(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152529
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】自動測定システムおよび自動測定システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20241018BHJP
G01B 5/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
G01B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066773
(22)【出願日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 誠治
(72)【発明者】
【氏名】日高 和彦
(72)【発明者】
【氏名】酒井 大輔
【テーマコード(参考)】
2F062
3C707
【Fターム(参考)】
2F062AA21
2F062AA34
2F062AA51
2F062CC08
2F062CC27
2F062EE01
2F062EE09
2F062EE62
2F062EE66
2F062FF02
2F062GG09
2F062GG17
2F062GG90
2F062HH21
3C707AS14
3C707BS10
3C707JS01
3C707KS09
3C707KS17
3C707KS31
3C707KS34
3C707KS36
3C707KX07
3C707LT06
(57)【要約】
【課題】測定を自動化できる自動測定システムおよび自動測定の制御方法を提供する。
【解決手段】自動測定システムは、測定子によって測定対象物の表面を検出することにより、測定対象物の寸法または形状を測定するための測定センサツールと、測定センサツールを測定対象物に対して相対移動させる多軸の移動機構と、を備える。測定センサツールには、測定子を保護するためのカバー部が設けられ、
移動機構によって測定センサツールが測定対象物の測定対象箇所にアプローチするアプローチ工程において、カバー部は、測定子を当該カバー部の内側に収容している。アプローチ工程の終了後、測定子がカバー部から露出して、測定子が測定対象物の表面を検出する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定子によって測定対象物の表面を検出することにより、前記測定対象物の寸法または形状を測定するための測定センサツールと、
前記測定センサツールを前記測定対象物に対して相対移動させる移動機構と、を備えた自動測定システムであって、
前記測定センサツールには、前記測定子を保護するためのカバー部が設けられ、
前記移動機構によって前記測定センサツールが前記測定対象物の測定対象箇所にアプローチするアプローチ工程において、前記カバー部は、前記測定子を当該カバー部の内側に収容し、
前記アプローチ工程の終了後、前記測定子が前記カバー部から露出して、前記測定子が前記測定対象物の表面を検出する
ことを特徴とする自動測定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の自動測定システムにおいて、
前記カバー部と前記測定対象物との接触を検出するカバー接触検出手段を有し、
前記アプローチ工程において、前記カバー接触検出手段によって前記カバー部と前記測定対象物との接触が検出されたとき、前記移動機構は、前記測定センサツールと前記測定対象物との相対移動を停止させる、または、前記測定センサツールと前記測定対象物とをその時の移動方向とは反対方向に相対移動させる
ことを特徴とする自動測定システム。
【請求項3】
請求項1に記載の自動測定システムにおいて、
前記カバー部と前記測定対象物との接触を検出するカバー接触検出手段を有し、
前記アプローチ工程において、前記カバー接触検出手段によって前記カバー部と前記測定対象物との接触が検出されたとき、前記移動機構は、前記測定対象物から前記カバー部に係る作用力が小さくなる方向に前記測定センサツールと前記測定対象物とを相対移動させる
ことを特徴とする自動測定システム。
【請求項4】
請求項1に記載の自動測定システムにおいて、
前記測定センサツールは、一または複数の前記測定子を所定測定圧で前記測定対象物に接触させることによって前記測定対象物の寸法または形状を取得するものであって、
一または複数の前記測定子が前記測定対象物から受ける力の向きと大きさを検出する力検出手段を有し、
前記力検出手段は、前記測定センサツール、または、前記測定センサツールを前記移動機構に取り付ける取付コラムに設けられており、
前記移動機構は、前記力検出手段によって検出された前記力に基づいて、一または複数の前記測定子の測定圧が前記所定の測定圧になるように前記測定センサツールと前記測定対象物とを相対移動させる
ことを特徴とする自動測定システム。
【請求項5】
請求項1に記載の自動測定システムにおいて、
前記測定子は、非接触で測定対象物の表面を検出する非接触式のプローブである
ことを特徴とする自動測定システム。
【請求項6】
請求項1に記載の自動測定システムにおいて、
前記移動機構は、多関節ロボットであって、
前記測定センサツールは、前記多関節ロボットの手先部によって支持されており、
前記手先部と前記測定センサツールとの間に、前記手先部と前記測定センサツールとの相対位置ずれを吸収可能であってかつ前記手先部と前記測定センサツールとの相対位置を復帰可能とするコンプライアンス機構が設けられ、
前記アプローチ工程において、前記カバー部と前記測定対象物とが接触したとき、前記手先部と前記測定センサツールとの相対位置ずれを前記コンプライアンス機構によって吸収しながら前記測定センサツールを前記測定対象箇所にアプローチさせ、このとき、前記測定センサツールと前記測定対象箇所との相対姿勢が自動的に調節され、
前記アプローチ工程の終了後、前記移動機構が停止した状態で、前記測定子が前記カバー部から露出して、前記測定子が前記測定対象物の表面を検出する
ことを特徴とする自動測定システム。
【請求項7】
測定子によって測定対象物の表面を検出することにより、前記測定対象物の寸法または形状を測定するための測定センサツールと、
前記測定センサツールを前記測定対象物に対して相対移動させる移動機構と、を備え、
前記測定センサツールには、前記測定子を保護するためのカバー部が設けられている自動測定システムの制御方法であって、
前記カバー部が、前記測定子を当該カバー部の内側に収容し、
前記移動機構によって前記測定センサツールを前記測定対象物の測定対象箇所にアプローチさせ、
前記アプローチの終了後、前記移動機構が停止した状態で、前記測定子が前記カバー部から露出して、前記測定子が前記測定対象物の表面を検出する
ことを特徴とする自動測定システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動測定システムおよび自動測定システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
穴の内径を測定する測定器として、ホールテスト、シリンダーゲージ、ボアマチック(登録商標)等の内径測定器が使用されている(例えば、特許文献1参照)。ただ、これら内径測定器の使用にあたっては、測定子を進退させたり、内径測定器を穴に挿入した状態である程度求心したりする作業などが必要になるので、どうしても人手による手動測定ということになる。そのため、このような内径測定器で穴の加工精度を確認するためには人手と時間がかかっていた。
【0003】
手動測定の代替手段として、生産現場において内径測定を自動化する内径測定装置としては、空気マイクロメータがある(例えば、特許文献2参照)。空気マイクロメータは、穴に差し入れて、空気を吹き出すだけであるから、現在の選択肢のなかでいうと、空気マイクロメータは、内径測定の自動化に適した測定装置であると言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-19783
【特許文献2】特開平8-14871
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、空気マイクロメータには次のようなデメリットもある。
まず、空気マイクロメータは、その仕組み上、非常に高価なものになってしまう。また、エアコンプレッサを用意したり整備したりしなければならない。測定能力の面でも、その仕組み上、空気マイクロメータの繰り返し精度には限界があり、また、測定範囲が極めて短い(数100マイクロメートル程度)ものとなってしまう。
【0006】
手動式の測定器を用いる手動測定に共通する問題として、なるべく安価に測定を自動化したいという要求があった。
【0007】
安価で使い勝手がよく、測定範囲が広く、なおかつ、測定を自動化できる自動測定システムおよび自動測定の制御方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の自動測定システムは、
測定子によって測定対象物の表面を検出することにより、前記測定対象物の寸法または形状を測定するための測定センサツールと、
前記測定センサツールを前記測定対象物に対して相対移動させる移動機構と、を備えた自動測定システムであって、
前記測定センサツールには、前記測定子を保護するためのカバー部が設けられ、
前記移動機構によって前記測定センサツールが前記測定対象物の測定対象箇所にアプローチするアプローチ工程において、前記カバー部は、前記測定子を当該カバー部の内側に収容し、
前記アプローチ工程の終了後、前記測定子が前記カバー部から露出して、前記測定子が前記測定対象物の表面を検出する
ことを特徴とする。
【0009】
本発明の一実施形態では、
前記カバー部と前記測定対象物との接触を検出するカバー接触検出手段を有し、
前記アプローチ工程において、前記カバー接触検出手段によって前記カバー部と前記測定対象物との接触が検出されたとき、前記移動機構は、前記測定センサツールと前記測定対象物との相対移動を停止させる、または、前記測定センサツールと前記測定対象物とをその時の移動方向とは反対方向に相対移動させる
ことが好ましい。
【0010】
本発明の一実施形態では、
前記カバー部と前記測定対象物との接触を検出するカバー接触検出手段を有し、
前記アプローチ工程において、前記カバー接触検出手段によって前記カバー部と前記測定対象物との接触が検出されたとき、前記移動機構は、前記測定対象物から前記カバー部に係る作用力が小さくなる方向に前記測定センサツールと前記測定対象物とを相対移動させる
ことが好ましい。
【0011】
本発明の一実施形態では、
前記測定センサツールは、一または複数の前記測定子を所定測定圧で前記測定対象物に接触させることによって前記測定対象物の寸法または形状を取得するものであって、
一または複数の前記測定子が前記測定対象物から受ける力の向きと大きさを検出する力検出手段を有し、
前記力検出手段は、前記測定センサツール、または、前記測定センサツールを前記移動機構に取り付ける取付コラムに設けられており、
前記移動機構は、前記力検出手段によって検出された前記力に基づいて、一または複数の前記測定子の測定圧が前記所定の測定圧になるように前記測定センサツールと前記測定対象物とを相対移動させる
ことが好ましい。
【0012】
本発明の一実施形態では、
前記測定子は、非接触で測定対象物の表面を検出する非接触式のプローブである
ことが好ましい。
【0013】
本発明の一実施形態では、
前記移動機構は、多関節ロボットであって、
前記測定センサツールは、前記多関節ロボットの手先部によって支持されており、
前記手先部と前記測定センサツールとの間に、前記手先部と前記測定センサツールとの相対位置ずれを吸収可能であってかつ前記手先部と前記測定センサツールとの相対位置を復帰可能とするコンプライアンス機構が設けられ、
前記アプローチ工程において、前記カバー部と前記測定対象物とが接触したとき、前記手先部と前記測定センサツールとの相対位置ずれを前記コンプライアンス機構によって吸収しながら前記測定センサツールを前記測定対象箇所にアプローチさせ、このとき、前記測定センサツールと前記測定対象箇所との相対姿勢が自動的に調節され、
前記アプローチ工程の終了後、前記移動機構が停止した状態で、前記測定子が前記カバー部から露出して、前記測定子が前記測定対象物の表面を検出する
ことが好ましい。
【0014】
本発明の自動測定システムの制御方法は、
測定子によって測定対象物の表面を検出することにより、前記測定対象物の寸法または形状を測定するための測定センサツールと、
前記測定センサツールを前記測定対象物に対して相対移動させる移動機構と、を備え、
前記測定センサツールには、前記測定子を保護するためのカバー部が設けられている自動測定システムの制御方法であって、
前記カバー部が、前記測定子を当該カバー部の内側に収容し、
前記移動機構によって前記測定センサツールを前記測定対象物の測定対象箇所にアプローチさせ、
前記アプローチの終了後、前記移動機構が停止した状態で、前記測定子が前記カバー部から露出して、前記測定子が前記測定対象物の表面を検出する
ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】電動内径測定ユニットの測定ヘッド部を示す図であって、測定子がカバー部の内側に収容された状態を示す図である。
【
図5】電動内径測定ユニットの測定ヘッド部を示す図であって、測定子が前進してカバー部の外に露出した状態を示す図である。
【
図6】対比のために、カバー部を外した状態の測定ヘッド部を示す図である。
【
図7】対比のために、カバー部を外した状態の測定ヘッド部を示す図である。
【
図13】変位センサユニットの構成を示す図である。
【
図14】変位センサユニットの接離検知回路を示す図である。
【
図16】自動測定システムの制御方法の概要を示す全体フローチャートである。
【
図17】アプローチ工程を説明するためのフローチャートである。
【
図18】測定工程を説明するためのフローチャートである。
【
図20】穴の一部にカバー部が接触する様子を例示した図である。
【
図21】測定子が穴の内壁に接触する様子を例示した図である。
【
図22】二つの測定子で片当たりが生じる場合を例示した図である。
【
図23】穴の内径を測定する様子を例示した図である。
【
図24】第二実施形態において電動内径測定ユニットが穴に倣うように穴に入る様子を例示した図である。
【
図25】第二実施形態において測定子が穴の内壁を押す様子を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態を説明する。
本実施形態は、測定対象物の寸法または形状の測定を自動化する自動測定システム1000である。
第一実施形態では、測定対象箇所が測定対象物(ワーク)に形成された穴の内径であり、したがって、測定センサツールが電動内径測定ユニット2300である場合を説明する。
図1は、自動測定システム1000の全体的な外観図である。
自動測定システム1000は、測定装置本体部2000と、全体動作を制御する制御ユニット部1100と、を備える。
【0017】
(測定装置本体部2000)
測定装置本体部2000は、移動機構としての多関節ロボット(多関節ロボットアーム部2100)と、多関節ロボットアーム部2100の手先部2130に取り付けられた測定センサツールとしての電動内径測定ユニット2300と、を備える。電動内径測定ユニット2300は、測定器取付コラム2540によって多関節ロボットアーム部2100の手先部2130に取り付けられている。
【0018】
多関節ロボットアーム部2100は、いわゆる、ロボットアームであり、複数の回転駆動軸によってロボットアーム部2100の先端である手先部2130を三次元的に移動させる。
さらに、測定装置本体部2000は、回転テーブル2010を有していてもよく、この場合、回転テーブル2010も多関節ロボットアーム部2100の一部として統合的に制御されるようにする。
多関節ロボットアーム部2100は、床面等に設置されるベース部2110と、ベース部2110に支持された多軸のアーム部2120と、アーム部2120の先端に設けられた手先部2130と、を有する。
【0019】
図2は、電動内径測定ユニット2300を示す図である。
図3は、電動内径測定ユニット2300の断面図である。
図4は、電動内径測定ユニット2300の測定ヘッド部2450を示す図であって、測定子2460がカバー部2500の内側に収容された状態を示す図である。
図5は、電動内径測定ユニット2300の測定ヘッド部2450を示す図であって、測定子2460が前進してカバー部2500の外に露出した状態を示す図である。
図6、
図7は、
図4、
図5との対比のために、カバー部2500を外した状態の測定ヘッド部2450を示す図である。
【0020】
電動内径測定ユニット2300は、内径測定器(例えばホールテスト)のロッド2340の送りを電動化したものである。
言い換えると、電動内径測定ユニット2300は、人手の手動によらず、モータ2330の動力によってロッド2340を上下動させ、これにより測定子2460が自動で進退するようにしたものである。
なお、モータ2330とロッド2340との間(言い換えるとモータから測定子への動力伝達経路の途中)には測定対象物と測定子2460との間に働く力(測定力)の上限を規制する定圧機構が設けられている。定圧機構は例えばラチェット機構によって構成することができる。測定対象の穴の内径測定にあたって、まず、多関節ロボットアーム部2100の手先部2130の移動によって電動内径測定ユニット2300の測定ヘッド部2450を測定対象の穴に挿入する。電動内径測定ユニット2300の測定ヘッド部2450を測定対象の穴に挿入後、電動内径測定ユニット2300のモータ2330の駆動による測定子2460の自動進退によって測定子2460が穴の内壁に接触し、穴径の測定値を取得する。
【0021】
電動内径測定ユニット2300は、軸方向に進退するロッド2340を環囲する筒ケース部2400を有する。
筒ケース部2400は、全体として筒状のケースである。
筒ケース部2400は、上部パートを構成する上筒ケース部2400と、中間パートを構成する中間筒ケース部2400と、下部パートを構成する下筒ケース部2400と、さらに、測定ヘッド部2450を構成するヘッド筒部2440と、を有する。上筒ケース部2400の下端に中間筒ケース部2400が取り付けられ、中間筒ケース部2400の下端に下筒ケース部2400が取り付けられ、下筒ケース部2400の下端にヘッド筒部2440が取り付けられている。ヘッド筒部2440の下端側が張り出すようにして径大になっており、この下端側の大径部を測定ヘッド部2450と称することにする。
【0022】
ヘッド筒部2440には、ロッド2340の軸線方向に直交する方向に進退するように測定子2460が配設されている。
測定子2460は、ヘッド筒部2440において120°間隔で三つ配設されている。各測定子2460は、その外端に超硬で形成された細い丸軸状の丸軸チップ2461を有する。各測定子2460が突出方向に前進したとき、丸軸チップ2461が測定対象の穴の内壁に当接する。
【0023】
各測定子2460の内端側にテーパ面が形成されており、このテーパ面がロッド2340の下端側の円錐面に当接するようになっている。ロッド2340の円錐面と測定子2460のテーパ面とにより、ロッド2340の軸方向進退が直角に方向転換し、測定子2460が穴の内壁に向かって進退するようになっている。
【0024】
電動内径測定ユニット2300は、測定ヘッド部2450を保護するためのカバー部2500を備えている。
【0025】
図8、
図9は、電動内径測定ユニット2300にカバー部2500を取り付けた状態で、カバー部2500および測定ヘッド部2450の断面拡大図である。
図10は、カバー部の部分断面図である。
図11は、カバー部の斜視図である。
カバー部2500は、固定リング部2510と、カバー本体部2600と、カバー変位センサ2700と、を備える。
【0026】
固定リング部2510は、上リング部2511と、下リング部2512と、主連結柱2513と、副連結柱2514と、を備える。
上リング部2511は、
図3-5、
図8-9に表れるように、ヘッド筒部2440の上端側の外周部に固定的に取り付けられるリング状部材である。
下リング部2512は、
図8、
図9に表れるように、ヘッド筒部2440の張出部の上に載せられるように配置されるリング状部材である。
主連結柱2513は、
図8-10に表れるように、上リング部2511と下リング部2512とを固定的に繋ぐ棒状部材である。主連結柱2513の上端が上リング部2511に連結され、主連結柱2513の下端が下リング部2512に連結され、これにより、固定リング部2510は、電動内径測定ユニット2300の筒ケース部2400に対して固定された一つの剛体となっている。
ここでは、主連結柱2513は、120°間隔で三本設けられている。
【0027】
副連結柱2514は、
図10、
図11に表れるように、主連結柱2513よりも細い棒状部材であって、上リング部2511と下リング部2512とを繋ぐように設けられている。この副連結柱2514は、上リング部2511とカバー本体部2600との間に付勢手段としてのバネ2515を配設するための心棒となる。
【0028】
カバー本体部2600は、測定ヘッド部2450に対して相対変位可能かつ復帰可能に配置されて測定ヘッド部2450を保護する。
カバー本体部2600は、中間リング円板2620と、シールド筒部2630と、を備える。
【0029】
中間リング円板2620は、上リング部2511と下リング部2512との間にあって、シールド筒部2630と固定的に接続されている。中間リング円板2620は、
図11に表れるように、前記主連結柱2513を通すように径方向に凹む三つの凹部2621と、副連結柱2514を通すように設けられた三つの貫通孔2622と、を有する。貫通孔2622の周囲は、前記バネを受けるように拡径した座穴2623も設けられている。
図10に表れるように、副連結柱2514を心棒としてバネ2515が中間リング円板2620と上リング部2511との間に介装される。
これにより、カバー本体部2600は、
図10と、
図8、
図9から理解されるように、測定ヘッド部2450に対して下方に向けて付勢されているとともに、上方に向けても相対変位可能であり、かつ位置復帰可能となっている。
【0030】
中間リング円板2620には、カバー変位センサ2700のうちの可動側接点2712も設けられるが、この点は後述する。
【0031】
シールド筒部2630は、測定ヘッド部2450を内側に収容する筒体であり、測定ヘッド部2450の側方側の周囲と、さらに、測定ヘッド部2450の下方側の一部を取り囲んでいる。シールド筒部2630において、測定ヘッド部2450の側方側の周囲を囲む部分をサイドシールド部2631とし、測定ヘッド部2450の下方側を保護する部分を下方側シールド部2633とする。サイドシールド部2631の構成面は、電動内径測定ユニット2300の中心軸線に対して平行な面である。下方側シールド部2633とサイドシールド部2631との連結部分の構成面は、
図3、
図8、
図9に表れるように、電動内径測定ユニット2300の中心軸線に対して傾斜を持つテーパ面となっている。シールド筒部2630の内周面と中間リング円板2620の外周面とは密着し、シールド筒部2630と中間リング円板2620とは固定的に連結されている。
【0032】
サイドシールド部2631において、測定子2460が通るためのスリット2632が設けられている。ここでは、測定子2460が120°間隔で三つ配置されていることに合わせて、スリット2632も120°間隔で三つ設けられている。測定子2460が最も後退した状態のとき、
図2、
図3、
図4、
図8に表れるように、測定子2460はシールド筒部2630の内側にあり、すなわち、丸軸チップ2461はスリット2632よりも外に出ていない。
【0033】
カバー変位センサ2700は、カバー本体部2600の固定リング部2510に対する変位を検出する。
ここでは、カバー変位センサ2700は、固定リング部2510と可動リング部2610との間で中間リング円板2620に取り付けられた変位センサユニット2710である。
一つの変位センサユニットは、
図11、
図12、
図13に表れるように、固定側接点2711としての一つのコロ2711と、可動側接点2712としての二つのボール2712と、接離検知回路2714と、を備える。
図12に表れるように、下リング部2512の上面側に120°間隔で径方向に沿った溝が設けられ、この溝にコロ2711が配置されている。コロ2711は下リング部2512(すなわち固定リング部2510)とほぼ一体であって、変位センサユニット2710のうちの固定側接点2711となる。
【0034】
二つのボール2712は、
図12、
図13、
図14に表れるように、下リング部2512あるいは中間リング円板2620の径方向に対して直交する方向(つまり弦に沿う方向)に並び、二つのボール2712がコロ2711の上に乗っている。
二つのボール2712は、それぞれ支持桿2713の下端に取り付けられており、さらに、
図8-11に表れるように、支持桿2713は中間リング円板2620に固定されている。 したがって、二つのボール2712は、中間リング円板2620(すなわちカバー本体部2600)と一体となり、カバー本体部2600と一緒に変位することで、変位センサユニット2710のうちの可動側接点2712として機能する。
【0035】
接離検知回路2714は、可動側接点(ボール2712)と固定側接点(コロ2711)との接触と離間とを検知する。接離検知回路2714は、例えば、可動側接点(ボール2712)と固定側接点(コロ2711)との間の電気的導通を監視することによって、可動側接点(ボール2712)と固定側接点(コロ2711)との接触と離間とを検知する。
【0036】
本実施形態では、一つの変位センサユニット2710に一つの接離検知回路2714を設けることとしているが、三つの変位センサユニット2710で一つの接離検知回路2714を共有するようにしてもよい。この場合、いずれか一つの変位センサユニット2710で接点の離間があれば、接離検知回路2714がそれを検知する。
【0037】
本実施形態では、上記の変位センサユニット2710が所定角度間隔(ここでは120°間隔)で3つ配置されている。なお、付勢手段の付勢力(バネ2515の弾性力)を強くするか弱くするかによって接触検知の鋭敏さを調整でき、また、付勢手段の配置(例えば付勢手段を配置する径を大きくしたり小さくしたり)によっても接触検知の鋭敏さを調整できる。
【0038】
カバー本体部2600が何か(障害物)に接触し、付勢手段であるバネ2515の弾性力を超えた力が掛かって、カバー本体部2600が測定ヘッド部2450に対して相対変位すると、変位センサユニット2710の接点が離れる。これにより、カバー本体部2600の変位、すなわち、カバー本体部2600が何か(障害物)に接触したことが検出される。また、どの変位センサユニット2710が離間を検知したかにより、カバー本体部2600と障害物との接触箇所がおおよそ判断できる。
【0039】
変位センサユニット2710がカバー接触検出手段を構成している。
【0040】
さらに、測定装置本体部2000は、測定子2460が測定対象物から受ける力(抗力)を検出する接触力検出手段(力検出手段)を備えている。接触力検出手段は、測定器取付コラム2540内に設けられた力覚センサ2800である。力覚センサ2800として、6軸(3軸(X、Y、Z)の荷重(F)と各軸周りのモーメント(M))を検出するセンサが知られている。力覚センサ2800の検出値により、電動内径測定ユニット2300がどの方向から力を受けているか検知できる。電動内径測定ユニット2300が力を受けるときというのは、測定子を測定対象の穴の内壁に当接させるときである。すなわち、力覚センサ2800の検出値により、電動内径測定ユニット2300が穴のなかで穴の内壁からどの向きに押されているかが検知できる。
【0041】
図15は、制御ユニット部1100の機能ブロック図である。
制御ユニット部1100は、中央制御部1200と、ロボットアーム駆動制御部1300と、測定動作制御部1400と、を備える。
各制御部の動作はフローチャートを参照しながら後述する。
【0042】
制御ユニット部1100は、測定装置本体部2000と有線または無線で通信接続されたコンピュータ(CPU(中央処理装置)や所定プログラムを格納したROM、RAMを有するいわゆるコンピュータ端末)に組み込まれたハードまたはソフトウェアによって構成されてもよい。動作制御プログラム(測定用パートプログラム)がコンピュータ端末にインストールされ、プログラムの実行により測定装置本体部2000の動作が制御される。プログラムの供給方法は限定されず、プログラムを記録した(不揮発性)記録媒体をコンピュータに直接差し込んでプログラムをインストールしてもよく、記録媒体の情報を読み取る読取装置をコンピュータに外付けし、この読取装置からコンピュータにプログラムをインストールしてもよく、インターネット、LANケーブル、電話回線等の通信回線や無線によってコンピュータに供給されてもよい。
【0043】
(制御方法)
このように構成された自動測定システム1000によって測定対象箇所の寸法(例えば内径)を測定するための制御方法について説明する。
図16は、自動測定システム1000の制御方法の概要を示す全体フローチャートである。
自動測定システム1000で測定対象箇所の寸法(内径)を測定するため、まず、測定対象箇所を目標に設定する。測定対象物であるワーク中で寸法(内径)を測定すべき測定対象箇所(穴)を制御ユニット部1100に目標として設定しておく(ST710)。例えば、ワークの設定値データ(CADデータ)に基づいて測定対象箇所を制御ユニット部1100に設定登録しておく。このあとは、オペレータが自動測定システム1000から離れても、自動測定システム1000が設定された測定対象箇所の測定を自動的に次々に実行していく。
【0044】
目標として設定された測定対象箇所を測定するための工程は、大きくわけて、アプローチ工程(ST720)と、測定工程(ST730)と、がある。
【0045】
アプローチ工程(ST720)を説明する。
図17は、アプローチ工程(ST720)を説明するためのフローチャートである。
電動内径測定ユニット(測定センサツール)2300を目標として設定された測定対象箇所にアプローチする(ST721)。すなわち、ロボットアーム部2100の手先部2130の移動制御によって電動内径測定ユニット2300の測定ヘッド部2450を測定対象箇所(穴)に差し込むようにする。
【0046】
アプローチ工程(ST720)の間は、カバー部2500のカバー変位センサ2700の検出値を常にモニターし、カバー部2500に予期しない衝突がないかを監視する。測定対象物において設定通りの位置に設計通りの穴が形成されているなら、測定対象の穴の中に電動内径測定ユニット(測定センサツール)2300の測定ヘッド部2450がカバー部2500ごと真っ直ぐに入るはずである。したがって、測定対象物に設定通りの位置に設計通りの穴が形成されているなら、電動内径測定ユニット(測定センサツール)2300の測定ヘッド部2450が目標位置に達するアプローチ工程のなかでカバー変位センサ2700が変位を検知することはないはずである(ST722:No)。
【0047】
測定対象物において設定通りの位置に設計通りの穴がない場合、極端なケースとして、穴が全く加工されていなかったり、
図19のように、加工穴が浅すぎたり、という場合がありうる。このような場合、カバー部2500の下面(下方側シールド部2633)が等しく測定対象物の表面に真っ直ぐにあたり、全ての変位センサユニット2710が同じように変位(接点の離間)を検出することになる。カバー変位センサ2700の検出からは穴と電動内径測定ユニット(測定センサツール)2300との相対位置および相対姿勢が左右方向(水平方向)でも傾きでもどの方向にズレているのか判断できない。この場合、カバー部2500が何かに接触していることはわかるが、修正方向はわからない(ST725:No)。これ以上電動内径測定ユニット(測定センサツール)2300の移動を継続するのは危険であり、ロボットアーム部2100は、電動内径測定ユニット2300の移動を停止させる(ST726)。あるいは、ロボットアーム部2100は、電動内径測定ユニット(測定センサツール)2300と測定対象物との相対移動方向を反対方向にし、カバー変位センサによる変位の検出がゼロに戻るところまで移動を継続し、そして、電動内径測定ユニット2300の移動を停止させる(ST726)としてもよい。
【0048】
カバー部2500が測定対象物に接触したとしても、カバー部2500は変位可能に支持されているから、測定対象物が損傷することはないし、電動内径測定ユニット2300およびロボットアーム部2100に余計な力が掛かることもない。
【0049】
測定対象物において穴の位置および中心線が設定値から僅かに誤差をもって加工されている場合もある。
例えば、
図20のような場合である。
この場合、カバー部2500の一部が穴の縁に当たることが考えられる。すると、カバー部2500は傾くように一部が押し上げられる。このカバー部2500の変位はカバー変位センサ2700によって検出される。カバー変位センサ2700が検出した変位から、カバー部2500と測定対象物との接触箇所がわかる(逆にいうと、カバー部2500と測定対象物とが接触していない箇所がわかる)ので、ロボットアーム部2100は、これ以上押し込まないようにカバー部2500が測定対象物に当たらない方向に電動内径測定ユニット2300の位置を修正(ST727)し、カバー変位センサ2700の検出値がゼロに戻るまで移動を継続し、さらに、目標位置のXY座標については位置修正分を反映させるようにシフトさせる(ST728)。
これを継続することで測定ヘッド部2450は目標の穴に入り、(修正された)目標に達する(ST723)。
電動内径測定ユニット2300が目標の位置に達したら、穴の内径を測定する測定工程(ST730)に移行する。
【0050】
このアプローチ工程の過程でカバー部2500が測定対象物に何度か接触することになるが、カバー部2500が測定対象物に接触したとしても、カバー部2500は変位可能に支持されているから、測定対象物が損傷することはないし、電動内径測定ユニット2300およびロボットアーム部2100に余計な力が掛かることもない。
【0051】
図18は、測定工程(ST730)を説明するためのフローチャートである。
電動内径測定ユニット2300の測定ヘッド部2450が測定対象箇所(穴)に入ったら、ロボットアーム部2100の動作を一旦停止し、電動内径測定ユニット2300のモータ2330の駆動によって測定子2460を前進させる(ST731)。
これにより、例えば
図21に表れるように、測定子2460がカバー部2500のスリット2632から外に出て、測定子2460が穴の内壁に接触する。
【0052】
測定子2460が穴の内壁に接触すると、測定子2460に掛かる力が電動内径測定ユニット2300から測定器取付コラム2540に伝わり、接触力検出手段としての力覚センサ2800によって電動内径測定ユニット2300にかかる力が検出される。
力覚センサ2800(接触力検出手段)で力が検出されたら、(電動内径測定ユニット2300の高さ位置は変えないようにしながら)その力が小さくなる方向に、すなわち、押された方向に電動内径測定ユニット2300の位置および傾きを調整する。
例えば、
図21のように一つの測定子2460が他の測定子2460よりも先に穴の内壁に当たった場合、電動内径測定ユニット2300は一方向に押されるから、ロボットアーム部2100は、電動内径測定ユニット2300を水平方向(
図21では左方向)にシフトさせる。
【0053】
なお、
図21では、測定子2460が前進する様子が理解しやすいように、測定子が180°間隔で配置されているかのように描画しているが、これは本実施形態の動作を分かりやすく例示するためのデフォルメである。あるいは、120°に折れ曲がった断面線をイメージして頂いてもよい。
図22、
図23、
図27も同様である。
【0054】
例えば、
図22のように、二つまたは三つの測定子2460で片当たりになった場合には、電動内径測定ユニット2300および測定器取付コラム2540を介して力覚センサ2800は回転のモーメントを検出するから、ロボットアーム部2100は、電動内径測定ユニット2300の傾斜を変化させる。
【0055】
最終的には、例えば
図23に例示のように、三つ全ての測定子2460が穴の内壁に密着し、すなわち、力覚センサ2800の各方向の力の検出が均等になったとき(あるいは実質ゼロになったとき)(ST734)、測定子2460の変位(位置)を測定値としてサンプリングする(ST735)。
三つ全ての測定子2460が穴の内壁に密着していることは、例えば、ロボットアーム部2100によって電動内径測定ユニット2300を極微小に左右移動および傾斜変化させたときに力覚センサ2800の各方向の力の検出値の差分が最小になる電動内径測定ユニット2300の位置および姿勢を探索する。
力覚センサ2800の各方向の力の値が均等になり、かつ、測定子2460に掛かる接触圧が所定の測定圧に達したときに、測定子2460の変位(位置)を測定値としてサンプリングする(ST735)。
【0056】
以上のようにして一つのワークの一つの測定対象箇所(穴径)が測定できた。
測定対象箇所となる目標を順次変えながら、アプローチ工程(ST720)および測定工程(ST730)を繰り返し、ワークのなかで登録されている測定対象箇所を順番に測定していく。
さらに、ワークを取り替えながらST710-ST730を繰り返すことで無人の自動測定が実行される。
【0057】
以上説明のように本実施形態によれば測定器を用いる寸法または形状の測定が自動実行されるようにできる。
特に、接触式の測定器、そのなかでも、穴に測定器を挿入するといった測定器と対象物とが衝突する可能性があるような寸法または形状の測定をロボットを用いて自動実行できるようになる。
【0058】
(第二実施形態)
上記実施形態では、電動内径測定ユニット2300の位置および姿勢を測定対象である穴に倣わせるにあたって、すべてをロボットアーム部2100の手先部2130の動作制御(移動または回転)によって行うこととした。
ただ、電動内径測定ユニット2300の位置および姿勢の調整のすべてをロボットアーム部2100の手先部2130の動作制御だけで完遂するのは、各種センサの感度の限界やロボットアーム部2100の運動誤差もあるので、難しい場面も想定される。
そこで、コンプライアンス機構も合わせて使用することを提案する。
【0059】
コンプライアンス機構2140は、例えば
図24に例示のように、ロボットアーム部2100の手先部2130とツールとの間に設けられ、手先部2130とツールとの相対位置ずれ(軸ずれ)を所定範囲内で吸収可能であって、かつ、手先部2130とツールとの相対位置を復帰可能とするものである。
コンプライアンス機構2140は、弾性部材を間に介装したフローティング継手(フローティングジョイント)によって構成できる。
【0060】
この第二実施形態では、コンプライアンス機構2140によってある程度のズレが吸収できることを見込み、カバー部2500においてカバー本体部2600を付勢するバネの弾性力をある程度強くしておいてもよい。
あるいは、カバー部2500の変位よりも先にコンプライアンス機構2140によってズレを吸収できるようになっていると考えてもよい。
第二実施形態では、カバー部2500が穴の内壁等に接触した場合であっても、カバー変位センサ2700でカバー部2500の変位が検知されないならば、コンプライアンス機構2140によるズレの吸収を利用して、そのまま目標に達するまで電動内径測定ユニット2300を穴に差し込んでいく。
図24は、第二実施形態におけるアプローチ工程の様子を例示した図である。
図24に例示のように、電動内径測定ユニット2300は穴に倣うようにコンプライアンス機構2140によってズレが吸収される範囲内で位置または傾斜を変化させながら、穴に入る。
【0061】
もし仮に、カバー部2500で変位が検出されるほど電動内径測定ユニット2300が測定対象物に押し込まれたら、第一実施形態と同様に、ロボットアーム部2100の手先部2130の動作制御によって電動内径測定ユニット2300の位置および目標位置を修正することとしてもよい。
【0062】
図25は、第二実施形態における測定工程の様子を例示した図である。
所定範囲内の変位であればコンプライアンス機構2140によって吸収されるから、
図25に例示のように、三つの測定子2460が穴の内壁を押す力によって、電動内径測定ユニット2300の軸が穴の軸に一致するように電動内径測定ユニット2300の位置および傾斜は自ずと調整される。
【0063】
もし仮に、力覚センサ2800が検知する力が大きくなりすぎたら(ロボットアーム部2100の手先部2130の動作制御を発動させる閾値が設定されていてもよい)、ロボットアーム部2100の手先部2130の動作制御によって電動内径測定ユニット2300の位置、姿勢、目標を微調整するとしてもよい。
【0064】
(変形例1)
測定子(プローブ)としては、上記のような接触式の測定子(プローブ)2460の他、非接触式の測定子(プローブ)でもよい。例えば、レーザープローブ、光プローブ(例えば非接触クロマティック共焦点センサ)、静電容量式プローブなどがある。
【0065】
測定子(プローブ)としてレーザープローブを用いる場合、シールド筒部2630(カバー部2500)のスリット2632からレーザーを照射し、スリット2632を通して反射光を受光することとしてもよい。あるいは、
図26のように、レーザープローブユニット部2470をリニアモータ等で測定ヘッド部2450から軸線方向に進退するようにしておき、アプローチ工程の終了後、レーザープローブユニット部2470がカバー部2500から露出するようにしてもよい。
【0066】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
測定センサツールとしては、電動内径測定器に代えて、接触式でワーク(測定対象)の寸法(内側寸法、外側寸法)を測定する測定器(測定部)としてもよい。
固定要素に対して可動要素(測定子、測定ジョー、スピンドルなど呼称は種々有り得る)が変位可能に設けられていて、ワークに測定子を接触させる、あるいは、ワークを測定子で挟むようにしてワーク寸法を測定する測定センサツールは、上記実施形態に適用し得る。ノギス、マイクロメータヘッド、マイクロメータ、デジタルダイヤルゲージ(インジケータ)、テストインジケータ(てこ式ダイヤルゲージ)などの測定センサツールが例として挙げられる。
非接触式の測定センサツールとして、テレセントリックレンズ系を有する画像測定器の他、静電容量式、レーザー検出器、共焦点式センサなどがある。
【0067】
接触力検出手段(力検出手段)として、測定器取付コラム2540内に設けられた力覚センサ2800を設ける例を説明したが、この他、測定子に歪みゲージを取り付けるようにしてもよい。それぞれの測定子に歪みゲージを一つずつ設けてもよいし、各測定子に複数の歪みゲージを取り付けてもよい。例えば、各測定子の上端(上辺)側と下端(下辺)側とにそれぞれ歪みゲージを取り付けるなどにより、各測定子と穴の内壁との接触状態の情報を詳細に得ることもできる。
【符号の説明】
【0068】
1000 自動測定システム
1100 制御ユニット部
1200 中央制御部
1300 ロボットアーム駆動制御部
1400 測定動作制御部
2000 測定装置本体部
2010 回転テーブル
2100 ロボットアーム部
2110 ベース部
2120 アーム部
2130 手先部
2140 コンプライアンス機構
2300 電動内径測定ユニット
2330 モータ
2340 ロッド
2400 筒ケース部
2400 上筒ケース部
2400 中間筒ケース部
2400 下筒ケース部
2440 ヘッド筒部
2450 測定ヘッド部
2460 測定子
2461 丸軸チップ
2470 レーザープローブユニット部
2500 カバー部
2510 固定リング部
2511 上リング部
2512 下リング部
2513 主連結柱
2514 副連結柱
2515 バネ(付勢手段)
2540 測定器取付コラム
2600 カバー本体部
2610 可動リング部
2620 中間リング円板
2621 凹部
2622 貫通孔
2623 座穴
2630 シールド筒部
2631 サイドシールド部
2632 スリット
2633 下方側シールド部
2700 カバー変位センサ
2710 変位センサユニット
2711 固定側接点(コロ)
2712 可動側接点(ボール)
2713 支持桿
2714 接離検知回路
2800 力覚センサ