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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153172
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241022BHJP
   B24B 49/16 20060101ALI20241022BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20241022BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20241022BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H01L21/304 601Z
B24B49/16
B24B49/10
B24B9/00 601H
B24B7/04 A
H01L21/304 621E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066901
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】小鮒 勇吾
(72)【発明者】
【氏名】滝田 友春
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
3C049
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB73
3C034BB92
3C034CA16
3C034CB03
3C034CB14
3C034DD10
3C043BA03
3C043BA09
3C043CC03
3C043CC13
3C043DD02
3C043DD03
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
3C049AA03
3C049AA14
3C049AC02
3C049BA06
3C049BB02
3C049BC02
3C049CB01
5F057AA12
5F057AA53
5F057BA19
5F057CA16
5F057DA17
(57)【要約】
【課題】第1ウェーハと第2ウェーハとが重ねられた積層ウェーハの第1ウェーハの周縁部を切削する際に、第1ウェーハの切削が完了したことを適切に検出して第2ウェーハへの切削ブレードの切り込みを制御できる加工方法を提供する。
【解決手段】
積層ウェーハの第2ウェーハ側を保持する保持ステップと、先端部に切削ブレードが装着されたスピンドルをモータにより回転させた状態で、第1ウェーハの該面に対して垂直な方向に沿って積層ウェーハとスピンドルとを相対的に移動させ、第1ウェーハの面に対して垂直な方向に沿う回転軸の周りに積層ウェーハを回転させることにより、第1ウェーハに切削ブレードを切り込ませて第1ウェーハの周縁部を切削する切削ステップと、を含み、切削ステップでは、モータを流れる電流の電流値を監視し、電流値がしきい値により規定される範囲から外れたことを検出する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ウェーハと第2ウェーハとが重ねられた積層ウェーハの該第1ウェーハの周縁部を加工する加工方法であって、
該第1ウェーハの該第2ウェーハと重ねられている面と反対側の面が露出するように該積層ウェーハの該第2ウェーハ側を保持する保持ステップと、
先端部に切削ブレードが装着されたスピンドルをモータにより回転させた状態で、該第1ウェーハの該面に対して垂直な方向に沿って該積層ウェーハと該スピンドルとを相対的に移動させ、該第1ウェーハの該面に対して垂直な方向に沿う回転軸の周りに該積層ウェーハを回転させることにより、該第1ウェーハに該切削ブレードを切り込ませて該第1ウェーハの該周縁部を切削する切削ステップと、を含み、
該切削ステップでは、該モータを流れる電流の電流値を監視し、該電流値がしきい値により規定される範囲から外れたことを検出する加工方法。
【請求項2】
該切削ステップでは、該電流値がしきい値により規定される範囲から外れた時点で該積層ウェーハと該スピンドルとの相対的な移動を止める請求項1に記載の加工方法。
【請求項3】
該切削ステップでは、該積層ウェーハと該スピンドルとを相対的に移動させながら該積層ウェーハを回転させる請求項1又は請求項2に記載の加工方法。
【請求項4】
該切削ステップの後、該積層ウェーハと該スピンドルとの相対的な移動を止めた状態で該回転軸の周りに該積層ウェーハを回転させる追加切削ステップを更に含む請求項1又は請求項2に記載のウェーハの面取り加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程では、ウェーハの表面に複数のストリートが格子状に設定され、この複数のストリートによって区画された複数の領域のそれぞれに、IC(Integrated circuit)及びLSI(Large Scale Integration)等のデバイスが形成される。このウェーハは、例えば、研削装置等により裏面側を研削されて所定の厚みに薄化された後、切削装置等によりストリートに沿って切断され、個々の領域に分割される。これにより、それぞれがデバイスを有する複数の半導体デバイスチップが得られる。
【0003】
ウェーハの周縁部には、このウェーハの機械的な強度を高めるために、周縁部の角が除去され丸みを帯びた面取り部が形成されている。このような面取り部が形成されたウェーハを、例えば、厚みが半分以下になるまで薄化すると、ウェーハの周縁部の形状が薄く鋭利な形状(所謂シャープエッジ)となり、その部分の機械的な強度が低下することによりウェーハが破損する可能性がある。これを防ぐために、ウェーハの周縁部を切削して面取り部を除去(トリミング)してから、ウェーハを薄化する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-173961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のようなウェーハは、別のウェーハに重ねられた積層ウェーハの状態で研削されることがある。例えば、研削の対象となる第1ウェーハに対して接合や接着等の方法で第2ウェーハが重ねられている場合には、第1ウェーハの周縁部を切削することにより、第1ウェーハの面取り部が除去される。
【0006】
しかしながら、第1ウェーハの材質と第2ウェーハの材質とが異なる場合に、第1ウェーハの周縁部の切削後に切削ブレードが第2ウェーハにまで切り込んでしまうと、様々な問題が引き起こされる。例えば、第2ウェーハの硬度が第1ウェーハの硬度よりも高い場合には、切削ブレードが第2ウェーハにまで切り込むことよって、切削加工の負荷が極端に増大し、ウェーハの加工不良や、切削ブレードの異常消耗等が発生する可能性が高い。
【0007】
よって、本発明の目的は、第1ウェーハと第2ウェーハとが重ねられた積層ウェーハの第1ウェーハの周縁部を切削する際に、第1ウェーハの切削が完了したことを適切に検出して第2ウェーハへの切削ブレードの切り込みを制御できる加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によれば、第1ウェーハと第2ウェーハとが重ねられた積層ウェーハの第1ウェーハの周縁部を加工する加工方法であって、該第1ウェーハの該第2ウェーハと重ねられている面とは反対側の面が露出するように該積層ウェーハの該第2ウェーハ側を保持する保持ステップと、先端部に切削ブレードが装着されたスピンドルをモータにより回転させた状態で、該第1ウェーハの該面に対して垂直な方向に沿って該積層ウェーハと該スピンドルとを相対的に移動させ、該第1ウェーハの該面に対して垂直な方向に沿う回転軸の周りに該積層ウェーハを回転させることにより、該第1ウェーハに該切削ブレードを切り込ませて該第1ウェーハの該周縁部を切削する切削ステップと、を含み、該切削ステップでは、該モータを流れる電流の電流値を監視し、該電流値がしきい値により規定される範囲から外れたことを検出する加工方法が提供される。
【0009】
好ましくは、該切削ステップでは、該電流値がしきい値により規定される範囲から外れた時点で該積層ウェーハと該スピンドルとの相対的な移動を止める。
【0010】
好ましくは、該切削ステップでは、該積層ウェーハと該スピンドルとを相対的に移動させながら該積層ウェーハを回転させる。
【0011】
好ましくは、該切削ステップの後、該積層ウェーハと該スピンドルとの相対的な移動を止めた状態で該回転軸の周りに該積層ウェーハを回転させる追加切削ステップを更に含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面に係る加工方法では、切削ブレードのスピンドルを回転させるモータを流れる電流値を監視し、電流値がしきい値により規定される範囲から外れたことを検出することで、第1ウェーハの切削が完了したことを検出する。これにより、第1ウェーハの切削が完了したことを適切に検出して第2ウェーハへの切削ブレードの切り込みを制御できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、切削装置を示す斜視図である。
図2図2は、チャックテーブルにより保持された被加工物の断面を示す図である。
図3図3は、被加工物及びチャックテーブルを上から見た図である。
図4図4は、第1実施形態の加工方法に係るフロー図である。
図5図5は、第1実施形態の加工方法に係る切削ステップの実行時の第1切削ユニット、ウェーハ及びチャックテーブルの側面図である。
図6図6は、第1実施形態の加工方法に係る切削ステップの実行時の第1切削ユニット、ウェーハ及びチャックテーブルの斜視図である。
図7図7は、第1実施形態に係る負荷電流値(A)と加工時間(s)との関係を示すグラフである。
図8図8は、負荷電流値(A)と加工時間(s)との関係の他の例を示すグラフである。
図9図9は、第2実施形態に係る加工方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、切削装置2を示す斜視図である。なお、図1では、一部の構成要素が機能ブロックで表現されている。また、以下の説明で用いられるX軸(加工送り軸)、Y軸(割り出し送り軸)、及びZ軸(鉛直軸)は、互いに垂直である。
【0015】
図1に示されるように、切削装置2は、種々の構成要素を支持する基台4を備える。基台4の上面の角部には、開口部4aが形成されており、この開口部4a内には、昇降機構(不図示)によって昇降するカセットテーブル6が配置されている。カセットテーブル6の上面には、切削装置2で加工される被加工物を収容できるカセット8が載せられる。なお、図1では、説明の便宜上、カセット8の輪郭のみが示されている。
【0016】
図1に示されるように、Y軸に沿ってカセットテーブル6に隣接する位置には、X軸に沿う方向に長い開口部4bが形成されている。開口部4b内には、ボールねじ式のチャックテーブル移動機構(加工送り機構)10が配置されている。チャックテーブル移動機構10は、ボールねじの端部に接続されるモータ等の回転駆動源(不図示)と、ボールねじに連結されるナット部を有するX軸移動テーブル(不図示)と、を含んでおり、X軸移動テーブルをX軸に沿って移動させる。
【0017】
X軸移動テーブルの上方は、テーブルカバー10aによって覆われている。また、テーブルカバー10aのX軸に沿う方向の両端部には、X軸移動テーブル及びテーブルカバー10aの移動に応じて伸縮する蛇腹状の防塵防滴カバー10bが取り付けられている。X軸移動テーブルの上部には、ベアリング(不図示)を介してチャックテーブル12を支持する円盤状のテーブルベース50(図2参照)が配置される。テーブルベース50の上面には、被加工物(積層ウェーハ)11を保持するチャックテーブル12が、テーブルカバー10aから露出する態様で配置されている。
【0018】
チャックテーブル12は、モータ等の回転駆動源(不図示)に接続されており、Z軸に対して概ね平行な回転軸64(図5参照)の周りに回転する。また、チャックテーブル12は、上述したチャックテーブル移動機構10によって、X軸移動テーブルとともにX軸に沿って移動する(加工送り)。
【0019】
図2は、チャックテーブル12により保持された被加工物11の断面を示す図であり、図3は、被加工物11及びチャックテーブル12を上から見た図である。図2に示されるように、テーブルベース50に保持されるチャックテーブル12は、例えば、ステンレス鋼に代表される金属で形成された円盤状の枠体14を含む。枠体14の上面側には、上端が円形状に開口した凹部が形成されている。凹部には、この凹部の形状に合致する円盤状の保持板16が嵌め込まれている。
【0020】
保持板16は、例えば、セラミックス等の材料で多孔質の板状に構成され、その上面(保持面)16aで被加工物11を保持する。なお、保持板16の上面16aは、保持板16が凹部に嵌め込まれた状態で、X軸及びY軸に対して概ね平行になるように構成されている。つまり、チャックテーブル12は、保持板16の上面16aに対して概ね垂直な回転軸64の周りに回転する。
【0021】
枠体14の凹部の底には、枠体14の内部に設けられた流路(不図示)や、枠体14の外部に配置されたバルブ(不図示)等を介して、吸引源(不図示)が接続されている。よって、バルブが開かれると、流路等を通じて保持板16の上面16aに吸引源の負圧が作用する。吸引源としては、例えば、エアーの供給源とエジェクタとを組み合わせた真空ポンプが用いられる。ただし、吸引源として、ロータリーポンプ等が用いられてもよい。
【0022】
図2及び図3に示されるように、被加工物11は、円盤状の第1ウェーハ13と、円盤状の第2ウェーハ15とが重ねられた積層ウェーハである。第1ウェーハ13は、互いに略平行な円形状の上面13aと、円形状の下面11bとを有する。同様に、第2ウェーハ15は、互いに略平行な円形状の上面15aと、円形状の下面15bとを有する。被加工物11は、第1ウェーハ13の下面13bと第2ウェーハ15の上面15aとが向き合うように重ねられることにより構成されている。
【0023】
一方で、第1ウェーハ13の上面13a側と第2ウェーハ15の下面15b側とは露出している。そして、第2ウェーハ15の下面15b側が、チャックテーブル12の上面16aにより保持される。なお、被加工物11は、裏面である第2ウェーハ15の下面15bにダイシングテープが貼り付けられ、このダイシングテープを保持するフレームを介してチャックテーブル12の上面16aにより保持されても良い。
【0024】
図2において、第1ウェーハ13と第2ウェーハ15とは、例えば、接合されて重ねられている。第1ウェーハ13と第2ウェーハ15とを接合する方法としては、例えば、第1ウェーハ13と第2ウェーハ15とを重ね、加熱及び加圧する方法が挙げられる。なお、第1ウェーハ13と第2ウェーハ15とは、接着材等を介して積層されていても良い。接着材としては、例えば、エポキシ樹脂やフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0025】
本実施形態において、第1ウェーハ13として、直径が100mmの円盤状のタンタル酸リチウム(Lithium Tantalate;LT)基板が用いられる。また、第2ウェーハ15として、第1ウェーハ13の直径に概ね等しい直径の円盤状のサファイヤウェーハが用いられる。なお、第1ウェーハ13の材質、大きさ及び形状と、第2ウェーハ15の材質、大きさ及び形状については、特に制限は無い。更に、図2及び図3には示されていないが、第1ウェーハ13の下面13b側には、IC(Integrated Circuit)等の半導体デバイスが形成されていても良い。
【0026】
図2に示されるように、第1ウェーハ13の周縁部は、例えば、角のない丸みを帯びた形状の面取り部13cを有し、第2ウェーハ15の周縁部は、例えば、角のない丸みを帯びた形状の面取り部15cを有している。面取り部13c及び面取り部15cは、いずれも、周縁部に沿った環状に形成されており、例えば、被加工物11の外周縁から被加工物11の中心に向かって100μm~1mmの幅を有する。
【0027】
開口部4bの上方には、上述した被加工物11をチャックテーブル12等へと搬送できる一又は複数の搬送機構(不図示)が配置されている。搬送機構で搬送された被加工物11は、例えば、第1ウェーハ13の上面13a側が上方に露出するようにチャックテーブル12の上面16aに載せられる。
【0028】
基台4の上面には、Y軸に沿って開口部4bを跨ぐ門型の支持構造20が設けられている。支持構造20の上部には、一対の切削ユニット移動機構(割り出し送り機構、切り込み送り機構)22が配置されている。なお、一対の切削ユニット移動機構22の構造は、X軸とZ軸とに平行な面に関して互いに対称(鏡像の関係)になるように構成されている点を除き、実質的に同じである。一対の切削ユニット移動機構22の同じ構成要素には、同じ符号が付され、重複する説明が省略される。
【0029】
各切削ユニット移動機構22は、支持構造20の正面(表面)に固定されY軸に対して概ね平行な一対のY軸ガイドレール24を共有している。一対のY軸ガイドレール24には、各切削ユニット移動機構22を構成するY軸移動プレート26がY軸に沿ってスライドできる態様で取り付けられている。各Y軸移動プレート26の背面側(裏面側)には、ボールねじを構成するナット部(不図示)が設けられており、各ナット部には、Y軸ガイドレール24に対して概ね平行なねじ軸28が、回転できる態様で連結されている。
【0030】
各ねじ軸28の一端部には、モータ等の回転駆動源30が接続されている。各回転駆動源30によってねじ軸28を回転させることで、対象のY軸移動プレート26は、Y軸ガイドレール24に沿って移動する。各Y軸移動プレート26の正面(表面)には、Z軸に対して概ね平行な一対のZ軸ガイドレール32が固定されている。各Y軸移動プレート26に固定された一対のZ軸ガイドレール32には、Z軸移動プレート34がZ軸に沿ってスライドできる態様で取り付けられている。
【0031】
各Z軸移動プレート34の背面側(裏面側)には、ボールねじを構成するナット部(不図示)が設けられており、各ナット部には、Z軸ガイドレール32に対して概ね平行なねじ軸36が、回転できる態様で連結されている。各ねじ軸36の一端部には、モータ等の回転駆動源38が接続されている。各回転駆動源38によってねじ軸36を回転させることで、対象のZ軸移動プレート34は、Z軸ガイドレール32に沿って移動する。
【0032】
一方の切削ユニット移動機構22を構成するZ軸移動プレート34の下部には、第1切削ユニット40aが固定されている。第1切削ユニット40aは、筒状のスピンドルハウジング42を備えている。このスピンドルハウジング42には、図5に示されるように、Y軸に対して概ね平行な軸心を持つスピンドル44が収容されている。スピンドル44の一方の端部(先端部)には切削ブレード46が装着されており、スピンドル44の他方の端部には、スピンドル44の回転駆動源であるモータ48が接続されている。
【0033】
切削ブレード46は、例えば、ダイヤモンド等でなる砥粒が、金属、樹脂、セラミックス等の結合材によって分散、固定されたものであり、2mm~3mmの幅(Y軸に沿った長さ、厚み)に形成される。
【0034】
図1に示されるように、第1切削ユニット40aを構成するスピンドルハウジング42の開口部4b側の端部には、スピンドル44に装着された切削ブレード46を部分的に覆うことができるカバー52が設けられている。カバー52の下部には、水に代表される加工用の液体(加工液)を切削ブレード46へと供給できる一対のノズル54が、切削ブレード46を挟むように配置されている。
【0035】
X軸に沿って第1切削ユニット40aに隣接する位置には、チャックテーブル12に保持された被加工物11等を撮像できるカメラ56が配置されている。カメラ56は、第1切削ユニット40aと同様に、一方の切削ユニット移動機構22を構成するZ軸移動プレート34の下部に固定されている。
【0036】
そのため、一方の切削ユニット移動機構22で一方のY軸移動プレート26をY軸に沿って移動させれば、第1切削ユニット40a及びカメラ56は、Y軸に沿って移動する(割り出し送り)。また、一方の切削ユニット移動機構22で一方のZ軸移動プレート34をZ軸に沿って移動させれば、第1切削ユニット40a及びカメラ56は、Z軸に沿って移動する(切り込み送り)。
【0037】
他方の切削ユニット移動機構22を構成するZ軸移動プレート34の下部には、第1切削ユニット40aと同様の第2切削ユニット40bが固定されている。また、X軸に沿って第2切削ユニット40bに隣接する位置には、カメラ56が配置されている。
【0038】
図1に示されるように、開口部4bに対して開口部4aと反対側の位置には、開口部4cが形成されている。開口部4c内には、加工後の被加工物11等を洗浄するための洗浄ユニット58が配置されている。更に、上述した切削装置2の種々の構成要素には、コントローラ60が接続されている。各構成要素の動作は、このコントローラ60により制御される。
【0039】
コントローラ60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置でなる処理部60aと、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置及び/又はハードディスクドライブやフラッシュメモリ等の補助記憶装置でなる記憶部60bと、を含むコンピュータによって構成される。記憶部60bに記憶されているプログラム(ソフトウェア)に従い処理部60aが動作することによって、コントローラ60の機能が実現される。ただし、コントローラ60は、ハードウェアのみによって実現されてもよい。
【0040】
次に、第1実施形態に係る加工方法について説明する。図4は、第1実施形態の加工方法に係るフロー図である。なお、この第1実施形態では、加工方法を構成する各工程が、コントローラ60の指令に基づき遂行される。
【0041】
第1実施形態の加工方法では、まず、チャックテーブル12の上面16aにより被加工物11を保持する保持ステップS1が実行される。具体的には、この保持ステップS1では、例えば、搬送機構(ロボットアーム等)によりカセット8からチャックテーブル12に被加工物11が搬入され、チャックテーブル12の上面16aに載せられる。上述したように、本実施形態では、第1ウェーハ13の上面13aが露出するように、第2ウェーハ15の下面15b側が保持板16の上面16aに載置される。
【0042】
その後、配管等の流路に設けられたバルブを開いて上面16aに吸引源の負圧を作用させると、被加工物11は、上面16aに吸引される。すなわち、被加工物11は、保持板16の上面16aにより保持される。なお、被加工物11は、オペレータ等によって手動で保持板16の上面16aに載せられてもよい。
【0043】
次に、被加工物11の周縁部を加工する切削ステップS2が実行される。図5は、第1実施形態の加工方法に係る切削ステップS2の実行時の第1切削ユニット40a、被加工物11及びチャックテーブル12の側面図であり、図6は、第1実施形態の加工方法に係る切削ステップS2の実行時の第1切削ユニット40a、被加工物11及びチャックテーブル12の斜視図である。
【0044】
図5に示されるように、第1切削ユニット40aの切削ブレード46と被加工物11との、X軸に沿う方向(X軸方向)及びY軸に沿う方向(Y軸方向)の位置の関係が調整される。具体的には、切削ブレード46が被加工物11の切削される箇所の上部に位置付けられるよう、被加工物11のX軸方向の位置がチャックテーブル移動機構10により調整され、第1切削ユニット40aのY軸方向の位置が切削ユニット移動機構22により調整される。
【0045】
例えば、第1ウェーハ13の面取り部13cの幅の大きさをWmmとすると、上面13aの中心側に配置される切削ブレード46の幅の方向(Y軸に沿う方向)の一方の端部は、被加工物11の端部から上面13aの中心側に向かってW+1mm~W+3mmの位置に位置付けられる。なお、本実施形態では、第1切削ユニット40aが使用されているが、第2切削ユニット40bが使用されても良い。
【0046】
切削ブレード46の位置と被加工物11の位置との関係が調整された後には、図6に示されるように、回転駆動源であるモータ48が切削ブレード46を回転させた上で、切削ユニット移動機構22が切削ブレード46を下降させる。また、チャックテーブル12に接続された回転駆動源が、切削ブレード46の下降に合わせてチャックテーブル12を回転軸64の周りに回転させる。
【0047】
この様に、切削ブレード46を下降させながら、チャックテーブル12を回転軸64の周りに回転させることにより、被加工物11の周縁部に沿って切削ブレード46を切り込ませることができる。すなわち、被加工物11の周縁部が切削ブレード46により切削され、除去される。なお、切削ブレード46の下降とチャックテーブル12の回転とは、第1ウェーハ13の面取り部13cが完全に除去されるまで続けられる。
【0048】
なお、切削ブレード46が下降するのではなく、チャックテーブル12が上昇することにより、切削ブレード46の下端が被加工物11の所定の深さまで切り込むようにしても良い。また、チャックテーブル12を回転させながら、切削ブレード46のY軸方向の位置が調整されてもよい。
【0049】
例えば、第1ウェーハ13の厚みが525μmである場合、切削ブレード46の切り込み深さ(切削装置2に設定される切り込み深さ)は、550μm、カット回数(切削ブレード46が第1ウェーハ13に切り込んでからのチャックテーブル12の回転回数)は、44回、切削ブレード46を下降させる速度(Z軸送り速度)は、0.0025mm/s、チャックテーブル12の回転速度は、72deg/s、スピンドル44の回転速度は、30000rpmに設定される。
【0050】
図5に示されるように、スピンドル44を回転駆動するモータ48は、コントローラ60によりその機能が実現される電流監視部62に接続されており、モータ48を流れる電流値(負荷電流値)が電流監視部62により監視される。図7は、第1実施形態に係る負荷電流値(A)と加工時間(s)との関係を示すグラフである。
【0051】
図7に示される例では、負荷電流値は、第1ウェーハ13の切削が開始されてから所定の時間が経過した時点で大きく増大している。これは、例えば、軟らかい第1ウェーハ(材質:LT)13に切り込んでいた切削ブレード46が、硬い第2ウェーハ(材質:サファイヤ)15に切り込む際に、加工負荷(切削抵抗)が増大するためである。
【0052】
図7に示されるaは、負荷電流値の第1しきい値(下限値)であり、aは、負荷電流値の第2しきい値(上限値)である。第1しきい値aと第2しきい値aとは、第1ウェーハ13の切削中の負荷電流値が、この第1しきい値aと第2しきい値aの間の値をとるように設定され、コントローラ60の記憶部60bに記憶される。
【0053】
上述のように、第1ウェーハ13の面取り部13cが完全に除去されると、例えば、負荷電流値は、第2しきい値aを超える。そこで、電流監視部62は、上限が第2しきい値aによって規定される範囲から、この負荷電流値が外れたことを検出する。具体的には、電流監視部62は、負荷電流値が第2しきい値aを超えた場合(又は、第2しきい値a以上となった場合)に、例えば、その旨をオペレータに報知する。
【0054】
また、この時点で、例えば、電流監視部62は、切削ユニット移動機構22による切削ブレード46の下降(つまり、相対的な移動)を停止する。すなわち、この場合には、切削ブレード46の切り込み深さが切削装置2に設定された切り込み深さに到達する前に、切削ブレード46の切り込みが停止される。ただし、電流監視部62は、負荷電流値が範囲から外れた時点で、必ずしも切削ブレード46の切り込みを停止しなくてよい。例えば、負荷電流値が範囲から外れたことが電流監視部62により検出された場合に、オペレータが次の処理を選択してもよい。
【0055】
上述したしきい値a及びaは、少なくとも、第1ウェーハ13の材質、及び負荷電流値の測定の精度を考慮して、好ましくは、更に、第2ウェーハ15の材質を考慮して、決定される。例えば、第1ウェーハ13を切削する際の適正な負荷電流値の範囲がi≦I≦iであり、負荷電流値の測定の精度が±Δiである場合、aはi-Δi以下に設定され、aはi+Δi以上に設定される。
【0056】
図8は、負荷電流値(A)と加工時間(s)との関係の他の例を示すグラフである。図8に示される例では、図7に示される場合とは逆に、負荷電流値は、第1ウェーハ13の切削が開始されてから所定の時間が経過した時点で大きく減少している。例えば、第2ウェーハ15に比べて第1ウェーハ13の方が硬い場合には、相対的に軟らかい第2ウェーハ15に対して切削ブレード46が切り込む際に、図8に示されるように、加工負荷(切削抵抗)が減少する。
【0057】
また、例えば、第1ウェーハ13と第2ウェーハ15との間に第1ウェーハ13よりも柔らかいエポキシ樹脂等の接着材が設けられている場合にも、図8に示されるような負荷電流値(切削抵抗)の減少が検出されると考えられる。このように、第1ウェーハ13の面取り部13cが完全に除去されると、負荷電流値は、第1しきい値aを下回ることがある。
【0058】
そこで、電流監視部62は、下限が第1しきい値aによって規定される範囲から、この負荷電流値が外れたことを検出する。具体的には、電流監視部62は、負荷電流値が第1しきい値aを下回った場合(又は、第1しきい値a以下となった場合)に、例えば、その旨をオペレータに報知する。
【0059】
また、この時点で、例えば、電流監視部62は、切削ユニット移動機構22による切削ブレード46の下降(つまり、相対的な移動)を停止する。すなわち、この場合にも、切削ブレード46の切り込み深さが切削装置2に設定された切り込み深さに到達する前に、切削ブレード46の切り込みが停止される。もちろん、電流監視部62は、負荷電流値が範囲から外れた時点で、必ずしも切削ブレード46の切り込みを停止しなくてよい。
【0060】
本実施形態では、上述したように、スピンドル44を回転させるモータ48を流れる電流値を監視し、電流値がしきい値a、aにより規定される範囲を外れたことを検出することで、第1ウェーハ13の切削が完了したことを適切に検出する。これにより、切削ブレード46の第2ウェーハ15への切り込みを制御することができる。
【0061】
ところで、電流値がしきい値a、aにより規定される範囲を外れたことを検出した直後に、切削ブレード46の下降が停止すると、面取り部13cが完全に除去されない可能性がある。そこで、切削ブレード46の下降が停止した後には、追加の加工が実施されてもよい。
【0062】
図9は、第2実施形態に係る加工方法のフロー図である。図9に示されるように、第2実施形態では、保持ステップS1及び切削ステップS2が第1実施形態と同様に実施される。更に、この第2実施形態では、切削ステップS2の後に、追加切削ステップS3が実施される。
【0063】
追加切削ステップS3では、切削ユニット移動機構22による切削ブレード46の下降(つまり、相対的な移動)が停止した後に、この切削ブレード46の高さを変えることなく、チャックテーブル12が1周以上回転し、第1ウェーハ13の周縁部が切削される。この態様によれば、第1ウェーハ13の周縁部を完全に除去できる深さに位置づけられた切削ブレード46によって、第1ウェーハ13が全周に渡って切削されるので、面取り部13cが確実に除去される。
【0064】
なお、本発明は、上述した実施形態の記載に制限されず種々変更して実施され得る。例えば、上述した実施形態では、切削ブレード46の下降とチャックテーブル12の回転とを同時に実施することにより第1ウェーハ13の周縁部の切削が行われているが、第1ウェーハ13の周縁部は、他の方法で切削されてもよい。
【0065】
具体的には、例えば、切削ブレード46の下降と、チャックテーブル12の回転と、を交互に繰り返す方法により、第1ウェーハ13の周縁部が切削されることがある。すなわち、切削ブレード46の切り込み及びチャックテーブル12の回転は、面取り部13cが除去されるまで、複数回に分けて実施されてもよい。
【0066】
この場合には、コントローラ60は、切削ユニット移動機構22により切削ブレード46を所定の距離だけ下降させ、第1ウェーハ13に切り込ませてから、切削ブレード46の下降を停止する。その後、コントローラ60は、チャックテーブル12を1周以上回転させる。そして、このような動作が繰り返されることにより、面取り部13cが除去される。
【0067】
また、上述した実施形態では、第1ウェーハ13を切削する際の適正な負荷電流値の範囲に基づき、負荷電流値の下限値としての第1しきい値と、負荷電流値の上限値としての第2しきい値と、の双方が設定されているが、第1しきい値と第2しきい値との一方のみが設定されてもよい。例えば、負荷電流値の減少のみが想定される状況では、第1しきい値のみが設定されることがある。同様に、負荷電流値の増大少のみが想定される状況では、第2しきい値のみが設定されることがある。
【0068】
その他、上述の実施形態及び変形例に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて変更して実施され得る。
【符号の説明】
【0069】
11 :被加工物(積層ウェーハ)
13 :第1ウェーハ
13a :上面
13b :下面
13c :面取り部
15 :第2ウェーハ
15a :上面
15b :下面
15c :面取り部
2 :切削装置
4 :基台
4a、4b、4c:開口部
6 :カセットテーブル
8 :カセット
10 :チャックテーブル移動機構(加工送り機構)
10a :テーブルカバー
10b :防塵防滴カバー
12 :チャックテーブル
14 :枠体
16 :保持板
16a :上面(保持面)
18 :クランプ
20 :支持構造
22 :切削ユニット移動機構(割り出し送り機構、切り込み送り機構)
24 :Y軸ガイドレール
26 :Y軸移動プレート
28 :ねじ軸
30 :回転駆動源
32 :Z軸ガイドレール
34 :Z軸移動プレート
36 :ねじ軸
38 :回転駆動源
40a :第1切削ユニット
40b :第2切削ユニット
42 :スピンドルハウジング
44 :スピンドル
46 :切削ブレード
48 :モータ
50 :テーブルベース
52 :カバー
54 :ノズル
56 :カメラ
58 :洗浄ユニット
60 :コントローラ
60a :処理部
60b :記憶部
62 :電流監視部
64 :回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9