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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151433
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】処理システム及び処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/02 20230101AFI20241018BHJP
   C02F 1/04 20230101ALI20241018BHJP
   F23G 7/06 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C02F1/02 B ZAB
C02F1/04 D
F23G7/06 D
F23G7/06 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064748
(22)【出願日】2023-04-12
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】小林 真二
【テーマコード(参考)】
3K078
4D034
【Fターム(参考)】
3K078AA06
3K078BA20
3K078BA26
4D034AA20
4D034BA01
4D034CA04
4D034CA12
(57)【要約】
【課題】有機フッ素化合物の無毒化処理を円滑に実施することができる。
【解決手段】PFAS無毒化システム1は、半導体製造装置100のリソラグラフィー装置111から排出されたPFASを含むレジスト廃液を濃縮する濃縮器11を備える。また、PFAS無毒化システム1は、濃縮器11によって濃縮された濃縮液を分解及び揮発させる硫酸処理槽12を備える。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置から排出された、有機フッ素化合物を含む廃液を濃縮する濃縮部と、
前記濃縮部によって濃縮された濃縮液を分解及び揮発させる薬液処理部と、を備える処理システム。
【請求項2】
前記薬液処理部は、熱濃硫酸を含む液体によって前記濃縮液を分解及び揮発させる、請求項1記載の処理システム。
【請求項3】
前記濃縮部に接続された循環流路であってその途中に第1フィルタが設けられた第1流路と、
前記第1フィルタを通過した前記濃縮液のろ液が流れる第2流路と、
前記第2流路に接続され、前記ろ液を貯留するろ液貯留部と、を更に備える請求項2記載の処理システム。
【請求項4】
前記ろ液貯留部よりも下流側の第3流路と、
前記第3流路及び前記第2流路を接続するバイパス流路と、
前記バイパス流路内の液を加圧することにより、前記第2流路において該液を逆流させ、該液を前記第1フィルタの出口側から前記第1流路に流入させる送液部と、を更に備える、請求項3記載の処理システム。
【請求項5】
第2フィルタが設けられた第4流路を更に備え、
前記ろ液貯留部は、前記第2流路に接続された第1貯留部と、前記第3流路に接続された第2貯留部とを有し、
前記第4流路は、前記第1貯留部及び前記第2貯留部を接続する、請求項4記載の処理システム。
【請求項6】
前記薬液処理部によって揮発させられたガスについて、有機フッ素化合物リッチなガスと、有機フッ素化合物除去済みガスとに分離する第1ガスフィルタを更に備える、請求項1~5のいずれか一項記載の処理システム。
【請求項7】
前記第1ガスフィルタは、前記薬液処理部において発生した熱を受け、前記濃縮液よりも高温にされている、請求項6記載の処理システム。
【請求項8】
外気を取り込み、該外気を、空気に比べて窒素濃度が高い第1分流ガスと、空気に比べて酸素濃度が高い第2分流ガスとに分離する第2ガスフィルタを更に備え、
前記第2ガスフィルタは、前記第1分流ガスを前記薬液処理部に供給する、請求項1~5のいずれか一項記載の処理システム。
【請求項9】
前記薬液処理部によって揮発させられたガスに含まれる有機フッ素化合物を燃焼除害する燃焼除害装置を更に備え、
前記第2ガスフィルタは、前記第2分流ガスを前記燃焼除害装置に供給する、請求項8記載の処理システム。
【請求項10】
半導体製造装置から排出された、有機フッ素化合物を含む廃液を濃縮する濃縮ステップと、
前記濃縮ステップにおいてて濃縮された濃縮液を分解及び揮発させる薬液処理ステップと、を含む処理方法。
【請求項11】
前記濃縮ステップにおいて用いられる第1フィルタの出口側から、前記第1フィルタを通過した前記濃縮液のろ液を流入させることにより、前記第1フィルタを洗浄するフィルタ洗浄ステップを更に含む、請求項10記載の処理方法。
【請求項12】
前記薬液処理ステップにおいて揮発させられたガスについて、第1ガスフィルタにより、有機フッ素化合物リッチなガスと、有機フッ素化合物除去済みガスとに分離するガス分離ステップを更に含む、請求項10又は11記載の処理方法。
【請求項13】
第2ガスフィルタにより、外気を、空気に比べて窒素濃度が高い第1分流ガスと、空気に比べて酸素濃度が高い第2分流ガスとに分離し、前記第1分流ガスを前記薬液処理ステップを行う処理部に供給するガス供給ステップを更に含む、請求項10又は11記載の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、処理システム及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、有機フッ素化合物等の含有比率を低減する処理装置と、アニオン交換体を含むイオン交換体を充填したアニオン交換棟と、アニオン交換棟に流通した再生液を分解処理する分解装置と、を含む排水処理システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-125352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、有機フッ素化合物の無毒化処理を円滑に実施することができる処理システム及び処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る処理システムは、半導体製造装置から排出された、有機フッ素化合物を含む廃液を濃縮する濃縮部と、濃縮部によって濃縮された濃縮液を分解及び揮発させる薬液処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、有機フッ素化合物の無毒化処理を円滑に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係るPFAS無毒化システムの概略図である。
図2図1に示されるPFAS無毒化システムの構成図である。
図3】PFASを含む液体のろ過について説明する図である。
図4】ろ液を逆流させることによるフィルタの洗浄を説明する図である。
図5】ガスの分離について説明する図である。
図6】ガスフィルタの機能を説明する図である。
図7】取り込んだ外気の分離について説明する図である。
図8】ポジ型現像液の濃縮及び分解について説明する図である。
図9】ろ液を逆流させることによるフィルタの洗浄を説明する図である。
図10】SPM廃液の排出を説明する図である。
図11】SPM廃液によるフィルタの洗浄を説明する図である。
図12】変形例に係る分解処理室を説明する図である。
図13】変形例に係るリターンラインを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
本実施形態に係る処理システムは、図1に示されるように、半導体製造装置100から排出された、PFASを無毒化するPFAS無毒化システム1である。なお、図1においては、PFAS無毒化システム1の構成の概略が示されており、一部の構成(例えば、後述するTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)廃液に係る構成)の図示が省略されている。PFASとは、有機フッ素化合物であるペルフルオロアルキル物質及びポリフルオロアルキル化合物(PFAS:Per- and PolyFluoroAlkyl Substances)である。
【0010】
PFASとは、少なくとも1つ以上の-CF2-又は-CF3の脂肪族分子を含む化合物であり、テフロンのような有機高分子化合物(ポリマー)も含む。PFASは、例えば、泡消火剤、めっき液、航空機作動油、撥水剤、フロアワックス等に含まれている。また、PFASは、例えば、繊維、医療、電子基板、自動車、食品包装紙、石材、フローリング、皮革等に含まれている。半導体の製造工程においては、例えばノンポリマーのPFASがフォトレジストで用いられている。また、ポリマーのPFASが、半導体製造装置の配管、バルブ、ポンプ等の接液部材、反射防止膜等に用いられている。
【0011】
PFASは自然界において安定しており、分解されにくい。そのため、PFASは、残留性が高く、生体内に蓄積されやすい性質があり、害性が高いと言われている。本実施形態に係るPFAS無毒化システム1は、半導体製造装置100から排出されるPFASを無毒化することにより、PFASが外部に排出されることを抑制するシステムである。
【0012】
図1に示されるように、PFAS無毒化システム1は、濃縮器11(濃縮部,廃液貯留部)と、硫酸処理槽12(薬液処理部,分解処理部)と、冷却器13(捕集部)と、無毒化装置14(燃焼除害装置)と、を含んで構成されている。なお、本実施形態では、PFAS無毒化システム1が複数の装置を含む装置群であるとして説明するが、PFAS無毒化システム1は1つの装置で構成されていてもよい。また、半導体製造装置100は、リソラグラフィー装置111と、洗浄装置112と、エッチング装置113と、成膜装置114と、を含んで構成されている。半導体製造装置100の各構成は、実施する処理に伴って、PFASを含んだ物質を排出する。なお、PFAS無毒化システム1を構成する各処理部は、同じ空間(場所)に設置されていてもよいし、同じ空間に設置されていなくてもよい。例えば、各処理部は、リソラグラフィー装置111、洗浄装置112、或いはエッチング装置113が設置されている建物内に設置されていてもよいし、該建物の外や隣接した空間に設置されていてもよい。各処理部は、上記建物内と建物外とで互いに分かれて設置されていてもよい。また、濃縮器11、硫酸処理槽12、冷却器13、及び無毒化装置14のうち不使用のものは、常時設置されていなくてもよい。
【0013】
リソラグラフィー装置111は、塗布・現像装置と、露光装置とを含んで構成されている。露光装置は、レジスト膜の露光処理を行う。具体的には、液浸露光等の方法によりレジスト膜(感光性被膜)の露光対象部分にエネルギー線を照射する。塗布・現像装置は、露光装置による露光処理の前に、基板の表面にレジスト膜を形成する処理を行い、露光処理後にレジスト膜の現像処理を行う。このようなリソラグラフィー装置111から排出される液体又は気体には、PFASが含まれている。例えば、レジスト廃液、現像処理に係るアルカリ廃液(ポジ型現像液)、レジスト剥離に係る酸廃液、有機排気、熱排気、昇華物の固化物等には、PFASが含まれている。また、ネガ型現像処理に係る有機溶媒廃液は、極めて薄いレジスト廃液とも言え、PFASが含まれており、本実施形態において上記のレジスト廃液と同じく扱われてもよい。本実施形態では、レジスト廃液に含まれるPFAS及びポジ型現像液に含まれるPFASについて主に説明する。レジスト廃液に含まれるPFASの例として、例えば光酸発生材(PAG:Photo Acid Generator)、界面活性剤、又はFが修飾されたポリマー等がある。リソラグラフィー装置111から排出されるレジスト廃液は、PFAS無毒化システム1の濃縮器11に導入される。
【0014】
洗浄装置112は、基板に対する洗浄処理を行う。洗浄装置112は、例えば、レジスト等の有機物の除去にはHと硫酸とを混合したSPM:Sulfuric. Acid Hydrogen Peroxide Mixtureを用いる。洗浄装置112は、金属の除去にはHと塩酸とを混合した混合水溶液(SC2:Standard Clean 2)を用い、パーティクルの除去にはHとアンモニアとを混合した混合水溶液(SC1)を用いる。また、熱濃硫酸のみも廃液処理中に出る。洗浄装置112は、PFASを含んだSPM廃液を排出する。洗浄装置112から排出されるSPM廃液や熱濃硫酸は、硫酸処理槽12に導入される。また、洗浄装置112は、PFASを含んだ酸廃気を排出する。洗浄装置112から排出される酸廃気は、無毒化装置14に導入される。
【0015】
エッチング装置113は、形成されたレジスト膜のパターンに沿って、酸化膜・薄膜を削り取るエッチング処理を行う。エッチング装置113は、PFASを含んだ排ガスを排出する。エッチング装置113から排出される排ガスは、無毒化装置14に導入される。
【0016】
成膜装置114は、基板に配線膜及び絶縁膜を形成する。成膜装置114は、各種プロセスガス(PFAS含有又は非含有ガス)を用いており、その排ガスを排出する。成膜装置114から排出される排ガスは、無毒化装置14に導入される。
【0017】
濃縮器11は、半導体製造装置100のリソラグラフィー装置111から排出されたPFASを含むレジスト廃液を濃縮する。すなわち、濃縮器11は、PFASを含む廃液として、リソラグラフィー装置111における基板処理廃液を濃縮する。濃縮器11は、例えば限界ろ過膜や逆浸透膜等を用いて、レジスト廃液を濃縮すると共に、レジスト廃液に含まれる溶媒を分離させる(詳細は後述)。レジスト廃液の濃縮液は、ポリマーを含む濃縮液なので、粘度が高くなっている。レジスト廃液の濃縮液は、硫酸処理槽12に導入される。なお、リソラグラフィー装置111から排出されたアルカリ廃液が濃縮器11によって濃縮される場合には、アルカリ廃液が中和後に逆浸透膜に導入されてもよい。
【0018】
レジスト廃液から分離された溶媒は、リサイクルソルベントとして半導体製造装置100におけるカップ洗浄等に利用されてもよいし、ソルベント回収業者に回収されてもよい。従来の場合、ソルベント回収業者がレジスト廃液から再生溶媒を精製しようとするときに成分分析をするとレジストメーカーの機密物質を含んだ廃液も回収してしまう可能性がある。この点、本実施形態のように濃縮器11を通したレジスト廃液は、固形分成分が濃縮液に含まれるため、ソルベント回収業者への機密漏洩を防ぐことができる。
【0019】
硫酸処理槽12は、濃縮器11によって濃縮された濃縮液を、SPM廃液にて分解及び揮発させる。すなわち、硫酸処理槽12は、洗浄装置112のSPM廃液を利用する。SPM廃液中においては、溶媒及びポリマーは、酸化反応や脱水反応の分解反応が生じ、低分子化する(低粘度化する)。このとき、SPM廃液は発熱反応によって温度が高くなる(SPM廃液中の熱濃硫酸の温度が高くなる)。PFASは基本的に分解されないが、PAG等の成分は沸点が低いため高温のSPM廃液により揮発する(特にSPM廃液中に含まれる熱濃硫酸の効果で揮発する)。従来、SPM廃液は、発泡の抑制をするためにカタラーゼを添加して廃液処理を行っているが、硫酸処理槽12で有機物と反応させてHの成分を使い切って脱気すれば、下流の硫酸廃液で発泡せず処理が容易になる。また、カタラーゼを減らすことができる。この反応によって例えば300℃程度の熱が発生するため、排熱を利用した温度差発電や硫酸処理槽12を冷却するための循環水から発生する蒸気で蒸気発電が行われてもよい。なお、硫酸処理槽12から排出される硫酸廃液は、例えばリサイクル業者にて回収される。該硫酸廃液は、従来の廃液よりも硫酸の純度を高くすることができている。なお、硫酸処理槽12は、不慮の発火を抑制するために不活性ガスである窒素雰囲気中で実施することが望ましい。また、上記SPM廃液は熱濃硫酸廃液でも良く、熱濃硫酸の場合は、溶媒及びポリマーで、脱水反応の分解反応が生じ、低分化する(低粘度化する)。このとき熱濃硫酸は発熱反応によって熱濃硫酸の温度が高くなりPFAS、PAGなどを揮発させる。
【0020】
硫酸処理槽12に溜めたSPM廃液に、レジスト廃液の濃縮液を加え処理していくと次第にHが消費され、処理能力が低下する。レジスト廃液の濃縮液を適切量供給したのち、反応が落ち着きガスの発生が終了するまで硫酸処理槽12は待機させる。洗浄装置112からのSPM廃液が多いため、洗浄装置112からのSPM廃液も滞ることなく処理する必要がある。そのため、硫酸処理槽12は、複数の処理槽で構成されていてもよい。この場合、1つの処理槽が処理している間に、他の処理槽にて液の注入等の準備を行ってもよい。また、1つ目の処理槽、次に2つ目の処理槽、次に3つ目の処理槽、のように、反応の進行の程度を見て、液を下流に流していってもよい。なお、レジスト廃液がメタル含有レジストである場合には、上述した各工程と同様の工程で、メタル成分のみ揮発せずに沈殿し、硫酸廃液と共に処理される。
【0021】
SPM廃液は、過酸化水素水が含まれているため、そのまま廃液にすると発泡して装置に負担をかけること、或いは、発泡ガスで環境を悪化させることがある。この点、本実施形態に係る構成では、残留の過酸化水素水が有効的に活用されて、発泡したガスも燃料として無毒化装置14で燃やされることから、装置や環境への負担を小さくすることができる。
【0022】
冷却器13は、硫酸処理槽12によって揮発させられたPFASを含むガスを液化して捕集する。冷却器13は、ガスを気体成分である低分子ガスと、液体成分である炭化水素(HC)抽出液とに分離して捕集する。図2に示されるように、硫酸処理槽12からのガスが、冷却器13において冷却されることにより、液化したものはHC(Hydro Carbon)抽出液として捕集されるともに、結露しなかった低分子ガスについても捕集される。硫酸処理槽12から発生したガスは、窒素雰囲気にて処理しているため、窒素との混合ガスになっている。窒素を多量に含んだ混合ガスについては、後段の無毒化装置14における処理量が多くなるため、例えば、冷却器13で結露しなかった低分子ガスを、ナノサブセラミッグフィルタを用いて、窒素とそれ以外に分離し濃縮してもよい。
【0023】
上述した硫酸処理槽12からは、多種の有機ガス及びその他のガスが排出される。PAG等のPFASもガスとして排出されている。無毒化装置14にこれらのガスを直接導入することも考えられるが、室温で液体となるガスについては冷却器13において一旦液化することによって運搬性を向上させることができる。なお、液化せずに運搬した場合には、配管の途中で液溜りができ制御が難しくなることがある。液化したHC抽出液及び結露しなかった低分子ガスの双方に、PFASが含まれている。HC抽出液及び低分子ガスは、無毒化装置14に導入される。なお、ガスの運搬性をより向上させるために、低分子ガスも含めてすべて液化してから無毒化装置に導入してもよい。
【0024】
無毒化装置14は、冷却器13による処理後の物質を無毒化する。無毒化装置14は、冷却器13による処理後の物質を燃焼除害する燃焼除害装置であってもよい。無毒化装置14は、冷却器13から導入されたHC抽出液及び低分子ガスを焼却する。HC抽出液の多くは炭化水素であるので、燃料として燃やすことができる。また、低分子ガスの多くは、炭素数が10以下の炭化水素であるので、同様に燃料として燃やすことができる。従来、燃焼除害装置では燃料としてプロパンガスや都市ガスが用いられているが、上記のようにHC抽出液等が燃料として用いられるので、プロパンガス等を減量することができる。
【0025】
更に、無毒化装置14は、エッチング装置113から導入された排ガス、成膜装置114から導入された排ガス、及び、洗浄装置112から導入された酸廃気についても同時に燃焼除害してもよい。これらのガスは、各装置において使用されたPFASを含む排ガスである。これらのガスが同時に燃焼除害されることによって、プロパンガス等をより減量することができる。なお、燃焼除害の際には、ガスタービン等の内燃機関を用いて燃焼させることにより、電力発電をしてもよい。二酸化炭素等の無毒化されたガスは、回収しギ酸やメタノール等の有機物合成に利用してもよい。また、無毒化装置14は、冷却器13による処理後の物質を亜臨界処理する亜臨界処理装置、超臨界処理する超臨界処理装置であってもよい。また、無毒化した廃ガスをスクラバ装置(排ガスを水洗、薬液中和処理、又は吸着し、大気中に放出する装置)を通して、Fイオン含有のスクラバ水と廃ガスに処理してもよい。当該スクラバ水は、カルシウムと反応させることにより、フッ化カルシウム又は蛍石にすることができる。蛍石は、フッ素化合物のスタートの物質であり、資源の循環が可能である。
【0026】
次に、図1に示されるPFAS無毒化システム1の詳細について、図2図11を参照して説明する。図2は、図1に示されるPFAS無毒化システム1の構成図である。図2においては、図1において図示が省略された構成(TMAH廃液に係る構成等)についても図示されている。PFAS無毒化システム1は、廃液供給路15(第2供給路)と、循環流路16(第1流路)と、第1ろ液流路17(第2流路)と、第2ろ液流路18(第4流路)と、第3ろ液流路19(第3流路)と、第1貯留部20xと、第2貯留部20yと、を更に備える。PFAS無毒化システム1は、バイパス流路21を更に備える。PFAS無毒化システム1は、第1ガスフィルタ22と、真空ポンプ23と、蒸留器24と、を更に備える。PFAS無毒化システム1は、第2ガスフィルタ25を更に備える。PFAS無毒化システム1は、廃液供給路26(第1供給路)と、濃縮器27(現像液濃縮部)と、循環流路28と、現像液流路29と、再生現像液貯留部30と、現像液処理槽31(薬液処理部)と、第3ガスフィルタ32と、発電機33と、を更に備える。PFAS無毒化システム1は、バイパス流路34と、逆流液貯留部35と、回収流路36と、を更に備える。PFAS無毒化システム1は、排出流路37を更に備える。PFAS無毒化システム1は、SPM供給路38を更に備える。
【0027】
図3は、PFASを含む液体であるレジスト廃液のろ過について説明する図である。上述したように、濃縮器11は、リソラグラフィー装置111から排出されたPFASを含むレジスト廃液を濃縮する。循環流路16は、濃縮器11に接続された循環流路であり、流路の途中にポリマーを除外するフィルタ39(第1フィルタ)が設けられている。フィルタ39は、例えば中空糸フィルタである。フィルタ39が設けられていることによりレジスト廃液が濃縮される。フィルタ39を通過したろ液(ソルベント)は、第1ろ液流路17を流れて、第1貯留部20x(ろ液貯留部)に貯留される。このようなろ液は、低濃度のPFAS溶液である。第1貯留部20xは、第1ろ液流路17に接続され、ろ液を貯留する貯留部である。第2ろ液流路18(ろ液貯留部)は、第1貯留部20x及び第2貯留部20yを接続する流路である。第2ろ液流路18には、フィルタ40(第2フィルタ)が設けられている。フィルタ40は、例えばイオン交換樹脂フィルタである。フィルタ40が設けられていることにより、フィルタ40を通過したろ液についてPFASを含まない溶液とすることができる。フィルタ40を通過したろ液は、第2ろ液流路18を流れて、第2貯留部20yに貯留される。このようなろ液は、再生溶媒として運用することができ、第2貯留部20yよりも下流側の第3ろ液流路19から外部に流れる。
【0028】
図4は、ろ液を逆流させることによるフィルタ39の洗浄を説明する図である。フィルタ39については、使用を続けるとポリマー成分等で目詰まりすることが考えられる。このような目詰まりを解消するために、第3ろ液流路19を流れるろ液をフィルタ39の出口側から流入させてもよい。すなわち、第3ろ液流路19及び第1ろ液流路17を接続するようにバイパス流路21を設け、該バイパス流路21内のろ液を加圧することにより、第1ろ液流路17においてろ液を逆流させ、該ろ液をフィルタ39の出口側から循環流路16に流入させてもよい。このような液に対する加圧は、例えばガス加圧又はポンプ等の送液部により行われてもよい。ろ液を利用してフィルタ39に対して逆流させることにより、フィルタ39の目詰まりをとりリフレッシュすることができる。なお、逆流させるろ液は、第2ろ液流路18を流れるろ液であってもよい。
【0029】
図5は、ガスの分離について説明する図である。上述したように、濃縮器11によって濃縮された濃縮液は、硫酸処理槽12において、SPM廃液にて分解及び揮発させられる。これにより、酸化反応や脱水反応の分解反応が生じ、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、水蒸気、炭化水素系ガス、PFASを含むガスに分解される。この場合に放出されるガスは、100℃以上となる。そして、硫酸処理槽12において揮発させられたガスは、第1ガスフィルタ22により分離される。第1ガスフィルタ22は、硫酸処理槽12によって揮発させられたがスについて、PFASリッチなガスと、PFAS除去済みのガスとに分離するフィルタである。第1ガスフィルタ22は、例えば、浸透気化フィルタであり、セラミックフィルタであってもよい。第1ガスフィルタ22は、硫酸処理槽12において発生した熱を受けて、分解される前の濃縮液よりも高温にされている。第1ガスフィルタ22は、硫酸処理槽12と同じ空間内に配置されるか、又は、金属等の導電性部材によって硫酸処理槽12抜続されることにより、硫酸処理槽12において発生した熱を受けるものであってもよい。なお、本実施形態でいうPFASリッチなガスとは、所定の作用の影響を受ける前のガスよりもPFASの濃度が高い状態のガスである。上記の図5をもとにした説明では、第1ガスフィルタ22による分離が、所定の作用に該当する。なお、本実施形態において所定の作用は第1ガスフィルタ22による分離に限定されるものではなく、PFASリッチなガスが生じる場合は、その生じる原因となる作用が所定の作用であると言える。
【0030】
図6は、第1ガスフィルタ22として浸透気化フィルタが用いられる場合の、第1ガスフィルタ22の機能を説明する図である。図6に示されるように、浸透気化フィルタである第1ガスフィルタ22は、分子量の差による運動量の違いを利用して、ガスを分離するフィルタである。すなわち、第1ガスフィルタ22は、例えば下流側を減圧にすることにより、比較的分子量が小さいガス(窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気等)を通過させる(下流側に流す)と共に、比較的分子量が大きいガス(PFAS、炭化水素)を通過させない。これにより、PFASリッチなガスとPFAS除去済みのガスとを概ね分離することができる。
【0031】
図5に戻り、真空ポンプ23は、第1ガスフィルタ22の下流側を減圧させ、上述した第1ガスフィルタ22によるガスの分離を実現するポンプである。冷却器13は、PFASを含むガスを液化して捕集する。捕集された液体及び気体は、蒸留器24に貯留される。液体のPFAS及び炭化水素、並びに、気体のPFAS及び炭化水素(更には後述するオゾン)は、蒸留器24から無毒化装置14に導入される。
【0032】
図7は、取り込んだ外気の分離について説明する図である。図7に示されるように、PFAS無毒化システム1では、外気(空気)を取り込み、該外気を第2ガスフィルタ25により、窒素と酸素とに分離する。すなわち、第2ガスフィルタ25は、外気を、空気に比べて窒素濃度が高い第1分流ガス(ここでは単に窒素とする)と、空気に比べて酸素濃度が高い第2分流ガス(ここでは単に酸素とする)とに分離する。そして、第2ガスフィルタ25は、窒素を硫酸処理槽12に供給する。これにより硫酸処理槽12において発火することが抑制される。また、第2ガスフィルタ25は、酸素を無毒化装置14に供給する。これにより、無毒化装置14における燃焼を促進することができる。なお、無毒化装置14には、上述した酸素から生成されたオゾンが供給されてもよい。このようなオゾンは、蒸留器24に供給されて無毒化装置14に導入されてもよいし、直接無毒化装置14に導入されてもよい。酸素からオゾンを生成する方法は、例えばUV照射であってもよいし放電であってもよい。
【0033】
図8は、ポジ型現像液の濃縮及び分解について説明する図である。図8に示されるように、PFAS無毒化システム1では、例えばリソラグラフィー装置111から、ポジ型現像液であるTMAH廃液が導入される。そして、PFAS無毒化システム1では、半導体製造装置100のリソラグラフィー装置111から排出されたTMAH廃液が、濃縮器27において濃縮される。また、濃縮器27によって濃縮されたポジ型現像液の濃縮液である第1濃縮液が、現像液処理槽31において分解及び揮発させられる。
【0034】
廃液供給路26は、リソラグラフィー装置111から導入されたTMAH廃液を、濃縮器27に供給する供給路である。廃液供給路26と、濃縮器11にレジスト廃液を供給する廃液供給路15とは、互いに区別して設けられている。廃液供給路26には、ポリマーを除外するフィルタ41が設けられている。循環流路28は、濃縮器27に接続された循環流路であり、流路の途中にPFASを高濃度化するためのフィルタ42が設けられている。フィルタ42を通過した現像液(脱PFAS現像液)は、現像液流路29を通過して、再生現像液貯留部30に貯留される。このような現像液は、再生現像液として利用することができる。
【0035】
濃縮器27において濃縮された濃縮液(PFASを高濃度化した現像液)は、濃縮液流路45を介して現像液処理槽31に供給される。現像液処理槽31は、上述した硫酸処理槽12(ポジ型現像液の濃縮液である第1濃縮液よりもレジスト濃度が高い第2濃縮液の分解処理部)に接して設けられている。具体的には、現像液処理槽31は、硫酸処理槽12を下部側から囲うように設けられている。これにより、現像液処理槽31は、硫酸処理槽12から熱を受け、該熱により第1濃縮液を分解及び揮発させることができる。なお、第1濃縮液を分解する方法は熱に限定されず、例えば微生物に晒されることにより第1濃縮液が分解されてもよい。また、第1濃縮液は、硫酸処理槽12内のSPMの冷却用溶媒として利用してもよい。
【0036】
現像液処理槽31において熱(例えば140℃程度の熱)により分解されたTMAHは、トリメチルアミンとジメチルエーテルに分解される。これらのガスは、無毒化装置14における燃料として利用できる。PFASは、熱によっても分解されずに、ガスとして放出され、無毒化装置14で燃やされる。現像液処理槽31から放出されるガスには、窒素、水蒸気、炭化水素、トリメチルアミン、ジメチルエーテル、PFAS等が含まれている。第3ガスフィルタ32は、例えば下流側を減圧にすることにより、比較的分子量が小さいガス(窒素、水蒸気等)を通過させる(下流側に流す)と共に、比較的分子量が大きいガス(トリメチルアミン、ジメチルエーテル、PFAS、炭化水素)を通過させない。これにより、PFASリッチなガスとPFAS除去済みのガスとを概ね分離することができる。窒素及び水蒸気等は、系外に放出される。なお、放出される水蒸気が発電機33において水に戻されることにより、圧力差を利用して発電することができる。無毒化装置14に送られるPFAS等を含むガスは、圧縮した後に無毒化装置14に送られてもよい。
【0037】
無毒化装置14は、現像液処理槽31によって揮発させられた第1濃縮液に係るガスと、硫酸処理槽12によって揮発させられた第2濃縮液に係るガスとを混合して燃焼する燃焼室を有していてもよい。
【0038】
図9は、ろ液を逆流させることによるフィルタ41の洗浄を説明する図である。フィルタ41については、使用を続けるとポリマー成分等で目詰まりすることが考えられる。このような目詰まりを解消するために、第3ろ液流路19を流れるろ液をフィルタ41の出口側から流入させてもよい。具体的には、第3ろ液流路19に接続されたバイパス流路21に接続されると共に、廃液供給路26におけるフィルタ41の下流側に接続されたバイパス流路34が設けられている。そして、バイパス流路34内のろ液を加圧することにより、廃液供給路26においてろ液を逆流させ、該ろ液をフィルタ41の出口側から流入させてもよい。このような液に対する加圧は、例えばガス加圧又はポンプ等の送液部により行われてもよい。ろ液を利用してフィルタ41に対して逆流させることにより、フィルタ41の目詰まりをとりリフレッシュすることができる。なお、逆流させるろ液は、第2ろ液流路18を流れるろ液であってもよい。このようなフィルタ洗浄を行っている間は、フィルタ41によるポリマー除去ができないため、フィルタ41は並列構成(複数構成)とされていてもよい。
【0039】
そして、ろ液がフィルタ41の出口側から流入した状態において、フィルタ41の入口側から流れ出た逆流液を逆流液貯留部35が貯留する。逆流液貯留部35は、回収流路36によって濃縮器11に接続されている。回収流路36は、逆流液貯留部35から濃縮器11へ逆流液を送り込む流路である。このような回収流路36が設けられていることにより、フィルタ41の目詰まり解消のために逆流させた液を逆流液貯留部35から濃縮器11に回収することができる。
【0040】
図10は、SPM廃液の排出を説明する図である。硫酸処理槽12においてレジスト濃縮液とSPM廃液との反応が進むと、SPM中の過酸化水素が失活し、反応能力が著しく低下する。このとき、SPMは濃硫酸の状態になり、脱水反応を生じさせることができるものの、有機物の炭化が進んで液が黄色や茶色に変色する。そのため、例えば液が黄色になった時点で、排出流路37からSPM廃液の排出が行われる。この際、排出流路37に設けられたフィルタ43によって、炭化物のフィルタリングが行われる。排出されるSPM廃液は、過酸化水素が無くなっており、またフィルタ43によるフィルタリングによって硫酸の純度が上がっているため、再生硫酸として利用することができる。
【0041】
図11は、SPM廃液によるフィルタ43の洗浄を説明する図である。硫酸処理槽12に新たなSPM廃液を供給する際、SPM廃液の一部について、フィルタ43の出口側から流入させることにより、炭化物をトラップしているフィルタ43を洗浄することができる。すなわち、硫酸処理槽12に新たなSPM廃液を供給するためのSPM供給路38の内、フィルタ43の出口に接続されている流路に対して、SPM廃液を流すことにより、SPM廃液とフィルタ43にトラップされている炭化物とを反応させてもよい。これにより、フィルタ43にトラップされている炭化物は二酸化炭素となり排気され、フィルタ43が洗浄される。
【0042】
次に、本実施形態に係るPFAS無毒化システム1について作用効果を説明する。
【0043】
本実施形態に係るPFAS無毒化システム1は、半導体製造装置100のリソラグラフィー装置111から排出されたPFASを含むレジスト廃液を濃縮する濃縮器11を備える。また、PFAS無毒化システム1は、濃縮器11によって濃縮された濃縮液を分解及び揮発させる硫酸処理槽12を備える。本実施形態に係るPFAS無毒化システム1では、PFASを含む廃液が濃縮された後に、濃縮液が分解及び揮発させられる。これにより、ポリマーや溶媒等については脱水反応の分解反応により低分子化されると共に、PFASについては揮発する。このようなPFAS無毒化システム1によれば、PFASの無毒化処理を円滑に実施することができる。
【0044】
硫酸処理槽12は、熱濃硫酸を含む液体によって濃縮液を分解及び揮発させてもよい。このように、濃縮液が熱濃硫酸を含む液体に混ぜ合わされることにより、ポリマーや溶媒等については脱水反応の分解反応により低分子化されると共に、PFASについては揮発する。上記混ぜ合わされた液体において有機物反応により脱気することにより、後段の処理において液体が発泡しにくくなり、後段で実施される処理が容易になる。
【0045】
PFAS無毒化システム1は、濃縮器11に接続された循環流路であってその途中にフィルタ39が設けられた循環流路16と、フィルタを通過した濃縮液のろ液が流れる第1ろ液流路17と、を更に備える。また、PFAS無毒化システム1は、第1ろ液流路17に接続され、ろ液を貯留する第1貯留部20xを更に備える。このような構成によれば、フィルタ39を用いて廃液の濃縮を適切に行うと共に、フィルタ39を通過したろ液を貯留し、例えば、該ろ液を再生溶媒として利用することができる。
【0046】
PFAS無毒化システム1は、第2貯留部20yよりも下流側の第3ろ液流路19と、第3ろ液流路19及び第1ろ液流路17を接続するバイパス流路21と、を更に備える。そして、PFAS無毒化システム1では、バイパス流路21内の液が加圧されることにより、第1ろ液流路17において該液が逆流し、該液をフィルタ39の出口側から循環流路16に流入させる。このように、バイパス流路21を介して、フィルタ39の出口側からろ液を流入させることにより、フィルタ39の目詰まりを解消し、フィルタ39を適切に洗浄することができる。
【0047】
PFAS無毒化システム1は、フィルタ40が設けられた第2ろ液流路18を更に備え、第2ろ液流路18は、第1貯留部20x及び第2貯留部10yを接続する。このように、ろ液貯留部として、2つの貯留部が設けられ、その間にフィルタ40が設けられることにより、PFAS濃度が低くされたろ液を適切に抽出・貯留することができる。
【0048】
PFAS無毒化システム1は、硫酸処理槽12によって揮発させられたガスについて、PFASリッチなガスと、PFAS除去済みガスとに分離する第1ガスフィルタ22を更に備えていてもよい。このような第1ガスフィルタ22が設けられることにより、PFASリッチなガスとPFASが除去されたガスとを適切に分離することができる。
【0049】
第1ガスフィルタ22は、硫酸処理槽12において発生した熱を受け、濃縮液よりも高温にされていてもよい。このように、第1ガスフィルタ22が高温にされることにより、選別対象であるPFASの第1ガスフィルタ22の通過し易さが他のガスに比べて相対的に低くなるため、加温による流速変化の違いを利用してガスの分離を適切に行うことができる。
【0050】
PFAS無毒化システム1は、外気を取り込み、該外気を、空気に比べて窒素濃度が高い第1分流ガスと、空気に比べて酸素濃度が高い第2分流ガスとに分離する第2ガスフィルタ25を更に備える。第2ガスフィルタ25は、第1分流ガスを硫酸処理槽12に供給してもよい。このように、硫酸処理槽12に窒素濃度が高いガスが供給されることにより、硫酸処理槽12において発火することを抑制することができる。
【0051】
PFAS無毒化システム1は、硫酸処理槽12によって揮発させられたガスに含まれるPFASを燃焼除害する無毒化装置14を更に備え、第2ガスフィルタ25は、第2分流ガスを無毒化装置14に供給してもよい。このように、無毒化装置14に酸素濃度が高いガスが供給されることにより、無毒化装置14における燃焼を促進することができる。
【0052】
PFAS無毒化システム1は、半導体製造装置100のリソラグラフィー装置111から排出された、ポジ型現像液を含む廃液を濃縮する濃縮器27と、濃縮器27によって濃縮された第1濃縮液を分解及び揮発させる現像液処理槽31と、を更に備える。本実施形態に係るPFAS無毒化システム1では、PFASを含む廃液であるポジ型現像液を含む廃液が濃縮された後に、濃縮液が分解及び揮発させられる。これにより、ポリマーや溶媒等については脱水反応の分解反応により低分子化されると共に、PFASについては揮発する。このようなPFAS無毒化システム1によれば、PFASの無毒化処理を円滑に実施することができる。
【0053】
PFAS無毒化システム1は、ポジ型現像液を含む廃液を濃縮器27に供給する廃液供給路26と、ポジ型現像液を含む廃液よりもレジスト濃度が高い廃液を、該廃液に対応する分解処理部である硫酸処理槽12に供給する廃液供給路15と、を更に備える。そして、廃液供給路26と廃液供給路15とは、互いに区別して設けられている。このように、ポジ型現像液を含む廃液の供給路(廃液供給路26)と、レジスト濃度が高い廃液の供給路(廃液供給路15)とが互いに区別して設けられることにより、例えば酸・アルカリ反応によって余分な塩が発生すること等を抑制することができる。
【0054】
現像液処理槽31は、熱により第1濃縮液を分解及び揮発させてもよい。このように、熱により第1濃縮液が分解等されることにより、適切に第1濃縮液を分解させることができる。
【0055】
現像液処理槽31は、第1濃縮液よりもレジスト濃度が高い第2濃縮液の分解処理部である硫酸処理槽12に接して設けられていてもよい。このような構成によれば、第2濃縮液の分解処理部である硫酸処理槽12における反応の熱を利用して、第1濃縮液を適切に分離させることができる。また、現像液処理槽31が硫酸処理槽12に接していることにより、硫酸処理槽12の容器(ひいてはSPM廃液)を冷却することができる。
【0056】
PFAS無毒化システム1は、PFASを燃焼除害する無毒化装置14を更に備える。無毒化装置14は、現像液処理槽31によって揮発させられた第1濃縮液に係るガスと、硫酸処理槽12によって揮発させられた第2濃縮液に係るガスとを混合して燃焼する燃焼室を有する。このように、現像液処理槽31によって分解・揮発させられた第1濃縮液に係るガスと、硫酸処理槽12によって分解・揮発させられた第2濃縮液に係るガスとが燃焼室における燃焼に用いられる。このことによって、無毒化装置14に導入される燃料を減量することができ、トータル的にCO2排出量を抑制し、焼却施設が大型化することを回避することができる。
【0057】
PFAS無毒化システム1は、バイパス流路34内のろ液を加圧することにより、廃液供給路26において該液を逆流させ、該ろ液を、フィルタ41の出口側から流入させてもよい。このように、バイパス流路34を介して、フィルタ41の出口側からろ液を流入させることにより、フィルタ41の目詰まりを解消し、フィルタ41を適切に洗浄することができる。
【0058】
PFAS無毒化システム1は、ろ液が、フィルタ41の出口側から流入した状態において、該フィルタ41の入口側から流れ出た逆流液を貯留する逆流液貯留部35を備える。また、逆流液貯留部35と濃縮器11とを接続し、逆流液貯留部35から濃縮器11へ逆流液を送り込む回収流路36、を更に備えていてもよい。これにより、フィルタ41の洗浄のために逆流させた液を適切に回収することができる。
【0059】
以上、本実施形態について説明したが、本開示は上記に限定されない。例えば、ポジ型現像液を含む廃液の薬液処理部が、レジスト廃液の薬液処理部である硫酸処理槽12に接して設けられているとして説明したがこれに限定されない。例えば、図12に示されるように、ポジ型現像液を含む廃液の薬液処理部である分解処理室135が、硫酸処理槽12とは離れて設けられていてもよい。この場合、硫酸処理槽12は、冷媒を含む冷媒槽131によって冷却されてもよい。
【0060】
また、図13に示されるように、濃縮器27と現像液処理槽31とを接続する流路150が設けられ、該流路150に熱交換機151が設けられていてもよい。この場合、流路150を介して、現像液処理槽31内の第1濃縮液を濃縮器27側に戻すことができる。
【0061】
最後に、本開示に含まれる種々の例示的実施形態を、以下の[E1]~[E23]に記載する。
【0062】
[E1]
処理システムは、半導体製造装置から排出された、有機フッ素化合物を含む廃液を濃縮する濃縮部と、濃縮部によって濃縮された濃縮液を分解及び揮発させる薬液処理部と、を備える。
【0063】
[E2]
前記薬液処理部は、熱濃硫酸を含む液体によって前記濃縮液を分解及び揮発させる、[E1]記載の処理システム。
【0064】
[E3]
前記濃縮部に接続された循環流路であってその途中に第1フィルタが設けられた第1流路と、前記第1フィルタを通過した前記濃縮液のろ液が流れる第2流路と、を更に備える。また、前記第2流路に接続され、前記ろ液を貯留するろ液貯留部を更に備える[E1]又は[E2]記載の処理システム。
【0065】
[E4]
前記ろ液貯留部よりも下流側の第3流路と、前記第3流路及び前記第2流路を接続するバイパス流路と、を更に備える。また、前記バイパス流路内の液を加圧することにより、前記第2流路において該液を逆流させ、該液を前記第1フィルタの出口側から前記第1流路に流入させる送液部を更に備える、[E3]記載の処理システム。
【0066】
[E5]
第2フィルタが設けられた第4流路を更に備え、前記ろ液貯留部は、前記第2流路に接続された第1貯留部と、前記第3流路に接続された第2貯留部とを有し、前記第4流路は、前記第1貯留部及び前記第2貯留部を接続する、[E4]記載の処理システム。
【0067】
[E6]
前記薬液処理部によって揮発させられたガスについて、有機フッ素化合物リッチなガスと、有機フッ素化合物除去済みガスとに分離する第1ガスフィルタを更に備える、[E1]~[E5]のいずれか一項記載の処理システム。
【0068】
[E7]
前記第1ガスフィルタは、前記薬液処理部において発生した熱を受け、前記濃縮液よりも高温にされている、[E6]記載の処理システム。
【0069】
[E8]
外気を取り込み、該外気を、空気に比べて窒素濃度が高い第1分流ガスと、空気に比べて酸素濃度が高い第2分流ガスとに分離する第2ガスフィルタを更に備える。また、前記第2ガスフィルタは、前記第1分流ガスを前記薬液処理部に供給する、[E1]~[E7]のいずれか一項記載の処理システム。
【0070】
[E9]
前記薬液処理部によって揮発させられたガスに含まれる有機フッ素化合物を燃焼除害する燃焼除害装置を更に備え、前記第2ガスフィルタは、前記第2分流ガスを前記燃焼除害装置に供給する、[E8]記載の処理システム。
【0071】
[E10]
半導体製造装置から排出された、有機フッ素化合物を含む廃液を濃縮する濃縮ステップと、前記濃縮ステップにおいて濃縮された濃縮液を分解及び揮発させる薬液処理ステップと、を含む処理方法。
【0072】
[E11]
前記濃縮ステップにおいて用いられる第1フィルタの出口側から、前記第1フィルタを通過した前記濃縮液のろ液を流入させることにより、前記第1フィルタを洗浄するフィルタ洗浄ステップを更に含む[E10]記載の処理方法。
【0073】
[E12]
前記薬液処理ステップにおいて揮発させられたガスについて、第1ガスフィルタにより、有機フッ素化合物リッチなガスと、有機フッ素化合物除去済みガスとに分離するガス分離ステップを更に含む、[E10]又は[E11]記載の処理方法。
【0074】
[E13]
第2ガスフィルタにより、外気を、空気に比べて窒素濃度が高い第1分流ガスと、空気に比べて酸素濃度が高い第2分流ガスとに分離する。更に、前記第1分流ガスを前記薬液処理ステップを行う処理部に供給するガス供給ステップを含む、[E10]~[E13]のいずれか一項記載の処理方法。
【0075】
[E14]
半導体製造装置から排出された、ポジ型現像液を含む廃液を濃縮する現像液濃縮部と、
前記現像液濃縮部によって濃縮された第1濃縮液を分解及び揮発させる薬液処理部と、を備える処理システム。
【0076】
[E15]
前記ポジ型現像液を含む廃液を、前記現像液濃縮部に供給する第1供給路を備え、前記第1供給路は、前記ポジ型現像液を含む廃液よりもレジスト濃度が高い廃液を、該廃液に対応する分解処理部に供給する第2供給路とは区別して設けられている、[E14]記載の処理システム。
【0077】
[E16]
前記薬液処理部は、熱により前記第1濃縮液を分解及び揮発させる、[E14]又は[E15]記載の処理システム。
【0078】
[E17]
前記薬液処理部は、前記第1濃縮液よりもレジスト濃度が高い第2濃縮液の分解処理部に接して設けられている、[E14]~[E16]のいずれか一項記載の処理システム。
【0079】
[E18]
有機フッ素化合物を燃焼除害する燃焼除害装置を更に備える。前記燃焼除害装置は、前記薬液処理部によって揮発させられた前記第1濃縮液に係るガスと、前記分解処理部によって揮発させられた前記第2濃縮液に係るガスとを混合して燃焼する燃焼室を有する、[E17]記載の処理システム。
【0080】
[E19]
前記ポジ型現像液を含む廃液を前記現像液濃縮部に供給する供給路であってその途中に前記ポジ型現像液を含む廃液用のフィルタが設けられた第1供給路を備える。前記ポジ型現像液を含む廃液よりもレジスト濃度が高い廃液の濃縮に係るフィルタを通過したろ液が流れるろ液流路と、 前記ろ液流路及び前記第1供給路を接続するバイパス流路と、を備える。更に、前記バイパス流路内のろ液を加圧することにより、前記第1供給路において該液を逆流させ、該ろ液を、前記ポジ型現像液を含む廃液用のフィルタの出口側から流入させる送液部を備える、[E14]~[E18]のいずれか一項記載の処理システム。
【0081】
[E20]
前記ポジ型現像液を含む廃液よりもレジスト濃度が高い廃液を貯留する廃液貯留部と、前記ろ液が、前記ポジ型現像液を含む廃液用のフィルタの出口側から流入した状態において、該フィルタの入口側から流れ出た逆流液を貯留する逆流液貯留部と、を備える。前記逆流液貯留部と前記廃液貯留部とを接続し、前記逆流液貯留部から前記廃液貯留部へ前記逆流液を送り込む回収流路を更に備える、[E19]記載の処理システム。
【0082】
[E21]
半導体製造装置から排出された、ポジ型現像液を含む廃液を濃縮する現像液濃縮ステップと、前記現像液濃縮ステップにおいて濃縮された第1濃縮液を分解及び揮発させる薬液処理ステップと、を含む処理方法。
【0083】
[E22]
前記薬液処理ステップでは、前記第1濃縮液よりもレジスト濃度が高い第2濃縮液の分解に係る反応で生じた熱を用いて、前記第1濃縮液を分解及び揮発させる、[E21]記載の処理方法。
【0084】
[E23]
前記現像液濃縮ステップにおいて用いられるフィルタの出口側から、該フィルタとは別のフィルタであって前記ポジ型現像液を含む廃液よりもレジスト濃度が高い廃液の濃縮に係るフィルタを通過したろ液を流入させる。これにより、前記現像液濃縮ステップにおいて用いられるフィルタを洗浄するフィルタ洗浄ステップを更に含む、[E21]又は[E22]記載の処理方法。
【符号の説明】
【0085】
1…PFAS無毒化システム、11…濃縮器、12…硫酸処理槽、13…冷却器、14…無毒化装置、100…半導体製造装置、111…リソラグラフィー装置、112…洗浄装置、113…エッチング装置、114…成膜装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13