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特開2024-152739横モードが抑制された単一ポート共振器のためのトランスデューサ構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152739
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】横モードが抑制された単一ポート共振器のためのトランスデューサ構造
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/145 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
H03H9/145 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024121382
(22)【出願日】2024-07-26
(62)【分割の表示】P 2022538955の分割
【原出願日】2020-12-28
(31)【優先権主張番号】1915741
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
【住所又は居所原語表記】Parc Technologique des fontaines chemin Des Franques 38190 Bernin, France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】バランドラス, シルヴァイン
(72)【発明者】
【氏名】クルジョン, エミリエ
(72)【発明者】
【氏名】バーナード, フローレント
(57)【要約】
【課題】新規なトランスデューサ構造を提供する。
【解決手段】本発明は、横モード抑制手段を備えたトランスデューサ構造に関し、トランスデューサ構造は、圧電性基板(120、170)と、その上に形成された一対の相互噛合櫛形電極(102、112)を具備する。第1櫛形電極(102)が、第1バスバー(108)と、短いダミー電極フィンガー(106)と交互配置された複数の電極フィンガー(104)を備え、第2櫛形電極(112)が、第2バスバー(118)と、複数の電極フィンガー(114)を備え、第1バスバーのダミー電極フィンガー(106)が、第2バスバーの電極フィンガー(114)に対して対向しており、ガイド波の位相速度が、電極フィンガー(104、114)の下方の中央領域(136)におけるガイド波の位相速度と比較して、より小さくなるように選択された、横モード抑制層(122、132)をさらに備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に単一ポート共振器のための、横モード抑制手段を備えたトランスデューサ構造であって、
圧電性基板(120、420)と、
前記圧電性基板(120、170)上に形成された少なくとも一対の相互噛合櫛形電極(102、112)であり、第1櫛形電極(102)が、第1バスバー(108)と、前記第1バスバー(108)から延在している複数の短いダミー電極フィンガー(106)と交互配置された前記第1バスバー(108)から延在している複数の電極フィンガー(104)と、を備え、第2櫛形電極(112)が、第2バスバー(118)と、前記第2バスバー(118)から延在している複数の電極フィンガー(114)と、を備え、前記第1バスバー(108)の前記複数のダミー電極フィンガー(106)が、前記第2バスバー(118)の前記複数の電極フィンガー(114)に対して対向しているとともに、複数の第1ギャップ(110a)の分だけ、前記複数の電極フィンガー(114)から離間している、少なくとも一対の相互噛合櫛形電極(102、112)と、を具備するトランスデューサ構造において、
前記第1ギャップ(110a)の下方に部分的に設けられた横モード抑制層(122、132、222、232、422、432)であり、前記横モード抑制層(122、132、222、232、422、432)の領域におけるガイド波の位相速度が、前記第1電極及び前記第2電極(102、112)の交互配置された前記複数の電極フィンガー(104、114)の下方の中央領域(136)における前記ガイド波の位相速度と比較して、より小さくなるように選択された、横モード抑制層(122、132、222、232、422、432)をさらに備えることを特徴とする、トランスデューサ構造。
【請求項2】
前記横モード抑制層(122、132、222、232、422、432)が、前記複数の第1ギャップ(110a)のそれぞれの下方に延在している、請求項1に記載のトランスデューサ構造。
【請求項3】
前記第2櫛形電極(112)が、前記複数の電極フィンガー(114)と交互配置された複数の短いダミー電極フィンガー(116)をさらに備え、前記第2バスバー(118)の前記複数のダミー電極フィンガー(116)が、前記第1バスバー(108)の前記複数の電極フィンガー(104)に対して対向しているとともに、複数の第2ギャップ(110b)の分だけ、前記複数の電極フィンガー(104)から離間しており、前記複数の第2ギャップ(110b)の下方に少なくとも部分的に延在している第2横モード抑制層(122、132、222、232、422、432)であり、前記第2横モード抑制層(122、132、222、232、422、432)の領域におけるガイド波の位相速度が、前記第1櫛形電極及び前記第2櫛形電極(102、112)の交互配置された前記複数の電極フィンガー(104、114)の下方の前記中央領域(136)における、さらに前記第1及び第2横モード抑制層(122、132、222、232、422、432)間における、前記ガイド波の位相速度と比較して、より小さくなるように選択された、第2横モード抑制層(122、132、222、232、422、432)をさらに備える、請求項1又は2に記載のトランスデューサ構造。
【請求項4】
前記第2横モード抑制層(122、132、222、232、422、432)が、すべての前記複数の第2ギャップ(110b)の下方に延在している、請求項3に記載のトランスデューサ構造。
【請求項5】
前記第1横モード抑制層(122、132、222、232、422、432)が少なくとも部分的に前記第1バスバー(108)にまで延在している、及び/又は、前記第2横モード抑制層(122、132、222、232、422、432)が少なくとも部分的に前記第2バスバー(118)にまで延在している、請求項1~4のいずれか一項に記載のトランスデューサ構造。
【請求項6】
前記第1横モード抑制層(122、132、222、232、422、432)が少なくとも部分的に又は少なくとも全体的に前記第1バスバー(108)の下方にさらに延在している、及び/又は、前記第2横モード抑制層(122、132、222、232、422、432)が少なくとも部分的に又は少なくとも全体的に前記第2バスバー(118)の下方に延在している、請求項1~5のいずれか一項に記載のトランスデューサ構造。
【請求項7】
前記第1及び/又は第2横モード抑制層(122、132、222、232、422、432)が、前記トランスデューサ構造の前記ガイド波の前記位相速度を変調するために、前記複数の相互噛合櫛形電極(102、112)の下方の前記中央領域(136)における前記圧電性基板(120、420)の残部と比較して、異なるドーピング量を有し、特に、異なる前記ドーピング量は、Ti量である、請求項1~6のいずれか一項に記載のトランスデューサ構造。
【請求項8】
前記第1横モード抑制層(122、132、222、232、422、432)及び/又は前記第2横モード抑制層(122、132、222、232、422、432)が、パッシベーション層(246、248)を備え、特に誘電体パッシベーション層を備え、より特にはSiO層を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のトランスデューサ構造。
【請求項9】
前記パッシベーション層(246)が、前記圧電性基板(120、420)内へと少なくとも部分的に埋設されている、請求項8に記載のトランスデューサ構造。
【請求項10】
前記第1及び第2横モード抑制層(122、132、222、232、422、432)が、前記複数の相互噛合櫛形電極(102、112)の中心線に関して鏡面対称である、請求項3~9のいずれか一項に記載のトランスデューサ構造。
【請求項11】
前記第1横モード抑制層及び前記第2横モード抑制層(122、132、222、232、422、432)が、異なる形状を有している、請求項3~9のいずれか一項に記載のトランスデューサ構造。
【請求項12】
前記圧電性基板(120、420)が、ベース基板(144、444)上に圧電層(140、440)を備える複合基板である、請求項1~11のいずれか一項に記載のトランスデューサ構造。
【請求項13】
前記圧電層(140、440)の厚さが、λを前記トランスデューサ構造(100)の動作波長とした時に、前記波長λの値よりも小さく、特に前記波長λの値の0.7倍よりも小さく、より特には前記波長λの値の0.5倍よりも小さい、請求項12に記載のトランスデューサ構造。
【請求項14】
前記抑制層(122、132、222、232、422、432)の厚さが、前記波長λの1/20よりも大きく、特に前記波長λの1/10よりも大きく、さらに、前記圧電層(140、440)の前記厚さよりも小さい、請求項1~13のいずれか一項に記載のトランスデューサ構造。
【請求項15】
前記抑制層(122、132、222、232、422、432)の前記厚さが、最大で前記波長λの値の1/2に相当し、特に最大で前記波長λの値の1/3に相当する、請求項14に記載のトランスデューサ構造。
【請求項16】
前記抑制層(122、132、222、232、422、432)の前記厚さが、前記櫛形電極(102、112)の厚さの程度であり、特に公称値の±50%であり、より特には、0.5~2%のCuドーピングを有したAl_Cu電極の厚さが、前記波長λの値の5~20%である、請求項1~15のいずれか一項に記載のトランスデューサ構造。
【請求項17】
前記ガイド波が、楕円偏波、剪断波、純粋な又はほぼ純粋な縦圧縮波であり、電気機械結合が7%を上回っている、請求項1~16のいずれか一項に記載のトランスデューサ構造。
【請求項18】
トランスデューサ構造を製造するための方法であって、
a)圧電性基板を準備するステップ、特にベース基板の上方に圧電層を備える圧電性複合基板を準備するステップと、
b)前記圧電性基板上に少なくとも一対の相互噛合櫛形電極を形成するステップであり、第1櫛形電極を、第1バスバーと、前記第1バスバーから延在している複数の交互配置された電極フィンガー及び前記第1バスバーから延在している複数の短いダミー電極フィンガーと、を備えるものとし、第2櫛形電極を、第2バスバーと、前記第2バスバーから延在している複数の交互配置された電極フィンガーと、を備えるものとし、前記第1バスバーの前記複数のダミー電極が、前記第2バスバーの前記複数の電極フィンガーに対して対向しているとともに、複数の第1ギャップの分だけ、前記複数の電極フィンガーから離間している、少なくとも一対の相互噛合櫛形電極(102、112)を形成するステップと、を含む、方法において、
ステップb)よりも前に横モード抑制層を設けるステップc)であり、ステップc)の後には、前記横モード抑制層が、前記第1ギャップの下方に部分的に設けられており、さらに、前記横モード抑制層を、前記横モード抑制層の領域におけるガイド波の位相速度が、前記第1及び第2櫛形電極の交互配置された前記複数の電極フィンガーの下方の中央領域における前記圧電性基板内の前記ガイド波の位相速度と比較して、より小さくなるように選択されたものとする、ステップc)をさらに含むことを特徴とする、方法。
【請求項19】
前記第2櫛形電極を、前記複数の電極フィンガーと交互配置された複数の短いダミー電極フィンガーをさらに備えるものとし、前記第2バスバーの前記複数のダミー電極フィンガーが、前記第1バスバーの前記複数の電極フィンガーに対して対向しているとともに、複数の第2ギャップの分だけ、前記第1バスバーの前記複数の電極フィンガーから離間しており、横モード抑制層を設ける前記ステップc)が、第1横モード抑制層と第2横モード抑制層とを設けるステップを含み、ここで、前記第2横モード抑制層を、前記複数の第2ギャップの下方に少なくとも部分的に延在しているとともに、前記第2横モード抑制層の領域におけるガイド波の位相速度が、前記第1及び第2櫛形電極の交互配置された前記複数の電極フィンガーの下方の前記中央領域における、さらに前記第1及び第2横モード抑制層間における、前記ガイド波の位相速度と比較して、より小さくなるように選択されたものとする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記横モード抑制層を設ける前記ステップc)が、前記トランスデューサ構造の前記ガイド波の前記位相速度を変調するために、前記圧電性基板のドーピング量の改変ステップを含み、特に、原子種の注入ステップ若しくは拡散ステップ、及び/又はプロトン交換技術、を有した改変ステップを含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記横モード抑制層を設ける前記ステップc)が、パッシベーション層を設けるステップを含み、特に誘電体パッシベーション層を設けるステップを含み、より特にはSiO層を設けるステップを含む、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ステップc)が、前記パッシベーション層を前記圧電性基板内へと少なくとも部分的に埋設するステップを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記パッシベーション層が、リフトオフプロセスによってパターン形成され、これにより、前記パッシベーション層のエッジ壁の側面が、傾斜したものとされる、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1~17のいずれか一項に記載のトランスデューサ構造を備える、SAWデバイス、特に単一ポート共振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野及び背景技術】
【0001】
本発明は、横モード抑制手段を有したトランスデューサ構造に関し、特に、単一ポート共振器のための、横モード抑制手段を有したトランスデューサ構造に関し、さらに、そのようなトランスデューサを製造するための方法に関する。
【0002】
本発明は、圧電性単結晶上に構築される、又は、圧電性フィルムを使用した複合基板、ピエゾオンインシュレータ(Piezo-On-Insulator)の意味でのいわゆるPOI、の上に構築される、表面弾性波(SAW:surface acoustic wave)デバイスの分野である。そのような複合ウェハは、高周波(RF:radio-frequency)フィルタの製造のために、相互噛合トランスデューサ(IDT:inter-digitated transducer)を使用して真のモードを励起するための導波路として使用される。トランスデューサ構造は、上述したフィルタのインピーダンス要素として使用されるいわゆる単一ポート共振器における重要な部分である。より正確には、いわゆるラダーフィルタは、フィルタ機能を実現するために上記の共振器を利用している。また、センサ用途で使用される単一ポート共振器は、より正確には無線感知のために使用される単一ポート共振器は、そのような影響を受けるため、例えばデバイスの電気機械結合を低下させることが知られている開口テーパー(例えば、欧州特許第2091146号を参照されたい)などにより、それらの影響を抑制する手段が多くの場合に必要とされる。単一ポート共振器は、共振器の中央に設置された1つのトランスデューサ構造と、トランスデューサ構造の両側に配置された反射器と、を含み、他方、2ポートSAW共振器は、中央に設置された2つのトランスデューサ構造(入力/出力)と、デバイスの両外側に配置された反射器と、から構成されている。
【0003】
他のタイプのSAWデバイスは、例えば、縦方向に結合された共振器フィルタ(LCRF:longitudinally-coupled resonator filter)、又はダブルモードSAW(DMS:double-mode-SAW)フィルタ、又はダブルポートSAW共振器、又は例えば周波数源用途に関する発振器安定化に使用される遅延ライン、又は任意の他の用途(例えば、重量分析)、などは、本発明の利点を活用し得る。
【0004】
POI上に構築された単一ポート共振器では、横方向のエネルギー拘束に起因して偽の寄与を示すため、デバイスのスペクトル特徴を汚染するような、いわゆる横モードが発生する。したがって、そのような寄与を抑制して、共振器応答のスペクトル純度を向上させ、仕様に準拠したフィルタの製造を可能とする、より一般的には、仕様に準拠したSAWデバイスの製造を可能とする、手段を提供することが提案されている。
【0005】
従来技術では、横モードを抑制し得る構造を製造することが困難である。
【0006】
米国特許出願公開第2012/0161577号又は米国特許出願公開第2013/0249647号に開示されているように、電極のエッジに、金属又は誘電体のオーバーレイを再装填することが提案されている。
【0007】
米国特許出願公開第2012/0161577号では、電極エッジの頂部上に金属が再成膜されているため、パターンの見当合わせの精度が高いものの、高価な加工ツール及び制御が必要とされる。
【0008】
米国特許出願公開第2013/0249647号では、相互噛合トランスデューサ(IDT)構造の全体が、中央部よりもトランスデューサのエッジ上においてより厚いものとされた誘電体層によって覆われている。米国特許出願公開第2015/0123746号では、誘電体フィルムが圧電性基板及びIDT電極の少なくとも一部を覆っており、より正確には、電極フィンガーが互いに交互配置されている領域を覆っており、音響速度は、エッジと比較して、IDTフィンガーの中央部でより大きくなり、これにより、横モードの発生を回避している。誘電体層を使用した大部分の用途では、酸又は反応性イオンエッチング又はイオンミリングを使用して誘電体層のパターン形成を行う必要があるため、そのような影響を防ぐためのエッチングストップ溶液を適用しない時には、電極品質を劣化させてしまい、又は、適切に保護されていない場合には、基板表面を劣化させてしまうことさえある。
【0009】
他のアプローチは、米国特許出願公開第2018/0097508号又は米国特許出願公開第2018/0375491号に記載されているように、電極寸法の拡大に基づいている。このような構造は、1つの電極から別の電極への絶縁を保証することにおいて、困難性をもたらす。
【0010】
しかしながら、上記に引用されたすべてのアプローチでは、そのようなトランスデューサ構造に関して、横モードは、低減されたとはいえ、なおも可能である。
【発明の概要】
【0011】
よって、本発明の目的は、デバイス及び基板表面の本来的な品質を保存しながら、従来技術によるデバイスと比較して、より単純な製造プロセスによって、横モードが抑制された単一ポート共振器のためのトランスデューサ構造を提供することである。
【0012】
本発明の目的は、特に単一ポート共振器のための、横モード抑制手段を備えたトランスデューサ構造であって、圧電性基板と、圧電性基板上に形成された、特にベース基板の上方に圧電層を備える圧電性複合基板上に形成された、少なくとも一対の相互噛合櫛形電極であり、第1櫛形電極が、第1バスバーと、当該バスバーから延在している複数の交互配置された電極フィンガー及び短いダミー電極フィンガーと、を備え、第2櫛形電極が、第2バスバーと、第2バスバーから延在している複数の電極フィンガーと、を備え、第1バスバーのダミー電極が、第2バスバーの電極フィンガーに対して対向しているとともに、第1ギャップの分だけ、第2バスバーの電極フィンガーから離間している、少なくとも一対の相互噛合櫛形電極と、を具備するトランスデューサ構造において、第1ギャップの下方に部分的に設けられた横モード抑制層であり、横モード抑制層の領域におけるガイド波の位相速度が、第1櫛形電極及び第2櫛形電極の交互配置された電極フィンガーの下方の中央領域における圧電性基板内のガイド波の位相速度と比較して、より小さくなるように選択された、横モード抑制層をさらに備えることを特徴とする、トランスデューサ構造によって実現される。横モード抑制層の存在は、ギャップ内での波動速度を遅いものとし、これにより、トランスデューサ構造内における不要な横モードの抑制又は低減をもたらす。よって、本発明によるトランスデューサ構造では、横モードの寄与を低減することができる。音響的な観点からは、本発明によるトランスデューサ構造は、IDTフィンガーからダミーフィンガーへと、そのIDTフィンガーのエッジにおける反射を低減させずに又は低減させて、エネルギーを伝達することができる。
【0013】
実施形態の変形例では、横モード抑制層は、第1ギャップのそれぞれの下方に延在することができる。横モード抑制層は、ギャップ内での波動速度を遅くすることを可能とし、これにより、トランスデューサ構造内における不要な横モードの抑制又は低減をもたらす。音響的な観点からは、本発明によるトランスデューサ構造は、IDTフィンガーからダミーフィンガーへと、そのIDTフィンガーのエッジにおける反射を低減させずに又は低減させて、エネルギーを伝達することができる。
【0014】
実施形態の変形例では、第2櫛形電極は、電極フィンガーと交互配置された短いダミー電極フィンガーを備えることができ、第2バスバーのダミー電極フィンガーが、第1バスバーの電極フィンガーに対して対向しているとともに、第2ギャップの分だけ、電極フィンガーから離間しており、第2ギャップの下方に少なくとも部分的に延在している第2横モード抑制層であり、第2横モード抑制層の領域におけるガイド波の位相速度が、第1櫛形電極及び第2櫛形電極の交互配置された電極フィンガーの下方の中央領域における、さらに第1横モード抑制層と第2横モード抑制層との間における、ガイド波の位相速度と比較して、より小さくなるように選択された、第2横モード抑制層をさらに備える。横モード抑制層は、ギャップ内での波動速度を遅くすることを可能とし、これにより、トランスデューサ構造内における不要な横モードの抑制又は低減をもたらす。よって、本発明によるトランスデューサ構造では、横モードの寄与をさらに低減することができる。音響的な観点からは、本発明によるトランスデューサ構造は、IDTフィンガーからダミーフィンガーへと、そのIDTフィンガーのエッジにおける反射を低減させずに又は低減させて、エネルギーを伝達することができる。
【0015】
実施形態の変形例では、第2横モード抑制層は、すべての第2ギャップの下方に延在することができる。横モード抑制層は、ギャップ内での波動速度を遅くすることを可能とし、これにより、トランスデューサ構造内における不要な横モードの抑制又は低減をもたらす。音響的な観点からは、本発明によるトランスデューサ構造は、IDTフィンガーからダミーフィンガーへと、そのIDTフィンガーのエッジにおける反射を低減させずに又は低減させて、エネルギーを伝達することができる。
【0016】
実施形態の変形例では、第1横モード抑制層は、少なくとも部分的に第1バスバーにまで延在することができる、及び/又は、第2横モード抑制層は、少なくとも部分的に第2バスバーにまで延在することができる。
【0017】
実施形態の変形例では、第1横モード抑制層は、少なくとも部分的に又は少なくとも全体的に第1バスバーの下方にさらに延在することができる、及び/又は、第2横モード抑制層は、少なくとも部分的に又は少なくとも全体的に第2バスバーの下方にさらに延在することができる。
【0018】
実施形態の変形例では、第1横モード抑制層及び/又は第2横モード抑制層は、位相速度を変調するために、相互噛合櫛形電極の下方の中央領域における圧電性基板の残部と比較して、異なるドーピング量を有することができ、特に、異なるドーピング量は、Ti量である。ドーピングとは、ここでは、圧電性基板内への意図的な不純物の導入に相当する。少なくとも横モード抑制層においてドーピングが相違することにより、あらゆる横方向のパターン形成を必要とすることなく、IDT電極をダミー電極から離間しているギャップ付近のモードの位相速度を減少させることとなる。
【0019】
実施形態の変形例では、圧電層の第1横モード抑制層及び/又は第2横モード抑制層は、パッシベーション層を備えることができ、特に誘電体パッシベーション層を備えることができ、より特にはSiO層を備えることができる。
【0020】
実施形態の変形例では、パッシベーション層は、圧電性基板内へと少なくとも部分的に埋設することができる。
【0021】
実施形態の変形例では、第1横モード抑制層及び第2横モード抑制層は、相互噛合櫛形電極の中心線に関して鏡面対称とすることができる。
【0022】
実施形態の変形例では、第1横モード抑制層及び第2横モード抑制層は、異なる形状を有することができる。
【0023】
実施形態の変形例では、圧電性基板は、ベース基板の上方に圧電層を備える圧電性複合基板とすることができる。このような複合基板は、最適化された温度で周波数変化を得ることが可能な構成を可能とするだけでなく、ガイド波を利用する可能性を開くものでもある。構造のモードは、異なるタイプの偏光を示すことができ、特に、楕円偏波だけでなく、大部分が剪断波も又は純粋な若しくはほぼ純粋な縦圧縮波も示すことができ、その電気機械結合は、7%を大幅に上回っており、現代のフィルタ用途において要求される帯域幅を有した、とりわけ5%超を有した、フィルタの実現を可能とする。
【0024】
実施形態の変形例では、圧電層の厚さは、音響トランスデューサの波長λの値よりも小さいものとすることができ、特に波長λの値の0.7倍よりも小さいものとすることができ、より特には波長λの値の0.5倍よりも小さいものとすることができる。選択された動作周波数に関して、圧電層の厚さは、使用される波のガイド機能を最適化するために、最適化される。主に表面での波のガイド機能を可能とする圧電層の所与の厚さに関して、本発明は、波のガイドに起因して、及び電極側面でのそのようなタイプの波における同相反射の可能性に起因して、寄生横モードがより顕著になることから、特に興味深いものである。
【0025】
実施形態の変形例では、抑制層の厚さは、波長λの1/20よりも大きいものとすることができ、特に波長λの1/10よりも大きいものとすることができ、さらに、圧電層の厚さよりも小さい。見出された抑制層の最適な厚さは、波長λに関連して評価される。
【0026】
実施形態の変形例では、抑制層の厚さは、最大で波長λの値の1/2に相当することができ、特に最大で波長λの値の1/3に相当することができる。抑制層が延在する厚さを増大させることは、要望される抑制効果にとっては不利である可能性があり、主要モードのエネルギーの回折によるエネルギー漏洩をもたらす可能性があり、その品質係数を低下させる可能性がある。
【0027】
実施形態の変形例では、抑制層の厚さは、電極の厚さの程度とすることができ、特に公称値の±50%とすることができ、より特には、0.5~2%のCuドーピングを有したAl_Cu電極の厚さは、波長λの値の5~20%である。この格別の事例では、抑制層が無い場合に存在する横モードの少なくとも90%が、抑制される。
【0028】
本発明の変形例では、ガイド波は、楕円偏波、剪断波、純粋な又はほぼ純粋な縦圧縮波とすることができ、電気機械結合は、7%を上回っている。トランスデューサ構造のモードは、異なるタイプの偏光を示すことができ、現代のフィルタ用途において要求される帯域幅を有した、とりわけ5%超を有した、フィルタの実現を可能とする。
【0029】
本発明の目的は、また、トランスデューサ構造を製造するための方法であって、a)圧電性基板を準備するステップ、特にベース基板の上方に圧電層を備える圧電性複合基板を準備するステップと、b)圧電性基板上に少なくとも一対の相互噛合櫛形電極を形成するステップであり、第1櫛形電極を、第1バスバーと、第1バスバーから延在している複数の交互配置された電極フィンガー及び短いダミー電極フィンガーと、を備えるものとし、第2櫛形電極を、第2バスバーと、第2バスバーから延在している複数の交互配置された電極フィンガーと、を備えるものとし、第1バスバーのダミー電極が、第2バスバーの電極フィンガーに対して対向しているとともに、第1ギャップの分だけ、第2バスバーの電極フィンガーから離間している、少なくとも一対の相互噛合櫛形電極を形成するステップと、ステップb)よりも前に横モード抑制層を設けるステップc)であり、ステップc)の後には、横モード抑制層が、第1ギャップの下方に部分的に設けられており、さらに、横モード抑制層を、横モード抑制層のガイド波の位相速度が、第1電極及び第2電極の交互配置された電極フィンガーの下方の中央領域における圧電性基板内のガイド波の位相速度と比較して、より小さくなるように選択されたものとする、ステップc)と、含む、トランスデューサ構造を製造するための方法によって実現される。このような方法により、相互噛合電極が形成される前に、横モード抑制層を形成することができる。よって、この方法を使用すれば、相互噛合電極が、抑制層の形成ステップによって損傷することがなく、その結果、デバイス及び基板表面の本来的な品質が保存される。この方法により、通常のSAWフロントエンド製造プロセスを変更することなく、維持することができる。圧電性基板上に相互噛合電極が形成された後に相互噛合電極上に横モード抑制層が形成される従来技術のデバイスとは逆である。さらに、本発明による方法は、従来技術のデバイスと比較して、より単純な製造プロセスをもたらす。
【0030】
本発明の変形例では、横モード抑制層を設けるステップc)は、第1横モード抑制層と第2横モード抑制層とを設けるステップを含むことができ、ここで、第2横モード抑制層を、第2ギャップの下方に少なくとも部分的に延在しているとともに、第2横モード抑制層の領域におけるガイド波の位相速度が、第1櫛形電極及び第2櫛形電極の交互配置された電極フィンガーの下方の中央領域における、さらに第1横モード抑制層と第2横モード抑制層との間における、ガイド波の位相速度と比較して、より小さくなるように選択されたものとし、第2櫛形電極を、電極フィンガーと交互配置された短いダミー電極フィンガーをさらに備えるものとし、第2バスバーのダミー電極フィンガーが、第1バスバーの電極フィンガーに対して対向しているとともに、第2ギャップの分だけ、第1バスバーの電極フィンガーから離間している。このような方法により、相互噛合電極が形成される前に、横モード抑制層を形成することができる。よって、この方法を使用すれば、相互噛合電極が、抑制層の形成ステップによって損傷することがなく、その結果、デバイス及び基板表面の本来的な品質が保存される。この方法により、通常のSAWフロントエンド製造プロセスを変更することなく、維持することができる。圧電性基板上に相互噛合電極が形成された後に相互噛合電極上に横モード抑制層が形成される従来技術のデバイスとは逆である。さらに、本発明による方法は、従来技術のデバイスと比較して、より単純な製造プロセスをもたらす。
【0031】
本発明の変形例では、横モード抑制層を設けるステップは、圧電性基板のドーピング量の改変ステップを含むことができ、特に、原子種の注入ステップ若しくは拡散ステップ、及び/又はプロトン交換技術、を有した改変ステップを含むことができる。この場合にも、ドーピングとは、ここでは、圧電性基板内への意図的な不純物の導入に相当する。従来技術のデバイスの製造プロセスで使用される技術と比較して、横モード抑制層を形成するに際して、より単純な技術を使用することができる。
【0032】
本発明の変形例では、横モード抑制層を設けるステップは、パッシベーション層を設けるステップを含むことができ、特に誘電体パッシベーション層を設けるステップを含むことができ、より特にはSiO層を設けるステップを含むことができる。横モード抑制層を形成するに際して、材料層成膜技術を使用することができ、これは、従来技術のデバイスの製造プロセスで使用される技術と比較して、より簡単な技術である。本発明の変形例では、横モード抑制層を設けるステップは、パッシベーション層を圧電性基板内へと少なくとも部分的に埋設するステップを含むことができる。
【0033】
本発明の変形例では、パッシベーション層は、リフトオフプロセスによってパターン形成することができ、これにより、パッシベーション層の側面を、成膜した櫛形電極が破断することなくこれら側面を覆うよう、傾斜したものとすることができ、これにより、対応する領域における位相速度の規則的且つ連続的な減少をもたらすことができる。よって、このことは、波反射器として機能する電極エッジでの先鋭な速度変化を横モードが好ましくは必要とするため、横モードが発生する可能性をさらに低減させる。この場合、エッチングは不要であり、よって、基板は、良好な状態に維持される。基板を有機物汚染から保護しなければならない場合には、二酸化ケイ素層の等方性エッチングに基づくいわゆるウェットエッチングプロセスを実装することができ、これにより、パターン形成したパッシベーション層の円滑なエッジを得ることもできる。したがって、第1ステップとして、SiOをウェハ上に均一に成膜し、その後、その層上に、フォトレジストのインシチュエッチングマスクをパターン形成し、これにより、SiO層を局所的にエッチングすることができる。しかしながら、見当合わせマークは、この目的のために通常の技術プロセスに従って表面を準備するために形成する必要がある。
【0034】
本発明の目的は、また、少なくとも上述したトランスデューサ構造を備えるSAWデバイスによっても、特に、単一ポート共振器によっても、実現される。このようなSAWデバイスは、横モードからの寄与の低減させることによって共振器応答のスペクトル純度を向上させつつ、従来技術と比較して、より単純な製造プロセスで製造することができる。
【0035】
本発明は、参照符号が本発明の特徴点を識別している添付図面と併せて、以下の説明を参照することにより、理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1a】本発明の第1実施形態によるトランスデューサ構造の平面図を表している。
図1b】本発明の第1実施形態によるトランスデューサ構造の側面図を表している。
図2a】本発明の第1実施形態の変形例によるトランスデューサ構造の側面図を表している。
図2b】本発明の第1実施形態の別の変形例によるトランスデューサ構造の側面図を表している。
図2c】本発明の第1実施形態の別の変形例によるトランスデューサ構造の側面図を表している。
図2d】本発明の第1実施形態の別の変形例によるトランスデューサ構造の側面図を表している。
図3a】本発明の第1実施形態の変形例によるトランスデューサ構造の平面図を表している。
図3b】本発明の第1実施形態の別の変形例によるトランスデューサ構造の平面図を表している。
図3c】本発明の第1実施形態の別の変形例によるトランスデューサ構造の平面図を表している。
図3d】本発明の第1実施形態の別の変形例によるトランスデューサ構造の平面図を表している。
図3e】本発明の第1実施形態の別の変形例によるトランスデューサ構造の平面図を表している。
図3f】本発明の第1実施形態の別の変形例によるトランスデューサ構造の平面図を表している。
図4】本発明の第1実施形態及びその変形例によるトランスデューサ構造の製造方法の概略図を表している。
図5】本発明の第1実施形態の第4変形例によるトランスデューサ構造の製造方法の概略図を表している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下では、本発明について、例示的な態様をなす有利な実施形態を使用して、図面を参照しながら、より詳細に説明する。説明する実施形態は、単に可能な構成に過ぎず、本発明の実装時には、上述した個々の特徴点を、互いに独立して提供し得ること、又は完全に省略し得ること、に留意されたい。
【0038】
図1aは、本発明の第1実施形態によるトランスデューサ構造の平面図を表している。
【0039】
トランスデューサ構造100は、圧電性基板120上に設けられた一対の相互噛合櫛形電極102及び112を含む。圧電性基板120は、バルク圧電性基板とすることができ、又はベース基板の上方に圧電層を含む複合基板とすることができ、ここで、複合基板については、図1bに関して後述する。
【0040】
第1相互噛合櫛形電極102は、複数の電極フィンガー104と、複数のダミー電極フィンガー106と、を含み、両者は、第1バスバー108から延在している。同様に、第2相互噛合櫛形電極112は、複数の電極フィンガー114と、複数のダミー電極フィンガー116と、を含み、両者は、第2バスバー118から延在している。第1バスバー108のダミー電極フィンガー106は、第2バスバー118の電極フィンガー114に対して対向しているとともに、第1ギャップ110aの分だけ、第2バスバー118の電極フィンガー114から離間している。第2バスバー118のダミー電極フィンガー116は、第1バスバー108の電極フィンガー104に対して対向しているとともに、第2ギャップ110bの分だけ、第1バスバー108の電極フィンガー104から離間している。ここで、第1ギャップ110a及び第2ギャップ110bは、同じである。
【0041】
本発明の変形例によれば、第2櫛形電極112は、第2バスバー118から延在するダミー電極フィンガー116を有しておらず、複数の電極フィンガー116のみを有している。この場合、第2ギャップ110bは、第2バスバー118と、第1櫛形電極102の対向電極104と、の間の距離によって規定される。
【0042】
本発明の変形例によれば、第1バスバー108の電極フィンガー104、及び/又は、第2バスバー118の電極フィンガー114、のすべてが、対応するバスバー108、118の対向するダミー電極フィンガー106、116を有するわけではなく、また、その逆も成立する。
【0043】
変形例では、第1ギャップ110a及び第2ギャップ110bは、トランスデューサ構造100の全体を通して相違することができ、特に、第1ギャップ110a及び第2ギャップ110bは、トランスデューサ構造100内の長さ又は位置において、ランダムに相違することができる。
【0044】
相互噛合櫛形電極102、112は、任意の適切な導電性金属から形成され、例えば、アルミニウムから、又は、Al-Cu、Al-Ti、若しくはAl-Si、などのアルミニウム合金から、形成される。
【0045】
2つの相互噛合櫛形電極102、112は、逆電位+V/-Vに対して接続される。トランスデューサ構造100は、ブラッグ条件によって定義される電極ピッチpを有し、よって、pは、λをトランスデューサ構造100の動作波長とした時に、λ/2に等しい。ピッチpは、相互噛合電極の隣り合った電極フィンガーの、中心どうしの間の距離を表している。よって、この実施形態では、pは、電極102の電極フィンガー104の中心と、電極112の隣り合った電極フィンガー114の中心と、の間の距離に相当する。トランスデューサ構造100は、同期的である、すなわち、相互噛合電極フィンガー104、114は、同じ幅と、同じ周期と、同じ形状と、を示している。
【0046】
電極フィンガー104、114と、ダミー電極フィンガー106、116とは、幅aを有している。当該技術分野によれば、金属アスペクト比は、a/pで定義される。
【0047】
相互噛合電極102、112のそれぞれの電極フィンガー104、114は同じであり、同じ幅aと、同じ長さlと、を有している。変形例では、相互噛合電極は、異なる電極フィンガー102、112を有することができる。
【0048】
同じく、相互噛合電極102、112のダミー電極フィンガー106、116も同じであり、同じ幅aと、同じ長さlと、を有している。変形例では、相互噛合電極102、112は、異なるダミー電極フィンガー106、116を有することができる。
【0049】
図1aでは、相互噛合電極102、112は、同じである、すなわち、相互噛合電極102、112は、同じ電極フィンガーと、同じピッチpと、同じ第1ギャップ110aと、同じ第2ギャップ110bと、を有している。変形例では、相互噛合電極102、112は、相違することができ、異なるピッチpと、異なるギャップと、異なる電極フィンガー102、112と、異なるダミー電極フィンガー106、116と、を有している。
【0050】
本発明によれば、2つの横モード抑制層122及び132が、基板120と、相互噛合櫛形電極102、112と、の間に設けられている。第1横モード抑制層122は、第1ギャップ110aの下方に位置しており、第2横モード抑制層132は、第2ギャップ110bの下方に位置している。横モード抑制層の物理的特性は、トランスデューサ構造のガイド波の位相速度が、横モード抑制層122、132の領域においては、第1電極及び第2電極の交互配置された電極フィンガーの下方における中央領域136をなす残部領域134における圧電性基板120内のトランスデューサ構造のガイド波の位相速度と比較して、より小さくなるように選択される。ガイド波は、任意のガイド波とすることができ、又は表面の真のモードとすることができ、レイリー様波と、剪断波と、純粋な若しくは準純粋な剪断波又は縦波と、を含む。
【0051】
実施形態の変形例では、トランスデューサ構造には、ただ1つの横モード抑制層だけが存在する。
【0052】
この実施形態では、第1横モード抑制層122及び第2横モード抑制層132は、矩形であり、同じ寸法及び同じ形状を有している。領域122及び132は、トランスデューサ構造100のすべての電極フィンガー104、114及びすべてのダミー電極フィンガー106、116の下方において、方向yに沿って延在している、よって、トランスデューサ構造100の全長wに沿って延在している。領域122及び132は、トランスデューサ構造100の相互噛合電極102、112の中心線yに関して対称である。
【0053】
第1横モード抑制層122及び第2横モード抑制層132は、トランスデューサ構造100における不要な横音響波の伝播方向である方向xに沿っては、長さdにわたって、延在している。図1aでは、横モード抑制層122は、第1ギャップ110aを超えて、ダミー電極フィンガー106の一部を超えて、さらに、電極フィンガー104の一部を超えて、延在している。同様に、横モード抑制層132は、第2ギャップ110bを超えて、ダミー電極フィンガー116の一部を超えて、さらに、電極フィンガー114の一部を超えて、延在している。
【0054】
図1aでは、第1横モード抑制層122及び第2横モード抑制層132は、X方向において、バスバー108、118から同じ距離sのところに配置されている。変形例では、第1横モード抑制層122及び第2横モード抑制層132は、バスバーに対して異なる距離を有することができる。
【0055】
図1bには、本発明の第1実施形態によるトランスデューサ構造100を示す図1aにおける、ラインAAに沿った側断面図が示されている。
【0056】
特定の実施形態では、支持基板120は、ベース基板144の上部に設けられた圧電層120を含む複合基板である。薄い誘電体層142が、圧電層140とベース基板144との間に成膜されている。変形例では、圧電層140は、ベース基板144の頂部上に直接的に成膜することができる。
【0057】
このような複合基板は、最適化された温度で周波数変化を得ることが可能な構成を可能とするだけでなく、ガイド波を利用する可能性を開くものでもある。構造のモードは、異なるタイプの偏光を示すことができ、特に、楕円偏波だけでなく、大部分が剪断波も又は純粋な若しくはほぼ純粋な縦圧縮波も示すことができ、その電気機械結合は、7%を大幅に上回っており、現代のフィルタ用途において要求される帯域幅を有した、とりわけ5%超を有した、フィルタの実現を可能とする。
【0058】
有利な態様では、圧電層140の厚さ(d_piezoと称される)は、波長λをトランスデューサ構造100の動作波長とした時に、波長λの程度であり、又は、それよりも小さいものであり、すなわち波長λの値の0.7倍よりも小さいものであり、又は、波長λの値の0.5倍よりも小さいものでさえある。
【0059】
実際的事例では、圧電層の厚さは、1μmよりも小さく、特に、700nmよりも小さい。選択された動作周波数に関して、圧電層の厚さは、使用される波のガイド機能を最適化するために、最適化される。主に表面での波のガイド機能を可能とする圧電層の所与の厚さに関して、本発明は、波のガイドに起因して、及び電極側面でのそのようなタイプの波における同相反射の可能性に起因して、寄生横モードがより顕著になることから、特に興味深いものである。この実施形態では、第1横モード抑制層122及び第2横モード抑制層132は、相互噛合電極102、112が基板120上に成膜される前に、よって相互噛合電極102、112が圧電層140上に成膜される前に、圧電層140上に成膜されたパッシベーション層である。パッシベーション層は、圧電層140と直接的に接触している。
【0060】
パッシベーション層は、誘電体層であり、例えば、SiO層又はTa層又はHfO層である。
【0061】
第1横モード抑制層とも称される横モード抑制層122は、図1bにおいて右側に位置するものであって、バスバー108に対して接続された電極フィンガー104によって、完全に覆われている。
【0062】
図1bにおいて左側に位置した第2横モード抑制層132は、ダミー電極フィンガー116の先端部116aの下方に延在しており、ダミー電極フィンガー116は、バスバー118と、第2ギャップ110bと、接続部134においてバスバー108に対して接続された電極フィンガー104の先端部104aと、に対して接続されている。
【0063】
本発明の変形例では、パッシベーション層は、傾斜した側面又は傾斜した壁エッジを有し、そのため、櫛形電極がパッシベーション層を完全に覆った時に、成膜された櫛形電極が、パッシベーション層の壁エッジのところで破断することがなく、これにより、電極がパッシベーション層を規則的にそして連続的に覆うことが確保される。
【0064】
変形例では、追加的なパッシベーション層を使用することに代えて、第1横モード抑制層122及び第2横モード抑制層132は、例えば、圧電層140の中央領域136と比較して異なるドーピング量を有することにより、さらに、横モード抑制層122、132とバスバーとの間に、幅sを有したスペースを設けることにより、圧電層140内に形成することができる。ドーピングとは、ここでは、圧電性基板内への意図的な不純物の導入に相当する。少なくとも横モード抑制層においてドーピングが相違することにより、あらゆる横方向のパターン形成を必要とすることなく、IDT電極をダミー電極から離間しているギャップ付近のモードの位相速度を減少させることとなる。
【0065】
(1つ又は複数の)抑制層の厚さは、波長λの値の少なくとも1/20であり、特に、波長λの値の少なくとも1/10である。
【0066】
実装されるべき(1つ又は複数の)抑制層は、横モードの抑制を最適化するために、特定の深さ(d_supp)にまで延在することが有利である。抑制層が延在する厚さを増大させることは、要望される抑制効果にとっては不利である可能性があり、主要モードのエネルギーの回折によるエネルギー漏洩をもたらす可能性があり、その品質係数を低下させる可能性がある。したがって、特定の実施形態では、抑制層の厚さを、最大で波長λの値の1/2にまで制限することが、特に、最大で波長λの値の1/3にまで制限することが、有利である。見出された抑制層の最適な厚さは、波長λに関連して評価され、圧電層がその初期厚さと比較して抑制層のレベルで改変される深さを規定する。
【0067】
このようにして、最適な厚さのウィンドウは、以下のように得られる。
【0068】
抑制層の厚さd_suppは、d_supp<d_piezo<0.7λ<1λを考慮しつつ、1/20λ<1/10λ<d_supp<1/3λ<1/2λの間で構成される。
【0069】
波長λが4μm付近である実際的事例では、200nm<400nm<d_supp<1.3μm<2μm、且つ、d_supp<d_piezo<2.8μm<4μm、という関係が得られる。波長が1μm付近である別の実際的事例では、50nm<100nm<d_supp<300nm<500nm、且つ、d_supp<d_piezo<700nm<1μm、という関係が得られることとなる。
【0070】
本発明によって提案する横モードの抑制は、櫛形電極の厚さによっても、影響を受ける。特に興味深い構成は、電極の厚さを、特に、0.5~2%のCuドーピングを有したAl_Cu電極の厚さを、波長λの値の5~20%の間で選択することである。本発明で提案する(1つ又は複数の)抑制層の厚さは、その場合、櫛形電極の厚さと同じ程度で、特に、公称値の±50%で、選択されることが有利である。この厚さのウィンドウでは、抑制層が無い場合に存在する横モードの少なくとも90%が、抑制層によって抑制される。
【0071】
第1実施形態によるトランスデューサ構造100は、以下の態様で機能する。本発明によるトランスデューサ構造は、剪断波を励起して検出するために使用される。剪断変位方向は、デバイスがブラッグ条件で動作しているため、トランスデューサが+V/-V電気分極構造によって励起される時には、1つの電極から別の電極へと交互的である。
【0072】
第1横モード抑制層122及び第2横モード抑制層132の存在は、波動抑制層122、132を有した領域内へと伝播するガイド波が、改変されていない基板120の中央領域1326を伝播するガイド波と比較して、より小さな位相速度を示すようにして、SAW伝播が改変される場所を生成する。第1横モード抑制層122及び第2横モード抑制層132は、活性電極フィンガー104と、その関連したダミー電極フィンガー116と、の間の第1ギャップ110a及び第2ギャップ110b付近で、モードの速度を変化させる。ギャップ110a、110b内での波動速度を遅くすることにより、不要な横モードの抑制又は低減をもたらす。
【0073】
よって、本発明によるトランスデューサ構造100では、横モードの寄与を低減することができる。同時に、製造プロセスは、従来技術によるトランスデューサ構造と比較して、単純化される。
【0074】
本発明によれば、第1ギャップ110a及び第2ギャップ110b内における、又は、第1ギャップ110a及び第2ギャップ110b付近における、基板120の局所的な改変は、追加的な製造ステップを必要とするけれども、通常のSAWフロントエンド製造プロセスは、不変のままであり、横モード解放デバイスの製造が単純化される。さらに、後続の層どうしの正確な見当合わせを必要とする他の解決手段と比較して、ここでは、デバイスの製造を実現するに際して、大まかなマスクの見当合わせで充分である。
【0075】
以下に示すように、実施形態の変形例では、トランスデューサ構造100に対しての、第1横モード抑制層122及び第2横モード抑制層132の、様々な形状及び様々な位置が示される。
【0076】
第1実施形態の説明において既に使用した参照符号は、説明を再び繰り返さないけれども、その説明を参照することができる。
【0077】
図2aは、本発明の第1変形例によるトランスデューサ構造200aの側面図を表している。
【0078】
第1実施形態と比較して、第1横モード抑制層122及び第2横モード抑制層132を形成するパッシベーション層246、248は、バスバー108、118の下方に延在している。パッシベーション層248は、バスバー118の下方において、完全に延在しているものの、他方のパッシベーション層246は、バスバー108の下方において、部分的にのみ延在している。この変形例では、第1横モード抑制層122及び第2横モード抑制層132は、対称ではない。
【0079】
別の変形例では、第1横モード抑制層122及び第2横モード抑制層132は、圧電層140内へと、完全に又は部分的に、埋設することができる。
【0080】
図2bは、本発明の第2変形例によるトランスデューサ構造200bの側面図を表している。
【0081】
第1実施形態の説明において言及したのと同様に、この変形例における圧電層140の第1横モード抑制層222及び第2横モード抑制層232は、局所的に構造が改変された圧電層140である。例えば、圧電層140の構造改変は、圧電層140の残部と比較して、横モード抑制層222、232におけるドーピング量が異なることに相当する。
【0082】
図2cは、第1実施形態のトランスデューサ構造200cの第3変形例を表している。
【0083】
第2変形例と比較して、第1横モード抑制層222及び第2横モード抑制層232は、バスバー108、118の下方において、部分的にしか延在していない。第1横モード抑制層222及び第2横モード抑制層232は、対称である。
【0084】
図2dは、本発明の第4変形例によるトランスデューサ構造200dの側面図を表している。
【0085】
先の3つの変形例とは異なり、第1横モード抑制層232は、バスバー118の下方において、部分的に延在しているけれども、第2横モード抑制層222は、その対応するバスバー108の下方において、全く延在していない。この場合にも、局所的に改変された領域222及び232は、同じではない。
【0086】
図3a~図3fは、トランスデューサ構造の平面図において、横モード抑制層のさらなる変形例を示している。これらの変形例は、すべて、横モード抑制層の異なる幾何学的形状を示している。
【0087】
図3aは、本発明の第1実施形態の第5変形例によるトランスデューサ構造の平面図を表している。図1aに示す実施形態と比較して、ここでは、横モード抑制層222は、一方サイドでは、少なくともバスバー108まで、そして最終的にはバスバー108の下方までさえも、延在しており、他方サイドでは、横モード抑制層232は、第1実施形態と同様に、バスバー118から距離sのところに位置している。その結果、横モード抑制層222及び232は、寸法が異なり、対称ではない。
【0088】
図3bでは、第6変形例が示されており、この場合、横モード抑制層222及び232は、テーパー形状とされている。
【0089】
図3cは、トランスデューサ構造の平面図を表しており、特に、図2bに示す第2変形例によるトランスデューサ構造の平面図を表しており、この場合、両方の横モード抑制層222、232は、バスバー208、218の下方に延在しており、形状及び寸法が対称である。
【0090】
図3dに示す第7変形例では、図3cに示す変形例と比較して、両方の横モード抑制層222、232は、X方向において、バスバー208、218よりもさらに外側へとさえも、延在している。変形例では、横モード抑制層222、232のうち、一方のみが、バスバー208、218よりもさらに外側へと延在する。
【0091】
図3eに示す第8変形例では、図1aに示す実施形態と比較して、横モード抑制層222、232は、凸形状又は凹形状を有しており、相互噛合トランスデューサのエッジのところで放射されるエネルギーがより少ないために、モード閉じ込めを向上させることができる。
【0092】
第9変形例では、図3fに示すように、横モード抑制層222、232に関して、異なる形状を使用することができる。図3fでは、第2横モード抑制層232の形状は、丸められているのに対し、第1横モード抑制層222の形状は、先鋭である。横モード抑制層232の丸められた形状は、任意の可能な同期効果を打破するために、異なる値の角度で丸められている。これは、先鋭なパターンの場合も同様であり、角度は、1つの電極エッジから別の電極エッジまで、コヒーレンスが発生しないように選択されている。
【0093】
図4は、本発明の第1実施形態及びそれらの変形例のいずれかによる、トランスデューサ構造の製造方法における様々なステップの概略図を表している。
【0094】
ステップa)においては、圧電性基板420を準備する。図4では、圧電性基板420は、複合基板であり、ベース基板444上に圧電層440を含む。この実施形態では、ベース基板444と圧電層440との間に、薄いSiO層442が、また、存在している。圧電性基板420は、第1実施形態で説明した圧電性基板120と同じである。
【0095】
第1変形例1)によれば、圧電性基板の少なくとも1つの領域において、圧電層440を、圧電性基板の残部と比較して異なる量でドーピングすることにより、2つの横モード抑制層422、432を設ける。
【0096】
このステップは、圧電性基板内での、横モード抑制層の原子種濃度を改変するために、原子種を、特にTiを、注入又は拡散することを含む。
【0097】
さらなる変形例によれば、横モード抑制層を設けるステップは、プロトン交換プロセスとすることができる。
【0098】
プロトン交換プロセスは、有機プロトン源からの基本的なプロトン交換と、リチウムイオンと水素イオンを再分配するために試料を単独で加熱するアニール後処理と、を含む。
【0099】
プロトン交換技術は、Chungら,“Proton-Exchanged 36° Y-X LiTaO Waveguides for Surface Acoustic Wave”, IEEE transactions on UFFC, vol. 53, no. 2, 2006に記載されている。P-Eを使用することにより、圧電層を局所的に改変することができる。プロトン交換技術は、表面粗さに影響を与えないため、SAW産業で使用されている平面技術処理に対して完全に準拠していることのために、期待された効果を得るための産業的アプローチとして興味深い技術である。
【0100】
方法の第2変形例2)によれば、横モード抑制層を設けるステップは、パッシベーション層成膜ステップである。成膜層は、誘電体パッシベーション層とすることができ、より特には、SiO層とすることができる。
【0101】
パッシベーション層446を、圧電性基板424上に成膜し、これにより、第1横モード抑制層422及び第2横モード抑制層432を形成する。
【0102】
第3変形例3)によれば、パッシベーション層を、少なくとも部分的に圧電性基板440内に埋設することができる。この変形例は、領域422、432において圧電性基板440の一部を除去するためのエッチングステップを含む、又は、領域422、432において圧電性基板440の厚さtを低減させ得る任意の他のプロセスを含む。その場合、パッシベーションを、局所的に又は基板全体に成膜し、化学的機械的研磨(CMP:chemical-mechanical polishing)ステップを適用することにより、SAW製造における通常的要求に適合した完全に平坦な表面を回復させる。
【0103】
その後、図4cに示すように、層成膜ステップとパターン形成ステップとの組合せを使用して、圧電性基板上に、一対の相互噛合櫛形電極を形成する。
【0104】
本発明の第4変形例によれば、図5に示すように、パッシベーション層を、リフトオフプロセスによってパターン形成することができ、これにより、パッシベーション層の側面を、成膜した櫛形電極が破断することなくこれら側面を覆うよう、傾斜したものとすることができ、これにより、対応する領域における位相速度の規則的且つ連続的な減少をもたらすことができる。この場合、エッチングは不要であり、よって、基板を良好な状態に維持することができる。しかしながら、見当合わせマークは、この目的のために通常の技術プロセスに従って表面を準備するために形成する必要がある。
【0105】
最初のステップa)として、POI基板420を、Oプラズマプロセスによって洗浄する。次に、フォトレジストフィルム448の成膜を、特にスピンコーティングによって、行う(ステップb))。ステップc)として、フォトレジストフィルム448上に、UVマスク450を介して、UVリソグラフィーステップを行い、これにより、ステップd)では、傾斜した壁エッジを有した複数の構造体452からなるパターン形成済みフォトレジストフィルムを得る。ステップe)では、パッシベーション層446を、POI基板420上に、及びパターン形成済みフォトレジストフィルム450上に、成膜し、これにより、パターン形成済みフォトレジストフィルム450をなす構造体452どうしの間に、横モード抑制層422、432を形成する。パターン形成済みフォトレジストフィルム450をなす構造体452の壁エッジが傾斜していることのために、POI基板420上におけるパッシベーション層446の成膜は、ステップe)に示すように、パターン形成済みフォトレジストフィルム448をなす構造体452どうしの間に成膜されたパッシベーション層446であり、同様に傾斜した壁エッジを有したパッシベーション層446をもたらす。最後に、上面上にパッシベーション層446を有したパターン形成済みフォトレジストフィルム450をなす構造体452を除去するステップf)を行い、これにより、パターン形成済みフォトレジストフィルム450をなす構造体452どうしの間において、POI基板420上に直接的に存在するパッシベーション層446のみを、POI基板420の表面上に残す。
【0106】
本発明の方法によれば、横モード抑制層上に、及び圧電性基板上に、相互噛合電極を形成する。横モード抑制層は、相互噛合電極の形成前に、形成される。このことは、圧電性基板上に相互噛合電極が形成された後に相互噛合電極上に横モード抑制層が形成される従来技術のデバイスとは逆である。
【0107】
本発明の変形例によれば、相互噛合櫛形電極を、第1横モード抑制層及び/又は第2横モード抑制層上に、及び圧電性基板上に、形成する。よって、横モード抑制層は、相互噛合櫛形電極が形成される前に、形成される。このことは、圧電性基板上に相互噛合電極が形成された後に相互噛合電極上に横モード抑制層が形成される従来技術のデバイスとは逆である。
【0108】
本発明の様々な実施形態について説明してきた。それでもなお、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な改変及び拡張を行い得ることは、理解されよう。
【符号の説明】
【0109】
100…トランスデューサ構造、102…第1櫛形電極、104、114…電極フィンガー、106…ダミー電極フィンガー、108…第1バスバー、112…第2櫛形電極、118…第2バスバー、120、170…圧電性基板、122、132、222、232、422、432…横モード抑制層、136…中央領域。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図3f
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-08-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に単一ポート共振器のための、横モード抑制手段を備えたトランスデューサ構造であって、
圧電性基板(120、420)と、
前記圧電性基板(120、170)上に形成された少なくとも一対の相互噛合櫛形電極(102、112)であり、第1櫛形電極(102)が、第1バスバー(108)と、前記第1バスバー(108)から延在している複数の短いダミー電極フィンガー(106)と交互配置された前記第1バスバー(108)から延在している複数の電極フィンガー(104)と、を備え、第2櫛形電極(112)が、第2バスバー(118)と、前記第2バスバー(118)から延在している複数の電極フィンガー(114)と、を備え、前記第1バスバー(108)の前記複数のダミー電極フィンガー(106)が、前記第2バスバー(118)の前記複数の電極フィンガー(114)に対して対向しているとともに、複数の第1ギャップ(110a)の分だけ、前記複数の電極フィンガー(114)から離間している、少なくとも一対の相互噛合櫛形電極(102、112)と、を具備するトランスデューサ構造において、
前記第1ギャップ(110a)の下方に部分的に設けられた横モード抑制層(122、132、222、232、422、432)であり、前記横モード抑制層(122、132、222、232、422、432)の領域におけるガイド波の位相速度が、前記第1電極及び前記第2電極(102、112)の交互配置された前記複数の電極フィンガー(104、114)の下方の中央領域(136)における前記ガイド波の位相速度と比較して、より小さくなるように選択された、横モード抑制層(122、132、222、232、422、432)をさらに備えることを特徴とする、トランスデューサ構造。
【外国語明細書】