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特開2024-151224材料特性を予測する方法、情報処理装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151224
(43)【公開日】2024-10-24
(54)【発明の名称】材料特性を予測する方法、情報処理装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16C 20/30 20190101AFI20241017BHJP
   G16C 20/70 20190101ALI20241017BHJP
【FI】
G16C20/30
G16C20/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064454
(22)【出願日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(72)【発明者】
【氏名】北出 祐也
(57)【要約】
【課題】材料特性を予測する技術を改善する。
【解決手段】情報処理装置が実行する材料特性を予測する方法であって、材料の分析チャートを説明変数とし、前記材料の材料特性を目的変数とする実績データに基づき予測モデルを生成するステップと、予測モデルに基づき材料特性を予測するステップと、を含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置が実行する材料特性を予測する方法であって、
材料の分析チャートを説明変数とし、前記材料の材料特性を目的変数とする実績データに基づき予測モデルを生成するステップと、
前記予測モデルに基づき材料特性を予測するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記分析チャートは、高分子材料の分析チャートであり、前記材料特性は、前記高分子
材料のレオロジー特性である、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記分析チャートは、前記材料の分子構造を示す分析チャート、及び前記材料の分子量情報を含む分析チャートである、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
前記分子構造を示す分析チャートはIRチャートであり、前記分子量情報を含む分析チャートはGPCチャートである、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記レオロジー特性が粘弾特性であることを特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、さらに、
前記分析チャートを圧縮した圧縮データを生成するステップを含み、
前記圧縮データを説明変数として前記予測モデルを生成する方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
前記圧縮データを生成するステップは、オートエンコーダにより実行される、方法。
【請求項8】
請求項2に記載の方法であって、さらに、
前記実績データは、所定用途で使用される高分子材料のデータと、前記所定用途以外で使用される高分子材料の実績データとを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項5に記載の方法であって、さらに、
前記実績データは、粘接着剤用途で使用される高分子材料のデータと、粘接着剤用途以外で使用される高分子材料の実績データとを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法であって、さらに、
前記分析チャートからチャート領域を選定するステップを含み、前記チャート領域として選定された部分を説明変数として前記予測モデルを生成する方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項のいずれか一項に記載の方法であって、
前記予測モデルは、ニューラルネットワークモデルであり、予測する特性値のチャートの複数の数値を目的変数に対応する形で多数出力する、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
前記ニューラルネットワークモデルが畳み込みニューラルネットワーク、又は再帰型ニューラルネットワーク、又は注意機構を有するニューラルネットワークであることを特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項5~7、又は9のいずれか一項に記載の方法であって、さらに、
粘弾特性を説明変数とし、接着特性を目的変数とする粘接着材料の実績データに基づき接着特性予測モデルを生成するステップと、
前記接着特性予測モデルに基づき、前記粘弾特性から、前記高分子材料を原料とする粘接着材料の接着特性を予測するステップと、
を含む方法。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法であって、さらに、
前記予測モデルを用いた逆解析により、所望の材料特性を有する分析チャートを探索するステップを含む、方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法であって、さらに、
前記接着特性予測モデルを用いた逆解析により、所望の接着特性を有する高分子材料の粘弾特性を探索するステップと、
前記予測モデルを用いた逆解析により、前記探索するステップで探索された粘弾特性を有するIRチャート及びGPCチャートを探索するステップと、
を含む方法。
【請求項16】
制御部を備え、材料特性を予測する情報処理装置であって、
前記制御部は、
材料の分析チャートを説明変数とし、前記材料の材料特性を目的変数とする実績データに基づき予測モデルを生成し、
前記予測モデルに基づき材料特性を予測する、情報処理装置。
【請求項17】
情報処理装置が実行する材料特性を予測するプログラムであって、コンピュータに、
材料の分析チャートを説明変数とし、前記材料の材料特性を目的変数とする実績データに基づき予測モデルを生成することと、
前記予測モデルに基づき材料特性を予測することと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、材料特性を予測する方法、情報処理装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から機械学習等により材料特性を予測する技術等が知られている。例えば特許文献1には、ポリマーの物性を予測する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-074095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、学習モデルを訓練する際に、材料の分子構造等の特徴量ベクトルを説明変数として用いることを前提としている。つまり従来の材料の特性を予測する方法としては、材料の組成、構造等を使用し、ある特定温度域の材料特性を目的変数として予測モデルを生成する方法が一般的に考えられてきた。しかしながら、従来の方法では、材料の組成・構造等が既知であることが前提であったため、組成・構造が不明な材料については、予測することができなかった。このように材料特性を予測する技術には改善の余地があった。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、材料特性を予測する技術を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の一実施形態に係る方法は、
情報処理装置が実行する材料特性を予測する方法であって、
材料の分析チャートを説明変数とし、前記材料の材料特性を目的変数とする実績データに基づき予測モデルを生成するステップと、
前記予測モデルに基づき材料特性を予測するステップと、
を含む。
【0007】
(2)本開示の一実施形態に係る方法は、(1)に記載の方法であって、
前記分析チャートは、高分子材料の分析チャートであり、前記材料特性は、前記高分
子材料のレオロジー特性である。
【0008】
(3)本開示の一実施形態に係る方法は、(1)又は(2)に記載の方法であって、
前記分析チャートは、前記材料の分子構造を示す分析チャート、及び前記材料の分子量情報を含む分析チャートである。
【0009】
(4)本開示の一実施形態に係る方法は、(1)~(3)のいずれか一項に記載の方法であって、
前記構造を示す分析チャートはIRチャートであり、前記分子量情報を含む分析チャートはGPCチャートである。
【0010】
(5)本開示の一実施形態に係る方法は、(1)~(4)のいずれか一項に記載の方法であって、前記レオロジー特性が粘弾特性であることを特徴とする。
【0011】
(6)本開示の一実施形態に係る方法は、(1)~(5)のいずれか一項に記載の方法であって、さらに
前記分析チャートを圧縮した圧縮データを生成するステップを含み、
前記圧縮データを説明変数として前記予測モデルを生成する。
【0012】
(7)本開示の一実施形態に係る方法は、(6)に記載の方法であって、
前記圧縮データを生成するステップは、オートエンコーダにより実行される。
【0013】
(8)本開示の一実施形態に係る方法は、(2)~(7)に記載の方法であって、さらに、
前記実績データは、所定用途で使用される高分子材料のデータと、前記所定用途以外で使用される高分子材料の実績データとを含む。
【0014】
(9)本開示の一実施形態に係る方法は、(5)に記載の方法であって、さらに、
前記実績データは、粘接着剤用途で使用される高分子材料のデータと、粘接着剤用途以外で使用される高分子材料の実績データとを含む。
【0015】
(10)本開示の一実施形態に係る方法は、(1)~(9)のいずれか一項に記載の方法であって、さらに、
前記分析チャートからチャート領域を選定するステップを含み、前記チャート領域として選定された部分を説明変数として前記予測モデルを生成する方法。
【0016】
(11)本開示の一実施形態に係る方法は、(1)~(10)のいずれか一項に記載の方法であって、前記予測モデルは、ニューラルネットワークモデルであり、予測する特性値のチャートの複数の数値を目的変数に対応する形で多数出力する。
【0017】
(12)本開示の一実施形態に係る方法は、(11)に記載の方法であって前記ニューラルネットワークモデルが畳み込みニューラルネットワーク、又は再帰型ニューラルネットワーク、又は注意機構を有するニューラルネットワークであることを特徴とする、方法。
【0018】
(13)本開示の一実施形態に係る方法は、(5)~(7)、又は(9)のいずれか一項に記載の方法であって、さらに、
粘弾特性を説明変数とし、接着特性を目的変数とする粘接着材料の実績データに基づき接着特性予測モデルを生成するステップと、
前記接着特性予測モデルに基づき、前記粘弾特性から、前記高分子材料を原料とする粘接着材料の接着特性を予測するステップと、を含む。
【0019】
(14)本開示の一実施形態に係る方法は、(1)~(12)のいずれか一項に記載の方法であって、さらに、
前記予測モデルを用いた逆解析により、所望の材料特性を有する分析チャートを探索するステップを含む。
【0020】
(15)本開示の一実施形態に係る方法は、(13)に記載の方法であって、さらに、
前記接着特性予測モデルを用いた逆解析により、所望の接着特性を有する高分子材料の粘弾特性を探索するステップと、
前記予測モデルを用いた逆解析により、前記探索するステップで探索された粘弾特性を有するIRチャート及びGPCチャートを探索するステップと、
を含む。
【0021】
(16)本開示の一実施形態に係る情報処理装置は、
制御部を備え、材料特性を予測する情報処理装置であって、
前記制御部は、
材料の分析チャートを説明変数とし、前記材料の材料特性を目的変数とする実績データに基づき予測モデルを生成し、
前記予測モデルに基づき材料特性を予測する。
【0022】
(17)本開示の一実施形態に係るプログラムは、
情報処理装置が実行する材料特性を予測するプログラムであって、コンピュータに、
材料の分析チャートを説明変数とし、前記材料の材料特性を目的変数とする実績データに基づき予測モデルを生成することと、
前記予測モデルに基づき材料特性を予測することと、
を実行させる。
【発明の効果】
【0023】
本開示の一実施形態に係る材料特性を予測する方法、情報処理装置、及びプログラムによれば、材料特性を予測する技術を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】粘接着材料の一例を示す図である。
図2】貯蔵弾性率の一例を示す図である。
図3】損失弾性率の一例を示す図である。
図4】損失正接の一例を示す図である。
図5】本開示の一実施形態に係る予測技術の概要を示す図である。
図6】本開示の一実施形態に係る情報処理装置の概略構成を示すブロック図である。
図7】本開示の一実施形態に係る材料特性を予測する方法を示すフローチャートである。
図8】本開示の一実施形態に係る予測技術による予測結果と実験結果の比較グラフを示す。
図9】本開示の一実施形態に係る予測技術により予測した損失正接に係る予測値と実測値との関係を示すグラフを示す。
図10】接着特性の予測方法を概念的に示す図である。
図11】学習用データセットの一例を示す図である。
図12】所望の材料特性を有する分析チャートを探索する方法を示すフローチャートである。
図13】所望の粘着特性を有する分析チャートを探索する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の実施形態に係る材料特性を予測する技術ついて、図面を参照して説明する。
【0026】
各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付している。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0027】
(予測対象)
本開示の一実施形態に係る材料特性を予測する技術の予測対象は、例えば粘接着材料用の高分子材料のレオロジー特性である。レオロジー特性とは物質の変形と流動に関わる特性であり、粘弾特性、引張強度、応力緩和、クリープ、塑性流動性、チキソトロピー性等が挙げられる。ただし材料特性を予測する技術の予測対象はこれに限られない。予測対象の材料は、例えば、有機化合物、無機化合物、低分子材料、高分子材料等であってよく、より具体的には強化炭素繊維プラスチックなどであってよい。また予測対象の材料特性もこれらの任意の特性であってよい。以下本実施の形態では、予測対象が高分子材料の粘弾特性である場合について説明する。
【0028】
まず図1を参照して、粘接着材料について説明する。図1は、粘接着材料の一例を示す図である。
【0029】
本明細書における「粘接着材料」とは、物と物とを接合する機能を有する材料を意味する。粘接着材料としては、たとえば、粘着テープおよび接着剤などが挙げられる。以下では、粘接着材料として粘着テープを例に挙げて説明を行うが、粘接着材料は、粘着テープに限定されない。
【0030】
粘着テープは、片面テープであってもよいし、両面テープであってもよい。また、粘着テープの用途は、特に限定されず、工業用であってもよいし、家庭用であってもよい。粘着テープの種類としては、たとえば、中芯レステープ、不織布中芯テープ、フィルム中芯テープ、発泡体中芯テープ、金属箔中芯テープなどが挙げられる。
【0031】
図1には、粘接着材料10の一例である片面粘着テープ10Aが示されている。片面粘着テープ10Aは、たとえば、シート状の中芯基材12と、粘着剤14と、剥離剤16とで構成されている。
【0032】
中芯基材12の種類は特に限定されない。中芯基材12は、プラスチックフィルムであってもよいし、紙であってもよいし、発泡体であってもよいし、金属箔であってもよいし、その他の種類のシートであってもよい。
【0033】
中芯基材12の一方の面には、粘着剤14が塗られている。中芯基材12の他方の面には、剥離剤16が塗られている。
【0034】
剥離剤16は、片面粘着テープ10Aがロール状に巻かれている状態で粘着剤14を覆い、接着力が落ちないように粘着剤14を保護する。
【0035】
粘接着材料用の粘接着剤となる高分子材料の粘弾特性には、温度依存性がある。かかる粘弾特性は例えば粘弾特性チャート(以下、粘弾性チャートともいう。)により示される。粘弾性チャートは、具体的には例えば、貯蔵弾性率、損失弾性率、及び損失正接のチャートを含む。
【0036】
貯蔵弾性率は、粘接着剤が変形する際に弾性エネルギーとして粘接着剤内に貯蔵されるエネルギーの成分に相当し、粘接着剤の硬さの程度を表す指標である。
【0037】
図2は、貯蔵弾性率の一例を示す図である。図2の例では、温度が「T」で示されており、温度Tにおける貯蔵弾性率が「G1(T)」で示されている。
【0038】
損失弾性率は、粘接着剤が変形する際に内部摩擦などにより散逸される損失エネルギーの成分に相当し、粘接着剤の粘性の程度を表す指標である。
【0039】
図3は、損失弾性率の一例を示す図である。図3の例では、温度が「T」で示されており、温度Tにおける損失弾性率が「G2(T)」で示されている。
【0040】
損失正接は、貯蔵弾性率「G1(T)」と損失弾性率「G2(T)」との比で表される。典型的には、損失正接「tanδ(T)」は、下記式(1)で示される。
【0041】
tanδ(T)=G2(T)/G1(T)・・・(1)
図4は、損失正接の一例を示す図である。図4の例では、温度が「T」で示されており、温度Tにおける損失正接が「tanδ(T)」で示されている。
【0042】
後述するように、高分子材料の粘弾特性、すなわち粘弾性チャートが予測できれば、当該高分子材料を用いた粘接着材料の物性を把握することができる。本実施形態に係る予測技術は、例えば当該高分子材料の粘弾特性を予測する場合に用いることができる。
【0043】
(本実施形態の概要)
図5を参照して、本実施形態の概要について説明する。本開示の実施形態に係る材料特性を予測する技術は、情報処理装置により実行される。また本開示の実施形態に係る材料特性を予測する技術は、材料の分析チャートを説明変数とし、材料の材料特性を目的変数とする実績データに基づき予測モデル4を生成する。ここで材料の分析チャートは、材料の分析機器によって出力される二次元で表示されるデータである。かかる予測モデル4を用いて、材料の分析チャートから、当該材料の材料特性が予測される。図5に示すように、材料の分析チャートを予測モデル4に入力し、材料特性を予測する。ここでは高分子材料の分析チャートとして、IRチャートのデータ1と、GPCチャートのデータ2とを入力としている。また材料特性として、粘弾性チャートのデータ3が出力されている。
【0044】
このように本開示の実施形態に係る材料特性を予測する技術によれば、材料の分析チャートを説明変数としている。そのため、組成・構造が不明な材料であったとしても、分析チャートが得られれば材料特性を予測できるという点で、材料特性を予測する技術が改善される。
【0045】
(情報処理装置の構成)
次に、情報処理装置20の各構成について詳細に説明する。情報処理装置20は、ユーザによって使用される任意の装置である。例えばパーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、汎用の電子機器、又は専用の電子機器が、情報処理装置20として採用可能である。
【0046】
図6に示されるように、情報処理装置20は、制御部21と、記憶部22と、入力部23と、出力部24とを備える。
【0047】
制御部21には、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの組み合わせが含まれる。プロセッサは、CPU(central processing unit)若しくはGPU(graphics processing unit)などの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(field-programmable gate array)又はASIC(application specific integrated circuit)である。制御部21は、情報処理装置20の各部を制御しながら、情報処理装置20の動作に関わる処理を実行する。
【0048】
記憶部22には、少なくとも1つの半導体メモリ、少なくとも1つの磁気メモリ、少なくとも1つの光メモリ、又はこれらのうち少なくとも2種類の組み合わせが含まれる。半導体メモリは、例えば、RAM(random access memory)又はROM(read only memory)である。RAMは、例えば、SRAM(static random access memory)又はDRAM(dynamic random access memory)である。ROMは、例えば、EEPROM(electrically erasable programmable read only memory)である。記憶部22は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部22には、情報処理装置20の動作に用いられるデータと、情報処理装置20の動作によって得られたデータとが記憶される。
【0049】
入力部23には、少なくとも1つの入力用インタフェースが含まれる。入力用インタフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーンである。また入力用インタフェースは、例えば、音声入力を受け付けるマイクロフォン、又はジェスチャー入力を受け付けるカメラ等であってもよい。入力部23は、情報処理装置20の動作に用いられるデータを入力する操作を受け付ける。入力部23は、情報処理装置20に備えられる代わりに、外部の入力機器として情報処理装置20に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)、又はBluetooth(登録商標)などの任意の方式を用いることができる。
【0050】
出力部24には、少なくとも1つの出力用インタフェースが含まれる。出力用インタフェースは、例えば、情報を映像で出力するディスプレイ等である。ディスプレイは、例えば、LCD(liquid crystal display)又は有機EL(electro luminescence)ディスプレイである。出力部24は、情報処理装置20の動作によって得られるデータを表示出力する。出力部24は、情報処理装置20に備えられる代わりに、外部の出力機器として情報処理装置20に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB、HDMI(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)などの任意の方式を用いることができる。
【0051】
情報処理装置20の機能は、本実施形態に係るプログラムを、情報処理装置20に相当するプロセッサで実行することにより実現される。すなわち、情報処理装置20の機能は、ソフトウェアにより実現される。プログラムは、情報処理装置20の動作をコンピュータに実行させることで、コンピュータを情報処理装置20として機能させる。すなわち、コンピュータは、プログラムに従って情報処理装置20の動作を実行することにより情報処理装置20として機能する。
【0052】
本実施形態においてプログラムは、コンピュータで読取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読取り可能な記録媒体は、非一時的なコンピュータ読取可能な媒体を含み、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、又は半導体メモリである。プログラムの流通は、例えば、プログラムを記録したDVD(digital versatile disc)又はCD-ROM(compact disc read only memory)などの可搬型記録媒体を販売、譲渡、又は貸与することによって行う。またプログラムの流通は、プログラムを外部サーバのストレージに格納しておき、外部サーバから他のコンピュータにプログラムを送信することにより行ってもよい。またプログラムはプログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0053】
情報処理装置20の一部又は全ての機能が、制御部21に相当する専用回路により実現されてもよい。すなわち、情報処理装置20の一部又は全ての機能が、ハードウェアにより実現されてもよい。
【0054】
次に図7のフローチャートを参照して、本開示の一実施形態に係る材料特性を予測する技術を示す。特にここでは、高分子材料の粘弾特性、すなわち粘弾性チャートを予測する技術について説明する。
【0055】
ステップS101:情報処理装置20の制御部21は、予測モデル4を生成する。具体的には、制御部21は、材料の分析チャートを説明変数とし、材料の材料特性を目的変数とする実績データに基づき予測モデル4を生成する。具体的には、高分子材料の分析チャートを説明変数とする。
【0056】
より具体的には、材料の分析チャートは、材料の分子構造を示す分析チャートと、材料の分子量情報を含む分析チャートを含む。具体的には例えば材料の分子構造を示す分析チャートは、IR、ラマン、NMR、X線スペクトルを含む。また例えば材料の分子量情報を含む分析チャートは、GPC、SEC、FFF、電揺動等を含む。
【0057】
高分子材料の粘弾特性を目的変数として予測する場合、説明変数として使用される材料の分子構造を示す分析チャートは、IRチャートを使用することが望ましい。IRチャートは、材料の分子構造を示す分析チャートとして測定が容易である。さらに、高分子のレオロジー特性に重要となる官能基の構造や架橋密度の状態を説明変数として反映することができる。材料の分子量情報を含む分析チャートは、GPCチャートを使用することが望ましい。GPCチャートは、分子量情報を含む分析チャートとして測定が容易かつ測定精度が高い。さらに、平均分子量等の単一な情報ではなく、分子量の分布情報を説明変数と使用することにより高分子材料のバルク全体の情報を反映することができ、粘弾特性を精度良く予測することが可能となる。換言すると、高分子の構造に対応する情報としてIRチャートが用いられ、高分子の大きさの分布に対応する情報としてGPCチャートを使うことで、予測モデル4の予測精度を向上させることができる。目的変数である高分子材料の粘弾特性、すなわち粘弾性チャートは、例えば、貯蔵弾性率、損失弾性率、及び損失正接のチャートを含む。
【0058】
予測モデル4の生成における学習処理は任意の手法が採用されてよい。例えば、予測モデル4は、ニューラルネットワークモデルであり、この場合、予測する特性値のチャートの複数の数値を目的変数に対応する形で多数出力する。具体的には例えば予測モデル4は、全結合ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、又は再帰型ニューラルネットワーク、又は注意機構を有するニューラルネットワークであってよい。ただし学習処理において採用される機械学習アルゴリズムは、ニューラルネットワークモデルに限定されず、たとえば、ディープラーニング(深層学習)などのニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、ガウス過程回帰モデル、または決定木系などの種々の機械学習アルゴリズムが採用され得る。ガウス過程回帰モデルを使用した場合には予測値とともに予測の標準偏差や分散等の情報を得ることができるため、これらの数値情報から目標値の達成確率を計算することが可能となる。このため、ガウス過程回帰モデルを使用した場合には達成確率を基に目標特性を満たす実験計画の策定を行うことも可能である。
【0059】
ここで、制御部21は、分析チャートを圧縮した圧縮データを生成してもよい。また予測モデル4の教師データとして、当該圧縮データが用いられてよい。かかるデータの圧縮において、オートエンコーダにより圧縮処理が実行されてよい。また目的変数についても、オートエンコーダにより圧縮処理がされてよい。このような圧縮データを用いることで、予測モデル4の過学習を防止することができる。オートエンコーダは、ニューラルネットワークを使用して圧縮する処理であり、全結合型ニューラルネットワークによる情報圧縮に加えて、畳み込構造、再帰型構造、注意機構等の各種処理構造と併用して圧縮される方法も使用することができる。また情報を圧縮する際に確率分布を考慮した変分オートエンコーダ等も使用することができる。
【0060】
なお、制御部21は、分析チャートからチャート領域を選定し、当該チャート領域のチャートを説明変数として予測モデル4を生成してもよい。換言すると、本実施形態における方法において、分析チャートからチャート領域を選定するステップを含み、チャート領域として選定された部分を説明変数として予測モデル4を生成してもよい。
【0061】
ステップS102:制御部21は、生成した予測モデル4により、材料特性を予測する。例えば制御部21は、入力部23等により取得した材料の分析チャートと予測モデル4とに基づき、材料の材料特性を予測する。より具体的には、制御部21は、高分子材料のIRチャート及びGPCチャートに基づき、粘弾特性を予測する。
【0062】
図8に、本実施形態に係る予測モデル4を用いて予測した高分子材料の粘弾特性の予測モデル4による予測結果と実験結果の比較グラフを示す。図8は、損失正接のチャートであり、本実施形態に係る予測モデル4による予測結果と実験結果とが概ね一致していることがわかる。図9は、本実施形態に係る予測モデル4を用いて予測した損失正接に係る予測値と実測値との関係を示すグラフを表している。図9のグラフからも、本実施形態に係る予測モデル4による予測結果と実験結果とが概ね一致していることがわかる。
【0063】
このように本開示の実施形態に係る材料特性を予測する技術では、材料の分析チャートを説明変数としている。そのため、本開示の実施形態に係る材料特性を予測する技術によれば、組成・構造が不明な材料であったとしても、分析チャートが得られれば材料特性を予測できるという点で、材料特性を予測する技術が改善される。
【0064】
なお、実績データは、所定用途で使用される高分子材料のデータと、所定用途以外で使用される高分子材料の実績データが含まれてよい。この場合、ステップS101の予測モデル4を生成するステップにおいて、所定用途以外で使用される高分子材料のデータを用いて予測モデル4を生成した後に、所定用途で使用される高分子材料のデータを用いて予測モデル4を再学習してもよい。このように予測モデル4を生成する処理において、学習に用いる教師データに広範囲の用途の組成物を含むことにより、外挿による精度の低下を防止することができる。より具体的には、粘接着剤用途以外で使用される高分子材料のデータを用いて予測モデル4を生成した後に、粘接着剤用途で使用される高分子材料のデータを用いて予測モデル4を再学習してもよい。このように予測モデル4を生成する処理において、学習に用いる教師データに広範囲の用途の組成物を含むことにより、外挿による精度の低下を防止することができる。
【0065】
(変形例1)
上記の実施形態では、情報処理装置20が予測モデル4により粘弾特性を予測する例を示したが、さらに予測モデル4により予測された高分子材料の粘弾特性から、かかる高分子材料を原料とする粘接着材料の接着特性を別の予測モデル124(以下、接着特性予測モデル124ともいう。)により予測してもよい。
【0066】
図10を参照して、粘接着材料10の粘着剤14の粘弾特性から該当面側の粘接着材料10の接着特性を予測する方法について説明する。図10は、接着特性の予測方法を概念的に示す図である。接着特性の予測機能は、たとえば、情報処理装置20に実装される。
【0067】
情報処理装置20は、学習済みの予測モデル124を用いて粘接着材料10の接着特性を予測する。予測モデル124は、学習用データセットを用いて予め生成されている。学習用データセットは、様々な粘接着材料の粘弾特性に係る実測データに対して接着特性に係る実測データをラベルとして関連付けている。
【0068】
このような学習用データセットが学習に用いられることで、予測モデル124は、粘接着材料10を構成する粘着剤14の粘弾特性を示すデータの入力を受けると、粘接着材料10の接着特性を示すデータを出力するようになる。換言すると、予測モデル124は、粘接着材料10を構成する粘着剤14の粘弾特性に係るデータを説明変数として受けて、粘接着材料10の接着特性に係るデータを目的変数として出力するようになる。
【0069】
粘接着材料10を構成する粘着剤14の粘弾特性と粘接着材料10の接着特性との間の相関関係が学習されることで、情報処理装置20は、粘接着材料10を構成する粘着剤14の組成、構造の既知に依存せず粘接着材料10の接着特性を予測することが可能になる。
【0070】
換言すると情報処理装置20は、予測モデル4及び予測モデル124とを組合せて用いることにより、材料の分析チャートを用いて、製品の特性を予測することができる。より具体的には、情報処理装置20は、粘接着材料用の高分子材料の分析チャートである、IRチャート及びGPCチャートに基づき、粘接着材料10の接着特性を予測することができる。
【0071】
図11を参照して、予測モデル124の学習に用いられる学習用データセット122について説明する。図11は、学習用データセット122の一例を示す図である。
【0072】
学習用データセット122は、複数の学習用データ123を含む。学習用データセット122に含まれる学習用データ123の数は、任意である。一例として、学習用データ123の数は、数十~数万である。
【0073】
学習用データ123は、粘接着材料の粘弾特性に対して当該粘接着材料の接着特性をラベルとして関連付けている。粘弾特性は、学習用データ123において説明変数として規定される。接着特性は、学習用データ123において目的変数として規定される。
【0074】
また、学習用データ123には、テープID(Identification)が関連付けられている。テープIDは、学習用データ123を一意に識別するための情報である。テープIDは、たとえば、重複しないようにユーザによって入力される。
【0075】
学習用データセット122に規定される粘弾特性は、動的粘弾性測定装置を用いて測定された実測値である。当該粘弾特性は、たとえば、粘接着材料の貯蔵弾性率と、粘接着材料の損失弾性率と、粘接着材料の損失正接との内の少なくとも1つを含む。図11の例では、粘弾特性は、当該貯蔵弾性率と、当該損失弾性率と、当該損失正接との3つを含んでいる。
【0076】
好ましくは、学習用データセット122に規定される粘弾特性は、損失正接を含む。学習用データセット122において損失正接と接着特性との関係が規定されることで、上述の予測モデル124による予測精度がより向上する。
【0077】
学習用データ123に規定される接着特性は、試験機などの各種測定装置を用いて測定された実測値である。当該接着特性は、粘接着材料10および被着体の剥離に要する強さ(以下、「接着力」ともいう。)と、被着体に対する粘接着材料10のずれにくさ(以下、「保持力」ともいう。)と、粘接着材料10および被着体の接着のしやすさ(以下、「タック」ともいう。)との少なくとも1つを含む。図8の例では、接着特性は、接着力と、保持力と、タックとの3つで規定されている。
【0078】
接着力の例としては、ピール接着力、せん断接着力、および割裂接着力などが挙げられる。
【0079】
ピール接着力は、たとえば、被着面に対して直交する方向に粘接着材料を剥がすのに要する力(いわゆる、90°ピール接着力)で表される。あるいは、ピール接着力は、被着面に対して平行な方向に粘接着材料を剥がすのに要する力(いわゆる、180°ピール接着力)で表される。
【0080】
せん断接着力は、粘接着材料によって接合されている被着体同士に対して水平面で反対方向の力(すなわち、せん断応力)を加えて接合部を破断させた際の力に相当する。
【0081】
割裂接着力は、粘接着材料によって接合されている被着体同士に対して垂直面で反対方向の力を加えて被着体同士が剥がれる際の力に相当する。
【0082】
保持力としては、せん断保持力、定荷重保持力などが挙げられる。せん断保持力は、被着体に貼られた粘接着材料に対してせん断方向に荷重を一定時間加えた際に粘接着材料がずれた距離で表される。あるいは、保持力は、被着体に貼られた粘接着材料に対してせん断方向に荷重が加えられてから当該粘接着材料が落下するまでの時間で表される。一方、定荷重保持力は、被着体に貼られた粘接着材料に対して垂直方向に荷重を加えた際に当該粘接着材料がずれた距離、または当該荷重が加えられてから当該粘接着材料が落下するまでの時間で表される。
【0083】
タックの例としては、ボールタックなどが挙げられる。ボールタックは、粘接着材料が貼られた傾斜面に対して径の異なるボールを順に転がすことで測定される。当該ボールタックは、傾斜面上で停止したボールの最大径で表される。
【0084】
なお、学習用データセット122は、粘接着材料に係る学習用データ123(以下、「第1データ群」ともいう。)だけでなく、粘接着材料以外の高分子材料に係る学習用データ123(以下、「第2データ群」ともいう。)を含んでもよい。
【0085】
この場合、第1データ群を構成する各学習用データは、粘接着材料の粘弾特性に対して接着機能を有することを示す接着特性をラベルとして関連付けている。接着機能を有することを示す接着特性は、たとえば、学習用データ123において「0」よりも大きい値で規定される。
【0086】
一方で、第2データ群を構成する各学習用データは、粘接着材料以外の高分子材料の粘弾特性に対して接着機能を有さないことを示す接着特性をラベルとして関連付けている。粘接着材料以外の高分子材料は、粘接着材料としては使用されない、接着機能を有さない高分子材料を意味する。接着機能を有さないことを示す接着特性は、たとえば、学習用データ123において「0」で規定される。
【0087】
粘接着材料に係る学習用データ123だけでなく、粘接着材料以外の高分子材料に係る学習用データ123が後述の学習で用いられることで、予測モデル124による接着特性の予測精度および予測の適用範囲が改善する。
【0088】
学習処理は任意の手法が採用されてよい。採用される機械学習アルゴリズムは、特に限定されず、たとえば、ディープラーニング(深層学習)などのニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、ガウス過程回帰モデル、または決定木系などの種々の機械学習アルゴリズムが採用され得る。
【0089】
このように変形例1に係る予測する技術では、予測モデル4により予測された高分子材料の粘弾特性から、かかる高分子材料を原料とする粘接着材料の接着特性を予測することができる。本開示の変形例1に係る技術によれば、組成・構造が不明な高分子材料であったとしても、分析チャートが得られれば当該高分子材料の材料特性を予測でき、さらに当該材料特性から、接着特性を予測することができるという点で、材料特性を予測する技術が改善される。
【0090】
(変形例2)
上記の実施形態では、予測モデル4により材料の材料特性を予測したが、予測モデル4を用いた逆解析により、所望の材料特性を有する分析チャートを探索してもよい。図12を参照して、情報処理装置20が実行する、探索方法について説明する。
【0091】
ステップS111:情報処理装置20の制御部21は、予測モデル4を生成する。予測モデル4の生成方法は、上述の方法と同一である。
【0092】
ステップS112:制御部21は、生成した予測モデル4を用いた逆解析により、所望の材料特性を有する分析チャートを探索する。制御部21は、入力部23等により取得した材料の材料特性を目標特性として、予測モデル4に基づき目標特性を有する分析チャートを探索する。具体的には、制御部11は、目標特性を得られる分析チャートを予測モデル4により探索する処理において、SMBO(Sequential Model-based Global Optimization)などの探索アルゴリズムを適宜採用することができる。
【0093】
このように本開示の変形例2の方法によれば、予測モデル4を用いた逆解析により、所望の材料特性を有する分析チャートを探索することができる。また探索された分析チャートを用いることで、所望の材料特性を有する材料を探索することを支援することができる。
【0094】
(変形例3)
上記の変形例1では、予測モデル4及び予測モデル124を組合せて用いることにより、材料の分析チャートを用いて、情報処理装置20が製品の特性を予測することができることを説明した。より具体的には、粘接着材料用の高分子材料の分析チャートである、IRチャート及びGPCチャートに基づき、情報処理装置20が粘接着材料10の接着特性を予測することについて説明した。ここで、予測モデル4及び予測モデル124を用いた逆解析により、所望の粘着特性を有する粘接着材料用の高分子材料の分析チャートを探索してもよい。図13を参照して、情報処理装置20が実行する、かかる探索方法について説明する。
【0095】
ステップS121:情報処理装置20の制御部21は、予測モデル4及び予測モデル124を生成する。予測モデル4及び予測モデル124の生成方法は、上述の方法と同一である。
【0096】
ステップS122:制御部21は、生成した予測モデル4及び予測モデル124を用いた逆解析により、所望の接着特性を有する分析チャートを探索する。制御部21は、入力部23等により取得した粘接着材料の接着特性を目標特性として、予測モデル4及び予測モデル124に基づき目標特性を有する分析チャートを探索する。具体的には制御部21は粘接着材料の接着特性を目標特性として、予測モデル124に基づき目標特性を有する高分子材料の粘弾特性を探索する。続いて制御部21は、探索された高分子材料の粘弾特性を目標特性として、予測モデル4に基づき、目標特性を有する分析チャートを探索する。制御部11は、目標特性を得られる分析チャートを予測モデル4及び予測モデル124により探索する処理において、SMBO(Sequential Model-based Global Optimization)などの探索アルゴリズムを適宜採用することができる。
【0097】
このように本開示の変形例3の方法によれば、予測モデル4及び予測モデル124を用いた逆解析により、所望の接着特性を有する分析チャートを探索することができる。また探索された分析チャートを用いることで、所望の接着特性を有する高分子材料を探索することを支援することができる。
【0098】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段又は各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段又はステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0099】
1、2、3 データ
4 予測モデル
10 粘接着材料
10A 片面粘着テープ
12 中芯基材
14 粘着剤
16 剥離剤
20 情報処理装置
21 制御部
22 記憶部
23 入力部
24 出力部
122 学習用データセット
123 学習用データ
124 接着特性予測モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13