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特開2024-152267イオン源、円形加速器、及び粒子線治療システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152267
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】イオン源、円形加速器、及び粒子線治療システム
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/08 20060101AFI20241018BHJP
   H05H 13/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61N 5/10 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01J37/08
H05H13/00
A61N5/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066354
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】岩田 健
(72)【発明者】
【氏名】関 孝義
(72)【発明者】
【氏名】浅野 英仁
【テーマコード(参考)】
2G085
4C082
5C101
【Fターム(参考)】
2G085AA11
2G085BA02
2G085BC10
2G085BC13
2G085BE01
2G085BE06
2G085EA07
4C082AA01
4C082AC04
4C082AE01
5C101AA39
5C101BB07
5C101DD03
5C101DD17
5C101DD20
5C101EE28
(57)【要約】
【課題】冷却と放電室へのガス供給を小型な構成で両立することが可能なイオン源、円形加速器、及び粒子線治療システムを提供する。
【解決手段】陰極33と、陰極33を支持するとともに電圧を印加供給する陰極支持具35と、陰極支持具35を冷却する冷却管24,25と、放電室36にガスを供給するガス供給流路22,22A,22B,22C,22Dと、を備え、ガス供給流路22,22A,22B,22C,22Dの流路内周側に冷却管24,25が配置される。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極と、
前記陰極を支持するとともに電圧を印加供給する陰極支持具と、
前記陰極支持具を冷却する冷却流路と、
放電室にガスを供給するガス供給流路と、を備え、
前記ガス供給流路の流路内周側に前記冷却流路が配置される
イオン源。
【請求項2】
請求項1に記載のイオン源において、
前記冷却流路及び前記ガス供給流路は、三重構造の管で一体化している
イオン源。
【請求項3】
請求項2に記載のイオン源において、
前記冷却流路及び前記ガス供給流路は軸が共通している
イオン源。
【請求項4】
請求項2に記載のイオン源において、
前記冷却流路の中心軸は、前記ガス供給流路の中心軸に対してずれて配置されている
イオン源。
【請求項5】
請求項1に記載のイオン源において、
前記ガス供給流路の出口であるガス供給孔の断面積が、前記ガス供給流路の断面積より小さい
イオン源。
【請求項6】
請求項1に記載のイオン源において、
前記ガス供給流路の出口であるガス供給孔が、生成されたイオンを前記イオン源から引き出す引き出し孔の鉛直方向上方側あるいは下方側に配置されている
イオン源。
【請求項7】
請求項2に記載のイオン源において、
前記ガス供給流路は、最外周の管内に設けられた配管を更に有する
イオン源。
【請求項8】
請求項1に記載のイオン源において、
前記冷却流路は、冷媒の供給側が内周側、戻り側が外周側となっている
イオン源。
【請求項9】
対向する磁極と、
加速電極と、
対向する前記磁極の間に設置されており、周回するイオンビームの中心軸に平行に配置された請求項1乃至8のいずれか1項に記載のイオン源と、を備えた
円形加速器。
【請求項10】
請求項9に記載の円形加速器と、
ビーム輸送系と、
照射装置と、
治療台と、を備えた
粒子線治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円形加速器に好適に使用されるイオン源、更には円形加速器や粒子線治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、筒状の陽極と、陽極内空間で構成される放電室と、放電室の両端側に配置された2つの陰極と、放電室から外部にイオンを取り出すべく陽極に形成されたイオン取り出し口とを有するサイクロトロン用内部負イオン源において、放電室からイオン取り出し口に至る間の陽極壁部に、低電子温度領域用凹部が形成されている、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3426406号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
イオン源は内部でプラズマを生成し、生成したプラズマの一部を引き出し口から荷電ビームとして引き出す装置であり、例えば陽子線によるがん治療や素粒子物理研究等で用いられる加速器で使用されている。
【0005】
イオン源では、放電室を冷却する水冷管と、取り出されるイオンの原料となる試料ガスを供給する管が外部の供給源から接続されている。特許文献1には、このようなサイクロトロン用イオン源の一例が記載されている。
【0006】
加速器のイオン源における水冷管やガス管の接続では、高周波加速電極の平面と垂直方向から挿入する際に磁極に穴をあける必要があるが、そのような穴は極力小さくすることが望まれる。また、荷電部と周囲の磁極との間で放電が発生しないように絶縁する必要がある。
【0007】
しかし、特許文献1では、水冷管とガス供給管が独立して配置しているため、配管をまとめる際にイオン源の直径が大きくなること、各々絶縁距離が必要になるため磁極の穴が大きくなって加速器の製作性が悪化するとともに小型化が困難であるという課題があった。
【0008】
本発明の目的は、冷却と放電室へのガス供給を小型な構成で両立することが可能なイオン源、円形加速器、及び粒子線治療システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、陰極と、前記陰極を支持するとともに電圧を印加供給する陰極支持具と、前記陰極支持具を冷却する冷却流路と、放電室にガスを供給するガス供給流路と、を備え、前記ガス供給流路の流路内周側に前記冷却流路が配置される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、冷却と放電室へのガス供給を小型な構成で両立することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の円形加速器を用いた粒子線治療システムの全体構成を示す図である。
図2図1に示す円形加速器の側面断面を示す図である。
図3図1に示す円形加速器の横断面を示す図である。
図4】実施例のイオン源周りの側面の概略を示す図である。
図5】変形例1に係るイオン源周りの側面の概略を示す図である。
図6】変形例2に係るイオン源周りの側面の概略を示す図である。
図7】変形例3に係るイオン源周りの側面の概略を示す図である。
図8】変形例4に係るイオン源周りの側面の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のイオン源、円形加速器、及び粒子線治療システムの実施例について図1乃至図8を用いて説明する。下記の実施例は一例に過ぎず、本発明は下記の具体的な態様に限定されるものではない。本発明自体は、下記の実施例以外にも種々の形態に変形させることが可能である。
【0013】
なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0014】
最初に、粒子線治療システムの全体構成及び関連する装置の構成について図1を用いて説明する。図1は、本実施例の粒子線治療システムの全体構成を示す図である。
【0015】
図1に示す粒子線治療システム100は、サイクロトロン型の円形加速器50、ビーム輸送系52、照射装置54、治療台40、及び制御装置56等を備える。
【0016】
粒子線治療システム100では、イオン源3で発生させたイオンを円形加速器50で加速してイオンビームとする。円形加速器50により所望のエネルギーまで加速されたイオンビームは円形加速器50から出射され、ビーム輸送系52により照射装置54まで輸送される。輸送されたイオンビームは照射装置54で患部形状に合致するように整形され、治療台40に横になった患者45の標的に対して所定量照射される。
【0017】
これら円形加速器50をはじめとした粒子線治療システム100内の各装置、機器の動作は、制御装置56によって制御される。
【0018】
次に円形加速器50の構造について図2及び図3を用いて説明する。図2は本実施例の加速器の側面の断面図で、図3は横断面図である。
【0019】
図2及び図3に示すように、サイクロトロン型の円形加速器50は、主磁極1、円環状コイル2、真空容器6、高周波加速電極8、イオン源3によって構成される。なおイオン源は後述する図4に示す形態に限られず、図5乃至図8のいずれかに示すイオン源3A,3B,3C,3Dのいずれかを採用することができる。
【0020】
主磁極1は互いに対向するように設置される一対の磁性体であり、例えば鉄などからなる。主磁極1には、ビームの周回軌道12を発生させるように向かい合うように上下一対の磁極10が対向するように設けられており、その磁極10の間に磁場を発生させる。
【0021】
例えば、磁極10によって図2に示すような磁場B0を発生させるとともに、磁極10の周回中心から外側に向かって傾斜磁場を形成することで周回するイオンビームの集束力を発生させ、安定周回を実現する。磁場B0を発生させる上下一対の磁極10の磁極ギャップ間の対向する各々の面の表面形状は対称形状である。あるいは、ビームの進行方向に凹凸を設けた磁極形状とすることで収束効果を付加する形の磁極とすることができる。
【0022】
真空容器6は、主磁極1によって挟まれており、磁極10を内面としてひとつの真空容器を形成するとともに、磁気回路を構成する。真空容器6は非磁性体である。なお、磁極10の間隙内に、磁極10を真空容器内面としない、分離された真空容器を別途設けてもかまわない。
【0023】
円環状コイル2は、真空容器6より大気側に設置されており、上下一対の主磁極1間にB0の磁場を発生させる。円環状コイル2は常電導材料によるコイルでも超電導材料によるコイルでも同様に磁場を発生可能である。なお、円環状コイル2は真空容器6内に設置してもよく、特に規定されるものではない。
【0024】
イオン源3は、磁極10の内部に配置されている。放電室36内の陰極33から引き出された電子により放電室36でプラズマが形成される。高周波電源20によって供給される高周波で、高周波加速電極8とイオン源3及びイオン源3と同電位となる接地電極9の間に高周波電場が発生する。当該高周波電場により、放電室36内で生成されたプラズマからイオンが引き出し孔37を通して取り出され、引き出しビーム15が形成される。
【0025】
形成された引き出しビーム15は磁極10が生成する磁場B0と高周波加速電極8と接地電極9の加速間隙7に発生する電場とによって、螺旋状の周回軌道12を描きながら周回運動して加速間隙7を通過するごとに加速され、エネルギーを増加させながら所定のエネルギーまで加速された後、主磁極1の外部へ取り出される。この時のビーム量を電流モニタ17により計測する。
【0026】
次に図4を用いて、イオン源3の詳細を説明する。図4図2のイオン源3の詳細を示した図で、イオン源3を磁極10で生成する磁場に平行な方向に配置した場合の図である。
【0027】
図4に示すイオン源3は、対向する磁極10の間に設置されており、周回するイオンビームの中心軸に平行にイオンを生成する放電室36が配置されたものである。
【0028】
より具体的には、イオン源3は、電子を生成する陰極33、この陰極33を支持するとともに陰極33に電圧を印加供給する陰極支持具35、陰極33と陽極の役割を果たす放電容器39との間に放電用の印加電圧を印加する放電用電源21、印加された電圧によりイオンを生成する放電室36、放電室36からイオンを引き出す引き出し孔37、放電容器39等で構成されるPIG(Penning Ionization Gauge)型のイオン源3である。
【0029】
イオン源3には、ガス供給源28から供給される試料ガスを放電室36に供給するガス供給流路22と、陰極支持具35及び陰極33を冷却するための冷却管24,25が更に設けられている。
【0030】
本実施例のイオン源3では、冷却管24,25及びガス供給流路22は、3本の配管の中心軸が共通である三重構造であり、かつ同軸構造となっており、最も中心は冷却水の供給側である冷却管24、中心から2番目の軸は冷却水の排出側である冷却管25、最外周の軸はガス供給流路22となる。
【0031】
冷却材供給源23から供給される冷媒、例えば冷却水を冷却管24に供給して陰極支持具35及びこの陰極支持具35を介して陰極33を冷却し、冷却に使用された冷媒を冷却管25を介して冷却材戻り部26に送る。
【0032】
なお、冷却管24,25は、冷媒の供給側の冷却管24が内周側、戻り側である冷却管25が外周側となっている場合に限られず、戻り側の冷却管が内周側で供給側の冷却管が外周側であってもよい。いずれの場合も、外周側の冷却管の外周にガス供給流路22が位置する。
【0033】
また、図4に示すように、ガス供給流路22の出口であるガス供給孔29の断面積が、ガス供給流路22の断面積より小さくなっている。
【0034】
更に、ガス供給孔29は、生成されたイオンをイオン源3から引き出す引き出し孔37の鉛直方向上方側に配置されている。なお、イオン源3が磁極10の鉛直方向上方から挿入されている形態のため、ガス供給孔29は、生成されたイオンをイオン源3から引き出す引き出し孔37の鉛直方向上方側に配置されている形態について示したが、イオン源3が磁極10の鉛直方向下方から挿入されている形態の場合は、ガス供給孔29は、引き出し孔37の鉛直方向下方側に配置されている形態とすることができる。
【0035】
イオン源3では、放電用電源21によって冷却管24,25と陰極支持具35を通して陰極33と接地電極9に電気的に接続された放電容器39との間に電圧を印加する。陰極33を放電容器39に対して負電位にすることで陰極33から電子が放電室36に向かって引き出される。
【0036】
冷却管24,25は高電圧になり、ガス供給流路22は接地になるため、冷却管24,25とガス供給流路22との間には絶縁スペーサ27を設け、冷却管24,25とガス供給流路22にギャップをつくることで、ガス供給流路22中で放電が発生しないようにしている。
【0037】
本実施例のような同軸構造では、高電圧側の冷却管24,25と接地側のガス供給流路22間の電場は均一になるため、絶縁距離を短くすることができ、イオン源3の配管系を小型化できる。
【0038】
イオン源3は主磁極1、磁極10を貫通するように孔を設けて主磁極1の上部より挿入される。ここで、主磁極1や磁極10に穴を設けることによって磁極10間に生成される磁場B0の分布が影響を受けて変化する。孔の直径が小さいほど磁場B0への影響は少なくなり、磁極10の形状や別途鉄片等を設置することで容易に補正が可能である。
【0039】
このため、同軸構造にすることで、主磁極1、磁極10にあける孔を小さくすることができ、加速器の設計を容易にすることができる。
【0040】
冷却管24,25とガス供給流路22とは導電性の材料で、ステンレスが好適であるが、特に限定するものではない。絶縁スペーサ27はアルミナやFRPなど電気絶縁性のものであればよく、特に限定するものではない。
【0041】
本実施例では冷却管24,25には冷媒として水を流している例を示したが、空冷や油冷などでも良く特に限定するものではない。
【0042】
以下、図5乃至図8を用いてイオン源の変形例について説明する。
【0043】
図5に変形例1に係るイオン源3Aを示す。図5に示すイオン源3Aでは、上記の図4に示したイオン源3からの変更点は、冷却管24,25の中心軸がガス供給流路22Aの中心軸と同軸ではなく、ずれて配置されている点である。
【0044】
図6に変形例2に係るイオン源3Bを示す。図6に示すイオン源3Bでは、上記の図4に示したイオン源3からの変更点は、ガス供給流路22Bから放電室36にガスを供給するガス供給孔29Bを引き出し孔37側のみに配置にしている点である。このようなイオン源3Bでは、放電室36に供給するガス量をより少量にできるため、プラズマが発生する放電室36に適切にガスを供給することができる。
【0045】
図7に変形例3に係るイオン源3Cを示す。図7に示すイオン源3Cでは、上記の図4に示したイオン源3からの変更点は、ガス供給流路22Cの内側に細径の絶縁性のガス配管30Cを配置し、引き出し孔37側から放電室36にガスを供給している点である。
【0046】
図8に変形例4に係るイオン源3Dを示す。図8に示すイオン源3Dでは、上記の図4に示したイオン源3からの変更点は、図5に示すイオン源3Aと同様に冷却管24,25の中心軸をガス供給流路22Dと同軸ではなく偏芯させるとともに、図7に示すイオン源3Cと同様にガス供給流路22Dの内側に細径の絶縁性のガス配管30Dを配置し、引き出し孔37側から放電室36にガスを供給している点である。
【0047】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0048】
上述した本実施例のイオン源3,3A,3B,3C,3Dは、陰極33と、陰極33を支持するとともに電圧を印加供給する陰極支持具35と、陰極支持具35を冷却する冷却管24,25と、放電室36にガスを供給するガス供給流路22,22A,22B,22C,22Dと、を備え、ガス供給流路22,22A,22B,22C,22Dの流路内周側に冷却管24,25が配置される、との構成によって、独立した配管をまとめるよりも冷却系や原料供給系の小型化を図りやすく、イオン源としての小型を図ることができる。
【0049】
また、ガス供給流路22,22A,22B,22C,22D及び冷却管24,25は、三重構造の管で一体化していることにより、単独の配管を配置するのと実質的に同じ構造となるため、小型化をより容易に実現することができる。
【0050】
また、冷却管24,25及びガス供給流路22,22Bは軸が共通しているため、独立した配管をまとめるよりも更に容易な構造とすることができることから、小型化をより容易に実現することができる。
【0051】
更に、冷却管24,25の中心軸は、ガス供給流路22A,22Dの中心軸に対してずれて配置されていることで、ガス供給量が少ない場合に、ガス供給流路22A内でガスが拡散して放電室36に届かなくなることを防ぐことができ、適切にガスを供給することができる。また、ガス流路の断面積が小さくなることで、主磁極1、磁極10を貫通する穴を小さくすることができ、更なるイオン源3A,3Dの小型化を図ることができる。
【0052】
また、ガス供給流路22,22A,22Bの出口であるガス供給孔29,29A,29Bの断面積が、ガス供給流路22,22A,22Bの断面積より小さいことにより、試料ガスが拡散されて放電室36に供給されることを抑制でき、過剰なガスの供給を行うことを避けることができる。
【0053】
更に、ガス供給孔29,29A,29B,29Dが、生成されたイオンをイオン源3,3A,3B,3C,3Dから引き出す引き出し孔37の鉛直方向上方側あるいは下方側に配置されていることで、放電室36に近い領域で試料ガスを供給でき、試料ガスをより効率的にイオン化させることができる。
【0054】
また、ガス供給流路22C,22Dは、最外周の管内に設けられたガス配管30C,30Dを更に有することにより、少量のガスでも放電室36にガスが供給されやすくなる。
【0055】
更に、冷却管24,25は、冷媒の供給側が内周側、戻り側が外周側となっていることで、一般的な構成の配管を用いることができ、製作性の向上も図ることができる。
【0056】
また、上述のようなイオン源3,3A,3B,3C,3Dを備えた円形加速器50や、そのような円形加速器50を備えた粒子線治療システム100は、イオン源3,3A,3B,3C,3Dの小型化により、円形加速器50や粒子線治療システム100としても小型化を図ることができる。
【0057】
<その他>
なお、本発明は上記の実施例に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【0058】
例えば、円形加速器50の型は、磁極10に凹凸を設けた磁極を有するサイクロトロン型の加速器に限らず、磁極10の中心から傾斜した磁極を有しており、高周波加速の周波数を変調するシンクロサイクロトロン型の加速器にも用いることができる。
【0059】
シンクロサイクロトロン型の加速器とは、サイクロトロンを改良した加速器の一種であり、大型磁極間で円運動する荷電粒子に周波数変調した高周波電場を加えて繰返し加速する。また、光速では加速された粒子の質量が相対論的効果によって増加し、磁場内の荷電粒子の円運動の周期は質量に比例して増加する。これによって起こる高周波電圧との周期のずれを、周波数を変調することによって取り除いているものである。
【0060】
シンクロサイクロトロン型の加速器も構成がサイクロトロン型の加速器と同様の構成であることからイオン源3,3A,3B,3C,3Dを主磁極1内に配置することができ、同様の効果が得られる。
【0061】
本発明のイオン源は以下の態様であってもよい。
【0062】
(1) 陰極と、前記陰極を支持するとともに電圧を印加供給する陰極支持具と、前記陰極支持具を冷却する冷却流路と、放電室にガスを供給するガス供給流路と、を備え、前記ガス供給流路の流路内周側に前記冷却流路が配置される。
【0063】
(2)(1)記載のイオン源において、前記冷却流路及び前記ガス供給流路は、三重構造の管で一体化している。
【0064】
(3)(1)または(2)記載のイオン源において、前記冷却流路及び前記ガス供給流路は軸が共通している。
【0065】
(4)(1)または(2)記載のイオン源において、前記冷却流路の中心軸は、前記ガス供給流路の中心軸に対してずれて配置されている。
【0066】
(5)(1)乃至(4)のいずれかに記載のイオン源において、前記ガス供給流路の出口であるガス供給孔の断面積が、前記ガス供給流路の断面積より小さい。
【0067】
(6)(1)乃至(5)のいずれかに記載のイオン源において、前記ガス供給流路の出口であるガス供給孔が、生成されたイオンを前記イオン源から引き出す引き出し孔の鉛直方向上方側あるいは下方側に配置されている。
【0068】
(7)(2)乃至(6)のいずれかに記載のイオン源において、前記ガス供給流路は、最外周の管内に更に設けられた配管で構成される。
【0069】
(8)(1)乃至(7)のいずれかに記載のイオン源において、前記冷却流路は、冷媒の供給側が内周側、戻り側が外周側となっている。
【符号の説明】
【0070】
1…主磁極
2…円環状コイル
3,3A,3B,3C,3D…イオン源
6…真空容器
7…加速間隙
8…高周波加速電極
9…接地電極
10…磁極
12…周回軌道
15…引き出しビーム
17…電流モニタ
20…高周波電源
21…放電用電源
22,22A,22B,22C,22D…ガス供給流路
23…冷却材供給源
24,25…冷却管(冷却流路)
26…冷却材戻り部
27…絶縁スペーサ
28…ガス供給源
29,29A,29B,29D…ガス供給孔
30C,30D…ガス配管
33…陰極
35…陰極支持具
36…放電室
37…引き出し孔
39…放電容器
40…治療台
45…患者
50…円形加速器
52…ビーム輸送系
54…照射装置
56…制御装置
100…粒子線治療システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8