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特開2024-152032アライメント装置、アライメント方法、及び成膜装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152032
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】アライメント装置、アライメント方法、及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/68 20060101AFI20241018BHJP
   C23C 14/24 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01L21/68 F
H01L21/68 K
C23C14/24 J
C23C14/24 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065933
(22)【出願日】2023-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 貴志
【テーマコード(参考)】
4K029
5F131
【Fターム(参考)】
4K029DA03
4K029HA03
4K029HA04
4K029JA01
4K029KA01
5F131AA03
5F131AA10
5F131AA33
5F131BA03
5F131CA01
5F131DA20
5F131DA33
5F131DA42
5F131DB02
5F131DB72
5F131EA03
5F131EA14
5F131EA16
5F131EA22
5F131EA23
5F131EA24
5F131EB11
5F131EB31
5F131EB33
5F131EB36
5F131EB37
5F131EB63
5F131FA10
5F131FA17
5F131FA32
5F131FA33
5F131FA37
5F131KA03
5F131KA12
5F131KA14
5F131KA72
5F131KB07
5F131KB12
5F131KB32
5F131KB53
5F131KB54
5F131KB55
5F131KB56
(57)【要約】
【課題】基板とマスクとのアライメント精度の向上を図ることのできるアライメント装置、アライメント方法、及び成膜装置を提供する。
【解決手段】マスク16を支持するマスク台33と、基板27を支持する静電チャック25と、基板27とマスク16との相対的な位置を変更するように、静電チャック25を駆動する磁気浮上ステージ2と、を備えるアライメント装置であって、マスク16を基板27に向けて吸引する吸引マグネット18を備え、吸引マグネット18によってマスク16を吸引した状態で、磁気浮上ステージ2による駆動動作が行われることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクを支持するマスク支持手段と、
基板を支持する基板支持手段と、
前記基板と前記マスクとの相対的な位置を変更するように、前記マスク支持手段及び前記基板支持手段のうちの少なくともいずれか一方を駆動する駆動手段と、
を備えるアライメント装置であって、
前記マスクを前記基板に向けて吸引する吸引手段を備え、
前記吸引手段によって前記マスクを吸引した状態で、前記駆動手段による駆動動作が行われることを特徴とするアライメント装置。
【請求項2】
前記マスクの一部が前記基板に接触し、前記マスクの他の部分は前記基板から離れた状態で、前記駆動手段による駆動動作が行われることを特徴とする請求項1に記載のアライメント装置。
【請求項3】
前記一部を前記基板に当接させた時の当接面積よりも広い範囲に前記吸引手段による吸引力が発生していることを特徴とする請求項2に記載のアライメント装置。
【請求項4】
前記駆動手段による駆動動作が行われた後に、前記吸引手段によって、前記基板と前記マスクとを全面的に接触させる動作が行われることを特徴とする請求項1,2または3に記載のアライメント装置。
【請求項5】
前記吸引手段による吸引力が変化するように構成されていることを特徴とする請求項1,2または3に記載のアライメント装置。
【請求項6】
前記吸引手段は、前記基板を介して前記マスクとは反対側で移動可能に設けられた磁石であり、前記磁石の移動により前記マスクを吸引する吸引力が変化することを特徴とする請求項5に記載のアライメント装置。
【請求項7】
前記吸引手段は、前記基板と前記マスクを静電吸着力により吸着させるための静電チャックであり、前記静電チャックに印加される電圧の変化によって前記マスクを吸引する吸引力が変化することを特徴とする請求項5に記載のアライメント装置。
【請求項8】
前記吸引手段は、
前記駆動手段による駆動動作を行う際に前記マスクを吸引するための第1の吸引手段と、
前記基板と前記マスクとを全面的に接触させる動作を行うための第2の吸引手段と、
を有することを特徴とする請求項4に記載のアライメント装置。
【請求項9】
前記第1の吸引手段は、前記基板を介して前記マスクとは反対側で移動可能に設けられた第1の磁石であり、
前記第2の吸引手段は、前記基板を介して前記マスクとは反対側で移動可能に設けられ、かつ、前記第1の磁石とは独立して移動可能に設けられた第2の磁石であることを特徴とする請求項8に記載のアライメント装置。
【請求項10】
前記第1の吸引手段は、前記基板と前記マスクを静電吸着力により吸着させるための第1の静電チャックであり、
前記第2の吸引手段は、印加される電圧が前記第1の静電チャックとは独立して制御され、かつ、前記基板と前記マスクを静電吸着力により吸着させるための第2の静電チャックであることを特徴とする請求項8に記載のアライメント装置。
【請求項11】
前記マスクのうち前記一部を含む領域は、他の領域に比べて厚みが厚く構成されることを特徴とする請求項2または3に記載のアライメント装置。
【請求項12】
請求項1,2または3に記載のアライメント装置を用いて、前記基板と前記マスクとのアライメントを行うことを特徴とするアライメント方法。
【請求項13】
前記吸引手段による吸引を行わない状態で、前記駆動手段によって前記基板と前記マスクとの位置ずれ量が第1の閾値以下となるように前記基板と前記マスクとのアライメントを行う第1のアライメント工程と、
前記吸引手段による吸引動作を行わせた状態で、前記駆動手段によって前記基板と前記マスクとの位置ずれ量が前記第1の閾値よりも値の小さな第2の閾値以下となるように前記基板と前記マスクとのアライメントを行う第2のアライメント工程と、
を有することを特徴とする請求項12に記載のアライメント方法。
【請求項14】
請求項1,2または3に記載のアライメント装置と、
前記基板に薄膜を形成する成膜源と、
を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項15】
前記マスクの一部が前記基板に接触し、前記マスクの他の部分は前記基板から離れた状態で、前記駆動手段による駆動動作が行われると共に、
前記駆動動作の際に前記一部が前記基板に接触する領域は、前記基板における成膜有効範囲外であることを特徴とする請求項14に記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板とマスクとのアライメントを行うためのアライメント装置、アライメント方法、及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置(有機ELディスプレイ)を製造するための成膜装置においては、基板とマスクとのアライメント精度を如何に高めるかが品質上重要である。例えば、特許文献1には、基板とマスクとのアライメント精度を高める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-83311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、増々、基板とマスクとのアライメントの高精度化が求められている。特に、基板とマスクとの位置決め動作を終了した後に、基板とマスクとを全面的に接触(密着)させる動作の際に発生し得る基板とマスクとの位置ずれを如何に抑制するかが課題となっている。
【0005】
本発明の目的は、基板とマスクとのアライメント精度の向上を図ることのできるアライメント装置、アライメント方法、及び成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0007】
本発明のアライメント装置は、
マスクを支持するマスク支持手段と、
基板を支持する基板支持手段と、
前記基板と前記マスクとの相対的な位置を変更するように、前記マスク支持手段及び前記基板支持手段のうちの少なくともいずれか一方を駆動する駆動手段と、
を備えるアライメント装置であって、
前記マスクを前記基板に向けて吸引する吸引手段を備え、
前記吸引手段によって前記マスクを吸引した状態で、前記駆動手段による駆動動作が行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、基板とマスクとのアライメント精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1に係る成膜装置の概略構成図
図2】実施例1に係る磁気浮上ステージの概略構成図
図3】実施例1に係る磁気浮上ステージの概略平面図
図4】実施例1に係る基板の概略平面図
図5】実施例1に係るマスクの概略平面図
図6】実施例1に係るアライメント説明図
図7】実施例1に係るアライメントのフローチャート図
図8】実施例1に係るアライメント動作説明図
図9】変形例に係るマスクの説明図
図10】変形例に係るアライメントのフローチャート図
図11】実施例2に係るアライメント動作説明図
図12】実施例3に係る磁気浮上ステージの概略構成図
図13】実施例4に係る磁気浮上ステージの概略構成図
図14】有機EL表示装置の説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
(実施例1)
図1図10を参照して、本発明の実施例1に係るアライメント装置、アライメント方法、及び成膜装置について説明する。
【0012】
<成膜装置>
図1を参照して、本実施例に係るアライメント装置を備える成膜装置1について説明する。図1は実施例1に係る成膜装置1の概略構成図であり、正面から成膜装置1を見た構成を概略的に示している。図1において、点線部で囲われた部分に、駆動手段としての磁気浮上ステージ2が備えられている。磁気浮上ステージ2は、ステージ支持体6によって、真空チャンバの室内の上面角部あるいは側面上部に固定される。真空チャンバは、真空チャンバ側面3、真空チャンバ下面32、真空チャンバ天板11で構成され、全体としては6面体の構成を取るのが一般的である。真空チャンバ下面32に設置された成膜源としての蒸発源5から放出された成膜材料によって、マスク16を介して、基板に薄膜が形成される。マスク16は、磁性を有しており、磁気浮上ステージ2に対して相対的に上下移動可能な吸引手段としての吸引マグネット18によって吸引されるように構成されている。なお、吸引マグネット18は、基板を介してマスク16とは反対側で移動可能に設けられた磁石に相当し、吸引マグネット18の移動によりマスク16を吸引する吸引力が変化する。磁気浮上ステージ2は、マスク支持手段としてのマスク台33上に設置されたレーザ変位計17による測定結果に基づいて、その位置が制御可能に構成される。また、成膜装置1は、制御部35を有する。制御部35は、各種の機構、及び蒸発源5の制御、成膜の制御を行う機能を有する。制御部35は、例えば、プロセッサ、メモリー、ストレージ、I/Oなどを有するコンピューターにより構成可能である。この場合、制御部35の機能は、メモリー又はストレージに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピューターとしては、汎用のパーソナルコンピューターを用いてもよいし、組込型のコンピューター又はPLC(programmable logic controller)を用いてもよい。あるいは、制御部35の機能の一部又は全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。なお、成膜装置1ごとに制御部35が設けられてもよく、1つの制御部35が複数の成膜装置1を制御してもよい。
【0013】
次に、大気側における除振台支持部の構成を説明する。除振台9a,9bは真空チャンバ天板11上に除振台ベース10a,10bを介して配設される。支持フレーム8は、除振台9a,9bに支持されることで、真空チャンバから伝わる振動が抑制される。また、支持フレーム8上に設けられたマスク案内機構12a,12bにより上下に移動するマスク支持支柱13a,13bによって、マスク台33は真空チャンバ内で支持される。マスクフレーム15は、不図示のロボットハンドによって装置内に搬入され、マスク台33上
に載置される。
【0014】
マスクフレーム15や基板を装置内に搬入するために、ロボットハンドが装置に出入りする際には、マスク案内機構12a,12bによりマスク台33はロボットハンドの移動の妨げにならない位置まで下降する。マスク案内機構12a,12bが昇降する際においては、ベローズ14a,14bが伸縮する。これらのベローズ14a,14bによって、室内の真空状態は維持される。
【0015】
なお、ロボットハンドによる位置決め精度やマスク等の載置時の位置ずれが大きい場合には、マスク等をカメラ視野内に入れるために、上下駆動に加え、回転並進機構が必要な場合もある。この点については、公知技術であるので、その説明は省略する。
【0016】
また、アライメントカメラ7a,7bも支持フレーム8により支持されている。これにより、アライメントカメラ7a,7bも真空チャンバから伝わる振動が抑制されるため、高精度での計測が可能である。チャンバ天板11にはアライメント計測用のビューポートが設置されており、大気側からアライメント計測することができる。なお、マスク台33の下面に設置された照明24a,24bの透過光を利用することで、不図示のアライメントマークがアライメントカメラ7a,7bにより撮影される。アライメントカメラ及び照明は不図示のものを含めてそれぞれ4台ずつ設置されており、基板に形成されたアライメントマークの位置を検出できるように構成されている。
【0017】
<磁気浮上ステージ>
図2及び図3を用いて、駆動手段としての磁気浮上ステージ2について説明する。図2図1中の磁気浮上ステージ2を拡大した図であり、図3は磁気浮上ステージ2を上面から見た図である。なお、図3においては、可動子と固定子等との位置関係を明確にするために、ステージ支持体6に設けられた固定子、及び吸引マグネット18についても図示している。
【0018】
磁気浮上ステージ2は、ステージフレーム31と、ステージフレーム31に固定される、自重補償磁石可動子22a,22b,22c,22d及びリニアモータ可動子20a,20b,20c,20dとを備えている。自重補償磁石可動子22a,22b,22c,22dは、磁気浮上ステージ2の自重をキャンセルさせるために、ステージ支持体6に対して非接触の状態で磁気浮上ステージ2を支持する役割を担っている。リニアモータ可動子20a,20b,20c,20dは、ステージ支持体6に対して非接触の状態で、磁気浮上ステージ2を移動させる推力を発揮させる役割を担っている。また、磁気浮上ステージ2の下面には基板支持手段としての静電チャック25が固定されている。この静電チャック25によって、成膜対象である基板27をフェイスダウン状態で吸着することができる。
【0019】
ステージ支持体6の下面には、上記の自重補償磁石可動子22a,22b,22c,22dとそれぞれ対向するように、自重補償磁石固定子23a,23b,23c,23dが固定されている。自重補償磁石の可動子と固定子の間には、磁気浮上ステージ2の自重に相当する磁力が発生するように構成されており、磁気浮上ステージ2は非接触の状態でステージ支持体6に支持される。
【0020】
また、ステージ支持体6の下面には、上記のリニアモータ可動子20a,20b,20c,20dとそれぞれ対向するように、リニアモータ固定子21a,21b,21c,21dが固定されている。これらリニアモータ固定子21a,21b,21c,21dに内蔵されるコイルを流れる電流値の変化によって、磁気浮上ステージ2を移動させる推力が生ずる。なお、鉛直方向においては、上記の自重補償磁石によって磁気浮上ステージ2の
自重はキャンセルされているため、リニアモータにより発生させる推力は微小で済む。従って、通電量は少なくて済むため、通電によって生じる発熱量は微小であり、発熱による各部材の変形や破損の問題は生じない。ただし、必要に応じてコイルごと水冷ジャケットで覆い、冷媒を流して積極的に冷却してもよい。
【0021】
リニアモータ可動子20a,20b,20c,20dはステージフレーム31上面の角部の4か所に配置されている。これにより、磁気浮上ステージ2のXY方向の並進駆動およびZ軸周りの回転駆動が可能である。また、少なくとも3個以上のZ軸方向に推力を発生するリニアモータ(不図示)も配置することで、磁気浮上ステージ2を6自由度で移動させることが可能である。本実施例では、合計7か所に配置されたリニアモータで磁気浮上ステージ2を6自由度で移動させるように構成されている。また、自重補償磁石可動子22a,22b,22c,22dは磁気浮上ステージ2の重心周りに、対称に4か所に配置されている。これによりモーメント力に対しても力を受けることができるので、磁気浮上ステージ2の安定した浮上が可能となっている。
【0022】
<マスク搭載部>
マスク搭載部について説明する。マスク16には、画素パターンに相当する貫通孔が複数個所に等間隔で設けられており、貫通孔を通過する成膜材料が基板27の表面に成膜されるように構成されている。マスク16の材質は、例えばインバー等の熱膨張に強い金属箔やSiウエハを薄く加工したメンブレン膜のようなもので構成される。マスク16はマスクフレーム15に固定されており、フレームごとロボットハンドによって搬送され、マスク台33に載置される。マスク16とマスクフレーム15の固定方法は、例えば架張された状態でスポット溶接によって固定する方法、メカクランプ、接着による固定など各種公知技術を採用できる。固定時において、マスク16が歪まないようにするのが望ましい。
【0023】
基板27は基板支持手段としての静電チャック25に保持される。そして、吸引マグネット18は、静電チャック25における吸着面とは反対側の面に非接触の範囲で接近可能に構成されており、マスク16の吸引に必要な磁束を発生可能に構成されている。静電チャック25及び基板27は非磁性体であり、吸引マグネット18の磁束によって、マスク16を鉛直方向上方に吸引させる吸引力を発生させることが可能である。この吸引力によって、マスク16を基板27に密着させることができる。ここでの密着性が確保されることで、成膜時における成膜材料の回り込み(シャドウ)を防ぐことが可能となる。
【0024】
<アライメント機構>
基板27とマスク16とのアライメント機構(位置決め機構)について説明する。磁気浮上ステージ2のマスク台33に対する相対的な位置は、レーザ変位計17によって計測される。このレーザ変位計17は、X方向に2か所、Y方向に1か所、Z方向に3か所等、合わせて6か所に配置されている。6か所に配置されたレーザ変位計17からの情報を元に幾何学的な座標変換が実施され、磁気浮上ステージ2の重心周りの6自由度の位置に換算される。6自由度の位置情報に基づいて制御演算が行われ、6自由度の推力指令が決定される。6自由度の推力指令に基づいて、7か所に配置された各リニアモータのコイルに電流を流し、磁気浮上ステージ2を移動させることで、この磁気浮上ステージ2をマスク台33に対して高精度に位置決めすることが可能である。
【0025】
また、レーザ変位計17はマスク台33上におけるマスク16の近傍に固定されている。これにより、真空環境内においてアッベ誤差などの影響を受けず直接的にマスク16と基板27との位置決めを行うことができる。さらに、レーザ変位計17はマスク台33を介して支持フレーム8が載置された除振台9a,9bによって真空チャンバからの振動が抑制されているので安定した計測が可能となっている。また、磁気浮上ステージ2は、非
接触かつ低い磁気バネ性の自重補償磁石で支持されており、同様に真空チャンバからの振動が抑制された状態にある。以上のような構成により、磁気浮上ステージ2とマスク台33との相対位置は高精度に位置決め可能であり、その結果、基板27とマスク16の高精度なアライメントが可能となる。
【0026】
<基板とマスクとのアライメント>
基板27とマスク16とのアライメントについて説明する。マスク16と基板27との相対的な位置関係の計測にはアライメントカメラ7a,7bが用いられる。基板27にはアライメントマークである基板マーク28L,28Rが設けられており(図4参照)、アライメントカメラ7a,7bにより撮影された基板マーク28L,28Rの撮像データから基板27の位置が計測される。また、マスク16にはアライメントマークであるマスクマーク29L,29Rが設けられており(図5参照)、アライメントカメラ7a,7bにより撮影されたマスクマーク29L,29Rの撮像データからマスク16の位置が計測される。なお、アライメントカメラ7aによって、基板マーク28Lとマスクマーク29Lが同時に撮影され、アライメントカメラ7bによって、基板マーク28Rとマスクマーク29Rが同時に撮影されるように構成されている。
【0027】
図6(a)は、基板27及びマスク16の成膜装置1内への搬送が完了された状態において、基板マーク28とマスクマーク29の位置関係の一例を示している。なお、図6においては、基板27とマスク16におけるアライメントマーク付近を拡大して示している。そして、アライメントカメラ7によりマスクマーク29と基板マーク28が同一視野内で撮影され、撮像データからそれぞれのマークの中心(図心)位置が制御部35による画像処理によって抽出される。このような処理が、基板マーク28Lとマスクマーク29L、及び基板マーク28Rとマスクマーク29Rの両者に対してなされることで、基板27とマスク16との相対的な位置関係が計測される。なお、マスク16及び基板27の搭載時において、設置誤差が大きくカメラ視野から外れた場合には、リトライを行って再度視野に入れる工程がなされる。
【0028】
上記の計測結果に基づいて、基板マーク28Lとマスクマーク29L、及び基板マーク28Rとマスクマーク29Rが一致するように、磁気浮上ステージ2を移動させる制御がなされることで、マスク16に対して基板27が移動する。より具体的には、基板マーク28Lの中心とマスクマーク29Lの中心との距離、及び基板マーク28Rの中心とマスクマーク29Rの中心との距離のいずれもが閾値以下となるように、マスク16に対して基板27が移動して、アライメントが完了する。図6(b)はアライメント完了後の各アライメントマークの位置関係の一例を示している。アライメントが完了すると、マスク16の貫通孔と発光用の回路位置(TFT)が一致するため、基板27に対して所望の位置に成膜することができる。
【0029】
<アライメント動作>
アライメントの動作について、図7及び図8を参照して説明する。図7はアライメントのフローチャート図であり、図8図7に示す各ステップにおける、基板27とマスク16と吸引マグネット18の位置関係を示した図である。
【0030】
<<ステップS1>>
アライメント動作が開始されると、基板27とマスク16が所定の間隔になるまで、基板27が下降する。所定の間隔とは、アライメント完了後において、吸引マグネット18を下降させマスク16を吸引した際に、成膜有効範囲領域でマスク16と基板27とが密着できる間隔である。なお、成膜有効範囲領域でマスク16と基板27とが密着(接触)することについては、以下の説明では、「マスク16と基板27とが全面的に密着(接触)する」といった表現を用いることもある。所定の間隔の最適な数値は、マスク16の材
質と厚み、吸引マグネット18の磁気回路の構成とマスク16までの距離によって変化する。ただし、間隔が狭いほど、アライメント精度が向上し、基板27とマスク16も十分に密着することが分かっている。具体的には、上記の間隔は0.1mm以下が望ましい。図8(a)は基板27が所定の位置まで下降した状態を示している。
【0031】
<<ステップS2>>
基板27が所定の位置まで下降した後に、吸引マグネット18が下降して、マスク16に近づくことで、マスク16が吸引マグネット18に吸引される。本実施例においては、マスク16と基板27の全面が密着(接触)しない程度にマスク16が吸引される。この工程でマスク16と基板27を全面的に密着させてしまうと、後述のステップS4において、磁気浮上ステージ2が移動する際にマスク16と基板27との間での摩擦力が大きくなる。この場合、マスク16及び基板27の材質や大きさによっては、傷がついてしまうなどの虞もある。そこで、本実施例においては、マスク16の一部が基板27に接触し、マスク16の他の部分は基板27から離れた状態となるように、マスク16を吸引する構成が採用されている。ただし、マスク16及び基板27の材質や大きさによっては、これらを全面的に接触させてもよい。また、本発明においては、マスク16と基板27とが全く接触しない程度にマスク16を吸引する場合も含まれる。
【0032】
摩擦によるマスク16及び基板27へのダメージの観点では、マスク16と基板27を非接触とするのが望ましいが、アライメント精度を考慮した場合は、マスク16と基板27とを接触するまでマスク16を吸引した方が有利となる。そこで、本実施例においては、上記の通り、マスク16と基板27が部分的に接触する構成が採用されている(図8(b)参照)。なお、マスク16の一部を基板27に当接させた時の当接面積よりも広い範囲に吸引マグネット18による吸引力が発生している。これにより、その後のアライメント動作の際に、意図した接触状態を実現することが容易になる。
【0033】
なお、その後のアライメント(磁気浮上ステージ2による駆動動作)の際に、マスク16の一部が基板27に接触する領域には摩擦が生じるため、当該領域は、基板27における成膜有効範囲外とするのが望ましい。
【0034】
また、成膜後のシャドウを小さくするにはマスク16の厚さを薄くすることが重要となる。具体的には50μm以下の薄い箔のようなものが好適であり、より高精度な画素パターンになると成膜有効範囲のマスク厚みは10μm以下にする必要がある。そのような薄い部分が基板27と接触した状態で磁気浮上ステージ2が移動するとマスク16が破損する虞もある。そこで、図9に示す変形例のように、マスク16のうち基板27に接触する部分を含む領域は、他の領域に比べて厚みが厚く構成される構成を採用することもできる。
【0035】
また、マスク16と基板27が接触した状態で、磁気浮上ステージ2が移動すると、マスク16と基板27との接触部には摩擦が生じるため、磁気浮上ステージ2の移動量は極力短くしたほうがよい。そこで、本実施例のように、マスク16と基板27とを接触した状態でアライメントを行う構成を採用する場合には、当該アライメントを行う前に予備のアライメントを行うのが望ましい。この点について、図10に示す変形例に係るアライメントのフローチャート図を参照して説明する。なお、この変形例の場合、ステップS1とステップS2の間に、ステップS12の工程が追加されるが、それ以外の工程は本実施例と同一であるので、その説明は省略する。
【0036】
この変形例の場合には、上述したステップS1の後に、吸引手段としての吸引マグネット18による吸引を行わない状態で、磁気浮上ステージ2によって基板27とマスク16との位置ずれ量が第1の閾値以下となるように基板27とマスク16とのアライメント(
第1のアライメント工程)が行われる(ステップS12)。すなわち、まず、アライメントマーク(マスクマーク29と基板マーク28)がアライメントカメラ7により撮影されて、その撮像データに基づいてアライメントマークの位置が検出されて、磁気浮上ステージ2の移動量が算出される。そして、算出された結果に基づいて、磁気浮上ステージ2が移動し、再度、アライメントカメラ7による撮影がなされて、マスクマーク29と基板マーク28との位置ずれ量(誤差)が算出される。この位置ずれ量が第1の閾値以下であるか否かが判定され、第1の閾値以下の場合には、上述のステップS2に移行する。以上の動作は、位置ずれ量が第1の閾値以下になるまで繰り返される。
【0037】
なお、第1の閾値は、例えば、1μmに設定すると好適である。また、本実施例におけるアライメント(吸引マグネット18による吸引動作を行わせた状態で行うアライメント)を行う際に用いる閾値(「第2の閾値」ということができる)は、第1の閾値よりも小さな値に設定される。
【0038】
<<ステップS3>>
吸引マグネット18を所定位置まで下降させてマスク16を吸引した(ステップS2)後に、アライメントカメラ7によりマスク16と基板27のアライメントマーク(マスクマーク29と基板マーク28)の撮影がなされる。この撮影により得られた撮像データから、アライメントマークのXY距離が計測される。マスクマーク29と基板マーク28はZ方向に離間した状態で撮影されることになるが、撮影するアライメントカメラ7には被写体深度があるため、離間距離は小さいほど計測誤差は小さくなる。また、吸引によりマスク16が上昇する際に僅かだがマスク16のマスクマーク29のXY位置にズレが発生する。3μm以下の高精度アライメントを目指す際には、このズレの影響も抑制する必要がある。
【0039】
そこで、マスク16のテンションを大きくすることで、マスクマーク29と基板マーク28とのZ方向の距離を短くすることも考えられる。しかしながら、この場合には、アライメント完了後に、マスク16を吸引して、マスク16と基板27とを全面的に密着(接触)させる際に、マスク16の端部が吸引され難くなるため、密着範囲が狭くなり、成膜有効範囲が狭くなってしまう。従って、マスク16のテンションは小さい方が望ましい。この場合、マスク16は、その重心が下方に垂れ下がるような撓みが大きくなるため、マスクマーク29と基板マーク28とのZ方向の距離が長くなってしまい、一般的なアライメント方法を採用した場合には、計測誤差が大きくなってしまう。しかしながら、本実施例の場合には、ステップS2でマスク16を吸引した状態で、アライメントカメラ7による撮影が行われるため、テンションの小さなマスク16を用いても、計測誤差を小さくすることができる。そして、テンションの小さなマスク16を用いることで、その後、マスク16を吸引して、マスク16と基板27とを全面的に密着(接触)させる際に、アライメントマークの位置ずれを抑制できると共に、マスク16と基板27との密着範囲を広くすることができる。
【0040】
<<ステップS4>>
ステップS3において得られた算出結果(計測結果)に基づいて、磁気浮上ステージ2による駆動によって、基板27が移動する(図8(c)参照)。基板27が移動した後に、アライメントカメラ7によって、マスク16のマスクマーク29と基板27の基板マーク28が撮影される。この撮影により得られた撮像データからアライメントマーク間距離(マスクマーク29の中心と基板マーク28の中心との距離)が計測(算出)される。この距離(誤差)が閾値以下であればステップS5に移行する。仮に、閾値以下でない場合には、再度、磁気浮上ステージ2を移動させ、閾値に入るまで同様の動作が繰り返される。なお、上記の通り、図10に示す変形例が採用される場合には、この閾値は第2の閾値に相当する。
【0041】
<<ステップS5>>
ステップS4において、アライメントマーク間距離が閾値以下であれば、吸引マグネット18を下降させて、マスク16と基板27を全面的に密着させる(図8(d)参照)。このように、本実施例においては、吸引マグネット18が下降することで、マスク16を吸引させる吸引力が変化する(大きくなる)。これにより、マスク16の一部が基板27に接触し、他の部分が基板27から離れた状態から他の部分も基板27に接触した状態に変化する。
【0042】
なお、マスク16と基板27を全面的に密着させる動作を行う際には、これらの位置ずれが発生し得る。すなわち、アライメントマーク間にXY方向の位置ズレが発生し得る。しかしながら、本実施例においては、既にステップS2でマスク16が吸引されている。そのため、マスク16と基板27との間に隙間が生じている部分においても、その距離は小さく、マスク16と基板27を全面的に密着させる動作の際に生じるXY方向の位置ズレ量を小さくすることができる。
【0043】
<<ステップS6>>
マスク16と基板27を全面的に密着させた後に、アライメントカメラ7によって、マスク16のマスクマーク29と基板27の基板マーク28が撮影される。この撮影により得られた撮像データからアライメントマーク間距離が計測(算出)される。この距離(誤差)が閾値以下であれば、アライメント完了となり、成膜(蒸着)が開始される。仮に、ステップS5によってXY方向の位置ズレが生じてしまい目標の閾値以下でない場合には、吸引マグネット18を上昇させてマスク16を一部吸引した状態にし、ステップS4に戻り、目標の閾値以下となるまで同様の動作が繰り返される。なお、ここでの閾値は、ステップS4における閾値と同一の値にしてもよいし、ステップS4よりも多少大きな値としてもよい。
【0044】
<本実施例に係るアライメント装置、アライメント方法、及び成膜装置の優れた点>
本実施例によれば、吸引手段としての吸引マグネット18によってマスク16を吸引した状態で、駆動手段としての磁気浮上ステージ2による駆動動作(マスク16と基板27とのアライメント動作)が行われる。これにより、マスク16と基板27との間に間隔が設けられていても、吸引させない場合に比べて間隔が短くなる。そのため、マスクマーク29と基板マーク28とのZ方向の距離が短くなり、測定誤差を小さくすることができる。また、その後、マスク16と基板27とを全面的に密着(接触)させる際において、マスク16と基板27の位置ずれを抑制することができる。従って、基板27とマスク16とのアライメント精度が向上する。
【0045】
なお、本実施例においては、基板27とマスク16との相対的な位置を変更する(アライメント動作を行う)ための駆動手段として、基板27を移動させる磁気浮上ステージ2を採用する場合の構成を示した。しかしながら、本発明の駆動手段は、そのような構成に限定されることはなく、基板とマスクとの相対的な位置を変更するように、マスク支持手段及び基板支持手段のうちの少なくともいずれか一方を駆動する構成を採用すればよい。従って、基板は移動させずに、マスクを移動させる手段(機構)を設ける構成を採用してもよいし、基板を移動させる手段(機構)とマスクを移動させる手段(機構)の双方を採用することもできる。以下の実施例においても同様である。
【0046】
また、本実施例においては、マスク16の一部が基板27に接触し、マスク16の他の部分は基板27から離れた状態で、磁気浮上ステージ2による駆動動作が行われる構成を採用している。これにより、駆動動作後に、マスク16と基板27を全面的に接触させる際に、これらの位置ずれをより確実に抑制することができる。
【0047】
また、上記の通り、図10に示す変形例に係るアライメントのフローチャートに従って、第1のアライメント工程と第2のアライメント工程を行うことも好適である。なお、第1のアライメントは、吸引マグネット18による吸引を行わない状態で、磁気浮上ステージ2によって基板27とマスク16との位置ずれ量が第1の閾値以下とするためのアライメントである。また、第2のアライメントは、吸引マグネット18による吸引動作を行わせた状態で、磁気浮上ステージ2によって基板27とマスク16との位置ずれ量が第1の閾値よりも値の小さな第2の閾値以下とするためのアライメントである。このような工程を採用することで、マスク16と基板27が接触した状態で、これらの位置決めがなされても、これらの相対的な移動量を短くすることができる。これにより、摩擦による損傷の発生を抑制することができる。
【0048】
(実施例2)
図11には、本発明の実施例2が示されている。本実施例においては、吸引手段としての吸引マグネット18の構成が、実施例1と異なる場合の構成を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0049】
図11は本実施例に係るアライメント動作における基板27とマスク16と吸引マグネット18の位置関係を示した図である。本実施例におけるアライメントのフローについては、実施例1で説明した図7に示すフローチャート図、または図10に示すフローチャート図のうち、ステップS2とステップS5の動作のみが異なっている。そこで、これらのフローチャートも使用して説明する。
【0050】
本実施例においては、吸引手段としての吸引マグネット18は、ステップS2においてマスク16の一部を基板27に接触させるための第1の吸引手段と、ステップS5においてマスク16の他の部分を基板27に接触させるための第2の吸引手段とを有する。より具体的には、第1の吸引手段は、基板27を介してマスク16とは反対側で移動可能に設けられた第1の磁石181であり、第2の吸引手段は、基板27を介してマスク16とは反対側で移動可能に設けられる第2の磁石182である。第2の磁石182は、第1の磁石181とは独立して移動可能に構成されている。
【0051】
本実施例においては、図7または図10に示すステップS1により、基板27が所定の位置まで下降した後に(図11(a)参照)、中央に配された第1の磁石181が下降する。これにより、マスク16の中央が吸引マグネット18に吸引され、実施例1と同様に、マスク16の一部が基板27に接触し、マスク16の他の部分は基板27から離れた状態となる(図11(b)参照)。その後、ステップS4までは、実施例1と同様であり、磁気浮上ステージ2による駆動によって、基板27が移動し、基板27とマスク16との位置決めがなされる(図11(c)参照)。
【0052】
そして、ステップS5においては、第1の磁石181はそのままの状態を保ちつつ、第1の磁石181を取り囲むように設けられた第2の磁石182が下降することで、マスク16の端部も吸引される。これにより、マスク16と基板27が全面的に密着した状態となる(図11(d)参照)。その他のステップについては、上記実施例1で説明した通りである。
【0053】
以上のように、本実施例においても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。また、本実施例の場合には、吸引マグネット18の分割領域(第1の磁石181と第2の磁石182により分割される領域)を適宜設定することができる。これにより、ステップS2における吸引状態を、実施例1に比べて、より好適に設定することができる。従って
、磁気浮上ステージ2を移動させる際のマスク16と基板27との接触領域を、実施例1に比べて、より精度よく設定することができる。例えば、接触領域の面積をより狭く設定したい場合に有効である。
【0054】
なお、本実施例においても、実施例1と同様に、磁気浮上ステージ2を移動させる際に、マスク16の一部が基板27に接触し、マスク16の他の部分は基板27から離れた状態となるように、マスク16を吸引する構成を示した。しかしながら、実施例1においても説明したように、本発明は、磁気浮上ステージ2を移動させる際に、マスク16と基板27とを全面的に接触させる場合、及びマスク16と基板27とが全く接触しない程度にマスク16を吸引する場合も含まれる。
【0055】
(実施例3)
図12には、本発明の実施例3が示されている。本実施例においては、吸引手段が静電チャックの場合の構成を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0056】
図12は本発明の実施例3に係る磁気浮上ステージの概略構成図である。上記実施例1においては、吸引手段が吸引マグネット18であったのに対して、本実施例においては、吸引手段が基板27とマスク16を静電吸着力により吸着させるための静電チャック25である点のみが実施例1と異なっている。
【0057】
静電チャック25に印加される電圧の変化によって、静電吸着力は変化する。従って、印加電圧を制御することで、静電チャック25に対して基板27のみが吸着する状態、基板27に加えてマスク16の一部のみが吸着する状態、両者が全面的に吸着されて、基板27とマスク16が全面的に密着する状態にすることが可能である。
【0058】
本実施例におけるアライメントのフローについては、実施例1で説明した図7に示すフローチャート図、または図10に示すフローチャート図のうち、ステップS2とステップS5の動作のみが異なっている。そこで、これらのフローチャートを使用して、本実施例に係るアライメントのフローについて説明する。
【0059】
本実施例においては、図7または図10に示すステップS1により、基板27が所定の位置まで下降した後に、静電チャック25に印加する電圧が、基板27のみを吸着する電圧よりも更に高められる。これにより、静電チャック25に基板27が吸着されたまま、マスク16の中央が静電チャック25に吸引される。これにより、実施例1と同様に、マスク16の一部が基板27に接触し、マスク16の他の部分は基板27から離れた状態となる(図12参照)。その後、ステップS4までは、実施例1と同様であり、磁気浮上ステージ2による駆動によって、基板27が移動し、基板27とマスク16との位置決めがなされる。
【0060】
そして、ステップS5においては、静電チャック25に印加される電圧が更に高められることで、マスク16の端部も吸引されて、マスク16と基板27が全面的に密着した状態となる。その他のステップについては、上記実施例1で説明した通りである。以上のように、本実施例においても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0061】
なお、本実施例においても、実施例1と同様に、磁気浮上ステージ2を移動させる際に、マスク16の一部が基板27に接触し、マスク16の他の部分は基板27から離れた状態となるように、マスク16を吸引する構成を示した。しかしながら、実施例1においても説明したように、本発明は、磁気浮上ステージ2を移動させる際に、マスク16と基板27とを全面的に接触させる場合、及びマスク16と基板27とが全く接触しない程度に
マスク16を吸引する場合も含まれる。
【0062】
(実施例4)
図13には、本発明の実施例4が示されている。本実施例においては、吸引手段としての静電チャック25の構成が、実施例3と異なる場合の構成を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0063】
図13は本発明の実施例4に係る磁気浮上ステージの概略構成図である。上記実施例1においては、吸引手段が吸引マグネット18であったのに対して、本実施例においては、実施例3と同様に、吸引手段が基板27とマスク16を静電吸着力により吸着させるための静電チャック25である点のみが実施例1と異なっている。
【0064】
本実施例においては、吸引手段としての静電チャック25は、ステップS2においてマスク16の一部を基板27に接触させるための第1の吸引手段と、ステップS5においてマスク16の他の部分を基板27に接触させるための第2の吸引手段とを有する。より具体的には、第1の吸引手段は、基板27とマスク16を静電吸着力により吸着させるための第1の静電チャック251である。また、第2の吸引手段は、印加される電圧が第1の静電チャック251とは独立して制御され、かつ、基板27とマスク16を静電吸着力により吸着させるための第2の静電チャック252である。
【0065】
本実施例におけるアライメントのフローについては、実施例1で説明した図7に示すフローチャート図、または図10に示すフローチャート図のうち、ステップS2とステップS5の動作のみが異なっている。そこで、これらのフローチャートを使用して、本実施例に係るアライメントのフローについて説明する。
【0066】
本実施例においては、図7または図10に示すステップS1により、基板27が所定の位置まで下降した後に、第1の静電チャック251に印加する電圧が、基板27のみを吸着する電圧よりも更に高められる。これにより、静電チャック25(第1の静電チャック251及び第2の静電チャック252)に基板27が吸着されたまま、マスク16の中央が第1の静電チャック251に吸引される。これにより、実施例1と同様に、マスク16の一部が基板27に接触し、マスク16の他の部分は基板27から離れた状態となる(図13参照)。その後、ステップS4までは、実施例1と同様であり、磁気浮上ステージ2による駆動によって、基板27が移動し、基板27とマスク16との位置決めがなされる。
【0067】
そして、ステップS5においては、第2の静電チャック252に印加する電圧が、基板27のみを吸着する電圧よりも更に高められる。これにより、マスク16の端部も吸引されて、マスク16と基板27が全面的に密着した状態となる。その他のステップについては、上記実施例1で説明した通りである。
【0068】
以上のように、本実施例においても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。また、本実施例の場合には、静電チャック25の分割領域(第1の静電チャック251と第2の静電チャック252により分割される領域)を適宜設定することができる。これにより、ステップS2における吸引状態を、実施例1に比べて、より好適に設定することができる。従って、磁気浮上ステージ2を移動させる際のマスク16と基板27との接触領域を、実施例1に比べて、より精度よく設定することができる。例えば、接触領域の面積をより狭く設定したい場合に有効である。
【0069】
なお、本実施例においても、実施例1と同様に、磁気浮上ステージ2を移動させる際に
、マスク16の一部が基板27に接触し、マスク16の他の部分は基板27から離れた状態となるように、マスク16を吸引する構成を示した。しかしながら、実施例1においても説明したように、本発明は、磁気浮上ステージ2を移動させる際に、マスク16と基板27とを全面的に接触させる場合、及びマスク16と基板27とが全く接触しない程度にマスク16を吸引する場合も含まれる。
【0070】
(電子デバイスの製造方法)
上記の実施例に係る成膜装置を用いた電子デバイスの製造装置及び方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。 まず、製造する有機EL表示装置について説明する。図14(a)は有機EL表示装置50の全体図、図14(b)は1画素の断面構造を表している。
【0071】
図14(a)に示すように、有機EL表示装置50の表示領域51には、発光素子を複数備える画素52がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域51において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施例に係る有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子52R、第2発光素子52G、第3発光素子52Bの組合せにより画素52が構成されている。画素52は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組合せで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0072】
図14(b)は、図14(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素52は、基板53上に、第1電極(陽極)54と、正孔輸送層55と、発光層56R、56G、56Bと、電子輸送層57と、第2電極(陰極)58と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層55、発光層56R、56G、56B、電子輸送層57が有機層に当たる。また、本実施例では、発光層56Rは赤色を発する有機EL層、発光層56Gは緑色を発する有機EL層、発光層56Bは青色を発する有機EL層である。発光層56R、56G、56Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、第1電極54は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層55と電子輸送層57と第2電極58は、複数の発光素子52R、52G、52Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極54と第2電極58とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極54間に絶縁層59が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層60が設けられている。
【0073】
図14(b)では正孔輸送層55や電子輸送層57が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を含む複数の層で形成されてもよい。また、第1電極54と正孔輸送層55との間には第1電極54から正孔輸送層55への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、第2電極58と電子輸送層57の間にも電子注入層が形成されことができる。
【0074】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
【0075】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)および第1電極54が形成された基板53を準備する。
【0076】
第1電極54が形成された基板53の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アク
リル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極54が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層59を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0077】
絶縁層59がパターニングされた基板53を成膜装置に搬入し、基板支持手段にて基板を支持し、正孔輸送層55を、表示領域の第1電極54の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層55は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層55は表示領域51よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0078】
次に、正孔輸送層55までが形成された基板53を別の成膜装置に搬入し、基板支持手段にて支持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板53の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層56Rを成膜する。 発光層56Rの成膜と同様に、別の成膜装置により緑色を発する発光層56Gを成膜し、さらに別の成膜装置により青色を発する発光層56Bを成膜する。発光層56R、56G、56Bの成膜が完了した後、更に別の成膜装置により表示領域51の全体に電子輸送層57を成膜する。電子輸送層57は、3色の発光層56R、56G、56Bに共通の層として形成される。
【0079】
電子輸送層57までが形成された基板をスパッタリング装置に移動し、第2電極58を成膜し、その後プラズマCVD装置に移動して保護層60を成膜して、有機EL表示装置50が完成する。
【0080】
絶縁層59がパターニングされた基板53を成膜装置に搬入してから保護層60の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【符号の説明】
【0081】
1:成膜装置 2:磁気浮上ステージ 5:蒸発源 6:ステージ支持体 7,7a,7b:アライメントカメラ 8:支持フレーム 9a,9b:除振台 10a,10b:除振台ベース 12a,12b:マスク案内機構 13a,13b:マスク支持支柱 15:マスクフレーム 16:マスク 17:レーザ変位計 18:吸引マグネット 25:静電チャック 27:基板 28,28L,28R:基板マーク 29,29L,29R:マスクマーク 31:ステージフレーム 33:マスク台 181:第1の磁石 182:第2の磁石 251:第1の静電チャック 252:第2の静電チャック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14