(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152620
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】ガラス基板及びガラス基板の製造装置
(51)【国際特許分類】
C03C 23/00 20060101AFI20241018BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20241018BHJP
【FI】
C03C23/00 D
B23K26/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024033138
(22)【出願日】2024-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2023065214
(32)【優先日】2023-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023145586
(32)【優先日】2023-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝野 楓
(72)【発明者】
【氏名】小林 悠波
(72)【発明者】
【氏名】堀内 浩平
【テーマコード(参考)】
4E168
4G059
【Fターム(参考)】
4E168AA02
4E168AD18
4E168CB03
4E168CB04
4E168CB07
4E168DA04
4E168DA25
4E168DA32
4E168DA43
4E168EA15
4E168EA19
4E168JA14
4G059AA08
4G059AB05
4G059AC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マークが読み取りやすいガラス基板を提供する。
【解決手段】複数のドット110で構成されるマークが表面に設けられるガラス基板10である。ドットは、表面から窪んだ部分である窪み部111と、窪み部よりもガラス基板の厚み方向に突出する突出部112とを有する。突出部は、ドットの輪郭と重なる位置又は輪郭より内側で延在する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のドットで構成されるマークが表面に設けられるガラス基板であって、
前記ドットは、前記表面から窪んだ部分である窪み部と、前記窪み部よりも前記ガラス基板の厚み方向に突出する突出部とを有し、
前記突出部は、前記ドットの輪郭と重なる位置又は前記輪郭より内側で延在する、ガラス基板。
【請求項2】
前記突出部は、前記ドットの輪郭と重なる位置から、前記輪郭より内側に延在する、請求項1に記載のガラス基板。
【請求項3】
前記窪み部の周縁のうち外側にある周縁を外周縁、前記窪み部の周縁のうち前記外周縁以外の周縁を内周縁とした場合、前記外周縁の長さに対する前記内周縁の長さの比Aは、0.2<A<50を満たす、
請求項1又は請求項2に記載のガラス基板。
【請求項4】
前記突出部は、前記輪郭の少なくとも2箇所を通る、請求項1又は請求項2に記載のガラス基板。
【請求項5】
前記突出部は、前記輪郭の少なくとも4箇所を通る、請求項4に記載のガラス基板。
【請求項6】
前記窪み部の深さは、30μm以下である、請求項1又は請求項2に記載のガラス基板。
【請求項7】
ガラス基板の表面に複数のドットで構成されるマークを設ける製造装置であって、
ガラス基板にドットを形成するレーザ光を発振する、レーザ発振器と、
前記レーザ発振器から前記ガラス基板までを結ぶ前記レーザ光の光路上に設けられるマスクと、
を備え、
前記マスクは、前記レーザ光が透過する透過部と、前記レーザ光を遮蔽する遮蔽部とを有する透過パターンを有し、
前記遮蔽部は、前記レーザ光の光路に沿った方向から平面視して、前記透過パターンの輪郭と重なる位置又は前記輪郭より内側で延在する、
ガラス基板の製造装置。
【請求項8】
前記レーザ発振器は、エキシマレーザである、請求項7に記載のガラス基板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板及びガラス基板の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセス中に、半導体デバイスを支持する部材として、ガラス基板が用いられることがある。例えば特許文献1に示すように、このようなガラス基板の表面にレーザ光を照射して刻印することで、ガラス基板の表面にマークを形成する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラス基板の表面のマークは、コードリーダ等によって読み取りがされる。この場合、マークは、確実に読み取れることが求められる。そのため、読み取りやすいマークを形成することが求められる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、マークが読み取りやすいガラス基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るガラス基板は、複数のドットで構成されるマークが表面に設けられるガラス基板であって、前記ドットは、前記表面から窪んだ部分である窪み部と、前記窪み部よりも前記ガラス基板の厚み方向に突出する突出部とを有し、前記突出部は、前記ドットの輪郭と重なる位置又は前記輪郭より内側で延在する。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るガラス基板の製造装置は、ガラス基板の表面に複数のドットで構成されるマークを設ける製造装置であって、ガラス基板にドットを形成するレーザ光を発振する、レーザ発振器と、前記レーザ発振器から前記ガラス基板までを結ぶ前記レーザ光の光路上に設けられるマスクと、を備え、前記マスクは、前記レーザ光が透過する透過部と、前記レーザ光を遮蔽する遮蔽部とを有する透過パターンを有し、前記遮蔽部は、前記レーザ光の光路に沿った方向から平面視して、前記透過パターンの輪郭と重なる位置又は前記輪郭より内側で延在する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、マークが読み取りやすいガラス基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るガラス基板の模式図である。
【
図3】
図3は、ガラス基板のドットが形成された部分の模式的な拡大図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の第1変形例に係るガラス基板のドットが形成された部分の模式的な拡大図である。
【
図6】
図6は、本実施形態の第2変形例に係るガラス基板のドットが形成された部分の模式的な拡大図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の第3変形例に係るガラス基板のドットが形成された部分の模式的な拡大図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の第4変形例に係るガラス基板のドットが形成された部分の模式的な拡大図である。
【
図9】
図9は、本実施形態の第5変形例に係るガラス基板のドットが形成された部分の模式的な拡大図である。
【
図10】
図10は、本実施形態の第6変形例に係るガラス基板のドットが形成された部分の模式的な拡大図である。
【
図11】
図11は、本実施形態の第7変形例に係るガラス基板のドットが形成された部分の模式的な拡大図である。
【
図12】
図12は、本実施形態の第8変形例に係るガラス基板のドットが形成された部分の模式的な拡大図である。
【
図13】
図13は、本実施形態の第9変形例に係るガラス基板のドットが形成された部分の模式的な拡大図である。
【
図14】
図14は、本実施形態に係るガラス基板の製造装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、数値については四捨五入の範囲が含まれる。
【0011】
(ガラス基板)
図1は、本実施形態に係るガラス基板の模式図である。本実施形態に係るガラス基板10は、半導体パッケージの製造用のガラス基板として用いられるものであり、半導体デバイスを支持するガラス基板といえる。ガラス基板10は、より具体的には、ファンアウトウェハレベルパッケージ(Fan Out Wafer Level Package:FOWLP)技術を用いた製造用の支持ガラス基板であり、例えばガラス基板10が矩形の場合には、ファンアウトパネルレベルパッケージ(Fan Out Panel Level Package:FOPLP)の製造用の支持ガラス基板である。ただし、ガラス基板10の用途は、半導体デバイスの支持や、FOWLPやFOPLPの製造用に限られず任意であり、任意の部材を支持するために用いられるガラス基板であってよい。また、イメージセンサー用カバーガラスや、半導体デバイス用の基板等、任意の製品に加工されるガラス又は結晶化ガラスであってよい。
【0012】
図1に示すように、ガラス基板10は、一方の主面である表面10A(一方の表面)と、表面10Aと反対側の主面である表面10B(他方の表面)とを有する板状の部材である。ガラス基板10は、平面視で、すなわち、表面10Aに直交する方向から見た場合に、円形となる円板形状となっている。言い換えれば、ガラス基板10は、ウェハ形状となっている。また、ガラス基板10は、外周面に切り欠き部Nが形成されて、円形の外周が一部切り欠かれた形状になっていてもよい。ただし、ガラス基板10の形状は、円板形状に限られず任意の形状であってよく、例えば矩形板状などの多角形状の板であってもよい。また、切り欠き部Nも必須の構成ではなく、ガラス基板10に切り欠き部Nが形成されていなくてもよい。例えば、ガラス基板10が後述のように円形板状である場合には、切り欠き部Nが形成されることが好ましい。
以下、表面10Aに直交する方向を、Z方向と記載する。Z方向は、ガラス基板10の厚み方向ともいえる。
【0013】
(ガラス基板の直径)
ガラス基板10の直径D0は、20mm以上1000mm以下であることが好ましく、150mm以上700mm以下であることが好ましく、150mm以上600mm以下であることが更に好ましく、150mm以上450mm以下であることが更に好ましい。直径D0がこの範囲となることで、半導体デバイスなどの部材を適切に支持できる。なお、直径D0は、ガラス基板10が円形である場合には直径を指すが、ガラス基板10が円形でない場合においては、ガラス基板10の外周上の任意の2点間の距離のうちの、最大値を指してよい。
なお、ガラス基板10が円板形状である場合には、直径D0は450mm以下であることが好ましく、300mm以下であることがより好ましい。
また、ガラス基板10が矩形板状である場合には、直径D0、すなわちガラス基板10の外周上の任意の2点間の距離のうちの最大値である対角線の長さは、30mm以上1000mm以下であることが好ましい。
【0014】
(ガラス基板の厚み)
ガラス基板10の厚み、すなわち表面10Aと表面10Bとの間のZ方向における長さは、2mm以下であることが好ましく、0.05mm以上2.0mm以下であることがより好ましく、0.5mm以上2.0mm以下であることが更に好ましく、0.5mm以上1.8mm以下であることが更に好ましく、0.6mm以上1.5mm以下であることが更に好ましい。ガラス基板10は、厚みが2mm以下であることで、重量増加による取り扱いの困難性を抑制できる。また、厚みが0.3mmより大きいことで、支持部材として使用される際の剛性を高くして、ガラスや半導体デバイスの反りを抑制できる。
なお、ガラス基板10が円板形状である場合には、厚みが0.3mm以上2.0mm以下であることが好ましく、ガラス基板10が矩形板状である場合には、厚みが0.5mm以上2.0mm以下であることが好ましい。
【0015】
ガラス基板10の厚みの偏差は、50μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることがさらに好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。厚みの偏差がこの範囲となることで、ガラス基板10の厚みが均一に近づき、半導体デバイスを適切に製造することを可能とし、マークの形成においても安定した加工を行うことができる。なお、厚みの偏差とは、ガラス基板10の表面に沿った平面上の位置(座標)毎の厚みの最大値と最小値の差分を指す。例えば、ガラス基板10の表面に沿った平面上の位置(座標)毎に、その位置における厚みを算出し、それらの位置毎の厚みの内の最大値と最小値との差分を、厚みの偏差としてよい。
【0016】
また、ガラス基板10の50mm四方におけるLTV(Local Thickness Variation)は、25μm以下であることが好ましく、10μm以下が更に好ましい。50mm四方におけるLTVとは、ガラス基板10の任意の位置における50mm四方の単位領域における厚みの最大値と最小値との差分を指す。言い換えれば、厚みの偏差は、ガラス基板10の全域における厚みの最大値と最小値との差分であるのに対し、LTVは、ガラス基板10の単位領域における厚みの最大値と最小値との差分を指す。
【0017】
(マーク)
ガラス基板10の表面10Aには、マーク100が形成されている。マーク100は、例えば、数字、文字、2次元コード及び図形のうちの少なくとも1つで構成された識別子であってよい。数字、文字、2次元コード及び図形の各々は、1つであってもよいし複数であってもよい。識別子としてのマーク100は、ガラス基板10を識別するためのマークであるといえる。識別子としてのマーク100は、例えば、ガラス基板10の識別や管理に利用できる。
【0018】
マーク100は、ガラス基板10を識別するための識別子であることに限られず、例えば、アライメントマークであってもよい。アラインメントマークとは、例えばガラス基板10の位置決め用のマークであり、ガラス基板10のハンドリング、切断、面取り及び貼り合わせ等の加工の際の位置や方向合わせ等に利用できる。また、マーク100はガラスの向きを判断するためのマークであってよい。すなわち、ガラス基板10上にデバイス等を積層する際に、デバイス等の製造時の反りの変動に合わせ、デバイス等を積層する面の反対面に形成しても良い。
【0019】
図2は、マークの一例の模式図である。
図2の例では、マーク100は、SEMI-T7-0709で規定されるデータマトリクスである。より詳しくは、マーク100は、矩形に並ぶ8行32列のセルに配置されるドット110の有無によってデータを表現するマークである。すなわち、コードリーダ等でマーク100を読み取ることで、マーク100が表現するデータを取得できる。マーク100の読み取りは、マーク100に光を照射し、マーク100を撮像し、得られた撮像データを二値化して、デコードすることによって行われる。なお、マーク100は、SEMI-T7-0709で規定されるデータマトリクスであることに限られず、ガラス基板10を識別する任意の情報を表現するものであってよい。
【0020】
マーク100の全体寸法は、特に限られず、フォントや二次元コードの種類によって規定される。例えば、
図2に示すようなマーク100の場合、横方向の長さL1及び縦方向の長さL2は、SEMI-T7-0709によって規定される。ここで、横方向とは、行が延びる方向を指し、縦方向とは、列が延びる方向を指す。具体的には、横方向の長さL1は、3.88±0.05mmの範囲であり、縦方向の長さL2は、0.88±0.05mmである。なお、横方向の長さL1とは、マーク100の横方向の最も一方側のドット110の中心と、横方向の最も他方側のドット110の中心との間の、横方向における距離を指し、縦方向の長さL2とは、マーク100の縦方向の最も一方側のドット110の中心と、縦方向の最も他方側のドット110の中心との間の、縦方向における距離を指す。
【0021】
マーク100は、複数のドット110で構成される。換言すれば、複数のドット110により、マーク100が形成される。なお、本実施形態においては、ドット110同士は重なり合っておらず、離れて形成されている。例えば、隣り合うドット110同士のピッチPは、SEMI-T7-0709によって規定され、フォントや二次元コードの種類によって規定される。なお、ピッチPは、1つのドット110の中心と、そのドット110に隣り合うドット110の中心との間の、表面10Aに沿った方向における距離を指す。
【0022】
以下の説明において、マッチングレベルとは、マーク100の読み取りのしやすさを0以上100以下の数値で示す指標である。ここで、読み取り率とは、マーク100を複数回読み取った場合の、マーク100の読み取り回数に対する、マーク100が表現するデータを正常に取得できた回数の割合を指す。マッチングレベルは、例えば、キーエンス SPX300等の読み取り機で測定できる。マッチングレベルは、例えば、マーク100と読み取り機との間の距離を8cmとし、ガラス基板10の表面10Aに対する読み取り角度を30°にして測定できる。
【0023】
(ドット)
図3は、ガラス基板のドットが形成された部分の模式的な拡大図であり、
図4は、
図3のIV-IV線に沿った断面図である。
図4は、ドット110を通りZ方向に沿う平面を断面とした際の、ガラス基板10の断面図といえる。
図3及び
図4に示すように、ドット110は、ガラス基板10の表面10Aに形成される窪みを含む。本実施形態では、ドット110は、表面10Aにレーザ光を照射することによって形成される。すなわち、本実施形態のドット110は、レーザ照射痕(レーザ光の照射痕)であるといえる。
【0024】
図3に示すように、ドット110は、窪み部111と、突出部112とを有する。
【0025】
(窪み部)
窪み部111は、ドット110のうち、表面10Aから窪んだ部分である。窪み部111は、表面10Aから、Z方向において表面10Aから表面10Bに向かう方向に、窪んでいる。すなわち、窪み部111は、レーザ照射痕の凹部であるといえる。
【0026】
図4に示すように、ドット110は、底面110aと側面110bとを有し、底面110aと側面110bとで囲われた空間が、窪み部111を形成しているといえる。底面110aは、表面10Aから、Z方向において表面10Aから表面10Bに向かう方向に窪んだ面を指す。側面110bは、ドット110の底面110aとガラス基板10の表面10Aとを接続する側面部分を指す。側面110bは、側面部110b1と、接続部110b2と、接続部110b3とを含む。側面部110b1は、ドット110の側面を形成する部分である。接続部110b2は、側面部110b1のZ方向の一方の端部に形成された部分であり、底面110aと側面部110b1とを接続するR形状となっている。接続部110b3は、側面部110b1のZ方向の他方の端部に形成された部分であり、側面部110b1とガラス基板10の表面10Aとを接続するR形状となっている。ただし、側面110bは、R形状である接続部110b2、110b3を含むことに限られず、底面110aと側面部110b1との接続部分や、側面部110b1とガラス基板10の表面10Aとの接続部分が、エッジを有する形状となっていてもよい。
【0027】
窪み部111の深さHは、0.1μm以上30μm以下であることが好ましく、0.5μm以上10μm以下であることがより好ましく、1μm以上6μm以下であることがさらに好ましい。深さHがこの範囲となることで、窪み部111を起点としたガラス基板10の割れを抑制でき、読み取りの容易さを確保できる。ここで、深さHは、Z方向における表面10Aと底面110aとの間の距離を指す。
窪み部111の深さHは、以下の方法によって測定する。マーク100のドット110について、レーザ顕微鏡により任意のドット110の断面形状測定を行う。その後、断面の最低点をSとし、ガラス主表面である表面10Aと最低点SとのZ方向の差を、深さHとする。ただし、後述する外周縁111a1付近に凹形状を有する形態の場合は、外周縁111a1付近の凹みは最低点としては加味しなくてよい。深さHは、例えば、キーエンス製 VK―X1000等のレーザ顕微鏡により測定できる。
また、底面110aの径方向内側に生じる凹みを除いた底面110aの深さの偏差をΔHとした際、ΔHは深さHの50%以下であることが望ましく、25%以下であることがさらに望ましい。
【0028】
(周縁)
ここで、窪み部111の側面110bと表面10Aとの境界線を、窪み部111の周縁111aとする。例えば、周縁111aは、側面部110b1に沿った面と表面10Aに沿った平面とが交差して形成される仮想線であってよく、言い換えれば、Z方向に直交する各方向から見た断面における、側面部110b1を通る直線(例えば側面部110b1と表面10Aを通る直線の交点のそれぞれを結んだ線)に相当するものであってもよい。
【0029】
ここで、Z方向から見たドット110の中心を中心AXとし、Z方向に沿って中心AXを通る軸を中心軸とした場合の放射方向を、単に「放射方向」と記載する。中心AXは、窪み部111を総和した図形の幾何的重心であってよい。この場合、窪み部111の周縁111aのうち、放射方向の外側にあるものを、外周縁111a1とする。より詳しくは、周縁111aの全区間のうちで、その区間よりも放射方向外側に、他の周縁111aの区間が存在しない区間を、外周縁111a1とする。換言すれば、外周縁111a1上の点から放射方向外側には、同じドット110の窪み部111及び周縁111aがない。なお、外周縁111a1よりも放射方向外側に、他のドット110の窪み部111及び周縁111aがあってもよい。
以下の説明では、窪み部111の周縁111aのうち、外周縁111a1でないものを、内周縁111a2として説明する。換言すれば、内周縁111a2上の点から放射方向外側には、同じドット110の窪み部111又は窪み部111の周縁111aがある。
図3の例では、窪み部111の形状は、Z方向に平面視して、4つの四分円である。該4つの四分円は、直角を内側にして、窪み部111の形状が回転対称となるように並んでいる。したがって、この場合、周縁111aのうち円弧部分が外周縁111a1であり、周縁111aのうち直線部分が内周縁111a2である。
【0030】
ここで、外周縁111a1の長さに対する内周縁111a2の長さの比(内周縁111a2の長さ/外周縁111a1の長さ)をAとした場合、Aは0.2より大きく、50より小さいことが好ましく、0.34以上16.8以下であることがより好ましく、0.69以上16.8以下であることがさらに好ましい。なお、内周縁111a2の長さとは、1つのドット110に含まれる全ての窪み部111の内周縁111a2の合計長さを指し、外周縁111a1の長さとは、1つのドット110に含まれる全ての窪み部111の外周縁111a1の合計長さを指す。すなわち
図3の例では、内周縁111a2の長さとは、4つの四分円の直線部分の合計長さであり、外周縁111a1の長さとは、4つの四分円の円弧部分の合計長さである。
ここで、Aは、内周縁111a2が外周縁111a1に対して長いほど、大きい値となるので、Aは、ドット110の凹凸の程度を示す指標であるといえる。したがって、Aがこの範囲となることで、読み取りやすさを向上できる。
外周縁111a1の長さ及び内周縁111a2の長さは、例えば、キーエンス製 VK―X1000等のレーザ顕微鏡で測定される。
【0031】
(輪郭)
ここで、ドット110の輪郭113について説明する。ドット110の輪郭とは、ドット110の外周縁を指し、外周縁111a1を含む閉じた線である。例えば、Z方向から見て、全ての窪み部111の外周縁111a1の全区間と重なる閉じた線を、輪郭113としてよい。また、例えば、以下の(1)から(4)の全てを満たす線を、ドット110の輪郭113とすることが好ましい。(1)線は、Z方向に平面視して、外周縁111a1の少なくとも一部と重なる。(2)線上の2点間の最長距離は、ドット110の外周縁111a1上の2点間の最長距離と等しい。(3)線は、単純閉凸曲線である。(4)線で囲まれる領域は、窪み部111の全部と重なる。ここで、単純閉凸曲線であるとは、自己交叉しない閉じた線であって、該線の内側又は該線上にある任意の2点を結ぶ線分が、該線の外側と重ならないことを指す。
図3の例では、中心AXを中心とする径Dの円周は、(1)窪み部111の全ての外周縁111a1(周縁111aの円弧部分)と重なっており、(2)該円周上の2点間の最長距離はDで、外周縁111a1上の2点間の最長距離と等しい。(3)該円周は、円の輪郭であるので、単純閉凸曲線である。(4)該円周で囲まれる円は、窪み部111の全部と重なる。よって、中心AXを中心とする半径Rの円周は、ドット110の輪郭113であるといえる。
以下の説明では、ドット110の輪郭113に囲まれた範囲の形状を、ドット110の形状として説明する。
図3の例では、ドット110の形状は円形である。
【0032】
ここで、ドット110の径Dは、10μm以上200μm以下であることが好ましく、80μm以上150μm以下であることがより好ましく、90μm以上120μm以下であることがさらに好ましい。ここで、ドット110の径Dとは、ドット110の輪郭113上の2点間の最長距離、すなわち外周縁111a1上の2点間の最長距離を指す。ドット110の径Dがこの範囲となることで、1つのドット110を比較的大きくして、マーク100を適切に視認させることができる。
【0033】
(突出部)
突出部112は、窪み部111より突出する部分である。換言すれば、突出部112は、ドット110のうち、Z方向で窪み部111より表面10A側にある部分を指し、言い換えれば、輪郭113よりも放射方向内側の領域のうちで、窪み部111よりもZ方向において表面10A側にある部分を指す。より詳しくは、突出部112は、ドット110のうち、Z方向に平面視して、窪み部111でない領域を指す。本実施形態では、突出部112は、ドット110のうち、レーザ照射痕の凸部であるといえる。突出部112は、ドットの輪郭113と重なる位置又はドットの輪郭113の放射方向内側で延在する。より詳しくは、突出部112には、突出部112上の異なる2つの位置である第1位置及び第2位置が存在する。第1位置及び第2位置は、いずれもドットの輪郭113と重なる位置又はドットの輪郭113の放射方向内側にある。また、第1位置と第2位置とを結ぶ経路であって、該経路の全区間が突出部112と重なる経路が存在する。突出部112は、ドットの輪郭113と重なる位置から、輪郭113の放射方向内側に延在している。すなわち、窪み部111の外周縁111a1をなす線は、閉じた線ではなく、少なくとも1箇所が突出部112を介して開いた線になっているといえる。
【0034】
突出部112は、輪郭113上の第1位置113aから、輪郭113の放射方向内側の領域を通って、輪郭113上であって第1位置113aとは異なる第2位置111bまでにわたって、延在していることが好ましく、言い換えれば、突出部112は、輪郭113上の2箇所を通ることが好ましい。
図3の例では、突出部112は、ドット110の輪郭113と重なる4つの位置から、輪郭113より内側に延在した十字状の形状となっている。言い換えれば、
図3の例では、輪郭113と重なる第1位置113aから第2位置113bまで延在する第1の突出部112aと、輪郭113と重なる第3位置113cから第4位置113dまで延在する第2の突出部112bが形成されており、第1の突出部112aと第2の突出部112bとが、輪郭113の放射方向内側の領域で交差している。
【0035】
以上、本実施形態に係るドット110について説明したが、本発明に係るドットは、
図3に係るドット110に限られず、以下に説明する変形例に係るドットであってもよい。
【0036】
図5は、本実施形態の第1変形例に係るガラス基板のドットが形成された部分の模式的な拡大図である。
図5に示すように、第1変形例に係るドット110Aの突出部112Aの形状は格子状である。より詳しくは、第1変形例に係るドット110Aは、円弧状の輪郭113Aを有するドットであって、突出部112Aは、縦方向及び横方向に2本ずつ形成され、残りの部分が窪み部111Aとなっており、9個に分割されている。
【0037】
図6は、本実施形態の第2変形例に係るガラス基板のドットが形成された部分の模式的な拡大図である。
図6に示すように、第2変形例に係るドット110Bの突出部112Bの形状は格子状である。より詳しくは、第2変形例に係るドット110Bは、円弧状の輪郭113Bを有するドットであって、突出部112Bは、縦方向及び横方向に3本ずつ形成され、残りの部分が窪み部111Bとなっており、16個に分割されている。
【0038】
図7は、本実施形態の第3変形例に係るガラス基板のドットが形成された部分の模式的な拡大図である。
図7に示すように、第3変形例に係るドット110Cは、円弧状の輪郭113Cを有するドットであって、突出部112Cの形状は帯状である。すなわち、突出部112Cは、ドット110Cの輪郭113C上の2箇所を通る。
【0039】
図8は、本実施形態の第4変形例に係るガラス基板のドットが形成された部分の模式的な拡大図である。
図8に示すように、第4変形例に係るドット110Dは、円弧状の輪郭113Dを有するドットであって、突出部112Dの形状は回転対称ではなく、線対称ではない。すなわち、突出部112Dとドット110Dの輪郭113Dと重なる位置は一定間隔でない。
【0040】
図9は、本実施形態の第5変形例に係るガラス基板のドットが形成された部分の模式的な拡大図である。
図9に示すように、第5変形例に係るドット110Eは、円弧状の輪郭113Eを有するドットであって、突出部112Eは、縦方向及び横方向に1本ずつ形成された十字状の部分と、十字状の部分の交差点に形成された円状の部分とを有し、残りの部分が窪み部111Eとなっている。
【0041】
図10は、本実施形態の第6変形例に係るガラス基板のドットが形成された部分の模式的な拡大図である。
図10に示すように、第6変形例に係るドット110Fは、円弧状の輪郭113Fを有するドットであって、突出部112Fの形状は直線の帯状ではない。
【0042】
図11は、本実施形態の第7変形例に係るガラス基板のドットが形成された部分の模式的な拡大図である。
図11に示すように、第7変形例に係るドット110Gは、矩形状の輪郭113Gを有する。なお、窪み部111Gの形状は矩形であり、突出部112Gの形状は十字形であるが、単なる一例である。
【0043】
図12は、本実施形態の第8変形例に係るガラス基板のドットが形成された部分の模式的な拡大図である。
図12に示すように、第8変形例に係るドット110Hは、三角形状の輪郭113Hを有する。なお、窪み部111Hの形状は三角形又は台形であり、突出部112Hの形状は帯状であるが、単なる一例である。
【0044】
図13は、本実施形態の第9変形例に係るガラス基板のドットが形成された部分の模式的な拡大図である。
図13に示すように、第9変形例に係るドット110Iは、円弧状の輪郭113Iを有し、突出部112Iはドット110Iの輪郭113Iと重なる1つの位置から、輪郭113Iより内側に延在した形状となっている。すなわち、窪み部111Iは突出部112Iによって複数に分かれていない。
【0045】
以上、第1から第9変形例に係るドット110A~110Iの形状について説明したが、本実施形態に係るドットの形状は、上記で説明した例に限られない。例えば、突出部の数は、上記に示した変形例と異なっていてもよく、ドットは、5つ以上の頂点を有する多角形状の輪郭を有していてもよい。
【0046】
(ガラス基板の製造方法)
本実施形態におけるガラス基板10の製造方法は、マーク100が形成される前のガラス基板であるガラス板を準備する準備ステップと、ガラス板の表面にレーザ光を照射してマーク100を形成してガラス基板10を製造する照射ステップと、を含む。
【0047】
準備ステップにおいては、ガラス原料を溶解した後、フロート、フュージョン、インゴット成形等、任意のガラス成形手法によって、ガラス原料をガラス状態にして、ガラス板を製造し、その後ガラス基板の形状となるように加工する。本実施形態の例では、ガラス基板は円板状であるため、例えばスライス、円形切りなどの任意の手段により、ガラスを円形に切り出して、円形のガラス板を形成する。円形に切り出したガラス板に対し、端面の面取り加工や、表面の研削研磨加工を行う。ここでドットを形成する領域近傍の表面粗さ(Ra)が好ましい範囲から外れているときは、対象領域に追加の加工を行うことが可能である。すなわち、表面の研削研磨加工後、レーザでの加工よりも前の任意のタイミングで、対象領域に追加の局所研磨や、薬液加工といった表面処理を行うことが可能である。例えば局所研磨としては、ヘッドの小さい研磨パッドを用いて刻印近傍領域の追加研磨を行うことや、フッ酸等の薬液やレーザ光、プラズマによる表面の微細加工が挙げられる。このような局所的な処理を行うことにより、レーザ加工しにくいガラス基板でも、レーザ加工によるドット110を形成できる。設計された工程を経たガラス板は、さらに洗浄・検査工程を経て、所望のRaとなり、準備ステップを完了する。
【0048】
照射ステップにおいては、ガラス板の表面にレーザ光を照射してドット110を形成する処理を繰り返して、ガラス板の表面に、複数のドット110で構成されたマーク100を形成する。レーザ光を照射する際には、レーザでの加工を容易にする、又は飛散物の付着を防止するため、吸収係数の高い金属膜や樹脂膜を塗布しても良い。レーザ光は、光源から後述する各種光学機器を通じてガラス表面へ照射される。ガラス表面のZ方向に垂直な方向の移動はスキャナーを用いて移動するが、ステージ等を用いて移動しても良い。
本実施形態では、1つのレーザ照射痕で1つのドット110が形成される。ここで、1つのレーザ照射痕とは、レーザ光を1回照射することで形成される照射痕を指す。また、レーザ光は同一個所に複数回照射しても良く、一定のピッチで位置をずらしながら照射しても良い。
また、本実施形態では、ドット110は、エキシマレーザでガラス表面をアブレーション加工することで形成される。この場合、ガラス表面にクラックを発生させることなく、ドット110が形成される。
【0049】
(ガラス基板の製造装置)
図14は、本実施形態に係るガラス基板の製造装置の模式図である。
図14は、上記の照射ステップで用いられる装置を示すものである。
図14に示すように、本実施形態に係るガラス製造装置1は、レーザ発振器2と、マスク3と、ミラー4と、集光レンズ5とを備える。
レーザ発振器2は、レーザ光B1を発振するレーザである。すなわち、レーザ発振器2は、レーザ光B1の光源である。レーザ発振器2は、例えば、波長が193nm、248nm、308nmおよび351nmからなる群から選ばれるいずれか1つの波長である光源で発振されるエキシマレーザである。すなわち、レーザ発振器2は、パルス放電によってパルスレーザ光を発振する。レーザ光B1の、光路に垂直な方向から平面視した形状(ビーム形状)は、例えば、長辺が4mmで、短辺が2mmである矩形である。
マスク3は、レーザ光B1の一部を遮ってビーム形状を変える。なお、マスク3の位置はあくまで一例であって、レーザ発振器2から集光レンズ5までの光路に設けられていればよい。マスク3の透過パターンについては後述する。
ミラー4は、例えばガルバノミラーであって、レーザ光B2の光路の方向を変える。なお、ミラー4は、設けられていなくてもよく、また、複数設けられてもよい。
集光レンズ5は、レーザ光B2を集光して、レーザ光B3のスポット径を調整する。レーザ光B3のスポット径は、ドット径Dが約100μmとなるように調整してよい。
これにより、レーザ光B3がガラス表面10Aに照射され、本実施形態に係るドット110が形成される。
【0050】
図15は、
図14に係るマスクの模式的な平面図である。より詳しくは、
図15は、マスク3をレーザ光B1の光路方向から平面視した図である。
図15に示すように、本実施形態に係るガラス製造装置1のマスク3は、透過パターン30を有する。透過パターン30は、レーザ光B1の光路方向に平面視して、レーザ光B1と重なる位置に設けられる。透過パターン30は、透過部31と遮蔽部32とを有する。透過部31は、レーザ光B1が透過する部分であり、遮蔽部32は、レーザ光B1を遮蔽する部分である。透過部31と遮蔽部32との形状は、それぞれドット110の窪み部111と突出部112と同じ形状である。すなわち、透過パターン30は、ドット110と同じ形状である。また、遮蔽部32は、レーザ光の光路に沿った方向から平面視して、透過パターン30の輪郭33と重なる位置又は輪郭33より内側で延在している。本実施形態では、遮蔽部32は、レーザ光の光路に沿った方向から平面視して、透過パターン30の輪郭33の内側と重なる位置から、輪郭33より内側に延在している。
図15の例では、透過パターン30の形状は、光路方向に平面視して、4つの四分円である。該4つの四分円は、直角を内側にして、透過パターン30の形状が回転対称となるように並んでいる。
図15の例では、遮蔽部32の形状は、輪郭33と重なる4つの位置から、輪郭33より内側に延在した十字状の形状となっている。これにより、レーザ光B1は、透過部31以外の部分がマスク3で遮蔽されるため、マスク3を通過したレーザ光B2、B3のビーム形状が窪み部111の形状と同じとなる。これにより、本実施形態に係るドット110をガラス基板10に形成できる。
【0051】
(効果)
以上説明したように、本発明の第1態様に係るガラス基板10は、複数のドット110で構成されるマーク100が表面10Aに設けられるガラス基板10であって、ドット110は、表面10Aから窪んだ部分である窪み部111と、窪み部111よりもガラス基板10の厚み方向(Z方向)に突出する突出部112とを有し、突出部112は、ドット110の輪郭113と重なる位置又は輪郭113より内側で延在する。これにより、ドット110が凹凸を有する外観となるので、ドット110の読み取りの際に影が生じやすくなり、又は、光が反射しやすくなると考えられるため、ドット110のコントラスト差が大きくなるので、マーク100が読み取りやすくなる。
【0052】
本発明の第2態様に係るガラス基板10は、本発明の第1態様に係るガラス基板10であって、突出部112は、ドット110の輪郭113と重なる位置から、輪郭113の内側に延在する。これにより、ドット110が凹凸を有する外観となるので、ドット110の読み取りの際に影が生じやすくなり、又は、光が反射しやすくなるため、ドット110のコントラスト差が大きくなるので、マーク100が読み取りやすくなる。
【0053】
本発明の第3態様に係るガラス基板10は、本発明の第1態様又は第2態様に係るガラス基板10であって、窪み部111の周縁111aのうち外側にある周縁を外周縁111a1、窪み部111の周縁111aのうち外周縁111a1以外の周縁を内周縁111a2とした場合、外周縁111a1の長さに対する内周縁111a2の長さの比A(内周縁111a2の長さ/外周縁111a1の長さ)は、0.2<A<50を満たす。これにより、ドット110の凹凸の程度が十分なものとなるので、マーク100がより読み取りやすくなる。
【0054】
本発明の第4態様に係るガラス基板10は、本発明の第1態様から第3態様のいずれかに係るガラス基板10であって、突出部112は、輪郭113の少なくとも2箇所を通る。この場合でも、マーク100が読み取りやすくなる。
【0055】
本発明の第5態様に係るガラス基板10は、本発明の第4態様に係るガラス基板10であって、突出部112は、輪郭113の少なくとも4箇所を通る。この場合でも、マーク100が読み取りやすくなる。
【0056】
本発明の第6態様に係るガラス基板10は、本発明の第1態様から第5態様のいずれかに係るガラス基板10であって、窪み部111の深さHは、30μm以下である。これにより、マーク100の凹凸差が大きくなるので、マーク100がより読み取りやすくなる。
【0057】
以上説明したように、本発明の第7態様に係るガラス基板10の製造装置1は、ガラス基板10の表面10Aに複数のドット110で構成されるマーク100を設ける製造装置1であって、ガラス基板10にドット110を形成するレーザ光を発振する、レーザ発振器2と、レーザ発振器2からガラス基板10までを結ぶレーザ光の光路上に設けられるマスク3と、を備える。マスク3は、レーザ光が透過する透過部31と、レーザ光を遮蔽する遮蔽部32とを有する透過パターン30を有し、遮蔽部32は、レーザ光の光路に沿った方向から平面視して、透過パターン30の輪郭33と重なる位置又は輪郭33より内側で延在する。これにより、マーク100が読み取りやすいガラス基板10を提供できる。
【0058】
本発明の第8態様に係るガラス基板10の製造装置1は、本発明の第7態様に係るガラス基板10の製造装置1であって、レーザ発振器2は、エキシマレーザである。これにより、マーク100が読み取りやすいガラス基板10を提供できる。
【0059】
(実施例)
次に、実施例について説明する。
【0060】
(第1の実験)
表1は、第1の実験に係る例1~例10を示す表である。第1の実験では、レーザ光の照射回数(ショット数)を10ショットとしてレーザ光を照射してドットを形成した。
【0061】
【0062】
(例1)
例1においては、径が300mm、厚みが1.0mmのガラス基板に、レーザ光を照射して、外観が円状となるようにドットを形成した。すなわち、例1に係るドットの外観は円であって、突出部を有さない。言い換えれば、例1では、円状の窪み部がドットの全域にわたって形成されている。レーザ光の照射条件は、波長:193nm、出力:4mJ、周波数:200Hzであり、レーザ光の照射回数(ショット数)は10ショットとした。ドットの輪郭の径は、100μmであった。例1においては、突出部を有さないようにドットを形成したため、表1に示すように、突出部が存在しない。
【0063】
(例2)
例2においては、ドットの外観以外は、例1と同様の条件でドットを形成した。例2に係るドットの外観は、表1に示すように、円弧状の輪郭のドットであって、4つの四分円形状の窪み部と、それらの窪み部の間を通る十字状の突出部を有する外観となっている。例2においては、窪み部の外周縁の長さに対する内周縁の長さの比A(内周縁の長さ/外周縁の長さ)を表1のようにしてドットを形成した。
【0064】
(例3~例5)
例3~例5においても、比Aを表1のようにしたこと以外は、例2と同様の方法でドットを形成した。
【0065】
(例6)
例6においては、表1に示すように、ドットの外観を円弧状の輪郭のドットであって、突出部が横方向にドットの輪郭と重なる1つの位置から、輪郭より内側に延在した形状で1本形成され、残りの部分が窪み部となっている外観とし、ショット数、比Aを表1のようにしたこと以外は、例2と同様の方法でドットを形成した。
【0066】
(例7)
例7においては、表1に示すように、ドットの外観を円弧状の輪郭のドットであって、2つの半円形状の窪み部と、それらの窪み部の間を通る帯状の突出部を有する外観とし、ショット数、比Aを表1のようにしたこと以外は、例2と同様の方法でドットを形成した。
【0067】
(例8)
例8においては、表1に示すように、ドットの外観を円弧状の輪郭のドットであって、突出部が縦方向及び横方向に5本ずつ形成され、残りの部分が窪み部となっている外観とし、ショット数、比Aを表1のようにしたこと以外は、例2と同様の方法でドットを形成した。
【0068】
(例9)
例9においては、表1に示すように、ドットの外観を円弧状の輪郭のドットであって、突出部が縦方向及び横方向に7本ずつ形成され、残りの部分が窪み部となっている外観とし、ショット数、比Aを表1のようにしたこと以外は、例2と同様の方法でドットを形成した。
【0069】
(例10)
例10においては、表1に示すように、ドットの外観を円弧状の輪郭のドットであって、突出部が縦方向及び横方向に11本ずつ形成され、残りの部分が窪み部となっている外観とし、ショット数、比Aを表1のようにしたこと以外は、例2と同様の方法でドットを形成した。
【0070】
(評価)
第1の実験では、各例のドットについて、キーエンス SRX300により読み取りを行い、マッチングレベルを測定した。マッチングレベルの測定は、例えば、マークと読み取り機との間の距離を8cmとし、ガラス基板の表面に対する読み取り角度を30°にして測定した。第1の実験では、マッチングレベルが10以上を合格、10未満を不合格とした。
【0071】
表1に示すように、ドットの輪郭から放射方向内側に延在する突出部を設けた実施例である例2~例10においては、マッチングレベルが合格となり、突出部が設けられない比較例である例1においては、マッチングレベルが不合格となった。このように、ドットを窪み部と突出部とを有するものとすることで、マークが読み取りやすくなることが分かる。
【0072】
(第2の実験)
表2は、第2の実験に係る例11~例23を示す表である。第2の実験では、レーザ光の照射回数(ショット数)を30ショットとしてレーザ光を照射してドットを形成した。
【0073】
【0074】
(例11)
例11においては、ショット数を表2のようにしたこと以外は、例1と同様の方法でドットを形成した。
【0075】
(例12~例15)
例12~例15においては、ショット数、比Aを表1のようにしたこと以外は、例2と同様の方法でドットを形成した。
【0076】
(例16)
例16においては、表2に示すように、ドットの外観を円弧状の輪郭のドットであって、突出部が縦方向及び横方向に2本ずつ形成され、残りの部分が窪み部となっている外観とし、ショット数、比Aを表1のようにしたこと以外は、例2と同様の方法でドットを形成した。
【0077】
(例17)
例17においては、表2に示すように、ドットの外観を円弧状の輪郭のドットであって、突出部が縦方向及び横方向に3本ずつ形成され、残りの部分が窪み部となっている外観とし、ショット数、比Aを表1のようにしたこと以外は、例2と同様の方法でドットを形成した。
【0078】
(例18)
例18においては、表1に示すように、ドットの外観を円弧状の輪郭のドットであって、突出部が横方向にドットの輪郭と重なる1つの位置から、輪郭より内側に延在した形状で1本形成され、残りの部分が窪み部となっている外観とし、ショット数、比Aを表1のようにしたこと以外は、例2と同様の方法でドットを形成した。
【0079】
(例19)
例19においては、表1に示すように、ドットの外観を円弧状の輪郭のドットであって、2つの半円形状の窪み部と、それらの窪み部の間を通る帯状の突出部を有する外観とし、ショット数、比Aを表1のようにしたこと以外は、例2と同様の方法でドットを形成した。
【0080】
(例20)
例20においては、表1に示すように、ドットの外観を円弧状の輪郭のドットであって、突出部が縦方向及び横方向に5本ずつ形成され、残りの部分が窪み部となっている外観とし、ショット数、比Aを表1のようにしたこと以外は、例2と同様の方法でドットを形成した。
【0081】
(例21)
例21においては、表1に示すように、ドットの外観を円弧状の輪郭のドットであって、突出部が縦方向及び横方向に7本ずつ形成され、残りの部分が窪み部となっている外観とし、ショット数、比Aを表1のようにしたこと以外は、例2と同様の方法でドットを形成した。
【0082】
(例22)
例22においては、表1に示すように、ドットの外観を円弧状の輪郭のドットであって、突出部が縦方向及び横方向に11本ずつ形成され、残りの部分が窪み部となっている外観とし、ショット数、比Aを表1のようにしたこと以外は、例2と同様の方法でドットを形成した。
【0083】
(例23)
例23においては、表1に示すように、ドットの外観を円弧状の輪郭のドットであって、突出部が、縦方向及び横方向に1本ずつ形成された十字状の部分と、十字状の部分の交差点に形成された円状の部分とを有し、残りの部分が窪み部となっている外観とし、ショット数、比Aを表1のようにしたこと以外は、例2と同様の方法でドットを形成した。
【0084】
(評価)
第2の実験では、第1の実験と同様の条件で、各例のドットについて、キーエンス SRX300により読み取りを行い、マッチングレベルを測定した。第2の実験では、マッチングレベルが60以上を合格、60未満を不合格とした。
【0085】
表2に示すように、ドットの輪郭から放射方向内側に延在する突出部を設けた実施例である例11~例23においては、マッチングレベルが合格となり、突出部が設けられない比較例である例10においては、マッチングレベルが不合格となった。このように、ドットを窪み部と突出部とを有するものとすることで、マークが読み取りやすくなることが分かる。
【0086】
表1及び表2に示すように、ショット数を30にした例11~例23は、ショット数を10にして外観とAが同じドットを形成した例2~例10のそれぞれに比べ、マッチングレベルが向上した。このように、ショット数を多くすることで、マークがより読み取りやすくなることが分かる。
【0087】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0088】
1 製造装置
2 レーザ発振器
3 マスク
4 ミラー
5 集光レンズ
10 ガラス基板
10A、10B 表面
30 透過パターン
31 透過部
32 遮蔽部
33 輪郭
100 マーク
110、110A~110I ドット
110b 側面
110b1 側面部
110b2、110b3 接続部
110a 底面
111a 周縁
111a1 外周縁
111a2 内周縁
111、111A~111I 窪み部
112、112A~112I 突出部
112a 第1の突出部
112b 第2の突出部
113、113A~113I 輪郭
113a 第1位置
113b 第2位置
113c 第3位置
113d 第4位置
AX 中心
B1~B3 レーザ光
D 径
D0 直径
N 切り欠き部
P ピッチ
R 半径
S 最低点