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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015186
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/741 20150101AFI20240125BHJP
   A61K 31/702 20060101ALI20240125BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240125BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240125BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20240125BHJP
【FI】
A61K35/741
A61K31/702
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61P3/04
A23L33/135
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023204937
(22)【出願日】2023-12-04
(62)【分割の表示】P 2019133853の分割
【原出願日】2019-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】若林 潤
(72)【発明者】
【氏名】木村 勝紀
(57)【要約】
【課題】プロピオン酸菌またはオリゴ糖を含んでなる組成物を提供する。
【解決手段】プロピオン酸菌またはオリゴ糖を含んでなる組成物を、対象に摂取させることにより体重増加を抑制することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピオン酸菌を含んでなる、組成物。
【請求項2】
オリゴ糖を更に含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
オリゴ糖がフラクトオリゴ糖である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
プロピオン酸菌が、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
プロピオン酸菌が、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ ET-3株である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
食品組成物または医薬組成物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
抗肥満用である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
プロピオン酸産生促進用である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
腸内のプロピオン酸産生促進用である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物の有効量を、対象に摂取させることを含んでなる、肥満症の予防および/または治療方法。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物の有効量を、対象に摂取させることを含んでなる、プロピオン酸産生促進方法。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物の有効量を、対象に摂取させることを含んでなる、腸内のプロピオン酸産生促進方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピオン酸菌またはオリゴ糖を含んでなる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本を含めた先進国の人々の多くが、過度な食事や高カロリー食による過剰エネルギー摂取の結果、肥満や糖尿病となり大きな社会問題となっている。腸内細菌叢が宿主のエネルギー調節や栄養の吸収などに関与し、肥満や糖尿病などの病態に影響することが明らかとなってきている(非特許文献1参照)。腸内細菌の主要な代謝産物である短鎖脂肪酸(Short Chain fatty acid:SCFA)は、宿主のエネルギーとなるだけでなく、腸管上皮細胞などに発現しているレセプターを介して、宿主のエネルギー代謝の調節に寄与している。主に結腸に発現しているSCFAレセプターのGPR41およびGPR43は、SCFAが作用することにより、食欲抑制ホルモンであるPYY(peptide YY)や、インスリン感受性を向上させるGLP-1(glucagon-like peptide 1)の産生を亢進する。加えて、宿主のエネルギー消費を上昇させる働きおよび脂肪細胞の肥大化を抑制する働きも持っている(非特許文献2参照)。作用するSCFAのなかでも、プロピオン酸はGPR41およびGPR43の両方に作用することが知られている(非特許文献3参照)。
【0003】
しかし、プロピオン酸を経口で摂取しても、そのほとんどは小腸で吸収される(非特許文献4参照)ことから、結腸の上皮細胞に発現しているレセプターに作用することは難しい。さらに、プロピオン酸を、例えば結腸で多量に産生させる効果を持つプロバイオティクス、プレバイオティクスあるいはシンバイオティクスなどはこれまで明らかとなっていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】木村郁夫 実験医学 Vol.32 No.5(増刊) 2014
【非特許文献2】宮本潤基 他 The Lipid Vol.27 No.2 2016-4
【非特許文献3】Andrew J.Brown et al, The American society for biochemistry and molecular biology Vol.278 No.13 p11312-11319 2003
【非特許文献4】T.Polyviou et al, Aliment Pharmacol Ther 2016; 44:662-672
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、プロピオン酸菌またはオリゴ糖を含んでなる組成物を対象に摂取させることにより、体重増加を抑制できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0006】
従って、本発明は、プロピオン酸菌またはオリゴ糖を含んでなる組成物を開示する。
【0007】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)プロピオン酸菌を含んでなる、組成物。
(2)オリゴ糖を更に含んでなる、(1)に記載の組成物。
(3)オリゴ糖がフラクトオリゴ糖である、(2)に記載の組成物。
(4)プロピオン酸菌が、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)である、(1)~(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)プロピオン酸菌が、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ ET-3株である、(1)~(3)のいずれかに記載の組成物。
(6)食品組成物または医薬組成物である、(1)~(5)のいずれかに記載の組成物。(7)抗肥満用である、(1)~(6)のいずれかに記載の組成物。
(8)プロピオン酸産生促進用である、(1)~(6)のいずれかに記載の組成物。
(9)腸内のプロピオン酸産生促進用である、(1)~(6)のいずれかに記載の組成物。
(10)(1)~(6)のいずれかに記載の組成物の有効量を、対象に摂取させることを含んでなる、肥満症の予防および/または治療方法。
(11)(1)~(6)のいずれかに記載の組成物の有効量を、対象に摂取させることを含んでなる、プロピオン酸産生促進方法。
(12)(1)~(6)のいずれかに記載の組成物の有効量を、対象に摂取させることを含んでなる、腸内のプロピオン酸産生促進方法。
(13)オリゴ糖を含んでなる、組成物。
(14)食品組成物または医薬組成物である、(13)に記載の組成物。
(15)抗肥満用である、(13)または(14)に記載の組成物。
(16)プロピオン酸産生促進用である、(13)または(14)に記載の組成物。
(17)腸内のプロピオン酸産生促進用である、(13)または(14)に記載の組成物。
(18)(13)または(14)に記載の組成物の有効量を、対象に摂取させることを含んでなる、肥満症の予防および/または治療方法。
(19)(13)または(14)に記載の組成物の有効量を、対象に摂取させることを含んでなる、プロピオン酸産生促進方法。
(20)(13)または(14)に記載の組成物の有効量を、対象に摂取させることを含んでなる、腸内のプロピオン酸産生促進方法。
【0008】
本発明の組成物を対象へ摂取させることにより、体重増加を抑制できる点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、通常食、コントロール、フラクトオリゴ糖(fructo-oligosaccharide、FOS)、プロピオン酸菌(P菌)、およびFOSとプロピオン酸菌(FOS+P菌)をマウスにそれぞれ摂取させた際の、マウスの経時的な(飼育日数(週))体重(g)の推移を表す。
図2図2は、通常食、コントロール、フラクトオリゴ糖(FOS)、プロピオン酸菌(P菌)、およびFOSとプロピオン酸菌(FOS+P菌)をマウスに摂取させた際の、初期体重に対する試験終了日のマウスの体重増加量(g)を表す。
図3図3は、通常食、コントロール、フラクトオリゴ糖(FOS)、プロピオン酸菌(P菌)、およびFOSとプロピオン酸菌(FOS+P菌)をマウスに摂取させた際の、試験終了日のマウスの精巣周囲脂肪重量(g)を表す。
図4図4は、通常食、コントロール、およびFOSとプロピオン酸菌(FOS+P菌)をマウスに摂取させた際の、試験終了日のマウスの糞便中のプロピオン酸濃度(mM)を表す。
【発明の具体的説明】
【0010】
[微生物の寄託]
プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒET-3株は平成13年8月9日付で、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託され、その後、国際寄託に移管され受託番号FERM BP-8115が付与されている。なお、Budapest Notification No. 282 (http://www.wipo.int/treaties/en/notifications/budapest/treaty_budapest_282.html)に記載されるとおり、独立行政法人製品評価技術基盤機構(IPOD、NITE)が独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(IPOD、AIST)から特許微生物寄託業務を承継したため、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒET-3株は、現在は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(IPOD、NITE)(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に受託番号:FERM BP-8115のもとで寄託されている。
【0011】
本発明の一つの態様によれば、本発明の組成物は、プロピオン酸菌を含んでなるものである。本発明の組成物に用いられるプロピオン酸菌は、生菌体であっても、死菌体であってもいずれであってもよいが、生菌体であることが好ましい。本発明で用いることができるプロピオン酸菌は、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属、アシディプピオニバクテリウム(Acidipropionibacterium)属、プロピオニシモナス(Propionicimonas)属、プロピオニフェラックス(Propioniferax)属、プロピオニミクロビウム(Propionimicrobium)属、プロピオニビブリオ(Propionivibrio)属などがあり、特に制限されないが、プロピオニバクテリウム属に属する菌が好ましい。プロピオニバクテリウム属の菌としては、例えば、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)、プロピオニバクテリウム・トエニー(Propionibacterium thoenii)、プロピオニバクテリウム・ジェンセニー(Propionibacterium jensenii)、プロピオニバクテリウム・アビダム(Propionibacterium avidum)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、プロピオニバクテリウム・リンホフィラム(Propionibacterium lymphophilum)、プロピオニバクテリウム・グラニュロサム(Propionibacterium granulosam)などのプロピオン酸菌が挙げられる。このなかでもプロピオニバクテリウム・フロイデンライヒがより好ましく、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ IFO12424、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ ATCC6207、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒET-3株(FERM BP-8115)がより好ましく、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒET-3株(FERM BP-8115)が特に好ましい。
【0012】
本発明の組成物中に含まれるプロピオン酸菌の菌数は、特に限定されるものではないが、好ましくは1×10~1×1012cfu/mLであり、より好ましくは1×10~1×1011cfu/mLであり、さらに好ましくは1×10~1×1010cfu/mLであり、特に好ましくは5×10~5×10cfu/mLである。本発明の組成物中に含まれるプロピオン酸菌の菌数を、5×10~5×10cfu/mLとすることにより、体重増加をより抑制することができる。
【0013】
本発明の一つの好ましい態様によれば、本発明の組成物は、プロピオン酸菌に加えて、オリゴ糖を更に含むことができる。オリゴ糖とは、ブドウ糖や果糖などの単糖が2~10個程度結合したものであれば特に限定されるものではないが、本発明の組成物に用いられるオリゴ糖としては、好ましくは、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオリゴ糖、ラクトスクロース、フコシルラクトース、またはニゲロオリゴ糖等であり、より好ましくは、フラクトオリゴ糖であり、これらを1種もしくは2種以上用いてもよい。ここで、フラクトオリゴ糖とは、ショ糖のフラクトース残基に1~3分子のフラクトースが結合した糖の混合物であり、例えば、1-ケストースが挙げられ、市販品として、株式会社明治フードマテリア製のメイオリゴ(商標)Pを用いてもよい。また、プロピオン酸菌とオリゴ糖とは、同一の組成物中に含まれなくても本発明の効果を奏することから、別々に対象に投与してもよいことから、プロピオン酸菌を含む組成物と、オリゴ糖を含む組成物とを含むキットのような態様であってもよい。
【0014】
本発明の組成物にオリゴ糖が含まれる場合には、本発明の組成物中のオリゴ糖の含有量は、特に限定されるものではないが、2~8質量%であることが好ましく、3~7質量%であることがより好ましく、4~6質量%であることがさらに好ましい。
【0015】
プロピオン酸菌は優れた体重増加抑制効果を有するため、日常摂取する食品や、サプリメントとして摂取する食品に含有させて提供することもできる。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、プロピオン酸菌を含んでなる食品組成物が提供される。この食品組成物はプロピオン酸菌を含有させる以外は、当該食品の通常の製造手順に従って製造することができる。ここで、プロピオン酸菌を含有させる食品は、プロピオン酸菌を含有できる食品であればどのような形態のものであってもよく、溶液、懸濁液、乳濁液、粉末、ペースト、半固体成形物、固体成形物など、経口摂取可能な形態であればよく特に限定されず、例えば、即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・みそ汁類、フリーズドライ食品などの即席食品類;清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、アルコール飲料などの飲料類;パン、パスタ、麺、ケーキミックス、パン粉などの小麦粉製品;飴、キャラメル、チューイングガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、バー、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、ムース、デザート菓子などの菓子類;ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調理ミックス、たれ類、ドレッシング類、つゆ類、カレー・シチューの素類などの調味料;加工油脂、バター、マーガリン、マヨネーズなどの油脂類;乳飲料、乳性飲料、発酵乳、チーズ類、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、乳性飲料、チーズ類、アイスクリーム類、クリーム類、調製粉乳、液体ミルク、固形ミルクなどの乳製品;農産缶詰、ジャム・マーマレード類、シリアルなどの農産加工品;冷凍食品、流動食などが挙げられる。
【0016】
プロピオン酸菌を本発明の食品組成物に含有させる場合には、プロピオン酸菌をそのまま食品に含有させることで調製することができ、該食品組成物はプロピオン酸菌を有効量含有した食品である。ここで、プロピオン酸菌を「有効量含有した」とは、個々の食品において通常喫食される量を摂取した場合に所定の範囲でプロピオン酸菌が摂取されるような含有量をいう。なお、プロピオン酸菌そのものあるいはそれを含む組成物を、摂取者において食品(例えば、飲料やヨーグルト)に添加し食品組成物とするような態様も本発明の範囲に含まれるものとする。
【0017】
本発明の別の好ましい態様によれば、プロピオン酸菌を含んでなる医薬組成物が提供される。ここで、医薬組成物とは、製剤化のために許容されうる添加剤を併用して、常法に従って、経口製剤または非経口製剤として調製したものである。医薬組成物が経口製剤の場合には、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、徐放剤などの固形製剤、溶液、懸濁液、乳濁液などの液状製剤の形態をとることができる。また、医薬組成物が非経口製剤の場合には、注射剤や座剤の形態をとることができる。なお、患者への摂取(投与)の簡易性の点からは、医薬組成物では、経口製剤であることが好ましい。ここで、製剤化のために許容されうる添加剤には、例えば、賦形剤、安定剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、滑沢剤、甘味料、着色料、香料、緩衝剤、酸化防止剤、pH調整剤などが挙げられる。本発明の医薬組成物は、体重の増加に起因する疾病や、腸内のプロピオン酸濃度の低下に起因する疾病などの予防や治療に用いることができ、例えば、肥満症、糖尿病、高脂血症、または高コレステロール血症の予防および/または治療に用いることができる。
【0018】
本発明のプロピオン酸菌を含んでなる組成物を1回分の摂取量のプロピオン酸菌を含む組成物として提供する場合には、1回分の有効摂取量を摂取できるように該組成物を単位包装形態で提供することが望ましい。包装形態で提供する場合、1回分の有効摂取量が摂取できるように摂取量に関する記載が包装になされているか、または該記載がなされた文書を一緒に提供することが望ましい。また、本発明のプロピオン酸菌を含んでなる組成物は継続摂取することで、より体重抑制効果等を発揮することができる。例えば、1日分の有効摂取量を複数包装で提供する場合には、摂取の便宜上、1日分の有効摂取量の複数包装をセットで提供することもできる。
【0019】
本発明のプロピオン酸菌を含んでなる組成物を提供するための包装形態は一定量を規定する形態であれば特に限定されず、例えば、包装紙、包装シート、袋、ソフトバック、紙容器、缶、ボトル、カプセル、プラスチックケースなどの収容可能な容器などが挙げられる。
【0020】
本発明のプロピオン酸菌を含んでなる組成物は、摂取者自身が体感に応じて摂取量を決め摂取することができる。従って、本発明のプロピオン酸菌を含んでなる組成物は、好ましくは、摂取者の好みに応じて摂取量を調整できる形態、すなわち、複数回摂取に適した形態で提供することができ、このような形態としては、例えば、タブレット、粉末、ガム、グミ、キャンディが挙げられる。また複数回摂取に適した包装形態としては、プラスチックケース、缶、ボトル、包装紙などが挙げられる
【0021】
本発明のプロピオン酸菌を含んでなる組成物はその効果をよりよく発揮させるために、3日以上継続的に摂取させることが好ましく、1週間以上継続的に摂取させることがより好ましく、投与および摂取期間はより好ましくは1~10週間、特に好ましくは2~9週間、さらに好ましくは4~8週間である。ここで、「継続的に」とは毎日決められた量の摂取を続けることを意味する。本発明のプロピオン酸菌を含んでなる組成物を包装形態で提供する場合には、継続的摂取のために一定期間(例えば、1週間)の有効摂取量をセットで提供してもよい。
【0022】
本発明の好ましい態様によれば、プロピオン酸菌を含んでなる抗肥満用組成物が提供される。ここで、「抗肥満」とは体重の増加が抑制されること、または体重が減少することなどを意味する。本発明の抗肥満用組成物は抗肥満剤であってもよく、この抗肥満剤はプロピオン酸菌からなるものであってもよい。
【0023】
本発明の好ましい態様によれば、プロピオン酸菌を含んでなるプロピオン酸産生促進用組成物が提供される。本発明のより好ましい態様によれば、プロピオン酸菌を含んでなる腸内(好ましくは、結腸内)のプロピオン酸産生促進用組成物が提供される。プロピオン酸の産生が促進されていることは、例えば、腸内のプロピオン酸濃度を直接測定してもよいが、糞便中のプロピオン酸濃度を測定することにより、間接的に腸内のプロピオン酸濃度の高低を測定することができる。
【0024】
本発明の好ましい態様によれば、本発明のプロピオン酸菌を含んでなる組成物の有効量を、対象に摂取させることを含んでなる肥満症の予防および/または治療方法が提供される。ここで、対象とは、ヒト以外の動物(馬、牛などの家畜、犬、猫などの愛玩動物、動物園などで飼育されている鑑賞動物など)であってもよいが、ヒトであることが好ましい。また、本発明のプロピオン酸菌を含んでなる組成物の有効量を摂取させる対象は、体重の増加を抑制する必要がある対象、または体重を減少させる必要がある対象であることが好ましい。また、本発明の好ましい別の態様によれば、本発明のプロピオン酸菌を含んでなる組成物の有効量を、対象に摂取させることを含んでなる肥満症の予防および/または治療方法(但し、ヒトに対する医療行為を除く)が提供される。医師等の処方を必要として、ヒトに対して医薬品を摂取させる(投与する)行為などを意味する。
【0025】
本発明の好ましい態様によれば、本発明のプロピオン酸菌を含んでなる組成物の有効量を、対象に摂取させることを含んでなる、プロピオン酸産生促進方法が提供される。本発明のより好ましい態様によれば、本発明のプロピオン酸菌を含んでなる組成物の有効量を、対象に摂取させることを含んでなる、腸内のプロピオン酸産生促進方法が提供される。本発明の好ましい別の態様によれば、本発明のプロピオン酸菌を含んでなる組成物の有効量を、対象に摂取させることを含んでなる、プロピオン酸産生促進方法(但し、ヒトに対する医療行為を除く)が提供される。本発明のより好ましい別の態様によれば、本発明のプロピオン酸菌を含んでなる組成物の有効量を、対象に摂取させることを含んでなる、腸内のプロピオン酸産生促進方法(但し、ヒトに対する医療行為を除く)が提供される。ここで、「ヒトに対する医療行為」とは、上記と同様の意味で用いられる。
【0026】
本発明の別の態様によれば、オリゴ糖(好ましくは、フラクトオリゴ糖)を含んでなる組成物が提供される。ここで、本発明のオリゴ糖を含んでなる組成物中のオリゴ糖等は、上記の本発明のプロピオン酸菌を含んでなる組成物に含まれていてもよいオリゴ糖等と同じであってもよい。また、本発明の好ましい態様によれば、オリゴ糖(好ましくは、フラクトオリゴ糖)を含んでなる食品組成物または医薬組成物が提供される。ここで、本発明のオリゴ糖(好ましくは、フラクトオリゴ糖)を含んでなる食品組成物または医薬組成物は、上記の本発明のプロピオン酸菌を含んでなる食品組成物または医薬組成物と同様であってもよく、単位包装形態等も同様であってもよい。
【0027】
本発明の好ましい態様によれば、オリゴ糖を含んでなる抗肥満用組成物が提供される。本発明の別の好ましい態様によれば、オリゴ糖を含んでなるプロピオン酸産生促進用(好ましくは、腸内のプロピオン酸産生促進用)組成物が提供される。
【0028】
本発明の別の態様によれば、本発明のオリゴ糖を含んでなる組成物の有効量を、対象に摂取させることを含んでなる肥満症の予防および/または治療方法が提供される。ここで、対象とは上記と同じであってもよい。また、本発明のオリゴ糖を含んでなる組成物の有効量等は、本発明のプロピオン酸菌を含んでなる組成物の有効量等と同様であってもよい。
【0029】
本発明の別の態様によれば、本発明のオリゴ糖を含んでなる組成物の有効量を、対象に摂取させることを含んでなるプロピオン酸産生促進方法(好ましくは、腸内のプロピオン酸産生促進方法)が提供される。
【0030】
本発明の別の態様によれば、肥満症の予防および/または治療のための、本発明の組成物の使用が提供される。
【0031】
本発明の別の態様によれば、プロピオン酸の産生を促進するための、本発明の組成物の使用が提供される。本発明の別の好ましい態様によれば、腸内のプロピオン酸の産生を促進するための、本発明の組成物の使用が提供される。
【0032】
本発明の別の態様によれば、抗肥満用組成物を製造するための、プロピオン酸菌の使用が提供される。
【0033】
本発明の別の態様によれば、抗肥満用組成物を製造するための、オリゴ糖の使用が提供される。
【0034】
本発明の別の態様によれば、プロピオン酸産生促進用組成物を製造するための、プロピオン酸菌の使用が提供される。本発明の別の好ましい態様によれば、腸内のプロピオン酸産生促進用組成物を製造するための、プロピオン酸菌の使用が提供される。
【0035】
本発明の別の態様によれば、プロピオン酸産生促進用組成物を製造するための、オリゴ糖の使用が提供される。本発明の別の好ましい態様によれば、腸内のプロピオン酸産生促進用組成物を製造するための、オリゴ糖の使用が提供される。
【0036】
本発明の肥満症の治療および/または予防方法等に用いられるプロピオン酸菌や、オリゴ糖などは、上記の本発明の組成物に含まれるプロピオン酸菌や、オリゴ糖と同じであってもよい。
【実施例0037】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0038】
例1:プロピオン酸菌による体重増加抑制効果の確認
(1)試験方法
雄性で8週齢のC57BL/6Jマウスを5群に分け、通常食(AIN-93M)(オリエンタル酵母工業株式会社製)あるいは高脂肪食(HFD-60)(オリエンタル酵母工業株式会社製)を与えた。高脂肪食を与えた群には、フラクトオリゴ糖(以下、「FOS」とも記載する)、プロピオン酸菌(Propionibacterium freudenreichii ET-3株、受託番号:FERM BP-8115、以下、「P菌」とも記載する)、あるいはFOSおよびプロピオン酸菌(以下、「FOS+P菌」とも記載する)の両方を投与して8週間飼育した。なお、高脂肪食を与えるが、FOSおよびプロピオン酸菌を投与しない群をコントロール群とした。FOSにはメイオリゴ(商標)P(株式会社 明治フードマテリア製)を使用し、高脂肪食中に5質量%含有させて投与した。プロピオン酸菌は、GAMブイヨン(日水製薬株式会社製)で賦活培養した菌液を生理食塩水で洗浄後、5×10cfu/mLに菌数を調整した。この菌液を、1日1回0.2mLの用量で、試験開始日から終了日まで毎日強制経口投与した。なお、プロピオン酸菌を投与していない群(通常食群、コントロール群およびFOS投与群)には、生理食塩水を1日1回0.2mLの用量で、試験開始日から終了日まで毎日強制経口投与した。試験期間中の体重、解剖時の精巣周囲脂肪重量および試験終了日に採取した糞便中のプロピオン酸濃度を測定し、体重増加量を試験開始時と終了時の体重から算出して評価に用いた。
【0039】
糞便中のプロピオン酸濃度は、糞便からプロピオン酸の抽出を行い、HPLCにより測定を実施した。具体的には、凍結保存しておいた糞便をPBSで懸濁し、内部標準としてクロトン酸を添加した。それを遠心分離後、上清に等量のクロロホルムに加え、撹拌し、再び遠心分離した。その上清を採取し、凍結融解を行い、遠心分離した。最後に、上清をフィルターろ過してHPLCでの測定に用いた。HPLCでの測定条件は、以下に記載する。
【0040】
[測定条件]
移動相:7.5mM p-トルエンスルホン酸
反応液:7.5mM p-トルエンスルホン酸+150μM EDTA・2NA+30mM Bis Tris
カラム:有機酸分析用カラム ICSep ICE ORH-801 6.5mm I.D.×300mm
Transgenomic社製(東京化成工業)→2本連結
ガードカラム:ICSep ICE ORH-801 4.0mm I.D.×20mmオーブン温度:55℃
流速:0.5ml/min
検出器:電気伝導度検出器 CDD-10A(島津製作所製)
注入量:10μ
【0041】
(2)試験結果
通常食群と高脂肪食を投与した4群との比較では、高脂肪食を投与した4群で明らかな体重増加が確認された(図1参照)。高脂肪食を投与した4つの群では、プロピオン酸菌投与群で6週目以降の体重がコントロール群より低値を示し、FOSとプロピオン酸菌の両方を投与した群においてこれらの群の中で最も低値を示した。また、体重増加量も、FOS投与群やプロピオン酸菌投与群でも低値を示しているものの、FOSおよびプロピオン酸菌を投与した群(FOS+P菌)で最もコントロール群との差が大きく、FOSとプロピオン酸菌とを同時に摂取することで、体重の増加が抑制されることが分かった(図2参照)。
【0042】
精巣周囲脂肪重量は、体重と同様に、FOS投与群やプロピオン酸菌投与群でも低値を示しているものの、FOSとプロピオン酸菌とを投与した群で最もコントロール群との差が大きく、FOSとプロピオン酸菌とを同時に摂取することで体脂肪の増加が抑制されることが分かった(図3参照)。
【0043】
糞便中のプロピオン酸濃度(mM)は、コントロール群と比較して、FOSとプロピオン酸菌とを両方投与した群では有意に高値であった(P<0.05、統計解析は対応のあるt検定による)(図4参照)。また、FOSまたはプロピオン酸菌を単独で投与した群においても、FOSとプロピオン酸菌を両方投与した群よりは低値であるものの、コントロール群と比較して、明らかに高値であった(データ示さず)。このことから、FOSおよびプロピオン酸菌の両方を摂取すること、FOSまたはプロピオン酸菌を単独で摂取することで、腸内におけるプロピオン酸産生が促進されることが分かり、特にFOSおよびプロピオン酸菌の両方を摂取することにより更に腸内におけるプロピオン酸産生が促進されることが分かった。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-12-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii) ET-3株とフラクトオリゴ糖を含んでなる、組成物。
【請求項2】
プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ ET-3株が生菌である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ ET-3株を、5×10 ~5×10 cfu/mLで含んでなる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
品組成物または医薬組成物である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物