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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151853
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】栽培作物の収穫方法及び収穫装置
(51)【国際特許分類】
   A01D 46/24 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
A01D46/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065599
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】岩波 宏
【テーマコード(参考)】
2B075
【Fターム(参考)】
2B075JA06
2B075JA08
2B075JE11
2B075JE15
2B075JE18
2B075JE20
(57)【要約】
【課題】収穫にかかる作業者の負担を軽減することができる栽培作物の収穫方法及び収穫装置を提供する。
【解決手段】栽培作物の収穫方法は、支持体により支持される樹木に地表面よりも上方で列をなす状態で付く栽培作物を収穫する栽培作物の収穫方法であって、前記列の一端側及び他端側で前記支持体に支持される案内部材における前記一端側と前記他端側の間に、前記栽培作物を収集する収集部を配置しておき、前記栽培作物を搬送する搬送体に前記樹木から摘み取られた前記栽培作物を収容し、前記案内部材に沿って前記搬送体を落下させながら前記列に沿った方向に移動させて、前記栽培作物を前記収集部まで搬送する方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体により支持される樹木に地表面よりも上方で列をなす状態で付く栽培作物を収穫する栽培作物の収穫方法であって、
前記列の一端側及び他端側で前記支持体に支持される案内部材における前記一端側と前記他端側の間に、前記栽培作物を収集する収集部を配置しておき、
前記栽培作物を搬送する搬送体に前記樹木から摘み取られた前記栽培作物を収容し、
前記案内部材に沿って前記搬送体を落下させながら前記列に沿った方向に移動させて、前記栽培作物を前記収集部まで搬送する、
栽培作物の収穫方法。
【請求項2】
前記搬送体は、前記案内部材に沿って移動する動滑車を備え、
前記動滑車が前記案内部材の上で回転しながら走行して、前記搬送体が移動する、
請求項1に記載の栽培作物の収穫方法。
【請求項3】
前記搬送体は、前記栽培作物を収容し、底部が開放可能とされた収穫かごを備え、
前記収穫かごの底部を閉塞させた状態で前記栽培作物を前記収穫かごに収容し、
前記搬送体を前記収集部まで搬送し、
前記収穫かごの底部を開放して、前記栽培作物を前記収穫かごから排出して前記収集部で収集する、
請求項1または2に記載の栽培作物の収穫方法。
【請求項4】
前記案内部材は、前記搬送体を吊るすことで弛む伸縮性を備える、
請求項1に記載の栽培作物の収穫方法。
【請求項5】
前記収集部の高さ位置に応じて、前記案内部材の弛みを調整した後、
前記栽培作物を収集する、
請求項4に記載の栽培作物の収穫方法。
【請求項6】
支持体により支持される樹木に地表面よりも上方で付き、列をなす状態に配置される栽培作物を収穫する栽培作物の収穫装置であって、
前記列の一端側及び他端側で前記支持体に支持される案内部材と、
前記樹木から摘み取られた前記栽培作物を収容し、前記案内部材に沿って移動して、前記案内部材における前記一端側と前記他端側の間に配置された前記栽培作物を収集する収集部まで搬送する搬送体と、を備える、
栽培作物の収穫装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培作物の収穫方法及び収穫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トレリスを使った栽培での一般的な収穫作業は、例えば、次のように行われる。まず、作業者は、果樹から果実を摘み取り、摘み取った果実を収穫かごに入れる。収穫かごが果実で一杯になったら、作業者は、専用のコンテナが置かれた位置まで収穫かごを運び、そこで、果実を選別しながらコンテナに移し替える。続いて、作業者は、果実が移し替えられたコンテナをトラックに積んで選果場まで運ぶ。また、樹木に付く果実を収穫する方法として、従来、運搬用機移動機構を利用した果実栽培用支柱装置もある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭52-25944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、栽培作物、例えばリンゴを栽培する場合、木の転倒を防ぐために、例えば、列状に植栽されたリンゴ樹の主幹をトレリスで固定する並木植えが一般的に行われている。並木植えされたリンゴを収穫する際にも上記の収穫作業が行われるが、果実が移し替えられるコンテナは、一般的に、例えば、園地から運び出しやすくなるように樹列の端の広いスペースにまとめて置かれている。果実で一杯になった収穫かごを樹列の端まで運ぶために、作業者には少なくない労力と時間がかかるとともに、作業効率が必ずしも高いとは言えない。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、収穫にかかる作業者の負担を軽減することができる栽培作物の収穫方法及び収穫装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した栽培作物の収穫方法は、支持体により支持される樹木に地表面よりも上方で列をなす状態で付く栽培作物を収穫する栽培作物の収穫方法であって、前記列の一端側及び他端側で前記支持体に支持される案内部材における前記一端側と前記他端側の間に、前記栽培作物を収集する収集部を配置しておき、前記栽培作物を搬送する搬送体に前記樹木から摘み取られた前記栽培作物を収容し、前記案内部材に沿って前記搬送体を落下させながら前記列に沿った方向に移動させて、前記栽培作物を前記収集部まで搬送する、栽培作物の収穫方法である。
【0007】
また、前記搬送体は、前記案内部材に沿って移動する動滑車を備え、前記動滑車が前記案内部材の上で回転しながら走行して、前記搬送体が移動する、ようにしてもよい。
【0008】
また、前記搬送体は、前記栽培作物を収容し、底部が開放可能とされた収穫かごを備え、前記収穫かごの底部を閉塞させた状態で前記栽培作物を前記収穫かごに収容し、前記搬送体を前記収集部まで搬送し、前記収穫かごの底部を開放して、前記栽培作物を前記収穫かごから排出して前記収集部で収集する、ようにしてもよい。
【0009】
また、前記案内部材は、前記搬送体を吊るすことで弛む伸縮性を備える、ようにしてもよい。
【0010】
また、前記収集部の高さ位置に応じて、前記案内部材の弛みを調整した後、前記栽培作物を収集する、ようにしてもよい。
【0011】
また、上記課題を解決した栽培作物の収穫装置は、支持体により支持される樹木に地表面よりも上方で付き、列をなす状態に配置される栽培作物を収穫する栽培作物の収穫装置であって、前記列の一端側及び他端側で前記支持体に支持される案内部材と、前記樹木から摘み取られた前記栽培作物を収容し、前記案内部材に沿って移動して、前記案内部材における前記一端側と前記他端側の間に配置された前記栽培作物を収集する収集部まで搬送する搬送体と、を備える、栽培作物の収穫装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る栽培作物の収穫方法及び収穫装置によれば、収穫にかかる作業者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】収穫装置20が設置された作物栽培圃場Hを斜め上方から見た斜視図である。
図2】作物栽培圃場Hを上方から見た平面図である。
図3】搬送体23の側面図である。
図4】搬送体23の一部を拡大した正面図である。
図5】収穫装置20を設置する手順の一例を示すフローチャートである。
図6】果実Wを収穫する手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る栽培作物の収穫方法及び収穫装置を、図面に参照して説明する。図1は、収穫装置20が設置された作物栽培圃場Hを斜め上方から見た斜視図である。図2は、作物栽培圃場Hを上方から見た平面図である。以下の説明において、枝番を付した構成について区別しない場合には、枝番を省略して説明する。
【0015】
図1及び図2に示すように、実施形態の作物栽培圃場Hには、例えば、複数のトレリス10(10-1、10-2、・・)が、平面視して互いに略平行となるように立設されている。作物栽培圃場Hには、図2に示すように、複数の果樹Tが植樹されている。果樹Tは、例えば、カラムナータイプの樹木である。果樹Tは、カラムナータイプ以外の樹木でもよい。なお、図1では、果樹の描写を省略している。
【0016】
複数の果樹Tは、トレリス10に沿って並立しており、各果樹Tは、トレリス10により支持される。果樹Tには、栽培作物、例えば、リンゴの果実Wが付いている。果実Wは、地表面よりも上方でトレリス10に沿って列をなす状態で果樹Tに付いている。トレリス10は、支持体の一例である。
【0017】
作物栽培圃場Hにおいて、トレリス10には、収穫装置20が取り付けられている。収穫装置20は、例えば、支持ワイヤ21、搬送ワイヤ22、及び搬送体23を備える。搬送体23は、果樹Tから摘み取られた果実Wを収容可能とされている。果実Wを収容した搬送体23は、搬送ワイヤ22に沿って、果樹Tに付く果実Wがなす列に沿った方向に移動しながら果実Wを搬送する。作物栽培圃場Hでは、トレリス10に支持される果樹Tから摘取作業者F1が果実Wを摘み取って搬送体23に収容する。
【0018】
支持ワイヤ21は、例えば、第1トレリス10-1及び第2トレリス10-2の間でそれぞれかけ渡される。例えば、第1支持ワイヤ21-1は、第1トレリス10-1及び第2トレリス10-2の一端側同士の間にかけ渡され、第2支持ワイヤ21-2は、第1トレリス10-1及び第2トレリス10-2の他端側同士の間にかけ渡される。第1支持ワイヤ21-1及び第2支持ワイヤ21-2は、例えば地上2mの位置に張設される。
【0019】
支持ワイヤ21は、例えば鋼製のワイヤである。支持ワイヤ21は、トレリス10同士の間にかけ渡されるその他の支持部材でもよい。支持部材としては、例えば、支持ワイヤ21に代えて、ワイヤ以外の金属製または非金属性の紐状の部材が掛け渡されてよいし、紐状以外の形状、例えば、棒状でもよいし板状の支持部材が掛け渡されてもよい。
【0020】
搬送ワイヤ22は、第1支持ワイヤ21-1の長手方向中央の第1結合部P1と第2支持ワイヤ21-2の長手方向中央の第2結合部P2とそれぞれを結合して設置される。搬送ワイヤ22は、例えば鋼製のワイヤである。搬送ワイヤ22は、列の一端側及び他端側で支持ワイヤ21を介してトレリス10に支持される。搬送ワイヤ22は、第1支持ワイヤ21-1と第2支持ワイヤ21-2との間で張力を付与した状態で設置される。搬送ワイヤ22は、搬送体23を吊るすことで弛む程度の伸縮性を有している。
【0021】
搬送ワイヤ22は、搬送体23を吊るすことで弛むため、トレリス10が傾斜の無い土地に設置される場合には、搬送ワイヤ22に搬送体23を吊るすと、搬送ワイヤ22の弛みにより、搬送体23が第1結合部P1と第2結合部P2の中間位置に向けて移動可能となる。第1結合部P1と第2結合部P2の間の位置、例えば中間位置は、果実Wを収集する収集部P3が配置されている。
【0022】
収集部P3は、例えば、樹列の真ん中で樹列を横切る形で形成される通路に形成される。通路は、例えば、収穫された果樹を積載して搬送する軽トラックなどの搬送用のである運搬車Mが通過する路であり、運搬車Mは、収集部P3に停車する。運搬車Mの荷台には、例えば、果実Wが移載されるコンテナが搭載される。搬送ワイヤ22は、第1結合位置と収集部P3の間、及び第2結合部P2と収集部P3の間から、収集部P3まで搬送体23を案内する。搬送ワイヤ22は、案内部材の一例である。
【0023】
搬送体23は、果樹Tから摘み取られた果実Wを収容し、収集部P3に停車する運搬車Mまで搬送する部材である。図3は、搬送体23の側面図である。図4は、搬送体23の一部を拡大した正面図である。搬送体23は、例えば、収穫かご31と、吊持部材32と、滑車部材33と、を備える。
【0024】
収穫かご31は、例えば、収容部31Aと、底板31Bと、吊下部31Cと、を備えて構成される。吊持部材32は、例えば、棒状部材32Aと、フック部32Bとを備えて構成される。一対のフック部材を備えて構成される。滑車部材33は、例えば、動滑車33Aと、回転軸33Bとを備えて構成される。収穫かご31は、かご状である。収穫かご31は、袋状の収穫袋であってもよい。
【0025】
収穫かご31における収容部31Aは、例えば、果実Wを数十個程度収容することができる大きさのかごである。例えば、収穫かご31は、小さい果実Wを30~40個程度、大きい果実を20~25程度収容可能である。収穫かご31の大きさは、これよりも大きくてもよいし小さくてもよい。収穫かご31の底部は開口しているが、常時は底板31Bにより閉塞されている。収穫かご31の底部が閉塞されることにより、収容部31Aに収容された果実Wが落下しないようにされている。収容部31Aは、開口せずに閉塞していてもよい。収容部31Aは、例えば、容易に転倒させることができる転倒構造を備えていてもよい。収穫かご31は、収容部31Aに代えて、果実Wを収容するかごなど備えてもよい。
【0026】
底板31Bは、図3に仮想線で示すように、一端辺を中心として回動するヒンジ構造を備えている。底板31Bは、ヒンジ構造により、収容部31Aの底部を開閉可能としている。収容部31Aの底部が底板31Bにより閉塞された状態のときに、収容部31Aに果実Wが収容可能とされる。収穫かご31は、底部が開放可能とされている。収穫かご31では、底部部が底板31Bにより閉塞された状態から底板31Bが回動し、収穫かご31の底部が開放されると、収容部31Aに収容されていた果実Wが、収穫かご31の底部から落下可能となる。
【0027】
収容部31Aの上端部には、吊下部31Cが取り付けられている。吊下部31Cは、図4に示すように、正面視して下側が開口するコ字形状をなす。吊下部31Cの下端部は、収容部31Aの上端辺に固定されている。吊下部31Cは、形状がコ字形状とされた成形品であるが、吊下部31Cは、例えば、紐状の部材でもよい。
【0028】
吊持部材32は、滑車部材33の動滑車33Aを挟んで一対配置されている。吊持部材32における棒状部材32Aは、搬送体23が搬送ワイヤ22に吊り下げられた状態で、鉛直方向に延在する。フック部32Bは、棒状部材32Aの下端部から伸びており、徐々に上方を向いていくように湾曲する。フック部32Bには、収穫かご31の吊下部31Cが吊り下げられる。
【0029】
滑車部材33の動滑車33Aは、搬送ワイヤ22の径と略同じ幅の溝を備える。滑車部材33は、搬送ワイヤ22の上で動滑車33Aに形成された溝に搬送ワイヤ22が嵌り込んだ状態で回転しながら走行することにより、搬送ワイヤ22を軌道として、搬送ワイヤ22に沿って移動する。動滑車33Aに形成された溝の深さは、搬送ワイヤ22の径よりも長く(深く)されている。このため、動滑車33Aが搬送ワイヤ22に沿って移動する際に、動滑車33Aが搬送ワイヤ22から脱輪しにくくされている。
【0030】
動滑車33Aの回転中心には、回転軸33Bが貫通している。回転軸33Bの両端部は、それぞれ吊持部材32における吊持部材32に回動可能となるように取り付けられている。動滑車33Aが回転することにより、回転軸33Bを介して吊持部材32が移動し、さらに、吊持部材32に吊り下げられた収穫かご31が移動する。こうして、収穫かご31は、吊持部材32及び滑車部材33とともに搬送ワイヤ22に沿って移動する。
【0031】
搬送ワイヤ22は、弛んだ状態で設置されているため、搬送体23は、自重により落下する方向に力を受けながら搬送ワイヤ22に沿って移動する。このため、搬送体23は、搬送ワイヤ22に吊り下げられた状態となった後、搬送ワイヤ22における弛みの最下端の位置、例えば、運搬車Mが停車する収集部P3に向けて移動する。搬送ワイヤ22の弛みは、例えば、運搬車Mの荷台の高さに応じて、第1結合部P1及び第2結合部P2における搬送ワイヤ22の結合位置により調整される。
【0032】
果樹Tに付く果実Wは、例えば、図2に示すように、複数の摘取作業者F1により果樹Tの近傍の摘取位置で摘み取られる。摘取作業者F1は、摘み取った果実Wを搬送体23に収容する。摘取作業者F1は、搬送体23がある程度一杯になるまで果実Wを搬送体23に収容する。摘取作業者F1は、果実Wが一杯に収容された搬送体23を搬送ワイヤ22に吊り下げる。摘取作業者F1は、果実Wの摘み取りから搬送体23の吊り下げまでの作業を順次行う。
【0033】
吊り下げられた搬送体23は、収集部P3まで搬送される。収集部P3では、運搬車Mの荷台上で収集作業者F2が作業または待機している。収集作業者F2は、収集部P3まで搬送された搬送体23から果実Wを排出させて、運搬車Mの荷台に積載されたコンテナ等に移載する。果実Wが排出された搬送体23は、運搬車Mの荷台の上またはその近傍に集められて保管される。その後、収穫された果実Wを積んだ運搬車Mが、果実Wを選果場等まで運搬する。
【0034】
続いて、収穫装置20を用いて果実Wを収穫する具体的な手順について説明する。果実Wを収穫する前の生育中にも、トレリス10には収穫装置20が取り付けられてままとされている。その後、果実Wを収穫する時期となったら、作業者は、続いて、収穫装置20を利用して果実Wを収穫する。ここでは、トレリス10に収穫装置20を設置する手順を説明し、続いて、設置した収穫装置20により果実Wを収穫する手順について説明する。
【0035】
図5は、収穫装置20を設置する手順の一例を示すフローチャートである。収穫装置20を設置するには、まず、隣接する第1トレリス10-1及び第2トレリス10-2の一端部同士に第1支持ワイヤ21-1を掛け渡し、他端部同士に第2支持ワイヤ21-2を掛け渡す(ステップS11)。トレリス10は、複数の果樹Tを支持するための相当の強度を有するが、トレリス10の間に支持ワイヤ21を掛け渡す際に、トレリス10の立設を維持するための強度が不足し又は不足しそうであるときには、トレリス10を補強する支柱を別途立設してもよい。
【0036】
トレリス10同士に第1支持ワイヤ21-1及び第2支持ワイヤ21-2を掛け渡したら、第1支持ワイヤ21-1及び第2支持ワイヤ21-2それぞれの中間位置に搬送ワイヤ22の一端部及び他端部を結合して搬送ワイヤ22を設置する(ステップS13)。支持ワイヤ21に対して搬送ワイヤ22を結合する態様は、どのような態様でもよい。例えば、搬送ワイヤ22の端部を支持ワイヤ21に巻き付けてもよいし、針金などを利用して搬送ワイヤ22の端部を支持ワイヤ21に括り付けてもよいし、ワイヤ(線材)同士を結合する結合器具などを用いてもよい。
【0037】
支持ワイヤ21に結合される搬送ワイヤ22は、ある程度弛んだ状態とされる。弛んだ状態の搬送ワイヤ22は、第1結合部P1及び第2結合部P2が高い位置にあり、第1結合部P1及び第2結合部P2の略中央位置に至るまで徐々に低くなる。収集部P3は、例えば第1結合部P1及び第2結合部P2の略中央位置の搬送ワイヤ22が最も低くなる位置に設定される。
【0038】
搬送ワイヤ22を支持ワイヤ21に接合する際、運搬車Mの荷台の高さに応じて、搬送ワイヤ22の支持ワイヤ21に対する結合位置で、第1支持ワイヤ21-1と第2支持ワイヤ21-2の間の搬送ワイヤ22の長さを調整して、搬送ワイヤ22の弛みを調整する。例えば、運搬車Mの荷台の高さが高い場合には、第1支持ワイヤ21-1と第2支持ワイヤ21-2の間の搬送ワイヤ22の長さを短くして、搬送ワイヤ22の弛みを少なくする。また、運搬車Mの荷台の高さが低い場合には、第1支持ワイヤ21-1と第2支持ワイヤ21-2の間の搬送ワイヤ22の長さを長くして、搬送ワイヤ22の弛みを大きくする。
【0039】
続いて、収集部P3に果実Wを運搬するための運搬車M(車両)を配置する(ステップS15)。続いて、複数の搬送体23をトレリス10の近傍に搬入する(ステップS17)。さらに、摘取作業者F1及び収集作業者F2が所定の位置に配備される。摘取作業者F1及び収集作業者F2の配備は、順次異なるタイミングで行われてもよい。こうして、果実Wの収穫を開始するための準備が整い、図5に示す工程が終了し、果実Wを収穫するための準備が完了する。
【0040】
続いて、収穫装置20を用いて果実Wを収穫する手順について説明する。図6は、果実Wを収穫する手順の一例を示すフローチャートである。果実Wを収穫する際には、摘取作業者F1は、まず、運搬車Mの近傍またはその他の返却位置に返却された搬送体23を持参して果樹Tの近傍に移動し、果樹Tから果実Wを摘み取る(ステップS21)。
【0041】
続いて、摘取作業者F1は、摘み取った果実Wを収穫かご31に収容する(ステップS23)。摘取作業者F1は、収穫かご31が果実Wで一杯になったか否かを確認する(ステップS25)。収穫かご31が果実Wで一杯になっていない場合には、摘取作業者F1は、ステップS23及びステップS25の工程を繰り返す。
【0042】
収穫かご31が果実Wで一杯になった場合、摘取作業者F1は、果実Wで収穫かご31が一杯になった搬送体23を搬送ワイヤ22の近傍まで運び、搬送体23における収穫かご31を搬送ワイヤ22に吊り下げる(ステップS27)。摘取作業者F1は、果実Wを摘み取る際に、収穫かご31、吊持部材32、及び滑車部材33を搬送ワイヤ22から取り外し、吊持部材32及び滑車部材33を搬送ワイヤ22の近傍に載置しておいて、収穫かご31を持参してもよい。
【0043】
搬送体23を搬送ワイヤ22に吊り下げる際には、摘取作業者F1は、まず、搬送体23の吊持部材32及び滑車部材33から収穫かご31を取り外し滑車部材33における動滑車33Aを搬送ワイヤ22に引っ掛ける。このとき、動滑車33Aの溝に搬送ワイヤ22が嵌り込み、搬送ワイヤ22の両側にそれぞれ一対の吊持部材32が配置され、吊持部材32及び滑車部材33の重量がほぼ均等に搬送ワイヤ22にかかるので、動滑車33Aが搬送ワイヤ22上に載置される。
【0044】
動滑車33Aが搬送ワイヤ22の上に載置されたら、吊持部材32のフック部32Bに収穫かご31の吊下部31Cを引っ掛ける。吊下部31Cがフック部32Bに引っ掛けられることにより、収穫かご31が搬送ワイヤ22に吊り下げられる。収穫かご31を搬送ワイヤに吊り下げたら、摘取作業者F1は、そのまま搬送体23を手から離す。
【0045】
搬送ワイヤ22は、第1結合部P1と第2結合部P2の間で弛んでいるので、摘取作業者F1の手から離れた搬送体23は、搬送ワイヤ22に沿って第1結合部P1と第2結合部P2の間の収集部P3に向けて自重により落下しながら移動する。このため、摘取作業者F1の手によることなく搬送体23が自ら収集部P3まで移動する(ステップS29)。
【0046】
収集部P3に到達した搬送体23は、収集部P3で滞留するか、収集作業者F2により受け止められる。収集作業者F2は、滞留し、または自ら受け止めた搬送体23の底板31Bを回動させて収容部31Aの底部を開放する。収容部31Aの底部を開放された収穫かご31からは、収容されていた果実Wが排出される。収集作業者F2は、排出される果実Wを収集する(ステップS31)。
【0047】
収集作業者F2は、排出される果実Wを運搬車Mの荷台に積載されたコンテナ等に移載することにより収集する。収穫かご31から排出される果実Wは、落下してそのままコンテナ等に移載されるようにしてもよい。この場合、落下する果実Wの損傷を守るための緩衝材などがコンテナ等に設けられていてよい。
【0048】
収穫かご31から果実Wが収集された搬送体23は、収集作業者F2の手によって搬送ワイヤ22から取り外される。搬送ワイヤ22から搬送体23を取り外す際には、収集作業者F2は、まず、収穫かご31を吊持部材32から取り外す。続いて、収集作業者F2は、滑車部材33及び吊持部材32を搬送ワイヤ22の上方に移動させて搬送ワイヤ22から取り外す。収穫かご31及び吊持部材32は、容易に取り外すことができ、滑車部材33も、搬送ワイヤ22の引っ掛けてあるだけなので、容易に取り外すことができる。収集作業者F2は、取り外した搬送体23を運搬車Mの近傍における返却位置に返却する(ステップS33)。返却位置に返却された搬送体23は、さらに摘取作業者F1に持参される。
【0049】
以後、摘取作業者F1及び収集作業者F2は同様の工程を繰り返し、運搬車Mに移載される果実Wの量が所定量に到達すると、図6に示す工程が終了する。その後、運搬車Mに積載された果実Wは、運搬車Mにより選果場まで運搬される。果実Wは、選果場において、選別、検査等の工程を経た後、市場に流通する。
【0050】
実施形態の栽培作物の収穫方法では、果樹Tから摘み取られた果実Wを搬送体23に収容し、搬送ワイヤ22に沿って搬送体23を落下させながら果樹Tにつく果実Wの列に沿った方向に移動させて、果実Wを収集部P3まで搬送する。このため、作業者は、果樹を摘み取った位置から収集部まで持ち運ぶ必要がなくなる。したがって、その分、収穫にかかる作業者の負担を軽減することができる。
【0051】
従来、果実が移載されるコンテナが樹列の端の広いスペースにまとめて置かれていたために、労力と時間がかかるとともに効率が悪いといった問題があるほか、収穫かごを地面に置くことで、収穫かごや果実Wに泥が付いたりするなどの問題も生じ得る。また、例えば、果樹Tから作業者により摘み取られた果実Wを収集部まで搬送するために、トレリス10の間を走行する小型の運搬車も開発されているが、この運搬車では一度に運べる量が多くないため、収穫作物の量によっては、往復回数が嵩むこととなり、作業を効率的に行うことは難しかった。さらに、運搬車と作業者が干渉することもあった。
【0052】
この点、実施形態の栽培作物の収穫方法では、搬送ワイヤ22上を走行する搬送体23により果実Wを摘み取った位置から収集部P3まで搬送する。搬送体23は、搬送ワイヤ22という軌道に沿って移動するので、1度で運べる量は多くなくとも、摘み取った果実Wを効率的に収集部P3まで搬送することができる。また、収穫かごを地面に置くといった作業をはぶくことができるので、収穫かごや果実Wに泥が付いて貯蔵中の腐敗の原因となることを防ぐことができる。さらに、収穫かご31は、空中を移動する。このため、収穫かご31を用いて果実Wを搬送している間の泥跳ねによる果実Wの汚染を防止することができる。
【0053】
さらに、搬送が済んだ搬送体23は、収集作業者F2により搬送ワイヤ22から取り外され、運搬車Mの近傍における返却位置に返却される。返却された搬送体23は、例えば、次に果実Wを摘み取る摘取作業者F1または搬送体23を摘取作業者に手渡す作業者により回収され、次の果実Wの搬送に利用される。このため、搬送体23を果実Wの摘取位置に戻すまでに、作業者と搬送体23が干渉するといった事態を抑制することができ、収穫にかかる作業者の負担をさらに軽減することができる。
【0054】
上記の実施形態では、栽培作物はリンゴであるが、栽培作物は他の果実、例えば、梨、柿、サクランボなどの他の果実でもよいし、トマト、キュウリ、ホップ、トウモロコシなどの果実以外の作物でもよい。また、上記の実施形態では、支持体はトレリス10であるが支持体はその他のものでもよく、例えばブドウ棚などの棚でもよい。ブドウ棚が支持体である場合の栽培作物はブドウとなる。
【0055】
また、上記の実施形態では、収集部P3は第1結合部P1と第2結合部P2の略中央位置とされているが、収集部P3は、第1結合部P1と第2結合部P2の間のその他の位置でもよい。また、収集部P3は、例えば、支持体が傾斜地に立設された、第1結合部P1よりも第2結合部P2の高さ位置が低所となっている場合に、第2結合部P2が収集部P3となるようにしてもよい。
【0056】
また、上記の実施形態において、搬送体23は、動滑車33Aを備えるが、搬送体23は、滑車となる部材を備えなくてもよい。また、搬送体23は、栽培作物を搬送する間、収穫かご31が転倒するなどして搬送中の栽培作物が落下することを抑制する抑制構造を備えていてもよい、抑制構造は、例えば、搬送ワイヤ22の両側のそれぞれにおいて搬送ワイヤ22に対して平行に補助ワイヤを張設し、搬送体23の側方に、補助ワイヤ上を移動する補助部材と突設してよい。補助部材は、補助ワイヤ上を走行する滑車を備えてもよい。
【0057】
搬送体23は、搬送ワイヤ22上の走行する態様以外の態様としてもよい。搬送体23は、例えば、搬送ワイヤ22に吊るされてもよいし、2本の搬送ワイヤ22に挟まれる形で移動するようにしてもよい。上記の実施形態において、搬送体23は、吊持部材32と滑車部材33が一体となり、吊持部材32に収穫かご31が吊り下げられる構造であるが、収穫かご31、吊持部材32、及び滑車部材33が一体であってもよい。
【0058】
上記の実施形態では、滑車部材33に吊持部材32が取り付けられ、吊持部材32に収穫かご31が吊下される構造とされているが、収穫かご31に取り付けられた滑車部材33が搬送ワイヤ22にセットされるようにしてもよい。この場合、収穫かご31と滑車部材33との間には、例えば接続部材が介在され、接続部材は、搬送ワイヤ22の片側のみに配置されるか、リング状をなし、周方向の一部が開閉可能な開閉部とされ、開閉部が閉鎖方向に付勢されたいわゆるカラビナ様の開閉構造を備えるようにすればよい。このような構造とすることにより、収穫かご31と滑車部材33を一体としておくことができ、収集部P3において、収穫かご31と滑車部材33が分離しないこととなるので、搬送体23の保管及び運搬を簡便なものとすることができる。
【符号の説明】
【0059】
10(10,1,10,2)…トレリス
20…収穫装置
21(21-1、21-2)…支持ワイヤ
22…搬送ワイヤ
23…搬送体
31…収穫かご
31A…収容部
31B…底板
31C…吊下部
32…吊持部材
32A…棒状部材
32B…フック部
33…滑車部材
33A…動滑車
33B…回転軸
F1…摘取作業者
F2…収集作業者
H…作物栽培圃場
M…運搬車
P1…第1結合部
P2…第2結合部
P3…収集部
図1
図2
図3
図4
図5
図6