IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京エレクトロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-基板処理方法及び基板処理装置 図1
  • 特開-基板処理方法及び基板処理装置 図2
  • 特開-基板処理方法及び基板処理装置 図3
  • 特開-基板処理方法及び基板処理装置 図4
  • 特開-基板処理方法及び基板処理装置 図5
  • 特開-基板処理方法及び基板処理装置 図6
  • 特開-基板処理方法及び基板処理装置 図7
  • 特開-基板処理方法及び基板処理装置 図8
  • 特開-基板処理方法及び基板処理装置 図9
  • 特開-基板処理方法及び基板処理装置 図10
  • 特開-基板処理方法及び基板処理装置 図11
  • 特開-基板処理方法及び基板処理装置 図12
  • 特開-基板処理方法及び基板処理装置 図13
  • 特開-基板処理方法及び基板処理装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151479
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20241018BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20241018BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01L21/316 X
C23C16/455
C23C16/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064847
(22)【出願日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】後平 拓
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 聖唯
【テーマコード(参考)】
4K030
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA04
4K030AA14
4K030BA09
4K030BA12
4K030BA13
4K030BA17
4K030BA18
4K030BA20
4K030BA42
4K030CA04
4K030CA12
4K030EA04
4K030FA02
4K030FA03
4K030FA04
4K030GA02
4K030HA01
4K030KA17
4K030KA18
4K030KA41
4K030LA15
5F058BC03
5F058BF24
5F058BF29
5F058BJ06
(57)【要約】
【課題】HO含有層を形成できる基板上に金属酸化物含有層を形成できる基板処理方法及び基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理方法は、(a)基板を提供する工程と、(b)基板上にHO含有層を形成する工程と、(c)金属含有ガスを含む処理ガスをHO含有層と反応させることにより、基板上に金属酸化物含有層を形成する工程と、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板を提供する工程と、
(b)前記基板上にHO含有層を形成する工程と、
(c)金属含有ガスを含む処理ガスを前記HO含有層と反応させることにより、前記基板上に金属酸化物含有層を形成する工程と、
を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記(b)では、HOガスを用いて、前記HO含有層を形成する、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
(a)基板を提供する工程であり、前記基板は、第1領域と、第2領域と、を含み、前記第1領域は、第1材料を含み、前記第2領域は、前記第1材料とは異なる第2材料を含む、工程と、
(b)前記第2領域上にHO含有層を形成する工程と、
(c)金属含有ガスを含む処理ガスを前記HO含有層と反応させることにより、前記第2領域上に金属酸化物含有層を形成する工程と、
を含む、基板処理方法。
【請求項4】
前記第1材料は、窒素、シリコン、及び炭素のうち少なくとも一つを含むと共に酸素を含まない、請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第2材料は、酸素を含み、
前記(b)では、HOを含まない水素含有ガスを用いて、前記HO含有層を形成する、請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記(b)では、前記水素含有ガスからプラズマが生成される、請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記第2材料は、シリコンを更に含み、
前記水素含有ガスは、フッ化水素ガスを含む、請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記金属含有ガスは、モリブデン、タングステン、チタン、ニオブ、レニウム、オスミウム、ルテニウム、白金、ゲルマニウム、又はタンタルのうち少なくとも一つを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記金属含有ガスは、ハロゲン化金属ガスを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記ハロゲン化金属ガスは、WFガス、MoFガス、WClガス、TiClガス、NbFガス、ReFガス、ReFガス、OsFガス、RuF、RuF、PtFガス、GeF、及びTaFガスからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記基板は、凹部を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記(b)では、前記基板を収容するチャンバ内の圧力は、前記基板を支持する基板支持部の温度における、HOの飽和蒸気圧以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記(c)では、前記基板を収容するチャンバ内の圧力は、前記基板を支持する基板支持部の温度における、前記金属含有ガスの飽和蒸気圧以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記(b)における前記基板を支持する基板支持部の温度は、前記(c)における前記基板支持部の温度と同じであるか又は異なる、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記(b)と前記(c)とは、同時に行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記(c)は、前記(b)の後に行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項17】
(d)前記(c)の後、前記(b)及び前記(c)を繰り返す工程を更に含む、請求項16に記載の基板処理方法。
【請求項18】
チャンバと、
前記チャンバ内において基板を支持するための基板支持部と、
金属含有ガスを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給するように構成されたガス供給部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記基板上にHO含有層を形成し、
前記処理ガスを前記HO含有層と反応させることにより、前記基板上に金属酸化物含有層を形成するように、前記ガス供給部を制御するように構成される、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、基板処理方法及び基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、チャンバ内に収容された基板上に金属酸化物層を形成する方法を開示する。この方法では、チャンバに金属錯体を含む前駆体ガスを供給することで、基板上に前駆体層が形成される。次に、酸化ガスによって前駆体層を酸化させることで、基板上に金属酸化物層を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-16778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、HO含有層を形成できる基板上に金属酸化物含有層を形成できる基板処理方法及び基板処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、基板処理方法は、(a)基板を提供する工程と、(b)前記基板上にHO含有層を形成する工程と、(c)金属含有ガスを含む処理ガスを前記HO含有層と反応させることにより、前記基板上に金属酸化物含有層を形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、HO含有層を形成できる基板上に金属酸化物含有層を形成できる基板処理方法及び基板処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理システムを概略的に示す図である。
図2図2は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図3図3は、一つの例示的実施形態に係る基板処理方法のフローチャートである。
図4図4は、図3の基板処理方法が適用され得る一例の基板の部分拡大図である。
図5図5は、一つの例示的実施に係る基板処理方法の一工程を示す断面図である。
図6図6は、一つの例示的実施に係る基板処理方法の一工程を示す断面図である。
図7図7は、一つの例示的実施に係る基板処理方法の一工程を示す断面図である。
図8図8は、一つの例示的実施形態に係る基板処理方法のフローチャートである。
図9図9は、図8の基板処理方法が適用され得る一例の基板の部分拡大図である。
図10図10は、一つの例示的実施に係る基板処理方法の一工程を示す断面図である。
図11図11は、一つの例示的実施に係る基板処理方法の一工程を示す断面図である。
図12図12は、一つの例示的実施に係る基板処理方法の一工程を示す断面図である。
図13図13は、一つの例示的実施に係る基板処理方法の一工程を示す断面図である。
図14図14は、HF、WF、及びHOの飽和蒸気圧曲線の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0009】
図1は、プラズマ処理システムの構成例を説明するための図である。一実施形態において、プラズマ処理システムは、プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理システムは、基板処理システムの一例であり、プラズマ処理装置1は、基板処理装置の一例である。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、基板支持部11及びプラズマ生成部12を含む。プラズマ処理チャンバ10は、プラズマ処理空間を有する。また、プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間に供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。ガス供給口は、後述するガス供給部20に接続され、ガス排出口は、後述する排気システム40に接続される。基板支持部11は、プラズマ処理空間内に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する。
【0010】
プラズマ生成部12は、プラズマ処理空間内に供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。プラズマ処理空間において形成されるプラズマは、容量結合プラズマ(CCP;Capacitively Coupled Plasma)、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)、ECRプラズマ(Electron-Cyclotron-resonance plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)、又は、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)等であってもよい。また、AC(Alternating Current)プラズマ生成部及びDC(Direct Current)プラズマ生成部を含む、種々のタイプのプラズマ生成部が用いられてもよい。一実施形態において、ACプラズマ生成部で用いられるAC信号(AC電力)は、100kHz~10GHzの範囲内の周波数を有する。従って、AC信号は、RF(Radio Frequency)信号及びマイクロ波信号を含む。一実施形態において、RF信号は、100kHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。
【0011】
一実施形態においては、プラズマ処理装置1は、プラズマ生成部12に代えて、リモートプラズマ源を含んでもよい。この場合、上記リモートプラズマ源は、基板支持部11が配置された上記プラズマ処理空間とは異なる別のプラズマ生成空間においてプラズマを生成し、当該プラズマを上記プラズマ処理空間に供給してもよい。上記リモートプラズマ源は、上記別のプラズマ生成空間においてプラズマを生成し、当該プラズマ中の活性種(例えばラジカル又はイオン)を上記プラズマ処理空間に供給してもよい。
【0012】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、処理部2a1、記憶部2a2及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aにより実現される。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。処理部2a1は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0013】
以下に、プラズマ処理装置1の一例としての容量結合型のプラズマ処理装置の構成例について説明する。図2は、容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【0014】
容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0015】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0016】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、後述するRF電源31及び/又はDC電源32に結合される少なくとも1つのRF/DC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよい。この場合、少なくとも1つのRF/DC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号及び/又はDC信号が少なくとも1つのRF/DC電極に供給される場合、RF/DC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材と少なくとも1つのRF/DC電極とが複数の下部電極として機能してもよい。また、静電電極1111bが下部電極として機能してもよい。従って、基板支持部11は、少なくとも1つの下部電極を含む。
【0017】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0018】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0019】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、少なくとも1つの上部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0020】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する少なくとも1つの流量変調デバイスを含んでもよい。
【0021】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、少なくとも1つのRF信号(RF電力)を少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ生成部12の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0022】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0023】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又sは複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0024】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。
【0025】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号がパルス化されてもよい。この場合、電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0026】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0027】
図3は、一つの例示的実施に係る基板処理方法のフローチャートである。図3に示される基板処理方法MT1(以下、「方法MT1」という)は、上記実施形態のプラズマ処理装置1により実行され得る。方法MT1は、図4の基板W1に適用され得る。
【0028】
図4は、図3の方法が適用され得る一例の基板の断面図である。基板W1は、酸素を含む材料を含んでもよい。当該材料は、シリコンを更に含んでもよい。当該材料は、シリコン酸化物を含んでもよい。基板W1は、シリコン酸化膜を含んでもよい。基板W1は、熱酸化膜を含んでもよい。基板W1は、シリコン酸窒化膜を含んでもよい。あるいは、基板W1は、酸素を含まない材料を含んでもよい。当該材料は、窒素、シリコン、及び炭素のうち少なくとも一つを含んでもよい。当該材料は、シリコン、シリコン窒化物、シリコン炭化物、シリコン炭化窒化物、又はアモルファスカーボンを含んでもよい。基板W1は、窒素含有膜、シリコン含有膜、又は炭素含有膜を含んでもよい。基板W1は、窒化膜、シリコン膜、シリコン窒化膜、シリコン炭化膜、シリコン炭化窒化膜、炭化膜、又はアモルファスカーボン膜を含んでもよい。シリコン窒化膜は、PE-CVDにより成膜されていてもよい。基板W1が上述した膜を含む場合、基板W1は当該膜の下の下地領域を含んでもよい。基板W1は、凹部を備えてもよい。
【0029】
以下、方法MT1について、方法MT1が上記実施形態のプラズマ処理装置1を用いて基板W1に適用される場合を例にとって、図5図7を参照しながら、説明する。図5図6、及び図7は、一つの例示的実施形態に係る基板処理方法の一工程を示す断面図である。プラズマ処理装置1が用いられる場合には、制御部2によるプラズマ処理装置1の各部の制御により、プラズマ処理装置1において方法MT1が実行され得る。方法MT1では、図2に示されるように、プラズマ処理チャンバ10内に配置された基板支持部11上の基板Wに代えて基板W1を処理する。
【0030】
図3に示されるように、方法MT1は、工程ST1~工程ST6を含み得る。工程ST1~工程ST6は、順に実行され得る。工程ST4は、工程ST2の後に実施されてもよいし、工程ST2と同時に実施されてもよい。方法MT1は、工程ST3、工程ST5、及び工程ST6の少なくとも一つを含まなくてもよい。
【0031】
(工程ST1)
工程ST1では、図4に示される基板W1を提供する。基板W1は、プラズマ処理チャンバ10内に提供され得る。基板W1は、プラズマ処理チャンバ10内において基板支持部11により支持され得る。
【0032】
(工程ST2)
工程ST2では、図5に示されるように、基板W1上にHO含有層HL1を形成する。工程ST2では、HOガスを用いて、基板W1上にHO含有層HL1を形成してもよい。この場合、基板W1は、酸素を含む材料を含んでもよく、酸素を含まない材料を含んでもよい。すなわち、HOガスを用いて、基板W1上にHO含有層HL1を形成する場合には、基板W1に含まれる材料が酸素を含むか否かは問われない。工程ST2の終了時に、HOガスの供給は停止され得る。
【0033】
あるいは、基板W1が酸素を含む材料を含んでいる場合、工程ST2では、水素含有ガスを含む処理ガスを用いて、基板W1上にHO含有層HL1を形成してもよい。この場合、上記水素含有ガスからプラズマを生成してもよいし、上記水素含有ガスからプラズマが生成されなくてもよい。上記処理ガスは、水素含有ガスに加えて、酸素含有ガスを更に含んでもよい。この場合、上記水素含有ガス(例えばHガス)及び上記酸素含有ガス(例えばOガス)を含む処理ガスから生成されるプラズマを用いて、基板W1上にHO含有層HL1を形成してもよい。上記水素含有ガスは、フッ化水素ガスを含んでもよい。上記水素含有ガスがフッ化水素ガスを含む場合、工程ST2では、プラズマ処理チャンバ10内にフッ化水素ガスを直接供給してもよい。あるいは、プラズマ処理チャンバ10内に、フッ化水素ガスとは別のガスを供給し、当該別のガスを反応させることにより、フッ化水素ガスを生成してもよい。別のガスを反応させることによりフッ化水素ガスを生成する場合、当該別のガスは、HOガスとClFガスとを含んでもよい。工程ST2では、HOガスとClFガスとを反応させることにより、フッ化水素ガスを生成してもよい。工程ST2の終了時に、上記処理ガスの供給は停止され得る。
【0034】
O含有層HL1は、上記水素含有ガスと基板W1との反応により形成されてもよい。HO含有層HL1は、フッ化水素ガスとシリコン酸化物との反応により形成されてもよい。HO含有層HL1は、HFを含んでもよいし、HSiFを含んでもよい。
【0035】
工程ST2では、基板W1を収容するプラズマ処理チャンバ10内の圧力は、基板W1を支持する基板支持部11の温度における、HOの飽和蒸気圧以上であってもよい。すなわち、工程ST2では、プラズマ処理チャンバ10内の圧力は、HOが気化しない圧力であってもよい。これにより、工程ST2において形成されるHO含有層HL1は、凝縮された状態又は固化した状態で、基板W1上に形成され得る。HO含有層HL1は、液体のHOを含んでもよいし、固体のHOを含んでもよい。
【0036】
工程ST2では、基板W1を収容するプラズマ処理チャンバ10内の圧力は、10000mTorr以上であってもよい。あるいは、工程ST2では、基板W1を収容するプラズマ処理チャンバ10内の圧力は、1mTorr以上であってもよい。工程ST2では、基板W1を収容するプラズマ処理チャンバ10内の圧力は、1000000mTorr以下であってもよい。あるいは、工程ST2では、基板W1を収容するプラズマ処理チャンバ10内の圧力は、1000mTorr以下であってもよい。1mTorrは、0.133322Paに対応する。
【0037】
工程ST2では、基板W1を支持する基板支持部11の温度は、100℃以下であってもよい。あるいは、工程ST2では、基板W1を支持する基板支持部11の温度は、50℃以下であってもよく、10℃以下であってもよく、0℃以下であってもよい。工程ST2では、基板W1を支持する基板支持部11の温度は、-80℃以上であってもよい。あるいは、工程ST2では、基板W1を支持する基板支持部11の温度は、-70℃以上であってもよい。
【0038】
(工程ST3)
工程ST3では、基板W1を収容するプラズマ処理チャンバ10の内部空間である、プラズマ処理空間10sをパージする。工程ST3では、プラズマ処理空間10sを真空引きすること、又はプラズマ処理空間10sにパージガスを供給することのうち少なくとも一つを行うことによって、プラズマ処理空間10sをパージしてもよい。プラズマ処理空間10sを真空引きすることによって、プラズマ処理空間10sをパージする場合、その処理時間は、10秒以下であってもよい。プラズマ処理空間10sにパージガスを供給することによって、プラズマ処理空間10sをパージする場合、当該パージガスは、窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガスを含んでいてもよい。工程ST3において、真空引き及び不活性ガスの供給の双方を行う場合、真空引きと不活性ガスの供給とを同時に行ってもよく、別々に行ってもよい。
【0039】
(工程ST4)
工程ST4では、図6に示されるように、金属含有ガスを含む処理ガスをHO含有層HL1と反応させることにより、基板W1上に金属酸化物含有層ML1を形成する。工程ST4の終了時に、上述した金属含有ガスを含む処理ガスの供給は停止され得る。
【0040】
金属含有ガスは、モリブデン、タングステン、チタン、ニオブ、レニウム、オスミウム、ルテニウム、白金、ゲルマニウム、又はタンタルのうち少なくとも一つを含んでもよい。金属含有ガスは、ハロゲン化金属ガスを含んでもよい。金属含有ガスに含まれるハロゲン化金属ガスは、WFガス、MoFガス、WClガス、TiClガス、NbFガス、ReFガス、ReFガス、OsFガス、RuF、RuF、PtFガス、GeF、及びTaFからなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【0041】
上記処理ガスは、上述した金属含有ガスに加えて、水素含有ガス又は貴ガスの少なくとも一つを含んでもよい。上記水素含有ガスは、フッ化水素ガスを含んでもよい。貴ガスの例は、ヘリウムガス、アルゴンガス、ネオンガス、キセノンガス及びクリプトンガスを含む。
【0042】
金属酸化物含有層ML1は、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化レニウム、酸化オスミウム、酸化ルテニウム、酸化白金、酸化ゲルマニウム、又は酸化タンタルのうち少なくとも一つを含んでもよい。金属酸化物含有層ML1は、酸化モリブデン含有層であってもよく、酸化タングステン含有層であってもよく、酸化チタン含有層であってもよく、酸化ニオブ含有層であってもよい。また、金属酸化物含有層ML1は、酸化レニウム含有層であってもよく、酸化オスミウム含有層であってもよく、酸化ルテニウム含有層であってもよく、酸化白金含有層であってもよい。あるいは、金属酸化物含有層ML1は、酸化ゲルマニウム層であってもよく、酸化タンタル層であってもよい。
【0043】
工程ST4では、基板W1を収容するプラズマ処理チャンバ10内の圧力は、基板W1を支持する基板支持部11の温度における、上記金属含有ガスの飽和蒸気圧以下であってもよい。すなわち、工程ST4では、プラズマ処理チャンバ10内の圧力は、上記金属含有ガスが液化しない圧力であってもよい。
【0044】
工程ST4では、基板W1を収容するプラズマ処理チャンバ10内の圧力は、1000000mTorr以下であってもよい。あるいは、工程ST4では、基板W1を収容するプラズマ処理チャンバ10内の圧力は、10000mTorr以下であってもよい。工程ST4では、基板W1を収容するプラズマ処理チャンバ10内の圧力は、100mTorr以上であってもよい。あるいは、工程ST4では、基板W1を収容するプラズマ処理チャンバ10内の圧力は、1000mTorr以上であってもよい。
【0045】
工程ST2と工程ST4とでは、プラズマ処理チャンバ10内の圧力は、同じであってもよく、異なっていてもよい。すなわち、工程ST2におけるプラズマ処理チャンバ10内の圧力は、工程ST4におけるプラズマ処理チャンバ10内の圧力と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0046】
工程ST4では、基板W1を支持する基板支持部11の温度は、100℃以下であってもよい。あるいは、工程ST4では、基板支持部11の温度は、50℃であってもよく、10℃以下であってもよく、0℃以下であってもよい。工程ST4では、基板W1を支持する基板支持部11の温度は、-80℃以上であってもよい。あるいは、工程ST4では、基板W1を支持する基板支持部11の温度は、-70℃以上であってもよい。
【0047】
工程ST2と工程ST4とでは、基板支持部11の温度は、同じであってもよく、異なっていてもよい。すなわち、工程ST2における基板支持部11の温度は、工程ST4における基板支持部11の温度と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0048】
(工程ST5)
工程ST5では、工程ST2~工程ST4を繰り返す。工程ST3が行われない場合、工程ST5では、工程ST2及び工程ST4を繰り返す。
【0049】
(工程ST6)
工程S6では、図7に示されるように、還元ガスを用いて、金属酸化物含有層ML1を還元することにより、基板W1上に金属含有層ML2を形成する。還元ガスは、水素含有ガスを含んでもよい。水素含有ガスは、Hガスを含んでもよい。還元ガスは、一酸化炭素ガス(COガス)を含んでもよい。
【0050】
工程ST6では、上記還元ガスから生成されるプラズマを用いて、金属酸化物含有層ML1を還元することにより、基板W1上に金属含有層ML2を形成してもよい。工程ST6では、Hガスから生成されるプラズマを用いて、金属酸化物含有層ML1を還元することにより、基板W1上に金属含有層ML2を形成してもよい。Hガスからプラズマを生成する場合、当該プラズマは、プラズマ生成部12において生成されてもよく、リモートプラズマ源において生成されてもよい。リモートプラズマ源において、Hガスからプラズマが生成される場合、リモートプラズマ源は、当該プラズマ中の水素原子活性種(例えば水素原子ラジカル又は水素原子イオン)をプラズマ処理チャンバ10内に供給してもよい。すなわち、工程ST6では、リモートプラズマ源においてHガスから生成されたプラズマ中の水素原子活性種を用いて、金属酸化物含有層ML1を還元することにより、基板W1上に金属含有層ML2を生成してもよい。
【0051】
工程ST6では、上記還元ガスからプラズマを生成せずに、金属酸化物含有層ML1を還元することにより、基板W1上に金属含有層ML2を形成してもよい。工程ST6では、Hガスからプラズマを生成せずに、金属酸化物含有層ML1を還元することにより、基板W1上に金属含有層ML2を形成してもよい。この場合、基板支持部11の温度を高温(例えば200℃以上)に設定した状態で、プラズマ処理チャンバ10内にHガスを供給することにより、金属酸化物含有層ML1を還元してもよい。
【0052】
金属含有層ML2は、モリブデン、タングステン、チタン、ニオブ、レニウム、オスミウム、ルテニウム、白金、ゲルマニウム、又はタンタルのうち少なくとも一つを含んでもよい。金属含有層ML2は、モリブデン含有層であってもよく、タングステン含有層であってもよく、チタン含有層であってもよく、ニオブ含有層であってもよい。また、金属含有層ML2は、レニウム含有層であってもよく、オスミウム含有層であってもよく、ルテニウム含有層であってもよく、白金含有層であってもよい。あるいは、金属含有層ML2は、ゲルマニウム含有層であってもよく、タンタル含有層であってもよい。
【0053】
上記方法MT1によれば、HO含有層HL1が形成できる基板W1上に金属酸化物含有層ML1又は金属含有層ML2を形成することができる。メカニズムは、以下のように推測されるが、これに限定されない。
【0054】
まず、基板W1上にHO含有層HL1が形成されるメカニズムについて、説明する。以下では、基板W1が材料として酸素を含まない、かつ、HOガスを用いてHO含有層HL1を形成する場合と、基板W1が材料として酸素を含み、かつ、HFガスを用いてHO含有層HL1を形成する場合と、を例にとって当該メカニズムを説明する。しかしながら、当該メカニズムは、上述した例に限定されない。
【0055】
基板W1が材料として酸素を含まない、かつ、HOガスを用いてHO含有層HL1を形成する場合、供給されたHOガスに含まれるHOがそのまま基板W1上に付着する。これにより、当該HOが、HO含有層HL1として、基板W1上に形成されると推測される。
【0056】
基板W1が材料として酸素を含み、かつ、HFガスを用いてHO含有層HL1を形成する場合、基板W1には、HFが供給される。この場合、基板W1では、以下の式(1)及び(2)に示される反応が進む。
SiO+4HF→SiF+2HO … (1)
SiO+6HF→HSiF+2HO … (2)
SiFは、揮発しやすい。これにより、基板W1上には、HSiFを含むHO含有層HL1が形成されると推測される。
【0057】
続いて、HO含有層HL1が形成された基板W1上に金属酸化物含有層ML1が形成されるメカニズムについて、説明する。以下では、WFガスを用いて金属酸化物含有層ML1を形成する場合を例にとって当該メカニズムを説明する。しかしながら、当該メカニズムは、上述した例に限定されない。
【0058】
O含有層HL1が形成された基板W1上に、WFガスを供給した場合、以下の式(3)に示されるように、HO含有層HL1とWFガスとは反応する。
3HO+WF→WO+6HF … (3)
上記式(3)に示される反応の結果、WOが金属酸化物として残存し、HFは揮発する。これにより、HO含有層HL1が形成できる基板W1上に金属酸化物としてWOを含む金属酸化物含有層ML1が形成されると推測される。
【0059】
図8は、一つの例示的実施形態に係る基板処理方法のフローチャートである。図8に示される基板処理方法MT2(以下、「方法MT2」という)は、上記実施形態のプラズマ処理装置1により実行され得る。方法MT2は、図9の基板W2に適用され得る。
【0060】
図9は、図8の方法が適用され得る一例の基板の断面図である。図9に示されるように、基板W2は、第1領域R1及び第2領域R2を含んでもよい。基板W2は、自然酸化膜F1を更に含んでもよい。自然酸化膜F1は、第1領域R1の表面上に形成されていてもよい。自然酸化膜F1は、第1領域R1の表面が大気雰囲気中に晒されることによって、形成され得る。自然酸化膜F1は、シリコン酸化膜であってもよい。第1領域R1は、マスクとして機能してもよい。第1領域R1は、少なくとも一つの開口OPを有していてもよい。少なく一つの開口OPは、ホールであってもよいし、スリットであってもよい。第1領域R1は、複数の開口OPを有していてもよい。第2領域R2は、第1領域R1の下にあってもよい。第2領域R2は、第1領域R1の開口に連通する凹部を有していてもよい。すなわち、基板W2は、凹部を備えていてもよい。
【0061】
あるいは、第2領域R2は、第1領域R1の上にあってもよい。この場合、第2領域R2は、マスクとして機能してもよい。第2領域R2は、少なくとも一つの開口を有していてもよい。上記少なくとも一つの開口は、開口OPと同様に、ホールであってもよいし、スリットであってもよい。第2領域R2は、複数の上記開口を有していてもよい。第1領域R1は、第2領域R2の上記開口に連通する凹部を有していてもよい。
【0062】
第1領域R1は、第1材料を含む。第1材料は、窒素、シリコン、及び炭素のうち少なくとも一つを含んでもよい。第1材料は、酸素を含まなくてもよい。第1材料は、シリコン、シリコン窒化物、シリコン炭化物、シリコン炭化窒化物、又はアモルファスカーボンを含んでもよい。第1領域R1は、窒素含有膜、シリコン含有膜、又は炭素含有膜であってもよい。第1領域R1は、窒化膜、シリコン膜、シリコン窒化膜、シリコン炭化膜、シリコン炭化窒化膜、炭化膜、又はアモルファスカーボン膜であってもよい。
【0063】
第2領域R2は、第1材料とは異なる第2材料を含む。第2材料は、酸素を含んでもよい。第2材料は、酸素に加えて、シリコンを更に含んでもよい。第2材料は、シリコン酸化物を含んでもよい。第2領域R2は、シリコン酸化膜であってもよい。第2領域R2は、熱酸化膜であってもよい。第2領域R2は、シリコン酸窒化膜であってもよい。
【0064】
以下、方法MT2について、方法MT2が上記実施形態のプラズマ処理装置1を用いて基板W2に適用される場合を例にとって、図10図13を参照しながら、説明する。図10図13は、一つの例示的実施形態に係る基板処理方法の一工程を示す断面図である。プラズマ処理装置1が用いられる場合には、制御部2によるプラズマ処理装置1の各部の制御により、プラズマ処理装置1において方法MT2が実行され得る。方法MT2では、図2に示されるように、プラズマ処理チャンバ10内に配置された基板支持部11上の基板Wに代えて基板W2を処理する。
【0065】
図8に示されるように、方法MT2は、工程ST11~工程ST17を含み得る。工程ST11~工程ST17は順に実行され得る。工程ST15は、工程ST13の後に実施されてもよいし、工程ST13と同時に実施されてもよい。方法MT2は、工程ST12、工程ST14、工程ST16、及び工程ST17の少なくとも一つを含まなくてもよい。
【0066】
(工程ST11)
工程ST11では、図9に示される基板W2を提供する。基板W2は、プラズマ処理チャンバ10内に提供され得る。基板W2は、プラズマ処理チャンバ10内において基板支持部11により支持され得る。
【0067】
(工程ST12)
工程ST12では、図10に示されるように、第1領域R1の表面上に形成された自然酸化膜F1を除去する。工程ST12では、フッ化水素ガスを用いて、自然酸化膜F1を除去してもよい。工程ST12において、フッ化水素ガスを用いて自然酸化膜F1を除去する場合、当該処理の際に反応生成物として生じるHOを除去する処理を更に実施してもよい。反応生成物として生じるHOを除去する際には、不活性ガス雰囲気下で加熱処理を行うことで、当該HOを除去してもよい。
【0068】
(工程ST13)
工程ST13では、図11に示されるように、第2領域R2上にHO含有層HL2を形成する。HO含有層HL2は、第2領域R2上に優先的に形成され得る。HO含有層HL2は、第1領域R1上に形成されてもよいし、第1領域R1上に形成されなくてもよい。第1領域R1上に形成され得るHO含有層HL2の厚さは、第2領域R2上に形成されるHO含有層HL2の厚さより小さくてもよい。工程ST13では、HOガスを含まない水素含有ガスを用いて、第2領域R2上にHO含有層HL2を形成してもよい。工程ST13では、上記水素含有ガスからプラズマが生成されてもよいし、上記水素含有ガスからプラズマが生成されなくてもよい。工程ST13では、上記水素含有ガスに加えて、酸素含有ガスを用いて、第2領域R2上にHO含有層HL2を形成してもよい。この場合、上記水素含有ガス及び上記酸素含有ガスから生成されるプラズマを用いて、第2領域R2上にHO含有層HL2を形成してもよい。
【0069】
上記水素含有ガスは、フッ化水素ガスを含んでもよい。上記水素含有ガスがフッ化水素ガスを含む場合、工程ST13では、プラズマ処理チャンバ10内にフッ化水素ガスを直接供給してもよい。あるいは、プラズマ処理チャンバ10内に、フッ化水素ガスとは別のガスを供給し、当該別のガスを反応させることにより、フッ化水素ガスを生成してもよい。別のガスを反応させることによりフッ化水素ガスを生成する場合、当該別のガスは、HOガスとClFガスを含んでもよい。工程ST13では、HOガスとClFガスとを反応させることにより、フッ化水素ガスを生成してもよい。あるいは、工程ST13では、Hガス、CHガス、又はNHガスのうち少なくとも一つとClFガスとを反応させることにより、フッ化水素ガスを生成してもよい。
【0070】
O含有層HL2は、上記水素含有ガスと第2領域R2との反応により形成されてもよい。HO含有層HL2は、フッ化水素ガスとシリコン酸化物との反応により形成されてもよい。HO含有層HL2は、HFを含んでもよいし、HSiFを含んでもよい。
【0071】
工程ST13では、基板W2を収容するプラズマ処理チャンバ10内の圧力は、基板W2を支持する基板支持部11の温度における、HOの飽和蒸気圧以上であってもよい。すなわち、工程ST13では、プラズマ処理チャンバ10内の圧力は、HOが気化しない圧力であってもよい。これにより、工程ST13において形成されるHO含有層HL2は、凝縮された状態で、基板W2上に形成され得る。HO含有層HL2は、液体のHOを含んでもよいし、固体のHOを含んでもよい。
【0072】
工程ST13では、基板W2を収容するプラズマ処理チャンバ10内の圧力は、10000mTorr以上であってもよい。あるいは、工程ST13では、基板W2を収容するプラズマ処理チャンバ10内の圧力は、1mTorr以上であってもよい。工程ST13では、基板W2を収容するプラズマ処理チャンバ10内の圧力は、1000000mTorr以下であってもよい。あるいは、工程ST13では、基板W2を収容するプラズマ処理チャンバ10内の圧力は、1000mTorr以下であってもよい。1mTorrは、0.133322Paに対応する。
【0073】
工程ST13では、基板W2を支持する基板支持部11の温度は、100℃以下であってもよい。あるいは、工程ST13では、基板W2を支持する基板支持部11の温度は、50℃であってもよく、10℃以下であってもよく、0℃以下であってもよい。工程ST13では、基板W2を支持する基板支持部11の温度は、-80℃以上であってもよい。あるいは、工程ST13では、基板W2を支持する基板支持部11の温度は、-70℃以上であってもよい。
【0074】
(工程ST14)
工程ST14では、基板W1を収容するプラズマ処理チャンバ10の内部空間である、プラズマ処理空間10sをパージする。工程ST14では、プラズマ処理空間10sを真空引きすること、又はプラズマ処理空間10sにパージガスを供給することのうち少なくとも一つを行うことによって、プラズマ処理空間10sをパージしてもよい。プラズマ処理空間10sを真空引きすることによって、プラズマ処理空間10sをパージする場合、その処理時間は、10秒以下であってもよい。プラズマ処理空間10sにパージガスを供給することによって、プラズマ処理空間10sをパージする場合、当該パージガスは、窒素又はアルゴン等の不活性ガスを含んでいてもよい。工程ST14において、真空引き及び不活性ガスの供給の双方を行う場合、真空引きと不活性ガスの供給とを同時に行ってもよく、別々に行ってもよい。
【0075】
(工程ST15)
工程ST15では、図12に示されるように、金属含有ガスを含む処理ガスをHO含有層HL2と反応させることにより、第2領域R2上に金属酸化物含有層ML3を形成する。工程ST15において用いられる金属含有ガスの例は、方法MT1の工程ST4において用いられる金属含有ガスの例と同じでもよい。
【0076】
上記処理ガスは、上述した金属含有ガスに加えて、水素含有ガス又は貴ガスの少なくとも一つを含んでもよい。上記水素含有ガスは、フッ化水素ガスを含んでもよい。貴ガスの例は、ヘリウムガス、アルゴンガス、ネオンガス、キセノンガス及びクリプトンガスを含む。
【0077】
工程ST15では、基板W2を収容するプラズマ処理チャンバ10内の圧力は、基板W2を支持する基板支持部11の温度における、上記金属含有ガスの飽和蒸気圧以下であってもよい。すなわち、工程ST15では、プラズマ処理チャンバ10内の圧力は、上記金属含有ガスが気化しない圧力であってもよい。
【0078】
工程ST15では、基板W2を収容するプラズマ処理チャンバ10内の圧力は、1000000mTorr以下であってもよい。あるいは、工程ST15では、基板W2を収容するプラズマ処理チャンバ10内の圧力は、10000mTorr以下であってもよい。工程ST15では、基板W2を収容するプラズマ処理チャンバ10内の圧力は、100mTorr以上であってもよい。あるいは、工程ST15では、基板W2を収容するプラズマ処理チャンバ10内の圧力は、1000mTorr以上であってもよい。
【0079】
工程ST13と工程ST15とでは、プラズマ処理チャンバ10内の圧力は、同じであってもよく、異なっていてもよい。すなわち、工程ST13におけるプラズマ処理チャンバ10内の圧力は、工程ST15におけるプラズマ処理チャンバ10内の圧力と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0080】
工程ST15では、基板W2を支持する基板支持部11の温度は、100℃以下であってもよい。あるいは、工程ST15では、基板W2を支持する基板支持部11の温度は、50℃であってもよく、10℃以下であってもよく、0℃以下であってもよい。工程ST15では、基板W2を支持する基板支持部11の温度は、-80℃以上であってもよい。あるいは、工程ST15では、基板W2を支持する基板支持部11の温度は、-70℃以上であってもよい。
【0081】
工程ST13と工程ST15とでは、基板支持部11の温度は、同じであってもよく、異なっていてもよい。すなわち、工程ST13における基板支持部11の温度は、工程ST15における基板支持部11の温度と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0082】
(工程ST16)
工程ST16では、工程ST13~工程ST15を繰り返す。工程ST14が行われない場合、工程ST16では、工程ST13及び工程ST15を繰り返す。
【0083】
(工程ST17)
工程ST17では、図13に示されるように、還元ガスを用いて、金属酸化物含有層ML3を還元することにより、基板W2上に金属含有層ML4を形成する。工程ST17において用いられる還元ガスの例は、方法MT1の工程ST6において用いられる還元ガスの例と同じでもよい。
【0084】
あるいは、工程ST17では、上記還元ガスから生成されるプラズマを用いて、金属酸化物含有層ML3を還元することにより、基板W2上に金属含有層ML4を形成してもよい。上記還元ガスからプラズマを生成する処理は、方法MT1の工程ST6と同様に行われてもよい。リモートプラズマ源において上記プラズマを生成した場合における金属含有層ML4の形成は、方法MT1の工程ST6と同様に行われてもよい。すなわち、工程ST17では、リモートプラズマ源において上記還元ガスから生成されたプラズマ中のラジカルを用いて、金属酸化物含有層ML3を還元することにより、基板W2上に金属含有層ML4を生成してもよい。
【0085】
工程ST17では、Hガスから生成されるプラズマを用いて、金属酸化物含有層ML3を還元することにより、金属含有層ML4を形成してもよい。Hガスからプラズマを生成する処理は、方法MT1の工程ST6と同様に行われてもよい。すなわち、工程ST17では、リモートプラズマ源においてHガスから生成さえたプラズマ中の水素ラジカルを用いて、金属酸化物含有層ML3を還元することにより、基板W2上に金属含有層ML4を生成してもよい。
【0086】
上記還元ガスからプラズマを生成しない場合における金属含有層ML4の形成は、方法MT1の工程ST6と同様に行われてもよい。Hガスからプラズマを生成しない場合における金属含有層ML4の形成は、方法MT1の工程ST6と同様に行われてもよい。
【0087】
上記方法MT2によれば、第2領域R2上に金属酸化物含有層ML3又は金属含有層ML4を優先的に形成することができる。第2領域R2上に形成される金属酸化物含有層ML3又は金属含有層ML4の厚さは、第1領域R1上に形成され得る金属酸化物含有層ML3又は金属含有層ML4の厚さよりも大きい。
【0088】
また、第2領域R2が第1領域R1の上に位置する場合、上記方法MT2によれば、金属含有層ML2により、マスクとして機能し得る第2領域R2を保護することができる。すなわち、上記方法MT2によれば、マスクとして機能し得る第2領域R2上に、保護膜として金属含有層ML2を形成することができる。方法MT2が工程ST6を含まない場合、金属酸化物含有層ML1により、マスクとして機能し得る第2領域R2を保護することができる。すなわち、方法MT2が工程ST6を含まない場合、マスクとして機能し得る第2領域R2上に、保護膜として金属酸化物含有層ML1を形成することができる。さらに、第2領域R2上に、保護膜として金属酸化物含有層ML1を形成する場合には、当該保護膜として金属含有層ML2を形成する場合と比較して、保護膜としての保護効果を高めることができる。
【0089】
方法MT2においても、第2領域R2上にHO含有層HL2が形成されるメカニズムは、方法MT1において説明した、基板W1上にHO含有層HL1が形成されるメカニズムと同様であると推測されるが、これに限定されない。また、方法MT2においても、第2領域R2上に金属酸化物含有層ML3が形成されるメカニズムは、方法MT1において説明した、基板W1上に金属酸化物含有層ML1が形成されるメカニズムと同様であると推測されるが、これに限定されない。
【0090】
以下、方法MT1及び方法MT2の評価のために行った種々の実験について説明する。以下に説明する実験は、本開示を限定するものではない。
【0091】
(第1実験)
第1実験では、シリコン酸化膜が形成された基板をチャンバ内に提供した。すなわち、第1実験では、材料として酸素を含む基板をチャンバ内に提供した。当該基板は、チャンバ内において基板支持部により支持された。その後、プラズマを生成することなく、HFガスを基板に供給した。その後、プラズマを生成することなく、HFガスとWFガスとの混合ガスを基板に供給した。
【0092】
ここで、図14を参照して、HFガスの供給時及び混合ガスの供給時における、チャンバ内の圧力及び基板支持部の温度について説明する。図14は、HF、WF、及びHOの飽和蒸気圧曲線の一例を示すグラフである。横軸は、温度(℃)である。縦軸は、圧力(mTorr)である。グラフ中、曲線C1はHFの飽和蒸気圧曲線を示し、曲線C2はWFの飽和蒸気圧曲線を示し、曲線C3はHOの飽和蒸気圧曲線を示す。
【0093】
HFガスの供給時において、チャンバ内の圧力は800mTorrであり、基板支持部の温度は-70℃であった。当該圧力及び当該温度は、曲線C3より上の領域に位置している。すなわち、HFガスの供給時においては、チャンバ内の圧力は、基板支持部の温度における、HOの飽和蒸気圧以上であった。
【0094】
また、HFガスとWFガスとの混合ガスの供給時においては、同様に、チャンバ内の圧力は800mTorrであり、基板支持部の温度は-70℃であった。当該圧力及び当該温度は、曲線C1及び曲線C2より下の領域に位置している。すなわち、HFガスとWFガスとの混合ガスの供給時においては、チャンバ内の圧力は、基板支持部における、HFガスの飽和蒸気圧及びWFガスの飽和蒸気圧以下であった。
【0095】
(第2実験)
第2実験では、シリコン酸化膜に代えてシリコン窒化膜が形成された基板をチャンバ内に提供したこと以外は第1実験と同じようにして第2実験を行った。すなわち、第2実験では、材料としてシリコン及び窒素を含むと共に酸素を含まない基板をチャンバ内に提供した。
【0096】
(第3実験)
第3実験では、シリコン酸化膜に代えてシリコン膜が形成された基板をチャンバ内に提供したこと以外は第1実験と同じようにして第3実験を行った。すなわち、第3実験では、材料としてシリコンを含むと共に酸素を含まない基板をチャンバ内に提供した。
【0097】
(第4実験)
第4実験では、シリコン酸化膜に代えてアモルファスカーボン膜が形成された基板をチャンバ内に提供したこと以外は第1実験と同じようにして第4実験を行った。すなわち、第4実験では、材料として炭素を含むと共に酸素を含まない基板をチャンバ内に提供した。
【0098】
(第1実験結果)
第1実験~第4実験において得られた基板の断面を観察し、堆積膜が形成されていることを確認した。また、X線光電子分光(XPS)分析により、各堆積膜がタングステン及び酸素を含有することを確認した。したがって、第1実験~第4実験において、酸化タングステン含有膜が基板上に形成されたことが分かる。
【0099】
そこで、第1実験~第4実験において得られた基板の断面を更に観察し、各酸化タングステン含有膜の厚さを測定した。第1実験では、約50nmの厚さを有する酸化タングステン含有膜が形成されていることを確認した。第2実験~第4実験では、数nmの厚さを有する酸化タングステン含有膜が形成されていることを確認した。したがって、第1実験における酸化タングステン含有膜は、第2実験~第4実験における酸化タングステン含有膜の厚さより、大きい厚さを有することが分かる。すなわち、基板が材料として酸素を含む場合に形成される酸化タングステン含有膜の厚さは、基板が材料として窒素、シリコン、及び炭素のうち少なくとも一つを含むと共に酸素を含まない場合に形成される酸化タングステン含有膜の厚さより、大きいことが分かる。第2実験~第4実験では、大気雰囲気への暴露により基板の表面に混入した酸素又はチャンバの内壁に存在する酸素によって、酸化タングステン含有膜が形成されたと推測される。
【0100】
以上のことから、上述した第1実験~第4実験での処理を実施した場合、材料として酸素を含む領域に酸化タングステン含有膜が優先的に形成されることが推測される。
【0101】
(第5実験)
第5実験では、レジストマスクと、レジストマスクの下のシリコン酸化膜と、シリコン酸化膜の下のシリコン窒化膜と、を含む基板をチャンバ内に提供した。当該基板は、チャンバ内において基板支持部により支持された。レジストマスクは、酸素を含んでいないと共に開口を有している。シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜は、上記開口と連通する貫通孔を有している。すなわち、第5実験において提供される基板には、レジストマスクの開口と連通する凹部が形成されており、当該凹部はシリコン酸化膜及びシリコン窒化膜を貫通している。その後、プラズマを生成することなく、HFガスを基板に供給した。その後、プラズマを生成することなく、HFガスとWFガスとの混合ガスを基板に供給した。HFガスの供給工程及びHFガスとWFガスとの混合ガスの供給工程のいずれにおいても、チャンバ内の圧力は800mThorrであり、基板支持部の温度は-70℃であった。
【0102】
(第2実験結果)
第5実験において得られた基板の断面を観察した。その結果、第5実験において、基板のうち、貫通孔を画成するシリコン酸化膜の表面上には酸化タングステン含有膜が優先的に形成されていたことを確認した。
【0103】
以上のことから、第5実験での処理を実施した場合、凹部の側壁上に酸化タングステン含有膜が優先的に形成されることが推測される。
【0104】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0105】
ここで、本開示に含まれる種々の例示的実施形態を、以下の[E1]~[E19]に記載する。
【0106】
[E1]
(a)基板を提供する工程と、
(b)前記基板上にHO含有層を形成する工程と、
(c)金属含有ガスを含む処理ガスを前記HO含有層と反応させることにより、前記基板上に金属酸化物含有層を形成する工程と、
を含む、基板処理方法。
【0107】
基板処理方法[E1]によれば、HO含有層を形成できる基板上に金属酸化物含有層を形成することができる。
【0108】
[E2]
前記(b)では、HOガスを用いて、前記HO含有層を形成する、[E1]に記載の基板処理方法。
【0109】
[E3]
(a)基板を提供する工程であり、前記基板は、第1領域と、第2領域と、を含み、前記第1領域は、第1材料を含み、前記第2領域は、前記第1材料とは異なる第2材料を含む、工程と、
(b)前記第2領域上にHO含有層を形成する工程と、
(c)金属含有ガスを含む処理ガスを前記HO含有層と反応させることにより、前記第2領域上に金属酸化物含有層を形成する工程と、
を含む、基板処理方法。
【0110】
基板処理方法[E3]によれば、第2領域上に金属酸化物含有層を優先的に形成することができる。
【0111】
[E4]
前記第1材料は、窒素、シリコン、及び炭素のうち少なくとも一つを含むと共に酸素を含まない、[E3]に記載の基板処理方法。
【0112】
[E5]
前記第2材料は、酸素を含み、
前記(b)では、HOを含まない水素含有ガスを用いて、前記HO含有層を形成する、[E3]に記載の基板処理方法。
【0113】
[E6]
前記(b)では、前記水素含有ガスからプラズマが生成される、[E5]に記載の基板処理方法。
【0114】
[E7]
前記第2材料は、シリコンを更に含み、
前記水素含有ガスは、フッ化水素ガスを含む、[E5]に記載の基板処理方法。
【0115】
[E8]
前記金属含有ガスは、モリブデン、タングステン、チタン、ニオブ、レニウム、オスミウム、ルテニウム、白金、ゲルマニウム、又はタンタルのうち少なくとも一つを含む、[E1]~[E7]のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【0116】
[E9]
前記金属含有ガスは、ハロゲン化金属ガスを含む、[E1]~[E8]のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【0117】
[E10]
前記ハロゲン化金属ガスは、WFガス、MoFガス、WClガス、TiClガス、NbFガス、ReFガス、ReFガス、OsFガス、RuF、RuF、PtFガス、GeF、及びTaFガスからなる群から選択される少なくとも1種を含む、[E9]に記載の基板処理方法。
【0118】
[E11]
前記基板は、凹部を備える、[E1]~「E10」のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【0119】
[E12]
前記(b)では、前記基板を収容するチャンバ内の圧力は、前記基板を支持する基板支持部の温度における、HOの飽和蒸気圧以上である、[E1]~[E11]のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【0120】
[E13]
前記(c)では、前記基板を収容するチャンバ内の圧力は、前記基板を支持する基板支持部の温度における、前記金属含有ガスの飽和蒸気圧以下である、[E1]~[E12]のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【0121】
[E14]
前記(b)における前記基板支持部の温度は、前記(c)における前記基板支持部の温度と同じであるか又は異なる、[E1]~[E13]のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【0122】
[E15]
前記(b)と前記(c)とは、同時に行われる、[E1]~[E14]のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【0123】
[E16]
前記(c)は、前記(b)の後に行われる、[E1]~[E14]のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【0124】
[E17]
(d)前記(c)の後、前記(b)及び前記(c)を繰り返す工程を更に含む、[E16]に記載の基板処理方法。
【0125】
[E18]
チャンバと、
前記チャンバ内において基板を支持するための基板支持部と、
金属含有ガスを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給するように構成されたガス供給部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記基板上にHO含有層を形成し、
前記処理ガスを前記HO含有層と反応させることにより、前記基板上に金属酸化物含有層を形成するように、前記ガス供給部を制御するように構成される、基板処理装置。
【0126】
[E19]
(e)前記(b)と前記(c)との間に、前記基板を収容するチャンバの内部空間をパージする工程を更に含む、[E1]~[E17]のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【符号の説明】
【0127】
1…プラズマ処理装置、2…制御部、11…基板支持部、20…ガス供給部、HL1,HL2…HO含有層、ML1,ML3…金属酸化物含有層、R1…第1領域、R2…第2領域、W,W1,W2…基板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14