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特開2024-152736ホログラフィック光学素子およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152736
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】ホログラフィック光学素子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/32 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
G02B5/32
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024119641
(22)【出願日】2024-07-25
(62)【分割の表示】P 2021562862の分割
【原出願日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】10-2019-0121206
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スン・ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ス・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ヨン・チュ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・ウォン・ファン
(57)【要約】
【課題】位置に応じて高さが互いに異なるホログラフィック格子を有するホログラフィック光学素子およびこれを容易に形成できる製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の実施例は、(a)基材の一面に感光樹脂を塗布して感光基材を形成するステップと、(b)前記感光基材の一面および他面にそれぞれレーザ光を照射してホログラフィック格子を記録するステップと、を含み、前記(a)ステップは、所定の方向に沿って前記感光樹脂の塗布層の高さが異なるように前記感光樹脂を塗布する、ホログラフィック格子を備えるホログラフィック光学素子の製造方法を提供する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基材の一面に感光樹脂を塗布して感光基材を形成するステップと、
(b)前記感光基材の一面および他面にそれぞれレーザ光を照射してホログラフィック格子を記録するステップと、を含み、
前記(a)ステップは、
所定の方向に沿って前記感光樹脂の塗布層の高さが異なるように前記感光樹脂を塗布し、
前記ホログラフィック格子は、前記感光樹脂の塗布層の全高さにわたって記録され、前記ホログラフィック格子の幅は互いに同一である、ホログラフィック格子を備え、
前記基材は導光板に付着可能なフィルムタイプであり、
前記(a)ステップは、
(a2-1)前記基材を前記感光樹脂の収容された容器に浸漬するステップと、
(a2-2)前記基材を一方向に移動させて前記容器から離脱させるステップと、を含み、
前記(a2-2)ステップは、前記基材の移動速度を変化させて前記基材を前記容器から離脱させる、または
(a4)地面に対して前記基材の一面を傾けた状態で前記感光樹脂を提供して前記感光樹脂を乾燥させる、透過型ホログラフィック光学素子の製造方法。
【請求項2】
前記感光樹脂の塗布層は、所定の方向に沿って次第に高さが高くなるように形成される、請求項1に記載の透過型ホログラフィック光学素子の製造方法。
【請求項3】
基材の一面に形成される感光樹脂塗布層と、該感光樹脂塗布層に記録される複数のホログラフィック格子とを含む透過型ホログラフィック光学素子において、
前記感光樹脂塗布層は、所定の方向に沿って高さが異なるように形成され、
前記ホログラフィック格子は、前記所定の方向に沿って高さが異なるように形成され、
前記ホログラフィック格子は、前記感光樹脂塗布層の全高さにわたって記録され、前記ホログラフィック格子の幅は互いに同一であり、
前記感光樹脂塗布層の高さの最小値は5umであり、最大値は15umであり、
前記基材は導光板に付着可能なフィルムタイプである、ことを特徴とする透過型ホログラフィック光学素子。
【請求項4】
前記感光樹脂塗布層は、前記所定の方向に沿って次第に高さが高くなるように形成され、
前記ホログラフィック格子は、前記所定の方向に沿って次第に高さが高くなるように形成される、請求項3に記載の透過型ホログラフィック光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2019年9月30日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2019-0121206号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本発明に組み込まれる。本発明は、ホログラフィック光学素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、拡張現実(AR:Augmented Reality)、複合現実(MR:Mixed Reality)、または仮想現実(VR:Virtual Reality)を実現するディスプレイ装置への関心が高まるにつれ、これを実現するディスプレイ装置に関する研究が活発に行われる傾向にある。拡張現実、複合現実、または仮想現実を実現するディスプレイユニットは、光の波動的性質に基づく回折現象を利用する回折導光板を含んでいる。
【0003】
このような回折導光板としては、主に、複数の凹凸格子パターンを有する複数の回折光学素子を備えるタイプと、感光材料にホログラフィック格子パターンが記録された透過型ホログラフィック光学素子を備えるタイプとが用いられる。
【0004】
図1は、透過型ホログラフィック光学素子を備える回折導光板の一形態を概略的に示す図である。
【0005】
回折導光板1は、外部光源(図示せず)または導光板2の他の領域から提供された光Lを内部反射により一側Aから他側Bへガイドする導光板2と、導光板2の一面2aに提供され、導光板2の内部でガイドされる光の一部Laを回折によって異なる方向に指向させるホログラフィック光学素子3とを備える。
【0006】
ホログラフィック光学素子3は、感光材料がコーティングされた感光基材の両面側にレーザ光が干渉されて複数のホログラフィック格子3aが記録されて提供される。
【0007】
図1に示された形態の回折導光板1における複数のホログラフィック格子3aは、すべて同一の幅を有するように構成されているが、一般的に、ホログラフィック格子3aによる光の回折効率は格子パターン3aの幅に比例する傾向がある。ここで、回折効率は、ホログラフィック光学素子3に到達した光Lに対する、回折される光Laの比率として定義される。
【0008】
一方、導光板2の内部でガイドされる光量は、ホログラフィック光学素子3を介した回折によって異なる方向に指向されて消失する回折光Laのため、一側Aから他側Bへいくほど減少する。この時、ホログラフィック格子3aによる光の回折効率が各ホログラフィック格子3aごとにすべて同一であれば、一側Aから他側Bへいくほどホログラフィック格子3aに到達する光量は減少するのに対し、回折効率はすべて同一であるので、回折光Laの光量も一側Aから他側Bへいくほど減少するほかない。すなわち、ディスプレイのために、ホログラフィック格子3aによって回折された回折光Laの均一度が低下する問題があった。
【0009】
図2は、透過型ホログラフィック光学素子を備える回折導光板の他の形態を概略的に示す図である。
【0010】
上記の一形態における回折導光板1において回折光Laの均一度が低下する問題を改善するために、他の形態における回折導光板1’は、複数のホログラフィック格子3a’の幅が一側Aから他側Bへいくほど増加するように構成される。これにより、ホログラフィック格子3a’の回折効率は一側Aから他側Bへいくほど増加するが、一側Aから他側Bへいくほどホログラフィック格子3a’に到達する光量が減少しても、回折効率が次第に向上するので、回折光La’の光量は、一側Aから他側Bへいっても、実質的に同一に実現することができる。
【0011】
一方、図2に示されるような、一側Aから他側Bへいくほど格子パターン3a’の幅が増加するホログラフィック光学素子3’を形成するために、一般的に、次のようなレーザ光による記録工程が用いられる。
【0012】
図3は、透過型ホログラフィック光学素子を製造するためのレーザ光の記録工程の一例を簡略に示す図である。
【0013】
まず、基材31の一面に感光樹脂32が塗布された感光基材30を用意する。基材31は、一例として、後に導光板に付着してもよいフィルムタイプで提供される。基材31の他の例として、光を案内できる導光板として直接提供されてもよい。
【0014】
そして、感光基材30の一面30aおよび他面30bにそれぞれレーザ光L1、L2を照射してホログラフィック格子を記録する。ここで、ホログラフィック格子の幅を感光基材30の一側Aから他側Bへいくほど増加させるために、レーザ光L1、L2の光量および/または照射時間を一側Aから他側Bへいくほど増加させる必要がある。ただし、このような、位置ごとにレーザ光L1、L2の光量および/または照射時間を増加させる工程は、複雑であり、位置に応じて連続的に変調することも困難な点があった。
【0015】
前述した背景技術は発明者が本発明の実施例の導出のために保有しているか、導出過程で習得した技術情報であって、必ずしも本発明の実施例の出願前に一般の公衆に公開された公知技術であるとは限らない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、位置に応じて高さが互いに異なるホログラフィック格子を有するホログラフィック光学素子およびこれを容易に形成できる製造方法を提供することである。
【0017】
ただし、本発明が解決しようとする課題は上述した課題に制限されず、述べていないさらに他の課題は下記の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の実施例は、(a)基材の一面に感光樹脂を塗布して感光基材を形成するステップと、(b)前記感光基材の一面および他面にそれぞれレーザ光を照射してホログラフィック格子を記録するステップと、を含み、前記(a)ステップは、所定の方向に沿って前記感光樹脂の塗布層の高さが異なるように前記感光樹脂を塗布する、ホログラフィック格子を備えるホログラフィック光学素子の製造方法を提供する。
【0019】
本実施例において、前記感光樹脂の塗布層は、所定の方向に沿って次第に高さが高くなるように形成される。
【0020】
本実施例において、前記(a)ステップは、複数の位置で前記基材の一面に前記感光樹脂を噴射し、且つ位置ごとに前記感光樹脂の噴射量を異ならせることができる。
【0021】
本実施例において、前記(a)ステップは、(a-1)前記基材を前記感光樹脂の収容された容器に浸漬するステップと、(a-2)前記基材を一方向に移動させて前記容器から離脱させる(取り出す)ステップと、を含み、前記(a-2)ステップは、前記基材の移動速度を変化させて前記基材を前記容器から離脱させることができる。
【0022】
本実施例において、前記(a)ステップは、(a-1)前記基材と補助基材との間に前記感光樹脂を提供するステップと、(a-2)前記基材および補助基材のうち少なくとも1つを移動させるステップと、を含み、前記(a-2)ステップは、前記基材および前記補助基材のいずれか一方に対する他方の相対移動速度を変化させて前記少なくとも1つを移動させることができる。
【0023】
本実施例において、前記(a)ステップは、地面に対して前記基材の一面を傾けた状態で前記感光樹脂を提供して前記感光樹脂を乾燥させることができる。
【0024】
他の実施例において、基材の一面に形成される感光樹脂塗布層と、該感光樹脂塗布層に記録される複数のホログラフィック格子とを含むホログラフィック光学素子において、感光樹脂塗布層が所定の方向に沿って高さが異なるように形成され、前記ホログラフィック格子は、前記所定の方向に沿って高さが異なるように形成されるホログラフィック光学素子を提供する。
【0025】
他の実施例において、感光樹脂塗布層が所定の方向に沿って次第に高さが高くなるように形成され、前記ホログラフィック格子は、前記所定の方向に沿って次第に高さが高くなるように形成される。
【0026】
他の実施例において、ホログラフィック格子が感光樹脂塗布層の全高さにわたって記録され、前記ホログラフィック格子の幅は互いに同一であってもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の実施例によれば、位置に応じて高さが互いに異なるホログラフィック格子を容易に形成することができる。
【0028】
また、本発明の実施例によれば、感光樹脂塗布層が所定の方向に沿って高さが異なるようにし、この感光樹脂塗布層にホログラフィック格子を記録することにより、ホログラフィック光学素子の回折効率を調節することができる。
【0029】
さらに、回折導光板に、本発明の実施例によるホログラフィック光学素子を適用する場合、回折導光板の一側から他側へいくほどホログラフィック格子に到達する光量が減少しても、ホログラフィック光学素子の回折効率が次第に増加するように構成すれば、回折導光板における回折光の光量が実質的に同一に実現できる。
【0030】
本発明の効果は上述した効果に限定されるものではなく、述べていない効果は本願明細書および添付した図面から当業者に明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】透過用ホログラフィック光学素子を備える回折導光板の一形態を概略的に示す図である。
図2】透過型ホログラフィック光学素子を備える回折導光板の他の形態を概略的に示す図である。
図3】透過型ホログラフィック光学素子を製造するためのレーザ光の記録工程の一例を簡略に示す図である。
図4】本発明の実施例による透過型ホログラフィック光学素子を備える回折導光板の一形態を概略的に示す図である。
図5】本発明の実施例によるホログラフィック光学素子の製造方法を説明するための図である。
図6】本発明の実施例によるホログラフィック光学素子の製造方法を説明するための図である。
図7】本発明の実施例によるホログラフィック光学素子の製造方法を説明するための図である。
図8】第1実施例による基材の一面に感光樹脂塗布層を形成する方法を概略的に示す図である。
図9】第2実施例による基材の一面に感光樹脂塗布層を形成する方法を概略的に示す図である。
図10】第3実施例により基材の一面に感光樹脂塗布層を形成する方法を概略的に示す図である。
図11】第4実施例により基材の一面に感光樹脂塗布層を形成する方法を概略的に示す図である。
図12】本発明の実施例および比較例の回折効率を比較するグラフである。
図13】本発明の実施例および比較例の光量を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、添付した図面とともに詳細に後述する実施例を参照すれば明確になるであろう。しかし、本発明は以下に開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現され、単に本実施例は本発明の開示が完全になるようにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇によってのみ定義される。
【0033】
一方、本明細書で使われた用語は実施例を説明するためのものであり、本発明を制限しようとするものではない。本明細書において、単数形は、文言で特に言及しない限り、複数形も含む。明細書で使われる「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」は、言及された構成要素、段階、動作および/または素子は、1つ以上の他の構成要素、段階、動作および/または素子の存在または追加を排除しない。第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使われるが、構成要素は用語によって限定されてはならない。用語は1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使われる。
【0034】
図4は、本発明の実施例による透過型ホログラフィック光学素子を備える回折導光板の一形態を概略的に示す図である。
【0035】
本発明の実施例による回折導光板10は、導光板11と、導光板11の一面11aに提供されたホログラフィック光学素子12とを備えることができる。
【0036】
ホログラフィック光学素子12は、感光樹脂塗布層12bの両面側にレーザ光が干渉され、複数のホログラフィック格子12aが記録されて提供される。
【0037】
ホログラフィック光学素子12の感光樹脂塗布層12bは、一側Aから他側Bへいくほど高さが高くなるように構成されており、図4に示されるように、ホログラフィック格子12aが感光樹脂塗布層12bの全高さにわたって記録されているので、ホログラフィック格子12aも、感光樹脂塗布層12bと同様に、一側Aから他側Bへいくほど高さが高くなるように実現される。
【0038】
図4に示された回折導光板10における複数のホログラフィック格子12aは、一側Aから他側Bへいくほど高さが高くなるように構成されているが、ホログラフィック格子12aによって光が回折される回折効率は、ホログラフィック格子12aの高さが増加するに伴って増加可能である。したがって、一側Aから他側Bへいくほどホログラフィック格子12aに到達する光量が減少しても、回折効率が次第に増加するので、回折光La’’の光量は、一側Aから他側Bへいっても、実質的に同一に実現できる。
【0039】
本発明の一実施例によるホログラフィック光学素子の製造方法は、位置に応じて高さが異なる複数のホログラフィック格子が形成されたホログラフィック光学素子を製造するための方法に関する。例えば、本実施例により製造されたホログラフィック光学素子は、図4に示されるように、一側Aから他側Bへいくほど複数のホログラフィック格子12aの高さが高くなるように構成される。
【0040】
図5~7は、本発明の一実施例によるホログラフィック光学素子の製造方法を説明するための図である。
【0041】
本発明の一実施例によるホログラフィック光学素子の製造方法は、(a)基材の一面に感光樹脂を塗布して感光基材を形成するステップと、(b)感光基材の一面および他面にそれぞれレーザ光を照射してホログラフィック格子を記録するステップと、を含むことができる。
【0042】
前記(a)ステップは、基材51の一面に感光樹脂を塗布して感光樹脂塗布層52を形成することにより、感光樹脂塗布層52を含む感光基材50を形成するステップである。基材51は、一例として、後に導光板に付着してもよいフィルムタイプで提供される。基材51の他の例として、光を案内できる導光板として直接提供されてもよい。基材51が導光板の場合、高屈折特性を有するガラス基板またはプラスチック基板が用いられる。感光樹脂としては、フォトポリマー(photopolymer)、フォトレジスト(photoresist)、シルバーハライドエマルジョン(silver halide emulsion)、重クロム酸ゼラチン(dichromated gelatin)、フォトグラフィックエマルジョン(photographic emulsion)、フォトサーモプラスチック(photothermoplastic)または光回折(photorefractive)材料などが使用できる。
【0043】
ここで、(a)ステップは、所定の方向に沿って感光樹脂塗布層52の高さが異なるように感光樹脂52’を塗布することができる。感光樹脂塗布層52は、図5に示されるように、連続的に形成された感光樹脂塗布層52の高さh’が一側Cから他側Dへいくほど次第に高くなるように形成されてもよい。
【0044】
図6および7を参照すれば、前記(b)ステップは、感光基材50の一面50aおよび他面50bにそれぞれレーザ光L1、L2を照射してホログラフィック格子61aを記録するステップである。図6を参照すれば、図5に示された形態の一側Cから他側Dへいくほど樹脂塗布層52の高さh’が増加する形態である感光基材50の一面50aおよび他面50bにそれぞれレーザ光L1、L2を照射する。ここで、感光基材50の一面50aおよび他面50bに照射される第1レーザ光L1および第2レーザ光L2は、レーザ光の種類ごとに位置に応じた光量および/または照射時間を同一にすることで、図7に示されるように、ホログラフィック格子61aの幅を実質的に同一に形成することができる。一方、感光樹脂塗布層52の高さは、一側Cから他側Dへいくほど高く構成されているため、感光樹脂塗布層52に記録されるホログラフィック格子61aの高さも、一側Cから他側Dへいくほど高く形成されたホログラフィック光学素子61を製造することができる。ここで、ホログラフィック格子61aの高さは、ホログラフィック格子61a間の底面からホログラフィック格子61aの上面までの高さを意味することができる。そして、ホログラフィック格子61a間の底面は、基材51の一面と同一の高さであってもよい。したがって、ホログラフィック格子61aは、基材51の一面から異なる高さを有するように形成される。
【0045】
図8は、第1実施例による基材の一面に感光樹脂塗布層を形成する方法を概略的に示す図である。
【0046】
図8を参照すれば、前記(a)ステップは、複数の位置で基材51の一面に感光樹脂52’を噴射し、且つ位置ごとに感光樹脂52’の噴射量を異ならせることができる。この場合、複数の噴射装置80を複数配列して、各噴射装置80による感光樹脂の噴射量を異ならせて制御することもでき、噴射装置80を1つのみ用いる場合であっても、噴射装置80あるいは基材51を移動させていきながら位置ごとに噴射装置80による感光樹脂の噴射量を異ならせて制御することもできる。
【0047】
図9は、第2実施例による基材の一面に感光樹脂塗布層を形成する方法を概略的に示す図である。
【0048】
図9を参照すれば、前記(a)ステップは、(a-1)基材51を感光樹脂52’の収容された容器90に浸漬するステップ(図9(a)および(b)参照)と、(a-2)基材51を一方向に移動させて容器90から離脱させるステップ(図9(c)参照)と、を含むことができる。ここで、容器90には感光樹脂52’が溶液状態で提供される。ここで、(a-2)ステップは、基材51の移動速度を変化させて基材51を容器90から離脱させることができる。例えば、基材51を容器90から離脱させる間に次第に基材51の移動速度を増加させれば、基材51の上部51uから下部51dへいくほど感光樹脂塗布層52の高さは次第に低く形成される。他の例として、基材51を容器90から離脱させる間に次第に基材51の移動速度を減少させれば、基材51の上部51uから下部51dへいくほど感光樹脂塗布層52の高さは次第に高く形成される。
【0049】
図10は、第3実施例により基材の一面に感光樹脂塗布層を形成する方法を概略的に示す図である。
【0050】
図10を参照すれば、前記(a)ステップは、(a-1)基材51と補助基材100との間に感光樹脂を提供するステップと、(a-2)基材51および補助基材100のうち少なくとも1つを移動させるステップと、を含むことができる。ここで、感光樹脂52’は、基材51と補助基材100との間に溶液状態で提供される。ここで、(a-2)ステップは、基材51および補助基材100のいずれか一方に対する他方の相対移動速度を変化させて基材51および補助基材100の少なくとも1つを移動させることができる。例えば、基材51および補助基材100の相対移動速度を増加させれば、補助基材100の移動方向に沿って基材51上の感光樹脂塗布層52の高さは次第に低く形成される。他の例として、基材51および補助基材100の相対移動速度を減少させれば、補助基材100の移動方向に沿って基材51上の感光樹脂塗布層52の高さは次第に高く形成される。
【0051】
上記のような第3実施例により基材51の一面に感光樹脂塗布層52を形成する方法は、補助基材100と、該補助基材100を基材51に対して相対移動させるメカニズムを機構化し制御するのに容易で、大量生産のための工程として好適であり得る。
【0052】
図11は、第4実施例により基材の一面に感光樹脂塗布層を形成する方法を概略的に示す図である。
【0053】
図11を参照すれば、前記(a)ステップは、地面Eに対して基材51の一面51aを傾けた状態で感光樹脂52’を提供し、且つ地面Eに対する基材51の一面の傾きを変化させて感光樹脂を乾燥させることができる。まず、地面Eに対して基材51の一面51aを傾けた状態で感光樹脂52’の溶液がキャスティングされると、感光樹脂52’の上面は、図11(a)に示されるように、地面Eと平行な状態を維持することができる。この時、基材51の一面51aが地面Eに対して傾いているので、基材51の一面51aと感光樹脂52’の上面との間の距離は、一側Cから他側Dへいくほど次第に増加した形態であってもよい。この状態で、感光樹脂52’を乾燥させると、基材51の一面51aと感光樹脂52’の上面との間の距離が一側Cから他側Dへいくほど次第に増加した形態で感光樹脂塗布層52が形成される。図11(b)に示されるように、基材51の一面51aを地面Eと平行に整列すれば、感光樹脂塗布層52は、基材51の一側Cから他側Dへいくほどその高さが増加する形態を呈するようになる。
【0054】
本発明の実施例によれば、位置に応じて高さが互いに異なるホログラフィック格子を容易に形成することができる。
【実施例0055】
図12は、本発明の実施例および比較例の回折効率を比較するグラフである。
【0056】
このために、感光樹脂塗布層の両面にそれぞれレーザ光を照射してホログラフィック格子を記録した。波長532nmおよび出力250mWのレーザ光を用い、感光樹脂塗布層に照射される基準光と物体光はBR(Beam ratio)が1となるようにパワーを同一に2mWとした。レーザ光を感光樹脂塗布層に0度と60度の角度でそれぞれ入射させてホログラフィック格子を記録し、記録時間は10秒と同一に行った。
【0057】
この時、実施例1では、本発明の実施例により感光樹脂塗布層の高さが増加するように構成した感光基材を用い、比較例1では、感光樹脂塗布層の高さが一定である感光基材を用いた。
【0058】
実施例1および比較例1のホログラフィック光学素子は、一側から他側へ、一定の間隔で測定位置を4ヶ所(#1~#4)決めて、各地点における回折光と透過光の強度を測定した。回折光と透過光の強度は、パワーメーターを用いて532nmに相当する光量を測定して得た。
【0059】
回折光と透過光の強度を用いて、下記の数式で感光樹脂塗布層の高さ、すなわち、ホログラフィック格子の高さに応じた相対回折効率を調べた。
【0060】
<式>
【0061】
相対回折効率={回折光の強度/(回折光の強度+透過光の強度)}X100
【0062】
比較例および実施例の値を比較する下記表1をみると、測定位置に応じて感光樹脂塗布層の高さが変化する実施例1では、高さに応じて回折効率が変化することを確認することができ、より具体的には、高さに比例して回折効率が増加することを確認することができる。これに対し、感光樹脂塗布層の高さが一定である比較例1では、高さに応じて回折効率値が実質的に変化なく同等レベルにとどまっている。
【0063】
【表1】
【0064】
感光樹脂塗布層の高さ、言い換えれば、記録されたホログラフィック格子の高さに応じて光学素子の回折効率を調節可能になるので、これを利用してホログラフィック光学素子の領域に応じた回折効率を調節することができる。
【0065】
したがって、図4に示された回折導光板10のように、複数のホログラフィック格子12aを一側Aから他側Bへいくほど高さが高くなるように構成することにより、ホログラフィック光学素子12の回折効率が次第に増加するように構成すれば、ホログラフィック光学素子12に到達する光量が減少しても、回折導光板10における回折光の光量が実質的に同一に実現できる。
【0066】
図13は、上記のような回折導光板における本発明の実施例および比較例の出射光量の差を確認できるグラフである。
【0067】
実施例2は、本発明の実施例により感光樹脂塗布層の高さが増加するように構成された感光基材にホログラフィック格子を記録して回折導光板を構成し、図4に示されるように、導光板上に一側から他側へいくほど高さが増加する複数のホログラフィック格子が記録された形状からなる。比較例2は、図1に示されるように、導光板上に高さが一定である感光樹脂塗布層に複数のホログラフィック格子が記録されて回折導光板を構成した。実施例2および比較例2でホログラフィック格子を記録する方法は、前記実施例1および比較例1と同様の方法で行い、且つ測定位置に応じた感光樹脂塗布層の高さは下記表のように異なるように構成した。
【0068】
実施例2および比較例2の回折導光板は、一側から他側へ、一定の間隔をおいて測定位置を6ヶ所(#1~#6)決めて、各地点における感光樹脂塗布層の高さと出射光量を測定した。出射光量は、導光板に100uWの光量の532nmの入射光を入射させて、導光板の一側から他側へ進行する間に、各測定位置でホログラフィック光学素子を介して出射される出射光の光量を測定して得た。実施例2および比較例2の測定位置ごとの感光樹脂塗布層の高さと出射光量は、下記表2の通りである。
【0069】
【表2】
【0070】
図13により実施例2および比較例2を比較すれば、感光樹脂塗布層の高さを次第に高くする実施例2では、測定位置にかかわらず出射光の光量が実質的に同一に維持されることを確認することができる。これに対し、感光樹脂塗布層の高さが一定に維持される場合、出射光量が一側から他側へいくほど急激に減少することを確認することができる。
【0071】
たとえ、本発明が上述した好ましい実施例に関して説明されたが、発明の要旨と範囲を逸脱することなく多様な修正や変形をすることが可能である。したがって、添付した特許請求の範囲には、本発明の要旨に属する限り、かかる修正や変形を含む。
【符号の説明】
【0072】
2a 一面
3,3a,3a’ ホログラフィック光学素子
11a 一面
12 ホログラフィック光学素子
12a ホログラフィック格子
12b 感光樹脂塗布層
30 基材
30a 一面
30b 他面
31 基材
32 感光樹脂
50 感光基材
50a 一面
50b 他面
51 基材
51a 一面
52 樹脂塗布層
52’ 感光樹脂
61 ホログラフィック光学素子
61a ホログラフィック格子
90 容器
100 補助基材
E 地面
L 光
L1 レーザ光
L2 レーザ光
La 光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【外国語明細書】