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特開2024-152282熱処理方法、熱処理装置及びコンピュータ記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152282
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】熱処理方法、熱処理装置及びコンピュータ記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20241018BHJP
   G03F 7/20 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
H01L21/30 571
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066388
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】内藤 亮一郎
(72)【発明者】
【氏名】川上 真一路
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 智也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】志村 悟
【テーマコード(参考)】
2H197
5F146
【Fターム(参考)】
2H197HA03
2H197JA13
5F146KA04
5F146KA10
(57)【要約】
【課題】基板上の金属含有レジストからの金属を含む昇華物による基板または装置の汚染を抑制しつつ、良好な熱処理を基板に行う。
【解決手段】金属含有レジストの被膜が形成され露光処理が行われた基板に対し加熱処理を行う熱処理方法であって、前記金属含有レジストの被膜から金属を含む昇華物が発生しない加熱温度で所定時間に亘って前記基板を加熱する工程を含み、前記加熱する工程中に、二酸化炭素または水分の少なくともいずれか一方の濃度が大気よりも高い、前記金属含有レジストの被膜内の反応を促進させる反応性流体を、前記基板の周囲の処理空間に供給する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属含有レジストの被膜が形成され露光処理が行われた基板に対し加熱処理を行う熱処理方法であって、
前記金属含有レジストの被膜から金属を含む昇華物が発生しない加熱温度で所定時間に亘って前記基板を加熱する工程を含み、
前記加熱する工程中に、二酸化炭素または水分の少なくともいずれか一方の濃度が大気よりも高い、前記金属含有レジストの被膜内の反応を促進させる反応性流体を、前記基板の周囲の処理空間に供給する、熱処理方法。
【請求項2】
前記加熱温度は、前記加熱する工程を、前記反応性流体を供給しない状態で行ったと仮定したときに、前記金属含有レジストの被膜内の反応が不足し前記金属含有レジストの不溶化が不十分となり前記加熱処理後の現像処理により形成される前記金属含有レジストのパターンの寸法が目標値よりも細くなる温度である、請求項1に記載の熱処理方法。
【請求項3】
前記反応性流体は、二酸化炭素及び水分の両方の濃度が大気よりも高い、請求項1に記載の熱処理方法。
【請求項4】
前記反応性流体は、炭酸水の気化物とキャリアガスとの混合ガスである、請求項1に記載の熱処理方法。
【請求項5】
前記加熱する工程は、
平面視における前記基板の中央部の上方から前記処理空間を排気する中央排気の排気量を途中で増加させ、
前記中央排気の排気量を増加させた期間で、当該期間より前の期間よりも、前記反応性流体中の二酸化炭素に対する水分の割合を高くする、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱処理方法。
【請求項6】
前記加熱する工程において、前記反応性流体中の水分に対する二酸化炭素の割合を途中で低くする、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱処理方法。
【請求項7】
金属含有レジストの被膜が形成され露光処理が行われた基板に対し加熱処理を行う熱処理装置であって、
前記基板を支持して加熱する加熱部と、
前記加熱処理中の前記基板が収容される処理空間を前記加熱部の上方に形成するチャンバと、
前記処理空間内を排気する排気部と、
前記処理空間内に、前記金属含有レジストの被膜内の反応を促進させる反応性流体を供給する供給部と、
制御部と、を備え、
前記制御部の制御により、当該熱処理装置が、
前記金属含有レジストの被膜から金属を含む昇華物が発生しない加熱温度で所定時間に亘って前記加熱部により前記基板を加熱する工程を実行し、
前記加熱する工程中に、二酸化炭素または水分の少なくともいずれか一方の濃度が大気よりも高い前記反応性流体を、前記処理空間に供給する、熱処理装置。
【請求項8】
金属含有レジストの被膜が形成され露光処理が行われた基板に対し加熱処理を行う熱処理方法を熱処理装置によって実行させるように、当該熱処理装置を制御する制御部のコンピュータ上で動作するプログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体であって、
前記熱処理方法は、前記金属含有レジストの被膜から金属を含む昇華物が発生しない加熱温度で所定時間に亘って加熱する工程を含み、
前記加熱する工程中に、二酸化炭素または水分の少なくともいずれか一方の濃度が大気よりも高い、前記金属含有レジストの被膜内の反応を促進させる反応性流体 を、基板周囲の処理空間に供給する、コンピュータ記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱処理方法、熱処理装置及びコンピュータ記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板上に形成された金属含有膜を熱処理する熱処理装置が開示されている。この熱処理装置は、基板を収容する処理チャンバと、処理チャンバの内部に設けられ、基板を載置する熱処理板と、金属含有膜に水分を供給する水分供給部と、処理チャンバの中央部から当該処理チャンバの内部を排気する中央排気部と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-98229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、基板上の金属含有レジストからの金属を含む昇華物による基板または装置の汚染を抑制しつつ、良好な熱処理を基板に行う。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、金属含有レジストの被膜が形成され露光処理が行われた基板に対し加熱処理を行う熱処理方法であって、前記金属含有レジストの被膜から金属を含む昇華物が発生しない加熱温度で所定時間に亘って前記基板を加熱する工程を含み、前記加熱する工程中に、二酸化炭素または水分の少なくともいずれか一方の濃度が大気よりも高い、前記金属含有レジストの被膜内の反応を促進させる反応性流体を、前記基板の周囲の処理空間に供給する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板上の金属含有レジストからの金属を含む昇華物による基板または装置の汚染を抑制しつつ、良好な熱処理を基板に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】金属含有レジストの被膜から生じる金属の量と、加熱時間と、加熱温度との関係を示す図である。
図2】本実施形態にかかる熱処理装置を含む、基板処理システムとしてのウェハ処理システムの構成の概略を模式的に示す平面図である。
図3】本実施形態にかかる熱処理装置を含む、基板処理システムとしてのウェハ処理システムの構成の概略を模式的に示す正面図である。
図4】PEB処理に用いられる熱処理装置の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。
図5】上チャンバの構成の概略を模式的に示す下面図である。
図6図4の熱処理装置を用いて行われるウェハ処理中の、当該熱処理装置の状態を示す図である。
図7図4の熱処理装置を用いて行われるウェハ処理中の、当該熱処理装置の状態を示す図である。
図8図4の熱処理装置を用いて行われるウェハ処理中の、当該熱処理装置の状態を示す図である。
図9】比較の形態にかかるPEB処理により得られるラインアンドスペースのレジストパターンのスペースの幅と、チャンバの周囲雰囲気の二酸化炭素濃度との関係を示す図である。
図10】比較の形態にかかるPEB処理により得られるラインアンドスペースのレジストパターンのスペースの幅と、チャンバの周囲雰囲気の水分濃度との関係を示す図である。
図11】反応性ガスの供給機構の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイス等の製造プロセスでは、半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)等の基板上にレジストパターンを形成するため基板に対し所定の処理が行われる。上記所定の処理とは、例えば、基板上にレジスト液を供給しレジストの被膜を形成するレジスト塗布処理や、上記被膜を露光する露光処理、露光された上記被膜を現像する現像処理等である。また、上記所定の処理には、露光処理後且つ現像処理前に基板を加熱するPEB(Post Exposure Bake)処理等の熱処理も含まれる。
【0009】
近年では、レジストとして、化学増幅型レジストに代えて、金属含有レジストが用いられる場合がある。この場合、PEB処理は、基板を例えば180℃で所定時間に亘って加熱することで行われる。また、PEB処理は、処理中の基板を収容するチャンバ内に水分含有ガスを供給しながら行われる。さらに、PEB処理では、180℃で基板を加熱したときに金属含有レジストの被膜から金属含有昇華物が発生するため、チャンバ内を排気して上記金属含有昇華物を回収することが行われている。これは、金属含有昇華物により基板や装置が汚染されると、半導体デバイスの電気特性等に影響を与えるため、である。
【0010】
しかし、金属含有レジストの被膜が形成された基板に対する従来のPEB処理では、金属含有レジストのパターンの寸法の基板面内における均一性と、金属含有昇華物による基板または装置の汚染の抑制と、を両立することは難しい。この両立のためには、PEB処理により生じた金属含有昇華物を排気により回収するのではなく、そもそもPEB処理により金属含有昇華物が生じないようにすることが肝要である。
【0011】
そこで、本発明者らは、加熱により金属含有レジストの被膜から生じる金属(具体的には錫(Sn))の量と、加熱時間すなわち処理時間と、加熱温度との関係について試験を行った。その結果を図1に示す。なお、上記試験では、加熱時間として、60秒、120秒、240秒、480秒を採用した。
【0012】
図1に示すように、加熱温度が100℃では、Snの発生量は、加熱時間が120秒まで増加したが、加熱時間が120秒と240秒とでは増減が無く、加熱時間が480秒となると増加していた。
一方、加熱温度が180℃では、Snの発生量は加熱時間に応じて増加し続けていた。
また、加熱温度が130℃では、Snの発生量は、加熱時間が240秒まで増減が無かった。すなわち、加熱時間が60秒までの間に、Snの発生が一旦停止していた。さらに、加熱温度が130℃では、Snの発生量は、加熱時間が480秒となると増加していた。
【0013】
この試験結果から、金属含有レジストの被膜からSnが生じる段階としては、金属含有レジストの溶剤と共にSnが気化する第1段階と、金属含有レジストの溶質と共にSnが気化する、すなわちSnを含む昇華物が生じる第2段階と、があることが推測される。
上記試験では、加熱温度が180℃の場合、加熱時間が短いうちから、上記第2段階に入るため、上述のように、Snの発生量が加熱時間に応じて増加し続けていたと考えられる。
また、加熱温度が100℃では、加熱時間が60秒と120秒の間のいずれかのタイミングまで第1段階となっており、加熱時間が240秒と480秒の間のいずれかのタイミングから第2段階となっていたと考えられる。
一方、加熱温度が130℃では、加熱時間が60秒前までに、第1段階が終了しており、加熱時間が240秒と480秒の間のいずれかのタイミングから第2段階となっていたと考えられる。
【0014】
この試験結果を踏まえると、PEB処理により金属含有昇華物が生じないようにする方法として、PEB処理時に上記第2段階に進ませない方法、すなわち、PEB処理時に金属含有昇華物が発生しない低温で加熱する方法が考えられる。
しかし、PEB処理時の温度を低くすることにより、良好なPEB処理を行うことができなくなってしまうことがある。具体的には、例えば、PEB処理時の温度を低くすることにより、露光感度が低下してしまい、すなわち、露光量を増やさなければ、PEB処理による金属含有レジストの被膜内での反応が不足してしまうことがある。この反応が不足すると、PEB処理後に現像処理を行ったときに、所望の寸法の金属含有レジストのパターンを得られなくなってしまう。
【0015】
そこで、本開示にかかる技術は、金属含有レジストの被膜が形成され露光された基板に対する加熱処理すなわちPEB処理時に、金属含有昇華物により基板または装置が汚染されるのを抑制しつつ、良好なPEB処理を基板に行う。
【0016】
以下、本実施形態にかかる熱処理方法及び熱処理装置について、図面を参照ながら説明する。なお、本明細書において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
<ウェハ処理システム>
先ず、本実施形態にかかる熱処理装置を含む、基板処理システムとしてのウェハ処理システムの構成について説明する。図2及び図3は、それぞれウェハ処理システム1の構成の概略を模式的に示す平面図、正面図である。本実施形態においては、ウェハ処理システム1がウェハWに対してレジスト膜の形成処理及び現像処理を行うフォトリソグラフィー処理システムである場合を一例として説明する。
【0018】
ウェハ処理システム1は、図1に示すように複数枚のウェハWを収容したカセットCが搬入出されるカセットステーション2と、ウェハWに所定の処理を施す複数の各種処理装置を備えた処理ステーション3と、を有する。そしてウェハ処理システム1は、カセットステーション2と、処理ステーション3と、処理ステーション3とは反対側に隣接する露光装置(図示せず)との間でウェハWの受け渡しを行うインターフェイスステーション4とを一体に接続した構成を有している。なお、処理ステーション3は図1ではカセットステーション2とインターフェイスステーション4の間に2基設置されているが、1基でもよく3基以上設置されてもよい。
【0019】
カセットステーション2は、複数のカセット載置板21とウェハ搬送装置22、23が設けられている。カセットステーション2は、ウェハ搬送装置22またはウェハ搬送装置23によって、カセット載置板21に載置されたカセットCと処理ステーション3との間でウェハを搬送する。そのために、ウェハ搬送装置22、23は、各々がX方向、Y方向、上下方向、鉛直軸回り(θ方向)といった方向の駆動機構が必要に応じて備わっており、全ての方向の駆動機構を備えていてもよい。
ウェハ搬送装置22、23の少なくともいずれかがカセットCとウェハの受け渡しが可能であり、また、処理ステーション3とのウェハWの受け渡し動作が可能である。なお、処理ステーション3とのウェハWの受け渡し動作とは、例えば、後述の処理ステーション3内のウェハ搬送装置33がアクセス可能な受け渡し装置を備える第3のブロックG3との間でウェハWの受け渡しを行うことである。第3のブロックG3は、例えばカセットステーション2の内部に設けられており、上下方向に並ぶ複数の受け渡し装置(図示せず)を備えていてもよい。
【0020】
なお、ウェハ搬送装置22、23のいずれかがアクセス可能な位置に、ウェハWに対して検査を行う検査装置(図示せず)を備えていてもよい。
【0021】
処理ステーション3には、複数のブロック、例えば第1、第2、第4の3つのブロックG1、G2、G4が設けられている。また、図2に示すように第1、第2のブロックG1、G2を備える層31が複数、上下方向に積層されている。例えば処理ステーション3の正面側(図1のX方向負方向側)には、第1のブロックG1が設けられ、処理ステーション3の背面側(図1のX方向正方向側)には、第2のブロックG2が設けられている。処理ステーション3のインターフェイスステーション4側(図1のY方向正方向側)あるいは隣接する別の処理ステーション3との接続部分には、第4のブロックG4が設けられている。第4のブロックG4は、上下方向に並ぶ複数の受け渡し装置を備えていてもよい。また、前述の第3のブロックG3が処理ステーション3内に設けられていてもよい。
【0022】
第1のブロックG1には、複数の処理装置、例えば共に図示されないパターニング用膜形成装置や現像処理装置が配置される。パターニング用膜形成装置としては、例えば、レジスト膜形成装置のほか、反射防止膜形成装置を含むことができる。
【0023】
例えば複数の処理装置が水平方向に並べて配置されている。なお、これら処理装置の数や配置、種類は、任意に選択できる。
【0024】
これらパターニング用膜形成装置や現像処理装置では、例えばウェハW上に所定の処理液を供給すること、または、所定のガスを供給することで行われる。そのようにして、パターニング用膜形成装置では、下層側の膜のパターンを形成する際のマスクとして利用されるレジスト膜の形成や、露光処理を一例とする光照射処理を効率的に行うための反射防止膜等の形成が行われる。また一方、現像処理装置では、露光されたレジスト膜の一部を除去して上記マスクとしての凹凸形状が形成される。
【0025】
例えば第2のブロックG2には、ウェハWの加熱や冷却といった熱処理を行う熱処理装置(図示せず)が上下方向と水平方向に並べて設けられている。また第2のブロックG2には、いずれも図示しないが、レジスト液とウェハWとの定着性を高めるために疎水化処理を行う疎水化処理装置、ウェハWの外周部を露光する周辺露光装置が上下方向(図2のZ方向)と水平方向に並べて設けられている。これら熱処理装置、疎水化処理装置、周辺露光装置の数や配置についても、任意に選択できる。
【0026】
図1に示すように平面視において第1のブロックG1と第2のブロックに挟まれた領域には、ウェハ搬送領域32が形成されている。ウェハ搬送領域32には、例えばウェハ搬送装置33が配置されている。
【0027】
ウェハ搬送装置33は、例えばY方向、前後方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アーム70aを有している。ウェハ搬送装置33は、ウェハ搬送領域32内を移動し、周囲の第1のブロックG1、第2のブロックG2や、第3のブロックG3及び第4のブロックG4内の所定の装置にウェハWを搬送できる。図1のように処理ステーション3が複数ある場合、インターフェイスステーション4側に位置する処理ステーション3に設けられたウェハ搬送装置33は、第1、第2、第4のブロックG1、G2、G3のほかに後述の第5のブロックG5内の所定の装置にウェハWを搬送できる。
【0028】
ウェハ搬送装置33は、例えば上下に複数台配置される。1つのウェハ搬送装置33は、上下に積層された複数の層31のうち、上側における複数の層31の高さに位置する所定の装置にウェハWを搬送できる。それらの層31より下方に位置する複数の層31の高さに位置する所定の装置に対しては、別のウェハ搬送装置33がウェハWを搬送できる。このようなウェハWの搬送を可能とするように複数のウェハ搬送領域32が設けられる。なお、ウェハ搬送装置33を1つの層31ごとに設ける等、ウェハ搬送装置33の数や、1つのウェハ搬送装置33に対応する層31の数は、任意に選択できる。
【0029】
また、ウェハ搬送領域32あるいは第1のブロックG1や第2のブロックG2には、シャトル搬送装置(図示無し)があってもよい。シャトル搬送装置は、処理ステーション3の一方に隣接する空間とその反対側に隣接する別の空間との間で直線的にウェハWを搬送する
【0030】
インターフェイスステーション4には、複数の受け渡し装置を備える第5のブロックG5と、ウェハ搬送装置41、42が設けられている。インターフェイスステーション4は、ウェハ搬送装置33によってウェハWの受け渡しが行われる第5のブロックG5と露光機との間で、ウェハ搬送装置41またはウェハ搬送装置42を用いてウェハWを搬送する。そのために、ウェハ搬送装置41、42は、各々がX方向、Y方向、上下方向、鉛直軸回り(θ方向)といった方向の駆動機構が必要に応じて備わっており、全ての方向の駆動機構を備えていてもよい。ウェハ搬送装置41、42の少なくともいずれかが、ウェハWを支持して、第5のブロックG5内の受け渡し装置及び露光装置との間でウェハWを搬送できる。
【0031】
ウェハWの表面を洗浄する洗浄装置や、前述した周辺露光装置が、インターフェイスステーション4内で、ウェハ搬送装置41および42のいずれかがアクセス可能な位置に設けられていてもよい。
【0032】
以上のウェハ処理システム1には、制御装置100が設けられている。制御装置100は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、ウェハ処理システム1におけるウェハWの処理を制御するプログラムが格納されている。また、プログラム格納部には、上述の各種処理装置や搬送装置等の駆動系の動作を制御して、ウェハ処理システム1におけるウェハ処理を実現させるためのプログラムも格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な非一時的な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御装置100にインストールされたものであってもよい。
【0033】
<ウェハ処理システムの動作>
ウェハ処理システム1は以上のように構成されている。次に、以上のように構成された
ウェハ処理システム1を用いて行われるウェハ処理の一例について説明する。
【0034】
先ず、複数のウェハWを収納したカセットCが、ウェハ処理システム1のカセットステーション2に搬入され、カセット載置板21に載置される。次に、ウェハ搬送装置22あるいは23によりカセットC内の各ウェハWが順次取り出され、第3のブロックG3の受け渡し装置に搬送される。
【0035】
第3のブロックG3の受け渡し装置に搬送されたウェハWは、ウェハ搬送装置33で支持されて第2のブロックG2内に設けられた疎水化処理装置に搬送され、疎水化処理が行われる。次いで、ウェハ搬送装置33によって、レジスト膜形成装置に搬送されてウェハW上にレジスト膜が形成され、その後に熱処理装置に搬送されてプリベーク処理された後で、第5のブロックG5の受け渡し装置に搬送される。なお、図1、2のように処理ステーション3が複数ある場合は、ウェハWは第5のブロックG5の受け渡し装置に搬送される前に第4のブロックG4の受け渡し装置に一度置かれてから、複数のウェハ搬送装置33との間での受け渡しがなされる。また、ウェハWは必要に応じて、ウェハ搬送装置33によって周辺露光装置に搬送され、ウェハの周縁部に対する露光処理がされても良い。
【0036】
第5のブロックG5の受け渡し装置に搬送されたウェハWは、ウェハ搬送装置41またはウェハ搬送装置42によって、露光装置に搬送され、所定のパターンで露光処理される。なお、露光処理の前に洗浄装置でウェハWを洗浄してもよい。
【0037】
露光処理されたウェハWは、ウェハ搬送装置41またはウェハ搬送装置42によって第5のブロックG5の受け渡し装置に搬送される。その後、ウェハ搬送装置33によって熱処理装置に搬送され、露光後ベーク処理される。
【0038】
露光後ベーク処理されたウェハWは、ウェハ搬送装置33によって現像処理装置に
搬送され、現像される。現像終了後、ウェハWは、ウェハ搬送装置33によって熱処理装置に搬送され、ポストベーク処理される。
【0039】
その後ウェハWは、ウェハ搬送装置33によって第3のブロックG3の受け渡し装置に搬送され、カセットステーション2のウェハ搬送装置22あるいは23によって所定のカセット載置板21のカセットCに搬送される。こうして、一連のフォトリソグラフィー工程が終了する。
【0040】
<レジストの種類>
本開示のウェハ処理システム1において、レジスト膜形成装置がウェハW上に形成するレジストの被膜すなわちレジスト膜は、金属含有レジストの被膜すなわち金属含有レジスト膜である。
また、金属含有レジストに含まれる金属は任意であるが、例えばスズである。なお、ウェハ処理システム1において用いられる金属含有レジストは例えばネガ型である。
【0041】
<熱処理装置>
次に、上述の熱処理装置のうち、露光後ベーク処理すなわちPEB処理に用いられる熱処理装置について説明する。図4は、PEB処理に用いられる熱処理装置200の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。図5は、後述の上チャンバ301の構成の概略を模式的に示す下面図である。
【0042】
図4の熱処理装置200は、加熱処理中(具体的にはPEB処理中)のウェハWが収容される処理空間K1を形成するチャンバ300を備える。チャンバ300は、上チャンバ301と、下チャンバ302と、整流部材303と、を備える。上チャンバ301は上側に位置し、下チャンバ302は下側に位置する。整流部材303は、上チャンバ301と下チャンバ302との間に位置し、具体的には、上チャンバ301の周縁部と下チャンバ302の周縁部との間に位置する。
【0043】
上チャンバ301は、昇降自在に構成されている。上チャンバ301を昇降させる、モータ等の駆動源を有する昇降機構(図示せず)は、制御装置100により制御される。
また、上チャンバ301は、例えば、円板状に形成されている。上チャンバ301は天井部310を有する。天井部310は、下方に処理空間K1を形成しており、後述の熱板350上のウェハWに対向するように設けられる。また、天井部310には、供給部としてのシャワーヘッド311が設けられている。
【0044】
シャワーヘッド311は、処理空間K1内に、金属含有レジスト膜内の反応を促進させる反応性流体としての反応性ガスを供給する。具体的には、シャワーヘッド311は、天井部310から、処理空間K1内に収容された熱板350上のウェハWに向けて、反応性ガスを供給する。反応性ガスは、二酸化炭素または水分の少なくともいずれか一方の濃度が大気より高いガスである。反応性ガスの二酸化炭素濃度は例えば450ppm以上10000ppm以下である。また、反応性ガスの水分濃度すなわち湿度は例えば40%以上、90%以下である。
シャワーヘッド311は、複数の吐出孔312と、ガス分配空間313と、を有する。
【0045】
吐出孔312はそれぞれ、シャワーヘッド311の下面に形成されている。吐出孔312は、例えば、図5に示すように、シャワーヘッド311の下面中央部における、後述する排気口331以外の部分に、略均一に配置されている。
【0046】
ガス分配空間313は、シャワーヘッド311に導入された反応性ガスを分配して各吐出孔312に供給する。図4に示すように、シャワーヘッド311には、供給管314を介して、供給機構320が接続されている。
【0047】
供給機構320は、反応性ガスを、シャワーヘッド311(具体的にはガス分配空間313)に供給する。また、供給機構320は、例えば、反応性の原料として炭酸水を貯留するタンク321と、タンク321にキャリアガスを供給する供給管322と、を有し、炭酸水の気化物とキャリアガスとの混合ガスを供給する。タンク321には、炭酸水の気化を促進させるため、炭酸水を加熱するヒータ(図示せず)が設けられていてもよい。また、タンク321にてキャリアガスを炭酸水のバブリングに用いて炭酸水の気化を行ってもよい。キャリアガスは、例えば、窒素ガス、圧縮空気、炭酸ガスまたはこれらの混合ガスである。供給管322には、キャリアガスの流通を制御する開閉弁や流量調節弁等を含む供給機器群323が設けられている。
また、供給管314には、反応性ガスの流通を制御する開閉弁や流量調節弁等を含む供給機器群315が設けられている。
供給機器群315、323は制御装置100により制御される。
【0048】
さらに、上チャンバ301の天井部310には中央排気部330が設けられている。この中央排気部330と後述の周縁排気部340が、処理空間K1内を排気する排気部を構成する。
【0049】
中央排気部330は、天井部310における、熱板350上のウェハWの上面視中央寄りの位置から(図の例では上記中央の位置から)、すなわち熱板350上のウェハWの上面視中央部の上方から、チャンバ300内における熱板350の上方の処理空間K1を排気する。中央排気部330は排気口331を有する。排気口331は、図5に示すように、シャワーヘッド311の下面における、熱板350上のウェハWの上面視中央寄りの位置(図の例では上記中央の位置)に設けられており、下方に開口している。中央排気部330は、この排気口331を介して、処理空間K1内を排気する。
【0050】
図4に示すように、中央排気部330は、排気口331から上方向に延伸するように形成された中央排気路332を有する。中央排気路332には、排気管333を介して、真空ポンプ等の排気装置334が接続されている。排気管333には、排気量を調整するバルブ等を有する排気機器群335が設けられている。排気装置334及び排気機器群335は制御装置100により制御される。
【0051】
また、上チャンバ301の天井部310には周縁排気部340が設けられている。周縁排気部340は、天井部310における、上面視で中央排気部317よりも熱板350上のウェハWの周縁部側から、すなわち、熱板350上のウェハWの上面視周縁部の上方から、処理空間K1を排気する。周縁排気部340は、排気口341を有する。排気口341は、図5に示すように、シャワーヘッド311の外周を囲むように、天井部310の下面から、下方に開口している。排気口341は、複数の排気孔をシャワーヘッド311の外周に沿って並べたものであってもよい。周縁排気部340は、この排気口341を介して、処理空間K1内を排気する。
【0052】
図4の周縁排気部340は、排気口341から延びる周縁排気路を有する。周縁排気路には、排気管342を介して、真空ポンプ等の排気装置343が接続されている。排気管342には、排気量を調整するバルブ等を有する排気機器群344が設けられている。排気装置343及び排気機器群344は制御装置100により制御される。
【0053】
下チャンバ302は、ウェハWを支持して加熱する加熱部としての熱板350の周囲(具体的には熱板350の側方及び下方)を囲むように設けられる。
【0054】
熱板350は、厚みのある円盤形状を有する。また、熱板350には、例えばヒータ351が内蔵されている。そして、熱板350の温度は例えば制御装置100によるヒータ351の制御により調整され、熱板350上に載置されたウェハWが所定の温度に加熱される。
【0055】
さらに、熱板350は、当該熱板350にウェハWを吸着するための吸着孔352を例えば複数有している。各吸着孔352は、熱板350を厚さ方向に貫通するように形成されている。
また、各吸着孔352は、中継部材353の中継孔354に接続されている。各中継孔354は、吸着のための排気を行う排気ライン355に接続されている。
【0056】
吸着孔352と中継孔354との接続は、金属製の金属部材356及び樹脂製のパッド357を介して行われる。具体的には、吸着孔352と中継孔354との接続は、金属部材356内の流路と樹脂製のパッド357内の流路を介して行われる。
【0057】
金属部材356は、吸着孔352側に位置し、樹脂製のパッド357は、中継孔354側に位置する。金属部材356は、一端が、熱板350(具体的には吸着孔352)に直接接続され、他端が、対応する樹脂製のパッド357の一端に直接接続されている。言い換えると、各樹脂製のパッド357は、金属部材356を介して、対応する吸着孔352に連通し且つ熱板350に接続されている。また、樹脂製のパッド357の他端は、中継部材353(具体的には中継孔354)に直接接続されている。
【0058】
金属部材356は、樹脂製のパッド357側に大径部358を有する。大径部358の内部は、金属部材356の熱板350に接続されている部分よりも断面積が大きい流路空間358aを有し、熱処理で発生する昇華物による詰まりのリスクが低減されている。また、この断面積が大きい流路空間358aによって、ウェハWの吸着時に処理空間K1から吸引するガスの熱が緩和されて吸着のための排気ライン355に向かって流れる。つまり、樹脂製のパッド357や排気ライン355に至るまでの排気流路を構成する機器の高温による劣化リスクを抑制し得る。
【0059】
なお、排気ライン355には、真空ポンプ等の排気装置(図示せず)やバルブ等を有する排気量調整機器群(図示せず)が設けられている。これら排気装置及び排気量調整機器群は制御装置100により制御される。
【0060】
また、下チャンバ302内には、熱板350の下方に、ウェハWを下方から支持し昇降させる昇降ピン(図示せず)が例えば3本設けられている。昇降ピンは、モータ等の駆動源を有する昇降機構(図示せず)により昇降される。この昇降機構は制御装置100により制御される。なお、熱板350の中央部には、上記昇降ピンが通過する貫通孔(図示せず)が形成されている。昇降ピンは、貫通孔を通過し、熱板350の上面から突出可能である。
【0061】
さらに、下チャンバ302は、サポートリング360と底チャンバ361とを有する。
【0062】
サポートリング360は、円筒形状を有している。サポートリング360の材料には、例えばステンレス等の金属が用いられる。サポートリング360は、熱板350の外側面を覆っている。サポートリング360は、底チャンバ361の上に固定される。
【0063】
底チャンバ361は、有底の円筒形状を有している。
前述の熱板350は、例えば、底チャンバ361の底壁に支持される。具体的には、熱板350は、支持部370を介して、底チャンバ361の底壁に支持される。支持部370は、例えば、上端が熱板350に接続される支持柱371と、支持柱371を支持する環状部材372と、底チャンバ361の底壁に環状部材372を支持する脚部材373と、を有する。
【0064】
環状部材372は金属で形成されており、熱板350の裏面の大部分に対して支持柱371の高さの分、間隙をもって設けられている。樹脂製のパッド357を、そのように設けられている環状部材372の下方に位置せしめることで、熱板350からの熱を環状部材372で効果的に遮断し、樹脂製のパッド357が高温に晒されにくく(熱劣化しにくく)している。
【0065】
さらに、下チャンバ302は、取り込み口362を有する。取り込み口362は、チャンバ300の外部から当該チャンバ300内にガスを取り込む。取り込み口362は、例えば、底チャンバ361の円筒状の側壁に形成されている。
なお、底チャンバ361の側壁の内周面と、サポートリング360の内周面とは、例えば同径である。
【0066】
また、熱処理装置200は、供給部380を有する。供給部380は、取り込み口362を介してチャンバ300内に取り込まれたガスを、熱板350上のウェハWの側方であって処理空間K1の下部(具体的にはウェハWの表面(すなわち上面)よりも下側)から、熱板350上のウェハWに向けて、供給する。
【0067】
また、供給部380は、熱板350の側面を囲うように設けられたガス流路381と、整流部材303と、を含む。
【0068】
ガス流路381は、例えば、熱板350の外側面とサポートリング360の内周面と間の空間で構成される。したがって、ガス流路381は、例えば、平面視円環状に形成される。なお、熱板350の外側面を、支持部材を介して、下チャンバ302の側壁の内周面で支持し、上下方向に貫通する貫通孔を上記支持部材に環状に複数設け、これら複数の貫通孔をガス流路381としてもよい。
【0069】
整流部材303は、ガス流路381に沿って上昇したガスを、熱板350上のウェハWに向かわせる部材である。
【0070】
整流部材303は、例えば平面視円環状に形成されている。
整流部材303の内周側下面は、ガス流路381に沿って上昇したガスを、熱板350の中心に向かわせるガイド面となる。整流部材303の下面における内周側端は、処理空間K1の高さ、つまりウェハWが載置される熱板350の表面から、吐出孔312が形成され熱板350上のウェハWに対向するシャワーヘッド311の下面までの高さ、の2分の1以下の高さに位置する。例えば、整流部材303の下面における内周側端は、熱板350上のウェハWの表面より下方に位置する。
整流部材303の内周側部は、上面視で熱板350の周縁部と重なり、且つ、上面視で熱板350上のウェハWとは重ならない。ガス流路381に沿って上昇したガスは、整流部材303の内周側下面と熱板350の周縁部の上面との間の隙間Gを通り、処理空間K1内の熱板350上のウェハWの側方から当該ウェハWに向かう。熱板350の表面から上方の空間を処理空間K1とすると、処理空間K1内にガスを流入させる隙間Gは、処理空間K1の下部に設けられている。
【0071】
上記隙間Gは、ガス流路381の一端に接続されている。また、ガス流路381の他端は、チャンバ300内における熱板350の下方のバッファ空間K2に接続されている。熱板350の下方のバッファ空間K2は、熱板350の上方の処理空間K1より、体積が大きい。
【0072】
整流部材303の内周面は、上チャンバ301の天井部310から下方に直線的に延びている。
【0073】
一実施形態において、整流部材303は中実体である。整流部材303の材料には、例えば、ステンレス等の金属材料が用いられる。
また、整流部材303の上面全体は、上チャンバ301の下面に接触する。
より具体的には、整流部材303は、その上面全体が、上チャンバ301の下面に接触する形態で上チャンバ301に固定され、上チャンバ301と共に昇降する。
【0074】
整流部材303が、上チャンバ301と共に下降し、下チャンバ302(具体的にはサポートリング360)に当接することで、チャンバ300が閉じられる。
【0075】
なお、熱処理装置200は、ウェハWを冷却する機能を有する冷却板(図示せず)を更に備えていてもよい。冷却板は、例えば、チャンバ300外の冷却位置と、その少なくとも一部がチャンバ300内に配置され当該冷却板と熱板350との間でウェハWが受け渡される受け渡し位置との間を、往復移動する。あるいは、冷却板が、水平方向に熱板350と並ぶ位置に固定され、熱処理装置200が、冷却板と熱板350との間でウェハWを搬送する搬送アームを有してもよい。
【0076】
<熱処理装置200を用いたウェハ処理>
次に、熱処理装置200を用いて行われるウェハ処理の一例について、図6図10を用いて説明する。図6図8は、熱処理装置200を用いて行われるウェハ処理中の、当該熱処理装置200の状態を示す図である。図9は、後述の比較の形態にかかるPEB処理により得られるラインアンドスペースのレジストパターンのスペースの幅(CD:Critical Dimension)と、チャンバ300の周囲雰囲気の二酸化炭素濃度との関係を示す図である。図10は、同スペースの幅と、チャンバ300の周囲雰囲気の湿度すなわち水分濃度との関係を示す図である。図9及び図10において、縦軸の目盛り1つ分は0.5nmに相当する。なお、以下のウェハ処理は、制御装置100の制御の下、行われる。
【0077】
(ステップS1:チャンバ内の状態調整)
まず、例えば、熱板350へのウェハWの載置に先立って、チャンバ300内の状態が調整される。
具体的には、図6(a)に示すように、上チャンバ301が下降され、整流部材303が下チャンバ302のサポートリング360に当接した状態とされ、すなわちチャンバ300が閉状態とされ、処理空間K1が形成された状態で、熱板350が所定の温度に調整される。
また、処理空間K1内の二酸化炭素濃度及び湿度が調整される。処理空間K1内の二酸化炭素濃度及び湿度の調整は、例えば、周縁排気部340による排気及びシャワーヘッド311からの反応性ガスの供給を、所定時間継続することにより行われる。この工程では、周縁排気部340による排気及びシャワーヘッド311からの反応性ガスの供給は、供給部380による気体供給がなされるよう、行われてもよい。具体的には、例えば、シャワーヘッド311から処理空間K1への吐出流量L1より、周縁排気部340による処理空間K1からの排気流量L2が大きくなるよう、制御が行われてもよい。これにより、流量(L2-L1)に対応する気体が、取り込み口362を介して、チャンバ300外部からチャンバ300内へ取り込まれる。そして、流量(L2-L1)に対応する気体が、供給部380から処理空間K1に供給される。
【0078】
(ステップS2:ウェハ載置)
次に、金属含有レジスト膜が形成されたウェハWが、熱板350に載置される。
具体的には、図6(b)に示すように、周縁排気部340による排気及びシャワーヘッド311からの反応性ガスの供給が継続されたまま、上チャンバ301が上昇される。
その後、上記ウェハWが、ウェハ搬送装置33によって、熱板350の上方に搬送される。次いで、昇降ピン(図示せず)の昇降等が行われ、搬送装置30から昇降ピンへのウェハWの受け渡し、昇降ピンから熱板350へのウェハWの受け渡しが行われ、図7(a)に示すように、ウェハWが熱板350に載置される。その後、吸着孔352を介したウェハWの熱板350への吸着が行われる。
【0079】
(ステップS3:加熱)
続いて、周縁排気部340による排気及びシャワーヘッド311からの反応性ガスの供給が継続されたまま、熱板350上のウェハWが、金属含有レジスト膜から金属を含む昇華物すなわち金属含有昇華物が発生しない加熱温度Ttで所定時間に亘って加熱される。
【0080】
(ステップS3a:加熱の開始)
具体的には、図7(b)に示すように、上チャンバ301が下降され、整流部材303が下チャンバ302のサポートリング360に当接し、チャンバ300が閉状態とされる。これにより、熱板350上のウェハWに対する上述の加熱温度Ttでの所定時間Jtに亘る加熱すなわちPEB処理が開始される。
【0081】
上記加熱温度Ttは、具体的には、ステップS3を、反応性流体を供給しない状態で行ったと仮定したときに、金属含有レジスト膜内の反応が不足し金属含有レジストの不溶化すなわち反応が不十分となり、PEB処理後の現像処理により形成される金属含有レジストのパターンの寸法が目標値よりも細くなる温度である。より具体的には、上記加熱温度Ttは例えば180℃未満である。上記加熱温度Ttは金属含有レジスト中の溶媒の沸点以下であってもよい。金属含有レジスト中の溶媒の沸点は例えば130℃である。また、上記加熱温度Ttは例えば80℃以上である。80℃以上とすることにより、熱板350の温度の面内均一性を容易に実現することができる。
【0082】
PEB処理の開始から第1所定時間J1(<Jt)が経過するまでは、中央排気部330による排気が行われずに、周縁排気部340による排気及びシャワーヘッド311からの反応性ガスの供給が行われる。この工程では、周縁排気部340による排気及びシャワーヘッド311からの反応性ガスの供給は、供給部380による気体供給がなされるよう、行われる。具体的には、例えば、シャワーヘッド311から処理空間K1への吐出流量L1より、周縁排気部340による処理空間K1からの排気流量L2が大きくなるよう、制御が行われる。これにより、流量(L2-L1)に対応する気体が、取り込み口362を介して、チャンバ300外部からチャンバ300内へ取り込まれる。そして、流量(L2-L1)に対応する気体が、供給部380から熱板350上のウェハWに向けて供給される。供給部380から熱板350上のウェハWに向けて供給される気体の流量は、周方向に亘って略均等である。取り込み口362は、熱板350より下方の位置における、処理空間K1内に流入させる気体の導入部と言える。
【0083】
また、供給部380から処理空間K1へ供給された気体は、ウェハWに向かい、排気口341へ移動し、上昇流を形成する。これにより、後述するように、ウェハWの裏面やベベルに昇華物が付着するのを抑制することができる。
【0084】
上記第1所定時間J1は、ウェハW上の金属含有レジスト膜が所望のレベルまで固化するよう設定される。言い換えると、上記第1所定時間J1は、ウェハW上の金属含有レジストの縮合が所望のレベルまで進むよう設定される。また、上記第1所定時間J1の情報は記憶部(図示せず)に記憶されている。
【0085】
(ステップS3b:中央排気の開始)
PEB処理の開始から第1所定時間J1が経過すると、図8に示すように、周縁排気部340による排気及びシャワーヘッド311からの反応性ガスの供給が継続されたまま、中央排気部330による排気が開始される。
【0086】
(ステップS3c:PEB処理の停止)
中央排気部330による排気が開始されてから第2所定時間J2が経過すると、PEB処理が終了する。具体的には、例えば、上チャンバ301が上昇され、チャンバ300が開状態とされる。この際、例えば、中央排気部330による排気、周縁排気部340による排気及びシャワーヘッド311からの反応性ガスの供給は継続される。
上記第2所定時間J2は、ウェハW上の金属含有レジスト膜の固化が所望のレベルまで進むよう設定される。上記第2所定時間J2の情報は記憶部(図示せず)に記憶されている。
【0087】
また、上記第1所定時間J1及び上記第2所定時間J2は以下のように設定される。すなわち、PEB処理の総時間(すなわち前述の所定時間Jt)中、中央排気部330による排気が行われている期間が占める割合が、1/20~1/2となるよう設定される。より具体的には、PEB処理の総時間が60秒の場合に、中央排気部330による排気が行われている期間が3秒~30秒になるよう、設定される。PEB処理の総時間(すなわち前述の所定時間Jt)とは、例えば、ウェハWの熱板350への載置後に上チャンバ301が下降されチャンバ300が閉状態とされてから、上チャンバ301が上昇されチャンバ300が開状態とされるまでの時間である。
【0088】
本ステップS3のように、金属含有レジスト膜から金属含有昇華物が発生しない温度で所定時間に亘ってウェハWを加熱する場合、すなわち、金属含有レジスト膜から金属含有昇華物が発生しない低温でPEB処理を行う場合、前述したように、PEB処理による金属含有レジスト膜内での反応が不足してしまう。
【0089】
この反応の不足を補うため、本発明者らは鋭意検討を重ねたところ、以下が判明した。すなわち、本実施形態と異なり、温度及び湿度がチャンバ300の周囲雰囲気と略等しい熱処理装置200の周囲雰囲気(具体的にはウェハ処理システムの周囲雰囲気)を含むガスをシャワーヘッド311及び供給部380から供給する形態(以下、比較の形態)では、熱処理装置の周囲雰囲気の状態が、PEB処理結果に影響を与えることが判明した。具体的には、比較の形態では、図9に示すように、熱処理装置の周囲雰囲気の二酸化炭素濃度が高いほど、PEB処理後の現像処理により得られるラインアンドスペースのレジストパターンのスペースの幅が狭くなることが判明した。すなわち、シャワーヘッド311及び供給部380から処理空間K1に供給するガス中の二酸化炭素濃度が高いほど、PEB処理による金属含有レジスト膜内での反応(具体的には金属含有レジストの縮合反応)が進むことが判明した。また、図10に示すように、熱処理装置の周囲雰囲気の湿度すなわち水分濃度が高いほど上記スペースが狭くなることが判明した。すなわち、シャワーヘッド311及び供給部380から処理空間K1に供給するガス中の水分濃度が高いほど、PEB処理による金属含有レジスト膜内での反応(具体的には金属含有レジストの縮合反応)が進むことが判明した。
【0090】
これを踏まえ、本実施形態では、PEB処理時に、すなわち、ステップS3において、二酸化炭素または水分の少なくともいずれか一方の濃度が大気より高い反応性ガスを処理空間K1に供給している。これにより、本実施形態では、PEB処理時に金属含有レジスト膜から金属含有昇華物が発生しない低温で加熱することで不足する金属含有レジスト膜内での反応を補うようにしている。
なお、図9及び図10の結果は、金属含有レジスト膜内での反応に対する寄与度は水分より二酸化炭素の方が大きいことも示している。
【0091】
また、ステップS3aのように中央排気部330による排気を行わず周縁排気部340による排気のみを行う場合、ウェハWの表面近傍では、ウェハWの表面に沿って、ウェハWの周縁部へ径方向に移動する反応性ガスの流れが形成される。
それに対し、ステップS3bのように中央排気部330による排気も行う場合、ガスはウェハWの表面に沿って流れず、ウェハW上の周縁から中央に向かうにつれて上昇するように流れる。そのため、ガスの中央排気部330に向かう気流の境界層とウェハWの表面との間隔がウェハWの面内で異なってくる。これは、ウェハW上の金属含有レジスト膜からの揮発量のむらの要因となる。そして、この揮発量のむらは、PEB処理の初期の方における、固化が進んでおらず揮発量が多い時には、ウェハW上の膜厚の面内均一性に悪影響を与える。
【0092】
そこで、ステップS3aにおいて、PEB処理の開始から第1所定時間J1が経過するまでは、中央排気部330による排気が行われずに、周縁排気部340による排気及びシャワーヘッド311からの反応性ガスの供給が行われる。
【0093】
また、ステップS3aにおいて、供給部380から処理空間K1へガスの供給が行われるため、ウェハWの周囲では、供給部380からウェハWに向かうガスが排気口341へ移動し、上昇流が形成される。このとき、シャワーヘッド311からウェハWに向けて吐出されウェハWの表面に沿って移動する反応性ガスも、上記の上昇流と共に、上方へ移動し、排気口341を介して外部に排出される。したがって、金属含有レジスト膜からの金属を含む揮発物が生じたとしても上記の上昇流と共に外部に排出されるため、金属を含む揮発物がウェハWの裏面やベベルに付着するのを抑制することができる。
【0094】
さらに、ステップS3bにおいて、中央排気部330による排気を行うことで、ウェハWの表面付近では、ウェハWの外周側からウェハWの中央部へ向かう反応性ガスの流れが形成される。そのため、ウェハWの表面付近の揮発物を含み得る反応性ガスが、中央排気部330を介しても排出される。また、中央排気部330による排気量を周縁排気部340による排気量より大きくしてもよく、この場合、ウェハWの表面付近の揮発物を含み得る反応性ガスは、主に中央排気部330を介して排出される。したがって、金属を含む揮発物がウェハWの裏面やベベルに付着するのをさらに抑制することができる。なお、この中央排気部330による排気を行う段階では、金属含有レジスト膜の固化が進んでおり、排気に伴う気流が膜厚変動に及ぼす影響は小さい。そのため、中央排気部330による排気を行っても、膜厚の面内均一性への影響は小さい。
【0095】
なお、金属含有レジストの溶剤の揮発物であって金属を含むものについては、プリベーク時に略全て回収するようにし、PEB処理時には略生じないようにしてもよい。
【0096】
(ステップS4:ウェハ搬出)
ステップS3の後、ウェハWの載置時と逆の手順で、ウェハWが熱板350上から取り除かれ、熱処理装置200の外部へ搬出される。
【0097】
<本実施形態の主な効果>
以上のように、本実施形態では、金属含有レジスト膜が形成され露光処理が行われたウェハWに対するPEB処理において、金属含有レジスト膜から金属含有昇華物が発生しない低温で所定時間に亘ってウェハWを加熱する。したがって、本実施形態によれば金属含有昇華物によるウェハWまたは熱処理装置200等の装置の汚染を抑制することができる。また、本実施形態では、PEB処理において、加熱中に、二酸化炭素または水分の少なくともいずれか一方の濃度が大気よりも高い、金属含有レジスト膜内の反応を促進させる反応性流体を処理空間K1に供給する。これにより、上述のような低温で加熱することで不足する金属含有レジスト膜内での反応を補うことができる。そのため、良好なPEB処理を行うことができる。具体的には、露光量を増やさずとも、PEB処理により金属含有レジスト膜内での反応を十分に進めることができる。すなわち、本実施形態によれば、PEB処理時に、金属含有昇華物によりウェハWまたは装置の汚染を抑制しつつ、良好なPEB処理をウェハWに行うことができる。
【0098】
なお、金属含有レジストは周囲の水分の影響を受けるため、露光後からPEB処理が行われるまでの間に金属含有レジストの縮合が進み、また、露光後からPEB処理が行われるまでの時間の長さによって、金属含有レジストの縮合の進み具合が変わる。本実施形態では、PEB処理時に金属含有レジスト膜内の反応を促進させる反応性流体を処理空間K1に供給するため、PEB処理前までの金属含有レジストの縮合の進み具合によらず、PEB処理により金属含有レジスト膜内での反応を略完了するまで進めることができる。したがって、本実施形態によれば、露光後からPEB処理が行われるまでの時間の長さによってPEB処理結果が変化するのを抑制することができる。
【0099】
さらに、本実施形態によれば、金属含有昇華物の発生を抑制することができるため、金属含有レジスト膜中の金属量を増やすことができるので、金属含有レジスト膜のエッチング耐性を向上させることができる。
【0100】
<反応性ガスの供給機構の他の例>
図11は、反応性ガスの供給機構の他の例を示す図である。
図11のガス供給機構320Aは、大気よりも二酸化炭素濃度が高い二酸化炭素含有ガス(例えば炭酸ガス)の供給源400と、大気よりも水分濃度が高い水分含有ガス(例えば水蒸気)の供給源401と、供給源400と供給管314を接続する供給管402と、供給源401と供給管314を接続する供給管403と、を有する。供給管402には、上記二酸化炭素含有ガスの流通を制御する開閉弁や流量調節弁等を含む供給機器群404が設けられている。また、供給管403には、上記水分含有ガスの流通を制御する開閉弁や流量調節弁等を含む供給機器群405が設けられている。
供給機器群404、405は制御装置100により制御される。
【0101】
ガス供給機構320Aは、例えば、供給源400からの上記二酸化炭素含有ガスと供給源401からの上記水分含有ガスとの混合ガスを、シャワーヘッド311に供給する。この混合ガスにキャリアガス(例えば窒素ガス)が含まれていてもよい。
また、ガス供給機構320Aは、供給源400からの上記二酸化炭素含有ガスと供給源401からの上記水分含有ガスとのいずれか一方をシャワーヘッド311に供給してもよい。
【0102】
<PEB処理時の反応性ガスの供給形態の他の例1>
金属含有レジストは、水分と反応することにより水酸化物となり、二酸化炭素と反応することにより炭酸水素塩となる。PEB処理時に水酸化物化した金属含有レジストと炭酸水素塩化した金属含有レジストが熱等により縮合することにより、金属含有レジストは現像液に対して不溶化する。上述の縮合の際、水と二酸化炭素が生じる。
そのため、ステップS3においてステップS3bから中央排気部330による排気を行う等、中央排気部330による排気量を増加させると、ウェハWの中央部において外周部より雰囲気中の二酸化炭素濃度及び水分濃度が高くなり得る。
【0103】
ところで、前述のように、金属含有レジスト膜内での反応に対する寄与度は水分より二酸化炭素の方が大きい。したがって、ウェハWの中央部において外周部より雰囲気中の水分濃度が高くても問題とならないが、ウェハWの中央部において外周部より雰囲気中の二酸化炭素濃度が高いと、金属含有レジスト膜内の反応がウェハWの中央部において外周部より進んでしまうおそれがある。
【0104】
そこで、中央排気部330による排気を増加させる期間では、当該期間よりも前の期間に比べて反応性ガス中の二酸化炭素に対する水分の割合を高くしてもよい。具体的には、例えば、中央排気部330による排気及び周縁排気部340による排気が行われるステップS3bでは、周縁排気部340による排気が行われるステップS3aよりも、処理空間K1に供給する反応性ガス中の二酸化炭素に対する水分の割合を高くしてもよい。これにより、金属含有レジスト膜内における反応量がウェハ面内で偏るのを抑制することができる。具体的には、金属含有レジスト膜内における反応量がウェハWの中央部において外周部より進むのを抑制することができる。
【0105】
なお、中央排気部330による排気は、例えば、金属含有レジスト膜内からの金属を含む揮発物の回収や、金属含有レジスト膜内の反応により生じるガスすなわちアウトガスの除去等を目的として行われる。
【0106】
反応性ガス中の二酸化炭素に対する水分の割合を高くする手法としては、例えば、反応性流体中の二酸化炭素濃度を変更せずに水分濃度を高くする手法や、図11のガス供給機構320Aを用いる場合に、二酸化炭素含有ガスの供給流量を変更せずに、水分含有ガスの供給流量を増加させる手法等がある。
【0107】
<PEB処理時の反応性ガスの供給形態の他の例2>
処理空間K1に供給する反応性ガス中の水分濃度のウェハ面内にかかるばらつきが、どう反応性ガス中の二酸化炭素濃度のウェハ面内にかかるばらつきより小さい場合、PEB処理中に、処理空間K1に供給する反応性流体中の水分に対する二酸化炭素の割合を途中で低くするようにしてもよい。具体的には、例えば、PEB処理中に、途中まで、二酸化炭素含有ガスのみを処理空間K1に供給し、その後終了まで、水分含有ガスを処理空間K1に供給するようにしてもよい。
【0108】
これにより、PEB処理の最後にウェハ面内にかかる濃度のばらつきが少ない水分を多く用いてウェハWが加熱されるため、PEB処理の最後にウェハ面内にかかる濃度のばらつきが大きい二酸化炭素を多く用いてウェハWが加熱される場合に比べて、金属含有レジスト膜内の反応がウェハ面内でばらつくのを抑制することができる。
【0109】
また、前述のように、金属含有レジスト膜内での反応に対する寄与度は水分より二酸化炭素の方が大きい。すなわち、水に対する金属含有レジストの反応性より二酸化炭素に対する金属含有レジストの反応性の方が大きい。したがって、PEB処理中に、処理空間K1に供給する反応性流体中の水分に対する二酸化炭素の割合を途中で低くする場合、常に低くする場合に比べて、所望の反応量が得られるのに要する時間を短くすることができる。
【0110】
さらに、PEB処理中に、途中まで、二酸化炭素含有ガスのみを処理空間K1に供給し、その後終了まで、水分含有ガスを処理空間K1に供給することで以下の安全面での効果もある。すなわち、PEB処理後に熱処理装置200に対し作業を行う作業者が二酸化炭素含有ガスにより窒息するのを防ぐことができる。
【0111】
<その他の変形例>
本実施形態にかかるPEB処理では、金属含有レジスト膜から金属含有昇華物が発生しない低温で所定時間に亘ってウェハWを加熱するため、高温で加熱する場合に比べて、加熱中に生じる金属を含む揮発物は少ないので、中央排気部330による排気を省略してもよい。
また、PEB処理において、金属含有レジスト膜から金属含有昇華物が発生しない温度でウェハWが加熱された後、別の条件(具体的には例えばより高温)でウェハWが加熱されてもよい。この場合、別の条件でウェハWが加熱される間、中央排気部330による排気が行われてもよい。
PEB処理後のウェハWにポストベーク処理が行われてもよい。ポストベーク処理が行われる場合は、当該ポストベーク処理においてPEB処理時の温度以下の温度でウェハWが加熱される。
【0112】
なお、ウェハ搬送領域32よりも高湿度のガスをウェハ処理システム1内においてダウンフローで供給し、処理空間K1に対する反応性ガスとしての水分含有ガスに、この高湿度のガスを利用してもよい。
また、金属含有レジスト膜は、CVD法またはALD法により形成されてもよい。
【0113】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。例えば、上記実施形態の構成要件は任意に組み合わせることができる。当該任意の組み合せからは、組み合わせにかかるそれぞれの構成要件についての作用及び効果が当然に得られるとともに、本明細書の記載から当業者には明らかな他の作用及び他の効果が得られる。
【0114】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0115】
なお、以下のような構成例も本開示の技術的範囲に属する。
(1)金属含有レジストの被膜が形成され露光処理が行われた基板に対し加熱処理を行う熱処理方法であって、
前記金属含有レジストの被膜から金属を含む昇華物が発生
で所定時間に亘って前記基板を加熱する工程を含み、
前記加熱する工程中に、二酸化炭素または水分の少なくともいずれか一方の濃度が大気よりも高い、前記金属含有レジストの被膜内の反応を促進させる反応性流体を、前記基板の周囲の処理空間に供給する、熱処理方法。
(2)前記加熱温度は、前記加熱する工程を、前記反応性流体を供給しない状態で行ったと仮定したときに、前記金属含有レジストの被膜内の反応が不足し前記金属含有レジストの不溶化が不十分となり前記加熱処理後の現像処理により形成される前記金属含有レジストのパターンの寸法が目標値よりも細くなる温度である、前記(1)に記載の熱処理方法。
(3)前記反応性流体は、二酸化炭素及び水分の両方の濃度が大気よりも高い、前記(1)または(2)に記載の熱処理方法。
(4)前記反応性流体は、炭酸水の気化物とキャリアガスとの混合ガスである、前記(1)~(3)のいずれか1に記載の熱処理方法。
(5)前記加熱する工程は、
平面視における前記基板の中央部の上方から前記処理空間を排気する中央排気の排気量を途中で増加させ、
前記中央排気の排気量を増加させた期間で、当該期間より前の期間よりも、前記反応性流体中の二酸化炭素に対する水分の割合を高くする、前記(1)~(4)のいずれか1に記載の熱処理方法。
(6)前記加熱する工程において、前記反応性流体中の水分に対する二酸化炭素の割合を途中で低くする、前記(1)~(4)のいずれか1に記載の熱処理方法。
(7)金属含有レジストの被膜が形成され露光処理が行われた基板に対し加熱処理を行う熱処理装置であって、
前記基板を支持して加熱する加熱部と、
前記加熱処理中の前記基板が収容される処理空間を前記加熱部の上方に形成するチャンバと、
前記処理空間内を排気する排気部と、
前記処理空間内に、前記金属含有レジストの被膜内の反応を促進させる反応性流体を供給する供給部と、
制御部と、を備え、
前記制御部の制御により、当該熱処理装置が、
前記金属含有レジストの被膜から金属を含む昇華物が発生しない加熱温度で所定時間に亘って前記加熱部により前記基板を加熱する工程を実行し、
前記加熱する工程中に、二酸化炭素または水分の少なくともいずれか一方の濃度が大気よりも高い前記反応性流体を、前記処理空間に供給する、熱処理装置。
(8)金属含有レジストの被膜が形成され露光処理が行われた基板に対し加熱処理を行う熱処理方法を熱処理装置によって実行させるように、当該熱処理装置を制御する制御部のコンピュータ上で動作するプログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体であって、
前記熱処理方法は、前記金属含有レジストの被膜から金属を含む昇華物が発生しない加熱温度で所定時間に亘って加熱する工程を含み、
前記加熱する工程中に、二酸化炭素または水分の少なくともいずれか一方の濃度が大気よりも高い、前記金属含有レジストの被膜内の反応を促進させる反応性流体
を、基板周囲の処理空間に供給する、コンピュータ記憶媒体。
【符号の説明】
【0116】
100 制御装置
200 熱処理装置
300 チャンバ
311 シャワーヘッド
330 中央排気部
340 周縁排気部
350 熱板
H 記憶媒体
W ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11