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特開2024-153143体腔内挿入型超音波プローブ及び音響整合層製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153143
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】体腔内挿入型超音波プローブ及び音響整合層製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/12 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
A61B8/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066850
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏樹
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE03
4C601EE04
4C601FE01
4C601FE04
4C601GB05
4C601GB19
4C601GB20
4C601GB25
4C601GB26
4C601GB41
(57)【要約】
【課題】体腔内挿入型超音波プローブにおいて、各振動子と生体との間の音響整合を良好にする。
【解決手段】フィルム部材(FPC基板)34は、ベースフィルム44と導体層により構成される。導体層は、シグナルパターンS、グランドパターンG及び複数の音響要素アレイ52を含む。各振動子18aとベースフィルム44との間に音響整合層50が設けられる。音響整合層50は音響要素アレイ52及び充填材54からなる。音響整合層50における導体材の割合が音響整合層50の音響インピーダンスを定める。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルムと、前記ベースフィルム上に形成された導体層と、を有するフィルム部材と、
前記フィルム部材に設けられた複数の振動子と、
を含み、
前記ベースフィルムと前記複数の振動子との間に複数の音響整合層が設けられ、
前記導体層は、前記複数の振動子に電気的に接続された配線パターンと、前記複数の音響整合層に埋め込まれた複数の音響要素アレイと、を有し、
前記各音響整合層において前記音響要素アレイ以外の隙間が充填材で満たされた、
ことを特徴とする体腔内挿入型超音波プローブ。
【請求項2】
請求項1記載の体腔内挿入型超音波プローブにおいて、
前記各音響整合層の音響インピーダンスは、前記各振動子の音響インピーダンスよりも小さく、且つ、生体組織の音響インピーダンスよりも大きい、
ことを特徴とする体腔内挿入型超音波プローブ。
【請求項3】
請求項1記載の体腔内挿入型超音波プローブにおいて、
前記各音響整合層の音響インピーダンスは、前記各音響整合層における導体材の存在割合に従う音響インピーダンスである。
ことを特徴とする体腔内挿入型超音波プローブ。
【請求項4】
請求項1記載の体腔内挿入型超音波プローブにおいて、
前記配線パターンには、シグナルパターンとグランドパターンとが含まれ、
前記各振動子の生体側端部は、振動子配列方向と直交する方向に離れた第1部分及び第2部分を有し、
前記各振動子における前記第1部分が前記シグナルパターンに接続され、
前記各振動子における前記第2部分が前記グランドパターンに接続され、
前記各振動子において、前記生体側端部と前記ベースフィルムとの間且つ前記シグナルパターンと前記グランドパターンとの間に、前記音響要素アレイが設けられている、
ことを特徴とする体腔内挿入型超音波プローブ。
【請求項5】
請求項4記載の体腔内挿入型超音波プローブにおいて、
前記シグナルパターンの厚み、前記グランドパターンの厚み、及び、前記各音響要素アレイの厚みは、同一である、
ことを特徴とする体腔内挿入型超音波プローブ。
【請求項6】
請求項1記載の体腔内挿入型超音波プローブにおいて、
前記複数の音響要素アレイは、前記配線パターンに含まれるグランドパターンに電気的に接続されている、
ことを特徴とする体腔内挿入型超音波プローブ。
【請求項7】
請求項1記載の体腔内挿入型超音波プローブにおいて、
前記各音響要素アレイの厚みは、前記各音響整合層の厚みtと同じであり、
前記厚みtは、前記各振動子から放射される超音波の中心周波数に対応する波長をλで表現した場合、λ/10≦t<λ/2の条件を満たす、
ことを特徴とする体腔内挿入型超音波プローブ。
【請求項8】
請求項1記載の体腔内挿入型超音波プローブにおいて、
前記各振動子は、振動子配列方向に直交する方向に伸長した2つの角部分を含む生体側端部を有し、
前記各音響要素アレイには、前記2つの角部分を支える複数の音響要素が含まれる、
ことを特徴とする体腔内挿入型超音波プローブ。
【請求項9】
請求項1記載の体腔内挿入型超音波プローブにおいて、
前記各音響整合層において前記音響要素アレイが有するピッチは、前記充填材が生じさせる横波の波長よりも小さい、
ことを特徴とする体腔内挿入型超音波プローブ。
【請求項10】
請求項1記載の体腔内挿入型超音波プローブにおいて、
前記フィルム部材は環状の形態を有し、
前記フィルム部材の内側に前記複数の振動子が環状に整列し、
前記各振動子から放射された超音波が前記フィルム部材を通過する、
ことを特徴とする体腔内挿入型超音波プローブ。
【請求項11】
ベースフィルム上に音響要素アレイを含む導体層を形成し、これによりフィルム部材を製作する工程と、
前記フィルム部材上に振動子を配置する際に、前記ベースフィルムと前記振動子との間であって前記音響要素アレイ以外の隙間に充填材を充填する工程と、
を含み、
前記音響要素アレイ及び前記充填材が音響整合層として機能し、
前記音響整合層の音響インピーダンスが前記音響整合層における前記音響要素アレイの存在割合により定められる、
ことを特徴とする音響整合層製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、体腔内挿入型超音波プローブ及び音響整合層製造方法に関し、特に、音響整合層の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
体腔内挿入型超音波プローブとして、血管内超音波(IVUS:Intravascular Ultrasound)プローブ、気管支用超音波内視鏡、等が知られている。そのようなプローブは、カテーテル型超音波プローブ、細径プローブ、等とも呼ばれる。
【0003】
従来の電子走査型IVUSプローブにおいて、その先端部内には、環状のFPC(Flexible Printed Circuit)基板が配置されており、環状のFPC基板の内側には環状の形態を有する振動子アレイが設けられている。振動子アレイから放射された超音波がFPC基板を通過した上で生体内へ放射される。振動子アレイにより超音波ビームがラジアル走査される。
【0004】
上記のFPC基板は、一般に、ベースフィルムとその表面に設けられた導体層とを有するフィルム部材である。導体層は、印刷技術等によって形成された配線パターンを有する。導体層は、例えば、3μm程度の厚みを有する銅により構成される。感度向上や広帯域化のために、FPC基板と各振動子との間に音響整合層を設けることが望まれるが、IVUSプローブは極めて細く(例えば直径1mm程度)、FPC基板と各振動子の間に音響整合層を設けることは容易ではない。
【0005】
特許文献1-3には電子走査型IVUSプローブが開示されている。特許文献1-3には、FPC基板における導体層の一部を含む音響整合層は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2021-500981号公報
【特許文献2】特表2021-505263号公報
【特許文献3】特表2022-516078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、複数の振動子と生体との間の音響整合を良好にすることにある。あるいは、本開示の目的は、フィルム部材の一部を活用して音響整合層を実現することにある。本開示の目的は、所望の音響インピーダンスを有する音響整合層を容易に製造できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る体腔内挿入型超音波プローブは、ベースフィルムと前記ベースフィルム上に形成された導体層とを有するフィルム部材と、前記フィルム部材に設けられた複数の振動子と、を含み、前記ベースフィルムと前記複数の振動子との間に複数の音響整合層が設けられ、前記導体層は、前記複数の振動子に電気的に接続された配線パターンと、前記複数の音響整合層に埋め込まれた複数の音響要素アレイと、を有し、前記各音響整合層において前記音響要素アレイ以外の隙間が充填材で満たされた、ことを特徴とする。
【0009】
本開示に係る音響整合層製造方法は、ベースフィルム上に、音響要素アレイを含む導体層を形成し、これによりフィルム部材を製作する工程と、前記フィルム部材上に振動子を配置する際に、前記ベースフィルムと前記振動子との間であって前記音響要素アレイ以外の隙間に充填材を充填する工程と、を含み、前記音響要素アレイ及び前記充填材が音響整合層として機能し、前記音響整合層の音響インピーダンスが前記音響整合層における前記音響要素アレイの存在割合により定められる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、複数の振動子と生体との間の音響整合を良好にできる。あるいは、本開示によれば、フィルム部材の一部を活用して音響整合層を実現できる。あるいは、本開示によれば、所望の音響インピーダンスを有する音響整合層を容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る超音波診断装置を示す図である。
図2】実施形態に係る体腔内挿入型超音波プローブの横断面図である。
図3】第1実施例に係る積層構造のxz断面図である。
図4】第1実施例に係る積層構造のyz断面図である。
図5】第1実施例に係る積層構造のxy断面図である。
図6】第1アレイパターンを有する整合素子アレイの支持作用を示す図である。
図7】第2アレイパターンを有する整合素子アレイの支持作用を示す図である。
図8】第2実施例に係る積層構造のxy断面図である。
図9】第3実施例に係る積層構造のxy断面図である。
図10】第4実施例に係る積層構造のxy断面図である。
図11】実施形態に係る製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(1)実施形態の概要
実施形態に係る体腔内挿入型超音波プローブは、ベースフィルムとベースフィルム上に形成された導体層とを有するフィルム部材と、フィルム部材に設けられた複数の振動子と、を有する。ベースフィルムと複数の振動子との間に複数の音響整合層が設けられる。導体層は、複数の振動子に電気的に接続された配線パターンと、複数の音響整合層に埋め込まれた複数の音響要素アレイと、を有する。各音響整合層において音響要素アレイ以外の隙間が充填材で満たされる。
【0014】
上記構成によれば、フィルム部材が有する導体層の一部を利用して複数の音響整合層を形成できる。よって、フィルム部材と複数の振動子を含む積層体の厚みの増大を避けつつ、振動子ごとに音響整合層を設けることが可能となる。これにより、感度向上及び周波数帯域拡大といった利点を得られる。実施形態によれば、印刷技術や描画技術等を利用して、複数の音響要素アレイを容易に形成できる。
【0015】
振動子配列方向を第1方向と定義し、振動子配列方向に直交する方向を第2方向と定義した場合、各音響要素アレイは、第1方向及び第2方向に並ぶ複数の音響要素、第1方向に並ぶ複数の音響要素、第2方向に並ぶ複数の音響要素、第1方向及び第2方向に広がるランダムパターンを有する複数の音響要素、等により構成される。
【0016】
実施形態において、各音響整合層の音響インピーダンスは、各振動子の音響インピーダンスよりも小さく、且つ、生体組織の音響インピーダンスよりも大きい。実施形態において、各音響整合層の音響インピーダンスは、各音響整合層における導体材の存在割合に従う音響インピーダンスである。各音響整合層における音響要素アレイのレイアウトの変更は容易であるので、各音響整合層の音響インピーダンスとして所望のものを容易に実現できる。
【0017】
実施形態において、配線パターンには、シグナルパターンとグランドパターンとが含まれる。各振動子の生体側端部は、振動子配列方向と直交する方向に離れた第1部分及び第2部分を有する。各振動子における第1部分がシグナルパターンに接続され、各振動素子における第2部分がグランドパターンに接続されている。各振動子において、生体側端部とベースフィルムとの間且つシグナルパターンとグランドパターンとの間に、音響要素アレイが設けられている。
【0018】
実施形態において、シグナルパターンの厚み、グランドパターンの厚み、及び、各音響要素アレイの厚みは、同一である。この構成によれば、製造コストを低減できる。
【0019】
実施形態において、複数の音響要素アレイは、配線パターンに含まれるグランドパターンに電気的に接続されている。この構成によれば、各音響要素アレイにおける電荷の蓄積を防止できる。
【0020】
実施形態において、各音響要素アレイの厚みは、各音響整合層の厚みtと同じである。厚みtは、各振動子から放射される超音波の中心周波数に対応する波長をλで表現した場合、λ/10≦t<λ/2の条件を満たす。この構成によれば、各音響整合層を適正に機能させることが可能となる。超音波の中心周波数は、一般に、超音波振動子の周波数帯域において、ピークから一定のレベル下がった2点の中間に相当する周波数である。
【0021】
実施形態において、各振動子は、振動子配列方向に直交する方向に伸長した2つの角部分を含む生体側端部を有する。各音響要素アレイには、2つの角部分を支える複数の音響要素が含まれる。この構成によれば、積層体において不正な振動モードが生じ難くなり、超音波伝搬効率を高められる。
【0022】
実施形態において、各音響整合層において音響要素アレイが有するピッチは、充填材が生じさせる横波の波長よりも小さい。この構成によれば、充填材に起因する横波が生じ難くなる。
【0023】
実施形態において、フィルム部材は環状の形態を有し、フィルム部材の内側に複数の振動子が環状に整列している。各振動子から放射された超音波がフィルム部材を通過する。フィルム部材におけるベースフィルムを超音波プローブの外皮として機能させてもよい。
【0024】
実施形態に係る音響整合層製造方法は、製作工程、及び、充填工程を有する。製作工程では、ベースフィルム上に、音響要素アレイを含む導体層が形成され、これによりフィルム部材が製作される。充填工程では、フィルム部材上に振動子を配置する際に、ベースフィルムと振動子との間であって音響要素アレイ以外の隙間に充填材が充填される。これにより、音響要素アレイ及び充填材からなる部分が音響整合層として機能する。音響整合層の音響インピーダンスは、音響整合層における音響要素アレイの存在割合により定められる。
【0025】
製作工程では、印刷技術、描画技術等を利用して導体層が形成される。充填工程では、展開状態にあるベースフィルムと振動子との間に充填材が導入される。充填材は実施形態において接着材であり、充填材の充填により、音響整合層が製作され、同時に、振動子がベースフィルムと一体化される。上記製造方法によれば、音響要素アレイを容易に形成でき、換言すれば、音響整合層を容易に形成できる。
【0026】
実施形態においては、フィルム部材上に板状の圧電材が載せられた上で、ベースフィルムと圧電材との間に充填材が導入され、その上で、圧電材のダイシングにより複数の振動子が形成される。そのような過程において、フィルム部材への圧電材の配置は、フィルム部材への複数の振動子の配置に相当する。
【0027】
(2)実施形態の詳細
図1には、実施形態に係る超音波診断装置が示されている。超音波診断装置は、被検者の超音波検査で使用されるものである。超音波診断装置は、装置本体10及び体腔内挿入型超音波プローブ(以下、プローブという。)12を有する。プローブ12は、具体的には、血管14内に挿入される電子走査型IVUSプローブである。以下に詳述する構成が他のプローブ(例えば気管支用超音波内視鏡)に適用されてもよい。
【0028】
プローブ12は柔軟性を有する長尺部材である。プローブ12の直径は例えば1~2mmの範囲内にある。プローブ12の直径が、その範囲以下であってもよいし、その範囲以上であってもよい。
【0029】
プローブ12の先端部12Aは、環状の形態を有する振動子アレイ18を有する。振動子アレイ18は、例えば、環状に配列された数十個又は数百個の振動子により構成される。振動子アレイ18上に開口(送信開口及び受信開口)が設定され、開口から超音波が放射され、開口によって反射波が受信される。開口の電子走査により超音波ビーム20がラジアル走査される。
【0030】
先端部12A内には、電子回路群22が設けられている。電子回路群22は振動子アレイ18に接続されている。電子回路群22の作用により開口が走査される。電子回路群22は、複数の電子回路により構成される。各電子回路は例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成される。
【0031】
プローブ12は、その中心軸に沿って形成された中空の通路を有する。その通路内にガイドワイヤ16が差し込まれる。より正確には、血管14内に既に配置されたガイドワイヤ16に沿ってプローブ12が血管内を前進する。
【0032】
送受信部24は、送信ビームフォーマー及び受信ビームフォーマーとして機能する電子回路である。送信時において、送受信部24から並列的に出力された複数の送信信号が電子回路群22を介して振動子アレイへ送られる。電子回路群22において送信用ビームフォーミングを行うことを前提として、送受信部24から電子回路群22へ1つの送信信号が送られてもよい。受信時において、振動子アレイ18から並列的に出力された複数の受信信号が電子回路群22を介して送受信部24へ送られる。電子回路群22において受信用のサブビームフォーミングが実施されてもよい。1回の送受信に際して電子回路群22から送受信部24へ1つの受信信号が送られてもよい。送受信部24においては、複数の受信信号に対する整相加算が実施される。これにより受信ビームデータが生成される。ラジアル走査に伴って、送受信部24からデータ処理部26を介して画像形成部28へ、複数の受信ビームデータが順次送られる。
【0033】
データ処理部26は、検波回路、フィルタ回路、対数変換回路等を有する。画像形成部28は、デジタルスキャンコンバータ(DSC)により構成される。DSCにより複数の受信ビームデータから断層画像が形成される。その断層画像が表示器30に表示される。その断層画像は血管14の横断面を示す動画像又は静止画像である。表示器30に血管縦断面を表す動画像又は静止画像が表示されてもよい。その場合、複数の横断面データを血管中心軸方向に連結することにより、血管縦断面を表す断層画像が生成されてもよい。表示器30に三次元画像が表示されてもよい。
【0034】
制御部32は、プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)を有する。制御部32により、超音波診断装置内の各構成要素の動作が制御される。表示器は有機EL表示デバイス、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成される。制御部32には、図示されていない操作パネルが接続されている。
【0035】
図2には、実施形態に係るプローブの断面が示されている。具体的には、図2には、先端部12Aの横断面が模式的に示されている。フィルム部材34は、実施形態において柔軟性を有するFPC基板である。フィルム部材34は、環状の形態を有している。フィルム部材34の内側に振動子アレイ18が設けられている。振動子アレイ18は、環状に配列された複数の振動子18aにより構成される。各振動子18aから送信された超音波がフィルム部材34を透過した上で生体内へ放射される。生体内からの反射波がフィルム部材34を透過した上で各振動子18aにおいて受信される。超音波ビーム20は図示されるようにラジアル走査される(符号36を参照)。
【0036】
振動子アレイ18の内側には円筒状のバッキング38が設けられている。バッキング38は、各振動子18aから後方へ放射された超音波を減衰させる部材である。バッキング38の内側にはパイプ40が設けられている。パイプ40の内部は、ガイドワイヤが差し込まれる通路42である。
【0037】
図3図5には、第1実施例に係る積層体が示されている。積層体は、フィルム部材及び振動子アレイにより構成される。図3図5において、積層体は展開状態にある。プローブの組み立て工程において積層体が丸められる。なお、各図において、x方向は、振動子配列方向であり、y方向は、振動子配列方向に直交する方向であり、且つ、プローブ中心軸に平行な方向である。z方向は積層方向であり且つ超音波伝搬方向である。積層体が丸められた場合、z方向は径方向に一致する。
【0038】
図3には、第1実施例に係る積層体のxz断面が示されている。図3において、下側が生体側であり、上側がプローブ中心軸に近い側である。
【0039】
フィルム部材34は、上述のように、FPC基板により構成され、具体的には、ベースフィルム44及びベースフィルム44上に形成された導体層46により構成される。ベースフィルム44は、絶縁性を有する樹脂により構成され、例えばポリイミドにより構成される。導体層46は、配線パターン、及び、複数の音響要素アレイ52を有する。配線パターンには、シグナルパターンとグランドパターンとが含まれる。導体層46は、例えば銅により構成される。導体層46が金、銀、ニッケル等により構成されてもよい。いずれにしても、導体層46は配線パターン材料として使用可能な導電性材料により構成される。
【0040】
フィルム部材34の非生体側の面上に振動子アレイ18が固着されている。振動子アレイ18は、x方向に並ぶ複数の振動子18aにより構成される。個々の振動子18aは圧電材により構成される。振動子18aは、シグナル電極層及びグランド電極層を有するが、図3においては、それらの図示が省略されている。
【0041】
ベースフィルム44と複数の振動子18aとの間に複数の音響整合層50が設けられている。換言すれば、導体層46が存在する厚さ範囲内に複数の音響整合層50が設けられている。各音響整合層50は、音響要素アレイ52及び充填材54からなる。音響要素アレイ52は隙間を有する。その隙間に充填材54が充填されている。
【0042】
各音響要素アレイ52は、後に図5に示すように、x方向及びy方向に整列した複数の音響要素により構成される。各音響要素は、上述のように、例えば銅により構成される。各音響要素の形態は、立方体又は直方体である。充填材54は接着材により構成され、例えば、エポキシ樹脂により構成される。
【0043】
後述するように、展開状態にあるフィルム部材34上に板状の圧電材が接着された上で、圧電材をダイシングすることにより複数の振動子18aが形成される。ダイシングにより、隣接する2つの振動子18a間にスリット56が生じる。積層体が丸められた後に各スリット56に対して目詰め材が充填されてもよい。符号58はダイシングによりベースフィルムの表面に生じた溝を示している。
【0044】
ベースフィルム44と各振動子18aは各音響整合層50を介して接着される。各音響整合層50は、上記のように、音響要素アレイ52と、音響要素アレイ52が有する隙間に充填された充填材54と、により構成される。符号57は各振動子18aから送信された超音波を示している。超音波57は血液及び血管壁を透過する。
【0045】
各振動子18aにおいて、厚みt1は例えば60~80μmであり、そのx方向の幅w1は例えば30~50μmである。各振動子18aのy方向の幅(後述するw3)は例えば0.6~0.8mmである。振動子間のピッチは例えば60~80μmである。スリット56の幅w2は例えば10~20μmである。各音響整合層の厚みは、導体層の厚みt2と同じであり、厚みt2は例えば4~100μmであり、望ましくは15~40μmである。ベースフィルム44の厚みt3は、10~30μmである。個々の整合要素のx方向の幅及びy方向の幅はそれぞれ例えば2~15μmである。本願明細書において挙げる数値はいずれも例示に過ぎないものである。
【0046】
超音波の中心周波数に対応する波長をλと表現した場合、各音響整合層50の厚みt2は、λ/10≦t2<λ/2の条件を満たす。この条件を満たすことにより、各音響整合層50が良好な音響整合作用を発揮する。当該条件における下限をλ/8としてもよい。望ましくは、t2=λ/4である。なお、超音波の中心周波数は、一般に、振動子アレイが有する周波数特性において、ピークから-6dB下がった2点間の中心に相当する周波数である。
【0047】
各振動子18aの音響インピーダンスZ1は、例えば30MRaylであり、各音響整合層50の音響インピーダンスZ2は、例えば8~10MRaylであり、ベースフィルム44の音響インピーダンスZ3は、例えば3MRaylである。生体の音響インピーダンスZ4は、一般に1.5MRaylである。Z2はZ1よりも小さく且つZ4よりも大きい。実施形態においては、Z1>Z2>Z3>Z4の関係が成立している。
【0048】
図4には、第1実施例に係る積層体のyz断面が示されている。フィルム部材34が有するベースフィルム44上には、シグナルパターンS及びグランドパターンGが形成されており、また、それらの間に音響要素アレイ52が形成されている。
【0049】
振動子18aは、圧電材48により構成される。圧電材48におけるy方向に直交する2つの面及びz方向に直交する2つの面には、電極層60が形成されている。電極層60は、金蒸着等の手法により形成される。
【0050】
圧電材48には、2つの分離溝62,64が形成されている。電極層60が2つの分離溝62,64によりシグナル電極層60a及びグランド電極層60bに分割されている。シグナル電極層60aは、シグナルパターンSに接続されており、グランド電極層60bは、グランドパターンGに接続されている。
【0051】
振動子18aは、生体側端部を有する。生体側端部は、y方向に互いに離れた第1部分200及び第2部分202を有する。第1部分200がシグナルパターンS上に載っており、第2部分202がグランドパターンG上に載っている。シグナルパターンSとグランドパターンGとの間(符号204を参照)に、音響要素アレイ52が設けられている。
【0052】
ベースフィルム44と振動子18aとの間に音響整合層50が形成されている。音響整合層50は、音響要素アレイ52と充填材54とからなる。音響要素アレイ52は、二次元配列された複数の音響要素により構成される。複数の音響要素は、グランド電極層60bに接続されている。これにより音響要素アレイ52の帯電が防止されている。音響整合層50は、導体層が有する厚み範囲内に形成されている。これにより積層体の厚みの増大が回避されている。なお、図4には、振動子18aのy方向の幅w3が示されている。
【0053】
図5には、第1実施例に係る積層体のxy断面が示されている。振動子アレイは、上述したように、数十個又は数百個の振動子により構成され、振動子ごとに音響整合層50が設けられる。図5には、4つの音響整合層50が示されている。また、図5には、シグナルパターン中の4つのシグナルラインS1~S4が示されており、グランドパターン中の4つのグランドラインG1~G4が示されている。
【0054】
各音響整合層50は、音響要素アレイ52及び充填材54により構成される。各音響要素アレイ52は、二次元配列された複数の音響要素により構成される。それらは音響整合層50の中に均一に埋め込まれている。音響要素アレイ52は格子状の隙間を有し、その隙間に充填材54が充填されている。各シグナルラインS1~S4のx方向の幅及び各グランドラインG1~G4のx方向の幅は例えば30μmである。シグナルラインS1~S4のx方向のピッチ及びグランドラインG1~G4のx方向のピッチは例えば30μmである。
【0055】
各整合層50における、充填材の比率と導電材の比率を操作することにより、所望の音響インピーダンスを実現できる。ここで、比率は体積比率である。例えば、充填材の音響インピーダンスをZa、銅の音響インピーダンスをZb、整合層において目標とする音響インピーダンスをZxと表現した場合、以下の計算式が成り立つように、充填材の面積割合α及び導電材の面積割合βを定めればよい。
【0056】
Zx=αZa+βZb ・・・(1)
【0057】
ここで、面積割合α及び面積割合βは、それぞれ、xy断面における面積割合であり、α+β=1である。
【0058】
例えば、Zaが3MRaylであり、Zbが40MRaylであり、Zxが10MRaylである場合、αは0.81となり、βは0.19となる。よって、充填材の割合を80%とし、導電材の割合を20%にすれば、音響整合層の目標音響インピーダンス10MRaylを実現できる。
【0059】
図5に示されるように、各音響要素アレイ52は、x方向のピッチPx及びy方向のピッチpyを有する。充填材に起因して生じ得る横波の波長とピッチPx,Pyとが一致した場合、定在波が生じる。そのような不要な振動はアレイ振動子の特性を悪化させる。超音波の周波数をfと表現し、横波の波長をλtと表現し、横波の速度をctと表現した場合、定在波が生じる条件は、以下のようになる。
【0060】
λt=ct/f ・・・(2)
【0061】
上記の超音波の周波数は、例えば、振動子アレイが有する周波数特性における中心周波数である。上記Px,Pyをλtよりも小さくすれば、定在波は生じなくなる。例えば、fが20MHzであり、Ctが1360m/sである場合、Px、Pyをいずれも68μm以下にすればよい。
【0062】
図6には、第1アレイパターンを有する音響要素アレイ69が示され、図7には、第2アレイパターンを有する音響要素アレイ76が示されている。音響要素アレイ69のxy断面積及び音響要素アレイ76のxy断面の面積は同一である。
【0063】
図6において、各音響整合層66は音響要素アレイ69及び充填材70を有する。各振動子68における生体側端部は、y方向に伸長した第1角部分68A及び第2角部分68Bを有する。第1角部分68A及び第2角部分68Bはx方向に離れている。第1角部分68Aとベースフィルムとの間には音響要素が存在しておらず、第1角部分68Aは充填材70によって支持されている。これと同様に、第2角部分68Bとベースフィルムとの間には音響要素が存在しておらず、第2角部分68Bは充填材70によって支持されている。図示の例では、隣り合う2つの音響整合層の間に充填材71が設けられている。図6に示す音響整合素子アレイ69を用いた場合、第1角部分68A及び第2角部分68Bが相対的に見て柔らかい部材で支持されているので、振動子68において不正な振動モードが生じ易くなる。
【0064】
図7において、各音響整合層74は、音響要素アレイ76及び充填材78を有する。各振動子68において、第1角部分68Aとベースフィルムとの間には音響要素76Aが存在しており、第1角部分68Aは音響要素76Aによって支持されている。これと同様に、第2角部分68Bとベースフィルムとの間には音響要素76Bが存在しており、第2角部分68Bは音響要素76Bによって支持されている。図示の例では、隣り合う2つの音響整合層の間に充填材79が設けられている。図7に示す音響要素アレイ76を用いた場合、振動子68の生体側端部それ全体が硬い部材により支持されるので、特に、第1角部分68A及び第2角部分68Bが相対的に見て硬い部材で支持されているので、振動子68において不正な振動モードが生じ難くなる。
【0065】
よって、整合素子アレイのパターンを設計する際には、音響整合層における周辺部に含まれる導電材の量を、その中央部に含まれる導電材の量以上にした方がよく、特に、第1角部分及び第2角部分が整合素子アレイによって直接的に支持されるようにした方がよい。なお、上記の周辺部及び上記の中央部はそれぞれ音響整合層の50%に相当する。
【0066】
図8には、第2実施例に係る積層体のxy断面が示されている。各音響整合層90は、音響要素アレイ92及び充填材93により構成される。音響要素アレイ92は、y方向に整列した複数の音響要素92aにより構成される。各音響要素92aは、x方向に伸長した板状の形態を有する。なお、図8には、複数のシグナルラインS1~S4及び複数のグランドラインG1~G4も示されている。
【0067】
図9には、第3実施例に係る積層体のxy断面が示されている。各音響整合層94は、音響要素アレイ96及び充填材97により構成される。音響要素アレイ96は、x方向に整列した複数の音響要素96aにより構成される。各音響要素96aは、y方向に伸長した板状の形態を有する。なお、図9には、複数のシグナルラインS1~S4及び複数のグランドラインG1~G4も示されている。
【0068】
図10には、第3実施例に係る積層体のxy断面が示されている。各音響整合層98は、音響要素アレイ100及び充填材102により構成される。音響要素アレイ100は、二次元的にランダムに配置された複数の音響要素100aにより構成される。各音響要素100aは、円筒状の形態を有する。なお、図10には、複数のシグナルラインS1~S4及び複数のグランドラインG1~G4が示されている。
【0069】
第2実施例、第3実施例及び第4実施例に係る積層体において、各振動子は図3及び図4に示した構造を有する。各音響要素アレイはグランドパターンに接続されている。
【0070】
図11には、実施形態に係るプローブ製造方法が示されている。プローブ製造方法には、音響整合層製造方法が含まれる。
【0071】
S10では、展開状態にあるベースフィルム上に導体層が形成され、これによりフィルム部材が製作される。導体層の形成に際しては、例えば、印刷技術又は描画技術が利用される。導体層は、配線パターン及び複数の音響要素アレイを有する。配線パターンには、シグナルパターン及びグランドパターンが含まれる。
【0072】
S12では、フィルム部材上に板状の圧電材が設けられる。その際、ベースフィルムと圧電材の間に充填材が導入される。これによりフィルム部材に圧電材が固着される。それと同時に複数の音響整合層が完成する。S14では、圧電材がダイシングされ、これにより複数の振動子が製作される。
【0073】
S16では、フィルム部材と振動子アレイとからなる積層体が環状に丸められ、そのような積層体がバッキングに接着される。これにより製作された組立体に対して他の部材が取り付けられる。
【0074】
上記実施形態によれば、積層体の厚みを抑制しつつ振動子ごとに音響整合層を設けることが可能となる。音響整合層において音響要素アレイのパターンを調整することにより、所望の音響インピーダンスを容易に実現できる。なお、充填材の中に添加剤を混入してもよい。音響要素アレイを含む第1音響整合層とは別に第2音響整合層を設けてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 装置本体、12 体腔内挿入型超音波プローブ、14 血管、18 振動子アレイ、34 フィルム部材、44 ベースフィルム、46 導体層、50 音響整合層、52 音響要素アレイ、54 充填材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
図11