>
作製した磁性キャリアの芯材粒子である磁性粒子の体積平均粒径は、マイクロトラック粒度分布計(日機装株式会社製)のSRAタイプを使用し、0.7μm以上125μm以下の設定範囲にて測定した。
【0132】
<アンチモン含有粒子及び無機微粒子Bの平均円相当径>
前記アンチモン含有粒子及び前記無機微粒子Bの平均円相当径は、磁性キャリアを形成する前のアンチモン含有粒子及び無機微粒子Bを用いて、ナノトラックUPAシリーズ(日機装株式会社製)で測定した。
測定したアンチモン含有粒子100個の各円相当径の平均値を、前記アンチモン含有粒子の平均円相当径とした。無機微粒子Bの平均円相当径も同様に測定した。
【0133】
(磁性キャリアの製造例2)
製造例1において、アンチモン含有粒子として、「五酸化二アンチモンをドープした酸化スズで表面処理した酸化アルミニウム粒子」を、「三酸化二アンチモンをドープした酸化スズで表面処理した酸化アルミニウム粒子(アンチモン:三酸化二アンチモン、無機微粒子A:酸化アルミニウム粒子、平均円相当径:0.55μm)」に変更した以外は、製造例1と同様にして磁性キャリア2を得た。
磁性キャリア1と同様に磁性キャリア2の見掛け密度、被覆層の平均厚さを測定したところ、見掛け密度2.3g/cm、被覆層の平均厚さ0.50μmであった。
【0134】
(磁性キャリアの製造例3)
製造例1において、アンチモン含有粒子として、「五酸化二アンチモンをドープした酸化スズで表面処理した酸化アルミニウム粒子」を、「五酸化二アンチモンで表面処理した酸化アルミニウム粒子(無機微粒子A:酸化アルミニウム粒子、平均円相当径:0.05μm)」に変更した以外は、製造例1と同様にして磁性キャリア3を得た。
磁性キャリア1と同様に磁性キャリア3の見掛け密度、被覆層の平均厚さを測定したところ、見掛け密度2.3g/cm、被覆層の平均厚さ0.50μmであった。
【0135】
(磁性キャリアの製造例4)
製造例1において、アンチモン含有粒子として、「五酸化二アンチモンをドープした酸化スズで表面処理した酸化アルミニウム粒子」を、「五酸化二アンチモンをドープした酸化スズで表面処理した酸化チタン粒子(アンチモン:五酸化二アンチモン、無機微粒子A:酸化チタン粒子、平均円相当径:0.55μm)」に変更した以外は、製造例1と同様にして磁性キャリア4を得た。
磁性キャリア1と同様に磁性キャリア4の見掛け密度、被覆層の平均厚さを測定したところ、見掛け密度2.3g/cm、被覆層の平均厚さ0.50μmであった。
【0136】
(磁性キャリアの製造例5)
樹脂としてのアクリル樹脂溶液(固形分濃度:20質量%)200質量部、及びシリコーン樹脂溶液(商品名:SR2410、ダウ・東レ株式会社製、固形分濃度:40質量%)2,000質量部と、カップリング剤としてのアミノシラン(商品名:SH6020、ダウ・東レ株式会社製、固形分濃度:100質量%)35質量部と、アンチモン含有粒子としての五酸化二アンチモンをドープした酸化スズで表面処理した酸化アルミニウム粒子(アンチモン:五酸化二アンチモン、無機微粒子A:酸化アルミニウム粒子、平均円相当径:0.55μm)700質量部と、有機溶媒としてのトルエン6,000質量部とを混合し、ホモミキサーを用いて10分間分散して被覆層形成液2を得た。
【0137】
スピラコーターSP-40(岡田精工株式会社製)を用いて、60℃の空気雰囲気下、30g/minの条件で前記被覆層形成液2を、磁性キャリアの芯材粒子となる磁性粒子のMnフェライト粒子(体積平均粒径:36μm、見掛け密度:2.4g/cm)の表面に塗布して乾燥させて、前記芯材粒子の表面に被覆層を形成した。
前記被覆層を形成したMnフェライト粒子を、電気炉中にて230℃で1時間放置して焼成し、その後冷却した。冷却後に目開き100μmの篩を用いて解砕し磁性キャリア5を得た。なお、前記被覆層におけるアンチモン含有粒子の含有量は、前記被覆層100質量部に対して、20質量部であった。
また、磁性キャリア1と同様に磁性キャリア5の見掛け密度、被覆層の平均厚さを測定したところ、見掛け密度2.3g/cm、被覆層の平均厚さ0.50μmであった。
【0138】
(磁性キャリアの製造例6)
製造例1において、無機微粒子Bとしての「硫酸バリウム粒子」を「酸化マグネシウム粒子(平均円相当径:0.60μm)」に変更した以外は、製造例1と同様にして磁性キャリア6を得た。
磁性キャリア1と同様に磁性キャリア6の見掛け密度、被覆層の平均厚さを測定したところ、見掛け密度2.3g/cm、被覆層の平均厚さ0.50μmであった。
【0139】
(磁性キャリアの製造例7)
製造例1において、無機微粒子Bとしての「硫酸バリウム粒子」を「ハイドロタルサイト粒子(平均円相当径:0.60μm)」に変更した以外は、製造例1と同様にして磁性キャリア7を得た。
磁性キャリア1と同様に磁性キャリア7の見掛け密度、被覆層の平均厚さを測定したところ、見掛け密度2.3g/cm、被覆層の平均厚さ0.50μmであった。
【0140】
(磁性キャリアの製造例8)
製造例1において、無機微粒子Bとしての「硫酸バリウム粒子」を「水酸化マグネシウム粒子(平均円相当径:0.60μm)」に変更した以外は、製造例1と同様にして磁性キャリア8を得た。
磁性キャリア1と同様に磁性キャリア8の見掛け密度、被覆層の平均厚さを測定したところ、見掛け密度2.3g/cm、被覆層の平均厚さ0.50μmであった。
【0141】
(磁性キャリアの製造例9)
製造例1において、無機微粒子Bとしての「硫酸バリウム粒子」を「酸化アルミニウム粒子(平均円相当径:0.60μm)」に変更した以外は、製造例1と同様にして磁性キャリア9を得た。
磁性キャリア1と同様に磁性キャリア9の見掛け密度、被覆層の平均厚さを測定したところ、見掛け密度2.3g/cm、被覆層の平均厚さ0.50μmであった。
【0142】
(磁性キャリアの製造例10)
製造例1において、「五酸化二アンチモンをドープした酸化スズで表面処理した酸化アルミニウム粒子」を「カーボンブラック(一次粒子径:40nm)で表面処理した酸化アルミニウム粒子(無機微粒子A:酸化アルミニウム粒子)」に変更した以外は、製造例1と同様にして磁性キャリア10を得た。
磁性キャリア1と同様に磁性キャリア10の見掛け密度、被覆層の平均厚さを測定したところ、見掛け密度2.3g/cm、被覆層の平均厚さ0.50μmであった。
【0143】
また、磁性キャリア1~10を用いた2成分現像剤を作製するために、磁性キャリア1~10と混合するためのトナーを以下の方法で作製した。
【0144】
<ポリエステル樹脂の合成例>
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物65質量部、ビスフェノールAのプロピオンオキシド3モル付加物86質量部、テレフタル酸274質量部、及びジブチルスズオキシド2質量部を投入し、常圧下、230℃で15時間反応させた後に、5mmHg~10mmHgの減圧下で6時間反応させてポリエステル樹脂を得た。
得られたポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は2,300、重量平均分子量(Mw)は8,000、ガラス転移温度(Tg)は58℃、酸価は25mgKOH/g、水酸基価は35mgKOH/gであった。
【0145】
(トナー材料)
<プレポリマーの合成例>
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81質量部、テレフタル酸283質量部、無水トリメリット酸22質量部、及びジブチルチンオキサイド2質量部を投入し、常圧下で、230℃で8時間反応させた後に、10mmHg~15mHgの減圧下で5時間反応させて中間体ポリエステル樹脂を得た。
得られた中間体ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は2,100、重量平均分子量(Mw)は9,600、ガラス転移温度(Tg)は55℃、酸価は0.5mgKOH/g、水酸基価が49mgKOH/gであった。
【0146】
次に、冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、前記中間体ポリエステル樹脂411質量部、イソホロンジイソシアネート89質量部、及び酢酸エチル500質量部を投入し、100℃にて5時間反応させてプレポリマーを得た。
得られたプレポリマーの遊離イソシアネートの含有量は、1.60質量%であり、プレポリマーの固形分濃度(150℃、45分間放置後)は50質量%であった。
【0147】
<ケチミン化合物の合成例>
攪拌棒及び温度計の付いた反応槽中に、イソホロンジアミン30質量部及びメチルエチルケトン70質量部を投入し、50℃にて5時間反応させてケチミン化合物を得た。得られたケチミン化合物のアミン価は、423mol/Lであった。
【0148】
<マスターバッチの合成例>
水1,000質量部、カーボンブラックPrintex35(デグサ社製、DBP吸油量:42mL/100g、pH:9.5)540質量部、及び前記ポリエステル樹脂1,200質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合し、混合物を得た。次に、二本ロールを用いて、得られた混合物を150℃で30分間混練した後に圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン社製)で粉砕して、マスターバッチを得た。
【0149】
<水系媒体の合成例>
水306質量部、リン酸三カルシウムの10質量%懸濁液265質量部、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0質量部を混合攪拌し均一に溶解させて水系媒体を得た。
【0150】
(トナーの製造例)
-トナー材料液の調製-
ビーカー内に、前記ポリエステル樹脂を70質量部、前記プレポリマーを10質量部、及び酢酸エチル100質量部を入れて攪拌し溶解させた。その後、離型剤としてのパラフィンワックス5質量部(日本精鑞株式会社製、HNP-9、融点:75℃)、MEK-ST(日産化学工業株式会社製)2質量部、及び前記マスターバッチ10質量部を加えて、ビーズミルのウルトラビスコミル(アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/時、ディスクの周速度6m/秒、粒径0.5mmのジルコニアビーズの充填量80体積%の条件で3回パスした後、前記ケチミン化合物2.7質量部を加えて溶解させてトナー材料液を得た。
【0151】
-乳化及び分散工程-
前記水系媒体150質量部を容器に入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて回転数12,000rpmで攪拌した後に前記トナー材料液100質量部を添加し、10分間混合して乳化スラリーを得た。
【0152】
-脱溶剤工程-
拌機及び温度計の付いたコルベンに得られた乳化スラリー100質量部を投入し、攪拌周速20m/分、30℃、12時間の条件で攪拌して前記乳化スラリーの脱溶剤を行った。
【0153】
-洗浄工程-
脱溶剤した乳化スラリー100質量部を減圧濾過して濾過ケーキを得た。得られた濾過ケーキにイオン交換水100質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、回転数12,000rpmにて10分間混合した後濾過した。この操作をあと2回行った。
その後、得られた濾過ケーキに10質量%の水酸化ナトリウム水溶液20質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、回転数12,000rpmにて30分間混合した後減圧濾過した。
その後、得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、回転数12,000rpmにて10分間混合した後濾過した。この操作をあと2回行った。
更に得られた濾過ケーキに10質量%の塩酸20質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、回転数12,000rpmにて10分間混合した後に濾過を行い、洗浄後の濾過ケーキを得た。
【0154】
-界面活性剤量調製工程-
前記洗浄後の濾過ケーキに、イオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、回転数12,000rpmにて10分間混合した際のトナー分散液の電気伝導度を測定し、事前に作成した界面活性剤濃度の検量線より、トナー分散液の界面活性剤濃度を算出した。その値から、界面活性剤濃度が狙いの界面活性剤濃度0.05質量%になるように、イオン交換水を追加し、トナー分散液を得た。
【0155】
-表面処理工程-
得られたトナー分散液を、TK式ホモミキサーを用いて、回転数5,000rpmにて混合しながら、ウォーターバスで加熱温度T1=55℃で10時間加熱を行なった。その後、トナー分散液を25℃まで冷却し濾過を行なった。更に得られた濾過ケーキに、イオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、回転数12,000rpmにて10分間混合した後、濾過して最終濾過ケーキを得た。
【0156】
-乾燥工程-
得られた最終濾過ケーキを循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、トナー母体粒子を得た。
【0157】
-外添処理工程-
得られたトナー母体粒子100質量部に対して、体積平均粒径が100nmである疎水性シリカ3.0質量部、体積平均粒径が20nmである酸化チタン1.0質量部、及び体積平均粒径15nmの疎水性シリカ1.5質量部をヘンシェルミキサーにて混合し、トナーを得た。
【0158】
(2成分現像剤1~10)
前記磁性キャリア1~10をそれぞれ930質量部と、前記トナー70質量部とを混合(質量比93:7)した後、タービュラーミキサーを用いて81rpmで5分間攪拌し、評価用の2成分現像剤1~10を得た。
【0159】
(現像装置1)
画像形成装置として市販のデジタルフルカラー複合機(株式会社リコー製、IMAGIO(登録商標) MP C5002)を改造したものに以下の現像装置1~5を取り付けて、下記評価を行った。
なお、本実施例で使用した画像形成装置IMAGIO MP C5002の構成は、図1~3で示されている構成とほぼ同様の構成がとられている。図2、3の現像器において、2成分現像剤を還流させるスクリュ(図2、3の第1搬送スクリュ)の直上に1cm×20cmの穴を空け、厚さ方向に密度勾配を有し、厚さ10mm、風速10cm/sの圧力損失が20Paのエアフィルタ1を、目が疎である面が現像器の内側に向くように上記穴を空けた箇所に取り付けて現像装置1を作製した。
さらに、現像スリーブ(現像ローラ)の隙間から吸引する気流となるように、現像装置に穴を空けてエアフィルタを取り付けた部分から現像装置内の空気が出るようにエアフィルタ上部を密閉し、チューブとポンプにより空気を排出できるようにした。
【0160】
(現像装置2)
現像装置1において、エアフィルタ1をエアフィルタ2(厚さ方向に密度勾配を有し、厚さ5mm、風速10cm/sの圧力損失が15Pa)に変更した以外は、現像装置1と同様にして、現像装置2を得た。
【0161】
(現像装置3)
現像装置1において、エアフィルタ1をエアフィルタ3(厚さ方向に密度勾配を有し、厚さ20mm、風速10cm/sの圧力損失が25Pa)に変更した以外は、現像装置1と同様にして、現像装置3を得た。
【0162】
(現像装置4)
現像装置1において、エアフィルタ1をエアフィルタ4(厚さ方向に密度勾配を有し、厚さ1mm、風速10cm/sの圧力損失が5Pa)に変更した以外は、現像装置1と同様にして、現像装置4を得た。
【0163】
(現像装置5)
現像装置1において、エアフィルタ1をエアフィルタ5(厚さ方向に密度勾配を有し、厚さ25mm、風速10cm/sの圧力損失が30Pa)に変更した以外は、現像装置1と同様にして、現像装置5を得た。
【0164】
(現像装置6)
現像装置1において、エアフィルタ1をエアフィルタ6(厚さ方向に密度勾配を有し、厚さ10mm、風速10cm/sの圧力損失が1Pa)に変更した以外は、現像装置1と同様にして、現像装置6を得た。
【0165】
(現像装置7)
現像装置1において、エアフィルタ1をエアフィルタ7(厚さ方向に密度勾配を有し、厚さ10mm、風速10cm/sの圧力損失が45Pa)に変更した以外は、現像装置1と同様にして、現像装置7を得た。
【0166】
(実施例1)
現像装置1のケースに2成分現像剤1を300g投入し、下記評価を行った。
【0167】
(実施例2)
現像装置1のケースに2成分現像剤2を300g投入し、下記評価を行った。
【0168】
(実施例3)
現像装置1のケースに2成分現像剤3を300g投入し、下記評価を行った。
【0169】
(実施例4)
現像装置2のケースに2成分現像剤1を300g投入し、下記評価を行った。
【0170】
(実施例5)
現像装置3のケースに2成分現像剤1を300g投入し、下記評価を行った。
【0171】
(実施例6)
現像装置1のケースに2成分現像剤4を300g投入し、下記評価を行った。
【0172】
(実施例7)
現像装置1のケースに2成分現像剤5を300g投入し、下記評価を行った。
【0173】
(実施例8)
現像装置1のケースに2成分現像剤6を300g投入し、下記評価を行った。
【0174】
(実施例9)
現像装置1のケースに2成分現像剤7を300g投入し、下記評価を行った。
【0175】
(実施例10)
現像装置1のケースに2成分現像剤8を300g投入し、下記評価を行った。
【0176】
(実施例11)
現像装置1のケースに2成分現像剤9を300g投入し、下記評価を行った。
【0177】
(比較例1)
現像装置1のケースに2成分現像剤10を300g投入し、下記評価を行った。
【0178】
(比較例2)
現像装置4のケースに2成分現像剤1を300g投入し、下記評価を行った。
【0179】
(比較例3)
現像装置5のケースに2成分現像剤1を300g投入し、下記評価を行った。
【0180】
(比較例4)
現像装置6のケースに2成分現像剤1を300g投入し、下記評価を行った。
【0181】
(比較例5)
現像装置7のケースに2成分現像剤1を300g投入し、下記評価を行った。
【0182】
実施例及び比較例の構成を表1に示した。
【0183】
【表1】
【0184】
上記構成において、「トナー飛散」、「画像濃度(ID)」、「キャリア付着(エッジ)」、「キャリア付着(ベタ)」を、下記評価基準に基づき評価した。
【0185】
<トナー飛散>
画像面積率5%の文字チャート(1文字の大きさが2mm×2mm程度)の画像を100万枚出力後に、現像装置外に飛散して現像装置下部にたまったトナーを吸引、回収し、トナー質量を測定した。評価基準を下記に示す。下記評価基準における「△」以上が実施可能であることを示す。
[評価基準]
◎:0mg以上50mg未満
○:50mg以上100mg未満
△:100mg以上250mg未満
×:250mg以上
【0186】
<画像濃度(ID)>
環境評価室(10℃15%の低温低湿環境)内で、画像面積率5%の文字チャート(1文字の大きさが2mm×2mm程度)の画像を10万枚出力後に、白ベタ画像及び黒ベタ画像を各3枚印字し(銘柄:RICOH MyPaper、A3紙)、画像濃度を目視で評価した。目視による画像濃度から画像見本と比較して下記評価基準に基づき「画像濃度(ID)」を評価した。下記評価基準における「△」以上が実施可能であることを示す。
[評価基準]
◎:画像見本と比較して画像濃度が同等である
○:単体では分からないが見本と比較すると劣る
△:単体でも注視すると画像濃度が薄いことが分かる
×:明らかに濃度が薄い
【0187】
<キャリア付着(エッジ)>
画像面積率5%の文字チャート(1文字の大きさが2mm×2mm程度)の画像を100万枚出力後に、前記デジタルフルカラー複合機を環境評価室(10℃15%の低温低湿環境)に一日入れた。その後、帯電電位(Vd):-630V、現像バイアス:DC-500Vの現像条件にて、170μm×170μmを1マスとして、ベタ部と白紙を縦横交互に配置させた画像をA3サイズで出力し、1マス毎の境目にあるキャリア付着による画像の白抜けが発生しているマスの数を測定した。測定したマスの数から下記評価基準に基づき「キャリア付着(エッジ)」を評価した。下記評価基準における「△」以上が実施可能であることを示す。
[評価基準]
◎:0個
○:1個以上3個以下
△:4個以上10個以下
×:11個以上
【0188】
<キャリア付着(ベタ)>
画像面積率5%の文字チャート(1文字の大きさが2mm×2mm程度)の画像を100万枚出力後に、環境評価室(10℃15%の低温低湿環境)内で、帯電電位(Vd):-600V、画像部(ベタ)にあたる部分の感光後の電位:-100V、現像バイアス:DC-500Vの現像条件にてトナー像を作像中に電源をOFFにして作像を中断し、転写後の感光体の10mm×100mmの領域上に付着する磁性キャリアの個数を測定した。測定した磁性キャリアの個数から下記評価基準に基づき「キャリア付着(ベタ)」を評価した。下記評価基準における「△」以上が実施可能であることを示す。
[評価基準]
◎:0個
○:1個以上3個以下
△:4個以上10個以下
×:11個以上
【0189】
【表2】
【0190】
実施例1~11の各評価結果は、どれも「△」以上であり、実施可能であった。
比較例1は、2成分現像剤に含まれる磁性キャリアの被覆層にアンチモン含有粒子が含まれていなかったので、磁性キャリアの導電性が低くなり、帯電安定性も低くなったため、キャリア付着(ベタ)の評価結果が「×」となった。
比較例2は、エアフィルタの厚さが2mmより薄いため、トナーが漏れやすくなってしまい、トナー飛散の評価結果が「×」となった。
比較例3は、エアフィルタの厚さが20mmより厚いため、エアフィルタにトナーが詰まりやすくなり、エアフィルタから空気が排出されにくくなって吸引気流を維持しにくくなり、現像装置から飛散しそうなトナーを現像装置内に戻しにくくなってしまったため、トナー飛散の評価結果が「×」となった。
比較例4は、エアフィルタの風速10cm/sの圧力損失が2Paより低く、エアフィルタの目が粗いため、エアフィルタからトナーが漏れやすくなってしまい、トナー飛散の評価結果が「×」となった。
比較例5は、エアフィルタの風速10cm/sの圧力損失が40Paより高く、エアフィルタの目が細かいため、エアフィルタがトナーに詰まりやすくなって吸引気流が維持できなくなってしまい、トナー飛散の評価結果が「×」となった。
【0191】
以上より、本発明の構成を満たす現像装置は、長期印刷下において現像装置外へのトナー飛散を抑制でき、安定した画像品質を維持できることが示された。
【0192】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1>磁性キャリア及びトナーを含む2成分現像剤と、
現像スリーブと、
前記2成分現像剤及び前記現像スリーブを収容するケースと、
前記ケースの内側に装着されたエアフィルタと、
を備える現像装置であって、
前記ケース内に吸引され前記エアフィルタを通じて排出される気流が形成され、
前記エアフィルタは、厚さ2~20mm且つ風速10cm/sの圧力損失が2~40Paであり、
前記磁性キャリアは、磁性粒子と、前記磁性粒子の表面を被覆する被覆層を含み、
前記被覆層は、樹脂及びアンチモン含有粒子を含む現像装置。
<2>前記気流は、前記現像スリーブと前記ケースとの隙間から前記ケース内に吸引される、前記<1>に記載の現像装置。
<3>前記エアフィルタは、前記気流の上流側から下流側に向かって厚さ方向に疎から密となる密度勾配を有する、前記<1>又は<2>に記載の現像装置。
<4>前記アンチモン含有粒子は、アンチモンをドープした酸化スズを含有する、前記<1>から<3>のいずれかに記載の現像装置。
<5>前記アンチモン含有粒子に含有されるアンチモンは五酸化二アンチモンである、前記<1>から<4>のいずれかに記載の現像装置。
<6>前記アンチモン含有粒子の基体粒子は無機微粒子である、前記<1>から<5>のいずれかに記載の現像装置。
<7>前記基体粒子は酸化アルミニウムである、前記<6>に記載の現像装置。
<8>前記被覆層は、前記アンチモン含有粒子以外の無機微粒子を含む、前記<1>から<7>のいずれかに記載の現像装置。
<9>前記アンチモン含有粒子以外の無機微粒子は白色である、前記<8>に記載の現像装置。
<10>前記アンチモン含有粒子以外の無機微粒子は硫酸バリウムを含有する、前記<8>又は<9>に記載の現像装置。
【0193】
上記<1>から<10>のいずれかの現像装置によれば、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0194】
1 画像形成装置
180、180Y、180C、180M、180K 現像器
181 第1収容部
182 第1搬送スクリュ
183 第2収容部
184 第2搬送スクリュ
185 現像スリーブ(現像ローラ)
186 ドクターブレード
188 磁性キャリア
189 エアフィルタ
190 空間
191 隙間
192 吸引気流
193 排出気流
B1 補給口
B2、B3 連通孔
230 作像部
Y、C、M、K 画像形成ユニット
231、231Y、231C、231M、231K 感光体ドラム
232、232Y、232C、232M、232K 帯電器
234、234Y、234C、234M、234K トナーカートリッジ
236、236Y、236C、236M、236K 清掃器
236a ドクターブレード
【先行技術文献】
【特許文献】
【0195】
【特許文献1】特開2017‐215433号公報
【特許文献2】特開2007‐271856号公報
図1
図2
図3