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特開2024-152691高いエネルギ損失における電子エネルギ損失分光法のための技術
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152691
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】高いエネルギ損失における電子エネルギ損失分光法のための技術
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/05 20060101AFI20241018BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20241018BHJP
   H01J 37/04 20060101ALI20241018BHJP
   H01J 37/10 20060101ALI20241018BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20241018BHJP
   H01J 37/252 20060101ALI20241018BHJP
   H01J 37/26 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01J37/05
H01J37/244
H01J37/04 A
H01J37/10
H01J37/147 A
H01J37/252 Z
H01J37/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024064039
(22)【出願日】2024-04-11
(31)【優先権主張番号】18/299,635
(32)【優先日】2023-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】ペーテル クリスティアーン ティーマイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ソラン ラザル
(72)【発明者】
【氏名】ベルト ヘニング フライターク
(72)【発明者】
【氏名】パオロ ロンゴ
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA04
5C101EE13
5C101EE14
5C101EE15
5C101EE34
5C101EE51
5C101HH02
5C101HH06
5C101HH21
5C101JJ02
5C101LL05
(57)【要約】
【課題】従来技術の問題を解決する。
【解決手段】相対的に大きいエネルギ損失におけるエネルギ損失分光法のためのシステム、デバイス、方法、及び技術が説明される。荷電粒子顕微鏡システムは、ビームカラムセクションを含むことができる。ビームカラムセクションは、第1のエネルギに対して較正された1つ以上の荷電粒子光学素子と、第2のエネルギに対して較正された1つ以上の荷電粒子光学素子と、を含むことができる。荷電粒子顕微鏡システムは、検出器セクションを含むことができる。検出器セクションは、ビームカラムセクションの下流の位置に配設することができる。検出器セクションは、静電又は磁気プリズムと、第2のエネルギに対して較正された1つ以上の荷電粒子光学素子と、を含むことができる。第1のエネルギと第2のエネルギとは、異なり得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子顕微鏡システムであって、
ビームカラムセクションであって、
第1のエネルギに対して較正された1つ以上の荷電粒子光学素子、及び
第2のエネルギに対して較正された1つ以上の荷電粒子光学素子、を備える、ビームカラムセクションと、
前記ビームカラムセクションの下流の位置に配設されており、かつ静電又は磁気プリズム、及び前記第2のエネルギに対して較正された1つ以上の荷電粒子光学素子を備える、含む、検出器セクションと、を備え、
前記第1のエネルギと前記第2のエネルギとは、異なる、
荷電粒子顕微鏡システム。
【請求項2】
前記ビームカラムセクションは、試料セクションを更に備え、
前記第1のエネルギに対して較正された前記1つ以上の荷電粒子光学素子は、荷電粒子ソースに対して、前記試料セクション内に配設された試料の上流にあり、
前記第2のエネルギに対して較正された前記ビームカラムの前記1つ以上の荷電粒子光学素子は、前記試料セクションの下流に配設されている、
請求項1に記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【請求項3】
前記試料セクションは、対物レンズを含み、前記試料は、前記対物レンズの対物視野内に浸漬される、請求項1に記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【請求項4】
前記検出器セクションは、試料内の内殻電子とのエネルギ移動に少なくとも部分的に基づいて、前記第2のエネルギ付近のエネルギを有する荷電粒子を検出するように較正されたEELS分光計を備える、請求項1に記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【請求項5】
前記第1のエネルギと前記第2のエネルギとの間の差が、約2keV~約50keVである、請求項1に記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【請求項6】
前記第2のエネルギは、前記第1のエネルギの約90%~約97.5%である、請求項5に記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【請求項7】
前記第1のエネルギ及び前記第2のエネルギは、式A=|(ΔE+E2-E1)/E2|によって関係付けられ、式中、ΔEは、エッジに関連付けられたエネルギ損失(keV)であり、E1は、前記第1のエネルギ(keV)であり、E2は、前記第2のエネルギ(keV)であり、
前記式Aは、約5%以下である、
請求項1に記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【請求項8】
前記第1のエネルギは、約300keVであり、前記第2のエネルギは、約270keV~約295keVである、請求項1に記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【請求項9】
前記ビームカラムセクション及び前記検出器セクションに動作可能に結合された制御回路と、
前記制御回路によって実行されたときに、前記荷電粒子顕微鏡システムに動作を実施させる機械実行可能命令を記憶する1つ以上の非一時的機械可読記憶媒体と、を更に備え、前記動作は、
前記第1のエネルギにおける荷電粒子のビームを生成することと、
前記検出器セクションを使用して検出器データを生成することであって、前記検出器データは、前記第2のエネルギ付近における荷電粒子を記述する、生成することと、を含む、
請求項1に記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【請求項10】
前記第1のエネルギに対する較正スキームは、動作パラメータの第1のセットを含み、
前記第2のエネルギに対する較正スキームは、動作パラメータの第2のセットを含み、
前記動作パラメータの第1のセット、及び前記動作パラメータの第2のセットは、前記第2のエネルギに対して較正された前記光学素子の屈折効果のエネルギ依存性に少なくとも部分的に基づく倍率によって関係付けられる、
請求項1に記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【請求項11】
機械によって実行されたときに、前記機械に動作を実施させる命令を記憶する1つ以上の非一時的機械可読記憶媒体であって、前記動作は、
荷電粒子顕微鏡システムの1つ以上の荷電粒子光学素子を第1のエネルギから第2のエネルギに再較正することを含み、そのため、前記荷電粒子顕微鏡システムは、
ビームカラムセクションであって、
前記第1のエネルギに対して較正された1つ以上の荷電粒子光学素子、及び
前記第2のエネルギに対して較正された1つ以上の荷電粒子光学素子、を備える、ビームカラムセクションと、
前記ビームカラムセクションの下流の位置に配設され、かつ静電又は磁気プリズム、及び前記第2のエネルギに対して較正された1つ以上の荷電粒子光学素子を含む検出器セクションと、を備え、
前記第1のエネルギと前記第2のエネルギとは、異なる、
非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項12】
前記動作は、
前記第1のエネルギにおける荷電粒子のビームを生成することと、
前記検出器セクションを使用して検出器データを生成することであって、前記検出器データは、前記第2のエネルギ付近における荷電粒子を記述する、生成することと、を更に含む、
請求項11に記載の媒体。
【請求項13】
前記検出器データは、電子エネルギ損失スペクトル(EELS)データを含む、請求項12に記載の媒体。
【請求項14】
前記動作は、前記検出器データを使用して、試料の原子間間隔パラメータを判定することを更に含む、請求項12に記載の媒体。
【請求項15】
前記第1のエネルギから前記第2のエネルギに較正された前記1つ以上の荷電粒子光学素子を再較正することは、
前記EELS分光計の収集角度を測定すること、又は
前記EELS分光計に対して前記ビームを中心合わせすること、を含む、
請求項11に記載の媒体。
【請求項16】
前記動作は、
前記第1のエネルギに対して較正された前記荷電粒子光学素子を、前記第1のエネルギから前記第2のエネルギに再較正することと、
前記第2のエネルギにおける荷電粒子のビームを生成することと、
前記検出器セクションを使用して、検出器データを生成することであって、前記検出器データは、前記第2のエネルギ付近における荷電粒子を記述する、生成することと、を更に含む、
請求項11に記載の媒体。
【請求項17】
前記動作は、
対話型ユーザインターフェースを介してユーザ対話データを受信することであって、前記対話データは、前記荷電粒子顕微鏡システムの前記1つ以上の素子の再較正を開始するための、ユーザによる行動に対応する、受信することを更に含む、
請求項11に記載の媒体。
【請求項18】
前記動作は、
前記荷電粒子顕微鏡システムに動作可能に結合されて前記対話型ユーザインターフェースを提示するディスプレイを修正するように構成されたユーザインターフェースデータを生成することを更に含む、
請求項16に記載の媒体。
【請求項19】
前記第1のエネルギと前記第2のエネルギとの間の差が、約2keV~約50keVである、請求項11に記載の媒体。
【請求項20】
前記第2のエネルギは、前記第1のエネルギの約90%~約97.5%である、請求項11に記載の媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、荷電粒子顕微鏡システム、並びにその動作のためのアルゴリズム及び方法を対象とする。特に、いくつかの実施形態は、電子エネルギ損失分光法のための技術を対象とする。
【背景技術】
【0002】
電子エネルギ損失分光法(Electron energy loss spectroscopy、EELS)とは、電子のビームを試料に通過させて電子の一部を散乱させることによって、材料試料の電子構造に関する情報を導出することができる技術を言う。EELS分光計は、電子ソースの位置に対して試料の下流で非弾性的に散乱された電子を収集し、非弾性散乱において失われたエネルギがこれらの電子を空間的に分散させることによって動作する。この空間的に分散された電子は、EELSスペクトルを生成する検出器に衝突する。EELSに伴う課題は、散乱断面積が、エネルギ損失の増加に伴って急速に減少し、約2keVを超える励起に対して信号対雑音制限につながることである。
【0003】
シンクロトロンなどの、同様のスペクトルデータを提供する他の技術とは対照的に、荷電粒子顕微鏡システムの一部として動作するように構成されたEELS分光計は、電子ビームの単一エネルギ、すなわち、荷電粒子顕微鏡の一次ビームのエネルギに対して較正される。したがって、EELS分光計は、一次ビームエネルギに対応する「ゼロ損失ピーク」又はZLP付近の相対的に狭いエネルギ範囲に制約される。内殻イオン化、及び電子ビームと試料との間の他の相対的に高いエネルギ相互作用などの、一次ビームエネルギの約2%よりも大きい(例えば、200keVの一次ビームの場合、約4keVよりも大きい)エネルギ移動を含む非弾性衝突は、信号対雑音比が低く、収差アーチファクトが持ち込まれる結果として検出限界を被り、一般に、典型的なEELS分光計の範囲外のものである。シンクロトロンシステムは、典型的には、有意により低い空間分解能、より高い複雑さ、及び高い費用で、軟X線又は硬X線のためのビームラインを使用して、そのようなデータを生成するために使用される。したがって、荷電粒子顕微鏡におけるEELSシステムを使用して、材料試料の内殻遷移及び他の相対的に高いエネルギ遷移を調査するための技術及びシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
相対的に大きいエネルギ損失におけるエネルギ損失分光法のためのシステム、デバイス、方法、アルゴリズム、及び技術が説明される。一態様では、荷電粒子顕微鏡システムは、ビームカラムセクションを含むことができる。ビームカラムセクションは、第1のエネルギに対して較正された1つ以上の荷電粒子光学素子と、第2のエネルギに対して較正された1つ以上の荷電粒子光学素子と、を含むことができる。荷電粒子顕微鏡システムは、検出器セクションを含むことができる。検出器セクションは、ビームカラムセクションの下流の位置に配設することができる。検出器セクションは、静電又は磁気プリズムと、第2のエネルギに対して較正された1つ以上の荷電粒子光学素子と、を含むことができる。第1のエネルギと第2のエネルギとは、異なり得る。
【0005】
いくつかの態様では、ビームカラムセクションは、試料セクションを更に含む。第1のエネルギに対して較正された1つ以上の荷電粒子光学素子は、荷電粒子ソースに対して、試料セクション内に配設された試料の上流にあり得る。第2のエネルギに対して較正されたビームカラムの1つ以上の荷電粒子光学素子は、試料セクションの下流に配設され得る。試料セクションは、対物レンズを含むことができる。試料は、対物レンズの対物視野内に浸漬され得る。
【0006】
いくつかの態様では、検出器セクションは、試料中の内殻電子とのエネルギ移動に少なくとも部分的に基づいて、第2のエネルギ付近のエネルギを有する荷電粒子を検出するように較正されたEELS分光計を含む。
【0007】
いくつかの態様では、第1のエネルギと第2のエネルギとの間の差は、約2keV~約50keVである。第2のエネルギは、第1のエネルギの約90%~約97.5%であり得る。いくつかの態様では、第1のエネルギ及び第2のエネルギは、式A=|(ΔE+E2-E1)/E2|によって関係付けられ、式中、ΔEは、エッジに関連付けられたエネルギ損失(keV)であり、E1は、第1のエネルギ(keV)であり、E2は、第2のエネルギ(keV)である。式Aは、約5%以下であり得る。いくつかの態様では、第1のエネルギは、約300keVであり、第2のエネルギは、約270keV~約295keVである。
【0008】
いくつかの態様では、荷電粒子顕微鏡システムは、ビームカラムセクション及び検出器セクションに動作可能に結合された制御回路と、制御回路によって実行されたときに、荷電粒子顕微鏡システムに動作を実施させる機械実行可能命令を記憶する1つ以上の非一時的機械可読記憶媒体と、を更に含む。動作は、第1のエネルギにおける荷電粒子のビームを生成することと、検出器セクションを使用して検出器データを生成することと、を含むことができる。検出器データは、第2のエネルギ付近における荷電粒子を記述する。
【0009】
いくつかの態様では、第1のエネルギに対する較正スキームは、動作パラメータの第1のセットを含み、第2のエネルギに対する較正スキームは、動作パラメータの第2のセットを含む。動作パラメータの第1のセット、及び動作パラメータの第2のセットは、第2のエネルギに対して較正された光学素子の屈折効果のエネルギ依存性に少なくとも部分的に基づく倍率によって関係付けられ得る。
【0010】
別の態様では、1つ以上の非一時的機械可読記憶媒体は、機械によって実行されたときに、機械に動作を実施させる命令を記憶する。動作は、荷電粒子顕微鏡システムの1つ以上の荷電粒子光学素子を第1のエネルギから第2のエネルギに再較正することを含むことができ、その結果、荷電粒子顕微鏡システムは、上記の態様のビームカラムセクションを含む。
【0011】
いくつかの態様では、動作は、第1のエネルギにおける荷電粒子のビームを生成することと、検出器セクションを使用して検出器データを生成することと、を更に含む。検出器データは、第2のエネルギ付近における荷電粒子を記述することができる。検出器データは、電子エネルギ損失スペクトル(EELS)データを含むことができる。動作は、検出器データを使用して、試料の原子間間隔パラメータを判定することを更に含むことができる。
【0012】
いくつかの態様では、第1のエネルギから第2のエネルギに較正された1つ以上の荷電粒子光学素子を再較正することは、EELS分光計の収集角度を測定すること、又はEELS分光計に対してビームを中心合わせすること、を含む。
【0013】
いくつかの態様では、動作は、第1のエネルギに対して較正された荷電粒子光学素子を第1のエネルギから第2のエネルギに再較正することを更に含む。動作は、第2のエネルギにおける荷電粒子のビームを生成することを更に含む。動作はまた、検出器セクションを使用して検出器データを生成することを更に含むこともでき、検出器データは、第2のエネルギ付近における荷電粒子を記述することができる。動作は、対話型ユーザインターフェースを介してユーザ対話データを受信することを更に含むことができる。対話データは、ユーザによる行動に対応して、荷電粒子顕微鏡システムの1つ以上の素子の再較正を開始することができる。動作は、荷電粒子顕微鏡システムに動作可能に結合されて対話型ユーザインターフェースを提示するディスプレイを修正するように構成されたユーザインターフェースデータを生成すること、を更に含むことができる。
【0014】
本開示の実施形態はまた、上記の態様によるシステム、構成要素、及び方法も含む。使用されている用語及び表現は、限定の用語としてではなく説明の用語として使用され、そのような用語及び表現を使用するに際して、図示及び説明される特徴又はその一部分のいかなる同等物も除外する意図はないが、請求される主題の範囲内で様々な修正が可能であることが理解される。したがって、本明細書で請求される主題が実施形態及び任意選択的な特徴によって具体的に開示されてきたが、本明細書で開示される概念の修正及び変形が、当業者によってなされることが可能であり、そのような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本開示の範囲内にあるとみなされることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示の前述の態様及び多くの付随する利点が、添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することでより良好に理解されるので、より容易に認識されるであろう。
図1】本開示のいくつかの実施形態による例示的な荷電粒子顕微鏡システムを例解する概略図である。
図2】本開示のいくつかの実施形態による、図1の例示的な荷電粒子顕微鏡システムの動作原理を例解する概略図である。
図3】本開示のいくつかの実施形態による、検出器データを生成するための例示的なプロセスを例解するブロック図である。
図4A】本開示のいくつかの実施形態による、モリブデン箔試料についての例示的な電子エネルギ損失スペクトル(EELS)データ及び広帯域X線吸収微細構造(Extended X-ray Absorption Fine-Structure、EXAFS)データを例解するグラフである。
図4B】本開示のいくつかの実施形態による、アンチモン(Sb)試料についての例示的な電子エネルギ損失スペクトル(EELS)データを例解するグラフである。
図5】本開示の実施形態及び本技術の比較技術について、EELSデータを収集するために使用される異なる材料試料に対する例示的な電子線量データを例解するグラフである。
【0016】
図面において、同様の参照番号は、別段の指定がない限り、様々な図の全体にわたって同様の部分を指す。必要に応じて図面における混乱を低減させるために、要素の全てのインスタンスが必ずしも標識されているわけではない。図面は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、説明される原理を例解することに重点が置かれている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
例解的な実施形態を例解及び説明してきたが、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本開示において様々な変更を行うことができることが理解されるであろう。以下の段落では、電子エネルギ損失分光法(EELS)のための荷電粒子顕微鏡システム、構成要素、及び方法の実施形態について説明される。本開示の実施形態は、説明を単純にするために、EELSを装備した透過電子顕微鏡(transmission electron microscope、TEM)システムを使用する試料微量分析に焦点を当てる。実施形態は、そのようなシステムに限定されないが、むしろ、荷電粒子のビームと試料の原子との間の非弾性衝突の分析が、荷電粒子光学構成要素の内部構成によって複雑化し得るシステムについて検討される。例解的な例では、走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)システムは、走査型透過(SEM内STEM)モードでのEELS分析のために使用することができる。同様に、システムは、具体的には、EELS技術のために構成することができ、撮像、X線微量分析などのために適合されたTEMシステムの典型的な構成要素を省略する。したがって、本開示の実施形態は、EELSデータを生成及び処理するためのシステムが装備されているTEMプラットフォームに焦点を当てるが、追加的及び/又は代替的なシステム及びアプローチが検討される。
【0018】
本開示の実施形態は、相対的に高いエネルギ損失における電子エネルギ損失分光法(EELS)のためのシステム、方法、アルゴリズム、及びコンピュータ可読命令を記憶する非一時的媒体を含む。例解的な例では、荷電粒子顕微鏡システムは、第1のエネルギに対して較正された1つ以上の荷電粒子光学素子と、第2のエネルギに対して較正された1つ以上の荷電粒子光学素子と、を含む、ビームカラムセクションを含むことができる。システムはまた、ビームカラムセクションの下流の位置に配設されており、かつ静電又は磁気プリズム、及び第2のエネルギに対して較正された1つ以上の荷電粒子光学素子を備える、検出器セクションも含むことができ、ここで、第1のエネルギと第2のエネルギとは異なる。有利に、本開示の実施形態は、約3keVよりも大きいエネルギ損失を有する散乱粒子を測定するときに、エネルギ損失分光分析システムの性能を改善し、それによって、比較可能なデータを生成するためのシンクロトロンシステムへの依存を低減する。
【0019】
荷電粒子顕微鏡と比較して、シンクロトロンシステムは、複雑であり、大型である。本明細書に提示される技術は、荷電粒子顕微鏡システムが、既存のEELS検出器システムを使用するX線吸収分光法(x-ray absorption spectroscopy、XAS)、具体的には、そのサブ技術のX線吸収近端分光法(x-ray absorption near-edge spectroscopy、XANES)及び広帯域X線吸収微細構造分光法(extendedx-ray absorption fine-structure spectroscopy、EXAFS)に匹敵する検出器データを生成することを可能にする。追加の利点として、走査型透過電子顕微鏡(scanning transmission electron microscope、STEM)におけるEELSは、概して、有意に改善された空間分解能(例えば、10倍程度の大きい空間分解能)を提供する。そのような倍率での空間分解能に対する改善は、μm~mmの倍率で動作するシンクロトロン分析によって統合化される長さ倍率にわたって、化学的かつ構造的に変化し得る、ナノ構造化された試料から利用可能な情報の深度を有意に増加させる。
【0020】
以下の詳細な説明は、透過電子顕微鏡システムの実施形態に焦点を当てているが、追加的及び/又は代替的な機器システムが、説明される技術の使用を通して改善され得ることが想定される。機器システムは、集束イオンビームシステム、走査型電子顕微鏡システム、イオン電子デュアルビームシステムなどを含むが、これらに限定されない他の荷電粒子システムを含むことができる。
【0021】
図1は、本開示のいくつかの実施形態による例示的な荷電粒子顕微鏡システム100を例解する概略図である。以下の説明では、例示的なTEMシステム100の内部構成要素及び機能の詳細については、単純にするため省略し、図2図5を参照してより詳細に説明されるような本開示の実施形態と、相対的に強力な基礎情報を含むスペクトル内の試料情報を増強するための技術と、に焦点を当てる。例示的なTEMシステム100は、電子ソースセクション、試料セクション107を含むTEMカラム105、及び検出器セクション110を含む。本開示は、1つ以上の電子エネルギ損失分光法(EELS)分光計115を含む本開示の実施形態に注意を払いながら、検出器セクション110の性能を改善するための技術に焦点を当てる。
【0022】
端的に言えば、電子ソースセクションは、荷電粒子205のソース(図2を参照)に電圧を印加するように構成された電子機器を含み、その荷電粒子ソースは、高電圧電界放出ソース、又は他の放出される電子のソースを含むことができ、その結果、電子ビームが形成され、真空を通ってTEMカラム105に伝えられる。TEMカラム105は、電子ビームの特性を制御するための電磁レンズ及び/又は静電レンズ、並びに複数のアパーチャを含む、ビーム形成のための構成要素を含む。TEMカラム105構成要素は、とりわけ、集束レンズ、対物レンズ、投射レンズ、収差補正器、偏向器、非点収差補正器、並びに対応するアパーチャを含む。試料セクション107は、電子ビームが透過することができる試料225(図2を参照)を収容する。EELS微量分析の場合、ビームは、スポットモード分析のために試料上に(例えば、1つ以上の対物レンズの行動を通じて)合焦することができるか、又はビームは、平行照明モードで(若しくは少なくとも部分的に焦点が外れて)試料を通過して、相対的に大きい試料面積からデータを収集することができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、試料セクション107は、試料が対物レンズの対物視野内に浸漬されるように、対物レンズ109を含む。有利に、対物レンズの対物視野内に試料を配設することは、STEMモード動作に対して、約0.05nm程度の良好な分解能を提供することができる。この文脈において、対物視野内の浸漬とは、試料と、対物レンズの磁極片との間の空間に延びる対物レンズの磁界内に試料を配設することを指す。そのような浸漬は、対物レンズの可能な収差を有意に低減し、そうでなければ、顕微鏡の空間分解能を低減することになる。
【0024】
いくつかの実施形態では、荷電粒子顕微鏡システム100は、無電界STEMモード100で動作し、ここで、対物レンズは、荷電粒子を試料上に合焦させるためには使用されない。いくつかのシステムでは、試験片の上流にある小型集束レンズは、プローブ形成レンズとして機能することができ、試験片の下流にあるローレンツレンズは、第1の結像レンズとして機能して、対物レンズの機能のうちの少なくともいくつかを提供することができる。無電界STEMモードでは、検出器データは、約0.5nmの空間分解能で生成することができる。大きさの程度が浸漬ケースよりも低いが、無電界STEMモードは、シンクロトロンベースの技術と比較すると、有意に改善された空間分解能を提供する。
【0025】
最先端のTEMカラムは、試料上の電子ビームの柔軟な(例えば、段階的又は徐々に変化する)縮小及び集中のための4つもの集束レンズと、検出器に対して試料の下流にある電子ビームの柔軟な拡大のための5つもの投射レンズと、2つもの収差補正器とを有することができる。最先端の収差補正器は、追加のレンズ及びいくつかの多極子(例えば、4つのレンズ及び2つ~3つ以上の多極子)を備えることができるため、最新のTEMカラムは、最大約20個のレンズを含むことができる。レンズ及び他の光学素子の集合体の協調動作により、試料における所与の縮小、及び検出器における拡大がもたらされる。対照的に、協調の欠如により、電子ビームが1つ以上の光学素子を中心から外れて進行すること、ビームが1つ以上のレンズにおいて大き過ぎるビーム径を有すること、又はシステム性能を低減させる他の問題に少なくとも部分的に基づく、収差が引き起こされる。本開示の文脈では、荷電粒子光学素子の「較正」とは、励起パラメータが試料における所望のビーム特性(例えば、プローブ直径、電流、位置)、及び検出器における所望のビーム特性(例えば、倍率、焦点、位置)を与えるように設定及び検証される、素子の集合体のための動作パラメータのセットを指す。当業者によって理解されるように、光学素子の集合体の較正は、通常、経験豊富な技術者によっても数日又は数週間を費やす可能性がある、複雑かつ面倒な作業である。このため、TEMカラムは、通常、電子ビームの制限された数(例えば、2つ~5つ)のエネルギ(例えば、300keV、200keV、60keV)に対する較正設定値が供給される。
【0026】
レンズ及び多極子の光学強度は、ビーム中の電子のエネルギに依存し、したがって、較正は、較正設定値が設定及び検証されたエネルギと同等か又はそれに近いエネルギを有する電子に対して固有である。例えば、300keVのビームエネルギで動作しているTEMでは、300keVのエネルギを有する電子に対して較正されたTEMカラムの荷電粒子光学素子は、様々な収差をビームにもたらすであろう。この例では、300keVからわずか10eVだけ逸脱する、すなわち、約0.003%の偏差のエネルギを有する電子は、意図された試料平面から約100nmの距離だけ離れてシフトしている平面上に合焦するであろう。対物レンズの色収差は、この例では、顕微鏡の空間分解能を有意に劣化させる。このため、典型的な較正スキームでは、全ての素子又はほぼ全ての素子が、同じビームエネルギに対して較正される。例えば、縮小素子及び拡大素子は、同じビームエネルギに対して較正される。
【0027】
検出器セクション110は、試料撮像及び/又は微量分析に使用するための画像、スペクトル、及び他のデータを生成するように構成された1つ以上のタイプの検出器、センサ、スクリーン、並びに/又は光学部品を含む。例えば、撮像セクションは、とりわけ、シンチレータスクリーン、双眼鏡、透過電子顕微鏡(TEM)検出器(例えば、画素化電子検出器、二次電子検出器、カメラ、及び電子エネルギ損失分光法(EELS)分光計115を含むことができる。EELS分光計115は、電子の速度に比例する力を電子に加える静電又は磁気分散素子(「プリズム」ともと称される)上に電子ビームを合焦させることによって、少なくとも部分的にエネルギフィルタとして機能する。このようにして、(例えば、非弾性衝突によって)エネルギを試料に移動した電子は、磁気分散素子を通って検出器に再指向することができる。検出器は、一次元又は二次元のEELSデータを生成する画素化検出器(例えば、電子を検出するように構成されたCCDデバイス)を含むことができ、そこから、EELSスペクトルを引き出すことができる。いくつかの実施形態では、EELS分光計115はまた、散乱された電子を検出器上に調整又は合焦させるために、電磁気レンズ若しくは静電レンズ、並びに/又は多極子及び/若しくは加速器などの1つ以上の光学素子を含む。
【0028】
図2は、本開示のいくつかの実施形態による、例示的な荷電粒子顕微鏡システム200の動作原理を例解する概略図である。この例示的なシステム200は、図1の荷電粒子顕微鏡100の例であり、荷電粒子顕微鏡100のソースセクション、TEMカラム105、試料セクション107、及び場合によっては、検出器セクション110の一部に対応する顕微鏡201を含む。例示的なシステム200はまた、例解された実施形態においてEELS分光計の構成要素によって表されている分光計115も含む。例示的なシステム200はまた、顕微鏡201及び分光計115に動作可能に結合されている制御システム210の素子も含む。
【0029】
顕微鏡201は、第1のエネルギE1の荷電粒子215(例えば、電子又はイオン)のビームを生成するように構成された荷電粒子ソース205を含むことができる。わずかな粒子が、試料によって散乱され得る。散乱事象は、非弾性散乱を含み得る。電子エネルギ損失分光法(EELS)の技術では、EELS分光計115を使用して、非弾性的に散乱された電子のエネルギを測定することができ、そこから、非弾性散乱事象に関連するエネルギ損失ΔEを導出することができる。非弾性散乱事象中にエネルギを失った電子は、E1-ΔEのエネルギでTEMカラムを通って、かつEELS分光計を通って移動する。TEMカラム及びEELS分光計が較正されたエネルギE1からの偏差の大きさは、電子が試料と、EEL分光計115の検出器との間を移動する荷電粒子光学素子の性能に影響を及ぼす。較正エネルギからの偏差ΔEは、荷電粒子光学素子を、それらのそれぞれの較正された光学強度から逸脱させ、結像性能の劣化をもたらす。
【0030】
例えば、ΔEがエネルギ損失値の範囲を含む場合、結像面の数は、荷電粒子光学素子のエネルギ依存性能によって画定することができる。散乱された電子の一部は、システムの較正に合わせて検出器上に合焦させることができるが、いくつかの電子は、検出器の上流の位置、検出器の下流の位置、又は分光計の入口から離れた位置(例えば、軸外)における画像平面上に合焦する可能性がある。場合によっては、散乱された電子は、TEMカラム又は分光計の内面と接触するように誘導することができ、それによって、EELS信号から完全に排除される。
【0031】
上で説明される較正スキームの場合、カラムのレンズ設定値が注意深く選択され、かつ分光計の多極子設定値が注意深く選択されるという条件で、較正されたエネルギからΔE/E1≒2%程度だけ逸脱するエネルギを有する電子を検出することが可能である。そうではあるが、較正エネルギE1のほぼ2%よりも大きいΔEの値(すなわち、ΔE/E1>約2%)の場合、上で説明される較正スキームは、アーチファクト(例えば、拡大/縮小、及び/又はビーム位置からの偏差)をもたらすことなく、散乱された電子を、TEMカラムの荷電粒子光学素子を通って、かつEELS分光計の荷電粒子光学素子を通って指向させることができない。ビームの倍率及び位置の偏差は、EELS分光計による散乱された電子の非効率的な収集をもたらす。更に、散乱された電子の一部を検出器信号から除外する収差は、試料の元素組成を適切かつ確実に定量化するための記録されたEELSスペクトルの有用性を損なう。
【0032】
本開示の実施形態では、ビームエネルギ(E1)から約2%以上(例えば、ΔE/E1≧約2%)だけ逸脱する電子は、上で説明されるものとは異なる較正スキームを採用することによって、効率的に収集することができ、その場合、第2の較正エネルギE2は、試料の下流にある1つ以上の荷電粒子光学素子に対して使用される。概して、本開示によれば、1つ以上の荷電粒子光学素子220は、第1のエネルギE1に対して較正され、1つ以上の荷電粒子光学素子230は、第2のエネルギE2に対して較正される。いくつかの実施形態では、第1のエネルギE1に対して較正された光学素子220は、試料セクション(例えば、図1の試料セクション107)内に配設された試料225の上流にあり、第2のエネルギE2に対して較正された光学素子230は、試料225の下流にある。第1のエネルギE1と第2のエネルギE2とは、異なり得、例えば、E1は、E2よりも大きくあり得る。散乱によってエネルギ(ΔE)を失う、試験片の上流で第1のエネルギE1付近のエネルギを有する電子は、試験片の下流でE1-ΔE付近のエネルギを有することになる。その目的のために、E2は、E2がE1-ΔE付近に等しくなるように選択することができる。いくつかの実施形態では、E2は、絶対値の数式、|(ΔE+E2-E1)/E2|≦約Aを使用して判定することができ、式中、Aは、約1%~約10%の値であり、その部分範囲、分数、及び補間を含む。例えば、Aは、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、又は約10%に等しいとすることができる。
【0033】
図3図5の例解的な例では、E1とE2との間の差は、約2keV~約50keVとすることができ、その部分範囲、分数、及び補間を含む。例えば、E1とE2との間の差は、約2keV~約35keV、約2keV~約10keV、約10keV、約20keV、約30keVなどとすることができる。エネルギE1及びE2は、約50keV~約500keVとすることができ、その部分範囲、分数、及び補間を含む。例解的な例では、E1は、約300keVとすることができ、E2は、約290keVとすることができる。別の例では、E1は、約310keVとすることができ、E2は、約300keVとすることができる。別の例では、E1は、約200keVとすることができ、E2は、約190keVとすることができる。所与の励起(例えば、内殻イオン化)に対する断面積は、E1に少なくとも部分的に依存し得る。その目的のために、上記の範囲以外のE1の値に対して、高いエネルギ損失データは、所与の励起を誘導するための荷電粒子の相対的に低い確率に少なくとも部分的に基づいて、雑音によって支配され得る。
【0034】
第1のエネルギと第2のエネルギとの間の差は、第1のエネルギの値に少なくとも部分的に依存し得る。例えば、第2のエネルギは、第1のエネルギの何分の1とすることができる。いくつかの実施形態では、第2のエネルギは、第1のエネルギの約60%~約99%とすることができ、その部分範囲、分数、及び補間を含む。例解的な例では、第2のエネルギは、第1のエネルギの約90%~約97.5%とすることができる。第1のエネルギと第2のエネルギとの間の差は、EELS分光計によって記録されるエネルギ損失に等しいか又はほぼ等しくなるように選択することができる。本明細書に説明される技術は、荷電粒子顕微鏡が相対的に高いエネルギ損失に対応するエネルギ範囲について応答指令信号を送ることを可能にし、ここで、E1とE2との間のより大きい差は、その差のおおよその値の散乱事象の励起エネルギに対応する検出器データ(例えば、広帯域エネルギ損失微細構造、又はEXELFS)をもたらすことになる。このようにして、約10keVの差は、約10keVの励起エネルギを有する散乱事象に対する検出器データを提供することができる。
【0035】
EXELFSでは、コア殻間の励起の確率のエネルギ依存性における微細構造について研究されている。コア殻間の励起に起因するエネルギ損失を経験する電子の総数N-totは、エネルギ損失の-1.5乗で、すなわち、N-tot∝ΔE-1.5でほぼ比例する。このようにして、散乱された電子の数は、エネルギの範囲ΔEtailにわたって分布され得(「エッジの尾」として知られる)、散乱エネルギの範囲
【0036】
【数1】
にわたって分布され得る(「散乱分布」として知られる)。尾の長さは、エネルギ損失のほぼ20%(ΔEtail≒0.2ΔE)である。散乱角の範囲は、おおよそ
【0037】
【数2】
に等しい。これらの式を組み合わせると、特定のエネルギ間隔dEで、かつ特定の立体角
【0038】
【数3】
におけるエネルギを損失した電子の数は、次式で表されるように、エネルギ損失に比例すると推定することができる:
【0039】
【数4】
この推定は、EELS分光計におけるEXELFS信号がエネルギ損失の増加とともに急速に低下することを示す。例えば、チタン(5.0keV)、銅(9.0keV)、モリブデン(ΔE=20keV)、及びアンチモン(ΔE=30.5keV)におけるK殻エッジに対してEXELFS領域(100eV幅)における同じカウント数(したがって、同じ統計データ)に到達するために、必要なビーム線量は、(Tiに対して)1:8:128:560の比によってスケーリングする。このようにして、EELS分光計の収集立体角は、EXELFSスペクトルを測定する際の、TEMシステムの性能の大部分を判定することができる。有利に、TEMカラムが、式|(ΔE+E2-E1)/E2|<約2%に従って、散乱された電子をより良好に較正されるときに、収集立体角は、有意に改善する。このようにして、本開示の較正プロセスは、収集角度を測定すること、及びEELS分光計に対してビームを中心合わせすることを含むことができる。エッジ位置又はエッジ構造に関して、雑音は、E1とE2との間の差の値が大きくなるにつれてより有意になる可能性があり、その結果、約ΔE=30keVを超えると、積分時間及び総電子線量は、例えば、試料の感度によって制限され得る。
【0040】
分光計115は、分散素子235、並びに1つ以上の電磁素子及び/又は静電素子240(例えば、レンズ、加速器、四極子、六極子、八極子など)などの荷電粒子光学素子を含むことができる。分散素子235は、1つ以上の磁気及び/又は静電分散素子(「プリズム」とも称される)を備えることができる。分光計115は、ポストカラム(図2のように、TEMカラムの後に配置される)であり得るか、又はTEMカラムに動作可能に結合されたインカラムであり得る。素子235及び240は、第2のエネルギE2に対して較正することができる。分散素子235を参照すると、第2のエネルギE2に対する較正とは、E2の約2%以下だけE2から逸脱するエネルギを有する荷電粒子(例えば、電子)を分散させるための分散素子235の動作を指す。このようにして、約E2のエネルギを有する荷電粒子は、素子240に伝達され、その後、分光計115の検出器245に指向され得る。いくつかの実施形態では、素子240はまた、検出器245上に荷電粒子を合焦させる。
【0041】
システム200の他の構成要素は、散乱されない250、又は弱く散乱された荷電粒子255(例えば、散乱せずに試料225を通過する電子)を減衰させ、再指向させ、吸収し、又はそれ以外の場合では検出器データから除外するように機能することができる。例えば、素子230は、電子のエネルギに比例する力(例えば、磁力)を電子に加えることができ、この力は、約E1のエネルギを有する電子を、ビーム軸から離して、顕微鏡201内部の吸収体材料又は他の表面に再指向させる。
【0042】
検出器245は、検出器データを生成することができる。図3図5を参照してより詳細に説明されるように、検出器データは、荷電粒子215のビームと、試料225の原子227との間の相互作用から得られるEELSスペクトルを含むことができる。例えば、顕微鏡201がSTEMモード(例えば、走査TEM、又はSEM内STEM)で動作し、かつ試料225が、ビームの透過を可能にするように薄く加工されている場合、電子ビームは、ナノメートルスケールでの、単一原子、又は原子群の測定を可能にする、試料225内の点に合焦することができる。図4A図4Bを参照してより詳細に説明されるように、隣接する原子227間の相互作用は、微細構造を検出器データに導入することができる。このようにして、検出器データを使用して、原子227に関する化学的、物理的、及び/又は構造的情報(例えば、酸化状態、配位情報など)を導出することができる。有利に、本開示の実施形態は、微細構造情報を空間的局在化と組み合わせており、このことは、比較可能な検出器データを生成するために使用される典型的なシンクロトロンシステムでは利用不可能である。STEMモードで動作するTEMでは、原子スケールの分解能が、荷電粒子215のビームを合焦させることによって得られることができ、システム200を使用して試料225の材料特性のナノメートルスケールのマップを生成することを可能にする。
【0043】
制御システム210は、顕微鏡201及び/又は分光計115内に配設された制御回路に動作可能に結合されている1つ以上の機械(例えば、コンピューティングデバイス)を含むことができる。例解的な例では、制御回路は、電源に接続され、かつソース205、素子220、230、235、240、及び/又は検出器245への電力(例えば、電圧及び又は電流)供給を制御するように構成された回路構成要素の配置を含むことができる。このようにして、素子220、230、235、240、及び/又は検出器245を較正及び/又は再較正するためのプロセスは、1つ以上の機械可読記憶媒体(例えば、ローカル記憶媒体、分散型「クラウド」記憶媒体など)上に記憶された機械実行可能命令内に符号化された1つ以上の動作に従って、制御システム210によって指揮され得る。1つ以上の機械には、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、タブレット、サーバ、特定用途向けマシン(application specific machine、ASM)などが含まれ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、制御システム210は、ディスプレイ及び入力周辺装置(例えば、マウス及びキーボード)などのユーザとの相互作用が可能な要素を含み、これらを介して、ユーザは、図3を参照して説明された動作に従って、高いエネルギ損失EELSモードを可逆的に実装することができる。例解的な例では、ユーザは、高いエネルギ損失EELSモードを開始するユーザインターフェース(例えば、アプリケーション、ブラウザ環境など)上の対話型画像要素211を選択することができる。システム200をその以前の状態に戻すために、ユーザは、素子220、230、235、及び/又は240の較正を、E1又はE2から以前の較正エネルギ(例えば、第1のエネルギE1、第2のエネルギE2、又は第3のエネルギE3)に戻すことを開始する対話型画像要素211を選択することができる。
【0044】
その目的のために、本開示のプロセス(例えば、図3の例示的なプロセス300)は、ユーザ対話データを(例えば、対話型ユーザインターフェースを介して)受信するための動作を含むことができ、ここで、対話データは、ユーザによる行動に対応して、荷電粒子顕微鏡システムの1つ以上の素子の再較正を開始するか、又はその逆を行う。同様に、本開示のプロセスは、(例えば、制御システム210の)ディスプレイを修正して対話型ユーザインターフェースを提示するように構成されたユーザインターフェースデータを生成することを含むことができる。
【0045】
図3は、本開示のいくつかの実施形態による、検出器データを生成するための例示的なプロセス300を例解するブロック図である。例示的なプロセス300の1つ以上の動作は、特徴付けシステム、ネットワークインフラストラクチャ、データベース、及びユーザインターフェースデバイスを含む、これらに限定されない追加のシステムと通信するコンピュータシステムによって実行することができる。いくつかの実施形態では、図3を参照して説明される動作の少なくともサブセットは、自動的に(例えば、人間の関与なしに)又は疑似自動的に(例えば、人間の始動又は限定された人間の介入により)実施される。例解的な例では、電子ビームを生成及び成形するための動作は、TEMシステム100が、人間のユーザによって指定することができる設定点又はその付近で電子ビームの特性を維持するように構成されている状態で、自動的に実行することができる。別の例解的な例では、人間のユーザは、撮像モード又は従来のEELSモードから高損失モードへの荷電粒子顕微鏡100の再較正を開始する、荷電粒子顕微鏡100のサブシステムを作動させることによって(例えば、ブラウザ若しくはソフトウェアアプリケーション、及び/又は押しボタン制御パネルなどのユーザ端末を通じて提示される対話型ユーザ環境を介して)、本明細書に説明される技術を使用して、EELSモードを開始することができる。その目的のために、例示的なプロセス300は、一連の動作として説明されているが、動作のうちの少なくともいくつかは、省略され、繰り返され、かつ/又は並べ替えることができることが理解される。いくつかの実施形態では、追加の動作は、説明を明確にするために省略される例示的なプロセス300の動作、例えば、電子ソースの較正、電子ビームの位置合わせ及び収差補正などのための動作を優先し、かつ/又はその後に追従する。
【0046】
動作305において、例示的なプロセス300は、荷電粒子光学素子を較正すること及び/又は再較正することを含む。図2の素子220、230、235、及び240は、動作305の荷電粒子光学素子の例である。一般に、較正すること及び再較正することは、素子の電子パラメータを修正して、EELS分光計における荷電粒子のビームの倍率及び位置、又は検出器における分散された荷電粒子のビームの倍率及び幅などの動作パラメータのセットを素子にもたらすことを含む、1つ以上の副動作を含むことができる。本開示の文脈では、動作305は、素子の較正エネルギを第1のエネルギ(例えば、図2のE1)から第2のエネルギ(例えば、図2のE2)にシフトするように適用される同じ又は同様の副動作を含むことができる。このようにして、動作305は、より高いエネルギに対して素子220を再較正すること、より低いエネルギに対して素子230、235、及び240を再較正すること、又はその両方を含むことができる。この文脈では、「較正エネルギ」という用語は、荷電粒子のビーム(例えば、図2の荷電粒子のビーム215)に適切な力を加えるように荷電粒子光学素子を構成する1セットの動作パラメータを指す。静電素子は、ビームのエネルギに反比例する屈折効果(相対論的効果を無視する)を適用することができ、かつ磁気素子は、ビームエネルギと粒子の速度との乗算の平方根に反比例する屈折効果(相対論的効果を無視する)を適用することができるため、誤較正された素子は、ビームの所与のエネルギに対して劣化した性能を提示する可能性がある。光学素子が集束レンズである例解的な例では、電子ビームは、レンズがわずか10eVだけ誤較正された場合、約100ナノメートルだけアンダーフォーカス又はオーバーフォーカスされ得る。
【0047】
動作305において、第1のエネルギ(例えば、E1)から第2のエネルギ(例えば、E2)への較正のシフトは、帯電した部分光学素子のエネルギスケーリング挙動を使用して実施することができる。例えば、磁気多極素子は、√(E1/E2)倍だけ、E1におけるその既知の較正をスケーリングすることによって、エネルギE1からエネルギE2に再較正することができる(相対論的効果を無視する)。較正のそのようなスケーリングの一部として、磁気素子は、磁気飽和及びヒステリシスが実質的にないように、動作し、構成され、又はそれ以外の場合には調整され得る。スケーリングはまた、ビーム偏向器及びビーム非点収差補正器にも適用することができ、光学素子の機械的な位置合わせは、このようにして改善することができる。
【0048】
従来のEELSモードでは、光学素子220、230、235、及び240は、荷電粒子ソース205によって生成される約300keVのビームエネルギに対して較正することができる。従来のEELSモードから高い損失EELSモードへの移行の一部として、動作305は、素子220を約300keVのエネルギから約310keVのエネルギに再較正することを含むことができ、荷電粒子ソース205の動作パラメータを修正することによって、対応するビームエネルギに見合った増加を伴わせる。いくつかの実施形態では、動作305は、素子230、235、及び240を約300keVのエネルギから約290keVのエネルギに再較正することを含むことができる。このようにして、約10keVを試料225に移動させる荷電粒子のビーム215の電子の一部は、検出器245上に合焦させることができる。
【0049】
動作310において、例示的なプロセス300は、荷電粒子のビームを生成することを含む。透過電子顕微鏡(TEM)の例では、動作310は、第1のエネルギ付近のエネルギを有する荷電粒子のビームをもたらすことになる1セットのパラメータに基づいて、電子エミッタ(例えば、図2の荷電粒子ソース205)に電圧を印加することを含むことができる。第1のエネルギが約300keVであり、かつ第2のエネルギが約290keVである上記の例では、動作310は、約300keVのエネルギを有する荷電粒子のビームを生成することを含む。
【0050】
動作315において、例示的なプロセス300は、検出器データを生成することを含む。検出器データは、電子ビーム(例えば、図2の荷電粒子のビーム215)をEELS分光計(例えば、図1のEELS分光計115)中に結合させることによって生成されるEELSデータを含むことができる。動作305の結果は、第2のエネルギ付近のエネルギを有する電子ビームの一部が検出器(例えば、図2の検出器245)に向かって指向され、かつ約0.02・E2よりも大きい程度だけ第2のエネルギとは異なるエネルギによって散乱された電子ビームの一部が、顕微鏡(例えば、図1のTEMカラム105、及び図2の顕微鏡201)若しくは分光計の構成要素(例えば、エネルギ分散フィルタ235)のいずれかによって、遮断されるか、又はそれ以外の場合では検出器245から離れるように再指向されることであり得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、例示的なプロセス300の1つ以上の動作は、所与の試料又は複数の試料に対してEELSスペクトルのデータセットを生成することの一部として、1回以上の反復で繰り返され得る。例えば、動作305~315は、所与の第1のエネルギ値に対して第2のエネルギ値の範囲にわたって繰り返すことができる。このようにして、第1のエネルギと第2のエネルギとの間の差は、例えば、試料中に存在する元素を検出及び識別するための試料の特徴付けの一部として(例えば、複数のエネルギにおいてEELSデータにおける内殻イオン化エッジを測定することによって)、ある範囲にわたって変化させることができる。別の例では、動作315は、試料に対する化学的及び/又は物理的データをマッピングするEELSデータキューブを生成することの一部として、試料表面上の複数の点で繰り返すことができる。この文脈において、「データキューブ」とは、EELSデータが、(例えば、元素情報を用いて)試料の表面を「マッピング」することの一部として、試料表面の画像の1つ以上の画素に参照される階層データ構造を指す。
【0052】
有利に、本明細書で説明される技術を使用して生成されたEELSデータ内の微細構造の存在により、例えば、1つ以上のモデルを、試料の結合情報、酸化状態、又は他の物理的及び/若しくは化学的特性が導出され得る検出器データにフィッティングさせることによって、局在化された構造的情報を導出することが可能になる。広帯域X線吸収微細構造(EXAFS)分析のために使用される疑似モデルを使用して、原子間間隔(例えば、EXELFSモデルを使用して)、酸化状態、バンド構造、及び/又は配位情報(例えば、結晶構造、結合など)を判定することができる。STEMモードにおけるEELSシステムの空間分解能は、単一原子のオーダーであり得るため、例示的なプロセス300を使用して生成されたEELSデータを使用して、試料表面のある領域にわたって、化学的、物理的、及び/又は構造的な情報をマッピングすることができる。
【0053】
図4Aは、本開示のいくつかの実施形態による、モリブデン箔試料についての例示的な電子エネルギ損失スペクトル(EELS)データ400及び広帯域X線吸収微細構造(EXAFS)データ405を例解するグラフである。このグラフは、微細構造を含む、約20keVを中心とするエッジとして表される内殻イオン化についてのデータを含む。グラフは、二次元セットの軸上にデータ400及び405をプロットしており、縦座標に約19.95keV~約20.25keVの範囲にわたるエネルギをとり、横座標に任意の単位(arbitrary unit、AU)でカウントをとっている。データ400及び405は、異なるデータ生成形式の結果としてそれぞれ規格化されているため、横座標は、数字なしで示されている。有利に、そのような処置は、データタイプ間に共通のエッジ位置及び微細構造の対応を強調する。示された例示的なデータでは、EELSデータ400は、EXAFSデータに存在する微細構造の特徴の位置を再現している。比較すると、同様に高いエネルギ損失でEELSデータを測定するための現行の技術は、典型的には、EELS分光計により収集された立体角の誤較正(不適切な収集角度につながる)、及びエネルギ分解能などのデータ品質に悪影響を及ぼす、TEMカラム及びEELS分光計における収差の導入という理由で、有意な信号対雑音制限がもたらされる。本明細書に説明される技術によれば、そのような誤較正及びそのような収差は、有意に低減又は除去され、検出器データの信号対雑音特性に対する有意な改善、及びエネルギ分解能の有意な改善を提供し、これらは、共に、EXELFS分析を大幅に容易にする。
【0054】
図4Bは、本開示のいくつかの実施形態による、アンチモン(Sb)試料についての例示的な電子エネルギ損失スペクトル(EELS)データ410を例解するグラフである。このデータは、約30.5keVにおけるアンチモンのKエッジに対するEELSスペクトルを示している。データ410は、約15.5μCの線量に対応する20nAのビーム電流を用いて、782秒で取得された。データ410は、本開示の実施形態によって対処されるエネルギ損失値を更に例解するために提示されている。横座標上に提示されたカウント値は、相対的に高いエネルギ損失エッジの信号対雑音特性に対する改善を例解しており、物理的構造情報を導出することができる微細構造を含む、図4Aの実証を補強する。
【0055】
図5は、本開示の実施形態500及び本技術の比較技術505についての、EELSデータを収集するために使用される異なる材料試料に対する例示的な電子線量データを例解するグラフである。図5のグラフは、縦座標にkeV単位の殻エネルギと、横座標にマイクロクーロン(μC)単位の線量と、を示している。データ500は、図1図4Bを参照して説明された技術を使用して、TEMで生成された。比較すると、データ505は、当技術分野で報告された異なる技術を使用して示されており、この技術は、5keVエネルギ損失における73ミリラジアン(mR)から10keVエネルギ損失における56mRまで、収集半角を変化させることに対応する「信号収集を改善し、かつ高エネルギアーチファクトを低減するためのカスタマイズされたレンズ構成」を説明する。このことは、図1図4Bを参照してより詳細に説明されているように、荷電粒子顕微鏡システムの荷電粒子光学素子のパラメータを修正することを含む、本明細書で説明された技術とは対照的である。図5はまた、本明細書で説明された技術を適用することができる、エネルギ値の拡大した範囲も説明する。
【0056】
現行の技術のデータ505は、好適な信号対雑音特性を有する広帯域エネルギ損失微細スペクトル(EXELFS)データを生成するために使用される有意により高い電子線量によって特徴付けられる。例解的な例では、本開示の実施形態に従って生成されたデータ500は、2.3nAのプローブ電流、100秒の総積分時間、及び約0.23μCの総電子線量を用いて、9keVでの銅エッジに対する好適なEXELFSスペクトルを生成した。対照的に、現行の技術のデータ505は、8.35keVでのNiエッジに対して、6nAのプローブ電流、1200秒の積分時間、及び7.2μCの総電子線量で、本開示のデータ500に対して31倍の増加を報告した。
【0057】
一般に、データ505は、4.96keV~11.92keVのエッジエネルギに対して1.2μC~24μCの総電子線量の増加を報告した。比較すると、本開示のデータ500は、9keVにおける0.23μCから、20keVにおける5.12μC(図4Aを参照して説明されたモリブデンエッジに対応する)まで、30.4keVにおける15.64μC(図4Bを参照して説明されたアンチモンkエッジに対応する)までの範囲にわたる。電子ビームのエネルギが試料の化学的、物理的、及び/又は構造的特性を変化させ得る、線量に敏感な試料の場合、電子線量の低減は、有意な改善を示し、本技術を微量分析のために有意により適用可能にする。有利に、電子線量の低減は、より高いビームエネルギ(例えば、図2のE1)を使用することを可能にし、EXELFSデータの信号対雑音特性を更に改善する。
【0058】
先行する説明では、様々な実施形態について説明した。説明の目的で、実施形態の完全な理解を提供するために、具体的な構成及び詳細について記載してきた。しかしながら、実施形態は、具体的な詳細がなくても実施され得ることが当業者には明らかであろう。更には、説明される実施形態を不明瞭にしないように、周知の特徴が省略又は簡略化されている場合がある。本明細書に説明される例示的な実施形態は、電子顕微鏡システム、及び特に走査型透過電子顕微鏡システムを中心としているが、これらは、非限定的な例解的な実施形態として意図される。本開示の実施形態は、そのような実施形態に限定されず、むしろ、他の態様のなかでも、化学的、生物学的、物理学的、構造的、又は他の特性を判定するために、幅広い材料試料を分析することができる分析機器システムを対象とすることが意図される。したがって、本開示の実施形態は、集束イオンビームシステム、走査型電子顕微鏡システム、電子ビーム微量分析システムなどを含む、荷電粒子機器をより広く含む。
【0059】
本開示のいくつかの実施形態は、1つ以上のデータプロセッサ及び/又は論理回路を含むシステムを含む。いくつかの実施形態では、システムは、命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含み、命令は、1つ以上のデータプロセッサ上で実行されたときに、1つ以上のデータプロセッサ及び/又は論理回路に、本明細書に開示される1つ以上の方法の一部若しくは全部、及び/又は1つ以上のプロセス若しくはワークフローの一部若しくは全部を実施させる。本開示のいくつかの実施形態は、1つ以上のデータプロセッサ及び/又は論理回路に、本明細書で開示される1つ以上の方法の一部若しくは全部、及び/又は1つ以上のプロセスの一部若しくは全部を実施させるように構成された命令を含む、非一時的機械可読記憶媒体において有形で具現化されたコンピュータプログラム製品を含む。
【0060】
使用されている用語及び表現は、限定の用語としてではなく説明の用語として使用され、そのような用語及び表現を使用するに際して、図示及び説明される特徴又はその一部分のいかなる同等物も除外する意図はないが、請求される範囲内で様々な修正が可能であることが理解される。したがって、本開示は、具体的な実施形態及び任意選択的な特徴を含むが、本明細書で開示される概念の修正及び変形が、当業者によってなされることが可能であり、そのような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲内にあるとみなされることが理解されるべきである。
【0061】
用語が明示的な定義なしに使用される場合、その用語が荷電粒子顕微鏡システムの分野又は他の関連分野における特別な意味及び/又は具体的な意味を有しない限り、その語の通常の意味が意図されることを理解されたい。「約」又は「実質的に」という用語は、記述された特性からの偏差を示すために使用され、その偏差の範囲内では、説明されている構造の対応する機能、特性、又は属性への影響がほとんどない又は全くない。寸法パラメータが別の寸法パラメータに「実質的に等しい」と説明されている例解された例では、「実質的に」という用語は、比較されている2つのパラメータが、製造公差又はシステムの動作に固有の信頼区間などの許容限界内で等しくない可能性があることを反映することが意図される。同様に、位置合わせ又は角度配向などの幾何学的パラメータが、「約」垂直、「実質的に」垂直、又は「実質的に」平行として説明される場合、「約」又は「実質的に」という用語は、位置合わせ又は角度配向が、許容限界内で、厳密に記述された条件と異なり得る(例えば、厳密に垂直ではない)ことを反映することが意図される。寸法(例えば、直径、長さ、幅など)及びエネルギなどの数値について、「約」という用語は、記述される値から最大で±30%の偏差を表すものと理解することができる。例えば、「約10mm」の寸法は、7mm~13mmの寸法を表すことができる。
【0062】
本明細書は、例示的な実施形態を提供するものであり、本開示の範囲、適用可能性、又は構成を限定することを意図するものではない。むしろ、例示的な実施形態に続く説明は、当業者に、様々な実施形態を実装することを可能にする説明を提供する。添付の特許請求の範囲に記載されている趣旨及び範囲から逸脱することなく、要素の機能及び構成に様々な変更を加えることができることを理解されたい。実施形態の完全な理解を提供するために、具体的な詳細が本明細書で与えられる。しかしながら、実施形態は、これらの具体的な詳細なしで実施され得ることが理解されるであろう。実施形態を不必要な詳細で不明瞭にしないために、例えば、本開示の具体的なシステム構成要素、システム、プロセス、及び他の要素が、概略図の形態で示され得るか、又は例解図から省略され得る。他の場合、周知の回路、プロセス、構成要素、構造、及び/又は技術が、不必要な詳細を伴わずに示され得る。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
【外国語明細書】