(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024152831
(43)【公開日】2024-10-25
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂形成性組成物、ポリウレタン樹脂、成形体、及びコーティング剤
(51)【国際特許分類】
C08G 18/40 20060101AFI20241018BHJP
C08G 18/44 20060101ALI20241018BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20241018BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20241018BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20241018BHJP
C08G 18/22 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C08G18/40 009
C08G18/44
C08G18/10
C08G18/48
C08G18/76 057
C08G18/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024131985
(22)【出願日】2024-08-08
(62)【分割の表示】P 2024535482の分割
【原出願日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2022204048
(32)【優先日】2022-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】竹内 裕也
(72)【発明者】
【氏名】井邉 裕介
(57)【要約】
【課題】有機溶剤を低減しながら、長時間のポットライフを有するとともに、優れた低温屈曲性を有するポリウレタン樹脂の作製に資するポリウレタン樹脂形成性組成物を提供すること。
【解決手段】ポリオール成分を含む主剤と、ポリイソシアネート成分を含む硬化剤と、触媒と、を含み、ポリオール成分が、水酸基数が3以上である第1のポリオールと、水酸基数が2である第2のポリオールと、を含み、第1のポリオールが、ポリカーボネートポリエステルポリオールを含み、ポリイソシアネート成分が、ジフェニルメタンジイソシアネートに由来する部位とポリエーテルポリオールに由来する部位とを有するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含み、触媒が、チタン、亜鉛及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む金属触媒を含み、有機溶剤の含有量が、0~10質量%である、ポリウレタン樹脂形成性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分を含む主剤と、ポリイソシアネート成分を含む硬化剤と、触媒と、を含み、
前記ポリオール成分が、水酸基数が3以上である第1のポリオールと、水酸基数が2である第2のポリオールと、を含み、
前記第1のポリオールが、ポリカーボネートポリエステルポリオールを含み、
前記ポリイソシアネート成分が、ジフェニルメタンジイソシアネートに由来する部位とポリエーテルポリオールに由来する部位とを有するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含み、
前記触媒が、チタン、亜鉛及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む金属触媒を含み、
有機溶剤の含有量が、0~10質量%である、ポリウレタン樹脂形成性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリウレタン樹脂形成性組成物、ポリウレタン樹脂、成形体、及びコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
有機溶剤を多く含有するポリウレタン樹脂形成性組成物は、各種の素材への密着性が高く種々の物性に優れていることから、被覆剤、塗料、接着剤および印刷インキなどに広く用いられてきた。ところが近年、環境負荷低減のため有機溶剤を低減したポリウレタン樹脂形成性組成物が要望されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、トリレンジイソシアネートまたはジフェニルメタンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体と、さらに、芳香族ポリイソシアネート(但しトリレンジイソシアネートまたはジフェニルメタンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体を除く)を含むポリイソシアネートと、ポリオールとを含む無溶剤型反応性接着剤であって、特定量のトリメチロールプロパンアダクト体を含む、無溶剤型反応性接着剤を開示している。
【0004】
特許文献2は、少なくとも1種のポリイソシアネートと、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のポリオールと、2つ以上のOH基及び水素架橋基を有する少なくとも1種のポリオールと、を含む反応物質の反応生成物であるイソシアネートプレポリマーを含むイソシアネート成分と、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のポリオールを含むポリオール成分と、を含む、2成分無溶剤接着剤を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-082441号公報
【特許文献2】特開2021-107555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の無溶剤型のポリウレタン樹脂形成性組成物により形成されるポリウレタン樹脂は、低温屈曲性が十分ではない。また、作業性の観点から長時間のポットライフが求められるが、ポットライフを長くすることは必ずしも容易ではない。
【0007】
本開示のいくつかの態様は、有機溶剤を低減したポリウレタン樹脂形成性組成物でありながら、長時間のポットライフを有するとともに、優れた低温屈曲性を有するポリウレタン樹脂の作製に資するポリウレタン樹脂形成性組成物、及び該ポリウレタン樹脂形成性組成物を含むコーティング剤を提供することに向けられている。また、本開示の他のいくつかの態様は、上記ポリウレタン樹脂形成性樹脂物から形成されるポリウレタン樹脂、及び、上記ポリウレタン樹脂形成性樹脂物の硬化物からなる成形体を提供することに向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の各態様は、以下に示す[1]~[12]の実施形態を含むものである。
【0009】
[1] ポリオール成分を含む主剤と、ポリイソシアネート成分を含む硬化剤と、触媒と、を含み、前記ポリオール成分が、水酸基数が3以上である第1のポリオールと、水酸基数が2である第2のポリオールと、を含み、前記第1のポリオールが、ポリカーボネートポリエステルポリオールを含み、前記ポリイソシアネート成分が、ジフェニルメタンジイソシアネートに由来する部位とポリエーテルポリオールに由来する部位とを有するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含み、前記触媒が、チタン、亜鉛及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む金属触媒を含み、有機溶剤の含有量が、0~10質量%である、ポリウレタン樹脂形成性組成物。
【0010】
[2] 前記第1のポリオールが、環状エステル化合物の開環付加重合により形成される構造を有するポリカーボネートポリエステルポリオールを含む、[1]に記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。
【0011】
[3] 前記第2のポリオールが、カーボネート基を有するジオールを含む、[1]又は[2]に記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。
【0012】
[4] 前記第2のポリオールが、ポリカーボネートポリエステルジオールを含む、[1]~[3]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。
【0013】
[5] 前記主剤が、ポリカーボネートジオールと、水酸基数が3以上であるポリエステルポリオールと、ポリエステルジオールとの反応生成物を含む、[1]~[4]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。
【0014】
[6] 前記反応生成物の平均水酸基数が、2.1~3.5である、[5]に記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。
【0015】
[7] 前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー中の前記ポリエーテルポリオールに由来する部位の含有量が、当該イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの全質量を基準として、20~80質量%である、[1]~[6]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。
【0016】
[8] 前記ポリイソシアネート成分のイソシアネート基含量が、4~30質量%である、[1]~[7]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。
【0017】
[9] 前記触媒が、25℃で液状である、[1]~[8]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。
【0018】
[10] [1]~[9]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂形成性組成物から形成される、ポリウレタン樹脂。
【0019】
[11] [1]~[9]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含む、成形体。
【0020】
[12] [1]~[9]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂形成性組成物を含む、コーティング剤。
【発明の効果】
【0021】
本開示のいくつかの態様によれば、長時間のポットライフを有するとともに、優れた低温屈曲性を有するポリウレタン樹脂の作製に資するポリウレタン樹脂形成性組成物、及び該ポリウレタン樹脂形成性組成物を含むコーティング剤を提供することができる。また、本開示の他のいくつかの態様によれば、上記ポリウレタン樹脂形成性樹脂物から形成されるポリウレタン樹脂、及び、上記ポリウレタン樹脂形成性樹脂物の硬化物からなる成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。「~」を用いて示された数値範囲の最小値又は最大値は、「~」を用いて示された他の数値範囲の最大値又は最小値と任意に組み合わせ可能である。また、個別に記載した上限値及び下限値も任意に組み合わせ可能である。
【0023】
<ポリウレタン樹脂形成性組成物>
本開示の一態様は、ポリオール成分を含む主剤と、ポリイソシアネート成分を含む硬化剤と、触媒と、を含み、ポリオール成分が、水酸基数が3以上である第1のポリオールと、水酸基数が2である第2のポリオールと、を含み、第1のポリオールが、ポリカーボネートポリエステルポリオールを含み、ポリイソシアネート成分が、ジフェニルメタンジイソシアネートに由来する部位とポリエーテルポリオールに由来する部位とを有するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含み、触媒が、チタン、亜鉛及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む金属触媒を含み、有機溶剤の含有量が、0~10質量%である、ポリウレタン樹脂形成性組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)である。
【0024】
上記組成物は、構成成分の全てが一液中に含まれる一液型の組成物であってよく、構成成分が複数の液中に分かれて存在する多液型の組成物であってもよい。例えば、上記組成物は、主剤を含有する第1の液と、硬化剤を含有する第2の液と、を含んでいてよい。上記組成物は、上記第1の液と、上記第2の液と、これらとは異なる第3の液と、を含んでいてもよい。上記組成物が多液型の組成物である場合、他の構成成分(触媒等)は、第1の液に含有されていてよく、第2の液に含有されていてもよく、第3の液に含有されていてもよい。
【0025】
上記組成物は主剤と硬化剤とが反応することによって硬化し、ポリウレタン樹脂を含む硬化物を形成する。上記組成物によれば、優れた低温屈曲性を有するポリウレタン樹脂を得ることができる。また、上記組成物は、長時間のポットライフを有することから、作業性に優れる。また、上記組成物は、硬化性にも優れる傾向があり、上記組成物によれば長時間のポットライフと短時間のプレキュア時間と両立することも可能である。したがって、上記組成物は、生産時の環境に優しいポリウレタン樹脂形成性組成物(例えば、無溶剤系反応硬化性ポリウレタン樹脂形成性組成物)ということもできる。
【0026】
また、上記組成物により形成されるポリウレタン樹脂は、引張特性にも優れる傾向がある。具体的には、例えば、常態における耐久性(すなわち、破断強度により確認される引張特性)、耐熱性(耐熱耐久性)及び耐湿熱性(耐湿熱耐久性)に優れる傾向がある。
【0027】
以下、上記組成物に含まれる各成分について説明する。
【0028】
(主剤)
主剤はポリオール成分を含む。ポリオール成分は、2以上の水酸基を有する化合物(ポリオール)からなる成分であり、水酸基数が3以上である第1のポリオールと、水酸基数が2である第2のポリオールと、を含む。
【0029】
[第1のポリオール]
第1のポリオールは、ポリカーボネートポリエステルポリオールを含む。ポリカーボネートポリエステルポリオールは、2以上のカーボネートユニットと、2以上のエステルユニットと、3以上の水酸基と、を有する。
【0030】
ポリカーボネートポリエステルポリオールは、例えば、ポリカーボネートポリオールとポリエステルポリオールとのエステル交換反応によって得られる。そのため、ポリカーボネートポリエステルポリオールは、例えば、ポリカーボネートポリオールに由来する部位と、ポリエステルポリオールに由来する部位と、を有する。
【0031】
ポリカーボネートポリエステルポリオールは、好ましくは、ポリカーボネートジオール(以下、「ポリオール(p1)」という。)に由来する部位と、水酸基数が3以上のポリエステルポリオール(以下、「ポリオール(p2)」という。)に由来する部位と、を有する化合物(例えば、ポリオール(p1)とポリオール(p2)との反応によって得られる化合物)であり、より好ましくは、ポリオール(p1)に由来する部位と、ポリオール(p2)に由来する部位と、ポリエステルジオール(以下、「ポリオール(p3)」という。)に由来する部位と、を有する化合物(例えば、ポリオール(p1)とポリオール(p2)とポリオール(p3)との反応によって得られる化合物)である。ポリオール(p1)~(p3)は、それぞれ1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
ポリオール(p1)は、2以上のカーボネートユニットと、2つの水酸基と、を有する。ポリオール(p1)は、好ましくは、カーボネート類に由来する部位と、2官能アルコールに由来する部位と、を有する化合物(例えば、カーボネート類と2官能アルコールとの反応によって得られる化合物)である。
【0033】
カーボネート類としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート類;ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジアントリルカーボネート、ジフェナントリルカーボネート、ジインダニルカーボネート、テトラヒドロナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート類;等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
2官能アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマージオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
ポリオール(p1)の数平均分子量は、合成の容易さ及び取り扱いやすさを考慮すると、400~5000が好ましく、500~3000がより好ましい。なお、本明細書中の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される、標準ポリスチレン換算値である。
【0036】
ポリオール(p2)は、2以上のエステルユニットと、3以上の水酸基と、を有する。ポリオール(p2)は、好ましくは、多価アルコールに由来する部位と、ジカルボン酸又は環状エステル化合物に由来する部位とを有する化合物(例えば、多価アルコールを含むポリオールとジカルボン酸との反応によって得られる化合物、又は、多価アルコールを含むポリオールを開始剤として環状エステル化合物を開環付加重合することで得られる化合物)である。環状エステル化合物に由来する部位を有するポリオール(p2)は、環状エステル化合物の開環付加重合により形成される構造を有するということもできる。ポリオール(p2)は、より優れた低温屈曲性が得られる観点、並びに、重合時の安定性及び経済性が良好となる観点で、環状エステル化合物の開環付加重合により形成される構造を有することがより好ましい。
【0037】
多価アルコールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、アジピン酸、酒石酸、ピメリン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
環状エステル化合物としては、ラクトン類が挙げられる。ラクトン類としては、例えば、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、β-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、α-カプロラクトン、β-カプロラクトン、γ-カプロラクトン、δ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、α-メチル-ε-カプロラクトン、β-メチル-ε-カプロラクトン、4-メチルカプロラクトン、γ-カプリロラクトン、ε-カプリロラクトン、ε-パルミトラクトン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
ポリオール(p2)は、重合時の安定性及び経済性の点から、トリメチロールプロパンを開始剤としたε-カプロラクトンの開環付加重合体であることが好ましい。
【0041】
ポリオール(p2)は、2官能アルコールに由来する部位を有していてもよい。すなわち、上記多価アルコールを含むポリオールには、2官能アルコールが含まれてよい。2官能アルコールとしては、ポリオール(p1)で挙げた2官能アルコールと同じものが挙げられる。
【0042】
ポリオール(p2)の数平均分子量は、合成の容易さ及び取り扱いやすさの観点から、400~5000が好ましく、500~3000がより好ましい。
【0043】
ポリオール(p3)は、2以上のエステルユニットと、2つの水酸基と、を有する。ポリオール(p3)は、好ましくは、2官能アルコールに由来する部位と、多塩基酸成分又は環状エステル化合物に由来する部位と、を有する化合物(例えば、2官能アルコールと多塩基酸成分との反応によって得られる化合物、又は、2官能アルコールを開始剤として環状エステル化合物を開環付加重合することで得られる化合物)である。環状エステル化合物に由来する部位を有するポリオール(p3)は、環状エステル化合物の開環付加重合により形成される構造を有するということもできる。ポリオール(p3)は、重合時の安定性及び経済性の点で、環状エステル化合物の開環付加重合により形成される構造を有することがより好ましい。
【0044】
2官能アルコールとしては、ポリオール(p1)で挙げた2官能アルコールと同じものが挙げられる。多塩基酸成分としては、ポリオール(p2)で挙げたジカルボン酸と同じものが挙げられる。環状エステル化合物としては、ラクトン類が挙げられ、ラクトン類としては、ポリオール(p2)で挙げたラクトン類と同じものが挙げられる。これらは1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
ポリオール(p3)は、重合時の安定性及び経済性の点から、エチレングリコールを開始剤としたε-カプロラクトンの開環付加重合体であることが好ましい。
【0046】
ポリオール(p3)の数平均分子量は、合成の容易さ及び取り扱いやすさの観点から、400~5000が好ましく、500~3000がより好ましい。
【0047】
ポリカーボネートポリエステルポリオールにおいて、ポリオール(p2)に由来する部位の含有量に対するポリオール(p1)に由来する部位の含有量の比((p1)/(p2))は、質量比で、90/10~55/45であることが好ましく、90/10~60/40であることがより好ましい。
【0048】
ポリオール(p3)を併用する場合、ポリオール(p2)に由来する部位とポリオール(p3)に由来する部位の合計含有量に対するポリオール(p1)に由来する部位の含有量の比((p1)/(p2+p3))は、質量比で、75/25~45/55であることが好ましく、70/30~50/50であることがより好ましい。
【0049】
質量比を上記範囲とすることでポリオール(p1)の凝集力と、ウレタン基濃度と、ポリオール(p2)の含有量とのバランスが良好になり、さらに高強度、高伸長な機械物性を有するポリウレタン樹脂が得られやすくなる。
【0050】
以上より、特に好ましい態様のポリカーボネートポリエステルポリオールは、ポリオール(p1)に由来する部位として、カーボネート類に由来する部位と2官能アルコールに由来する部位とを有し、ポリオール(p2)に由来する部位として、多価アルコールに由来する部位とジカルボン酸又は環状エステル化合物に由来する部位とを有する。また、ポリカーボネートポリエステルポリオールが、上記に加えてポリオール(p3)に由来する部位を有する場合は、該部位として、2官能アルコールに由来する部位と多塩基酸成分又は環状エステル化合物に由来する部位とを有する。
【0051】
ポリカーボネートポリエステルポリオールは、重合時の安定性及び経済性の点から、環状エステル化合物の開環付加重合により形成される構造を有するものであることが好ましい。
【0052】
ポリカーボネートポリエステルポリオールは、エーテル結合を含まないことが好ましい。これにより、ポリウレタン樹脂中のエーテル結合(後述するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーに由来するエーテル結合)がバランスよく均一に配置されることとなり、強度及び耐久性と、優れた低温屈曲性とをより高度に両立できる。
【0053】
第1のポリオールは、1種のポリカーボネートポリエステルポリオールを単独で含んでいてもよく、2種以上のポリカーボネートポリエステルポリオールを含んでいてもよい。第1のポリオールに含まれる全ポリカーボネートポリエステルポリオールの平均水酸基数(1分子あたりの水酸基数)は、例えば、3~5である。
【0054】
第1のポリオールは、ポリカーボネートポリエステルポリオールのみからなっていてよい。第1のポリオールは、本発明の効果を阻害しない限り、ポリカーボネートポリエステルポリオール以外のポリオール(例えば原料であるポリオール(p2)等)を含んでいてもよい。第1のポリオール中のポリカーボネートポリエステルポリオールの含有量は、高強度と高伸長な機械物性をより高度に両立できるとともに、熱及び湿熱条件下での耐久性が向上する観点から、第1のポリオールの全質量を基準として、30~100質量%であってよく、50~100質量%であってもよい。
【0055】
第1のポリオールは、取り扱いやすさ、均一分散性、並びに、塗膜の物性向上、及び塗膜の硬化時間短縮/硬化エネルギー削減の観点から、25℃で液状であることが好ましい。
【0056】
[第2のポリオール]
第2のポリオールとしては、水酸基数が2であるポリオール(すなわち、ジオール)であれば特に制限なく用いることができる。第2のポリオールとしては、例えば、ポリカーボネートジオール、ポリカーボネートポリエステルジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール等が挙げられる。第2のポリオールは、上記第1のポリオールの原料であるポリオール(p1)、ポリオール(p3)等を含んでいてもよい。これらのジオールは、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
第2のポリオールは、得られるポリウレタン樹脂の強度と耐久性の観点から、カーボネート基を有するジオールを含むことが好ましく、ポリカーボネートジオール又はポリカーボネートポリエステルジオールを含むことがより好ましく、ポリカーボネートポリエステルジオールを含むことがさらに好ましい。
【0058】
第2のポリオールは、カーボネート基を有するジオールのみからなっていてもよい。第2のポリオール中のカーボネート基を有するジオールの含有量は、高強度と高伸長な機械物性をより高度に両立できるとともに、熱及び湿熱条件下での耐久性が向上する観点から、第2のポリオールの全質量を基準として、50~70質量%であってよく、70~100質量%であってもよい。
【0059】
第2のポリオールは、数平均分子量が300~5000である重合体を含むことが好ましい。重合体の数平均分子量が300以上であることで、得られるポリウレタン樹脂の低温屈曲性がさらに向上する。また、重合体の数平均分子量が5000以下であることで、ポリウレタン樹脂の強度がさらに向上する。該重合体は、好ましくはカーボネート基を有するジオールであり、より好ましくはポリカーボネートジオール又はポリカーボネートポリエステルジオールであり、さらに好ましくはポリカーボネートポリエステルジオールである。上記重合体の数平均分子量は、好ましくは500~3000である。
【0060】
第2のポリオールは、数平均分子量が300~5000である重合体のみからなっていてもよい。該重合体の含有量は、高強度と高伸長な機械物性をより高度に両立できるとともに、熱及び湿熱条件下での耐久性が向上する観点から、第2のポリオールの全質量を基準として、50~70質量%であってよく、70~100質量%であってもよい。
【0061】
第2のポリオールは、取り扱いやすさ、均一分散性、並びに、塗膜の物性向上、及び塗膜の硬化時間短縮/硬化エネルギー削減の観点から、25℃で液状であることが好ましい。
【0062】
第1のポリオールの含有量に対する第2ポリオールの含有量の比(第2のポリオール/第1のポリオール)は、機械物性により優れる観点から、質量比で、40/60~95/5であってよく、50/50~95/5であってよく、60/40~90/10又は80/20~90/10であってもよい。
【0063】
一実施形態において、主剤は、ポリオール(p1)とポリオール(p2)との反応生成物(以下、「反応生成物(i)」という。)を含んでいてよく、ポリオール(p1)とポリオール(p2)とポリオール(p3)との反応生成物(以下、「反応生成物(ii)」という。)を含んでいてもよい。これらの反応生成物は、上述した第1のポリオールであるポリカーボネートポリエステルポリオールを少なくとも含む。なお、ポリオール(p1)~(p3)の詳細は上記と同じであるため省略する。
【0064】
反応生成物(i)及び(ii)は、上記ポリオールのエステル交換反応によって得られる反応混合物であり得る。したがって、反応生成物(i)及び(ii)は、上記エステル交換反応によって生じる副生成物(例えば、上述した第2のポリオール、単官能アルコール等)や未反応の原料(ポリオール(p1)~(p3))を含み得る。
【0065】
上記の中でも、主剤が反応生成物(ii)を含む場合、高強度と高伸長な機械物性をより高度に両立できるとともに、熱及び湿熱条件下での耐久性が向上する傾向がある。反応生成物(ii)の含有量は、主剤の全質量を基準として、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上又は30質量%以上であってよく、95質量%以下、90質量%以下、65質量%以下、50質量%以下又は40質量%以下であってよい。反応生成物(ii)の含有量は、高強度と高伸長な機械物性をさらに高度に両立できるとともに、熱及び湿熱条件下での耐久性がさらに向上する観点から、主剤の全質量を基準として、10~50質量%であってよく、20~40質量%であってもよい。
【0066】
反応生成物(i)を得るためのポリオール(p2)の使用量に対するポリオール(p1)の使用量の比((p1)/(p2))は、質量比で、90/10~55/45であることが好ましく、90/10~60/40であることがより好ましい。
【0067】
反応生成物(ii)を得るためのポリオール(p2)とポリオール(p3)の合計使用量に対するポリオール(p1)の使用量の比((p1)/(p2+p3))は、質量比で、75/25~45/55であることが好ましく、70/30~50/50であることがより好ましい。
【0068】
反応生成物(i)及び(ii)の平均水酸基数は2.1~3.5であることが好ましく、2.2~3.0であることがより好ましい。平均水酸基数が3.5以下であると引張試験における破断強度及び破断時伸びがより向上し、平均水酸基数が2.1以上であると耐久性がより向上する。
【0069】
上記平均水酸基数は、例えば、公称の官能基数を基に下記にて算出可能である。なお、ポリオール(p3)を使用しない場合は、ポリオール(p3)のモル数を0として算出する。
平均水酸基数=[(ポリオール(p1)の水酸基数×ポリオール(p1)のmol数)+(ポリオール(p2)の水酸基数×ポリオール(p2)のmol数)+(ポリオール(p3)の水酸基数×ポリオール(p3)のmol数)]/[(ポリオール(p1)のmol数)+(ポリオール(p2)のmol数)+(ポリオール(p3)のmol数)]
【0070】
反応生成物(i)及び(ii)の平均水酸基価は30~380mgKOH/gであることが好ましく、50~180mgKOH/gであることがより好ましい。平均水酸基価が30mgKOH/g以上であるとウレタン基濃度が低くなり過ぎず、引張試験における破断強度がより向上する。平均水酸基価が380mgKOH/g以下であるとウレタン基濃度が高くなり過ぎず、低温屈曲性がより向上する。反応生成物(i)及び(ii)の平均水酸基価は20~700mgKOHであってもよく、30~300mgKOH/gであってもよい。なお、平均水酸基価は、JIS K 1557-1:2007に準拠して、アセチル化試薬を用いた方法により測定される値である。
【0071】
反応生成物(i)及び(ii)は、取り扱いやすさ、均一分散性、並びに、塗膜の物性向上、及び塗膜の硬化時間短縮/硬化エネルギー削減の観点から、25℃で液状であることが好ましい。
【0072】
主剤は、高強度と高伸長な機械物性をより高度に両立できるとともに、熱及び湿熱条件下での耐久性が向上する観点から、上記反応生成物(i)及び/又は(ii)に加えて、ポリオール(p1)とポリオール(p3)との反応生成物(以下、「反応生成物(iii)」という。)を含んでいてもよい。例えば、主剤は、反応生成物(i)及び/又は(ii)と、反応生成物(iii)との混合物であってよい。
【0073】
反応生成物(iii)の数平均分子量は、300~5000であることが好ましく、さらに好ましくは500~3000である。反応生成物(iii)の数平均分子量が300以上であると、得られる被膜の低温屈曲性がさらに向上する。また、反応生成物(iii)の数平均分子量が5000以下であると、被膜強度がさらに向上する。
【0074】
反応生成物(iii)の平均水酸基価は20~380mgKOH/gであることが好ましく、30~250mgKOH/gであることがより好ましい。平均水酸基価が20mgKOH/g以上であるとウレタン基濃度が低くなり過ぎず、引張試験における破断強度がより向上する。平均水酸基価が380mgKOH/g以下であるとウレタン基濃度が高くなり過ぎず、低温屈曲性がより向上する。
【0075】
反応生成物(iii)は、取り扱いやすさ、均一分散性、並びに、塗膜の物性向上、及び塗膜の硬化時間短縮/硬化エネルギー削減の観点から、25℃で液状であることが好ましい。
【0076】
反応生成物(iii)の含有量は、主剤の全質量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、35質量%以上、50質量%以上又は60質量%以上であってよく、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下又は70質量%以下であってよい。高強度と高伸長な機械物性をさらに高度に両立できるとともに、熱及び湿熱条件下での耐久性がさらに向上する観点から、主剤の全質量を基準として、5~70質量%であってよく、10~80質量%であってもよい。
【0077】
反応生成物(i)及び(ii)の合計含有量に対する反応生成物(iii)の含有量の比((iii)/(i)+(ii))は、機械物性により優れる観点から、質量比で、5/95~90/10であってよく、10/90~85/15又は60/40~80/20であってもよい。
【0078】
主剤の含有量は、後述するR値の範囲で調整してよい。主剤の含有量は、例えば、組成物の全質量を基準として、20質量%以上、30質量%以上又は50質量%以上であってよく、90質量%以下、85質量%以下又は80質量%以下であってよい。主剤の含有量は、例えば、組成物の全質量を基準として、20~90質量%であってよく、30~85質量%又は50~80質量%であってもよい。
【0079】
(硬化剤)
硬化剤は、ポリイソシアネート成分を含む。ポリイソシアネート成分は、2以上のイソシアネートを有する化合物(ポリイソシアネート)からなる成分であり、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」ともいう。)に由来する部位と、ポリエーテルポリオールに由来する部位とを有するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む。
【0080】
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーは、例えば、MDIとポリエーテルポリオールとを、イソシアネート基が過剰になるように反応させることによって得られる化合物であり、MDIとポリエーテルポリオールとの反応によって生成するウレタン結合と、少なくとも一方の末端に位置するイソシアネート基と、を有する。
【0081】
MDIには、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「4,4’-MDI」という。)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「2,4’-MDI」という。)及び2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「2,2’-MDI」という。)の3種の異性体が存在するが、MDIとしては、これらのうちの一種を単独で用いてよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本明細書中、4,4’-MDIをMDIの主成分と称し、2,4’-MDI及び2,2’-MDIをアイソマー成分として称する場合がある。
【0082】
MDI中の4,4’-MDIの含有量は、例えば、MDIの総量を基準として、40~100質量%であってよい。MDI中の2,4’-MDIの含有量は、例えば、MDIの総量を基準として、0~60質量%であってよい。MDI中の2,2’-MDIの含有量は、例えば、MDIの総量を基準として、0~5質量%であってよい。
【0083】
MDIとしては、機械物性及び取り扱いやすさにより優れる観点から、アイソマー成分の含有比率が高いMDI(高アイソマー比率MDI)であることが好ましい。具体的には、2,4’-MDI及び2,2’-MDIの合計含有量は、MDIの総量を基準として、20~60質量%であることが好ましい。同様の観点から、2,4’-MDI及び2,2’-MDIの合計含有量は、MDIの総量を基準として、40質量%以上又は50質量%以上であってもよく、70質量%以下又は60質量%以下であってもよい。
【0084】
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー中のMDIに由来する部位の含有量は、低温屈曲性、引張強度及び耐熱性にさらに優れる観点から、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの全質量を基準として、20~80質量%であることが好ましい。同様の観点から、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー中のMDIに由来する部位の含有量は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの全質量を基準として、25質量%以上、35質量%以上、45質量%以上又は50質量%以上であってもよく、75質量%以下、70質量%以下、60質量%以下又は55質量%以下であってもよい。
【0085】
ポリエーテルポリオールは、2以上のエーテルユニットと、2以上の水酸基と、を有する。イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーがポリエーテルポリオールに由来する部位を有することで、樹脂(例えば被膜)の耐久性と低温屈曲性が向上するだけでなく、貯蔵安定性が向上し、常温(例えば25℃)における結晶化が抑制されるといった効果や、低粘度化によりハンドリング性が向上するといった効果も得られる。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。これらの中でも、樹脂(例えば被膜)の耐久性と低温屈曲性をより高度に両立する観点から、ポリプロピレングリコールが好ましい。これらは、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
ポリエーテルポリオールの平均水酸基数は、2以上であり、例えば、2~3である。ポリエーテルポリオールの数平均分子量は500~5000であることが好ましく、2000~4000であることがより好ましい。
【0087】
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー中のポリエーテルポリオールに由来する部位の含有量は、低温屈曲性、引張強度及び耐熱性にさらに優れる観点から、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの全質量を基準として、20~80質量%であることが好ましい。同様の観点から、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー中のポリエーテルポリオールに由来する部位の含有量は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの全質量を基準として、25質量%以上、30質量%以上、40質量%以上又は45質量%以上であってもよく、75質量%以下、65質量%以下、55質量%以下又は50質量%以下であってもよい。
【0088】
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーは、ジフェニルメタンジイソシアネート以外のイソシアネート(他のイソシアネート)に由来する部位を有していてもよい。すなわち、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーは、ジフェニルメタンジイソシアネートと、他のイソシアネートと、ポリエーテルポリオールと、の反応によって得られる化合物であってもよい。
【0089】
他のイソシアネートとしては、MDI以外の芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、芳香脂肪族イソシアネート、これらのイソシアネートを原料として得られるイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート、ウレトジオン基含有ポリイソシアネート、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート、ウレタン基含有ポリイソシアネート、アロファネート基含有ポリイソシアネート、ビュレット基含有ポリイソシアネート、ウレトイミン基含有ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0090】
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー中の他のイソシアネートに由来する部位の含有量は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの全質量を基準として、30質量%以下であってよく、0質量%であってもよい。
【0091】
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーは、取り扱いやすさ、均一分散性、並びに、塗膜の物性向上、及び塗膜の硬化時間短縮/硬化エネルギー削減の観点から、25℃で液状であることが好ましい。
【0092】
ポリイソシアネート成分は、1種のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを単独で含んでいてもよく、2種以上のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含んでいてもよい。
【0093】
ポリイソシアネート成分は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーのみからなっていてよい。ポリイソシアネート成分は、本発明の効果を阻害しない限り、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー以外のポリイソシアネート(例えば原料であるMDI等)を含んでいてもよい。ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの含有量は、例えば、ポリイソシアネート成分の全質量を基準として、30~100質量%であってよい。
【0094】
ポリイソシアネート成分のイソシアネート基含量(NCO含量)は、低粘度でハンドリング性が良好となり、かつ耐熱性により優れる観点から、4~30質量%であることが好ましく、5質量%以上、7質量%以上又は10質量%以上であってもよく、26質量%以下又は20質量%以下であってもよい。ポリイソシアネート成分に含まれる全イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基含量も上記範囲と同じであってよい。
【0095】
一実施形態において、硬化剤は、MDIとポリエーテルポリオールとの反応生成物(以下、「反応生成物(iv)」という。)を含んでいてよく、MDIと他のイソシアネートとポリエーテルポリオールとの反応生成物(以下、「反応生成物(v)」という。)を含んでいてもよい。これらの反応生成物は、上述したイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを少なくとも含む。なお、MDI、他のイソシアネート及びポリエーテルポリオールの詳細は上記と同じであるため省略する。
【0096】
反応生成物(iv)及び(v)は、上記ポリイソシアネートとポリエーテルポリオールのウレタン化反応によって得られる反応混合物であり得る。したがって、反応生成物(iv)及び(v)は、上記ウレタン化反応によって生じる副生成物や未反応の原料を含み得る。
【0097】
上記反応生成物(iv)及び(v)を得るためのMDIの使用量は、低温屈曲性、引張強度及び耐熱性にさらに優れる観点から、反応生成物の全質量を基準として、20~80質量%であることが好ましい。同様の観点から、上記反応生成物(iv)及び(v)を得るためのMDIの使用量は、反応生成物の全質量を基準として、25質量%以上、35質量%以上、45質量%以上又は50質量%以上であってもよく、75質量%以下、70質量%以下、60質量%以下又は55質量%以下であってもよい。
【0098】
上記反応生成物(iv)及び(v)を得るためのポリエーテルポリオールの使用量は、低温屈曲性、引張強度及び耐熱性にさらに優れる観点から、反応生成物の全質量を基準として、15~80質量%であることが好ましい。同様の観点から、上記反応生成物(iv)及び(v)を得るためのポリエーテルポリオールの使用量は、反応生成物の全質量を基準として、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、40質量%以上又は45質量%以上であってもよく、75質量%以下、65質量%以下、55質量%以下又は50質量%以下であってもよい。
【0099】
硬化剤の含有量は、後述するR値の範囲で調整してよい。硬化剤の含有量は、例えば、組成物の全質量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上又は20質量%以上であってよく、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下又は45質量%以下であってよい。硬化剤の含有量は、例えば、組成物の全質量を基準として、5~60質量%であってよく、10~60質量%、15~55質量%、20~50質量%又は20~45質量%であってもよい。
【0100】
(触媒)
触媒は、主剤と硬化剤との反応を触媒するウレタン化触媒であり、チタン、亜鉛及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む金属触媒を含む。これらは、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
金属触媒は、金属単体からなる触媒であってよく、金属原子が一つ以上の有機リガンドと結合してなる金属錯体(有機金属触媒)であってもよい。
【0102】
チタンを含む金属触媒(チタン触媒)としては、2-エチルヘキサン酸チタン、テトラキス(2,4-ペンタンジオナト)チタニウム(IV)等が挙げられる。
【0103】
亜鉛を含む金属触媒(亜鉛触媒)としては、ビス(2-エチルヘキサン酸)亜鉛、ビス(2,4-ペンタンジオナト)亜鉛(II)等が挙げられる。
【0104】
アルミニウムを含む金属触媒(アルミニウム触媒)としては、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、トリス(2,4-ペンタンジオナト)アルミニウム(III)、2-エチルヘキサン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0105】
触媒は、ポットライフや硬化性を損なわない限り、チタン、亜鉛及びアルミニウム以外の金属元素を含む金属触媒を含んでいてもよく、アミン触媒等の非金属触媒を含んでいてもよい。
【0106】
触媒は、取り扱いやすさ、均一分散性、並びに、塗膜の物性向上、及び塗膜の硬化時間短縮/硬化エネルギー削減の観点から、25℃で液状であることが好ましい。
【0107】
触媒の含有量は、ポットライフ、硬化性及び機械物性により優れる観点から、組成物の全質量を基準として、0.05質量%以上であってよく、0.1質量%以上、0.2質量%以上又は0.3質量%以上であってもよい。触媒の含有量は、ポットライフ、硬化性及び機械物性により優れる観点から、組成物の全質量を基準として、3.0質量%以下、2.5質量%以下であってよく、2.0質量%以下、1.5質量%以下又は1.0質量%以下であってもよい。これらの観点から、触媒の含有量は、組成物の全質量を基準として、例えば、0.05~3.0質量%であってよく、0.05~2.5質量%、0.1~2.0質量%、0.2~1.5質量%又は0.3~1.0質量%であってもよい。
【0108】
触媒としてチタン触媒のみを用いる場合、チタン触媒の含有量は、組成物の全質量を基準として、0.3~3.0質量%であることが好ましい。チタン触媒の含有量が0.3質量%以上であると、加熱条件下短時間で硬化する傾向があり、チタン触媒の含有量が3.0質量%以下であるとより高い機械物性が得られる傾向がある。同様の観点から、チタン触媒の含有量は、0.4質量%以上であってもよく、2.5質量%以下、2.0質量%以下又は1.0質量%以下であってもよい。
【0109】
触媒としてアルミニウム触媒のみを用いる場合、アルミニウム触媒の含有量は、組成物の全質量を基準として、0.15~3.0質量%であることが好ましい。アルミニウム触媒の含有量が0.15質量%以上であると加熱条件下短時間で硬化する傾向があり、アルミニウム触媒の含有量が3.0質量%以下であるとより高い機械物性が得られる傾向がある。同様の観点から、アルミニウム触媒の含有量は、0.5質量%以上又は1.0質量%以上であってもよく、2.5質量%以下又は2.0質量%以下であってもよい。
【0110】
触媒として亜鉛触媒のみを用いる場合、亜鉛触媒の含有量は、組成物の全質量を基準として、0.1~0.5質量%であることが好ましい。亜鉛触媒の含有量が0.1質量%以上であると加熱条件下短時間で硬化する傾向があり、アルミニウム触媒の含有量が0.5質量%以下であるとポットライフがより長時間となり、かつ、より高い機械物性が得られる傾向がある。同様の観点から、亜鉛触媒の含有量は、0.2質量%以上であってもよく、0.45質量%以下であってもよい。
【0111】
(添加剤)
組成物は、添加剤として、レベリング剤、可塑剤、充填剤、着色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料・染料、抗菌剤、抗カビ剤等を含んでいてもよい。組成物が多液型である場合、これらの添加剤は、いずれの液に含まれていてもよい。
【0112】
(有機溶剤)
組成物は、有機溶剤を含んでいてもよいが、その含有量は、組成物の全質量を基準として、0~10質量%である。有機溶剤の含有量は、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下であってもよい。なお、本明細書において有機溶剤とは、本技術分野において、ポリオール及び/又はポリイソシアネートを溶解させるために一般的に使用される有機化合物であり、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル等が挙げられる。
【0113】
(R値)
R値(硬化剤における全イソシアネート基のモル数/主剤における全水酸基のモル数)は、反応硬化性、硬化物の強度と柔軟性、並びに不要な発泡の抑制のいずれにも優れる観点から、0.8~5.0が好ましい。R値は、前記一連の効果を向上させる観点から、0.9~3.0であることがより好ましく、1.0~2.0であることが特に好ましい。R値が0.8以上であると、ポリウレタン樹脂の強度及び柔軟性がさらに向上する。なお、R値が5.0以下であると、反応硬化性がさらに向上するとともに、不要な発泡の発生をより低減できる。
【0114】
以上説明したポリウレタン樹脂形成性組成物は、接着剤のほか、成形物、コーティング材などの形成に使用される。成形物としては、部材、構造物、フィルム、及びシートが含まれ、注型や塗布などの公知技術により成形されたものを挙げることができる。具体的には、例えば、通信タブレット等の電子機器の部材、衣料、家具・家電部材、日用雑貨、自動車部材等が挙げられる。
【0115】
<コーティング剤>
本開示の他の一態様は、上記実施形態のポリウレタン樹脂形成性組成物を含むコーティング剤である。コーティング剤は、基材の表面に塗布して用いられるものであればよく、接着剤もコーティング剤の概念に含まれる。
【0116】
コーティング剤は、上述した添加剤として、架橋剤や添加剤を含んでいてよい。これらを含むコーティング剤を均一になるように撹拌した後、スプレー塗装、ナイフ塗工、ワイヤーバー塗工、ドクターブレード塗工、リバースロール塗工、カレンダー塗工等の公知技術により、基材上に塗布することにより塗膜を形成してコーティング膜とし、さらに硬化することで塗膜(例えばコーティング材)が得られる。
【0117】
塗膜硬化時の加熱温度は80~180℃が好ましく、加熱時間は30秒~2時間が好ましく、1分~30分がより好ましい。加熱温度及び加熱時間がこれらの範囲内であると、硬化不良の発生をより低減できるとともに、硬化物や基材に不必要な熱履歴をかけることを抑制できるため、劣化の発生をより低減できる。
【0118】
基材としては、ステンレス、リン酸処理鋼、亜鉛鋼、鉄、銅、アルミニウム、真鍮、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート-ABS樹脂、6-ナイロン樹脂、6,6-ナイロン樹脂、MXD6ナイロン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリアセタール樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、NBR樹脂、クロロプレン樹脂、SBR樹脂、SEBS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂などの素材で成型された基材;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、6-ナイロン樹脂、6,6-ナイロン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース、ポリ乳酸、綿、ウールから選ばれる少なくとも1種を主成分とする有機繊維;ガラスウールなどの無機繊維;炭素繊維;を挙げることができる。
【0119】
これらの基材は、接着性を上げるために、基材表面を予めコロナ放電処理、フレーム処理、紫外線照射処理、及びオゾン処理等の処理をすることもできる。
【0120】
<成形体>
本開示の他の一態様は、上記実施形態のポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含む成形体である。硬化物にはポリウレタン樹脂が含まれる。成形体としては、上述した、通信タブレット等の電子機器の部材、衣料、家具・家電部材、日用雑貨、自動車部材等が挙げられる。これらは注型や塗布などの公知技術により成形することができる。
【実施例0121】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における%、部表記は、特に断りのない限り質量基準である。
【0122】
本実施例で使用した原料の詳細は以下のとおりである。
(1)PCD-1:1,6-ヘキサンジオール系ポリカーボネートジオール、数平均分子量2000
(2)PCD-2:1,6-ヘキサンジオール系ポリカーボネートジオール、数平均分子量3000
(3)PCL-1:ポリカプロラクトンジオール、数平均分子量1000(商品名:プラクセル210、ダイセル社製)
(4)PCL-2:ポリカプロラクトンジオール、数平均分子量2000(商品名:プラクセル220、ダイセル社製)
(5)PCL-3:ポリカプロラクトントリオール、数平均分子量550(商品名:プラクセル305、ダイセル社製)
(6)低アイソマー比率MDI:2,2’-MDI+2,4’-MDI=1.5%、4,4’-MDI=98.5%、NCO含量=33.6%
(7)高アイソマー比率MDI:2,2’-MDI+2,4’-MDI=55.0%、4,4’-MDI=45.0%、NCO含量=33.6%
(8)PPG-1:ポリプロピレングリコール、数平均分子量2000(商品名:サンニックスPP-2000、三洋化成社製)
(9)PPG-2:ポリプロピレングリコール、数平均分子量3000(商品名:サンニックスPP-3000、三洋化成社製)
(10)アルミニウム錯体:K-KAT 5218(楠本化成社製)
(11)亜鉛錯体:K-KAT XK-635(楠本化成社製)
(12)チタン錯体:2-エチルヘキサン酸チタン(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(13)ビスマス錯体:ネオスタンU-600(日東化成株式会社製)
(14)BYK-331:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(BYKケミー社製)
【0123】
<合成例1>
攪拌機、温度計、加熱装置、冷却器を組んだ反応装置に、PCD-1を700g、PCL-2を300g仕込み、窒素気流下にて徐々に190℃まで温度を上昇させた。190℃でエステル交換反応を5時間行い、ポリカーボネートポリエステルジオールを含む反応生成物(Polyol-1)を得た。得られたPolyol-1の平均水酸基数は2.0であり、水酸基価は56.1(mgKOH/g)であり、数平均分子量(Mn)は2000であった。
【0124】
<合成例2>
攪拌機、温度計、加熱装置、冷却器を組んだ反応装置に、PCD-1を664g、PCL-1を20g、PCL-3を316g仕込み、窒素気流下にて徐々に190℃まで温度を上昇させた。190℃でエステル交換反応を5時間行い、水酸基数が3以上であるポリカーボネートポリエステルポリオールを含む反応生成物(Polyol-2)を得た。得られたPolyol-2の平均水酸基数は2.6であり、水酸基価は136.2(mg-KOH/g)であり、数平均分子量(Mn)は1080であった。
【0125】
<合成例3>
攪拌機、温度計、加熱装置、冷却器を組んだ反応装置に、PCD-2を678g、PCL-2を236g、PCL-3を86g仕込み、窒素気流下にて徐々に190℃まで温度を上昇させた。190℃でエステル交換反応を5時間行い、水酸基数が3以上であるポリカーボネートポリエステルポリオールを含む反応生成物(Polyol-3)を得た。得られたPolyol-3の平均水酸基数は2.3であり、水酸基価は64.8(mg-KOH/g)であり、数平均分子量(Mn)は2000であった。
【0126】
【表1】
表1中の平均水酸基数は、前述した算出方法で算出した値である。
【0127】
<合成例4>
撹拌機、温度計、加熱装置、冷却器を組んだ反応装置に、高アイソマー比率MDIを790g、PPG-1を210g仕込み、窒素雰囲気下、75℃で3時間ウレタン化反応を行い、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応生成物(Isocyanate-1)を得た。NCO含量は25.5%であった。25℃での粘度は、500mPa・sであった。
【0128】
<合成例5>
撹拌機、温度計、加熱装置、冷却器を組んだ反応装置に、高アイソマー比率MDIを240g、PPG-1を760g仕込み、窒素雰囲気下、75℃で3時間ウレタン化反応を行い、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応生成物(Isocyanate-2)を得た。イソシアネート基含量(NCO含量)は4.7%であった。25℃での粘度は、8500mPa・sであった。
【0129】
<合成例6>
撹拌機、温度計、加熱装置、冷却器を組んだ反応装置に、高アイソマー比率MDIを470g、PPG-1を530g仕込み、窒素雰囲気下、75℃で3時間ウレタン化反応を行い、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応生成物(Isocyanate-3)を得た。NCO含量は13.6%であった。25℃での粘度は、1300mPa・sであった。
【0130】
<合成例7>
撹拌機、温度計、加熱装置、冷却器を組んだ反応装置に、高アイソマー比率MDIを360g、PPG-1を640g仕込み、窒素雰囲気下、75℃で3時間ウレタン化反応を行い、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応生成物(Isocyanate-4)を得た。NCO含量は9.1%であった。25℃での粘度は、3700mPa・sであった。
【0131】
<合成例8>
撹拌機、温度計、加熱装置、冷却器を組んだ反応装置に、高アイソマー比率MDIを300g、PPG-1を700g仕込み、窒素雰囲気下、75℃で3時間ウレタン化反応を行い、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応生成物(Isocyanate-5)を得た。NCO含量は7.1%であった。25℃での粘度は、6400mPa・sであった。
【0132】
<合成例9>
撹拌機、温度計、加熱装置、冷却器を組んだ反応装置に、低アイソマー比率MDIを450g、PPG-2を550g仕込み、窒素雰囲気下、75℃で3時間ウレタン化反応を行い、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応生成物(Isocyanate-6)を得た。NCO含量は13.6%であった。25℃での粘度は、3000mPa・sであった。
【0133】
<合成例10>
撹拌機、温度計、加熱装置、冷却器を組んだ反応装置に、高アイソマー比率MDIを510g、Polyol-1を490g仕込み、窒素雰囲気下、75℃で3時間ウレタン化反応を行い、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応生成物(Isocyanate-7)を得た。NCO含量は15.0%であった。25℃での粘度は、8100mPa・sであった。
【0134】
【表2】
表2中のNCO含量はJISK1603-1(ポリウレタン原料芳香族イソシアネート試験方法)に記載の方法に従って測定した。また、粘度の測定は以下の装置及び条件で行った。
・試験装置:回転式B型粘度計 TV-22(東機産業社製)
・試験回転速度:60RPM
【0135】
<実施例1~18及び比較例1~2>
合成例1~3で得たPolyol-1~3を表3~表5に示す配合比で混合し、主剤を調製した。また、合成例4~10で得たIsocyanate-1~7のいずれかを硬化剤として用意した。また、触媒及びレベリング剤として、表3~表5に示す材料を用意した。
【0136】
主剤、硬化剤、触媒及びレベリング剤を表3~5に記載の配合のとおりに混合した。この際、主剤及び硬化剤の配合量は、R値(硬化剤における全イソシアネート基のモル数/主剤における全水酸基のモル数)が1.1となるようにした。これにより、実施例1~18及び比較例1~2のポリウレタン樹脂形成性組成物をそれぞれ得た。
【0137】
<評価>
(低温屈曲性評価)
混合直後のポリウレタン樹脂形成性組成物を離型紙上に流し、バーコーターにて厚さ100μmのフィルム形状になるようにキャストした。次いで、キャストされたポリウレタン樹脂形成性組成物を乾燥装置(精密恒温器 DF612S、ヤマト科学株式会社製)に入れ、150℃にて1~2分加熱することにより被膜化した。得られた被膜(半硬化膜)を織布(ポリエステル系市販品)に圧着させ、さらに150℃で5分間加熱することで硬化を進行させた。この際の圧着は、5kgの金属ローラーで1往復加圧することにより行った。その後、60℃にて18時間養生して、硬化膜と織布とからなる積層体を得た。得られた積層体を用いて、以下に示す装置、条件でフレキソ試験を行い、被膜に割れが生じるまでの屈曲回数を計測した。被膜に割れが生じるまでの回数が10000回以上であれば、低温屈曲性が良好であると評価した。結果を表3~5に示す。
[装置、条件]
・試験装置:フレキシオメーター FOM-100C(大栄科学精器製作所製)
・屈曲往復速度:150回/分
・回転角度:22.5度
・温度:-30℃
【0138】
(硬化性評価)
混合直後のポリウレタン樹脂形成性組成物を離型紙上に流し、バーコーターにて厚さ100μmのフィルム形状になるようにキャストした。次いで、キャストされたポリウレタン樹脂形成性組成物を乾燥装置(精密恒温器 DF612S、ヤマト科学株式会社製)に入れ、150℃で加熱し、指触にて組成物が半硬化するまでの時間を計測した。タックが弱くなった時に、組成物が半硬化したと判断し、プレキュア時間(半硬化までにかかる時間)が2分以内であれば、硬化性が良好であると評価した。結果を表3~5に示す。なお、「タックが弱くなった時」とは、組成物は指に付着しないが、組成物に明りょうに指紋が残る状態となった時のことを指す。
【0139】
(安定性評価)
ポリウレタン樹脂形成性組成物を調製する際に、主剤と触媒とレベリング剤とを混合して混合液を調製し、この混合液の液温を25℃にしてから、液温を25℃に調整した硬化剤と混ぜ合わせた。得られた混合直後の液(ポリウレタン樹脂形成性組成物)を、撹拌機を用いて300rpmで30秒攪拌した後、粘度が90000mPa・sになるまでの時間を測定した。この時間が10分以上あれば、ポットライフが充分に長く、安定性が良好であると評価した。結果を表3~5に示す。なお、粘度測定は以下の装置、条件で行った。
[装置、条件]
・試験装置:Brookfield B型粘度計
・スピンドル:SC4-27
・スピンドル回転速度:0.2RPM
【0140】
(引張特性評価)
混合直後のポリウレタン樹脂形成性組成物を離型紙上に流し、バーコーターにて厚さ100μmのフィルムになるようにキャストした。次いで、キャストされたポリウレタン樹脂形成性組成物を150℃にて10分間加熱することで硬化させた後、60℃にて18時間養生して、ポリウレタン樹脂からなる硬化被膜(フィルム)を得た。
【0141】
〔常態耐久性評価〕
上記で得られたフィルムの破断強度を、JIS K6251に準拠して以下に示す装置、条件で測定した。破断強度が15MPa以上であれば、常態における耐久性が良好であると評価した。結果を表3~5に示す。なお、表中の「-」は未測定を示す(以下同様。)。
[装置、条件]
・試験装置:オートコム型万能試験機AC-10KN-CM-PL(ティー・エス・イー社製)
・測定条件:25℃×50%RH
・ヘッドスピード:200mm/分
・ダンベル4号
【0142】
〔耐熱性評価〕
上記で得られたフィルム(ポリウレタン樹脂からなる硬化被膜)に対する耐熱試験を行い、試験後の破断強度保持率を測定した。具体的には、まず、フィルムを送風定温恒温器DNE850(ヤマト科学株式会社製)に入れ、120℃で400時間静置した。次いで、上記常態耐久性評価の場合と同様にして、試験後のフィルムの破断強度を測定した。常態耐久性評価で得られたフィルムの破断強度(T0)と、上記試験後のフィルムの破断強度(T1)とを用いて、下記式から破断強度保持率を算出した。破断強度保持率が60%以上であれば、耐熱性が良好であると評価した。結果を表3~5に示す。
破断強度保持率(%)=T1/T0×100
【0143】
〔耐湿熱性評価〕
上記で得られたフィルム(ポリウレタン樹脂からなる硬化被膜)に対する耐湿熱試験を行い、試験後の破断強度保持率を測定した。具体的には、まず、フィルムを低温度恒温恒湿GLMP―62(二葉科学社製)に入れ、80℃、湿度95%RH条件下で400時間静置した。次いで、上記常態耐久性評価の場合と同様にして、試験後のフィルムの破断強度を測定した。常態耐久性評価で得られたフィルムの破断強度(T0)と、上記試験後のフィルムの破断強度(T2)とを用いて、下記式から破断強度保持率を算出した。破断強度保持率が60%以上であれば、耐湿熱性が良好であると評価した。結果を表3~5に示す。
破断強度保持率(%)=T2/T0×100
【0144】
【0145】
【0146】