(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151709
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】ミラブル型シリコーンゴム組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20241018BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20241018BHJP
C08K 5/05 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K3/36
C08K5/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065283
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】轟 大地
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP042
4J002CP141
4J002DJ016
4J002EC067
4J002FB116
4J002FD016
4J002FD207
4J002GJ02
(57)【要約】
【課題】一次加硫のみでの圧縮永久ひずみが小さいシリコーンゴム硬化物となるミラブル型シリコーンゴム組成物の提供。
【解決手段】
(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を有する、重量平均重合度が1,000~100,000のオルガノポリシロキサン;100質量部、
(B)BET法による比表面積が50m2/g以上の表面処理された補強性シリカ;10~100質量部、
(C)沸点が170℃以上の鎖状の脂肪族アルコール;0.1~10質量部、
(D)ケイ素原子に結合した水素原子(ヒドロシリル基)を1分子中に2個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン;(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基に対する(D)成分中のヒドロシリル基のモル比が0.5~10となる量、及び、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒;触媒量、
を含有するものであるミラブル型シリコーンゴム組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を有する、重量平均重合度が1,000~100,000のオルガノポリシロキサン;100質量部、
(B)BET法による比表面積が50m2/g以上の表面処理された補強性シリカ;10~100質量部、
(C)沸点が170℃以上の鎖状の脂肪族アルコール;0.1~10質量部、
(D)ケイ素原子に結合した水素原子(ヒドロシリル基)を1分子中に2個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン;(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基に対する(D)成分中のヒドロシリル基のモル比が0.5~10となる量、及び、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒;触媒量、
を含有するものであるミラブル型シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(C)成分が、1-オクタノール、1-ノナノール、1-ドデカノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール及びエチレングリコールの中から選択される1種類以上である請求項1に記載のミラブル型シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラブル型シリコーンゴム組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは、優れた耐候性、電気特性、低圧縮永久歪、耐熱性、耐寒性等の特性を有している。
【0003】
シリコーンゴム組成物は、常法により、成形、硬化することができ、成形方法として、射出成形、トランスファー成形、注入成形、圧縮成形等から目的にあった最適な方法を選択することが可能である。硬化方法としては、40~230℃で3秒間~160分間程度の加熱処理(一次加硫)条件を採用し得る。また更に、圧縮永久ひずみを低減させるために、40~230℃で10分間~24時間程度の二次加硫(ポストキュア)を行っている。
【0004】
近年、カーボンニュートラルの観点から、電力使用の削減が望まれている。しかし、二次加硫を行わないと、圧縮永久ひずみが十分に小さいものが得られないという問題がある。
【0005】
特許文献1には、含水酸化セリウム及び含水酸化ジルコニウムを含有することで、シリコーンゴムの耐熱性と圧縮永久ひずみが向上する旨の記載がある。しかし、一次加硫のみで良好な圧縮永久ひずみ特性を得られるという具体的な記載はなく、上記の問題は解決されていない。
【0006】
特許文献2には、イオウ含有化合物を使用すると、一次加硫のみでも優れた圧縮永久ひずみ特性を有するシリコーンゴム硬化物が得られるという記載がある。しかし、イオウ含有化合物を使用すると、付加硬化阻害が起こり、加硫特性が悪化する場合がある。
【0007】
特許文献3には、ベンゾトリアゾール誘導体で表面処理された補強性充填材を含有するシリコーンゴム硬化物は、圧縮永久ひずみが低くなるという記載がある。加硫特性の低下も抑制できるとの記載もあるが、いずれも実使用に耐え得るレベルには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014-031408号公報
【特許文献2】特開2016-196591号公報
【特許文献3】特開2017-165931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明は、一次加硫のみでの圧縮永久ひずみが小さいシリコーンゴム硬化物となるミラブル型シリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題について鋭意研究を重ねた結果、特定のアルコールを添加することで、一次加硫のみでも硬化物の圧縮永久ひずみを低減できるミラブル型シリコーンゴム組成物が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、下記のミラブル型シリコーンゴム組成物及びその硬化物を提供するものである。
【0011】
[1]
(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を有する、重量平均重合度が1,000~100,000のオルガノポリシロキサン;100質量部、
(B)BET法による比表面積が50m2/g以上の表面処理された補強性シリカ;10~100質量部、
(C)沸点が170℃以上の鎖状の脂肪族アルコール;0.1~10質量部、
(D)ケイ素原子に結合した水素原子(ヒドロシリル基)を1分子中に2個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン;(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基に対する(D)成分中のヒドロシリル基のモル比が0.5~10となる量、及び、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒;触媒量、
を含有するものであるミラブル型シリコーンゴム組成物。
[2]
(C)成分が、1-オクタノール、1-ノナノール、1-ドデカノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール及びエチレングリコールの中から選択される1種類以上である[1]に記載のミラブル型シリコーンゴム組成物。
[3]
[1]又は[2]に記載のミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化物。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、一次加硫のみでの圧縮永久ひずみが小さいシリコーンゴム硬化物となるミラブル型シリコーンゴム組成物を提供することができる。したがって、本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化物は、Oリングやパッキンなどのガスケット等の用途に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0014】
本明細書において、後述する(A)成分、(B)成分及び(C)成分を配合し、(D)成分及び(E)成分を配合する前の混合物を(ミラブル型)シリコーンゴムコンパウンドと称し、このシリコーンゴムコンパウンドに(D)成分及び(E)成分を配合した混合物を(ミラブル型)シリコーンゴム組成物と称する。
【0015】
[(A)成分]
本発明において、(A)成分は、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を有する、重量平均重合度が1,000~100,000のオルガノポリシロキサンであり、本発明にかかる組成物のベースポリマー(主剤)である。
【0016】
(A)成分としてのオルガノポリシロキサンは、1分子中にアルケニル基が2個以上であり、2~50個、特に2~20個を有するものが好ましい。なお、このアルケニル基は、分子鎖末端でケイ素原子に結合していても、分子鎖の途中(分子鎖非末端)のケイ素原子に結合していても、その両方であってもよいが、分子鎖末端のケイ素原子に結合しているものが好ましい。
【0017】
(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基としては、例えば、通常、炭素数2~8、好ましくは2~4のものが挙げられる。ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基が挙げられ、ビニル基、アリル基が好ましく、ビニル基が特に好ましい。
また、アルケニル基以外の基としては、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~10のアラルキル基などが挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、2-フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられる。上記のものの中では、メチル基、フェニル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0018】
(A)成分であるオルガノポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、又は一部分岐構造を有する直鎖状であることが好ましい。具体的には、該オルガノポリシロキサンの主鎖を構成するジオルガノシロキサン単位の繰り返し構造が、ジメチルシロキサン単位のみの繰り返しからなるもの、又はこの主鎖を構成するジメチルシロキサン単位の繰り返しからなるジメチルポリシロキサン構造の一部として、フェニル基、ビニル基等を置換基として有するジフェニルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位、メチルビニルシロキサン単位等のジオルガノシロキサン単位を導入したもの等が好適である。
【0019】
また、分子鎖両末端は、例えば、トリメチルシロキシ基、ジメチルフェニルシロキシ基、ビニルジメチルシロキシ基、ジビニルメチルシロキシ基、トリビニルシロキシ基等のトリオルガノシロキシ基などで封鎖されていることが好ましい。
【0020】
このようなオルガノポリシロキサンは、例えば、オルガノハロゲノシランの1種又は2種以上を(共)加水分解し、縮合することにより、あるいは環状ポリシロキサン(シロキサンの3量体、4量体等)をアルカリ性又は酸性の触媒を用いて開環重合することによって得ることができる。
【0021】
なお、上記オルガノポリシロキサンの重合度は1,000~100,000であり、好ましくは2,000~100,000、より好ましくは2,000~50,000、特に好ましくは3,000~20,000であり、室温(25℃)において自己流動性のない、いわゆる生ゴム状(非液状)であることが特徴である。重合度が1,000未満であるとシリコーンゴムコンパウンドとした際に、ロール粘着等の問題が生じ、ロール作業性が悪化する。なお、本発明における重合度は、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析によるポリスチレン換算の重量平均分子量から、重量平均重合度として求めた。
[測定条件]
展開溶媒:トルエン
流量:0.35mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-L
TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:10μL(濃度0.5質量%のトルエン溶液)
【0022】
(A)成分は、1種を単独で用いても、分子量(重合度)や分子構造の異なる2種以上の混合物であってもよい。
【0023】
[(B)成分]
(B)成分の表面処理された補強性シリカは、得られるシリコーンゴム組成物に優れた機械的特性を付与する成分として作用する。該補強性シリカは、沈降シリカ(湿式シリカ)でもヒュームドシリカ(乾式シリカ)でもよい。本発明において(B)成分の表面処理された補強性シリカのBET法による比表面積は、50m2/g以上であることが必要であり、好ましくは100~400m2/gである。この比表面積が50m2/g未満であると、(B)成分による補強効果が不十分となる。
【0024】
(B)成分の補強性シリカは、シラノール基を含有するオルガノポリシロキサン;オルガノポリシラザン;クロロシラン;アルコキシシラン等の有機ケイ素化合物で表面処理されたものが用いられる。これらの補強性シリカは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
(B)成分の補強性シリカの配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して10~100質量部であり、好ましくは15~80質量部、より好ましくは20~70質量部である。この配合量が上記範囲を逸脱すると、シリコーンゴム組成物の加工性が低下するだけでなく、シリコーンゴム硬化物の機械的特性が不十分なものとなる。
【0026】
[(C)成分]
(C)成分は沸点が170℃以上の鎖状の脂肪族アルコールであり、一次加硫した硬化物の圧縮永久ひずみを低減するための成分である。(C)成分のアルコールとしては、沸点が170℃以上であり、好ましくは沸点170~300℃のアルコールである。沸点が、この範囲内であれば、構造の如何は問わないが、炭素数2~24の鎖状の脂肪族アルコールが好ましく、1価の炭素数2~24の鎖状の脂肪族アルコールが特に好ましい。
なお、C≡C三重結合を含むアルキニル基を有するアルコールは、ヒドロシリル化反応制御剤として用いられるため、後述のアセチレンアルコール系制御剤は、(C)成分に含まれないものとする。
【0027】
(C)成分の沸点が170℃以上の鎖状の脂肪族アルコールとしては、1-オクタノール(194~195℃)、1-ノナノール(215℃)、1-ドデカノール(259℃)、2-エチル-1-ヘキサノール(184~185℃)、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール(176℃)、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール(193~202℃)、エチレングリコール(197.3℃)などが挙げられる(カッコ内は各物質の沸点)。これらのアルコールは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明の(C)成分の沸点は、厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」(https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/GHS_MSD_FND.aspx)に掲載された値を用いるものとする。
【0028】
(C)成分のアルコールの配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1~10質量部であり、好ましくは0.3~5質量部である。0.1質量部より少ないと、圧縮永久ひずみの改善効果が得られず、10質量部より多いと、得られるシリコーンゴム組成物の硬化物の硬度が低くなり過ぎる場合があり、また経済的にも好ましくない。
【0029】
[(D)成分]
(D)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子(ヒドロシリル基)を1分子中に2個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1分子中に2個以上、好ましくは3個以上、より好ましくは3~200個、更に好ましくは4~100個のヒドロシリル基を含有すれば、直鎖状、環状、分枝状、三次元網状構造のいずれであってもよく、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることができ、例えば、下記平均組成式(1)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることができる。
R1
aHbSiO(4-a-b)/2 (1)
【0030】
上記平均組成式(1)中、R1は独立して、炭素数1~12、好ましくは1~8の1価炭化水素基であり、脂肪族不飽和結合を有しないものが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル基等のアラルキル基;及びこれらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子等で置換した基、例えば、3,3,3-トリフルオロプロピル基等が挙げられる。
【0031】
なお、aは、0<a<3、好ましくは0.5≦a≦2.2、より好ましくは1.0≦a≦2.0である。また、bは、0<b≦3、好ましくは0.002≦b≦1.1、より好ましくは0.005≦b≦1である。さらに、0<a+b≦3、好ましくは1≦a+b≦3、より好ましくは1.002≦a+b≦2.7を満たす正数である。
【0032】
(D)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、ヒドロシリル基を1分子中に2個以上、好ましくは3個以上有するが、これは分子鎖末端にあっても、分子鎖の途中にあっても、その両方にあってもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、25℃における粘度が0.5~10,000mPa・s、特に1~300mPa・sであることが好ましい。
【0033】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、具体的には、例えば、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)3SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C6H5)3SiO1/2単位とからなる共重合体などや、上記例示化合物において、メチル基の一部又は全部を他のアルキル基や、フェニル基等に置換したものなどが挙げられる。
(D)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基に対する(D)成分中のヒドロシリル基のモル比が0.5~10の範囲であり、好ましくは0.7~5となるような範囲である。(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基に対する(D)成分中のヒドロシリル基のモル比が、0.5未満であれば十分に架橋せず、十分な機械的強度が得られないため好ましくない。また、前記モル比が、10を超えると硬化後の物理特性が低下し、特に耐熱性が悪くなったり、圧縮永久ひずみが大きくなったりする。また、シリコーンゴムコンパウンド((A)、(B)、(C)成分の合計量)100質量部に対し、(D)成分は0.1~40質量部が好ましい。
【0035】
[(E)成分]
(E)成分のヒドロシリル化反応用触媒は、(A)成分のアルケニル基と、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル基とをヒドロシリル化付加反応させる触媒である。ヒドロシリル化反応用触媒としては、白金族金属系触媒が挙げられ、白金族金属の単体とその化合物があり、これには従来、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の触媒として公知のものが使用できる。
例えば、シリカ、アルミナ又はシリカゲルのような担体に吸着させた粒子状白金金属;塩化第二白金、塩化白金酸又は塩化白金酸と一価アルコールとの反応物;塩化白金酸とオレフィン類との錯体;塩化白金酸とビニル基含有(ポリ)シロキサンとの錯体;塩化白金酸と亜リン酸エステルとの錯体;パラジウム触媒;ロジウム触媒等が挙げられるが、塩化白金酸とビニル基含有(ポリ)シロキサンとの錯体が好ましい。
(E)成分のヒドロシリル化反応用触媒は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
触媒の添加量は、ヒドロシリル化反応を促進できればよく、通常、シリコーンゴムコンパウンドに対して白金族金属量に換算して1質量ppm~1質量%の範囲で使用されるが、10~500質量ppmの範囲が好ましい。添加量が1質量ppm以上であれば、付加反応が十分促進され、硬化が十分となり、一方、1質量%以下であれば、十分な反応性を有するため、不経済となることがない。
【0037】
また、上記の触媒のほかに硬化速度を調整する目的で、本発明の目的に応じて付加反応制御剤を使用してもよい。その具体例としては、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、2-メチル-3-ブチン-2-オール等のアセチレンアルコール系制御剤、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン等のビニルシロキサン等が挙げられる。付加反応制御剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0038】
[その他の成分]
本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物には、上記成分に加え、必要に応じて、粉砕石英、結晶性シリカ、珪藻土、炭酸カルシウム等の充填材、着色剤、引き裂き強度向上剤、受酸剤、アルミナや窒化硼素等の熱伝導率向上剤、離型剤、充填材用分散剤として各種アルコキシシラン、特にフェニル基含有アルコキシシラン及びその加水分解物、ジフェニルシランジオール、カーボンファンクショナルシランなどの熱硬化型のシリコーンゴム組成物における公知の充填材や添加剤を添加することは任意である。
【0039】
また、本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物には、組成物の粘度やゴム物性の調整などを目的として、1分子中に2個以上のアルケニル基を含有する25℃で液状で、重合度が1,000未満のオルガノポリシロキサンを追加してもよい。
前記液状のオルガノポリシロキサンの重合度は、100以上1,000未満が好ましく、100~800がより好ましい。
前記液状のオルガノポリシロキサンのアルケニル基、及びアルケニル基以外の基としては、前記(A)成分で例示されたものと同様のものが例示できる。
また、このオルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が10~120,000mPa・s、特に100~100,000mPa・sであるものが好ましい。
なお、本発明において、粘度はJIS K 7117-1:1999に記載の25℃における回転粘度計により測定した値である。
前記液状のオルガノポリシロキサンの配合量は、(A)成分100質量部に対し、0~20質量部が好ましい。
【0040】
[組成物の製造方法]
本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物は、該組成物を構成する成分をニーダー、バンバリーミキサー、二本ロール等の公知の混練機で混合することにより得ることができる。(A)成分、(B)成分及び(C)成分を混合して混合物を得た後、該混合物に(E)成分及び(D)成分を添加することが好ましい。
前記(A)~(E)成分を含有する組成物が更にその他の成分を含む場合には、(A)成分、(B)成分及び(C)成分と、その他の成分とを混合して混合物を得た後、該混合物に(E)成分と(D)成分を添加することが好ましい。
【0041】
[硬化条件]
本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物は、公知の硬化方法により公知の硬化条件下で硬化させることができる。具体的には、通常、25~200℃、好ましくは80~160℃で加熱することにより、組成物を硬化させることができる。加熱時間は、0.5分間~5時間程度、特に1分間~3時間程度でよい。
なお、本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化時には、加圧して硬化してもよい。
【実施例0042】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
下記実施例及び比較例で調製したシリコーンゴム組成物の硬化物について、JIS K 6249:2003に基づき、硬さ(デュロメーターA)、引張強さ及び切断時伸びを測定した。また、JIS K 6262:2013に基づき、大型試験片(直径:29.0±0.5mm、厚さ:12.5±0.5mmの円盤状)を用いて、圧縮永久ひずみ(150℃/22時間、25%圧縮)を測定した。なお、粘度はJIS K 7117-1:1999に記載の25℃における回転粘度計により測定した値である。
【0044】
(A)成分として、次の成分を用いた。
(A):両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖され、メチルビニルシロキサン単位を10個有する、重量平均重合度が約8,000である生ゴム状ジメチルシロキサン・メチルビニルポリシロキサン共重合体。
【0045】
(B)成分として、次の成分を用いた。
(B-1):比表面積が110m2/gであるジメチルジクロロシランで表面処理されたヒュームドシリカ(商品名:アエロジルR972、日本アエロジル(株)製)
(B-2):比表面積が180m2/gであるジメチルジクロロシランで表面処理されたヒュームドシリカ(商品名:レオロシールDM-20S、(株)トクヤマ製)
【0046】
(C)成分として、次の成分を用いた。
(C-1):1-ドデカノール(沸点:259℃)
(C-2):2-エチル-1-ヘキサノール(沸点:184~185℃)
(C-3):シクロヘキサノール(沸点:161℃、比較例用)
(C-4):1-ヘキサノール(沸点:156.5℃、比較例用)
(C-5):エチレングリコール(沸点:197.3℃)
(C-6):1-ペンタノール(沸点:138℃、比較例用)
【0047】
(D)成分として、次の成分を用いた。
(D-1):側鎖にヒドロシリル基を有するメチルハイドロジェン-ジメチルポリシロキサン(分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された重量平均重合度38、前記式(1)において、a=1.55、b=0.5、R1=CH3、ヒドロシリル基の数:20個、粘度:17mPa・s)
(D-2):2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(比較例用)
【0048】
(E)成分として、次の成分を用いた。
白金触媒(塩化白金酸/1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体を白金原子含有量として1質量%含有するジメチルポリシロキサン溶液)
【0049】
(A)~(E)成分以外のその他の任意成分である付加反応制御剤として、次の成分を用いた。
1-エチニル-1-シクロヘキサノール(エチニルシクロヘキサノール)
【0050】
[実施例1]
(A)成分:100質量部、(B-1)成分:35質量部、(C-1)成分:1質量部をニーダーで混合し、ベースコンパウンド(1)を調製した。
前記ベースコンパウンド(1)に、(D-1)成分:1.22質量部((A)成分中のアルケニル基1モルに対するヒドロシリル基量:4.4モル)、付加反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部、(E)成分:0.07質量部を二本ロールで混合してシリコーンゴム組成物を得た。
得られた組成物を、120℃、70kgf/cm2の条件で10分間プレスキュアーを行い、試験用シートを作製し、硬さ(デュロメーターA)、引張強さ及び切断時伸びを測定した。結果を表1に示す。
また、得られた組成物を、120℃、70kgf/cm2の条件で15分間プレスキュアーを行い、圧縮永久ひずみ測定用硬化物を作製し、圧縮永久ひずみを測定した。結果を表1に示す。
【0051】
[実施例2~7]
表1に記載した配合で、実施例1と同様の方法でシリコーンゴム組成物を調製し、得られた組成物から試験用シート及び硬化物を作製し、各種物性を評価した。結果を表1に示す。
【0052】
[比較例1~3]
表2に記載した配合で、実施例1と同様の方法でシリコーンゴム組成物を調製し、得られた組成物から試験用シート及び硬化物を作製し、各種物性を評価した。結果を表2に示す。
【0053】
[比較例4]
(A)成分:100質量部、(B-1)成分:35質量部をニーダーで混合し、ベースコンパウンド(2)を調製した。
前記ベースコンパウンド(2)に、(D-2)成分:0.14質量部を二本ロールで混合してシリコーンゴム組成物を得た。
得られた組成物を、165℃、70kgf/cm2の条件で10分間プレスキュアーを行い、試験用シートを作製し、硬さ(デュロメーターA)、引張強さ及び切断時伸びを測定した。結果を表2に示す。
また、得られた組成物を、165℃、70kgf/cm2の条件で15分間プレスキュアーを行い、圧縮永久ひずみ測定用硬化物を作製し、圧縮永久ひずみを測定した。結果を表2に示す。
【0054】
[比較例5~6]
表2に記載した配合で、比較例4と同様の方法でシリコーンゴム組成物を調製し、得られた組成物から試験用シート及び硬化物を作製し、各種物性を評価した。結果を表2に示す。
【0055】
[実施例8~9、比較例7~8]
表3に記載した配合で、実施例1と同様の方法でシリコーンゴム組成物を調製し、得られた組成物から試験用シート及び硬化物を作製し、各種物性を評価した。結果を表3に示す。
【0056】
[実施例10、比較例9]
表4に記載した配合で、実施例1と同様の方法でシリコーンゴム組成物を調製し、得られた組成物から試験用シート及び硬化物を作製し、各種物性を評価した。結果を表4に示す。
【0057】
【表1】
表中の「H/Vi」は、(D-1)成分のヒドロシリル基/(A)成分のビニル基を示す。
【0058】
【表2】
表中の「H/Vi」は、(D-1)成分のヒドロシリル基/(A)成分のビニル基を示す。
【0059】
【表3】
表中の「H/Vi」は、(D-1)成分のヒドロシリル基/(A)成分のビニル基を示す。
【0060】
【表4】
表中の「H/Vi」は、(D-1)成分のヒドロシリル基/(A)成分のビニル基を示す。