(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151203
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】バッターミックス
(51)【国際特許分類】
A23L 7/157 20160101AFI20241017BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20241017BHJP
A23L 29/212 20160101ALI20241017BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L5/10 D
A23L29/212
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064422
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 未悠
(72)【発明者】
【氏名】山下 智史
【テーマコード(参考)】
4B025
4B035
【Fターム(参考)】
4B025LB06
4B025LB07
4B025LD03
4B025LG01
4B025LG04
4B025LG18
4B025LG28
4B025LG32
4B035LC03
4B035LE05
4B035LE17
4B035LG01
4B035LG15
4B035LG21
4B035LG35
4B035LG42
4B035LP07
(57)【要約】
【課題】少量の油で油ちょうしたときにも、衣が良好な食感を有する衣付き揚げ物食品を製造することができるバッターミックスの提供。
【解決手段】ソルガム粉及びリン酸架橋澱粉を含有するバッターミックス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソルガム粉及びリン酸架橋澱粉を含有するバッターミックス。
【請求項2】
さらに、穀粉及び澱粉からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1記載のバッターミックス。
【請求項3】
前記ソルガム粉の含有量が0.1~1.0質量%である、請求項1記載のバッターミックス。
【請求項4】
前記リン酸架橋澱粉の含有量が0.2~2.0質量%である、請求項1記載のバッターミックス。
【請求項5】
さらに膨張剤を含有し、該膨張剤が、第9版食品添加物公定書に記載される発生ガス測定法に従って測定したガス発生30秒後の発生ガス量が、40.0~70.0mL/gである、請求項1記載のバッターミックス。
【請求項6】
さらに植物性蛋白質を含有する、請求項1記載のバッターミックス。
【請求項7】
少量の油で油ちょうすることで製造される衣付き揚げ物食品用のバッター液の調製に使用するためのミックスである、請求項1記載のバッターミックス。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項記載のバッターミックスから調製したバッター液を付着させた具材を油ちょうすることを含む、衣付き揚げ物食品の製造方法。
【請求項9】
前記油ちょうが少量の油での油ちょうである、請求項8記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッターミックスに関する。
【背景技術】
【0002】
揚げ物食品は、各種の具材を、多くの場合衣材で被覆して、油ちょうすることにより製造される。油ちょうされた衣材は水分の蒸発により空隙を生じ、一部の空隙に油が置換する。その結果、得られた揚げ物食品は、衣がサクミのある食感と香ばしい風味を有する。
【0003】
近年、健康上の観点などから少量の油で揚げ物食品を製造することが少なくない。しかし、少量の油で油ちょうする場合、具材の投入により油温が急激に低下するため、調理に時間がかかり、又は衣の水分が蒸発しにくくなり、結果、揚げた衣がネチャついた又は硬い食感となる場合や、油っぽい食感となる場合があった。特に水分の多いバッター液タイプの衣材を用いる場合、この傾向が顕著であった。
【0004】
特許文献1には、少ない油でも外観と食感の良い揚げ物食品を製造できる揚げ物用ミックスとして、小麦粉、小麦粉以外の穀粉0.5~50質量%、乳化剤0.3~10質量%及び膨張剤0.05~5質量%を含有する揚げ物用ミックスが記載されている。特許文献2には、少量の油で油ちょうした場合であっても衣のべたつき感のない良好な食感の衣付き揚げ物食品を製造することができる揚げ物衣用ミックスとして、小麦粉を含む顆粒状物50~70質量%、α化澱粉0.5~3質量%、及びワキシーコーンスターチ1~10質量%を含有する揚げ物衣用ミックスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/204324号公報
【特許文献2】特開2022-124937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
少量の油で揚げ物食品を製造する場合、課題となるのは、具材投入に起因する油温低下や加熱ムラに伴う揚げ物食品の品質低下である。例えば、フライパンに深さ1~3cm程度の量の油で油ちょうする場合、具材を1個投入すると油温が6~8℃程度低下し得、よって5~6個の具材を一度に投入すると、油温は一気に30~50℃近く低下し得る。また少量の油での油ちょうは、具材の表面全体を一度に油で加熱できないため、加熱ムラが起こりやすい。これらの結果、少量の油で油ちょうした衣付き揚げ物食品は、衣の食感に硬さやネチャつきがあったり、油っぽさがあったりすることがある。
【0007】
本発明は、少量の油で油ちょうしたときにも、衣が良好な食感を有する衣付き揚げ物食品を製造することができるバッターミックスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、穀粉又は澱粉に加えて、ソルガム粉及びリン酸架橋澱粉を含有するバッターミックスを用いることで、少量の油で油ちょうしても、得られる揚げ衣が、硬くなり過ぎたりネチャついたり油っぽくならず、乾いてサクミのある良好な食感を有することを見出した。
【0009】
本発明は、代表的実施形態として、以下を提供する。
〔1〕ソルガム粉及びリン酸架橋澱粉を含有するバッターミックス。
〔2〕さらに、穀粉及び澱粉からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、〔1〕記載のバッターミックス。
〔3〕前記ソルガム粉の含有量が0.1~1.0質量%である、〔1〕又は〔2〕記載のバッターミックス。
〔4〕前記リン酸架橋澱粉の含有量が0.2~2.0質量%である、〔1〕~〔3〕のいずれか1項記載のバッターミックス。
〔5〕さらに膨張剤を含有し、該膨張剤が、第9版食品添加物公定書に記載される発生ガス測定法に従って測定したガス発生30秒後の発生ガス量が、40.0~70.0mL/gである、〔1〕~〔4〕のいずれか1項記載のバッターミックス。
〔6〕さらに植物性蛋白質を含有する、〔1〕~〔5〕のいずれか1項記載のバッターミックス。
〔7〕少量の油で油ちょうすることで製造される衣付き揚げ物食品用のバッター液の調製に使用するためのミックスである、〔1〕~〔6〕のいずれか1項記載のバッターミックス。
〔8〕〔1〕~〔7〕のいずれか1項記載のバッターミックスから調製したバッター液を付着させた具材を油ちょうすることを含む、衣付き揚げ物食品の製造方法。
〔9〕前記油ちょうが少量の油での油ちょうである、〔8〕記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のバッターミックスは、少量の油で油ちょうした衣付き揚げ物食品の衣の食感低下を防止する。本発明のバッターミックスは、少量の油で油ちょうしても、硬過ぎずネチャつきがなく油っぽさもない、乾いてサクミのある揚げ衣を提供する。本発明によれば、少量の油で油ちょうしても、衣が良好な食感を有する高品質の衣付き揚げ物食品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
衣材には、粉末状のまま具材にまぶして付着させるもの(いわゆるブレダー)と、水などの液体と混合して液状又はペースト状のバッター(いわゆるバッター液)に調製してから具材に付着させるものとがある。本発明のバッターミックスは、粉末状のままブレダーとして用いることもできるが、バッター液として用いることで、本発明の効果をより高く実現することができる。したがって、本発明のバッターミックスは、好ましくはバッター液の調製に使用される。本発明のバッターミックスから調製したバッター液を具材に付着させ、油ちょうすることで、衣付き揚げ物食品が製造される。好ましくは、該油ちょうは少量の油での油ちょうである。よって好ましくは、本発明のバッターミックスは、少量の油で油ちょうすることで製造される衣付き揚げ物食品用のバッター液の調製に使用するためのミックスである。
【0012】
本発明のバッターミックスは、ソルガム粉、及びリン酸架橋澱粉を含有する。ソルガム粉は、イネ科植物タカキビの種子の粉砕物である。一般的に、ソルガムは、タンニン含量によって、ソルガム、タンニンソルガム、ホワイトソルガム、及びミックスソルガムの4種類に分類される。このうち、タンニン含量が最も少ないホワイトソルガムを原料とするソルガム粉は、色調が良好で苦味が少ないため、本発明のバッターミックスに使用するソルガム粉として好ましい。
【0013】
本発明のバッターミックスにおける前記ソルガム粉の含有量は、該ミックスの全質量中、好ましくは0.05~1.2質量%、より好ましくは0.1~1.0質量%、さらに好ましくは0.2~0.8質量%である。該ミックスにおける該ソルガム粉の含有量が多過ぎる又は少な過ぎると、得られた揚げ物食品の衣が、サクミが低下したり油っぽくなる傾向がある。
【0014】
リン酸架橋澱粉は、原料澱粉を常法に従ってリン酸化剤で処理して架橋することによって得ることができる。該リン酸化剤としては、トリメタリン酸ナトリウム、オキシ塩化リンなどを用いることができる。本発明で用いるリン酸架橋澱粉は、リン酸架橋以外の加工処理、例えば、アセチル化、ヒドロキシプロピル化、リン酸モノエステル化等のアセチル化やエーテル化処理を施されたものであってもよいが、リン酸架橋以外の加工処理を施されていないことが好ましい。該リン酸架橋澱粉の原料澱粉としては、その種類は特に制限されないが、例えば、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、サツマイモ澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉などが挙げられる。これらの中では、タピオカ澱粉が好ましい。好ましくは、該原料澱粉は未加工澱粉である。本発明で用いるリン酸架橋澱粉には、市販品を用いることもできる。
【0015】
本発明のバッターミックスにおける前記リン酸架橋澱粉の含有量は、該ミックスの全質量中、好ましくは0.1~2.5質量%、より好ましくは0.2~2.0質量%、さらに好ましくは0.4~1.6質量%である。該ミックスにおける該リン酸架橋澱粉の含有量が多過ぎる又は少な過ぎると、得られた揚げ物食品の衣が、サクミが低下したり油っぽくなる傾向がある。
【0016】
本発明のバッターミックスは、前記ソルガム粉及びリン酸架橋澱粉に加えて、さらに穀粉及び澱粉からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。本明細書における「穀粉」とは、別途定義しない限り、前記ソルガム粉以外の穀粉を意味し、また本明細書における「澱粉」とは、別途定義しない限り、前記リン酸架橋澱粉以外の澱粉を意味する。また本明細書における「澱粉」とは、原料植物から抽出又は精製された澱粉を意味し、前記ソルガム粉や穀粉に内包される澱粉成分とは区別される。
【0017】
本発明のバッターミックスに含まれ得る前記穀粉としては、例えば、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、米粉、トウモロコシ粉、馬鈴薯粉、タピオカ粉、甘藷粉、及びこれらの熱処理粉などが挙げられ、このうち小麦粉が好ましい。該小麦粉としては、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉、デュラム粉などが挙げられ、このうち薄力粉が好ましい。また本発明のバッターミックスに含まれ得る前記澱粉としては、例えば、タピオカ澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、甘藷澱粉、サゴ澱粉、米澱粉等の未加工澱粉、ならびにそれらを加工した加工澱粉が挙げられる。該加工澱粉としては、該未加工澱粉にエーテル化、エステル化、アセチル化、α化、リン酸架橋以外の架橋処理、酸化処理、油脂加工等の処理の1つ以上を施したものが挙げられる。上記に例示した穀粉及び澱粉は、いずれか1種又はいずれか2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
本発明のバッターミックスにおける前記穀粉及び澱粉の合計含有量は、該ミックスの全質量中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上である。該穀粉及び澱粉の合計含有量が70質量%未満であると、得られた揚げ物食品の衣が硬くなり過ぎるか又は崩れやすくなる傾向がある。他方、該穀粉及び澱粉の合計含有量は、前記ソルガム粉及びリン酸架橋澱粉、ならびに後述するその他の成分の合計含有量の残部であればよく、特に限定されないが、該ミックスの全質量中、好ましくは99.85質量%以下、より好ましくは99.7質量%以下、さらに好ましくは99.4質量%以下である。
【0019】
本発明のバッターミックスに、比較的遅発性にガスを発生する膨張剤を含有させると、衣の乾いてサクミのある食感がより向上するため好ましい。より好適には、本発明で用いる膨張剤は、第9版食品添加物公定書(2018年、厚生労働省 消費者庁)に記載される発生ガス測定法(以下、「公定法」ともいう)に従って測定したガス発生30秒後の発生ガス量が、好ましくは40.0~70.0mL/g、より好ましくは44.0~65.0mL/g、さらに好ましくは46.0~61.0mL/gであるとよい。このようなガス発生能力を有する膨張剤を含有するバッターミックスから調製したバッター液は、少量の油を用いて、必要に応じて頻繁に反転させながら油ちょうするときに、加熱されている箇所の衣は適度にガス発生して膨化し、多孔質化した状態で硬化する一方、その近傍の衣は発生したガスにより荒らされることがないため、好ましい。
【0020】
前記公定法は、第9版食品添加物公定書の「32.発生ガス測定法」に記載されている、合成膨張剤から発生するガス量を測定する方法である。なお、前記の第9版食品添加物公定書に記載される公定法では、ガス発生3分後の発生ガス量を測定するが、本発明で用いる膨張剤の発生ガス量は、公定法の手順に従って、ただしガス発生30秒後の発生ガス量を測定して得られた値である。
【0021】
より詳細には、本発明で用いる膨張剤についての、前記公定法に従うガス発生30秒後の発生ガス量の測定手順は以下のとおりである。
(装置)
以下の器具を準備する。
A:ガス発生用丸底フラスコ(容量約300mL)
B:水浴
C:酸滴加漏斗
D:冷却器
E:三方コック
F:外とう管付ガスビュレット(容量約300mLで1mLごとに目盛を付けたもの)
G:水準瓶(容量約400mL)
H:温度計
器具を配置して測定装置を構築する。器具の配置は、第9版食品添加物公定書「発生ガス測定法」に従う。大まかに説明すると次のとおりである:AはB中に設置される。AにCが接続される。またAは、D及びEを順に介して、Fと接続される。Fの下部にはゴム管が接続され、これを介してFとGが接続される。またFには、内部の温度を測定するためHが設置される。
【0022】
(置換溶液の調製)
塩化ナトリウム100gを量り、水350mLを加えて溶かし、炭酸水素ナトリウム1gを加え、メチルオレンジ試液に対してわずかに酸性を呈するまで塩酸(1→3)を加える。
【0023】
(手順)
水100mLを入れたAに、試料(膨張剤)2.0gを投入し、装置を連結し、Eを開放にして、Gを上下して内部の置換溶液を移動させ、Fの目盛のゼロに合わせる。Dに水を流し、Eを回してD及びFを貫通させた後、Cから塩酸(1→3)20mLを滴加し、直ちにCのコックを閉じ、時々フラスコAを緩やかに振り動かしながら、75℃の水浴B中で加熱し、F中の液面の低下に応じてGを下げる。30秒後にF及びGの液面を平衡にしたときの液面の目盛V(mL)を読み、同時にHで発生ガスの温度t℃を読み取る。次式により標準状態における発生ガス量V0(mL)を求める。別に空試験値v(mL)を求めて補正する。
V0(mL)=(V-v)×{(P-p)/101}×(273/273+t)
P:測定時における大気圧(kPa)
p:t℃における水の蒸気圧(kPa)
【0024】
本発明で用いる前記膨張剤は、ガス発生剤と酸性剤を必須成分として含有する。該ガス発生剤及び酸性剤は、食用に用いられるものを使用することができる。該ガス発生剤の例としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウムなどが挙げられ、これらのいずれか1種以上を用いることができる。該酸性剤の例としては、酒石酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カルシウム、酒石酸、ミョウバン、フマル酸、リン酸ナトリウム、グルコノデルタラクトン、酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性リン酸アルミニウムナトリウムなどが挙げられ、これらのいずれか1種又はいずれか2種以上を組み合わせて用いることができる。あるいは、本発明で用いる膨張剤は、市販の膨張剤を適宜選択して組み合わせたものや、市販のガス発生剤と酸性剤を適宜選択して組み合わせたものであってもよい。
【0025】
前記のガス発生能力を有する膨張剤は、前述したガス発生剤と酸性剤、又は市販の膨張剤を適宜組み合わせて試料とし、これを公定法に従って測定することで、過度の試行錯誤をすることなく選択することができる。膨張剤のガス発生能力を前記の範囲に調整しやすいため、酸性剤としては、リン酸二水素ナトリウム、酒石酸水素カリウム及びグルコノデルタラクトンからなる群より選択される1種以上を用いることが好ましい。
【0026】
本発明で用いる膨張剤は、必要に応じて、前述したガス発生剤と酸性剤以外の成分、例えば賦形剤、遮断剤等を含有していてもよい。
【0027】
本発明のバッターミックスにおける前記膨張剤の含有量は、該ミックスの全質量中、好ましくは0.05~1.8質量%、より好ましくは0.1~1.5質量%、さらに好ましくは0.3~1.2質量%である。該ミックスにおける該膨張剤の含有量が多すぎると、調理中に衣が弾けて油跳ねしやすくなる場合がある。
【0028】
本発明のバッターミックスに植物性蛋白質を含有させると、衣の保形性が高まり、油っぽさが低下するため好ましい。該植物性蛋白質としては、例えば、グルテン、グリアジン、グルテニン、ゼイン、カフィリン等が挙げられ、このうち、グルテンが好ましい。これらの植物性蛋白質は、いずれか1種又はいずれか2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
本発明のバッターミックスにおける前記植物性蛋白質の含有量は、該ミックスの全質量中、好ましくは0.03~1.0質量%、より好ましくは0.06~0.5質量%、さらに好ましくは0.09~0.2質量%である。該ミックスにおける植物性蛋白質の含有量が少なすぎると、植物性蛋白質を使用する意義に乏しく、他方、該ミックスにおける植物性蛋白質の含有量が多すぎると、衣が硬くなる場合がある。
【0030】
本発明のバッターミックスは、前記の成分(ソルガム粉、リン酸架橋澱粉、穀粉類、膨張剤、植物性蛋白質)の他に、必要に応じて他の成分、例えば、糖類;全卵粉、卵白粉等の卵粉;増粘剤;食塩、粉末醤油、発酵調味料、粉末味噌、アミノ酸等の調味料;香辛料;香料;ビタミン等の栄養成分;着色料;粉末油脂、などを含有することができる。これらの他の成分は、所望する揚げ物食品の特性等に応じて、いずれか1種又はいずれか2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明のバッターミックスにおける当該他の成分の含有量は、適宜調整すればよく特に制限されないが、該ミックスの全質量中、好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0031】
本発明のバッターミックスは、前述した各成分を混合することで調製することができる。本発明のバッターミックスは、常温常圧下において粉体である。該ミックスは、そのまま具材に直接まぶして付着させる衣材(ブレダー)として使用することも可能であるが、好ましくはバッター液用のミックスである。よって好ましくは、本発明のバッターミックスは、バッター液へと調製されてから具材の衣付けに使用される。
【0032】
前記バッター液は、常法に従い、本発明のバッターミックスを水などの液体と混合することで調製することができる。該バッター液の調製に使用する液体は、バッター液の調製に通常使用され得るものであればよく、好ましくは水である。該液体の使用量は、所望する揚げ物の特性等に応じて適宜調整すればよく、特に制限されないが、好ましくは、バッターミックス100質量部に対して150~300質量部である。
【0033】
本発明のバッターミックスは、衣付き揚げ物の製造に使用される。本発明のバッターミックスを用いた衣付き揚げ物の製造方法は、好ましくは、本発明のバッターミックスから調製したバッター液が付着した具材を油ちょうすることを含む。
【0034】
本発明のバッターミックスを用いて製造される衣付き揚げ物食品としては、好ましくは一般にバッター液を用いて製造されるもの、例えば、とんかつやコロッケ等のパン粉付きフライ、天ぷら、から揚げ、フライドチキン、フリッターなどが挙げられる。好ましくは、該衣付き揚げ物食品は天ぷらである。
【0035】
本発明の衣付き揚げ物食品の具材は、特に制限されないが、例えば、鶏、豚、牛、羊、ヤギなどの畜肉類;加工肉類;イカ、エビ、アジなどの魚介類;野菜類、などが挙げられる。該具材に対して、本発明のバッターミックスから調製したバッター液(以下、本発明のバッター液ともいう)を、通常の手順に従って付着させればよい。該具材に対する本発明のバッター液の付着量は、所望する揚げ物食品の特性等に応じて適宜調整すればよく、特に制限されないが、具材100質量部に対して、好ましくは8~35質量部、より好ましくは10~27質量部である。さらに、本発明のバッター液を付着させた具材に、別の衣材、例えばパン粉などのブレッダーを付着させてもよい。かくして得られた該バッター液が付着した具材(揚げ物用素材)を油ちょうすることで、本発明の衣付き揚げ物食品が製造される。
【0036】
前記油ちょうに使用する油は、植物性油でも動物性油でもよく、例えば、菜種油、サフラワー油、大豆油、ごま油、ラード、ヘットなどが挙げられる。該油ちょうにおける油の温度は、所望する揚げ物食品の特性等に応じて適宜調整すればよく、特に制限されないが、通常150~180℃である。
【0037】
前記油ちょうは、多量の油での油ちょう、いわゆるディープフライでもよいが、好ましくは、少量の油での油ちょう、例えばパンフライ(pan fry)又はソテー(sauter)である。本発明における該「少量の油」とは、油ちょうに用いる油槽の底面と油面との距離(深さ)が1~3cm、好ましくは1~2.5cmとなるような量の油をいう。該少量の油での油ちょうには、浅底の調理器具、例えば、内部の高さ(底部から上部開口までの長さ)が最大で50mm以内の器具を好適に使用することができる。このような調理器具としては、フライパン(frying pan)等の浅型鍋(pan)が挙げられる。
【実施例0038】
次に本発明をさらに具体的に説明するために実施例を掲げるが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
〔製造例〕バッターミックスの調製
表1~5に示す原料を混合してバッターミックスを製造した。使用した原料の詳細は下記の通りである。膨張剤の発生ガス量は、前記の公定法に従って測定した。
・ソルガム粉(中野産業製「ホワイトソルガム粉」:ホワイトソルガム)
・ライ麦粉(日清製粉製「アーレファイン」)
・米粉(日の本穀粉製「ル・マロニエ」)
・リン酸架橋澱粉(グリコ栄養食品製「RK-20」)
・酸化澱粉(松谷化学工業製「スタビローズK」)
・膨張剤A(奥野製薬工業製「トップふくらし粉RK-8」:ガス発生30秒後の発生ガス量=39.0mL/g)
・膨張剤B(膨張剤Aと膨張剤Cを混合、調製したもの:ガス発生30秒後の発生ガス量=55.0mL/g)
・膨張剤C(奥野製薬工業製「トップふくらし粉860」:ガス発生30秒後の発生ガス量=71.0mL/g)
・グルテン(グリコ栄養食品製「AグルG」)
・薄力粉(日清製粉ウェルナ製「フラワー」)
【0040】
〔試験例1〕
〔製造例〕で調製した各バッターミックス100質量部に、水180質量部を添加、混合してバッター液を調製した。具材として殻を除いたエビ(ブラックタイガー:厚み約1.5cm)を用意した。前記エビ100質量部に対して前記バッター液を12質量部付着させた。直径30cmのフライパンにその底部からの高さが1.5cmとなるように油を入れて170℃に加熱し、これに同じバッター液が付着したエビ10尾を一度に投入し、3分油ちょうしてエビ天ぷらを製造した。各バッターミックスについて各々10尾のエビ天ぷらを製造した。
【0041】
製造直後のエビ天の食感(サクミ及び油っぽさ)を、10名の専門パネラーにより下記評価基準に従って評価し、10名の評価の平均値を求めた。結果を表1~5に示す。
【0042】
<評価基準>
(サクミ)
5点:衣に非常にサクミがあって歯もろさに富み、極めて良好。
4点:衣にサクミがあり、良好。
3点:衣にサクミがあり、わずかにネチャつきが感じされるが、許容できる。
2点:衣がやや硬いかややネチャついており、サクミが物足りず、不良。
1点:衣が硬すぎるかネチャつきが強く、サクミがなく、極めて不良。
(油っぽさ)
5点:衣が非常にカラッとしていて、極めて良好。
4点:衣がカラッとしており、良好。
3点:衣にわずかに油っぽさが感じされるが、許容できる。
2点:衣が油っぽく、不良。
1点:衣が非常に油っぽく、極めて不良。
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】