(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151731
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】分子レジスト組成物及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20241018BHJP
G03F 7/32 20060101ALI20241018BHJP
C07C 309/12 20060101ALI20241018BHJP
C07C 317/04 20060101ALI20241018BHJP
C07C 63/70 20060101ALI20241018BHJP
C07C 309/06 20060101ALI20241018BHJP
C07C 59/115 20060101ALI20241018BHJP
C07C 65/10 20060101ALI20241018BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G03F7/004 531
G03F7/004 501
G03F7/32
G03F7/004 504
C07C309/12
C07C317/04
C07C63/70
C07C309/06
C07C59/115
C07C65/10
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065363
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 正樹
(72)【発明者】
【氏名】菊地 駿
(72)【発明者】
【氏名】橘 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】半田 龍之介
【テーマコード(参考)】
2H196
2H197
2H225
4H006
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196BA01
2H196BA11
2H196DA01
2H196EA07
2H196FA01
2H196GA03
2H196GA08
2H197CA06
2H197CA08
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE01
2H197GA01
2H197HA03
2H197JA22
2H225AF23P
2H225AF24P
2H225AF29P
2H225AF44P
2H225AF48P
2H225AF53P
2H225AF67P
2H225AF68P
2H225AF71P
2H225AF73P
2H225AF99P
2H225AH19
2H225AJ13
2H225AJ48
2H225AJ53
2H225AL03
2H225AL19
2H225AN11P
2H225AN39P
2H225AN51P
2H225AN88P
2H225BA01P
2H225BA26P
2H225BA32P
2H225CA12
2H225CB14
2H225CD05
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB92
4H006BJ50
4H006BM10
4H006BM30
4H006BM71
4H006BM74
4H006BN10
4H006BN30
4H006BS10
4H006BS30
4H006BS70
4H006TA02
4H006TB03
4H006TB35
4H006TN10
(57)【要約】
【課題】高エネルギー線を用いるフォトリソグラフィーにおいて、感度、解像性及びLWRに優れる分子レジスト組成物、並びに該分子レジスト組成物を用いるパターン形成方法を提供する。
【解決手段】環状エーテル部位を有するカチオンを含むオニウム塩、及び有機溶剤を含み、かつベースポリマーを含まない、ネガ型分子レジスト組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状エーテル部位を有するカチオンを含むオニウム塩、及び有機溶剤を含み、かつベースポリマーを含まない、ネガ型分子レジスト組成物。
【請求項2】
前記オニウム塩が、下記式(1)で表されるスルホニウム塩である請求項1記載のネガ型分子レジスト組成物。
【化1】
(式中、mは、1~3の整数である。nは、1~3の整数である。
R
1は、環状エーテル部位を有する置換基である。m及びnの少なくとも1つが2又は3のとき、各R
1は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
R
2は、単結合、エーテル結合、エステル結合、-N(H)-、チオエーテル結合、スルホン酸エステル結合、スルホンアミド結合、カーボネート結合又はカーバメート結合である。
Ar
1は、炭素数6~20の(m+1)価芳香族炭化水素基であり、その芳香環上の水素原子の一部又は全部が、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基で置換されていてもよい。nが2又は3のとき、各Ar
1は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Ar
2は、炭素数6~20のアリール基であり、その芳香環上の水素原子の一部又は全部が、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基で置換されていてもよい。nが1のとき、各Ar
2は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、2つのAr
1、2つのAr
2又はAr
1及びAr
2が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
X
-は、対アニオンである。)
【請求項3】
前記環状エーテル部位が、オキシラン環又はオキセタン環である請求項1記載のネガ型分子レジスト組成物。
【請求項4】
X
-が、ハロゲン化物イオン、硝酸イオン、硫酸水素イオン、炭酸水素イオン、ボレートイオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン又は下記式(X-1)~(X-7)のいずれかで表されるものである請求項2記載の分子レジスト組成物。
【化2】
(式中、k1及びk2は、それぞれ独立に、1~4の整数である。
Rf
1及びRf
2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~6の含フッ素アルキル基であるが、全てのRf
1及びRf
2が同時に水素原子となることはない。
R
11は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。
R
12は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。ただし、スルホ基のα位及びβ位の炭素原子上の水素原子が、フッ素原子又はフルオロアルキル基で置換されたものを除く。
R
21は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。
R
22は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。ただし、カルボキシ基のα位及びβ位の炭素原子上の水素原子が、フッ素原子又はフルオロアルキル基で置換されたものを除く。
R
31及びR
32は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。
R
41~R
43は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。
R
51は、フッ素原子又は炭素数1~10のフッ素化ヒドロカルビル基であり、該フッ素化ヒドロカルビル基は、ヒドロキシ基、エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい。R
52は、水素原子又は炭素数1~20のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基は、ヒドロキシ基、エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい。また、R
51とR
52とが、互いに結合してこれらが結合する原子と共に環を形成してもよい。)
【請求項5】
更に、アミン化合物を含む請求項1記載の分子レジスト組成物。
【請求項6】
環状エーテル部位を有するカチオンを含むオニウム塩を2種以上含む請求項1記載の分子レジスト組成物。
【請求項7】
更に、環状エーテル部位を有するカチオンを含むオニウム塩以外のオニウム塩を含む請求項1記載の分子レジスト組成物。
【請求項8】
更に、界面活性剤を含む請求項1記載の分子レジスト組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項記載の分子レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を高エネルギー線で露光する工程と、前記露光したレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程とを含むパターン形成方法。
【請求項10】
現像液としてアルカリ水溶液を用いて、未露光部を溶解させ、露光部が溶解しないネガ型パターンを得る請求項9記載のパターン形成方法。
【請求項11】
現像液として有機溶剤を用いて、未露光部を溶解させ、露光部が溶解しないネガ型パターンを得る請求項9記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記有機溶剤が、2-オクタノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ブテニル、酢酸イソペンチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、ギ酸イソペンチル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸ペンチル、乳酸イソペンチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、フェニル酢酸エチル、ギ酸ベンジル、ギ酸フェニルエチル、3-フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル及び酢酸2-フェニルエチルから選ばれる少なくとも1種である請求項11記載のパターン形成方法。
【請求項13】
前記高エネルギー線が、電子線又は極端紫外線である請求項9記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子レジスト組成物及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IoT市場の拡大とともにLSIの高集積化、高速度化及び低消費電力化が更に要求され、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。特に、ロジックデバイスが微細化を牽引している。最先端の微細化技術として、ArF液浸リソグラフィーのダブルパターニング、トリプルパターニング及びクアドロパターニングによる10nmノードのデバイスの量産が行われており、次世代の波長13.5nmの極端紫外線(EUV)リソグラフィーによる7nmノードデバイスの検討が進められている。
【0003】
EUVリソグラフィーにおいては、化学増幅レジスト組成物を適用することができ、ラインパターンでは寸法20nm以下のライン幅が形成可能である。しかしながら、ArFリソグラフィーに使用される高分子系レジスト組成物をEUVリソグラフィーに用いると、これに含まれるベースポリマーの分子サイズが大きいため、パターン表面にラフネスが生じ、パターン制御が困難になってくる。そこで、種々の低分子材料が提唱されている。
【0004】
分子レジスト組成物は、低分子化合物を主成分とし、高分子系レジスト組成物に使用されるベースポリマーを含まないレジスト組成物である。分子レジスト組成物は、微細パターン形成のための有効策の1つとして期待されている。例えば、多価ポリフェノール化合物を主成分として用いるアルカリ現像用ネガ型感放射性組成物が提案されている(特許文献1)。また、スルホニウム塩のカチオンにtert-ブトキシカルボニルオキシ基を付け、強酸のアニオンと組み合わせた酸発生剤のみを含むアルカリ現像用ポジ型レジスト組成物が提案されている(非特許文献1)。前記酸発生剤は、高分子材料と比較して分子サイズが小さいため、ラフネスの改善が期待されるが、前記化学増幅機構を用いる分子レジスト組成物は、酸拡散の制御が困難なため、未だ満足する性能は得られていない。さらに、EUVレジスト組成物においては、ラフネスだけでなく高感度化及び高解像性も同時に達成する必要があり、さらなる改善が求められている。
【0005】
EUVリソグラフィー向け材料開発を困難にさせる要因として、EUV露光におけるフォトン数の少なさが挙げられる。EUVのエネルギーはArFエキシマレーザー光に比べて遙かに高く、EUV露光のフォトン数は、ArF露光のそれの14分の1である。更に、EUV露光で形成するパターンの寸法は、ArF露光の半分以下である。このため、EUV露光はフォトン数のバラツキの影響を受けやすい。極短波長の放射光領域におけるフォトン数のバラツキは物理現象のショットノイズであり、この影響を無くすることはできない。そのため、いわゆる確率論(Stochastics)が注目されている。ショットノイズの影響を無くすることはできないが、いかにこの影響を低減するかが議論されている。ショットノイズの影響で寸法均一性(CDU)やラインウィズスラフネス(LWR)が大きくなるだけでなく、数百万分の一の確率でホールが閉塞する現象が観察されている。ホールが閉塞すると電通不良となってトランジスタが動作しないので、デバイス全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼす。
【0006】
ショットノイズの影響をレジスト側で低減する方法として、EUVの吸収が大きい元素を核とした無機レジスト組成物が提案されている(特許文献2)。しかし、無機レジスト組成物は、比較的高感度ではあるものの未だ十分ではなく、またレジスト用溶剤に対する溶解性不足、保存安定性、欠陥等多くの課題を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-326838号公報
【特許文献2】特開2015-108781号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Proc. of SPIE Vol. 6923, 69230K (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、高エネルギー線を用いるフォトリソグラフィー、特に電子線(EB)リソグラフィー及びEUVリソグラフィーにおいて、感度、解像性及びLWRに優れる分子レジスト組成物、並びに該分子レジスト組成物を用いるパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、環状エーテル部位を有するカチオンを含むオニウム塩を含む分子レジスト組成物が、高感度であり、優れた解像力及びLWRを示すレジスト膜を与え、精密な微細加工に極めて有効であることを知見し、本発明をなすに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記分子レジスト組成物及びパターン形成方法を提供する。
1.環状エーテル部位を有するカチオンを含むオニウム塩、及び有機溶剤を含み、かつベースポリマーを含まない、ネガ型分子レジスト組成物。
2.前記オニウム塩が、下記式(1)で表されるスルホニウム塩である1のネガ型分子レジスト組成物。
【化1】
(式中、mは、1~3の整数である。nは、1~3の整数である。
R
1は、環状エーテル部位を有する置換基である。m及びnの少なくとも1つが2又は3のとき、各R
1は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
R
2は、単結合、エーテル結合、エステル結合、-N(H)-、チオエーテル結合、スルホン酸エステル結合、スルホンアミド結合、カーボネート結合又はカーバメート結合である。
Ar
1は、炭素数6~20の(m+1)価芳香族炭化水素基であり、その芳香環上の水素原子の一部又は全部が、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基で置換されていてもよい。nが2又は3のとき、各Ar
1は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Ar
2は、炭素数6~20のアリール基であり、その芳香環上の水素原子の一部又は全部が、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基で置換されていてもよい。nが1のとき、各Ar
2は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、2つのAr
1、2つのAr
2又はAr
1及びAr
2が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
X
-は、対アニオンである。)
3.前記環状エーテル部位が、オキシラン環又はオキセタン環である1又は2のいずれかのネガ型分子レジスト組成物。
4.X
-が、ハロゲン化物イオン、硝酸イオン、硫酸水素イオン、炭酸水素イオン、ボレートイオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン又は下記式(X-1)~(X-7)のいずれかで表されるものである2の分子レジスト組成物。
【化2】
(式中、k1及びk2は、それぞれ独立に、1~4の整数である。
Rf
1及びRf
2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~6の含フッ素アルキル基であるが、全てのRf
1及びRf
2が同時に水素原子となることはない。
R
11は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。
R
12は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。ただし、スルホ基のα位及びβ位の炭素原子上の水素原子が、フッ素原子又はフルオロアルキル基で置換されたものを除く。
R
21は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。
R
22は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。ただし、カルボキシ基のα位及びβ位の炭素原子上の水素原子が、フッ素原子又はフルオロアルキル基で置換されたものを除く。
R
31及びR
32は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。
R
41~R
43は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。
R
51は、フッ素原子又は炭素数1~10のフッ素化ヒドロカルビル基であり、該フッ素化ヒドロカルビル基は、ヒドロキシ基、エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい。R
52は、水素原子又は炭素数1~20のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基は、ヒドロキシ基、エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい。また、R
51とR
52とが、互いに結合してこれらが結合する原子と共に環を形成してもよい。)
5.更に、アミン化合物を含む1~4のいずれかの分子レジスト組成物。
6.環状エーテル部位を有するカチオンを含むオニウム塩を2種以上含む1~5のいずれかの分子レジスト組成物。
7.更に、環状エーテル部位を有するカチオンを含むオニウム塩以外のオニウム塩を含む1~6のいずれかの分子レジスト組成物。
8.更に、界面活性剤を含む1~7のいずれかの分子レジスト組成物。
9.1~8のいずれかの分子レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を高エネルギー線で露光する工程と、前記露光したレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程とを含むパターン形成方法。
10.現像液としてアルカリ水溶液を用いて、未露光部を溶解させ、露光部が溶解しないネガ型パターンを得る9のパターン形成方法。
11.現像液として有機溶剤を用いて、未露光部を溶解させ、露光部が溶解しないネガ型パターンを得る9のパターン形成方法。
12.前記有機溶剤が、2-オクタノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ブテニル、酢酸イソペンチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、ギ酸イソペンチル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸ペンチル、乳酸イソペンチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、フェニル酢酸エチル、ギ酸ベンジル、ギ酸フェニルエチル、3-フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル及び酢酸2-フェニルエチルから選ばれる少なくとも1種である11のパターン形成方法。
13.前記高エネルギー線が、EB又はEUVである9~12のいずれかのパターン形成方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の分子レジスト組成物は、高エネルギー線を用いるフォトリソグラフィー、特にEBリソグラフィー及びEUVリソグラフィーにおいて、高感度及び高解像性を両立し、かつLWRに優れるため、微細パターンを形成するにあたり非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】合成例1で得られたスルホニウム塩MR-1の
1H-NMRスペクトルである。
【
図2】合成例2で得られたスルホニウム塩MR-2の
1H-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[分子レジスト組成物]
本発明の分子レジスト組成物は、環状エーテル部位を有するカチオンを含むオニウム塩(以下、環状エーテル部位含有オニウム塩ともいう。)を主成分として含むことを特徴とする。なお、本発明において、主成分とは溶剤以外で最も含有量が多い成分を意味する。
【0015】
[環状エーテル部位含有オニウム塩]
前記環状エーテル部位含有オニウム塩は、高エネルギー線に対してカチオンが分解する必要があり、その観点からスルホニウム塩、ヨードニウム塩、セレニウム塩又はビスムトニウム塩が使用され得る。これらのうち、スルホニウム塩を用いることが、合成容易性や分解物の疎水性の観点から好ましい。
【0016】
前記環状エーテル部位含有オニウム塩としては、下記式(1)で表されるスルホニウム塩が好ましい。
【化3】
【0017】
式(1)中、mは、1~3の整数である。nは、1~3の整数であるが、2又は3が好ましい。
【0018】
式(1)中、R1は、環状エーテル部位を有する置換基である。m及びnの少なくとも1つが2又は3のとき、各R1は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0019】
前記環状エーテル部位の構造の具体例としては、オキシラン環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、下記式で表される縮合環等が挙げられる。
【化4】
【0020】
これらのうち、前記環状エーテル部位の構造としては、オキシラン環又はオキセタン環が好ましい。
【0021】
前記環状エーテル部位を有する置換基としては、環状エーテル部位を有する炭素数2~20の基が好ましい。具体的には、環状エーテル部位を有する炭素数2~20の飽和ヒドロカルビル基や、該基の-CH2-の一部が、エーテル結合、エステル結合、-N(H)-、チオエーテル結合、スルホン酸エステル結合、スルホンアミド結合、カーボネート結合又はカーバメート結合で置換された基等が挙げられる。
【0022】
式(1)中、R2は、単結合、エーテル結合、エステル結合、-N(H)-、チオエーテル結合、スルホン酸エステル結合、スルホンアミド結合、カーボネート結合又はカーバメート結合である。これらのうち、単結合、エーテル結合、エステル結合、-N(H)-、スルホン酸エステル結合又はスルホンアミド結合が好ましい。
【0023】
(R
1-R
2)-で表される基の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、破線は、Ar
1との結合手である。
【化5】
【0024】
式(1)中、Ar1は、炭素数6~20の(m+1)価芳香族炭化水素基である。前記芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセンジイル基等のアリーレン基、前記アリーレン基として例示したものから更に水素原子を1又は2個除いて得られる基等が挙げられる。nが2又は3のとき、各Ar1は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0025】
式(1)中、Ar2は、炭素数6~20のアリール基である。前記アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。nが1のとき、各Ar2は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0026】
また、前記アリール基及び(m+1)価芳香族炭化水素基は、その芳香環上の水素原子の一部又は全部が、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基で置換されていてもよい。前記炭素数1~20のヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、tert-ペンチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基等の炭素数1~20のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基等の炭素数3~20の環式飽和ヒドロカルビル基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の炭素数6~20のアリール基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビル基の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基を構成する-CH2-の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボニル基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、カーバメート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)等を含んでいてもよい。
【0027】
また、2つのAr
1、2つのAr
2又はAr
1及びAr
2が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。このとき、前記環の構造としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化6】
(式中、破線は、結合手である。)
【0028】
式(1)で表されるスルホニウム塩のカチオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化7】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
式(1)中、X
-は、対アニオンである。前記対アニオンとしては、ハロゲン化物イオン、硝酸イオン、硫酸水素イオン、炭酸水素イオン、ボレートイオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン又は下記式(X-1)~(X-7)のいずれかが好ましい。
【化14】
【0036】
前記ボレートイオンとしては、テトラフルオロボレートイオン、テトラフェニルボレートイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン等が挙げられる。
【0037】
式(X-1)及び(X-3)中、k1及びk2は、それぞれ独立に、1~4の整数である。Rf1及びRf2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~6の含フッ素アルキル基であるが、全てのRf1及びRf2が同時に水素原子となることはない。
【0038】
式(X-1)中、R11は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。
【0039】
式(X-2)中、R12は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。ただし、スルホ基のα位及びβ位の炭素原子上の水素原子が、フッ素原子又はフルオロアルキル基で置換されたものを除く。
【0040】
式(X-3)中、R21は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。
【0041】
式(X-4)中、R22は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。ただし、カルボキシ基のα位及びβ位の炭素原子上の水素原子が、フッ素原子又はフルオロアルキル基で置換されたものを除く。
【0042】
式(X-5)中、R31及びR32は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。
【0043】
式(X-6)中、R41~R43は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。
【0044】
式(X-7)中、R51は、フッ素原子又は炭素数1~10のフッ素化ヒドロカルビル基であり、該フッ素化ヒドロカルビル基は、ヒドロキシ基、エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい。R52は、水素原子又は炭素数1~20のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基は、ヒドロキシ基、エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい。また、R51とR52とが、互いに結合してこれらが結合する原子と共に環を形成してもよい。
【0045】
X-で表されるアニオンとしては、ハロゲン化物イオン、硝酸イオン又は式(X-1)~(X-7)のいずれかで表されるアニオンが好ましく、ハロゲン化物イオン、硝酸イオン又は式(X-2)、(X-4)若しくは(X-6)で表されるアニオンがより好ましい。
【0046】
R11、R12、R21、R22、R31、R32、R41、R42及びR43で表される炭素数1~40のヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、tert-ペンチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基等の炭素数1~40のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基等の炭素数3~40の環式飽和ヒドロカルビル基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の炭素数6~40のアリール基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビル基の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基を構成する-CH2-の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボニル基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、カーバメート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)等を含んでいてもよい。
【0047】
R51で表される炭素数1~10のフッ素化ヒドロカルビル基は、炭素数1~10のヒドロカルビル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基である。前記炭素数1~10のヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、R11、R12、R21、R22、R31、R32、R41、R42及びR43で表される炭素数1~40のヒドロカルビル基として例示したもののうち、炭素数が1~10のものが挙げられる。
【0048】
R52で表される炭素数1~20のヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、R11、R12、R21、R22、R31、R32、R41、R42及びR43で表される炭素数1~40のヒドロカルビル基として例示したもののうち、炭素数が1~20のものが挙げられる。
【0049】
式(X-1)~(X-7)のいずれかで表されるアニオンは、その構造中に重合性官能基を含み、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数2~20のヒドロカルビル基を有していてもよい。その具体例としては、式(1)中のA1で表される基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0050】
式(X-1)で表されるアニオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、Acはアセチル基であり、Rf
1は前記と同じである。
【化15】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
式(X-2)で表されるアニオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化28】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
式(X-3)で表されるアニオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化34】
【0070】
【0071】
式(X-4)で表されるアニオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化36】
【0072】
【0073】
【0074】
式(X-5)で表されるアニオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化39】
【0075】
【0076】
式(X-6)で表されるアニオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化41】
【0077】
【0078】
【0079】
式(X-7)で表されるアニオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化44】
【0080】
【0081】
式(1)で表されるスルホニウム塩の具体例としては、前述したアニオンの具体例とカチオンの具体例との任意の組み合わせが挙げられる。
【0082】
式(1)で表されるスルホニウム塩は、既知の有機化学的方法を組み合わせることで合成することができる。例えば、所望のカチオン及びアニオンを有するオニウム塩中間体を混合してイオン交換反応を行う方法が挙げられる。なお、イオン交換反応は、公知の方法で容易に達成され、例えば特開2007-145797号公報を参考にすることができる。
【0083】
前記環状エーテル部位含有オニウム塩は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0084】
[有機溶剤]
本発明の分子レジスト組成物は、有機溶剤を含む。前記溶剤としては、前記環状エーテル部位含有オニウム塩を溶解し、成膜可能なものであれば特に限定されない。このような有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、メチル-2-n-ペンチルケトン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール(DAA)等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類;γ-ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
【0085】
これらの有機溶剤の中でも、1-エトキシ-2-プロパノール、PGMEA、シクロヘキサノン、DAA、γ-ブチロラクトン及びこれらの混合溶剤が好ましい。
【0086】
本発明の分子レジスト組成物中、前記有機溶剤の含有量は、前記環状エーテル部位含有オニウム塩100質量部に対し、200~5000質量部が好ましい。前記有機溶剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0087】
本発明の分子レジスト組成物は、主成分である前記環状エーテル部位含有オニウム塩及び有機溶剤を含み、かつベースポリマーを含まないことを特徴とする。本発明の分子レジスト組成物から得られるレジスト膜は、EB又はEUVで露光されることにより、露光部分がアルカリ現像液に不溶となり、ネガ型のパターンを形成する。なお、ベースポリマーとは、高分子系レジスト組成物の主成分であって、酸発生剤から発生した酸の作用によって現像液に対する溶解度が変化するポリマーのことをいう。
【0088】
従来の構成である、多元系ポリマーを主成分(ベースポリマー)とし、更に光酸発生剤やクエンチャー等を含むレジスト組成物では、ポリマーの分子サイズが大きいことが影響し、細線での解像力に乏しく、またLWRやCDUも劣化する。
【0089】
これに対し、本発明の分子レジスト組成物は、多元系ポリマー成分を含まず、オニウム塩の光分解及びそれに伴う溶解性変化により、コントラストを発現している。本発明の分子レジスト組成物は、主成分が低分子化合物であるため分子サイズが小さく、特にEBリソグラフィー及びEUVリソグラフィーによって極微細のパターンを形成することが可能となり、加えてLWRやCDUも改善することができる。
【0090】
本発明の分子レジスト組成物が、高いコントラスト、解像力、優れたLWR及びCDUを示す理由については明らかではないが、例えば、以下のように推測することができる。本発明の分子レジスト組成物は、主成分である前記環状エーテル部位含有オニウム塩の光反応による構造変化がコントラスト発現の推進力となっている。すなわち、イオン性の化合物である前記オニウム塩は、非イオン性の構造となることで疎水性が増加し、アルカリ現像液に不溶となる。加えて、本発明の分子レジスト組成物は、環状エーテル部位を有することを必須としている。この環状エーテル部位は、オニウム塩の光分解によりアニオンから発生した酸を触媒として、架橋反応を引き起こすと考えらえる。特に反応性の高いオキシラン環やオキセタン環の場合は、より顕著に架橋反応が進行する。架橋による高分子量化により、アルカリ現像液に対して更に不溶化が促進され、コントラストがより高まる。また、アルカリ現像液だけでなく、有機溶剤現像液にも不溶となり、ネガ型のコントラストが発現する。
【0091】
なお、分子レジストを用いたレジスト組成物としては過去にも報告例があるが、レジスト組成物中に含まれる成分の種類が多く、膜内均一性が劣るためLWRやCDUが改善されないという問題があった。特に、フォトン数が少ないEUV光を用いる微細パターンでは、膜内均一性がリソグラフィー結果に与えるインパクトは非常に大きい。例えば、特開2013-205521号公報に記載の分子レジスト組成物では、基材としてカリックスレゾルシナレン化合物及び光酸発生剤が必須であり、塩基性化合物も必要に応じて配合される。ネガ型分子レジスト組成物の場合は、更に架橋剤も必要である。一方、本発明のレジスト組成物に含まれる主成分である前記環状エーテル部位含有オニウム塩は、光酸発生剤と基材両方の機能を有しており、他の成分としては、必要に応じてクエンチャー(アミン化合物又はオニウム塩)が含まれるのみである。
【0092】
このように、ベースポリマーを必要としない低分子の基材を使用し、更に従来の分子レジスト組成物にはないシンプルな組成を有することで、高いコントラストを発現できるとともに、優れた膜内均一性に由来してLWRやCDUも改善できるところが本発明の強みであり、微細パターン形成に極めて有効となる。
【0093】
[アミン化合物]
本発明の分子レジスト組成物は、アミン化合物を含んでもよい。アミン化合物を入れることで、分子レジストの架橋反応を制御し、感度や解像性、LWR等を調整することができる。アミン化合物としては、第1級、第2級又は第3級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシ基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類等が挙げられる。特に、特開2008-111103号公報の段落[0146]~[0164]に記載の第1級、第2級、第3級のアミン化合物、特にはヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合、ラクトン環、シアノ基、スルホン酸エステル結合を有するアミン化合物あるいは特許第3790649号公報に記載のカーバメート基を有する化合物等が好ましい。
【0094】
本発明の分子レジスト組成物が前記アミン化合物を含む場合、その含有量は、前記環状エーテル部位含有オニウム塩100質量部に対し、0.05~80質量部が好ましい。前記アミン化合物剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0095】
[界面活性剤]
本発明の分子レジスト組成物は、ベースポリマーとして機能するポリマー成分は含まないが、例えば、界面活性剤として使用されるポリマーのように添加剤として使用される(すなわち、主成分ではない)ポリマー成分は、前述した環状エーテル部位含有オニウム塩によるパターン形成を阻害しない限り、含んでもよい。そのような界面活性剤としては、FC-4432、FC-4430(スリーエム製)や、PF636、PF656、PF6320、PF6520(オムノバ社製)等が挙げられる。本発明の分子レジスト組成物が前記界面活性剤を含む場合、その含有量は、前記環状エーテル部位含有オニウム塩100質量部に対し、0.001~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0096】
[その他のオニウム塩]
なお、本発明の分子レジスト組成物は、前記環状エーテル部位含有オニウム塩以外のオニウム塩(以下、その他のオニウム塩ともいう。)を含んでもよい。その他のオニウム塩は、感度や溶解性を微調整するのに有用である。前記その他のオニウム塩の構造として特に限定されないが、カチオンとしてはスルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、アンモニウムカチオン等が好ましい。アニオンとしては、式(1)のX-で表されるアニオンとして例示したものと同じものが好ましい。本発明の分子レジスト組成物が前記その他のオニウム塩を含む場合、その含有量は、前記環状エーテル部位含有オニウム塩100質量部に対し、0.05~80質量部が好ましい。前記その他のオニウム塩は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0097】
[パターン形成方法]
本発明の分子レジスト組成物を種々の集積回路製造に用いる場合は、公知のリソグラフィー技術を適用することができる。例えば、パターン形成方法としては、前述した分子レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を高エネルギー線で露光する工程と、前記露光したレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程とを含む方法が挙げられる。
【0098】
まず、本発明の分子レジスト組成物を、集積回路製造用の基板(Si、SiO2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)あるいはマスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi2、SiO2等)上に、スピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法により塗布膜厚が0.01~2μmとなるように塗布する。これをホットプレート上で、好ましくは60~150℃、10秒~30分間、より好ましくは80~120℃、30秒~20分間プリベークし、レジスト膜を形成する。
【0099】
次いで、高エネルギー線を用いて、前記レジスト膜を露光する。前記高エネルギー線としては、紫外線、遠紫外線、EB、EUV、X線、軟X線、エキシマレーザー光、γ線、シンクロトロン放射線等が挙げられる。前記高エネルギー線として紫外線、遠紫外線、EUV、X線、軟X線、エキシマレーザー光、γ線、シンクロトロン放射線等を用いる場合は、直接又は目的のパターンを形成するためのマスクを用いて、露光量が好ましくは1~200mJ/cm2程度、より好ましくは10~100mJ/cm2程度となるように照射する。高エネルギー線としてEBを用いる場合は、直接又は目的のパターンを形成するためのマスクを用いて、露光量が好ましくは0.1~2000μC/cm2程度、より好ましくは0.5~1000μC/cm2程度で描画する。なお、本発明の分子レジスト組成物は、特に高エネルギー線の中でも、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、EB、EUV、X線、軟X線、γ線、シンクロトロン放射線による微細パターニングに好適であり、特にEB又はEUVによる微細パターニングに好適である。
【0100】
本発明の分子レジスト組成物は、前記スルホニウム塩が露光中に構造変化することによって像を形成するため、化学増幅レジスト組成物で必要な露光後のベーク(PEB)は必ずしも必要ではないが、環状エーテル部位による架橋反応を制御するためにPEBを行ってもよい。その場合は、露光後、ホットプレート上又はオーブン中で、好ましくは30~120℃、10秒~30分間、より好ましくは60~100℃、30秒~20分間の条件で行うことが好ましい。
【0101】
露光後又はPEB後、0.1~10質量%、好ましくは2~5質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、3秒~3分間、好ましくは5秒~2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により露光したレジスト膜を現像することで、目的のパターンが形成される。本発明の分子レジスト組成物はネガ型であるので、光を照射した部分は現像液に不溶化し、露光されなかった部分は溶解してネガ型パターンが形成される。
【0102】
アルカリ現像液による現像後、純水によるリンスを行い、スピンドライで乾燥させる。乾燥中にパターンにかかる応力を低減させてパターン倒れを防止するため、界面活性剤入りのリンス液を用いたり、二酸化炭素等による超臨界リンスを用いたりすることも効果的である。
【0103】
本発明の分子レジスト組成物は、有機溶剤現像によってネガ型パターンを得ることもできる。このときに用いる現像液としては、2-オクタノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ブテニル、酢酸イソペンチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、ギ酸イソペンチル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸ペンチル、乳酸イソペンチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、フェニル酢酸エチル、ギ酸ベンジル、ギ酸フェニルエチル、3-フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、酢酸2-フェニルエチル等が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0104】
現像後、必要に応じてリンスを行う。リンス液としては、現像液と混溶し、レジスト膜を溶解させない溶剤が好ましい。このような溶剤としては、炭素数3~10のアルコール、炭素数8~12のエーテル化合物、炭素数6~12のアルカン、アルケン、アルキン、芳香族系の溶剤が好ましく用いられる。
【0105】
前記炭素数3~10のアルコールとしては、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、tert-ペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、3-メチル-3-ペンタノール、シクロペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、2,3-ジメチル-2-ブタノール、3,3-ジメチル-1-ブタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、2-エチル-1-ブタノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-メチル-3-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール、4-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、4-メチル-3-ペンタノール、シクロヘキサノール、1-オクタノール等が挙げられる。
【0106】
前記炭素数8~12のエーテル化合物としては、ジ-n-ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ-sec-ブチルエーテル、ジ-n-ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ-sec-ペンチルエーテル、ジ-tert-ペンチルエーテル、ジ-n-ヘキシルエーテル等が挙げられる。
【0107】
前記炭素数6~12のアルカンとしては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、メチルシクロペンタン、ジメチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン等が挙げられる。前記炭素数6~12のアルケンとしては、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、ジメチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等が挙げられる。前記炭素数6~12のアルキンとしては、ヘキシン、ヘプチン、オクチン等が挙げられる。
【0108】
前記芳香族系の溶剤としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、メシチレン等が挙げられる。
【0109】
リンスを行うことによって、レジストパターンの倒れや欠陥の発生を低減させることができる。また、リンスは必ずしも必須ではなく、リンスを行わないことによって溶剤の使用量を削減することができる。
【実施例0110】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、使用した装置は、以下のとおりである。
・IR:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製NICOLET 6700
・1H-NMR:日本電子(株)製ECA-500
・MALDI TOF-MS:日本電子(株)製、S3000
【0111】
[1]スルホニウム塩の合成
[合成例1]スルホニウム塩MR-1の合成
【化46】
【0112】
窒素雰囲気下、水素化ナトリウム1.6gをテトラヒドロフラン40gに溶解した溶液に、3-エチル-3-オキセタンメタノール4.7gを滴下した。滴下後、室温で2時間熟成した。次いで、氷冷下、そこへトリス(4-フルオロフェニル)スルホニウムブロミド4.0gを投入し、室温で4時間反応液を熟成した。熟成後、超純水30gを加え、これをジイソプロピルエーテルで洗浄した後、ジクロロメタン50g及びトリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム3.4gを加えた、30分間攪拌した。その後、2層分離した反応液から有機層を分取し、超純水で洗浄し、減圧濃縮を行い、更にメチルイソブチルケトン(MIBK)を加えて再度減圧濃縮し、水分を共沸除去することで、7.7gの油状物を得た。1H-NMRで解析した結果、得られた油状物がMIBKを含むスルホニウム塩MR-1であることが確認された。(単離収率66%)。
【0113】
スルホニウム塩MR-1のスペクトルデータを以下に示す。また、核磁気共鳴スペクトル(
1H-NMR/DMSO-d
6)の結果を
図1に示す。
IR (D-ATR): 2958, 2872, 1711, 1588, 1575, 1496, 1461, 1366, 1305, 1262, 1223, 1178, 1152, 1075, 1031, 1016, 982, 832, 638, 528 cm
-1.
MALDI-TOFMS: POSITIVE [M
+] 605 (C
36H
45O
6S
+相当)
NEGATIVE [M
-] 148 (CF
3SO
3
-相当)
【0114】
[合成例2]スルホニウム塩MR-2の合成
【化47】
【0115】
窒素雰囲気下、水素化ナトリウム1.6gをテトラヒドロフラン40gに溶解した溶液に、3-エチル-3-オキセタンメタノール4.7gを滴下した。滴下後、室温で2時間熟成した。次いで、氷冷下、そこへトリス(4-フルオロフェニル)スルホニウムブロミド4.0gを氷冷下投入し、室温で4時間反応液を熟成した。熟成後、飽和重曹水30gを加え、これをジイソプロピルエーテルで洗浄した後、ジクロロメタン50g及びサリチル酸1.7gを加え、30分間攪拌した。その後、2層分離した反応液から有機層を分取し、超純水で洗浄し、減圧濃縮を行い、更にプロピレングリコールモノメチルアセテート(PGMEA)を加えて再度減圧濃縮し、水分を共沸除去することで、9.2gの油状物を得た。1H-NMRで解析した結果、得られた油状物がPGMEAを含んだスルホニウム塩MR-2であることが確認された。(単離収率72%)。
【0116】
スルホニウム塩MR-2のスペクトルデータを以下に示す。また、核磁気共鳴スペクトル(
1H-NMR/DMSO-d
6)の結果を
図2に示す。
IR (D-ATR): 2965, 2935, 2875, 1734, 1588, 1495, 1458, 1373, 1304, 1258, 1245, 1203, 1178, 1114, 1074, 1018, 978, 830, 529 cm
-1.
MALDI-TOFMS: POSITIVE [M
+] 605 (C
36H
45O
6S
+相当)
NEGATIVE [M
-] 138 (C
7H
6O
3
-相当)
【0117】
[合成例3~7]スルホニウム塩MR-3~MR-7の合成
合成例1と同様の合成方法で、以下に示すスルホニウム塩MR-3~MR-7を合成した。
【化48】
【0118】
【0119】
[2]比較レジスト組成物用ベースポリマーの合成
[比較合成例1]ポリマーP-1の合成
窒素雰囲気下、p-ヒドロキシスチレン(27.8g)、メタクリル酸1-メチルシクロペンチル(72.2g)及び2,2'-アゾビスイソ酪酸ジメチル(6.08g)をPGMEA(155g)に溶解させ、溶液を調製した。得られた溶液を、窒素雰囲気下80℃で、攪拌したPGMEA(78g)に6時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃を保ったまま2時間攪拌し、室温まで冷却した後、反応溶液をn-ヘキサン(3000g)に滴下した。析出した固形物をろ別し、50℃で20時間真空乾燥して、ポリマーP-1を白色粉末として得た(収量85g、収率85%)。
【化50】
【0120】
[比較合成例2]ポリマーP-2の合成
モノマーの種類及び配合比を変えた以外は、比較合成例1と同様の方法で、ポリマーP-2を製造した。
【化51】
【0121】
[3]レジスト組成物の調製
[実施例1-1~1-8、比較例1-1~1-3]
下記表1に示す組成でレジスト溶液を調製し、得られた溶液を0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターでろ過することで、本発明の分子レジスト組成物(R-01~R-08)を調製した。また、比較例用として、下記表1に示す組成にてレジスト溶液を調製し、その後0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターでろ過することで、比較用レジスト組成物(CR-1~CR-3)を調製した。
【0122】
【0123】
表1中、光酸発生剤(PAG-1~PAG-2)、クエンチャー(AQ-1、PDB-1)、比較化合物(CMR-1)、界面活性剤(SF-1)及び溶剤は、以下のとおりである。なお、PAG-1は、特開2012-236816号公報を参考に合成し、CMR-1は、特開2013-205521号公報を参考に合成した。
【化52】
【0124】
【化53】
(式中、tBOCは、tert-ブトキシカルボニル基である。)
【0125】
・SF-1:PF636(オムノバ社製)
・溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
DAA(ジアセトンアルコール)
【0126】
[4]EUVリソグラフィー評価
[実施例2-1~2-8、比較例2-1~2-3、実施例3-1~3-8、比較例3-1~3-3]
各レジスト組成物(R-01~R-08、CR-01~CR-03)を、信越化学工業(株)製ケイ素含有スピンオンハードマスクSHB-A940(ケイ素の含有量が43質量%)を膜厚20nmで形成したSi基板上にスピンコートし、ホットプレートを用いて、表2又は3に記載の温度にて60秒間プリベークし、膜厚40nmのレジスト膜を作製した。ASML社製EUVスキャナーNXE3400(NA0.33、σ0.9、90度ダイポール照明)を用いて、48nmラインアンドスペース(LS)1:1のパターンを露光した後、ホットプレート上で表2又は3に記載の温度で60秒間PEBを行った。次いで、現像液として2.38質量%TMAH水溶液(実施例2-1~2-8、比較例2-1~2-3)又は酢酸ブチル(実施例3-1~3-8、比較例3-1~3-3)を用いて30秒間現像を行って、スペース幅24nm、ピッチ48nmのラインアンドスペース(LS)パターンを形成した。
【0127】
[感度評価]
前記LSパターンを(株)日立ハイテク製測長SEM(CG-6300)を用いて観察し、スペース幅24nm、ピッチ48nmのラインアンドスペースパターンが得られる最適露光量Eop(mJ/cm2)を求め、これを感度とした。
【0128】
[LWR評価]
最適露光量で照射して得たLSパターンを、(株)日立ハイテク製測長SEM(CG-6300)でスペース幅の長手方向に10箇所の寸法を測定し、その結果から標準偏差(σ)の3倍値(3σ)を求め、これをLWRとした。この値が小さいほど、ラフネスが小さく均一なスペース幅のパターンが得られることを示す。
【0129】
[限界解像性評価]
前記LSパターンが形成される最適露光量Eop(mJ/cm2)から、露光量を少しずつ増加させてパターンを形成していく際に解像する限界のライン幅(nm)を、(株)日立ハイテク製測長SEM(CG-6300)を用いて求め、これを限界解像度とした。この値が小さいほど、限界解像性に優れ、より微細なパターンを形成できることを示す。
【0130】
2.38質量%TMAH水溶液で現像したパターンの評価結果を表2に、酢酸ブチルで現像したパターンの結果を表3に示す。
【0131】
【0132】
【0133】
表2及び3に示した結果より、本発明の分子レジスト組成物は、EUVリソグラフィーにおいて、従来の高分子系ポジ型レジスト組成物や分子レジスト組成物よりも、感度、LWR及び限界解像度に優れることがわかった。