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特開2024-152508歯周病診断用マーカー及びこれを用いる歯周病の診断方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152508
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】歯周病診断用マーカー及びこれを用いる歯周病の診断方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/92 20060101AFI20241018BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G01N33/92 Z
G01N33/50 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066743
(22)【出願日】2023-04-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「革新的先端研究開発支援事業ユニットタイプ「微生物叢と宿主の相互作用・共生の理解と、それに基づく疾患発症のメカニズム解明」研究開発領域」「歯周病による口腔内の細菌環境悪化と全身状態の変化を繋ぐ分子機構の解明」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125081
【弁理士】
【氏名又は名称】小合 宗一
(72)【発明者】
【氏名】村上 伸也
(72)【発明者】
【氏名】柏木 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】石濱 泰
(72)【発明者】
【氏名】杉山 直幸
(72)【発明者】
【氏名】山下 蓮太郎
(72)【発明者】
【氏名】馬場 健史
(72)【発明者】
【氏名】和泉 自泰
(72)【発明者】
【氏名】油屋 駿介
(72)【発明者】
【氏名】中谷 航太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 政友
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045DA17
2G045DA61
(57)【要約】
【課題】標準化アッセイが可能で、かつ、臨床的重症度と相関する、歯周病の新規マーカーを用いる歯周病の診断方法又は歯周病の診断を補助する方法を提供すること。
【解決手段】本発明の歯周病を診断する方法又は歯周病の診断を補助する方法は、(1)ヒト被検者の体液サンプルを採取する工程と、(2)該サンプルにおけるジアシルグリセロール(DG)等からなる群から選択される少なくとも1種類の分子種の物質の濃度を測定する工程とを含み、DG 16:0_18:2等からなる群から選択される少なくとも1つの物質の濃度が上昇するとき、前記ヒト被検者を歯周病と診断する、あるいは、前記ヒト被検者を歯周病と診断することを補助する。本発明は、本発明の歯周病診断用マーカーの濃度に基づく歯周病の重症度予測方法及び本発明の歯周病診断用マーカーを検出するための歯周病診断用検査キットも提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯周病を診断する方法又は歯周病の診断を補助する方法であって
(1)ヒト被検者の体液サンプルを採取する工程と、
(2)該サンプルにおけるジアシルグリセロール(DG)、トリアシルグリセロール(TG)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、スフィンゴミエリン(SM)、セラミド(Cer)、ヘキソシルセラミド(HexCer)、グルタル酸、メチルコハク酸、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸(6P)、セドヘプツロース-7-リン酸(S7P)、リボース-5-リン酸(R5P)、リブロース-5-リン酸(Ru5P)及びキシルロース-5-リン酸(Xu5P)からなる群から選択される少なくとも1種類の分子種の物質の濃度を測定する工程とを含み、
DG 16:0_18:2、DG 16:0_20:1、DG 16:0_20:2、DG 16:0_20:3、DG 16:0_20:4、DG 16:1_18:2、DG 17:0_18:1、DG 18:0_18:1、DG 18:0_18:2、DG 18:0_20:2、DG 18:0_20:3、DG 18:0_20:4、DG 18:0_22:4、DG 18:1_18:2、DG 18:1_20:1、DG 18:1_20:2、DG 18:1_20:3及びDG 18:1_20:4からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のジアシルグリセロール(DG)と、
TG 52:1及びTG 55:8からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のトリアシルグリセロール(TG)と、
PC 14:0_16:0、PC 15:0_16:0、PC 15:0_18:1、PC 16:0_16:0、PC 16:0_16:1、PC 16:0_17:0、PC 16:0_18:0、PC 16:0_18:1、PC 16:0_18:2、PC 16:0_20:1、PC 16:0_20:2、PC 16:0_20:3、PC 16:0_20:4、PC 16:1_18:0、PC 16:1_18:1、PC 16:1_18:2、PC 17:0_18:1、PC 17:0_18:2、PC 17:1_18:1、PC 18:0_18:1、PC 18:0_18:2、PC 18:0_20:1、PC 18:0_20:2、PC 18:0_20:3、PC 18:0_20:4、PC 18:1_18:1、PC 18:1_18:2、PC 18:1_20:1、PC 18:1_20:2、PC 18:1_20:3、PC 18:1_20:4、PC 18:2_18:2、PC 18:2_20:1、PC 18:2_20:2からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルコリン(PC)と、
PI 16:0_18:1、PI 16:0_18:2、PI 16:0_20:4、PI 18:0_18:1、PI 18:0_18:2、PI 18:0_20:2、PI 18:0_20:3、PI 18:0_20:4、PI 18:0_22:4、PI 18:1_18:1及び PI 18:1_20:4からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルイノシトール(PI)と、
PE 16:1_17:1、PE 17:1_17:1、PE 18:0_18:1、PE 18:0_18:2、PE 18:0_20:3、PE 18:0_20:4、PE 18:1_18:1、PE 18:1_18:2、PE 18:1_20:2、PE 18:1_20:3及びPE 18:2_20:2からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルエタノールアミン(PE)と、
SM 18:1;02/14:0、SM 18:1;O2/15:0、SM 18:1;O2/16:0、SM 18:1;O2/16:1、SM 18:1;O2/17:0、SM 18:1;02/18:0、SM 18:1;02/18:1、SM 18:1;02/20:0、SM 18:1;02/20:1、SM 18:1;02/22:0、SM 18:1;02/22:1、SM 18:1;O2/24:0及びSM 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のスフィンゴミエリン(SM)と、
Cer 18:1;O2/17:0及びCer 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のセラミド(Cer)と、
HexCer 18:1;O2/16:0及びHexCer 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のヘキソシルセラミド(HexCer)と
からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種の脂質と、
グルタル酸、メチルコハク酸、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸(6P)、セドヘプツロース-7-リン酸(S7P)、リボース-5-リン酸(R5P)、リブロース-5-リン酸(Ru5P)及びキシルロース-5-リン酸(Xu5P)からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種の親水性代謝物と、
からなる群から選択される、少なくとも1つの物質の濃度が上昇するとき、前記ヒト被検者を歯周病と診断する、あるいは、前記ヒト被検者を歯周病と診断することを補助する、方法。
【請求項2】
前記ヒト被検者の体液サンプルは歯肉溝滲出液サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分子種の脂質及び/又は親水性代謝物は、軽度の歯周病の体液サンプル中の濃度と、重度の歯周病の体液サンプル中の濃度の有意差がp<0.01である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
歯周病の重症度予測方法であって、
(1)ヒト被検者の体液サンプルを採取する工程と、
(2)該サンプルにおけるジアシルグリセロール(DG)、トリアシルグリセロール(TG)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、スフィンゴミエリン(SM)、セラミド(Cer)、ヘキソシルセラミド(HexCer)、グルタル酸、メチルコハク酸、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸(6P)、セドヘプツロース-7-リン酸(S7P)、リボース-5-リン酸(R5P)、リブロース-5-リン酸(Ru5P)及びキシルロース-5-リン酸(Xu5P)とからなる群から選択される少なくとも1種類の分子種の物質の濃度を測定する工程とを含み、
DG 16:0_18:2、DG 16:0_20:1、DG 16:0_20:2、DG 16:0_20:3、DG 16:0_20:4、DG 16:1_18:2、DG 17:0_18:1、DG 18:0_18:1、DG 18:0_18:2、DG 18:0_20:2、DG 18:0_20:3、DG 18:0_20:4、DG 18:0_22:4、DG 18:1_18:2、DG 18:1_20:1、DG 18:1_20:2、DG 18:1_20:3及びDG 18:1_20:4からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のジアシルグリセロール(DG)と、
TG 52:1及びTG 55:8からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のトリアシルグリセロール(TG)と、
PC 14:0_16:0、PC 15:0_16:0、PC 15:0_18:1、PC 16:0_16:0、PC 16:0_16:1、PC 16:0_17:0、PC 16:0_18:0、PC 16:0_18:1、PC 16:0_18:2、PC 16:0_20:1、PC 16:0_20:2、PC 16:0_20:3、PC 16:0_20:4、PC 16:1_18:0、PC 16:1_18:1、PC 16:1_18:2、PC 17:0_18:1、PC 17:0_18:2、PC 17:1_18:1、PC 18:0_18:1、PC 18:0_18:2、PC 18:0_20:1、PC 18:0_20:2、PC 18:0_20:3、PC 18:0_20:4、PC 18:1_18:1、PC 18:1_18:2、PC 18:1_20:1、PC 18:1_20:2、PC 18:1_20:3、PC 18:1_20:4、PC 18:2_18:2、PC 18:2_20:1、PC 18:2_20:2からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルコリン(PC)と、
PI 16:0_18:1、PI 16:0_18:2、PI 16:0_20:4、PI 18:0_18:1、PI 18:0_18:2、PI 18:0_20:2、PI 18:0_20:3、PI 18:0_20:4、PI 18:0_22:4、PI 18:1_18:1及び PI 18:1_20:4からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルイノシトール(PI)と、
PE 16:1_17:1、PE 17:1_17:1、PE 18:0_18:1、PE 18:0_18:2、PE 18:0_20:3、PE 18:0_20:4、PE 18:1_18:1、PE 18:1_18:2、PE 18:1_20:2、PE 18:1_20:3及びPE 18:2_20:2からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルエタノールアミン(PE)と、
SM 18:1;02/14:0、SM 18:1;O2/15:0、SM 18:1;O2/16:0、SM 18:1;O2/16:1、SM 18:1;O2/17:0、SM 18:1;02/18:0、SM 18:1;02/18:1、SM 18:1;02/20:0、SM 18:1;02/20:1、SM 18:1;02/22:0、SM 18:1;02/22:1、SM 18:1;O2/24:0及びSM 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のスフィンゴミエリン(SM)と、
Cer 18:1;O2/17:0及びCer 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のセラミド(Cer)と、
HexCer 18:1;O2/16:0及びHexCer 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のヘキソシルセラミド(HexCer)と
からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種の脂質と、
グルタル酸、メチルコハク酸、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸(6P)、セドヘプツロース-7-リン酸(S7P)、リボース-5-リン酸(R5P)、リブロース-5-リン酸(Ru5P)及びキシルロース-5-リン酸(Xu5P)からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種の親水性代謝物とからなる群から選択される、少なくとも1つの物質の濃度が、第1の基準値以上のとき、重度の歯周病を罹患していることを予測する指標とし、第1の基準値未満であって第2の基準値以上のとき、中程度の歯周病を罹患していることを予測する指標とし、第2の基準値未満のとき、軽度の歯周病を罹患しているか、あるいは、歯周病を罹患を罹患していないことの指標とする、方法。
【請求項5】
前記ヒト被検者の体液サンプルは歯肉溝滲出液サンプルである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1及び第2の基準値は、予め重症度が判定済みの歯の歯肉ポケットから採取した歯肉溝滲出液サンプルでの前記歯周病診断用化合物の濃度に基づいて決定され、ここで前記重症度はアタッチメントレベル及び/又は歯槽骨吸収度の指標に基づいて判定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記いずれか1種類以上の分子種の脂質と、いずれか1種類以上の分子種の親水性代謝物とからなる群から選択される、少なくとも2つの物質の濃度に基づいて決定される、請求項4~6に記載の方法。
【請求項8】
被検サンプルの採取器具と、該サンプルの保存用液とを含む、請求項1に記載の歯周病診断用化合物を検出するための歯周病診断用検査キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の歯周病診断用マーカー及びこれを用いる歯周病の診断方法又は歯周病の診断を補助する方法に関し、具体的には、被験者の口腔由来臨床サンプルの解析に用いるための歯周病診断用マーカー及びこれを用いる歯周病の診断方法又は歯周病の診断を補助する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病は、歯肉炎と歯周炎とに大別される。歯周病は非プラーク性歯肉疾患を除き、歯周病原細菌によって引き起こされる感染性炎症性疾患であり、歯肉、セメント質、歯根膜及び歯槽骨よりなる歯周組織に起こる疾患をいう。歯周病の有無及び重症度の診断は、歯肉ポケットの深さ(アタッチメントレベル)と、複根歯の根分岐部での水平的な歯周組織の破壊の程度(根分岐部病変)という指標に基づいて行われる(非特許文献1)。しかしこれらは個々の歯肉ポケット又は歯ごとの形態的な指標で、一口腔としての評価については専門的な診断能力が要求される。そこで、歯周病の有無及び重症度を被検者の体液サンプルの生化学的、免疫学的及び/又は微生物学的方法による測定により診断できるマーカー物質(以下、「歯周病診断用マーカー」と称する。)の探索が行われてきた。
【0003】
従来の歯周病診断用マーカーには、ラクトフェリン、アルブミン、アルファ1-アンチトリプシン、ヘモグロビン、インターロイキン(IL)-1β、IL-6、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)8等が知られている。すなわち、特許文献1は免疫学的方法によって歯周ポケット中のラクトフェリンを測定する歯周病の診断キットを開示する。特許文献2は、抗アルブミン抗体や抗アルファ1-アンチトリプシン抗体などの抗体を備え、歯周滲出液中における血液蛋白を測定対象として、免疫学的方法を用いる歯周病の診断キットを開示する。また非特許文献2は、唾液又は洗口吐出液中の潜血(ヘモグロビン)を検出し、歯周病を診断する方法を開示する。非特許文献3は、歯周病診断用マーカーとしてのIL-1β、IL-6及びMMP8に関するそれぞれ複数の原著論文に基づく総説である。これらは歯周ポケット由来の歯周滲出液中の患者自身のタンパク質を検出するものである。特許文献3は、オートインデューサー-2からなる歯周病発症判定用マーカーを開示する。オートインデューサー-2は、微生物のクオラムセンシングシステムのシグナル伝達分子の4,5-ジヒドロキシ-2,3-ペンタンジオンを指し、オートインデューサー-2の存在下で発光するレポーター菌を用いて測定することができる。しかし、歯肉溝滲出液には歯肉溝滲出液以外の成分も含まれており、唾液が混入した場合に正確性に欠ける場合がある。唾液中の潜血には、歯周病由来以外のものも混入している可能性がある。さらに唾液量は個人差や日内変動も大きく、歯周病の進行度までを診断することはできない。歯周病診断用マーカーとしてのオートインデューサー-2には、歯垢の採取位置による結果のばらつきや、歯周病の進行度が歯全体なのか局部的なのかどうかなどの判断においては有効な結果が得られないという欠点がある。最近(2021年)の歯周病診断ツールキットの総説である非特許文献4も、歯周病診断用マーカーの標準化アッセイの欠如、マーカーの閾値の未確立が問題であると指摘している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-2899号公報
【特許文献2】特開2000-028608号公報
【特許文献3】国際公開第2010/122946号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Tonetti, M.S. et al. J Clin Periodontol. (2018) 45(Suppl 20): S149-S161.
【非特許文献2】Ito, H. et al., Clinical Oral Investigations (2021) 25:487-495.
【非特許文献3】Gul, S.S. et al., Diagnostics (2020) 10:838.
【非特許文献4】Ko, T.J, et al., Diagnostics (2021) 11:932.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、標準化アッセイが可能で、かつ、臨床的重症度と相関する、歯周病診断用の新規マーカーを提供することである。本発明のさらなる目的は、該新規マーカーを用いる、歯周病を診断するための新規技術及び/又は歯周病の臨床的重症度を評価及び/又は層別化するための新規技術を提供することである。本発明の追加の目的は、本発明の歯周病診断用マーカーの検出に使用するための歯周病診断用検査キットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべくヒト被検者の体液サンプル、例えば、歯肉溝滲出液サンプルにおけるオミックス解析を通じて検討を進め、特定のヒト由来タンパク質及び低分子代謝産物のサンプル中の濃度が歯周病の臨床的重症度と強く相関することを発見し、本発明を完成するに至った。
【0008】
[1]本発明は、歯周病を診断する方法又は歯周病の診断を補助する方法を提供する。本発明の歯周病を診断する方法又は診断を補助する方法は、
(1)ヒト被検者の体液サンプルを採取する工程と、
(2)該サンプルにおけるジアシルグリセロール(DG)、トリアシルグリセロール(TG)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、スフィンゴミエリン(SM)、セラミド(Cer)、ヘキソシルセラミド(HexCer)、グルタル酸、メチルコハク酸、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸(6P)、セドヘプツロース-7-リン酸(S7P)、リボース-5-リン酸(R5P)、リブロース-5-リン酸(Ru5P)及びキシルロース-5-リン酸(Xu5P)からなる群から選択される少なくとも1種類の分子種の物質の濃度を測定する工程とを含み、
DG 16:0_18:2、DG 16:0_20:1、DG 16:0_20:2、DG 16:0_20:3、DG 16:0_20:4、DG 16:1_18:2、DG 17:0_18:1、DG 18:0_18:1、DG 18:0_18:2、DG 18:0_20:2、DG 18:0_20:3、DG 18:0_20:4、DG 18:0_22:4、DG 18:1_18:2、DG 18:1_20:1、DG 18:1_20:2、DG 18:1_20:3及びDG 18:1_20:4からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のジアシルグリセロール(DG)と、
TG 52:1及びTG 55:8からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のトリアシルグリセロール(TG)と、
PC 14:0_16:0、PC 15:0_16:0、PC 15:0_18:1、PC 16:0_16:0、PC 16:0_16:1、PC 16:0_17:0、PC 16:0_18:0、PC 16:0_18:1、PC 16:0_18:2、PC 16:0_20:1、PC 16:0_20:2、PC 16:0_20:3、PC 16:0_20:4、PC 16:1_18:0、PC 16:1_18:1、PC 16:1_18:2、PC 17:0_18:1、PC 17:0_18:2、PC 17:1_18:1、PC 18:0_18:1、PC 18:0_18:2、PC 18:0_20:1、PC 18:0_20:2、PC 18:0_20:3、PC 18:0_20:4、PC 18:1_18:1、PC 18:1_18:2、PC 18:1_20:1、PC 18:1_20:2、PC 18:1_20:3、PC 18:1_20:4、PC 18:2_18:2、PC 18:2_20:1及びPC 18:2_20:2からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルコリン(PC)と、
PI 16:0_18:1、PI 16:0_18:2、PI 16:0_20:4、PI 18:0_18:1、PI 18:0_18:2、PI 18:0_20:2、PI 18:0_20:3、PI 18:0_20:4、PI 18:0_22:4、PI 18:1_18:1及びPI 18:1_20:4からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルイノシトール(PI)と、
PE 16:1_17:1、PE 17:1_17:1、PE 18:0_18:1、PE 18:0_18:2、PE 18:0_20:3、PE 18:0_20:4、PE 18:1_18:1、PE 18:1_18:2、PE 18:1_20:2、PE 18:1_20:3及びPE 18:2_20:2からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルエタノールアミン(PE)と、
SM 18:1;02/14:0、SM 18:1;O2/15:0、SM 18:1;O2/16:0、SM 18:1;O2/16:1、SM 18:1;O2/17:0、SM 18:1;02/18:0、SM 18:1;02/18:1、SM 18:1;02/20:0、SM 18:1;02/20:1、SM 18:1;02/22:0、SM 18:1;02/22:1、SM 18:1;O2/24:0及びSM 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のスフィンゴミエリン(SM)と、
Cer 18:1;O2/17:0及びCer 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のセラミド(Cer)と、
HexCer 18:1;O2/16:0及びHexCer 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のヘキソシルセラミド(HexCer)と
からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種の脂質と、
グルタル酸、メチルコハク酸、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸(6P)、セドヘプツロース-7-リン酸(S7P)、リボース-5-リン酸(R5P)、リブロース-5-リン酸(Ru5P)及びキシルロース-5-リン酸(Xu5P)からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種の親水性代謝物とからなる群から選択される、少なくとも1つの物質の濃度が上昇するとき、前記ヒト被検者を歯周病と診断する、あるいは、前記ヒト被検者を歯周病と診断することを補助する。
[2][1]の方法において、前記ヒト被検者の体液サンプルは歯肉溝滲出液サンプルであってもよい。
[3][1]又は[2]の方法において、前記分子種の脂質及び/又は親水性代謝物は、軽度の歯周病の体液サンプル中の濃度と、重度の歯周病の体液サンプル中の濃度の有意差がp<0.01であってもよい。
[4]本発明は、歯周病の重症度予測方法を提供する。本発明の歯周病の重症度予測方法は、
(1)ヒト被検者の体液サンプルを採取する工程と、
(2)該サンプルにおけるジアシルグリセロール(DG)、トリアシルグリセロール(TG)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、スフィンゴミエリン(SM)、セラミド(Cer)、ヘキソシルセラミド(HexCer)、グルタル酸、メチルコハク酸、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸(6P)、セドヘプツロース-7-リン酸(S7P)、リボース-5-リン酸(R5P)、リブロース-5-リン酸(Ru5P)及びキシルロース-5-リン酸(Xu5P)からなる群から選択される少なくとも1種類の分子種の物質の濃度を測定する工程とを含み、
DG 16:0_18:2、DG 16:0_20:1、DG 16:0_20:2、DG 16:0_20:3、DG 16:0_20:4、DG 16:1_18:2、DG 17:0_18:1、DG 18:0_18:1、DG 18:0_18:2、DG 18:0_20:2、DG 18:0_20:3、DG 18:0_20:4、DG 18:0_22:4、DG 18:1_18:2、DG 18:1_20:1、DG 18:1_20:2、DG 18:1_20:3及びDG 18:1_20:4からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のジアシルグリセロール(DG)と、
TG 52:1及びTG 55:8からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のトリアシルグリセロール(TG)と、
PC 14:0_16:0、PC 15:0_16:0、PC 15:0_18:1、PC 16:0_16:0、PC 16:0_16:1、PC 16:0_17:0、PC 16:0_18:0、PC 16:0_18:1、PC 16:0_18:2、PC 16:0_20:1、PC 16:0_20:2、PC 16:0_20:3、PC 16:0_20:4、PC 16:1_18:0、PC 16:1_18:1、PC 16:1_18:2、PC 17:0_18:1、PC 17:0_18:2、PC 17:1_18:1、PC 18:0_18:1、PC 18:0_18:2、PC 18:0_20:1、PC 18:0_20:2、PC 18:0_20:3、PC 18:0_20:4、PC 18:1_18:1、PC 18:1_18:2、PC 18:1_20:1、PC 18:1_20:2、PC 18:1_20:3、PC 18:1_20:4、PC 18:2_18:2、PC 18:2_20:1、PC 18:2_20:2からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルコリン(PC)と、
PI 16:0_18:1、PI 16:0_18:2、PI 16:0_20:4、PI 18:0_18:1、PI 18:0_18:2、PI 18:0_20:2、PI 18:0_20:3、PI 18:0_20:4、PI 18:0_22:4、PI 18:1_18:1及び PI 18:1_20:4からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルイノシトール(PI)と、
PE 16:1_17:1、PE 17:1_17:1、PE 18:0_18:1、PE 18:0_18:2、PE 18:0_20:3、PE 18:0_20:4、PE 18:1_18:1、PE 18:1_18:2、PE 18:1_20:2、PE 18:1_20:3及びPE 18:2_20:2からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルエタノールアミン(PE)と、
SM 18:1;02/14:0、SM 18:1;O2/15:0、SM 18:1;O2/16:0、SM 18:1;O2/16:1、SM 18:1;O2/17:0、SM 18:1;02/18:0、SM 18:1;02/18:1、SM 18:1;02/20:0、SM 18:1;02/20:1、SM 18:1;02/22:0、SM 18:1;02/22:1、SM 18:1;O2/24:0及びSM 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のスフィンゴミエリン(SM)と、
Cer 18:1;O2/17:0及びCer 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のセラミド(Cer)と、
HexCer 18:1;O2/16:0及びHexCer 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のヘキソシルセラミド(HexCer)と
からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種の脂質と、
グルタル酸、メチルコハク酸、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸(6P)、セドヘプツロース-7-リン酸(S7P)、リボース-5-リン酸(R5P)、リブロース-5-リン酸(Ru5P)及びキシルロース-5-リン酸(Xu5P)からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種の親水性代謝物とからなる群から選択される、少なくとも1つの物質の濃度が、第1の基準値以上のとき、重度の歯周病を罹患していることを予測する指標とし、第1の基準値未満であって第2の基準値以上のとき、中程度の歯周病を罹患していることを予測する指標とし、第2の基準値未満のとき、軽度の歯周病を罹患しているか、あるいは、歯周病を罹患していないことの指標とする。
[5][4]の方法において、前記ヒト被検者の体液サンプルは歯肉溝滲出液サンプルであってもよい。
[6][4]又は「5」の方法において、第1及び第2の基準値は、予めアタッチメントレベル及び/又は歯槽骨吸収度によって重症度が判定された歯の歯肉ポケットから採取した歯肉溝滲出液サンプルでの前記歯周病診断用マーカーの濃度に基づいて決定されてもよい。
[7]本発明の歯周病の重症度予測方法において、第1及び第2の基準値は、
DG 16:0_18:2、DG 16:0_20:1、DG 16:0_20:2、DG 16:0_20:3、DG 16:0_20:4、DG 16:1_18:2、DG 17:0_18:1、DG 18:0_18:1、DG 18:0_18:2、DG 18:0_20:2、DG 18:0_20:3、DG 18:0_20:4、DG 18:0_22:4、DG 18:1_18:2、DG 18:1_20:1、DG 18:1_20:2、DG 18:1_20:3及びDG 18:1_20:4からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のジアシルグリセロール(DG)と、
TG 52:1及びTG 55:8からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のトリアシルグリセロール(TG)と、
PC 14:0_16:0、PC 15:0_16:0、PC 15:0_18:1、PC 16:0_16:0、PC 16:0_16:1、PC 16:0_17:0、PC 16:0_18:0、PC 16:0_18:1、PC 16:0_18:2、PC 16:0_20:1、PC 16:0_20:2、PC 16:0_20:3、PC 16:0_20:4、PC 16:1_18:0、PC 16:1_18:1、PC 16:1_18:2、PC 17:0_18:1、PC 17:0_18:2、PC 17:1_18:1、PC 18:0_18:1、PC 18:0_18:2、PC 18:0_20:1、PC 18:0_20:2、PC 18:0_20:3、PC 18:0_20:4、PC 18:1_18:1、PC 18:1_18:2、PC 18:1_20:1、PC 18:1_20:2、PC 18:1_20:3、PC 18:1_20:4、PC 18:2_18:2、PC 18:2_20:1、PC 18:2_20:2からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルコリン(PC)と、
PI 16:0_18:1、PI 16:0_18:2、PI 16:0_20:4、PI 18:0_18:1、PI 18:0_18:2、PI 18:0_20:2、PI 18:0_20:3、PI 18:0_20:4、PI 18:0_22:4、PI 18:1_18:1及び PI 18:1_20:4からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルイノシトール(PI)と、
PE 16:1_17:1、PE 17:1_17:1、PE 18:0_18:1、PE 18:0_18:2、PE 18:0_20:3、PE 18:0_20:4、PE 18:1_18:1、PE 18:1_18:2、PE 18:1_20:2、PE 18:1_20:3及びPE 18:2_20:2からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルエタノールアミン(PE)と、
SM 18:1;02/14:0、SM 18:1;O2/15:0、SM 18:1;O2/16:0、SM 18:1;O2/16:1、SM 18:1;O2/17:0、SM 18:1;02/18:0、SM 18:1;02/18:1、SM 18:1;02/20:0、SM 18:1;02/20:1、SM 18:1;02/22:0、SM 18:1;02/22:1、SM 18:1;O2/24:0及びSM 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のスフィンゴミエリン(SM)と、
Cer 18:1;O2/17:0及びCer 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のセラミド(Cer)と、
HexCer 18:1;O2/16:0及びHexCer 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のヘキソシルセラミド(HexCer)と
からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種の脂質と、
グルタル酸、メチルコハク酸、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸(6P)、セドヘプツロース-7-リン酸(S7P)、リボース-5-リン酸(R5P)、リブロース-5-リン酸(Ru5P)及びキシルロース-5-リン酸(Xu5P)からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種の親水性代謝物とからなる群から選択される、少なくとも2つの物質の濃度に基づいて決定されてもよい。
[8]本発明は、[1]~[7]の方法に使用するための歯周病診断用検査キットを提供する。本発明のキットは、被検サンプルの採取器具と、該サンプルの保存用液とを含む。
[9]本発明の歯周病診断用検査キットにおいて、被検サンプルの採取器具は歯肉溝滲出液サンプルの採取器具であってもよい。
[10]本発明は、定量的なアッセイが可能で、かつ、臨床的重症度と相関する、歯周病の生化学的な新規歯周病診断用マーカーを提供する。本発明の歯周病診断用マーカーは、
DG 16:0_18:2、DG 16:0_20:1、DG 16:0_20:2、DG 16:0_20:3、DG 16:0_20:4、DG 16:1_18:2、DG 17:0_18:1、DG 18:0_18:1、DG 18:0_18:2、DG 18:0_20:2、DG 18:0_20:3、DG 18:0_20:4、DG 18:0_22:4、DG 18:1_18:2、DG 18:1_20:1、DG 18:1_20:2、DG 18:1_20:3及びDG 18:1_20:4からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のジアシルグリセロール(DG)と、
TG 52:1及びTG 55:8からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のトリアシルグリセロール(TG)と、
PC 14:0_16:0、PC 15:0_16:0、PC 15:0_18:1、PC 16:0_16:0、PC 16:0_16:1、PC 16:0_17:0、PC 16:0_18:0、PC 16:0_18:1、PC 16:0_18:2、PC 16:0_20:1、PC 16:0_20:2、PC 16:0_20:3、PC 16:0_20:4、PC 16:1_18:0、PC 16:1_18:1、PC 16:1_18:2、PC 17:0_18:1、PC 17:0_18:2、PC 17:1_18:1、PC 18:0_18:1、PC 18:0_18:2、PC 18:0_20:1、PC 18:0_20:2、PC 18:0_20:3、PC 18:0_20:4、PC 18:1_18:1、PC 18:1_18:2、PC 18:1_20:1、PC 18:1_20:2、PC 18:1_20:3、PC 18:1_20:4、PC 18:2_18:2、PC 18:2_20:1、PC 18:2_20:2からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルコリン(PC)と、
PI 16:0_18:1、PI 16:0_18:2、PI 16:0_20:4、PI 18:0_18:1、PI 18:0_18:2、PI 18:0_20:2、PI 18:0_20:3、PI 18:0_20:4、PI 18:0_22:4、PI 18:1_18:1及び PI 18:1_20:4からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルイノシトール(PI)と、
PE 16:1_17:1、PE 17:1_17:1、PE 18:0_18:1、PE 18:0_18:2、PE 18:0_20:3、PE 18:0_20:4、PE 18:1_18:1、PE 18:1_18:2、PE 18:1_20:2、PE 18:1_20:3及びPE 18:2_20:2からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルエタノールアミン(PE)と、
SM 18:1;02/14:0、SM 18:1;O2/15:0、SM 18:1;O2/16:0、SM 18:1;O2/16:1、SM 18:1;O2/17:0、SM 18:1;02/18:0、SM 18:1;02/18:1、SM 18:1;02/20:0、SM 18:1;02/20:1、SM 18:1;02/22:0、SM 18:1;02/22:1、SM 18:1;O2/24:0及びSM 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のスフィンゴミエリン(SM)と、
Cer 18:1;O2/17:0及びCer 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のセラミド(Cer)と、
HexCer 18:1;O2/16:0及びHexCer 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のヘキソシルセラミド(HexCer)と
からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種の脂質と、
グルタル酸、メチルコハク酸、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸(6P)、セドヘプツロース-7-リン酸(S7P)、リボース-5-リン酸(R5P)、リブロース-5-リン酸(Ru5P)及びキシルロース-5-リン酸(Xu5P)からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種の親水性代謝物とからなる群から選択される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、定量的なアッセイが可能で、かつ、臨床的重症度と相関する、歯周病の生化学的な新規歯周病診断用マーカーを提供することが可能となる。これにより、前記歯周病診断用マーカーを用いる歯周病の診断方法又は歯周病の診断を補助する方法、及び、歯周病の重症度の判定方法を実施することができる。さらに、本発明によれば、本発明の歯周病診断用マーカーを検出するための歯周病診断用検査キットを提供することが可能となる。これにより、再現性のある歯周病の診断を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1-1】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるDG 16:0_18:2、DG 16:0_20:1、DG 16:0_20:2及びDG 16:0_20:3の分子種のジアシルグリセロール(DG)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのジアシルグリセロールの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図1-2】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるDG 16:0_20:4、DG 16:1_18:2、DG 17:0_18:1及びDG 18:0_18:1の分子種のジアシルグリセロール(DG)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのジアシルグリセロールの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図1-3】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるDG 18:0_18:2、DG 18:0_20:2及びDG 18:0_20:3の分子種のジアシルグリセロール(DG)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのジアシルグリセロールの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図1-4】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるDG 18:0_20:4、DG 18:0_22:4、DG 18:1_18:2及びDG 18:1_20:1の分子種のジアシルグリセロール(DG)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのジアシルグリセロールの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図1-5】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおける、DG 18:1_20:2、DG 18:1_20:3及びDG 18:1_20:4の分子種のジアシルグリセロール(DG)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのジアシルグリセロールの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図2】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるTG 52:1及びTG 55:8の分子種のトリアシルグリセロール(TG)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのトリアシルグリセロールの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図3-1】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるPC 14:0_16:0、PC 15:0_16:0、PC 15:0_18:1及びPC 16:0_16:0の分子種のホスファチジルコリン(PC)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのホスファチジルコリンの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図3-2】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるPC 16:0_16:1、PC 16:0_17:0、PC 16:0_18:0及びPC 16:0_18:1の分子種のホスファチジルコリン(PC)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのホスファチジルコリンの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図3-3】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるPC 16:0_18:2、PC 16:0_20:1、PC 16:0_20:2及びPC 16:0_20:3の分子種のホスファチジルコリン(PC)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのホスファチジルコリンの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図3-4】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるPC 16:0_20:4、PC 16:1_18:0、PC 16:1_18:1及びPC 16:1_18:2の分子種のホスファチジルコリン(PC)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのホスファチジルコリンの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図3-5】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるPC 17:0_18:1、PC 17:0_18:2、PC 17:1_18:1及びPC 18:0_18:1の分子種のホスファチジルコリン(PC)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのホスファチジルコリンの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図3-6】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるPC 18:0_18:2、PC 18:0_20:1及びPC 18:0_20:2の分子種のホスファチジルコリン(PC)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのホスファチジルコリンの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図3-7】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるPC 18:0_20:3、PC 18:0_20:4、PC 18:1_18:1及びPC 18:1_18:2の分子種のホスファチジルコリン(PC)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのホスファチジルコリンの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図3-8】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるPC 18:1_20:1、PC 18:1_20:2、PC 18:1_20:3及びPC 18:1_20:4の分子種のホスファチジルコリン(PC)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのホスファチジルコリンの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図3-9】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるPC 18:2_18:2、PC 18:2_20:1及びPC 18:2_20:2の分子種のホスファチジルコリン(PC)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのホスファチジルコリンの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図4-1】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるPI 16:0_18:1、PI 16:0_18:2、PI 16:0_20:4及びPI 18:0_18:1の分子種のホスファチジルイノシトール(PI)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのホスファチジルイノシトールの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図4-2】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるPI 18:0_18:2、PI 18:0_20:2、PI 18:0_20:3及びPI 18:0_20:4の分子種のホスファチジルイノシトール(PI)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのホスファチジルイノシトールの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図4-3】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるPI 18:0_22:4、PI 18:1_18:1及びPI 18:1_20:4の分子種のホスファチジルイノシトール(PI)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのホスファチジルイノシトールの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図5-1】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるPE 16:1_17:1、PE 17:1_17:1、PE 18:0_18:1及びPE 18:0_18:2の分子種のホスファチジルエタノールアミン(PE)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのホスファチジルエタノールアミンの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図5-2】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるPE 18:0_20:3、PE 18:0_20:4、PE 18:1_18:1及びPE 18:1_18:2の分子種のホスファチジルエタノールアミン(PE)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのホスファチジルエタノールアミンの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図5-3】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるPE 18:1_20:2、PE 18:1_20:3及びPE 18:2_20:2の分子種のホスファチジルエタノールアミン(PE)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのホスファチジルエタノールアミンの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図6-1】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるSM 18:1;02/14:0、SM 18:1;O2/15:0、SM 18:1;O2/16:0及びSM 18:1;O2/16:1の分子種のスフィンゴミエリン(SM)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのスフィンゴミエリンの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図6-2】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるSM 18:1;O2/17:0、SM 18:1;02/18:0、SM 18:1;02/18:1及びSM 18:1;02/20:0の分子種のスフィンゴミエリン(SM)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのスフィンゴミエリンの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図6-3】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるSM 18:1;02/20:1、SM 18:1;02/22:0、SM 18:1;02/22:1、SM 18:1;O2/24:0及びSM 18:1;O2/24:1の分子種のスフィンゴミエリン(SM)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのスフィンゴミエリンの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図7】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるCer 18:1;O2/17:0及びCer 18:1;O2/24:1の分子種のセラミド(Cer)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのセラミドの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図8】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるHexCer 18:1;O2/16:0及びHexCer 18:1;O2/24:1の分子種のヘキソシルセラミド(HexCer)の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらのヘキソシルセラミドの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
図9】重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおける、グルタル酸又はメチルコハク酸と、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸(6P)と、セドヘプツロース-7-リン酸(S7P)と、リボース-5-リン酸(R5P)、リブロース-5-リン酸(Ru5P)又はキシルロース-5-リン酸(Xu5P)との分子種の親水性代謝物の測定結果を示す棒グラフ。誤差棒は標準誤差を表す。これらの親水性代謝物の分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
歯周病の初期段階である歯肉炎は、歯肉にのみ炎症性病変が生じたもので、セメント質、歯根膜及び歯槽骨は破壊されていない。口腔衛生管理が不良であると歯面に付着した細菌が増殖し、細菌プラークが形成され歯肉に炎症が生じる。歯肉が炎症によって腫脹して形成される歯と歯肉の間の空隙を歯周ポケットという。炎症が歯肉に限局している間は、歯周ポケットの底部はセメント-エナメル境に位置する。しかし歯周病が進行すると、歯周ポケットが根尖方向に深くなる。セメント-エナメル境と歯肉ポケットの底との距離をアタッチメントレベルという。また、歯根を支持する歯槽骨の溶骨の程度はX線写真で判定でき、歯槽骨吸収度という。さらに根分岐部病変とは、多根歯の根分岐部での水平的な歯周組織の破壊の程度をいい、LindheとNymanの分類では、水平的な歯周組織の破壊程度が歯の幅径の1/3以内のものを1度とし、水平的な歯周組織の破壊程度が歯の幅径の1/3を超えるが根分岐部を歯周プローブが通過しないものを2度とし、完全に根分岐部の付着が破壊され、頬舌的あるいは近遠心的に歯周プローブが貫通するものを3度という。歯周組織破壊の程度によって歯周炎の重症度を定義することができる。すなわち、軽度歯周炎とはアタッチメントレベルが3mm未満若しくは歯槽骨吸収度が15%未満で、根分岐部病変がない歯周炎をいう(ステージIに相当)。中等度歯周炎とは、歯槽骨吸収度が15%以上33%未満若しくはアタッチメントレベルが3mm以上5mm未満であり、根分岐部病変がある歯周炎をいう(ステージIIに相当)。重度歯周炎とは、歯槽骨吸収度が33%以上若しくはアタッチメントレベルが5mm以上であり、根分岐部病変が2度以上の歯周炎をいう(ステージIII、IVに相当)。ここでステージIIIは4本未満の歯の喪失の可能性を伴う重度歯周炎をいい、ステージIVは4本以上の歯の喪失、すなわち、歯列の喪失の可能性を伴う重度歯周炎をいう。本明細書における歯周病の重症度では、軽度がステージIに相当し、中度がステージIIに相当し、重度がステージIII及びIVに相当する。
【0012】
以下本明細書において、本発明の歯周病を診断する方法、歯周病の診断を補助する方法及び/又は歯周病の重症度予測方法に係るヒト被検者の体液サンプル中の物質であって、前記特定の分子種の物質、並びに、本発明の歯周病診断用マーカーであって、前記特定の分子種の化合物を「本発明の歯周病診断用化合物」と称する。本発明の歯周病診断用化合物は、本発明の脂質の歯周病診断用化合物及び本発明の親水性代謝物の歯周病診断用化合物を含むが、これらに限られない、あるいは、本発明の脂質の歯周病診断用化合物及び本発明の親水性代謝物の歯周病診断用化合物から選択される。本発明の脂質の歯周病診断用化合物は、ジアシルグリセロール(DG)、トリアシルグリセロール(TG)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、スフィンゴミエリン(SM)、セラミド(Cer)及びヘキソシルセラミド(HexCer)を含むが、これらに限られない、あるいは、DG、TG、PC、PI、PE、SM、Cer及びHexCerから選択される少なくとも1種類の脂質の分子種からなる。本発明の親水性代謝物の歯周病診断用化合物は、グルタル酸、メチルコハク酸、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸(6P)、セドヘプツロース-7-リン酸(S7P)、リボース-5-リン酸(R5P)、リブロース-5-リン酸(Ru5P)及びキシルロース-5-リン酸(Xu5P)を含むが、これらに限られない、あるいは、グルタル酸、メチルコハク酸、6P、S7P、R5P、Ru5P及びXu5Pから選択される少なくとも1種類の親水性代謝物の分子種からなる。
【0013】
本発明における脂質のうちトリアシルグリセロールについて、3本のアシル基は、互いに独立に飽和又は不飽和アシル基であって、その炭素数が3~30、好ましくは12~24、より好ましくは16~20であり、アシル基が不飽和アシル基のとき、1本のアシル基に1~6個の二重結合を含み得る。
【0014】
本明細書において、1対の自然数N1及びN2と、コロン記号“:”とを用いて、ある脂質を「N1:N2」と表記するとき、当該表記の脂質分子の全アシル基の炭素原子の総数がN1であり、当該表記の脂質分子の全アシル基の炭素骨格の不飽和結合の総数がN2であることを示す。例えば、TG N1:N2は、3本のアシル基の炭素原子の総数がN1で、3本のアシル基の炭素骨格の不飽和結合の総数がN2である、トリアシルグリセロールを表す。以下、本明細書における全ての脂質の質量分析で得られる脂質構造の短縮表記(shorthand notation)は、Liebisch, G.ら、J. Lipid Res. (2020) 61(12) 1539-1555に従う。
【0015】
1の実施態様では、本発明の歯周病診断用化合物は、TG 52:1及びTG 55:8からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のトリアシルグリセロールであり得る。
【0016】
以下、本明細書において、不飽和結合とは、炭素と炭素との間の二重結合及び/又は三重結合を意味する。ある特定の分子種の脂質について不飽和結合は、二重結合のみを指すことがある。
【0017】
本明細書において、1対の自然数N1、N2及びコロン記号“:”と、もう1対の自然数N3、N4及びコロン記号“:”と、下線“_”とを用いて、脂質分子の2本のアシル基の炭素原子数と、該アシル基の炭素骨格の不飽和結合の数とを「N1:N2_N3:N4」と表記するとき、当該表記の脂質分子は2本のアシル基を有し、一方のアシル基の炭素原子の数がN1で、該アシル基の炭素骨格の不飽和結合の数がN2であり、もう一方のアシル基の炭素原子の数がN3で、該アシル基の炭素骨格の不飽和結合の数がN4であることを表す。本明細書の実施例では、ジアシルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール及びホスファチジルエタノールアミン分子の2本のアシル基がグリセロール又はその誘導体のどの炭素に結合するかを区別しない。すなわち本明細書の実施例では、ジアシルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール及びホスファチジルエタノールアミン分子の異性体について立体特異的番号付け(stereospecific numbering)は行わない。
【0018】
本発明における脂質のうちジアシルグリセロールは、一般式I
【0019】
【化1】
【0020】
で表され、式中
及びRは、互いに独立した飽和又は不飽和アシル基である。
【0021】
本発明におけるジアシルグリセロールの2本のアシル基は、互いに独立に炭素数が3~30、好ましくは14~24、より好ましくは16~22であり、アシル基が不飽和アシル基のとき、1本のアシル基に1~6個の二重結合を含み得る。
【0022】
1の実施態様では、本発明の歯周病診断用化合物はDG 16:0_18:2、DG 16:0_20:1、DG 16:0_20:2、DG 16:0_20:3、DG 16:0_20:4、DG 16:1_18:2、DG 17:0_18:1、DG 18:0_18:1、DG 18:0_18:2、DG 18:0_20:2、DG 18:0_20:3、DG 18:0_20:4、DG 18:0_22:4、DG 18:1_18:2、DG 18:1_20:1、DG 18:1_20:2、DG 18:1_20:3及びDG 18:1_20:4からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のジアシルグリセロールであり得る。
【0023】
本発明におけるリン脂質であるホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール及びホスファチジルエタノールは、一般式II
【0024】
【化2】
【0025】
で表され、又はその薬学的に許容される塩であり、式中、
は、頭部基部分であり、
及びRは、互いに独立した飽和又は不飽和アシル基である。
【0026】
リン脂質がホスファチジルコリンのとき、Rは、
【0027】
【化3】
【0028】
であり、リン脂質がホスファチジルイノシトールのとき、Rは、
【0029】
【化4】
【0030】
であり、リン脂質がホスファチジルエタノールアミンのとき、Rは、
【0031】
【化5】
【0032】
である。
【0033】
本発明におけるリン脂質の2本のアシル基は、互いに独立に炭素数が3~30、好ましくは12~22、より好ましくは14~20であり、アシル基が不飽和アシル基のとき、1本のアシル基に1~6個の二重結合を含み得る。
【0034】
薬学的に許容される塩としては、アルカリ金属塩(例、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩など)などの無機塩、アンモニウム塩などが挙げられる。また、薬学的に許容される塩は分子内塩であってもよい。例えば、Rが、
【0035】
【化6】
【0036】
又は
【0037】
【化7】
【0038】
のとき、一般式IIにおけるホスホ部位は、
【0039】
【化8】
【0040】
であり得る。
【0041】
1の実施態様では、本発明の歯周病診断用化合物は、PC 14:0_16:0、PC 15:0_16:0、PC 15:0_18:1、PC 16:0_16:0、PC 16:0_16:1、PC 16:0_17:0、PC 16:0_18:0、PC 16:0_18:1、PC 16:0_18:2、PC 16:0_20:1、PC 16:0_20:2、PC 16:0_20:3、PC 16:0_20:4、PC 16:1_18:0、PC 16:1_18:1、PC 16:1_18:2、PC 17:0_18:1、PC 17:0_18:2、PC 17:1_18:1、PC 18:0_18:1、PC 18:0_18:2、PC 18:0_20:1、PC 18:0_20:2、PC 18:0_20:3、PC 18:0_20:4、PC 18:1_18:1、PC 18:1_18:2、PC 18:1_20:1、PC 18:1_20:2、PC 18:1_20:3、PC 18:1_20:4、PC 18:2_18:2、PC 18:2_20:1、PC 18:2_20:2からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルコリンであり得る。
【0042】
同様に本明細書において、ホスファチジルイノシトールを「PI N1:N2_N3:N4」と表記するとき、当該表記のホスファチジルイノシトール分子は一般式IIにおいてR及びRの2本のアシル基を有し、一方のアシル基の炭素原子の数がN1で、該アシル基の炭素骨格の不飽和結合の数がN2であり、もう一方のアシル基の炭素原子の数がN3で、該アシル基の炭素骨格の不飽和結合の数がN4であることを表す。
【0043】
1の実施態様では、本発明の歯周病診断用化合物は、PI 16:0_18:1、PI 16:0_18:2、PI 16:0_20:4、PI 18:0_18:1、PI 18:0_18:2、PI 18:0_20:2、PI 18:0_20:3、PI 18:0_20:4、PI 18:0_22:4、PI 18:1_18:1及び PI 18:1_20:4からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルイノシトールであり得る。
【0044】
同様に本明細書において、ホスファチジルエタノールアミンを「PE N1:N2_N3:N4」と表記するとき、当該表記のホスファチジルエタノールアミン分子は一般式IIにおいてR及びRの2本のアシル基を有し、一方のアシル基の炭素原子の数がN1で、該アシル基の炭素骨格の不飽和結合の数がN2であり、もう一方のアシル基の炭素原子の数がN3で、該アシル基の炭素骨格の不飽和結合の数がN4であることを表す。
【0045】
1の実施態様では、本発明の歯周病診断用化合物は、PE 16:1_17:1、PE 17:1_17:1、PE 18:0_18:1、PE 18:0_18:2、PE 18:0_20:3、PE 18:0_20:4、PE 18:1_18:1、PE 18:1_18:2、PE 18:1_20:2、PE 18:1_20:3及びPE 18:2_20:2からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルエタノールアミンであり得る。
【0046】
本発明における脂質のうちスフィンゴミエリンは、一般式III
【0047】
【化9】
【0048】
で表され、式中
は、
【0049】
【化10】
【0050】
又は
【0051】
【化11】
【0052】
であり;
は飽和又は不飽和アシル基である。
【0053】
本明細書において、1組の自然数N1、N2、N3、コロン記号“:”及びセミコロン記号“;”と、もう1組の自然数N4、N5、N6、コロン記号“:”及び及びセミコロン記号“;”と、スラッシュ記号“/”とを用いて、一般式IIIのスフィンゴミエリンを、「SM N1:N2;ON3/N4:N5」と表記するとき、当該表記のスフィンゴミエリン分子は、一般式IIIにおいて、長鎖アミノアルコールの一種であるスフィンゴシンと、そのアミノ基にアミド結合したアシル基Rとを有し、スフィンゴシンの炭素原子の数がN1で、スフィンゴシンの炭素骨格の不飽和結合の数がN2であり、スフィンゴシンがN3個の水酸基を含み、アシル基Rの炭素原子の数がN4で、アシル基Rの炭素骨格の不飽和結合の数がN5であることを表す。本明細書のスフィンゴミエリン分子の短縮表記においては、スラッシュ記号“/”の左側がスフィンゴシンの炭素原子の数、不飽和結合の数及び水酸基の数で、右側がアシル基の炭素原子の数、不飽和結合の数及び水酸基の数として区別する。
【0054】
本発明におけるスフィンゴミエリンのスフィンゴシンは、いずれも、炭素数が18、不飽和結合が1個、水酸基が2個である。本発明におけるスフィンゴミエリンのアシル基は、炭素数が10~30、好ましくは15~24であり、アシル基が不飽和アシル基のとき、1~4個の二重結合を含み得る。
【0055】
1の実施態様では、本発明の歯周病診断用化合物は、SM 18:1;02/14:0、SM 18:1;O2/15:0、SM 18:1;O2/16:0、SM 18:1;O2/16:1、SM 18:1;O2/17:0、SM 18:1;02/18:0、SM 18:1;02/18:1、SM 18:1;02/20:0、SM 18:1;02/20:1、SM 18:1;02/22:0、SM 18:1;02/22:1、SM 18:1;O2/24:0及びSM 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のスフィンゴミエリンであり得る。
【0056】
本発明における脂質のうちセラミドは、一般式IV
【0057】
【化12】
【0058】
で表され、式中、
は、飽和又は不飽和アシル基である。
【0059】
本明細書において、1組の自然数N1、N2、N3、コロン記号“:”及びセミコロン記号“;”と、もう1組の自然数N4、N5、N6、コロン記号“:”及び及びセミコロン記号“;”と、スラッシュ記号“/”とを用いて、一般式IVのセラミドを、「Cer N1:N2;ON3/N4:N5」と表記するとき、当該表記のセラミド分子は、一般式IVにおいて、スフィンゴシンの炭素原子の数がN1で、スフィンゴシンの炭素骨格の不飽和結合の数がN2であり、スフィンゴシンがN3個の水酸基を含み、アシル基Rの炭素原子の数がNで、アシル基Rの炭素骨格の不飽和結合の数がNであることを表す。本明細書のセラミド分子の短縮表記においては、スラッシュ記号“/”の左側がスフィンゴシンの炭素骨格の炭素原子の数、不飽和結合の数及び水酸基の数で、右側がアシル基の炭素骨格の炭素原子の数、不飽和結合の数及び水酸基の数として区別する。
【0060】
本発明におけるセラミドのスフィンゴシンは、いずれも、炭素数が18、不飽和結合が1個、水酸基が2個である。本発明におけるセラミドのアシル基は、炭素数が10~30、好ましくは18~24であり、アシル基が不飽和アシル基のとき、1~4個の二重結合を含み得る。
【0061】
1の実施態様では、本発明の歯周病診断用化合物は、Cer 18:1;O2/17:0及びCer 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のセラミドであり得る。
【0062】
本発明における脂質のうちヘキソシルセラミドは、一般式IVのセラミドのスフィンゴシンの末端の水酸基にヘキソースがエーテル結合した構造を有する。
【0063】
本明細書において、1組の自然数N1、N2、N3、コロン記号“:”及びセミコロン記号“;”と、もう1組の自然数N4、N5、N6、コロン記号“:”及びセミコロン記号“;”と、スラッシュ記号“/”とを用いて、一般式IVのヘキソシルセラミドを、「HexCer N1:N2;ON3/N4:N5」と表記するとき、当該表記のヘキソシルセラミド分子は、一般式IVにおいて、スフィンゴシンの炭素原子の数がN1で、スフィンゴシンの炭素骨格の不飽和結合の数がN2であり、スフィンゴシンがN3個の水酸基を含み、アシル基Rの炭素原子の数がN4で、アシル基Rの炭素骨格の不飽和結合の数がN5であることを表す。本明細書のヘキソシルセラミド分子の短縮表記においては、スラッシュ記号“/”の左側がスフィンゴシンの炭素原子の数、不飽和結合の数及び水酸基の数で、右側がアシル基の炭素原子の数、不飽和結合の数及び水酸基の数として区別する。
【0064】
本発明におけるヘキソシルセラミドのスフィンゴシンは、いずれも、炭素数が18、不飽和結合が1個、水酸基が2個である。本発明におけるヘキソシルセラミドのアシル基は、炭素数が10~30、好ましくは18~24であり、アシル基が不飽和アシル基のとき、1~4個の二重結合を含み得る。
【0065】
1の実施態様では、本発明の歯周病診断用化合物は、HexCer 18:1;O2/16:0及びHexCer 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のヘキソシルセラミドであり得る。
【0066】
本明細書における親水性代謝物とは、ヒト生体と、口腔その他ヒト生体の体表及び体内に存在する生物とに由来する水溶性有機化合物であって、分子量が1000以下、好ましくは700以下、より好ましくは500以下、最も好ましくは350以下の水溶性有機化合物をいう。本発明における親水性代謝物の歯周病診断用化合物のうち、グルタル酸はトリプトファンの代謝経路であるグルタル酸経路や、代謝において最も重要なクエン酸回路に関与している。メチルコハク酸は歯垢プラーク中に存在することが知られている。N-アセチルグルコサミン-6-リン酸(6P)は、細菌や糸状菌の細胞壁に含まれ、生体内ではヒアルロン酸その他のグルコサミノグリカンの合成に利用される。セドヘプツロース-7-リン酸(S7P)、リボース-5-リン酸(R5P)、リブロース-5-リン酸(Ru5P)及びキシルロース-5-リン酸(Xu5P)は、いずれもペントースリン酸回路により生成され分解される。ペントースリン酸回路はまたNADPHの供給源として脂質の生産にも関与している。
【0067】
1の実施態様では、本発明の歯周病診断用化合物は、グルタル酸、メチルコハク酸、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸(6P)、セドヘプツロース-7-リン酸(S7P)、リボース-5-リン酸(R5P)、リブロース-5-リン酸(Ru5P)及びキシルロース-5-リン酸(Xu5P)からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種の親水性代謝物であり得る。
【0068】
本発明の歯周病を診断する方法又は歯周病の診断を補助する方法は、ヒト被検者の体液サンプルを採取する工程を含む。ヒト被検者の体液サンプルは、例えば、ヒトの血清及び血漿を含む循環血、尿、唾液、歯垢、舌苔、歯石及び歯肉溝滲出液のサンプルを含むが、これらに限られない。ここで、ヒトの循環血、尿、唾液、歯垢、舌苔及び歯石は常法に従ってサンプルを採取することができる。
【0069】
1の実施態様では、ヒト被検者の体液サンプルは歯肉溝滲出液である。歯肉溝滲出液とは、歯肉溝あるいは歯周ポケット内に漏出した歯肉組織液をいう。歯肉溝は、歯組織において、エナメル質と歯肉の境目にある溝を指す。健康な歯周溝の場合2ミリメートル以内である。歯周病が進行して、歯と歯肉の付着部分が破壊され,その付着部分の溝が深くなった歯周構造を歯肉ポケットという。またポケット底部が歯根側に移動することにより深くなったものを歯周ポケットとよぶ。歯肉溝滲出液は採取量が極めて少量なので、歯肉溝滲出液用の採取器具を歯肉溝内に挿入して歯肉溝滲出液を吸収させて採取する。歯肉溝滲出液用の採取器具の1の実施態様は、後述するとおり、ペーパーポイントという歯科用吸収紙である。
【0070】
本明細書において、ジアシルグリセロール(DG)、トリアシルグリセロール(TG)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、スフィンゴミエリン(SM)、セラミド(Cer)及びヘキソシルセラミド(HexCer)を本発明の歯周病診断用化合物候補脂質代謝物と称する。また本明細書において、グルタル酸、メチルコハク酸、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸(6P)、セドヘプツロース-7-リン酸(S7P)、リボース-5-リン酸(R5P)、リブロース-5-リン酸(Ru5P)及びキシルロース-5-リン酸(Xu5P)を本発明の歯周病診断用化合物候補親水性代謝物と称する。さらに本明細書において、本発明の歯周病診断用化合物候補脂質代謝物及び本発明の歯周病診断用化合物候補親水性代謝物を合わせて本発明の歯周病診断用化合物候補物質と称する。
【0071】
本発明の歯周病を診断する方法又は歯周病の診断を補助する方法における、本発明の歯周病診断用化合物候補物質から選択される少なくとも1種類の分子種の物質の前記サンプル中の濃度を測定する工程は、前記ヒト被検者の体液サンプルから、前記少なくとも1種類の分子種の物質を抽出する工程と、該工程で抽出された前記少なくとも1種類の分子種の物質の分離及び定量を行う工程とを含む。
【0072】
前記ヒト被検者の体液サンプルから、前記少なくとも1種類の分子種の物質を抽出する工程では、得られたサンプル中の前記少なくとも1種類の分子種の物質は、例えば、Omori, K. et al. (J. Atheroscler. Thromb.; 2020; 27:1053-1067)に従って抽出して、ガスクロマトグラフィー(GC)及び高分解能質量分析(MS)を組み合わせた超高分解能GC-MSシステムその他の網羅的分析技術に供することができる。ヒト被検者の体液サンプルが歯肉溝滲出液である本発明の実施態様では、本発明の歯周病診断用化合物候補物質は、ペーパーポイントに吸収した歯肉溝滲出液を100%メタノールに浸漬して、メタノール中に抽出して、液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)、イオンクロマトグラフィー質量分析(IC/MS)、超臨界流体クロマトグラフィー質量分析(SFC/MS)等の質量分析に基づく疎水性及び親水性代謝物の網羅的分析技術に供することができる。また、前記歯肉溝滲出液を吸収した採取器具の破砕物に吸着したタンパク質は、高分離能液体クロマトグラフィー(LC)及び高分解能質量分析(MS)を組み合わせた超高分解能LC-MSシステムその他のタンパク質の網羅的分析技術に供することができる。
【0073】
抽出された本発明の歯周病診断用化合物候補物質の分離及び定量を行う工程には、分子量や疎水性・親水性について幅広い特性を有する物質を網羅的に検出する質量分析(MS)を組み合わせた技術を利用することができる。しかし、本発明の実施例で歯周病との関連性が明らかになった本発明の歯周病診断用化合物候補物質のうちの特定の分子種の物質のみを定量する場合には、当該特定の分子種の物質に対する特異的結合パートナーを利用することもできる。前記特異的結合パートナーは、例えば、当該特定物質を特異的に結合する物質、例えば錯体、抗体若しくはその抗原結合部位、及び/又は、当該特定物質の合成若しくは分解に関与する酵素を含むがこれらに限られない。
【0074】
本発明の歯周病診断用化合物候補物質は、いずれも、例えば、毛管(capillary)電気泳動技術、親水性相互作用液体クロマトグラフィー、逆相及びショットガンに基づく技術との組み合わせを含む、当業者に周知の質量分析(MS)技術を用いて定量することができる。MSは、質量分析計を用いて実施され、(質量分析計に導入する前に断片化され得る)試料をイオン化し、さらなる分析のために荷電分子を生成するためのイオン化源を含む。例えば、試料中の脂質種のイオン化は、電子イオン化、化学イオン化、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、光子イオン化、大気圧化学イオン化(APCI)、光イオン化、大気圧光イオン化(APPI)、レーザーダイオード熱脱離(LDTD)、高速原子衝撃(FAB)、液体二次イオン化(LSI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、フィールドイオン化、フィールド脱離、サーモスプレー/プラズマスプレーイオン化、表面増強レーザー脱離イオン化(SELDI)、誘導結合プラズマ(ICP)及び粒子ビームイオン化によって行われ得る。好ましい態様において、試料はESIによってイオン化される。
【0075】
試料は、質量分析計に直接(例えば、ショットガンに基づく方法において)導入されてもよく、又は試料の成分が分画された後(例えば、順相クロマトグラフィー又は逆相クロマトグラフィー技術において)、質量分析計に導入されてもよい。
【0076】
MS技術は、正又は負のイオン化モードで行うことができる。一般に、MS技術において、試料がイオン化された後、生成された正又は負に荷電したイオンを分析して質量電荷比を決定することができる。質量電荷比を決定するための適切な分析器は、四重極分析器、イオントラップ分析器、及び飛行時間分析器を含む。MSシステムは、いくつかの検出モードを用いてイオンを検出することができる。例えば、選択されたイオンは、選択的イオンモニタリングモード(SIM)を用いて検出することができる。特定の実施形態において、質量電荷比は、四重極分析器を用いて決定される。例えば、「四重極」又は「四重極イオントラップ」装置では、振動する無線周波数場中のイオンは、電極間に印加されるDC電位、RF信号の振幅、及び質量/電荷比に比例する力を受ける。電圧及び振幅は、特定の質量/電荷比を有するイオンのみが四重極の長さを移動し、他の全てのイオンは偏向するように選択することができる。したがって、四重極器具は、器具に注入されるイオンのための「質量フィルター」と「質量検出器」の両方として作用し得る。
【0077】
別の実施形態において、MS技術の分解能は、「MS/MS」とも呼ばれる「タンデム質量分析」を使用することによって改善することができ、これは、衝突誘起解離又は中性損失から生じる質量遷移を監視するために使用され、例えば、多重反応モニタリング(MRM)又は選択された反応モニタリング(SRM)を使用してモニターすることができる。MS/MSでは、対象とする脂質から生成された前駆体イオン(親イオンとも呼ばれる)をMS装置でろ過し、前駆体イオンを断片化して1つ以上の断片イオン(生成物イオンとも呼ばれる)を生成させ、次に、第2のMS手順で分析することができる。生成されたイオンは、器具のオリフィスを通過し、一連の3つの四重極(Q1、Q2、及びQ3)に入る。Q1は質量フィルターとして作用し、イオンの選択(すなわち、「前駆体」イオンの選択)を、それらの質量電荷比(m/z)に基づいてQ2に通すことを可能にする。Q2は、前駆体イオンが断片イオンに断片化される衝突チャンバとして作用する。Q3は、それらのm/zに基づいてイオン(すなわち、断片イオン)の選択を可能にする質量フィルターとして作用する。3つの四重極は対象とする脂肪酸イオンの質量電荷比をもつイオンを選択する。質量/電荷比が正しいイオンは四重極を通過させ、検出器と衝突させる。前駆体イオンの選択によって、特定の分析物によって生成されたイオンのみが断片化チャンバに通され、そこで不活性ガスの原子との衝突によって断片イオンが生成される。前駆体イオンと断片イオンの両方が、所定のイオン化/断片化条件下で再現可能な様式で生成されるため、MS/MS MRM走査モードは、信頼性が高く、最も感度の高い分析結果を提供する。タンデム質量分析装置を動作させる別のモードには、前駆体イオン及び中性損失走査モードが含まれる。このような方法は当業者に公知である。
【0078】
イオンが検出器と衝突すると、電子パルスが生成され、電子増倍管を介してデジタル信号に変換される。収集されたデータ信号はコンピュータに中継され、収集されたイオンのカウント対時間をプロットする。特定のイオンに対応するピーク下の領域、又はそのようなピークの振幅は、測定され、関心対象の分析物の量と相関され得る。
【0079】
各被検者の体液サンプル中の本発明の歯周病診断用化合物候補物質の濃度は、被検者の体液サンプル中の総タンパク量で補正して、各被検者の体液サンプル量の正規化を行うことができる。被検者の体液サンプル中の総タンパク量は、例えば、当業者に周知のビシンコニン酸(BCA)試薬を用いる呈色反応によって定量することができる。
【0080】
本発明の歯周病を診断する方法又は歯周病の診断を補助する方法において、予め歯肉ポケットの深さ(アタッチメントレベル)と、複根歯の根分岐部での水平的な歯周組織の破壊の程度(根分岐部病変)という指標に基づいて歯周病の有無及び重症度の診断済みの被検者の体液サンプルについて、本発明の歯周病診断用化合物候補物質の濃度を測定しておき、歯周病の診断対象の被検者の体液サンプル中の前記本発明の歯周病診断用化合物候補物質の濃度と比較することで、本発明の歯周病診断用化合物候補物質のうち、少なくとも1つの候補物質の濃度が上昇するとき、前記歯周病の診断対象のヒト被検者を歯周病と診断する、あるいは、前記ヒト被検者を歯周病と診断することを補助することができる。
【0081】
また、本発明の歯周病診断用化合物候補物質のそれぞれについて、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度を測定し、濃度分布に有意差がある(p<0.01)歯周病診断用化合物候補物質を選択し、診断対象の被検者の体液サンプル中の濃度が高い場合には、当該診断対象の被検者が、重度の歯周病を罹患していると診断する、又は重度の歯周病を罹患しているとの診断を補助することができる。
【0082】
あるいは、本発明の歯周病診断用化合物候補物質のそれぞれについて、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度を測定し、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルでは濃度がほとんど0で検出できないのに対し、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルでは高い濃度である歯周病診断用化合物候補物質を選択し、診断対象の被検者の体液サンプル中の濃度が検出される場合には、当該診断対象の被検者が、重度の歯周病を罹患していると診断する、又は重度の歯周病を罹患しているとの診断を補助することができる。
【0083】
あるいはまた、本発明の歯周病診断用化合物候補物質のそれぞれについて、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度を測定し、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルの濃度と比較して、中度又は重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルの濃度が10倍以上高い歯周病診断用化合物候補物質を選択し、診断対象の被検者の体液サンプル中の濃度が検出される場合には、当該診断対象の被検者が、中度若しくは重度の歯周病を罹患していると診断する、又は中度若しくは重度の歯周病を罹患しているとの診断を補助することができる。
【0084】
本発明の歯周病の重症度の予測方法は、本発明の歯周病診断用化合物候補物質のうち、少なくとも1つの候補物質の濃度が、第1の基準値以上のとき、重度の歯周病を罹患していることを予測する指標とし、前記濃度が第1の基準値未満であって第2の基準値以上のとき、中程度の歯周病を罹患していることを予測する指標とし、前記濃度が第2の基準値未満の測定値のとき、軽度の歯周病を罹患しているか、あるいは、歯周病を罹患していないことの指標とする。ここで、被検者の歯周病の重症度が中程度か重度かの判定に用いる第1の基準値と、被検者の歯周病の重症度が中程度か軽度かの判定に用いる第2の基準値とは、さまざまな方法で決定することができる。
【0085】
例えば、重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の体液サンプルにおける本発明の歯周病診断用化合物候補物質のうち、少なくとも1つの候補物質の濃度を当該体液サンプル中の総タンパク質の濃度で正規化された濃度のデータから、重症度(軽度、中度及び重度)の異なるサンプルごとの正規化された濃度の分布における標準誤差を計算し、重症度が重度のサンプルでの標準誤差の下限値か、重症度が中程度のサンプルでの標準誤差の上限値かを本発明の歯周病の重症度の予測方法における第1の基準値とすることができる。
【0086】
あるいは、重症度が中程度のサンプルでの標準誤差の下限値か、重症度が軽度のサンプルでの標準誤差の上限値かを本発明の歯周病の重症度の予測方法における第2の基準値とすることができる。
【0087】
本発明の歯周病の重症度の予測方法は、試験サンプル中の個々の歯周病診断用化合物の分子種の濃度を、1つ以上の参照又は対照値と比較する工程を更に含む。典型的には、本方法において決定された個々の歯周病診断用化合物の分子種に特異的な基準値を使用する。基準値は、歯周病診断用化合物の分子種に正常な濃度、例えば、歯周病を罹患していないと診断された被検者の同種の体液サンプル中の歯周病診断用化合物の濃度とすることができる。基準値は、例えば、対象の対照集団、例えば、5、10、100、又は1000体以上の歯周病を罹患していないと診断された被検者における、歯周病診断用化合物の分子種の濃度の平均値又は中央値に基づくものとすることができる。
【0088】
対象の歯周病診断用化合物の濃度と、対応する基準値との間の差異の程度も、歯周病の重症度を評価するのに有用である。好ましくは、被検者の体液サンプル中の歯周病診断用化合物の濃度は、基準値と比較して少なくとも1%、5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、又は少なくとも50%増加又は低下する。
【0089】
ある実施形態では、基準値は、試験サンプルにおいて歯周病診断用化合物の濃度を測定する同じ測定方法を用い、例えば、歯周病を罹患していないと診断された被検者から得た1種以上のサンプルを用い、決定することができる。別の実施形態では、特定のサンプル種における個々の歯周病診断用化合物の分子種のレベルについての基準値は、既に利用可能なものであってよく、例えば刊行物に報告されている値であってよい。したがって、いくつかの実施形態では、歯周病の診断対象の被検者から採取された体液サンプルに関し、基準値を予め決定することができ、あるいは算出又は外挿することができる。
【0090】
本発明の歯周病の重症度の予測方法では、各歯周病診断用化合物について第1の基準値以上の測定値のとき、重度の歯周病を罹患していることを予測する指標とし、第1の基準値未満であって第2の基準値以上の測定値のとき、中程度の歯周病を罹患していることを予測する指標とし、第2の基準値未満の測定値のとき、軽度の歯周病を罹患しているか、あるいは、歯周病を罹患していないことの指標とすることができる。
【0091】
本発明の歯周病の重症度の予測方法では、少なくとも2つの歯周病診断用化合物の分子種の濃度に基づいて歯周病の重症度の予測することができる。
【0092】
2種以上の歯周病診断用化合物の分子種の濃度に基づいて歯周病の重症度の予測することの利点は、評価する歯周病診断用化合物の数が多くなるほど、診断の信頼度が増すことである。例えば、1、2、3、4、5、6、又は7種以上の歯周病診断用化合物のレベルが上記のとおり上昇又は低下している場合、対象において歯周病の重症度が大幅に上昇していることの指標となる。
【0093】
本発明の歯周病の重症度予測方法は、歯周病の診断、特に新型コロナウイルスその他の呼吸器や消化器系器官に感染するために口腔内の肉眼観察による歯周病の診断が困難な被検者での歯周病の診断に使用できる。また、個々の被検者からのサンプル採取に時間及びコストがかからないため、多数の被検者からなる集団について、健康状態、栄養状態、食事その他のライフスタイルと、歯周病との関係を客観的に判断するために使用することができる。
【0094】
本発明は、歯周病の診断用マーカーを提供する。本発明の歯周病の診断用マーカーは、
DG 16:0_18:2、DG 16:0_20:1、DG 16:0_20:2、DG 16:0_20:3、DG 16:0_20:4、DG 16:1_18:2、DG 17:0_18:1、DG 18:0_18:1、DG 18:0_18:2、DG 18:0_20:2、DG 18:0_20:3、DG 18:0_20:4、DG 18:0_22:4、DG 18:1_18:2、DG 18:1_20:1、DG 18:1_20:2、DG 18:1_20:3及びDG 18:1_20:4からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のジアシルグリセロール(DG)と、
TG 52:1及びTG 55:8からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のトリアシルグリセロール(TG)と、
PC 14:0_16:0、PC 15:0_16:0、PC 15:0_18:1、PC 16:0_16:0、PC 16:0_16:1、PC 16:0_17:0、PC 16:0_18:0、PC 16:0_18:1、PC 16:0_18:2、PC 16:0_20:1、PC 16:0_20:2、PC 16:0_20:3、PC 16:0_20:4、PC 16:1_18:0、PC 16:1_18:1、PC 16:1_18:2、PC 17:0_18:1、PC 17:0_18:2、PC 17:1_18:1、PC 18:0_18:1、PC 18:0_18:2、PC 18:0_20:1、PC 18:0_20:2、PC 18:0_20:3、PC 18:0_20:4、PC 18:1_18:1、PC 18:1_18:2、PC 18:1_20:1、PC 18:1_20:2、PC 18:1_20:3、PC 18:1_20:4、PC 18:2_18:2、PC 18:2_20:1及びPC 18:2_20:2からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルコリン(PC)と、
PI 16:0_18:1、PI 16:0_18:2、PI 16:0_20:4、PI 18:0_18:1、PI 18:0_18:2、PI 18:0_20:2、PI 18:0_20:3、PI 18:0_20:4、PI 18:0_22:4、PI 18:1_18:1及びPI 18:1_20:4からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルイノシトール(PI)と、
PE 16:1_17:1、PE 17:1_17:1、PE 18:0_18:1、PE 18:0_18:2、PE 18:0_20:3、PE 18:0_20:4、PE 18:1_18:1、PE 18:1_18:2、PE 18:1_20:2、PE 18:1_20:3及びPE 18:2_20:2からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルエタノールアミン(PE)と、
SM 18:1;02/14:0、SM 18:1;O2/15:0、SM 18:1;O2/16:0、SM 18:1;O2/16:1、SM 18:1;O2/17:0、SM 18:1;02/18:0、SM 18:1;02/18:1、SM 18:1;02/20:0、SM 18:1;02/20:1、SM 18:1;02/22:0、SM 18:1;02/22:1、SM 18:1;O2/24:0及びSM 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のスフィンゴミエリン(SM)と、
Cer 18:1;O2/17:0及びCer 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のセラミド(Cer)と、
HexCer 18:1;O2/16:0及びHexCer 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のヘキソシルセラミド(HexCer)と
からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種の脂質と、
グルタル酸、メチルコハク酸、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸(6P)、セドヘプツロース-7-リン酸(S7P)、リボース-5-リン酸(R5P)、リブロース-5-リン酸(Ru5P)及びキシルロース-5-リン酸(Xu5P)からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種の親水性代謝物とからなる群から選択される、少なくとも1つの物質からなる。
【0095】
本明細書において「歯周病診断用マーカー」とは、歯周病の臨床的重症度の指標となる生体分子を意味する。本明細書における「歯周病診断用マーカー」は、ジアシルグリセロール(DG)、トリアシルグリセロール(TG)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、スフィンゴミエリン(SM)、セラミド(Cer)、ヘキソシルセラミド(HexCer)及び親水性代謝物のうち、前記列挙した特定の分子種の化合物から選択される1種類以上の生体分子である。ただし、生体中に存在する化合物ではなく、世帯から採取された、例えば歯肉溝滲出液サンプルのような検体中の化合物が本発明の歯周病診断用マーカーとして利用される。本発明の歯周病診断用マーカーを含む体液サンプルの採取、分離、分析のための手順は本発明の歯周病診断用化合物について前記説明のとおりである。
【0096】
本発明は、
DG 16:0_18:2、DG 16:0_20:1、DG 16:0_20:2、DG 16:0_20:3、DG 16:0_20:4、DG 16:1_18:2、DG 17:0_18:1、DG 18:0_18:1、DG 18:0_18:2、DG 18:0_20:2、DG 18:0_20:3、DG 18:0_20:4、DG 18:0_22:4、DG 18:1_18:2、DG 18:1_20:1、DG 18:1_20:2、DG 18:1_20:3及びDG 18:1_20:4からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のジアシルグリセロール(DG)と、
TG 52:1及びTG 55:8からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のトリアシルグリセロール(TG)と、
PC 14:0_16:0、PC 15:0_16:0、PC 15:0_18:1、PC 16:0_16:0、PC 16:0_16:1、PC 16:0_17:0、PC 16:0_18:0、PC 16:0_18:1、PC 16:0_18:2、PC 16:0_20:1、PC 16:0_20:2、PC 16:0_20:3、PC 16:0_20:4、PC 16:1_18:0、PC 16:1_18:1、PC 16:1_18:2、PC 17:0_18:1、PC 17:0_18:2、PC 17:1_18:1、PC 18:0_18:1、PC 18:0_18:2、PC 18:0_20:1、PC 18:0_20:2、PC 18:0_20:3、PC 18:0_20:4、PC 18:1_18:1、PC 18:1_18:2、PC 18:1_20:1、PC 18:1_20:2、PC 18:1_20:3、PC 18:1_20:4、PC 18:2_18:2、PC 18:2_20:1及びPC 18:2_20:2からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルコリン(PC)と、
PI 16:0_18:1、PI 16:0_18:2、PI 16:0_20:4、PI 18:0_18:1、PI 18:0_18:2、PI 18:0_20:2、PI 18:0_20:3、PI 18:0_20:4、PI 18:0_22:4、PI 18:1_18:1及びPI 18:1_20:4からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルイノシトール(PI)と、
PE 16:1_17:1、PE 17:1_17:1、PE 18:0_18:1、PE 18:0_18:2、PE 18:0_20:3、PE 18:0_20:4、PE 18:1_18:1、PE 18:1_18:2、PE 18:1_20:2、PE 18:1_20:3及びPE 18:2_20:2からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のホスファチジルエタノールアミン(PE)と、
SM 18:1;02/14:0、SM 18:1;O2/15:0、SM 18:1;O2/16:0、SM 18:1;O2/16:1、SM 18:1;O2/17:0、SM 18:1;02/18:0、SM 18:1;02/18:1、SM 18:1;02/20:0、SM 18:1;02/20:1、SM 18:1;02/22:0、SM 18:1;02/22:1、SM 18:1;O2/24:0及びSM 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のスフィンゴミエリン(SM)と、
Cer 18:1;O2/17:0及びCer 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のセラミド(Cer)と、
HexCer 18:1;O2/16:0及びHexCer 18:1;O2/24:1からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種のヘキソシルセラミド(HexCer)と
からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種の脂質と、
グルタル酸、メチルコハク酸、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸(6P)、セドヘプツロース-7-リン酸(S7P)、リボース-5-リン酸(R5P)、リブロース-5-リン酸(Ru5P)及びキシルロース-5-リン酸(Xu5P)からなる群から選択されるいずれか1種類以上の分子種の親水性代謝物とからなる群から選択される、少なくとも1つの物質
の歯周病の診断のための使用を提供する。
【0097】
本発明は、本発明の歯周病診断用化合物を検出するための歯周病診断用検査キットを提供する。本発明のキットは、被検サンプルの採取器具と、該サンプルの保存用液とを含むが、これらに限られない。本発明のキットにおいて、前記被検サンプルの採取器具は、例えば、歯肉溝滲出液、唾液、歯垢、舌苔、歯石を含むが、これらに限られない被検サンプル(以下、「歯肉溝滲出液等」と称する。)を吸収させて採取するのに用いる。前記歯肉溝滲出液等を吸収する採取器具は、例えば、昭和薬品化工株式会社製のプラディア・ペーパーポイント、米国ニューヨーク州のOraflow社製のペリオペーパー(登録商標)その他の当業者に知られた根管内無菌判定試験等のための清浄な歯肉溝に挿入可能な薄さの短冊状紙片であってもよい。本発明のキットにおいて、被検サンプルの保存用液は、前記歯肉溝滲出液等を吸収した採取器具を浸漬した状態で-80℃又は液体窒素中で測定時まで凍結保存するのに用いる。前記保存用液は、例えば、100%メタノールと、メタノール/水/クロロホルム(2.5:1:1)とを含むが、これらに限られない有機溶媒であってもよい。本発明の歯周病診断用検査キットは、さらに、前記歯肉溝滲出液等を吸収した採取器具を浸漬した状態で凍結保存するのに適する寸法の前記保存用液の容器を含むことがある。前記容器は、ポリプロピレンその他-80℃又は液体窒素中で密封保存できる材料で製造され、前記歯肉溝滲出液等を吸収した採取器具を測定時まで保存でき、測定時に前記採取器具を超音波で破砕し、破砕された前記採取器具の不溶性固形物を遠心分離により容器の底部に沈殿させて、前記歯肉溝滲出液等を抽出した保存用液の上清をピペット操作で回収する作業を行うのに十分な強度を有する必要がある。
【0098】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例等により何ら限定されるものではない。
【0099】
本明細書において数値について修飾する連体詞「約」は、当該数値の90%以上、かつ、110%以内の数値範囲であることを意味する。例えば、「約1μg」とは、0.90μg以上1.10μg以内の数値範囲を指す。
【0100】
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
【0101】
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
【実施例0102】
A.材料及び方法
(1)被検者
11名の歯周病患者に対して、歯周病重症度(軽度、中度、重度)の異なる歯肉溝からの歯肉溝滲出液を同一患者から2箇所ずつ採取した合計66個の歯肉溝滲出液サンプルを吸収したペーパーポイント試料を用いてメタボローム分析を行った。
【0103】
(2)歯肉溝滲出液サンプルの採取と処理
歯周ポケットに昭和薬品化工株式会社製のプラディア・ペーパーポイントを挿入して被検者の歯肉溝滲出液サンプルを吸収させた。サンプル採取後速やかに歯肉溝滲出液サンプルを吸収したペーパーポイントの先端部を500μLの100%メタノールに浸漬し容器ごと液体窒素で急速凍結して測定時まで液体窒素中で保存した。歯肉溝滲出液サンプルの解析には、解凍した前記容器中のメタノールペーパーポイントを破砕して、ペーパーポイントの破砕物を遠心分離し、上清のメタノールと前記破砕物の沈殿とに分離した。前記破砕物に吸着したタンパク質を対象に、高分離能LCと高分解能質量分析を組み合わせた超高分解能LC-MSシステムを用い、前処理工程やデータ解析工程も含めた「ワンショットメタプロテオミクスシステム」に供した。また、前記メタノールに溶解した代謝物を対象に、各種検体の親水性および疎水性代謝物を包括的に観測するためのワイドターゲットメタボローム分析法を液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)、イオンクロマトグラフィー質量分析(IC/MS)、超臨界流体クロマトグラフィー質量分析(SFC/MS)に供した。
【0104】
B.結果
前記ペーパーポイント試料から取得したメタボロームデータは、総タンパク量で補正することで各歯肉溝滲出液量の正規化を行った。取得したメタボローム測定結果より、歯周病の重症度に応じて、多くの脂質分子が増加する傾向にあった。ジアシルグリセロール(DG)は、前記ペーパーポイント試料から69種検出され、その中で18種は歯周病の重症度に伴い有意に増加した。ホスファチジルコリン(PC)は、前記ペーパーポイント試料から42種検出され、その中で34種は歯周病の重症度に伴い有意に増加した。ホスファチジルイノシトール(PI)は、前記ペーパーポイント試料から15種検出され、その中で11種は歯周病の重症度に伴い有意に増加した。ホスファチジルエタノールアミン(PE)は、前記ペーパーポイント試料から39種検出され、その中で11種は歯周病の重症度に伴い有意に増加した。スフィンゴミエリン(SM)は、前記ペーパーポイント試料から13種検出され、その全てが歯周病の重症度に伴い有意に増加した。セラミド(Cer)は、前記ペーパーポイント試料から14種検出され、その中で2種は歯周病の重症度に伴い有意に増加した。ヘキソシルセラミド(HexCer)は、前記ペーパーポイント試料から4種検出され、その中で2種は歯周病の重症度に伴い有意に増加した。
【0105】
図1-1ないし図1-5は、重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおける、DG 16:0_18:2、DG 16:0_20:1、DG 16:0_20:2及びDG 16:0_20:3(図1-1)、DG 16:0_20:4、DG 16:1_18:2、DG 17:0_18:1及びDG 18:0_18:1(図1-2)、DG 18:0_18:2、DG 18:0_20:2及びDG 18:0_20:3(図1-3)、DG 18:0_20:4、DG 18:0_22:4、DG 18:1_18:2及びDG 18:1_20:1(図1-4)並びにDG 18:1_20:2、DG 18:1_20:3及びDG 18:1_20:4(図1-5)の分子種のジアシルグリセロールの測定結果を示す棒グラフである。誤差棒は標準誤差を表す。これらのジアシルグリセロールの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
【0106】
図2は、重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおける それぞれ、TG 52:1及びTG 55:8の分子種のトリアシルグリセロールの測定結果を示す棒グラフである。誤差棒は標準誤差を表す。これらのトリアシルグリセロールの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
【0107】
図3-1ないし図3-9は、重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるPC 14:0_16:0、PC 15:0_16:0、PC 15:0_18:1及びPC 16:0_16:0(図3-1)、PC 16:0_16:1、PC 16:0_17:0、PC 16:0_18:0及びPC 16:0_18:1(図3-2)、PC 16:0_18:2、PC 16:0_20:1、PC 16:0_20:2及びPC 16:0_20:3(図3-3)、PC 16:0_20:4、PC 16:1_18:0、PC 16:1_18:1及びPC 16:1_18:2(図3-4)、PC 17:0_18:1、PC 17:0_18:2、PC 17:1_18:1及びPC 18:0_18:1(図3-5)、PC 18:0_18:2、PC 18:0_20:1及びPC 18:0_20:2(図3-6)、PC 18:0_20:3、PC 18:0_20:4、PC 18:1_18:1及びPC 18:1_18:2(図3-7)、PC 18:1_20:1、PC 18:1_20:2、PC 18:1_20:3及びPC 18:1_20:4(図3-8)並びに、PC 18:2_18:2、PC 18:2_20:1及びPC 18:2_20:2(図3-9)の分子種のホスファチジルコリンの測定結果を示す棒グラフである。誤差棒は標準誤差を表す。これらのホスファチジルコリンの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
【0108】
図4-1ないし図4-3は、重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるPI 16:0_18:1、PI 16:0_18:2、PI 16:0_20:4及びPI 18:0_18:1(図4-1)、PI 18:0_18:2、PI 18:0_20:2、PI 18:0_20:3及びPI 18:0_20:4(図4-2)並びにPI 18:0_22:4、PI 18:1_18:1及びPI 18:1_20:4(図4-3)の分子種のホスファチジルイノシトールの測定結果を示す棒グラフである。誤差棒は標準誤差を表す。これらのホスファチジルイノシトールの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
【0109】
図5-1ないし図5-3は、重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるPE 16:1_17:1、PE 17:1_17:1、PE 18:0_18:1及びPE 18:0_18:2(図5-1)、PE 18:0_20:3、PE 18:0_20:4、PE 18:1_18:1及びPE 18:1_18:2(図5-2)並びにPE 18:1_20:2、PE 18:1_20:3及びPE 18:2_20:2(図5-3)の分子種のホスファチジルエタノールアミンの測定結果を示す棒グラフである。誤差棒は標準誤差を表す。これらのホスファチジルエタノールアミンの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
【0110】
図6-1ないし図6-3は、重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるSM 18:1;02/14:0、SM 18:1;O2/15:0、SM 18:1;O2/16:0及びSM 18:1;O2/16:1(図6-1)、SM 18:1;O2/17:0、SM 18:1;02/18:0、SM 18:1;02/18:1及びSM 18:1;02/20:0(図6-2)並びにSM 18:1;02/20:1、SM 18:1;02/22:0、SM 18:1;02/22:1、SM 18:1;O2/24:0及びSM 18:1;O2/24:1(図6-3)の分子種のスフィンゴミエリンの測定結果を示す棒グラフである。誤差棒は標準誤差を表す。これらのスフィンゴミエリンの分子種は全て、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
【0111】
図7は、重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるCer 18:1;O2/17:0及びCer 18:1;O2/24:1の分子種のセラミドの測定結果を示す棒グラフである。誤差棒は標準誤差を表す。これらセラミドの分子種は、いずれも、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
【0112】
図8は、重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおけるHexCer 18:1;O2/16:0及びHexCer 18:1;O2/24:1の分子種のヘキソシルセラミドの測定結果を示す棒グラフである。誤差棒は標準誤差を表す。これらヘキソシルセラミドの分子種は、いずれも、軽度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルと、重度の歯周病を罹患していると診断された複数の被検者の体液サンプルとで各候補物質の濃度分布に有意差(p<0.01)があった。
【0113】
図9は、重症度(軽度、中度及び重度)の異なる歯周病患者由来の歯肉溝滲出液サンプルにおける、グルタル酸又はメチルコハク酸と、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸(6P)と、セドヘプツロース-7-リン酸(S7P)と、リボース-5-リン酸(R5P)、リブロース-5-リン酸(Ru5P)又はキシルロース-5-リン酸(Xu5P)との分子種の親水性代謝物の測定結果を示す棒グラフである。誤差棒は標準誤差を表す。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明により、1種類以上の歯周病診断用化合物を用いて定量的に歯周病の臨床的重症度を層別化することが可能となる。そのため、定量的な歯周病治療法の評価方法の開発に寄与することができる。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図3-6】
図3-7】
図3-8】
図3-9】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7
図8
図9