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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152162
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】バルブおよび処理装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 3/03 20060101AFI20241018BHJP
   F16K 51/02 20060101ALI20241018BHJP
   F16K 1/44 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
F16K3/03
F16K51/02 A
F16K1/44 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066197
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】深見 駿
(72)【発明者】
【氏名】金吉 樹
【テーマコード(参考)】
3H052
3H053
3H066
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA11
3H052CA03
3H052CA12
3H052DA01
3H052EA09
3H053AA11
3H053BA04
3H053BA12
3H053CA01
3H053DA09
3H066AA01
3H066BA01
(57)【要約】
【課題】ガスの滞留を抑制して開度調整を行うことができるバルブおよびそのようなバルブを用いた処理装置を提供する。
【解決手段】ガス流路の開度を調整するバルブは、ガス流路に連通する開口を有する本体部と、本体部の開口の開度を調整する弁体と、弁体の駆動部とを有し、弁体は、複数のフラップ部材で構成され、複数のフラップ部材は、開口に対して周方向に重なるように設けられ、駆動部は、複数のフラップ部材を駆動してこれらの重なりを調整し、弁体による開口の開度調整を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流路の開度を調整するバルブであって、
前記ガス流路に連通する開口を有する本体部と、
前記本体部の前記開口の開度を調整する弁体と、
前記弁体の駆動部と、
を有し、
前記弁体は、複数のフラップ部材で構成され、前記複数のフラップ部材は、前記開口に対して周方向に重なるように設けられ、
前記駆動部は、前記複数のフラップ部材を駆動してこれらの重なりを調整し、前記弁体による前記開口の開度調整を行う、バルブ。
【請求項2】
前記本体部の前記開口の周囲のガス流れ方向に垂直な基準面に周方向に沿って複数の第1の回転軸が設けられ、前記複数のフラップ部材の基端部が前記第1の回転軸に取り付けられ、前記駆動部は、前記複数のフラップ部材を前記第1の回転軸を軸として回動させることにより前記弁体による前記開口の開度調整を行う、請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記駆動部は、前記フラップ部材の前記第1の回転軸を軸とする回動動作に加えて、前記フラップ部材の基端部の前記基準面内での角度である取付角度の調整を行う、請求項2に記載のバルブ。
【請求項4】
前記駆動部は、回転モータと、前記回転モータの駆動力を前記複数のフラップ部材に伝達する動力伝達機構と、を有し、
前記動力伝達機構は、
前記本体部の外周に沿ってリング状に設けられ、前記本体部に対して回転可能であり、外周に前記回転モータの動力が伝達される外歯が形成され、内周に前記複数のフラップ部材に動力を伝達するための内歯が形成された動力伝達リングと、
前記複数のフラップ部材に対応して設けられ、前記動力伝達リングの前記内歯に噛合する複数の中間ギアと、
前記複数のフラップ部材にそれぞれ対応して設けられ、前記複数の中間ギアのそれぞれの動力が伝達され、前記複数の第1の回転軸のそれぞれの一方の端部に回転力を伝達して前記複数の第1の回転軸を回転させるとともに、前記複数の第1の回転軸のそれぞれの他方の端部に、前記基準面に沿った前記本体部の径方向の直線的な移動を与える個別伝達部と、
を有する、請求項3に記載のバルブ。
【請求項5】
前記個別伝達部は、
円筒状の外筒の内部に歯車機構が設けられた構造を有し、前記歯車機構に前記中間ギアの回転が伝達され、前記中間ギアの回転方向と直角の方向に回転する回転部と、
前記回転部から前記第1の回転軸の前記一方の端部に向かって延び、前記回転部とともに回転する回転軸部材と、
前記回転軸部材の端部と前記第1の回転軸の前記一方の端部との間に巻き掛けられ、前記回転軸部材の回転を前記第1の回転軸に伝達するベルトと、
前記回転部の前記回転軸部材側とは反対側の面の中心からずれた位置に設けられた接続部と、
前記接続部と前記第1の回転軸の他方の端部とを接続する直線移動軸部材と、
を有し、前記回転部、前記接続部、および前記直線移動軸部材によりクランク機構が構成され、前記回転部の回転が前記接続部および前記直線移動軸部材を経て直線的移動に変換され、前記第1の回転軸の前記他方の端部に、前記基準面に沿った前記本体部の径方向の直線的な移動を与える、請求項4の記載のバルブ。
【請求項6】
前記本体部は、表面および裏面がガスの流れ方向に垂直に設けられ、環状をなし、中央に前記開口が形成された環状部材を有し、前記環状部材の表面側に前記複数の第1の回転軸および前記複数のフラップ部材が設けられ、前記環状部材の裏面側に前記複数の個別伝達部の前記回転部、前記回転軸部材、および前記接続部が設けられ、
前記ベルトおよび前記直線移動軸部材は前記裏面側から前記環状部材を通過して前記表面側に至り、
前記環状部材の前記直線移動軸部材に対応する部分には、前記径方向に沿って形成されたガイド溝が設けられ、前記直線移動軸部材は、前記回転部の回転にともなって前記接続部が回転された際に、前記直線移動軸部材が前記ガイド溝によってガイドされ、前記径方向以外の動きが規制される、請求項5に記載のバルブ。
【請求項7】
前記基準面に存在する前記第1の回転軸が、第2の回転軸により前記基準面内で回転可能に設けられており、
前記駆動部は、
前記本体部の外周にリング状に設けられた外接リングと、
前記外接リングを回転および直線駆動させる駆動機構と、
前記外接リングに形成された穴に挿通され、その先端部が前記複数のフラップ部材を操作可能に構成された複数の操作スティックと、
を有し、
前記駆動機構により前記外接リングをガスの流れ方向に沿って直線駆動させることで、前記フラップ部材が前記複数の操作スティックを介して前記第1の回転軸を軸として回動され、前記駆動機構により前記外接リングを回転させることで、前記複数のフラップ部材が前記複数の操作スティックを介して前記第2の回転軸を軸として回動されて前記取付角度が調整される、請求項3に記載のバルブ。
【請求項8】
前記複数のフラップ部材は、湾曲部を有する板状をなしている、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項9】
前記フラップ部材のガスの流れ方向上流側の面には、前記ガス流路を流れるガスを案内する溝が形成されている、請求項8に記載のバルブ。
【請求項10】
前記溝は、前記フラップ部材の長手方向に沿って設けられている、請求項9に記載のバルブ。
【請求項11】
前記フラップ部材のガスの流れ方向上流側の面の基端側に、前記フラップ部材の長手方向の前記溝に沿ってガスを噴射するガス噴射口が設けられている、請求項10に記載のバルブ。
【請求項12】
前記バルブは、真空処理を行う処理容器内を排気する排気配管に設けられ、前記弁体による前記開口の開度調整を行うことにより、前記処理容器内の圧力制御を行う圧力制御バルブである、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項13】
基板を収容し、真空に保持された状態で前記基板に対し処理を行う処理容器と、
前記処理容器を真空排気する真空排気部と、
を具備し、
前記真空排気部は、前記処理容器の排気口に接続された排気配管と、前記排気配管に接続された排気機構と、
前記排気配管における前記処理容器と前記排気機構との間の部分に設けられ、前記排気配管におけるガス流路の開度調整を行うことにより前記処理容器内の圧力を制御する圧力制御バルブと、
を備え、
前記圧力制御バルブは、
前記ガス流路に連通する開口を有する本体部と、
前記本体部の前記開口の開度を調整する弁体と、
前記弁体の駆動部と、
を有し、
前記弁体は、複数のフラップ部材で構成され、前記複数のフラップ部材は、前記開口に対して周方向に重なるように設けられ、
前記駆動部は、前記複数のフラップ部材を駆動してこれらの重なりを調整し、前記弁体による前記開口の開度調整を行う、処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バルブおよび処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
成膜処理や、エッチング処理等のガス処理においては、ガスの流路にバルブが設けられる。このようなバルブとしては、例えば、チャンバー内を所定の真空圧力に制御するために排気ラインに設けられる圧力制御バルブを挙げることができる。圧力制御バルブとしては、特許文献1に記載されているようにバタフライバルブを用いたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-60133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、ガスの滞留を抑制して開度調整を行うことができるバルブおよびそのようなバルブを用いた処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るバルブは、ガス流路の開度を調整するバルブであって、前記ガス流路に連通する開口を有する本体部と、前記本体部の前記開口の開度を調整する弁体と、前記弁体の駆動部と、を有し、前記弁体は、複数のフラップ部材で構成され、前記複数のフラップ部材は、前記開口に対して周方向に重なるように設けられ、前記駆動部は、前記複数のフラップ部材を駆動してこれらの重なりを調整し、前記弁体による前記開口の開度調整を行う。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、ガスの滞留を抑制して開度調整を行うことができるバルブおよびそのようなバルブを用いた処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係るバルブである圧力制御バルブを用いた処理装置の一例を示す断面図である。
図2】一実施形態に係るバルブである圧力制御バルブを示す正面図である。
図3】一実施形態に係るバルブである圧力制御バルブの構造を示す斜視図である。
図4】フラップ部材の一例を説明するための斜視図であり、(a)はフラップ部材の表面、(b)はフラップ部材の裏面を示している。
図5】フラップ部材の開き角度φを説明するための図である。
図6】複数のフラップ部材を、開き角度φが相対的に小さいφ1と相対的に大きいφ2の間で駆動させる状態を示す斜視図である。
図7】フラップ部材の取付角度θを説明するための図である。
図8】複数のフラップ部材を取付角度θが相対的に小さいθ1と相対的に大きいθ2の間で駆動する状態を示す斜視図である。
図9】圧力制御バルブの駆動部の第1の例を示す背面図である。
図10図9の駆動部の個別伝達部を背面側から見た斜視図である。
図11図9の駆動部の個別伝達部によるフラップ部材の移動を説明するための斜視図である。
図12図9の駆動部の個別伝達部によるフラップ部材の直線的な移動を説明するための側面図である。
図13】圧力制御バルブの駆動部の第2の例を示す斜視図である。
図14図13の駆動部を用いた圧力制御バルブの一部を示す側面図である。
図15図13の駆動部を用いた圧力制御バルブの一部を示す平面図である。
図16図13の状態から外接リングを回転させることにより操作スティックを介してフラップ部材を第2の回転軸を軸として回動させ、取付角度θを大きくした状態を示す斜視図である。
図17図13の状態から外接リングを上昇させることにより操作スティックを介してフラップ部材を第1の回転軸を軸として回動させ、開き角度φを小さくした状態を示している。
図18】フラップ部材の基端側にフラップ部材の長手方向に沿ってガスを噴射するガス噴射口を設けた例を示す平面図である。
図19】フラップ部材の開き角度φと取付角度θを別個独立に調整する場合の効果を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態について具体的に説明する。
<処理装置>
図1は一実施形態に係るバルブである圧力制御バルブを用いた処理装置の一例を示す断面図である。
【0009】
図1に示すように、処理装置1は、処理容器10と、真空排気部20と、制御部30とを有する。
【0010】
処理容器10は、基板Sを収容し、真空に保持された状態で基板Sに対して処理を行う。処理容器10内には基板Sを載置する載置台11が設けられている。また、処理容器10内には、処理ガスが供給され、必要に応じてプラズマが生成されて基板Sに対して、例えば、成膜処理やエッチング処理などの処理が行われる。処理容器10の側面には、処理容器10内の圧力を検出する圧力センサ12が設けられている。
【0011】
真空排気部20は、処理容器10の底部の排気口に接続された排気配管21と、排気配管21に接続された排気機構22と、排気配管21における処理容器10と排気機構22との間の部分に設けられた圧力制御バルブ23とを有する。圧力制御バルブ23が一実施形態に係るバルブを構成する。圧力制御バルブ23は、排気配管21におけるガス流路の開度調整を行うことにより処理容器10内の圧力制御を行う。排気配管21の圧力制御バルブ23の上流側には開閉バルブ24が設けられている。排気機構22は、少なくとも一つの真空ポンプを有し、排気配管21を介して処理容器10内を真空排気する。排気機構22は、真空ポンプとして、粗引きを行うドライポンプと、高真空まで真空引きを行うドラッグポンプの2つの真空ポンプを有してもよい。
【0012】
制御部30は、処理装置1の各構成部の動作や処理の制御を行う。特に、圧力センサ12の検出圧力に基づいて、圧力制御バルブ23の開度を制御する。制御部30は、コンピュータで構成され、主制御部と、入力装置と、出力装置と、表示装置と、記憶装置とを備えている。主制御部は、CPU(中央処理装置)やRAM等を有している。記憶装置は、ハードディスク等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を有しており、制御に必要な情報の記録および読み取りを行うようになっている。制御部30では、CPUが、RAMを作業領域として用いて、記憶媒体に格納された処理レシピ等のプログラムを実行することにより、処理装置1を制御する。
【0013】
このように構成される処理装置1においては、まず、基板Sを処理容器10内に搬入し、載置台11上に載置する。真空排気部20により処理容器10内を真空排気して、処理容器10内を所望の真空圧力に保持する。この状態で、処理容器10内に、処理ガスを供給し、必要に応じてプラズマを生成して、例えば、成膜処理やエッチング処理などの処理を行う。
【0014】
<圧力制御バルブ>
次に、一実施形態に係るバルブを構成する圧力制御バルブ23について、より具体的に説明する。
【0015】
図2は圧力制御バルブ23を示す正面図、図3は圧力制御バルブ23の構造を説明するための斜視図である。
【0016】
圧力制御バルブ23は、排気配管21に連通する円形の開口51を有する本体部41と、開口51の開閉調整を行う弁体42と、弁体42を駆動する駆動部43とを有する。図2において、ガスは奥側から手前側に流れる。
【0017】
弁体42は、複数のフラップ部材52が周方向に重なるように配置された構造を有し、花びら状をなしている。本体部41は、円環状に設けられた円環状部材53を有し、円環状部材53の中央に開口51が形成されている。円環状部材53の表面および裏面はガスの流れ方向に垂直に設けられており、本例では、円環状部材53の表面が複数のフラップ部材52の基端部が取り付けられる基準面54となっている。複数のフラップ部材52は、基準面54に回動可能に取り付けられている。フラップ部材52を駆動部43により駆動させて、それらの重なりを調整することにより、弁体42による開口51の開閉動作が行われ、開口51の開度が調整される。
【0018】
具体的には、基準面54には、周方向に沿って複数の第1の回転軸61が設けられ、フラップ部材52の基端部が第1の回転軸61に取り付けられており、駆動部43により複数のフラップ部材52を第1の回転軸61を軸として回動させることにより弁体42の開閉動作が行われる。
【0019】
図4はフラップ部材52の一例を説明するための斜視図であり、(a)はフラップ部材52の表面(ガスの流れ方向下流側の面)、(b)はフラップ部材52の裏面(ガスの流れ方向上流側の面)を示している。図4に示すように、本例ではフラップ部材52は湾曲部を有する板状をなしている。また、本例では、フラップ部材52の裏面には複数の溝52aが長手方向に沿って形成されている。溝52aはガス流路に流れるガスを案内するためのものであり、ガスが溝52aに沿って流れることにより出口付近でのガスの滞留を防止することができる。なお、フラップ部材52の形状は、図4のものに限定されず、任意である。また、裏面の溝の有無および溝の形状等も限定されない。
【0020】
弁体42の開度は、図5に示す基準面54に対するフラップ部材52の角度である開き角度φにより表される。複数のフラップ部材52は、駆動部43により、同じ開き角度φになるように駆動される。図6は、複数のフラップ部材52を、開き角度φが相対的に小さいφ1と相対的に大きいφ2の間で駆動させる状態を示しており、開き角度φを大きくすることにより弁体42の開度が大きくなる。
【0021】
駆動部43は、開き角度φの他に、フラップ部材52の基端部の基準面54内での角度である取付角度θを調整可能にしてもよい。取付角度θは、フラップ部材52の回動軸である第1の回転軸61の基準面54内における角度として表される。取付角度θは、例えば図7に示すように、第1の回転軸61の一方の端部に存在する基準面54に垂直な第2の回転軸62に対する第1の回転軸61(フラップ部材52の基端部)の角度として表される。図8は、複数のフラップ部材52を取付角度θが相対的に小さいθ1と相対的に大きいθ2の間で駆動する状態を示している。このように、開き角度φの他に取付角度θの調整を可能とすることにより、フラップ部材52の2軸制御が実現され、開閉動作の最適化を図ることができる。例えば、開き角度φを調整している際に、取付角度θを調整して、フラップ部材52同士の擦れを回避することができる。
【0022】
次に、駆動部43について説明する。
【0023】
[駆動部の第1の例]
まず、駆動部の第1の例について説明する。
図9は、駆動部43の第1の例を示す図であり、圧力制御バルブ23の背面図として示している。本例では、駆動部43は、駆動機構である回転モータ71と、動力伝達機構72とを有する。図9では、便宜上、フラップ部材52は1つのみ示している。
【0024】
動力伝達機構72は、回転モータ71の駆動力を複数のフラップ部材52に伝達するものであり、本体部41の外周に沿って設けられたリング状をなす動力伝達リング74と、各フラップ部材52に対応して設けられた複数の中間ギア75と、動力伝達リング74の動力を複数の中間ギア75を介して複数のフラップ部材52のそれぞれに伝達する複数の個別伝達部76とを有する。動力伝達リング74、複数の中間ギア75、および個別伝達部76の主要部は、円環状部材53の裏面側、すなわちフラップ部材52が取り付けられた基準面54と反対側に設けられている。
【0025】
動力伝達リング74は、本体部41に対して回転可能に設けられ、その外周には回転モータ71の回転軸に取り付けられたギア73に噛合する外歯が形成され、その内周には中間ギア75に噛合する内歯が形成されている。したがって、回転モータ71の回転がギア73を介して動力伝達リング74に伝達されて動力伝達リング74が回転され、動力伝達リング74の回転が複数の中間ギア75に伝達される。
【0026】
個別伝達部76は、複数のフラップ部材52に対応して設けられ、中間ギア75の動力が伝達され、第1の回転軸61の一方の端部に回転力を伝達して第1の回転軸61を回転させるとともに、第1の回転軸61の他方の端部に、基準面54に沿った径方向の直線的な移動を与える。
【0027】
具体的には、個別伝達部76は、例えば、図10図12に示すように構成される。図10は個別伝達部76を背面側から見た斜視図であり、図11は個別伝達部76によるフラップ部材52の移動を説明するための斜視図であり、図12は個別伝達部76によるフラップ部材52の直線的な移動を説明するための背面図である。これらの図に示すように、個別伝達部76は、回転部81と、回転軸部材82と、ベルト83と、接続部84と、直線移動軸部材85とを有する。
【0028】
回転部81は、円筒状の外筒の内部に歯車機構が設けられた構造を有し、歯車機構に中間ギア75の回転が伝達され、中間ギア75の回転方向と直角の方向に回転する。回転軸部材82は回転部81から第1の回転軸61の一方の端部に向かって延び、回転部81とともに回転する。ベルト83は、回転軸部材82の端部と第1の回転軸61の一方の端部との間に巻き掛けられ、回転軸部材82の回転を第1の回転軸61に伝達し、フラップ部材52を第1の回転軸61を軸として回動させる。このとき、一つの回転モータ71の動力が、動力伝達リング74に伝達され、さらに動力伝達リング74の動力が複数の中間ギア75および複数の個別伝達部76を経て複数のフラップ部材52に伝達される。このため、複数のフラップ部材52は同じ動作で開閉される。そして、回転モータ71により回転部81の回転量を制御することにより、複数のフラップ部材52の第1の回転軸61を軸とする回転角度、すなわち開き角度φを調整することができる。円環状部材53にはベルト83が挿通される孔部(図示せず)が形成されている。
【0029】
接続部84は、回転部81の裏面(回転軸部材82と反対側の面)に、その中心からずれた位置に設けられている。
【0030】
直線移動軸部材85は直線状をなし、その一端が接続部84に接続され、その他端が第1の回転軸61の他方の端部に接続される。円環状部材53の直線移動軸部材85に対応する部分には、径方向である矢印A方向に沿ってガイド溝86が形成され、直線移動軸部材85はガイド溝86に挿通される。直線移動軸部材85は、回転部81の回転にともなって接続部84が回転された際に、ガイド溝86によってガイドされ、矢印A方向以外の動きが規制される。図12に示すように、回転部81の回転にともなって接続部84が回転移動すると、その回転移動が直線移動軸部材85に伝達され、直線移動軸部材85は第1の回転軸61の他方の端部を円環状部材53の基準面54に沿って矢印A方向に直線的に移動させる。すなわち、回転部81、接続部84、および直線移動軸部材85によりクランク機構が構成され、回転部81の回転が接続部84および直線移動軸部材85を経て直線移動に変換され、第1の回転軸61の他方の端部が基準面54に沿って矢印A方向に直線的に移動される。一方、第1の軸部材61の一方の端部は、ベルト83により拘束されている。このため、第1の回転軸61の他方の端部のみが基準面54に沿って矢印A方向に移動され、フラップ部材52の取付角度θを調整することができる。このとき、第1の回転軸61の回転はベルト83を介して行われるため、第1の回転軸61の他方の端部が直線的に移動しても、多少ねじれながら動力伝達は可能である。
【0031】
本例の場合は、回転モータ71により、ギア73、動力伝達リング74、および中間ギア75を経て回転部81を回転させる。そして、回転部81の回転により、回転軸部材82、およびベルト83を経て第1の回転軸61を回転させると同時に、接続部84、直線移動軸部材85を経て第1の回転軸61の他端を基準面54に沿って直線的に移動させる。このため、フラップ部材52に対して、第1の回転軸61を軸とする開き角度φを変化させている際に、同時に取付角度θを変化させることができる。
【0032】
このときの取付角度θの調整は、接続部84の中心からの距離により行うことができる。すなわち、接続部84の位置が中心から遠いほど開き角度φを変化させている際の取付角度θの変化量を大きくすることができる。このように接続部84の位置を調整して取付角度θの変化量を調整することにより、いずれの開き角度φにおいてもフラップ部材52同士の擦れが生じないように取付角度θを調整することができる。
【0033】
[駆動部の第2の例]
次に、駆動部の第2の例について説明する。
図13図15は、駆動部43の第2の例を示す図である。図13は圧力制御バルブの駆動部43の第2の例を示す斜視図、図14は駆動部43の第2の例を用いた圧力制御バルブ23の一部を示す側面図、図15は駆動部43の第2の例を用いた圧力制御バルブ23の一部を示す平面図として示している。本例では、駆動部43は、本体部41の外周にリング状に設けられた外接リング91と、外接リング91を回転および直線駆動させる駆動機構92と、複数のフラップ部材52を操作する複数の操作スティック93とを有する。図13は、フラップ部材52の開き角φが90°で取付角度θが0°の状態、すなわち弁体42が全開の状態を示している。なお、図13図15および後述の図16図17においては、便宜上、フラップ部材52を長方形状として示している。
【0034】
図14に示すように、本例では、本体部41の円環状部材53の上方に周方向に沿って複数の第1の回転軸61が設けられており、複数の第1の回転軸61のそれぞれにはフラップ部材52の基端部が取り付けられている。本例では、複数の第1の回転軸61は、円環状部材53の上方の空間に形成されるガスの流れ方向に垂直な基準面に存在する。また、複数の第1の回転軸61のそれぞれの端部には軸受94が接続されている。軸受94からは第2の回転軸62が下方に延び、円環状部材53に回転可能に接続されている。このため、フラップ部材52が第1の回転軸61を軸として回動されることにより開き角度φが調整され、フラップ部材52が第2の回転軸62を軸として回動されることにより取付角度θが調整される。
【0035】
操作スティック93は、外接リング91に形成された穴91aに挿通され、図15に示すように、その先端部が第1の回転軸61のフラップ部材52の側端部に対応する部分に接続されている。また、操作スティック93は外接リング91の穴91aには固定されておらず、自由に動けるようになっている。そして、操作スティック93は、駆動機構92による外接リング91の駆動にともなって、その先端部分が外接リング91を支点として移動され、フラップ部材52を操作可能に構成されている。具体的には、駆動機構92により外接リング91をガスの流れ方向に沿って直線駆動させることで、複数のフラップ部材52が操作スティック93を介して第1の回転軸61を軸として回動される。また、駆動機構92により外接リング91を回転させることで、複数のフラップ部材52が複数の操作スティック93を介して第2の回転軸62を軸として回動される。すなわち、駆動機構92により外接リング91を直線駆動することにより複数のフラップ部材52の開き角度φを調整することができ、外接リング91を回転させることにより複数のフラップ部材52の取付角度θを調整することができる。この場合、駆動機構92による外接リング91の直線駆動および回転は独立して行うことができるため、開き角度φと取付角度θは別個独立に調整することができる。
【0036】
図16および図17は、図13の状態から外接リング91の駆動によりフラップ部材52の角度調整を行った具体例を示すものである。図13は、フラップ部材52の開き角φが90°で取付角度θが0°の状態、すなわち弁体42が全開の状態を示している。図16の例では、図13に示すフラップ部材52の開き角φが90°で取付角度θが0°の状態から外接リング91を回転させることにより操作スティック93を介してフラップ部材52を第2の回転軸62を軸として回動させ、取付角度θを大きくした状態を示している。図17は、図13の状態から外接リング91を上昇させることにより操作スティック93を介してフラップ部材52を第1の回転軸61を軸として回動させ、開き角度φを小さくした状態を示している。なお、図16および図17では、便宜上、操作スティック93が穴91aに挿通されていないように描かれているが、実際には挿通されている。
【0037】
<圧力制御バルブの動作>
次に、以上のように構成される圧力制御バルブ23の動作について説明する。
本実施形態では、圧力制御バルブ23は、複数のフラップ部材52が周方向に重なるように設けられた弁体42により、制御部30による制御に基づいて、本体部41の開口51の開閉動作を行う。
【0038】
まず、処理容器10内を真空排気する際には、弁体42を全開にして排気機構22により引き切り、所定の真空度に到達した後は、圧力センサ12の検出圧力に基づいて駆動部43により弁体42の開閉動作を行い、弁体42の開度調整を実施して処理容器10内の圧力制御を行う。
【0039】
従来から、圧力制御バルブとして、円形の弁体が中心軸回りで回転することにより開口の開閉動作を行うものが用いられている。このような圧力制御バルブは、構造が簡易であり、かつ高速な開度制御が可能である。しかし、このような圧力制御バルブは、機構の特性上、開度を絞るとガスが流れる隙間が限定されてしまい、ガスの流動がスムーズではなく、隙間に流れないガスの滞留が生じやすい。ガスが滞留すると、ガスによってはデポ物を生成し、開口を閉塞するような事態が生じる。このため、十分な圧力制御を行うことができないおそれがある。
【0040】
そこで、本実施形態では、弁体42を複数のフラップ部材52が周方向に重なるように配置した構造とし、駆動部43によりフラップ部材52を駆動させることにより弁体42の開閉動作を行って開口51の開度を調整する。弁体42をこのような構造にすることにより、ガスはフラップ部材52に囲われて形成される空洞を経て中央部分から滑らかに吐出されるので、ガスの滞留を抑制することができる。また、このような構成により、開口51の開度の調整も滑らかに行うことができる。このため、ガスの滞留によるデポ物の生成により開口が閉塞することを抑制することができ、良好に圧力制御を行うことができる。さらに、フラップ部材52の裏面に溝52aが形成されていることにより、ガスが溝52aに沿ってよりスムーズに流動し、排出されるガスの滞留をより効果的に抑制することができる。
【0041】
ガスの滞留を一層効果的に抑制する観点から、図18に示すように、フラップ部材52の裏面(ガスの流れ方向上流側の面)の基端側にフラップ部材52の長手方向に溝52aに沿ってエアやNガス等のガスを噴射するガス噴射口58を設けてもよい。また、同様に効果的にガスの滞留を抑制するために、本体部41のガス流が通過する壁部にも溝を設け、ガス流動を改善するようにしてもよい。
【0042】
さらにまた、弁体42がフラップ部材52を周方向に重なるように配置した構造であるため、閉状態での密閉性を確保することが容易である。フラップ部材52の形状は任意ではあるが、図4に示すように湾曲部を有する板状とすることにより、閉状態での密閉性をより高めることができる。
【0043】
弁体42の開閉動作は、円環状部材53の外周部に基準面に沿って設けられた第1の回転軸61に対してフラップ部材52を回動させ、開き角度φを調整することにより行うことができる。
【0044】
フラップ部材52に対し、開き角度φの調整に加えて、基端部の基準面54での角度である取付角度θを調整可能とすることにより、フラップ部材52の2軸制御が実現され、弁体42の開閉動作の自由度を高めて、開閉動作の最適化を図ることができる。例えば、開き角度φのみの調整ではフラップ部材52同士の擦れが発生するおそれがあるが、フラップ部材52の開き角度φに加えて取付角度θを調整することにより、フラップ部材52同士の擦れを回避することができる。
【0045】
弁体42の駆動部43が第1の例の場合には、回転モータ71の回転を、回転部81に伝達し、回転部81の回転により、回転軸部材82、およびベルト83を経て第1の回転軸61を回転させると同時に、接続部84、直線移動軸部材85を経て第1の回転軸61の他端を基準面54に沿って直線的に移動させる。これにより、フラップ部材52の開き角度φと取付角度θを同時に調整することができる。このため、予め動力伝達機構72を適切に設計することにより、フラップ部材52の開き角度φを調整して弁体42の開閉動作を行っている際に取付角度θが適切に調整され、フラップ部材52同士の擦れを確実に防止することができる。
【0046】
また、弁体42の駆動部43が第2の例の場合には、駆動機構92により外接リング91を直線移動させることにより、操作スティック93を介して複数のフラップ部材52を第1の回転軸61を軸として回動させる。また、駆動機構92により外接リング91を回転させることにより、操作スティック93を介してフラップ部材52を第2の回転軸62を軸として回動させる。すなわち、外接リング91を直線駆動することにより複数のフラップ部材52の開き角度φを調整することができ、外接リング91を回転させることにより複数のフラップ部材52の取付角度θを調整することができる。つまり、フラップ部材52の開き角度φと取付角度θを別個独立に調整することができ、開き角度φと取付角度θの調整の自由度を高くすることができる。これにより、弁体42の開閉動作を行っている際のフラップ部材52同士の擦れを防止できるばかりでなく、弁体42の開閉動作の制御性が良好である。例えば、図19の(a)に示すように、弁体42が全閉になるようにフラップ部材52を動作させた際に、わずかに隙間が生じた場合でも、図19の(b)に示すように、取付角度θのみを調整(本例の場合は取付角度をθ3からθ4に調整)することにより、フラップ部材52同士を完全に密着させて全閉を実現することができる。
【0047】
<他の適用>
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0048】
例えば、上記実施形態では、バルブとして圧力制御バルブを用いた場合を示したが、開度調整可能なバルブであれば、圧力制御バルブに限定されない。また、上記実施形態では、フラップ部材として湾曲部を有するものを用いて、弁体を花びら状に構成した例を示したが、複数のフラップ部材を周方向に重ねて開度調整が行える構成であれば、フラップ部材および弁体はこのような構成に限らない。
【0049】
さらに、弁体を駆動する駆動部についても、上記実施形態の第1の例および第2の例に限らず、種々の手法を用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1;処理装置
10;処理容器
12;圧力センサ
20;真空排気部
23;圧力制御バルブ(バルブ)
30;制御部
41;本体部
42;弁体
43;駆動部
51;開口
52;フラップ部材
53;円環状部材
54;基準面
61;第1の回転軸
62;第2の回転軸
71;回転モータ
72;動力伝達機構
81;回転部
82;回転軸部材
83;ベルト
84;接続部
85;直線移動軸部材
91;外接リング
92;駆動機構
93;操作スティック
S;基板
図1
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