(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151904
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】画像読取装置、画像形成装置および画像読取方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/191 20060101AFI20241018BHJP
H04N 1/04 20060101ALI20241018BHJP
H04N 1/028 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H04N1/191
H04N1/04 D
H04N1/028 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065709
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石倉 和貴
(72)【発明者】
【氏名】橋本 歩
【テーマコード(参考)】
5C051
5C072
【Fターム(参考)】
5C051AA01
5C051BA03
5C051BA04
5C051DA03
5C051DB01
5C051DB22
5C051DB23
5C051DB24
5C051DB29
5C051DC03
5C051DE03
5C051DE13
5C051DE17
5C051DE19
5C051EA01
5C051FA01
5C072AA01
5C072BA19
5C072BA20
5C072CA05
5C072CA07
5C072DA02
5C072DA04
5C072DA09
5C072EA05
5C072EA06
5C072FA07
5C072FB15
5C072LA02
5C072LA18
5C072MA01
5C072MB01
5C072NA01
5C072NA04
5C072QA10
5C072RA16
5C072UA02
5C072UA17
5C072UA18
5C072XA01
(57)【要約】
【課題】良好な画質の不可視画像を生成する。
【解決手段】被写体に可視光を照射する可視光源と、前記被写体に可視光を照射する不可視光源と、前記被写体からの反射光を受光し、可視画像を撮像する第1の撮像素子と、前記被写体からの反射光を受光し、不可視画像を撮像する第2の撮像素子と、前記第1の撮像素子で撮像した可視画像を用いて、前記第2の撮像素子で撮像した不可視画像に含まれる可視成分を除去する不可視成分補正部と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に可視光を照射する可視光源と、
前記被写体に可視光を照射する不可視光源と、
前記被写体からの反射光を受光し、可視画像を撮像する第1の撮像素子と、
前記被写体からの反射光を受光し、不可視画像を撮像する第2の撮像素子と、
前記第1の撮像素子で撮像した可視画像を用いて、前記第2の撮像素子で撮像した不可視画像に含まれる可視成分を除去する不可視成分補正部と、
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記不可視成分補正部は、前記第2の撮像素子で撮像した不可視画像に含まれる可視成分の除去に用いる、補正係数を生成する補正係数生成部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記補正係数生成部は、前記第2の撮像素子で撮像した不可視画像に含まれる可視成分の除去に先立ち、前記第1の撮像素子で撮像した可視画像と前記第2の撮像素子で撮像した不可視画像とを用いて、前記補正係数を生成する、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記補正係数生成部は、前記可視光源の単独点灯時における、前記第1の撮像素子で撮像した可視画像を用いる、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記補正係数生成部は、前記第1の撮像素子のRチャネル,Gチャネル,Bチャネルの平均値と不可視チャネルの値との割合から前記補正係数を算出する、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記補正係数生成部は、前記補正係数の生成時の前記第1の撮像素子および前記第2の撮像素子による撮像対象を、分光反射率が可視域から不可視域にかけてフラットな特性を持っている部材とする、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記補正係数生成部は、前記補正係数の生成時の前記第1の撮像素子および前記第2の撮像素子による撮像対象を、画像読取時のシェーディング補正に用いる基準白板とする、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記不可視光源は、前記被写体に近赤外光の光を照射する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置で読み取った画像を形成する画像形成部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
被写体に可視光を照射する可視光源と、
前記被写体に可視光を照射する不可視光源と、
前記被写体からの反射光を受光し、可視画像を撮像する第1の撮像素子と、
前記被写体からの反射光を受光し、不可視画像を撮像する第2の撮像素子と、
を備える画像読取装置における画像読取方法であって、
前記第1の撮像素子で撮像した可視画像を用いて、前記第2の撮像素子で撮像した不可視画像に含まれる可視成分を除去する不可視成分補正ステップを含む、
ことを特徴とする画像読取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置、画像形成装置および画像読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、赤外成分を含む原稿照明ランプを用いる画像読み取り装置において、可視画像を補正する目的で、赤外成分を含む可視画像から、赤外成分を取り除く技術が開示されている。
【0003】
一方で、不可視画像から不可視成分(赤外成分)をIRパスフィルターによって取り除く技術が既に知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、不可視画像から可視成分をIRパスフィルターによって取り除く場合、IRパスフィルターでは可視成分(赤外成分)を完全に除去しきれずに可視成分が僅かに残ることになり、良好な不可視画像を生成できないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、良好な画質の不可視画像を生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、被写体に可視光を照射する可視光源と、前記被写体に可視光を照射する不可視光源と、前記被写体からの反射光を受光し、可視画像を撮像する第1の撮像素子と、前記被写体からの反射光を受光し、不可視画像を撮像する第2の撮像素子と、前記第1の撮像素子で撮像した可視画像を用いて、前記第2の撮像素子で撮像した不可視画像に含まれる可視成分を除去する不可視成分補正部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、良好な画質の不可視画像を生成することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置の一例の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、画像読取部およびADFの構成を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は、画像読取部を構成する各部の電気的接続を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、イメージセンサの分光感度特性を示す図である。
【
図5】
図5は、IRパスフィルターを用いた可視成分の除去例を示す図である。
【
図6】
図6は、画像読取部の機能を示す機能ブロック図である。
【
図7】
図7は、画像読取部における処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、可視成分が混入した赤外成分から可視成分を除去する効果を示す図である。
【
図9】
図9は、第2の実施の形態にかかる画像読取部の機能を示す機能ブロック図である。
【
図10】
図10は、基準白板の分光反射率の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、画像読取部における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、画像読取装置、画像形成装置および画像読取方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置100の一例の構成を示す図である。
図1において、画像形成装置100は、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する一般に複合機(MFP:Multifunction Peripheral/Printer/Product)と称される画像形成装置である。
【0011】
画像形成装置100は、画像読取装置である画像読取部101およびADF(Automatic Document Feeder:自動原稿給送装置)102を有し、その下部に画像形成部103を有する。画像形成部103については、内部の構成を説明するために、外部カバーを外して内部の構成を示している。
【0012】
ADF102は、画像を読み取らせる原稿(被写体)を読取位置に位置づける原稿支持部である。ADF102は、載置台に載置した原稿を読取位置に自動搬送する。画像読取部101は、ADF102により搬送された原稿を所定の読取位置で読み取る。また、画像読取部101は、原稿を載置する原稿支持部であるコンタクトガラスを上面に有し、読取位置であるコンタクトガラス上の原稿を読み取る。具体的に画像読取部101は、内部に光源や、光学系や、CCD(Charge Coupled Device)等のイメージセンサを有するスキャナであり、光源で照明した原稿の反射光を、光学系を通じてイメージセンサで読み取る。
【0013】
画像形成部103は、画像読取部101で読み取った原稿画像を形成する。画像形成部103は、記録紙を手差しする手差ローラ104や、記録紙を供給する記録紙供給ユニット107を有する。記録紙供給ユニット107は、多段の記録紙給紙カセット107aから記録紙を繰り出す機構を有する。供給された記録紙は、レジストローラ108を介して二次転写ベルト112に送られる。
【0014】
二次転写ベルト112上を搬送する記録紙は、転写部114において中間転写ベルト113上のトナー画像が転写される。
【0015】
また、画像形成部103は、光書込装置109や、タンデム方式の作像ユニット(Y、M、C、K)105や、中間転写ベルト113や、上記二次転写ベルト112などを有する。作像ユニット105による作像プロセスにより、光書込装置109が書き込んだ画像を中間転写ベルト113上にトナー画像として形成する。
【0016】
具体的に、作像ユニット(Y、M、C、K)105は、4つの感光体ドラム(Y、M、C、K)を回転可能に有し、各感光体ドラムの周囲に、帯電ローラ、現像器、一次転写ローラ、クリーナーユニット、及び除電器を含む作像要素106をそれぞれ備える。各感光体ドラムにおいて作像要素106が機能し、感光体ドラム上の画像が各一次転写ローラにより中間転写ベルト113上に転写される。
【0017】
中間転写ベルト113は、各感光体ドラムと各一次転写ローラとの間のニップに、駆動ローラと従動ローラとにより張架して配置されている。中間転写ベルト113に一次転写されたトナー画像は、中間転写ベルト113の走行により、二次転写装置で二次転写ベルト112上の記録紙に二次転写される。その記録紙は、二次転写ベルト112の走行により、定着装置110に搬送され、記録紙上にトナー画像がカラー画像として定着する。その後、記録紙は、機外の排紙トレイへと排出される。なお、両面印刷の場合は、反転機構111により記録紙の表裏が反転されて、反転された記録紙が二次転写ベルト112上へと送られる。
【0018】
なお、画像形成部103は、上述したような電子写真方式によって画像を形成するものに限るものではなく、インクジェット方式によって画像を形成するものであってもよい。
【0019】
次に、画像読取部101およびADF102について説明する。
【0020】
図2は、画像読取部101およびADF102の構成を概略的に示す図である。
図2に示すように、画像読取部101は、本体11内に、撮像素子であるイメージセンサ9を備えたセンサ基板10、イメージセンサ9に結像するためのレンズユニット8、第1キャリッジ6及び第2キャリッジ7を有する。イメージセンサ9は、例えばCCDやCMOSイメージセンサなどである。第1キャリッジ6は、LED(Light Emitting Diode)である光源2及びミラー3を有する。第2キャリッジ7は、ミラー4,5を有する。
【0021】
また、画像読取部101は、上面にコンタクトガラス1及び基準部材である基準白板13を設けている。基準白板13は、主走査方向に長く形成されており、読み取り光学系等における主走査方向の読取濃度ムラなどを補正するためなどに用いる。また、画像読取部101は、ADF102により搬送された原稿を読みとるためのシートスルー読み取り用スリットであるコンタクトガラス14も備えている。
【0022】
ADF102は、コンタクトガラス1に対して開閉できるように、ヒンジ等を介して画像読取部101に連結される。
【0023】
ADF102は、複数枚の原稿からなる原稿束を載置可能な原稿載置台としての原稿トレイ15を備えている。また、ADF102は、原稿トレイ15に載置された原稿束から原稿を1枚ずつ分離してコンタクトガラス14へ向けて自動給送する給送ローラ16を含む分離・給送手段も備えている。
【0024】
さらに、ADF102は、背景板17をコンタクトガラス14に対向する位置に備えている。背景板17は、主走査方向の濃度が一様になるように構成されている。
【0025】
このように構成された画像形成装置100において、原稿12の画像面をスキャン(走査)して原稿12の画像を読み取るスキャンモード時には、画像読取部101は、第1キャリッジ6及び第2キャリッジ7を待機位置(ホームポジション)から副走査方向(A方向)に移動させながら光源2から光を上方に向けて照射する。このとき、コンタクトガラス1からイメージセンサ9までの光路長を一定に維持するために、第2キャリッジ7は第1キャリッジ6の1/2の速度で移動する。そして、第1キャリッジ6及び第2キャリッジ7は、原稿12からの反射光を、レンズユニット8を介してイメージセンサ9上に結像させる。そして、イメージセンサ9の光電変換により信号が出力され、後段の信号処理部によりデジタル信号に変換される。それによって、原稿12の画像が読み取られ、デジタルの画像が得られる。
【0026】
一方、原稿を自動給送して原稿の画像を読み取るシートスルーモード時には、画像読取部101は、第1キャリッジ6および第2キャリッジ7をコンタクトガラス14の下側へ移動する。その後、ADF102の原稿トレイ15に載置された原稿が給送ローラ16によって矢示B方向(副走査方向)へ自動給送され、画像読取部101は、コンタクトガラス14の位置において原稿に対して光源2から光を上方に向けて照射する。そして、第1キャリッジ6及び第2キャリッジ7は、原稿からの反射光を、レンズユニット8を介してイメージセンサ9上に結像させる。そして、イメージセンサ9の光電変換により信号が出力され、後段の信号処理部によりデジタル信号に変換される。それによって、ADF102によって搬送される原稿の画像が読み取られ、デジタルの画像が得られる。このようにして画像の読み取りが完了した原稿は、排出口に排出される。
【0027】
なお、画像読取部101は、電源ON時などのスキャンモード時又はシートスルーモード時の画像読み取り前に、光源2による照明により、基準白板13からの反射光を読取って基準を設定する。
【0028】
即ち、画像読取部101は、第1キャリッジ6を基準白板13の直下に移動させ、光源2を点灯させて基準白板13からの反射光をイメージセンサ9の上に結像させる。基準白板13からの反射光がイメージセンサ9でアナログ信号に変換され、後段の信号処理部によりデジタル信号に変換される。それによって、基準白板13が読み取られ、その読み取り結果(デジタル信号)に基づいて原稿の画像読み取り時のシェーディング補正が行われる。
【0029】
また、ADF102に搬送ベルトを備えている場合には、スキャンモードであっても、ADF102によって原稿をコンタクトガラス1上の読み取り位置に自動給送して、その原稿の画像を読み取ることができる。
【0030】
なお、本実施形態においては、読取部10は、対象物からの反射光を読み取るものとして説明しているが、これに限るものではなく、読取部10は、対象物からの透過光を読み取るものであってもよい。
【0031】
図3は、画像読取部101を構成する各部の電気的接続を示すブロック図である。
図3に示すように、画像読取部101は、光源2と、撮像装置21と、制御部23と、光源駆動部24と、操作表示部26と、を備えている。光源駆動部24は、光源2を駆動する。
【0032】
光源2は、主に可視(Red/Green/Blue)域の波長を持つ可視光を照射する可視光源2aと、近赤外(NIR)域の波長を持つ不可視光(近赤外光)を照射する不可視光源2bと、を備える。
【0033】
ここで、
図4はイメージセンサの分光感度特性を示す図である。
図4に示すように、一般的なシリコンのイメージセンサでは、近赤外領域(おおよそ750nm~1100nm付近)で感度を有している。したがって、近赤外領域(おおよそ750nm~1100nm付近)の光は、特殊な読取装置を用意する必要はなく、一般的な複合機に搭載されているスキャナのイメージセンサで撮像可能である。さらに、人体への悪影響もないため、危険性という面においても導入難易度は非常に低い。
【0034】
撮像装置21は、上述したように可視および不可視の波長域を撮像できるイメージセンサ9と、信号処理装置22と、を備えている。
【0035】
イメージセンサ9は、入射光に対してカラーフィルタ等を介して波長ごとに可視光(Red/Green/Blue)と不可視光(赤外光)に分解された光を受光する。イメージセンサ9は、主となる可視成分(Red/Green/Blue)および近赤外成分の電気信号に変換する第1の撮像素子である第1イメージセンサ(可視センサ)9aと、近赤外成分の電気信号に変換する第2の撮像素子である第2イメージセンサ(不可視センサ)9bと、を備える。
【0036】
ところで、第2イメージセンサ(不可視センサ)9bは、良好なIR成分の画像(赤外画像)を生成するために、可視成分(Red/Green/Blue)を、IRパスフィルターによって除去している。
【0037】
ここで、
図5はIRパスフィルターを用いた可視成分の除去例を示す図である。
図5に示すように、IRパスフィルターなどを用いたとしても、可視成分を完全に除去しきれずに可視成分が僅かに残ることになり、良好なIR成分の画像(赤外画像)を生成できないという問題がある。
【0038】
なお、本実施形態においては、不可視画像として近赤外(NIR)画像を用いる例について説明するが、不可視画像で使用する波長域は限定しない。
【0039】
制御部23は、光源駆動部24、イメージセンサ9、信号処理装置22、操作表示部26の各部を制御する。
【0040】
信号処理装置22は、詳細については後述するが、イメージセンサ9から出力された画像信号に対して各種の信号処理を実施する。
【0041】
操作表示部26は、ディスプレイ等のユーザが各種情報を確認するためのユーザインタフェースと、キーボード等のユーザが情報を入力するためのユーザインタフェースである。
【0042】
図6は、画像読取部101の機能を示す機能ブロック図である。
図6に示すように、画像読取部101の信号処理装置22は、不可視成分補正部221を備える。なお、信号処理装置22は、ハードウェア、ソフトウェアのどちらで実現されても良い。
【0043】
不可視成分補正部221は、概略的には、第1イメージセンサ(可視センサ)9aによって撮像されたR/G/B成分の画像(可視画像)と、第2イメージセンサ(不可視センサ)9bによって撮像されたIR成分の画像(赤外画像)から、IR成分の画像を補正する。
【0044】
第1イメージセンサ9aは、主に可視成分を取得するためのイメージセンサである。一方、第2イメージセンサ9bは、不可視成分を取得するためのイメージセンサである。第2イメージセンサ9bで読みとった読取データは、
図5で説明したように、可視成分が僅かに残った不可視画像(赤外画像)となる。不可視成分補正部221は、品質の高い不可視画像(赤外画像)を得るために、同時読取によって得られた、第1イメージセンサ(可視センサ)9aから出力された可視成分画像と第2イメージセンサ(不可視センサ)9bから出力された不可視画像(赤外画像)を利用して、第2イメージセンサ(不可視センサ)9bから出力された可視成分が僅かに残った不可視画像(赤外画像)から可視成分を除去する。
【0045】
続いて、画像読取部101における処理の流れについて詳述する。
【0046】
図7は、画像読取部101における処理の流れを示すフローチャートである。
図7に示すように、画像読取部101の制御部23は、光源駆動部24を介して、可視光源2aを駆動する(ステップS1)。同時に、画像読取部101の制御部23は、光源駆動部24を介して、不可視光源2bを駆動する(ステップS2)。これにより、可視光源2a及び不可視光源2bの同時点灯による可視光及び不可視光の反射光が、可視センサ9a及び不可視センサ9bに照射されることになる。
【0047】
次いで、画像読取部101の制御部23は、可視センサ9aを制御して、同時点灯された可視光源2aと不可視光源2bの反射光を読み取り、R/G/B成分の画像(可視画像)を撮像する(ステップS3)。同時に、画像読取部101の制御部23は、不可視センサ9bを制御して、同時点灯された可視光源2aと不可視光源2bの反射光を読み取り、IR成分の画像(赤外画像)を撮像する(ステップS4)。
【0048】
続いて、信号処理装置22の不可視成分補正部221は、可視センサ9aによって撮像されたR/G/B成分の画像(可視画像)と不可視センサ9bによって撮像されたIR成分の画像(赤外画像)とを利用して、不可視センサ9bから出力された可視成分が僅かに残った不可視画像(赤外画像)から可視成分を除去する、不可視成分(IR成分)の画像補正を実行する(ステップS5)。
【0049】
ここで、
図8は可視成分が混入した赤外成分から可視成分を除去する効果を示す図である。
図8においては、不可視光で読み取れる潜像が埋め込まれた絵を用いて説明する。
図8(a)は可視画像(可視光源の単独読み取り)を示し、
図8(b)は不可視画像(不可視光源の単独読み取り)の理想画像を示し、
図8(c)は不可視画像(可視光源+不可視光源の同時読み取り)の粗悪な画像を示し、
図8(d)は不可視画像(可視光源+不可視光源の同時読み取り)の補正後の良好な画像を示すものである。
【0050】
図8(c)に示すような従来の可視光源及び不可視光源の同時点灯による読み取りの場合、IRパスフィルターが可視成分を除去できないため、不可視画像に可視成分の絵が混ざり、
図8(b)の不可視画像に
図8(a)の可視画像が重なるような粗悪な画像が生成される。
【0051】
一方、信号処理装置22の不可視成分補正部221により可視成分が混入した赤外成分から可視成分を除去すると、
図8(d)に示すように、
図8(b)に示す理想状態に近い良好な画像を生成することができる。
【0052】
このように本実施形態によれば、同時読取した可視成分と赤外成分とを利用し、可視成分が混入した赤外成分から可視成分を除去することで、IRパスフィルターでも完全に除去しきれない可視成分を補正し、良好な画質の赤外画像を生成することができる。
【0053】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0054】
第2の実施の形態は、不可視成分補正部221に補正係数生成部を含む点が、第1の実施の形態と異なる。以下、第2の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0055】
図9は、第2の実施の形態にかかる画像読取部の機能を示す機能ブロック図である。
図9に示すように、不可視成分補正部221は、補正係数生成部221aと、補正演算部221bと、を備える。
【0056】
補正係数生成部221aは、第1の実施の形態で説明した不可視成分補正部221によって可視成分が混入した赤外成分から可視成分を除去する前処理として、可視光源2aの単独点灯時のRchとBchとGchの合成信号とNIRchの信号とから、補正係数を生成する。補正係数生成部221aは、生成した補正係数を、補正演算部221bに送る。
【0057】
補正演算部221bは、補正係数生成部221aから送られた補正係数を元に、可視成分が混入した赤外成分から可視成分を除去する補正演算を行う。
【0058】
以下において、補正係数生成部221aによって生成された補正係数を用いることにより、赤外信号及び可視信号の補正が可能になることについて説明する。
【0059】
画像読取部101の可視領域に感度を持つ可視センサ9aへの入力は、可視光と赤外光がある。一方、画像読取部101の不可視領域に感度を持つ不可視センサ9bへの入力も、可視光と赤外光がある。ここで、不可視センサ9bへ入る可視光は、不要な成分であり、画質の劣化要因である。
【0060】
不可視センサ9bへ入る可視光は、可視光源2aと不可視光源2bとを同時点灯時における可視センサ9aによるR/G/B成分の画像(可視画像)の読み取り結果と、可視光源2aの単独での点灯時における可視センサ9aによるR/G/B成分の画像(可視画像)の読み取り結果と、から計算することができる。なぜなら、可視光源2aの単独での点灯時における可視センサ9aによるR,G,BチャネルとNIRチャネルの読み取り結果から、可視光源2aからの光に対する可視成分と不可視成分との割合が分かるためである。
【0061】
すなわち、可視光源2a及び不可視光源2bを同時点灯時の可視センサ9aの読み取り結果を“RGB+NIR”とし、可視光源2a及び不可視光源2bを同時点灯時の不可視センサ9bの読み取り結果を“RGB’+NIR’”とした場合、補正係数k’をRGB’-k’(RGB)=0となる値とすることで、下記式により可視成分が混入した赤外成分から可視成分(RGB’)を除去することができる。ただし、減算の際に、k’NIR分の誤差は生じるため、完全な理想状態にはならないが、問題を改善することができる。
RGB’+NIR’-k’(RGB+NIR)=NIR’-k’(NIR)
【0062】
ここで、補正係数生成部221aによって生成される補正係数k’の計算の一例を以下に示す。なお、ref_NIR(x),ref_R(x),ref_G(x),ref_B(x)は、可視光源2aの単独点灯時のそれぞれのチャネルの読み取り結果を示す。
k’=(ref_NIR(x))/(average(ref_R(x)+ref_G(x)+ref_B(x)))
【0063】
また、補正演算部221bにおける除去演算の例を以下に示す。なお、input_NIR(x),input_R(x),input_G(x),input_B(x)は、可視光源2a及び不可視光源2bの同時点灯時のそれぞれのチャネルの読み取り結果を示す。average()は、平均の計算結果を示す。
output_N=input_N(x)-k’×average(input_R(x)+input_G(x)+input_B(x))
【0064】
上述のように、補正係数生成部221aが生成する補正係数k’は、可視センサ9aのRチャネル,Gチャネル,Bチャネルの平均値と不可視チャネルの値との割合から算出する。このように、R,G,Bチャネルの平均値を取ることで、補正係数を生成する際の特異な色ノイズの影響を防ぐことができる。
【0065】
以上より、不可視センサ9bへ入る可視光を減算で除去し、不要なRGB成分(可視成分)を除いた不可視画像(赤外画像)を生成することができる。
【0066】
ここで、
図10は基準白板13の分光反射率の一例を示す図である。
図10に示すように、基準白板13は、赤外領域でも高い分光反射率を有し、分光反射率が可視域~不可視域にかけてフラットな特性を持っていることが分かる。補正係数の生成時の撮像対象は、可視光源2aの単独点灯時の可視成分と不可視成分の割合を見たいため、特異な吸収性がない方が良い。したがって、基準白板13は、
図10に示すような特性を持つようにするとよい。このように基準白板13の読み取り結果を利用することで、安定した読み取り結果を得られ、補正係数の精度を高めることができる。
【0067】
続いて、画像読取部101における処理の流れについて詳述する。
【0068】
図11は、画像読取部101における処理の流れを示すフローチャートである。
図11に示すように、画像読取部101の制御部23は、光源駆動部24を介して、可視光源2aを駆動する(ステップS11)。なお、画像読取部101の制御部23は、不可視光源2bの駆動は行わない。
【0069】
次いで、画像読取部101の制御部23は、可視センサ9aを制御して、単独点灯された可視光源2aの反射光を読み取り、R/G/B成分の画像(可視画像)を撮像する(ステップS12)。同時に、画像読取部101の制御部23は、不可視センサ9bを制御して、単独点灯された可視光源2aの反射光を読み取り、IR成分の画像(赤外画像)を撮像する(ステップS13)。
【0070】
続いて、信号処理装置22の不可視成分補正部221(補正係数生成部221a)は、可視光源2aの単独点灯時のRchとBchとGchの合成信号とNIRchの信号とから補正係数を生成し、生成した補正係数を補正演算部221bに送る(ステップS14)。
【0071】
その後、第1の実施の形態で説明したように、信号処理装置22の不可視成分補正部221(補正演算部221b)は、補正係数生成部221aから送られた補正係数を元に、可視成分が混入した赤外成分(RGB’+NIR’)から可視成分(RGB’)を除去する補正演算を行う。
【0072】
このように本実施形態によれば、同時読取した可視成分と赤外成分とを利用し、可視成分が混入した赤外成分から可視成分を除去することで、IRパスフィルターでも完全に除去しきれない可視成分を補正し、良好な画質の不可視画像(例えば、赤外画像)を生成することができる。
【0073】
なお、上記各実施の形態では、本発明の画像形成装置を、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機に適用した例を挙げて説明するが、複写機、プリンタ、スキャナ装置、ファクシミリ装置等の画像形成装置であればいずれにも適用することができる。
【0074】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、各実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの各実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
2a 可視光源
2b 不可視光源
9a 第1の撮像素子
9b 第2の撮像素子
13 基準白板
100 画像形成装置
101 画像読取装置
103 画像形成部
221 不可視成分補正部
221a 補正係数生成部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】