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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152219
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】静電チャック装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20241018BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20241018BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20241018BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H01L21/31 F
C23C16/458
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066281
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】金原 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】一由 拓
(72)【発明者】
【氏名】乾 敏祥
(72)【発明者】
【氏名】菅又 徹
【テーマコード(参考)】
4K030
5F004
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
4K030GA02
4K030KA23
4K030KA26
5F004BB22
5F004BB25
5F004BB26
5F045AA08
5F045EJ03
5F045EK07
5F045EM05
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131AA33
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131BA23
5F131CA03
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB54
5F131EB72
5F131EB78
5F131EB81
5F131EB82
5F131EB84
(57)【要約】
【課題】均熱性が高い静電チャック装置を提供する。
【解決手段】板状試料を載置する載置面を有し内部に静電吸着用電極が設けられる板状の静電チャック部と、中心軸線を中心とする円盤状であり支持面において静電チャック部を載置面の反対側から支持するベース部と、を備え、ベース部の内部には、支持面に沿って延びる冷媒流路が設けられ、冷媒流路は、ベース部を中心軸線の軸方向に貫通する貫通孔を中心とした孔径方向外側に間隔をあけて形成される第一流路部と、第一流路部に対し、冷媒流路の延伸方向の両側にそれぞれ位置する第二流路部と、を有し、第一流路部の流路断面積は、第二流路部の流路断面積よりも小さい、静電チャック装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状試料を載置する載置面を有し内部に静電吸着用電極が設けられる板状の静電チャック部と、
中心軸線を中心とする円盤状であり支持面において前記静電チャック部を前記載置面の反対側から支持するベース部と、を備え、
前記ベース部は、
前記ベース部を前記中心軸線の軸方向に貫通する貫通孔と、
前記ベース部の内部に設けられ前記支持面に沿って延びる冷媒流路と、を有し、
前記冷媒流路は、
前記貫通孔を中心とした孔径方向外側に間隔をあけて形成される第一流路部と、
前記第一流路部に対し、前記冷媒流路の延伸方向の両側にそれぞれ位置する第二流路部と、を有し、
前記第一流路部の流路断面積は、前記第二流路部の流路断面積よりも小さい、
静電チャック装置。
【請求項2】
前記第一流路部は、前記第二流路部に対し、前記軸方向および前記延伸方向に交差する幅寸法が小さい、
請求項1に記載の静電チャック装置。
【請求項3】
前記第一流路部の流路断面積は、前記第二流路部の流路断面積に対し、0.5倍以上1.0倍未満である、
請求項1または2に記載の静電チャック装置。
【請求項4】
前記第一流路部は、
前記貫通孔の前記孔径方向外側に間隔をあけて形成され、前記孔径方向外側を向く第一内側面と、
前記第一内側面に対して前記孔径方向外側に間隔をあけて形成され、前記孔径方向内側を向く第二内側面と、を有し、
前記第一内側面は、前記貫通孔の孔内周面と同心状に形成された円弧状に形成される、
請求項1または2に記載の静電チャック装置。
【請求項5】
前記第二内側面は、前記貫通孔の孔内周面と同心状に形成された円弧状に形成される、
請求項4に記載の静電チャック装置。
【請求項6】
前記第一内側面、及び前記第二内側面は、前記軸方向から見た際、前記貫通孔を中心として20~300°の範囲に形成される、
請求項5に記載の静電チャック装置。
【請求項7】
前記第一流路部に対して前記冷媒流路の前記延伸方向の少なくとも一方側の前記第二流路部において、前記第一内側面に接続される内側面と、前記第一内側面との間に、前記軸方向から見た際に円弧状に湾曲した接続面が形成される、
請求項4に記載の静電チャック装置。
【請求項8】
前記貫通孔の内周面と前記第一内側面との間に形成される壁部の厚さが、1mm以上10mm以下である、
請求項4に記載の静電チャック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマエッチング装置、プラズマCVD装置等のプラズマを用いた半導体製造装置においては、載置面に簡単にウエハを取付け、固定するとともに、ウエハを所望の温度に維持する装置として静電チャック装置が使用されている。特許文献1には、載置面を含む板状セラミック体と、内部に冷却媒体を流す冷却通路が設けられたベース部材とを有する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-035878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、半導体を用いたデバイスは高集積化される傾向にある。そのため、デバイスの製造時には、配線の微細加工技術や三次元実装技術が必要とされている。このような加工技術を実施するにあたり、半導体製造装置には、ウエハの面内の温度分布(温度差)を低減させることが求められる。従来技術では、ウエハの面内温度分布を所望の温度差にまで低減させることができないことがあり、改善が求められていた。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、均熱性が高い静電チャック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、下記[1]~[8]の発明を包含する。
以下の発明は必要に応じて2つ以上組み合わせることも好ましい。
[1] 板状試料を載置する載置面を有し内部に静電吸着用電極が設けられる板状の静電チャック部と、中心軸線を中心とする円盤状であり支持面において前記静電チャック部を前記載置面の反対側から支持するベース部と、を備え、前記ベース部は、前記ベース部を前記中心軸線の軸方向に貫通する貫通孔と、前記ベース部の内部に設けられ前記支持面に沿って延びる冷媒流路と、を有し、前記冷媒流路は、前記貫通孔を中心とした孔径方向外側に間隔をあけて形成される第一流路部と、前記第一流路部に対し、前記冷媒流路の延伸方向の両側にそれぞれ位置する第二流路部と、を有し、前記第一流路部の流路断面積は、前記第二流路部の流路断面積よりも小さい、静電チャック装置。
[2] 前記第一流路部は、前記第二流路部に対し、前記軸方向および前記延伸方向に交差する幅寸法が小さい、[1]に記載の静電チャック装置。
[3] 前記第一流路部の流路断面積は、前記第二流路部の流路断面積に対し、0.5倍以上1.0倍未満である、[1]または[2]に記載の静電チャック装置。
[4] 前記第一流路部は、前記貫通孔の前記孔径方向外側に間隔をあけて形成され、前記孔径方向外側を向く第一内側面と、前記第一内側面に対して前記孔径方向外側に間隔をあけて形成され、前記孔径方向内側を向く第二内側面と、を有し、前記第一内側面は、前記貫通孔の孔内周面と同心状に形成された円弧状に形成される、[1]から[3]の何れか一項に記載の静電チャック装置。
[5] 前記第二内側面は、前記貫通孔の孔内周面と同心状に形成された円弧状に形成される、[4]の静電チャック装置。
[6] 前記第一内側面、及び前記第二内側面は、前記軸方向から見た際、前記貫通孔を中心として20~300°の範囲に形成される、[5]の静電チャック装置。
[7] 前記第一流路部に対して前記冷媒流路の前記延伸方向の少なくとも一方側の前記第二流路部において、前記第一内側面に接続される内側面と、前記第一内側面との間に、前記軸方向から見た際に円弧状に湾曲した接続面が形成される、[4]から[6]の何れか一項に記載の静電チャック装置。
[8] 前記貫通孔の内周面と前記第一内側面との間に形成される壁部の厚さが、1mm以上10mm以下である、[4]から[7]の何れか一項に記載の静電チャック装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、均熱性が高い静電チャック装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の静電チャック装置を示す断面図である。
図2】実施形態の冷媒流路を示す模式図である。
図3】実施形態の冷媒流路において、貫通孔の周囲に形成された第一流路部、及び第二流路部を示す模式図である。
図4】実施形態の冷媒流路において、貫通孔の周囲に形成された第一流路部、及び第二流路部を示す断面図である。
図5】実施形態の冷媒流路において、貫通孔の周囲で加工時に生じる事象を例示する図である。
図6】実施形態の変形例における冷媒流路を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を基に、本実施形態に係る静電チャック装置について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0010】
なお、本明細書においては、「静電チャック部(又は載置面)の面内温度分布(温度差)の度合い」のことを「均熱性」と称することがある。「均熱性が高い」とは、静電チャック部の載置面のうち板状試料を搭載する領域の面内温度分布が小さいことを意味する。
【0011】
<実施形態>
図1は、実施形態の静電チャック装置1を示す断面図である。
静電チャック装置1は、板状の静電チャック部2と、ヒータエレメント5と、円盤状のベース部3と、を有する。静電チャック装置1は、中心軸線Jを中心とする円盤状である。静電チャック部2、ヒータエレメント5、およびベース部3は、中心軸線Jの軸方向に沿ってこの順で積層される。
【0012】
以下の説明において、中心軸線Jを中心として静電チャック装置1の各部の方向を説明する。以下の説明において、中心軸線Jの軸方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸線Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸線Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ場合がある。また、以下の説明において、中心軸線Jが延びる方向を上下方向と一致させた姿勢で各部の上下方向を規定する。しかしながら、静電チャック装置1の使用時の姿勢は限定されない。
【0013】
(静電チャック部)
静電チャック部2は、上面を半導体ウエハ等の円形の板状試料Wを載置する載置面11aとした載置板11と、載置板11と一体化され前記載置板11の底部側を支持する支持板12と、これら載置板11と支持板12との間に設けられた静電吸着用電極13、および静電吸着用電極13の周囲を絶縁する絶縁材層14と、を有する。すなわち、静電チャック部2は、板状試料Wを載置する載置面11aを有し内部に静電吸着用電極13が設けられる。
【0014】
載置板11および支持板12は、重ね合わせた面の形状を同じくする円盤状の部材である。載置板11および支持板12は、機械的な強度を有し、かつ腐食性ガスおよびそのプラズマに対する耐久性を有する、セラミックス焼結体からなる。載置板11および支持板12について、詳しくは後述する。
【0015】
載置板11の載置面11aには、直径が板状試料の厚さより小さい突起部11bが複数所定の間隔で形成され、これらの突起部11bが板状試料Wを支える。
【0016】
また、載置面11aの周縁には、周縁壁17が形成されている。周縁壁17は、突起部11bと同じ高さに形成されており、突起部11bとともに板状試料Wを支持する。
【0017】
静電吸着用電極13は、電荷を発生させて静電吸着力で板状試料Wを固定するための静電チャック用電極として用いられる。静電吸着用電極13は、その用途によって、その形状や、大きさが適宜調整される。
【0018】
静電吸着用電極13は任意に選択される材料から構成できる。例えば、酸化アルミニウム-炭化タンタル(Al-Ta)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム-タングステン(Al-W)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム-炭化ケイ素(Al-SiC)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム-タングステン(AlN-W)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム-タンタル(AlN-Ta)導電性複合焼結体、酸化イットリウム-モリブデン(Y-Mo)導電性複合焼結体等の導電性セラミックス、あるいは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属により形成されることが好ましい。
【0019】
静電吸着用電極13は、スパッタ法や蒸着法等の成膜法、あるいはスクリーン印刷法等の塗工法により容易に形成することができる。
【0020】
絶縁材層14は、静電吸着用電極13を囲繞して腐食性ガスおよびそのプラズマから静電吸着用電極13を保護する。また絶縁材層14は、載置板11と支持板12との境界部を、すなわち静電吸着用電極13以外の外周部領域を、接合一体化する。絶縁材層14は、載置板11および支持板12を構成する材料と同一組成または主成分が同一の絶縁材料により構成されている。
【0021】
(ヒータエレメント)
ヒータエレメント5は、静電チャック部2を加熱する。ヒータエレメント5は、静電チャック部2の下面側に配置される。ヒータエレメント5の構造や材料は、任意に選択できる。例を挙げれば、ヒータエレメント5は、厚さが0.2mm以下、好ましくは0.1mm程度の一定の厚さを有する非磁性金属薄板を、所望のヒータ形状、例えば帯状の導電薄板を蛇行させた形状などであって、全体輪郭が円環状の形状など、に加工することで得られる。非磁性金属薄板としては、例えばチタン(Ti)薄板、タングステン(W)薄板、およびモリブデン(Mo)薄板等を用いることができる。ヒータエレメント5を、所定のヒータ形状に形成するには、例えば、フォトリソグラフィー法やレーザー加工が用いられる。
【0022】
ヒータエレメント5は、静電チャック部2に非磁性金属薄板を接着した後に、静電チャック部2の表面で加工成型することで設けてもよい。静電チャック部2とは異なる位置でヒータエレメント5を別途加工成形したものを、静電チャック部2の表面に転写印刷することで設けてもよい。
【0023】
ヒータエレメント5は、厚さの均一な耐熱性および絶縁性を有する、シート状またはフィルム状のシリコーン樹脂またはアクリル樹脂などからなる接着剤4により、支持板12の底面に接着および固定されている。
【0024】
静電チャック部2とベース部3とは、静電チャック部2とベース部3の間に設けられた接着剤層8を介して接着されている。接着剤層8は、例えば、シリコーン系樹脂組成物を加熱硬化した硬化体またはアクリル樹脂で形成されている。接着剤層8は、例えば、流動性を有する樹脂組成物を静電チャック部2とベース部3の間に配置した後に、加熱硬化させることで形成することが好ましい。これにより、静電チャック部2とベース部3と間の凹凸が、接着剤層8により充填され、接着剤層8に空隙や欠陥が生じ難くなる。そのため、接着剤層8の熱伝導特性を面内に均一にすることができ、静電チャック部2の均熱性を高めることができる。
【0025】
(ベース部)
ベース部3は、静電チャック部2を冷却する。ベース部3は、中心軸線Jを中心とする円盤状である。ベース部3は、静電チャック部2を支持する支持面3aと、支持面3aの反対側を向く底面3bと、を有する。静電チャック部2は、支持面3aにおいて静電チャック部2を載置面11aの反対側から支持する。
【0026】
ベース部3を構成する材料としては、熱伝導性、導電性、および加工性に優れた金属、またはこれらの金属を含む複合材であれば特に制限はなく、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銅(Cu)、チタン(Ti)、銅合金、ステンレス鋼(SUS)等が好適に用いられる。ベース部3の少なくともプラズマに曝される面は、アルマイト処理が施されているか、あるいはアルミナ等の絶縁膜が成膜されていることが好ましい。
【0027】
ベース部3の内部には、冷媒が流動する冷媒流路40が設けられる。冷媒流路40には、ベース部3の外部から冷媒流路40内に冷媒を引き込む流入口40aと、冷媒流路40内の冷媒をベース部3の外部に排出する流出口40bと、が設けられる。流入口40aおよび流出口40bは、ベース部3の底面3bに開口している。なお、図1において、流入口40aおよび流出口40bの径方向の位置は模式化されて図示されており、実際の配置を表すものではない。
【0028】
冷媒流路40は、支持面3aに沿って延びる。すなわち、冷媒流路40は、中心軸線Jと直交する平面に沿って延びる。冷媒流路40は、全長に亘って流路断面が矩形状である。本実施形態の冷媒流路40は、冷媒流路40の軸方向寸法Dxは、冷媒流路40の全長に亘って一様である。冷媒流路40は、上側部材35と下側部材36とを有する。上側部材35は、軸方向を厚さ方向とする板状の部材である。また、下側部材36は、上側部材35より軸方向の厚さ寸法が大きい板状の部材である。
【0029】
下側部材36の上面には、上側に開口する凹溝31gが設けられる。下側部材36において、凹溝31g同士の間の部分は、壁部50を構成する。すなわち、ベース部3は、壁部50を有する。壁部50は、凹溝31g同士を区画する。
【0030】
凹溝31gの開口は、上側部材35に覆われる。冷媒は、凹溝31gの内側面および上側部材35で囲まれる領域に流れる。すなわち、冷媒流路40は、凹溝31gの内側面、および上側部材35の下面に囲まれる領域に構成される。また、壁部50は、冷媒流路40を径方向に区画する。上側部材35の下面と下側部材36の上面とは、ロウ付けなどの接合手段によって互いに接合される。
【0031】
図2は、本実施形態の冷媒流路40の模式図である。
本実施形態の冷媒流路40は、中心軸線Jに対し径方向外側に広がる渦巻状である。本実施形態の冷媒流路40は、全長に亘って一つながりである。本実施形態において、冷媒流路40は、周方向に沿って曲率半径を大きくしながら中心軸線Jから連続的に離間する。冷媒流路40の径方向に重なる部分同士の間には、壁部50が位置する。壁部50は、冷媒流路40を、中心軸線Jを中心とする渦巻状に画定する。
【0032】
冷媒流路40は、外周流路部41と、内周流路部42とを有する。外周流路部41は、冷媒流路40の全長のうち、最外周の領域に位置しており、中心軸線Jを中心として周方向に1周以下だけ延びる領域である。一方で、内周流路部42は、冷媒流路40の全長のうち、外周流路部41よりも径方向内側に配置される。外周流路部41と内周流路部42とは、互いに連結している。本実施形態において、流入口40aは、外周流路部41に設けられ、流出口40bは、内周流路部42に設けられる。したがって、本実施形態の冷媒は、外周流路部41、内周流路部42の順で冷媒流路40内を流れる。
【0033】
外周流路部41は、冷媒流路40において最外周に配置される。外周流路部41は、中心軸線Jに対して約3/4周だけ円弧状に延びる。外周流路部41の一端には、流入口40aが設けられる。また、外周流路部41の他端は、内周流路部42が接続される。
【0034】
外周流路部41は、全長に亘って幅寸法が一様である。本実施形態の冷媒流路40は、全長に亘って流路断面が矩形状であり、軸方向寸法が一様である。したがって、外周流路部41は、全長に亘って流路断面積が一様である。
【0035】
内周流路部42は、中心軸線Jを中心として略一周半だけ旋回して延びる渦巻状である。内周流路部42の一端は、外周流路部41に接続される。また、内周流路部42の他端には、流出口40bが設けられる。
【0036】
内周流路部42は、径方向外側に向かうに従い幅寸法を連続的に小さくする。このため、内周流路部42は、径方向外側に向かうに従い流路断面積が連続的に小さくなる。
【0037】
壁部50は、中心軸線Jを中心として1周と約3/4周だけ旋回して延びる渦巻状である。本実施形態において、壁部50は、周方向に沿って曲率半径を大きくしながら中心軸線Jから連続的に離間する。壁部50は、内周側の領域50Aで内周流路部42同士の間に位置しこれらを画定する。また、壁部50は、外周側の領域50Bで外周流路部41と内周流路部42との間に位置しこれらを画定する。
【0038】
壁部50の径方向寸法は、中心軸線Jから離れるに従い連続的に小さくなる。したがって、冷媒流路40は、径方向に重なって配置される部分同士の径方向の距離が、中心軸線Jから離れるに従い連続的に小さくなる。
【0039】
静電チャック装置1は、静電チャック部2、及びベース部3を軸方向に貫通する貫通孔80を有している。貫通孔80は、例えば、リフトピン挿通孔として形成される。貫通孔80は、複数設けられていてもよい。本実施形態では、貫通孔80は、複数箇所、例えば中心軸線Jを中心とした周方向に間隔をあけた3箇所に形成される。貫通孔80の数、配置については何ら限定するものではない。リフトピン挿通孔としての貫通孔80には、板状試料Wをリフトアップするためのリフトピン(図示なし)が挿通される。リフトピンは、貫通孔80内から、載置面11aよりも上方に向けて出没することで、板状試料Wを昇降させる。
貫通孔80は、例えばガス供給孔等、他の用途のものであってもよい。貫通孔80は、載置面11aに開口する。貫通孔80には、He等の冷却ガスが供給される。ガス導入孔から導入された冷却ガスは、載置面11aと板状試料Wの下面と間の隙間や、複数の突起部11bの間を流れ板状試料Wを冷却する。
【0040】
各貫通孔80は、ベース部3を軸方向に貫通する。すなわち、ベース部3は、貫通孔80と冷媒流路40と、を有する。貫通孔80は、径方向で隣り合う冷媒流路40同士の間に形成される。すなわち、各貫通孔80は、ベース部3の壁部50内に設けられる。貫通孔80は、内周側の領域50Aで内周流路部42同士の間に位置していてもよいし、外周側の領域50Bで外周流路部41と内周流路部42との間に位置していてもよい。
ここで、以下の説明において、ベース部3を軸方向から見た際、貫通孔80を中心とした貫通孔80の径方向を、孔径方向と称する。
【0041】
図3は、実施形態の冷媒流路において、貫通孔の周囲に形成された第一流路部、及び第二流路部を示す模式図である。
図3に示すように、冷媒流路40は、貫通孔80の周囲で、流路断面積が狭められる。冷媒流路40は、第一流路部40Nと、第二流路部40Wと、を有する。第一流路部40Nは、貫通孔80に対し、貫通孔80を中心とした孔径方向外側に間隔をあけて形成される。第一流路部40Nは、貫通孔80の孔径方向外側で、貫通孔80の孔内周面80fに沿うように湾曲する。第二流路部40Wは、第一流路部40Nに対し、冷媒流路40の延伸方向の両側にそれぞれ位置する。
【0042】
図4は、実施形態の冷媒流路において、貫通孔の周囲に形成された第一流路部、及び第二流路部を示す断面図である。
第一流路部40Nの幅寸法Wnは、第二流路部40Wの幅寸法Wwに対して小さい。図4に示すように、第一流路部40Nの高さと、第二流路部40Wの高さは同一である。したがって、第一流路部40Nの流路断面積は、第二流路部40Wの流路断面積よりも小さい。このように、第一流路部40Nの流路断面積が、第二流路部40Wの流路断面積よりも小さいため、冷媒流路40を流れる冷媒の流速は、流路断面積の小さい第一流路部40Nにおいて、第二流路部40Wよりも高まる。これにより、貫通孔80の周囲の壁部50から、熱が効率的に奪い取られる。
【0043】
ここで、第一流路部40Nの流路断面積は、第二流路部40Wの流路断面積に対し、0.5倍以上1.0倍未満であるのが好ましい。第一流路部40Nの流路断面積が、第二流路部40Wの流路断面積の0.5倍未満であると、第一流路部40Nにおける圧力損失が過度に高くなりやすい。一方、第一流路部40Nの流路断面積が、第二流路部40Wの流路断面積に対して1倍以上であると、第一流路部40Nにおける冷媒の流速が、第二流路部40Wよりも小さくなってしまう。第一流路部40Nの流路断面積は、第二流路部40Wの流路断面積に対し、0.7倍以上0.95倍未満であるのが、より好ましい。
【0044】
図3に示すように、第一流路部40Nは、第一内側面40sと、第二内側面40tと、を有する。
第一内側面40sは、貫通孔80に対し、貫通孔80を中心とした孔径方向外側に間隔をあけて形成される。第一内側面40sは、孔径方向外側、つまり貫通孔80から離間する方向を向く。第一内側面40sは、貫通孔80の孔内周面80fと同心状に形成された円弧状に形成される。これにより、第一内側面40sは、第一流路部40Nに対して冷媒流路40の延伸方向の両側に位置する第二流路部40Wの内側面40gに対し、孔径方向外側に張り出している。
【0045】
ここで、このような第一内側面40sと貫通孔80の内周面80fとの間に形成される壁部50の厚さTは、1mm以上10mm以下であるのが好ましい。厚さTが1mm未満であると、壁部50の機械的な強度が不足する。また、厚さTが10mmを超えると、壁部50が厚くなりすぎ、冷媒流路40を流れる冷媒による冷却効果の低下に繋がる。
【0046】
第二内側面40tは、第一内側面40sに対して孔径方向外側に間隔をあけて形成される。第二内側面40tは、孔径方向内側、つまり貫通孔80に離間する方向とは反対側を向く。第二内側面40tは、貫通孔80の孔内周面80fと同心状に形成された円弧状に形成される。つまり、第一内側面40sと第二内側面40tとは、それぞれ、貫通孔80の孔内周面80fと同心状に形成される。
【0047】
なおここで、第一内側面40sと第二内側面40tとを、それぞれ、貫通孔80の孔内周面80fと同心状に形成するようにしたが、これに限られない。第一内側面40sと第二内側面40tとは、それぞれ、貫通孔80の孔内周面80fと同心状ではなく、適宜の曲率で湾曲させてもよい。また、第一流路部40Nの流路断面積を、第二流路部40Wの流路断面積よりも小さくする、という観点から、第一内側面40sのみを第二流路部40Wの内側面40gに対して孔径方向外側に張り出すようにし、第二内側面40tは、第二流路部40Wの内側面40hと連続するように形成してもよい。
【0048】
第一内側面40s、及び第二内側面40tは、軸方向から見た際、貫通孔80を中心とした角度θが、20~300°の範囲に形成される。角度θが20°未満であると、特に、第一内側面40sが孔径方向外側に張り出すことで、第一流路部40Nの流路断面積を小さくすることへの寄与が少なくなる。角度θが300°を超えると、貫通孔80の孔内周面80fと第一内側面40sとの間の壁部50が、貫通孔80回りの周方向に連続して、円筒状に近い形状となる。これにより、貫通孔80の周囲における壁部50の軸方向における剛性が高まる。すると、図5中に二点鎖線L1で示すように、ベース部3の支持面3a等の平面を工作機械で切削加工する際、貫通孔80の周囲の壁部50の部分P1は、その周囲の冷媒流路40が形成されている部分P2に比較し、工作機械から作用する応力によって、下方に撓む寸法が小さい。冷媒流路40が形成されている部分P2では、工作機械からの応力によって下方に撓んだ状態で切削されるため、その切削量が小さいのに対し、貫通孔80の周囲の壁部50の部分P1では、工作機械からの応力によって下方に撓む寸法が小さく、その分、切削量が大きくなってしまう。その結果、切削加工の完了後、冷媒流路40が形成されている部分P2の撓みが復元すると、支持面3aは、冷媒流路40が形成されている部分P2に対し、貫通孔80の周囲の壁部50の部分P1が低くなってしまうことになる。その結果、板状試料Wを支持面3aに乗せた状態で、貫通孔80の周囲の壁部50の部分P1と板状試料Wとの間に僅かな隙間が生じてしまう可能性がある。
これに対し、上記の角度θを300°未満とすることで、上記したような事象が生じるのを抑えることができる。
【0049】
また、図3に示すように、第一流路部40Nに対して冷媒流路40の延伸方向の両側の第二流路部40Wにおいて、第一内側面40sに接続される内側面40gと、第一内側面40sとの間に、軸方向から見た際に円弧状に湾曲した接続面40jが形成される。また、第二内側面40tに接続される、第二流路部40Wの内側面40hと、第二内側面40tとの間にも、軸方向から見た際に円弧状に湾曲した接続面40kが形成される。
【0050】
(実施形態の作用効果)
本実施形態の静電チャック装置1において、冷媒流路40は、貫通孔80の孔径方向外側に間隔をあけて形成される第一流路部40Nと、第一流路部40Nに対し、冷媒流路40の延伸方向の両側にそれぞれ位置する第二流路部40Wと、を有する。第一流路部40Nの流路断面積は、第二流路部40Wの流路断面積よりも小さい。これにより、冷媒流路40における冷媒の流速は、流路断面積が大きい第二流路部40Wに対し、流路断面積が小さい第一流路部40Nで大きくなる。これにより、第一流路部40Nにおける冷却性が高まる。貫通孔80には、リフトピンが挿入されたり、He等の冷却ガスが充填される結果、貫通孔80内における断熱性が高まる。その結果、貫通孔80の周囲における冷却効果が低下し、温度が上昇しやすくなってしまう。これに対し、第一流路部40Nの流路断面積を、第二流路部40Wの流路断面積よりも小さくすることで、均熱性が高い静電チャック装置1を提供することができる。
【0051】
本実施形態の第一流路部40Nは、第二流路部40Wに対し、軸方向および延伸方向に交差する幅寸法が小さい。このように、第一流路部40Nの流路断面積を、第二流路部40Wの流路断面積よりも、容易に小さくすることができる。
【0052】
本実施形態の第一流路部40Nの流路断面積は、第二流路部40Wの流路断面積に対し、0.5倍以上1.0倍未満である。これにより、第一流路部40Nの流路段面積を小さくすることによって、均熱性を、効率良く高めることができる。
【0053】
本実施形態の第一流路部40Nは、第一内側面40sと、第二内側面40tと、を有し、第一内側面40sは、貫通孔80の孔内周面80fと同心状に形成された円弧状に形成される。これにより、第一内側面40sと孔内周面80fとの間の壁部50の厚さTを一定とし、均熱性を高めることができる。
【0054】
本実施形態の第二内側面40tは、貫通孔80の孔内周面80fと同心状に形成された円弧状に形成される。これにより、第一内側面40sと第二内側面40tが同心状に形成されることで、第一流路部40Nを工作機械で容易に形成することができる。
【0055】
本実施形態の第一内側面40s、及び第二内側面40tは、軸方向から見た際、貫通孔80を中心として20~300°の範囲に形成される。これにより、第一流路部40Nの流路段面積を小さくしつつ、貫通孔80の周囲における壁部50の剛性が過度に高まるのを抑えることができる。
【0056】
本実施形態の第一内側面40sと、第一内側面40sに接続される内側面40gとの間に、接続面40jが形成される。これにより、冷媒流路40内における冷媒の流れにおいて、第一内側面40sと内側面40gとの境界部分で剥離が生じるのを抑えることができる。これにより、貫通孔80の周囲で、冷却効率が低い部分が生じることを抑え、均熱性が高められる。
【0057】
本実施形態の貫通孔80の内周面と第一内側面40sとの間に形成される壁部50の厚さが、1mm以上10mm以下である。これにより、壁部50の強度を確保しつつ、均熱性が低下することを抑える。
【0058】
また、本実施形態の内周流路部42は、外周流路部41よりも径方向内側に配置される。ベース部3は、静電チャック部2のうち軸方向から見て板状試料Wと重なる領域を積極的に冷却することで板状試料Wの温度を一定に保つ。本実施形態によれば、内周流路部42と外周流路部41とを設け、それぞれの流路構成を最適化することで、板状試料Wの外縁Waの近傍まで、静電チャック部2の均熱性を高めることができる。
【0059】
<実施形態の変形例>
なお、上記実施形態において、冷媒流路40が、外周流路部41と、内周流路部42とを有するようにしたが、これに限られない。
図6は、実施形態の変形例の冷媒流路140の模式図である。以下に図3を基に第2実施形態の冷媒流路140について説明する。なお、上述の実施形態と同様の構成態様については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0060】
本実施形態の冷媒流路140は、中心軸線Jの近傍で折り返す二重の渦巻状である。冷媒流路140の二重の渦巻きは、中心軸線Jに対し径方向外側に広がる。本実施形態の冷媒流路140は、全長に亘って一つながりである。本実施形態の冷媒流路140は、全長に亘って流路断面が矩形状であり、軸方向寸法が一様である。壁部150は、冷媒流路140の径方向に重なる部分同士の間に位置する。壁部150は、冷媒流路140を、中心軸線Jを中心とする渦巻状に画定する。
【0061】
冷媒流路140は、外周流路部141と、外周流路部141よりも径方向内側に配置される内周流路部142とを有する。外周流路部141と内周流路部142とは、互いに連結している。本実施形態において、流入口140aは、内周流路部142に設けられ、流出口140bは、外周流路部141に設けられる。したがって、本実施形態の冷媒は、内周流路部142、外周流路部141の順で冷媒流路40内を流れる。
【0062】
外周流路部141は、冷媒流路140において最外周に配置される。外周流路部141は、中心軸線Jに対して約3/4周だけ円弧状に延びる。外周流路部141の一端には、内周流路部142が接続される。外周流路部141の他端には、流出口140bが設けられる。また、外周流路部141は、軸方向から見て板状試料Wの外縁Waと重なる。外周流路部141は、全長に亘って幅寸法が一様である。したがって、外周流路部141は、全長に亘って流路断面積が一様である。
【0063】
内周流路部142は、第1円弧部142Aと第2円弧部142Bと第3円弧部142Cと第1連結部143Aと第2連結部143Bと第3連結部143Cとを有する。第1円弧部142A、第2円弧部142B、および第3円弧部142Cは、中心軸線Jを中心として円弧状に延びる。第1円弧部142A、第2円弧部142B、および第3円弧部142Cは、中心軸線Jを中心として同心円状に配置される。
【0064】
第1円弧部142Aは、内周流路部142の最内周に位置する。第1円弧部142Aは、中心軸線Jに対して約3/4周だけ円弧状に延びる。第1円弧部142Aの一端には、第1連結部143Aが接続される。また、第1円弧部142Aの他端には、第2連結部143Bが接続される。第1円弧部142Aは、全長に亘って幅寸法が一様である。したがって、第1円弧部142Aは、全長に亘って流路断面積が一様である。
【0065】
第2円弧部142Bは、第1円弧部142Aの径方向外側に位置する。第2円弧部142Bは、径方向において、第1円弧部142Aと第3円弧部142Cとの間に位置する。第2円弧部142Bは、中心軸線Jに対して約3/4周だけ円弧状に延びる。第2円弧部142Bの一端には、第1連結部143Aが接続される。また、第2円弧部142Bの他端には、第3連結部143Cが接続される。第2円弧部142Bは、全長に亘って幅寸法が一様である。したがって、第2円弧部142Bは、全長に亘って流路断面積が一様である。
【0066】
第3円弧部142Cは、第2円弧部142Bの径方向外側に位置する。第3円弧部142Cは、径方向において、第2円弧部142Bと外周流路部141との間に位置する。第3円弧部142Cは、中心軸線Jに対して約3/4周だけ円弧状に延びる。第3円弧部142Cの一端には、第2連結部143Bが接続される。また、第3円弧部142Cの他端には、流入口140aが設けられる。第3円弧部142Cは、全長に亘って幅寸法が一様である。したがって、第3円弧部142Cは、全長に亘って流路断面積が一様である。
【0067】
第2円弧部142Bの幅寸法D2は、第1円弧部142Aの幅寸法D1よりも小さい(D2<D1)。また、第3円弧部142Cの幅寸法D3は、第2円弧部142Bの幅寸法D2よりも小さい(D3<D2)。すなわち、複数の円弧部142A、142B、142Cのうち、他の円弧部よりも径方向外側に位置する円弧部は、他の円弧部よりも径方向寸法が小さい(D3<D2<D1)。さらに、外周流路部141の幅寸法D4は、内周流路部142の何れの位置の幅寸法よりも大きい(D4>D1、D4>D2、D4>D3)。すなわち、外周流路部141の幅寸法D4は、内周流路部142の幅寸法D1、D2、D3よりも大きい。
【0068】
第1連結部143Aは、第1円弧部142Aの一端と第2円弧部142Bの一端とを繋ぐ。本実施形態において、第1円弧部142Aの一端と第2円弧部142Bの一端とは、径方向に並んで配置される。第1連結部143Aは、ヘアピン状に折り返すように第1円弧部142Aと第2円弧部142Bとを繋ぐ。第1連結部143Aは、第1円弧部142A側の端部から第2円弧部142B側の端部に向かって徐々に幅寸法を小さくする。
【0069】
第1連結部143Aは、互いに対向する内コーナ面144と外コーナ面145とを有する。内コーナ面144は、中心点C1を中心とする半円状の円弧面である。また、外コーナ面145は、中心点C2を中心とする半円状の円弧面である。内コーナ面144の曲率半径は、外コーナ面145の曲率半径よりも小さい。また、内コーナ面144の中心点C1と、外コーナ面145の中心点C2とは、互いに異なる位置に配置される。すなわち、内コーナ面144と外コーナ面145とは、それぞれ異なる中心を有する円弧面である。これにより、第1連結部143Aは、幅寸法が互いに異なる第1円弧部142Aと第2円弧部142Bとを滑らかに繋ぐ。
【0070】
第2連結部143Bは、第1円弧部142Aの他端と第3円弧部142Cの一端とを繋ぐ。第2連結部143Bは、ヘアピン状に折り返すように第1円弧部142Aと第3円弧部142Cとを繋ぐ。第2連結部143Bは、第1連結部143Aよりも大きな曲率半径で第1連結部143Aに沿って延びる。第2連結部143Bは、第1円弧部142A側の端部から第3円弧部142C側の端部に向かって徐々に幅寸法を小さくする。第2連結部143Bは、第1連結部143Aと同様の内コーナ面と外コーナ面とを有することで、第1円弧部142Aと第3円弧部142Cとを滑らかに繋ぐ。
【0071】
第3連結部143Cは、第2円弧部142Bの他端と外周流路部141の一端とを繋ぐ。第3連結部143Cは、ヘアピン状に折り返すように第2円弧部142Bと外周流路部141とを繋ぐ。第3連結部143Cは、第2連結部143Bよりも大きな曲率半径で第2連結部143Bに沿って延びる。第3連結部143Cは、第2円弧部142B側の端部から外周流路部141側の端部に向かって徐々に幅寸法を大きくする。第3連結部143Cは、第1連結部143Aと同様の内コーナ面と外コーナ面とを有することで、第2円弧部142Bと外周流路部141とを滑らかに繋ぐ。
【0072】
壁部150は、第1円弧壁150Aと第2円弧壁150Bと第3円弧壁150Cとを有する。第1円弧壁150A、第2円弧壁150B、および第3円弧壁150Cは、中心軸線Jを中心として円弧状に延びる。また、第1円弧壁150A、第2円弧壁150B、および第3円弧壁150Cは、中心軸線Jを中心として同心円状に配置される。
【0073】
第1円弧壁150Aは、中心軸線Jに対して約3/4周だけ円弧状に延びる。第1円弧壁150Aは、径方向において第1円弧部142Aと第2円弧部142Bとの間に位置しこれらを画定する。第1円弧壁150Aは、全長に亘って径方向寸法が一様である。
【0074】
第2円弧壁150Bは、中心軸線Jに対して約3/4周だけ円弧状に延びる。第2円弧壁150Bは、径方向において第2円弧部142Bと第3円弧部142Cとの間に位置しこれらを画定する。第2円弧壁150Bは、全長に亘って径方向寸法が一様である。
【0075】
第3円弧壁150Cは、中心軸線Jに対して約3/4周だけ円弧状に延びる。第3円弧壁150Cは、径方向において第3円弧部142Cと外周流路部141との間に位置しこれらを画定する。第3円弧壁150Cは、全長に亘って径方向寸法が一様である。
【0076】
第2円弧壁150Bの径方向寸法E2は、第1円弧壁150Aの径方向寸法E1よりも小さい(E2<E1)。また、第3円弧壁150Cの径方向寸法E3は、第2円弧壁150Bの径方向寸法E2よりも小さい(E3<E2)。すなわち、複数の円弧壁150A、150B、150Cのうち、他の円弧壁よりも径方向外側に位置する円弧壁は、他の円弧壁よりも径方向寸法が小さい(E3<E2<E1)。
【0077】
このような冷媒流路140においても、上記実施形態と同様、第一流路部140Nと、第二流路部140Wと、を有するようにしてもよい。これにより、貫通孔80の周囲で、流路断面積が狭められる。したがって、冷媒流路140における冷媒の流速は、流路断面積が大きい第二流路部140Wに対し、流路断面積が小さい第一流路部140Nで大きくなり、1第一流路部40Nにおける冷却性が高まる。その結果、均熱性が高い静電チャック装置1を提供することができる。
【0078】
また、本変形例のベース部103によれば、上述の実施形態と同様に、内周流路部142の流路断面積が中心軸線Jから離れるに従い小さくなることで、中心軸線Jから離れた領域での冷却能力を高め、静電チャック部2の載置面11aの均熱性を高めることができる。また、本変形例のベース部103によれば、上述の実施形態と同様に、外周流路部141の流路断面積が、内周流路部142の流路断面積よりも小さい。これにより、静電チャック部2を十分に冷却することができる。
【0079】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0080】
例えば、上述の実施形態、及び変形例では、内周流路部42,142の流路断面積が中心軸線Jから離れるに従い小さくなるようにし、外周流路部41,141の流路断面積が、内周流路部42,142の流路断面積よりも小さくなるようにしたが、これに限られない。例えば、外周流路部41,141と内周流路部42,142とで、流路断面積を一定とする場合であっても、貫通孔80の周囲において、上記で示したような構成を適用してもよい。
また、冷媒流路の流路断面が矩形状であり軸方向寸法が全長に亘って一様である場合について説明したが、冷媒流路の断面形状は上述の実施形態に限定されない。例えば、冷媒流路は、軸方向寸法を異ならせることで冷媒流路の流路断面積を変化させてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…静電チャック装置、2…静電チャック部、3,103…ベース部、3a…支持面、11a…載置面、13…静電吸着用電極、40,140…冷媒流路、40g,40h…内側面、40j,40k…接続面、40N…第一流路部、40W…第二流路部、40s…第一内側面、40t…第二内側面、50,150…壁部、80…貫通孔、80f…孔内周面、J…中心軸線、T…厚さ、W…板状試料、Wn…幅寸法、Ww…幅寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6