(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152781
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】導電性接着剤、回路接続構造体の製造方法及び回路接続構造体
(51)【国際特許分類】
C09J 201/00 20060101AFI20241018BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20241018BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20241018BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20241018BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20241018BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J9/02
H01B1/22 D
H01B1/00 C
H01B5/16
H01R11/01 501C
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024130664
(22)【出願日】2024-08-07
(62)【分割の表示】P 2020084465の分割
【原出願日】2020-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】工藤 直
(72)【発明者】
【氏名】末安 由佳
(72)【発明者】
【氏名】大當 友美子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰浩
(57)【要約】
【課題】対向する電極の接続において低抵抗を示し、かつ、良好な接続信頼性を得ることができる導電性接着剤、及びそのような導電性接着剤を用いる回路接続構造体の製造方法及び回路接続構造体を提供すること。
【解決手段】導電性接着剤は、接着剤組成物と、導電粒子と、を含有し、導電粒子の20%圧縮時の圧縮硬さが、25℃において10.0GPa以上且つ150℃において3.5GPa以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤組成物と、導電粒子と、を含有し、
前記導電粒子が、エチレン性不飽和基を有する非架橋性単量体とエチレン性不飽和基を有する架橋性単量体とを共重合させた樹脂からなるプラスチック粒子と、これを被覆する金属層と、を備えるコアシェル粒子であり、
前記導電粒子の20%圧縮時の圧縮硬さが、25℃において10.0GPa以上且つ150℃において3.5GPa以下である、導電性接着剤。
【請求項2】
前記導電粒子の25℃における圧縮回復率が、50~75%である、請求項1に記載の導電性接着剤。
【請求項3】
前記導電粒子の平均粒径が2μm以上10μm以下である、請求項1又は2に記載の導電性接着剤。
【請求項4】
回路電極同士の接続に用いられ、
前記接続が、Flex on Glass接続、Flex on Flex接続、又は、Flex on Polymer接続である、請求項1~3のいずれか一項に記載の導電性接着剤。
【請求項5】
第一の回路電極を有する第一の回路部材と、第二の回路電極を有する第二の回路部材との間に、請求項1~4のいずれか一項に記載の導電性接着剤を介在させ、前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材を熱圧着して、前記第一の回路電極及び前記第二の回路電極を電気的に接続する工程を備える、回路接続構造体の製造方法。
【請求項6】
前記第一の回路電極及び前記第二の回路電極の少なくとも一方が表面にTiを含む層を有している、請求項5に記載の回路接続構造体の製造方法。
【請求項7】
第一の回路電極を有する第一の回路部材と、第二の回路電極を有する第二の回路部材と、前記第一の回路部材と前記第二の回路部材との間に介在する接続部と、を備え、
前記接続部が、請求項1~4のいずれか一項に記載の導電性接着剤の硬化物である、回路接続構造体。
【請求項8】
前記第一の回路電極及び前記第二の回路電極の少なくとも一方が表面にTiを含む層を有している、請求項7に記載の回路接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性接着剤、回路接続構造体の製造方法及び回路接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイの視野角拡大及び低消費電力への要求があり、有機ELディスプレイ等の自発光ディスプレイの開発が進められている。有機ELディスプレイでは、液晶パネルと同様にFPC(Flexible printed circuits:フレキシブルプリント回路基板)から電気信号を入力するシステムが採用されており、このようなシステムにおいて一接続端子には数十mA~200mA程度の大きな電流が流れる。そのため有機ELディスプレイ側の電極としては、ガラス基板上にITO等の透明電極及びその上にさらに厚み数十~数千nmの金属膜を形成したものを用いることで、十分な電流値が取れる様に設計されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、FPCの電極とディスプレイ側の電極との接続には、通常、回路接続材料が用いられる。回路接続材料としては、例えば、接着剤組成物及び導電粒子を含有する異方導電性を有する導電性接着剤が知られている。このような回路接続材料によれば、電極同士を導電粒子によって低抵抗で接続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ディスプレイの低消費電力への要求は更に高まっており、従来以上に低抵抗を示す回路接続材料が求められるようになっている。また、回路の高密度化に伴って回路接続材料には、接続後の接続抵抗が増加しにくいという接続信頼性に優れていることも要求される。
【0006】
そこで、本発明は、対向する電極の接続において低抵抗を示し、かつ、良好な接続信頼性を得ることができる導電性接着剤を提供することを目的とする。本発明はまた、そのような導電性接着剤を用いる回路接続構造体の製造方法及び回路接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一側面は、接着剤組成物と、導電粒子と、を含有し、導電粒子の20%圧縮時の圧縮硬さが、25℃において10.0GPa以上且つ150℃において3.5GPa以下である導電性接着剤を提供する。
【0008】
上記の導電性接着剤によれば、対向する電極の接続において低抵抗を示し、かつ、良好な接続信頼性を得ることができる。このような効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが本発明者らは次のように推察する。導電性接着剤に含まれる導電粒子が所定の2つの温度において上記条件を満たす圧縮硬さを有するものであることにより、熱圧着による実装が行われたときの導電粒子が、電極との充分な接触を可能とする硬さと、実装直後の導電粒子の反発による抵抗上昇が生じにくい柔らかさとを発現することができ、これにより、接続抵抗の低減と接続信頼性の向上との両立が達成されたと考えられる。
【0009】
上記導電粒子は、25℃における圧縮回復率が50~75%であってもよい。
【0010】
上記導電粒子は、平均粒径が2μm以上10μm以下であってもよい。
【0011】
導電性接着剤が回路電極同士の接続に用いられる場合、その接続はFlex on Glass接続、Flex on Flex接続、又は、Flex on Polymer接続であってもよい。
【0012】
本発明の別の側面は、第一の回路電極を有する第一の回路部材と、第二の回路電極を有する第二の回路部材との間に、上記の本発明に係る導電性接着剤を介在させ、第一の回路部材及び第二の回路部材を熱圧着して、第一の回路電極及び前記第二の回路電極を電気的に接続する工程を備える回路接続構造体の製造方法に関する。
【0013】
上記の回路接続構造体の製造方法によれば、本発明に係る導電性接着剤を用いることにより、低抵抗かつ接続信頼性に優れた回路接続構造体を得ることができる。
【0014】
上記の回路接続構造体の製造方法において、第一の回路電極及び第二の回路電極の少なくとも一方が表面にTiを含む層を有していてもよい。
【0015】
チタンは導電性に優れ、かつ磁性、強度、延性及び展性が回路形成材料に適しており、さらに表面に形成される強固な酸化被膜による優れた耐食性、化学的安定性、物理的安定性、ガスバリア性及び異種金属界面での拡散バリア性を示す金属であることから、大電流に対応した回路接続構造体が得られやすくなる。
【0016】
なお、電極がチタンを含む電極材料から形成される場合、導電粒子が配合された従来の回路接続材料では、接続抵抗の低減と接続信頼性の確保との両立が一層困難となる傾向にあることが本発明者らの検討により判明している。これに対し、本発明に係る導電性接着剤によれば、表面にTiを含む層を備える電極を接続する場合であっても、接続抵抗の低減と接続信頼性の確保とを両立させることができる。したがって、本発明に係る方法によれば、上記の特性に対応した回路接続構造体を、接続抵抗の低減と接続信頼性の確保とを両立させつつ得ることができる。
【0017】
本発明の別の側面は、第一の回路電極を有する第一の回路部材と、第二の回路電極を有する第二の回路部材と、前記第一の回路部材と前記第二の回路部材との間に介在する接続部と、を備え、接続部が、上記の本発明に係る導電性接着剤の硬化物である回路接続構造体に関する。
【0018】
上記の回路接続構造体は、接続部が本発明に係る導電性接着剤の硬化物であることにより、低抵抗かつ接続信頼性に優れたものになり得る。
【0019】
上記の回路接続構造体において、第一の回路電極及び第二の回路電極の少なくとも一方が表面にTiを含む層を有していてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、対向する電極の接続において低抵抗を示し、かつ、良好な接続信頼性を得ることができる導電性接着剤を提供することができる。本発明はまた、そのような導電性接着剤を用いて、低抵抗かつ接続信頼性に優れた回路接続構造体及びその製造方法を提供することができる。回路接続構造体は、例えば高温高湿の環境にさらされた場合であっても、接続信頼性を十分に確保することが可能であり、消費電力の低減に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】導電粒子の圧縮回復率計算方法を示す模式図である。
【
図2】導電粒子の圧縮曲線の一例を示すグラフである。
【
図3】本発明の一実施形態に係る回路接続構造体の製造方法を模式的に示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。同様に、「(メタ)アクリロキシ」とは、アクリロキシ又はそれに対応するメタクリロキシを意味する。「A又はB」とは、AとBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。
【0024】
また、本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。更に、本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0025】
<導電性接着剤>
本実施形態の導電性接着剤は、導電粒子及び接着剤組成物を含有する。
【0026】
(導電粒子)
導電粒子は、20%圧縮時の圧縮硬さが、25℃において10.0GPa以上且つ150℃において3.5GPa以下であるものを用いることができる。なお、導電粒子の圧縮硬さとは、導電粒子の硬さの指標である。
【0027】
導電粒子の圧縮硬さ(以下、「K値」という場合もある。)は、微小圧縮試験機(装置名:フィッシャーHM2000、フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて測定することができる。具体的には、まず所定の温度(例えば、25℃、150℃)に設定したステージ上のスライドグラス(製品名:S1214、松浪ガラス工業株式会社製)に導電粒子を散布する。そして、その中から1個の粒子を選択し、一辺50μmの正方形の底面を有する角柱状のダイアモンド製の圧子を用いて、初期荷重0.1mNとして中心から0.33mN/秒の速度で圧縮したときの、応力-歪曲線から求めることができる。具体的には、荷重F(N)、変位S(mm)、粒子の半径R(mm)、弾性率E(Pa)、及びポアソン比σとしたとき弾性球の圧縮式
F=(21/2/3)×(S3/2)×(E×R1/2)/(1-σ2)
を用いて、下記式
K=E/(1-σ2)=(3/21/2)×F×(S-3/2)×(R-1/2)
より求めることができる。さらに、変形率X(%)、球の直径D(μm)とすると次式
K=3000F/(D2×X3/2)×106
により任意の変形率におけるK値を求めることができる。変形率Xは、次式
X=(S/D)×100
により計算される。圧縮試験における最大試験荷重は、例えば50mNに設定される。
【0028】
20%圧縮時のK値は、変形率Xを0.2として求められる。
【0029】
導電粒子は、20%圧縮時の圧縮硬さが、25℃において10.0GPa以上、好ましくは10.0~20.0GPaであり、より好ましくは10.0~15.0GPaであり、更に好ましくは10.0~13.0GPaであり、特に好ましくは10.5~12.0GPaである。25℃における導電粒子の20%圧縮時のK値(以下、K値(25℃、20%)という場合もある)が、上記範囲であると、対向する電極同士を接続する時に導電粒子が電極間で適度に扁平し、電極と導電粒子との接触面積を確保し易くなる傾向にあり、接続信頼性をさらに向上させることが容易となる。
【0030】
導電粒子は、20%圧縮時の圧縮硬さが、150℃において3.5GPa以下、好ましくは、1.0~3.5GPaであり、より好ましくは1.5~3.2GPaであり、更に好ましくは1.8~3.0GPaであり、特に好ましくは2.0~3.0GPaである。150℃における導電粒子の20%圧縮時のK値(以下、K値(150℃、20%)という場合もある)が、上記範囲であると、実装直後の導電粒子が適度な柔らかさを発現し、導電粒子の反発による抵抗上昇が生じにくくなる傾向にあり、接続信頼性をさらに向上させることが容易となる。
【0031】
導電粒子は、25℃における圧縮回復率(圧縮変形回復率)が、40%超であってもよく、45%以上であってもよく、50%以上であってもよく、70%以上であってもよく、80%以下であってもよく、75%以下であってもよく、60%以下であってもよい。25℃における導電粒子の圧縮回復率は、上記下限値と上記上限値とを組み合わせた範囲であってもよく、例えば、40%超80%以下であってもよく、45~80%であってもよく、50~75%であってもよく、70~75%であってもよく、55~60%であってもよい。
【0032】
圧縮回復率は、例えば微小圧縮試験機(装置名:フィッシャーHM2000、フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて測定することができる。具体的には、まず25℃に設定したステージ上のスライドグラス(製品名:S1214、松浪ガラス工業株式会社製)に導電粒子を散布する。そして、その中から1個の粒子を選択し、一辺50μmの正方形の底面を有する角柱状のダイアモンド製の圧子を用いて、初期荷重0.1mNとして中心から0.33mN/秒の速度で5mNの荷重がかかるまで圧縮した後、逆に0.33mN/秒の速度で初期荷重の値まで荷重を減らしていく過程の、荷重値と圧縮変位との関係を測定して、圧縮回復率を測定することができる。
【0033】
このことを図を用いて説明する。
図1は、導電粒子の圧縮回復率計算方法を示す模式図である。一方、
図2は、導電粒子の圧縮曲線の一例を示すグラフである。
図1及び
図2に示すように、初期荷重時(荷重0.1mN)から荷重反転時(荷重5mN)までの変位をL2とし、荷重反転時から最終荷重時(荷重0.1mN)までの変位をL1としたときの、L1/L2×100(%)の値が圧縮回復率である。この作業を10個の導電粒子に対して行い平均値をとり、本実施形態における圧縮回復率を算出する。
【0034】
導電粒子としては特に限定されないが、例えば、プラスチック粒子及び該プラスチック粒子を被覆する金属層を有するコアシェル粒子が挙げられる。金属層は、プラスチック粒子の表面を全て被覆している必要はなく、プラスチック粒子の表面の一部を被覆していてもよい。
【0035】
プラスチック粒子は、例えばポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、グアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、オキサゾリン系樹脂、カルボジイミド系樹脂、シリコーン系樹脂などからなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂から形成されるものが挙げられる。なお、プラスチック粒子としては、これらの樹脂とシリカ等の無機物とを複合化したものでもよい。
【0036】
プラスチック粒子としては、圧縮回復率及び圧縮硬さ(K値)の制御の容易さの観点から、エチレン性不飽和基を有する重合性単量体の1種類を重合させて得られる樹脂からなるプラスチック粒子、又は、エチレン性不飽和基を有する重合性単量体の2種類以上を共重合させて得られる樹脂からなるプラスチック粒子を用いることができる。エチレン性不飽和基を有する2種類以上の重合性単量体を共重合させて樹脂を得る場合、非架橋性単量体と架橋性単量体とを併用して、それらの共重合割合、種類を適宜調整することにより、プラスチック粒子の圧縮回復率及び圧縮硬さを容易に制御することができる。また、2種類以上の樹脂を含むプラスチック粒子を用いることで、導電粒子が上述したK値(25℃、20%)及びK値(150℃、20%)の条件を満たすように圧縮硬さを調整してもよい。上記非架橋性単量体及び上記架橋性単量体としては、例えば、特開2004-165019号公報に記載される単量体を使用できる。
【0037】
プラスチック粒子の平均粒径は1~10μmであることが好ましい。なお、高密度実装の観点からは、プラスチック粒子の平均粒径は1~5μmであることがより好ましい。また、電極表面の凹凸にばらつきがある場合に、より安定して接続状態を維持する観点からは、プラスチック粒子の平均粒径は2~5μmであることがさらに好ましい。
【0038】
なお、本実施形態において、粒子の平均粒径は、次のようにして求めることができる。すなわち、1個の粒子を無作為に選択し、これを示差走査電子顕微鏡で観察してその最大径及び最小径を測定する。この最大径及び最小径の積の平方根をその粒子の粒径とする。この方法で、無作為に選択した粒子50個について粒径を測定し、その平均値をとることで、粒子の平均粒径を求めることができる。
【0039】
金属層は、例えば、Ni、Au、Pd、W、Cu、及びNiBからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属から形成されることが好ましい。金属層は、例えば、Ni層、Ni層/Au層(Ni層上にAu層を備えた態様。以下同じ。)、Ni層/Pd層、Ni層/W層、Cu層、及びNiB層からなる群より選ばれる層を一つ又は二以上有していてもよい。金属層は、めっき、蒸着、スパッタ等の一般的な方法により形成され、薄膜であってもよい。なお、隣接する電極間の絶縁性向上の観点から、導電粒子は、金属層の外側に、金属層を覆うシリカ、アクリル樹脂等の絶縁性材料の層を有していてもよい。
【0040】
金属層の厚みは、導通性と価格とのバランスを図る観点から、10~1000nmであることが好ましく、20~200nmであることがより好ましく、50~150nmであることがさらに好ましい。なお、金属層上にさらに絶縁性材料の層、あるいは絶縁性微粒子を付着させて形成される付着層を設ける場合は、その厚みは50~1000nm程度であることが好ましい。これらの層の厚みは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、光学顕微鏡等により測定することができる。
【0041】
導電粒子の平均粒径は、2~10μmであることが好ましく、2~8μmであることがより好ましく、2~6μmであることがさらに好ましく、2~5μmであることが極めて好ましい。導電粒子の平均粒径が上記の範囲であると、例えば本実施形態の導電性接着剤を回路接続材料として用いる場合、導電粒子の粒径を接続する回路部材の電極高さより低くすることができ、隣接電極間の短絡をより減少させることが容易となる。
【0042】
導電性接着剤における導電粒子の含有量は、導電性接着剤の全体積を100体積部としたとき、0.1~30体積部であることが好ましく、0.25~25体積部であることがより好ましく、0.5~20体積部であることがさらに好ましい。導電粒子の含有量が上記の範囲であると、例えば本実施形態の導電性接着剤を回路接続材料として用いる場合、対向電極間の導電性と隣接電極間の絶縁性とをバランスよく両立することが容易となる。
【0043】
(接着剤組成物)
接着剤組成物としては特に限定されないが、例えば、熱硬化性又は光硬化性を有するものであってもよい。熱硬化性の接着剤組成物としては、例えば、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂の潜在性硬化剤とを含有する組成物(以下、「第1組成物」という。)、ラジカル重合性物質と加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤とを含有する組成物(以下、「第2組成物」)、又は第1組成物と第2組成物との混合組成物が挙げられる。
【0044】
第1組成物が含有するエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、ハロゲン化されていてもよく、水素添加されていてもよい。これらのエポキシ樹脂は、2種以上を併用してもよい。
【0045】
第1組成物が含有する潜在性硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化させることができるものであればよく、このような潜在性硬化剤としては、アニオン重合性の触媒型硬化剤、カチオン重合性の触媒型硬化剤、重付加型の硬化剤等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上の混合物として使用できる。これらのうち、速硬化性に優れ、化学当量的な考慮が不要である点からは、アニオン又はカチオン重合性の触媒型硬化剤が好ましい。
【0046】
アニオン又はカチオン重合性の触媒型硬化剤としては、イミダゾール系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤、三フッ化ホウ素-アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ジアミノマレオニトリル、メラミン及びその誘導体、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等が挙げられ、これらの変成物も使用することができる。重付加型の硬化剤としては、ポリアミン類、ポリメルカプタン類、ポリフェノール類、酸無水物等が挙げられる。
【0047】
アニオン重合性の触媒型硬化剤として第3級アミン類、イミダゾール類等を配合した場合、エポキシ樹脂は160℃~200℃程度の中温で数10秒~数時間程度の加熱により硬化する。このため、可使時間(ポットライフ)を比較的長くすることができる。カチオン重合性の触媒型硬化剤としては、例えば、エネルギー線照射によりエポキシ樹脂を硬化させる感光性オニウム塩(芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩等)が好ましい。また、エネルギー線照射以外に加熱によって活性化しエポキシ樹脂を硬化させるものとして、脂肪族スルホニウム塩等がある。この種の硬化剤は、速硬化性という特徴を有することから好ましい。
【0048】
これらの潜在性硬化剤を、ポリウレタン系、ポリエステル系等の高分子物質、ニッケル、銅等の金属薄膜、ケイ酸カルシウム等の無機物などで被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長できるため好ましい。
【0049】
第1組成物が含有する潜在性硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂と必要により配合するフィルム形成材との合計100質量部に対して、20~80質量部であることが好ましく、30~70質量部がより好ましい。
【0050】
第2組成物が含有するラジカル重合性物質は、ラジカルにより重合する官能基を有する物質である。このようなラジカル重合性物質としては、(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリロキシ化合物、マレイミド化合物、シトラコンイミド樹脂、ナジイミド樹脂等が挙げられる。ラジカル重合性物質は、モノマー又はオリゴマーの状態で用いてもよく、モノマーとオリゴマーとを併用することも可能である。また、必要によりハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン類等の重合禁止剤を適宜用いてもよい。
【0051】
上記(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0052】
また、耐熱性の向上の観点から、(メタ)アクリレート化合物がジシクロペンテニル基、トリシクロデカニル基及びトリアジン環からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を有することが好ましい。
【0053】
上記(メタ)アクリレート化合物以外のラジカル重合性物質は、例えば、国際公開第2009/063827号に記載の化合物を好適に使用することが可能である。これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0054】
また、上記ラジカル重合性物質に下記一般式(I)で示されるリン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質を併用することが好ましい。この場合、金属等の無機物表面に対する接着強度が向上するため、回路電極同士の接着に好適である。
【0055】
【0056】
リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質は、無水リン酸と2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質として、具体的には、モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート、ジ(2-メタクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート等がある。これらは単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0057】
上記一般式(I)で示されるリン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質の配合量は、ラジカル重合性物質と必要により配合するフィルム形成材との合計100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。
【0058】
上記ラジカル重合性物質は、アリル(メタ)アクリレートと併用することもができる。この場合、アリル(メタ)アクリレートの配合量は、ラジカル重合性物質と、必要により配合されるフィルム形成材との合計100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。
【0059】
第2組成物が含有する、加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤とは、加熱により分解して遊離ラジカルを発生する硬化剤である。このような硬化剤としては、過酸化物、アゾ系化合物等が挙げられる。このような硬化剤は、目的とする接続温度、接続時間、ポットライフ等により適宜選定される。高反応性及びポットライフの向上の観点から、半減期10時間の温度が40℃以上、かつ、半減期1分の温度が180℃以下の有機過酸化物が好ましく、半減期10時間の温度が60℃以上、かつ、半減期1分の温度が170℃以下の有機過酸化物がより好ましい。
【0060】
上記硬化剤の配合量は、ラジカル重合性物質と必要により配合されるフィルム形成材との合計100質量部に対して、0.05~20質量部であってもよく、0.1~10質量部であってもよい。また、本実施形態の導電性接着剤を回路接続材料として用いる場合、上記硬化剤の配合量は、ラジカル重合性物質と必要により配合されるフィルム形成材との合計100質量部に対して、1~10質量部であることが好ましく、2~8質量部であることがより好ましい。これにより、十分な反応率を得ることができ、接続時間を25秒以下とすることができる。
【0061】
第2組成物が含有する、加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤の具体例としては、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステルパーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイド等が挙げられる。また、本実施形態の導電性接着剤を回路接続材料として用いる場合、回路電極の腐食を抑えるという観点から、含有される塩素イオン及び有機酸の濃度が5000ppm以下である硬化剤が好ましく、さらに、加熱分解後に発生する有機酸が少ない硬化剤がより好ましい。このような硬化剤の具体例としては、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイド等が挙げられ、高反応性が得られるパーオキシエステルから選定された硬化剤がより好ましい。なお、上記硬化剤は、適宜混合して用いることができる。
【0062】
パーオキシエステルとしては、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノデート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノネート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノネート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノネート、t-ブチルパーオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(m-トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。上記パーオキシエステル以外の加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤は、例えば、国際公開第2009/063827号に記載の化合物を好適に使用することが可能である。これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0063】
これらの硬化剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができ、さらに分解促進剤、分解抑制剤等を混合して用いてもよい。また、これらの硬化剤をポリウレタン系又はポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化してもよい。マイクロカプセル化した硬化剤は、可使時間が延長されるために好ましい。
【0064】
光硬化性の接着剤組成物としては、上述した熱硬化性の接着剤組成物に用いられるものと同様のエポキシ樹脂又はラジカル重合性物質と、光開始剤とを含む組成物が挙げられる。
【0065】
接着剤組成物の配合量は、導電性接着剤の全体積を100体積部としたとき、70~99.9体積部であることが好ましく、75~99.75体積部であることがより好ましく、80~99.5体積部であることがさらに好ましい。接着剤組成物の配合量が上記の範囲であると、本実施形態の導電性接着剤を回路接続材料として用いる場合、回路接続時、及び接続後に電極間のギャップを保持し、優れた接続信頼性を備えるために必要な強度、弾性率を確保し易くなる。
【0066】
本実施形態に係る接着剤組成物には、必要に応じて、フィルム形成材を添加して用いてもよい。フィルム形成材とは、液状物を固形化し構成組成物をフィルム形状とした場合に、通常の状態(常温常圧)でのフィルムの取扱いを容易とし、容易に裂けたり、割れたり、べたついたりしない機械的特性等をフィルムに付与するものである。フィルム形成材としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、キシレン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、接着性、相溶性、耐熱性及び機械的強度に優れることからフェノキシ樹脂が好ましい。
【0067】
フェノキシ樹脂は、2官能フェノール類とエピハロヒドリンを高分子化するまで反応させるか、又は2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール類とを重付加させることにより得られる樹脂である。フェノキシ樹脂は、例えば2官能フェノール類1モルとエピハロヒドリン0.985~1.015モルとをアルカリ金属水酸化物等の触媒の存在下、非反応性溶媒中で40~120℃の温度で反応させることにより得ることができる。また、フェノキシ樹脂としては、樹脂の機械的特性及び熱的特性の観点からは、特に2官能性エポキシ樹脂と2官能性フェノール類の配合当量比をエポキシ基/フェノール水酸基=1/0.9~1/1.1とし、アルカリ金属化合物、有機リン系化合物、環状アミン系化合物等の触媒の存在下、沸点が120℃以上のアミド系、エーテル系、ケトン系、ラクトン系、アルコール系等の有機溶剤中で、反応固形分が50質量%以下の条件で50~200℃に加熱して重付加反応させて得たものが好ましい。フェノキシ樹脂は、単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0068】
上記2官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニルジグリシジルエーテル、メチル置換ビフェニルジグリシジルエーテル等が挙げられる。2官能フェノール類は、2個のフェノール性水酸基を有するものである。2官能フェノール類としては、例えば、ハイドロキノン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、メチル置換ビスフェノールフルオレン、ジヒドロキシビフェニル、メチル置換ジヒドロキシビフェニル等のビスフェノール類などが挙げられる。フェノキシ樹脂は、ラジカル重合性の官能基、又はその他の反応性化合物により変性(例えば、エポキシ変性)されていてもよい。
【0069】
フィルム形成材の配合量は、導電性接着剤の全質量を100質量部としたとき、10~90質量部であることが好ましく、20~60質量部であることがより好ましい。
【0070】
本実施形態に係る接着剤組成物は、更に、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル及びアクリロニトリルのうち少なくとも一つをモノマー成分とした重合体又は共重合体を含んでいてもよい。ここで、応力緩和に優れることから、接着剤組成物は、グリシジルエーテル基を含有するグリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタクリレートを含む共重合体系アクリルゴム等を併用して含むことが好ましい。これらのアクリルゴムの重量平均分子量は、接着剤組成物の凝集力を高める点から20万以上が好ましい。
【0071】
本実施形態に係る接着剤組成物は、更に、ゴム微粒子、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤、フェノール樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート類等を含有することもできる。
【0072】
ゴム微粒子は、その平均粒径が、配合する導電粒子の平均粒径の2倍以下であり、且つ室温(25℃)での貯蔵弾性率が導電性接着剤の室温での貯蔵弾性率の1/2以下であるものであることが好ましい。特に、ゴム微粒子の材質が、シリコーン、アクリルエマルジョン、SBR、NBR又はポリブタジエンゴムである場合は、単独で又は2種以上を混合して用いることが好適である。3次元架橋したこれらゴム微粒子は、耐溶剤性に優れており、接着剤組成物中に容易に分散される。
【0073】
充填剤は、本実施形態の導電性接着剤を回路接続材料として用いる場合に回路電極間の電気特性の接続信頼性等を向上させることができる。充填剤としては、例えばその平均粒径が導電粒子の平均粒径の1/2以下であるものを好適に使用できる。また、導電性を持たない粒子を併用する場合には、導電性を持たない粒子の平均粒径以下のものであれば使用できる。
【0074】
充填剤の配合量は、導電性接着剤100質量部に対して5~60質量部であることが好ましい。配合量が60質量部以下であることにより、接続信頼性向上効果をより十分に得られる傾向があり、他方、5質量部以上であることにより充填剤添加の効果を十分に得られる傾向がある。
【0075】
カップリング剤としては、アミノ基、ビニル基、アクリロイル基、エポキシ基又はイソシアネート基を含有する化合物が、接着性が向上するので好ましい。
【0076】
本実施形態の導電性接着剤は、回路接続材料として好適に用いることができる。回路接続材料は、接続時に溶融流動して相対向する回路電極の接続を得た後、硬化して接続を保持するものであり、回路接続材料の流動性は重要な因子である。このことを示す指標として、例えば次のようなものが挙げられる。すなわち、厚み0.7mmの15mm×15mmの二枚のガラス板の間に、厚み35μmの5mm×5mmの回路接続材料を挟み、170℃、2MPa、10秒の条件で加熱加圧を行った場合、加熱加圧前の回路接続材料の主面の面積(A)と加熱加圧後の主面の面積(B)とを用いて表される流動性(B)/(A)の値が1.3~3.0であることが好ましく、1.5~2.5であることがより好ましい。1.3以上であると流動性が好適であり、良好な接続を得易い傾向があり、3.0以下であると、気泡が発生し難く信頼性により優れる傾向がある。
【0077】
本実施形態の導電性接着剤を回路接続材料として用いる場合、導電性接着剤の硬化後の40℃での弾性率は100~3000MPaが好ましく、200~2000MPaがより好ましい。硬化後の導電性接着剤の弾性率は、例えば動的粘弾性測定装置(DVE、DMA等)を用いて測定することができる。
【0078】
本実施形態の導電性接着剤を回路接続材料として用いる場合、回路接続材料は、回路電極同士の接続に用いられ、FOG(Flex on Glass)接続、FOF(Flex on Flex)接続、FOP(Flex on Polymer)接続等に好適に用いられる。ここで、FOG接続とは、例えば、TCP、COF及びFPCに代表される、フレキシブル基板と有機ELパネル又はLCDパネルとを接続する方式であり、フレキシブル基板に形成された回路電極と有機ELパネル又はLCDパネルを構成するガラス基板に形成された回路電極との接続を指す。また、FOF接続とは、フレキシブル基板に形成された回路電極とフレキシブル基板に形成された回路電極との接続を指し、FOP接続とは、フレキシブル基板に形成された回路電極と有機ELパネル又はLCDパネルを構成するポリマー基板に形成された回路電極との接続を指す。
【0079】
なお、本実施形態の導電性接着剤は、フィルム状に形成することも可能である。具体的には、上述した所定の各成分を有機溶媒等に溶解させ、接着剤組成物と導電粒子とを含有する導電性接着剤含有液を調製し、これをポリエチレンテレフタレート(PET)等からなるフィルム上に塗工装置を用いて塗布し、さらに所定の乾燥処理を行うことにより、フィルム状の導電性接着剤を得ることができる。このような導電性接着剤は、厚みが3~100μmであることが好ましく、5~50μmであることがより好ましい。このような厚みを有するフィルム状の導電性接着剤は、回路接続材料として用いる場合、好適な回路接続性及びハンドリング性を確保しやすくなる。
【0080】
本実施形態の導電性接着剤は、異方導電性接着剤等の回路接続材料として用いることができる。
【0081】
<回路接続構造体>
本実施形態の回路接続構造体は、第一の回路電極を有する第一の回路部材と、第二の回路電極を有する第二の回路部材と、第一の回路部材と第二の回路部材との間に介在する、上述の本実施形態の導電性接着剤の硬化物からなる接続部と、を有している。
【0082】
本実施形態において、回路電極の材料としては、Ti、Al、Mo、Co、Cu、Cr、Sn、Zn、Ga、In、Ni、Au、Ag、V、Sb、Bi、Re、Ta、Nb、W等を用いることができるが、第一の回路電極及び第二の回路電極の少なくとも一方が表面にTiを含む層を備えていることが好ましい。このような電極としては、例えば、基板側からAl層及びTiを含む層をこの順に備える電極、Ti層、Al層及びTiを含む層をこの順に備える電極、Mo層、Al層及びTiを含む層をこの順に備える電極、AlNd層及びTiを含む層をこの順に備える電極等が挙げられる。
【0083】
ここで、Tiを含む層とは、構成元素として少なくともTiを含む層であってもよく、構成元素としてTiを主成分として含む層であってもよく、Tiを単独で含む層(Tiからなる層)であってもよい。ここで、「主成分」とは、全構成元素に対して40atm%以上含まれる成分のことを言う。ただし、上述の回路接続材料の特性を十分に発揮できる観点から、Tiを含む層は、少なくともTiを50atm%以上含む層が好ましく、100atm%含む層(Tiからなる層)がより好ましい。
【0084】
回路電極の厚みは、接続抵抗と価格とのバランスを図る観点から、100~5000nmが好ましく、100~2500nmがさらに好ましい。また、下限を500nmとすることもできる。一方、Tiを含む層の厚みは、耐食性、化学的安定性、物理的安定性、ガスバリア性及び拡散バリア性を十分に確保し易いという観点から、5~2000nm程度であることが好ましい。
【0085】
本実施形態の回路接続構造体は、第一の回路電極を有する第一の回路部材と第二の回路電極を有する第二の回路部材とを、第一の回路電極と第二の回路電極とが対向するように配置し、対向配置した第一の回路電極と第二の回路電極との間に、本実施形態の導電性接着剤を介在させ、第一の回路部材及び第二の回路部材を熱圧着して、第一の回路電極及び第二の回路電極を電気的に接続させることにより、作製することができる。このように、本実施形態の導電性接着剤からなる回路接続材料は、電気回路相互の接着用の材料として有用である。
【0086】
より具体的には、回路部材としては、例えば、半導体チップ、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品、プリント基板等の基板などが挙げられる。これらの回路部材には上述の回路電極が通常は多数(場合によっては単数でもよい)設けられている。それらの回路電極の少なくとも一部を対向配置し、対向配置した回路電極間に本実施形態の導電性接着剤からなる回路接続材料を介在させ、回路部材の少なくとも1組を加熱加圧することで、対向配置した回路電極同士を電気的に接続する。この際、対向配置した回路電極同士は、導電性接着剤に含まれる導電粒子を介して電気的に接続される一方で、隣接する回路電極同士の絶縁は保たれる。このように、本実施形態の導電性接着剤からなる回路接続材料は異方導電性を示す。
【0087】
次に、
図3を用いて回路接続構造体の製造方法の一実施形態を説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る回路接続構造体の製造方法を模式的に示す工程断面図である。
図3(a)は回路部材同士を接続する前の工程断面図であり、
図3(b)は回路部材同士を接続する際の工程断面図であり、
図3(c)は回路部材同士を接続した後の工程断面図である。
【0088】
まず、
図3(a)に示すように、有機ELパネル3上に回路電極2及び回路基板4が設けられた回路部材と、回路基板5上に回路電極6が設けられた回路部材とを準備する。そして、回路電極2の上に、フィルム状の回路接続材料1を載置する。フィルム状の回路接続材料1は、フィルム状に成形された本実施形態の導電性接着剤からなる。
【0089】
次に、
図3(b)に示すように、回路電極6が設けられた回路基板5を、回路電極2と回路電極6とが互いに対向するように位置あわせをしながら、フィルム状の回路接続材料1の上に載置して、フィルム状の回路接続材料1を回路電極2と回路電極6との間に介在させる。なお、回路電極2及び6は奥行き方向に複数の電極が並んだ構造を有しており(図示しない)、また、回路電極2は表面にTiを含む層を備えている(図示しない)。
【0090】
本図における回路接続材料1はフィルム状であるため取扱いが容易である。このため、このフィルム状の回路接続材料1を回路電極2と回路電極6との間に容易に介在させることができ、有機ELパネル3と回路基板5との接続作業を容易にすることができる。
【0091】
次に、加熱しながら有機ELパネル3と回路基板5とを介して、フィルム状の回路接続材料1を
図3(b)の矢印Aの方向に加圧して硬化処理を行う。これによって
図3(c)に示すような、回路部材同士が回路接続材料の硬化物11を介して接続された回路接続構造体20が得られる。硬化処理の方法としては使用する接着剤組成物に応じて、加熱及び光照射の一方又は双方を採用することができる。
【0092】
本実施形態の回路接続構造体の製造方法においては、熱又は光による硬化性を有する本実施形態の導電性接着剤からなる回路接続材料を、表面が金、銀、錫及び白金族から選ばれる金属である一方の電極回路上に形成した後、表面がチタンであるもう一方の回路電極を位置合わせし、これらを加熱、加圧して接続することができる。
【実施例0093】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0094】
(導電粒子の準備)
以下の表1に示す6種類の導電粒子を準備した。これらの粒子は、プラスチック粒子をコアとし、プラスチック粒子を被覆する主成分がNiの金属層をシェルとするコアシェル粒子である。なお、No.1~6の導電粒子の平均粒径は3μmである。
【0095】
【0096】
<導電粒子の20%圧縮硬さの測定>
導電粒子の圧縮硬さは、以下の手順で求めた。
微小圧縮試験機(装置名:フィッシャーHM2000、フィッシャー・インストルメンツ社製)を用意し、所定の温度(25℃、150℃)に設定したステージ上のスライドグラス(製品名:S1214、松浪ガラス工業株式会社製)に導電粒子を散布した。そして、その中から1個の粒子を選択し、一辺50μmの正方形の底面を有する角柱状のダイアモンド製の圧子を用いて、初期荷重0.1mNとして中心から0.33mN/秒の速度で圧縮したときの、応力-歪曲線を得た。下記式から導電粒子の20%圧縮硬さK値(20%)を算出した。
K値(20%)=(3/√2)×F20×S20
-3/2×R-1/2×10-3
R:導電粒子の半径(μm)、S20:20%変形時の変異量、F20:変形率が20%のときの荷重(N)
【0097】
<導電粒子の圧縮回復率の測定>
導電粒子の圧縮回復率は、以下の手順で求めた。
微小圧縮試験機(装置名:フィッシャーHM2000、フィッシャー・インストルメンツ社製)を用意し、25℃に設定したステージ上のスライドグラス(製品名:S1214、松浪ガラス工業株式会社製)に導電粒子を散布した。そして、その中から1個の粒子を選択し、一辺50μmの正方形の底面を有する角柱状のダイアモンド製の圧子を用いて、初期荷重0.1mNとして中心から0.33mN/秒の速度で5mNの荷重がかかるまで圧縮した後、逆に0.33mN/秒の速度で初期荷重の値まで荷重を減らしていく過程の、荷重値と圧縮変位との関係を測定した。このときの初期荷重時(荷重0.1mN)から荷重反転時(荷重5mN)までの変位をL2とし、荷重反転時から最終荷重時(荷重0.1mN)までの変位をL1としたときの、L1/L2×100(%)の値を算出した。この作業を10個の導電粒子に対して行い、これらの平均値を圧縮回復率とした。
【0098】
<接着剤組成物含有液の調製>
(調製例A)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂と、分子内にフルオレン環構造を有するフェノール化合物(4,4’-(9-フルオレニリデン)-ジフェニール)とからフェノキシ樹脂を合成し、この樹脂をトルエン及び酢酸エチルの混合溶液(トルエン/酢酸エチル=50/50(質量比))に溶解して、固形分40質量%の溶液とした。
【0099】
一方で、ゴム成分としてアクリルゴム(ブチルアクリレート40重量部-エチルアクリレート30重量部-アクリロニトリル30重量部-グリシジルメタクリレート3重量部の共重合体、重量平均分子量80万)を用意し、このアクリルゴムをトルエン及び酢酸エチルの混合溶液(トルエン/酢酸エチル=50/50(質量比))に溶解して、固形分15質量%の溶液とした。また、マイクロカプセル型潜在性硬化剤(マイクロカプセル化されたアミン系硬化剤)と、ビスフェノールF型エポキシ樹脂と、ナフタレン型エポキシ樹脂とを、質量比34:49:17で含有する液状の硬化剤含有エポキシ樹脂(エポキシ当量:202)を用意した。
【0100】
上記で用意した材料を、固形分質量でフェノキシ樹脂/アクリルゴム/硬化剤含有エポキシ樹脂が20g/30g/50gとなる割合で配合し、接着剤組成物含有液Aを調製した。
【0101】
(調製例B)
フェノキシ樹脂(製品名:PKHC、ユニオンカーバイド株式会社製、重量平均分子量5000)50gを、トルエン/酢酸エチル=50/50(質量比)の混合溶剤に溶解して、固形分40質量%のフェノキシ樹脂溶液とした。
【0102】
一方で、重量平均分子量800のポリカプロラクトンジオール400質量部、2-ヒドロキシプロピルアクリレート131質量部、触媒としてのジブチル錫ジラウレート0.5質量部及び重合禁止剤としてのハイドロキノンモノメチルエーテル1.0質量部を攪拌しながら50℃に加熱して混合した。次いで、この混合液に、イソホロンジイソシアネート222質量部を滴下し更に攪拌しながら80℃に昇温してウレタン化反応を行った。イソシアネート基の反応率が99%以上になったことを確認した後、反応温度を下げてウレタンアクリレートを得た。
【0103】
次いで、上記フェノキシ樹脂溶液から固形分が50g含まれるように量り取ったフェノキシ樹脂溶液と、上記ウレタンアクリレート30gと、イソシアヌレート型アクリレート(製品名:M-215、東亞合成株式会社製)15gと、リン酸エステル型アクリレート(製品名:P-1M、共栄社化学株式会社製)1gと、遊離ラジカル発生剤としてのベンゾイルパーオキサイド(製品名:ナイパーBMT-K40、日油株式会社製)4gとを混合して接着剤組成物含有液Bを調製した。
【0104】
<回路接続材料の作製>
(実施例1)
上記で得られた接着剤組成物含有液A100質量部に対して、No.1の導電粒子を10質量部分散させて回路接続材料含有液を調製した。この回路接続材料含有液を、片面を表面処理した厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗工装置を用いて塗布し、70℃で3分間熱風乾燥させることにより、PETフィルム上に厚みが20μmのフィルム状の回路接続材料を得た。得られた回路接続材料の全質量を100体積部としたとき、接着剤組成物及び導電粒子の含有量は、それぞれ94体積部及び6体積部であった。
【0105】
(実施例2~3及び比較例1~3)
導電粒子の種類を表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、フィルム状の回路接続材料を作製した。
【0106】
(実施例4)
上記で得られた接着剤組成物含有液B100質量部に対して、No.1の導電粒子を10質量部分散させて回路接続材料含有液を調製した。この回路接続材料含有液を、片面を表面処理した厚み50μmのPETフィルム上に塗工装置を用いて塗布し、70℃で3分間熱風乾燥させることにより、PETフィルム上に厚みが20μmのフィルム状の回路接続材料を得た。得られた回路接続材料の全体積を100体積部としたとき、接着剤組成物及び導電粒子の含有量は、それぞれ94体積部及び6体積部であった。
【0107】
(実施例5~6及び比較例4~6)
導電粒子の種類を表2に示すように変更したこと以外は、実施例4と同様にして、フィルム状の回路接続材料を作製した。
【0108】
<接続信頼性の評価>
実施例及び比較例で得られた、PETフィルム付きのフィルム状の回路接続材料を所定のサイズ(幅1.5mm、長さ3cm)に裁断し、その接着面を、最表面からチタン(膜厚50nm)及びアルミニウム(膜厚250nm)の順にコートされたガラス基板(厚さ0.7mm)上に70℃、1MPaで2秒間加熱加圧して転写し、PETフィルムを剥離した。次いで、ピッチ25μm、厚み8μmのすずめっき銅回路を800本有するフレキシブル回路板(FPC)を、転写した回路接続材料上に置き、24℃、0.5MPaで1秒間加圧して、ガラス基板上にFPCを仮固定した。次いで、これを本圧着装置に設置し、200μm厚みのシリコーンゴムシートをクッション材とし、FPC側から、ヒートツールによって170℃、4.5MPaで6秒間加熱加圧して幅1.5mmにわたり接続し、回路接続構造体を得た。この回路接続構造体の接続部を含むFPCの隣接回路間の抵抗値をマルチメータ(装置名:TR6845、アドバンテスト社製)で測定した。なお、隣接回路間の抵抗32点を測定して平均値を求め、これを初期の接続抵抗とした。また、測定後の部材を85℃85%RHの条件で250時間処理し、同様に高温高湿処理後の接続抵抗を測定した。この際、初期の接続抵抗からの抵抗増加率を合わせて算出した。得られた結果を表2に示す。
【0109】
【0110】
表2に示すとおり、実施例で得られた回路接続材料は、比較例で得られた回路接続材料と比較して低抵抗を示すとともに、高温高湿処理後も接続抵抗の増加が小さく、接続信頼性に優れている。