(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024151959
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241018BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241018BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20241018BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
H01L21/78 B
H01L21/78 F
H01L21/304 631
B23K26/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065812
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 勇人
(72)【発明者】
【氏名】田中 敬人
【テーマコード(参考)】
4E168
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168CB07
4E168DA02
4E168DA24
4E168DA43
4E168EA06
4E168HA01
4E168JA12
5F057CA14
5F057DA11
5F057EC15
5F063BB02
5F063BB12
5F063CB07
5F063CB15
5F063CB24
5F063CB27
5F063DD28
5F063DG03
(57)【要約】
【課題】チップの熱ダメージを低減するとともにチップの抗折強度の低下を抑制可能なチップの製造方法を提供する。
【解決手段】表面側に複数のデバイスが形成されている被加工物のうち複数のデバイスのそれぞれの周囲に位置する第1被除去部と複数のデバイスよりも裏面側に位置する複数の第2被除去部とを除去することによってチップを製造するチップの製造方法であって、それぞれが第1被除去部に位置する複数の改質領域と、複数のデバイスと複数の第2被除去部との間に位置する複数の中間部のいずれかを通って複数の第2被除去部のいずれかに到達するようにそれぞれが複数の改質領域から伸展する複数のクラックと、を形成する内部加工ステップと、第1被除去部を除去する第1除去ステップと、複数の第2被除去部を研削して除去するとともに複数のクラックを境界としてそれぞれの裏面側周縁部を複数のチップから分離する第2除去ステップと、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に複数のデバイスが形成されている被加工物のうち該複数のデバイスのそれぞれの周囲に位置する第1被除去部と該複数のデバイスよりも裏面側に位置する複数の第2被除去部とを除去することによって、それぞれが該被加工物よりも薄い複数のチップを製造するチップの製造方法であって、
該被加工物を透過する波長のレーザービームを該第1被除去部に照射して、それぞれが該第1被除去部に位置する複数の改質領域と、該複数のデバイスと該複数の第2被除去部との間に位置する複数の中間部のいずれかを通って該複数の第2被除去部のいずれかに到達するようにそれぞれが該複数の改質領域から伸展する複数のクラックと、を形成する内部加工ステップと、
該内部加工ステップを実施した後に、該第1被除去部を除去する第1除去ステップと、
該第1除去ステップを実施した後に、該複数の第2被除去部を研削して除去するとともに該複数のクラックを境界としてそれぞれの裏面側周縁部を該複数のチップから分離する第2除去ステップと、
を備えるチップの製造方法。
【請求項2】
該内部加工ステップにおいては、複数の集光点を形成するように分岐された該レーザービームが該被加工物に照射され、
該複数の集光点は、該被加工物の厚さ方向及び該厚さ方向に直交する方向のそれぞれにおいて互いに異なる位置に形成される請求項1に記載のチップの製造方法。
【請求項3】
該内部加工ステップを実施する前、該内部加工ステップを実施した後かつ該第1除去ステップを実施する前、又は、該第1除去ステップを実施した後かつ該第2除去ステップを実施する前に、該複数の第2被除去部が露出されるように該複数のデバイスを支持基板に接合する接合ステップをさらに備える請求項1又は2に記載のチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面側に複数のデバイスが形成されている被加工物のうち複数のデバイスのそれぞれの周囲に位置する第1被除去部と複数のデバイスよりも裏面側に位置する複数の第2被除去部とを除去することによって、それぞれが被加工物よりも薄い複数のチップを製造するチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)等のデバイスのチップは、携帯電話及びパーソナルコンピュータ等の各種電子機器において不可欠の構成要素である。このチップは、例えば、表面側に複数のデバイスが形成されているウエーハ等の被加工物を複数のデバイスの境界に沿って分割することで製造される。
【0003】
また、多数のチップを含んで構成される各種電子機器の小型化等を目的として、被加工物及び/又はそれから製造される複数のチップは研削されることがある。例えば、チップは、被加工物の表面側のうち複数のデバイスのそれぞれの周囲に位置する部分に溝を形成した後、溝を境界として被加工物が分割されるまで、その裏面側を研削することによって製造されることがある。
【0004】
この場合、被加工物を分割することによって製造される複数のチップのそれぞれの裏面側も僅かに研削される。また、この研削に伴って、複数のチップのそれぞれの裏面側周縁部が欠けることがある。そして、チップの裏面側周縁部が欠けていると、チップの抗折強度が低下するおそれがある。
【0005】
この点を踏まえて、チップの裏面側が面取りされるように、その周縁部にレーザービームを照射することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。これにより、欠けが存在する裏面側周縁部がチップから除去されて、チップの抗折強度の低下を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、チップの裏面側周縁部にレーザービームが照射される場合には、チップに熱ダメージが残存するおそれがある。この点に鑑み、本発明の目的は、チップの熱ダメージを低減するとともにチップの抗折強度の低下を抑制可能なチップの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、表面側に複数のデバイスが形成されている被加工物のうち該複数のデバイスのそれぞれの周囲に位置する第1被除去部と該複数のデバイスよりも裏面側に位置する複数の第2被除去部とを除去することによって、それぞれが該被加工物よりも薄い複数のチップを製造するチップの製造方法であって、該被加工物を透過する波長のレーザービームを該第1被除去部に照射して、それぞれが該第1被除去部に位置する複数の改質領域と、該複数のデバイスと該複数の第2被除去部との間に位置する複数の中間部のいずれかを通って該複数の第2被除去部のいずれかに到達するようにそれぞれが該複数の改質領域から伸展する複数のクラックと、を形成する内部加工ステップと、該内部加工ステップを実施した後に、該第1被除去部を除去する第1除去ステップと、該第1除去ステップを実施した後に、該複数の第2被除去部を研削して除去するとともに該複数のクラックを境界としてそれぞれの裏面側周縁部を該複数のチップから分離する第2除去ステップと、を備えるチップの製造方法が提供される。
【0009】
また、該内部加工ステップにおいては、複数の集光点を形成するように分岐された該レーザービームが該被加工物に照射され、該複数の集光点は、該被加工物の厚さ方向及び該厚さ方向に直交する方向のそれぞれにおいて互いに異なる位置に形成されることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明のチップの製造方法は、該内部加工ステップを実施する前、該内部加工ステップを実施した後かつ該第1除去ステップを実施する前、又は、該第1除去ステップを実施した後かつ該第2除去ステップを実施する前に、該複数の第2被除去部が露出されるように該複数のデバイスを支持基板に接合する接合ステップをさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のチップの製造方法においては、被加工物のうち複数のデバイスのそれぞれの周囲に位置する第1被除去部にレーザービームが照射されるものの、複数のチップとして残存する部分にレーザービームが照射されることがない。そのため、この方法においては、その裏面側周縁部にレーザービームが照射されたチップと比較して、熱ダメージが低減されたチップを提供可能である。
【0012】
また、この方法においては、被加工物のうち複数のデバイスよりも裏面側に位置する複数の第2被除去部を研削して除去する際に、複数のデバイスと複数の第2被除去部との間に位置する複数の中間部のいずれかを通って複数の第2被除去部のいずれかに到達するようにそれぞれが複数の改質領域から伸展する複数のクラックを境界として複数のチップのそれぞれの裏面側周縁部が分離される。
【0013】
すなわち、この方法においては、研削に伴って複数のチップのそれぞれの裏面側周縁部が欠ける場合であっても、この欠けが存在する部分が除去される。そのため、この方法においては、その裏面側周縁部に欠けが存在するチップと比較して、抗折強度の低下が抑制されたチップを提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(A)は、複数のチップの製造に利用される被加工物の一例を模式的に示す斜視図であり、
図1(B)は、
図1(A)に示される被加工物を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、被加工物のうち第1被除去部と複数の第2被除去部とを除去することによって、それぞれが被加工物よりも薄い複数のチップを製造するチップの製造方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
【
図3】
図3(A)は、被加工物を含むフレームユニットの一例を模式的に示す斜視図であり、
図3(B)は、
図3(A)に示されるフレームユニットを模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、内部加工ステップの一例の様子を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4に示されるレーザービーム照射ユニット及びそれから照射されるレーザービームの一例を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、フレームユニットのレーザービームが照射されている箇所を模式的に示す部分拡大断面図である。
【
図7】
図7(A)は、表面から保護テープが剥がされた被加工物を含むフレームユニットを模式的に示す斜視図であり、
図7(B)は、
図7(A)に示されるフレームユニットを模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、第1除去ステップの一例の様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【
図9】
図9は、フレームユニットの溝が形成された箇所を模式的に示す部分拡大断面図である。
【
図10】
図10(A)は、それぞれの裏面からダイシングテープが剥がされ、かつ、それぞれの表面に保護テープが貼着された複数のチップを模式的に示す斜視図であり、
図10(B)は、
図10(A)に示される複数のチップを模式的に示す断面図である。
【
図11】
図11は、第2除去ステップの一例の様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【
図12】
図12は、それぞれの表面が保護テープに貼着された状態で薄化された複数のチップを模式的に示す断面図である。
【
図13】
図13は、第1除去ステップの別の例の様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【
図14】
図14は、フレームユニットの溝が形成された箇所を模式的に示す部分拡大断面図である。
【
図15】
図15は、被加工物のうち第1被除去部と複数の第2被除去部とを除去することによって、それぞれが被加工物よりも薄い複数のチップを製造するチップの製造方法の別の例を模式的に示すフローチャートである。
【
図16】
図16(A)は、接合ステップにおいて被加工物が支持基板に接合されることによって形成される積層体を模式的に示す断面図であり、
図16(B)は、予備研削ステップにおいて、その裏面側が研削された被加工物を含む積層体を模式的に示す断面図であり、
図16(C)は、内部加工ステップにおいて複数のクラックが形成された被加工物を含む積層体を模式的に示す断面図である。
【
図17】
図17は、第1除去ステップの別の例の様子を模式的に示す図である。
【
図18】
図18(A)は、積層体の溝が形成された箇所を模式的に示す部分拡大断面図であり、
図18(B)は、複数のチップを含む積層体を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1(A)は、複数のチップの製造に利用される被加工物の一例を模式的に示す斜視図であり、
図1(B)は、
図1(A)に示される被加工物を模式的に示す断面図である。
【0016】
図1(A)及び
図1(B)に示される被加工物11は、例えば、互いに概ね平行な表面11a及び裏面11bを含み、単結晶シリコン等の半導体材料を素材とする円板状のウエーハである。この被加工物11の側面には、その素材となる半導体材料の特定の結晶方位を示すためのノッチ11cが形成されている。
【0017】
また、被加工物11の表面11a側には、複数のデバイス13が形成されている。なお、複数のデバイス13は、マトリックス状に配置されている。すなわち、複数のデバイス13の境界は、格子状に延在する。そして、被加工物11を部分的に除去することによって、それぞれが被加工物11よりも薄い複数のチップが製造される。
【0018】
具体的には、被加工物11のうち複数のデバイス13のそれぞれの周囲に位置する第1被除去部11dと複数のデバイス13よりも裏面側に位置する複数の第2被除去部11eとを除去することによって複数のチップが製造される。
【0019】
第1被除去部11dは、複数のデバイス13の境界を含む部分であり、格子状に延在する。なお、第1被除去部11dに含まれる複数の直線状の部分のそれぞれは分割予定ラインとも呼ばれる。
【0020】
複数の第2被除去部11eは、複数のデバイス13と同様にマトリックス状に存在する。さらに、複数の第2被除去部11eと複数のデバイス13との間には、複数の中間部11fがそれぞれ存在する。
【0021】
図2は、被加工物11のうち第1被除去部11dと複数の第2被除去部11eとを除去することによって、それぞれが被加工物11よりも薄い複数のチップを製造するチップの製造方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
【0022】
この方法においては、まず、それぞれが第1被除去部11dに位置する複数の改質領域と、複数のデバイス13と複数の第2被除去部11eとの間に位置する複数の中間部11fのいずれかを通って複数の第2被除去部11eのいずれかに到達するようにそれぞれが複数の改質領域から伸展する複数のクラックと、を形成する(内部加工ステップS1)。
【0023】
この内部加工ステップS1は、例えば、レーザー加工装置において、被加工物11を含むフレームユニットに対してレーザービームを照射することによって実施される。
図3(A)は、被加工物11を含むフレームユニットの一例を模式的に示す斜視図であり、
図3(B)は、
図3(A)に示されるフレームユニットを模式的に示す断面図である。
【0024】
図3(A)及び
図3(B)に示されるフレームユニット1は、円形の開口15aが形成されている環状のフレーム15を有する。フレーム15は、例えば、アルミニウム(Al)等の金属からなり、その一面に開口15aよりも直径が長い円板状のダイシングテープ17の外周領域が貼着されている。
【0025】
ダイシングテープ17は、例えば、可撓性を有するフィルム状の基材層と基材層の一面(フレーム15側の面)に設けられた粘着層(糊層)とを有する。具体的には、この基材層は、ポリオレフィン(PO)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)又はポリスチレン(PS)等からなる。また、この粘着層は、紫外線硬化型のシリコーンゴム、アクリル系材料又はエポキシ系材料等からなる。
【0026】
そして、被加工物11を開口15aに位置付けるように、ダイシングテープ17の中央領域には、被加工物11の裏面11b、すなわち、複数の第2被除去部11eが貼着されている。
【0027】
さらに、被加工物11の表面11a、すなわち、複数のデバイス13には、被加工物11と概ね等しい径を有し、複数のデバイス13を保護するための円板状の保護テープ19が貼着されている。この保護テープ19は、例えば、ダイシングテープ17と同様の構造を有する。
【0028】
なお、フレームユニット1においては、ダイシングテープ17が粘着層を含まないシートに置換されてもよい。このシートは、例えば、ダイシングテープ17の基材層と同様の材料からなり、被加工物の裏面11b、すなわち、複数の第2被除去部11eと、フレーム15の一面と、に熱圧着される。
【0029】
図4は、内部加工ステップS1の一例の様子を模式的に示す斜視図である。なお、
図4に示されるX軸方向及びY軸方向は、水平面上において互いに直交する方向であり、また、Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向に垂直な方向(鉛直方向)である。
【0030】
図4に示されるレーザー加工装置2は、チャックテーブル4を有する。このチャックテーブル4は、その直径が被加工物11の直径よりも大きい円板状の枠体を有する。この枠体は、円板状の底壁と、この底壁の外周部から立設する円筒状の側壁とを有する。
【0031】
すなわち、この枠体の上面側には、底壁及び側壁によって画定される円板状の凹部が形成されている。そして、この凹部には、円板状のポーラス板が固定されている。また、枠体の底壁には、凹部の底面において開口し、かつ、底壁を貫通する流路が形成されている。さらに、ポーラス板は、この流路を介してエジェクタ等の吸引源と連通する。
【0032】
そして、この吸引源を動作させると、ポーラス板を介して、ポーラス板の上面近傍の空間に吸引力が作用する。そのため、例えば、保護テープ19を介して被加工物11がチャックテーブル4に置かれるようにフレームユニット1をチャックテーブル4に搬入してから吸引源を動作させると、チャックテーブル4の上面(保持面)においてフレームユニット1が保持される。
【0033】
さらに、チャックテーブル4は、例えば、プーリ及びモータ等を含む回転機構に接続されている。そして、この回転機構を動作させると、チャックテーブル4の保持面の中心を通り、かつ、Z軸方向に沿った直線を回転軸としてチャックテーブル4が回転する。
【0034】
また、チャックテーブル4は、例えば、ボールねじ及びモータ等を含む水平方向移動機構に接続されている。そして、この水平方向移動機構を動作させると、X軸方向及び/又はY軸方向に沿ってチャックテーブル4が移動する。
【0035】
チャックテーブル4の上方には、レーザービーム照射ユニット6が設けられている。
図5は、レーザービーム照射ユニット6及びそれから照射されるレーザービームの一例を模式的に示す図である。レーザービーム照射ユニット6は、レーザー発振器8を有する。
【0036】
このレーザー発振器8は、例えば、レーザー媒質としてNd:YAG等を有する。そして、レーザー発振器8は、被加工物11の素材を透過する波長(例えば、1064nm又は1342nm)のパルス状(例えば、周波数が60kHz)のレーザービームLBを照射する。
【0037】
このレーザービームLBは、その出力(パワー)が減衰器10において調整された後、分岐ユニット12に供給される。この分岐ユニット12は、例えば、LCoS(Liquid Crystal on Silicon)と呼ばれる液晶位相制御素子を含む空間光変調器及び/又は回折光学素子(DOE)等を有する。
【0038】
そして、分岐ユニット12は、後述するヘッド16からチャックテーブル4の保持面側に照射されるレーザービームLBが複数の集光点を形成するようにレーザービームLBを分岐する。例えば、この分岐ユニット12は、内部加工ステップS1において以下の条件を充足するようにレーザービームLBを分岐する。
【0039】
4つ以上の偶数個(ここでは、8つ)の集光点が形成される。中央側に位置する一対の集光点のY軸方向における間隔を除いて、隣接する一対の集光点のY軸方向における間隔が概ね等しい。中央側に位置する一対の集光点の間隔が、それら以外の隣接する一対の集光点の間隔よりも大きい。中央側に位置する一対の集光点のZ軸方向における位置(高さ)が概ね等しい。中央側に位置する一対の集光点の高さが、その他の集光点の高さよりも低い。
【0040】
8つの集光点のうち中央側に位置する一対の集光点の一方からY軸方向における一端に位置する集光点まで、すなわち、一方側の4つの集光点は、Z軸方向において等間隔に並ぶ。同様に、8つの集光点のうち中央側に位置する一対の集光点の他方からY軸方向における他端に位置する集光点まで、すなわち、他方側の4つの集光点は、Z軸方向において等間隔に並ぶ。
【0041】
一方側の4つの集光点のうち隣接する一対の集光点のZ軸方向における間隔と、他方側の4つの集光点のうち隣接する一対の集光点のZ軸方向における間隔と、は概ね等しい。Y軸方向における一端に位置する集光点と他端に位置する集光点との間隔が、被加工物11に含まれる第1被除去部11dのうち隣接する一対のデバイス13の間に位置する領域の幅よりも僅かに小さい。
【0042】
分岐ユニット12において分岐されたレーザービームLBは、ミラー14によって反射されてヘッド16へと導かれる。このヘッド16には、レーザービームLBを集光する集光レンズ(不図示)等が収容されている。そして、この集光レンズで集光されたレーザービームLBは、チャックテーブル4の保持面側に、端的には、直下に照射される。
【0043】
さらに、レーザービーム照射ユニット6のヘッド16及びヘッド16にレーザービームLBを導くための光学系(例えば、ミラー14)は、ボールねじ及びモータ等を含む鉛直方向移動機構に接続されている。そして、この鉛直方向移動機構を動作させると、Z軸方向に沿ってヘッド16等が移動する。
【0044】
加えて、
図4に示されるように、ヘッド16の側方にはダイシングテープ17を構成する材料及び被加工物11の素材を透過する波長の光、例えば、赤外線を利用して撮像を行う撮像ユニット18が設けられている。
【0045】
この撮像ユニット18は、例えば、赤外線を照射するLED(Light Emitting Diode)等の光源と、対物レンズと、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子とを含み、チャックテーブル4の保持面側を撮像する。
【0046】
レーザー加工装置2において内部加工ステップS1を実施する際には、まず、保護テープ19を介して被加工物11がチャックテーブル4に置かれるようにフレームユニット1をレーザー加工装置2に搬入する。次いで、チャックテーブル4のポーラス板と連通する吸引源を動作させる。これにより、ダイシングテープ17が上を向いた状態でフレームユニット1がチャックテーブル4によって保持される。
【0047】
次いで、撮像ユニット18によって被加工物11の表面11a側を撮像する。これにより、被加工物11の表面11a側における複数のデバイス13の配列を認識可能な画像が形成される。次いで、この画像を参照して、被加工物11の第1被除去部11dに含まれる特定の分割予定ラインがX軸方向と平行になるようにチャックテーブル4を回転させる。
【0048】
次いで、平面視において、ヘッド16からみて当該特定の分割予定ラインがX軸方向に位置付けられるようにチャックテーブル4をX軸方向及び/又はY軸方向に沿って移動させる。次いで、ヘッド16から直下に向けてレーザービームLBを照射された時に形成される8つの集光点のうち中央側に位置する一対の集光点が、第1被除去部11dの表面の位置よりも僅かに高く位置付けられるようにヘッド16等を昇降させる。
【0049】
次いで、このレーザービームLBがヘッド16から直下に向けて照射されるようにレーザービーム照射ユニット6を動作させる。次いで、このレーザービームLBが被加工物11のX軸方向における一端から他端までを通り過ぎるようにチャックテーブル4をX軸方向に沿って移動させる。
【0050】
これにより、第1被除去部11dの内部に、レーザービームLBが集光される集光点を中心として被加工物11の素材の結晶構造が乱れた改質領域21が形成される(
図6参照)。なお、
図6は、フレームユニット1のレーザービームLBが照射されている箇所を模式的に示す部分拡大断面図である。
【0051】
なお、レーザービームLBは、上述した条件を充足するように分岐ユニット12によって分岐されている。そのため、第1被除去部11dの内部には、8つの改質領域21が形成される。
【0052】
そして、8つの改質領域21は、それらのY軸方向における中央と一端との間に位置する4つの改質領域21、すなわち、一方側の4つの改質領域21と、それらのY軸方向における中央と他端との間に位置する4つの改質領域21、すなわち、他方側の4つの改質領域21と、に大別される。
【0053】
また、一方側の4つの改質領域21と他方側の4つの改質領域21とは、外側に位置する改質領域21の位置が内側に位置する改質領域21の位置よりも高くなるように被加工物11の厚さ方向に対して所定の角度で傾斜するように直線的に並ぶ。さらに、一方側の4つの改質領域21と他方側の4つの改質領域21とは、両者のY軸方向における中央を通るX軸方向及びZ軸方向に平行な平面を基準として、面対称になる。
【0054】
また、第1被除去部11dの内部に8つの改質領域21が形成されると、被加工物11の体積が膨張して被加工物11に内部応力が生じる。そして、この内部応力は、8つの改質領域21のそれぞれからクラック23が伸展することによって緩和される。
【0055】
ここで、クラック23は、隣接する改質領域21に向かって伸展しやすい。すなわち、クラック23は、被加工物11の厚さ方向に対して当該所定の角度で傾斜するように伸展しやすい。その結果、クラック23は、第1被除去部11dの表面に到達するとともに、中間部11fを通って第2被除去部11eに到達する。
【0056】
さらに、被加工物11の第1被除去部11dの全てにおいて改質領域21及びクラック23が形成されるように、チャックテーブル4の移動とレーザービーム照射ユニット6の動作とを繰り返す。以上によって、内部加工ステップS1が完了する。
【0057】
なお、内部加工ステップS1において形成されるクラック23は、第1被除去部11dの表面に到達しなくてもよい。例えば、上記の所定の角度が60°以上になるように一方側の4つの改質領域21と他方側の4つの改質領域21とが形成される場合には、クラック23が第1被除去部11dの表面に到達しなくてもよい。
【0058】
この場合、被加工物11から製造される複数のチップのそれぞれから分離される裏面側周縁部のサイズを大きくしやすい点で好ましい。ただし、この場合、クラック23がデバイス13に伸展しやすくなる。これに対して、クラック23が第1被除去部11dの表面に到達するように形成される場合には、デバイス13へのクラック23の伸展を抑制できる点で好ましい。
【0059】
内部加工ステップS1を実施した後には、第1被除去部11dを除去する(第1除去ステップS2)。この第1除去ステップS2は、例えば、切削装置において、表面11aから保護テープ19が剥がされた被加工物11を含むフレームユニット1を切削することによって実施される。
【0060】
図7(A)は、表面11aから保護テープ19が剥がされた被加工物11を含むフレームユニット1を模式的に示す斜視図であり、
図7(B)は、
図7(A)に示されるフレームユニット1を模式的に示す断面図である。
【0061】
図7(A)及び
図7(B)に示されるフレームユニット1においては、被加工物11の第1被除去部11dに沿うようなクラック23が表面11a側に形成されている。また、このクラック23は、被加工物11の内部において、その厚さ方向に対して傾斜するように伸展する。
【0062】
図8は、第1除去ステップS2の一例の様子を模式的に示す一部断面側面図である。なお、
図8に示されるU軸方向及びV軸方向は、水平面上において互いに直交する方向であり、また、W軸方向は、U軸方向及びV軸方向に垂直な方向(鉛直方向)である。
【0063】
図8に示される切削装置20は、チャックテーブル22を有する。このチャックテーブル22は、
図4に示されるチャックテーブル4と同様の構造を有する。また、チャックテーブル22の周りには、複数のクランプ(不図示)が設けられている。
【0064】
これらのクランプは、チャックテーブル22の周方向に沿って概ね等しい角度の間隔で設けられている。そして、チャックテーブル22においてフレームユニット1が保持される際に、チャックテーブル22の保持面よりも低い位置において複数のクランプがフレーム15を把持する。
【0065】
また、チャックテーブル22及び複数のクランプは、例えば、プーリ及びモータ等を含む回転機構に接続されている。そして、この回転機構を動作させると、チャックテーブル22の保持面の中心を通り、かつ、W軸方向に沿った直線を回転軸としてチャックテーブル22が回転する。
【0066】
また、チャックテーブル22は、例えば、ボールねじ及びモータ等を含むU軸方向移動機構に接続されている。そして、このU軸方向移動機構を動作させると、U軸方向に沿ってチャックテーブル22が移動する。
【0067】
チャックテーブル22の上方には、切削ユニット24が設けられている。この切削ユニット24は、V軸方向に沿って延在する円柱状のスピンドル26を有する。このスピンドル26の基端部はモータ等の回転駆動源(不図示)に接続され、また、その先端部には円環状の切削ブレード28が装着されている。
【0068】
そして、この回転駆動源を動作させると、V軸方向に沿った直線を回転軸としてスピンドル26とともに切削ブレード28が回転する。なお、切削ブレード28は、スピンドル26の回転軸となる直線が切削ブレード28の中心を通るようにスピンドル26に装着されている。
【0069】
また、切削ユニット24は、それぞれがボールねじ及びモータ等を含むV軸方向移動機構及びW軸方向移動機構に接続されている。そして、V軸方向移動機構を動作させると、V軸方向に沿って切削ユニット24が移動し、また、W軸方向移動機構を動作させると、切削ユニット24がW軸方向に沿って移動する。
【0070】
切削装置20において第1除去ステップS2を実施する際には、まず、ダイシングテープ17を介して被加工物11がチャックテーブル22に置かれるようにフレームユニット1を切削装置20に搬入する。
【0071】
次いで、チャックテーブル22のポーラス板と連通する吸引源を動作させるとともに、複数のクランプによってフレーム15を把持する。これにより、被加工物11の表面11a、すなわち、複数のデバイス13及び第1被除去部11dが露出された状態でフレームユニット1がチャックテーブル22によって保持される。
【0072】
次いで、第1被除去部11dに含まれる特定の分割予定ラインがU軸方向と平行になるようにチャックテーブル22を回転させる。次いで、平面視において、切削ブレード28からみて当該特定の分割予定ラインがU軸方向に位置付けられるように、チャックテーブル22をU軸方向に沿って移動させ、かつ/又は、切削ユニット24をV軸方向に沿って移動させる。
【0073】
次いで、切削ブレード28の下端が、ダイシングテープ17の内部、すなわち、チャックテーブル22の保持面よりも上かつ被加工物11の裏面11bよりも下に位置付けられるように切削ユニット24を昇降させる。次いで、切削ブレード28を回転させるように、スピンドル26に接続されている回転駆動源を動作させる。
【0074】
次いで、この切削ブレード28が被加工物11のU軸方向における一端から他端までを通り過ぎるようにチャックテーブル22をU軸方向に沿って移動させる。これにより、被加工物11を貫通し、その底面がダイシングテープ17に位置する直線状の溝25がフレームユニット1に形成される(
図9参照)。なお、
図9は、フレームユニット1の溝25が形成された箇所を模式的に示す部分拡大断面図である。
【0075】
また、これに付随して、第1被除去部11dのうち当該特定の分割予定ラインに沿った直線状の領域が、この領域に含まれる複数の改質領域21及び複数のクラック23とともに除去される。ただし、複数のクラック23のうち当該領域から伸展して中間部11f及び複数の第2被除去部11eに形成されている部分は残存する。
【0076】
さらに、被加工物11の第1被除去部11dが、それに含まれる複数の改質領域21及び複数のクラック23とともに除去されるように、チャックテーブル22及び切削ユニット24の相対的な移動と切削ブレード28の回転とを繰り返す。その結果、被加工物11が分割されて、それぞれが被加工物11と概ね等しい厚さを有する複数のチップが製造される。以上によって、第1除去ステップS2が完了する。
【0077】
第1除去ステップS2を実施した後には、複数の第2被除去部11eを研削して除去するとともに複数のクラック23を境界としてそれぞれの裏面側周縁部を複数のチップから分離する(第2除去ステップS3)。この第2除去ステップS3は、例えば、研削装置において、それぞれの裏面、すなわち、第2被除去部11eからダイシングテープ17が剥がされた複数のチップを研削することによって実施される。
【0078】
図10(A)は、このような複数のチップを模式的に示す斜視図であり、
図10(B)は、
図10(A)に示される複数のチップを模式的に示す断面図である。
図10(A)及び
図10(B)に示される複数のチップ27のそれぞれの表面、すなわち、複数のデバイス13には、円板状の保護テープ29が貼着されている。この保護テープ29は、例えば、ダイシングテープ17と同様の構造を有する。
【0079】
なお、第2除去ステップS3においては、フレームユニットに含まれる複数のチップ27が研削されてもよい。このフレームユニットは、例えば、それぞれの表面、すなわち、デバイス13に中央領域が貼着された円板状の保護テープと、この保護テープの外周領域に貼着された環状のフレームと、を有する。
【0080】
このフレームユニットに含まれる保護テープ及びフレームは、例えば、ダイシングテープ17及びフレーム15とそれぞれ同様の構造を有する。そして、第2除去ステップS3においてフレームユニットに含まれる複数のチップ27が研削される場合には、複数のチップ27の取り扱い、例えば、複数のチップ27の研削装置への搬入又はそれからの搬出が容易になる点で好ましい。
【0081】
ただし、この場合、複数のチップ27とともにフレームが研削されないように、例えば、複数のクランプによってフレームを把持する必要がある。これに対して、第2除去ステップS3において
図10(A)及び
図10(B)に示される複数のチップ27が研削される場合には、複数のクランプを備えない研削装置においても第2除去ステップS3が実施可能になる点で好ましい。
【0082】
図11は、第2除去ステップS3の一例の様子を模式的に示す一部断面側面図である。
図11に示される研削装置30は、チャックテーブル32を有する。このチャックテーブル32は、
図4に示されるチャックテーブル4と同様の構造を有する。ただし、チャックテーブル32の保持面は、その中心が外周よりも僅かに突出した円錐の側面に対応する形状であってもよい。
【0083】
また、チャックテーブル32は、例えば、プーリ及びモータ等を含む回転機構に接続されている。そして、この回転機構を動作させると、チャックテーブル32の保持面の中心を通る直線を回転軸として、その周方向に沿ってチャックテーブル32が回転する。
【0084】
また、チャックテーブル32は、例えば、ターンテーブル及びモータ等を含む旋回機構に接続されている。そして、この旋回機構を動作させると、水平面上においてチャックテーブル32が旋回する。
【0085】
チャックテーブル32の上方には、研削ユニット34が設けられている。この研削ユニット34は、鉛直方向に概ね平行な方向に沿って延在するスピンドル36を有する。このスピンドル36の先端部(下端部)には、ステンレス鋼等からなる円板状のホイールマウント38の上面が固定されている。
【0086】
また、ホイールマウント38の下面には、その外径がホイールマウント38の直径と概ね等しい円環状の研削ホイール40が装着されている。研削ホイール40は、円環状のホイール基台40aを有する。このホイール基台40aは、例えば、ステンレス鋼等からなり、その下面側には、ホイール基台40aの周方向に沿って複数の研削砥石40bが概ね等しい角度の間隔で配置されている。
【0087】
また、スピンドル36の基端部(上端部)は、モータ等の回転駆動源に接続されている。そして、この回転駆動源が動作すると、スピンドル36とともにホイールマウント38及び研削ホイール40が回転する。
【0088】
また、研削ユニット34は、例えば、ボールねじ及びモータ等を含む鉛直移動機構に連結されている。そして、この鉛直移動機構を動作させると、鉛直方向に沿って研削ユニット34が移動する。
【0089】
研削装置30において第2除去ステップS3を実施する際には、まず、保護テープ29を介して複数のチップ27がチャックテーブル32に置かれるように複数のチップ27を研削装置30に搬入する。次いで、チャックテーブル32のポーラス板と連通する吸引源を動作させる。これにより、複数の第2被除去部11eが上を向いた状態で複数のチップ27がチャックテーブル32によって保持される。
【0090】
次いで、研削ホイール40を回転させた時の複数の研削砥石40bの軌跡が保護テープ29の中心の直上に位置付けられるようにチャックテーブル32に接続されている旋回機構を動作させる。次いで、研削ホイール40を回転させるようにスピンドル36に接続されている回転駆動源を動作させ、かつ、チャックテーブル32を回転させるようにチャックテーブル32に接続されている回転機構を動作させる。
【0091】
次いで、研削ホイール40及びチャックテーブル32の双方を回転させたまま、複数の研削砥石40bの下面を複数のチップ27の裏面、すなわち、複数の第2被除去部11eに接触させるように研削ユニット34を下降させる。これにより、複数のチップ27の裏面側の研削が開始されて、複数の第2被除去部11eが徐々に除去される。
【0092】
さらに、複数の第2被除去部11eの全てが除去されるまで複数のチップ27の裏面側を研削する。その結果、それぞれが薄化された複数のチップ27が製造される(
図12参照)。なお、
図12は、それぞれの表面が保護テープ29に貼着された状態で薄化された複数のチップ27を模式的に示す断面図である。
【0093】
ここで、それぞれの裏面において複数のクラック23が露出されるまで複数の第2被除去部11eが研削されると、複数のクラック23を境界として複数のチップ27が劈開する。換言すると、複数のチップ27のそれぞれの裏面側周縁部は、この研削の最中に各チップ27から分離される。以上によって、第2除去ステップS3が完了する。
【0094】
図2に示されるチップの製造方法においては、被加工物11のうち複数のデバイス13のそれぞれの周囲に位置する第1被除去部11dにレーザービームLBが照射されるものの、複数のチップ27として残存する部分にレーザービームLBが照射されることがない。そのため、この方法においては、その裏面側周縁部にレーザービームLBが照射されたチップと比較して、熱ダメージが低減されたチップ27を提供可能である。
【0095】
また、この方法においては、被加工物11のうち複数のデバイス13よりも裏面11b側に位置する複数の第2被除去部11eを研削して除去する際に、複数のデバイス13と複数の第2被除去部11eとの間に位置する複数の中間部11fのいずれかを通って複数の第2被除去部11eのいずれかに到達するようにそれぞれが複数の改質領域21から伸展する複数のクラック23を境界として複数のチップ27のそれぞれの裏面側周縁部が分離される。
【0096】
すなわち、この方法においては、研削に伴って複数のチップ27のそれぞれの裏面側周縁部が欠ける場合であっても、この欠けが存在する部分が除去される。そのため、この方法においては、その裏面側周縁部に欠けが存在するチップと比較して、抗折強度の低下が抑制されたチップ27を提供可能である。
【0097】
なお、上述した内容は本発明の一態様であって、本発明の内容は上述した内容に限定されない。例えば、本発明の内部加工ステップS1においては、被加工物11の表面11a側からレーザービームLBを照射することによって複数の改質領域21及び複数のクラック23が形成されてもよい。
【0098】
この場合、内部加工ステップS1において、複数のデバイス13の配列、すなわち、第1被除去部11dに含まれる特定の分割予定ラインの向きを確認するために赤外線を利用した撮像を行う必要がなくなる。そのため、この場合には、赤外線を利用して撮像を行う撮像ユニット18を備えない安価なレーザー加工装置を利用して内部加工ステップS1を実施することができる点で好ましい。
【0099】
ただし、第1被除去部11dの表面には、デバイス13の性能を評価するためのTEG(Test Elementary Group)等が形成されていることがある。この場合、所望の箇所に複数の改質領域21及び複数のクラック23を形成することが困難になるおそれがある。
【0100】
これに対して、被加工物11の裏面11b側からレーザービームLBを照射することによって複数の改質領域21及び複数のクラック23が形成される場合には、第1被除去部11dの表面にTEG等が形成されている場合においても所望の箇所に複数の改質領域21及び複数のクラック23を形成することが容易な点で好ましい。
【0101】
また、本発明の内部加工ステップS1においては、第1被除去部11dのうち特定の分割予定ラインに沿った直線状の領域に含まれる複数(例えば、
図6においては8つ)の改質領域21が同時に形成されなくてもよい。具体的には、複数の改質領域21の一部、例えば、上記の一方側の4つの改質領域21が形成されてから、その残部、例えば、上記の他方側の4つの改質領域21が形成されてもよい。
【0102】
換言すると、本発明の内部加工ステップS1においては、複数の改質領域21の一部を形成するように分岐されたレーザービームLBを当該直線状の領域に照射してから、その残部を形成するように分岐されたレーザービームLBを当該直線状の領域に照射してもよい。
【0103】
また、本発明の内部加工ステップS1においては、当該直線状の領域に複数の改質領域21及び複数のクラック23が形成されてから、当該直線状の領域に対して再びレーザービームが照射されてもよい。これにより、複数の改質領域21のそれぞれを大きくし、かつ/又は、複数のクラック23のそれぞれをさらに延伸させることができる。
【0104】
また、本発明の第1除去ステップS2においては、被加工物11の裏面11b側から切削ブレード28を切り込ませることによって第1被除去部11dが除去されてもよい。なお、この場合、内部加工ステップS1に先立って、被加工物11の表面11a、すなわち、複数のデバイス13がダイシングテープ17に貼着される。
【0105】
そして、この場合には、内部加工ステップS1に先立って、被加工物11の裏面11b、すなわち、複数の第2被除去部11eに保護テープ19を貼着する必要がなくなる。そのため、この場合には、複数の第2被除去部11eへの保護テープ19の貼着及びそれからの剥離の手間を省ける点で好ましい。
【0106】
ただし、この場合には、第1除去ステップS2において被加工物11の第1被除去部11dに含まれる分割予定ラインを把握するために、赤外線を利用した撮像を行うことが必要になる。そのため、この場合には、撮像ユニット18と同様の撮像ユニットを備える高価な切削装置を利用して第1除去ステップS2を実施することが必要になる。
【0107】
これに対して、被加工物11の表面11a側から切削ブレード28を切り込ませることによって第1被除去部11dが除去される場合には、撮像ユニット18と同様の撮像ユニットを備えない安価な切削装置、例えば、切削装置20を利用して第1除去ステップS2を実施することができる点で好ましい。
【0108】
また、本発明の第1除去ステップS2においては、被加工物11を貫通せずに、その底面が被加工物11に位置する溝がフレームユニット1に形成されてもよい。
図13は、このように実施される第1除去ステップS2の一例の様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【0109】
この第1除去ステップS2は、例えば、上述した切削装置20において、
図7(A)及び
図7(B)に示されるフレームユニット1を切削することによって実施される。具体的には、このように第1除去ステップS2を実施する際には、まず、上述したようにチャックテーブル22によってフレームユニット1を保持する。
【0110】
次いで、上述したように、平面視において、切削ブレード28からみて第1被除去部11dに含まれる分割予定ラインをU軸方向に位置付ける。次いで、切削ブレード28の下端が、被加工物11の内部、具体的には、ダイシングテープ17よりも上かつ被加工物11の複数の第1被除去部11dよりも下に位置付けられるように切削ユニット24を昇降させる。
【0111】
次いで、上述したようにチャックテーブル22及び切削ユニット24の相対的な移動と切削ブレード28の回転とを繰り返す。これにより、被加工物11を貫通せずに、その底面が被加工物11に位置する格子状の溝31がフレームユニット1に形成される(
図14参照)。なお、
図14は、フレームユニット1の溝31が形成された箇所を模式的に示す部分拡大断面図である。
【0112】
なお、この第1除去ステップS2においては、被加工物11が分割されない、すなわち、複数のチップ27が製造されることはない。そして、この場合には、第2除去ステップS3において、溝31を境界として被加工物11が分割されるまで、その裏面11b側が研削されることによって複数のチップ27が製造される。
【0113】
また、本発明の第1除去ステップS2は、ドライエッチング装置において、複数のデバイス13を覆うようにマスクが設けられた被加工物11をプラズマエッチングすることによって実施されてもよい。なお、このようなプラズマエッチングを行うためのドライエッチング装置の一例については後述する。
【0114】
また、本発明の第2除去ステップS3は、それぞれの表面、すなわち、デバイス13が、保護テープ29ではなく、支持基板に接合された複数のチップを研削することによって実施されてもよい。なお、この支持基板としては、例えば、被加工物11と概ね同じ形状を有するウエーハ等が挙げられる。
【0115】
また、複数のデバイス13の支持基板への接合は、内部加工ステップS1を実施する前、内部加工ステップS1を実施した後かつ第1除去ステップS2を実施する前、又は、第1除去ステップS2を実施した後かつ第2除去ステップS3を実施する前のいずれにおいて実施されてもよい。すなわち、本発明においては、複数のチップ27が支持基板に接合されてもよいし、複数のチップ27へと分割される前の被加工物11が支持基板に接合されてもよい。
【0116】
なお、複数のチップ27が支持基板に接合される場合には、加工品質等が良好なチップ27のみを抽出して接合できる点で好ましい。他方、被加工物11が支持基板に接合される場合には、その作業が簡便になるため、チップへの不純物の混入を抑制し、かつ/又は、スループットを向上させることができる点で好ましい。
【0117】
また、本発明においては、内部加工ステップS1に先立って、複数の第2被除去部11eが薄化されるように被加工物11の裏面11b側が研削されてもよい。なお、この研削は、例えば、研削装置30において実施される。
【0118】
また、本発明のチップの製造方法は、上述した内容を適宜組み合わせることによって実施されてもよい。
図15は、このようなチップの製造方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
【0119】
この方法においては、まず、被加工物11を支持基板に接合する(接合ステップS4)。
図16(A)は、この接合ステップS4において被加工物11が支持基板に接合されることによって形成される積層体を模式的に示す断面図である。
【0120】
なお、被加工物11と接合される支持基板33は、例えば、被加工物11と同様の形状を有する。また、被加工物11と同様に、支持基板33の表面33a側には複数のデバイスが形成されてもよい。
【0121】
そして、接合ステップS4においては、被加工物11の表面11a、すなわち、複数のデバイス13が支持基板33の表面33aに接合される。具体的には、この接合ステップS4においては、まず、支持基板33の表面33aにアクリル系接着剤又はエポキシ系接着剤を含む接着剤を設ける。
【0122】
次いで、支持基板33の裏面33b側を支持した状態で、この接着剤を介して、被加工物11の表面11aを支持基板33の表面33aに押し当てる。これにより、その裏面11bが露出されるように支持基板33に接合された被加工物11を含む積層体35が形成される。以上によって、接合ステップS4が完了する。
【0123】
接合ステップS4を実施した後には、被加工物11の裏面11b側を研削する(予備研削ステップS5)。
図16(B)は、この予備研削ステップS5において、その裏面11b側が研削された被加工物11を含む積層体35を模式的に示す断面図である。
【0124】
この予備研削ステップS5は、例えば、研削装置30において、
図1(B)等に示される複数の第2被除去部11eの厚さが、1/3倍~2/3倍、代表的には1/2倍になるまで、被加工物11の裏面11b側を研削することによって実施される。なお、この研削は上述した第2除去ステップS3と同様に実施されるため、その詳細の説明は省略する。
【0125】
予備研削ステップS5を実施した後には、内部加工ステップS1を実施する。
図16(C)は、この内部加工ステップS1において複数のクラック23が形成された被加工物11を含む積層体35を模式的に示す断面図である。
【0126】
この内部加工ステップS1は、例えば、レーザー加工装置2において、その裏面11b側が研削された被加工物11を含む積層体35に対してレーザービームLBを照射することによって実施される。なお、このレーザービームLBの照射は上述した内部加工ステップS1と同様に実施されるため、その詳細の説明は省略する。
【0127】
内部加工ステップS1を実施した後には、第1除去ステップS2を実施する。この第1除去ステップS2は、例えば、ドライエッチング装置において、その内部に複数のクラック23が形成された被加工物11を含む積層体35をプラズマエッチングすることによって実施される。
【0128】
図17は、第1除去ステップS2の一例の様子を模式的に示す図である。
図17に示されるドライエッチング装置42は、導電性材料からなり、かつ、接地されているチャンバ44を有する。このチャンバ44には、その内側に積層体35を搬入し、また、その内側から積層体35を搬出するための搬入出口44aが形成されている。
【0129】
この搬入出口44aには、チャンバ44の内部空間と外部空間とを遮断し、又は、連通させることが可能なゲートバルブ46が設けられている。また、チャンバ44には、その内部空間を排気するための排気口44bが形成されている。
【0130】
この排気口44bは、配管48等を介して真空ポンプ等の排気装置50と連通している。また、チャンバ44の内面には支持部材52が設けられており、この支持部材52はテーブル54を支持する。
【0131】
そして、テーブル54の上部には、静電チャック(不図示)が設けられている。また、テーブル54の内部には、静電チャックの下方に位置する円板状の電極54aが設けられている。この電極54aは、整合器56を介して高周波電源58に接続されている。
【0132】
また、チャンバ44のテーブル54の上面と対向する位置には円板状の開口が形成されており、この開口には軸受け60を介してチャンバ44に支持されるガス噴出ヘッド62が設けられている。このガス噴出ヘッド62は、導電性材料からなり、また、整合器64を介して高周波電源66に接続されている。
【0133】
また、ガス噴出ヘッド62の内部には、空洞(ガス拡散空間)62aが形成されている。また、ガス噴出ヘッド62の内側の部分(例えば、下部)には、ガス拡散空間62aとチャンバ44の内部空間とを連通する複数のガス吐出口62bが形成されている。また、ガス噴出ヘッド62の外側の部分(例えば、上部)には、ガス拡散空間62aに所定のガスを供給するための2つのガス供給口62c,62dが形成されている。
【0134】
そして、ガス供給口62cは、配管68a等を介して、例えば、C4F8等のフッ化炭素系ガス及び/又はSF6等のフッ化硫黄系ガス等を供給するガス供給源70aと連通している。また、ガス供給口62dは、配管68b等を介して、例えば、Ar等の不活性ガス及びO2ガス等を供給するガス供給源70bと連通している。
【0135】
このドライエッチング装置42において第1除去ステップS2を実施する際には、例えば、いわゆるボッシュ(Bosch)プロセスが実施される。具体的には、この第1除去ステップS2においては、まず、搬入出口44aを介して複数のデバイス13を覆うようにマスク37が設けられた積層体35をチャンバ44の内部空間に搬入し、支持基板33が下になるようにテーブル54に置く。
【0136】
次いで、ゲートバルブ46によってチャンバ44の内部空間と外部空間とを遮断するとともに、テーブル54の静電チャックによって積層体35を保持する。次いで、排気装置50によってチャンバ44の内部空間を排気して真空状態とする。
【0137】
次いで、所定の期間に渡って、チャンバ44の内部空間にガス供給源70aからSF6を含むガスを供給し、かつ、ガス供給源70bからArガスを供給した状態で、ガス噴出ヘッド62に高周波電源66から高周波電力を提供する。これにより、チャンバ44の内部空間において生成されるF系ラジカル等によって被加工物11のマスク37に覆われることなく露出した部分が等方的にエッチングされる。
【0138】
次いで、所定の期間に渡って、チャンバ44の内部空間にガス供給源70aからC4F8を含むガスを供給し、かつ、ガス供給源70bからArガスを供給した状態で、ガス噴出ヘッド62に高周波電源66から高周波電力を提供する。これにより、被加工物11のエッチングされた部分にCFラジカルが堆積してフッ化炭素を含む保護膜が形成される。
【0139】
次いで、所定の期間に渡って、チャンバ44の内部空間にガス供給源70aからSF6を含むガスを供給し、かつ、ガス供給源70bからArガスを供給した状態で、テーブル54の内部に設けられた電極54aに高周波電源58から高周波電力を提供し、かつ、ガス噴出ヘッド62に高周波電源66から高周波電力を提供する。これにより、チャンバ44の内部空間において生成されるF系イオン等がテーブル54に向けて加速されることによって保護膜が異方的にエッチングされる。また、このエッチングに伴って、被加工物11のうちマスク37に覆われていない部分が再び露出するとともにさらにエッチングされる。
【0140】
さらに、第1除去ステップS2においては、被加工物11を貫通し、その底面が支持基板33に位置する格子状の溝が積層体35に形成されるまで、上述した等方性エッチング、保護膜の形成及び異方性エッチングが繰り返される(
図18(A)参照)。なお、
図18(A)は、積層体35の溝が形成された箇所を模式的に示す部分拡大断面図である。
【0141】
また、これに付随して、第1被除去部11dが、それに含まれる複数の改質領域21及び複数のクラック23とともに除去される。ただし、複数のクラック23のうち第1被除去部11dから伸展して中間部11f及び複数の第2被除去部11eに形成されている部分は残存する。以上によって、第1除去ステップS2が完了する。
【0142】
第1除去ステップS2を実施した後には、第2除去ステップS3を実施する。
図18(B)は、この第2除去ステップS3において製造される複数のチップ41を含む積層体35を模式的に示す断面図である。
【0143】
この第2除去ステップS3は、例えば、研削装置30において、複数の第2被除去部11eが除去されるまで複数のチップ41の裏面側を研削することによって実施される。なお、この研削は上述した第2除去ステップS3と同様に実施されるため、その詳細の説明は省略する。
【0144】
ここで、それぞれの裏面において複数のクラック23が露出されるまで複数のチップ41の裏面側が研削されると、複数のクラック23を境界として複数のチップ41が劈開する。換言すると、複数のチップ41のそれぞれの裏面側周縁部は、この研削の最中に各チップ41から分離される。以上によって、第2除去ステップS3が完了する。
【0145】
その他、上述した実施形態にかかる構造及び方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0146】
1 :フレームユニット
2 :レーザー加工装置
4 :チャックテーブル
6 :レーザービーム照射ユニット
8 :レーザー発振器
10:減衰器
11:被加工物(11a:表面、11b:裏面、11c:ノッチ)
(11d:第1被除去部、11e:第2被除去部、11f:中間部)
12:分岐ユニット
13:デバイス
14:ミラー
15:フレーム(15a:開口)
16:ヘッド
17:ダイシングテープ
18:撮像ユニット
19:保護テーブ
20:切削装置
21:改質領域
22:チャックテーブル
23:クラック
24:切削ユニット
25:溝
26:スピンドル
27:チップ
28:切削ブレード
29:保護テープ
30:研削装置
31:溝
32:チャックテーブル
33:支持基板(33a:表面、33b:裏面)
34:研削ユニット
35:積層体
36:スピンドル
37:マスク
38:ホイールマウント
39:溝
40:研削ホイール(40a:ホイール基台、40b:研削砥石)
41:チップ
42:ドライエッチング装置
44:チャンバ(44a:搬入出口、44b:排気口)
46:ゲートバルブ
48:配管
50:排気装置
52:支持部材
54:テーブル(54a:電極)
56:整合器
58:高周波電源
60:軸受け
62:ガス噴出ヘッド
(62a:ガス拡散空間、62b:ガス吐出口、62c,62d:ガス供給口)
64:整合器
66:高周波電源
68a,68b:配管
70a,70b:ガス供給源