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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015210
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】応力低減のための金属ケイ化物窒化
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/62 20120101AFI20240125BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G03F1/62
C23C16/42
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023205496
(22)【出願日】2023-12-05
(62)【分割の表示】P 2020523320の分割
【原出願日】2018-11-05
(31)【優先権主張番号】17200069.7
(32)【優先日】2017-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18179205.2
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ツヴォル,ピーター-ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ギースバーズ,アドリアヌス,ヨハネス,マリア
(72)【発明者】
【氏名】クルートウィック,ヨハン,ヘンドリック
(72)【発明者】
【氏名】クルガノワ,エフゲニア
(72)【発明者】
【氏名】ナザレヴィッチ,マキシム,アレクサンドロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ノッテンブーム,アーノウド,ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ピーター,マリア
(72)【発明者】
【氏名】シュマエノク,レオニド,アイジコヴィッツ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デル ワード,ティース,ウーター
(72)【発明者】
【氏名】ヴレス,デイビッド,フェルディナンド
(57)【要約】
【課題】本発明は、既知のペリクル、ならびにペリクルを生成および設計する既知の方法に関する上記の問題を考慮してなされたものである。
【解決手段】窒化された金属ケイ化物または窒化されたシリコンを含む、リソグラフィ装置用のペリクル、およびその製造方法。窒化された金属ケイ化物のペリクルまたは窒化されたシリコンのペリクルの、リソグラフィ装置内での使用も開示される。EUV放射にさらされた時のペリクルの透過率の変化を打ち消すように選択および構成された、少なくとも1つの補償層を含む、リソグラフィ装置用のペリクル、ならびにペリクルの透過率を制御する方法、およびペリクルを設計する方法も開示される。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化された金属ケイ化物または窒化されたシリコンを含む、リソグラフィ装置用のペリクル。
【請求項2】
前記窒化された金属ケイ化物は、式M(Si)を有し、x≦y≦2xであり、かつ0<z≦xであるか、または、前記窒化されたシリコンは、式SiNを有し、0.01≦a≦1であり、好ましくはa≦0.5であり、より好ましくはa≦0.1である、請求項1に記載のペリクル。
【請求項3】
1≦x≦5である、請求項2に記載のペリクル。
【請求項4】
z≦1である、請求項2および3のいずれか1項に記載のペリクル。
【請求項5】
y=2xである、請求項2~4のいずれか1項に記載のペリクル。
【請求項6】
金属Mは、Ce、Pr、Sc、Eu、Nd、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、La、Y、およびBeを含む群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載のペリクル。
【請求項7】
金属Mは、ジルコニウム、モリブデン、および/またはベリリウムである、請求項5に記載のペリクル。
【請求項8】
前記金属ケイ化物窒化物または窒化されたシリコン内の窒素の原子濃度は、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、または約1%未満である、請求項1~6のいずれか1項に記載のペリクル。
【請求項9】
前記ペリクルは、少なくとも1つのキャッピング層をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のペリクル。
【請求項10】
前記ペリクルは、前記金属ケイ化物窒化物または窒化されたシリコンの両側にキャッピング層を含む、請求項9に記載のペリクル。
【請求項11】
前記金属ケイ化物窒化物または窒化されたシリコンは、約10nmから約40nmの厚み、好ましくは約15nmから約30nmの厚みを有する、請求項1~10のいずれか1項に記載のペリクル。
【請求項12】
前記少なくとも1つのキャッピング層は、約0.1nmから約100nmの厚み、好ましくは約1nmから約5nmの厚みを有する、請求項9~10のいずれか1項に記載のペリクル。
【請求項13】
前記キャッピング層は、ルテニウム、ホウ素、金属ホウ化物、炭化ホウ素、および/または窒化ホウ素を含む、請求項9~12のいずれか1項に記載のペリクル。
【請求項14】
リソグラフィ装置用のペリクルを製造する方法であって、金属ケイ化物基板またはシリコン基板を窒化することを含む、方法。
【請求項15】
前記窒化することは、金属ケイ化物基板またはシリコン基板をプラズマ、好ましくは窒素含有プラズマでスパッタリングすることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記金属ケイ化物基板またはシリコン基板は、金属ケイ化物膜またはシリコン膜である、請求項14および15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記プラズマは、アルゴンと窒素の混合物を含む、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
窒素に対するアルゴンの比率は、可変である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記窒素に対するアルゴンの比率は、窒素約5%から窒素約45%までの範囲内である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記金属は、Ce、Pr、Sc、Eu、Nd、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、La、YおよびBeを含む群から選択される、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記金属は、ジルコニウム、モリブデン、および/またはベリリウムである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記基板は、シリコン、好ましくは単結晶シリコンを含む、請求項14~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
請求項14~22のいずれか1項に記載の方法によって取得可能であるか、または取得される、リソグラフィ装置用のペリクル。
【請求項24】
請求項14~22のいずれか1項に記載の方法によって製造されたペリクル、または請求項1~13のいずれか1項に記載のペリクルの、リソグラフィ装置内での使用。
【請求項25】
請求項1~13のいずれか1項に記載のペリクルを製造するための、反応性スパッタリングの使用。
【請求項26】
請求項1~13のいずれか1項に記載のペリクル、前記ペリクルを支持するフレーム、および前記フレームに取り付けられたパターニングデバイスを備える、リソグラフィ装置用のアセンブリ。
【請求項27】
EUV放射にさらされた時のペリクルの透過率の変化を打ち消すように選択および構成された、少なくとも1つの補償層を含む、リソグラフィ装置用のペリクル。
【請求項28】
前記少なくとも1つの補償層は、EUV放射にさらされた時に、前記少なくとも1つの犠牲層の透過率を増大または減少させるように変質する材料を含む、請求項27に記載のペリクル。
【請求項29】
前記少なくとも1つの補償層は、二酸化シリコン、シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、炭素、炭化ホウ素、二酸化ルテニウム、ホウ素、ホウ化ジルコニウム、およびモリブデンのうちの1つまたは複数を含む、請求項27または28に記載のペリクル。
【請求項30】
EUVペリクルの透過率の変化を制御する方法であって、EUV放射にさらされた時に透過率が増大する少なくとも1つの層、および/またはEUV放射にさらされた時に透過率が減少する少なくとも1つの層を提供するステップを含む、方法。
【請求項31】
リソグラフィ装置用のペリクルを設計する方法であって、
EUV放射にさらされた時のペリクルの透過率の変化を測定するステップと、
更新されたペリクルに含めるために、前記測定された透過率の変化を使用して1つまたは複数の材料を選択するステップと
を含み、前記1つまたは複数の材料は、EUV放射にさらされた時に、前記ペリクルの前記透過率の変化を最も厳密に反映する透過率の変化を有する、方法。
【請求項32】
EUV放射にさらされた時の前記ペリクルの前記透過率の変化は、予め選択された時間の長さにわたって測定される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記予め選択された時間の長さは、前記ペリクルがEUVリソグラフィ装置内で使用される時間とほぼ同じ程度である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
EUV放射にさらされた時の前記ペリクルの前記透過率の変化は、予め選択された温度および/または出力レベルで測定される、請求項31~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記温度および/または出力レベルは、EUVリソグラフィ装置内での使用中に前記ペリクルがさらされるのとほぼ同じ温度および/または出力レベルである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
EUV放射にさらされた時の前記更新されたペリクルの透過率の変化が測定され、前記測定された透過率の変化を使用して、前記更新されたペリクルに含まれる前記1つまたは複数の材料にさらなる変化が必要かどうかを決定する、請求項31~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記方法は、1回または複数回繰り返されて、EUVリソグラフィ装置内での使用時に透過率を実質的に維持するペリクルを提供する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
請求項30~37のいずれか1項に記載の方法にしたがって設計された、ペリクル。
【請求項39】
EUVリソグラフィ用のメンブレンアセンブリを製造する方法であって、
内部領域および前記内部領域の周囲の境界領域を含む、平面基板と、
少なくとも1つのメンブレン層と、
前記平面基板と前記少なくとも1つのメンブレン層との間の酸化物層と、
前記平面基板と前記少なくとも1つのメンブレン層との間の少なくとも1つのさらなる層と
を含む、スタックを提供することと、
前記平面基板の前記内部領域を選択的に除去することであって、その結果、前記メンブレンアセンブリが、
前記少なくとも1つのメンブレン層から少なくとも形成されたメンブレンと、
前記少なくとも1つのメンブレン層を保持する境界と
を含むことと、
を含み、前記境界は、前記平面基板の少なくとも一部、前記少なくとも1つのさらなる層、および前記境界と前記少なくとも1つのメンブレン層との間に位置する前記酸化物層を含む、方法。
【請求項40】
前記少なくとも1つのさらなる層は、前記酸化物層よりも大幅に遅い速度でエッチングされるように選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記平面基板の前記内部領域は、エッチャントによって選択的に除去され、前記エッチャントは、酸化シリコンに対してシリコンを優先的にエッチングするように選択され、好ましくは、前記エッチャントは、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)エッチャントである、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
前記平面基板の前記内部領域のエッチングに続いて、シリコンに対して酸化シリコンを優先的にエッチングするように選択された異なるエッチャントを使用して、前記酸化物層の少なくとも一部をエッチングし、好ましくは、前記選択されたエッチャントは、緩衝酸化物エッチャントである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記酸化物層のエッチングに続いて、酸化シリコンに対してシリコンを優先的にエッチングするように選択された異なるエッチャントを使用して、前記少なくとも1つのさらなる層の少なくとも一部をエッチングし、好ましくは、前記少なくとも1つのさらなる層は、シリコンを含み、好ましくは、前記エッチャントは、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)エッチャントである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記少なくとも1つのメンブレン層は、pSi、ケイ化モリブデン、またはモリブデンシリコン窒化物のうちの少なくとも1つを含む、請求項39~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記少なくとも1つのさらなる層は、シリコンを含む、請求項39~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記少なくとも1つのさらなる層と前記少なくとも1つのメンブレン層との間に、さらなる酸化物層が提供される、請求項39~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記メンブレン層は、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)層でキャッピングされ、選択的に、前記TEOS層はホウ素を含む、請求項39~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記平面基板は、シリコンを含む、請求項39~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
モリブデンシリコン窒化物を含む少なくとも1つの層から形成されたメンブレンと、
前記メンブレンを保持する境界と
を含む、EUVリソグラフィ用のメンブレンアセンブリであって、前記境界領域は、内部領域および前記内部領域の周囲の境界領域を含む平面基板から形成され、前記境界は、前記平面基板の前記内部領域を選択的に除去することによって形成され、前記アセンブリは、前記境界と前記メンブレンとの間に、埋込酸化物層、シリコン層、および熱酸化物層を含む、メンブレンアセンブリ。
【請求項50】
前記平面基板は、シリコンを含む、請求項49に記載のメンブレンアセンブリ。
【請求項51】
スタックを作製する方法であって、
平面基板、メンブレン層、およびオルトケイ酸テトラエチル層を提供するステップと、
前記スタックをアニーリングするステップと
を含み、前記オルトケイ酸テトラエチル層は、ホウ素を含み、前記オルトケイ酸テトラエチル層からの前記ホウ素の少なくとも一部が、アニーリング中に前記メンブレン層内に拡散するようにする、方法。
【請求項52】
前記メンブレン層は、シリコン、ケイ化モリブデン、およびモリブデンシリコン窒化物のうちの少なくとも1つを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記平面基板は、シリコンを含む、請求項51または52に記載の方法。
【請求項54】
前記アニーリングは、約400℃から約1000℃の温度で行われる、請求項51~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記オルトケイ酸テトラエチル層は、約0.1重量%から約15重量%のホウ素、好ましくは約2重量%から約10重量%のホウ素、より好ましくは約4重量%から約8重量%のホウ素を含む、請求項51~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
平面基板およびメンブレン層を含むスタックであって、前記メンブレン層にはホウ素がドープされている、スタック。
【請求項57】
前記平面基板は、シリコンを含む、請求項56に記載のスタック。
【請求項58】
前記メンブレン層は、シリコン、ケイ化モリブデン、またはモリブデンシリコン窒化物のうちの少なくとも1つを含む、請求項56または57に記載のスタック。
【請求項59】
前記スタックは、前記平面基板と前記メンブレン層との間に熱酸化物層をさらに含む、請求項56~58のいずれか1項に記載のスタック。
【請求項60】
前記スタックは、前記メンブレン層を少なくとも部分的に囲む、ホウ素含有TEOS層をさらに含む、請求項56~59のいずれか1項に記載のスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[0001] 本出願は、2017年11月6日に出願された欧州出願第17200069.7号および2018年6月22日に出願された欧州出願第18179205.2号の優先権を主張し、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、リソグラフィ装置用のペリクル、リソグラフィ装置用のペリクルの製造方法、およびペリクルを備えるリソグラフィ装置、ならびにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板上に付与するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に用いることができる。リソグラフィ装置は、例えば、パターニングデバイス(例えば、マスク)からのパターンを、基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)の層上に投影することができる。
【0004】
[0004] 基板上にパターンを投影するためにリソグラフィ装置によって使用される放射の波長が、その基板上に形成可能なフィーチャの最小サイズを決定する。4~20nmの範囲内の波長を有する電磁放射であるEUV放射を用いるリソグラフィ装置を使用することで、従来の(例えば、193nmの波長を有する電磁放射を使用し得る)リソグラフィ装置よりも小さいフィーチャを基板上に形成することができる。
【0005】
[0005] リソグラフィ装置は、パターニングデバイス(例えば、マスクまたはレチクル)を含む。パターニングデバイスを通って、またはパターニングデバイスに反射して放射が提供され、基板上に像を形成する。ペリクルを設けて、パターニングデバイスを空中浮遊粒子やその他の形の汚染から保護してもよい。パターニングデバイスの表面上の汚染は、基板上の製造欠陥を引き起こす場合がある。
【0006】
[0006] ペリクルは、パターニングデバイス以外の光学コンポーネントを保護するために設けることもできる。ペリクルを使用して、リソグラフィ装置の互いに封止された領域の間に、リソグラフィ放射用の通路を設けることもできる。ペリクルは、スペクトル純度フィルタ等のフィルタとして使用することもできる。リソグラフィ装置、特にEUVリソグラフィ装置の内部は過酷な環境となる場合があるため、ペリクルは、優れた化学的および熱的安定性を示すことが求められる。
【0007】
[0007] 既知のペリクルは、例えば、自立グラフェンメンブレンや、ハロゲン化グラフェン、グラファン、フラーレン、カーボンナノチューブといったグラフェン誘導体、またはその他の炭素系材料を含み得る。マスクアセンブリは、パターニングデバイス(例えば、マスク)を粒子汚染から保護するペリクルを含むことができる。ペリクルは、ペリクルフレームによって支持されて、ペリクルアセンブリを形成することもできる。ペリクルは、例えば、ペリクルの境界領域をフレームに接着することによって、フレームに取り付けることができる。フレームは、パターニングデバイスに、恒久的または取り外し可能な形で取り付けることができる。自立グラフェンメンブレンは、液体表面上にグラフェンの薄膜を浮かべ、その薄膜をシリコンフレーム上にすくい上げることによって形成することができる。この方法で形成されたメンブレンの質は、ばらつきがあり、制御が困難であることが分かっている。さらに、大きなグラフェンメンブレンを確実に生成するのは困難である。
【0008】
[0008] 自立グラフェンメンブレンやその他の炭素系メンブレンを含むペリクル等の、既知のペリクルの寿命は、限定的であることが分かっている。
【0009】
[0009] 既知のペリクルは、H*およびHO*等のフリーラジカル種を含有する雰囲気内でエッチングされる場合があり、そのため、使用によって経時的に劣化し得ることも分かっている。ペリクルは非常に薄いため、フリーラジカル種との反応によって脆弱化し、最終的には機能不全となる場合がある。したがって、ペリクルとして使用するための代替的な材料が必要とされる。
【0010】
[00010] 加えて、ペリクルの透過率は、経時的に変化し得ることが分かっている。このことは、ペリクルを通過可能な放射の量に影響を及ぼすため、リソグラフィ装置内で使用されるレジストの露光不足または露光過多を引き起こし得る。また、透過率が減少すると、そうでない場合と比べてペリクルが高温で動作することとなる可能性があり、ペリクルの損傷およびペリクルの寿命の低下を招き得る。したがって、使用中に透過率が変化しにくい、代替的なペリクルが望ましい。
【0011】
[00011] 二ケイ化モリブデン、二ケイ化ニオブ、二ケイ化タンタル、および二ケイ化タングステン等の高融点金属ケイ化物は、それらの化学的および熱的安定性ならびに電気伝導率のため、ゲート材料、オーミック接触、および加熱要素としての使用が研究されてきた。本発明までは、そのような材料をペリクルとして使用することは不可能であった。
【0012】
[00012] 金属ケイ化物化合物は、トランジスタゲートに使用することができる。トランジスタゲートは、シリコンウェーハ上に金属ケイ化物化合物の層を堆積させることによって形成することができる。金属ケイ化物層または金属ケイ化物膜は、物理気相成長(PVD)または化学気相成長(CVD)等の気相成長技術によって、シリコン上に堆積させることができる。堆積ステップでは、モリブデン等の高い融点を有する高融点金属がシリコンウェーハ上に堆積し、そこで反応して金属ケイ化物層を形成する。金属ケイ化物層を保護するために、金属ケイ化物層にシリコンまたは酸化シリコンの犠牲層を設けてもよい。そのような層状の材料は、半導体基板上またはソースおよびドレイン領域上に形成されたシリコンゲート電極またはシリコン配線層、あるいは単結晶シリコンの半導体基板の主要面内に形成された拡散配線層の電気抵抗を可能な限り低減するために、半導体デバイスにおいて使用されてきた。
【0013】
[00013] しかし、半導体産業において、マイクロ電子工学における使用で知られているそのような材料は、ペリクルとしての使用には適さないことが分かっている。ペリクルは、マイクロ電子工学チップよりもはるかに大きく、かつはるかに過酷な動作環境にさらされることが理解されるだろう。加えて、マイクロ電子工学において使用される場合は、そのような材料の電子特性が最も重要であるが、ペリクルとして使用される場合には、物理特性がより重要となる。さらに、約1cm×1cmよりも大きい金属ケイ化物膜を製造することはこれまで不可能であったため、既知の金属ケイ化物膜は、ペリクルとして使用することができない。
【0014】
[00014] 自立金属ケイ化物膜の従来の製造においては、膜を約900℃以上に加熱して、膜をアニーリングさせる。アニーリングによって、金属ケイ化物をその特定の温度での最小応力状態に至らせ、かつ金属ケイ化物膜の密度を増大させることができる。冷却されると、金属ケイ化物は、金属ケイ化物膜がその上で成長するシリコン基板(例えば、シリコンウェーハ)よりも収縮し、結果として、冷却後に、金属ケイ化物層内に大きな引張応力が生じる。金属ケイ化物層を回収するために、ウェーハの残りの部分がエッチング除去される。金属ケイ化物層はエッチャント内を浮遊し、回収可能となる。しかし、金属ケイ化物膜内部の大きな引張応力は保持される。
【0015】
[00015] 科学的理論に拘束されることを望むものではないが、この方法で形成された金属ケイ化物膜は、シリコン基板の熱膨張係数と金属ケイ化物膜の熱膨張係数の間の不一致によって生じる応力のために、1cm×1cmの面積を超えて成長することができないと考えられる。特に、金属ケイ化物膜は、加熱されるとシリコン基板よりも膨張し、冷却されるとより収縮し、結果として、金属ケイ化物層内に大きな引張応力が生じる。
【0016】
[00016] 金属ケイ化物層の密度を高くするために、金属ケイ化物層をアニーリングすることが必要である。リソグラフィ装置内で材料がペリクルとして使用される前にアニーリングが行われなかった場合、その材料は、リソグラフィ装置内で露光中に加熱された時に、密度が高まり収縮するだろう。その結果、材料内に大きな引張応力が生じ、ペリクルが破損する可能性がある。
【0017】
[00017] ペリクル膜を高温にさらす別の理由は、高品質な犠牲酸化物の堆積を可能にするためである。犠牲酸化物層の堆積は、極薄いペリクル膜の剥離を可能にするためのものである。犠牲酸化物を高温で堆積させることによって、犠牲酸化物層内に微小な穴が生じないようにされる。そのため、ペリクル回収のために必要な犠牲酸化物の堆積は、製造プロセスに高温を取り入れる。犠牲酸化物は、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)の分解によってもたらされ得る。約600℃を超える温度では、TEOSは二酸化シリコンおよびジエチルエーテルに分解する。
【0018】
[00018] 実際には、金属ケイ化物層を、単結晶シリコンウェーハの表面上に堆積させる。次いでウェーハはアニーリングされるが、これは約400℃から600℃の温度、例えば500℃まで加熱することによって達成することができる。次いで、ペリクルは、最低約725℃以上の温度、好ましくは最低約750℃まで加熱されて、TEOSおよび熱酸化物等の犠牲酸化物の分解、ならびに金属ケイ化物層の安定化を可能にする。これらの温度は、約0.5から1.5GPa、例えば1GPaの大きな引張応力を、金属ケイ化物膜内に発生させる。シリコンウェーハは、好ましくは単結晶シリコンウェーハであるが、ゲルマニウムウェーハ、またはEUV透過に好適な他の材料から作製されたウェーハを使用することもできる。
【0019】
[00019] そのような膜は、良好な密度を有する一方で、引張応力が大きすぎるため、リソグラフィ装置内でペリクルとして使用するのに十分大きく成長することができず、そうでなくても大きな内部応力のために不安定である。
【0020】
[00020] したがって、好ましくはリソグラフィ装置内で、特にEUVリソグラフィ装置内で、ペリクルとして使用するのに十分大きくかつ安定した金属ケイ化物膜の製造を可能にする、ペリクルの製造方法を提供することが望ましい。また、熱的および化学的に安定であり、かつ既知の金属ケイ化物材料より強度の高いペリクルを提供することも望ましい。
【0021】
[00021] 本出願は一般に、リソグラフィ装置、特にEUVリソグラフィ装置の文脈におけるペリクルに言及するが、本発明はペリクルおよびリソグラフィ装置のみに限定されるものではなく、本発明の主題は他の任意の好適な装置または状況において使用してよいことが理解される。
【0022】
[00022] 例えば、本発明の方法は、スペクトル純度フィルタにも同様に適用することができる。プラズマを使用してEUV放射を発生させるEUV源等のEUV源は、実際には望ましい「帯域内の」EUV放射だけでなく、望ましくない(帯域外の)放射も放出する。この帯域外の放射は、深UV(DUV)放射範囲(100から400nm)において最も顕著である。さらに、一部のEUV源、例えばレーザ生成プラズマEUV源の場合、通常10.6ミクロンのレーザからの放射も、顕著な望ましくない(帯域外の)赤外(IR)放射源を形成し得る。
【0023】
[00023] リソグラフィ装置において、いくつかの理由でスペクトル純度が所望される。理由の1つは、レジストは放射の帯域外の波長に対して感応性が高く、したがって、レジストがそのような帯域外の放射にさらされた場合、レジストに付与された露光パターンの像品質が低下し得るためである。さらに、帯域外の赤外放射、例えば、一部のレーザ生成プラズマ源における10.6ミクロンの放射は、リソグラフィ装置内部のパターニングデバイス、基板、および光学部品の、望まれない不必要な加熱を招く。そのような加熱は、これらの要素の損傷、寿命の低下、および/またはレジストコートされた基板上に投影および付与されるパターンの欠陥または歪みを招くおそれがある。
【0024】
[00024] 典型的なスペクトル純度フィルタは、例えば、モリブデンまたはルテニウム等の反射性金属でコートされたシリコンメンブレンから形成することができる。使用中、典型的なスペクトル純度フィルタは、例えば、入射する赤外およびEUV放射からの高い熱負荷にさらされ得る。この熱負荷によって、スペクトル純度フィルタの温度は800℃を超える可能性があり、その結果、最終的にコーティングの層間剥離が生じる。シリコンメンブレンの層間剥離および劣化は、水素の存在によって加速されるが、水素は、スペクトル純度フィルタが使用される環境内で、デブリ(例えば、レジストからの分子ガス放出(molecular outgassing)や粒子デブリ等)がリソグラフィ装置の特定の部品に進入することや特定の部品から離れることを抑制するために、ガスとしてしばしば使用される。
【0025】
[00025] このように、本発明に係る金属ケイ化物膜は、望まれない放射を遮るスペクトル純度フィルタとして使用することができ、またリソグラフィマスクを粒子による汚染から保護するペリクルとして使用することもできる。したがって、本出願における「ペリクル」への言及は、「スペクトル純度フィルタ」への言及でもある(これらの用語は互換可能である)。本出願においては主にペリクルに言及するが、全ての特徴はスペクトル純度フィルタにも同様に適用することができる。スペクトル純度フィルタは、ペリクルの一種であることが理解される。
【0026】
[00026] リソグラフィ装置(および/または方法)において、レジストコートされた基板へのパターン付与に使用される放射の強度の損失を最低限にすることが望ましい。この理由の1つは、例えば、露光時間を減少させ、スループットを増大するために、理想的には、可能な限り多くの放射が基板にパターンを付与するために利用可能となるべきだからである。同時に、リソグラフィ装置を通過して、基板上に入射する、望ましくない(例えば、帯域外の)放射の量を最低限にすることが望ましい。さらに、リソグラフィ方法または装置において使用されるペリクルが、十分な寿命を有し、かつ、ペリクルがさらされ得る高い熱負荷、および/またはペリクルがさらされ得る水素(またはそれに類似するもの、例えばH*およびHO*を含むフリーラジカル種等)の結果として、急速に経時的に劣化しないようにすることが望ましい。したがって、改善された(または代替的な)ペリクル、および、例えばリソグラフィ装置および/または方法において使用するのに好適なペリクルを提供することが望ましい。
【0027】
[00027] さらに、本出願は一般に、二ケイ化モリブデンペリクルに言及するが、任意の好適な金属ケイ化物材料が使用できることが理解されるだろう。例えば、ペリクルは、二ケイ化ジルコニウム、二ケイ化ニオブ、二ケイ化ランタン、二ケイ化イットリウム、および/または二ケイ化ベリリウムを含んでよい。加えて、EUV放射にさらされた時のペリクルの透過率の変化を打ち消すように選択および構成された少なくとも1つの犠牲層を有するペリクル、および関連する方法に関する本発明の実施形態は、窒化された金属ケイ化物(nitridated metal silicide)または窒化されたシリコン(nitridated silicon)を含むペリクルに適用してもよく、他の任意の種類のペリクルに適用してもよい。
【発明の概要】
【0028】
[00028] 本発明は、既知のペリクル、ならびにペリクルを生成および設計する既知の方法に関する上記の問題を考慮してなされたものである。
【0029】
[00029] 本発明の第1の態様によれば、窒化された金属ケイ化物または窒化されたシリコンを含む、リソグラフィ装置用のペリクルが提供される。
【0030】
[00030] 驚くべきことに、金属ケイ化物に窒素を添加することによって、窒素を含まない金属ケイ化物、あるいはシリコン層、シリコンウェーハ、シリコン膜、または同様のものに対する利点が数多く生じることが分かっている。これらの利点によって、これまで不可能であった、金属ケイ化物膜を含むペリクルの提供が可能となる。金属ケイ化物基板は、ケイ化モリブデンまたはケイ化ジルコニウム基板であり得る。
【0031】
[00031] 金属ケイ化物基板を窒化することによって、窒素が金属ケイ化物と反応して、ペリクル基板上に金属ケイ化物窒化物(metal-silicide-nitride)を形成することが可能である。金属ケイ化物窒化物層は、シリコン基板上に形成することができる。シリコン基板はシリコンウェーハであってよい。同様に、多結晶シリコンペリクルの強度を改善するために、純シリコンに窒素をドープすることが可能である。この場合、基板は実質的に純シリコンである。
【0032】
[00032] 第一に、驚くべきことに、窒素の添加によって、窒素が添加されていない場合と比べて、膜がよりアモルファスに保たれることが分かっている。この結果、強度、熱に対する耐性、および機械的負荷に対する耐性が増大する。このことは改善された引張強度によって示される。
【0033】
[00033] 加えて、窒素の添加によって、アニーリングプロセス中、金属ケイ化物膜はより圧縮した状態に保たれる。そのため、金属ケイ化物窒化物膜は、室温まで冷却されるにつれて収縮するが、窒素の添加が無い場合と比べて膜の収縮の程度は小さく、結果として、室温における膜内部の残留引張応力は小さくなる。さらに、約450℃から600℃の高温に至る高出力露光中、膜は、ゼロ状態密度で、かつ応力蓄積が無いままに保たれることとなる。特に、窒素の添加によって、堆積される時点で既にペリクルは高密度になっているため、加熱された時にペリクルは収縮せず、それによって、使用中の密度の変化に対してより耐性のあるものとなる。
【0034】
[00034] 窒素を含むことによるさらに驚くべき利点は、金属ケイ化物の酸化の低減および自然酸化物の厚みの低減である。酸化しやすさが低下することで、金属ケイ化物の化学的および熱的安定性が改善し、自然酸化物の厚みが低減することで、金属ケイ化物にかかる応力が低減する。科学的理論に拘束されることを望むものではないが、自然酸化物層は圧縮応力を発生させるため、ペリクル膜に対して引張力を作用させ、したがって膜を脆弱化すると考えられる。自然酸化物層の厚みが低減することで、引張応力が低減すると考えられる。また、自然酸化物の厚みが低減することで、EUV透過の改善も促進する。EUV放射のパワーが低減し、それによって装置全体の効率が低下して装置のスループットが低減するのを回避するために、利用可能な限り多くのEUV放射が、吸収されることなくペリクルを通過可能であることが重要である。
【0035】
[00035] 金属ケイ化物層への窒素の添加によって、材料の線熱膨張係数が低減することも分かっている。これによって、温度変化によって生じる材料内の引張応力が小さくなり、やはり引張応力が低減することによって、より大きな膜を生成することが可能となる。
【0036】
[00036] 同様の利点は、窒化シリコンペリクルにも認められる。
【0037】
[00037] 好ましくは、金属ケイ化物窒化物は、式M(Si)を有し、x≦y≦2xであり、かつ0<z≦xである。添加される窒素の厳密な量は、化合物内の金属の性質、およびペリクル用の動作条件に応じて調節することができる。例えば、ケイ化モリブデン化合物と比較して、ケイ化ジルコニウム化合物内により多くの量の窒素を含めることが可能であり、これは、ジルコニウムはモリブデンよりもEUV放射に対する透過性が高いため、窒素の量の増大はEUV透過を低減するものの、ジルコニウムの改善された透過率によって均衡されるからである。
【0038】
[00038] したがって、金属ケイ化物窒化物膜においては、金属よりもシリコンの原子濃度の方が高い。好ましくは、シリコンの原子濃度は、金属の原子濃度の約2倍、すなわちy=2xである。非化学量論的な値が可能であることが理解されるだろう。例えば、yの値は、xおよび2xを含む、xと2xの間の任意の数であってよい。
【0039】
[00039] 窒素の存在は、金属ケイ化物膜に望ましい物理的特性をもたらすために必要なため、zの値はゼロより大きい。高濃度で窒素を添加すると金属ケイ化物材料の電気伝導率が低減すること、また、高い窒素濃度ではEUV透過率が減少することから、金属ケイ化物層の窒素含有量は、可能な限り低く、しかし上記の利点を示すのに十分な程度に高く保つことが好ましい。1未満のxを有することは、EUV透過率に悪影響は及ぼさないが、本明細書に記載される機械的な利点をもたらすことが分かっている。そのため、zの値はxの値以下である。好ましくは、zの値は1以下である。
【0040】
[00040] 好ましくは、窒化されたシリコンは、式SiNを有し、0.01≦a≦1である。好ましくは、a≦0.5であり、より好ましくはa≦0.1である。窒素がドープされたシリコンは、マイクロ電子工学での使用が知られているが、ドープされたシリコン内の窒素の最大量は、1万のシリコン原子につき約1つの窒素原子であり、すなわち、0.01原子%である。現在の文脈において、これは「a」の最大値が0.0001であることを意味し得る。わずかにドープされたシリコンにおいては、「a」の値は桁違いに小さいだろう。さらに、窒化シリコン(Si)においては、シリコン原子より窒素原子の割合が大きく、すなわち、「a」>1である。そのため、本発明のペリクルの式は、マイクロ電子工学において使用される式から外れ、かつ、窒化シリコンが、例えば、ベアリングまたはターボ過給機等においてバルク材として使用される場合の式からも外れる。
【0041】
[00041] ペリクルを構成する材料の式は、化学量論的である必要はない。式は、最小公分母に換算されており、かつ/または短縮された形式で示されていると解釈すべきである。例えば、膜の式がMoSiNiの場合、これをMoSiNi0.5と表現することもできる。別の例では、膜の式がZrSiNiの場合、これをZrSi0.33と表現してもよい。実際は、シリコンは部分的にのみ窒化されているため、式は化学量論的にはならない。
【0042】
[00042] 好ましくは、金属(M)は、Ce、Pr、Sc、Eu、Nd、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、La、Y、およびBeを含む群から選択される。好ましくは、金属(M)は、Mo、ZrまたはBeである。
【0043】
[00043] ペリクルの典型的な組成は、ZrSiN、MоSiN、LaSiNおよびYSiNである。これらの例のそれぞれにおいて、x=1、y=2、かつz=1である。
【0044】
[00044] 他の典型的な組成は、MоSiN、ZrSiN、MоSiNおよびZrSiNである。これらの例から分かるように、窒素の原子濃度は、金属の原子濃度未満である。好ましくは、窒素の原子濃度は、金属、シリコン、および窒素の総原子濃度の約25%未満である。そのため、金属およびシリコンは、金属ケイ化物膜における金属、シリコンおよび窒素原子の総数の約75%超を構成することが好ましい。言い換えると、金属ケイ化物窒化物ペリクルの原子全体の約75%超が金属またはシリコン原子であり、残りの約25%が窒素原子である。
【0045】
[00045] 窒素の原子濃度は、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、または約1%未満であってよい。
【0046】
[00046] ペリクルは、少なくとも1つのキャッピング層をさらに含んでよい。ペリクルは、金属ケイ化物窒化物または窒化されたシリコン膜の各側に、キャッピング層を含んでよい。金属ケイ化物窒化物または窒化されたシリコン膜は、10nmから約40nmの厚み、好ましくは約15nmから約30nmの厚みを有してよい。少なくとも1つのキャッピング層は、約0.1nmから約10nmの厚み、好ましくは約1nmから約5nmの厚みを有してよい。キャッピング層は、任意の好適なキャッピング材料を含むことができる。好適なキャッピング材料は、EUVリソグラフィ装置の環境内で熱的および化学的に安定であり、かつペリクルを通るEUVの透過を著しく阻害しないものである。キャッピング層はまた、窒化された金属ケイ化物またはシリコンに付着可能であるように、ペリクルに適合しなければならない。好適なコーティング材料は、ルテニウムRu、ホウ素B、金属ホウ化物、ホウ化炭素B4C、窒化ホウ素BN、または類似のものを含む。
【0047】
[00047] キャッピング材料は、例えば、化学気相成長またはスパッタリング等の、任意の好適な方法を使用して付与することができる。
【0048】
[00048] 実際には、MSiは、ウェーハ上において周囲温度で製造することができる。次いで、ウェーハを好適な液体中でエッチングしてよく、ペリクル膜を液体の中からフレーム上に持ち上げてよい。この場合、窒素の添加によって、主に膜の密度が増大し、したがって耐熱性が増大する。これを使用して、様々な用途のEUVフィルタを生成することができる。MSiは、高温のアニーリング、および犠牲酸化物の高温の堆積を組み込んだ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)プロセスを使用して製造することもできる。窒素の添加に起因する低い熱膨張係数、および窒素の添加に起因する構造的変化に対する耐性の向上は、主に応力を低減するのに役立ち、フルサイズのペリクルの製造を可能にする。
【0049】
[00049] 本明細書に記載される第2の態様によれば、リソグラフィ装置用のペリクルを製造する方法であって、金属ケイ化物基板またはシリコン基板を窒化することを含む方法が提供される。
【0050】
[00050] 金属ケイ化物またはシリコンの窒化は、金属ケイ化物基板またはシリコン基板をプラズマでスパッタリングすることによって引き起こされる。スパッタリングは、反応性スパッタリングであってよい。プラズマは、任意の好適なプラズマであってよい。プラズマは、窒素を含むことが好ましい。好ましくは、プラズマは、アルゴンと窒素ガスの混合物を含む。アルゴンガスは、不活性雰囲気をもたらすために含まれる。他の希ガスより安価なため、アルゴンを使用することが好ましいが、他の希ガスを使用してもよい。
【0051】
[00051] 窒素に対するアルゴンの比率は、様々であってよい。ガス混合物内の窒素の割合が大きいと、金属ケイ化物膜内により多くの量の窒素が組み込まれることとなる。例えば、窒素にアルゴンを足した量で窒素の量を割ったものとして計算される窒素流量比が、約10%であった場合、金属ケイ化物窒化物膜内の窒素の原子濃度は約18%となった。窒素流量比が約40%であった場合、金属ケイ化物窒化物膜内の窒素の原子濃度は約42%となった。同様に、窒素流量比が10%から40%に増大すると、それに対応して酸素の原子濃度が約34%から約15%に低下し、自然酸化物層の厚みの低減を示した。そのため、窒素に対するアルゴンの比率は、必要とされる窒化の程度に応じて様々であってよい。
【0052】
[00052] 金属ケイ化物を形成する金属は、Ce、Pr、Sc、Eu、Nd、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、La、YおよびBeを含む群から選択されてよい。この群のうち、モリブデン、ジルコニウム、およびベリリウムが、好ましい元素である。モリブデンが最も好ましい。
【0053】
[00053] ペリクルの既知の生成方法の限界のために、現在まで、金属ケイ化物を含むペリクルを作製する好適な方法は存在しなかった。
【0054】
[00054] 窒化された金属ケイ化物材料は、これまで半導体トランジスタにおけるゲートを形成するためにのみ使用されてきたが、それらのゲートは、ペリクルよりも数桁小さく、かつ、リソグラフィ装置、特にEUV装置の過酷な熱的および化学的環境に耐える必要がないものである。
【0055】
[00055] したがって、本発明の第3の態様によれば、本発明の第2の態様に係る方法によって取得可能であるか、または取得される、リソグラフィ装置用のペリクルが提供される。
【0056】
[00056] 本発明の第4の態様によれば、本発明の第2の態様に係る方法によって製造されたペリクル、または本発明の第1の態様に係るペリクルの、リソグラフィ装置内での使用が提供される。
【0057】
[00057] ペリクルとして使用するために必要とされる所要の物理的特性を有する金属ケイ化物ペリクルを製造することはこれまで不可能であったため、そのようなペリクルをリソグラフィ装置内で使用することは不可能であった。さらに、驚くべきことに、シリコンを窒化することによって、結果としてシリコンペリクルの強度が増大し得ることが分かった。
【0058】
[00058] 本発明の第5の態様によれば、本発明の第1の態様に係るペリクルを製造するための、反応性スパッタリングの使用が提供される。
【0059】
[00059] 本発明の第6の態様によれば、本発明の上記の態様のいずれかに係るペリクル、そのペリクルを支持するフレーム、およびそのフレームに取り付けられたパターニングデバイスを備える、リソグラフィ装置用のアセンブリが提供される。
【0060】
[00060] 本発明の第7の態様によれば、EUV放射にさらされた時のペリクルの透過率の変化を打ち消すように選択および構成された、少なくとも1つの補償層を含む、リソグラフィ装置用のペリクルが提供される。
【0061】
[00061] ペリクルの透過率は、EUV放射にさらされた時に変化することが分かっている。変化は不可逆的である場合がある。変化は、EUVにさらされた時に急速に生じ得るか、または変化の程度は、ペリクルがEUV放射に露光される時間の長さおよび使用される出力レベルに依存し得る。透過率の変化は、多くの要因によって生じ得る。例えば、ペリクルに使用される特定の材料は、EUVリソグラフィ装置内の時折過酷な温度にさらされた時に酸化する。ペリクルの使用中に生成される酸化物は、酸化シリコンまたは一酸化/二酸化炭素等の、揮発性のものである。そのため、これらのガス状の酸化物はペリクルを離れる場合があり、ペリクルの厚みは経時的に低減し、これによってペリクルの透過率は増大することとなる。対照的に、特定の酸化物はペリクル上に残留し、これらは未酸化の形の材料よりも低い透過率を有し得る。透過率の変化は、酸化の有無にかかわらず、使用中のペリクルからの材料の浸食またはエッチングによって生じる場合もある。
【0062】
[00062] これまで、使用中のペリクルの透過率の変化およびペリクルの寿命の限界は、不可避のものとして受け入れられてきたか、または、ペリクル内に耐酸化性の材料を含めることによって、ペリクルを構成する材料の酸化を防止するための試みがなされてきた。補償層は、ペリクルから除去されることによって、またはペリクルの一部として残留しながら物理的に変化することによって、犠牲になり得る。そのため、補償層は、犠牲層であり得る。
【0063】
[00063] 本発明の第7の態様に係る発明は、ペリクル内の1つの材料の透過率の変化を、EUV放射にさらされた時に逆の透過率の変化を示す別の材料を含めることによって均衡しようとすることで、先行技術に対して異なるアプローチを採る。
【0064】
[00064] 好ましくは、少なくとも1つの補償層は、EUV放射にさらされた時に、少なくとも1つの補償層の透過率を増大または減少させるように変質する材料を含む。
【0065】
[00065] 少なくとも1つの補償層は、ペリクルの全体の透過率が実質的に一定となるように、少なくとも1つの補償層の透過率の変化が、ペリクルの透過率の変化を反映するように構成される。最終的には補償層は完全に犠牲になるため、ペリクルの透過率はいつまでも完全に一定であるわけではないことが理解されるだろう。たとえそうであっても、ペリクルの透過率の変化を打ち消すように選択および構成された補償層の存在によって、ペリクルの動作寿命は延長されるだろう。
【0066】
[00066] 補償層は、二酸化シリコン、シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、炭素、炭化ホウ素、二酸化ルテニウム、ホウ素、ホウ化ジルコニウム、およびモリブデンのうちの1つまたは複数を含んでよい。補償層は、EUVリソグラフィ装置内部の条件に耐えることができ、かつEUV放射にさらされた時に透過率が変化する任意の材料を含んでよい。
【0067】
[00067] ホウ素、ホウ化ジルコニウム、およびモリブデンは、EUV放射にさらされた時に、EUV透過率の減少を示すことが分かっている。科学的理論に拘束されることを望むものではなく、例示の目的であるが、EUVリソグラフィ装置の動作条件にさらされた時に、ホウ素は酸化して、酸化ホウ素を生じることがある。酸化ホウ素は、ホウ素よりもはるかに大きいEUV吸収作用を有するため、ペリクル上での酸化ホウ素の生成は、透過率の低下をもたらす。そのため、これらの材料を使用して、EUV透過率の増大を打ち消すことができる。
【0068】
[00068] 他方、二酸化シリコン、シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、炭素、炭化ホウ素、および二酸化ルテニウムは、EUV放射にさらされた時に、EUV透過率の増大を示すことが分かっている。やはり科学的理論に拘束されることを望むものではなく、例示の目的であるが、炭素を酸化して、一酸化炭素または二酸化炭素を形成することができる。これらの化合物は両方とも、EUVリソグラフィ装置の動作条件下ではガス状であるため、ペリクルを離れる。時間と共に、材料の減少がペリクルの透過率の増大につながることとなる。
【0069】
[00069] したがって、ペリクル上に補償層を設けて、ペリクルの材料の、使用時にEUV透過率を増大または減少させる傾向に配慮することが可能である。補償層の厚みは、ペリクルの寿命にわたって、ペリクルの材料の喪失を打ち消すかまたは補償するのに十分な厚みの酸化物層を提供するように、またはペリクルを離れてペリクルの透過率の減少を打ち消すことができる十分な材料を提供するのに足りる厚みとなるように、調節してよい。
【0070】
[00070] 本発明の第8の態様によれば、EUVペリクルの透過率の変化を制御する方法が提供され、この方法は、EUV放射にさらされた時に透過率が増大する少なくとも1つの層、および/またはEUV放射にさらされた時に透過率が減少する少なくとも1つの層を提供するステップを含む。
【0071】
[00071] 驚くべきことに、EUV放射への露光時および/またはEUVリソグラフィ装置の動作環境にさらされた時に透過率が(適宜)増大または減少する、補償層と呼ばれることのある少なくとも1つの層を提供することによって、EUVリソグラフィ装置内での使用中にペリクルの透過率を制御することが可能であることが分かっている。これまで、ペリクルの劣化を防止するために、ペリクルの酸化やエッチング等の物理的な変化を防止するための試みがなされてきた。対照的に、本発明の第8の態様に係る方法は、補償層を提供することによって、ペリクルの変動する透過率の問題を解決する。
【0072】
[00072] 本発明の第9の態様によれば、リソグラフィ装置用のペリクルを設計する方法が提供され、この方法は、EUV放射にさらされた時のペリクルの透過率の変化を測定するステップと、更新されたペリクルに含めるために、測定された透過率の変化を使用して1つまたは複数の材料を選択するステップとを含み、当該1つまたは複数の材料は、EUV放射にさらされた時に、ペリクルの透過率の変化を最も厳密に反映する透過率の変化を有する。一度選択されると、補償層を構成する材料はペリクルに加えられ、こうして、特定された材料を含むペリクルを形成する。
【0073】
[00073] この方法によって、使用時に、従来のペリクルよりも安定した透過率を有するペリクルを生成することが可能になる。ペリクル、または補償層として機能し得る材料の透過率の変化は、既知の技術および装置によって定期的に測定することができる。したがって、ペリクルの透過率が経時的にどのように変化するかを測定し、次いでそれを逆の変化を示す材料と照合することが可能であり、その結果、ペリクルとその材料を組み合わせて更新されたペリクルを形成した時に、両者が互いを相殺して、ペリクルの透過率が元のペリクルよりも一定となる。
【0074】
[00074] EUV放射にさらされた時のペリクルの透過率の変化は、予め選択された時間の長さにわたって測定してよい。予め選択された時間の長さは、ペリクルがEUVリソグラフィ装置内で使用される時間とほぼ同じ程度である。
【0075】
[00075] ペリクルは、少なくとも1日の間、好ましくはより長い間、EUVリソグラフィ機械内での使用に耐えることが好ましいため、透過率の変化の測定値は、ペリクルの期待される寿命と同じ程度の期間にわたって測定される。こうすることによって、経時的なペリクルの透過率の変化を決定することができ、かつ犠牲補償層をより正確に選択することができる。例えば、予め選択された期間は、1~24時間の間であってよいが、必要な場合には最長で7日間としてもよい。
【0076】
[00076] EUV放射にさらされた時のペリクルの透過率の変化は、予め選択された温度および/または出力レベルで測定してよい。温度および/または出力レベルは、EUVリソグラフィ装置内での使用中にペリクルがさらされるのとほぼ同じ温度および/または出力レベルであってよい。
【0077】
[00077] ペリクルの透過率の変化の好適なモデルを提供するためには、ペリクルを、ペリクルが使用される条件にさらすことが必要である。これによって、更新されたペリクルに含めるために最も適切な補償層を選択することができる。例えば、ペリクルを、約400℃から最高で約900℃の温度で試験してよい。例えば、ペリクルを、約50Wから約500Wの出力レベルで試験してよい。
【0078】
[00078] 一度犠牲補償層を含む更新されたペリクルが提供されると、更新されたペリクルをさらなる試験に供して、更新されたペリクルの透過率が、EUVリソグラフィ装置の内部の条件下で経時的にどのように変化するかを決定することができる。次いで、このさらなる情報に基づいて、補償層を調節すること、例えば、補償層の厚み、位置、および/または組成を変更すること等によって、更新されたペリクルを改良および改善することができる。この改良は、最適化されたペリクルに到達するまで繰り返すことができる。
【0079】
[00079] 本発明の第10の態様によれば、本発明の第8または第9の態様の方法にしたがって設計されたペリクルが提供される。
【0080】
[00080] 本発明の第10の態様に係るペリクルは、EUV透過率に関して、他のペリクルよりも改善された安定性を示す。
【0081】
[00081] 本発明の第11の態様によれば、EUVリソグラフィ用のメンブレンアセンブリを製造する方法が提供され、この方法は、内部領域および内部領域の周囲の境界領域を含む平面基板と、少なくとも1つのメンブレン層と、平面基板と少なくとも1つのメンブレン層との間の酸化物層と、平面基板と少なくとも1つのメンブレン層との間の少なくとも1つのさらなる層と、を含むスタックを提供することと、平面基板の内部領域を選択的に除去することであって、その結果、メンブレンアセンブリが、少なくとも1つのメンブレン層から少なくとも形成されたメンブレンと、少なくとも1つのメンブレン層を保持する境界とを含むことと、を含み、境界は、平面基板の少なくとも一部、少なくとも1つのさらなる層、および境界と少なくとも1つのメンブレン層との間に位置する酸化物層を含む。
【0082】
[00082] 一部のメンブレン層は、オーバーエッチングによって製造中に脆弱化しやすいことが指摘されている。エッチングプロセスが異なれば、異なる材料が異なる速度でエッチングされる。そのため、特定のエッチングプロセスにおいては、ある材料が別の材料とは異なる速度でエッチングされ得る。さらに、エッチング中、所定の層の特定の部分は、同じ層の他の部分とは異なる速度でエッチングされ得ることが分かっている。特に、所定の層のエッジ部分は、一般にその所定の層の中央部分より速い速度でエッチングされる。科学的理論に拘束されることを望むものではないが、エッチャント液は、所定の層の中央部分の領域において、同じ層のエッジ部分におけるよりも、エッチング生成物によって希釈される場合があると考えられる。そのため、所定の層の中央部分付近では、同じ層のエッジ部分と比較してエッチングの速度が低減し、その結果、不均一なエッチングとなる。不均一性の程度が、エッチングされている層の最小の厚みを定め、最終的には、最終的なメンブレンアセンブリにおける均一性の欠如につながる。この不均一性は、メンブレン層を脆弱化する場合があり、使用中のメンブレン層の早期破損をもたらすか、または、不均一性がない場合と比べて、スタックを含むペリクルのより頻繁な交換が必要となる場合がある。
【0083】
[00083] 本発明の第11の態様の方法によれば、平面基板と少なくとも1つのメンブレン層との間の少なくとも1つのさらなる層の存在が、オーバーエッチングの問題を低減または克服するのに役立つ場合がある。少なくとも1つのさらなる層は、酸化物層よりも大幅に遅い速度でエッチングされることが好ましい。好ましくは、少なくとも1つのさらなる層は、酸化物層をエッチングするために使用されるエッチャントに対して実質的に耐性を有する。そのため、平坦基板のバルクエッチングのステップの間、エッチングプロセスは、埋込酸化物層とも呼ばれ得る酸化物層に到達するまで、平坦基板の内部領域のエッチング除去を続けて行う。平面基板の内部領域のエッチング除去に使用されるエッチャントは、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)系のエッチャントか、またはその他の、酸化シリコンに対してシリコンを選択的にエッチングする、当技術分野で既知の好適なエッチャントであってよい。酸化物層は、平面基板の内部領域をエッチング除去するために使用されるエッチャントに対して実質的に耐性を有し、したがって、埋込酸化物層に到達すると、エッチングプロセスは停止するか、または大幅に速度を落とす。上記のエッチャントは、埋込酸化物層をエッチング除去しないか、または非常に遅い速度でのみエッチング除去するため、埋込酸化物層をオーバーエッチングするリスクが低いことを意味する。これに続いて、埋込酸化物層をエッチング除去可能なエッチャントを使用して、埋込酸化物層の少なくとも一部分を除去する。好適なエッチャントとしては、当技術分野において既知のように、緩衝酸化物エッチャント(BOE)が含まれる。使用されるエッチャントは、酸化物層よりも遅い速度で少なくとも1つのさらなる層をエッチングするため、埋込酸化物層のいかなるオーバーエッチングも、少なくとも1つのさらなる層にはつながらない。埋込酸化物層は薄いため、埋込酸化物層を除去するためには短時間のエッチングのみが必要とされ、上に重なる少なくとも1つのさらなる層が不均一にエッチングされる可能性が低減する。次いで、TMAHエッチャント、またはその他の、酸化シリコンに対してシリコンを選択的にエッチングする好適なエッチャントを使用する第2のエッチングステップを使用して、少なくとも1つのさらなる層を除去することができる。やはり、少なくとも1つのさらなる層の上に重なる酸化物層は、少なくとも1つのさらなる層をエッチング除去するために使用されるエッチャントに対して耐性を有するため、オーバーエッチングのリスクは低減し、結果として生成されるスタックは、少なくとも1つのメンブレン層の下面に、より均一な酸化物層を含む。
【0084】
[00084] 本発明の第11の態様のさらなる利点は、平面基板と少なくとも1つのメンブレン層との間の埋込酸化物層をより薄くすることが可能になる点である。皺はメンブレンアセンブリを脆弱化し得るが、この利点によって、メンブレンアセンブリに皺が生じる傾向が低減する。これは、酸化物層は圧縮応力を含むので、より薄い酸化物層を有することでスタック内部の圧縮応力が低減するためである。
【0085】
[00085] 好ましくは、少なくとも1つのメンブレン層は、モリブデンシリコン窒化物を含むが、本発明は、例えばpSi等の、任意のメンブレン層に適用し得ることが理解されるだろう。少なくとも1つのメンブレン層は、本発明の任意の態様に関して記載されるメンブレン層のうちの任意のものであってよい。例えば、メンブレン層は、窒化された金属ケイ化物またはシリコンを含んでよい。モリブデンシリコン窒化物は、HFを含む、緩衝酸化物エッチング(BOE)を使用するオーバーエッチングに対して感応性が高い。やはり、科学的理論に制限されることを望むものではないが、上に重なる二酸化シリコンの犠牲層が除去されると、モリブデンシリコン窒化物内の窒化シリコンもエッチングされ、それによって、層を脆弱化するノッチが生じると考えられる。エッチングステップが過度に長く継続されると、層全体が損傷または破壊され得る。本発明は、この問題を克服するのに役立つ。
【0086】
[00086] 好ましくは、少なくとも1つのさらなる層は、シリコンを含む。好ましくは、少なくとも1つのさらなる層は、cSiまたはpSiまたはaSiを含む。TMAHエッチャント内では、シリコンが酸化シリコンよりも速くエッチングされる一方、BOE内では、酸化シリコンがシリコンよりも速くエッチングされる。そのため、それぞれ、上に重なる酸化シリコン層またはシリコン層をエッチングすることなく、シリコン層または酸化シリコン層を選択的に除去することが可能である。
【0087】
[00087] さらなる酸化物層があってもよく、それは少なくとも1つのさらなる層と少なくとも1つのメンブレン層との間の熱酸化物層であってよい。そのため、スタック内の層の上からの順番は、メンブレン層、熱酸化物層、シリコン層、埋込酸化物層、平面基板であってよい。メンブレン層は、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)の層でキャッピングされてよく、これは酸化シリコン層に変換され得る。
【0088】
[00088] 平面基板は、シリコンを含んでよい。シリコンは、使用中のリソグラフィ装置内部の過酷な環境に耐えることのできる、十分に特徴付けられた材料である。
【0089】
[00089] 平面基板の内部領域を除去するステップは、TMAHエッチャントを使用してエッチングすることを含み得る。スタックは、エッチャントが埋込酸化物層に到達するまで、エッチャントにさらされ得る。
【0090】
[00090] 次いで、異なるエッチャント、例えばBOEを使用して、埋込酸化物層を除去することができる。異なるエッチャントは、エッチャントが、シリコンを含み得る少なくとも1つのさらなる層に到達するまで、使用することができる。
【0091】
[00091] 次いで、TMAHエッチャントを使用するさらなるエッチングステップを用いて、少なくとも1つのさらなる層をエッチング除去することができる。エッチャントは、エッチャントが熱酸化物層に到達するまで使用することができる。
【0092】
[00092] 本発明の第12の態様によれば、EUVリソグラフィ用のメンブレンアセンブリが提供され、このメンブレンアセンブリは、モリブデンシリコン窒化物を含む少なくとも1つの層から形成されたメンブレンと、メンブレンを保持する境界とを含み、境界領域は、内部領域および内部領域の周囲の境界領域を含む平面基板から形成され、境界は、平面基板の内部領域を選択的に除去することによって形成され、アセンブリは、境界とメンブレンとの間に、埋込酸化物層、シリコン層、および熱酸化物層を含む。
【0093】
[00093] 本発明の第12の態様に係るメンブレンアセンブリは、他のアセンブリの熱酸化物層よりも薄い熱酸化物層を含む。熱酸化物は圧縮性のため、これによってメンブレン層に皺が生じ得る。より薄い酸化物層を有することによって、圧縮力は低減し、メンブレンの皺も低減する。加えて、熱酸化物のエッチングはより均一であり、その結果、アセンブリを通る放射の透過がより均一になる。
【0094】
[00094] 好ましくは、平面基板はシリコンを含む。
【0095】
[00095] 本発明の第11の態様にしたがって、または本発明の第12の態様にしたがって製造されたアセンブリは、ペリクルとして、好ましくはEUVリソグラフィ装置内で使用することができる。
【0096】
[00096] 本発明の第13の態様によれば、スタックを作製する方法が提供され、この方法は、平面基板、メンブレン層、およびオルトケイ酸テトラエチル層を提供するステップと、スタックをアニーリングするステップとを含み、オルトケイ酸テトラエチル層はホウ素を含み、オルトケイ酸テトラエチル層からのホウ素の少なくとも一部が、アニーリング中にメンブレン層内に拡散するようにする。
【0097】
[00097] pSiおよびモリブデンシリコン窒化物を含むメンブレン層といったメンブレン層は、オーバーエッチングされやすく、これにより層の強度が低減して、早期破損が生じる可能性がある。オーバーエッチングを防止することが望ましく、上述したように、エッチング均質化層として機能する、追加の犠牲層を加えることによって達成することができる。その代わりに、またはそれに加えて、驚くべきことに、ホウ素を層に添加することによって、そのようなメンブレン層をエッチングに対してより耐性のあるものとすることが可能であることが分かっている。シリコンにホウ素を添加することによって、TMAH内のエッチング速度が約100分の1に低減することが分かっている。科学的理論に拘束されることを望むものではないが、ホウ素は、メンブレン層内の結晶粒界に優先的に位置すると考えられる。また、ペリクルは、特に結晶粒界においてエッチャントに対する感応性が高いと考えられるため、結晶粒界にホウ素が存在することが、結果として生成される膜のより高い耐エッチング性の理由であると考えられる。
【0098】
[00098] TEOS層へのホウ素の添加およびそれに続くアニーリングが、メンブレン層内へのホウ素の拡散を引き起こすことが分かっている。ケイ化モリブデンおよびモリブデンシリコン窒化物メンブレンについては、このことが、本発明の本態様に係るスタックから作製されたメンブレンアセンブリの物理特性の一貫性を増大することが分かっており、すなわち、脆弱なアセンブリが少ない。さらに、より大きなメンブレンアセンブリを生成することが可能であり、結果として生成されたメンブレンアセンブリは、熱負荷試験において、ホウ素を含まないメンブレンアセンブリと同様に機能する。
【0099】
[00099] 加えて、本方法にしたがって製造されたpSi層は、ホウ素を含まない同様の層よりも、少なくとも約50%強度が高い。実際のところ、試験されたサンプルは、試験装置の限度(3GPa)では機能不全とならなかったため、強度の増大の厳密な限度はまだ定まっていない。それに加えて、ホウ素を含むそのようなメンブレンのEUV透過率は、低減しない。さらに、この方法にしたがって製造されたpSiメンブレンの放射率は、ホウ素を含まないpSiメンブレンの場合よりはるかに高い。この増大した放射率は、あらゆる金属キャップの性能の重要性を下げ、放射性金属キャップを無くすことまで可能となる場合があるため、有益である。
【0100】
[000100] 平面基板は、任意の好適な材料を含んでよい。好ましくは、平面基板はシリコンを含む。
【0101】
[000101] メンブレン層は、任意の好適な材料を含んでよい。好ましくは、メンブレン層は、シリコン、ケイ化モリブデン、およびモリブデンシリコン窒化物のうちの少なくとも1つを含む。
【0102】
[000102] アニーリングは、任意の好適な温度で実施してよい。TEOSがアニーリングされる温度は、当技術分野において既知である。好ましくは、アニーリングは、約400℃から約1000℃の温度で実施される。例えば、アニーリングは、600℃、700℃、800℃、または900℃、およびそれらの間の温度(intermediate temperature)で行ってよい。アニーリングは、一定の温度で行われても、不定の温度で行われてもよい。
【0103】
[000103] オルトケイ酸テトラエチル層は、約0.1重量%から約15重量%のホウ素、好ましくは約2重量%から約10重量%のホウ素、より好ましくは約4重量%から約8重量%のホウ素を含んでよい。
【0104】
[000104] TEOS層は、化学気相成長またはその他の任意の好適な技術によって提供することができる。
【0105】
[000105] 本発明の第14の態様によれば、平面基板およびメンブレン層を含むスタックが提供され、メンブレン層にはホウ素がドープされている。
【0106】
[000106] 平面基板はシリコンを含んでよい。
【0107】
[000107] メンブレン層は、少なくとも部分的に、平面基板を囲んでよい。メンブレン層は、シリコン、ケイ化モリブデン、モリブデンシリコン窒化物、または本明細書に記載のその他の任意のメンブレン層材料のうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0108】
[000108] スタックは、平面基板とメンブレン層との間に熱酸化物層をさらに含んでもよい。
【0109】
[000109] スタックは、メンブレン層を少なくとも部分的に囲む、ホウ素含有TEOS層をさらに含んでもよい。ホウ素含有TEOS層は、メンブレン層と接触して、メンブレン層内へのホウ素原子の拡散を可能にすることが好ましい。
【0110】
[000110] 本発明の第13の態様の方法にしたがって製造されたスタック、または本発明の第14の態様に係るスタックは、本明細書に記載の他の方法のいずれかにおいて、または本発明の任意の態様に係るアセンブリの製造において、使用することができる。例えば、本発明の第14の態様に係るスタックは、本発明の第12の態様の方法において使用してよい。メンブレン層のホウ素ドーピングは、本発明のすべての態様に適用可能である。
【0111】
[000111] これまで詳述したように、態様のうちの任意のものに関して記載された特徴は、本発明のその他の態様のうちの任意のものに関して記載された特徴と組み合わせることができる。例えば、本発明の第2の態様に係るペリクルの特徴は、本発明の第1、第3、第4、および/または第5の態様の特徴と組み合わせることができる。加えて、本発明の第2の態様に係るペリクルを、本発明の第9の態様に係る方法によって設計することもできる。本発明の態様の特徴が相互排他的である場合を除き、本発明の態様のすべての組み合わせは、互いに組み合わせることができる。
【0112】
[000112] まとめると、本発明の方法は、物理的特性を改善するために窒化されているペリクル、特にケイ化モリブデンペリクルまたはシリコンペリクルの製造を可能にする。結果として生成されるペリクルは、例えば、EUVリソグラフィ装置等のリソグラフィ装置内での使用に好適である。従来は、そのようなペリクルを製造することは不可能であった。本発明の方法にしたがって製造されるペリクルは、ペリクルの使用時に達する高温に耐えることができ、かつフリーラジカル種またはその他の反応種による腐食にも耐えることができる。本発明の方法によって、表面積のサイズが10cm×14cmまでのペリクルが可能となる。本発明の方法はまた、EUVリソグラフィ機械内での使用時のEUV透過率の文脈において、改善された安定性を示すペリクルの設計および製造も可能にする。補償層を含むペリクルは、ペリクルの寿命を延長し、かつその寿命にわたってペリクルの透過率の変化を低減するため、所定の期間内に安定した数のウェーハをイメージングすることを可能にするだろう。
【0113】
[000113] 本発明を、EUVリソグラフィ装置を参照して以下に説明する。しかし、本発明はペリクルに限定されるものではなく、スペクトル純度フィルタにも同様に適用可能であることが理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0114】
[000114] 本発明のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の概略図を参照して以下に説明する。
図1】本発明の一実施形態に係る、リソグラフィ装置および放射源を備えるリソグラフィシステムを示す。
図2】本発明に係る、かつ本発明の方法によって製造された、ペリクルの概略図である。
図3】所定のペリクルのための適切な補償層を選択する際に使用されるステップの図である。
図4】既存の方法にしたがって製造されたメンブレンアセンブリの概略断面図である。
図5a】本発明の第11の態様に係る方法にしたがって製造されたメンブレンアセンブリの概略断面図である。
図5b】本発明の第11の態様に係る方法にしたがって製造されたメンブレンアセンブリの概略断面図である。
図5c】本発明の第11の態様に係る方法にしたがって製造されたメンブレンアセンブリの概略断面図である。
図6】本発明の第13の態様に係る方法の図である。
【発明を実施するための形態】
【0115】
[000115] 図1は、本発明の一実施形態に係る、本発明の第1の態様に係るペリクル15、または本発明の第2の態様の方法にしたがって製造されたペリクル15を含む、リソグラフィシステムを示す。リソグラフィシステムは、放射源SOおよびリソグラフィ装置LAを備える。放射源SOは、極端紫外(EUV)放射ビームBを発生するように構成される。リソグラフィ装置LAは、照明システムIL、パターニングデバイスMA(例えば、マスク)を支持するように構成されたサポート構造MT、投影システムPS、および、基板Wを支持するように構成された基板テーブルWTを備える。照明システムILは、放射ビームBがパターニングデバイスMA上に入射する前に、放射ビームBを調節するように構成される。投影システムは、基板W上に放射ビームB(マスクMAによってパターン付与済みである)を投影するように構成される。基板Wは、以前に形成されたパターンを含んでもよい。その場合には、リソグラフィ装置は、パターン付与された放射ビームBを基板W上に以前形成されたパターンに位置合わせする。本実施形態において、ペリクル15は、放射の経路内に描かれており、パターニングデバイスMAを保護している。ペリクル15は、任意の必要な位置に配置してよく、かつリソグラフィ装置内のミラーのいずれかを保護するために使用してよいことが理解されるだろう。
【0116】
[000116] 放射源SO、照明システムIL、および投影システムPSはすべて、外部環境から隔離できるように構築及び配置されている。放射源SO内に、大気圧未満の圧力のガス(例えば、水素)を供給することができる。照明システムILおよび/または投影システムPS内に、真空を供給することができる。照明システムILおよび/または投影システムPS内に、大気圧よりはるかに小さい圧力の少量のガス(例えば、水素)を供給することもできる。
【0117】
[000117] 図1に示す放射源SOは、レーザ生成プラズマ(LPP)源と呼ばれ得る種類のものである。レーザ1は、例えばCOレーザであってよく、レーザビーム2を介して、燃料放出器3から供給されるスズ(Sn)等の燃料内に、エネルギーを堆積させるように配置される。以下の記載においてはスズに言及するが、任意の好適な燃料を使用してよい。燃料は、例えば液状であってよく、かつ、例えば金属または合金であってよい。燃料放出器3は、スズを、例えば液滴の形状で誘導するように構成されたノズルを、プラズマ形成領域4に向かう軌道に沿って備えてよい。レーザビーム2は、プラズマ形成領域4でスズ上に入射する。スズ内へのレーザエネルギーの堆積によって、プラズマ形成領域4においてプラズマ7が生成される。EUV放射を含む放射は、プラズマのイオンの脱励起および再結合中に、プラズマ7から放出される。
【0118】
[000118] EUV放射は、近法線入射放射コレクタ5(より一般に、法線入射放射コレクタと呼ばれることもある)によって収集および集束される。コレクタ5は、EUV放射(例えば、13.5nm等の望ましい波長を有するEUV放射)を反射するように配置された、多層構造を有し得る。コレクタ5は、2つの楕円の焦点を有する、楕円形の構成を有し得る。以下で検討されるように、第1の焦点は、プラズマ形成領域4にあってよく、第2の焦点は、中間焦点6にあってよい。
【0119】
[000119] レーザ1は、放射源SOから分離することができる。その場合、レーザビーム2を、レーザ1から放射源SOに、ビームデリバリシステム(図示せず)を用いて通過させることができ、ビームデリバリシステムは、例えば、好適な誘導ミラーおよび/またはビームエキスパンダ、および/またはその他の光学部品を含む。レーザ1および放射源SOは、併せて放射システムと考えることができる。
【0120】
[000120] コレクタ5によって反射された放射は、放射ビームBを形成する。放射ビームBは、点6で集束してプラズマ形成領域4の像を形成し、これは照明システムILのための仮想放射源として働く。放射ビームBが集束する点6を、中間焦点と呼ぶことができる。放射源SOは、放射源の閉鎖構造9における開口8に、または開口8付近に、中間焦点6が位置するように配置される。
【0121】
[000121] 放射ビームBは、放射源SOから通過して、放射ビームを調節するように構成された照明システムIL内に入る。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10およびファセット瞳ミラーデバイス11を含むことができる。ファセットフィールドミラーデバイス10およびファセット瞳ミラーデバイス11は、共に、放射ビームBに望ましい断面形状および望ましい角度分布を提供する。放射ビームBは、照明システムILから通過し、サポート構造MTによって保持されるパターニングデバイスMA上に入射する。パターニングデバイスMAは、放射ビームBを反射し、かつ放射ビームBにパターンを付与する。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10およびファセット瞳ミラーデバイス11に加えて、またはそれらの代わりに、その他のミラーまたはデバイスを含んでもよい。
【0122】
[000122] パターニングデバイスMAからの反射に続いて、パターン付与された放射ビームBは、投影システムPSに進入する。投影システムは、基板テーブルWTによって保持された基板W上に放射ビームBを投影するように構成された、複数のミラー13、14を備える。投影システムPSは、放射ビームに縮小係数を適用し、パターニングデバイスMA上の対応するフィーチャよりも小さなフィーチャを有する像を形成することができる。例えば、縮小係数4が適用され得る。図1において、投影システムPSは2つのミラー13、14を有するが、投影システムは任意の数のミラー(例えば、6つのミラー)を含んでよい。
【0123】
[000123] 図1に示す放射源SOは、図示されていないコンポーネントを含んでもよい。例えば、放射源においてスペクトルフィルタを設けることができる。スペクトルフィルタは、EUV放射については実質的に透過性であるが、赤外放射等の他の波長の放射については実質的に遮断するものであってよい。実際のところ、スペクトルフィルタは、本発明の任意の態様に係るペリクルであってよい。
【0124】
[000124] 図2は、本発明によるペリクルの概略的な描写である。ペリクル15は、キャッピング層17に挟まれた、金属ケイ化物窒化物または窒化されたシリコン層16を含む。
【0125】
[000125] 「EUV放射」という用語は、4~20nmの範囲内、例えば13~14nmの範囲内の波長を有する電磁放射を包含するものと考えてよい。EUV放射は、10nm未満、例えば、6.7nmまたは6.8nm等の、4~10nmの範囲内の波長を有し得る。
【0126】
[000126] 図3aから図3cは、所定のペリクルのための適切な補償層を選択する際に使用されるステップの図を示す。ペリクルPは、リソグラフィ装置内の条件にさらされ、ペリクルPの透過率の変化が測定される。概略図において、ペリクルPは単一層からなるものとして示されているが、これは簡潔にするためであり、ペリクルPは、ペリクルスタックを含んでよいことが理解されるだろう。そのため、ペリクルPは、1つまたは複数の層を有し得る。一度所定のペリクルPの透過度の変化が測定されると、測定された透過率の変化を使用して、逆の透過率の変化を最も厳密に示す補償層CL材料を選択する。次いで、この情報を使用して、補償層CLを含む更新されたペリクルPを生成する。更新されたペリクルは、次いで、補償層CLの性質を改良するために、同じ試験に供され得る。図3cに示すように、補償層CLは厚みが増大しているが、あり得る変化はこれだけではなく、他のあり得る変化としては、より薄い補償層CLを設けること、補償層をペリクルPの異なる部分に移動すること、または補償層CLを構成する材料を変更することまで含むことが理解されるだろう。
【0127】
[000127] 一例として、MoSiNペリクルを、3Paの水素の圧力下、580℃で20時間にわたりEUV放射にさらして、ペリクルの透過率は約1%増大したことが分かった。これは、表面が最終的に、フォトニックエッチングされやすい酸窒化ケイ素となり、それによって薄くなったためと考えられる。別のMoSiNペリクルを、ホウ素の層でコーティングし、20時間にわたって、3Paの水素の圧力下、約540℃で試験した。この結果、ペリクルの透過率が約1%減少した。このように、ホウ素層は、酸窒化ケイ素のエッチングによって生じた透過率の変化を打ち消した。したがって、より薄い酸化ホウ素の層が形成されてペリクルの透過率の変化が0%に近づくようにするために、ホウ素層の厚みを変更し得る。
【0128】
[000128] 図4は、既存の方法にしたがって製造されたメンブレンアセンブリの断面を示す。メンブレンアセンブリ18は、平面基板から製造される境界19を含む。任意の好適な平面基板を使用してよいが、本明細書ではシリコン境界を検討する。境界19上に熱酸化物層20が設けられる。この例においては、熱酸化物層20は酸化シリコン層である。メンブレン層21は、酸化物層20上に設けられる。メンブレン層21は、モリブデンシリコン窒化物を含むが、他の材料を使用してもよい。TEOS層22が、メンブレン層21上に設けられる。TEOS層は、後に、酸化シリコン層を形成するように処理することができる。その代わりに、層20および/または22は、熱酸化物またはTEOSではなく、10nmまでの厚み、例えば1nmから5nmの範囲内の厚みを有するSiN層であってもよい。
【0129】
[000129] 製造中、TMAH系エッチャントを使用して、平面基板の内部領域をエッチング除去する。平面基板の必要な量が確実に除去されるように、エッチャントが熱酸化物層をエッチング除去し始めるのに十分な長さにわたって、エッチングステップを続行させる。TMAH系エッチャントは、シリコンよりも低い速度で酸化シリコンをエッチングするが、平坦基板の内部領域を確実にする必要があるため、エッチングは継続し、熱酸化物層のエッジの周囲にノッチが形成される。エッチングステップは1時間超かかる場合があり、約1分にわたってオーバーエッチングが起こり得る。そのため、エッチャントがメンブレン層をエッチングしないようにするために、熱酸化物層を比較的厚くする必要があり、50nm以上であり得る。熱酸化物層は圧縮性のため、これによってメンブレンの皺が誘発されることがあり、アセンブリを脆弱化し得る。加えて、熱酸化物層が厚みを増すことによって、メンブレンアセンブリのEUV透過率が低下し得る。
【0130】
[000130] 図5aは、本発明にしたがって製造されたメンブレンアセンブリの概略断面図を示す。図5aは、製造の早い段階でのメンブレンアセンブリを示す。図4における特徴に対応する特徴には、同一の数字が使用されている。図4のメンブレンアセンブリと対照的に、図5aに示すメンブレンアセンブリ18は、境界19とメンブレン層21との間に位置する埋込酸化物層24およびさらなる層25をさらに含む。さらなる層25は、シリコン層であってよい。
【0131】
[000131] 製造中、図4に示す方法と同様に、TMAHエッチャントを使用して平面基板の内部領域をバルクエッチングし、境界19を設ける。埋込酸化物層24は、平面基板の内部領域からシリコンをエッチングするために使用されるエッチャントに耐える点で、図4における熱酸化物層20と同じ目的を果たす。図5aに示すように、この結果、埋込酸化物層24のエッジの周囲にノッチ23が形成される。
【0132】
[000132] 図5bに示す次のステップにおいては、BOE等の異なるエッチャントを使用して、埋込酸化物層24の内部を除去する。上に重なる、シリコンを含むさらなる層25は、BOEによるエッチングに耐性があるため、埋込酸化物層24のオーバーエッチングは、さらなる層25には移行しない。このようにして、これらの層は、エッチング均質化層として機能する。
【0133】
[000133] 続いて、図5cに示すように、TMAHエッチャント等のエッチャントを使用して、さらなる層25の内部領域を除去する、さらなるエッチングステップを実施することができる。さらなる層25は平面基板よりもはるかに薄いため、熱酸化物層20がエッチャントにさらされる時間は、1時間超から数分に減少する。生じ得るオーバーエッチングは数秒しか持続しないため、これによって熱酸化物層20をオーバーエッチングする可能性は劇的に低減し、したがって、既存の製造方法の場合よりも熱酸化物層20を薄くすることが可能になる。例えば、熱酸化物の厚みは、50nm以上から50nm未満まで低減され得る。
【0134】
[000134] 埋込酸化物層および熱酸化物層は、同じ方法で生成しても、異なる方法で生成してもよく、これらの層を生成する厳密な方法は、本発明を特に限定するものではない。メンブレン層は、複数の層を含むことができる。例えば、メンブレン層は、2つのケイ化モリブデン層に挟まれたモリブデンシリコン窒化物層を含むことができる。
【0135】
[000135] 本発明の第11の態様に係る方法は、オーバーエッチングが低減したメンブレンアセンブリを実現し、その結果、より強度が高く、より安定したメンブレンアセンブリとなる。この方法は、オーバーエッチングのリスクを伴わずに犠牲酸化物層を薄くすることができるため、メンブレンアセンブリの層間の応力の不一致も低減する。これにより、アセンブリ上の圧縮力が低減し、皺が生じるリスクが低減する。加えて、平面基板、埋込酸化物層、および上に重なるシリコン層を、絶縁体上シリコン型ウェーハ(SOI)として設けることができるため、これによってエッチングの前の製造ステップの数を減少させることができ、コストおよび粒子汚染のリスクが低減し得る。
【0136】
[000136] メンブレンアセンブリは、ペリクルとして、好ましくはEUVリソグラフィ機械内で使用することができるが、スペクトル純度フィルタとしても応用することができる。
【0137】
[000137] 図6は、本発明の第13の態様に係る方法を概略的に示す。平面基板27、平面基板27を少なくとも部分的に囲む任意選択の熱酸化物層28、熱酸化物層28を少なくとも部分的に囲むメンブレン層29、およびホウ素がドープされたTEOS層30を含む、スタック26が提供される。アニーリング前は、メンブレン層29は実質的にホウ素を含まない。ホウ素がドープされた層30の模様は、層内のホウ素原子の存在、および、アニーリング後にホウ素原子がどのようにメンブレン層29内に移行するのかを示すことを意図している。
【0138】
[000138] アニーリングステップにおいて、スタックは、ホウ素がドープされたTEOS層30内のホウ素をメンブレン層29内に拡散させるのに十分な温度まで加熱される。この結果、ホウ素に富んだメンブレン層29となり、かつホウ素がドープされたTEOS層30内のホウ素の量が低減する。すべてのホウ素がメンブレン層29内に拡散し得るわけではなく、メンブレン層29内に拡散するホウ素の厳密な量は、アニーリングステップの温度および持続時間、ならびにホウ素がドープされたTEOS層30内のホウ素の濃度を調節することによって、制御可能であることが理解されるだろう。メンブレン層は、シリコン、ケイ化モリブデン、およびモリブデンシリコン窒化物のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0139】
[000139] ホウ素がドープされたメンブレンを含むアセンブリは、EUVリソグラフィ機械におけるペリクルとしての使用、およびスペクトル純度フィルタとしての使用に、極めて好適である。
【0140】
[000140] 本明細書においては、リソグラフィ装置の文脈で本発明の実施形態について具体的な言及がなされているが、本発明の実施形態は、他の装置で使用することもできる。本発明の実施形態は、マスク検査装置、メトロロジ装置、またはウェーハ(または他の基板)やマスク(または他のパターニングデバイス)等のオブジェクトを測定または処理するあらゆる装置の一部を形成し得る。これらの装置は、一般にリソグラフィツールと呼ばれ得る。そのようなリソグラフィツールは、真空条件または周囲(非真空)条件を使用し得る。
【0141】
[000141] 以上、本発明の具体的な実施形態を説明してきたが、本発明は、上述以外の態様で実施できることが明らかである。上記の説明は、制限ではなく例示を意図したものである。したがって、当業者には明らかなように、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本記載の発明に変更を加えてもよい。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4
図5a
図5b
図5c
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-12-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化された金属ケイ化物を含む少なくとも1つの層から形成されたメンブレンと、
前記メンブレンを保持する境界と
を含む、EUVリソグラフィ用のメンブレンアセンブリ
【請求項2】
前記窒化された金属ケイ化物は、式M(Si)を有し、x≦y≦2xであり、かつ0<z≦xである、請求項1に記載のメンブレンアセンブリ
【請求項3】
前記窒化された金属ケイ化物の金属は、Ce、Pr、Sc、Eu、Nd、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、La、Y、またはBeから選択される、請求項1に記載のメンブレンアセンブリ
【請求項4】
前記窒化された金属ケイ化物内の窒素の原子濃度は、約25%未満である、請求項1に記載のメンブレンアセンブリ
【請求項5】
前記メンブレンは、少なくとも1つのキャッピング層をさらに含む、請求項1に記載のメンブレンアセンブリ
【請求項6】
前記少なくとも1つのキャッピング層は、約0.1nmから約100nmの厚み、好ましくは約1nmから約5nmの厚みを有する、請求項に記載のメンブレンアセンブリ
【請求項7】
EUV放射にさらされた時の前記メンブレンの1つまたは複数の層の透過率の変化を打ち消すように選択および構成された、少なくとも1つの補償層をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のメンブレンアセンブリ
【請求項8】
前記少なくとも1つの補償層は、EUV放射にさらされた時に、前記少なくとも1つの補償層の前記透過率を増大または減少させるように変質する材料を含む、請求項7に記載のメンブレンアセンブリ。
【請求項9】
前記窒化された金属ケイ化物を含む層は、10nmから約40nmの厚みを有する、請求項1に記載のメンブレンアセンブリ。
【請求項10】
前記メンブレンは、モリブデンシリコン窒化物を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のメンブレンアセンブリ。
【請求項11】
前記メンブレンアセンブリは、前記境界と前記メンブレンとの間に、埋込酸化物層を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のメンブレンアセンブリ。
【請求項12】
前記メンブレンアセンブリは、前記境界と前記メンブレンとの間に、シリコン層を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のメンブレンアセンブリ。
【請求項13】
前記メンブレンアセンブリは、前記境界と前記メンブレンとの間に、熱酸化物層を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のメンブレンアセンブリ。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のメンブレンアセンブリと、
前記メンブレンアセンブリを支持するためのフレームと、
を含む、EUVリソグラフィ装置用のスペクトル純度フィルタ。
【外国語明細書】