(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152257
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】X線管装置及びX線CT装置
(51)【国際特許分類】
H01J 35/00 20060101AFI20241018BHJP
H01J 35/10 20060101ALI20241018BHJP
H05G 1/02 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01J35/00 A
H01J35/10
H05G1/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066336
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】園田 蓮
(72)【発明者】
【氏名】田邊 雄太郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 公博
【テーマコード(参考)】
4C092
【Fターム(参考)】
4C092AA01
4C092AB12
4C092AC17
4C092BD17
4C092BD18
4C092CC04
4C092CC07
4C092CE20
(57)【要約】
【課題】X線窓とともにステータコイルの冷却効率を向上させることが可能なX線管装置とそれを備えるX線CT装置を提供する。
【解決手段】電子線を発生する陰極と、前記電子線の衝突によりX線を放射する陽極とを真空中で保持する外囲器と、前記X線を透過するX線窓とを有するX線管と、前記陽極を回転させる駆動力を発生するステータコイルと、前記X線管と前記ステータコイルを絶縁油とともに収納する管容器と、前記絶縁油を冷却する冷却器を備えるX線管装置であって、前記管容器と前記冷却器をつなぐ配管に接続され、前記X線窓の近傍に配置される第一流入口と、前記配管に接続され、前記ステータコイルの近傍に配置される第二流入口と、前記X線が照射されるとき前記第一流入口を通じて前記管容器へ前記絶縁油を流入させ、前記X線が照射されないとき前記第二流入口を通じて前記管容器へ前記絶縁油を流入させる制御部をさらに備えることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線を発生する陰極と、前記電子線の衝突によりX線を放射する陽極とを真空中で保持する外囲器と、前記X線を透過するX線窓とを有するX線管と、
前記陽極を回転させる駆動力を発生するステータコイルと、
前記X線管と前記ステータコイルを絶縁油とともに収納する管容器と、
前記絶縁油を冷却する冷却器を備えるX線管装置であって、
前記管容器と前記冷却器をつなぐ配管に接続され、前記X線窓の近傍に配置される第一流入口と、
前記配管に接続され、前記ステータコイルの近傍に配置される第二流入口と、
前記X線が照射されるとき前記第一流入口を通じて前記管容器へ前記絶縁油を流入させ、前記X線が照射されないとき前記第二流入口を通じて前記管容器へ前記絶縁油を流入させる制御部をさらに備えることを特徴とするX線管装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線管装置であって、
前記制御部は、前記X線が照射されるとき前記第二流入口を通じて前記管容器から前記絶縁油を流出させ、前記X線が照射されないとき前記第一流入口を通じて前記管容器から前記絶縁油を流出させることを特徴とするX線管装置。
【請求項3】
請求項2に記載のX線管装置であって、
前記冷却器は、前記絶縁油の熱を放散するラジエータと、前記絶縁油を送液するポンプと、前記第一流入口に接続される配管と前記ポンプをつなぐ第一流路と、前記第二流入口に接続される配管と前記ポンプをつなぐ第二流路と、前記第一流入口に接続される配管と前記ラジエータをつなぐ第三流路と、前記第二流入口に接続される配管と前記ラジエータをつなぐ第四流路と、前記第一流路に設けられる第一弁と、前記第二流路に設けられる第二弁と、前記第三流路に設けられる第三弁と、前記第四流路に設けられる第四弁を有し、
前記制御部は、前記X線が照射されるときに前記第二弁と前記第三弁を閉じて前記第一弁と前記第四弁を開き、前記X線が照射されないときに前記第一弁と前記第四弁を閉じて前記第二弁と前記第三弁を開くことを特徴とするX線管装置。
【請求項4】
請求項2に記載のX線管装置であって、
前記冷却器は、前記絶縁油の熱を放散するラジエータと、前記絶縁油を送液するギアポンプを有し、
前記制御部は、前記X線が照射されるときと照射されないときとで前記ギアポンプを反転させることを特徴とするX線管装置。
【請求項5】
請求項4に記載のX線管装置であって、
前記冷却器は、前記ギアポンプを回避するバイパスと、前記バイパスに設けられるバイパス弁をさらに有し、
前記制御部は、前記ギアポンプを反転させるときに、前記バイパス弁を開くことを特徴とするX線管装置。
【請求項6】
請求項1に記載のX線管装置であって、
前記制御部は、前記X線が照射されるとき前記第二流入口からも前記管容器へ前記絶縁油を流入させ、前記X線が照射されないとき前記第一流入口からも前記管容器へ前記絶縁油を流入させることを特徴とするX線管装置。
【請求項7】
被検体の断層画像を生成するX線CT装置であって、
請求項1に記載のX線管装置を備えることを特徴とするX線CT装置。
【請求項8】
請求項7に記載のX線CT装置であって、
停止指示または前記X線が照射されているか否かを前記制御部に送信することを特徴とするX線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線管装置及びX線CT(Computed Tomography)装置に係り、特にX線管装置の冷却に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、被検体にX線を照射するX線管装置と被検体を透過したX線を検出するX線検出器とを被検体の周囲で回転させることで多方向から得られる投影データを用いて、被検体の断層画像を生成する。生成された断層画像は、被検体の中の臓器形状を描写し、画像診断に使用される。
【0003】
X線管装置は、真空中に陰極と陽極を保持するX線管と、X線管を絶縁油とともに収納する管容器とを備え、陰極から放出され、陰極と陽極の間に印加される高電圧で加速された電子線を陽極上のX線焦点に衝突させることにより、X線焦点からX線を放射させる。陽極に衝突する電子線のエネルギーの約99%は熱に変換されるため、X線管装置の冷却、特にX線焦点の近傍に設けられ、X線を透過するX線窓の冷却は重要である。
【0004】
特許文献1には、冷却器によって冷却された絶縁油をX線窓に向けて流すとともに、X線窓への方向とは逆方向にも絶縁油の一部を流すように構成されるX線管装置が開示されている。このような構成により、局部的に加熱されるX線窓が冷却されるとともに、X線管装置の中を流れる絶縁油の澱みが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1では、X線管装置の陽極の回転駆動力を発生させるステータコイルの冷却に対する配慮が不十分である。X線管装置では陽極の熱容量の増加が要求されており、熱容量の増加に応じて陽極は重量化する。陽極の重量化にともなって、陽極の回転駆動力を増やす必要があるので、ステータコイルで生じる熱が増加する。
【0007】
そこで本発明は、X線窓とともにステータコイルの冷却効率を向上させることが可能なX線管装置とそれを備えるX線CT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、電子線を発生する陰極と、前記電子線の衝突によりX線を放射する陽極とを真空中で保持する外囲器と、前記X線を透過するX線窓とを有するX線管と、前記陽極を回転させる駆動力を発生するステータコイルと、前記X線管と前記ステータコイルを絶縁油とともに収納する管容器と、前記絶縁油を冷却する冷却器を備えるX線管装置であって、前記管容器と前記冷却器をつなぐ配管に接続され、前記X線窓の近傍に配置される第一流入口と、前記配管に接続され、前記ステータコイルの近傍に配置される第二流入口と、前記X線が照射されるとき前記第一流入口を通じて前記管容器へ前記絶縁油を流入させ、前記X線が照射されないとき前記第二流入口を通じて前記管容器へ前記絶縁油を流入させる制御部をさらに備えることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、被検体の断層画像を生成するX線CT装置であって、前記X線管装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、X線窓とともにステータコイルの冷却効率を向上させることが可能なX線管装置とそれを備えるX線CT装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】X線管装置の全体構成の一例を示す図である。
【
図3】絶縁油の流出入口の一例について説明する図である。
【
図4】絶縁油の流れを反転させる冷却器の一例を示す図である。
【
図5】絶縁油の流れを反転させる処理の流れの一例を示す図である。
【
図6】絶縁油の流れを反転させる冷却器の他の例を示す図である。
【
図7】絶縁油の流入口と流出口の一例について説明する図である。
【
図8】絶縁油の流入を切り替える冷却器の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に従って本発明に係るX線管装置及びX線CT装置の好ましい実施形態について説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することにする。
【0013】
図1を用いてX線CT装置1の全体構成の一例について説明する。X線CT装置1は、スキャンガントリ部100と操作ユニット120を備える。
スキャンガントリ部100は、X線管装置101、回転円盤102、コリメータ103、X線検出器106、データ収集装置107、寝台装置105、ガントリ制御装置108、寝台制御装置109、X線制御装置110を備える。X線管装置101は寝台装置105に載置された被検体10にX線を照射する装置である。コリメータ103はX線の照射範囲を制限する装置である。回転円盤102は、寝台装置105に載置された被検体10が入る開口部104を備えるとともに、X線管装置101とX線検出器106を搭載し、X線管装置101とX線検出器106を被検体10の周囲で回転させる。
【0014】
X線検出器106は、X線管装置101と対向配置され、被検体10を透過したX線を検出することにより透過X線の空間的な分布を計測する装置である。X線検出器106の検出素子は、回転円盤102の回転方向と回転軸方向との2次元に配列される。データ収集装置107は、X線検出器106で検出されたX線量をデジタルデータとして収集する装置である。ガントリ制御装置108は回転円盤102の回転及び傾斜を制御する装置であり、具体的にはMPU(Micro Processing Unit)等である。
【0015】
寝台制御装置109は、寝台装置105の上下前後左右動を制御する装置であり、具体的にはMPU等である。X線制御装置110は、X線管装置101に入力される電力を制御する装置であり、具体的にはMPU等である。
【0016】
操作ユニット120は、入力装置121、画像処理装置122、表示装置125、記憶装置123、システム制御装置124を備える。入力装置121は、被検体10の氏名、検査日時、撮影条件等を入力するための装置であり、具体的にはキーボードやポインティングデバイス、タッチパネル等である。画像処理装置122は、データ収集装置107から送出される計測データを演算処理してCT画像を再構成したり、CT画像に様々な画像処理をしたりする装置である。表示装置125は、画像処理装置122で生成されたCT画像等を表示する装置であり、具体的には液晶ディスプレイやタッチパネル等である。記憶装置123は、データ収集装置107で収集されたデータや画像処理装置122で生成されたCT画像等を記憶する装置であり、具体的にはHDD(Hard Disk Drive)等である。システム制御装置124は、各部を制御する装置であり、具体的にはMPU等である。
【0017】
入力装置121から入力された撮影条件、特にX線管電圧やX線管電流などに基づきX線制御装置110がX線管装置101に入力される電力を制御することにより、X線管装置101は撮影条件に応じたX線を被検体10に照射する。X線検出器106は、X線管装置101から照射され被検体10を透過したX線を、二次元配列された検出素子で検出し、透過X線の分布を計測する。回転円盤102はガントリ制御装置108により制御され、入力装置121から入力された撮影条件、特に回転速度等に基づいて回転する。寝台装置105は寝台制御装置109によって制御され、入力装置121から入力された撮影条件、特にらせんピッチ等に基づいて動作する。
【0018】
X線管装置101からのX線照射とX線検出器106によるX線計測が回転円盤102の回転とともに繰り返されることにより、様々な角度からの投影データが取得され、取得された投影データは画像処理装置122に送信される。画像処理装置122は送信された様々な角度からの投影データを逆投影処理することによりCT画像を再構成する。再構成されたCT画像は表示装置125に表示される。
【0019】
図2を用いて、X線管装置101の全体構成の一例について説明する。X線管装置101は、X線管210とステータコイル214と管容器220と冷却器230を備える。
【0020】
X線管210は、陰極211と陽極212と外囲器213とX線窓218を有する。
【0021】
陰極211は電子線216を発生するものであり、例えばフィラメントもしくは冷陰極と、集束電極を備える。フィラメントはタングステンなどの高融点材料をコイル状に巻いたものであり、電流が流されることにより加熱され、電子を放出する。冷陰極はニッケルやモリブデンなどの金属材料を鋭利に尖らせたもので、陰極表面に電界が集中することで電界放出により電子を放出する。集束電極は、放出された電子を陽極212上のX線焦点へ向けて集束させるための集束電界を形成する。フィラメントもしくは冷陰極と、集束電極とは同電位である。
【0022】
陽極212は陰極211に対し正の電位が印加されるものであり、例えば円板形状であって、ターゲットと陽極母材とを備える。ターゲットは高融点で原子番号の大きい材質、例えばタングステンなどで構成される。陽極母材は、銅などの熱伝導率の高い材質からなり、ターゲットを保持する。ターゲットと陽極母材とは同電位である。陰極211から放出され、陰極211と陽極212との電位差によって加速された電子線216がターゲット上のX線焦点に衝突することにより、X線焦点からX線が放射される。
【0023】
外囲器213は陰極211と陽極212の間を電気的に絶縁するために、陰極211と陽極212を真空中に保持するものである。外囲器213の電位は接地電位である。
【0024】
X線窓218は、X線焦点から放射されるX線217を透過するためのものであり、ベリリウムなどの原子番号の小さい材質で構成される。なお、X線窓218には陽極212から放出される電子が衝突するので、X線窓218とその周辺は高温になりやすい。
【0025】
ステータコイル214は、陽極212を回転させる駆動力となる磁界を発生するものである。陽極212に衝突する電子線216のエネルギーの内、X線に変換される割合は1%程度に過ぎず、残りのほとんどのエネルギーは熱となる。そこで、ステータコイル214が発生する磁界によって陽極212を回転させることにより、陽極212の過熱溶融を防止する。すなわち、陽極212の回転によって、電子線216が衝突する箇所であるX線焦点を常に移動させることにより、X線焦点の温度がターゲットの融点より低く保たれる。なお陽極212は、回転軸受215によって回転可能に支持される。
【0026】
管容器220は、X線管210とステータコイル214を、X線管210を電気的に絶縁する絶縁油とともに収納するものである。絶縁油は、冷却媒体としても機能し、管容器220と冷却器230をつなぐ配管219を通じて、管容器220と冷却器230を循環する。また管容器220には、X線217を放射する放射窓221が設けられる。放射窓221は、X線窓218と同様に、例えばベリリウムなどの原子番号の小さい材質で構成される。
【0027】
冷却器230は、絶縁油を冷却する装置である。冷却器230は、配管219によって管容器220とつなげられる。
【0028】
X線管装置101において、電子線216が衝突するX線焦点は最大の熱源であり、X線焦点の近傍に設けられるX線窓218の冷却は重要である。また陽極212を回転させる駆動力を発生するステータコイル214も熱源であるので、ステータコイル214の冷却も重要である。なお熱容量が比較的小さいX線窓218は、陽極212上のX線焦点に電子線216が衝突するとき、すなわちX線照射時の冷却でも十分であるのに対し、熱容量が比較的大きいステータコイル214はできるだけ長い時間をかけて冷却することが好ましい。
【0029】
そこで、本発明のX線管装置では、冷却器230によって冷却された絶縁油を、X線照射時にはX線窓218の近傍に流入させ、X線非照射時にはステータコイル214の近傍に流入させるような制御がなされる。このような制御により、X線窓218とともにステータコイル214の冷却効率を向上させることができる。なおステータコイル214の周辺は、陽極212上のX線焦点で発生する熱量が流れる経路であるため、ステータコイル214の冷却によって、陽極212も円滑に冷却できる。
【0030】
図3を用いて、絶縁油の流出入口の一例について説明する。第一流出入口301は、X線窓218の近傍に配置され、配管219に接続される。第二流出入口302は、ステータコイル214の近傍に配置され、配管219に接続される。X線が照射されるとき、冷却器230で冷却された絶縁油は、第一流出入口301を通じて管容器220へ流入し、第二流出入口302を通じて管容器220から流出する。またX線が照射されないとき、冷却器230で冷却された絶縁油は、第二流出入口302を通じて管容器220へ流入し、第一流出入口301を通じて管容器220から流出する。すなわち、第一流出入口301と第二流出入口302は、絶縁油の流入口と流出口を兼用するので、部品点数を増やさずに済む。またX線が照射されるときと照射されないときとで絶縁油の流れは反転する。
【0031】
図4を用いて、絶縁油の流れを反転させる冷却器230の一例について説明する。
図4の冷却器230は、ラジエータ401とポンプ402と4本の流路411~414と4つの弁V1~V4を有する。ラジエータ401は絶縁油の熱を放散する装置であり、例えば配管に設けられる複数のフィンと、フィンに風を送るファンで構成される。ポンプ402は放熱した絶縁油を管容器220へ送液する装置であり、例えば円弧矢印が示す方向に絶縁油を送液する。
【0032】
第一流路411は、第一流出入口301に接続される配管219とポンプ402とをつなぎ、第二流路412は、第二流出入口302に接続される配管219とポンプ402とをつなぐ。すなわち、ポンプ402からの流路は、第一流路411と第二流路412に分岐する。第三流路413は、第一流出入口301に接続される配管219とラジエータ401とをつなぎ、第四流路414は、第二流出入口302に接続される配管219とラジエータ401とをつなぐ。すなわち、ラジエータ401からの流路は、第三流路413と第四流路414に分岐する。また第一流出入口301からの流路は、第一流路411と第三流路413に分岐し、第二流出入口302からの流路は、第二流路412と第四流路414に分岐する。
【0033】
第一弁V1~第四弁V4のそれぞれは、第一流路411~第四流路414の各流路に設けられ、制御部400によって開閉される。制御部400はMPU等で構成される。
【0034】
図5を用いて、
図4の冷却器230によって絶縁油の流れを反転させる処理の流れの一例についてステップ毎に説明する。
【0035】
(S501)
制御部400は、停止指示の有無を判定する。停止指示が有れば処理の流れは終了となり、無ければS502へ処理が進められる。例えばX線CT装置1のシステム制御装置124が、停止指示を制御部400へ送信する。
【0036】
(S502)
制御部400は、X線が照射されているか否かを判定する。X線が照射されていればS503へ処理が進められ、X線が照射されてなければS504へ処理が進められる。例えばX線CT装置1のシステム制御装置124またはX線制御装置110が、X線が照射されているか否かを示す信号を制御部400へ送信する。
【0037】
(S503)
制御部400は、第二弁V2と第三弁V3を閉じ、第一弁V1と第四弁V4を開く。このように各弁を開閉することにより、ラジエータ401で冷却されポンプ402から送液される絶縁油は、第一流路411を通じて第一流出入口301から管容器220の中へ流入する。そしてX線窓218を冷却し管容器220の中を巡った絶縁油は、第二流出入口302から管容器220の外へ流出し第四流路414を通じてラジエータ401へ戻る。
【0038】
(S504)
制御部400は、第一弁V1と第四弁V4を閉じ、第二弁V2と第三弁V3を開く。このように各弁を開閉することにより、ラジエータ401で冷却されポンプ402から送液される絶縁油は、第二流路412を通じて第二流出入口302から管容器220の中へ流入する。そしてステータコイル214を冷却し管容器220の中を巡った絶縁油は、第一流出入口301から管容器220の外へ流出し第三流路413を通じてラジエータ401へ戻る。
【0039】
図5を用いて説明した処理の流れにより、冷却器230によって冷却された絶縁油が、X線の照射時には第一流出入口301から管容器220の中へ流入してX線窓218を冷却し、非照射時には第二流出入口302から流入してステータコイル214を冷却する。すなわち、X線窓218とともにステータコイル214の冷却効率を向上させることができる。また管容器220の中の絶縁油の流れは反転するものの、ポンプ402にかかる圧力は変わらないので故障が生じにくい。
【0040】
なお、S502での判定は、X線が照射されているか否かに限られない。X線CT装置1では、回転円盤102が回転を開始し、一定の回転速度に達してからX線が照射されるので、S502では回転円盤102が回転しているか否かが判定されても良い。S502において回転円盤102の回転の有無を判定することにより、制御部400へ送信される信号にタイムラグが生じる場合であっても、X線が照射されているときは必ずX線窓218が冷却される。
【0041】
図6を用いて、絶縁油の流れを反転させる冷却器230の他の例について説明する。
図6の冷却器230は、ラジエータ401とギアポンプ601とバイパス602とバイパス弁VBを有する。なおラジエータ401は
図4と同じものであり、バイパス602とバイパス弁VBは無くても良い。
【0042】
ギアポンプ601は、絶縁油を送液する装置であり、かみ合わせられる二つの歯車が回転する方向によって絶縁油の送液方向を
図6中の上方向にも下方向にも切り替えることができる。すなわち、X線照射の有無に応じて制御部400がギアポンプ601の歯車の回転方向を切り替えることにより、絶縁油の流れを反転させることができる。
【0043】
バイパス602は、ギアポンプ601を回避する流路である。バイパス弁VBは、バイパス602に設けられ、制御部400によって開閉される。ギアポンプ601によって絶縁油の流れが反転するとき、流路内に生じる衝撃によってギアポンプ601や流路が破損することが有る。そこで絶縁油の流れを反転させるときに制御部400がバイパス弁VBを開くことにより、反転時の衝撃がバイパス602を通じて解放され、ギアポンプ601や流路の破損を防止できる。なお絶縁油の流れを反転させてから所定時間以上が経過すると制御部400はバイパス弁VBを閉じる。所定時間には、絶縁油の流れを反転させてから流路内の流れが安定するまでに要する時間が設定される。
【0044】
図6に例示される冷却器230により、X線の照射時には第一流出入口301から管容器220の中へ絶縁油を流入してX線窓218を冷却し、非照射時には第二流出入口302から絶縁油を流入してステータコイル214を冷却することができる。すなわち、X線窓218とともにステータコイル214の冷却効率を向上させることができる。また
図6の冷却器230は、
図4に比べて簡易な構造にできる。なおX線窓218とステータコイル214の冷却効率を向上させるには、絶縁油の流れを反転させなくても良い。
【0045】
図7を用いて、絶縁油の流れを反転させない場合の流入口と流出口の一例について説明する。第一流入口701は、X線窓218の近傍に配置され、冷却器230から絶縁油が送液される配管219に接続される。第二流出入口302は、ステータコイル214の近傍に配置され、冷却器230から絶縁油が送液される配管219に接続される。流出口703は、管容器220の中に配置され、冷却器230へ絶縁油が戻される配管219に接続される。
【0046】
X線が照射されるとき、冷却器230で冷却された絶縁油は、第一流入口701を通じて管容器220へ流入し、流出口703を通じて管容器220から冷却器230へ戻される。またX線が照射されないとき、冷却器230で冷却された絶縁油は、第二流入口702を通じて管容器220へ流入し、流出口703を通じて管容器220から冷却器230へ戻される。すなわちX線が照射されるときと照射されないときとで絶縁油の流入口が切り替えられる。
【0047】
図8を用いて、絶縁油の流入口を切り替える冷却器230の一例について説明する。
図8の冷却器230は、ラジエータ401、ポンプ402、第一流路411、第二流路412、第五流路800、第一弁V1、第二弁V2を有する。ラジエータ401とポンプ402は
図4と同じものである。
【0048】
第一流路411は、第一流入口701に接続される配管219とポンプ402とをつなぎ、第一弁V1を有する。第二流路412は、第二流入口702に接続される配管219とポンプ402とをつなぎ、第二弁V2を有する。なおポンプ402からの流路は、第一流路411と第二流路412に分岐する。第五流路800は、流出口703に接続される配管219とラジエータ401をつなぐ。
【0049】
第一弁V1と第二弁V2の開閉は制御部400によって制御される。具体的には、X線の照射時には第一弁V1が開かれて第二弁V2が閉じられ、X線の非照射時には第一弁V1が閉じられて第二弁V2が開かれる。このような制御により、冷却器230によって冷却された絶縁油は、X線の照射時に第一流入口701から流入してX線窓218を冷却し、非照射時には第二流出入口302から流入してステータコイル214を冷却する。すなわち、X線窓218とステータコイル214の冷却効率を向上させることができる。
【0050】
なお、
図8の冷却器では、第一弁V1と第二弁V2は閉じられなくても良い。例えば、X線の照射時に第一弁V1が開かれて第二弁V2がわずかに開かれ、X線の非照射時に第二弁V2が開かれて第一弁V1がわずかに開かれても良い。第一弁V1と第二弁V2がわずかに、例えば5%程度の開き率で開かれることにより、X線窓218とステータコイル214の両方を常に冷却することができる。また第一弁V1と第二弁V2の開き率は、X線窓218とステータコイル214の温度に基づいて制御されても良い。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせても良い。さらに、上記実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除しても良い。
【符号の説明】
【0052】
1:X線CT装置、10:被検体、100:スキャンガントリ部、101:X線管装置、102:回転円盤、103:コリメータ、104:開口部、105:寝台装置、106:X線検出器、107:データ収集装置、108:ガントリ制御装置、109:寝台制御装置、110:X線制御装置、120:操作ユニット、121:入力装置、122:画像処理装置、123:記憶装置、124:システム制御装置、125:表示装置、210:X線管、211:陰極、212:陽極、213:外囲器、214:ステータコイル、215:回転軸受、216:電子線、217:X線、218:X線窓、219:配管、220:管容器、221:放射窓、230:冷却器、301:第一流出入口、302:第二流出入口、400:制御部、401:ラジエータ、402:ポンプ、411:第一流路、412:第二流路、413:第三流路、414:第四流路、601:ギアポンプ、602:バイパス、701:第一流入口、702:第二流入口、703:流出口、800:第五流路、V1:第一弁、V2:第二弁、V3:第三弁、V4:第四弁、VB:バイパス弁