(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152023
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】組成物、トナー、感熱転写記録用インクシート、及びインクジェット記録用インクに関する。
(51)【国際特許分類】
C09B 67/20 20060101AFI20241018BHJP
C09B 11/28 20060101ALI20241018BHJP
C09B 23/04 20060101ALI20241018BHJP
C09D 11/328 20140101ALI20241018BHJP
C09D 11/38 20140101ALI20241018BHJP
B41M 5/385 20060101ALI20241018BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20241018BHJP
G03G 9/09 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C09B67/20 F
C09B11/28 E
C09B23/04
C09D11/328
C09D11/38
B41M5/385 400
B41M5/00 120
G03G9/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065920
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隆志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 賢
(72)【発明者】
【氏名】中村 幸晃
【テーマコード(参考)】
2H111
2H186
2H500
4J039
【Fターム(参考)】
2H111AA27
2H111BA39
2H111BA48
2H111CA03
2H186BA11
2H186DA12
2H186FB11
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB55
2H500AA06
2H500CA29
2H500CA31
2H500EA42C
4J039AD03
4J039AD06
4J039AD10
4J039BC29
4J039BC34
4J039BE02
4J039BE32
4J039BE33
4J039EA35
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】紫外線及び波長400nmから700nmまでの可視光に対する耐光性に優れた組成物、トナー、感熱転写記録用インクシート、及びインクジェット記録用インクを提供する。
【解決手段】ローダミン色素と、ピロメテン化合物とを含む組成物、トナー、感熱転写記録用インクシート、及びインクジェット記録用インク。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローダミン色素と、ピロメテン化合物とを含む組成物。
【請求項2】
前記ピロメテン化合物が、亜鉛錯体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらに樹脂を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ローダミン色素に対する、前記ピロメテン化合物の含有量が10質量%~200質量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
さらに樹脂を含み、
前記樹脂に対する、前記ローダミン色素と前記ピロメテン化合物との合計含有量が0.5質量%~20質量%である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
さらに、ヒンダードアミン化合物、ヒンダードフェノール化合物、及び3級アミン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の添加剤Aを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ローダミン色素及び前記ピロメテン化合物の合計含有量に対する、前記添加剤Aの含有量が10質量%~100質量%である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ローダミン色素が、下記一般式(R1)で表される化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【化1】
一般式(R1)中、R
r1~R
r7は、各々独立に、水素原子、アルキル基、又は芳香族基を表し、X
-は対アニオンを表す。
【請求項9】
前記ピロメテン化合物が、下記一般式(PY2)で表される化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【化2】
一般式(PY2)中、R
12~R
15は、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、R
17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。X
2及びX
3は、各々独立に、NR(Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)、酸素原子、又は硫黄原子を表す。Y
1及びY
2は、各々独立に、NR
c(R
cは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)、又は炭素原子を表す。R
11及びR
16は、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基を表す。R
11とY
1は、互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよく、R
16とY
2は、互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。X
11はZnと結合可能な基を表し、aは0、1、又は2を表す。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の組成物を含むトナー。
【請求項11】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の組成物を含む感熱転写記録用インクシート。
【請求項12】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の組成物を含むインクジェット記録用インク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組成物、トナー、感熱転写記録用インクシート、及びインクジェット記録用インクに関する。
【背景技術】
【0002】
画像記録はフルカラーでの記録が主流であり、様々な着色剤(染料、顔料などの色素)が開発され、トナー、感熱転写記録用インクシート、及びインクジェット記録用インク等に適用されている。
【0003】
その一つとして、着色剤としてローダミン色素を利用した組成物が知られている。ローダミン色素を利用した組成物は、例えば、橙色系から赤色系、又は橙色系から紫色系までの高彩度の蛍光色の再現性に優れるので有用である。
【0004】
例えば、特許文献1には、「水に不溶ないしは難溶性でかつ有機溶剤に可溶である蛍光染料を含有する、平均粒子径が1μm以下であり、20~1000eq. /ton の範囲にてイオン性基を含有するポリエステル樹脂の微粒子が水系媒体中に微分散してなる水性蛍光インク。」が開示されている。
特許文献1には、蛍光インクに適用できる色素として、カルコシド・ロ-ダミン・B・コンク、ロ-ダミン・B・ステアレ-ト・コンク、ロ-ダミン・B・エチルエステル等のローダミン色素が例示されている。
【0005】
また、例えば、特許文献2には、「酸性基を有する樹脂を含む結着樹脂、着色剤、塩基性分散剤、及び絶縁性液体を含有する液体現像剤の製造方法であって、工程I:前記結着樹脂と前記着色剤と前記塩基性分散剤を含む原料を前記結着樹脂のガラス転移温度以上の温度で撹拌する工程、及び工程II:工程Iの撹拌物に、該撹拌物100質量部に対して前記絶縁性液体50~500質量部を前記結着樹脂のガラス転移温度以上の温度で滴下することにより転相乳化して、トナー粒子の分散液を得る工程を含む、液体現像剤の製造方法」が開示されている。
特許文献2には、トナー用着色剤として、ローダミン-Bベース等のローダミン色素が例示されている。
【0006】
なお、特許文献3には、「ジピロメテン金属錯体化合物を含有する着色組成物」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07-150098号公報
【特許文献2】特開2018-106145号公報
【特許文献3】特開2012-140586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ローダミン色素を利用した組成物は、紫外線及び波長400nmから700nmまでの可視光に対する耐光性が低い。
そこで、本開示の課題は、紫外線及び波長400nmから700nmまでの可視光に対する耐光性に優れた組成物、トナー、感熱転写記録用インクシート、及びインクジェット記録用インクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段は、下記態様が含まれる。
<1>
ローダミン色素と、ピロメテン化合物とを含む組成物。
<2>
上記ピロメテン化合物が、亜鉛錯体である、<1>に記載の組成物。
<3>
さらに樹脂を含む、<1>又は<2>に記載の組成物。
<4>
上記ローダミン色素に対する、上記ピロメテン化合物の含有量が10質量%~200質量%である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の組成物。
<5>
さらに樹脂を含み、
上記樹脂に対する、上記ローダミン色素と上記ピロメテン化合物との合計含有量が.0.5質量%~20質量%である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の組成物。
<6>
さらに、ヒンダードアミン化合物、ヒンダードフェノール化合物、及び3級アミン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の添加剤Aを含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の組成物。
<7>
上記ローダミン色素及び上記ピロメテン化合物の合計含有量に対する、上記添加剤Aの含有量が10質量%~100質量%である、<6>に記載の組成物。
<8>
上記ローダミン色素が、下記一般式(R1)で表される化合物を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の組成物。
【化1】
一般式(R1)中、R
r1~R
r7は、各々独立に、水素原子、アルキル基、又は芳香族基を表し、X
-は対アニオンを表す。
<9>
上記ピロメテン化合物が、下記一般式(PY2)で表される化合物を含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の組成物。
【化2】
一般式(PY2)中、R
12~R
15は、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、R
17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。X
2及びX
3は、各々独立に、NR(Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)、酸素原子、又は硫黄原子を表す。Y
1及びY
2は、各々独立に、NR
c(R
cは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)、又は炭素原子を表す。R
11及びR
16は、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基を表す。R
11とY
1は、互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよく、R
16とY
2は、互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。X
11はZnと結合可能な基を表し、aは0、1、又は2を表す。
<10>
<1>~<9>のいずれか1つに記載の組成物を含むトナー。
<11>
<1>~<9>のいずれか1つに記載の組成物を含む感熱転写記録用インクシート。
<12>
<1>~<9>のいずれか1つに記載の組成物を含むインクジェット記録用インク。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、紫外線及び波長400nmから700nmまでの可視光に対する耐光性に優れた組成物、トナー、感熱転写記録用インクシート、及びインクジェット記録用インクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の一例である実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルのいずれをも含む表現であり、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートのいずれをも含む表現である。
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、「紫外線」とは、波長1nm以上400nm未満の活性光線を指す。
【0012】
<組成物>
本実施形態に係る組成物は、ローダミン色素と、ピロメテン化合物とを含む。
【0013】
本実施形態に係る組成物は、上記構成により、紫外線及び波長400nmから700nmまでの可視光に対する耐光性に優れる。
【0014】
ローダミン色素の光分解機構としては、ラジカル的開裂を伴う光分解機構と酸素による酸化的な酸化分解機構が推定される。そのため、特許文献1~2のように、ローダミン色素が、紫外線及び波長400nmから700nmまでの可視光に曝されると、ローダミン色素が光分解する。ローダミン色素の光分解では、短波長シフトした分解物が生成するため、色味が変化する。
【0015】
それに対して、ローダミン色素と共に、ピロメテン化合物を併用すると、紫外線及び波長400nmから700nmまでの可視光にローダミン色素が曝されたとき、ローダミン色素からピロメテン化合物への速やかなエネルギー移動が進行し、ローダミン色素の分解が抑制される。また、ローダミン色素は光分解で短波長シフトした分解物を生成するのに対して、ピロメテン化合物は光分解で短波長シフトした分解物を生成しない。
そのため、紫外線及び波長400nmから700nmまでの可視光に、ローダミン色素と、ピロメテン化合物とを含む組成物が曝されても、短波長シフトが生じ難く、色味が変化し難い。
【0016】
以上から、本実施形態に係る組成物は、上記構成により、紫外線及び波長400nmから700nmまでの可視光に対する耐光性に優れる。
【0017】
以下、本実施形態に係る組成物の詳細について説明する。
【0018】
本実施形態に係る組成物は、ローダミン色素と、ピロメテン化合物とを含む。
本実施形態に係る組成物は、ヒンダードアミン化合物、ヒンダードフェノール化合物、及び3級アミン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の添加剤Aを含むことが好ましい。
本実施形態に係る組成物は、必要に応じて、媒体、その他添加剤を含んでもよい。
なお、本実施形態に係る組成物は、色素として、ローダミン色素を含むため、着色組成物として適用されることが好ましい。
【0019】
(ローダミン化合物)
ローダミン色素は、アミノフェノール類と無水フタル酸を縮合して得られるローダミン骨格を有する化合物である。具体的には、ローダミン色素は、下記式(R0)で示されるローダミン骨格を有する化合物である。なお、式(R0)中、X-は対アニオンを示す。
【0020】
【0021】
ローダミン色素としては、例えば、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン6G6GP、ローダミン3GO、ローダミン110、ローダミン123、ローダミン560、6ローダミン40、ローダミン800、スルホローダミンB、オクタデシルローダミン101エステル、ローダミン19過塩素酸塩などが挙げられる。
【0022】
これらの中でも、強い吸収強度と蛍光強度を併せ持つという光学特性の観点から、ローダミン色素は、下記一般式(R1)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0023】
【0024】
一般式(R1)中、Rr1~Rr7は、各々独立に、水素原子、アルキル基、又は芳香族基を表し、X-は対アニオンを表す。
【0025】
Rr1~Rr7が表すアルキル基としては、好ましくは炭素数1~48、より好ましくは炭素数1~24の、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基が挙げられる。具体的には、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-ノルボルニル基、1-アダマンチル基等が挙げられる。
芳香族基としては、好ましくは炭素数6~48、より好ましくは炭素数6~24のアリール基が挙げられる。具体的には、芳香族基としては、例えば、フェニル基、及びナフチル基)が挙げられる。
【0026】
Rr1~Rr7が表す上記基が更に置換可能な基である場合、上述した各基のいずれかによって更に置換されていてもよい。なお、2個以上の置換基を有している場合、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0027】
X-が表す対アニオンとしては、例えば、クロロイオン、ブロモイオン、ヨードイオン、過塩素酸イオン、PF6イオン、BF4イオン、及びアセテートイオンが挙げられる。対アニオンとして好ましくは、クロロイオンである。
【0028】
以下に、ローダミン色素の具体例を示す。
なお、具体例中、Etはエチル基を表す。-c-C6H11はシクロヘキシル基を表す。Phはフェニル基を表す。
【0029】
【0030】
なお、ローダミン色素は、1種単独で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0031】
(ピロメテン化合物)
ピロメテン化合物は、ピロメテン骨格を有する化合物である。「ピロメテン骨格」とは、下記構造式(PM0)に示す構造を意味する。なお、「ジピロメテン骨格」とは、下記構造式(PD0)に示す構造を意味する。以下、本明細書中では、下記構造式に従って、ピロメテン骨格又はジピロメテン骨格の置換位置を表記する。
【0032】
【0033】
ピロメテン化合物としては、強い吸収強度と蛍光強度を併せ持つという光学特性および高い溶解性の観点から、下記一般式(PY1)で表されるピロメテン化合物が好ましい。
【0034】
【0035】
一般式(PY1)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、各々独立に1価の置換基を表し、Mは金属又は金属化合物を表し、Xは置換若しくは無置換の炭素数2~3のアシルオキシ基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニルオキシ基、置換若しくは無置換のアリールスルホニルオキシ基、又はハロゲン原子を表し、n1及びn2は、各々独立に0~5の整数を表し、n3及びn4は、各々独立に0~3の整数を表す。n1が2以上の整数の場合、2以上のR5は同じであっても異なっていてもよい。n2が2以上の整数の場合、2以上のR6は同じであっても異なっていてもよい。n3が2以上の整数の場合、2以上のR7は同じであっても異なっていてもよい。n4が2以上の整数の場合、2以上のR8は同じであっても異なっていてもよい。
本明細書においてピロメテン金属錯体化合物の5-位及び5’-位のアミド基は、ケト-エノール互変異性平衡におけるケト型で記載しているが、エノール型であってもよい。
【0036】
一般式(PY1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物は、ピロメテン骨格の3-位及び3’-位が、置換若しくは無置換のフェニル基であり、5-位及び5’-位が、2-位置換(一般式(PY1)におけるR3及びR4の置換基)かつ6-位無置換のフェニルカルボニルアミノ基である。
【0037】
一般式(PY1)中、R1~R8で表される1価の置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1~48、より好ましくは炭素数1~24の、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基で、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-ノルボルニル基、1-アダマンチル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2~48、より好ましくは炭素数2~18のアルケニル基で、例えば、ビニル基、アリル基、3-ブテン-1-イル基)、アリール基(好ましくは炭素数6~48、より好ましくは炭素数6~24のアリール基で、例えば、フェニル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1~32、より好ましくは炭素数1~18のヘテロ環基で、例えば、2-チエニル基、4-ピリジル基、2-フリル基、2-ピリミジニル基、1-ピリジル基、2-ベンゾチアゾリル基、1-イミダゾリル基、1-ピラゾリル基、ベンゾトリアゾール-1-イル基)、シリル基(好ましくは炭素数3~38、より好ましくは炭素数3~18のシリル基で、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリブチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ヘキシルジメチルシリル基)、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~48、より好ましくは炭素数1~24のアルコキシ基で、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1-ブトキシ基、2-ブトキシ基、イソプロポキシ基、t-ブトキシ基、ドデシルオキシ基、また、シクロアルキルオキシ基であれば、例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6~48、より好ましくは炭素数6~24のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ基、1-ナフトキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1~32、より好ましくは炭素数1~18のヘテロ環オキシ基で、例えば、1-フェニルテトラゾール-5-オキシ基、2-テトラヒドロピラニルオキシ基)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数1~32、より好ましくは炭素数1~18のシリルオキシ基で、例えば、トリメチルシリルオキシ基、t-ブチルジメチルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2~48、より好ましくは炭素数2~24のアシルオキシ基で、例えば、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ドデカノイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2~48、より好ましくは炭素数2~24のアルコキシカルボニルオキシ基で、例えば、エトキシカルボニルオキシ基、t-ブトキシカルボニルオキシ基、また、シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基であれば、例えば、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数7~32、より好ましくは炭素数7~24のアリールオキシカルボニルオキシ基で、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数1~48、よりこの好ましくは炭素数1~24のカルバモイルオキシ基で、例えば、N,N-ジメチルカルバモイルオキシ基、N-ブチルカルバモイルオキシ基、N-フェニルカルバモイルオキシ基、N-エチル-N-フェニルカルバモイルオキシ基)、スルファモイルオキシ基(好ましくは炭素数1~32、より好ましくは炭素数1~24のスルファモイルオキシ基で、例えば、N,N-ジエチルスルファモイルオキシ基、N-プロピルスルファモイルオキシ基)、アルキルスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数1~38、より好ましくは炭素数1~24のアルキルスルホニルオキシ基で、例えば、メチルスルホニルオキシ基、ヘキサデシルスルホニルオキシ基、シクロヘキシルスルホニルオキシ基)、アリールスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数6~32、より好ましくは炭素数6~24のアリールスルホニルオキシ基で、例えば、フェニルスルホニルオキシ基)、アシル基(好ましくは炭素数1~48、より好ましくは炭素数1~24のアシル基で、例えば、ホルミル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、テトラデカノイル基、シクロヘキサノイル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~48、より好ましくは炭素数2~24のアルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルシクロヘキシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7~32、より好ましくは炭素数7~24のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1~48、より好ましくは炭素数1~24のカルバモイル基で、例えば、カルバモイル基、N,N-ジエチルカルバモイル基、N-エチル-N-オクチルカルバモイル基、N,N-ジブチルカルバモイル基、N-プロピルカルバモイル基、N-フェニルカルバモイル基、N-メチルN-フェニルカルバモイル基、N,N-ジシクロへキシルカルバモイル基)、アミノ基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のアミノ基で、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、N,N-ジブチルアミノ基、テトラデシルアミノ基、2-エチルへキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基)、アニリノ基(好ましくは炭素数6~32、より好ましくは6~24のアニリノ基で、例えば、アニリノ基、N-メチルアニリノ基)、ヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1~32、より好ましくは1~18のヘテロ環アミノ基で、例えば、4-ピリジルアミノ基)、
【0038】
カルボンアミド基(好ましくは炭素数2~48、より好ましくは2~24のカルボンアミド基で、例えば、アセトアミド基、ベンズアミド基、テトラデカンアミド基、ピバロイルアミド基、シクロヘキサンアミド基)、ウレイド基(好ましくは炭素数1~32、より好ましくは炭素数1~24のウレイド基で、例えば、ウレイド基、N,N-ジメチルウレイド基、N-フェニルウレイド基)、イミド基(好ましくは炭素数36以下、より好ましくは炭素数24以下のイミド基で、例えば、N-スクシンイミド基、N-フタルイミド基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2~48、より好ましくは炭素数2~24のアルコキシカルボニルアミノ基で、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t-ブトキシカルボニルアミノ基、オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、シクロヘキシルオキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7~32、より好ましくは炭素数7~24のアリールオキシカルボニルアミノ基で、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数1~48、より好ましくは炭素数1~24のスルホンアミド基で、例えば、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基、ヘキサデカンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数1~48、より好ましくは炭素数1~24のスルファモイルアミノ基で、例えば、N、N-ジプロピルスルファモイルアミノ基、N-エチル-N-ドデシルスルファモイルアミノ基)、アゾ基(好ましくは炭素数1~32、より好ましくは炭素数1~24のアゾ基で、例えば、フェニルアゾ基、3-ピラゾリルアゾ基)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1~48、より好ましくは炭素数1~24のアルキルチオ基で、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、オクチルチオ基、シクロヘキシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6~48、より好ましくは炭素数6~24のアリールチオ基で、例えば、フェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1~32、より好ましくは炭素数1~18のヘテロ環チオ基で、例えば、2-ベンゾチアゾリルチオ基、2-ピリジルチオ基、1-フェニルテトラゾリルチオ基)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1~32、より好ましくは炭素数1~24のアルキルスルフィニル基で、例えば、ドデカンスルフィニル基)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6~32、より好ましくは炭素数6~24のアリールスルフィニル基で、例えば、フェニルスルフィニル基)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1~48、より好ましくは炭素数1~24のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、2-エチルヘキシルスルホニル基、ヘキサデシルスルホニル基、オクチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6~48、より好ましくは炭素数6~24のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル基、1-ナフチルスルホニル基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のスルファモイル基で、例えば、スルファモイル基、N,N-ジプロピルスルファモイル基、N-エチル-N-ドデシルスルファモイル基、N-エチル-N-フェニルスルファモイル基、N-シクロヘキシルスルファモイル基)、スルホ基、ホスホノ基、ホスホニル基(好ましくは炭素数1~32、より好ましくは炭素数1~24のホスホニル基で、例えば、フェノキシホスホニル基、オクチルオキシホスホニル基、フェニルホスホニル基)、ホスフィノイルアミノ基(好ましくは炭素数1~32、より好ましくは炭素数1~24のホスフィノイルアミノ基で、例えば、ジエトキシホスフィノイルアミノ基、ジオクチルオキシホスフィノイルアミノ基)が挙げられる。
【0039】
上述した1価の基が更に置換可能な基である場合には、上述した各基のいずれかによって更に置換されていてもよい。なお、2個以上の置換基を有している場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0040】
一般式(PY1)中、R1及びR2は、各々独立に、好ましくは、置換若しくは無置換の炭素数1~30のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換の炭素数1~30のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数6~10のアリールスルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1~30のアルキルカルバモイル基、置換若しくは無置換の炭素数7~11のアリールカルバモイル基、又はシアノ基であり、より好ましくは、置換若しくは無置換の炭素数6~30のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換の炭素数1~12のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換のフェニルスルホニル基、又はシアノ基であり、特に好ましくは、無置換の炭素数6~30のアルコキシカルボニル基、又はシアノ基である。
【0041】
一般式(PY1)中、R3及びR4は、各々独立に、好ましくは、置換若しくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6~10のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換若しくは無置換の炭素数6~10のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、又はハロゲン原子であり、より好ましくは、置換若しくは無置換の炭素数1~12のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換の炭素数1~12のアルコキシ基、置換若しくは無置換のフェノキシ基、塩素原子、又は臭素原子であり、特に好ましくは、無置換の炭素数1~12のアルキル基、無置換の炭素数1~12のアルコキシ基、又は塩素原子である。
【0042】
一般式(PY1)中、R5、R6、R7及びR8は、各々独立に、好ましくは、置換若しくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6~10のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基、置換若しくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換若しくは無置換の炭素数6~10のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1~30のアルキルチオ基、置換若しくは無置換の炭素数6~10のアリールチオ基、置換若しくは無置換の炭素数2~30のアシル基、置換若しくは無置換の炭素数2~30のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換の炭素数1~30のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1~30のカルバモイル基、置換若しくは無置換の炭素数0~30のアミノ基、シアノ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、又はホスホノ基であり、より好ましくは、置換若しくは無置換の炭素数1~18のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換の炭素数1~18のアルコキシ基、置換若しくは無置換のフェノキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1~18のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のフェニルチオ基、置換若しくは無置換の炭素数2~18のアシル基、置換若しくは無置換の炭素数2~18のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換の炭素数1~18のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1~18のカルバモイル基、置換若しくは無置換の炭素数0~18のアミノ基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、又はホスホノ基であり、特に好ましくは、無置換の炭素数1~12のアルキル基、無置換のフェニル基、無置換の炭素数1~12のアルコキシ基、無置換の炭素数2~12のアシル基、無置換の炭素数2~18のアルコキシカルボニル基、無置換の炭素数1~12のアルキルスルホニル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、又はカルボキシ基である。
【0043】
一般式(PY1)において、n1が2以上の整数の場合、隣り合うR5が互いに結合して5員、6員又は7員の環を形成していてもよい。なお、形成される環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、フラン環、チオフェン環が挙げられ、好ましくはベンゼン環が挙げられる。n2、n3及びn4がそれぞれ2以上の整数の場合、隣り合うR6、隣り合うR7、隣り合うR8についても上記と同様である。
また、R3とR7とが隣り合う場合、R3とR7とは、互いに結合して5員、6員又は7員の環を形成していてもよい。形成される環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、フラン環、チオフェン環が挙げられ、好ましくはベンゼン環が挙げられる。R4とR8とが隣り合う場合についても上記と同様である。
なお、形成される5員、6員及び7員の環が、更に置換可能な基である場合には、前述の1価の置換基のいずれかで置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0044】
一般式(PY1)中、n1及びn2は、各々独立に、0~5の整数であり、好ましくは0~3であり、より好ましくは0~2であり、特に好ましくは0又は1である。
一般式(PY1)中、n3及びn4は、各々独立に、0~3の整数であり、好ましくは0~2であり、特に好ましくは0又は1である。
【0045】
一般式(PY1)中、Mで表される金属又は金属化合物としては、錯体を形成可能な金属原子又は金属化合物であればいずれであってもよく、2価の金属原子、2価の金属酸化物、2価の金属水酸化物、又は2価の金属塩化物が含まれる。例えば、Zn、Mg、Si、Sn、Rh、Pt、Pd、Mo、Mn、Pb、Cu、Ni、Co、Fe、B等の他に、AlCl3、InCl3、FeCl2、TiCl2、SnCl2、SiCl2、GeCl2などの金属塩化物、TiO、VO等の金属酸化物、Si(OH)2等の金属水酸化物も含まれる。
錯体の安定性、分光特性、耐熱、耐光性、及び製造適性等の観点から、Mで表される金属又は金属化合物は、好ましくは、Fe、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Mo、Mn、Cu、Ni、Co、TiO、B、又はVOであり、より好ましくは、Fe、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Cu、Ni、Co、B、又はVOであり、特に好ましくは、Znである。
【0046】
一般式(PY1)中、Xは、置換若しくは無置換の炭素数2~3のアシルオキシ基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニルオキシ基、置換若しくは無置換のアリールスルホニルオキシ基、又はハロゲン原子を表す。Xは、好ましくは、置換若しくは無置換の炭素数2~3のアシルオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1~30のアルキルスルホニルオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数6~30のアリールスルホニルオキシ基、又は塩素原子であり、より好ましくは、置換若しくは無置換の炭素数2~3のアシルオキシ基、無置換の炭素数1~18のアルキルスルホニルオキシ基、無置換の炭素数6~12のアリールスルホニルオキシ基であり、特に好ましくは、置換若しくは無置換の炭素数2~3のアシルオキシ基である。
【0047】
一般式(PY1)で表されるピロメテン金属錯体化合物において、R1~R8、M、Xで表される置換基の好ましい組み合わせは、これら置換基の少なくとも1つが上記好ましい基であることが好ましく、より多くの置換基が上記好ましい基であることがより好ましく、全ての置換基が上記好ましい基であることが最も好ましい。
【0048】
一般式(PY1)で表されるピロメテン金属錯体化合物の好ましい態様を以下に示す。即ち、一般式(PY1)において、
R1及びR2が、各々独立に、置換若しくは無置換の炭素数1~30のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換の炭素数1~30のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数6~10のアリールスルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1~30のアルキルカルバモイル基、置換若しくは無置換の炭素数7~11のアリールカルバモイル基、又はシアノ基であり、
R3及びR4が、各々独立に、置換若しくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換若しくは無置換の6~10のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換若しくは無置換の炭素数6~10のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、又はハロゲン原子であり、
R5、R6、R7及びR8が、各々独立に、置換若しくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6~10のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基、置換若しくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換若しくは無置換の炭素数6~10のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1~30のアルキルチオ基、置換若しくは無置換の炭素数6~10のアリールチオ基、置換若しくは無置換の炭素数2~30のアシル基、置換若しくは無置換の炭素数2~30のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換の炭素数1~30のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1~30のカルバモイル基、置換若しくは無置換の炭素数0~30のアミノ基、シアノ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、又はホスホノ基であり、
n1、n2、n3及びn4が、各々独立に、0~3であり、
Mが、Fe、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Mo、Mn、Cu、Ni、Co、TiO 、B、又はVOであり、
Xが、置換若しくは無置換の炭素数2~3のアシルオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1~30のアルキルスルホニルオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数6~30のアリールスルホニルオキシ基、又は塩素原子である組み合わせである。
【0049】
一般式(PY1)で表されるピロメテン金属錯体化合物のより好ましい態様を以下に示す。即ち、一般式(PY1)において、
R1及びR2が共に、置換若しくは無置換の炭素数6~30のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換の炭素数1~12のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換のフェニルスルホニル基、又はシアノ基であり、
R3及びR4が共に、置換若しくは無置換の炭素数1~12のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換の炭素数1~12のアルコキシ基、置換若しくは無置換のフェノキシ基、塩素原子、又は臭素原子であり、R5及びR6が共に、置換若しくは無置換の炭素数1~18のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換の炭素数1~18のアルコキシ基、置換若しくは無置換のフェノキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1~18のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のフェニルチオ基、置換若しくは無置換の炭素数2~18のアシル基、置換若しくは無置換の炭素数2~18のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換の炭素数1~18のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1~18のカルバモイル基、置換若しくは無置換の炭素数0~18のアミノ基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、又はホスホノ基であり、
R7及びR8が共に、置換若しくは無置換の炭素数1~18のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換の炭素数1~18のアルコキシ基、置換若しくは無置換のフェノキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1~18のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のフェニルチオ基、置換若しくは無置換の炭素数2~18のアシル基、置換若しくは無置換の炭素数2~18のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換の炭素数1~18のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1~18のカルバモイル基、置換若しくは無置換の炭素数0~18のアミノ基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、又はホスホノ基であり、
n1及びn2が共に0~2であり、n3及びn4が共に0~2であり、
Mが、Fe、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Cu、Ni、Co、B、又はVOであり、
Xが、置換若しくは無置換の炭素数2~3のアシルオキシ基、無置換の炭素数1~18のアルキルスルホニルオキシ基、又は無置換の炭素数6~12のアリールスルホニルオキシ基である組み合わせである。
【0050】
一般式(PY1)で表されるピロメテン化合物の最も好ましい態様を以下に示す。即ち、一般式(PY1)において、
R1及びR2が共に、無置換の炭素数6~30のアルコキシカルボニル基、又はシアノ基であり、
R3及びR4が共に、無置換の炭素数1~12のアルキル基、無置換の炭素数1~12のアルコキシ基、又は塩素原子であり、
R5及びR6が共に、無置換の炭素数1~12のアルキル基、無置換のフェニル基、無置換の炭素数1~12のアルコキシ基、無置換の炭素数2~12のアシル基、無置換の炭素数2~18のアルコキシカルボニル基、無置換の炭素数1~12のアルキルスルホニル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、又はカルボキシ基であり、
R7及びR8が共に、無置換の炭素数1~12のアルキル基、無置換のフェニル基、無置換の炭素数1~12のアルコキシ基、無置換の炭素数2~12のアシル基、無置換の炭素数2~18のアルコキシカルボニル基、無置換の炭素数1~12のアルキルスルホニル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、又はカルボキシ基であり、
n1及びn2が共に0又は1であり、n3及びn4が共に0又は1であり、
MがZnであり、
Xが、置換若しくは無置換の炭素数2~3のアシルオキシ基である組み合わせである。
【0051】
特に、ローダミン色素の分解を効果的に抑制し、耐光性をより向上させる観点から、ピロメテン化合物としては、亜鉛錯体が好ましく、具体的には、下記一般式(PY2)で表される化合物を含むことがより好ましい。
つまり、ローダミン色素として一般式(R1)で表される化合物と、ピロメテン化合物として亜鉛錯体(具体的には下記一般式(PY2)で表される化合物)と、を併用することが好ましい。
【0052】
【0053】
一般式(PY2)中、R12~R15は、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、R17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。X2及びX3は、各々独立に、NR(Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)、酸素原子、又は硫黄原子を表す。Y1及びY2は、各々独立に、NRc(Rcは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)、又は炭素原子を表す。R11及びR16は、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基を表す。R11とY1は、互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよく、R16とY2は、互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。X11はZnと結合可能な基を表し、aは0、1、又は2を表す。
【0054】
一般式(PY2)中、R12~R15が表す1価の置換基は、一般式(PY1)中、R1~R8で表される1価の置換基と同じ基が挙げられる。
【0055】
一般式(PY2)中、R17が表すハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられる。
R17が表すアルキル基としては、好ましくは炭素数1~48、より好ましくは炭素数1~24の、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基で、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-ノルボルニル基、1-アダマンチル基が挙げられる。
R17が表すアリール基としては、好ましくは炭素数6~48、より好ましくは炭素数6~24のアリール基で、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。
R17が表すヘテロ環基としては、好ましくは炭素数1~32、より好ましくは炭素数1~18のヘテロ環基で、例えば、2-チエニル基、4-ピリジル基、2-フリル基、2-ピリミジニル基、1-ピリジル基、2-ベンゾチアゾリル基、1-イミダゾリル基、1-ピラゾリル基、ベンゾトリアゾール-1-イル基が挙げられる。
【0056】
一般式(PY2)中、X2及びX3が表すNRにおいて、Rが表すアルキル基としては、好ましくは炭素数1~48、より好ましくは炭素数1~24の、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基で、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-ノルボルニル基、1-アダマンチル基が挙げられる。
Rが表すアルケニル基としては、好ましくは炭素数2~48、より好ましくは炭素数2~18のアルケニル基で、例えば、ビニル基、アリル基、3-ブテン-1-イル基が挙げられる。
Rが表すアリール基としては、好ましくは炭素数6~48、より好ましくは炭素数6~24のアリール基で、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。
Rが表すヘテロ環基としては、好ましくは炭素数1~32、より好ましくは炭素数1~18のヘテロ環基で、例えば、2-チエニル基、4-ピリジル基、2-フリル基、2-ピリミジニル基、1-ピリジル基、2-ベンゾチアゾリル基、1-イミダゾリル基、1-ピラゾリル基、ベンゾトリアゾール-1-イル基が挙げられる。
Rが表すアシル基としては、好ましくは炭素数1~48、より好ましくは炭素数1~24のアシル基で、例えば、ホルミル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、テトラデカノイル基、シクロヘキサノイル基が挙げられる。
Rが表すアルキルスルホニル基としては、好ましくは炭素数1~48、より好ましくは炭素数1~24のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、2-エチルヘキシルスルホニル基、ヘキサデシルスルホニル基、オクチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基が挙げられる。
Rが表すアリールスルホニル基としては、好ましくは炭素数6~48、より好ましくは炭素数6~24のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル基、1-ナフチルスルホニル基が挙げられる。
【0057】
一般式(PY2)中、Y1及びY2が表すNRcにおいて、Rcが表すアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基としては、一般式(PY1)中、X2及びX3が表すNRにおけるRが表すアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基と同じ基が挙げられる。
【0058】
一般式(PY2)中、R11及びR16が表すアルキル基としては、好ましくは炭素数1~48、より好ましくは炭素数1~24の、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基で、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-ノルボルニル基、1-アダマンチル基が挙げられる。
R11及びR16が表すアルケニル基としては、好ましくは炭素数2~48、より好ましくは炭素数2~18のアルケニル基で、例えば、ビニル基、アリル基、3-ブテン-1-イル基が挙げられる。
R11及びR16が表すアリール基としては、好ましくは炭素数6~48、より好ましくは炭素数6~24のアリール基で、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。
R11及びR16が表すヘテロ環基としては、好ましくは炭素数1~32、より好ましくは炭素数1~18のヘテロ環基で、例えば、2-チエニル基、4-ピリジル基、2-フリル基、2-ピリミジニル基、1-ピリジル基、2-ベンゾチアゾリル基、1-イミダゾリル基、1-ピラゾリル基、ベンゾトリアゾール-1-イル基が挙げられる。
R11及びR16が表すアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1~48、より好ましくは炭素数1~24のアルコキシ基で、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1-ブトキシ基、2-ブトキシ基、イソプロポキシ基、t-ブトキシ基、ドデシルオキシ基、また、シクロアルキルオキシ基であれば、例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基が挙げられる。
R11及びR16が表すアリールオキシ基としては、好ましくは炭素数6~48、より好ましくは炭素数6~24のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ基、1-ナフトキシ基が挙げられる。
R11及びR16が表すアルキルアミノ基としては、炭素数1~48、より好ましくは炭素数1~24のアルキルアミノ基で、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-ブチルアミノ基、t-ブチルアミノ基、n-オクチルアミノ基、2-エチルヘキシルアミノ基、n-デシルアミノ基、n-ドデシルアミノ基、n-オクタデシルアミノ基、ベンジルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、ジ-n-オクチルアミノ基、ジ(2-エチルヘキシル)アミノ基、ジ-n-デシルアミノ基、ジn-ドデシルアミノ基、ジオクタデシルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ブチルエチルアミノ基、ドデシルメチルアミノ基、ドデシルブチルアミノ基、オクタデシルメチルアミノ基、オクタデシル(2-エチルヘキシル)アミノ基、オクタデシルオクチルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、4-アセチルピペラジノ基、4-ベンゼンスルホニルピペラジノ基、ヘキサメチレンイミノ基が挙げられる。
R11及びR16が表すアリールアミノ基としては、炭素数6~48、より好ましくは炭素数6~24のアリールアミノ基で、例えば、フェニルアミノ基、4-メチルフェニルアミノ基、4-ブチルフェニルアミノ基、4-メトキシフェニルアミノ基、4-ブトキシフェニルアミノ基、4-クロロフェニルアミノ基、3-メトキシフェニルアミノ基、2-メトキシフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(4-メチルフェニル)アミノ基、ビス(4-ブチルフェニル)アミノ基、N-フェニル-N-メチルアミノ基、N-フェニル-N-エチルアミノ基、N-フェニル-N-ブチルアミノ基、N-4-メトキシフェニル-N-メチルアミノ基、等が挙げられる。更に、総炭素数が6から18のアリールアミノ基が好ましく、例えば、フェニルアミノ基、4-メチルフェニルアミノ基、4-ブチルフェニルアミノ基、4-メトキシフェニルアミノ基、4-ブトキシフェニルアミノ基、4-クロロフェニルアミノ基、3-メトキシフェニルアミノ基、2-メトキシフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(4-メチルフェニル)アミノ基、N-フェニル-N-メチルアミノ基、N-フェニル-N-エチルアミノ基、N-フェニル-N-ブチルアミノ基、N-4-メトキシフェニル-N-メチルアミノ基が挙げられる。
R11及びR16が表すヘテロ環アミノ基としては、好ましくは炭素数1~32、より好ましくは1~18のヘテロ環アミノ基で、例えば、4-ピリジルアミノ基が挙げられる。
【0059】
一般式(PY2)中、X11が表すZnと結合可能な基としては、一般式(PY1)中、Xで表す基と同じ基が挙げられる。
【0060】
これらの中でも、耐光性向上の観点から、一般式(PY2)で表される化合物は、
R12~R15が、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、
R17が、水素原子を表し、
X2及びX3が、各々独立に、酸素原子を表し、
Y1及びY2が、各々独立に、NRc(Rcは水素原子、アルキル基)、又は酸素原子を表し、
R11及びR16が、各々独立に、アルキル基、又はアリール基を表し、
X11が、アシルオキシ基を表し、
aが1を表す化合物が好ましい。
【0061】
ピロメテン化合物の具体例としては、特開2012-140586号公報の段落0051~段落0056に記載された化合物が挙げられる。
その他、ピロメテン化合物の具体例としては、特開2012-177037号公報の段落0054~段落0060に記載された化合物、特開2013-72966号公報の段落0078~段落0086に記載された化合物も挙げられる。
【0062】
なお、ピロメテン化合物は、1種単独で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0063】
(添加剤A)
添加剤Aは、ヒンダードアミン化合物、ヒンダードフェノール化合物、及び3級アミン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種である。組成物が、添加剤Aを含むと、ローダミン色素の分解がさらに抑制され、耐光性が向上する。
なお、添加剤Aは、1種単独で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0064】
-ヒンダードアミン化合物-
ヒンダードアミン化合物は、ヒンダードアミン構造を有する化合物である。
ヒンダードアミン化合物の例は、シーエムシー発行の、大勝靖一監修“高分子安定化の総合技術-メカニズムと応用展開-”などに記載がある。
ヒンダードアミン化合物としての市販品としては、サノールLS-770、サノールLS-765、サノールLS-2626(以上、三共社製)、アデカスタブLA-77、LA-57,LA-52、LA-62,LA-63、LA-67,LA-68、LA-72(以上、ADEKA社製)、TINUVIN123、TINUVIN144、TINUVIN622、TINUVIN765、TINUVIN944(以上、BASF社製)などが挙げられる。
【0065】
耐光性向上の観点から、ヒンダードアミン化合物は、下記一般式(H1)で表される構造を含むことが好ましく、下記一般式(H1)で表される構造を2つ以上含むことがより好ましく、2つ以上3つ以下含むことがさらに好ましい。
【0066】
【化9】
一般式(H1)中、R
H1は、水素原子、酸素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を表し、R
H2~R
H6及びR
H8~R
H11は、各々独立に、水素原子、又はアルキル基を表す。ただし、R
H2及びR
H3と、R
H4及びR
H5と、R
H8及びR
H9と、R
H10及びR
H11との少なくとも2つの組合わせは、アルキル基を示す。*は結合位置を示す。
【0067】
一般式(H1)中、RH1が表すアルキル基としては、置換若しくは無置換の炭素数1~30のアルキル基が挙げられる。
RH1が表すアルコキシ基としては、置換若しくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基が挙げられる。
【0068】
RH2~RH6及びRH8~RH11が表すアルキル基としては、置換若しくは無置換の炭素数1~30のアルキル基が挙げられる。
【0069】
耐光性向上の観点から、ヒンダードアミン化合物としては、下記一般式(H1-A)~(H1-G)で表される化合物が好ましく、下記一般式(H1-A)で表される化合物がより好ましい。
【0070】
【0071】
【0072】
一般式(H1-A)~(H1-G)中、R21は、水素原子、炭素数1~18(好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~5、さらに好ましくは炭素数1~3、さらに好ましくは炭素数1又は2)のアルキル基、又は-OR8を表し、R8は水素原子又は炭素数1~20(好ましくは炭素数1~12)のアルキル基を表す。
R22は水素原子または炭素数が1~20(好ましくは炭素数1~12、より好ましくは炭素数1~8、さらに好ましくは炭素数1~6)のアルキル基を表す。
L21は、単結合、炭素数1~20(好ましくは炭素数1~10)のアルキレン基、炭素数6~20(好ましくは炭素数6~10)のアリーレン基を表す。
X21およびX22は、各々独立に、酸素原子または-NH-を表す。
nは、1~20(好ましくは1~10)の整数を表す。
【0073】
-ヒンダードフェノール化合物-
ヒンダードフェノール化合物は、ヒンダード構造、及びフェノール水酸基を有する化合物である。
ヒンダードフェノール化合物としては、4-tert-ブチルカテコール、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、4,4’,4’ ’-(1-メチルプロパニル-3-イリデン)トリス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、オクタデシル 3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が挙げられる。
これらの中でも、耐光性向上の観点から、ヒンダードフェノール化合物としては、分岐アルキル基で置換されたフェノール化合物が好ましく、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]がより好ましい。
【0074】
-3級アミン化合物-
3級アミン化合物は、3級アミン構造を有する化合物である。3級アミン化合物は、ヒンダードアミン化合物以外の3級アミン化合物である。
3級アミン化合物としては、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリブチルアミン、N,N-ジエチルアニリン等が挙げられる。
これらの中でも、耐光性向上の観点から、3級アミン化合物としては、環状3級アミン化合物が好ましく、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)がより好ましい。
【0075】
(ローダミン色素、ピロメテン化合物、及び添加剤Aの含有量)
ローダミン色素に対する、ピロメテン化合物の含有量は、8質量%~210質量%が好ましく、10質量%~200質量%がより好ましく、15質量%~120質量%がさらに好ましい。
ローダミン色素の分解を効果的に抑制し、さらに耐光性を向上させる観点から、ピロメテン化合物の含有量は8質量%以上(特に10質量%以上)が好ましい。
一方、ピロメテン化合物による、ローダミン色素の色味の低下を抑える観点から、ピロメテン化合物の含有量は、210質量%以下(特に200質量%以下)が好ましい。
【0076】
媒体(樹脂、溶媒、分散媒等)に対する、ローダミン色素とピロメテン化合物との合計含有量は、0.2質量%~30質量%が好ましく、0.5質量%~20質量%がより好ましく、1質量%~15質量%がさらに好ましく、2質量%~15質量%が特に好ましい。
ローダミン色素及びピロメテン化合物の色味を呈示させ、かつ耐光性により優れる観点から、ローダミン色素とピロメテン化合物との合計含有量は0.5質量%以上(特に1質量%以上)が好ましい。
一方、ローダミン色素及びピロメテン化合物の凝集による、ローダミン色素の色味の低下を抑える観点から、ローダミン色素とピロメテン化合物との合計含有量は20質量%以下が好ましい。
【0077】
ローダミン色素及びピロメテン化合物の合計含有量に対する、添加剤Aの含有量は、5質量%~150質量%が好ましく、10質量%~100質量%がより好ましく、12質量%~50質量%がさらに好ましい。
ローダミン色素の分解を効果的に抑制し、さらに耐光性を向上させる観点から、添加剤Aの含有量は7質量%以上(特に10質量%以上)が好ましい。
一方、添加剤A自身の分解を抑制し、耐光性を向上させる観点から、添加剤Aの含有量は150質量%以下が好ましく、100質量%以下がより好ましい。
【0078】
なお、ローダミン色素、ピロメテン化合物、及び添加剤Aの含有量は、例えば、LC-MS(液体クロマト質量分析)法を利用した定量により測定できる。
【0079】
(媒体)
媒体は、組成物の用途に応じて選択される。
具体的には、例えば、組成物が固体物の場合、ローダミン色素、ピロメテン化合物、及び添加剤A等の成分を結着する樹脂が挙げられ、組成物が液体の場合、ローダミン色素、ピロメテン化合物、及び添加剤A等の成分を溶解又は分散する溶媒又は分散媒が挙げられる。
また、組成物が液体の場合、ローダミン色素、ピロメテン化合物、及び添加剤A等の成分を含む樹脂粒子を分散する分散媒も挙げられる。つまり、本実施形態に係る組成物は、ローダミン色素、ピロメテン化合物、及び添加剤A等の成分を含む樹脂粒子と、分散媒とを含む組成物であってもよい。
【0080】
樹脂は、結着樹脂として適用される。
樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α-メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらとビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの中でも、樹脂としては、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0081】
溶媒及び分散媒としては、水媒体、有機媒体が挙げられる。
水媒体としては、蒸留水、又はオン交換水等が挙げられる。
有機媒体としては、アルコール溶媒、アミド溶媒、ケトン溶媒、エーテル溶媒、又はエステル溶媒等の周知の液状媒体が挙げられる。
特に、ローダミン色素及びピロメテン化合物は油溶性のため、ローダミン色素及びピロメテン化合物が溶解した液体組成物とするには、親油性溶媒を適用することがよい。
【0082】
媒体の含有量は、組成物に対して、50質量%~2000質量%が好ましく、50質量%~1000質量%がより好ましい。
【0083】
これらの媒体は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
(その他添加剤)
その他添加剤としては、用途に応じた周知の添加剤が挙げられる。
また、その他添加剤としては、ローダミン色素及びピロメテン化合物以外の着色剤、添加剤A以外の一重項酸素クエンチャーも挙げられる。
一重項酸素クエンチャーとは、一重項酸素と反応して一重項酸素を失活させ得る化合物である。
一重項酸素クエンチャーとしては、例えば、金属塩(ベンゼンスルホン酸ニッケル塩、p-トルエンスルホン酸ニッケル塩、ジメチルジチオカルバミン酸ニッケル塩、又はジ-n-ブチルジチオカルバミン酸ニッケル塩等)、金属錯体(テトラブチルホスホニウムビス(1,2-ベンゼンジチオレート)ニコレート(III)、及びテトラブチルホスホニウムビス(4-メチル-1,2-ベンゼンジチオレート)ニコレート(III)等)、及びジインモニウム塩化合物等が挙げられる。
【0085】
(組成物の用途)
本実施形態に係る組成物は、感熱転写記録用インクシート、トナー、インクジェット記録用インク、カラーフィルタ、筆記用ペン、着色プラスチック、その他インク等に適用される。
特に、本実施形態に係る組成物は、感熱転写記録用インクシート、トナー、及びインクジェット記録用インクに適用されることが好ましい。
【0086】
<感熱転写記録用インクシート>
本実施形態に係る感熱転写記録用インクシートは、上記本実施形態に係る組成物を含む。
具体的には、本実施形態に係る感熱転写記録用インクシートは、一般に支持体上に色素供与層が形成された構造を有しており、その色素供与層中に、ローダミン色素及びピロメテン化合物を含む。
本実施形態に係るインクシートは、例えば、次の通り作製できる。ローダミン色素及びピロメテン化合物を結着樹脂とともに溶媒中に溶解する、又は分散媒中に微粒子状に分散させることによってインク液を調製する。該インク液を支持体上に塗設し、適宜乾燥して色素供与層を形成する。
【0087】
本実施形態に係る感熱転写記録用インクシートをフルカラー画像記録が可能な感熱転写記録材料に適用する場合、インクシートとしては、例えば、シアン画像を形成することができる熱拡散性シアン色素を含有するシアンインクシート、マゼンタ画像を形成することができる熱拡散性マゼンタ色素を含有するマゼンタインクシート、イエロー画像を形成することができる熱拡散性イエロー色素を含有するイエローインクシートが、支持体上に順次形成されたシートを適用する。
また、支持体上には、必要に応じて他に黒色画像形成物質を含むインクシートがさらに形成されたシートを適用してもよい。・
【0088】
シアンインクシートとしては、例えば、特開平3-103477号公報、特開平3-150194号公報などに記載されたインクシートが好適に挙げられる。
イエローインクシートとしては、例えば、特許第4468907号などに記載されたインクシートが好適に挙げられる。
そして、マゼンタインクシートとして、ローダミン色素及びピロメテン化合物を含有する本実施形態に係るインクシートを用いる。
【0089】
-支持体-
支持体には、周知のインクシート用支持体が適用できる。例えば、支持体としては、特開平7-137466号公報の段落番号0050に記載された支持体が好ましい。支持体の厚みは、2μm~30μmが好ましい。
【0090】
-色素供与層-
色素供与層は、ローダミン色素及びピロメテン化合物と共に、結着樹脂を含む。結着樹脂は、耐熱性が高く、加熱されたときに、ローダミン色素及びピロメテン化合物が受像材料へ移行するのを妨げないものであれば、特にその種類は制限されない。例えば、結着樹脂としては、特開平7-137466号公報の段落番号0049に記載された樹脂が好ましい。
また、色素供与層形成用の溶媒は、従来公知の溶媒を適宜選択できる。溶媒としては、特開平7-137466号公報の実施例に記載された溶媒が好ましい。ものを好ましく用いることができる。色素供与層中における、ローダミン色素及びピロメテン化合物の含有量は、各々、0.03g/m2~1.0g/m2が好ましく、0.1g/m2~0.6g/m2がより好ましい。また、色素供与層の厚みは、0.2μm~5μmが好ましく、0.4μm~2μmがより好ましい。
【0091】
-機能層-
本実施形態に係る感熱転写記録用インクシートは、色素供与層以外の層を有してもよい。例えば、インクシートは、支持体と色素供与層との間に中間層を有してもよい。インクシートは、色素供与層とは反対側の支持体面(以下「背面」ともいう。)にバック層を有してもよい。
中間層としては、例えば下塗り層、ローダミン色素及びピロメテン化合物の支持体方向への拡散を防止するための拡散防止層(親水性バリアー層)が挙げられる。
バック層としては、例えば、耐熱スリップ層を挙げられる。耐熱スリップ層は、サーマルヘッドのインクシートへの粘着防止を図ることができる。
【0092】
-感熱転写記録方法-
本実施形態に係る感熱転写記録用インクシートを用いて感熱転写記録を行う場合、サーマルヘッド等の加熱手段と受像材料を組み合わせて用いる。すなわち、画像記録信号に従ってサーマルヘッドから熱エネルギーがインクシートに加えられ、該熱エネルギーが加えられた部分のローダミン色素及びピロメテン化合物が受像材料に移行し固定されることによって画像記録がなされる、感熱転写記録方法である。
受像材料は、通常は支持体上にポリマーを含有するインク受容層を設けた構成を有している。受像材料の構成及び使用材料としては、例えば、特開平7-137466号公報の段落番号0056~0074に記載された受像材料の構成及び使用材料が好ましい。
【0093】
<トナー>
本実施形態に係るトナーは、上記本実施形態に係る組成物を含有する。
具体的には、本実施形態に係るトナーは、ローダミン色素及びピロメテン化合物と共に、結着樹脂を含む。結着樹脂は、トナー用に一般に使用される全ての樹脂が適用できる。結着樹脂としては、例えば、バインダー樹脂としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0094】
本実施形態に係るトナーには、トナーに対して流動性向上及び帯電制御等を付与する目的で、無機微粉末、又は有機微粒子等の外添剤を外部添加されていてもよい。外添剤としては、表面をアルキル基含有のカップリング剤等で処理したシリカ微粒子、チタニア微粒子が好ましい。なお、外添剤の数平均一次粒子径は10nm~500nmが好ましい。外添剤はトナーに対して0.1質量%~20質量%添加するのが好ましい。
【0095】
本実施形態に係るトナーは、離型剤を含んでもよい。離型剤としては、周知のトナー用離型剤が適用できる。離型剤としては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、及びエチレン-プロピレン共重合体等のオレフィン類;マイクロクリスタリンワックス;カルナウバワックス;サゾールワックス;パラフィンワックス等が挙げられる。離型剤は、トナー中に1質量%~5質量%添加することが好ましい。
【0096】
本実施形態に係るトナーには、荷電制御剤を含んでもよい。荷電制御剤としては、発色性の点から無色が好ましい。荷電制御剤としは、4級アンモニウム塩構造を有する化合物、及びカリックスアレン構造を有する化合物などが挙げられる。
【0097】
本実施形態に係るトナーは、一成分現像剤として用いてもよいし、キャリアと併用した二成分現像剤として用いてもよい。キャリヤとしては、鉄、又はフェライト等の磁性材料粒子のみで構成される非被覆キャリヤ、及び磁性材料粒子表面を樹脂等によって被覆した樹脂被覆キャリヤが挙げられる。キャリヤの平均粒子サイズは体積平均粒子径で30μm~150μmが好ましい。
【0098】
本実施形態に係るトナーを利用した画像形成方法としては、特に限定されるものではない。画像形成方法としては、例えば、感光体上に繰り返しトナー画像を形成した後、トナー画像を記録媒体に転写及び定着して画像を形成する方法、又は、感光体に形成されたトナー画像を逐次中間転写体へ転写した後、中間転写体から記録媒体にトナー画像を転写及び定着して、画像を形成する方法等が挙げられる。
【0099】
<インクジェット記録用インク>
本実施形態に係るインクジェット記録用インクは、上記本実施形態に係る組成物を含む。
具体的には、本実施形態に係るインクジェット記録用インクは、ローダミン色素及びピロメテン化合物と共に液状媒体を含む。インクジェット記録用インクは、親油性媒体、水性媒体等の液状媒体中に、ローダミン色素及びピロメテン化合物を溶解及び/又は分散させることによって作製することができる。
本実施形態に係るインクジェット記録用インクは、分光特性及び堅牢性等に優れている上、さらに溶解性までもが優れた色素化合物(ローダミン色素及びピロメテン化合物)を含有するので、インクジェット記録用インクとして好適である。
【0100】
-添加剤-
本実施形態に係るインクジェット記録用インクには、必要に応じてその他の添加剤が含有される。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、色素化合物分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0101】
乾燥防止剤は、インクジェット記録方式に用いるノズルのインク噴射口において該インクジェット記録用インクが乾燥することによる目詰まりを防止する目的で好適に使用される。
乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。乾燥防止剤の具体的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3-スルホレン等の含硫黄化合物;ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物;尿素誘導体が挙げられる。
これらのうち、乾燥防止剤としては、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールがより好ましい。
乾燥防止剤はインク中に10質量%~50質量%含有することが好ましい。
【0102】
浸透促進剤は、インクジェット記録用インクを紙によりよく浸透させる目的で好適に使用される。浸透促進剤としては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2-ヘキサンジオール等のアルコール類;ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
浸透促進剤は、インク中に5質量%~30質量%含有すれば通常充分な効果があり、印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲で使用するのが好ましい。
【0103】
紫外線吸収剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。
紫外線吸収剤としては、特開昭58-185677号公報、同61-190537号公報、特開平2-782号公報、同5-197075号公報、同9-34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物;特開昭46-2784号公報、特開平5-194483号公報、米国特許第3,214,463号明細書等に記載されたベンゾフェノン系化合物;特公昭48-30492号公報、同56-21141号公報、特開平10-88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物;特開平4-298503号公報、同8-53427号公報、同8-239368号公報、同10-182621号公報、特表平8-501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物;リサーチ・ディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物;スチルベン系化合物、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物(いわゆる蛍光増白剤)が挙げられる。
【0104】
褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。
褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤が挙げられる。
有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などが挙げられる。
金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体などが挙げられる。具体的には、金属錯体系の褪色防止剤としては、リサーチ・ディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許文献に記載された化合物;特開昭62-215272号公報の127頁~137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物が挙げられる。
【0105】
防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン-1-オキシド、p-ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン及びその塩等が挙げられる。
防黴剤は、インク中に0.02質量%~1.00質量%で含有させることが好ましい。
【0106】
pH調整剤としては、中和剤(有機塩基、無機アルカリ)が挙げられる。pH調整剤は、インクジェット記録用インクの保存安定性を向上させる目的で、該インクジェット記録用インクがpH6~10となるように添加するのが好ましく、pH7~10となるように添加するのがより好ましい。
pHは、25℃環境下において、処理液を25℃に調温した状態でpHメータ(例えば、東亜DDK社製のWM-50EG)を用いて測定される値である。
【0107】
表面張力調整剤としては、ノニオン性、カチオン性、又はアニオン性の界面活性剤が挙げられる。なお、本実施形態に係るインクジェット記録用インクの表面張力は、20mN/m~60mN/mが好ましく、25mN/m~45mN/mがより好ましい。また、本実施形態に係るインクジェット記録用インクの粘度は、30mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以下がより好ましい。
インク組成物の表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学株式会社製)を用い、プレート法により25℃の条件下で測定される値である。
【0108】
界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。
また、界面活性剤としては、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(商品名、AirProducts&Chemicals社製)も好ましい。
また、界面活性剤としては、N,N-ジメチル-N-アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。
さらに、界面活性剤としては、特開昭59-157636号公報の第37項~第38頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)に記載された界面活性剤も好ましい。
【0109】
消泡剤としては、フッ素系及びシリコーン系の化合物、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)に代表されるキレート剤等が挙げられる。
【0110】
(インクジェット記録用インクの調製方法)
ローダミン色素及びピロメテン化合物を水性媒体に分散させる場合、特開平11-286637号、特開2001-240763号、同2001-262039号、同2001-247788号の各公報に記載のように、ローダミン色素及びピロメテン化合物と油溶性ポリマーとを含有する着色微粒子を水性媒体に分散することが好ましい。また、特開2001-262018号、同2001-240763号、同2001-335734号、同2002-80772号の各公報に記載のように、高沸点有機溶媒に溶解したローダミン色素と、ピロメテン化合物を水性媒体中に分散することが好ましい。ローダミン色素及びピロメテン化合物を水性媒体に分散させる場合の、具体的な方法、使用する材料(油溶性ポリマー、高沸点有機溶剤、添加剤)及びそれらの使用量は、上記特許文献に記載された事項を適用することが好ましい。
【0111】
また、ローダミン色素及びピロメテン化合物を固体のまま微粒子状態に分散してもよい。分散時には、分散剤又は界面活性剤を使用することができる。
分散装置としては、スターラーや、インペラー攪拌装置、インライン攪拌装置、ミル(例えば、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル等)、超音波攪拌装置、高圧乳化分散装置(高圧ホモジナイザー;具体的な市販装置としてはゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、DeBEE2000(BEEインターナショナル社製)等)を使用することができる。
【0112】
インクジェット記録用インクの調製方法については、前述の特許文献以外にも、特開平5-148436号、同5-295312号、同7-97541号、同7-82515号、同7-118584号、特開平11-286637号、特開2001-271003号の各公報に詳細が記載されている。
【0113】
水性媒体は、水を主成分とし、所望により、水混和性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。水混和性有機溶剤の例には、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、2-オキサゾリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が挙げられる。
【実施例0114】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0115】
<実施例1>
(ポリエステル樹脂(1)の作製)
・テレフタル酸:30モル部
・フマル酸:70モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物:5モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:95モル部
撹拌装置、窒素導入管、温度センサ及び精留塔を備えたフラスコに、上記の材料を仕込み、1時間かけて温度を220℃まで上げ、上記材料100部に対してチタンテトラエトキシド1部を投入した。生成する水を留去しながら30分間かけて230℃まで温度を上げ、該温度で1時間脱水縮合反応を継続した後、反応物を冷却した。
こうして、重量平均分子量18,000、ガラス転移温度60℃のポリエステル樹脂(1)を得た。
【0116】
(蛍光顔料モデル膜の調整)
アクリベース樹脂FF-187(藤倉化成製)0.2g、ポリエステル樹脂(1)0.45g、ローダミン色素としてローダミン6GCP―N(田岡化学工業製)0.04g、ローダミン色素としてローダミンB(田岡化学工業製)0.01g、ピロメテン化合物(PY-1)0.01g、クロロホルム7mlを室温で混合した。
得られた溶液を用いて、ガラス基板(5cm×5cm、イーグルXG、AXEL製)上にスピンコート法(回転数500rpm、30秒)により薄膜を形成した。加熱処理(80℃、1分間)により、蛍光顔料モデル膜を作製した。
【0117】
(耐光性)
得られた蛍光顔料モデル膜に対し、耐光性試験機(スガ試験機社製、商品名「キセノンウエザーメーターX25」)を用いて、温度25℃(±5℃)/湿度50%の環境下、キセノン光照射(照度20万ルクス)を24時間行った。キセノンランプ光源には、320nmの紫外線カットフィルターを装着した。
キセノン光照射の前後の蛍光顔料モデル膜について、吸収スペクトルから最大吸収波長及び相対吸収強度を求め、蛍光スペクトルから最大吸収強度及び相対蛍光強度を求めた。 吸収スペクトルは積分球分光光度計(Shimadzu UV-1900)にて、蛍光スペクトルは蛍光分光光度計(日立 F7100)にて測定した。
そして、キセノン照射の前後の最大吸収波長のシフト幅(表中「吸収波長シフト幅」と表記)、及び蛍光減少量を求めた。なお、蛍光減少量は、下記式で求めた。
式:蛍光減少率 = (キセノン光照射前の相対蛍光強度)/(キセノン光照射後の相対蛍光強度)×100
結果を表1に示す。
【0118】
<実施例2~22、比較例1>
実施例1のピロメテン化合物(PY-1)及びその添加量を、表1に示す化合物および添加量に変更した以外は、実施例1と同様に色素組成物を作製して、実施例1と同様にモデル膜を作製した。そして、耐光性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0119】
ここで、後述する実施例も含めて、使用した化合物について示す。
【0120】
【0121】
【0122】
AT-6 ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
表1中、*1~*9は、次の事項を示す。
*1:かっこ内の値は、ローダミン色素に対するピロメテン化合物の含有量(質量%)を示す。
*2:RO+PY合計量は、樹脂に対する、ローダミン色素とピロメテン化合物との合計含有量(質量%)を示す。
*3:かっこ内の値は、ローダミン色素とピロメテン化合物の合計含有量に対する添加剤Aの含有量(質量%)を示す。
*4:吸収波長シフト幅は、吸収(色味)が変化していない指標である。
*5:蛍光減少率は、蛍光(色味)が減少していない指標である。
*6:実施例1において、アクリベース樹脂FF-187(藤倉化成製)2.0g、ポリエステル樹脂(1)4.5g、に変更。
*7:実施例1において、アクリベース樹脂FF-187(藤倉化成製)4.0g、ポリエステル樹脂(1)9g、に変更。
*8:実施例1において、アクリベース樹脂FF-187(藤倉化成製)6.0g、ポリエステル樹脂(1)13.5g、に変更。
*9:実施例1において、アクリベース樹脂FF-187(藤倉化成製)0.11g、ポリエステル樹脂(1)0.25g、に変更。
【0127】
上記結果から、ピロメテン化合物を添加していない比較例1では、初期の極大吸収波長545nmがキセノン光照射後に530nmと15nmの短波長シフトがあるのに対して、本実施例は、初期とキセノン光照射後の極大吸収波長が同じであり、短波長シフトしないことがわかる。
また、本実施例では、ピロメテン化合物の添加により吸収強度と蛍光強度の向上が見られ、また、キセノン光照射後の蛍光強度減少率がピロメテン化合物を添加していない比較例1よりも高く、耐光性が向上していることがわかる。
このように、キセノン光は、紫外線及び波長400nmから700nmまでの可視光と同等の吸収スペクトルを有するため、本実施例は、比較例に比べ、紫外線及び波長400nmから700nmまでの可視光に対する耐光性に優れることがわかる。
また、実施例9及び10と実施例8、11~14、16及び22とを比較すると、添加剤Aの量が10~100質量%であると、耐光性により優れることがわかる。
実施例5と実施例1~4とを比較すると、ピロメテン化合物が10質量%以上であると、吸収強度と蛍光強度と耐光性により優れることがわかる。
実施例18~19と実施例20を比較すると、樹脂に対する、ローダミン色素とピロメテン化合物との合計含有量が0.5質量%以上であると、耐光性により優れることがわかる。
実施例18と実施例19とを比較すると、樹脂に対する、ローダミン色素とピロメテン化合物との合計含有量が1質量%以上であると耐光性にさらに優れることがわかる。
【0128】
<実施例T1>
(トナーの作製)
-ポリエステル樹脂(P1)の作製-
・テレフタル酸:30モル部
・フマル酸:70モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物:5モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:95モル部
撹拌装置、窒素導入管、温度センサ及び精留塔を備えたフラスコに、上記の材料を仕込み、1時間かけて温度を220℃まで上げ、上記材料100部に対してチタンテトラエトキシド1部を投入した。生成する水を留去しながら30分間かけて230℃まで温度を上げ、該温度で1時間脱水縮合反応を継続した後、反応物を冷却した。
こうして、重量平均分子量18,000、ガラス転移温度60℃のポリエステル樹脂(P1)を得た。
【0129】
-ポリエステル樹脂粒子分散液(1)の調製-
温度調節手段及び窒素置換手段を備えた容器に、酢酸エチル40部及び2-ブタノール25部を投入し、混合溶剤とした後、ポリエステル樹脂(P1)100部を徐々に投入し溶解させ、ここに、10質量%アンモニア水溶液(樹脂の酸価に対してモル比で3倍量相当量)を入れて30分間撹拌した。次いで、容器内を乾燥窒素で置換し、温度を40℃に保持して、混合液を攪拌しながらイオン交換水400部を2部/分の速度で滴下した。滴下終了後、室温(20℃乃至25℃)に戻し、撹拌しつつ乾燥窒素により48時間バブリングを行うことにより、酢酸エチル及び2-ブタノールを1,000ppm以下まで低減させた樹脂粒子分散液を得た。樹脂粒子分散液にイオン交換水を加え、固形分量を20質量%に調整し、ポリエステル樹脂粒子分散液(1)を得た。
【0130】
-蛍光着色剤粒子分散液(1)の作製-
・ローダミン色素(ローダミンB):3部
・ピロメテン化合物(PY-1):3部
・ポリエステル樹脂(P1):94部
温度調節手段及び窒素置換手段を備えた容器に、酢酸エチル40部及び2-ブタノール25部を投入し、混合溶剤とした後、上記の材料100部を徐々に投入し溶解させ、ここに、10質量%アンモニア水溶液(樹脂の酸価に対してモル比で3倍量相当量)を入れて30分間撹拌した。次いで、容器内を乾燥窒素で置換し、温度を40℃に保持して、混合液を攪拌しながらイオン交換水400部を2部/分の速度で滴下した。滴下終了後、室温(20℃乃至25℃)に戻し、撹拌しつつ乾燥窒素により48時間バブリングを行うことにより、酢酸エチル及び2-ブタノールを1,000ppm以下まで低減させた樹脂粒子分散液を得た。樹脂粒子分散液にイオン交換水を加え、固形分量を20質量%に調整し、蛍光着色剤粒子分散液(1)を得た。
【0131】
-着色顔料粒子分散液(1)の調製-
・着色顔料(C.I.Pigment Violet 19):70部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK):30部
・イオン交換水:200部
上記の材料を混合し、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて10分間分散した。分散液中の固形分量が20質量%となるようイオン交換水を加え、体積平均粒径140nmの着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液(1)を得た。
【0132】
-離型剤粒子分散液(1)の調製-
・パラフィンワックス(日本精蝋(株)製、HNP-9):100部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK):1部
・イオン交換水:350部
上記の材料を混合して100℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社、商品名ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザー(ゴーリン社)で分散処理し、体積平均粒径200nmの離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液(1)(固形分量20質量%)を得た。
【0133】
(トナー粒子(1)の作製)
・ポリエステル樹脂粒子分散液(1):60.8部
・蛍光着色剤粒子分散液(1):20部
・着色顔料粒子分散液(1):0.9部
・離型剤粒子分散液(1):6部
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK、固形分量20質量%):1部
上記の材料を丸型ステンレス製フラスコに入れ、0.1N(=mol/L)の硝酸を添加してpHを3.5に調整した後、ポリ塩化アルミニウム濃度が10質量%の硝酸水溶液30部を添加した。次いで、ホモジナイザー(IKA社製、商品名ウルトラタラックスT50)を用いて液温30℃において分散した後、加熱用オイルバス中で45℃まで加熱し30分間保持した。その後、ポリエステル樹脂粒子分散液(1)30.4部を追加し1時間保持し、0.1N水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを8.5に調整した後、84℃まで加熱し2.5時間保持した。次いで、20℃/分の速度で20℃まで冷却し、固形分を濾別し、イオン交換水で充分に洗浄し、乾燥させることによりトナー粒子(1)を得た。トナー粒子(1)の体積平均粒径は7μmであった。
【0134】
(トナー(1)の作製)
得られたトナー粒子(1)100部に対して疎水性シリカ(日本アエロジル(株)製、RY50)を1.5部と疎水性酸化チタン(日本アエロジル(株)製、T805)を1.0部とを、サンプルミルを用いて10,000rpm(revolutions per minute)で30秒間混合ブレンドした。その後、目開き45μmの振動篩いで篩分して、トナー(1)(静電荷像現像用トナー)を調製した。得られたトナー(1)の体積平均粒径は、7μmであった。
【0135】
(キャリア(1)の作製)
・フェライト粒子(平均粒径35μm):100部
・トルエン:14部
・ポリメチルメタクリレート(MMA、重量平均分子量75,000):5部
・カーボンブラック(VXC-72、キャボット社製、体積抵抗率:100Ωcm以下):0.2部
フェライト粒子を除く上記材料をサンドミルにて分散して分散液を調製し、この分散液をフェライト粒子とともに真空脱気型ニーダに入れ、攪拌しながら減圧し乾燥させることによりキャリア(1)を得た。
【0136】
(現像剤(1)の作製)
トナー(1)8部とキャリア(1)92部とをVブレンダーにて混合し、現像剤(1)(静電荷像現像剤)を作製した。
【0137】
(トナー耐光性の評価)
各例の現像剤(1)を、富士フイルムビジネスイノベーション(株)製「DocuCentre-III C7600」の現像器に充填し、記録紙(OKトップコート+紙、王子製紙(株)社製)上に、定着温度190℃、定着圧力4.0kg/cm2にて、トナー載り量が4.5g/cm2のピンク色のベタ画像を形成した。
耐光性試験機(スガ試験機社製、商品名「キセノンウエザーメーターX25」)を用いて、得られた画像に対して、温度25℃(±5℃)/湿度50%の環境下、キセノン光照射(照度20万ルクス)を24時間行った。キセノンランプ光源には、320nmの紫外線カットフィルターを装着した。
キセノン光照射の前後の画像について、目視にて、ピンク色の色味が変化していない場合をAとし、ピンク色の色味が少し変化している場合をBとし、ピンク色の色味が著しく変色している場合をCとし、評価した。
結果を表2に示す。
【0138】
<実施例T2:混練粉砕法>
(トナー粒子(2)の作製)
・ポリエステル樹脂(P1):94部
・ローダミン蛍光色素(ローダミンB):0.5部
・ピロメテン化合物(PY-1):0.5部
・着色顔料(C.I.Pigment Violet 19):0.8部
・パラフィンワックス(日本精蝋(株)製、HNP-9):5.1部
・共重合石油樹脂(A)(C5系石油留分(イソプレン)/C5系石油留分(ピペリレン)/イソプロペニルトルエン=モノマー質量比(1.5/1.5/97)、軟化点:125℃):5部
上記混合物をエクストルーダーで混練し、表面粉砕方式の粉砕機で粉砕した後、風力式分級機で細粒、粗粒を分級し、体積平均粒径D50=8.0μmのトナー粒子(2)を得た。
【0139】
(トナー(2)の作製)
得られたトナー粒子(2)100部に対して、平均粒径40nmの負帯電性シリカ1.0部、及び平均粒径15nmの負帯電性チタニア0.5部を添加してトナー(2)(外添トナー)とした。
【0140】
(現像剤の作製)
トナー(2)6部に対して、粒子径50μmのフェライトにスチレン-メタクリレート共重合体を被覆したキャリア100部を添加、混合して現像剤(2)(静電荷像現像剤)を製造した。
【0141】
(トナー耐光性の評価)
そして、得られた現像剤(2)を用いて、実施例T1と同様に、トナー耐光性の評価を実施した。
【0142】
<実施例T3:スチレンアクリル樹脂/凝集合一法)
(スチレンアクリル樹脂粒子分散液(1)の作製)
・スチレン: 308部
・n-ブチルアクリレート: 100部
・アクリル酸: 4部
・ドデカンチオール: 6部
・プロパンジオールジアクリレート: 1.5部
上記成分を混合し、溶解した混合物を、アニオン界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)4部をイオン交換水550部に溶解した水溶液に投入して、フラスコ中で乳化した後、10分間混合しながら、これに過硫酸アンモニウム6部をイオン交換水100部に溶解した水溶液を投入し、窒素置換を行った後、フラスコ内を撹拌しながら内容物が75℃になるまでオイルバスで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。こうして、平均粒径が195nm、重量平均分子量(Mw)が34000である樹脂粒子を分散させてなるスチレンアクリル樹脂粒子分散液(1)(樹脂粒子濃度:20%)を得た。なお、スチレンアクリル樹脂のガラス転移温度は52℃であった。
【0143】
(蛍光着色剤粒子分散液(SA1)の作製)
・スチレン: 308部
・n-ブチルアクリレート: 100部
・アクリル酸: 4部
・ドデカンチオール: 6部
・プロパンジオールジアクリレート: 1.5部
・ローダミン色素(ローダミンB)13.4部
・ヒンダードアミン化合物(AT-1)13.4部
上記成分を混合し、スチレンアクリル樹脂粒子分散液(1)と同様に作製して蛍光着色剤粒子分散液(SA1)(粒子濃度:20%)を得た。
【0144】
(トナー粒子(3)の作製)
・スチレンアクリル樹脂粒子分散液(1):60.8部
・蛍光着色剤粒子分散液(SA1):20部
・着色顔料粒子分散液(1):0.9部
・離型剤粒子分散液(1):6部
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK、20%):1部
上記の材料を丸型ステンレス製フラスコに入れ、0.1N(=mol/L)の硝酸を添加してpHを3.5に調整した後、ポリ塩化アルミニウム濃度が10質量%の硝酸水溶液30部を添加した。次いで、ホモジナイザー(IKA社製、商品名ウルトラタラックスT50)を用いて液温30℃において分散した後、加熱用オイルバス中で45℃まで加熱し30分間保持した。その後、スチレンアクリル樹脂粒子分散液(1)30.4部を追加し1時間保持し、0.1N水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを8.5に調整した後、84℃まで加熱し2.5時間保持した。次いで、20℃/分の速度で20℃まで冷却し、固形分を濾別し、イオン交換水で充分に洗浄し、乾燥させることによりトナー粒子(20)を得た。トナー粒子(3)の体積平均粒径は8μmであった。
そして、トナー粒子(3)を用いて、実施例T1と同様にして、トナー(3)及び現像剤(3)を作製した。
【0145】
(トナー耐光性の評価)
そして、得られた現像剤(3)を用いて、実施例T1と同様に、トナー耐光性の評価を実施した。
【0146】
<実施例T4~T14、比較例T1~T3>
表2に従って、実施例T1~T3と同様の方法において、ピロメテン化合物(PY-1)の代わりに、表2に示した種及び量の化合物を添加し、トナー、及び現像剤を作製した。
そして、得られた現像剤を用いて、実施例T1と同様に、トナー耐光性の評価を実施した。
【0147】
【0148】
表2中、*1~*2が示す事項は、次の通りである。
*1:かっこ内の値は、ローダミン色素に対するピロメテン化合物の含有量(質量%)を示す。
*2:ローダミン色素とピロメテン化合物の合計含有量に対する添加剤Aの含有量(質量%)を示す。
【0149】
上記結果から、本実施例のトナーは、比較例のトナーに比べ、紫外線及び波長400nmから700nmまでの可視光に対する耐光性に優れていることがわかる。
また、実施例1~13と実施例12~14とを比較すると、ピロメテン化合物は、亜鉛錯体であると、ボロン錯体である場合に比べ、耐光性により優れることがわかる。
【0150】
<実施例IS1>
(感熱転写記録用インクシートの作製)
裏面に熱硬化アクリル樹脂(厚み1μm)を用いて耐熱滑性処理が施された厚み6.0μmのポリエステルフィルム(商品名ルミラー、(株)東レ製)を支持体として使用し、フィルムの表面側に下記組成の色素供与層形成用塗料組成物をワイヤーバーコーティングにより乾燥時の厚みが1μmとなるように塗布し、感熱転写記録用インクシートを作製した。
-色素供与層形成用塗料組成物-
・ローダミン色素(ローダミンB):3.0質量部
・ピロメテン化合物(PY-1):3.0質量部
・ポリビニルブチラール樹脂 4.5質量部
(商品名エスレックBX-1、積水化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン/トルエン(1/1[v/v]) 90質量部
【0151】
(インクシート耐光性の評価)
得られた感熱転写記録用インクシートと富士フイルム(株)製ASK2000用受像材料とを、色素供与層と受像層とが接するようにして重ね合わせ、色素供与材料の背面側からサーマルヘッドを使用し、サーマルヘッドの出力0.25W/ドット、パルス巾0.15~15ミリ秒、ドット密度6ドット/mmの条件で印字を行い、受像材料の受像層にマゼンタ色の色素を像状に染着させたところ、転写むらのない鮮明な感熱転写記録画像が得られた。
耐光性試験機(スガ試験機社製、商品名「キセノンウエザーメーターX25」)を用いて、得られた画像に対して、温度25℃(±5℃)/湿度50%の環境下、紫外線照射(照度20万ルクス)を24時間行った。キセノンランプ光源には、320nmの紫外線カットフィルターを装着した。
キセノン光照射の前後の画像について、目視にて、ピンク色の色味が変化していない場合をAとし、ピンク色の色味が少し変化している場合をBとし、ピンク色の色味が著しく変色している場合をCとした。
結果を表3に示す。
【0152】
<実施例IS2~IS3、比較例IS1>
実施例IS1と同様の方法において、ピロメテン化合物(PY-1)の代わりに、表2に示した種及び量の化合物を添加し、感熱転写記録用インクシートを作製した。
そして、得られた感熱転写記録用インクシートを用いて、実施例IS1と同様に、インクシート耐光性の評価を実施した。
【0153】
【0154】
表2中、*1~*2が示す事項は、次の通りである。
*1:かっこ内の値は、ローダミン色素に対するピロメテン化合物の含有量(質量%)を示す。
*2:ローダミン色素とピロメテン化合物の合計含有量に対する添加剤Aの含有量(質量%)を示す。
【0155】
上記結果から、本実施例の感熱転写記録用インクシートは、比較例の感熱転写記録用インクシートに比べ、紫外線及び波長400nmから700nmまでの可視光に対する耐光性に優れていることがわかる。
【0156】
<実施例IJ1>
(インクジェット記録用インクの作製)
ローダミン色素(ローダミンB)3.5gと、ピロメテン化合物(PY-1)2.1gと、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム7.04gとを、高沸点有機溶媒(S-2)4.22g、高沸点有機溶媒(S-11)5.63g及び酢酸エチル50mlの混合溶媒中に70℃にて溶解させた。この溶液中に500mlの脱イオン水をマグネチックスターラーで撹拌しながら添加し、水中油滴型の粗粒分散物を作製した。
なお、高沸点有機溶媒(S-2)及び(S-11)は、下記構造式の化合物である。なお、Meはメチル基を示す。
【0157】
【0158】
次に、この粗粒分散物を、マイクロフルイダイザー(MICROFLUIDEX Inc社製)にて60MPaの圧力で5回通過させることで微粒子化を行い、さらにでき上がった乳化物をロータリーエバポレータにて酢酸エチルの臭気が無くなるまで脱溶媒を行った。こうして得られた微細乳化物に、ジエチレングリコール140g、グリセリン50g、SURFYNOL465(商品名、AirProducts&Chemicals社製)7g、脱イオン水900mlを添加してインクジェット記録用インクを得た。
【0159】
(インク耐光性の評価)
得られたインクジェット記録用インクをインクジェットプリンタ(商品名PM-G800、セイコーエプソン(株)製)のカートリッジに詰め、同機にてインクジェット用記録媒体(商品名 画彩写真仕上げPro、富士フイルム(株)製)に画像を記録した。
耐光性試験機(スガ試験機社製、商品名「キセノンウエザーメーターX25」)を用いて、得られたインクに対して、温度25℃(±5℃)/湿度50%の環境下、キセノン光照射(照度20万ルクス)を24時間行った。キセノンランプ光源には、320nmの紫外線カットフィルターを装着した。
キセノン光照射の前後の画像について、目視にて、ピンク色の色味が変化していない場合をAとし、ピンク色の色味が少し変化している場合をBとし、ピンク色の色味が著しく変色している場合をCとした。
結果を表4に示す。
【0160】
<実施例IJ2~IJ3、比較例IJ1>
実施例IS1と同様の方法において、ピロメテン化合物(PY-1)の代わりに、表2に示した種及び量の化合物を添加し、インクジェット記録用インクを作製した。
そして、得られたインクジェット記録用インクを用いて、実施例IJ1と同様に、インク耐光性の評価を実施した。
【0161】
【0162】
表4中、*1~*2が示す事項は、次の通りである。
*1:かっこ内の値は、ローダミン色素に対するピロメテン化合物の含有量(質量%)を示す。
*2:ローダミン色素とピロメテン化合物の合計含有量に対する添加剤Aの含有量(質量%)を示す。
【0163】
上記結果から、本実施例のインクジェット記録用インクは、比較例のインクジェット記録用インク比べ、紫外線及び波長400nmから700nmまでの可視光に対する耐光性に優れていることがわかる。