(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151726
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】拡張装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241018BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20241018BHJP
B26F 3/00 20060101ALI20241018BHJP
B28D 5/04 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01L21/78 W
H01L21/68 N
B26F3/00 Z
B28D5/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065356
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】服部 篤
(72)【発明者】
【氏名】政田 孝行
(72)【発明者】
【氏名】武藤 栄
【テーマコード(参考)】
3C060
3C069
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
3C060AA10
3C060CA10
3C060CC13
3C069AA03
3C069BA04
3C069BA08
3C069CA05
3C069CB01
3C069CB03
3C069EA01
5F063AA31
5F063AA33
5F063BA32
5F063BA43
5F063BA44
5F063BA45
5F063BA47
5F063BA48
5F063DD73
5F131AA02
5F131BA52
5F131CA07
5F131EC44
(57)【要約】
【課題】被加工物を支持するフレームの位置の変動を抑制可能な拡張装置を提供する。
【解決手段】被加工物と、被加工物に固定された拡張可能なシートと、シートの外周部が固定された環状のフレームと、を含む被加工物ユニットのシートを拡張する拡張装置であって、フレームを支持する支持ユニットと、フレームを支持ユニットに固定する固定ユニットと、フレームが固定ユニットによって支持ユニットに固定された状態でシートを拡張する拡張ユニットと、を備え、支持ユニットは、固定ユニットによる固定が解除された状態のフレームを固定することによってフレームの位置の変動を抑制可能な固定部を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物と、該被加工物に固定された拡張可能なシートと、該シートの外周部が固定された環状のフレームと、を含む被加工物ユニットの該シートを拡張する拡張装置であって、
該フレームを支持する支持ユニットと、
該フレームを該支持ユニットに固定する固定ユニットと、
該フレームが該固定ユニットによって該支持ユニットに固定された状態で該シートを拡張する拡張ユニットと、を備え、
該支持ユニットは、該固定ユニットによる固定が解除された状態の該フレームを固定することによって該フレームの位置の変動を抑制可能な固定部を含むことを特徴とする拡張装置。
【請求項2】
該シートのうち該被加工物又は該フレームに固定されていない領域を加熱して収縮させる加熱ユニットを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の拡張装置。
【請求項3】
該固定部には、該フレームを固定する電磁石が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の拡張装置。
【請求項4】
該固定部には、該フレームを吸引する吸引溝が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の拡張装置。
【請求項5】
該固定部には、該フレームの側面に接触して該フレームの位置を調節する接触部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の拡張装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物に固定されたシートを拡張する拡張装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスチップの製造プロセスでは、互いに交差する複数のストリート(分割予定ライン)によって区画された複数の領域にそれぞれデバイスが形成されたウェーハが用いられる。このウェーハをストリートに沿って分割することにより、デバイスを備えるチップ(デバイスチップ)が得られる。デバイスチップは、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の様々な電子機器に組み込まれる。
【0003】
ウェーハの分割には、環状の切削ブレードで被加工物を切削する切削装置が用いられる。また、近年では、レーザー加工によってウェーハを分割するプロセスの開発も進められている。例えば、ウェーハに対して透過性を有するレーザービームをウェーハの内部で集光させつつ、レーザービームをストリートに沿って走査することにより、ウェーハの内部に改質層がストリートに沿って形成される。ウェーハの改質層が形成された領域は、他の領域よりも脆くなる。そのため、改質層が形成されたウェーハに外力を付与すると、改質層が分割起点として機能し、ウェーハがストリートに沿って分割される。
【0004】
ウェーハへの外力の付与には、例えば拡張可能なシート(エキスパンドシート)が用いられる。ウェーハにシートを固定した後、シートを引っ張って拡張することにより、ウェーハに外力が放射状に付与される。シートの拡張は、手作業で行うこともできるが、専用の拡張装置(エキスパンド装置)によって実施されることもある。拡張装置を用いると、シートの拡張作業が自動化され、ウェーハの処理効率が向上する。
【0005】
なお、ウェーハが複数のデバイスチップに分割された後にシートの拡張を解除すると、シートに弛みが生じる。このシートの弛みは、デバイスチップの位置ずれ、デバイスチップ同士の衝突による損傷等の不都合が生じる原因となる。そこで、シートの拡張を解除した後、シートの弛みが生じた領域を加熱して熱収縮させる、ヒートシュリンクと称される処理が実施されることがある(特許文献1、2参照)。ヒートシュリンクを施すと、シートの弛みが解消され、デバイスチップの位置ずれや損傷が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-206136号公報
【特許文献2】特開2020-177951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
拡張装置を用いてウェーハ等の被加工物を分割する場合には、被加工物が拡張可能なシート(エキスパンドシート)を介して環状のフレームによって支持されることにより、被加工物ユニットが構成される。また、拡張装置には、被加工物ユニットのフレームを下側から支持する支持ユニットと、フレームを上側から押さえて支持ユニットに固定する固定ユニットとが搭載される。
【0008】
支持ユニットと固定ユニットとによってフレームを挟み込んで固定した状態で、シートを介して被加工物を上方に押し上げることにより、シートが放射状に拡張される。その結果、シートに固定されている被加工物に外力が付与され、被加工物が分割される。そして、シートの拡張が完了すると、固定ユニットによるフレームの固定が解除され、必要に応じてシートに加熱処理(ヒートシュリンク)が施された後、被加工物ユニットが所定の場所へ搬送される。
【0009】
しかしながら、シートの拡張後にフレームの固定が解除される際には、支持ユニット上でフレームの意図しない位置の変動が生じやすい。例えば、シートを引っ張って拡張すると、シートに応力が生じる。そして、フレームの固定が解除される際にシートの応力が解放されてフレームに外力が作用し、フレームの位置がずれることがある。特に、被加工物を多数の小型チップに分割するために被加工物の突き上げ量(シートの拡張量)を大きくした場合や、伸縮しにくいシートを用いた場合には、シートに生じる応力も大きくなり、フレームの位置の変動がより生じやすくなる。
【0010】
フレームの位置が変動すると、被加工物の分割によって得られたチップの配列が乱れたり、その後のシートの加熱処理や被加工物ユニットの搬出処理等の円滑な実施が妨げられたりするおそれがある。そのため、フレームの位置の変動は、被加工物ユニットの処理効率が低下する要因となり得る。
【0011】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、被加工物を支持するフレームの位置の変動を抑制可能な拡張装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、被加工物と、該被加工物に固定された拡張可能なシートと、該シートの外周部が固定された環状のフレームと、を含む被加工物ユニットの該シートを拡張する拡張装置であって、該フレームを支持する支持ユニットと、該フレームを該支持ユニットに固定する固定ユニットと、該フレームが該固定ユニットによって該支持ユニットに固定された状態で該シートを拡張する拡張ユニットと、を備え、該支持ユニットは、該固定ユニットによる固定が解除された状態の該フレームを固定することによって該フレームの位置の変動を抑制可能な固定部を含む拡張装置が提供される。
【0013】
なお、好ましくは、該拡張装置は、該シートのうち該被加工物又は該フレームに固定されていない領域を加熱して収縮させる加熱ユニットを更に備える。
【0014】
また、好ましくは、該固定部には、該フレームを固定する電磁石が設けられている。又は、好ましくは、該固定部には、該フレームを吸引する吸引溝が設けられている。又は、好ましくは、該固定部には、該フレームの側面に接触して該フレームの位置を調節する接触部材が設けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様に係る拡張装置においては、支持ユニットが被加工物ユニットのフレームを固定する固定部を備える。これにより、固定ユニットによるフレームの固定が解除された後においてもフレームが支持ユニットに固定された状態を維持することが可能になり、フレームの位置の変動が抑制される。その結果、フレームの位置の変動に起因する被加工物ユニットの処理効率の低下が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】
図4(A)は被加工物ユニットを保持する外力付与ユニットを示す一部断面側面図であり、
図4(B)はシートを拡張する外力付与ユニットを示す一部断面側面図であり、
図4(C)はシートの拡張を解除する外力付与ユニットを示す一部断面側面図である。
【
図5】シートを加熱する加熱ユニットを示す一部断面側面図である。
【
図6】
図6(A)は固定部に吸引溝が設けられた外力付与ユニットを示す一部断面側面図であり、
図6(B)は固定部に接触部材が設けられた外力付与ユニットを示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の一態様に係る実施形態を説明する。まず、本実施形態に係る拡張装置の構成例について説明する。
図1は、拡張装置(エキスパンド装置)2を示す斜視図である。なお、
図1において、X軸方向(第1水平方向、左右方向)とY軸方向(第2水平方向、前後方向)とは、互いに垂直な方向である。また、Z軸方向(高さ方向、上下方向、鉛直方向)は、X軸方向及びY軸方向と垂直な方向である。
【0018】
拡張装置2は、拡張装置2を構成する各構成要素を支持又は収容する基台4を備える。基台4の前端側の角部には、カセット載置台6が設けられている。カセット載置台6上には、複数の被加工物ユニット11を収容可能なカセット8が載置される。また、カセット載置台6には、カセット載置台6をZ軸方向に沿って昇降させる昇降機構(不図示)が連結されている。カセット8からの被加工物ユニット11の搬出、及び、カセット8への被加工物ユニット11の搬入が適切に行われるように、昇降機構によってカセット8のZ軸方向における位置(高さ位置)が調節される。
【0019】
図2は、被加工物ユニット(フレームユニット)11を示す斜視図である。被加工物ユニット11は、拡張装置2による加工の対象物である被加工物13を備える。例えば被加工物13は、単結晶シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハであり、互いに概ね平行な表面(第1面)13a及び裏面(第2面)13bを備える。
【0020】
被加工物13は、互いに交差するように格子状に配列された複数のストリート(分割予定ライン)15によって、複数の矩形状の領域に区画されている。また、ストリート15によって区画された複数の領域の表面13a側にはそれぞれ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス等のデバイス17が形成されている。被加工物13をストリート15に沿って分割することにより、デバイス17をそれぞれ備える複数のチップ(デバイスチップ)が得られる。
【0021】
なお、被加工物13の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば被加工物13は、シリコン以外の半導体(GaAs、SiC、InP、GaN等)、サファイア、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等でなるウェーハ(基板)であってもよい。また、デバイス17の種類、数、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はなく、被加工物13にはデバイス17が形成されていなくてもよい。
【0022】
被加工物13には、外力の付与によって拡張可能なシート(エキスパンドシート)19が固定される。例えばシート19として、円形に形成されたフィルム状の基材と、基材上に設けられた粘着剤(糊剤)とを含むテープが用いられる。基材としては、伸縮性に富むポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等の樹脂を用いることができる。また、粘着剤としては、エポキシ系、アクリル系、又はゴム系の接着剤等を用いることができる。なお、粘着剤は、紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化樹脂であってもよい。
【0023】
また、被加工物ユニット11は、被加工物13を支持する環状のフレーム21を備える。例えば、フレーム21は略円形に形成され、フレーム21の中央部にはフレーム21を厚さ方向に貫通する円形の開口21aが設けられている。なお、開口21aの直径は被加工物13の直径よりも大きい。
【0024】
フレーム21の開口21aの内側に被加工物13が配置された状態で、シート19の中央部が被加工物13の裏面13b側に固定され、シート19の外周部がフレーム21に固定される。これにより、被加工物13がシート19を介してフレーム21によって支持され、被加工物13、シート19及びフレーム21を含む被加工物ユニット11が構成される。
【0025】
被加工物13には、分割起点(分割のきっかけ)がストリート15に沿って形成される。例えば、被加工物13が多光子吸収によって改質(変質)される条件で、被加工物13にレーザービームが照射される。具体的には、レーザービームの波長が、少なくともレーザービームの一部が被加工物13を透過するように設定される。すなわち、レーザービームは被加工物13に対して透過性を有する。また、他のレーザービームの照射条件も、被加工物13が適切に改質されるように設定される。例えば、被加工物13が単結晶シリコンウェーハである場合には、レーザービームの照射条件は以下のように設定できる。
波長 :1064nm
平均出力 :1W
繰り返し周波数:100kHz
加工送り速度 :800mm/s
【0026】
上記のような条件で、レーザービームを被加工物13の内部で集光させつつストリート15に沿って走査することにより、被加工物13の内部に改質層(変質層)がストリート15に沿って形成される。被加工物13の改質層が形成された領域は、他の領域よりも脆くなる。そして、改質層が形成された被加工物13にシート19を固定し、シート19を放射状に引っ張って拡張すると、被加工物13に外力が付与される。これにより、被加工物13が改質層を分割起点として破断し、被加工物13がストリート15に沿って分割される。
【0027】
ただし、被加工物13に形成される分割起点は改質層に限られない。例えば、被加工物13を環状の切削ブレードで切削することにより、被加工物13の表面13a側又は裏面13b側に切削溝をストリート15に沿って形成してもよい。この場合、切削溝が被加工物13の分割起点として機能する。
【0028】
図1に示すように、被加工物ユニット11はカセット8に収容される。そして、拡張装置2を用いてシート19を拡張して被加工物13を分割する際には、複数の被加工物ユニット11を収容したカセット8がカセット載置台6上にセットされる。
【0029】
カセット載置台6の近傍には、被加工物ユニット11を搬送する搬送ユニット(搬送機構)10が設けられている。カセット8に収容された被加工物ユニット11は、搬送ユニット10によってカセット8から搬出される。例えば搬送ユニット10は、被加工物ユニット11の端部(フレーム21)を把持するクランプを備える。そして、搬送ユニット10は、カセット8に収容されている被加工物ユニット11の端部を把持した状態で、カセット8から離れるようにY軸方向に沿って移動する。これにより、被加工物ユニット11がカセット8から引き出されて搬出される。
【0030】
カセット載置台6の後方には、被加工物ユニット11が仮置きされる仮置き領域12が設けられている。仮置き領域12には、仮置き領域12に仮置きされた被加工物ユニット11の位置合わせを行う位置合わせ機構14が設置されている。
【0031】
位置合わせ機構14は、一対のガイドレール14a,14bを備える。ガイドレール14a,14bは、Y軸方向に沿って互いに概ね平行に配置され、X軸方向に沿って接近及び離隔するように移動する。また、ガイドレール14a,14bはそれぞれ、被加工物ユニット11を下側から支持する支持面と、支持面に対して概ね垂直な挟持面とを備える。
【0032】
搬送ユニット10によってカセット8から引き出された被加工物ユニット11は、仮置き領域12に搬送され、ガイドレール14a,14bの支持面によって支持される。そして、ガイドレール14a,14bがX軸方向に沿って互いに接近し、被加工物ユニット11がガイドレール14a,14bの挟持面によって挟み込まれる。これにより、被加工物ユニット11の位置合わせが行われる。
【0033】
仮置き領域12の近傍には、被加工物ユニット11を搬送する搬送ユニット(搬送機構)16が設けられている。搬送ユニット16は、移動機構18と、移動機構18の先端部に装着され被加工物ユニット11を保持する保持部20とを備える。例えば移動機構18は、搬送アームと、搬送アームを水平方向(XY平面方向)に沿って旋回させる回転駆動源(不図示)と、搬送アームをZ軸方向に沿って昇降させる昇降機構(不図示)とを備える。また、例えば保持部20は、被加工物ユニット11のフレーム21の上面側を吸引保持する複数の吸引パッドを備える。
【0034】
仮置き領域12の側方には、被加工物ユニット11が仮置きされる仮置き領域22が設けられている。仮置き領域22には、仮置き領域22に仮置きされた被加工物ユニット11の位置合わせを行う位置合わせ機構24が設置されている。位置合わせ機構24は、一対のガイドレール24a,24bを備える。なお、ガイドレール24a,24bの構成及び機能は、ガイドレール14a,14bと同様である。
【0035】
仮置き領域22の近傍には、被加工物ユニット11を搬送する搬送ユニット(搬送機構)26が設けられている。例えば搬送ユニット26は、被加工物ユニット11の端部(フレーム21)を把持するクランプを備える。搬送ユニット26は、ガイドレール24a,24bによって支持された被加工物ユニット11の端部を把持した状態で、Y軸方向に沿って移動し、被加工物ユニット11を搬送する。
【0036】
仮置き領域22の前方には、被加工物13に外力を付与する外力付与ユニット28が配置されている。外力付与ユニット28は、フレーム21を保持した状態で被加工物13を押し上げることにより、シート19を拡張して被加工物13に外力を付与する。なお、外力付与ユニット28による被加工物13への外力の付与の詳細については後述する(
図4(A)~
図4(C)参照)。
【0037】
外力付与ユニット28の上方には、外力付与ユニット28によって拡張されたシート19を加熱して収縮させる加熱ユニット30が配置されている。加熱ユニット30は、外力付与ユニット28によって拡張されたシート19を加熱することにより、シート19の弛みを解消する。なお、加熱ユニット30によるシート19の加熱の詳細については後述する(
図5参照)。
【0038】
仮置き領域22の後方には、チャンバー32が設けられている。拡張装置2は、チャンバー32の内部にも外力付与ユニット及び加熱ユニットを有する。そのため、拡張装置2は、仮置き領域22の前方の外力付与ユニット28及び加熱ユニット30と、チャンバー32に収容されている外力付与ユニット及び加熱ユニットとによって、被加工物13への外力の付与及びシート19の加熱を2箇所で実施することができる。
【0039】
具体的には、搬送ユニット16は、仮置き領域12に配置された被加工物ユニット11を保持部20で吸引保持して旋回し、仮置き領域22又は外力付与ユニット28に搬送する。仮置き領域22に搬送された被加工物ユニット11は、ガイドレール24a,24bによる位置合わせの後、搬送ユニット26によってチャンバー32に搬入される。そして、チャンバー32内で被加工物13への外力の付与とシート19の加熱とが行われた後、被加工物ユニット11は搬送ユニット26によって再び仮置き領域22に配置される。
【0040】
一方、仮置き領域12から外力付与ユニット28に搬送された被加工物ユニット11は、外力付与ユニット28によって保持される。そして、外力付与ユニット28による被加工物13への外力の付与と加熱ユニット30によるシート19の加熱とが実施される。
【0041】
仮置き領域12における位置合わせ機構14の下方には、被加工物13を洗浄する洗浄ユニット34が設けられている。被加工物13への外力の付与とシート19の加熱とが完了すると、被加工物ユニット11は搬送ユニット16によって仮置き領域22又は外力付与ユニット28から洗浄ユニット34へ搬送される。
【0042】
洗浄ユニット34は、被加工物ユニット11を保持して回転するスピンナテーブル36を備える。スピンナテーブル36の上面は、水平面(XY平面)と概ね平行な平坦面であり、被加工物ユニット11を保持する保持面を構成している。スピンナテーブル36の保持面は、スピンナテーブル36の内部に形成された流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。
【0043】
スピンナテーブル36には、スピンナテーブル36をZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。また、スピンナテーブル36の周囲には、被加工物ユニット11の端部(フレーム21)を把持する複数のクランプ38が設けられている。被加工物ユニット11の洗浄時は、被加工物13がシート19を介してスピンナテーブル36に吸引保持されるとともに、フレーム21が複数のクランプ38によって把持される。
【0044】
また、洗浄ユニット34は、洗浄液を供給するノズル(不図示)を備える。ノズルは、スピンナテーブル36の保持面の上方に設けられ、スピンナテーブル36によって保持された被加工物13に向かって洗浄液を供給する。洗浄液としては、純水等の液体や、液体(純水等)と気体(エアー等)とが混合された混合流体を用いることができる。
【0045】
被加工物ユニット11をスピンナテーブル36で保持し、スピンナテーブル36を回転させつつノズルから被加工物13に洗浄液を供給することにより、被加工物13が洗浄される。被加工物13の洗浄が完了すると、被加工物ユニット11が搬送ユニット16によってガイドレール14a,14b上に載置される。
【0046】
仮置き領域12の後方には、チャンバー40が設けられている。チャンバー40には、被加工物ユニット11に紫外線を照射するUV照射ユニットが収容されている。UV照射ユニットは、被加工物ユニット11を支持する支持テーブルと、支持テーブルによって支持された被加工物ユニット11のシート19に紫外線を照射するUVランプとを備える。
【0047】
被加工物ユニット11のシート19が紫外線硬化樹脂でなる粘着剤を含む場合、ガイドレール14a,14b上に搬送された被加工物ユニット11が搬送ユニット10によってUV照射ユニットに搬送される。そして、UVランプからシート19に紫外線が照射され、シート19の粘着剤が硬化する。これにより、シート19の粘着力が低下し、後の工程で分割後の被加工物13をシート19から容易に剥離することが可能となる。
【0048】
UV照射ユニットによる紫外線の照射が完了すると、被加工物ユニット11は搬送ユニット10によってガイドレール14a,14b上に載置される。その後、被加工物ユニット11は搬送ユニット10によってカセット8に収納される。
【0049】
また、拡張装置2は、拡張装置2を制御するコントローラ(制御ユニット、制御部、制御装置)42を備える。コントローラ42は、拡張装置2の各構成要素(搬送ユニット10、位置合わせ機構14、搬送ユニット16、位置合わせ機構24、搬送ユニット26、外力付与ユニット28、加熱ユニット30、洗浄ユニット34等)に接続されている。コントローラ42は、拡張装置2の各構成要素に制御信号を出力することにより、拡張装置2の動作を制御する。
【0050】
例えばコントローラ42は、コンピュータによって構成される。具体的には、コントローラ42は、拡張装置2を稼働させるための演算等を行う処理部と、拡張装置2の稼働に用いられる各種の情報(データ、プログラム等)を記憶する記憶部とを備える。処理部は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成される。また、記憶部は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリを含んで構成される。
【0051】
次に、外力付与ユニット28の詳細について説明する。外力付与ユニット28は、被加工物ユニット11のフレーム21を保持した状態で被加工物13を押し上げることにより、シート19を拡張して被加工物13に外力を付与する。
図3は、外力付与ユニット28を示す斜視図である。
【0052】
外力付与ユニット28は、シート19(
図2等参照)を拡張する拡張ユニット50を備える。拡張ユニット50は、被加工物13(
図2等参照)を保持する保持テーブル(チャックテーブル)であり、被加工物13を押し上げることによってシート19を拡張する。
【0053】
拡張ユニット50の上面は、水平面(XY平面)と概ね平行な平坦面であり、被加工物13を保持する保持面50aを構成している。保持面50aは、例えばポーラスセラミックス等のポーラス部材によって構成され、拡張ユニット50の内部に設けられた流路50b(
図4(A)等参照)、バルブ(不図示)等を介してエジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。
【0054】
なお、
図3では図示を省略しているが、拡張ユニット50の外周部には複数のコロ52が設けられている(
図4(A)等参照)。例えば、3個以上のコロ52が、保持面50aの周方向に沿って概ね等間隔で配列されている。複数のコロ52の上端はそれぞれ、保持面50aと概ね同じ高さ位置に配置されている。
【0055】
拡張ユニット50には、拡張ユニット50をZ軸方向に沿って移動(昇降)させる移動機構(昇降機構)54が連結されている。例えば移動機構54は、エアシリンダによって構成され、シリンダケース56と、下端側がシリンダケース56に挿入された円柱状のピストンロッド58とを備える。拡張ユニット50は、ピストンロッド58の上端側に固定されている。移動機構54を作動させると、ピストンロッド58のシリンダケース56からの突出量が変化し、拡張ユニット50がZ軸方向に沿って昇降する。これにより、拡張ユニット50の高さ位置が調節される。
【0056】
拡張ユニット50の周囲には、被加工物ユニット11のフレーム21(
図2参照)を保持するフレーム保持ユニット60が設けられている。フレーム保持ユニット60は、フレーム21を下側から支持する支持ユニット62と、フレーム21を上側から押さえて支持ユニット62に固定する固定ユニット(押さえユニット)80とを備える。
【0057】
支持ユニット62は、環状の支持台64を備える。例えば支持台64は、金属、ガラス、セラミックス、樹脂等でなる直方体状の部材によって構成される。支持台64の上面は、水平面(XY平面)と概ね平行な平坦面であり、フレーム21を支持する支持面64aを構成している。
【0058】
支持台64の中央部には、支持台64を厚さ方向(高さ方向)に貫通する円形の開口64bが設けられている。なお、開口64bの直径は、拡張ユニット50の保持面50aの直径よりも大きい。そして、拡張ユニット50は、保持面50aが支持台64の開口64bと重なるように配置される。
【0059】
支持台64には、支持台64をZ軸方向に沿って移動(昇降)させる複数の移動機構(昇降機構)66が連結されている。
図3には、4組の移動機構66が支持台64の四隅近傍の下側に配置される形態を例示している。
【0060】
例えば移動機構66は、エアシリンダによって構成され、シリンダケース68と、下端側がシリンダケース68に挿入された円柱状のピストンロッド70とを備える。複数のピストンロッド70の上端側がそれぞれ、支持台64の下面側に固定されている。複数の移動機構66を同時に作動させると、ピストンロッド70のシリンダケース68からの突出量が変化し、支持台64がZ軸方向に沿って昇降する。これにより、支持台64の高さ位置が調節される。
【0061】
また、支持ユニット62は、フレーム21(
図2参照)を固定する複数の固定部(固定手段、固定ユニット)72を含む。固定部72は、支持台64の支持面64a側に設けられ、支持面64a上に配置されたフレーム21を固定することによってフレーム21の位置の変動を抑制する。
図3には、支持台64の支持面64a側の4か所に、固定部72が開口64bの周方向に沿って概ね等間隔(90°間隔)で配列されている例を図示している。
【0062】
固定部72はそれぞれ、コントローラ42(
図1参照)に接続されている。コントローラ42から固定部72に入力される制御信号によって、固定部72がフレーム21を固定する状態(固定状態)とフレーム21を固定しない状態(非固定状態)とに切り替えられる。
【0063】
例えば固定部72には、フレーム21を固定する電磁石74が設けられる。電磁石74は、ソレノイドコイル等のコイルを含み、支持台64の支持面64a側に埋め込まれる。また、電磁石74には電源(不図示)に接続されており、コントローラ42から電源に入力される制御信号によって電磁石74への電力の供給が制御される。電磁石74に電力が供給されコイルに電流が流れている状態では(オン状態)、電磁石74の周囲に電流の向きに応じた磁力が発生する。一方、電磁石74に電力が供給されずコイルに電流が流れていない状態(オフ状態)では、電磁石74の磁力が発生しない。
【0064】
固定ユニット80は、フレーム21(
図2参照)を押さえる押さえ部材(押圧部材)82を備える。押さえ部材82は、金属、ガラス、セラミックス、樹脂等でなり、平面視で支持台64と概ね同形状に形成されている。例えば、支持台64が直方体状に形成されている場合には、押さえ部材82も寸法が支持台64と概ね同一の直方体状に形成される。
【0065】
押さえ部材82の下面は、水平面(XY平面)と概ね平行な平坦面であり、フレーム21を押圧する押さえ面(押圧面)82aを構成している。また、押さえ部材82の中央部には、押さえ部材82を厚さ方向に貫通する円形の開口82bが設けられている。なお、押さえ部材82の開口82bの直径は、拡張ユニット50の保持面50aの直径よりも大きい。例えば、押さえ部材82の開口82bは支持台64の開口64bと概ね同径に形成される。
【0066】
また、固定ユニット80は、押さえ部材82に連結された移動機構(不図示)を備える。移動機構は、押さえ部材82をY軸方向に沿って移動させるアクチュエータである。移動機構によって押さえ部材82を移動させることにより、押さえ部材82を支持台64と重なる位置(押さえ位置)と支持台64と重ならない(退避位置)とに位置付けることができる。
【0067】
次に、外力付与ユニット28によるシート19の拡張について、
図4(A)~
図4(C)を参照しつつ説明する。外力付与ユニット28は、被加工物13を支持しているフレーム21を固定ユニット80によって支持ユニット62に固定した状態で、被加工物13を拡張ユニット50によって押し上げることにより、シート19を拡張させて被加工物13を分割する。
【0068】
図4(A)は、被加工物ユニット11を保持する外力付与ユニット28を示す一部断面側面図である。外力付与ユニット28によってシート19を拡張して被加工物13を分割する際には、被加工物ユニット11が外力付与ユニット28によって保持される。
【0069】
まず、拡張ユニット50の保持面50aと支持台64の支持面64aとが概ね同じ高さ位置に配置される。そして、被加工物ユニット11が搬送ユニット16(
図1参照)によって外力付与ユニット28へ搬送され、拡張ユニット50及びフレーム保持ユニット60によって保持される。
【0070】
具体的には、固定ユニット80の押さえ部材82が支持台64と重ならない退避位置に配置された状態で、被加工物13が拡張ユニット50の保持面50a上に配置され、フレーム21が支持台64の支持面64a上に配置される。このとき、固定部72に設けられた電磁石74のコイルには電力が供給されていない(オフ状態、非固定状態)。そのため、電磁石74の周囲に電磁石74の磁力は発生していない。
【0071】
次に、押さえ部材82が支持台64の直上の押さえ位置に配置される。そして、拡張ユニット50が移動機構54によって上昇し、支持台64が複数の移動機構66によって上昇する。これにより、被加工物13が拡張ユニット50の保持面50aで支持された状態で、フレーム21が支持台64の支持面64aと押さえ部材82の押さえ面82aとによって挟持される。その結果、フレーム21が固定ユニット80によって支持ユニット62に固定される。
【0072】
また、支持ユニット62に設けられた複数の固定部72によってフレーム21が固定される。具体的には、フレーム21は、電磁石74との間で磁力による引力が作用する強磁性体によって構成されている。フレーム21の材料の例としては、鉄、ニッケル、コバルト、マルテンサイト系又はフェライト系のSUS(ステンレス鋼)等の金属が挙げられる。ただし、上記のような強磁性体でなる部材がフレーム21とは別途準備され、フレーム21に固定されてもよい。この場合には、フレーム21の材質を自由に選択できる。
【0073】
そして、フレーム21が支持台64の支持面64a上に配置されると、電磁石74のコイルに電力が供給され(オン状態、固定状態)、電磁石74の周囲に磁力が発生する。その結果、フレーム21(又はフレーム21に固定された強磁性体)と電磁石74との間で引力が作用し、フレーム21が支持面64aに吸着する。これにより、フレーム21が支持ユニット62に強固に固定される。
【0074】
図4(B)は、シート19を拡張する外力付与ユニット28を示す一部断面側面図である。被加工物ユニット11が外力付与ユニット28によって保持されると、移動機構54が作動して拡張ユニット50が上昇し、拡張ユニット50の保持面50aが押さえ部材82の開口82bに入り込む。これにより、シート19が複数のコロ52によって支持された状態で放射状に引っ張られ、シート19の半径方向外側に向かって拡張される。
【0075】
シート19が拡張されると、シート19に固定されている被加工物13に外力が付与される。その結果、被加工物13はストリート15に沿って形成された分割起点を起点として破断し、デバイス17(
図2参照)をそれぞれ備える複数のチップ(デバイスチップ)23に分割される。なお、拡張ユニット50の上昇量及び上昇速度は、被加工物13が適切に分割されるように、被加工物13の材質やストリート15の本数等に応じて適宜設定される。
【0076】
図4(C)は、シート19の拡張を解除する外力付与ユニット28を示す一部断面側面図である。シート19が拡張されて被加工物13が分割されると、移動機構54が作動して拡張ユニット50が下降する。これにより、シート19の拡張が解除される。なお、拡張ユニット50を下降させる際には、拡張ユニット50の保持面50aに吸引源の吸引力(負圧)を作用させ、シート19を拡張ユニット50で吸引保持することが好ましい。これにより、チップ23の配置の変動が防止される。
【0077】
シート19の拡張が解除されると、拡張ユニット50が移動機構54によって下降し、支持台64が移動機構66によって下降する。これにより、フレーム21の上面が押さえ部材82の押さえ面82aから離れ、押さえ部材82によるフレーム21の固定が解除される。そして、押さえ部材82は支持台64と重ならない退避位置に配置される。
【0078】
なお、シート19の拡張後にフレーム21の固定が解除される際には、支持ユニット62上でフレーム21の意図しない位置の変動が生じやすい。例えば、シート19を引っ張って拡張すると、シート19に応力が生じる。そして、フレーム21の固定が解除される際にシート19の応力が解放されてフレーム21に外力が作用し、フレーム21の位置がずれることがある。特に、被加工物13を多数の小型チップに分割するために被加工物13の突き上げ量(シート19の拡張量)を大きくした場合や、伸縮しにくいシート19を用いた場合には、シート19に生じる応力も大きくなり、フレーム21の位置の変動がより生じやすくなる。
【0079】
しかしながら、本実施形態に係る拡張装置2においては、フレーム21を支持ユニット62の固定部72で固定した状態で、固定ユニット80によるフレーム21の固定を解除できる。これにより、固定ユニット80によるフレーム21の固定が解除される際、支持ユニット62上におけるフレーム21の位置の変動が抑制される。その結果、被加工物13の分割によって得られたチップ23の配列の乱れ、シート19の加熱処理や被加工物ユニット11の搬出処理における位置ずれ等の不都合が生じにくくなり、被加工物ユニット11の処理効率の低下が防止される。
【0080】
特に、支持ユニット62に電磁石74を設置する方法によれば、フレーム21の固定及び開放を切り替え可能な固定部72を簡易且つ安価に構成することができる。これにより、拡張装置2の構成の複雑化や高コスト化が抑制される。
【0081】
図5は、シート19を加熱する加熱ユニット30を示す一部断面側面図である。シート19の拡張を解除すると、シート19に弛みが生じ、チップ23の配置ずれやチップ23同士の衝突による損傷等の原因となる。そのため、シート19の拡張を解除した後には、シート19の弛みが生じた領域を加熱して収縮させることによってシート19の弛みを解消させる、ヒートシュリンクと称される処理を実施することが好ましい。
【0082】
加熱ユニット30は、シート19を加熱することが可能なヒータによって構成される。例えば加熱ユニット30は、耐熱性を有する円盤状の基台90と、基台90の上面側に接続された円柱状のロッド92と、基台90の下面側に固定された環状の発熱部94とを備える。
【0083】
基台90及び発熱部94は、例えば支持台64の開口64bと概ね同径に形成される。また、ロッド92には、加熱ユニット30を水平方向(XY平面方向)及びZ軸方向に沿って移動させる移動機構(不図示)が連結されている。発熱部94に電力を供給すると、発熱部94が発熱し、発熱部94に対面する対象物が加熱される。例えば発熱部94は、セラミックスでなる環状の発熱体であり、下方に向けて赤外線を発する。この場合、加熱ユニット30は赤外線ヒータとして機能する。
【0084】
なお、シート19は、被加工物13又はフレーム21に固定されていない領域(非固定領域)、すなわち、被加工物13とフレーム21との間に位置する領域を含む。そして、発熱部94の形状及び寸法は、発熱部94をシート19の非固定領域と重なる位置に配置可能となるように設定される。
【0085】
外力付与ユニット28によるシート19の拡張が解除され、押さえ部材82(
図3等参照)が支持台64と重ならない退避位置に配置された後、加熱ユニット30が被加工物ユニット11の直上に位置付けられる。その後、加熱ユニット30が下降して被加工物ユニット11に接近し、発熱部94がシート19の非固定領域と対面するように位置付けられる。この状態で発熱部94を所定の温度(例えば600℃)で発熱させると、シート19の非固定領域が加熱されて収縮する。これにより、シート19の非固定領域で発生している弛みが解消される。
【0086】
なお、シート19を加熱すると、シート19の収縮によってフレーム21に外力が付与され、フレーム21の位置が変動しやすくなる。しかしながら、加熱ユニット30によるシート19の加熱中も、固定部72によるフレーム21の固定が維持されている。これにより、シート19の収縮によるフレーム21の位置の変動が抑制される。
【0087】
シート19の加熱処理が完了すると、被加工物ユニット11が搬送ユニット16(
図1参照)によって保持される。その後、電磁石74のコイルへの電力の供給が停止され(オフ状態)、固定部72が非固定状態となる。これにより、固定部72によるフレーム21の固定が解除される。そして、被加工物ユニット11が搬送ユニット16によって支持ユニット62から搬送される。
【0088】
なお、固定部72の固定状態と非固定状態とを切り替えるタイミングは、フレーム21の位置の変動を抑制可能な範囲内で適宜設定される。例えば、固定部72を非固定状態から固定状態へ切り替えるタイミングは、固定ユニット80によるフレーム21の固定が解除される前であれば、自由に設定できる。また、固定部72の固定状態から非固定状態への切り替えは、加熱ユニット30によるシート19の加熱が完了してから被加工物ユニット11が搬送ユニット16(
図1参照)によって保持されるまでの間に行われてもよい。
【0089】
以上の通り、本実施形態に係る拡張装置2においては、支持ユニット62が被加工物ユニット11のフレーム21を固定する固定部72を備える。これにより、固定ユニット80によるフレーム21の固定が解除された後においてもフレーム21が支持ユニット62に固定された状態を維持することが可能になり、フレーム21の位置の変動が抑制される。その結果、フレーム21の位置の変動に起因する被加工物ユニット11の処理効率の低下が防止される。
【0090】
なお、上記実施形態では、電磁石74によってフレーム21が固定部72に固定される例について説明した。ただし、固定部72にフレーム21を固定可能であれば、固定部72の構成に制限はない。固定部72の他の構成例を
図6(A)及び
図6(B)に示す。
【0091】
図6(A)は、固定部72に吸引溝76が設けられた外力付与ユニット28を示す一部断面側面図である。固定部72には、電磁石74に代えて、フレーム21を吸引する複数の吸引溝76が設けられていてもよい。吸引溝76は、支持台64の支持面64a側に設けられた溝であり、支持台64の内部に形成された吸引路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。
【0092】
吸引溝76は、支持台64の支持面64a上にフレーム21が配置された際に、フレーム21と重なる位置に形成される。例えば、3以上の吸引溝76が、支持台64の開口64bの周方向に沿って概ね等間隔に配列される。
【0093】
フレーム21が支持台64の支持面64aで支持された状態で、吸引溝76に吸引源の吸引力(負圧)を作用させることにより、フレーム21が直接又はシート19を介して吸引溝76に吸引され、支持面64aに固定される(固定状態)。また、吸引溝76に作用している吸引力を解除することにより、固定部72によるフレーム21の固定が解除される(非固定状態)。
【0094】
なお、吸引溝76の形状や数に制限はない。例えば、複数の円弧状の吸引溝76が、支持台64の開口64bの周方向に沿って概ね等間隔に配列されてもよい。また、実線状、破線状又は点線状に形成された1又は複数の環状の吸引溝76が、支持台64の開口64bと同心円状に設けられてもよい。
【0095】
図6(B)は、固定部72に接触部材(位置調節部材)78が設けられた外力付与ユニット28を示す一部断面側面図である。固定部72には、電磁石74又は吸引溝76に代えて、フレーム21の側面に接触してフレーム21の位置を調節する接触部材78が設けられていてもよい。
【0096】
例えば接触部材78は、支持台64に装着されたL字状のブロックであり、支持面64aから上方に突出するように設けられている。また、接触部材78は、フレーム21の側面(外周面)に接触する接触部(挟持部)78aと、接触部78aの上端部から支持台64の開口64b側に向かって突出してフレーム21の上面側を押さえる押さえ部78bとを備える。
【0097】
接触部材78には、接触部材78を移動させる移動機構(不図示)が連結されている。移動機構は、エアシリンダ等のアクチュエータによって構成され、接触部材78を支持台64の開口64bの径方向に沿って移動させる。接触部材78は移動機構によって、接触部78aがフレーム21に接触して押さえ部78bがフレーム21と重なる位置(固定位置)と、接触部78aがフレーム21に接触せず押さえ部78bがフレーム21と重ならない位置(退避位置)とに位置付けられる。
【0098】
フレーム21が支持台64の支持面64aで支持された状態で複数の接触部材78を固定位置に位置付けると、複数の接触部78aがフレーム21の側面に接触してフレーム21を挟み込み、複数の押さえ部78bがフレーム21の上面側を押さえる。これにより、フレーム21が所定の位置で固定され(固定状態)、フレーム21の位置の変動が防止される。一方、複数の接触部材78を退避位置に位置付けると、接触部78a及び押さえ部78bがフレーム21から離れ、固定部72によるフレーム21の固定が解除される(非固定状態)。
【0099】
なお、支持台64に接触部材78を設置する場合、固定ユニット80の押さえ部材82(
図3参照)は、押さえ部材82と複数の接触部材78とが干渉しないように設計される。具体的には、フレーム21が複数の接触部材78によって固定されている状態において、押さえ部材82がフレーム21の一部と重なり且つ複数の接触部材78とは重ならないように、押さえ部材82の形状及び寸法が設定される。これにより、フレーム21を押さえ部材82と複数の接触部材78とによって同時に固定することが可能になる。
【0100】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0101】
11 被加工物ユニット(フレームユニット)
13 被加工物
13a 表面(第1面)
13b 裏面(第2面)
15 ストリート(分割予定ライン)
17 デバイス
19 シート(エキスパンドシート)
21 フレーム
21a 開口
23 チップ(デバイスチップ)
2 拡張装置(エキスパンド装置)
4 基台
6 カセット載置台
8 カセット
10 搬送ユニット(搬送機構)
12 仮置き領域
14 位置合わせ機構
14a,14b ガイドレール
16 搬送ユニット(搬送機構)
18 移動機構
20 保持部
22 仮置き領域
24 位置合わせ機構
24a,24b ガイドレール
26 搬送ユニット(搬送機構)
28 外力付与ユニット
30 加熱ユニット
32 チャンバー
34 洗浄ユニット
36 スピンナテーブル
38 クランプ
40 チャンバー
42 コントローラ(制御ユニット、制御部、制御装置)
50 拡張ユニット
50a 保持面
50b 流路
52 コロ
54 移動機構(昇降機構)
56 シリンダケース
58 ピストンロッド
60 フレーム保持ユニット
62 支持ユニット
64 支持台
64a 支持面
64b 開口
66 移動機構(昇降機構)
68 シリンダケース
70 ピストンロッド
72 固定部(固定手段、固定ユニット)
74 電磁石
76 吸引溝
78 接触部材(位置調節部材)
78a 接触部(挟持部)
78b 押さえ部
80 固定ユニット(押さえユニット)
82 押さえ部材(押圧部材)
82a 押さえ面(押圧面)
82b 開口
90 基台
92 ロッド
94 発熱部