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特開2024-152421ポリマー層の製造方法、フィルム、シート及び積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152421
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】ポリマー層の製造方法、フィルム、シート及び積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20241018BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241018BHJP
   C08F 214/26 20060101ALI20241018BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B32B27/30 D
B05D7/24 301E
C08F214/26
H05K1/03 630H
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066604
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100176692
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 ▲廣▼志
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 蔵
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J100
【Fターム(参考)】
4D075BB24Z
4D075CA23
4D075DA04
4D075DB01
4D075DB53
4D075DC19
4D075EA06
4D075EA10
4D075EB17
4F100AB01A
4F100AB33A
4F100AK18A
4F100AK18B
4F100AK49A
4F100AT00
4F100BA02
4F100CC102
4F100CC10B
4F100EH462
4F100EH46B
4F100EJ422
4F100EJ42B
4F100GB43
4F100JG05
4F100JM012
4F100JM01B
4J100AC26P
4J100AE39R
4J100AR11Q
4J100BC55Q
4J100CA05
4J100DA24
4J100EA09
4J100JA28
4J100JA43
4J100JA67
(57)【要約】
【課題】テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む、導電層との密着性に優れまた高周波領域における伝送損失が低いポリマー層の製造方法、該ポリマー層であるフィルム又はシート、及び該ポリマー層を備える積層体を提供する。
【解決手段】基材層に、平均粒子径が1μm以上10μm未満であるテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子100質量部と、水80~300質量部とを含み、パーティクルカウンターで測定される粒径20~80μmの粒子濃度が5~100個/mlである分散液を塗工して、前記基材層の表面に前記分散液からなる塗工層を形成し、前記塗工層を有する前記基材層を、25℃以上、前記水の沸点未満かつ[前記テトラフルオロエチレン系ポリマーのガラス転移温度+10℃]未満である温度域にて最初の加熱を行い、続いて前記温度域より高くかつ前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度未満である温度域で第2の加熱を行って、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む層を表面に有する前記基材層を得、さらに前記溶融温度以上の温度域にて加熱して、前記基材層の表面に前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を形成する、ポリマー層の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層に、平均粒子径が1μm以上10μm未満であるテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子100質量部と、水80~300質量部とを含み、パーティクルカウンターで測定される粒径20~80μmの粒子濃度が5~100個/mlである分散液を塗工して、前記基材層の表面に前記分散液からなる塗工層を形成し、前記塗工層を有する前記基材層を、25℃以上、前記水の沸点未満かつ[前記テトラフルオロエチレン系ポリマーのガラス転移温度+10℃]未満である温度域にて最初の加熱を行い、続いて前記温度域より高くかつ前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度未満である温度域で第2の加熱を行って、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む層を表面に有する前記基材層を得、さらに前記溶融温度以上の温度域にて加熱して、前記基材層の表面に前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を形成する、ポリマー層の製造方法。
【請求項2】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、カルボニル基含有基を有する、熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量が30質量%以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記分散液が、さらに表面張力が20~30mN/mである水溶性溶媒5~20質量部を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記分散液が、さらにノニオン性系界面活性剤を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記分散液が、さらに水溶性高分子を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ポリマー層のISO25178で規定される最大高さSzが、0.1μm以上10μm未満である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記基材層が、長尺基材である、請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
基材層の表面に形成されたポリマー層であり、前記ポリマー層は平均粒子径が1μm以上10μm未満であるテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の溶融焼成体を含み、前記ポリマー層のISO25178で規定される最大高さSzが0.1μm以上10μm未満である、フィルム又はシート。
【請求項11】
基材層と前記基材層の表面に形成されたポリマー層を有し、前記ポリマー層が平均粒子径が1μm以上10μm未満であるテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の溶融焼成体を含み、前記ポリマー層のISO25178で規定される最大高さSzが0.1μm以上10μm未満である、積層体。
【請求項12】
前記基材が、耐熱性基材である、請求項11に記載の積層体。
【請求項13】
前記耐熱性基材が、金属箔又は耐熱性樹脂フィルムである、請求項12に記載の積層体。
【請求項14】
前記基材層の両方の表面に前記ポリマー層を有する、請求項11~13のいずれか1項に記載の積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層の製造方法、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むフィルム又はシート、及びテトラフルオロエチレン系ポリマーを含む層を有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の移動体通信機器における高速化、高周波化に対応するため、通信機器のプリント基板の材料には高熱伝導、低線膨張係数、低誘電率かつ低誘電正接である材料が求められ、低誘電率かつ低誘電正接であるテトラフルオロエチレン系ポリマーが注目されている。また、プリント配線基板の高密度化に伴い、導電層と絶縁層との密着性に優れ、微細化された導電パターンの絶縁層からの剥離を抑制して、かつ回路形成性に優れるプリント配線基板が求められている。
特許文献1には、絶縁性を有し特定の表面性状を有するポリイミドベースフィルムと、その少なくとも一方の面に導電層を有するプリント配線基板が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/104420号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プリント基板材料には、導電層と絶縁層との密着性に加え、高周波領域においてさらなる伝送損失の低下が要求されている。
本発明者らは、低線膨張係数、低誘電率かつ低誘電正接である絶縁層を、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む水系分散液から形成するに際し、特定粒子径範囲のテトラフルオロエチレン系ポリマー粒子濃度が所定量である水系分散液を基材層に塗工し、塗工層の焼成を特定条件に制御すると、導電層との密着性等の物性に影響する表面性を制御し、かつ高周波領域においても低伝送損失であるプリント基板材料を得る手法として有効であることを知見した。
また、かかるポリマー層を有する積層体は、テトラフルオロエチレン系ポリマーに基づく耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率及び低誘電正接)等の物性に優れることを見出し、本発明に至った。
本発明の目的は、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む、導電層との密着性に優れ、また高周波領域における伝送損失が低いポリマー層の製造方法、該ポリマー層であるフィルム又はシート、及び該ポリマー層を備える積層体の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] 基材層に、平均粒子径が1μm以上10μm未満であるテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子100質量部と、水80~300質量部とを含み、パーティクルカウンターで測定される粒径20~80μmの粒子濃度が5~100個/mlである分散液を塗工して、前記基材層の表面に前記分散液からなる塗工層を形成し、前記塗工層を有する前記基材層を、25℃以上、前記水の沸点未満かつ[前記テトラフルオロエチレン系ポリマーのガラス転移温度+10℃]未満である温度域にて最初の加熱を行い、続いて前記温度域より高くかつ前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度未満である温度域で第2の加熱を行って、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む層を表面に有する前記基材層を得、さらに前記溶融温度以上の温度域にて加熱して、前記基材層の表面に前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を形成する、ポリマー層の製造方法。
[2] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位を含む、[1]の製造方法。
[3] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、カルボニル基含有基を有する、熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーである、[1]又は[2]の製造方法。
[4] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量が30質量%以上である、[1]~[3]のいずれかの製造方法。
[5] 前記分散液が、さらに表面張力が20~30mN/mである水溶性溶媒5~20質量部を含む、[1]~[4]のいずれかの製造方法。
[6] 前記分散液が、さらにノニオン性系界面活性剤を含む、[1]~[5]のいずれかの製造方法。
[7] 前記分散液が、さらに水溶性高分子を含む、[1]~[6]のいずれかの製造方法。
[8] 前記ポリマー層のISO25178で規定される最大高さSzが、0.1μm以上10μm未満である、[1]~[7]のいずれかの製造方法。
[9] 前記基材層が、長尺基材である、[1]~[8]のいずれかの製造方法。
[10] 基材層の表面に形成されたポリマー層であり、前記ポリマー層は平均粒子径が1μm以上10μm未満であるテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の溶融焼成体を含み、前記ポリマー層のISO25178で規定される最大高さSzが0.1μm以上10μm未満である、フィルム又はシート。
[11] 基材層と前記基材層の表面に形成されたポリマー層を有し、前記ポリマー層が平均粒子径が1μm以上10μm未満であるテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の溶融焼成体を含み、前記ポリマー層のISO25178で規定される最大高さSzが0.1μm以上10μm未満である、積層体。
[12] 前記基材が、耐熱性基材である、[11]の積層体。
[13] 前記耐熱性基材が、金属箔又は耐熱性樹脂フィルムである、[11]又は[12]の積層体。
[14] 前記基材層の両方の表面に前記ポリマー層を有する、[11]~[13]のいずれかの積層体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む、導電層との密着性に優れ、また高周波領域における伝送損失が低いポリマー層の製造方法を提供できる。該ポリマー層であるフィルム又はシート、及び該ポリマー層を備える積層体は、例えばプリント配線基板材料として有効に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の用語は、以下の意味を有する。
「平均粒子径(D50)」は、レーザー回折・散乱法によって求められる、粒子の体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
粒子のD50は、粒子を水中に分散させ、レーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA-920測定器)を用いたレーザー回折・散乱法により分析して求められる。
「平均粒子径(D90)」は、D50と同様にして求められる、粒子の体積基準累積90%径である。
粒子の比表面積は、ガス吸着(定容法)BET多点法で粒子を測定し算出される値であり、NOVA4200e(Quantachrome Instruments社製)を使用して求められる。
「溶融温度」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定したポリマーの融解ピークの最大値に対応する温度である。
「ガラス転移点(Tg)」は、動的粘弾性測定(DMA)法でポリマーを分析して測定される値である。
「粘度」は、B型粘度計を用いて、25℃で回転数が30rpmの条件下で組成物を測定して求められる。測定を3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
「チキソ比」とは、組成物の、回転数が30rpmの条件で測定される粘度ηを、回転数が60rpmの条件で測定される粘度ηで除して算出される値である。それぞれの粘度の測定は、3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
溶媒又は溶液の「表面張力」は、表面張力計を用い、25℃にてウィルヘルミー法で測定した値である。
ポリマーにおける「単位」とは、モノマーの重合により形成された前記モノマーに基づく原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。以下、モノマーaに基づく単位を、単に「モノマーa単位」とも記す。
【0008】
本発明の製造方法(以下、「本法」とも記す。)は、基材層に、平均粒子径が1μm以上10μm未満であるテトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、「Fポリマー」とも記す。)の粒子(以下、「F粒子」とも記す。)100質量部と、水80~300質量部とを含み、パーティクルカウンターで測定される粒径20~80μmの粒子濃度が5~100個/mlである分散液(以下、「本分散液」とも記す。)を塗工して、前記基材層の表面に前記分散液からなる塗工層を形成し、前記塗工層を有する前記基材層を、25℃以上、前記水の沸点未満かつ[前記Fポリマーのガラス転移温度+10℃]未満である温度域にて最初の加熱を行い、続いて前記温度域より高くかつ前記Fポリマーの溶融温度未満である温度域で第2の加熱を行って、F粒子を含む層を表面に有する前記基材層を得、さらに前記溶融温度以上の温度域にて加熱して、前記基材層の表面に前記Fポリマーを含むポリマー層を形成する、ポリマー層の製造方法である。
【0009】
本法によれば、導電層との密着性に優れ、また高周波領域における伝送損失が低いポリマー層が得られる。かかるポリマー層であるフィルム又はシート、及び該ポリマー層を備える積層体は、テトラフルオロエチレン系ポリマーに基づく耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率及び低誘電正接)等の物性に優れ、さらに前記した特性に優れる。
本法により得られるポリマー層が導電層との密着性に優れ、また高周波領域における伝送損失が低い理由は必ずしも明確ではないが、以下の様に考えられる。
【0010】
本法では、粒径20~80μmの粒子濃度が5~100個/mlであるF粒子を含有する本分散液からなる塗工層をまず形成し、所定の温度域での乾燥を段階的に行う。具体的には、最初の加熱では、塗工層中でのF粒子の拡散状態を維持しつつ、ガラス転移温度近傍で加熱して、F粒子自体の状態変化を少なくすることを優先させる。一方、第2の加熱では、塗工層から水又は後述する水溶性溶媒等の液状分散媒の拡散除去を優先させて、全体として歪みの少ない乾燥被膜であるF粒子を含む層を形成させる。そして、かかる乾燥被膜を焼成して、Fポリマーを含むポリマー層を形成させている。
この段階的な乾燥により、他の材料との親和性が概して低いF粒子を含む分散液を用いても、F粒子の凝集が高度に解消した状態のまま、F粒子の拡散と液状分散媒の拡散とがバランスして、前記ポリマー層のISO25178で規定される最大高さSzが0.1μm以上10μm未満に収束しやすくなり、高接着性と低伝送損失を備えたポリマー層を形成しやすいと考えられる。また、かかる特定範囲のSzを有するポリマー層は、銅箔等の基材層との積層体において、アンカー効果及び接触面積の増大により、緻密かつ強固に密着しやすくなるため、より誘電損失が小さくなると考えられる。
かかる傾向は、本分散液が、特定の表面張力の水溶性溶媒、ノニオン性界面活性剤又は水溶性高分子の1種以上をさらに含有していると、F粒子表面が濡れやすくF粒子の凝集体が解砕され均一に分散しやすい状態が形成されやすくなるため、より顕著になる。
【0011】
本発明におけるFポリマーは、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」とも記す。)に基づく単位(以下、「TFE単位」とも記す。)を含むポリマーである。
Fポリマーは熱溶融性であるのが好ましい。ここで、熱溶融性のポリマーとは、荷重49Nの条件下、溶融流れ速度が1~1000g/10分となる温度が存在するポリマーを意味する。
Fポリマーの溶融温度は、200℃以上が好ましく、260℃以上がさらに好ましい。Fポリマーの溶融温度は、325℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましい。Fポリマーの溶融温度は、200~320℃が好ましい。この場合、本分散液が加工性に優れやすく、また、本分散液から形成されるポリマー層が耐熱性に優れやすい。
【0012】
Fポリマーのガラス転移点は、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。Fポリマーのガラス転移点は、150℃以下が好ましく、125℃以下がより好ましい。
Fポリマーのフッ素含有量は、70質量%以上が好ましく、72~76質量%がより好ましい。
Fポリマーの表面張力は、16~26mN/mが好ましい。なお、Fポリマーの表面張力は、Fポリマーで作製された平板上に、JIS K 6768に規定されているぬれ張力試験用混合液(和光純薬社製)の液滴を載置して測定できる。
【0013】
Fポリマーは、TFE単位とエチレンに基づく単位とを含むポリマー(ETFE)、TFE単位とプロピレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)に基づく単位(PAVE単位)とを含むポリマー(PFA)、TFE単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく単位とを含むポリマー(FEP)が好ましく、PFA及びFEPがより好ましく、PFAがさらに好ましい。これらのポリマーは、さらに他のコモノマーに基づく単位を含んでいてもよい。
PAVEは、CF=CFOCF、CF=CFOCFCF及びCF=CFOCFCFCF(以下、「PPVE」とも記す。)が好ましく、PPVEがより好ましい。
【0014】
Fポリマーは、酸素含有極性基を有するのが好ましく、水酸基含有基又はカルボニル基含有基を有するのがより好ましく、カルボニル基含有基を有するのがさらに好ましい。
この場合、本分散液が分散安定性及び取扱い性に優れやすく、また、本分散液から形成されるポリマー層が、耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率及び低誘電正接)等の物性に優れやすい。
水酸基含有基は、アルコール性水酸基を含有する基が好ましく、-CFCHOH及び-C(CFOHがより好ましい。
カルボニル基含有基は、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、イソシアネート基、カルバメート基(-OC(O)NH)、酸無水物残基(-C(O)OC(O)-)、イミド残基(-C(O)NHC(O)-等)、ホルミル基、ハロゲノホルミル基、ウレタン基(-NHC(O)O-)、カルバモイル基(-C(O)-NH)、ウレイド基(-NH-C(O)-NH)、オキサモイル基(-NH-C(O)-C(O)-NH)及びカーボネート基(-OC(O)O-)が好ましく、酸無水物残基がより好ましい。
Fポリマーが酸素含有極性基を有する場合、Fポリマーにおける酸素含有極性基の数は、主鎖の炭素数1×10個あたり、10~5000個が好ましく、100~3000個がより好ましい。なお、Fポリマーにおける酸素含有極性基の数は、ポリマーの組成又は国際公開第2020/145133号に記載の方法によって定量できる。
【0015】
酸素含有極性基は、Fポリマー中のモノマーに基づく単位に含まれていてもよく、Fポリマーの主鎖の末端基に含まれていてもよく、前者が好ましい。後者の態様としては、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端基として酸素含有極性基を有するFポリマー、Fポリマーをプラズマ処理や電離線処理して得られるFポリマーが挙げられる。
【0016】
Fポリマーは、TFE単位及びPAVE単位を含み全単位に対してPAVE単位を2..0~5.0モル%含む、酸素含有極性基を有さないポリマー(1)か、又は、TFE単位及びPAVE単位を含む、酸素含有極性基を有するポリマー(2)が好ましい。かかるFポリマーを使用すれば、また、比較的小さい半径を有する球晶が形成されやすいため、本組成物から形成されるポリマー層の表面性が高くなりやすく、後述する所定範囲の最大高さSzに制御しやすい。
【0017】
ポリマー(1)は、TFE単位及びPAVE単位のみからなり、全単位に対してPAVE単位を2.5モル%超5.0モル%以下含有するのがより好ましい。なお、ポリマー(1)が酸素含有極性基を有さないとは、ポリマー主鎖を構成する炭素原子数の1×10個あたりに対して、ポリマーが有する酸素含有極性基の数が500個未満であることを意味する。上記酸素含有極性基の数は、100個以下が好ましく、50個未満がより好ましい。上記酸素含有極性基の数の下限は1個である。
ポリマー(1)は、ポリマー鎖の末端基として酸素含有極性基を生じない、重合開始剤や連鎖移動剤等を使用して製造してもよく、酸素含有極性基を有するFポリマー(重合開始剤に由来する酸素含有極性基をポリマー主鎖の末端基に有するFポリマー等)をフッ素化処理して製造してもよい。フッ素化処理の方法としては、フッ素ガスを使用する方法(特開2019-194314号公報等を参照)が挙げられる。
【0018】
ポリマー(2)は、TFE単位及びPAVE単位を含む、カルボニル基含有基を有するポリマーであるのが好ましく、TFE単位、PAVE単位及びカルボニル基含有基を有するモノマーに基づく単位を含み、全単位に対して、これらの単位をこの順に、90~99モル%、0.99~9.97モル%、0.01~3モル%含むポリマーであるのがさらに好ましい。かかるFポリマーの具体例としては、国際公開第2018/16644号に記載されるポリマーが挙げられる。
カルボニル基含有基を有するモノマーは、無水イタコン酸、無水シトラコン酸及び5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」とも記す。)が好ましく、NAHがより好ましい。
【0019】
本法において、本分散液が含有するF粒子は、Fポリマーを含む粒子であり、Fポリマーからなるのが好ましい。
F粒子のD50は1μm以上10μm未満である。F粒子は、中実状の粒子であってもよく、非中空状の粒子であってもよい。F粒子は、nmオーダーの微粒子から形成された二次粒子であってもよい。F粒子のD50は、1.0μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましい。F粒子のD50は、6μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
また、F粒子のD90は8μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましい。
F粒子のD50及びD90が上記範囲以下であると、上述した作用機構がより発現しやすくなり、パーティクルカウンターで測定される粒径20~80μmの粒子濃度が5~100個/mlである本分散液が得られやすい。
F粒子は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0020】
F粒子の比表面積は、1~25m/gであるのが好ましく、6~15m/gがより好ましい。F粒子の比表面積が上記範囲内であると、F粒子表面が濡れやすく、F粒子の凝集体が解砕されやすくなって上述した作用機構がより発現しやすくなり、パーティクルカウンターで測定される粒径20~80μmの粒子濃度が5~100個/mlである分散液が得られやすいと考えられる。
また、本分散液からなる塗工層に、特定の加熱工程を経て形成されるポリマー層が、ISO25178で規定される最大高さSzの所定範囲を満たしやすくなり、耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率及び低誘電正接)等のFポリマーに基づく物性に加え、基材層との密着性に優れやすい。
【0021】
本分散液は、F粒子100質量部と、水80~300質量部とを含み、パーティクルカウンターで測定される粒径20~80μmの粒子濃度が5~100個/mlである。
本分散液におけるF粒子の含有量は、25質量%以上であるのが好ましく、30質量%以上であるのがより好ましい。F粒子の含有量は、55質量%以下であるのが好ましく、50質量%以下であるのがより好ましい。
本分散液における水の含有量は、25質量%以上であるのが好ましく、40質量%以上であるのがより好ましい。水の含有量は、70質量%未満であるのが好ましく、65質量%以下であるのがより好ましい。また、本分散液における水の含有量は、F粒子の含有量に対して、60~180質量%であるのが好ましい。
本分散液における、パーティクルカウンターで測定される粒径20~80μmの粒子濃度は10個/ml以上であるのが好ましい。かかる粒子濃度は80個/ml以下であるのが好ましく、60個/ml以下がより好ましい。かかる粒子濃度が前記範囲であると、上記した作用機構がより発現されやすく、本法により得られるポリマー層の最大高さSzを特定範囲に制御しやすくなる。
【0022】
本分散液は、表面張力が20~30mN/mである水溶性溶媒5~20質量部をさらに含んでいてもよい。表面張力が20~30mN/mである水溶性溶媒としては、大気圧下、25℃にて液体である化合物であり、沸点が160℃以下である化合物が好ましく、沸点が120℃以下である化合物がより好ましい。かかる水溶性溶媒は、水と共沸することが好ましい。なお、本明細書において、水溶性溶媒とは、水に対する溶解度が100g/L以上である溶媒を意味する。
前記水溶性溶媒としては、炭素数1~6のモノオールが好ましく、メタノール(23mN/m)、エタノール(23mN/m)、1-プロパノール(24mN/m)、2-プロパノール(22mN/m)、1-ブタノール(25mN/m)、2-ブタノール(24mN/m)、イソブタノール(23mN/m)、1-メトキシ-2-プロパノール(26mN/m)、2-プロポキシ-エタノール(27mN/m)、1-プロポキシ-2-プロパノール(25mN/m)、2-エトキシエタノール(26mN/m)がより好ましく、エタノールがさらに好ましい。なお、括弧内の数値は各モノオールの表面張力である。
本分散液が水溶性溶媒をさらに含有する場合、その量は、本分散液全量に対して0.1~5質量%以下であるのが好ましい。また、本分散液における水溶性溶媒の含有量は、F粒子の含有量に対し1~10質量%であるのが好ましい。本分散液において、かかる水溶性溶媒は、粒径20~80μmの粒子濃度の調整の役割や、抑泡作用や破泡作用のような消泡剤の役割も担っているとも考えられる。
【0023】
本分散液は、さらにノニオン性系界面活性剤を含んでいてもよい。ノニオン性界面活性剤としては、グリコール系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤又はフッ素系界面活性剤が挙げられる。
中でも、親水部位に水酸基を有するノニオン系界面活性剤が好ましく、200~300℃における質量減少率が20質量%/℃以上である、水酸基又はポリオキシアルキレン基を有するオルガノポリシロキサンであるのがより好ましい。かかる質量減少率は90質量%/℃以下であるのが好ましい。
本分散液が、上記したノニオン性界面活性剤を含有すると、上述した作用機構がより発現されやすく、F粒子の分散安定性及び取扱い性に優れやすい。
また、本分散液のレオロジー物性が向上し、造膜性等の取扱性が向上しやすい。
なお、オルガノポリシロキサンの「200~300℃における質量減少率」は、昇温速度を10℃/分とし、試料量10mg、ヘリウム90体積%と酸素10体積%からなる混合ガス雰囲気下にて、熱重量測定装置(TG)、熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用いて、200℃から300℃に昇温させた際の質量減少量を、昇温時間(10分)と試料量(10mg)とで除した値のパーセンテージ値として求められる値である。
オルガノポリシロキサンとしては、親水部位としてポリオキシアルキレン構造を、疎水部位としてポリジメチルシロキサン構造を有する、ポリオキシアルキレン変性ジメチルシロキサンがより好ましい。
ポリオキシアルキレン変性ジメチルシロキサンは、主鎖にポリジメチルシロキサン単位(-(CHSiO2/2-)を有してもいてもよく、側鎖にポリジメチルシロキサン単位を有してもいてもよく、主鎖及び側鎖の双方にポリジメチルシロキサン単位を有してもよい。
【0024】
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、「フタージェント」シリーズ(ネオス社製)、「サーフロン」シリーズ(AGCセイミケミカル社製)、「メガファック」シリーズ(DIC社製)、「ユニダイン」シリーズ(ダイキン工業社製)、「BYK-347」、「BYK-349」、「BYK-378」、「BYK-3450」、「BYK-3451」、「BYK-3455」、「BYK-3456」(ビックケミー・ジャパン社製)、「KF-6011」、「KF-6043」(信越化学工業社製)、「Tergitol」シリーズ(ダウケミカル社製、「Tergitol TMN-100X」等。)が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本分散液がノニオン性界面活性剤をさらに含有する場合、その量は本分散液100質量部に対して1~15質量部の範囲が好ましい。
【0025】
本分散液は、さらに水溶性高分子を含んでいてもよい。水溶性高分子としては、ビニルアルコール系高分子、アクリル系高分子、ポリビニルピロリドン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリエチレンイミン及びセルロースエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。また、200~300℃における質量減少率が40質量%/℃未満である、極性官能基を有する水溶性高分子がより好ましい。かかる質量減少率は35質量%/℃以下であるのが好ましく、30質量%/以下であるのがより好ましい。また、かかる質量減少率は5質量%/℃以上であるのが好ましい。水溶性高分子の「200~300℃における質量減少率」は、前記したオルガノポリシロキサンの「200~300℃における質量減少率」と同様にして求められる。
なお、本明細書において「水溶性高分子」とは、水に対する溶解度が20g/L以上である高分子を意味する。
本分散液が、上記した水溶性高分子を含有すると、上述した作用機構がより発現されやすい。また、本分散液における、粒径20~80μmの粒子濃度を所定範囲に調整しやすくなり、併せて本分散液のレオロジー物性が向上し、造膜性等の取扱性が向上しやすい。
【0026】
ビニルアルコール系高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分的にアセチル化又は部分的にアセタール化されたポリビニルアルコール、ビニルアルコールとビニルブチラールと酢酸ビニルの共重合体が挙げられる。
ビニルアルコール系高分子の具体例としては、「エスレック(登録商標)B」シリーズ、「エスレック(登録商標)K(KS)」シリーズ、「エスレック(登録商標)SV」シリーズ(以上、積水化学工業社製)」、「モビタール(登録商標)」シリーズ(クラレ社製)が挙げられる。
アクリル酸系高分子としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸/マレイン酸共重合ナトリウム、アクリル酸/スルホン酸系モノマー共重合体ナトリウム等のポリアクリル酸の塩、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のポリアクリレート、ポリ-α-ハロアクリレート、ポリ-α-シアノアクリレート、ポリアクリルアミドが挙げられる。
【0027】
セルロースエーテルとしては、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース又はヒドロキシアルキルアルキルセルロースが挙げられ、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース又はヒドロキシアルキルアルキルセルロースが好ましい。
カルボキシアルキルセルロースとしては、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。ヒドロキシアルキルセルロースとしては、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルメチルセルロース等が挙げられる。
セルロースエーテルの具体例としては、「サンローズ(登録商標)」シリーズ(日本製紙社製)、「メトローズ(登録商標)」シリーズ(信越化学工業社製)、「HEC CFグレード」(住友精化社製)が挙げられる。
水溶性高分子は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。本分散液が水溶性高分子をさらに含有する場合、その量は本分散液100質量部に対して1~15質量部の範囲が好ましい。
【0028】
本分散液は、水及び前記した水溶性溶媒のほかに、本発明の効果を損なわない範囲で他の分散媒を用いてもよい。かかる他の分散媒は、前記した水溶性溶媒及び水と混和するのが好ましい。他の分散媒としては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド;アセトン、メチルエチルケトン等のケトンが挙げられる。
【0029】
本分散液は、無機粒子をさらに含有していてもよい。この場合、本分散液から形成されるポリマー層が、電気特性と低線膨張性とに優れやすい。
無機粒子としては、例えば石英粉、シリカ、ウォラストナイト、タルク、窒化ケイ素、炭化ケイ素、雲母等のケイ素化合物;窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の窒素化合物;酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化バナジウム、酸化銅、酸化鉄、酸化銀等の金属酸化物;炭素繊維;グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ等の炭素同素体;銀、銅等の金属;が挙げられる。無機粒子は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機粒子のD50は、0.1~50μmが好ましい。
無機粒子の表面は、シランカップリング剤で表面処理されていてもよい。
本分散液が無機粒子を含む場合、本分散液における無機粒子の含有量は、1~25質量%が好ましい。
【0030】
本分散液は、Fポリマーとは異なる他の樹脂をさらに含んでいてもよい。かかる他の樹脂は、本分散液に非中空状の粒子として含まれていてもよく、本分散液を構成する水、水溶性溶媒、他の分散媒等の液状分散媒(以下、「液状分散媒」とも記す。)に溶解又は分散して含まれていてもよい。
他の樹脂としては、液晶性の芳香族ポリエステル等のポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂が挙げられる。
他の樹脂としては、芳香族ポリマーが好ましく、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミック酸、芳香族ポリアミドイミド及び芳香族ポリアミドイミドの前駆体からなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族イミドポリマーがより好ましい。芳香族ポリマーは本分散液中で、液状分散媒に溶解したワニスとして含まれるのが好ましい。
【0031】
芳香族イミドポリマーの具体例としては、「ユピア-AT」シリーズ(UBE社製)、「ネオプリム(登録商標)」シリーズ(三菱ガス化学社製)、「スピクセリア(登録商標)」シリーズ(ソマール社製)、「Q-PILON(登録商標)」シリーズ(ピーアイ技術研究所製)、「WINGO」シリーズ(ウィンゴーテクノロジー社製)、「トーマイド(登録商標)」シリーズ(T&K TOKA社製)、「KPI-MX」シリーズ(河村産業社製)、「HPC-1000」、「HPC-2100D」(いずれも昭和電工マテリアルズ社製)が挙げられる。
本分散液が他の樹脂をさらに含む場合、F粒子に対する他の樹脂の含有量は、1~25量%が好ましい。
【0032】
本分散液は、さらに、チキソ性付与剤、粘度調節剤、消泡剤、脱水剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、難燃剤等の添加剤を含有してもよい。
【0033】
本分散液は、F粒子100質量部と水80~300質量部と、必要に応じて前記水溶性溶媒、ノニオン性界面活性剤、他の分散媒、無機粒子、他の樹脂、添加剤等を混合することで得られる。本分散液は、F粒子と水を一括で混合して得ても、複数回に分割しても混合して得てもよい。また、前記した水溶性溶媒、ノニオン性界面活性剤、他の分散媒、無機粒子、他の樹脂、添加剤等を必要に応じてさらに混合する場合の混合順序に特に限定はなく、F粒子と予め混合してもよく、水に予め添加してからF粒子と混合してもよく、F粒子と水との混合に際して混合してもよい。
【0034】
本分散液を得るための混合の装置としては、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー及びプラネタリーミキサー等のブレードを備えた撹拌装置、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル及びアジテーターミル等のメディアを備えた粉砕装置、マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、超音波ホモジナイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー、薄膜旋回型高速ミキサー、自転公転撹拌機及びV型ミキサー等の他の機構を備えた分散装置が挙げられる。
【0035】
本分散液の粘度は、10mPa・s以上が好ましく、100mPa・s以上がより好ましい。本分散液の粘度は、10000mPa・s以下が好ましく、3000mPa・s以下がより好ましい。この場合、本分散液は塗工性に優れ、任意の厚さを有するポリマー層を形成しやすい。また、かかる範囲の粘度範囲にある本分散液は、それから形成されるポリマー層において、Fポリマーの物性が高度に発現しやすい。
本分散液のチキソ比は、1.0~3.0が好ましい。この場合、本分散液は、塗工性及び均質性に優れ、より緻密なポリマー層を生成しやすい。
これらの液物性は、本分散液が上述した水溶性高分子をさらに含む場合に向上しやすい。
【0036】
本分散液のpHは、長期保管性を向上する観点から、8~10がより好ましい。かかる本分散液のpHは、pH調整剤(アミン、アンモニア、クエン酸等。)又はpH緩衝剤(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、エチレンジアミン四酢酸、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等。)によって調整できる。
【0037】
本法では、基材層に本分散液を塗工して、基材層の表面に本分散液からなる塗工層をまず形成する。本分散液の塗工の方法としては、塗布法、液滴吐出法、浸漬法が挙げられ、ロールコート法、ナイフコート法、バーコート法、ダイコート法又はスプレー法が好ましい。
【0038】
基材層は、耐熱性基材であるのが好ましい。耐熱性基材としては、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン、それらの合金等の金属箔等の金属基板;ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶性ポリエステル等の液晶性ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等の、Fポリマー以外のテトラフルオロエチレン系ポリマー等の耐熱性樹脂のフィルム;プリプレグ基板(繊維強化樹脂基板の前駆体)、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等のセラミックス基板;ガラス基板が挙げられる。
中でも、耐熱性基材が、ポリイミド、液晶性ポリマー及びポリテトラフルオロエチレンのいずれかの耐熱性樹脂のフィルムであるのが好ましく、ポリイミドフィルムがより好ましい。
【0039】
基材の形状としては、平面状、曲面状、凹凸状が挙げられる。また、基材の形状は、箔状、板状、膜状、繊維状のいずれであってもよい。
本法においては、基材層が長尺基材であってもよい。この場合、ロール・ツー・ロールプロセスを適用でき、後述する本発明のフィルム又はシート、及び積層体を長尺状の態様で、ロール状の製品として製造できるため、生産性向上の観点から好ましい。
基材の表面の十点平均粗さは、0.01~0.05μmが好ましい。
基材の表面は、シランカップリング剤により表面処理されていてもよく、プラズマ処理されていてもよい。かかるシランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等の官能基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0040】
次に、前記塗工層を有する基材層を、25℃以上、本分散液を構成する水の沸点未満かつ[Fポリマーのガラス転移温度+10℃]未満である温度域にて最初の加熱を行い、続いて前記温度域より高くかつFポリマーの溶融温度未満である温度域で第2の加熱を行って、F粒子を含む層を表面に有する基材層を得る。
最初の加熱の下限は、40℃以上であるのが好ましい。
最初の加熱の上限は、Fポリマーのガラス転移温度以下であるのが好ましい。
また、第2の加熱は、最初の加熱の温度域より50℃以上高く、[Fポリマーの溶融温度-100℃]以下である温度域で行うのが好ましい。
具体的には、最初の加熱の温度域が45~95℃であり、第2の加熱の温度域が100~150℃であることが好ましい。
【0041】
上記した最初の加熱及び第2の加熱は、いずれも1~30分間で行うのが好ましい。最初の加熱及び第2の加熱において、液状分散媒は完全に除去する必要はなく、F粒子のパッキングにより形成される層が自立膜を維持できる程度まで除去すればよい。また、最初の加熱及び第2の加熱に際しては、空気を吹き付け、風乾によって液状分散媒の除去を促してもよい。
【0042】
前記第2の加熱によって得られた、F粒子を含む層を表面に有する基材層を、さらにFポリマーの溶融温度以上の温度域にて加熱(以下、「第3の加熱」とも記す。)して、前記基材層の表面にF粒子の溶融焼成体を含むポリマー層(以下、「F層」とも記す。)を形成する。換言すれば、F層と基材層とをこの順に有する積層体を得る。
第3の加熱の温度域は、具体的には340~400℃であるのが好ましい。また、第3の加熱の加熱時間は、0.1~30分間であるのが好ましい。
【0043】
上記した最初の加熱、第2の加熱及び第3の加熱の各加熱における加熱装置としては、オーブン、通風乾燥炉が挙げられる。装置における熱源は、接触式の熱源(熱風、熱板等)であってもよく、非接触式の熱源(赤外線等)であってもよい。
本法においては、各加熱は、常圧(大気圧)下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。また、各加熱における雰囲気は、空気雰囲気、不活性ガス(ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等)雰囲気のいずれであってもよい。
【0044】
F層は、基材層への本分散液の塗工、及び最初の加熱、第2の加熱及び第3の加熱の各加熱の工程を経て形成される。これら工程は1回ずつ行ってもよく、2回以上繰り返してもよい。例えば、基材層の表面に本分散液を塗工して塗工層を得、最初の加熱、第2の加熱及び第3の加熱によりF層を形成し、さらに前記F層の表面に本分散液を塗工して塗工層を形成して、上記した各加熱により2層目のF層を形成してもよい。また、基材層の表面に本分散液を塗工して塗工層を得、上記した最初の加熱及び第2の加熱により液状分散媒を除去した段階で、さらにその表面に本分散液を塗工し、上記した各加熱によってF層を形成してもよい。
なお、最初の加熱を、前記した最初の加熱の温度域に属する複数の温度で段階的に行ってもよく、第2の加熱を、前記した第2の加熱の温度域に属する複数の温度で段階的に行ってもよい。
【0045】
本分散液は、基材層の一方の表面にのみ配置してもよく、基材層の両面に配置してもよい。前者の場合、基材層と、かかる基材層の片方の表面にF層を有する積層体が得られ、後者の場合、基材層と、かかる基材層の両方の表面にF層を有する積層体が得られる。
かかる積層体から基材層を分離すれば、F粒子の溶融焼成体であるFポリマーを含むフィルム又はシートを得られる。
【0046】
積層体の好適な具体例としては、金属箔と、その金属箔の少なくとも一方の表面にF層を有する金属張積層体、ポリイミドフィルムと、そのポリイミドフィルムの両方の表面にF層を有する多層フィルムが挙げられる。
【0047】
F層の厚さは、25μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましい。F層の厚さは、300μm以下が好ましい。
F層の誘電率は2.4以下であるのが好ましく、2.0以下であるのがより好ましい。また、誘電率は1.0超であるのが好ましい。F層の誘電正接は、0.0022以下であるのが好ましく、0.0020以下であるのがより好ましい。また、誘電正接は、0.0010超であるのが好ましい。F層の熱伝導率は1W/m・K以上であるのが好ましく、3W/m・K以上がより好ましい。なお、F層の熱伝導率とは、F層の面内方向における熱伝導率を意味する。
【0048】
F層の線膨張係数は、100ppm/℃以下が好ましく、80ppm/℃以下がより好ましい。F層の線膨張係数の下限は、30ppm/℃である。なお、線膨張係数は、JIS C 6471:1995に規定される測定方法に従って、25℃以上260℃以下の範囲における、試験片の線膨張係数を測定した値を意味する。
F層と基材層との剥離強度は、10N/cm以上が好ましく、15N/cm以上がより好ましい。上記剥離強度は、100N/cm以下が好ましい。
【0049】
本発明はまた、基材層の表面に形成されたポリマー層であり、前記ポリマー層が、D50が1μm以上10μm未満であるF粒子の溶融焼成体を含み、前記ポリマー層のISO25178で規定される最大高さSzが0.1μm以上10μm未満である、フィルム又はシートである。
最大高さSzは、0.9μm以上であるのが好ましく、1.0μm以上がより好ましい。一方、最大高さSzは、8μm未満であるのが好ましく、5μm未満がより好ましい。ポリマー層表面のISO25178で規定される最大高さSzが上記範囲内であると、上述した作用効果がより奏され、ポリマー層と基材層との密着力が維持できる。
なお、最大高さSzは、例えばレーザー顕微鏡により測定できる。
【0050】
ポリマー層であるフィルム又はシートは、上述したように、基材層に本分散液を塗工して、基材層の表面に本分散液からなる塗工層をまず形成し、最初の加熱、第2の加熱及び第3の加熱の各加熱の工程を経て、F粒子の溶融焼成体を含むポリマー層を形成して得るることが好ましい。換言すれば、かかる工程を経ることで初めて、上記所定範囲のSzを満たす、F粒子の溶融焼成体を含むポリマー層である、フィルム又はシートが得られる。
ここで、本分散液中の、パーティクルカウンターで測定される粒径20~80μmの粒子濃度を5~100個/mlに制御するのは、例えば特定のFポリマーを用いた特定の比表面積であるF粒子を用いて、水との配合量比を制御して分散させるほか、上述した水溶性溶媒、ノニオン性界面活性剤、水溶性高分子の1種以上をさらに含有させることで行える。
かかるフィルム又はシートの厚さ、誘電率、誘電正接、熱伝導率、線膨張係数の好適範囲は、上述の本分散液から形成される積層体におけるF層の厚さ、誘電率、誘電正接、熱伝導率、線膨張係数の好適範囲と同様である。
【0051】
本発明はまた、基材層と前記基材層の表面に形成されたポリマー層を有し、前記ポリマー層が、D50が1μm以上10μm未満であるF粒子の溶融焼成体を含み、前記ポリマー層のISO25178で規定される最大高さSzが0.1μm以上10μm未満である、積層体である。
かかる積層体において、基材層は耐熱性基材であるのが好ましく、耐熱性基材は、金属箔又は耐熱性樹脂のフィルムであるのがより好ましい。耐熱性基材、金属箔又は耐熱性樹脂のフィルムの詳細については、本法の説明において前述したのと同様である。
ポリマー層のISO25178で規定される最大高さSzについては、前述したとおりである。
また、かかる積層体は、基材層の両方の表面にポリマー層を有するのが好ましい。
かかる積層体におけるポリマー層の厚さ、誘電率、誘電正接、熱伝導率、線膨張係数、ポリマー層と基材層との剥離強度の好適範囲は、上述の本分散液から形成される積層体におけるF層の厚さ、誘電率、誘電正接、熱伝導率、線膨張係数、F層と基材層との剥離強度の好適範囲と同様である。
【0052】
本法により形成される、フィルム又はシートであるポリマー層、及び積層体は、アンテナ部品、プリント基板、航空機用部品、自動車用部品、スポーツ用具、食品工業用品、放熱部品等として有用である。
具体的には、電線被覆材(航空機用電線、平角線、FFC(Flexible flat cable)等)、電気自動車等のモーター等に使用されるエナメル線被覆材、発電用被覆材、電気絶縁性テープ、石油掘削用絶縁テープ、石油輸送ホース、水素タンク、プリント基板用材料、分離膜(精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜、イオン交換膜、透析膜、気体分離膜等)、電極バインダー(リチウム二次電池用、燃料電池用等)、燃料電池用キャリアフィルム、半導体製造工程用テープ基材フィルム(ダイシングテープ、ピックアップテープ等)、半導体モールディング用離型フィルム、液晶アンテナ、反射板、伝送路、COF(Chip on film)用ベースフィルム、半導体製造工程用静電チャック、ディスプレイ製造工程用静電チャック、コピーロール、家具、自動車ダッシュボート、家電製品等のカバー、摺動部材(荷重軸受、ヨー軸受、すべり軸、バルブ、ベアリング、ブッシュ、シール、スラストワッシャ、ウェアリング、ピストン、スライドスイッチ、歯車、カム、ベルトコンベア、食品搬送用ベルト等)、テンションロープ、ウェアパッド、ウェアストリップ、チューブランプ、試験ソケット、ウェハーガイド、遠心ポンプの摩耗部品、薬品及び水供給ポンプ、工具(シャベル、やすり、きり、のこぎり等)、ボイラー、ホッパー、パイプ、オーブン、焼き型、シュート、ラケットのガット、ダイス、便器、コンテナ被覆材、パワーデバイス用実装放熱基板、無線通信デバイスの放熱部材、トランジスタ、サイリスタ、整流器、トランス、パワーMOS FET、CPU、放熱フィン、金属放熱板、風車や風力発電設備や航空機等のブレード、パソコンやディスプレイの筐体、電子デバイス材料、自動車の内外装、低酸素下で加熱処理する加工機や真空オーブン、プラズマ処理装置などのシール材、スパッタや各種ドライエッチング装置等の処理ユニット内の放熱部品、電磁波シールドとして有用である。
【0053】
本法により形成されるポリマー層(フィルム又はシート)、及び積層体は、フレキシブルプリント配線基板、リジッドプリント配線基板等の電子基板材料、保護フィルムや放熱基板、特に自動車向けの放熱基板として有用である。
【実施例0054】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
1.各成分の準備
[Fポリマー]
F粒子1:TFE単位、NAH単位及びPPVE単位を、この順に97.9モル%、0.1モル%、2.0モル%含み、カルボニル基含有基を主鎖炭素数1×10個あたり1000個有するテトラフルオロエチレン系ポリマー(融点:300℃)の粒子(D50:2.0μm、比表面積:7m/g)
【0055】
2.分散液の製造例
[例1]
ポットに、F粒子1とオルガノポリシロキサン(HLB値が13、質量減少率が25%であるノニオン性界面活性剤)と、質量減少率が20%であるヒドロキシエチルセルロースと、水とを投入し、ジルコニアボールを投入した。その後、150rpmにて1時間、ポットを転がして、F粒子1(35質量部)、オルガノポリシロキサン(5質量部)、ヒドロキシエチルセルロース(0.1質量部)及び水(59.9質量部)を含む分散液1を得た。
分散液1を1.44ml分取し、250倍に希釈した後、全量を個数カウント式粒度分布測定器(日本インテグリス社製「AccuSizer(登録商標) A7000APS」、LE400センサー使用)に通して、粒径20~80μmの粒子濃度を計測したところ、20個/mlであった。
【0056】
[例2]
ヒドロキシエチルセルロースの配合量を変化させたこと以外は例1と同様にして、F粒子1(35質量部)、オルガノポリシロキサン(5質量部)、ヒドロキシエチルセルロース(1.0質量部)及び水(59.0質量部)を含む分散液2を得た。
分散液2を1.44ml分取し、例1と同様にして、粒径20~80μmの粒子濃度を計測したところ、100個/mlであった。
【0057】
[例3]
ヒドロキシエチルセルロースの代わりに質量減少率が40%であるポリアクリル酸を用いた以外は例1と同様にして、F粒子1(35質量部)、オルガノポリシロキサン(5質量部)、ポリアクリル酸(0.1質量部)及び水(59.9質量部)を含む分散液3を得た。
分散液3を1.44ml分取し、例1と同様にして、粒径20~80μmの粒子濃度を計測したところ、4個/mlであった。
【0058】
3.積層体の製造例とポリマー層の評価
分散液1~3をそれぞれ用いて積層体を製造し、形成されたポリマー層を評価した。
具体的には、ロール・ツー・ロールプロセスにより、ポリイミドフィルム(厚さ25μm)の一方の面に、各分散液を小径グラビアリバース法で塗工して塗工層を形成し、かかる塗工層を炉温70℃の通風乾燥炉に5分間で通過させて最初の加熱を行い、続いて炉温150℃の通風乾燥炉に5分間で通過させて第2の加熱を行い、F粒子1を含む層を表面に有するポリミドフィルムを形成した。次いで、ポリイミドフィルムの別の面にも同様の操作を施して、F粒子1を含む層を両方の表面に有するポリミドフィルムを形成した。
さらに、このポリミドフィルムを、炉温350℃の遠赤外線炉に5分間で通過させてF粒子1を溶融焼成して、基材1の片面にF粒子1の溶融焼成物を含むポリマー層を形成し、ポリマー層(厚さ25μm)及び基材1を有する積層体1~3を得た。
レーザー顕微鏡(株式会社キーエンスの形状解析レーザ顕微鏡「VK-X150」)を用いて、ポリマー層の表面の最大高さSzをISO25178に準拠して測定した。その結果、分散液1から製造したポリマー層のSzは1.5μmであり、分散液2から製造したポリマー層のSzは10μmであり、分散液3から製造したポリマー層のSzは0.08μmであった。
【0059】
それぞれの積層体の両面に電解銅箔(福田金属箔粉工業社製、「CF-T49A-DS-HD2」、厚さ:12μm)を配し、340℃にて20分間、真空下でプレスして、両面銅張積層体をそれぞれ得た。
積層体1から得られた両面銅張積層体の層間密着性は、積層体2及び積層体3それぞれの層間密着性よりも有意に高かった。
また、両面銅張積層体から得られるプリント配線基板の周波数40GHzにおける伝送損失を測定した結果、積層体1から得られた両面銅張積層体の伝送損失は、積層体3から得られた両面銅張積層体の伝送損失から有意に低下していた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本法により得られるポリマー層及び該ポリマー層を有する積層体は、Fポリマーの物性を高度に発現し、基材層との密着性に優れるため、プリント配線基板等の用途に有効に使用できる。