(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152665
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】自動測定システムおよび自動測定システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
B25J 9/10 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
B25J9/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062339
(22)【出願日】2024-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2023066774
(32)【優先日】2023-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】酒井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 誠治
(72)【発明者】
【氏名】上田 邦男
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707KS03
3C707KS36
3C707KT03
3C707KT05
3C707KT09
3C707LV19
(57)【要約】
【課題】ロボット等の移動機構によって測定器を測定対象に向けて正確に制御できるようにする。
【解決手段】自動測定システムは、測定対象物の表面を検出して測定対象物の寸法または形状を測定するための測定センサツールと、測定センサツールを測定対象物に対して相対移動させる多軸の移動機構と、測定対象物を撮像する観察カメラと、を備える。観察カメラで測定対象物を撮像した撮像データから測定対象箇所の位置および向き(姿勢)を取得し、観察カメラと測定センサツールとの間の位置および姿勢のオフセットを加味して、移動機構によって測定センサツールを測定対象箇所にアプローチし、測定センサツールによって測定対象箇所の測定値を取得する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の表面を検出して前記測定対象物の寸法または形状を測定するための測定センサツールと、
前記測定センサツールを前記測定対象物に対して相対移動させる移動機構と、
前記測定対象物を撮像する観察カメラと、を備えた自動測定システムの制御方法であって、
前記観察カメラで撮影されるカメラ校正用マークと、前記測定センサツールで測定されるセンサ校正用パーツと、を有していて、前記カメラ校正用マークとセンサ校正用パーツとの相対位置が既知である校正用マスタを用意し、
前記観察カメラによって前記カメラ校正用マークを撮像するカメラ校正用マーク撮像工程と、
前記測定センサツールによって前記センサ校正用パーツを測定するセンサ校正用パーツ工程と、
前記カメラ校正用マーク撮像工程における前記移動機構の位置および姿勢と取得された撮像データと、前記センサ校正用パーツ工程における前記移動機構の位置および姿勢と取得された測定データと、に基づいて、前記観察カメラと前記測定センサツールとの間の位置および姿勢のオフセットを校正する工程と、を実行する
ことを特徴とする自動測定システムの制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の自動測定システムの制御方法において、
前記移動機構は、一つの多関節ロボットであって、
前記一つの多関節ロボットの手先部に前記観察カメラと前記測定センサツールとが保持されている
ことを特徴とする自動測定システムの制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の自動測定システムの制御方法において、
前記観察カメラの位置と前記測定センサツールの位置とを交換するように前記観察カメラと前記測定センサツールとを移動させる交換手段が前記多関節ロボットの前記手先部に設けられている
ことを特徴とする自動測定システムの制御方法。
【請求項4】
請求項1に記載の自動測定システムの制御方法において、
前記測定センサツールは、所定測定圧で測定子を前記測定対象物に当接させて前記測定対象物の寸法を測定する測定器であり、
前記測定子は、点ではなく、線または面によって前記測定対象物に当接するものである
ことを特徴とする自動測定システムの制御方法。
【請求項5】
請求項1に記載の自動測定システムの制御方法において、
前記測定センサツールは、テレセントリックレンズを搭載した画像測定器である
ことを特徴とする自動測定システムの制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の自動測定システムの制御方法において、
前記カメラ校正用マークの一部または全部と前記センサ校正用パーツの一部または全部とは同一であって兼用される
ことを特徴とする自動測定システムの制御方法。
【請求項7】
請求項3に記載の自動測定システムの制御方法において、
前記測定センサツールは、テレセントリックレンズを搭載した画像測定器であり、
前記交換手段によって前記観察カメラと前記測定センサツールとの位置を交換でき、かつ、
測定対象物を撮像するときの前記観察カメラと、測定対象物を測定するときの前記測定センサツールと、でピントが合っている面が同じ平面内に存在するように前記交換手段に取り付けられている
ことを特徴とする自動測定システムの制御方法。
【請求項8】
測定対象物の表面を検出して前記測定対象物の寸法または形状を測定するための測定センサツールと、
前記測定センサツールを前記測定対象物に対して相対移動させる移動機構と、
前記測定対象物を撮像する観察カメラと、を備えた自動測定システムの制御方法であって、
前記観察カメラで測定対象物を撮像した撮像データから測定対象箇所の位置および姿勢を取得し、
前記観察カメラと前記測定センサツールとの間の位置および姿勢のオフセットを加味して、前記移動機構によって前記測定センサツールを前記測定対象箇所にアプローチし、
前記測定センサツールによって前記測定対象箇所の測定値を取得する
ことを特徴とする自動測定システムの制御方法。
【請求項9】
測定対象物の表面を検出して前記測定対象物の寸法または形状を測定するための測定センサツールと、
前記測定センサツールを前記測定対象物に対して相対移動させる移動機構と、
前記測定対象物を撮像する観察カメラと、を備えた自動測定システムであって、
前記移動機構は、一つの多関節ロボットであって、
前記観察カメラの位置と前記測定センサツールの位置とを交換するように前記観察カメラと前記測定センサツールとを移動させる交換手段が前記多関節ロボットの手先部に設けられ、
前記一つの多関節ロボットの前記手先部に前記交換手段を介して前記観察カメラと前記測定センサツールとが保持されている
ことを特徴とする自動測定システム。
【請求項10】
測定対象物の表面を検出して前記測定対象物の寸法または形状を測定するための測定センサツールと、
前記測定センサツールを前記測定対象物に対して相対移動させる移動機構と、
前記測定対象物を撮像する観察カメラと、
を備えた自動測定システムにコンピュータを組み込んで、
前記観察カメラで撮影されるカメラ校正用マークと、前記測定センサツールで測定されるセンサ校正用パーツと、を有していて、前記カメラ校正用マークとセンサ校正用パーツとの相対位置が既知である校正用マスタを用意し、
前記コンピュータに、
前記観察カメラによって前記カメラ校正用マークを撮像するカメラ校正用マーク撮像工程と、
前記測定センサツールによって前記センサ校正用パーツを測定するセンサ校正用パーツ工程と、
前記カメラ校正用マーク撮像工程における前記移動機構の位置および姿勢と取得された撮像データと、前記センサ校正用パーツ工程における前記移動機構の位置および姿勢と取得された測定データと、に基づいて、前記観察カメラと前記測定センサツールとの間の位置および姿勢のオフセットを校正する工程と、を実行させる
ことを特徴とする自動測定システムの制御プログラム。
【請求項11】
測定対象物の表面を検出して前記測定対象物の寸法または形状を測定するための測定センサツールと、
前記測定センサツールを前記測定対象物に対して相対移動させる移動機構と、
前記測定対象物を撮像する観察カメラと、を備えた自動測定システムにコンピュータを組み込んで、
このコンピュータに、
前記観察カメラで測定対象物を撮像した撮像データから測定対象箇所の位置および姿勢を取得する工程と、
前記観察カメラと前記測定センサツールとの間の位置および姿勢のオフセットを加味して、前記移動機構によって前記測定センサツールを前記測定対象箇所にアプローチする工程と、
前記測定センサツールによって前記測定対象箇所の測定値を取得する工程と、を実行させる
ことを特徴とする自動測定システムの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動測定システムおよび自動測定システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物の寸法や形状を測定する測定器として、ホールテスト、シリンダーゲージ、ボアマチック(登録商標)等の内径測定器がある(例えば、特許文献1参照)。
このような小型寸法形状測定器は人手による測定操作を前提とするが、昨今の人手不足の問題と測定効率のより一層の向上のため、従来手動操作していた寸法あるいは形状の測定を全自動化したいという要請がある。
そこで、本出願人は例えば特許文献2のように、多関節ロボットアームの先端に電動駆動する内径測定器を取り付け、測定対象箇所を自動的に順次測定するようにした自動内径測定システムを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-19783
【特許文献2】特開2021-9115
【特許文献3】特許5439833
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動内径測定器で穴の径(寸法)を測定するには、多関節ロボットアーム部の手先部の移動によって電動内径測定器を測定対象の穴に挿入しなければならないが、電動内径測定器の測定ヘッド部と測定対象穴の内壁との隙間は極僅か(数ミリメートル程度)である。電動内径測定器を測定対象の穴に正確に挿入できないと、測定ヘッドと測定対象物とが衝突する可能性がある。あるいは、内径測定器のような接触式の測定器ではなく、非接触式の測定器を用いる場合であっても、非接触式測定器と測定対象物との距離および相対姿勢の調整に誤差があると測定誤差になる。
【0005】
そこで、ロボットの手先に取り付けた測定器の位置および姿勢を制御するためのTCP(ツールセンターポイント)を正確に設定したい。
しかしながら、従来知られているTCP(ツールセンターポイント)の設定方法は次のような方法である(特許文献3)。
まず、ツールは、ツールの頂部に尖った点(これをツール先端点と称することにする)を有している。また、尖った一点(基準点)を有する校正用治具を用意する。ツール先端点を固定された校正用治具の基準点に接触させる。ツール先端点と基準点との接触を保ったままロボットアームの姿勢を数パターン変化させる(例えば4パターン)。ツール先端点(基準点)は動かない不動の一点であるとして連立方程式を解けば、TCP(ツールセンターポイント)が求められる。
【0006】
しかし、内径測定器(例えばホールテスト)のように測定ヘッドが大きく、尖った点が無い場合には、上記の方法でTCP(ツールセンターポイント)を設定することはできない。
あるいは、内径測定器(例えばホールテスト)に合わせて頂部に尖った点(ツール先端点)をもつ校正専用ツールを用意し、校正専用ツールでTCPを設定した後で、ツールを電動内径測定器に付け替えるということも考えられるが、測定器のタイプやサイズごとに校正専用ツールを用意することは手間およびコストの点で難しいし、ツールを付け替える際の取り付け誤差も無視できない問題である。
【0007】
本発明の目的は、ロボット等の移動機構によって測定器を測定対象に向けて正確に制御できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の自動測定システムの制御方法は、
測定対象物の表面を検出して前記測定対象物の寸法または形状を測定するための測定センサツールと、
前記測定センサツールを前記測定対象物に対して相対移動させる移動機構と、
前記測定対象物を撮像する観察カメラと、を備えた自動測定システムの制御方法であって、
前記観察カメラで撮影されるカメラ校正用マークと、前記測定センサツールで測定されるセンサ校正用パーツと、を有していて、前記カメラ校正用マークとセンサ校正用パーツとの相対位置が既知である校正用マスタを用意し、
前記観察カメラによって前記カメラ校正用マークを撮像するカメラ校正用マーク撮像工程と、
前記測定センサツールによって前記センサ校正用パーツを測定するセンサ校正用パーツ工程と、
前記カメラ校正用マーク撮像工程における前記移動機構の位置および姿勢と取得された撮像データと、前記センサ校正用パーツ工程における前記移動機構の位置および姿勢と取得された測定データと、に基づいて、前記観察カメラと前記測定センサツールとの間の位置および姿勢のオフセットを校正する工程と、を実行する
ことを特徴とする。
【0009】
本発明の一実施形態では、
前記移動機構は、一つの多関節ロボットであって、
前記一つの多関節ロボットの手先部に前記観察カメラと前記測定センサツールとが保持されている
ことが好ましい。
【0010】
本発明の一実施形態では、
前記観察カメラの位置と前記測定センサツールの位置とを交換するように前記観察カメラと前記測定センサツールとを移動させる交換手段が前記多関節ロボットの前記手先部に設けられている
ことが好ましい。
【0011】
本発明の一実施形態では、
前記測定センサツールは、所定測定圧で測定子を前記測定対象物に当接させて前記測定対象物の寸法を測定する測定器であり、
前記測定子は、点ではなく、線または面によって前記測定対象物に当接するものである
ことが好ましい。
【0012】
本発明の一実施形態では、
前記測定センサツールは、テレセントリックレンズを搭載した画像測定器である
ことが好ましい。
【0013】
本発明の一実施形態では、
前記カメラ校正用マークの一部または全部と前記センサ校正用パーツの一部または全部とは同一であって兼用される
ことが好ましい。
【0014】
本発明の一実施形態では、
前記測定センサツールは、テレセントリックレンズを搭載した画像測定器であり、
前記交換手段によって前記観察カメラと前記測定センサツールとの位置を交換でき、かつ、
測定対象物を撮像するときの前記観察カメラと、測定対象物を測定するときの前記測定センサツールと、でピントが合っている面が同じ平面内に存在するように前記交換手段に取り付けられている
ことが好ましい。
【0015】
本発明の自動測定システムの制御方法は、
測定対象物の表面を検出して前記測定対象物の寸法または形状を測定するための測定センサツールと、
前記測定センサツールを前記測定対象物に対して相対移動させる移動機構と、
前記測定対象物を撮像する観察カメラと、を備えた自動測定システムの制御方法であって、
前記観察カメラで測定対象物を撮像した撮像データから測定対象箇所の位置および姿勢を取得し、
前記観察カメラと前記測定センサツールとの間の位置および姿勢のオフセットを加味して、前記移動機構によって前記測定センサツールを前記測定対象箇所にアプローチし、
前記測定センサツールによって前記測定対象箇所の測定値を取得する
ことを特徴とする。
【0016】
本発明の自動測定システムは、
測定対象物の表面を検出して前記測定対象物の寸法または形状を測定するための測定センサツールと、
前記測定センサツールを前記測定対象物に対して相対移動させる移動機構と、
前記測定対象物を撮像する観察カメラと、を備えた自動測定システムであって、
前記移動機構は、一つの多関節ロボットであって、
前記観察カメラの位置と前記測定センサツールの位置とを交換するように前記観察カメラと前記測定センサツールとを移動させる交換手段が前記多関節ロボットの手先部に設けられ、
前記一つの多関節ロボットの前記手先部に前記交換手段を介して前記観察カメラと前記測定センサツールとが保持されている
ことを特徴とする。
【0017】
本発明の自動測定システムの制御プログラムは、
測定対象物の表面を検出して前記測定対象物の寸法または形状を測定するための測定センサツールと、
前記測定センサツールを前記測定対象物に対して相対移動させる移動機構と、
前記測定対象物を撮像する観察カメラと、
を備えた自動測定システムにコンピュータを組み込んで、
前記観察カメラで撮影されるカメラ校正用マークと、前記測定センサツールで測定されるセンサ校正用パーツと、を有していて、前記カメラ校正用マークとセンサ校正用パーツとの相対位置が既知である校正用マスタを用意し、
前記コンピュータに、
前記観察カメラによって前記カメラ校正用マークを撮像するカメラ校正用マーク撮像工程と、
前記測定センサツールによって前記センサ校正用パーツを測定するセンサ校正用パーツ工程と、
前記カメラ校正用マーク撮像工程における前記移動機構の位置および姿勢と取得された撮像データと、前記センサ校正用パーツ工程における前記移動機構の位置および姿勢と取得された測定データと、に基づいて、前記観察カメラと前記測定センサツールとの間の位置および姿勢のオフセットを校正する工程と、を実行させる
ことを特徴とする。
【0018】
本発明の自動測定システムの制御プログラムは、
測定対象物の表面を検出して前記測定対象物の寸法または形状を測定するための測定センサツールと、
前記測定センサツールを前記測定対象物に対して相対移動させる移動機構と、
前記測定対象物を撮像する観察カメラと、を備えた自動測定システムにコンピュータを組み込んで、
このコンピュータに、
前記観察カメラで測定対象物を撮像した撮像データから測定対象箇所の位置および姿勢を取得する工程と、
前記観察カメラと前記測定センサツールとの間の位置および姿勢のオフセットを加味して、前記移動機構によって前記測定センサツールを前記測定対象箇所にアプローチする工程と、
前記測定センサツールによって前記測定対象箇所の測定値を取得する工程と、を実行させる
ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】自動測定システムの全体的な外観図(観察カメラ使用姿勢)である。
【
図2】自動測定システムの全体的な外観図(測定センサツール使用姿勢)である。
【
図4】(A)測定子が後退した状態と、(B)測定子が前進した状態と、を例示した図である。
【
図5】観察カメラと電動内径測定ユニットとの取付姿勢を説明するための図である。
【
図7】測定センサツール座標系を例示した図である。
【
図9】自動測定システムの制御方法の概要を示す全体フローチャートである。
【
図10】校正工程の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図13】測定工程の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図14】第二実施形態の自動測定システムの全体外観図(観察カメラ使用姿勢)である。
【
図15】第二実施形態の自動測定システムの全体外観図(測定センサツール使用姿勢)である。
【
図16】画像測定器の測定センサツール座標系を例示した図である。
【
図17】第二実施形態の自動測定システムの校正に使用する校正用マスタを示す図である。
【
図18】第二実施形態における校正工程の手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態を説明する。
本実施形態は、測定対象物の寸法または形状の測定を自動化する自動測定システム1000である。
第一実施形態では、測定対象箇所が測定対象物(ワーク)に形成された穴の内径であり、したがって、測定センサツールが電動内径測定ユニット2300である場合を説明する。
図1および
図2は、自動測定システム1000の全体的な外観図である。
自動測定システム1000は、測定装置本体部2000と、全体動作を制御する制御ユニット部1100と、を備える。
【0021】
(測定装置本体部2000)
測定装置本体部2000は、移動機構としての多関節ロボット(多関節ロボットアーム部2100)と、多関節ロボットアーム部2100の手先部2130に取り付けられたツールユニット部2200と、を備える。
【0022】
多関節ロボットアーム部2100は、いわゆる、ロボットアームであり、複数の回転駆動軸によってロボットアーム部2100の先端である手先部2130を三次元的に移動させる。
さらに、測定装置本体部2000は、回転テーブル2010を有していてもよく、この場合、回転テーブル2010も多関節ロボットアーム部2100の一部として統合的に制御されるようにする。
多関節ロボットアーム部2100は、床面等に設置されるベース部2110と、ベース部2110に支持された多軸のアーム部2120と、アーム部2120の先端に設けられた手先部2130と、を有する。
多関節ロボットアーム部2100を制御するための座標軸として、ベース部2110を基準に設定された基準座標系と、手先部2130の回転軸(J6軸)に設定されたフランジ座標系と、がある。
【0023】
基準座標系は、例えば床面等に対して固定的に設定される座標系であり、多関節ロボットアーム部2100の姿勢が変化しても基準座標系は変化しない。
フランジ座標系は、手先部2130の向きおよび回転を表現するための座標軸である。
図3は、フランジ座標系を例示する図である。
フランジ座標系として、手先部2130の回転軸(J6軸)と同軸にZf軸をとり、Zfに直交する二つの軸をXf軸とYf軸とする。
基準座標系とフランジ座標系とはロボットに設定された座標系であるから、基準座標系とフランジ座標系とを統合してロボット座標系と称することにする。
【0024】
多関節ロボットアーム部2100が出荷された時点、すなわち、多関節ロボットアーム部2100を購入した時点では、基準座標系とフランジ座標系とは設定されている。多関節ロボットアーム部2100を購入したユーザは、手先部2130に測定器等のツールを取り付けて使用する。この場合、ツール(測定器等)の位置あるいは向きを制御するためのツール座標系は、多関節ロボットアーム部2100、つまり、自動測定システム1000を使用するオペレータが設定する。
【0025】
ツールユニット部2200は、対象の穴径を測定する電動内径測定ユニット2300と、観察カメラ2400と、交換手段2500と、を備える。
【0026】
電動内径測定ユニット2300は、内径測定器(例えばホールテスト)のロッド送りを電動化したものである。言い換えると、電動内径測定ユニット2300は、人手の手動によらず、モータ2330の動力によって測定子2320が進退するようにしたものである。つまり、測定対象の穴の内径測定にあたって、まず、多関節ロボットアーム部2100の手先部2130の移動によって電動内径測定ユニット2300の測定ヘッド部2310を測定対象の穴に挿入する。電動内径測定ユニット2300の測定ヘッド部2310を測定対象の穴に挿入後、多関節ロボットアーム部2100の駆動は停止し、そこからは電動内径測定ユニット2300のモータ2330の駆動による測定子2320の自動進退によって測定子2320が穴の内壁に接触し、穴径の測定値を取得する。
図4は、(A)測定子2320が後退した状態と、(B)測定子2320が前進した状態と、を例示した図である。
【0027】
観察カメラ2400は、レンズ2410と、イメージセンサ2420と、リング照明2430と、を有する。このカメラレンズ2410は標準的なレンズであり、テレセントリックレンズ系のレンズではない。
【0028】
交換手段2500は、電動内径測定ユニット2300と観察カメラ2400との位置を入れ替える。交換手段2500は、全体的にはコ字型に形成された部材であって、コ字の両端で電動内径測定ユニット2300と観察カメラ2400とをそれぞれ支持している。交換手段2500は、偏平で長手状の回転プレート2510を有している。回転プレート2510のうら面側において、長さ方向の中心点に連結部2520が設けられ、この連結部2520により交換手段2500は手先部2130に連結される。手先部2130の回転により、交換手段2500は手先部2130とともに回転軸(J6軸)を回転中心として回転する。回転プレート2510のおもて面側には、カメラ取付コラム2530と測定器取付コラム2540とが回転プレート2510に直角に取り付けられている。カメラ取付コラム2530と測定器取付コラム2540とは、回転プレート2510の両端にそれぞれ取り付けられている。カメラ取付コラム2530に観察カメラ2400が取り付けられ、測定器取付コラム2540に電動内径測定ユニット2300が取り付けられる。
【0029】
いま、観察カメラ2400において、光軸に平行な方向で、撮影対象に向かう方向を撮影方向Acと称することにする。また、電動内径測定ユニット2300において、中心線に平行な方向であって、電動内径測定ユニット2300の重心から測定ヘッド部2310に向かう方向を測定ヘッド方向Atと称することにする。撮影方向と測定ヘッド方向とは平行であり、逆向きである。したがって、回転プレート2510(交換手段2500)を180°回転するように手先部2130(J6軸)を回転すると、観察カメラ2400と電動内径測定ユニット2300との位置が入れ替わる。
図1では、電動内径測定ユニット2300の測定ヘッド方向Atが上向きで、観察カメラ2400の撮影方向Acが下向きである。
図2では、電動内径測定ユニット2300の測定ヘッド方向Atが下向きで、観察カメラ2400の撮影方向Acが上向きである。
【0030】
また、電動内径測定ユニット2300の測定ヘッド方向Atが下向きで鉛直方向になる時、観察カメラ2400と電動内径測定ユニット2300とは同じ高さではなくて、観察カメラ2400が電動内径測定ユニット2300よりも上にある。すなわち、観察カメラ2400と電動内径測定ユニット2300とは、回転プレート2510の長手方向に対して、同じ角度の傾斜を持ってそれぞれのコラム2530、2540に取り付けられている。
【0031】
なお、回転プレート2510に対して観察カメラ2400と電動内径測定ユニット2300とを同じ高さに取り付けるようにすると(
図5中のAパターン)、言い換えると、回転プレート2510の回転円(回転軌跡の円)の直径に対して観察カメラ2400も電動内径測定ユニット2300も直角になるように取り付けると、交換手段2500(ツールユニット部2200)の慣性モーメントを小さくできる。しかしながら、電動内径測定ユニット2300と観察カメラ2400とが同じ高さにあると、お互いに撮像/測定の邪魔になる。回転プレート2510に対して観察カメラ2400と電動内径測定ユニット2300との軸が同じ直線上にくるように並べると(
図5中のBパターン)、言い換えると、回転プレート2510の回転円の直径に対して観察カメラ2400も電動内径測定ユニット2300も平行になるように取り付けると、お互いに撮像/測定の邪魔になることはない。しかし、慣性モーメントが大きい。お互いに邪魔にならず、慣性モーメントが小さくなることを考えて、
図5中のCパターンのように、観察カメラ2400と電動内径測定ユニット2300とは、回転プレート2510の長手方向に対して(回転円)、同じ角度(ここでは45°)の傾斜を持ってそれぞれのコラムに取り付けられている。この角度θは、(狭角の方で表現するとして)0°<θ<90°ということであるが、30°≦θ≦60°、好ましくは45°とする。回転プレート2510に対する観察カメラ2400と電動内径測定ユニット2300との設置角度が異なっていてもよいが、部品の加工、取り付け精度、手先部2130の運動精度等を勘案すると、同じ傾斜角にするのがよい。
【0032】
また、交換手段2500に観察カメラ2400と電動内径測定ユニット2300とを取り付ける際には、交換手段2500によって観察カメラ2400と電動内径測定ユニット2300とを入れ替えたときに、観察カメラ2400のピントが合う位置(カメラで観察できる対象の位置)と、電動内径測定ユニット2300の測定位置(測定子で測定できる対象の位置)と、ができる限り同じになるようにすることが望ましい。
【0033】
説明の都合上、
図1のように、観察カメラ2400の撮影方向Acが真下に向くように交換手段2500を回転させて(このとき電動内径測定ユニット2300の測定ヘッド方向Atは真上を向く)、対象物を観察カメラ2400で撮像する態勢を観察カメラ使用姿勢とする。
図2のように、電動内径測定ユニット2300の測定ヘッド方向Atが真下を向くように交換手段2500を回転させて(このとき観察カメラ2400の撮影方向Acは真上を向く)、電動内径測定ユニット2300を測定対象箇所に向けた態勢を測定センサツール使用姿勢とする。
【0034】
また、説明の都合上、観察カメラ2400と電動内径測定ユニット(測定センサツール)2300とについてそれぞれ座標系を設定する。
観察カメラ2400について、
図6に例示のように、光軸に沿ってカメラ座標系のZc軸をとり、Zc軸に垂直な二本の軸をXc軸とYc軸とする。
観察カメラ2400から観察対象に向かう方向をZ軸の正の向きとする。
後の説明が分かりやすいように、カメラ座標系の原点は、光軸上でピントが合う点(物点)とする。
【0035】
説明の都合上、フランジ座標系(ロボット座標系)とカメラ座標系とのオフセットをΔfcで表すとする。ここで、フランジ座標系(ロボット座標系)とカメラ座標系とのオフセットΔfcとしては設計値を入力設定しておくとする。観察カメラ2400および交換手段2500の部品の設計値に基づいて、フランジ座標系(ロボット座標系)とカメラ座標系との設計上のオフセットは計算によって求められる。
【0036】
なお、フランジ座標系とカメラ座標系とのオフセットΔfc(フランジ座標系においてフランジ座標系の原点からカメラ座標系の原点に向かう位置ベクトルと互いの軸を合わせるための回転量)を求める方法は知られている。例えば、複数パターンでロボット姿勢を変更しながら同一の点をカメラで撮像することにより、カメラのツールセンターポイントは求められる。この既知の方法でロボット座標系とカメラ座標系とのオフセットΔfc(言い換えると観察カメラ2400のツールセンターポイントTCP)をキャリブレーションしておいてもよいが、必須ではない。
【0037】
電動内径測定ユニット2300について、
図7に例示のように、内径測定器の中心線に沿って測定センサツール座標系のZt軸をとり、Zt軸に垂直な二本の軸をXt軸とYt軸とする。測定センサツール座標系の原点は、内径測定器の測定ヘッド部2310の下面から所定距離(既知の値を決めておく)だけ上にあるとする。いま、説明の都合上、フランジ座標系(ロボット座標系)と測定センサツール座標系とのオフセットをΔftで表すことにする。ここでは、フランジ座標系(ロボット座標系)と測定センサツール座標系とのオフセットは仮の設定値として設計値を入力設定しておくとする。電動内径測定ユニット2300および交換手段2500の部品の設計値に基づいて、フランジ座標系(ロボット座標系)と測定センサツール座標系との設計上のオフセットは計算によって求められる。後述の校正工程(ST400)において前記仮設定値は校正される。
【0038】
図8は、制御ユニット部1100の機能ブロック図である。
制御ユニット部1100は、中央制御部1200と、ロボットアーム駆動制御部1300と、測定動作制御部1400と、を備える。測定動作制御部1400は、観察カメラ制御部1410と、測定センサツール制御部1420と、を有する。
各制御部の動作はフローチャートを参照しながら後述する。
【0039】
制御ユニット部1100は、測定装置本体部2000と有線または無線で通信接続されたコンピュータ(CPU(中央処理装置)や所定プログラムを格納したROM、RAMを有するいわゆるコンピュータ端末)に組み込まれたハードまたはソフトウェアによって構成されてもよい。動作制御プログラム(測定用パートプログラム)がコンピュータ端末にインストールされ、プログラムの実行により測定装置本体部2000の動作が制御される。プログラムの供給方法は限定されず、プログラムを記録した(不揮発性)記録媒体をコンピュータに直接差し込んでプログラムをインストールしてもよく、記録媒体の情報を読み取る読取装置をコンピュータに外付けし、この読取装置からコンピュータにプログラムをインストールしてもよく、インターネット、LANケーブル、電話回線等の通信回線や無線によってコンピュータに供給されてもよい。
【0040】
(制御方法)
このように構成された自動測定システム1000によって測定対象箇所の寸法(例えば内径)を測定するための制御方法について説明する。
図9は、自動測定システム1000の制御方法の概要を示す全体フローチャートである。
自動測定システム1000で測定対象箇所の寸法(内径)を測定するための制御方法は、
図9のフローチャートにあるように、大きく分けて、校正工程(ST400)と、測定工程(ST500)と、がある。
【0041】
(校正工程)
校正工程(ST400)を説明する。
図10は校正工程(ST400)の手順を説明するためのフローチャートである。
まず、校正に使用する校正用マスタ3000を用意する(ST410)。
図11は、校正用マスタ3000の外観図である。
校正用マスタ3000は、カメラ校正用チャート3100と、測定センサツール校正用治具3200と、が結合されたものである。
図12は、カメラ校正用チャート3100を示す図である。
カメラ校正用チャート3100としては、市販されているキャリブレーションプレートを使用してもよい。例えば、カメラ校正用チャート3100として、MVTec社製のキャリブレーションプレート80mm(型名: 20124)を使用できる。カメラ校正用チャート3100は、平らな平面状プレートの表面に複数のカメラ校正用マーク3110が設けられている。ここでは、カメラ校正用チャート3100の中心点と、中心点を囲む四角の頂点にカメラ校正用マーク3110が設けられている。それぞれのカメラ校正用マーク3110は、異なるドットパターンであって、パターン認識によってそれぞれのカメラ校正用マーク3110は区別して認識され得る。中心点にあるカメラ校正用マーク3110を中心カメラ校正用マーク3120とする。
【0042】
測定センサツール校正用治具3200は、カメラ校正用チャート3100を固定的に設置するためのカメラ校正用チャート3100設置部と、電動内径測定ユニット2300で測定される複数のセンサ校正用穴3220(センサ校正用パーツ)と、を有する。カメラ校正用チャート3100設置部は、カメラ校正用チャート3100を受け入れる凹部であって、バネ性の部材でカメラ校正用チャート3100を付勢することでカメラ校正用チャート3100を位置決め用の基準辺に押し付けている。これにより、測定センサツール校正用治具3200に対してカメラ校正用マーク3110は規定の位置に固定的に設けられることになる。測定センサツール校正用治具3200において、センサ校正用穴3220として、真上を向いて開口した穴が三つあり、斜めを向いた穴が二つある。真上を向いて開口した三つのセンサ校正用穴3220の中心線は、カメラ校正用チャート3100の面に対して垂直である。いま、真上を向いて開口した三つのセンサ校正用穴3220を、第一センサ校正用穴3221、第二センサ校正用穴3222、第三センサ校正用穴3223とする。
【0043】
カメラ校正用マーク3110とセンサ校正用穴3220との相対位置は既知である。
中心カメラ校正用マーク3120から第一センサ校正用穴3221の中心P1までの相対位置ベクトルをΔPc1で表す。
中心カメラ校正用マーク3120から第二センサ校正用穴3222の中心P2までの相対位置ベクトルをΔPc2で表す。
中心カメラ校正用マーク3120から第三センサ校正用穴3223の中心P3までの相対位置ベクトルをΔPc3で表す。
【0044】
なお、上を向いて開口した三つのセンサ校正用穴3220を校正用の穴(センサツール校正用パーツ)とし、斜めの二つの穴は校正が正しくできたかのテスト用として用いることを想定しているが、斜めの二つの穴も校正用に用いてもよい。
【0045】
本実施形態では、測定センサツールが電動内径測定ユニット2300であるからセンサ校正用パーツは穴であるが、測定センサツールの種類に応じてセンサ校正用パーツの形状またはパターンは違ってくる。
【0046】
このような校正用マスタ3000を自動測定システムの測定可能領域(例えば定盤上や回転テーブル2010上)にセットする。このとき、カメラ校正用チャート3100が水平になるように校正用マスタ3000をセットするとする。あるいは、カメラ校正用チャート3100が基準座標系のXrYr平面に対して平行とする。(あるいは、カメラ校正用チャート3100の法線が基準座標系において既知の向きである。)
【0047】
次に、観察カメラ2400でカメラ校正用マーク3110を撮像する(ST420)。すなわち、手先部2130の回転で交換手段2500を回転し、観察カメラ2400の撮影方向Acが真下を向くようにし、自動測定システム1000を観察カメラ使用姿勢とする。そして、多関節ロボットアーム部2100の駆動によって手先部2130の位置および姿勢を調整し、観察カメラ2400によってカメラ校正用チャート3100を撮像する。
【0048】
ここでは、観察カメラ2400のツールセンターポイントは設計値として入力されていて、既知(フランジ座標系(ロボット座標系)とカメラ座標系とのオフセットΔfcは既知)としているので、観察カメラ2400でチャートを撮像するようにロボットを自動制御できる。
【0049】
多関節ロボットアーム部2100の姿勢を記録する(ST430)。言い換えると、フランジ座標系の原点位置と、フランジ座標系の姿勢と、を記録するとしてもよい。このときの多関節ロボットアーム部2100の姿勢をFc(Fxc、Fyc、Fzc、Fαc、Fβc、Fγc)で表すとする。撮像データ中のパターン認識により、中心カメラ校正用マーク3120を判別でき、したがって、カメラ座標系における中心カメラ校正用マーク3110の位置Cc(Cx、Cy、Cz)は取得される。
【0050】
したがって、中心カメラ校正用マーク3120の座標Pcは、
Pc=Fc+Δfc+Cc
である。
【0051】
いま、Ccはカメラ座標系上の点であり、Fcは基準座標系上の点であり、上式は数学的(あるいは定量的)に厳密な演算式を表しているのではなく、説明がわかりやすいように概念的(あるいは定性的)に情報の要素成分を簡略化して表現したものである。基準座標系とフランジ座標系との間の変換、フランジ座標系とカメラ座標系との間の変換等を考慮して定量的な演算式に書き換えること自体は数学的な操作によってできることである。以後の式の表現においても同様であると解釈されたい。
【0052】
このことから、第一センサ校正用穴3221の中心P1は、
P1=Pc+ΔPc1=Fc+Δfc+Cc+ΔPc1
である。
【0053】
同様にして、第二センサ校正用穴3222の中心P2は、
P2=Pc+ΔPc2=Fc+Δfc+Cc+ΔPc2
である。
【0054】
第三センサ校正用穴3223の中心P3は、
P3=Pc+ΔPc2=Fc+Δfc+Cc+ΔPc3
である。
【0055】
次に、センサ校正用穴3220を電動内径測定ユニット2300で測定する(ST440)。すなわち、手先部2130の回転で交換手段2500を回転し、電動内径測定ユニット2300の測定ヘッド方向が真下を向くようにし、自動測定システム1000を測定センサツール使用姿勢とする。そして、電動内径測定ユニット2300の測定ヘッド部2310をセンサ校正用穴3220に差し入れていき、センサ校正用穴3220を測定する。
【0056】
いま、フランジ座標系(ロボット座標系)と測定センサツール座標系とのオフセットは設計値が設定入力されているとした。そこで、ロボットアーム部2100の自動制御によって電動内径測定ユニット2300をセンサ校正用穴3220のほぼ直上まで移動させることはできる。そして、電動内径測定ユニット2300の測定ヘッド部2310をセンサ校正用穴3220に差し入れる操作は、マニュアル(手動)で行う。測定ヘッド部2310がセンサ校正用穴3220に入ったら、自動のモータ駆動で三つの測定子2320を穴の内壁に向けて前進させる。測定子2320が穴の内壁に同じ接触圧で接触する。このとき、電動内径測定ユニット2300の中心線は穴の中心線に一致し、測定ヘッド部2310は穴の中心にくる。
なお、電動内径測定ユニット2300による内径測定動作をしてもよいが、センサ校正用穴3220の内径を知りたいわけではなくて、センサ校正用穴3220の位置を知りたいのであるから、センサ校正用穴3220の内径の値は得なくてもよい。
測定センサツール座標系における穴の位置(例えば中心座標)を得ればよいが、電動内径測定ユニット2300が調心されていると考えて、測定センサツール座標系における穴の位置(例えば中心座標)の取得値は、(0、0、0)とおいてもよい。
また、電動内径測定ユニット2300をなるべくセンサ校正用穴3220の中心に調心するために、上記のように電動内径測定ユニット2300による内径測定動作(三つの測定子の前進)をしてもよいが、マニュアル(手動)で調心してもよい。
センサ校正用穴3220のなかにおける電動内径測定ユニット2300の微小な変位は、多関節ロボットアーム部2100の手先部2130の位置および姿勢に大きく影響しないからである。
【0057】
いま、第一センサ校正用穴3221を測定したとする。この状態で多関節ロボットアーム部2100の姿勢を記録する。言い換えると、フランジ座標系の原点位置と、フランジ座標系の姿勢と、を記録するとしてもよい。このときの多関節ロボットアーム部2100の姿勢をF1(Fx1、Fy1、Fz1、Fα1、Fβ1、Fγ1)で表すとする。また、測定センサツール座標系において穴の中心座標はPt1(0、0、0)である。
【0058】
このことから、第一センサ校正用穴3221の中心P1は、
P1=F1+Δft+Pt1
である。
(Pt1はゼロだから、P1=F1+Δft)
【0059】
同様にして、第二センサ校正用穴3222、第三センサ校正用穴3223を電動内径測定ユニット2300で測定する。
第二センサ校正用穴3222の中心P2は、
P2=F2+Δft+Pt2
である。
(Pt2はゼロだからP2=F2+Δft)
【0060】
第三センサ校正用穴3223の中心P3は、
P3=F3+Δft+Pt3
である。
(Pt3はゼロだからP3=F3+Δft)
【0061】
観察カメラ2400で中心カメラ校正用マーク3120を撮像することによって得られたデータと、電動内径測定ユニット2300で取得されたセンサ校正用穴3220を測定することによって得られたデータと、を対比することにより、カメラ座標系と測定センサツール座標系とのオフセットΔtcが得られる(ST460)。
【0062】
P1=F1+Δft
P1=Pc+ΔPc1=Fc+Δfc+Cc+ΔPc1
【0063】
この二つの式から、
Δtc=Δft-Δfc=Fc+Cc+ΔPc1-F1
である。
【0064】
Fc+Cc+ΔPc1-F1は既知の値である。
Fc+Cc+ΔPc1-F1=
Fc(Fxc、Fyc、Fzc、Fαc、Fβc、Fγc)+Cc+ΔPc1-F1(Fx1、Fy1、Fz1、Fα1、Fβ1、Fγ1)
【0065】
したがって、カメラ座標系と測定センサツール座標系とのオフセットΔtc(Δtcx、Δtcy、Δtcz、Δtcα、Δtcβ、Δtcγ)が得られる。すると、観察用カメラ2400を基準とした測定センサツール(電動内径測定ユニット2300)のツールセンターポイントが得られる(ST470)。
Δft=Δfc-Δtc
=Δfc-(Fc+Cc+ΔPc1-F1)
いま、Δfcは、フランジ座標系(ロボット座標系)とカメラ座標系とのオフセットΔfcとして設計値が入力設定されているので既知の値である。このようにして、観察用カメラ2400を基準とした測定センサツール(電動内径測定ユニット2300)のツールセンターポイントが得られた。
【0066】
上記解法について補足する。
観察カメラ2400のレンズは標準レンズであるからカメラ校正用チャート3100の画像データから観察カメラ2400の傾きも取得できる。したがって、観察用カメラ2400による観察で得られた画像データから第一センサ校正用穴3221、第二センサ校正用穴3222、第三センサ校正用穴3223、・・・・、の中心座標値と穴の向き(穴の傾斜)が得られる。これらを(P1、θ1、P2、θ2、P3、θ3、・・・・)とする。(ここでは、Pは空間上の点を表す(x、y、z)の組み、θは傾き(x軸回りの回転、y軸回りの回転、z軸回りの回転)を表す(α,β,γ)の組み)同じく、電動内径測定ユニット2300による測定で得られた第一センサ校正用穴3221、第二センサ校正用穴3222、第三センサ校正用穴3223、・・・、の座標値と傾きを(P1',θ1'、P2',θ2',P3',θ3'、・・・・)とする。
【0067】
カメラ座標系と測定センサツール座標系とのオフセットΔtcを表す行列をMで表す。
このとき、
[(P1'、θ1'、P2'、θ2'、P3'、θ3'、・・・・)]=M[(P1、θ1、P2、θ2、P3、θ3、・・・・)]
と表現される。
ここでは、カギ括弧は[ ]は( )を適宜並べ替えた行または列ベクトルと解釈されたい。
この連立方程式からカメラ座標系と測定センサツール座標系とのオフセットΔtcを表す行列Mを求めることができる。六つの未知数を求めるには、式が六ついるから、例えば校正マスタ3000の校正用穴の数を六つに増やしてもよいし、校正マスタ3000を複数個(例えば二つ)使ってもよい、同じ一つの校正用マスタ3000についてST420-ST450を適宜場所や姿勢を変えたりして複数回(例えば二回)繰り返して校正用データの組みを用意してもよい。あるいは、求める未知数を減らすと考えて、例えばカメラ座標系と測定センサツール座標系とで軸の傾きは無いと仮定して(カメラ座標系と測定センサツール座標系とで対応する軸同士は互いに平行と仮定して)、原点ずれ(Δx、Δy、Δz)だけを校正対象に選んで校正するという考え方もある。または、Z軸同士の平行は保たれていると仮定した上で、Δx、Δy、とxy平面内の回転(γ)を校正するという考え方もある。
本実施形態では、電動内径測定ユニット2300の測定ヘッド部2310が測定対象の穴に入るようにロボットアーム部2120の手先部2130を制御できれば、あとは、モータ2330の駆動による測定子2320の自動進退によって電動内径測定ユニット2300の軸が穴の中心線に合うように電動内径測定ユニット2300の位置と姿勢が自律的に調整され、測定子2320が穴の内壁に均等に接触し、穴径の測定値を取得できる。
本実施例の場合、電動内径測定ユニット2300は多関節ロボットアーム部2100の手先部2130に対して相対的な並進および回転を許容できる継手部(フローティング継手)を有する。多関節ロボットアーム部2100の手先部2130によって電動内径測定ユニット2300が測定対象(ここでは穴の内側)まで移動されれば、多関節ロボットアーム部2100の手先部2130を固定したままでも、電動内径測定ユニット2300の位置と姿勢が自律的に調整され、電動内径測定ユニット2300の軸が穴の中心線に合うようになっている。
【0068】
(測定工程ST500)
図13は、測定工程ST500の手順を説明するためのフローチャートである。
測定対象物であるワーク中で寸法(例えば内径)を測定すべき測定対象箇所(例えば穴)を制御ユニット部1100に設定しておく(ST510)。
例えば、ワークの設定値データ(CADデータ)に基づいて測定対象箇所を制御ユニット部1100に設定登録しておく。
【0069】
測定対象物を自動測定システム1000の測定可能領域(例えば定盤上や回転テーブル2010上)に設置する(ST520)。
【0070】
手先部2130の回転で交換手段2500を回転し、自動測定システム1000を観察カメラ使用姿勢とする(ST530)。観察カメラ2400でワークを撮像し、撮像データから測定対象箇所の位置および向き(姿勢)を取得する(ST540)。
【0071】
次に、手先部2130の回転で交換手段2500を回転し、自動測定システム1000を測定センサツール使用姿勢とする(ST550)。
【0072】
電動内径測定ユニット2300を測定対象箇所にアプローチする(ST560)。先の校正で求められた電動内径測定ユニット2300のTCP(ツールセンターポイント)を用いて、多関節ロボットアーム部2100の自動制御により、電動内径測定ユニット2300の測定ヘッド部2310を測定対象箇所(穴)に差し込む。
【0073】
電動内径測定ユニット2300の測定ヘッド部2310が測定対象箇所(穴)に入ったら、ロボットアーム部2120の動作を停止し、電動内径測定ユニット2300によって穴径を測定する(ST570)。電動内径測定ユニット2300の自動モータ駆動によって測定子2320が前進し、測定子2320が穴の内壁に接触し、穴径の測定値を取得する。
【0074】
以上のようにして一つのワークの一つの測定対象箇所(穴径)が測定できた。
ST530からST570を繰り返し、ワークのなかで登録されている測定対象箇所を順番に測定していく。さらに、ワークを取り替えながら測定工程(ST500)を繰り返すことで無人の自動測定が実行される。
【0075】
以上説明のように本実施形態によれば測定器を用いる寸法または形状の測定が自動実行されるようにできる。
特に、接触式の測定器、そのなかでも、穴に測定器を挿入するといった正確なアプローチが必要とされるような寸法または形状の測定をロボットを用いて自動実行できるようになる。
【0076】
内径測定器のようにヘッドが大きかったり、測定子2320が線や面で測定対象に接触したりするような測定ツールを自動測定に使用したいとしても、このような測定ツールに対して直接にTCP(ツールセンターポイント)を正確に求めることは困難である。この点、本実施形態では測定センサツールと位置を入れ替えて使用する観察カメラ2400を用意し、この観察用カメラ2400を基準とした測定センサツール(電動内径測定ユニット2300)のツールセンターポイントを求めることができる。
【0077】
観察カメラ2400で測定対象(箇所)を捉えたあと、言い換えると、観察カメラ2400で対象物を画像認識したあと、観察カメラ2400と電動内径測定ユニット2300との位置を交換し、続いて、測定センサツール(電動内径測定ユニット2300)のツールセンターポイントを用いて測定センサツール(電動内径測定ユニット2300)を測定対象箇所にアプローチすれば、電動内径測定ユニット2300の測定ヘッド部2310が測定対象箇所(穴)に差し込まれるはずである。
【0078】
多関節ロボットアーム部2100には製品ごとに運動性能誤差があり、交換手段2500、観察カメラ2400および測定センサツール(電動内径測定ユニット2300)にもそれぞれ製品個体差があるが、本実施形態の校正方法で校正した、観察カメラ2400を基準とした測定センサツール(電動内径測定ユニット2300)のツールセンターポイントは、実機においてすべての累積誤差を吸収して校正された値として得られるものである。本実施形態によれば、製品ごとの運動性能差や個体差に関係なく、観察用カメラ2400で捉えた対象(測定対象箇所)に向けて測定センサツールを正確に制御できるようになる。
【0079】
観察カメラ2400と電動内径測定ユニット2300(測定センサツール)との入れ替えは手先部2130(J6軸)の回転(180°回転)だけで行われる。したがって、複雑な機構で入れ替えることに比べて、動作毎の誤差(位置または姿勢のズレ)は極めて小さい。交換手段2500によって観察カメラ2400を測定センサツールと入れ替えられるから、観察カメラ2400は対象に十分接近し、真上から、リング照明2430で明るく照らして撮影することができる。したがって、観察カメラ2400によって測定対象(箇所)を極めて正確に捕捉することができる。また、観察カメラ2400で測定対象(箇所)を捕捉したあと、観察カメラ2400の位置に電動内径測定ユニット2300を入れ替えて、それから電動内径測定ユニット2300を測定対象(箇所)にアプローチする。つまり、観察カメラ2400で測定対象(箇所)を捕捉してから電動内径測定ユニット2300を測定対象(箇所)にアプローチするのに必要な多関節ロボットアーム部2100の駆動量は考え得る限り最小である。これにより動作ごとの制御誤差が極めて小さくなる。本実施形態の自動測定システム1000によれば、測定センサツールを所望の測定対象箇所に向けて正確に制御でき、測定センサツールとワークとが意図せず接触するような事故を極限的に少なくできる。
【0080】
(変形例1)
フランジ座標系とカメラ座標系とのオフセットΔfc(フランジ座標系においてフランジ座標系の原点からカメラ座標系の原点に向かう位置ベクトルと互いの軸を合わせるための回転量)を求める方法は知られている。例えば、ロボット姿勢を複数パターン変更しながら同一の点をカメラで撮像することにより、カメラのツールセンターポイントは求められる。この既知の方法でロボット座標系とカメラ座標系とのオフセットΔfc(言い換えると観察カメラ2400のツールセンターポイントTCP)をキャリブレーションしてもよい。
【0081】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態を説明する。
第二実施形態では、測定センサツールとして、第一実施形態の電動内径測定ユニット2300に代えて、非接触式の画像測定器4000を備えたものである。
図14と
図15は、第二実施形態の自動測定システム1000の全体外観図である。
第二実施形態において測定センサツールは、非接触式の測定ツールであって、ここでは画像測定器4000である。画像測定器4000は、テレセントリックレンズ系を搭載している。テレセントリックレンズ系であるから、画角による歪みがなく、撮像データから測定対象物の正確な寸法を取得することができる。
【0082】
画像測定器4000について、
図16に例示のように、光軸に沿って測定センサツール座標系のZt軸をとり、Zt軸に垂直な二本の軸をXt軸とYt軸とする。
図16は、画像測定器4000について測定センサツール座標系を例示した図である。
測定センサツール座標系の原点は、画像測定器4000の光軸上でピントが合う範囲内(被写界深度内)にあるとする。フランジ座標系(ロボット座標系)と測定センサツール座標系とのオフセットは仮の設定値として設計値を入力設定しておく。フランジ座標系(ロボット座標系)と測定センサツール座標系とのオフセットをΔftで表すことにする。
【0083】
交換手段2500の構成は第一実施形態で説明したものと同様であるが、観察カメラ2400と画像測定器4000とを交換手段2500に取り付けるにあたっては、位置を交換したときにピントが合う面が同じ平面内に存在するようにする。
【0084】
第二実施形態の自動測定システム1000の校正工程について説明する。
図17は、第二実施形態の自動測定システム1000の校正に使用する校正用マスタ3300を示す図である。
第二実施形態の自動測定システム1000の校正にあたっては、第一実施形態で用いたカメラ校正用チャート3100を用いる。一つのカメラ校正用チャート3100に付されたカメラ校正用マーク3110がセンサ校正用パーツを兼ねている。
図12において、カメラ校正用チャート設置枠3310は、バネ性の部材でカメラ校正用チャート3100を付勢することでカメラ校正用チャート3100を位置決め用の基準辺に押し付けている。
【0085】
図18のフローチャートを参照して第二実施形態における校正工程を説明する。
図18は、第二実施形態における校正工程の手順を説明するためのフローチャートである。
校正用マスタ3300を用意し、自動測定システム1000の測定可能領域(例えば定盤上や回転テーブル2010上)に校正用マスタ3300をセットする(ST610)。このとき、カメラ校正用チャート3100が水平になるように校正用マスタ3300をセットするとする。あるいは、カメラ校正用チャート3100が基準座標系のXY平面に対して平行とする。(あるいは、カメラ校正用チャート3100の法線が基準座標系において既知の向きである。)
【0086】
次に、観察カメラ2400でカメラ校正用マーク3110を撮像する(ST620)。すなわち、手先部2130の回転で交換手段2500を回転し、観察カメラ2400の撮影方向Acが真下を向くようにし、自動測定システム1000を観察カメラ使用姿勢とする。そして、観察カメラ2400によってカメラ校正用チャート3100を撮像する。 このときの多関節ロボットアーム部2100の姿勢Fc(Fxc、Fyc、Fzc、Fαc、Fβc、Fγc)を記録する(ST630)。
【0087】
中心カメラ校正用マーク3110の座標Pcは、ロボット座標系でいうと、
Pc=Fc+Δfc+Cc
である。
【0088】
次に、手先部2130の回転で交換手段2500を回転し、自動測定システム1000を測定センサツール使用姿勢として、画像測定器4000によってカメラ校正用マーク3110を撮像する(ST640)。
このとき、カメラ校正用マーク3110が撮像できる位置に移動する。五つのカメラ校正用マーク3110を撮像することにより、中心カメラ校正用マーク3120の座標値Tcを取得できる。
【0089】
この状態で多関節ロボットアーム部2100の姿勢を記録する(ST650)。このときの多関節ロボットアーム部2100の姿勢をF1(Fx1、Fy1、Fz1、Fα1、Fβ1、Fγ1)で表すとする。
【0090】
中心カメラ校正用マーク3110の座標Pcは、ロボット座標系でいうと、
Pc=F1+Δft+Tc
である。
【0091】
観察カメラ2400で中心カメラ校正用マーク3120を撮像することによって得られたデータと、画像測定器4000で中心カメラ校正用マーク3120を撮像することによって得られたデータと、を対比することにより、カメラ座標系と測定センサツール座標系とのオフセットΔtcが得られる(ST660)。
【0092】
Pc=Fc+Δfc+Cc
Pc=F1+Δft+Tc
【0093】
この二つの式から、
Δtc=Δft-Δfc=Fc+Cc-F1-Tc
である。
【0094】
Fc+Cc-F1-Tcは既知の値である。
Fc+Cc-F1-Tc=
Fc(Fxc、Fyc、Fzc、Fαc、Fβc、Fγc)+Cc-F1(Fx1、Fy1、Fz1、Fα1、Fβ1、Fγ1)-Tc
したがって、カメラ座標系と測定センサツール座標系とのオフセットΔtc(Δtcx、Δtcy、Δtcz、Δtcα、Δtcβ、Δtcγ)が得られる。
すると、観察用カメラ2400を基準とした測定センサツール(画像測定器4000)のツールセンターポイントを求めることができる(ST670)。
Δft=Δfc-Δtc
=Δfc-(Fc+Cc-F1-Tc)
いま、Δfcは、フランジ座標系(ロボット座標系)とカメラ座標系とのオフセットΔfcとして設計値が入力設定されているので既知の値である。このようにして、観察用カメラ2400を基準とした測定センサツール(画像測定器4000)のツールセンターポイントが得られた。
【0095】
画像測定器4000で測定対象物の寸法または形状を測定するにあたっては、観察カメラ2400で対象物を捉えたあと、言い換えると、観察カメラ2400で対象物を画像認識したあと、観察カメラ2400と画像測定器4000との位置を交換し、そして、先に校正した測定センサツール(画像測定器4000)のツールセンターポイントを用いて測定センサツール(画像測定器4000)を測定対象に向けてアプローチし、測定対象物を測定する。この方法により、画像測定器4000が測定対象物(測定対象箇所)を正確に捉えるはずである。つまり、測定対象箇所に対して光軸を垂直とし、測定対象箇所を被写界深度内(ピントが合う範囲内)に捉えることができるはずである。
【0096】
以上説明のように本実施形態によれば測定器を用いる寸法または形状の測定が自動実行されるようにできる。
【0097】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
測定センサツールとしては、電動内径測定器に代えて、接触式でワーク(測定対象)の寸法(内側寸法、外側寸法)を測定する測定器(測定部)としてもよい。固定要素に対して可動要素(測定子2320、測定ジョー、スピンドルなど呼称は種々有り得る)が変位可能に設けられていて、ワークに測定子2320を接触させる、あるいは、ワークを測定子2320で挟むようにしてワーク寸法を測定する測定センサツールは、上記実施形態に適用し得る。ノギス、マイクロメータヘッド、マイクロメータ、デジタルダイヤルゲージ(インジケータ)、テストインジケータ(てこ式ダイヤルゲージ)などの測定センサツールが例として挙げられる。非接触式の測定センサツールとして、テレセントリックレンズ系を有する画像測定器4000の他、静電容量式、レーザー検出器、共焦点式センサなどがある。
【0098】
観察カメラ2400と測定センサツールとが交換手段2500を有するツールユニット部2200として一つのロボットアーム部2120の手先部2130に設けられている場合を例示したが、観察カメラ2400と測定センサツールとが別々のロボットアーム部2120の手先部2130に設けられていてもよいし、あるいは、観察カメラ2400は固定式でもよい。ただし、観察カメラ2400と測定センサツールとをツールユニット部2200として一つのロボットアーム部2120の手先部2130に設けることの利点は上述の通りである。
【符号の説明】
【0099】
1000 自動測定システム
1100 制御ユニット部
1200 中央制御部
1300 ロボットアーム駆動制御部
1400 測定動作制御部
1410 観察カメラ制御部
1420 測定センサツール制御部
2000 測定装置本体部
2010 回転テーブル
2100 多関節ロボットアーム部
2110 ベース部
2120 アーム部
2130 手先部
2200 ツールユニット部
2300 電動内径測定ユニット
2310 測定ヘッド部
2320 測定子
2330 モータ
2400 観察カメラ
2420 イメージセンサ
2430 リング照明
2500 交換手段
2510 回転プレート
2520 連結部
2530 カメラ取付コラム
2540 測定器取付コラム
3000 校正用マスタ
3100 カメラ校正用チャート
3110 カメラ校正用マーク
3120 中心カメラ校正用マーク
3200 測定センサツール校正用治具
3210 カメラ校正用チャート設置部
3220 センサ校正用穴
3221 第一センサ校正用穴
3222 第二センサ校正用穴
3223 第三センサ校正用穴
4000 画像測定器
3300 校正用マスタ
3310 カメラ校正用チャート設置枠