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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152184
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20241018BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20241018BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01L21/302 105Z
H01L21/302 101C
H01L21/31 C
H01L21/316 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066223
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寿
(72)【発明者】
【氏名】菊地 宏之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敬信
(72)【発明者】
【氏名】米澤 雅人
【テーマコード(参考)】
5F004
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
5F004AA01
5F004BA20
5F004BB07
5F004BB13
5F004BB19
5F004BB24
5F004BB26
5F004BC01
5F004BC03
5F004BC06
5F004BD04
5F004BD07
5F004CA02
5F004DA00
5F004DA16
5F004DA23
5F004DA24
5F004DA25
5F004DA26
5F004DA27
5F004DB03
5F004EA28
5F004EA37
5F004EB04
5F045AA08
5F045AB32
5F045AC00
5F045AC07
5F045AC08
5F045AC11
5F045AC15
5F045AC16
5F045AF03
5F045AF11
5F045BB19
5F045DP15
5F045DP27
5F045DQ10
5F045DQ12
5F045EB09
5F045EB10
5F045EE04
5F045EE14
5F045EF03
5F045EF09
5F045EF11
5F045EF20
5F045EG02
5F045EH01
5F045EH02
5F045EH11
5F045EJ05
5F045EK07
5F045EM02
5F045EM10
5F045EN04
5F045HA13
5F058BA09
5F058BC02
5F058BF07
5F058BF22
5F058BF29
5F058BF37
5F058BG01
5F058BG02
5F058BG03
5F058BG04
5F058BH12
5F058BJ06
(57)【要約】
【課題】凹部に形成された膜をエッチングする際のエッチング形状を制御できる技術を提供する。
【解決手段】本開示の一態様による基板処理方法は、シリコン酸化膜が露出した表面を有する凹部が形成された基板を準備する工程と、トリフルオロメタンガスと酸素含有ガスと水素含有ガスとを含む混合ガスからプラズマを生成し、前記プラズマにより前記シリコン酸化膜をエッチングする工程と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン酸化膜が露出した表面を有する凹部が形成された基板を準備する工程と、
トリフルオロメタンガスと酸素含有ガスと水素含有ガスとを含む混合ガスからプラズマを生成し、前記プラズマにより前記シリコン酸化膜をエッチングする工程と、
を有する、基板処理方法。
【請求項2】
前記エッチングする工程は、前記凹部の深さに応じて前記混合ガスに対する前記水素含有ガスの流量比を定めることを含む、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記エッチングする工程は、目標とするエッチング形状に応じて前記混合ガスに対する前記水素含有ガスの流量比を定めることを含む、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記エッチングする工程の後に前記凹部内にシリコン酸化膜を成膜する工程を有する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記エッチングする工程と前記成膜する工程とを繰り返す工程を有する、
請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
真空容器と、
前記真空容器内にガスを供給するガス供給部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
シリコン酸化膜が露出した表面を有する凹部が形成された基板を前記真空容器内に収容する工程と、
前記真空容器内において、トリフルオロメタンガスと酸素含有ガスと水素含有ガスとを含む混合ガスから生成されるプラズマに前記基板を晒し、前記凹部の前記表面に露出する前記シリコン酸化膜をエッチングする工程と、
を行うよう前記ガス供給部を制御するように構成される、
基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の上に成膜されたシリコン酸化膜に対してフッ素ラジカルを供給し、シリコン酸化膜をエッチングする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-162930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、凹部に形成された膜をエッチングする際のエッチング形状を制御できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による基板処理方法は、シリコン酸化膜が露出した表面を有する凹部が形成された基板を準備する工程と、トリフルオロメタンガスと酸素含有ガスと水素含有ガスとを含む混合ガスからプラズマを生成し、前記プラズマにより前記シリコン酸化膜をエッチングする工程と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、凹部に形成された膜をエッチングする際のエッチング形状を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る基板処理装置を示す概略断面図である。
図2図1の基板処理装置の真空容器内の構成を示す概略斜視図である。
図3図1の基板処理装置の真空容器内の構成を示す概略平面図である。
図4図1の基板処理装置の真空容器内に設けられる回転テーブルの同心円に沿った概略断面図である。
図5図1の基板処理装置の別の概略断面図である。
図6】プラズマ発生源を示す概略断面図である。
図7】プラズマ発生源を示す他の概略断面図である。
図8】プラズマ発生源を示す概略上面図である。
図9】実施形態に係る基板処理方法を示すフローチャートである。
図10】実施形態に係る基板処理方法を示す概略断面図である。
図11】CHFガスのエッチング反応を説明する図である。
図12】凹部の深さ方向におけるエッチング量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〔基板処理装置〕
実施形態に係る基板処理方法を実施するのに好適な基板処理装置について説明する。図1から図3を参照すると、基板処理装置は、ほぼ円形の平面形状を有する扁平な真空容器1と、真空容器1内に設けられ、真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備える。真空容器1は、有底の円筒形状を有する容器本体12と、容器本体12の上面に対して、例えばOリング等のシール部材13を介して気密に着脱可能に配置される天板11とを有する。
【0010】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定される。コア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定される。回転軸22は、真空容器1の底部14を貫通し、下端が回転軸22を鉛直軸回りに回転させる駆動部23に取り付けられる。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納される。ケース体20は、上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底部14の下面に気密に取り付けられ、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持される。
【0011】
回転テーブル2の表面部には、図2及び図3に示されるように、回転方向(周方向)に沿って複数(図示の例では5枚)の基板Wを載置するための円形状の載置部24が設けられる。基板Wは、例えばシリコンウエハ等の半導体ウエハであってよい。図3には、便宜上1個の載置部24だけに基板Wを示す。載置部24は、基板Wの直径よりも僅かに例えば4mm大きい内径と、基板Wの厚さにほぼ等しい深さとを有する。これにより、基板Wが載置部24に収容されると、基板Wの表面と回転テーブル2の表面(基板Wが載置されない領域)とが同じ高さになる。載置部24の底面には、基板Wの裏面を支えて基板Wを昇降させるための例えば3本の昇降ピンが貫通する貫通孔(いずれも図示せず)が形成される。
【0012】
図2及び図3は、真空容器1内の構造を説明する図であり、説明の便宜上、天板11の図示を省略する。図2及び図3に示されるように、回転テーブル2の上方には、反応ガスノズル31、32と、分離ガスノズル41、42と、処理ガスノズル92とが真空容器1の周方向に互いに間隔をおいて配置される。図示の例では、後述の搬送口15から時計回り(回転テーブル2の回転方向)に、処理ガスノズル92、分離ガスノズル41、反応ガスノズル31、分離ガスノズル42及び反応ガスノズル32がこの順番で配列される。反応ガスノズル31、32、分離ガスノズル41、42、処理ガスノズル92は、例えば石英により形成される。反応ガスノズル31、32、分離ガスノズル41、42、処理ガスノズル92は、それぞれ基端であるガス導入ポート31a、32a、41a、42a、92a(図3)が容器本体12の外周壁に固定される。これにより、反応ガスノズル31、32、分離ガスノズル41、42、処理ガスノズル92は、それぞれ真空容器1の外周壁から真空容器1内に導入され、容器本体12の半径方向に沿って回転テーブル2に対して水平に伸びるように取り付けられる。
【0013】
処理ガスノズル92の上方には、図3において、破線にて簡略化して示されるように、プラズマ発生源80が設けられる。プラズマ発生源80については後述する。
【0014】
反応ガスノズル31は、不図示の配管及び流量制御器等を介して、第1の反応ガスの供給源(図示せず)に接続される。第1の反応ガスは、シリコン含有ガスである。シリコン含有ガスは、例えばアミノシラン系ガスである。アミノシラン系ガスは、例えばジイソプロピルアミノシラン(DIPAS)ガス、トリスジメチルアミノシラン(3DMAS)ガスである。
【0015】
反応ガスノズル32は、不図示の配管及び流量制御器等を介して、第2の反応ガスの供給源(図示せず)に接続される。第2の反応ガスは、例えば酸化ガスである。酸化ガスは、例えばオゾン(O)ガス、酸素(O)ガス、水(HO)、過酸化水素(H)ガス、又はこれらの2つ以上を含む混合ガスである。
【0016】
分離ガスノズル41、42は、いずれも不図示の配管及び流量制御バルブ等を介して、分離ガスの供給源(図示せず)に接続される。分離ガスは、例えばアルゴン(Ar)ガスである。分離ガスは、窒素(N)ガスであってもよい。
【0017】
反応ガスノズル31、32には、回転テーブル2に向かって開口する複数のガス吐出孔33(図4)が、反応ガスノズル31、32の長さ方向に沿って、例えば10mmの間隔で配列されている。反応ガスノズル31の下方領域は、シリコン含有ガスを基板Wに吸着させるための第1の処理領域P1となる。反応ガスノズル32の下方領域は、第1の処理領域P1において基板Wに吸着されたシリコン含有ガスを酸化させる第2の処理領域P2となる。
【0018】
図2及び図3を参照すると、真空容器1内には2つの凸状部4が設けられる。凸状部4は、分離ガスノズル41、42と共に分離領域Dを構成する。このため、後述のとおり、回転テーブル2に向かって突出するように天板11の裏面に取り付けられる。凸状部4は、頂部が円弧状に切断された扇型の平面形状を有する。凸状部4は、例えば内円弧が突出部5(後述)に連結し、外円弧が真空容器1の容器本体12の内周面に沿うように配置される。
【0019】
図4は、反応ガスノズル31から反応ガスノズル32まで回転テーブル2の同心円に沿った真空容器1の断面を示す。図示のとおり、天板11の裏面に凸状部4が取り付けられるため、真空容器1内には、凸状部4の下面である平坦な低い天井面44(第1の天井面)と、天井面44の周方向両側に位置する、天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)とが存在する。天井面44は、頂部が円弧状に切断された扇型の平面形状を有する。図示のとおり、凸状部4には周方向中央において、半径方向に伸びるように形成された溝部43が形成され、分離ガスノズル42が溝部43内に収容される。もう一つの凸状部4にも同様に溝部43が形成され、溝部43に分離ガスノズル41が収容される。高い天井面45の下方の空間481、482には、反応ガスノズル31、32がそれぞれ設けられる。反応ガスノズル31、32は、天井面45から離間して基板Wの近傍に設けられる。
【0020】
分離ガスノズル42には、回転テーブル2に向かって開口する複数のガス吐出孔42h(図4参照)が、分離ガスノズル42の長さ方向に沿って、例えば10mmの間隔で配列されている。分離ガスノズル41にも、分離ガスノズル42と同様に、回転テーブル2に向かって開口する複数のガス吐出孔(図示せず)が、分離ガスノズル41の長さ方向に沿って、例えば10mmの間隔で配列されている。
【0021】
天井面44は、狭隘な空間である分離空間Hを回転テーブル2に対して形成する。分離ガスノズル42のガス吐出孔42hから分離ガスが供給されると、分離ガスは、分離空間Hを通して空間481及び空間482へ向かって流れる。このとき、分離空間Hの容積は空間481及び482の容積よりも小さいため、分離ガスにより分離空間Hの圧力を空間481及び482の圧力に比べて高くすることができる。すなわち、空間481及び482の間に圧力の高い分離空間Hが形成される。また、分離空間Hから空間481及び482へ流れ出る分離ガスが、第1の処理領域P1からの第1の反応ガスと、第2の処理領域P2からの第2の反応ガスとに対するカウンターフローとして働く。これにより、第1の処理領域P1からの第1の反応ガスと、第2の処理領域P2からの第2の反応ガスとが分離空間Hにより分離される。このため、真空容器1内において第1の反応ガスと第2の反応ガスとが混合して反応することが抑制される。
【0022】
回転テーブル2の上面に対する天井面44の高さh1は、基板に処理を施す際の真空容器1内の圧力、回転テーブル2の回転速度、分離ガスの供給量等を考慮し、分離空間Hの圧力を空間481及び482の圧力に比べて高くするのに適した高さに設定される。
【0023】
天板11の下面には、回転テーブル2を固定するコア部21の外周を囲む突出部5(図2及び図3)が設けられる。突出部5は、例えば凸状部4における回転中心側の部位と連続し、下面が天井面44と同じ高さに形成される。
【0024】
先に参照した図1は、図3のI-I'線に沿った断面図であり、天井面45が設けられる領域を示す。一方、図5は、天井面44が設けられる領域を示す断面図である。図5に示されるように、扇型の凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)には、回転テーブル2の外端面に対向するようにL字型に屈曲する屈曲部46が形成される。屈曲部46は、凸状部4と同様に、分離領域Dの両側から反応ガスが侵入することを抑制し、両反応ガスの混合を抑制する。扇型の凸状部4は天板11に設けられ、天板11が容器本体12から取り外せるようになっている。このため、屈曲部46の外周面と容器本体12との間には僅かに隙間がある。屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間、及び屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、例えば回転テーブル2の上面に対する天井面44の高さと同様の寸法に設定される。
【0025】
容器本体12の内周壁は、分離領域Dにおいては、図5に示されるように屈曲部46の外周面と接近して垂直面に形成される。容器本体12の内壁は、分離領域D以外の部位においては、図1に示されるように例えば回転テーブル2の外端面と対向する部位から底部14に亘って外方側に窪んでいる。以下、説明の便宜上、概ね矩形の断面形状を有する窪んだ部分を排気領域Eと記す。具体的には、第1の処理領域P1に連通する排気領域を第1の排気領域E1と記し、第2の処理領域P2に連通する領域を第2の排気領域E2と記す。第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2の底部には、図1から図3に示されるように、それぞれ第1の排気口61及び第2の排気口62が形成される。第1の排気口61及び第2の排気口62は、図1に示されるように、それぞれ排気管63を介して真空ポンプ64に接続される。排気管63には、圧力制御器65が設けられる。
【0026】
回転テーブル2と真空容器1の底部14との間の空間には、図1及び図5に示されるように、ヒータユニット7が設けられる。ヒータユニット7は、回転テーブル2を介して回転テーブル2上の基板Wを、プロセスレシピで決められた温度に加熱する。回転テーブル2の周縁付近の下方側には、円環状のカバー部材71が設けられる(図5)。カバー部材71は、回転テーブル2の上方空間から排気領域E1、E2に至るまでの雰囲気とヒータユニット7が置かれている雰囲気とを区画して回転テーブル2の下方領域へのガスの侵入を抑える。カバー部材71は、回転テーブル2の外縁部及び外縁部よりも外周側を下方側から臨むように設けられた内側部材71aと、内側部材71aと真空容器1の内壁面との間に設けられた外側部材71bとを備える。外側部材71bは、分離領域Dにおいて凸状部4の外縁部に形成された屈曲部46の下方にて、屈曲部46と近接して設けられる。内側部材71aは、回転テーブル2の外縁部下方(及び外縁部よりも僅かに外側の部分の下方)において、ヒータユニット7を全周に亘って取り囲む。
【0027】
ヒータユニット7が配置されている空間よりも回転中心寄りの部位における底部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近におけるコア部21に接近するように上方側に突出して突出部12aをなす。突出部12aとコア部21との間は狭い空間になっており、また底部14を貫通する回転軸22の貫通孔の内周面と回転軸22との隙間が狭くなっていて、これら狭い空間はケース体20に連通する。ケース体20には、パージガスを狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられる。パージガスは、例えばArガスである。パージガスは、窒素ガスであってもよい。真空容器1の底部14には、ヒータユニット7の下方において周方向に所定の角度間隔で、ヒータユニット7の配置空間をパージするための複数のパージガス供給管73が設けられる。図5には、1つのパージガス供給管73を示す。ヒータユニット7と回転テーブル2との間には、ヒータユニット7が設けられた領域へのガスの侵入を抑えるために、外側部材71bの内周壁(内側部材71aの上面)から突出部12aの上端との間を周方向に亘って覆う蓋部材7aが設けられている。蓋部材7aは、例えば石英で作製することができる。
【0028】
真空容器1の天板11の中心部には、分離ガス供給管51が接続される。分離ガス供給管51は、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスを供給する。空間52に供給された分離ガスは、突出部5と回転テーブル2との狭い空間50を介して回転テーブル2の基板載置領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出される。空間50は、分離ガスにより空間481及び空間482よりも高い圧力に維持されうる。このため、空間50により、第1の処理領域P1に供給される第1の反応ガスと第2の処理領域P2に供給される第2の反応ガスとが、中心領域Cを通って混合することが抑制される。すなわち、空間50(又は中心領域C)は、分離空間H(又は分離領域D)と同様に機能する。
【0029】
真空容器1の側壁には、図2及び図3に示されるように、外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間で基板Wの受け渡しを行うための搬送口15が形成される。搬送口15は、図示しないゲートバルブにより開閉される。基板Wは、搬送口15を臨む位置にて搬送アーム10との間で受け渡される。回転テーブル2の下方側において受け渡し位置に対応する部位に、載置部24を貫通して基板Wを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン及びその昇降機構(いずれも図示せず)が設けられる。
【0030】
図6から図8までを参照しながら、プラズマ発生源80について説明する。図6は、回転テーブル2の半径方向に沿ったプラズマ発生源80の概略断面図である。図7は、回転テーブル2の半径方向と直交する方向に沿ったプラズマ発生源80の概略断面図である。図8は、プラズマ発生源80の概略を示す上面図である。図示の便宜上、これらの図において一部の部材を簡略化する。
【0031】
図6を参照すると、プラズマ発生源80は、フレーム部材81と、ファラデー遮蔽板82と、絶縁板83と、アンテナ85とを備える。フレーム部材81は、高周波透過性の材料により形成される。フレーム部材81は、上面から窪んだ凹部を有し、天板11に形成された開口部11aに嵌め込まれる。ファラデー遮蔽板82は、フレーム部材81の凹部内に収容され、上部が開口した略箱状の形状を有する。絶縁板83は、ファラデー遮蔽板82の底面上に配置される。アンテナ85は、絶縁板83の上方に支持される。アンテナ85は、略八角形の上面形状のコイル状を有する。
【0032】
天板11の開口部11aは複数の段部を有する。複数の段部のうちの一つの段部には、全周に亘って溝部が形成される。溝部には、例えばO-リング等のシール部材81aが嵌め込まれる。フレーム部材81は、開口部11aの段部に対応する複数の段部を有する。フレーム部材81を開口部11aに嵌め込むと、複数の段部のうちの一つの段部の裏面が、開口部11aの溝部に嵌め込まれたシール部材81aと接する。これにより、天板11とフレーム部材81との間の気密性が維持される。図6に示されるように、天板11の開口部11aに嵌め込まれるフレーム部材81の外周に沿った押圧部材81cが設けられ、これにより、フレーム部材81が天板11に対して下方に押し付けられる。このため、天板11とフレーム部材81との間の気密性がより確実に維持される。
【0033】
フレーム部材81の下面は、真空容器1内の回転テーブル2に対向し、その下面の外周には全周に亘って下方に(回転テーブル2に向かって)突起する突起部81bが設けられる。突起部81bの下面は、回転テーブル2の表面に近接する。突起部81bと、回転テーブル2の表面と、フレーム部材81の下面とにより回転テーブル2の上方に空間(以下、内部空間S)が画成される。突起部81bの下面と回転テーブル2の表面との間隔は、分離空間H(図4)における天板11の回転テーブル2の上面に対する高さh1とほぼ同じであってよい。
【0034】
内部空間Sには、突起部81bを貫通した処理ガスノズル92が延びる。処理ガスノズル92には、Arガスが充填される供給源93aと、トリフルオロメタン(CHF)ガスが充填される供給源93bと、酸素(O)ガスが充填される供給源93cと、水素(H)ガスが充填される供給源93dとが接続される。処理ガスノズル92は、供給源93aからのArガスと、供給源93bからのCHFガスと、供給源93cからのOガスと、供給源93dからのHガスとが混合された混合ガスを、内部空間Sに供給する。以下、ArガスとCHFガスとOガスとHガスとが混合された混合ガスをAr/CHF/O/Hガスとも称する。供給源93a、93b、93c、93dからのArガス、CHFガス、Oガス、Hガスは、対応する流量制御器94a、94b、94c、94dにより流量が制御される。供給源93a、93b、93c、93dからのArガス、CHFガス、Oガス、Hガスは、対応する第1バルブ95a、95b、95c、95d及び第2バルブ96a、96b、96c、96dにより、内部空間Sへの供給及び停止が制御される。処理ガスノズル92には、アンモニア(NH)ガス等の改質ガスの供給源が接続されてもよい。
【0035】
処理ガスノズル92には、その長手方向に沿って所定の間隔(例えば10mm)で複数の吐出孔92hが形成される。処理ガスノズル92は、吐出孔92hからをAr/CHF/O/Hガスを吐出する。吐出孔92hは、図7に示されるように、回転テーブル2に対して垂直な方向から回転テーブル2の回転方向の上流側に向かって傾いている。このため、処理ガスノズル92から供給される混合ガスは、回転テーブル2の回転方向と逆の方向に、具体的には、突起部81bの下面と回転テーブル2の表面との間の隙間に向かって吐出される。これにより、回転テーブル2の回転方向に沿ってプラズマ発生源80よりも上流側に位置する天井面45の下方の空間から反応ガスや分離ガスが、内部空間S内へ流れ込むのが抑止される。上述のとおり、フレーム部材81の下面の外周に沿って形成される突起部81bが回転テーブル2の表面に近接している。このため、処理ガスノズル92からの混合ガスにより内部空間S内の圧力を容易に高く維持できる。これによっても、反応ガスや分離ガスが内部空間S内へ流れ込むのが抑止される。
【0036】
ファラデー遮蔽板82は、金属等の導電性材料から形成され、図示は省略するが接地される。図8に示されるように、ファラデー遮蔽板82の底部には、複数のスリット82sが形成される。各スリット82sは、略八角形の平面形状を有するアンテナ85の対応する辺とほぼ直交するように延びる。
【0037】
ファラデー遮蔽板82は、図7及び図8に示されるように、上端の2箇所において外側に折れ曲がる支持部82aを有する。支持部82aがフレーム部材81の上面に支持されることにより、フレーム部材81内の所定の位置にファラデー遮蔽板82が支持される。
【0038】
絶縁板83は、例えば石英ガラスにより形成される。絶縁板83は、ファラデー遮蔽板82の底面よりも僅かに小さい大きさを有し、ファラデー遮蔽板82の底面に載置される。絶縁板83は、ファラデー遮蔽板82とアンテナ85とを絶縁する。絶縁板83は、アンテナ85から放射される高周波を下方へ透過させる。
【0039】
アンテナ85は、平面形状が略八角形となるように銅製の中空管(パイプ)を例えば3重に巻き回すことにより形成される。パイプ内に冷却水を循環させることができ、これにより、アンテナ85へ供給される高周波によりアンテナ85が高温に加熱されるのが防止される。アンテナ85には立設部85aが設けられ、立設部85aに支持部85bが取り付けられる。支持部85bにより、アンテナ85がファラデー遮蔽板82内の所定の位置に維持される。支持部85bには、マッチングボックス86を介して高周波電源87が接続される。高周波電源87は、例えば13.56MHzの周波数を有する高周波を発生する。
【0040】
係る構成を有するプラズマ発生源80によれば、マッチングボックス86を介して高周波電源87からアンテナ85に高周波電力を供給すると、アンテナ85により電磁界が発生する。電磁界のうちの電界成分は、ファラデー遮蔽板82により遮蔽されるため、下方へ伝播することはできない。一方、磁界成分はファラデー遮蔽板82の複数のスリット82sを通して内部空間Sへ伝播する。磁界成分により、処理ガスノズル92から内部空間Sに供給されるAr/CHF/O/Hガスからプラズマが発生する。
【0041】
基板処理装置は、図1に示されるように、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100を備える。制御部100のメモリ内には、制御部100の制御の下に、後述する基板処理方法を基板処理装置に実施させるプログラムが格納される。プログラムには、後述の基板処理方法を実行するようにステップ群が組まれる。プログラムは、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスク等の媒体102に記憶され、所定の読み取り装置により記憶部101へ読み込まれ、制御部100内にインストールされる。
【0042】
〔基板処理方法〕
図9及び図10を参照し、実施形態に係る基板処理方法について、前述の基板処理装置において実施する場合を例に挙げて説明する。図9に示されるように、実施形態に係る基板処理方法は、準備工程S11と、成膜工程S12と、エッチング工程S13と、判定工程S14とを有する。
【0043】
準備工程S11は、凹部201rを表面に有する基板201を準備することを含む。基板201は、例えばシリコンウエハである。凹部201rは、例えばトレンチである。凹部201rは、ホールであってもよい。
【0044】
成膜工程S12は、準備工程S11の後に実施される。成膜工程S12は、シリコン含有ガスと酸化ガスとの反応生成物による膜を凹部201rに成膜することを含む。
【0045】
まず、図示しないゲートバルブを開き、外部から搬送アーム10により搬送口15を介して基板201を回転テーブル2の載置部24内に受け渡す。この受け渡しは、載置部24が搬送口15に臨む位置に停止したときに載置部24の底面の貫通孔を介して真空容器1の底部側から不図示の昇降ピンが昇降することにより行われる。基板201の受け渡しを、回転テーブル2を間欠的に回転させて行い、回転テーブル2の5つの載置部24内に各々基板201を載置する。
【0046】
続いてゲートバルブを閉じ、真空ポンプ64により真空容器1内を引き切りの状態にした後、分離ガスノズル41、42から分離ガスであるArガスを所定の流量で吐出し、分離ガス供給管51及びパージガス供給管72、73からArガスを所定の流量で吐出する。これに伴い、圧力制御器65により真空容器1内を予め設定した処理圧力に調整する。次いで、回転テーブル2を時計回りに回転させながらヒータユニット7により基板201を加熱する。
【0047】
次に、処理ガスノズル92からAr/CHF/O/Hガスを供給することなく、反応ガスノズル31からシリコン含有ガスを供給し、反応ガスノズル32から酸化ガスを供給する。
【0048】
基板201が第1の処理領域P1を通過する際に、反応ガスノズル31から供給されるシリコン含有ガスが基板201の上面201a及び凹部201rの内面に吸着する。シリコン含有ガスが吸着した基板201は、回転テーブル2の回転により分離ガスノズル42を有する分離領域Dを通過してパージされた後、第2の処理領域P2に入る。第2の処理領域P2では、シリコン含有ガスに含まれるSi成分が、反応ガスノズル32から供給される酸化ガスにより酸化され、反応生成物である酸化シリコン(SiO)が基板201の上面201a及び凹部201rの内面に堆積する。
【0049】
第2の処理領域P2を通過した基板201は、分離ガスノズル41を有する分離領域Dを通過してパージされた後、再び第1の処理領域P1に入る。そして、反応ガスノズル31から供給されるシリコン含有ガスが基板201の上面201a及び凹部201rの内面に吸着する。
【0050】
以上、処理ガスノズル92からAr/CHF/O/Hガスを供給することなく、反応ガスノズル31からシリコン含有ガスを供給し、反応ガスノズル32から酸化ガスを供給しながら、回転テーブル2を連続的に回転させる。これにより、図10(a)に示されるように、基板201の上面201a及び凹部201rの内面に沿った断面形状を有するシリコン酸化膜202が形成される。
【0051】
所定の時間が経過した後、反応ガスノズル31からのシリコン含有ガスの供給を停止し、反応ガスノズル32からの酸化ガスの供給を停止することで、成膜工程S12を終了する。所定の時間は、例えばシリコン酸化膜202の目標膜厚に応じて定められる。
【0052】
なお、成膜工程S12では、処理ガスノズル92から改質ガスを供給してもよい。この場合、基板201が内部空間Sを通過するごとに酸化シリコンが改質されるため、シリコン酸化膜202の膜質が向上する。また、成膜工程S12では、処理ガスノズル92からArガスを供給してもよい。
【0053】
エッチング工程S13は、成膜工程S12の後に実施される。エッチング工程S13は、Ar/CHF/O/Hガスからプラズマを生成し、生成したプラズマによりシリコン酸化膜202をエッチングすることを含む。以下、Ar/CHF/O/Hガスから生成されるプラズマをAr/CHF/O/Hプラズマとも称する。
【0054】
エッチング工程S13では、回転テーブル2を時計回りに回転させながらヒータユニット7により基板201を加熱する。次に、反応ガスノズル31、32からシリコン含有ガス、酸化ガスを供給することなく、処理ガスノズル92からAr/CHF/O/Hガスを供給し、プラズマ発生源80のアンテナ85に対して周波数が13.56MHzの高周波電力を供給する。これにより、内部空間SにおいてAr/CHF/O/Hプラズマが生成される。基板201が内部空間Sを通過する際に、基板201がAr/CHF/O/Hプラズマに晒され、シリコン酸化膜202がエッチングされる。
【0055】
図11は、CHFガスのエッチング反応を説明する図である。シリコン酸化膜202がCHFプラズマに晒されると、図11中の式(a)に示される反応が生じる。すなわち、酸化シリコン(SiO)とトリフルオロメタン(CHF)との反応により、四フッ化珪素(SiF)、一酸化炭素(CO)、フッ化水素(HF)、フロロカーボンの重合膜[-(CF-]が生じる。以下、フロロカーボンの重合膜をポリマーとも称する。この場合、ポリマーが内部空間Sに堆積し、パーティクルの発生原因となりうる。
【0056】
これに対し、CHFガスにOガスが添加された混合ガスからプラズマが生成される場合、図11中の式(b)に示される反応が生じる。すなわち、ポリマーとOとの反応により、ポリマーが分解されて一酸化炭素(CO)とフッ素(F)ラジカルが生じる。この場合、ポリマーの内部空間Sへの堆積が抑制されるので、パーティクルの発生を抑制できる。図11中の式(b)において、ラジカルを「・」で表す。一方、フッ素ラジカルの増加により、真空容器1の内部にある石英等の部材がエッチングされたり、シリコン酸化膜202が過剰にエッチングされたりする。これにより、基板201の上面201aや凹部201rの内面上部に膜が堆積し、凹部201rの上部開口がポリマーによって狭窄されうる。
【0057】
これに対し、CHFガスにOガス及びHガスが添加された混合ガスからプラズマが生成される場合、図11中の式(c)に示される反応が生じる。すなわち、ポリマーとOとの反応により生じるフッ素ラジカルがCHF/O/Hプラズマ中のHと反応してフッ化水素(HF)となり、フッ素ラジカルの量が低減される。これにより、内部空間Sへのポリマーの堆積を抑制しつつ、真空容器1の内部にある石英等の部材のエッチングやシリコン酸化膜202の過剰なエッチングを抑制できる。このため、パーティクルの発生を抑制しつつ、図10(b)に示されるように、凹部201rの深さ方向において上部から下部に向かってエッチング量が緩やかに低下するエッチング形状が得られる。その結果、エッチング工程S13と成膜工程S12とを繰り返しながら凹部201rにシリコン酸化膜202を形成することで、凹部201rの底部から上部開口に向かってシリコン酸化膜202が堆積するボトムアップ成膜を実現しやすい。
【0058】
また、Ar/CHF/O/Hガスに対するHガスの流量比を変更することで、エッチング形状を制御できる。例えば、Ar/CHF/O/Hガスに対するHガスの流量比を高くすることで、フッ素ラジカルの低減量が多くなるので、凹部201rの深さ方向において上部と下部との間のエッチング量の差が小さいエッチング形状が得られる。一方、Ar/CHF/O/Hガスに対するHガスの流量比の低くすることで、フッ素ラジカルの低減量が少なくなるので、凹部201rの深さ方向において上部と下部との間のエッチング量の差が大きいエッチング形状が得られる。このため、エッチング工程S13では、凹部201rの深さに応じてAr/CHF/O/Hガスに対するHガスの流量比を定めることが好ましい。また、エッチング工程S13では、目標とするエッチング形状に応じてAr/CHF/O/Hガスに対するHガスの流量比を定めることが好ましい。
【0059】
所定の時間が経過した後、処理ガスノズル92からのAr/CHF/O/Hガスの供給を停止することで、エッチング工程S13を終了する。所定の時間は、例えば凹部201rの深さに応じて定められる。
【0060】
なお、エッチング工程S13では、反応ガスノズル31、32からArガスを供給してもよい。
【0061】
判定工程S14は、エッチング工程S13の後に実施される。判定工程S14は、成膜工程S12及びエッチング工程S13を設定回数実施したか否かを判定することを含む。実施回数が設定回数に達していない場合(判定工程S14のNO)、成膜工程S12及びエッチング工程S13を再び実施する。実施回数が設定回数に達している場合(判定工程S14のYES)、処理を終了する。このように、実施回数が設定回数に達するまで成膜工程S12及びエッチング工程S13をこの順に行う処理を複数回繰り返すことにより、図10(c)に示されるように、凹部201rがシリコン酸化膜202で埋め込まれる。
【0062】
以上に説明したように、実施形態に係る基板処理方法によれば、Ar/CHF/O/Hガスからプラズマを生成し、生成したAr/CHF/O/Hプラズマによりシリコン酸化膜202をエッチングする。この場合、シリコン酸化膜202とCHFとの反応により生じるポリマーがOと反応により分解される。また、ポリマーとOとの反応により生じるフッ素ラジカルがCHF/O/Hプラズマ中のHと反応してフッ化水素となり、フッ素ラジカルの量が低減される。これにより、内部空間Sへのポリマーの堆積を抑制しつつ、真空容器1の内部にある石英等の部材のエッチングやシリコン酸化膜202の過剰なエッチングを抑制できる。このため、パーティクルの発生を抑制しつつ、凹部201rの深さ方向において上部から下部に向かってエッチング量が緩やかに低下するエッチング形状が得られる。その結果、エッチング工程S13と成膜工程S12とを繰り返しながら凹部201rにシリコン酸化膜202を形成することで、凹部201rの底部から上部開口に向かってシリコン酸化膜202が堆積するボトムアップ成膜を実現しやすい。このため、高アスペクト比の凹部201rにボイドやシームのないシリコン酸化膜202を埋め込むことができる。
【0063】
また、実施形態に係る基板処理方法によれば、成膜工程S12とエッチング工程S13とを同一の基板処理装置において実施できるので、装置コストを低減でき、生産性が向上する。
【0064】
〔実施例〕
実施例では、エッチング工程S13において処理ガスノズル92から供給されるAr/CHF/O/Hガス中のHガスの流量を変更したときの、凹部の深さ方向におけるシリコン酸化膜のエッチング量を測定した。
【0065】
まず、シリコン酸化膜が露出した表面を有する凹部が形成された基板を準備した。凹部の深さは、7μmである。シリコン酸化膜の厚さは、30~40nmである。
【0066】
次に、準備した基板を基板処理装置の真空容器1内に収容し、エッチング工程S13を行った。エッチング工程S13では、Arガスの流量を10000sccm、CHFガスの流量を100sccm、Oガスの流量を500sccmに固定した状態で、Hガスの流量を0sccm、20sccm、50sccm、100sccmのいずれかに設定した。
【0067】
図12は、凹部の深さ方向におけるエッチング量を示す図である。図12において、縦軸は凹部の深さ方向に沿った位置[μm]を示し、0μmの位置が凹部の上面の高さ位置を示し、7μmの位置が凹部の底面の高さ位置を示す。図12において、横軸はシリコン酸化膜のエッチング量を示す。図12において、丸印、菱形印、三角印、四角印は、それぞれHガスの流量が0sccm、20sccm、50sccm、100sccmの場合を示す。
【0068】
図12に示されるように、Hガスの流量を0sccm、20sccmに設定した場合、凹部の最上部でエッチング量の急激な低下が見られる。これに対し、Hガスの流量を50sccm、100sccmに設定した場合、凹部の最上部でのエッチング量の急激な低下が見られない。この結果から、Hガスの流量を50sccm以上に設定することで、凹部の最上部での狭窄を抑制しつつ、凹部の上部から下部に向かってエッチング量が低下するエッチング形状を形成できることが示された。
【0069】
図12に示されるように、Hガスの流量を100sccmに設定した場合、凹部の上部から下部に向かってエッチング量が緩やかに低下することが分かる。この結果から、Hガスの流量を100sccmに設定することで、凹部の上部から下部に向かってエッチング量が緩やかに低下するエッチング形状を形成できることが示された。この場合、高アスペクト比の凹部であっても、凹部の上部から下部に向かって凹部の底面までエッチング量が徐々に低下するエッチング形状を形成できる。このため、高アスペクト比の凹部に対する膜の埋め込み特性が改善する。
【0070】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0071】
上記の実施形態では、エッチング工程S13においてAr/CHF/O/Hガスからプラズマを生成する場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、Arガスは含まれなくてもよい。例えば、Oガスに代えて、別の酸素含有ガス、例えばオゾン(O)ガスを用いてもよい。例えば、Hガスに代えて、別の水素含有ガス、例えばアンモニア(NH)ガスを用いてもよい。
【0072】
上記の実施形態では、プラズマ発生源80がアンテナ85を有する誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)源である場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。プラズマ発生源80は、Ar/CHF/O/Hガスからプラズマを生成できればよい。例えば、プラズマ発生源80は、互いに平行に延びる2本のロッド電極の間に高周波を印加することによりプラズマを発生させる容量性結合プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)源であってもよい。
【0073】
上記の実施形態では、基板処理装置が回転テーブルに載置された基板を公転させながら基板に処理を行う装置である場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、基板処理装置は、回転テーブルに載置された基板を公転させながら基板が自転するように、回転テーブルにおける基板の載置領域を回転させる回転機構を有し、回転テーブルに載置された基板を自公転させながら基板に処理を行う装置であってもよい。この場合、基板の面内における処理の均一性が向上する。
【0074】
上記の実施形態では、基板処理装置がセミバッチ式の装置である場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、基板処理装置は基板を1枚ずつ処理する枚葉式の装置であってもよい。例えば、基板処理装置は複数の基板に対して一度に処理を行うバッチ式の装置であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
201 基板
201r 凹部
202 シリコン酸化膜
S11 準備工程
S13 エッチング工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12