(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152556
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】バッテリー断熱シート用エアロゲル組成物、その製造方法、これを用いて形成したバッテリー断熱シートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20241018BHJP
C08J 3/21 20060101ALI20241018BHJP
B29B 7/16 20060101ALI20241018BHJP
C08L 101/14 20060101ALI20241018BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20241018BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20241018BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20241018BHJP
【FI】
C08L101/00
C08J3/21 CER
C08J3/21 CEZ
B29B7/16
C08L101/14
C08L83/04
C08K7/02
H01M10/658
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023141216
(22)【出願日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】10-2023-0048177
(32)【優先日】2023-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】羅 ▲ハ▼▲ナ▼
(72)【発明者】
【氏名】禹 明希
(72)【発明者】
【氏名】柳 寶▲キョン▼
(72)【発明者】
【氏名】朴 ▲ヒェ▼眞
(72)【発明者】
【氏名】李 載鉉
(72)【発明者】
【氏名】梁 承龍
【テーマコード(参考)】
4F070
4F201
4J002
5H031
【Fターム(参考)】
4F070AA26
4F070AC12
4F070AC23
4F070AC28
4F070AC92
4F070AD02
4F070AD03
4F070AE28
4F070AE30
4F070BB04
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4J002AA001
4J002BE021
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4J002FD016
4J002FD200
4J002FD310
4J002GQ00
5H031KK02
(57)【要約】
【課題】バッテリー断熱シート用エアロゲル組成物、その製造方法、これを用いて形成したバッテリー断熱シートおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】溶媒;繊維状支持体;エアロゲル;消泡剤;およびバインダー、分散剤またはこれらの組み合わせを含む機能性物質;を含み、エアロゲル組成物の固形分全量に対して、前記繊維状支持体が5重量%~70重量%、前記エアロゲルが10重量%~90重量%、前記消泡剤が0.05重量%~2重量%および前記機能性物質が0.5重量%~20重量%で含まれる、バッテリー断熱シート用エアロゲル組成物、その製造方法、これを用いて形成したバッテリー断熱シートおよびその製造方法に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒;
繊維状支持体;
エアロゲル;
消泡剤;および
バインダー、分散剤またはこれらの組み合わせを含む機能性物質;を含み、
エアロゲル組成物の固形分全量に対して、前記繊維状支持体が5重量%~70重量%、前記エアロゲルが10重量%~90重量%、前記消泡剤が0.05重量%~2重量%および前記機能性物質が0.5重量%~20重量%で含まれる、バッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項2】
前記溶媒は、極性溶媒および無極性溶媒から成る群から選ばれた1種以上を含む、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項3】
前記溶媒および前記エアロゲル組成物の固形分全量の重量比が1:1~1:90である、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項4】
前記繊維状支持体は、天然繊維、シリカ繊維、ガラス繊維、炭素繊維、バサルト繊維および高分子繊維から成る群から選ばれた1種以上を含む、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項5】
前記エアロゲルは、BET比表面積が500m2/g~1,000m2/gである、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項6】
前記消泡剤は、シリコーン系消泡剤を含む、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項7】
前記バインダーは、水系高分子バインダーを含み、
前記水系高分子バインダーは、水性高分子、アニオン水溶性高分子、カチオン水溶性高分子および水分散性高分子から成る群から選ばれた1種以上を含む、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項8】
前記バインダーは、前記エアロゲル組成物の固形分全量に対して、0.5重量%~20重量%で含まれる、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項9】
前記バインダーは、水性高分子および水分散性高分子を含み、
前記水性高分子および水分散性高分子が1:1~1:5の重量比で含まれる、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項10】
前記分散剤は、界面活性剤およびホスフェート系塩から成る群から選ばれた1種以上を含む、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項11】
前記分散剤は、前記エアロゲル組成物の固形分全量に対して、0.1重量%~6重量%で含まれる、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項12】
前記バインダーおよび前記分散剤が1:0.001~1:0.67の重量比で含まれる、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項13】
前記エアロゲル組成物の固形分全量に対して、前記繊維状支持体25重量%~60重量%、前記エアロゲル30重量%~70重量%、前記消泡剤0.1重量%~1重量%、前記バインダー2重量%~15重量%を含む、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項14】
前記エアロゲル組成物の固形分全量に対して、前記繊維状支持体25重量%~60重量%、前記エアロゲル30重量%~70重量%、前記消泡剤0.1重量%~1重量%、前記バインダー2重量%~15重量%、前記分散剤0.1重量%~3重量%を含む、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項15】
溶媒にバインダー、分散剤またはこれらの組み合わせを含む機能性物質を混合し、溶媒混合液を製造する段階と;
前記溶媒混合液とエアロゲルを混合し、エアロゲル混合液を製造する段階と;
前記エアロゲル混合液と繊維状支持体を混合し、エアロゲル組成物を製造する段階と;
前記エアロゲル組成物と消泡剤を混合する段階と;を含み、
前記エアロゲル組成物の固形分全量に対して、前記繊維状支持体が5重量%~70重量%、前記エアロゲルが10重量%~90重量%、前記消泡剤が0.05重量%~2重量%および前記機能性物質が0.5重量%~20重量%で含まれる、エアロゲル組成物の製造方法。
【請求項16】
前記エアロゲル組成物の製造方法で、各段階では、ミキサーを用いて混合し、
前記ミキサーは、低速第1ブレードおよび高速第2ブレードを含み、
前記エアロゲル組成物と消泡剤を混合する段階における第2ブレードの回転速度は、前記溶媒混合液とエアロゲルを混合し、エアロゲル混合液を製造する段階および前記エアロゲル混合液と繊維状支持体を混合し、エアロゲル組成物を製造する段階のうちいずれか1つ以上の段階における第2ブレードの回転速度の30%~75%である、請求項15に記載のエアロゲル組成物の製造方法。
【請求項17】
基材と;
前記基材上に形成されたエアロゲル層と;を含み、
前記エアロゲル層は、請求項1から14のいずれか一項に記載のエアロゲル組成物を用いて形成された、バッテリー断熱シート。
【請求項18】
基材上に請求項1から14のいずれか一項に記載のエアロゲル組成物をコートする段階と;
前記基材上にコートされたエアロゲル組成物を乾燥させる段階と;を含む、バッテリー断熱シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
バッテリー断熱シート用エアロゲル組成物、その製造方法、これを用いて形成したバッテリー断熱シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、電気エネルギーを化学エネルギーの形態に変えて貯蔵できる優れたエネルギー密度を提供する電力貯蔵システムである。再充電が不可能な一次電池に比べて、二次電池は、再充電が可能で、スマートフォン、セルラーフォン、ノートパソコン、タブレットPCなどIT機器に多用されている。最近、環境汚染の防止のために、電気自動車に対する関心が高まり、これによって、電気自動車に高容量の二次電池が採択されている。このような二次電池は、高密度、高出力、安定性などの特性が要求されている。
【0003】
なお、リチウムイオン二次電池のような高容量のセルを多数個含む場合、何らかの理由で1つのセルが過熱により熱暴走して隣接する他のセルに悪影響を与える恐れがあり、隣接するセル同士を熱的に断熱することが要求される。
【0004】
これにより、従来、セルの間に板材や絶縁性樹脂板などを配置し、隣接するセル同士の絶縁と断熱を図っていた。
【0005】
このような発明の背景となる技術に開示された上述した情報は、ただ本発明の背景に対する理解度を向上させるためのものであり、したがって、従来技術を構成しない情報を含むこともできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一具現例は、優れた断熱性、低粉じん特性およびシート均一性を有するバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物、その製造方法、これを用いて形成したバッテリー断熱シートおよびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一具現例は、溶媒;繊維状支持体;エアロゲル;消泡剤;およびバインダー、分散剤またはこれらの組み合わせを含む機能性物質;を含み、エアロゲル組成物の固形分全量に対して、前記繊維状支持体が5重量%~70重量%、前記エアロゲルが10重量%~90重量%、前記消泡剤が0.05重量%~2重量%および前記機能性物質が0.5重量%~20重量%で含まれる、エアロゲル組成物を提供する。
【0008】
前記溶媒は、極性溶媒および無極性溶媒から成る群から選ばれた1種以上を含んでもよい。
【0009】
前記溶媒および前記エアロゲル組成物の固形分全量の重量比が1:1~1:90であってもよい。
【0010】
前記繊維状支持体は、天然繊維、シリカ繊維、ガラス繊維、炭素繊維、バサルト繊維および高分子繊維から成る群から選ばれた1種以上を含んでもよい。
【0011】
前記エアロゲルは、BET比表面積が500m2/g~1,000m2/gであってもよい。
【0012】
前記消泡剤は、シリコーン系消泡剤を含んでもよい。
【0013】
前記バインダーは、水系高分子バインダーを含み、前記水系高分子バインダーは、水性高分子、アニオン水溶性高分子、カチオン水溶性高分子および水分散性高分子から成る群から選ばれた1種以上を含んでもよい。
【0014】
前記バインダーは、前記エアロゲル組成物の固形分全量に対して、0.5重量%~20重量%で含まれてもよい。
【0015】
前記バインダーは、水性高分子および水分散性高分子を含み、前記水性高分子および水分散性高分子は、1:1~1:5の重量比で含まれてもよい。
【0016】
前記分散剤は、界面活性剤およびホスフェート系塩から成る群から選ばれた1種以上を含んでもよい。
【0017】
前記分散剤は、前記エアロゲル組成物の固形分全量に対して、0.1重量%~6重量%で含まれてもよい。
【0018】
前記バインダーおよび前記分散剤は、1:0.001~1:0.67の重量比で含まれてもよい。
【0019】
前記エアロゲル組成物の固形分全量に対して、前記繊維状支持体25重量%~60重量%、前記エアロゲル30重量%~70重量%、前記消泡剤0.1重量%~1重量%、前記バインダー2重量%~15重量%を含んでもよい。
【0020】
前記エアロゲル組成物の固形分全量に対して、前記繊維状支持体25重量%~60重量%、前記エアロゲル30重量%~70重量%、前記消泡剤0.1重量%~1重量%、前記バインダー2重量%~15重量%、前記分散剤0.1重量%~5重量%を含んでもよい。
【0021】
他の一具現例は、溶媒にバインダー、分散剤またはこれらの組み合わせを含む機能性物質を混合し、溶媒混合液を製造する段階と;前記溶媒混合液とエアロゲルを混合し、エアロゲル混合液を製造する段階と;前記エアロゲル混合液と繊維状支持体を混合し、エアロゲル組成物を製造する段階と;前記エアロゲル組成物と消泡剤を混合する段階と;を含み、前記エアロゲル組成物の固形分全量に対して、前記繊維状支持体が5重量%~70重量%、前記エアロゲルが10重量%~90重量%、前記消泡剤が0.05重量%~2重量%および前記機能性物質が0.5重量%~20重量%で含まれる、エアロゲル組成物の製造方法を提供する。
【0022】
前記エアロゲル組成物の製造方法において、各段階では、ミキサーを用いて混合することができ、前記ミキサーは、低速第1ブレードおよび高速第2ブレードを含んでもよいし、前記エアロゲル組成物と消泡剤を混合する段階における第2ブレードの回転速度は、前記溶媒混合液とエアロゲルを混合し、エアロゲル混合液を製造する段階および前記エアロゲル混合液と繊維状支持体を混合し、エアロゲル組成物を製造する段階のうちいずれか1つ以上の段階における第2ブレードの回転速度の30%~75%であってもよい。
【0023】
他の一具現例は、基材と;前記基材上に形成されたエアロゲル層と;を含み、前記エアロゲル層は、前記エアロゲル組成物を用いて形成された、バッテリー断熱シートを提供する。
【0024】
さらに他の一具現例は、基材上に前記エアロゲル組成物をコートする段階と;前記基材上にコートされたエアロゲル組成物を乾燥させる段階と;を含む、バッテリー断熱シートの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0025】
一具現例によるエアロゲル組成物で製造されたバッテリー断熱シートは、断熱性および均一性に優れ、製造工程費用が低く、同時に製造過程や実際の使用時にエアロゲルの粉じん発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、複数のセルの間に形成された一具現例によるバッテリー断熱シートを示す模式図である。
【
図2】
図2は、一具現例によるバッテリー断熱シートの構造を示す模式図である。
【
図3】
図3は、一具現例によるバッテリー断熱シートの構造を示す模式図である。
【
図4】
図4は、一具現例によるバッテリー断熱シートの均一性の評価基準を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、具現例について技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかしながら、具現例は、様々な異なる形態で具現することができ、ここで説明する具現例に限定されない。
【0028】
断熱材とは、熱が高いところから低いところに移動するその流れを防止するための材料であり、冷蔵庫、冷凍倉庫、および建物を作るときだけでなく、航空機、電子部品、自動車産業などを含む様々な産業分野において用いられている。
【0029】
このような断熱材は、低い熱伝導度を通した優れた断熱性能を備えなければならず、このような断熱性を持続的に維持するための機械的強度も要求される。
【0030】
なお、エアロゲルは、ナノ多孔構造の透明または半透明先端素材であり、密度が非常に低く、低い熱伝導度の特性があるため、断熱材として高い潜在力があるだけでなく、多様な産業分野において用いられ得る非常に効率的な超断熱材と評価されている。
【0031】
また、エアロゲルの最も大きい長所は、従来のスチロフォームなどの有機系断熱材より低い熱伝導率を示す点と、有機系断熱材の致命的な弱点である火災脆弱性と火災時の有害ガス発生問題を解決できるという点である。
【0032】
しかしながら、一般的に、エアロゲルは、高い脆性に起因して小さい衝撃に対しても破れやすいなど強度が非常に弱く、非常に薄い厚さおよび形態への加工が難しいので、優れた断熱特性にもかかわらず、エアロゲルを単独で使用して断熱材を製造することは非常に困難であるという問題があった。
【0033】
一具現例によるエアロゲル組成物は、溶媒;繊維状支持体;エアロゲル;消泡剤;およびバインダー、分散剤またはこれらの組み合わせを含む機能性物質;を含み、エアロゲル組成物の固形分全量に対して、前記繊維状支持体が5重量%~70重量%、前記エアロゲルが10重量%~90重量%、前記消泡剤が0.05重量%~2重量%および前記機能性物質が0.5重量%~20重量%で含まれてもよい。
【0034】
前記成分からなるエアロゲル組成物で製造されたバッテリー断熱シートは、断熱性および耐久性に優れ、製造工程費用が低く、同時に製造過程や実際の使用時にエアロゲルの粉じん発生を防止することができる。
【0035】
一具現例において、前記溶媒は、極性溶媒、無極性溶媒またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0036】
前記極性溶媒は、水、アルコール系溶媒またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0037】
前記水は、例えば、精製水、超純水(deionized water)またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0038】
前記アルコール系溶媒は、例えば、メタノール(methanol)、エタノール(ethanol)、プロパノール(propanol)、ペンタノール(pentanol)、ブタノール(butanol)、ヘキサノール(hexanol)、エチレングリコール(ethylene glycol)、プロピレングリコール(propylene glycol)、ジエチレングリコール(diethylene glycol)およびグリセロール(glycerol)から成る群から選ばれた1種以上を含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0039】
前記無極性溶媒は、炭化水素系溶媒を含んでもよい。例えば、前記炭化水素系溶媒は、ヘキサン(hexane)、ペンタン(pentane)、ヘプタン(heptane)、トルエン(toluene)およびベンゼン(benzene)から成る群から選ばれた1種以上を含んでもよいし、ヘキサンのようなアルカン(alkane)溶媒やアルカン溶媒を含む混合物であることがより好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0040】
前記溶媒は、水を含んでもよい。前記水を溶媒に用いる場合、原料費用と後処理費用を効果的に節減することができる。ただし、水を溶媒に用いる場合、疎水性のエアロゲルとの混合が容易でないという問題があるが、一具現例では、混合段階の設計、混合条件、バインダーと分散剤の添加および添加量などを制御して、エアロゲルを均一に分散させた。このように組成物内でエアロゲルを均一に分散させる場合、バインダーを多量使用しなくても、薄い厚さで断熱性、耐久性、低粉じん特性に優れたバッテリー断熱シートを形成することができる。
【0041】
前記溶媒は、前記エアロゲル組成物の固形分全量との重量比が1:1~1:90となるように含まれてもよい。例えば、前記溶媒および前記エアロゲル組成物の固形分全量の重量比が1:50~1:70、1:20~1:30または1:2~1:10で含まれてもよい。前記溶媒と固形分全量の重量比を前記範囲内に制御することによって、粘度を制御し、エアロゲル層をコートすることができる。
【0042】
一具現例において、前記繊維状支持体は、前記エアロゲル組成物に含まれることによって、これを用いて形成されるバッテリー断熱シートの耐久性を改善することができる。
【0043】
前記繊維状支持体は、通常の断熱素材の支持体に用いられる繊維を含んでもよい。例えば、前記繊維状支持体は、天然繊維、シリカ繊維、ガラス繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、ミネラル繊維および高分子繊維から成る群から選ばれた1種以上を含んでもよい。具体的な例として、前記繊維状支持体は、ガラス繊維を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0044】
前記天然繊維は、例えば、大麻、黄麻、亜麻、コイア、ケナフ麻およびセルロースから成る群から選ばれた1種以上を含んでもよい。
【0045】
前記ミネラル繊維は、例えば、玄武岩、珪灰石、アルミナ、シリカ、スラグおよび岩石から成る群から選ばれた1種以上を含む鉱物繊維であってもよい。
【0046】
前記高分子繊維は、例えば、ナイロン、ポリイミド(polyimide)、ポリアミド(polyamide)、ポリベンゾイミダゾール(polybenzimidazole)、ポリベンゾオキサゾール(polybenzoxazole)、ポリアミドイミド(polyamideimide)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybuthyleneterephtalate)、ポリエステル(polyester)、ポリエチレン(polyethylene,PE)およびポリプロピレン(polypropylene,PP)から成る群から選ばれた1種以上を含んでもよい。具体的な例として、前記高分子繊維は、ポリイミド、ポリアミドおよびポリベンゾイミダゾールから成る群から選ばれた1つ以上を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0047】
前記繊維状支持体は、例えば、ウール(wool)形態、チョップストランド(chopped strands)形態であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0048】
前記繊維状支持体の長さは、例えば、50μm~1000μm、70μm~800μmまたは100μm~600μmであってもよい。前記範囲内の長さを有する繊維状支持体を含むことによって、エアロゲル層を堅固に形成することができ、耐久性を改善することができる。
【0049】
前記繊維状支持体の直径は、例えば、0.1μm~20μm、0.1μm~15μm、0.1μm~5μm、1μm~15μmまたは3μm~10μmであってもよい。前記範囲内の直径を有する繊維状支持体を含むことによって、エアロゲル層の構造を堅固にすることができ、製造費用を節減することができる。
【0050】
前記繊維状支持体の含有量は、前記エアロゲル組成物の固形分全量に対して、5重量%~70重量%、25重量%~60重量%または30重量%~50重量%であってもよい。前記範囲内で繊維状支持体を含むエアロゲル組成物を用いてバッテリー断熱シートを製造する場合、バッテリー断熱シートの耐久性を改善することができる。
【0051】
一具現例において、前記エアロゲルは、BET比表面積が500m2/g~1,000m2/gであってもよい。例えば、前記エアロゲルは、BET比表面積が500m2/g~950m2/g、550m2/g~950m2/gまたは600m2/g~900m2/gであってもよい。前記範囲内のBET比表面積の値を有するエアロゲルを含むことによって、複数のセルの間の熱伝達および熱伝播を効果的に防止できる断熱シートを提供することができる。
【0052】
前記エアロゲルの粒径は、5μm~200μm、10μm~100μmまたは20μm~50μmであってもよい。前記範囲内の粒径を有するエアロゲルを含むことによって、断熱特性を改善し、複数のセルの間で熱伝達を遅延させることができる。
【0053】
前記エアロゲルの含有量は、前記エアロゲル組成物の固形分全量に対して、10重量%~90重量%、30重量%~70重量%または40重量%~60重量%であってもよい。前記範囲内でエアロゲルを含むエアロゲル組成物を用いてバッテリー断熱シートを製造する場合、バッテリー断熱シートの断熱性を改善することができる。
【0054】
一具現例において、前記消泡剤は、シリコーン系消泡剤を含んでもよい。具体的な例として、前記シリコーン系消泡剤は、ポリシロキサン系消泡剤を含んでもよいし、前記ポリシロキサン系消泡剤は、例えば、BYK-019、BYK-021およびBYK-094のうちいずれか1つ以上を含んでもよいし、特に限定しない。このようにポリシロキサン系消泡剤を使用する場合、エアロゲル組成物が脱泡されることによって、コートおよび乾燥後にエアロゲル層の均一性が向上し、断熱性をさらに改善することができる。
【0055】
前記消泡剤の含有量は、前記エアロゲル組成物の固形分全量に対して、0.05重量%~2重量%、0.1重量%~1重量%または0.1重量%~0.5重量%であってもよい。前記範囲内で消泡剤を含むエアロゲル組成物を用いてバッテリー断熱シートを製造する場合、バッテリー断熱シートの均一性を改善することができる。
【0056】
一具現例において、前記バインダーは、水系高分子バインダーを含んでもよい。例えば、前記水系高分子バインダーは、水性高分子、アニオン水溶性高分子、カチオン水溶性高分子および水分散性高分子から成る群から選ばれた1種以上を含んでもよい。
【0057】
前記水性高分子は、例えば、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリアクリルアミド(polyacrylamide)およびポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)から成る群から選ばれた1種以上を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0058】
前記アニオン水溶性高分子は、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル、リン酸エステルおよびこれらの塩類の官能基を有する高分子から成る群から選ばれた1種以上を含んでもよい。例えば、前記アニオン水溶性高分子は、カルボン酸基を有する高分子であってもよく、具体的な例としてポリマレイン酸(polymaleic acid)を含んでもよいが、これに限らない。
【0059】
前記カチオン水溶性高分子は、アミン、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウムおよびこれらの塩類の官能基を有する高分子から成る群から選ばれた1種以上を含んでもよい。例えば、前記カチオン水溶性高分子は、アミン基を有する高分子であってもよく、具体的な例としてポリエチレンアミン(polyethylene amine)およびポリアミン(polyamine)から成る群から選ばれた1種以上を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0060】
前記水分散性高分子は、水分散性ポリウレタン(polyurethane)および水分散性ポリエステル(polyester)から成る群から選ばれた1種以上を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0061】
前記バインダーは、水性高分子および水分散性高分子を含んでもよい。例えば、バインダー特性と共に、分散特性を有する水性高分子と、耐火特性を有する水分散性ポリウレタンを含んでもよいし、具体的な例として、ポリビニルアルコールおよび水分散性ポリウレタンを含んでもよい。
【0062】
前記水性高分子および水分散性高分子の重量比は、1:1~1:5、1:1~1:4または1:2~1:3であってもよい。前記水性高分子および水分散性高分子の重量比を前記範囲内で混用して使用する場合、断熱シートの断熱性、粉じん性、圧縮特性と共に、耐火性および機械的物性をより一層改善することができる。
【0063】
前記バインダーの含有量は、前記エアロゲル組成物の固形分全量に対して、0.5重量%~20重量%、2重量%~15重量%または8重量%~15重量%であってもよい。前記範囲内でバインダーを含むエアロゲル組成物を用いてバッテリー断熱シートを製造する場合、バッテリー断熱シートの粉じん特性を改善することができる。
【0064】
一具現例において、前記分散剤は、界面活性剤およびホスフェート系塩から成る群から選ばれた1種以上を含んでもよい。具体的な例として、前記分散剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、レシチンなどのような天然界面活性剤およびリン酸塩のうちいずれか1つ以上を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0065】
前記分散剤をさらに含む場合、組成物内でのエアロゲルの分散をより一層改善し、繊維状支持体とエアロゲルを均一に分散させることができる。
【0066】
前記分散剤の含有量は、前記エアロゲル組成物の固形分全量に対して、0.1重量%~6重量%、0.1重量%~5重量%または0.1重量%~3重量%であってもよい。前記範囲内で分散剤を含む場合、低費用でエアロゲル組成物を製造することができ、これを用いて断熱性、均一性および粉じん特性に優れたバッテリー断熱シートを製造することができる。
【0067】
一具現例において、前記バインダーおよび前記分散剤は、1:0.001~1:0.67、1:0.001~1:0.5または1:0.001~1:0.3の重量比で含まれてもよい。前記範囲内の重量比でバインダーと分散剤を混用する場合、エアロゲル層においてエアロゲルがさらに均一に分散することができる。
【0068】
一具現例において、前記エアロゲル組成物の固形分全量に対して、前記繊維状支持体25重量%~60重量%、前記エアロゲル30重量%~70重量%、前記消泡剤0.1重量%~1重量%、前記バインダー2重量%~15重量%を含んでもよい。
【0069】
具体的な例として、前記エアロゲル組成物の固形分全量に対して、前記繊維状支持体30重量%~50重量%、前記エアロゲル40重量%~60重量%、前記消泡剤0.1重量%~0.5重量%、前記バインダー8重量%~15重量%を含んでもよい。前記範囲内でエアロゲル組成物を構成する場合、優れた断熱性を具現すると同時に、耐久性を改善させることができ、繊維状支持体とエアロゲル間の結束力を向上させて、粉じんが発生するのを防止し、断熱シートの均一性を改善することができる。
【0070】
一具現例において、前記エアロゲル組成物の固形分全量に対して、前記繊維状支持体25重量%~60重量%、前記エアロゲル30重量%~70重量%、前記消泡剤0.1重量%~1重量%、前記バインダー2重量%~15重量%、前記分散剤0.1重量%~5重量%を含んでもよい。
【0071】
具体的な例として、前記エアロゲル組成物の固形分全量に対して、前記繊維状支持体30重量%~50重量%、前記エアロゲル40重量%~60重量%、前記消泡剤0.1重量%~0.5重量%、前記バインダー5重量%~10重量%、前記分散剤0.1重量%~3重量%を含んでもよい。前記範囲内でエアロゲル組成物を構成する場合、エアロゲルの分散性を向上させ、優れた断熱性を具現すると同時に、耐久性を改善させることができ、繊維状支持体とエアロゲル間の結束力を向上させて、粉じんが発生するのを防止し、断熱シートの均一性を改善することができる。
【0072】
一具現例において、エアロゲル組成物は、シラン系化合物をさらに含んでもよい。前記シラン系化合物は、例えば、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(3-(trimethoxysilyl)propylmethacrylate)、メチルトリエトキシシラン(methyltriethoxysilane)、メチルトリメトキシシラン(methyltrimethoxysilane)、エチルトリメトキシシラン(ethyltrimethoxysilane)、オクタデシルトリメトキシシラン(octadecyltrimethoxysilane)、エチルトリエトキシシラン(ethyltriethoxysilane)および3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(3-glycidoxypropyltrimethoxysilane)から成る群から選ばれた1種以上を含んでもよい。前記シラン系化合物をさらに含む場合、分散性をより一層改善することができる。
【0073】
一具現例において、湿潤剤、乳化剤、相溶化剤、粘度調節剤、pH調節剤、安定化剤、抗酸化剤、酸性または塩基性捕捉剤、金属不活性剤、消泡剤、帯電防止剤、増粘剤、接着改善剤、結合剤、難燃剤、衝撃改質剤、顔料、染料、着色剤、脱臭剤などの添加剤を選択的にさらに含んでもよい。
【0074】
一具現例によるエアロゲル組成物の製造方法は、溶媒にバインダー、分散剤またはこれらの組み合わせを含む機能性物質を混合し、溶媒混合液を製造する段階と;前記溶媒混合液とエアロゲルを混合し、エアロゲル混合液を製造する段階と;前記エアロゲル混合液と繊維状支持体を混合し、エアロゲル組成物を製造する段階と;前記エアロゲル組成物と消泡剤を混合する段階と;を含み、前記エアロゲル組成物の固形分全量に対して、前記繊維状支持体が5重量%~70重量%、前記エアロゲルが10重量%~90重量%、前記消泡剤が0.05重量%~2重量%および前記機能性物質が0.5重量%~20重量%で含まれてもよい。
【0075】
前記溶媒に機能性物質を混合し、溶媒混合液を製造する段階では、溶媒にバインダーを混合したり、溶媒にバインダーおよび分散剤を混合してもよい。ここで、前記溶媒、バインダー、分散剤に対する具体的な説明は上述した通りである。
【0076】
前記溶媒混合液とエアロゲルを混合し、エアロゲル混合液を製造する段階では、エアロゲルが粉末形態で投入されてもよく、前記エアロゲルに関する具体的な説明は上述した通りである。
【0077】
前記エアロゲル混合液と繊維状支持体を混合し、エアロゲル組成物を製造する段階で、繊維状支持体に関する具体的な説明は上述した通りである。
【0078】
前記エアロゲル組成物と消泡剤を混合する段階で、前記消泡剤に関する具体的な説明は上述した通りである。
【0079】
前記エアロゲル組成物に消泡剤を投入して混合する場合、エアロゲル組成物内の気泡が除去され、これを用いてバッテリー断熱シートを製造する場合、エアロゲル層内での繊維状支持体とエアロゲルの均一性をより一層改善することができる。
【0080】
前記溶媒にバインダー、分散剤またはこれらの組み合わせを含む機能性物質を混合し、溶媒混合液を製造する段階;前記溶媒混合液とエアロゲルを混合し、エアロゲル混合液を製造する段階;前記エアロゲル混合液と繊維状支持体を混合し、エアロゲル組成物を製造する段階;および前記エアロゲル組成物と消泡剤を混合する段階それぞれでは、混合時にミキサー(mixer)を用いて混合することができる。例えば、前記ミキサーは、プラネタリーミキサー(planetary mixer)およびシンキミキサー(thinky mixer)などを含んでもよいし、これらに限定されない。
【0081】
具体的な例として、前記溶媒混合液とエアロゲルを混合するとき、プラネタリーミキサーを用いることができる。前記プラネタリーミキサーを用いて溶媒混合液とエアロゲルを混合する場合、エアロゲルを溶媒内で均一に分散させることができる。
【0082】
前記プラネタリーミキサーは、均質な混合物を製造するために、他の物質を混合したり撹拌するのに用いられ得る装備であってもよい。これは、惑星運動(planetary motion)ができるブレード(blade)を含んでもよい。
【0083】
一具現例において、プラネタリーミキサーは、1つ以上のプラネタリーブレードおよび1つ以上の高速分散ブレードのうちいずれか1つ以上を含んでもよい。具体的な例として、前記プラネタリーミキサーは、1つ以上のプラネタリーブレードおよび1つ以上の高速分散ブレードを含んでもよい。
【0084】
前記プラネタリーブレードおよび高速分散ブレードは、それらの軸を中心に連続的に回転する。回転速度は、1分当たりの回転数(rotations per minute,rpm)の単位で表現することができる。
【0085】
一具現例において、前記プラネタリーミキサーは、回転軸が互いに異なる第1ブレードおよび第2ブレードを含んでもよい。例えば、前記第1ブレードは、低速ブレードであり、前記第2ブレードは、高速ブレードであってもよい。ここで、低速および高速は、第1ブレードと第2ブレード間の相対的な回転速度を意味する。具体的な例として、前記第1ブレードは、オープンブレード(Open blade)であってもよく、前記第2ブレードは、デスパブレード(Despa blade)であってもよい。
【0086】
前記第1ブレードの回転速度は、例えば、10rpm~100rpm、10rpm~60rpmまたは30rpm~70rpmであってもよい。また、前記第2ブレードの回転速度は、例えば、100rpm~2000rpm、100rpm~1000rpm、300rpm~1700rpmまたは500rpm~1700rpmであってもよい。
【0087】
前記エアロゲル組成物と消泡剤を混合する段階における第2ブレードの回転速度は、前記溶媒混合液とエアロゲルを混合し、エアロゲル混合液を製造する段階および前記エアロゲル混合液と繊維状支持体を混合し、エアロゲル組成物を製造する段階のうちいずれか1つ以上の段階における第2ブレードの回転速度より低くてもよい。例えば、前記エアロゲル組成物と消泡剤を混合する段階における第2ブレードの回転速度は、前記溶媒混合液とエアロゲルを混合し、エアロゲル混合液を製造する段階および前記エアロゲル混合液と繊維状支持体を混合し、エアロゲル組成物を製造する段階のうちいずれか1つ以上の段階における第2ブレードの回転速度の30%~75%、40%~70%または40%~60%レベルの速度で制御することができる。この場合、組成物内でのさらなる気泡の発生を最小化し、気泡を効果的に除去することができる。
【0088】
前記溶媒に機能性物質を投入して混合するとき、ミキサーの第1ブレードの回転速度は、10rpm~60rpm、20rpm~50rpmまたは30rpm~40rpmであってもよく、第2ブレードの回転速度は、300rpm~1700rpm、600rpm~1000rpmまたは700rpm~800rpmであってもよい。上記のように溶媒と機能性物質を混合する場合、バインダー、分散剤またはこれらの組み合わせが均一に分散した溶媒混合液を製造し、後続段階でエアロゲル混合がより容易に行われ得る。
【0089】
前記溶媒混合液とエアロゲルを混合するとき、ミキサーの第1ブレードの回転速度は、30rpm~70rpm、40rpm~70rpmまたは60rpm~70rpmであってもよく、第2ブレードの回転速度は、500rpm~1700rpm、600rpm~1600rpmまたは800rpm~1500rpmであってもよい。上記のように溶媒混合液にエアロゲルを投入して混合する場合、エアロゲルが互いに凝集するのを防止し、均一な分散を誘導することができる。
【0090】
前記エアロゲル混合液と繊維状支持体を混合するとき、ミキサーの第1ブレードの回転速度は、10rpm~60rpm、20rpm~50rpmまたは30rpm~40rpmであってもよく、第2ブレードの回転速度は、300rpm~1700rpm、400rpm~1500rpmまたは800rpm~1200rpmであってもよい。上記のようにエアロゲル混合液と繊維状支持体を混合する場合、組成物内の気泡が除去され、粘度が調節され、均一に分散したエアロゲルの間での繊維状支持体の分散が容易であり、組成物内で繊維状支持体の周辺をエアロゲルが包む形態で存在していてもよい。ここで、エアロゲルと繊維状支持体との間には、バインダーが存在し、エアロゲルと繊維状支持体の結束力を向上させることができる。
【0091】
前記エアロゲル組成物と消泡剤を混合するとき、ミキサーの第1ブレードの回転速度が10rpm~60rpm、20rpm~50rpmまたは30rpm~40rpmであってもよく、第2ブレードの回転速度が100rpm~1000rpm、150rpm~800rpmまたは300rpm~700rpmであってもよい。前記範囲内の回転速度の条件でエアロゲル組成物と消泡剤を混合させる場合、エアロゲル組成物内の気泡を効果的に除去することができる。
【0092】
前記消泡剤を分散させる段階は、10分以下、1分~10分または3分~8分間行われ得る。10分超過でエアロゲル組成物と消泡剤を混合させる場合、かえって気泡の発生が促進され得るが、前記消泡剤を分散させる段階は、10分以下で行うことによって、エアロゲル組成物内の気泡を効果的に除去することができる。
【0093】
図1は、複数のセルの間に形成された一具現例によるバッテリー断熱シートを示す模式図である。
【0094】
図1を参照すると、一具現例によるバッテリー断熱シート100は、複数のセル200を含むバッテリーモジュール内でそれぞれのセル200の間に形成されてもよい。ここで、前記バッテリー断熱シートの上面および下面は、隣接するそれぞれのセルと対面するように配置されてもよい。前記一具現例によるバッテリー断熱シート100を複数のセル200の間にそれぞれ形成することによって、セル内部であらかじめ火炎を遮断し、他のセルに火炎が伝播するのを最大限抑制し、安全性を一層高めたバッテリーモジュールおよびこれを含むバッテリーパックを提供することができる。
【0095】
図2は、一具現例によるバッテリー断熱シートの構造を示す模式図である。
【0096】
図2を参照すると、前記バッテリー断熱シート100は、基材110と;前記基材110上に形成されたエアロゲル層120と;を含み、ここで、前記バッテリー断熱シートの上面および下面は、それぞれ、隣接するセルと対面するように配置されてもよい。
【0097】
前記基材上に一具現例によるエアロゲル組成物でエアロゲル層を形成することによって、バッテリー断熱シートは、断熱性だけでなく、均一性が改善され、前記バッテリー断熱シートを製造したり装置の内部に設置するとき、エアロゲルが脱離して粉じんが発生するのを防止することができる。
【0098】
前記バッテリー断熱シートにおいて、エアロゲル層を形成するエアロゲル組成物の具体的な説明は上述した通りである。
【0099】
前記基材は、例えば、樹脂、金属、金属以外の無機材料、またはこれらの複合体などの多様な基材を使用することができ、その種類を制限しない。また、基材の形態としては、フィルム、薄膜、シートなど特に制限しない。
【0100】
前記樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートおよびポリアミドから成る群から選ばれた1種以上を含んでもよい。
【0101】
前記金属は、例えば、銅、ニッケル、コバルト、鉄、クロミウム、バナジウム、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、モリブデン、タングステン、イリジウム、銀、金および白金から成る群から選ばれた1種以上を含んでもよい。前記金属材質の基材を使用する場合、前記基材は、必要に応じて、腐食防止処理、絶縁処理などが施されてもよい。
【0102】
前記無機材料は、炭酸カルシウム(CaCO3)、タルク(talc)およびマイカ(mica)から成る群から選ばれた1種以上を含んでもよい。
【0103】
具体的な例として、前記基材は、無機材料を含んでもよいし、より具体的な例として、マイカを含んでもよい。この場合、断熱シートの断熱性と耐久性などを改善することができる。
【0104】
一具現例において、前記エアロゲル層は、単層構造または複数層構造で形成されてもよい。前記エアロゲル層が複数層構造で形成される場合、前記エアロゲル層は、2層~10層、2層~7層または2層~5層で形成されてもよい。
【0105】
図3は、他の一具現例によるバッテリー断熱シートの構造を示す模式図である。
【0106】
図3を参照すると、一具現例において、前記バッテリー断熱シート100は、第1基材130と、前記第1基材130上に形成されたエアロゲル層120と、前記エアロゲル層120上に形成された第2基材140と、を含む構造を有していてもよい。ここで、前記第1基材および第2基材は、それぞれ、隣接するセルと対面するように配置されてもよい。この場合、前記第1基材および第2基材は、互いに同一または異なる物質で形成してもよい。
【0107】
一具現例によるバッテリー断熱シートの製造方法は、基材上に前記エアロゲル組成物をコートする段階と;前記基材上にコートされたエアロゲル組成物を乾燥させる段階と;を含んでもよい。ここで、前記基材は、
図2の基材または
図3の第1基材および第2基材のうちいずれか1つを意味し得る。
【0108】
前記バッテリー断熱シートの製造方法において、基材およびエアロゲル組成物に関する具体的な説明は上述した通りである。
【0109】
前記コートする段階では、通常の基材上にエアロゲルスラリーを塗布する方法で行われ得る。
【0110】
前記コートする段階は、1回または2回以上繰り返し行われ得る。
【0111】
前記乾燥する段階は、例えば、25℃~100℃、45℃~90℃または60℃~85℃の温度条件で行われ得る。前記温度条件で乾燥することによって、基材とエアロゲル層との間の脱離を防止しつつ、別の接着部材や接着剤なしで基材上に堅固なエアロゲル層が形成され、複数の分散した繊維状支持体の周辺にエアロゲルがコートされる形状でコーティング層が形成されてもよい。
【0112】
一具現例では、前記バッテリー断熱シートの製造方法において、乾燥前に、コートされたエアロゲル組成物上に基材を積層する段階をさらに含んでもよい。この場合、エアロゲル層の両面に接着層なしで複数の基材、例えば、第1基材と第2基材が形成された構造で、バッテリー断熱シートを製造することができる。
【0113】
一具現例によるエアロゲル組成物を用いて基材上にコートし、乾燥させる簡単な方法で、別途の接着剤の使用や接着層の形成なしでバッテリー断熱シートを製造することができ、エアロゲルが均一に分散していて、薄い厚さでも優れた断熱性、均一性および低粉じん特性を具現することができる。
【0114】
以下では、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記に記載された実施例は、本発明を具体的に例示したり説明するためのものに過ぎず、これに本発明が限定されるものではない。また、ここに記載されていない内容は、当該技術分野における熟練した者なら十分に技術的に類推できるので、その説明を省略する。
【0115】
(バッテリー断熱シートの製造)
実施例1
1.エアロゲル組成物の製造
溶媒である超純水にバインダーとしてポリビニルアルコール(Sigma Aldrich,Poly(vinyl alcohol))を投入し、オープンブレード30rpm、デスパブレード700rpmの条件で混合し、溶媒混合液を製造した。その後、溶媒混合液にBET値が800m2/gのエアロゲルを投入し、オープンブレード70rpm、デスパブレード1500rpmの条件で混合し、エアロゲル混合液を製造した。エアロゲル混合液にグラスウールを投入し、オープンブレード30rpm、デスパブレード1200rpmの条件で混合し、エアロゲル組成物を製造した。次に、前記エアロゲル組成物にポリシロキサン系消泡剤(BYK社、BYK-094)を投入し、オープンブレード30rpm、デスパブレード700rpmの条件で8分間混合し、エアロゲル組成物内の気泡を除去した。ここで、混合時には、プラネタリーミキサー(DNTEK、PT-005)を用いた。
前記製造されたエアロゲル組成物の固形分含有量は、エアロゲル50重量%、グラスウール40重量%、ポリビニルアルコール9.9重量%および消泡剤0.1重量%であることを確認した。
【0116】
2.バッテリー断熱シートの製造
厚さ0.1mmのマイカシート(Famica,Muscovite)上に前記製造されたエアロゲル組成物をスラリー塗布し、サンドイッチタイプで厚さ0.1mmのマイカシートを積層した後、ロール圧延方法でコートした。次に、60℃で24時間乾燥させて、エアロゲル層を形成し、バッテリー断熱シートを製造した。製造されたバッテリー断熱シートの総厚さが1.38mmであることを確認した。
【0117】
実施例2
前記実施例1においてエアロゲル組成物の製造時に、原料の投入量を調節し、固形分含有量がエアロゲル50重量%、グラスウール40重量%、ポリビニルアルコール9.5重量%および消泡剤0.5重量%であるエアロゲル組成物を製造したことを除いて、実施例1と同じ方法で製造した。
【0118】
実施例3
前記実施例1においてエアロゲル組成物の製造時に、原料の投入量を調節し、固形分含有量がエアロゲル50重量%、グラスウール40重量%、ポリビニルアルコール8重量%および消泡剤2重量%であるエアロゲル組成物を製造したことを除いて、実施例1と同じ方法で製造した。
【0119】
実施例4
前記実施例1においてエアロゲル組成物の製造時に、原料の投入量を調節し、固形分含有量がエアロゲル50重量%、グラスウール40重量%、ポリビニルアルコール9.95重量%および消泡剤0.05重量%であるエアロゲル組成物を製造したことを除いて、実施例1と同じ方法で製造した。
【0120】
実施例5
前記実施例1においてエアロゲル組成物の製造時に、バインダーとしてポリビニルアルコールの代わりに水分散性ポリウレタンを使用したことを除いて、実施例1と同じ方法で製造した。
【0121】
実施例6
1.エアロゲル組成物の製造
溶媒である超純水にバインダーとしてポリビニルアルコール(Sigma Aldrich,Poly(vinyl alcohol))および分散剤として界面活性剤(Triton-X100,Sigma Aldrich)を投入し、オープンブレード30rpm、デスパブレード700rpmの条件で混合し、溶媒混合液を製造した。次に、溶媒混合液にBET値が800m2/gのエアロゲルを投入し、オープンブレード70rpm、デスパブレード1500rpmの条件で混合し、エアロゲル混合液を製造した。エアロゲル混合液にグラスウールを投入し、オープンブレード30rpm、デスパブレード1200rpmの条件で混合し、エアロゲル組成物を製造した。次に、前記エアロゲル組成物にポリシロキサン系消泡剤(BYK社、BYK-094)を投入し、オープンブレード30rpm、デスパブレード700rpmの条件で8分間混合し、エアロゲル組成物内の気泡を除去した。ここで、混合時には、プラネタリーミキサー(DNTEK、PT-005)を用いた。
前記製造されたエアロゲル組成物の固形分含有量は、エアロゲル50重量%、グラスウール40重量%、ポリビニルアルコール9.8重量%、分散剤0.1重量%および消泡剤0.1重量%であることを確認した。
【0122】
2.バッテリー断熱シートの製造
厚さ0.1mmのマイカシート(Famica,Muscovite)上に前記製造されたエアロゲル組成物をスラリー塗布し、サンドイッチタイプで厚さ0.1mmのマイカシートを積層した後、ロール圧延方法でコーティングした。次に、60℃で24時間乾燥させて、エアロゲル層を形成し、バッテリー断熱シートを製造した。製造されたバッテリー断熱シートの総厚さは、1.38mmであることを確認した。
【0123】
実施例7
1.エアロゲル組成物の製造
溶媒である超純水にバインダーとしてポリビニルアルコール(Sigma Aldrich,Poly(vinyl alcohol))、水分散性ポリウレタン、および分散剤として界面活性剤(Triton-X100,Sigma Aldrich)を投入し、オープンブレード30rpm、デスパブレード700rpmの条件で混合し、溶媒混合液を製造した。次に、溶媒混合液にBET値が800m2/gのエアロゲルを投入し、オープンブレード70rpm、デスパブレード1500rpmの条件で混合し、エアロゲル混合液を製造した。エアロゲル混合液にグラスウールを投入し、オープンブレード30rpm、デスパブレード1200rpmの条件で混合し、エアロゲル組成物を製造した。次に、前記エアロゲル組成物にポリシロキサン系消泡剤(BYK社、BYK-094)を投入し、オープンブレード30rpm、デスパブレード700rpmの条件で8分間混合し、エアロゲル組成物内気泡を除去した。ここで、混合時には、プラネタリーミキサー(DNTEK、PT-005)を用いた。
前記製造されたエアロゲル組成物の固形分含有量は、エアロゲル50重量%、グラスウール40重量%、ポリビニルアルコール3重量%、水分散性ポリウレタン6.8重量%、分散剤0.1重量%および消泡剤0.1重量%であることを確認した。
【0124】
2.バッテリー断熱シートの製造
厚さ0.1mmのマイカシート(Famica,Muscovite)上に前記製造されたエアロゲル組成物をスラリー塗布し、サンドイッチタイプで厚さ0.1mmのマイカシートを積層した後、ロール圧延方法でコートした。次に、60℃で24時間乾燥させて、エアロゲル層を形成し、バッテリー断熱シートを製造した。製造されたバッテリー断熱シートの総厚さは、1.38mmであることを確認した。
【0125】
比較例1
前記実施例1においてエアロゲル組成物の製造時に、原料の投入量を調節し、固形分含有量がエアロゲル50重量%、グラスウール40重量%、ポリビニルアルコール9.99重量%および消泡剤0.01重量%であるエアロゲル組成物を製造したことを除いて、実施例1と同じ方法で製造した。
【0126】
比較例2
前記実施例1においてエアロゲル組成物の製造時に、原料の投入量を調節し、固形分含有量がエアロゲル50重量%、グラスウール40重量%、ポリビニルアルコール7重量%および消泡剤3重量%であるエアロゲル組成物を製造したことを除いて、実施例1と同じ方法で製造した。
【0127】
<実験例>
実験例1:断熱性の評価
前記実施例1~7および比較例1~2で製造された断熱シートを用いて断熱性を評価した。
具体的には、対向する一対の厚さ1mmのアルミニウムプレートの間にそれぞれの断熱シートを装入し、ヒートプレスの上に載置し、ヒートプレス上板を350℃で加熱し、ヒートプレス下板を加熱せず、開始温度40℃に維持した。次に、ヒートプレス下板に20kNの圧力を加え、11分後のヒートプレス下板の温度を測定し、下記表1に示した。
【0128】
実験例2:粉じん性の評価
前記実施例1~7および比較例1~2で製造された断熱シートを用いて粉じん性を評価した。
具体的には、評価前にそれぞれの断熱シートの重量を測定した。次に、断熱シートをゴム板上に載置し、断熱シートの頂点と正中央の合計5ヶ所をゴムハンマーで一定に打撃し、粉じんを除去した後、断熱シートの重量を測定した。引き続いて、物理的衝撃前後の重量を比較して重量減少率を計算し、その結果を下記表1に示した。
【0129】
実験例3:均一性の評価
前記実施例1~7および比較例1~2で製造された断熱シートを用いて均一性を評価した。
具体的には、最大明るさが1000Lm以上のLEDライトボックスの上にシートを載置し、ピンホールの有無とサイズ、個数などを把握し、シート自体の均一性を確認した。その結果を下記表1に示し、
図4のように、ピンホールがなく、きれいなシートの場合を◎、ピンホールがあるが、その面積が小さい場合を○、ピンホールがあるが、その面積が大きい場合を△、シートの均一性が殆どなく、使用が不可能である場合をXで表示した。
【0130】
【0131】
前記表1を参照すると、実施例1~7の場合、断熱性、粉じん性および均一性がいずれも優れていることを確認できた。ここで、実施例1~4を見ると、エアロゲル組成物の成分含有量に応じた断熱性、粉じん性および均一性の変化を確認できる。また、実施例5の場合、耐火特性バインダーとして分散剤の役割をすることができないので、粉じん性が多少低下したが、断熱性が改善されたことを確認できる。また、実施例6を見ると、バインダーと分散剤を混用した場合であって、断熱性、粉じん性および均一性が改善されたことを確認できた。また、実施例7を見ると、ポリビニルアルコールと水分散性ポリウレタン系バインダーを混用し、分散剤を含む場合、断熱性、粉じん性および均一性がさらに改善されたことを確認できた。ここで、断熱シートのコーティングがさらに均一になり、断熱シート内部の空いた空間が殆どないため、断熱性がさらに改善されたことが確認された。
【0132】
一方、比較例1および2の場合、実施例に比べて、断熱性、粉じん性および均一性が非常に低下したことを確認できた。
【0133】
したがって、一具現例によるエアロゲル組成物を使用する場合、断熱性、均一性および低粉じん特性に優れていることを確認できた。
【0134】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明および添付の図面の範囲内で種々変更可能であり、これも、本発明の範囲に属することは言うまでもない。
【符号の説明】
【0135】
100 バッテリー断熱シート
110 基材
120 エアロゲル層
130 第1基材
140 第2基材
200 セル