(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152445
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】被覆部材の開閉方法及び開閉装置
(51)【国際特許分類】
A01G 13/02 20060101AFI20241018BHJP
A47H 5/00 20060101ALI20241018BHJP
A01G 17/14 20060101ALI20241018BHJP
E06B 9/266 20060101ALN20241018BHJP
E06B 9/303 20060101ALN20241018BHJP
E06B 9/322 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
A01G13/02 K
A47H5/00
A01G17/14
E06B9/266
E06B9/303
E06B9/322
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066643
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】岩波 宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 平吉
(72)【発明者】
【氏名】飯田 慈
【テーマコード(参考)】
2B023
2B024
2E043
2E182
【Fターム(参考)】
2B023BD01
2B024EA07
2B024EA09
2E043AA01
2E043BC01
2E182AB03
2E182AB05
2E182AC01
2E182DE21
2E182DG05
2E182DH10
2E182DJ01
2E182EE01
2E182EF01
2E182EG01
(57)【要約】
【課題】作物支持体の天側を容易に開閉することができる被覆部材の開閉方法及び開閉装置を提供する。
【解決手段】被覆部材の開閉方法では、展開用動滑車と、展開用定滑車と、展開用動滑車及び展開用定滑車に巻き回された展開用線材と、を備える展開用滑車装置における展開用線材を引張することで、被覆部材で覆うことにより作物支持体を閉鎖する。収納用動滑車と、収納用定滑車と、収納用動滑車及び収納用定滑車に巻き回された用線材と、を備える収納用滑車装置における収納用線材を引張することで、被覆部材に覆われた作物支持体を開放する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って立設される複数のトレリスが前記第1方向に交差する第2方向に沿って複数並んで立設された作物支持体の天側を被覆可能な被覆部材を開閉するにあたり、
前記被覆部材に回転可能に設けられる展開用動滑車と、前記トレリスに回転可能に設けられる展開用定滑車と、前記展開用動滑車及び前記展開用定滑車に巻き回された展開用線材と、を備える展開用滑車装置における前記展開用線材の一端を固定した状態で、前記展開用線材の他端を引張することで、前記作物支持体を閉鎖している前記被覆部材が前記作物支持体の天側を開放し、
前記被覆部材に回転可能に設けられ、前記展開用動滑車とともに移動する収納用動滑車と、前記トレリスに回転可能に設けられる収納用定滑車と、前記収納用動滑車及び前記収納用定滑車に巻き回された収納用線材と、を備える収納用滑車装置における前記収納用線材の一端を固定した状態で、前記収納用線材の他端を引張することで、開放している前記作物支持体の天側を前記被覆部材により覆って前記作物支持体の天側を閉鎖する、
被覆部材の開閉方法。
【請求項2】
前記展開用動滑車及び前記収納用動滑車が、同軸に配置されている、
請求項1に記載の被覆部材の開閉方法。
【請求項3】
前記展開用定滑車が前記作物支持体における前記第1方向の他側に回転可能に設けられ、
前記収納用定滑車が前記作物支持体における前記第1方向の一側に回転可能に設けられている、
請求項1または2に記載の被覆部材の開閉方法。
【請求項4】
前記第1方向に沿って配置され、前記被覆部材の開閉を案内する案内部材が張設され、
前記案内部材に吊り下げられる複数の吊下部材が前記第1方向に沿って、前記被覆部材に取り付けられている、
請求項1または2に記載の被覆部材の開閉方法。
【請求項5】
前記展開用動滑車及び前記収納用動滑車は、前記被覆部材における前記第1方向の他側の端部に設けられ、
前記被覆部材の前記第1方向の一側の端部は、前記作物支持体に固定されている、
請求項1または2に記載の被覆部材の開閉方法。
【請求項6】
第1方向に沿って立設される複数のトレリスが前記第1方向に交差する第2方向に沿って複数並んで立設された作物支持体の天側を被覆可能な被覆部材を開閉するにあたり、
前記被覆部材に回転可能に設けられる展開用動滑車、前記トレリスに回転可能に設けられる展開用定滑車、及び前記展開用動滑車及び前記展開用定滑車に巻き回された展開用線材を備える展開用滑車装置と、
前記被覆部材に回転可能に設けられ、前記展開用動滑車とともに移動する収納用動滑車、前記トレリスに回転可能に設けられる収納用定滑車、及び前記収納用動滑車及び前記収納用定滑車に巻き回された収納用線材を備える収納用滑車装置と、を含み、
前記展開用線材の一端を固定した状態で、前記展開用線材の他端を引張することで、前記作物支持体を閉鎖している前記被覆部材が前記作物支持体の天側を開放し、
前記収納用線材の一端を固定した状態で、前記収納用線材の他端を引張することで、開放している前記作物支持体の天側を前記被覆部材により覆って前記作物支持体の天側を閉鎖する、
被覆部材の開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆部材の開閉方法及び開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トレリスなどの作物支持体が立設された圃場において、気象変動の影響等により、作物、例えば林檎が晩霜害、雹害、日焼けといった問題に晒されることがある。これらの問題は、例えば、トレリスに支えられる樹体をネットで覆うことにより軽減することができる。また、樹体を防雹ネットで覆うことによる被覆栽培が行われる例もある。
【0003】
その一方で、高糖度で色づきのよい高品質の果実を生産するためには、ネットによる遮光がその妨げとなることがあるので、季節または天候に応じて樹体の上部に設置されたネットを開閉することが求められることもある。このため、例えば、開閉可能なネットを用意し、作業員によって開閉作業が行われるものもあり、例えば、レールに沿ってネットを移動させながら開閉作業が可能となるレール式のものもある。さらに、台風の襲来時には、トレリスの倒壊を防ぐためにネットを閉じておくことが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ネットなどの被覆部材を展開してトレリスを覆う作業は、複数の作業員を要することが多い。また、開閉可能な被覆部材を用いる場合でも、被覆部材の開閉作業に手間がかかる。また、レール式の装置では、被覆部材を移動させるための特殊なレールなどの部材が必要となり、コスト高となる懸念もある。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、被覆部材を容易に開閉することができる被覆部材の開閉方法及び開閉装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した被覆部材の開閉方法は、第1方向に沿って立設される複数のトレリスが前記第1方向に交差する第2方向に沿って複数並んで立設された作物支持体の天側を被覆可能な被覆部材を開閉するにあたり、前記被覆部材に回転可能に設けられる展開用動滑車と、前記トレリスに回転可能に設けられる展開用定滑車と、前記展開用動滑車及び前記展開用定滑車に巻き回された展開用線材と、を備える展開用滑車装置における前記展開用線材の一端を固定した状態で、前記展開用線材の他端を引張することで、前記作物支持体を閉鎖している前記被覆部材が前記作物支持体の天側を開放し、前記被覆部材に回転可能に設けられ、前記展開用動滑車とともに移動する収納用動滑車と、前記トレリスに回転可能に設けられる収納用定滑車と、前記収納用動滑車及び前記収納用定滑車に巻き回された収納用線材と、を備える収納用滑車装置における前記収納用線材の一端を固定した状態で、前記収納用線材の他端を引張することで、開放している前記作物支持体の天側を前記被覆部材により覆って前記作物支持体の天側を閉鎖する、被覆部材の開閉方法である。
【0008】
また、前記展開用動滑車及び前記収納用動滑車が、同軸に配置されている、ようにしてもよい。
【0009】
また、前記展開用定滑車が前記作物支持体における前記第1方向の他側に回転可能に設けられ、前記収納用定滑車が前記作物支持体における前記第1方向の一側に回転可能に設けられている、ようにしてもよい。
【0010】
また、前記第1方向に沿って配置され、前記被覆部材の開閉を案内する案内部材が張設され、前記案内部材に吊り下げられる複数の吊下部材が前記第1方向に沿って、前記被覆部材に取り付けられている、ようにしてもよい。
【0011】
また、前記展開用動滑車及び前記収納用動滑車は、前記被覆部材における前記第1方向の他側の端部に設けられ、前記被覆部材の前記第1方向の一側の端部は、前記作物支持体に固定されている、ようにしてもよい。
【0012】
また、上記課題を解決した被覆部材の開閉装置は、第1方向に沿って立設される複数のトレリスが前記第1方向に交差する第2方向に沿って複数並んで立設された作物支持体の天側を被覆可能な被覆部材を開閉するにあたり、前記被覆部材に回転可能に設けられる展開用動滑車、前記トレリスに回転可能に設けられる展開用定滑車、及び前記展開用動滑車及び前記展開用定滑車に巻き回された展開用線材を備える展開用滑車装置と、前記被覆部材に回転可能に設けられ、前記展開用動滑車とともに移動する収納用動滑車、前記トレリスに回転可能に設けられる収納用定滑車、及び前記収納用動滑車及び前記収納用定滑車に巻き回された収納用線材を備える収納用滑車装置と、を含み、前記展開用線材の一端を固定した状態で、前記展開用線材の他端を引張することで、前記作物支持体を閉鎖している前記被覆部材が前記作物支持体の天側を開放し、前記収納用線材の一端を固定した状態で、前記収納用線材の他端を引張することで、開放している前記作物支持体の天側を前記被覆部材により覆って前記作物支持体の天側を閉鎖する、被覆部材の開閉装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る被覆部材の開閉方法及び開閉装置によれば、被覆部材を容易に開閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】作物栽培圃場Hを斜め上方から見た斜視図である。
【
図2】トレリス10に被覆装置20が取り付けられた作物栽培圃場Hを斜め上方から見た斜視図である。
【
図3】トレリス10に被覆装置20が取り付けられた作物栽培圃場Hを斜め上方から見た斜視図である。
【
図6】被覆装置20を設置する手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】ネット50を開閉する手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る被覆部材の開閉方法及び開閉装置を、図面に参照して説明する。本発明に係る開閉装置は、例えば、被覆装置に設けられる。被覆装置は、開閉装置と、被覆部材、例えばネットを含んで構成される。被覆部材の開閉方法及び開閉装置の説明にあたり、まず、開閉装置が設けられる作物栽培圃場Hについて説明する。
【0016】
図1は、作物栽培圃場Hを斜め上方から見た斜視図である。以下の説明において、枝番を付した構成について区別しない場合には、枝番を省略して説明する。
図1に示すように、実施形態の作物栽培圃場Hには、例えば、複数のトレリス10(10-1、10-2、・・)が立設されている。それぞれのトレリス10は、複数の支柱がX方向に沿って並んで立設されている。複数のトレリス10は、第X方向と交差する方向、例えば直交するY方向に沿って複数並んで立設されている。X方向は、第1方向の一例である。Y方向は、第2方向の一例である。
【0017】
複数のトレリス10は、互いに略平行となるように立設されている。作物栽培圃場Hには、複数の果樹が植樹されている。果樹は、例えば、カラムナータイプの樹木である。果樹は、カラムナータイプ以外の樹木でもよい。各果樹は、トレリス10により支持される。トレリス10の一側には、一側補助支柱11が立設されており、他側には、他側補助支柱12が立設されている。
図1において、果樹の描写は省略している。果樹には、栽培作物、例えば、りんごの果実が付いている。トレリス10は、複数の果樹を支持する。トレリス10は、支持体の一例である。また、複数のトレリス10,10…は、作物支持体の一例である。
【0018】
栽培作物は、リンゴ以外の果実、例えば、梨、柿、サクランボなどでもよいし、トマト、キュウリ、ホップ、トウモロコシなどの果実以外の作物でもよい。また、上記の実施形態では、作物支持体は複数のトレリス10であるが支持体はその他のものでもよく、例えばブドウ棚などの棚でもよい。
【0019】
次に、トレリス10に取り付けられる被覆装置について説明する。
図2及び
図3は、トレリス10に被覆装置20が取り付けられた作物栽培圃場Hを斜め上方から見た斜視図である。被覆装置20は、例えば、開閉装置30と、ネット50とを備える。
【0020】
ネット50は、トレリス10の天側を閉鎖して被覆可能とされている。ネット50は、展開することによりトレリス10の天側を被覆し、収納されることによりトレリス10の天側を開放する。
図2では、ネット50が収納されてトレリス10の天面が開放された状態を示し、
図3では、ネット50が展開してトレリス10の天面が閉鎖(被覆)される途中の状態を示す。ネット50は、被覆部材の一例である。被覆部材は、ネット50以外でもよい。被覆装置20は、例えば、シートでもよいし、板材などでもよい。
【0021】
開閉装置30は、ネット50をトレリス10に対して開閉可能としている。開閉装置30は、例えば、一側支持ワイヤ31と、他側支持ワイヤ32と、展開用折返部材33と、収納用折返部材34と、展開用ロープ35と、収納用ロープ36と、案内部材37と、複数の吊下部材38と、動滑車部材39と、を備える。一側支持ワイヤ31は、例えば、上段一側支持ワイヤ31-1と、下段一側支持ワイヤ31-2とを備える。
【0022】
展開用ロープ35は、展開用線材の一例である。展開用折返部材33及び展開用ロープ35は、展開用滑車装置の一例である。収納用ロープ36は、収納用線材の一例である。収納用折返部材34及び収納用ロープ36は、収納用滑車装置の一例である。展開用線材及び収納用線材は、ロープ以外、例えばワイヤやチェーンでもよい。
【0023】
上段一側支持ワイヤ31-1は、例えば、第2一側補助支柱11-2の上端部と、第3一側補助支柱11-3の上端部との間に張設される。下段一側支持ワイヤ31-2は、第1一側補助支柱11-1の上部と第2一側補助支柱11-2の一側の上部との間、及び第3一側補助支柱11-3の上部と第4一側補助支柱11-4の上部との間にそれぞれ張設される。下段一側支持ワイヤ31-2の張設高さは、上段一側支持ワイヤ31-1の張設高さよりも低い位置とされている。下段一側支持ワイヤ31-2の張設高さは、上段一側支持ワイヤ31-1の張設高さよりも低くなくてもよい。
【0024】
上段他側支持ワイヤ32-1は、例えば、第2他側補助支柱12-2の上端部と、第3他側補助支柱12-3の上端部との間に張設される。下段他側支持ワイヤ32-2は、第1他側補助支柱12-1の上部と第2他側補助支柱12-2の上部との間、及び第3他側補助支柱12-3の上部と第4他側補助支柱12-4の他側の上部との間にそれぞれ張設される。上段他側支持ワイヤ32-1の張設高さは、上段一側支持ワイヤ31-1の張設高さとほぼ同じであり、下段他側支持ワイヤ32-2の張設高さは、下段一側支持ワイヤ31-2の張設高さとほぼ同じである。
【0025】
展開用折返部材33は、例えば、展開用ロープ固定部材33-1と、展開用中央定滑車33-2と、展開用側方定滑車33-3とを備える。展開用ロープ固定部材33-1は、例えば、第3他側補助支柱12-3のX方向の上端部に設けられる。展開用ロープ固定部材33-1は、展開用ロープ35の固定端部を、他側補助支柱12を介してトレリス10に固定する。展開用中央定滑車33-2及び展開用側方定滑車33-3は、展開用定滑車の一例である。
【0026】
展開用中央定滑車33-2は、上段他側支持ワイヤ32-1の長手方向略中央位置に取り付けられている。展開用側方定滑車33-3は、第2他側補助支柱12-2のX方向の上端部に設けられる。展開用ロープ固定部材33-1、展開用中央定滑車33-2、及び展開用側方定滑車33-3は、互いにほぼ同じ高さ位置に配置される。
【0027】
展開用中央定滑車33-2及び展開用側方定滑車33-3は、上段他側支持ワイヤ32-1またはトレリス10に対して、鉛直軸回りに回動可能となるように支持されている。展開用中央定滑車33-2及び展開用側方定滑車33-3には、展開用ロープ35が巻き回されており、展開用ロープ35の移動に伴って回転する。
【0028】
収納用折返部材34は、例えば、収納用ロープ固定部材34-1と、収納用定滑車34-2と、収納用ロープ保持部34-3とを備える。収納用ロープ固定部材34-1は、例えば、第2一側補助支柱11-2の上端に設けられる。収納用ロープ固定部材34-1は、収納用ロープ36の固定端を、一側補助支柱11を介してトレリス10に固定する。収納用ロープ固定部材34-1は、展開用ロープ35の解放端側を保持する。収納用ロープ36の固定端は、収納用線材の一端の一例である。収納用ロープ36の解放端は、収納用線材の他端の一例である。
【0029】
収納用定滑車34-2は、上段一側支持ワイヤ31-1の長手方向略中央位置に取り付けられている。収納用ロープ保持部34-3は、第3一側補助支柱11-3の上端部に設けられる。収納用ロープ固定部材34-1、収納用定滑車34-2、及び収納用ロープ保持部34-3は、互いにほぼ同じ高さ位置に配置される。
【0030】
収納用定滑車34-2は、上段一側支持ワイヤ31-1に対して、鉛直軸回りに回動可能となるように支持されている。収納用定滑車34-2には、収納用ロープ36が巻き回されており、収納用定滑車34-2は、収納用ロープ36の移動に伴って回転する。収納用ロープ保持部34-3は、収納用ロープ36の解放端側を保持する。
【0031】
展開用ロープ35は、固定端が展開用ロープ固定部材33-1により他側補助支柱12を介してトレリス10に固定されている。展開用ロープ35は、第1動滑車部材39-1、展開用中央定滑車33-2、第2動滑車部材39-2、及び展開用側方定滑車33-3に巻き回される。展開用ロープ35は、展開用折返部材33に張られている。展開用ロープ35の解放端は、収納用ロープ固定部材34-1を通じて一側補助支柱11及びトレリス10の外側まで延出される。延出された展開用ロープ35は、作業員等により引張可能とされている。展開用ロープ35の固定端は、展開用線材の一端の一例である。展開用ロープ35の解放端は、展開用線材の他端の一例である。
【0032】
収納用ロープ36は、固定端が収納用ロープ固定部材34-1により一側補助支柱11を介してトレリス10に固定されている。収納用ロープ36は、第2動滑車部材39-2、収納用定滑車34-2、及び第1動滑車部材39-1に巻き回される。収納用ロープ36の解放端は、収納用ロープ保持部34-3を通じて一側補助支柱11及びトレリス10の外側まで延出される。収納用ロープ36は、収納用折返部材34に張られている。延出された収納用ロープ36は、作業員等により引張可能とされている。
【0033】
案内部材37は、第1案内部材37-1、第2案内部材37-2、第3案内部材37-3、及び第4案内部材37-4を含む。第1案内部材37-1及び第4案内部材37-4は、それぞれX方向に向かい合う下段一側支持ワイヤ31-2及び下段他側支持ワイヤ32-2の間に掛け渡され調節されて設置される。案内部材37は、X方向に沿って配置され、前記ネット50の開閉を案内する。
【0034】
第2案内部材37-2及び第3案内部材37-3は、X方向に向かい合う上段一側支持ワイヤ31-1及び上段他側支持ワイヤ32-1の間にかけ渡されて設置される。案内部材37は、第1案内部材37-1、第2案内部材37-2、第3案内部材37-3、及び第4案内部材37-4は、それぞれ互いに平行となるように設置される。
【0035】
図4は、被覆装置20をX方向に見た断面図である。
図4に示すように、吊下部材38は、リング状のリング部材と、直方体状の接続部を備える。リング部材は、例えば、周方向の一部が開閉可能な開閉部38Aとされ、開閉部38Aが閉鎖方向に付勢されたいわゆるカラビナ様の部材である。吊下部材38は、リング部材に代えて滑車(動滑車)を備えてもよい。吊下部材38は、案内部材37に吊り下げられ、ネット50が取り付けられており、ネット50は、吊下部材38を介して案内部材37に吊り下げられている。
図2及び
図3に示すように、第1吊下部材38-1、第2吊下部材38-2、第3吊下部材38-3、及び第4吊下部材38-4は、それぞれX方向に間隔をおいて配置されている。
【0036】
第1吊下部材38-1~第4吊下部材38-4のリング部には、それぞれ第1案内部材37-1~第4案内部材37-4が貫通する。ネット50は、接続部を介して、リング部に貫通する案内部材37に吊り下げられる。動滑車部材39がX方向に移動すると、第1吊下部材38-1~第4吊下部材38-4がそれぞれ第1案内部材37-1~第4案内部材37-4に沿って移動し、ネット50を開放する方向または閉鎖する方向に誘導する。
【0037】
第1動滑車部材39-1は、第2案内部材37-2上に配置され、第2動滑車部材39-2は、第3案内部材37-3上に配置されている。第1動滑車部材39-1は、第2案内部材37-2に沿って移動可能とされ、第2動滑車部材39-2は、第3案内部材37-3に沿って移動可能とされている。
【0038】
図5は、動滑車部材39の側断面図である。動滑車部材39は、例えば、展開用動滑車41と、収納用動滑車42と、ケース43と、回転軸44とを備える。動滑車部材39は、例えば、X方向に並んだ2つの吊下部材38に挟まれて配置されている。ケース43における下面には、ネット50が例えば接着剤により固定されている。
【0039】
展開用動滑車41及び収納用動滑車42は、いずれもケース43に収納され同軸に配置されており、回転軸44回りに回転可能となるようにネット50に設けられている。展開用動滑車41には、展開用ロープ35が巻き回されている。収納用動滑車42には、収納用ロープ36が巻き回されている。展開用動滑車41は、展開用ロープ35の移動に伴って回転軸44まわりに回転する。収納用動滑車42は、収納用ロープ36の移動に伴って回転軸44回りに回転する。展開用動滑車41及び収納用動滑車42の回転軸は、同軸でなくてもよい。
【0040】
展開用動滑車41と収納用動滑車42の回転方向は互いに異なる方向となる。例えば、展開用動滑車41が平面視して時計回りに回転する場合に、収納用動滑車42は平面視して反時計回りに回転する。動滑車部材39は、展開用ロープ35及び収納用ロープ36の移動に伴って展開用動滑車41と収納用動滑車42が回転することにより移動する。
【0041】
被覆装置20は、例えば、作物の育成中、雹害などの恐れがない状態では、トレリス10に取り付けられていなくてもよい。季節や時間帯などにより、雹害などが生じ得る状態では、例えば、時間帯ごとにネット50によりトレリス10に支持される作物を被覆したり、ネット50を被覆した状態から開放した状態としたりする。そのために、トレリス10に被覆装置20を設置する。被覆装置20では、展開用ロープ35の解放端を引張することにより、ネット50が展開してトレリス10の天側を閉鎖し、収納用ロープ36の解放端を引張することにより、ネット50が収納されてトレリス10の天側が開放される。
【0042】
続いて、実施形態の被覆装置の設置方法及びネットの開閉方法について説明する。
図6は、被覆装置20を設置する手順の一例を示すフローチャートである。被覆装置20は、例えば作業員により設置される。被覆装置20を設置するにあたり、作業員は、まず、一側補助支柱11の間に一側支持ワイヤ31を掛け渡し、他側補助支柱12の間に他側支持ワイヤ32を掛け渡す(ステップS11)。
【0043】
作業員は、例えば、X方向の一側において、第2一側補助支柱11-2の上端部と第3一側補助支柱11-3の上端部の間に上段一側支持ワイヤ31-1を張設し、第1一側補助支柱11-1と第2一側補助支柱11-2の間、第3一側補助支柱11-3と第4一側補助支柱11-4のそれぞれの間に下段一側支持ワイヤ31-2を張設する。続いて、作業員は、X方向の他側において、第2他側補助支柱12-2の上端部と第3他側補助支柱12-3の上端部の間に上段他側支持ワイヤ32-1を張設し、第1他側補助支柱12-1と第2他側補助支柱12-2の間、第3他側補助支柱12-3と第4他側補助支柱12-4のそれぞれの間に下段他側支持ワイヤ32-2を張設する。
【0044】
続いて、作業員は、展開用折返部材33及び収納用折返部材34を取り付ける(ステップS13)。このとき、作業員は、例えば、第3他側補助支柱12-3の上端部に展開用ロープ固定部材33-1、上段他側支持ワイヤ32-1の中央位置に展開用中央定滑車33-2、第2他側補助支柱12-2の上端部に展開用側方定滑車33-3をそれぞれ取り付ける。さらに、作業員は、例えば、第2一側補助支柱11-2の上端部に収納用ロープ固定部材34-1、上段一側支持ワイヤ31-1の中央位置に収納用定滑車34-2、第3一側補助支柱11-3の上端部に収納用ロープ保持部34-3をそれぞれ取り付ける。
【0045】
続いて、作業員は、一側支持ワイヤ31と他側支持ワイヤ32の間に、案内部材37を張設する(ステップS15)。このとき、作業員は、例えば、2組の下段一側支持ワイヤ31-2と下段他側支持ワイヤ32-2の間にそれぞれ第1案内部材37-1及び第4案内部材37-4を張設し、上段一側支持ワイヤ31-1と上段他側支持ワイヤ32-1のY方向左右位置において、それぞれ第2案内部材37-2及び第3案内部材37-3を張設する。
【0046】
続いて、作業員は、ネット50に固定されている吊下部材38のリング部に設けたれた開閉部38Aを通じて、予め張設された案内部材37をリング部の内側に配置し、吊下部材38を案内部材37に吊り下げる(ステップS17)。作業員は、例えば、他側から一側に並ぶ順に第1案内部材37-1に対して複数の第1吊下部材38-1を吊り下げる。作業員は、同様に、他側から一側に並ぶ順に第2案内部材37-2~第4案内部材37-4に対して複数の第2吊下部材38-2~第4吊下部材38-4を吊り下げる。ネット50に設けられた第1吊下部材38-1~第4吊下部材38-4が、それぞれ第1案内部材37-1~第4案内部材37-4に吊り下げられることにより、ネット50が設置される(ステップS17)。
【0047】
続いて、作業員は、展開用ロープ35、収納用ロープ36、及び動滑車部材39の取付作業を行う(ステップS19)。取付作業にあたり、作業員は、まず、展開用ロープ固定部材33-1に展開用ロープ35の固定端を固定し、展開用ロープ35を展開用中央定滑車33-2及び展開用側方定滑車33-3に巻き回す。展開用側方定滑車33-3に巻き回された展開用ロープ35の解放端は、収納用ロープ固定部材34-1を介して一側補助支柱11(トレリス10)の外方から引張される。
【0048】
続いて、作業員は、収納用ロープ固定部材34-1に収納用ロープ36の固定端を固定し、収納用ロープ36を収納用定滑車34-2に巻き回す。収納用定滑車34-2に巻き回された収納用ロープ36の解放端は、収納用ロープ保持部34-3を介して一側補助支柱11(トレリス10)の外方から引張される。
【0049】
このとき、展開用ロープ35における展開用中央定滑車33-2及び展開用側方定滑車33-3の間と、収納用ロープ36における収納用ロープ固定部材34-1及び収納用定滑車34-2の間には、第1動滑車部材39-1が介在される。さらに、展開用ロープ35における展開用ロープ固定部材33-1及び展開用中央定滑車33-2の間と、収納用ロープ36における収納用定滑車34-2及び収納用ロープ保持部34-3の間には、第2動滑車部材39-2が介在される。こうして、
図6に示す被覆装置20を設置する処理が終了する。被覆装置20が設置された後は、必要に応じて、ネット50が展開されたり収納されたりする。
【0050】
続いて、ネット50を展開しまたは収納する際の開閉方法について説明する。
図7は、ネット50を開閉する手順の一例を示すフローチャートである。作業員は、まず、ネット50が展開中であるか否かを判定する(ステップS21)。ネット50が展開中であると判定した場合、作業員は、ネットを収納するタイミングとなっているか否かを判定する(ステップS23)。
【0051】
ネット50を収納するタイミングは、例えば、作物に日光を当てたいタイミングである。ネット50を収納するタイミングとなっていないと判定した場合、作業員は、処理をステップS21に戻す。ネット50を収納するタイミングとなっていると判定した場合、作業員は、収納用ロープ36の解放端を引張する(ステップS25)。
【0052】
収納用ロープ36の解放端が引張されると、収納用折返部材34に張られ、動滑車部材39に巻き回された収納用ロープ36が動滑車部材39をX方向の一側に引き寄せる。動滑車部材39には、収納用ロープ36とともに展開用ロープ35が巻き回されている。このため、動滑車部材39は、X方向の一側に向けてスムーズに安定して移動する。
【0053】
動滑車部材39の移動に伴い、ネット50のX方向他側は、X方向の一側に引き寄せられて、トレリス10の天側が開放する(ステップS27)。ネット50のX方向の他側が移動している間、吊下部材38が案内部材37に沿って移動する。このため、ネット50は、動滑車部材39の移動に伴ってスムーズに収納される。こうして、
図7に示す処理が終了する。
【0054】
また、ステップS21において、ネット50が展開中でないと判定された場合、作業員は、ネットを展開するタイミングとなっているか否かを判定する(ステップS29)。ネット50を展開するタイミングは、例えば、冬季の早朝などの霜が降りる可能性があったり、降雹がありそうであったりするタイミングである。
【0055】
ネット50を展開するタイミングとなっていないと判定した場合、作業員は、処理をステップS21に戻す。ネット50を展開するタイミングとなっていると判定した場合、作業員は、展開用ロープ35の解放端を引張する(ステップS31)。
【0056】
展開用ロープ35の解放端が引張されると、展開用折返部材33に張られ、動滑車部材39に巻き回された展開用ロープ35が動滑車部材39をX方向の一側に引き寄せる。動滑車部材39には、展開用ロープ35とともに収納用ロープ36が巻き回されている。このため、動滑車部材39は、X方向の一側に向けてスムーズに安定して移動する。
【0057】
動滑車部材39の移動に伴い、ネット50のX方向他側は、X方向一側に引き寄せられて、トレリス10の天側が閉鎖する(ステップS33)。ネット50のX方向の他側が移動している間、吊下部材38が案内部材37に沿って移動する。このため、ネット50は、動滑車部材39の移動に伴ってスムーズに展開される。こうして、
図7に示す処理が終了する。
【0058】
実施形態のネット50の開閉方法及び開閉装置30においては、展開用ロープ35または収納用ロープ36の解放端をX方向の他側に引張するだけで、ネット50を容易に開閉することができる。ここで、動滑車部材39において、展開用ロープ35が巻き回される展開用動滑車41と収納用ロープ36が巻き回される収納用動滑車42が同軸に配置されている。このため、動滑車部材39をよりスムーズに移動させることができる。
【0059】
また、一側支持ワイヤ31と他側支持ワイヤ32との間には、案内部材37が張設され、ネット50は、吊下部材38を介して案内部材37に吊下されている。吊下部材38は、案内部材37に沿ってスムーズに移動するので、ネット50は、吊下部材38を介して、案内部材37に沿ってX方向に向けてスムーズに移動することができる。
【0060】
次に、動滑車部材の変形例について説明する。
図8は、変形例1の動滑車部材60の斜視図である。変形例1の動滑車部材60は、展開用動滑車61と、収納用動滑車62と、吊下用動滑車63と、連結リング64とを備える。展開用動滑車61には、展開用ロープ35が巻き回されている。収納用動滑車62には、収納用ロープ36が巻き回されている。吊下用動滑車63は、案内部材37上を走行する。
【0061】
展開用動滑車61は、第1接続リング65を介して連結リング64と接続されている。収納用動滑車62は、第2接続リング66を介して連結リング64に接続されている。吊下用動滑車63は、第3接続リング67を介して連結リング64に接続されている。連結リング64は、ネット50に形成されたハトメ51を貫通する。連結リング64は、第1接続リング65、第2接続リング66、第3接続リング67、及びハトメ51を貫通して、展開用動滑車61、収納用動滑車62、吊下用動滑車63、及びネット50を連結する。
【0062】
展開用動滑車61、収納用動滑車62、及び吊下用動滑車63が連結リング64を介して連結されていることにより、作業者が展開用ロープ35を引張することにより、吊下用動滑車63が案内部材37上をX方向の他端側に向けて移動し、ネット50が展開する。また、作業者が収納用ロープ36を引張することにより、ネット50がX方向の一端側に向けて移動し、ネット50が収納される。このような動滑車部材60を用いることもできる。
【0063】
図9は、変形例2の動滑車部材70の斜視図である。変形例2の動滑車部材70は、展開用動滑車71と、収納用動滑車72と、吊下用動滑車73と、を備える。展開用動滑車71及び収納用動滑車72は、回転軸74を介して同軸に連結されている。回転軸74の一端部には、接続リング75を介して吊下用動滑車73が接続されている。回転軸74の他端部は、ハトメ51に取り付けられている。
【0064】
展開用動滑車71には、展開用ロープ35が巻き回されている。収納用動滑車72には、収納用ロープ36が巻き回されている。吊下用動滑車73は、案内部材37上を走行する。作業者が展開用ロープ35を引張することにより、吊下用動滑車73がX方向の他端側に向けて案内部材37上を移動し、ネット50が展開する。また、作業者が収納用ロープ36を引張することにより、吊下用動滑車73がX方向の一端側に向けて案内部材37上を移動し、ネット50が収納される。このような動滑車部材60を用いることもできる。
【符号の説明】
【0065】
10…トレリス
20…被覆装置
30…開閉装置
31…一側支持ワイヤ
32…他側支持ワイヤ
33…展開用折返部材
33-1…展開用ロープ固定部材
33-2…展開用中央定滑車
33-3…展開用側方定滑車
34…収納用折返部材
34-1…収納用ロープ固定部材
34-2…収納用定滑車
34-3…収納用ロープ保持部
35…展開用ロープ
36…収納用ロープ
37…案内部材
38…吊下部材
39…動滑車部材
41…展開用動滑車
42…収納用動滑車
43…ケース
44…回転軸
50…ネット
H…作物栽培圃場