(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151857
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】光ファイバ給電システム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/80 20130101AFI20241018BHJP
H04B 10/071 20130101ALI20241018BHJP
H04B 10/077 20130101ALI20241018BHJP
【FI】
H04B10/80 160
H04B10/071
H04B10/077
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065603
(22)【出願日】2023-04-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度 国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/サイバーフィジカルインフラに向けた高信頼シームレスアクセスネットワークに関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(72)【発明者】
【氏名】池田 研介
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA15
5K102AN02
5K102AN03
5K102LA06
5K102LA11
5K102LA13
5K102LA21
5K102LA33
5K102LA38
5K102LA41
5K102LA52
5K102MA01
5K102MB02
5K102MD03
5K102PA01
5K102PA11
5K102PB01
5K102PB11
5K102PB14
5K102PC12
5K102PH31
5K102PH41
5K102PH50
5K102RB02
(57)【要約】
【課題】大幅なコストの上昇及び構成の複雑化を招くことなく、高い信頼性と安全性を確保することができる光ファイバ給電システムを提供する。
【解決手段】光ファイバ給電システム1は、複数の光源11と、複数の光源11から出力される光が一端側T1に入力される少なくとも1本の光ファイバ13と、光ファイバ13の他端側T2から出力される光が入力される光電変換器14と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源と、
前記複数の光源から出力される光が一端側に入力される少なくとも1本の光ファイバと、
前記光ファイバの他端側から出力される光が入力される光電変換器と、
を備える光ファイバ給電システム。
【請求項2】
前記光ファイバは、1本設けられており、
前記複数の光源から出力される光を前記光ファイバの一端側に入力させるコンバイナを備える、
請求項1記載の光ファイバ給電システム。
【請求項3】
前記光ファイバは、マルチコアファイバ、ダブルクラッドファイバ、又はマルチモードファイバである、請求項2記載の光ファイバ給電システム。
【請求項4】
前記光ファイバは、前記複数の光源に対応して複数本設けられており、
前記光電変換器には、前記光ファイバの各々の他端側から出力される光が入力される、
請求項1記載の光ファイバ給電システム。
【請求項5】
前記光源は、複数の発光領域を備え、前記発光領域の各々を個別に発光させることができる面状の光源である、請求項1記載の光ファイバ給電システム。
【請求項6】
前記発光領域の各々から出力される光を前記光ファイバの一端側に入力させる集光光学系を備える、請求項5記載の光ファイバ給電システム。
【請求項7】
前記光ファイバの一端側に試験光を入力させ、前記光ファイバの一端側から出力される光に基づいて、前記光ファイバの試験を行う試験器を備える、請求項1記載の光ファイバ給電システム。
【請求項8】
前記試験器は、前記光ファイバの一端側から出力される後方散乱光に基づいて、前記光ファイバの試験を行う、請求項7記載の光ファイバ給電システム。
【請求項9】
前記試験器は、前記光ファイバの他端側において生じた反射光に基づいて、前記光ファイバの試験を行う、請求項7記載の光ファイバ給電システム。
【請求項10】
前記反射光は、前記光ファイバの他端側における端面でのフレネル反射により生じた反射光である、請求項9記載の光ファイバ給電システム。
【請求項11】
前記光ファイバの他端側には、ファイバ・ブラッグ・グレーティングが形成されており、
前記反射光は、前記ファイバ・ブラッグ・グレーティングでのフラッグ反射により生じた反射光である、
請求項9記載の光ファイバ給電システム。
【請求項12】
前記光ファイバは、マルチコアファイバ又はダブルクラッドファイバであり、
前記試験光は、前記マルチコアファイバに設けられた複数のコアのうちの1つに入力され、又は前記ダブルクラッドファイバのコアに入力される、
請求項7から請求項11の何れか一項に記載の光ファイバ給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ファイバを介して給電を行う光ファイバ給電システムが注目されている。この光ファイバ給電システムは、光源、光ファイバ、及び光電変換器(PPC:Photovoltaic Power Converter)を備えており、電力を光に変換して伝送し、伝送された光を電力に変換することによって給電を行うシステムである。このような光ファイバ給電システムは、例えば、電気絶縁を保った状態で電力供給が可能であることや、1本の光ファイバのみで給電と通信とが可能である等の利点を有する。
【0003】
従来は、供給可能な電力が数十mWオーダーであったが、近年では、光源としてのレーザの高出力化が進んだことから、数W~数百Wオーダーの電力供給が可能になってきている。このため、近年では、光ファイバ給電で動作可能なセンサシステムや無線通信システム等の研究開発が行われている。
【0004】
以下の特許文献1には、従来の光ファイバ給電システムの一例が開示されている。この光ファイバ給電システムでは、光電変換器から負荷に供給される電力の大きさを検出し、この検出結果を光源側に出力して光源を制御することで、エネルギー損失の増大やエネルギーの供給不足が生ずるのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、高い信頼性が求められるシステム(例えば、無線通信システム)では、光ファイバ給電についても高い信頼性が求められる。このため、このようなシステムで用いられる光ファイバ給電システムでは、例えば、光源の故障によって電力供給が突然停止したり、光源の劣化によって光出力が低下したりすることに対処する必要がある。ここで、光源、光ファイバ、及び光電変換器を二重化すれば信頼性を高くすることができるものの、大幅なコストの上昇を招くことが考えられる。従って、大幅なコストの上昇を招くことのない効果的な冗長化方法が期待される。
【0007】
また、光ファイバ給電システムを安全に利用するためには、例えば、光ファイバの曲げや断線等の異常を検出することができ、必要があれば光を停止させる等の安全対策が必要になる。ここで、上述した特許文献1に開示された技術を応用すれば、光電変換器から出力される電力の大きさに異常が生じた場合には、光源を停止させることができるとも考えられる。しかしながら、上述した特許文献1に開示された技術では、光電変換器から出力される電力の大きさを示す情報を光源側に伝送するための回線が別途必要になることから、システムが複雑化してしまう虞がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、大幅なコストの上昇及び構成の複雑化を招くことなく、高い信頼性を確保することができる光ファイバ給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様による光ファイバ給電システム(1~5)は、複数の光源(11)と、前記複数の光源から出力される光が一端側(T1)に入力される少なくとも1本の光ファイバ(13、13A)と、前記光ファイバの他端側(T2)から出力される光が入力される光電変換器(14)と、を備える。
【0010】
また、本発明の第2の態様による光ファイバ給電システムは、本発明の第1の態様による光ファイバ給電システムにおいて、前記光ファイバが、1本設けられており、前記複数の光源から出力される光を前記光ファイバの一端側に入力させるコンバイナ(12)を備える。
【0011】
また、本発明の第3の態様による光ファイバ給電システムは、本発明の第2の態様による光ファイバ給電システムにおいて、前記光ファイバが、マルチコアファイバ、ダブルクラッドファイバ、又はマルチモードファイバである。
【0012】
また、本発明の第4の態様による光ファイバ給電システムは、本発明の第1の態様による光ファイバ給電システムにおいて、前記光ファイバが、前記複数の光源に対応して複数本設けられており、前記光電変換器には、前記光ファイバの各々の他端側から出力される光が入力される。
【0013】
また、本発明の第5の態様による光ファイバ給電システムは、本発明の第1の態様による光ファイバ給電システムにおいて、前記光源が、複数の発光領域(R1~R4)を備え、前記発光領域の各々を個別に発光させることができる面状の光源である。
【0014】
また、本発明の第6の態様による光ファイバ給電システムは、本発明の第5の態様による光ファイバ給電システムにおいて、前記発光領域の各々から出力される光を前記光ファイバの一端側に入力させる集光光学系(15)を備える。
【0015】
また、本発明の第7の態様による光ファイバ給電システムは、本発明の第1~第6の何れかの態様による光ファイバ給電システムにおいて、前記光ファイバの一端側に試験光を入力させ、前記光ファイバの一端側から出力される光に基づいて、前記光ファイバの試験を行う試験器(20、30)を備える。
【0016】
また、本発明の第8の態様による光ファイバ給電システムは、本発明の第7の態様による光ファイバ給電システムにおいて、前記試験器が、前記光ファイバの一端側から出力される後方散乱光に基づいて、前記光ファイバの試験を行う。
【0017】
また、本発明の第9の態様による光ファイバ給電システムは、本発明の第7の態様による光ファイバ給電システムにおいて、前記試験器が、前記光ファイバの他端側において生じた反射光に基づいて、前記光ファイバの試験を行う。
【0018】
また、本発明の第10の態様による光ファイバ給電システムは、本発明の第9の態様による光ファイバ給電システムにおいて、前記反射光が、前記光ファイバの他端側における端面でのフレネル反射により生じた反射光である。
【0019】
また、本発明の第11の態様による光ファイバ給電システムは、本発明の第9の態様による光ファイバ給電システムにおいて、前記光ファイバの他端側には、ファイバ・ブラッグ・グレーティング(40)が形成されており、前記反射光が、前記ファイバ・ブラッグ・グレーティングでのフラッグ反射により生じた反射光である。
【0020】
また、本発明の第12の態様による光ファイバ給電システムは、本発明の第7~第11の何れかの態様による光ファイバ給電システムにおいて、前記光ファイバが、マルチコアファイバ又はダブルクラッドファイバであり、前記試験光が、前記マルチコアファイバに設けられた複数のコア(C1、C2)のうちの1つに入力され、又は前記ダブルクラッドファイバのコア(C)に入力される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、大幅なコストの上昇及び構成の複雑化を招くことなく、高い信頼性を確保することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態による光ファイバ給電システムの要部構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第2実施形態による光ファイバ給電システムの要部構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第3実施形態による光ファイバ給電システムの要部構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の第4実施形態による光ファイバ給電システムの要部構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の第4実施形態で用いられる光ファイバの断面図である。
【
図6】本発明の第5実施形態による光ファイバ給電システムの要部構成を示すブロック図である。
【
図7】本発明の第5実施形態による光ファイバ給電システムの変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による光ファイバ給電システムについて詳細に説明する。尚、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成には限定されない。
【0024】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態による光ファイバ給電システムの要部構成を示すブロック図である。
図1に示す通り、本実施形態の光ファイバ給電システム1は、複数の光源11、コンバイナ12、光ファイバ13、及び光電変換器14を備える。このような光ファイバ給電システム1は、供給すべき電力を光に変換して伝送し、伝送された光を電力に変換することによって給電を行う。
【0025】
光源11は、不図示の電源から供給される電力の大きさに応じた光を出力する。この光源11は、供給すべき電力を光に変換するためのものである。光源11は、例えば、半導体レーザ等の発光素子を備える。光源11に設けられる発光素子としては、任意のものを用いることが可能であるが、光ファイバ13における伝送効率及び光電変換器14における光電変換効率等を考慮したものが用いられる。例えば、光ファイバ13による吸収が少なく、光電変換器14における変換効率が高い波長の光を出力する発光素子が用いられる。また、光源11の数は、少なくとも2つ設けられていればよく、供給する必要のある電力に応じて設定される。
【0026】
コンバイナ12は、複数の光源11から出力される光を光ファイバ13の一端側T1に入力させる。光ファイバ13が、複数のコアを有するマルチコアファイバである場合には、複数の光源11から出力される光を複数のコアにそれぞれ入力させるものをコンバイナ12として用いることができる。また、光ファイバ13が、コアと2つのクラッドとを有するダブルクラッドファイバ、又はマルチモードファイバである場合には、テーパファイババンドル型の合波器(TFBC: Tapered Fiber Bundle Combiner)をコンバイナ12として用いることができる。
【0027】
光ファイバ13は、不図示の電源が設置された場所と、光ファイバ給電システム1による電力の供給先との間に敷設され、光源11によって変換された光を伝送する。この光ファイバ13としては、上述したマルチコアファイバ、ダブルクラッドファイバ、又はマルチモードファイバを用いることができる。
【0028】
光電変換器14は、光ファイバ13の他端側T2から出力される光が入力される。この光電変換器14は、光ファイバ13によって伝送された光を電力に変換するためのものである。光電変換器14は、複数の光源11に対して1つのみ設けられ、複数の光源11から出力されて光ファイバ13によって伝送された光の各々を受光することができるように構成されている。
【0029】
このように、本実施形態の光ファイバ給電システム1は、故障しやすい光源11を冗長化し、故障しにくい光ファイバ13及び光電変換器14を複数の光源11で共用する構成である。このような構成にするのは、大幅なコストの上昇及び構成の複雑化を招くことなく、高い信頼性を確保するためである。
【0030】
本実施形態の光ファイバ給電システム1は、全ての光源11を発光させて給電を行う動作モード(第1給電モード)と、一部の光源11のみを発光させて給電を行う動作モード(第2給電モード)とが可能である。第1給電モード及び第2給電モードの何れの場合でも、光ファイバ13の一端側に入力される光の強度が所定の強度(電力の供給先で必要となる電力が得られる強度)となるように、光源11の各々から出力される光の強度が調整される。
【0031】
また、第2給電モードでは、発光させる一部の光源11を現用系、発光させない残りの光源を予備系とし、現用系の光源11の故障又は劣化が生じた場合に、予備系の光源11を発光させるといった使い方が可能である。尚、このような使い方をする場合には、全ての光源11について異常又は劣化が生じていない状態において、現用系の光源11から出力される光の強度の合計と、予備系の光源11から出力される光の強度の合計とが等しくなっているのが望ましい。
【0032】
次に、光ファイバ給電システム1の動作について説明する。尚、ここでは説明を簡単にするために、光ファイバ13がダブルクラッドファイバ又はマルチモードファイバであるとし、光ファイバ給電システム1が第1給電モードであるときの動作について説明する。
【0033】
不図示の電源から複数の光源11に電力が供給されると、光源11の各々からは、供給される電力の大きさに応じた光が出力される。複数の光源11から出力された光は、コンバイナ12によって合波されて光ファイバ13の一端側T1に入力される。光ファイバ13に入力された光は、光ファイバ13の内部を伝播した後に(光ファイバ13によって伝送された後に)、光ファイバ13の他端側T2から出力される。光ファイバ13から出漁された光は、光電変換器14に入力されて電力に変換される。このようにして光ファイバ13を介した給電が行われる。
【0034】
以上の通り、本実施形態の光ファイバ給電システム1は、複数の光源11と、複数の光源11から出力される光が一端側T1に入力される1本の光ファイバ13と、光ファイバ13の他端側T2から出力される光が入力される光電変換器14と、を備える構成である。つまり、本実施形態の光ファイバ給電システム1は、故障しやすい光源11を冗長化し、故障しにくい光ファイバ13及び光電変換器14を複数の光源11で共用する構成である。これにより、本実施形態の光ファイバ給電システム1は、大幅なコストの上昇及び構成の複雑化を招くことなく、高い信頼性を確保することができる。
【0035】
〔第2実施形態〕
図2は、本発明の第2実施形態による光ファイバ給電システムの要部構成を示すブロック図である。尚、
図2においては、
図1に示す構成と同様の構成については同一の符号を付してある。
図2に示す通り、本実施形態の光ファイバ給電システム2は、
図1に示す光ファイバ給電システム1のコンバイナ12を省略し、複数の光源11に対して複数本の光ファイバ13が設けられた構成である。
【0036】
上述した第1実施形態の光ファイバ給電システム1は、光源11を冗長化し、光ファイバ13及び光電変換器14を複数の光源11で共用する構成であった。これに対し、本実施形態の光ファイバ給電システム2は、光源11及び光ファイバ13を冗長化し、光電変換器14を複数の光源11及び光ファイバ13で共用する構成である。
【0037】
本実施形態の光ファイバ給電システム2では、複数の光源11から出力される光が、別々の光ファイバ13の一端側T1に入力されて伝送される。各々の光ファイバ13によって伝送された光は、他端側T2から個別に出力されて光電変換器14に入力される。そして、光電変換器14において、各々の光ファイバ13から出力された光が電力に変換される。
【0038】
本実施形態の光ファイバ給電システム2も、第1実施形態の光ファイバ給電システム1と同様に、第1給電モードと第2給電モードとが可能である。また、第2給電モードでは、現用系の光源11と予備系の光源11とを用意し、現用系の光源11の故障又は劣化が生じた場合に、予備系の光源11を発光させるといった使い方が可能である。
【0039】
以上の通り、本実施形態の光ファイバ給電システム2は、複数の光源11と、複数の光源11に対応して設けられ、複数の光源11から出力される光が一端側T1に個別に入力される複数本の光ファイバ13と、複数本の光ファイバ13の他端側T2から出力される光が入力される光電変換器14と、を備える構成である。つまり、本実施形態の光ファイバ給電システム2は、故障しやすい光源11に加えて光ファイバ13を冗長化し、故障しにくい光電変換器14を複数の光源11及び光ファイバ13で共用する構成である。これにより、本実施形態の光ファイバ給電システム2は、大幅なコストの上昇及び構成の複雑化を招くことなく、高い信頼性を確保することができる。
【0040】
尚、
図2では、光源11と光ファイバ13とが1対1で対応づけられた構成を示したが、第1実施形態と同様に、光源11と光ファイバ13とが複数対1で対応づけられた構成であってもよい。例えば、2本の光ファイバ13の各々に対して、2つの光源11が対応づけられた構成であってもよい。このような構成の場合には、第1実施形態と同様に、2本の光ファイバ13の各々に対してコンバイナ12を設けるのが望ましい。
【0041】
〔第3実施形態〕
図3は、本発明の第3実施形態による光ファイバ給電システムの要部構成を示すブロック図である。尚、
図3においては、
図1に示す構成と同様の構成については同一の符号を付してある。
図3に示す通り、本実施形態の光ファイバ給電システム3は、
図1に示す光ファイバ給電システム1の光源11及びコンバイナ12に替えて、光源11A及び集光光学系15をそれぞれ設けた構成である。
【0042】
光源11Aは、例えば、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)、フォトニック結晶レーザ、その他の面状の光源である。光源11Aは、複数の発光領域R1~R4を備えており、これら複数の発光領域R1~R4の各々を独立した駆動回路で個別に発光させることができる。
【0043】
集光光学系15は、光源11Aと光ファイバ13の一端側T1との間に設けられ、光源11Aの発光領域R1~R4の各々から出力される光を、光ファイバ13の一端側T1に入力させる。尚、集光光学系15は、1枚のレンズのみを備えた構成であっても、複数枚のレンズを備えた構成であってもよい。
【0044】
本実施形態の光ファイバ給電システム3は、光源11Aの発光領域R1~R4を全て発光させて給電を行う動作モード(第1給電モード)と、光源11Aの発光領域R1~R4の一部のみを発光させて給電を行う動作モード(第2給電モード)とが可能である。第1給電モード及び第2給電モードの何れの場合でも、光ファイバ13の一端側に入力される光の強度が所定の強度(電力の供給先で必要となる電力が得られる強度)となるように、発光領域R1~R4の各々から出力される光の強度が調整される。
【0045】
また、第2給電モードでは、発光領域R1~R4のうちの発光させる一部の発光領域を現用系、発光させない残りの発光領域を予備系とし、現用系の発光領域の故障又は劣化が生じた場合に、予備系の発光領域を発光させるといった使い方が可能である。尚、このような使い方をする場合には、全ての発光領域R1~R4について異常又は劣化が生じていない状態において、現用系の発光領域から出力される光の強度の合計と、予備系の発光領域から出力される光の強度の合計とが等しくなっているのが望ましい。
【0046】
以上の通り、本実施形態の光ファイバ給電システム3は、個別に発光させることができる複数の発光領域R1~R4を備える光源11Aと、光源11Aの複数の発光領域R1~R4から出力される光が一端側T1に入力される1本の光ファイバ13と、光ファイバ13の他端側T2から出力される光が入力される光電変換器14と、を備える構成である。つまり、本実施形態の光ファイバ給電システム3は、個別に発光させることができる複数の発光領域R1~R4を備える光源11Aを用いることによって光源を冗長化し、故障しにくい光ファイバ13及び光電変換器14を複数の発光領域R1~R4で共用する構成である。これにより、本実施形態の光ファイバ給電システム3は、大幅なコストの上昇及び構成の複雑化を招くことなく、高い信頼性を確保することができる。
【0047】
尚、
図3では、4つの発光領域R1~R4を備える光源11Aを例に挙げたが、光源11Aに設けられる発光領域の数は少なくとも2つであればよい。また、
図3では、1つの光源11Aと1本の光ファイバ13とを備える構成を示したが、第2実施形態と同様に、複数の光源11Aと複数本の光ファイバ13とを備える構成であってもよい。また、光源11Aと光ファイバ13とが1対1で対応づけられた構成であっても、光源11Aと光ファイバ13とが複数対1で対応づけられた構成であってもよい。
【0048】
〔第4実施形態〕
図4は、本発明の第4実施形態による光ファイバ給電システムの要部構成を示すブロック図である。尚、
図4においては、
図1に示す構成と同様の構成については同一の符号を付してある。
図4に示す通り、本実施形態の光ファイバ給電システム4は、
図1に示す光ファイバ給電システム1に試験器20を追加した構成である。このような光ファイバ給電システム4は、光ファイバ13の健全性を確認しながら給電を行えるようにしたものである。
【0049】
試験器20は、光ファイバ13の一端側T1に試験光を入力させ、光ファイバ13の一端側T1から出力される光に基づいて、光ファイバ13の試験を行うものである。このような試験器20として、例えば、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer:光時間領域反射率計)を用いることができる。OTDRは、光ファイバ13の一端側T1に試験光としてのパルス光を入力させ、光ファイバ13の一端側T1から出力される後方散乱光に基づいて光ファイバ13の長手方向における損失の分布等を測定する装置である。
【0050】
試験器20から出力される試験光は、光源11から出力される光とは異なる波長の光である。ここで、試験器20から出力される試験光は、光源11から出力される光よりも長い波長の光であることが望ましい。これは、光ファイバ13の曲げ損失は、波長が長くなるほど大きくなるため、波長が長い試験光を用いることで、光ファイバ13の曲げの検出感度を高めることができるためである。
【0051】
図5は、本発明の第4実施形態で用いられる光ファイバの断面図である。本実施形態では、光ファイバ13として、
図5(a)に示すマルチコアファイバ、又は、
図5(b)に示すダブルクラッドファイバを用いることができる。
【0052】
図5(a)に示す通り、マルチコアファイバは、中心コアC1、複数の外周コアC2、及びクラッドCLを備える。中心コアC1は、マルチコアファイバの中心に、マルチコアファイバの中心軸に対して平行に形成されたコアである。外周コアC2は、中心コアC1に対して平行に、中心コアC1の周囲を取り巻くように形成されたコアである。クラッドCLは、中心コアC1及び外周コアC2の周囲を覆い、外径形状が円柱形状である共通のクラッドである。
【0053】
試験器20から出力される試験光は、マルチコアファイバに設けられた中心コアC1及び複数の外周コアC2のうちの何れか1つのコアに入力される。また、試験器20には、試験光が入力されるコアで生ずる後方散乱光が入力される。試験器20は、入力される後方散乱光に基づいて光ファイバ13の長手方向における損失の分布等を測定する。尚、マルチコアファイバに設けられた中心コアC1及び複数の外周コアC2のうち、試験光が入力されないコアには、光源11から出力される光が入力される。
【0054】
図5(b)に示す通り、ダブルクラッドファイバは、コアC、第1クラッドCL1、及び第2クラッドCL2を備える。コアCは、ダブルクラッドファイバの中心に、ダブルクラッドファイバの中心軸に対して平行に形成されたコアである。第1クラッドCL1は、コアCを覆うように形成された円筒状のクラッドであり、第2クラッドCL2は、第1クラッドCL1を覆うように形成された円筒状のクラッドである。
【0055】
試験器20から出力される試験光は、ダブルクラッドファイバに設けられたコアCに入力される。また、試験器20には、コアCで生ずる後方散乱光が入力される。試験器20は、入力される後方散乱光に基づいて光ファイバ13の長手方向における損失の分布等を測定する。尚、ダブルクラッドファイバに設けられた第1クラッドCL1には、光源11から出力される光が入力される。
【0056】
本実施形態の光ファイバ給電システム4は、試験器20の試験結果(測定結果)に応じて、光源11を制御する制御装置(図示省略)を備える。この制御装置は、例えば、試験器20によって異常損失が検出された場合には、光源11に供給する電力を停止して、光源11の発光を停止させる制御を行う。このような制御を行うことで、例えば、光ファイバ13の曲げや断線等の異常が生じた場合の安全性を確保することができる。
【0057】
以上の通り、本実施形態の光ファイバ給電システム4は、複数の光源11と、複数の光源11から出力される光が一端側T1に入力される1本の光ファイバ13と、光ファイバ13の他端側T2から出力される光が入力される光電変換器14と、を備える構成である。つまり、本実施形態の光ファイバ給電システム4は、第1実施形態の光ファイバ給電システム1と同様に、故障しやすい光源11を冗長化し、故障しにくい光ファイバ13及び光電変換器14を複数の光源11で共用する構成である。これにより、本実施形態の光ファイバ給電システム1は、大幅なコストの上昇及び構成の複雑化を招くことなく、高い信頼性を確保することができる。
【0058】
また、本実施形態の光ファイバ給電システム4は、光ファイバ13の一端側T1に試験光を入力させ、光ファイバ13の一端側T1から出力される後方散乱光に基づいて光ファイバ13の試験を行う試験器20を備える構成である。これにより、光ファイバ13の健全性を確認しながら給電を行うことができる。また、試験器20で光ファイバ13に異常が検出された場合には、光源11の発光を停止させることができるため、光ファイバ13の曲げや断線等の異常が生じた場合の安全性を確保することができる。
【0059】
〔第5実施形態〕
図6は、本発明の第5実施形態による光ファイバ給電システムの要部構成を示すブロック図である。尚、
図4においては、
図4に示す構成と同様の構成については同一の符号を付してある。
図6に示す通り、本実施形態の光ファイバ給電システム5は、
図4に示す光ファイバ給電システム4の試験器20に替えて試験器30を設けた構成である。このような光ファイバ給電システム5は、
図4に示す光ファイバ給電システム4と同様に、光ファイバ13の健全性を確認しながら給電を行えるようにしたものである。
【0060】
試験器30は、試験器20と同様に、光ファイバ13の一端側T1に試験光を入力させ、光ファイバ13の一端側T1から出力される光に基づいて、光ファイバ13の試験を行うものである。但し、試験器30は、光ファイバ13で生じた後方散乱光ではなく、光ファイバ13の他端側T2において生じた反射光(試験光の反射光)に基づいて光ファイバ13の試験を行う。具体的に、上記の反射光は、光ファイバ13の他端側T2における端面でのフレネル反射により生じた反射光である。
【0061】
試験器30は、光源31、光サーキュレータ32、光バンドパスフィルタ(OPBF:Optical Band-Pass Filter)33、及び計測器34を備える。光源31は、光ファイバ13の一端側T1に入力させる試験光を出力する。尚、光源31から出力される試験光は、光源11から出力される光とは異なる波長の光である。ここで、光源31から出力される試験光は、第4実施形態と同様に、光源11から出力される光よりも長い波長の光であることが望ましい。
【0062】
光サーキュレータ32は、光源31から出力される試験光を光バンドパスフィルタ33に導き、光バンドパスフィルタ33から出力される反射光を計測器34に導く。光バンドパスフィルタ33は、光源31から出力される試験光及びその反射光を透過させ、試験光及びその反射光とは異なる波長の光を遮断する。計測器34は、入力される反射光に基づいて、光ファイバ13の損失を計測する。
【0063】
尚、本実施形態においても、第4実施形態と同様に、光ファイバ13として、
図5(a)に示すマルチコアファイバ、又は、
図5(b)に示すダブルクラッドファイバを用いることができる。つまり、試験器30から出力される試験光は、マルチコアファイバに設けられた中心コアC1及び複数の外周コアC2のうちの何れか1つのコア、或いは、ダブルクラッドファイバに設けられたコアCに入力される。試験器30には、光ファイバ13の他端側T2における端面でのフレネル反射により生じた反射光が入力される。試験器30は、入力される反射光に基づいて光ファイバ13の損失を測定する。
【0064】
図7は、本発明の第5実施形態による光ファイバ給電システムの変形例を示すブロック図である。尚、
図7においては、
図6に示す構成と同様の構成については同一の符号を付してある。
図7に示す通り、本変形例では、光ファイバ13に替えて光ファイバ13Aが設けられている。光ファイバ13Aは、光ファイバ13とは、他端側T2にFBG(Fiber Bragg Grating:ファイバ・ブラッグ・グレーティング)40が形成されている点が異なる。
【0065】
図6に示す光ファイバ給電システム5は、光ファイバ13の他端側T2における端面でのフレネル反射により生じた反射光に基づいて、光ファイバ13の損失を計測するものであった。これに対し、
図7に示す光ファイバ給電システム5は、光ファイバ13の他端側T2に形成されたFBG40でのブラッグ反射により生じた反射光に基づいて、光ファイバ13の損失を計測するものである。試験光に対する反射率は、光ファイバ13の端面よりも光ファイバ13Aに形成されたFBG40の方が高いため、より高い精度で損失を測定することができる。
【0066】
図6,
図7に示す光ファイバ給電システム5は何れも、試験器30の試験結果(計測結果)に応じて、光源11を制御する制御装置(図示省略)を備える。この制御装置は、例えば、試験器30によって異常損失が検出された場合には、光源11に供給する電力を停止して、光源11の発光を停止させる制御を行う。このような制御を行うことで、例えば、光ファイバ13,13Aの曲げや断線等の異常が生じた場合の安全性を確保することができる。
【0067】
以上の通り、本実施形態及びその変形例に係る光ファイバ給電システム5は、複数の光源11と、複数の光源11から出力される光が一端側T1に入力される1本の光ファイバ13,13Aと、光ファイバ13,13Aの他端側T2から出力される光が入力される光電変換器14と、を備える構成である。つまり、本実施形態の光ファイバ給電システム5は、第1実施形態の光ファイバ給電システム1と同様に、故障しやすい光源11を冗長化し、故障しにくい光ファイバ13,13A及び光電変換器14を複数の光源11で共用する構成である。これにより、本実施形態の光ファイバ給電システム5は、大幅なコストの上昇及び構成の複雑化を招くことなく、高い信頼性を確保することができる。
【0068】
また、本実施形態及びその変形例に係る光ファイバ給電システム5は、光ファイバ13,13Aの一端側T1に試験光を入力させ、光ファイバ13,13Aの一端側T1から出力される反射光(試験光の反射光)に基づいて光ファイバ13,13Aの試験を行う試験器30を備える構成である。これにより、光ファイバ13,13Aの健全性を確認しながら給電を行うことができる。また、試験器30で光ファイバ13,13Aに異常が検出された場合には、光源11の発光を停止させることができるため、光ファイバ13,13Aの曲げや断線等の異常が生じた場合の安全性を確保することができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態による光ファイバ給電システムについて説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、電力を給電するために必要となる構成と、光ファイバ13,13Aの健全性を確認するために必要となる構成を中心に説明した。しかしながら、これらの構成に加えて、光ファイバ13,13Aを介して給電される電力によって動作し、光ファイバ13,13Aを介して通信を行う構成が設けられていてもよい。つまり、光ファイバ給電システムとともにセンサシステム又は無線通信システムが構築されていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1~5 光ファイバ給電システム
11 光源
12 コンバイナ
13,13A 光ファイバ
14 光電変換器
15 集光光学系
20,30 試験器
40 FBG
C コア
C1 中心コア
C2 外周コア
R1~R4 発光領域
T1 一端側
T2 他端側