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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153173
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】被加工物の研削方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/007 20060101AFI20241022BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20241022BHJP
   B24B 53/02 20120101ALI20241022BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20241022BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B24B53/007
B24B55/02 B
B24B53/02
B24B7/04 A
H01L21/304 622P
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066902
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佳一
【テーマコード(参考)】
3C043
3C047
5F057
【Fターム(参考)】
3C043BA03
3C043BA09
3C043BA18
3C043CC04
3C043CC11
3C043CC13
3C043DD02
3C043DD03
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
3C043EE03
3C047AA21
3C047BB01
3C047BB08
3C047FF04
3C047FF19
3C047GG01
5F057AA11
5F057AA21
5F057BA11
5F057BB03
5F057CA14
5F057CA15
5F057CA25
5F057DA10
5F057DA11
5F057DA38
5F057EB20
5F057EC30
5F057FA13
5F057FA36
5F057FA42
5F057GA28
(57)【要約】
【課題】被加工物の研削に伴う研削面の目詰まりを抑制することが可能な被加工物の研削方法を提供する。
【解決手段】被加工物を研削した後に、複数の研削砥石の少なくとも一つの研削面を研削液に接触させた状態でスピンドルを回転させることによって複数の研削砥石のそれぞれの研削面を洗浄する。この場合、被加工物の研削に伴って複数の研削砥石のそれぞれの研削面に付着した研削屑を洗い流すことができる。その結果、被加工物の研削に伴う研削面の目詰まりを抑制することが可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面において円盤状の被加工物を保持した状態で該保持面の中心を通る直線を回転軸として回転可能なチャックテーブルと、環状に離散して配置されている複数の研削砥石を有し、かつ、所定の方向に沿って延在するスピンドルの先端部に装着されるとともに、該スピンドルを回転させた時の該複数の研削砥石のそれぞれの研削面の環状の軌跡の外径が該被加工物の半径よりも大きい研削ホイールと、を利用して、該被加工物を研削する被加工物の研削方法であって、
該被加工物の被研削面が露出されるように該チャックテーブルの該保持面において該被加工物を保持する保持ステップと、
該保持ステップの後に、該被加工物の該被研削面に研削液を供給しながら該スピンドルと該チャックテーブルとをそれぞれ回転させるとともに該所定の方向において該軌跡と該被加工物の該被研削面の中心とを重ねた状態で該複数の研削砥石のそれぞれの該研削面を該被加工物の該被研削面に接触させるように該研削ホイールと該チャックテーブルとを接近させることによって、該被加工物を研削して薄化する研削ステップと、
該研削ステップの後に、該被加工物の該被研削面に該研削液を供給しながら該複数の研削砥石のそれぞれの該研削面を該被加工物の該被研削面から離隔させるとともに該複数の研削砥石の少なくとも一つの該研削面を該研削液に接触させた状態で該スピンドルを回転させることによって該複数の研削砥石のそれぞれの該研削面を洗浄する洗浄ステップと、
を備える被加工物の研削方法。
【請求項2】
該洗浄ステップにおいては、該被加工物の該被研削面が洗浄されるように該チャックテーブルを回転させる請求項1に記載の被加工物の研削方法。
【請求項3】
保持面において円盤状の被加工物を保持した状態で該保持面の中心を通る直線を回転軸として回転可能なチャックテーブルと、環状に離散して配置されている複数の研削砥石を有し、かつ、所定の方向に沿って延在するスピンドルの先端部に装着されるとともに、該スピンドルを回転させた時の該複数の研削砥石のそれぞれの研削面の環状の軌跡の外径が該被加工物の半径よりも小さい研削ホイールと、を利用して、該被加工物を研削する被加工物の研削方法であって、
該被加工物の被研削面が露出されるように該チャックテーブルの該保持面において該被加工物を保持する保持ステップと、
該保持ステップの後に、該被加工物の該被研削面に研削液を供給しながら該スピンドルと該チャックテーブルとをそれぞれ回転させるとともに該所定の方向において該軌跡と該被加工物の該被研削面の中心とを重ねた状態で該複数の研削砥石のそれぞれの該研削面を該被加工物の該被研削面に接触させるように該研削ホイールと該チャックテーブルとを接近させることによって、該被加工物を研削して円形の底面を有する凹部を形成する研削ステップと、
該研削ステップの後に、該凹部の該底面に該研削液を供給しながら該複数の研削砥石のそれぞれの該研削面を該凹部の該底面から離隔させるとともに該複数の研削砥石の少なくとも一つの該研削面を該研削液に接触させた状態で該スピンドルを回転させることによって該複数の研削砥石のそれぞれの該研削面を洗浄する洗浄ステップと、
を備える被加工物の研削方法。
【請求項4】
該洗浄ステップにおいては、該凹部の該底面が洗浄されるように該チャックテーブルを回転させる請求項3に記載の被加工物の研削方法。
【請求項5】
該洗浄ステップにおいては、該所定の方向又は該所定の方向と直交する方向に沿って、該研削ホイールと該チャックテーブルとを相対的に揺動させる請求項1乃至4のいずれかに記載の被加工物の研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持面において円盤状の被加工物を保持した状態で保持面の中心を通る直線を回転軸として回転可能なチャックテーブルと、環状に離散して配置されている複数の研削砥石を有し、かつ、所定の方向に沿って延在するスピンドルの先端部に装着される研削ホイールと、を利用して、被加工物を研削する被加工物の研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)等のデバイスのチップは、携帯電話及びパーソナルコンピュータ等の各種電子機器において不可欠の構成要素である。このようなチップは、例えば、表面に複数のデバイスが形成されているウェーハ等の円盤状の被加工物を複数のデバイスの境界に沿って分割することで製造される。
【0003】
また、被加工物は、製造されるチップの小型化を目的として、その分割に先立って薄化されることがある。被加工物の薄化は、例えば、研削装置において被加工物を研削することによって実施される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この研削装置は、保持面において被加工物を保持した状態で保持面の中心を通る直線を回転軸として回転可能なチャックテーブルと、所定の方向に沿って延在するスピンドルと、を備える。また、このスピンドルの先端部には、環状に離散して配置されている複数の研削砥石を有し、かつ、それぞれの研削面において砥粒が露出されている研削ホイールを装着可能である。
【0005】
そして、この研削装置においては、例えば、スピンドルを回転させた時の複数の研削砥石のそれぞれの研削面の環状の軌跡の外径が被加工物の半径よりも大きい研削ホイールがスピンドルの先端部に装着された状態で、以下のように被加工物が薄化される。
【0006】
具体的には、まず、被加工物の裏面(被研削面)が露出されるようにチャックテーブルの保持面において被加工物を保持する。次いで、被加工物の被研削面に研削液を供給しながらスピンドルとチャックテーブルとをそれぞれ回転させるとともに当該所定の方向において当該軌跡と被加工物の被研削面の中心とを重ねる。
【0007】
次いで、このような状態を維持したまま、複数の研削砥石のそれぞれの研削面を被加工物の被研削面に接触させるように研削ホイールとチャックテーブルとを接近させる。これにより、被加工物が研削されて薄化される。
【0008】
ただし、被加工物が薄くなると被加工物の剛性が低くなり、その後の工程における被加工物の取り扱いが困難になるおそれがある。そこで、TAIKO研削とも呼ばれる方法によって被加工物の被研削面に円形の底面を有する凹部を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
具体的には、この凹部は、スピンドルを回転させた時の複数の研削砥石のそれぞれの研削面の環状の軌跡の外径が被加工物の半径よりも小さい研削ホイールがスピンドルの先端部に装着された状態で、上述のように被加工物を研削することによって形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2014-124690号公報
【特許文献2】特開2007-19461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように被加工物を研削すると、複数の研削砥石のそれぞれの研削面において目詰まりが生じること、すなわち、研削に伴って生じた研削屑が研削面に付着し、この研削面に砥粒が十分に露出されないことがある。そして、研削面において目詰まりが生じると、被加工物の研削が円滑に行われずに加工品質が悪化するおそれがある。
【0012】
この点に鑑み、本発明の目的は、被加工物の研削に伴う研削面の目詰まりを抑制することが可能な被加工物の研削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一側面によれば、保持面において円盤状の被加工物を保持した状態で該保持面の中心を通る直線を回転軸として回転可能なチャックテーブルと、環状に離散して配置されている複数の研削砥石を有し、かつ、所定の方向に沿って延在するスピンドルの先端部に装着されるとともに、該スピンドルを回転させた時の該複数の研削砥石のそれぞれの研削面の環状の軌跡の外径が該被加工物の半径よりも大きい研削ホイールと、を利用して、該被加工物を研削する被加工物の研削方法であって、該被加工物の被研削面が露出されるように該チャックテーブルの該保持面において該被加工物を保持する保持ステップと、該保持ステップの後に、該被加工物の該被研削面に研削液を供給しながら該スピンドルと該チャックテーブルとをそれぞれ回転させるとともに該所定の方向において該軌跡と該被加工物の該被研削面の中心とを重ねた状態で該複数の研削砥石のそれぞれの該研削面を該被加工物の該被研削面に接触させるように該研削ホイールと該チャックテーブルとを接近させることによって、該被加工物を研削して薄化する研削ステップと、該研削ステップの後に、該被加工物の該被研削面に該研削液を供給しながら該複数の研削砥石のそれぞれの該研削面を該被加工物の該被研削面から離隔させるとともに該複数の研削砥石の少なくとも一つの該研削面を該研削液に接触させた状態で該スピンドルを回転させることによって該複数の研削砥石のそれぞれの該研削面を洗浄する洗浄ステップと、を備える被加工物の研削方法が提供される。
【0014】
さらに、この方法に含まれる該洗浄ステップにおいては、該被加工物の該被研削面が洗浄されるように該チャックテーブルを回転させることが好ましい。
【0015】
本発明の別の側面によれば、保持面において円盤状の被加工物を保持した状態で該保持面の中心を通る直線を回転軸として回転可能なチャックテーブルと、環状に離散して配置されている複数の研削砥石を有し、かつ、所定の方向に沿って延在するスピンドルの先端部に装着されるとともに、該スピンドルを回転させた時の該複数の研削砥石のそれぞれの研削面の環状の軌跡の外径が該被加工物の半径よりも小さい研削ホイールと、を利用して、該被加工物を研削する被加工物の研削方法であって、該被加工物の被研削面が露出されるように該チャックテーブルの該保持面において該被加工物を保持する保持ステップと、該保持ステップの後に、該被加工物の該被研削面に研削液を供給しながら該スピンドルと該チャックテーブルとをそれぞれ回転させるとともに該所定の方向において該軌跡と該被加工物の該被研削面の中心とを重ねた状態で該複数の研削砥石のそれぞれの該研削面を該被加工物の該被研削面に接触させるように該研削ホイールと該チャックテーブルとを接近させることによって、該被加工物を研削して円形の底面を有する凹部を形成する研削ステップと、該研削ステップの後に、該凹部の該底面に該研削液を供給しながら該複数の研削砥石のそれぞれの該研削面を該凹部の該底面から離隔させるとともに該複数の研削砥石の少なくとも一つの該研削面を該研削液に接触させた状態で該スピンドルを回転させることによって該複数の研削砥石のそれぞれの該研削面を洗浄する洗浄ステップと、を備える被加工物の研削方法が提供される。
【0016】
さらに、この方法に含まれる該洗浄ステップにおいては、該凹部の該底面が洗浄されるように該チャックテーブルを回転させることが好ましい。
【0017】
加えて、これらの方法に含まれる該洗浄ステップにおいては、該所定の方向又は該所定の方向と直交する方向に沿って、該研削ホイールと該チャックテーブルとを相対的に揺動させることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、被加工物を研削した後に、複数の研削砥石の少なくとも一つの研削面を研削液に接触させた状態でスピンドルを回転させることによって複数の研削砥石のそれぞれの研削面を洗浄する。
【0019】
この場合、被加工物の研削に伴って複数の研削砥石のそれぞれの研削面に付着した研削屑を洗い流すことができる。その結果、本発明においては、被加工物の研削に伴う研削面の目詰まりを抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、被加工物の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、被加工物の研削方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
図3図3は、図2に示される被加工物の研削方法を実施可能な研削装置の一例を模式的に示す斜視図である。
図4図4は、図3に示される研削装置に含まれるチャックテーブル及びチャックテーブルと連通可能な構成要素を模式的に示す図である。
図5図5は、図3に示される研削装置に含まれる研削ホイール等を模式的に示す一部断面側面図である。
図6図6は、図2に示される保持ステップの様子を模式的に示す図である。
図7図7は、図2に示される研削ステップの様子を模式的に示す図である。
図8図8は、図2に示される洗浄ステップの様子を模式的に示す図である。
図9図9は、被加工物の研削方法の別の例を模式的に示すフローチャートである。
図10図10は、図9に示される被加工物の研削方法を実施可能な研削装置の一例を模式的に示す斜視図である。
図11図11は、図10に示される研削装置を模式的に示す断面図である。
図12図12は、図10及び図11に示される研削装置に含まれる研削ホイール等を模式的に示す一部断面側面図である。
図13図13は、図9に示される研削ステップの様子を模式的に示す一部断面側面図である。
図14図14は、図9に示される洗浄ステップの様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、被加工物の一例を模式的に示す斜視図である。図1に示される被加工物11は、例えば、互いに概ね平行な表面11a及び裏面11bを含み、単結晶シリコン等の半導体材料を素材とする円盤状のウェーハである。
【0022】
この被加工物11の側面には、その素材となる半導体材料の特定の結晶方位を示すためのノッチ11cが形成されている。また、被加工物11の表面11a側には、複数のデバイス13が形成されている。なお、複数のデバイス13は、マトリックス状に配置されている。すなわち、複数のデバイス13の境界は、格子状に延在する。
【0023】
そして、被加工物11は、その裏面11bを被研削面として研削される。なお、被加工物11の表面11aには、被加工物11を研削する際に複数のデバイス13を保護するための保護テープが貼着されてもよい。この保護テープは、例えば、フィルム状の基材と、基材の一面側(被加工物11側)に設けられた粘着層(糊層)と、を有する。
【0024】
図2は、被加工物11を研削する被加工物の研削方法の一例を模式的に示すフローチャートである。端的には、この方法においては、被加工物11が薄化されるようにサイズが比較的大きい研削ホイールを利用して被加工物11を研削する。
【0025】
図3は、図2に示される被加工物の研削方法を実施可能な研削装置の一例を模式的に示す斜視図である。なお、図3に示されるX軸方向及びY軸方向は水平面上において互いに直交する方向であり、Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(鉛直方向)である。
【0026】
図3に示される研削装置2は、各種の構成要素を支持する基台4を備える。この基台4の前端面には、カセットテーブル6a,6bが設けられている。そして、カセットテーブル6a,6bには、複数の被加工物11を収容できるカセット8a,8bが置かれている。
【0027】
また、カセットテーブル6a,6bの僅かに後方に位置する基台4の上面には、窪み4aが形成されている。この窪み4aの内側には、カセット8a,8bから被加工物11を搬出し、また、カセット8a,8bに被加工物11を搬入することが可能な搬送機構10が収容されている。
【0028】
この搬送機構10は、例えば、複数の関節とロボットハンドとを有し、このロボットハンドの一面において被加工物11を保持する。さらに、搬送機構10は、被加工物11を保持するロボットハンドを反転すること、すなわち、被加工物11の上下を反転することも可能である。
【0029】
また、窪み4aの斜め後方には、被加工物11の位置を調整するための位置調整機構12が設けられている。この位置調整機構12は、円盤状の位置調整用テーブルと、位置調整用テーブルの周囲に配置された複数のピンと、を含む。そして、搬送機構10によってカセット8a,8bから搬出された被加工物11は、この位置調整用テーブルに搬入されて、その中心が所定の位置に合わせられる。
【0030】
具体的には、被加工物11が位置調整用テーブルに搬入されると、位置調整用テーブルの径方向に沿って複数のピンが位置調整用テーブルに接近する。これにより、複数のピンが被加工物11の側面に接触して被加工物11を僅かに移動させる。その結果、被加工物11の中心が所定の位置に合わせられる。
【0031】
また、位置調整機構12の側方には、被加工物11を保持して後方に搬送する搬送機構14が設けられている。この搬送機構14は、例えば、Z軸方向に沿って延在する支持軸と、この支持軸の上端部に基端部が固定され、かつ、Z軸方向と直交する方向に沿って延在するアームと、このアームの先端部の下側に固定されている吸引パッドと、を有する。
【0032】
さらに、搬送機構14の支持軸は、モータ等の回転機構(不図示)に接続されている。そして、この回転機構が動作すると、Z軸方向に沿った直線を回転軸として支持軸が回転する。また、搬送機構14の支持軸は、エアシリンダ等の移動機構(不図示)に接続されている。そして、この移動機構が動作すると、Z軸方向に沿って支持軸が移動する、すなわち、支持軸が昇降する。
【0033】
例えば、搬送機構14は、以下の順序で被加工物11を保持して後方に搬送する。まず、位置調整機構12において中心が所定の位置に合わせられた被加工物11の直上に吸引パッドが位置付けられるように回転機構が支持軸を回転させる。次いで、この吸引パッドが被加工物11に接触するように移動機構が支持軸を下降させる。
【0034】
次いで、被加工物11が吸引パッドによって保持されるように吸引パッドが被加工物11を吸引する。次いで、被加工物11を保持する吸引パッドを上昇させるように移動機構が支持軸を上昇させる。次いで、被加工物11を保持する吸引パッドを旋回させるように回転機構が支持軸を回転させる。これにより、被加工物11が後方へと搬送される。
【0035】
搬送機構14の後方には、ターンテーブル16が設けられている。このターンテーブル16は、モータ(不図示)等の回転機構に接続されている。そして、この回転機構が動作すると、ターンテーブル16の上面の中心を通り、かつ、Z軸方向に沿った直線を回転軸としてターンテーブル16が回転する。すなわち、この回転機構が動作すると、ターンテーブル16が図3に示される矢印の方向又はその反対の方向に沿って回転する。
【0036】
また、ターンテーブル16には、ターンテーブル16の周方向に沿って概ね等しい角度の間隔で3個の円盤状のテーブルベース18が設けられている。そして、各テーブルベース18には、ベアリング(不図示)を介してチャックテーブル20が回転可能な態様で装着されている。
【0037】
図4は、チャックテーブル20及びチャックテーブル20と連通可能な構成要素を模式的に示す図である。このチャックテーブル20は、例えば、セラミックス等からなる円盤状の枠体22を有する。この枠体22は、円盤状の底壁22aと、この底壁22aの外周部から立設する円筒状の側壁22bと、を有する。すなわち、枠体22の上面側には、底壁22a及び側壁22bによって画定される円盤状の凹部が形成されている。
【0038】
そして、この凹部には、多孔質セラミックス等からなる円盤状のポーラス板24が固定されている。なお、枠体22の側壁22bの上面及びポーラス板24の上面は、円錐の側面に相当する形状に構成されており、被加工物11を保持するための保持面として機能する。
【0039】
また、底壁22aには、凹部の底面において開口し、かつ、底壁22aを貫通する流路22cが形成されている。そして、この流路22cは、バルブ26aを介して吸引源28aに連通し、かつ、バルブ26bを介して流体供給源28bに連通する。
【0040】
吸引源28aは、例えば、エジェクタ等を含む。また、流体供給源28bは、例えば、高圧気体を貯蔵するためのタンクと、タンクから供給される気体に混入した異物を取り除くためのフィルタと、タンクから供給される気体の圧力を調整するためのレギュレータと、を含む。
【0041】
さらに、チャックテーブル20は、回転機構(不図示)に接続されている。この回転機構は、例えば、モータ及びプーリ等を含む。そして、この回転機構が動作すると、チャックテーブル20の保持面の中心を通る直線を回転軸としてチャックテーブル20が回転する。
【0042】
また、チャックテーブル20は、テーブルベース18を介して傾き調整機構(不図示)に支持されている。この傾き調整機構は、例えば、チャックテーブル20の周方向に沿って概ね等しい角度の間隔で配置されている2つの可動軸及び1つの固定軸を含む。そして、2つの可動軸の少なくとも一方がテーブルベース18及びチャックテーブル20を部分的に昇降させると、チャックテーブル20の回転軸の傾きが調整される。
【0043】
なお、テーブルベース18にチャックテーブル20が装着された状態でターンテーブル16を図3に示される矢印の方向又はその反対の方向に沿って回転させると、テーブルベース18及びチャックテーブル20も移動する。
【0044】
例えば、ターンテーブル16を図3に示される矢印の方向に沿って回転させると、テーブルベース18及びチャックテーブル20は、搬送機構14による被加工物11の搬入が可能な位置である搬入搬出位置と、搬入搬出位置の斜め後方の粗研削位置と、粗研削位置の側方の仕上げ研削位置と、に順番に位置付けられる。
【0045】
そして、搬入搬出位置に位置付けられたチャックテーブル20には、搬送機構14によって後方へと搬送された被加工物11が搬入される。被加工物11のチャックテーブル20への搬入は、例えば、以下の順序で行われる。
【0046】
まず、搬送機構14の吸引パッドによって保持された被加工物11をチャックテーブル20の保持面に接近させるように、搬送機構14の支持軸に接続されている移動機構が支持軸を下降させる。次いで、吸引パッドによる被加工物11の上面側の吸引を停止する。これにより、被加工物11が吸引パッドから分離してチャックテーブル20の保持面に搬入される。
【0047】
そして、チャックテーブル20の保持面に被加工物11が搬入されれば、被加工物11がチャックテーブル20に吸引されて保持されるように、吸引源28aを動作させ、かつ、バルブ26aを開状態とする。また、チャックテーブル20の保持面において被加工物11が保持されれば、このチャックテーブル20を粗研削位置又は仕上げ研削位置に位置付けるようにターンテーブル16を回転させる。
【0048】
粗研削位置及び仕上げ研削位置のそれぞれの後方には、柱状の支持構造30が設けられている。そして、支持構造30の前面側には、移動機構32が設けられている。この移動機構32は、それぞれがZ軸方向に沿って延在する一対のガイドレール34を備える。
【0049】
さらに、一対のガイドレール34のそれぞれには、Z軸移動プレート36がスライド可能な態様で取り付けられている。また、Z軸移動プレート36の後面側(裏面側)には、ボールねじに含まれるナット(不図示)が固定されており、このナットには、Z軸方向に沿って延在するねじ軸38が回転可能な態様で接続されている。
【0050】
さらに、ねじ軸38の一端部(上端部)には、モータ40が接続されている。そして、モータ40によってねじ軸38を回転させると、ナットとともにZ軸移動プレート36がZ軸方向又はその反対の方向に沿って移動する。また、Z軸移動プレート36の前面(表面)には、固定具42が設けられている。
【0051】
そして、固定具42は、研削ユニット44を支持する。この研削ユニット44は、固定具42に固定されるスピンドルハウジング46を有する。さらに、スピンドルハウジング46には、Z軸方向に沿って延在するスピンドル48が回転可能な態様で収容されている。
【0052】
また、スピンドル48の下端部(先端部)は、スピンドルハウジング46から露出し、円盤状のマウント50となっている。このマウント50の直径は、被加工物11の半径よりも大きい。また、マウント50の外縁部には、マウント50の厚さ方向においてマウント50を貫通する複数の孔(不図示)が設けられており、各孔にはボルト52が挿入されている。
【0053】
さらに、粗研削位置側の研削ユニット44のマウント50の下面には、ボルト52を利用して、粗研削用の研削ホイール54が装着されている。同様に、仕上げ研削位置側の研削ユニット44のマウント50の下面には、ボルト52を利用して、仕上げ研削用の研削ホイール54が装着されている。
【0054】
図5は、研削ホイール54等を模式的に示す一部断面側面図である。この研削ホイール54は、ステンレス鋼又はアルミニウム合金等の金属材料からなる環状のホイール基台56を含む。また、ホイール基台56の外径はマウント50の直径と概ね等しく、その下面には環状に離散して複数の研削砥石58が配置されている。
【0055】
複数の研削砥石58のそれぞれは、ビトリファイド又はレジノイド等の結合剤と、この結合剤に分散されたダイヤモンド等の砥粒と、を含む。そして、複数の研削砥石58のそれぞれの下面においては砥粒が露出されており、この下面は被加工物11を研削するための研削面として機能する。
【0056】
さらに、スピンドルハウジング46には、スピンドル48の基端部(上端部)に接続されているモータ(不図示)が収容されている。そして、このモータが動作すると、スピンドル48とともに研削ホイール54がZ軸方向に沿った直線を回転軸として回転する。この時、複数の研削砥石58のそれぞれの研削面は、その外径が被加工物11の半径よりも大きい環状の軌跡を描く。
【0057】
また、研削ホイール54の近傍には、研削液供給ユニット60が設けられている。この研削液供給ユニット60は、例えば、平面視において研削ホイール54の内側に位置するノズル62と、このノズル62に水等の研削液を供給するポンプ(不図示)と、を有する。そして、このポンプが動作すると、粗研削位置又は仕上げ研削位置に位置付けられたチャックテーブル20の保持面において保持されている被加工物11に向けてノズル62から研削液が供給される。
【0058】
なお、スピンドル48には、マウント50の下面において開口するような流路が形成されてもよい。この場合、研削液供給ユニット60は、ノズル62に換えて又は加えて、この流路を介して粗研削位置又は仕上げ研削位置に位置付けられたチャックテーブル20の保持面において保持されている被加工物11に向けて研削液を供給してもよい。
【0059】
また、その保持面において被加工物11を保持するチャックテーブル20が粗研削位置又は仕上げ研削位置に位置付けられると、被加工物11の上面側の研削が行われる。なお、被加工物11の研削の一例については後述する。
【0060】
そして、この研削が完了すれば、その保持面において被加工物11を保持するチャックテーブル20が搬入搬出位置に位置付けられるように、ターンテーブル16を、例えば、図3に示される矢印の方向に沿ってさらに回転させる。
【0061】
搬入搬出位置の前方、かつ、搬送機構14の側方には、被加工物11を保持して前方に搬送する搬送機構64が設けられている。この搬送機構64は、例えば、搬送機構14と同様の構造を有する。
【0062】
そして、搬送機構64は、例えば、搬入搬出位置に位置付けられたチャックテーブル20の保持面において保持されている研削済みの被加工物11を前方へと搬送する。例えば、被加工物11のチャックテーブル20からの搬出は、以下の順序で行われる。
【0063】
まず、被加工物11がチャックテーブル20の保持面から離隔されるように、吸引源28aの動作を停止させ、かつ、バルブ26aを閉状態とするとともに、流体供給源28bを動作させ、かつ、バルブ26bを開状態とする。
【0064】
次いで、搬送機構64の吸引パッドをチャックテーブル20の保持面に置かれた被加工物11に接近させるように、搬送機構64の支持軸に接続されている移動機構が支持軸を下降させる。次いで、被加工物11が吸引パッドによって保持されるように吸引パッドが被加工物11を吸引する。
【0065】
次いで、被加工物11を保持する吸引パッドを上昇させるように移動機構が支持軸を上昇させる。次いで、被加工物11を保持する吸引パッドを旋回させるように回転機構が支持軸を回転させる。これにより、被加工物11が前方へと搬送される。
【0066】
そして、チャックテーブル20の保持面から搬出された研削済みの被加工物11は、搬送機構64の側方に設けられた洗浄ユニット66に搬入される。この洗浄ユニット66は、例えば、その保持面において被加工物11を保持した状態で回転するスピンナーテーブルと、スピンナーテーブルの保持面において保持された被加工物11の上面に向けて洗浄用の流体を噴射する洗浄用ノズルと、を含む。
【0067】
なお、洗浄ユニット66で使用される洗浄用の流体は、例えば、水とエアとが混合した混合流体である。あるいは、この洗浄用の流体は、水等の液体のみを含んでもよい。そして、洗浄ユニット66における被加工物11の上面の洗浄が完了すると、搬送機構10が洗浄ユニット66からカセット8a,8bへと被加工物11を搬送する。
【0068】
研削装置2において、図2に示される被加工物の研削方法を実施する際には、まず、被加工物11の裏面11bが露出されるようにチャックテーブル20の保持面において被加工物11を保持する(保持ステップS1)。図6は、保持ステップS1の様子を模式的に示す図である。
【0069】
この保持ステップS1においては、まず、チャックテーブル20が搬入搬出位置に位置付けられるようにターンテーブル16を回転させる。次いで、搬送機構10,14等を利用して、裏面11bが上になるようにカセット8a,8bから搬出された被加工物11をチャックテーブル20の保持面に搬入する。
【0070】
そして、吸引源28aを動作させ、かつ、バルブ26aを開状態とする。これにより、チャックテーブル20から被加工物11に吸引力が作用する。すなわち、被加工物11がチャックテーブル20の保持面において保持される。以上によって、保持ステップS1が完了する。
【0071】
保持ステップS1の後には、被加工物11を研削して薄化する(研削ステップS2)。図7は、研削ステップS2の様子を模式的に示す図である。この研削ステップS2においては、まず、チャックテーブル20が粗研削位置又は仕上げ研削位置に位置付けられるようにターンテーブル16を回転させる。
【0072】
これにより、スピンドル48を回転させた時の複数の研削砥石58のそれぞれの研削面の環状の軌跡の直下に被加工物11の裏面11bの中心が位置付けられる。すなわち、Z軸方向において当該軌跡と被加工物11の裏面11bの中心とが重なる。
【0073】
次いで、スピンドル48とチャックテーブル20とをそれぞれ回転させる。次いで、両者を回転させたまま、研削ホイール54とチャックテーブル20とを接近、具体的には、研削ホイール54を下降させるとともに、ノズル62から被加工物11の裏面11bに所定の流量で研削液Lを供給する。
【0074】
このように研削ホイール54を下降させると、複数の研削砥石58のそれぞれの研削面が被加工物11の裏面11bに接触して被加工物11の研削が開始される。そして、この研削は、被加工物11が所定の厚さになるまで継続される。以上によって、研削ステップS2が完了する。
【0075】
研削ステップS2の後には、被加工物11の裏面11bに供給された研削液Lを利用して、複数の研削砥石58のそれぞれの研削面を洗浄する(洗浄ステップS3)。図8は、洗浄ステップS3の様子を模式的に示す図である。
【0076】
この洗浄ステップS3においては、まず、被加工物11の裏面11bに研削液Lを供給し、かつ、スピンドル48を回転させたまま、チャックテーブル20の回転を停止するとともに、研削ホイール54とチャックテーブル20とを僅かに離隔、具体的には、研削ホイール54を僅かに上昇させる。
【0077】
これにより、研削ホイール54は、複数の研削砥石58のそれぞれが被加工物11の裏面11bから離隔するものの、被加工物11の裏面11bに供給される研削液Lに複数の研削砥石58の少なくとも一つの研削面が接触するように位置付けられる。例えば、この研削ホイール54は、被加工物11の裏面11bと研削液Lに接触する研削面との間隔が10μm~50μmになるように位置付けられる。
【0078】
次いで、この状態を所定の期間、例えば、5s~20sに渡って維持する。なお、この期間においては、研削液Lの流量を研削ステップS2において供給される研削液Lの流量よりも多くしてもよい。例えば、この期間においては、その流量が4L/min~10L/minになるように研削液Lを被加工物11の裏面11bに供給する。以上によって、洗浄ステップS3が完了する。
【0079】
図2に示される被加工物の研削方法においては、被加工物11を研削した後に、複数の研削砥石58の少なくとも一つの研削面を被加工物11の裏面11bに供給された研削液Lに接触させた状態でスピンドル48を回転させることによって複数の研削砥石58のそれぞれの研削面を洗浄する。
【0080】
この場合、被加工物11の研削に伴って複数の研削砥石58のそれぞれの研削面に付着した研削屑を洗い流すことができる。その結果、この方法においては、被加工物11の研削に伴う研削面の目詰まりを抑制することが可能である。
【0081】
なお、上述した研削ステップS2においては、被加工物11の研削に伴って、被加工物11の裏面11bに研削屑が付着する。そして、この状態で被加工物11の裏面11bを乾燥させると、裏面11bに研削屑が固着する。
【0082】
この場合、例えば、洗浄ユニット66において被加工物11の裏面11bを洗浄しても研削屑を裏面11bから分離することが困難になることがある。そのため、上述した洗浄ステップS3においては、被加工物11の裏面11bを乾燥させる前に裏面11bを洗浄することが好ましい。
【0083】
具体的には、上述した洗浄ステップS3においては、スピンドル48のみならず、チャックテーブル20を回転させることが好ましい。この場合、複数の研削砥石58の少なくとも一つの研削面と被加工物11の裏面11bとの間において研削液Lが被加工物11の裏面11bに強く押し付けられる。
【0084】
これにより、被加工物11の研削に伴って被加工物11の裏面11bに付着した研削屑の裏面11bからの分離が促進される。その結果、この場合には、被加工物11の裏面11bにおける研削屑の固着を抑制することが可能である。
【0085】
また、上述した洗浄ステップS3においては、複数の研削砥石58のそれぞれの研削面から研削屑が分離しやすくなるように研削ホイール54とチャックテーブル20とを相対的に揺動させてもよい。
【0086】
例えば、上述した洗浄ステップS3においては、研削ユニット44のZ軸方向に沿った僅かな移動とその反対の方向に沿った僅かな移動とが交互に繰り返されてもよい。これにより、研削ホイール54をZ軸方向において揺動させることができる。なお、研削ホイール54をZ軸方向において揺動させる際には、複数の研削砥石58の全ての研削面が研削液Lに接触していないタイミングがあってもよい。
【0087】
さらに、上述した洗浄ステップS3においては、研削ホイール54のZ軸方向における揺動に換えて又は加えて、ターンテーブル16の図3に示される矢印の方向に沿った僅かな回転とその反対の方向に沿った僅かな回転とが交互に繰り返されてもよい。これにより、チャックテーブル20をZ軸方向と直交する方向において揺動させることができる。
【0088】
なお、研削ホイール54とチャックテーブル20とを相対的に揺動させる際の研削ホイール54の揺動幅、すなわち、特定の方向への移動を開始する地点とその反対の方向への移動を開始する地点との間隔は、例えば、1mm~20mmである。また、この時の研削ホイール54及びチャックテーブル20のそれぞれの揺動速度は、例えば、1mm/s~5mm/sである。
【0089】
また、研削ホイール54をZ軸方向と直交する方向に沿って移動させるための移動機構が研削装置2に追加して設けられる場合には、上述した洗浄ステップS3において、研削ホイール54をZ軸方向と直交する方向において揺動させてもよい。
【0090】
同様に、チャックテーブル20をZ軸方向に沿って移動させるための移動機構が研削装置2に追加して設けられる場合には、上述した洗浄ステップS3において、チャックテーブル20をZ軸方向において揺動させてもよい。なお、チャックテーブル20をZ軸方向において揺動させる際には、複数の研削砥石58の全ての研削面が研削液Lに接触していないタイミングがあってもよい。
【0091】
図9は、被加工物11を研削する被加工物の研削方法の別の例を模式的に示すフローチャートである。端的には、この方法においては、被加工物11の裏面11bに円形の底面を有する凹部が形成されるようにサイズが比較的小さい研削ホイールを利用して被加工物11を研削する。
【0092】
図10は、このように被加工物11を研削するための研削装置の一例を模式的に示す斜視図であり、図11は、図10に示される研削装置を模式的に示す断面図である。なお、図10に示されるU軸方向及びV軸方向は水平面上において互いに直交する方向であり、W軸方向は、U軸方向及びV軸方向のそれぞれと直交する方向(鉛直方向)である。
【0093】
図10及び図11に示される研削装置68は、各種の構成要素を支持する基台70を備える。この基台70の上面には、U軸方向に沿って延在する直方体状の窪み70aが形成されている。そして、窪み70aの底面には、それぞれがU軸方向に沿って延在する一対のガイドレール72が設けられている(図11参照)。
【0094】
一対のガイドレール72の上側には、U軸方向に沿ってスライド可能な態様で直方体状のU軸移動プレート74が取り付けられている。また、一対のガイドレール72の間には、U軸方向に沿って延在するねじ軸76が配置されている。そして、ねじ軸76の後端部には、ねじ軸76を回転させるためのモータ78が接続されている。
【0095】
また、ねじ軸76のねじ山が形成された外周面上には、ねじ軸76の回転に応じて循環する多数のボールを収容するナット80が設けられ、ボールねじが構成されている。また、ナット80は、U軸移動プレート74の下面側に固定されている。そのため、モータ78でねじ軸76を回転させれば、ナット80とともにU軸移動プレート74がU軸方向又はその反対方向に沿って移動する。
【0096】
また、U軸移動プレート74の上には、下端部に従動プーリ82が接続されている回転体と、駆動プーリ(不図示)に接続されているモータ等の回転駆動源(不図示)と、が設けられている。また、従動プーリ82と駆動プーリとには、無端ベルト(不図示)が架けられている。
【0097】
さらに、U軸移動プレート74の上には、W軸方向に沿って延在する1つの固定軸(不図示)と、それぞれのW軸方向に沿った長さが可変な2つの可動軸84と、を有する傾き調整機構が設けられている。また、固定軸と2つの可動軸84とは、テーブルベース86の下面に固定され、テーブルベース86を支持する。
【0098】
このテーブルベース86の中央には貫通孔(不図示)が形成されており、この貫通孔には、下端部に従動プーリ82が接続されている回転体が通されている。そして、この回転体の上端部には、円盤状のチャックテーブル88が装着されている。
【0099】
そのため、従動プーリ82に架けられている無端ベルトを回転させるように駆動プーリに接続されている回転駆動源を動作させると、チャックテーブル88の周方向に沿ってチャックテーブル88が回転する。
【0100】
このチャックテーブル88は、ベアリング(不図示)を介してテーブルベース86に支持されている。そのため、上述のとおりチャックテーブル88を回転させても、テーブルベース86が回転することはない。他方、傾き調整機構において2つの可動軸84のそれぞれのW軸方向に沿った長さが調整されると、テーブルベース86のみならず、チャックテーブル88の傾きも調整される。
【0101】
また、チャックテーブル88は、図4に示されるチャックテーブル20と同様の構造を有する。すなわち、チャックテーブル88は、その底壁を貫通する流路が形成されている枠体と、枠体の上面側に形成されている凹部に設けられているポーラス板と、を有する。さらに、この流路は、バルブ(不図示)を介して吸引源(不図示)に連通し、また、別のバルブ(不図示)を介して流体供給源(不図示)と連通する。
【0102】
そして、この吸引源を動作させ、かつ、流路と吸引源との間に設けられているバルブを開状態にすると、チャックテーブル88のポーラス板の上面近傍の空間に吸引力が作用する。そのため、チャックテーブル88のポーラス板の上面及び枠体の側壁の上面は、被加工物11を保持するための保持面として機能する。
【0103】
さらに、チャックテーブル88の周囲には、その保持面が露出されるようにチャックテーブル88を囲む直方体状のテーブルカバー90が設けられている。このテーブルカバー90の幅(V軸方向に沿った長さ)は基台70の上面に形成されている窪み70aの幅と概ね等しい。また、テーブルカバー90の前後には、U軸方向に沿って伸縮可能な防塵防滴カバー92が設けられている。
【0104】
また、基台70の上面のうち窪み70aの後方に位置する領域には、四角柱状の支持構造94が設けられている。この支持構造94の前面には、それぞれがW軸方向に沿って延在する一対のガイドレール96が設けられている。
【0105】
そして、一対のガイドレール96のそれぞれの前側には、W軸方向に沿ってスライド可能な態様でスライダ98が設けられている。また、スライダ98の前端部は、直方体状のW軸移動プレート100の後面に固定されている。
【0106】
さらに、一対のガイドレール96の間には、W軸方向に沿って延在するねじ軸102が配置されている。そして、ねじ軸102の上端部には、ねじ軸102を回転させるためのモータ104が接続されている。
【0107】
また、ねじ軸102のねじ山が形成された外周面上には、ねじ軸102の回転に応じて循環する多数のボールを収容するナット106が設けられ、ボールねじが構成されている。また、ナット106は、W軸移動プレート100の後面に固定されている。そのため、モータ104でねじ軸102を回転させれば、ナット106とともにW軸移動プレート100がW軸方向又はその反対方向に沿って移動する。
【0108】
W軸移動プレート100の前側には、研削ユニット108が設けられている。この研削ユニット108は、W軸移動プレート100の前面に固定されている円筒状の支持部材110を有する。そして、支持部材110の内側には、W軸方向に沿って延在する円筒状のスピンドルハウジング112が設けられている。
【0109】
また、スピンドルハウジング112の内側には、W軸方向に沿って延在するスピンドル114が回転可能な態様で収容されている。また、スピンドル114の下端部(先端部)は、スピンドルハウジング112から露出し、円盤状のマウント116となっている。
【0110】
このマウント116の直径は、被加工物11の半径よりも小さい。そして、マウント116の下面側には、ボルト等の固定部材(不図示)を利用して、研削ホイール118が装着されている。
【0111】
図12は、研削ホイール118等を模式的に示す一部断面側面図である。この研削ホイール118は、ステンレス鋼又はアルミニウム合金等の金属材料からなる環状のホイール基台120を含む。また、ホイール基台120の外径はマウント116の直径と概ね等しく、その下面には環状に離散して複数の研削砥石122が配置されている。
【0112】
複数の研削砥石122のそれぞれは、ビトリファイド又はレジノイド等の結合剤と、この結合剤に分散されたダイヤモンド等の砥粒と、を含む。そして、複数の研削砥石122のそれぞれの下面においては砥粒が露出されており、この下面は被加工物11を研削するための研削面として機能する。
【0113】
さらに、スピンドル114の上端部(基端部)には、スピンドル114を回転させるためのモータ124が接続されている。そして、このモータ124が動作すると、スピンドル114とともに研削ホイール118がW軸方向に沿った直線を回転軸として回転する。この時、複数の研削砥石122のそれぞれの研削面は、その外径が被加工物11の半径よりも小さい環状の軌跡を描く。
【0114】
また、マウント116は、スピンドル114に形成されている流路114aと連通する流路126aが中央に形成されている基台部126と、この流路126aを囲んで垂下するように設けられた有底円筒状の突起部128と、を有する。また、この突起部128には、W軸方向と直交する方向に沿って延在し、かつ、基台部126に形成されている流路126aと連通する複数の貫通孔128aが形成されている。
【0115】
さらに、突起部128に形成されている複数の貫通孔128aは、基台部126に形成されている流路126a及びスピンドル114に形成されている流路114aを介して、研削液供給ユニット(不図示)に含まれるポンプに連通する。そして、このポンプが動作すると、流路114a、流路126a及び貫通孔128aを介して、研削ホイール118の内側下方の空間に向けて放射状に研削液が供給される。
【0116】
研削装置68において、図9に示される被加工物の研削方法を実施する際には、まず、被加工物11の裏面11bが露出されるようにチャックテーブル20の保持面において被加工物11を保持する(保持ステップS1)。この保持ステップS1においては、まず、チャックテーブル88を研削ホイール118から離隔させるようにチャックテーブル88を前方に移動させる。
【0117】
次いで、裏面11bが上になるように被加工物11をチャックテーブル88の保持面に搬入する。そして、被加工物11に吸引力を作用させることによって、被加工物11がチャックテーブル88の保持面において保持される。以上によって、保持ステップS1が完了する。
【0118】
保持ステップS1の後には、被加工物11を研削して円形の底面を有する凹部を形成する(研削ステップS4)。図13は、研削ステップS4の様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【0119】
この研削ステップS4においては、まず、スピンドル114を回転させた時の複数の研削砥石122のそれぞれの研削面の環状の軌跡のうち前端の領域の直下に被加工物11の裏面11bの中心が位置付けられるようにチャックテーブル88を後方に移動させる。次いで、スピンドル114とチャックテーブル88とをそれぞれ回転させる。
【0120】
次いで、両者を回転させたまま、研削ホイール118とチャックテーブル88とを接近、具体的には、研削ホイール118を下降させるとともに、マウント116の基台部126の流路126a及び突起部128の貫通孔128a等を介して被加工物11の裏面11bに所定の流量で研削液Lを供給する。
【0121】
このように研削ホイール118を下降させると、複数の研削砥石122のそれぞれの研削面が被加工物11の裏面11bに接触して被加工物11の研削が開始される。そして、この研削は、被加工物11の裏面11bに所定の深さの凹部が形成されるまで継続される。以上によって、研削ステップS4が完了する。
【0122】
研削ステップS4の後には、被加工物11の裏面11bに形成された凹部の底面に供給された研削液Lを利用して、複数の研削砥石122のそれぞれの研削面を洗浄する(洗浄ステップS5)。図14は、洗浄ステップS5の様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【0123】
この洗浄ステップS5においては、まず、凹部15の底面15aに研削液Lを供給し、かつ、スピンドル114を回転させたまま、チャックテーブル88の回転を停止するとともに、研削ホイール118とチャックテーブル88とを僅かに離隔、具体的には、研削ホイール118を僅かに上昇させ、かつ、チャックテーブル88を僅かに後方に移動させる。
【0124】
これにより、研削ホイール118は、複数の研削砥石122のそれぞれが凹部15の底面15a及び側面から離隔するものの、凹部15の底面15aに供給される研削液Lに複数の研削砥石122の少なくとも一つの研削面が接触するように位置付けられる。
【0125】
具体的には、この研削ホイール118は、凹部15の底面15aと研削液Lに接触する研削面との間隔が凹部15の深さよりも小さくなるように位置付けられる。例えば、研削ホイール118は、この間隔が10μm~600μmになるように位置付けられる。
【0126】
次いで、この状態を所定の期間、例えば、5s~20sに渡って維持する。なお、この期間においては、研削液Lの流量を研削ステップS4において供給される研削液Lの流量よりも多くしてもよい。例えば、この期間においては、その流量が4L/min~10L/minになるように研削液Lを凹部15の底面15aに供給する。以上によって、洗浄ステップS5が完了する。
【0127】
図9に示される被加工物の研削方法においては、被加工物11を研削した後に、複数の研削砥石122の少なくとも一つの研削面を凹部15の底面15aに供給された研削液Lに接触させた状態でスピンドル114を回転させることによって複数の研削砥石122のそれぞれの研削面を洗浄する。
【0128】
この場合、被加工物11の研削に伴って複数の研削砥石122のそれぞれの研削面に付着した研削屑を洗い流すことができる。その結果、この方法においては、被加工物11の研削に伴う研削面の目詰まりを抑制することが可能である。
【0129】
なお、上述した研削ステップS4においては、被加工物11の研削に伴って、凹部15の底面15aに研削屑が付着する。そして、この状態で被加工物11の裏面11bを乾燥させると、凹部15の底面15aに研削屑が固着する。
【0130】
この場合、例えば、研削装置68から独立した洗浄装置において凹部15の底面15aを洗浄しても研削屑を底面15aから分離することが困難になることがある。そのため、上述した洗浄ステップS5においては、被加工物11の裏面11bを乾燥させる前に凹部15の底面15aを洗浄することが好ましい。
【0131】
具体的には、上述した洗浄ステップS5においては、スピンドル114のみならず、チャックテーブル88を回転させることが好ましい。この場合、複数の研削砥石122の少なくとも一つの研削面と凹部15の底面15aとの間において研削液Lが凹部15の底面15aに強く押し付けられる。
【0132】
これにより、被加工物11の研削に伴って凹部15の底面15aに付着した研削屑の底面15aからの分離が促進される。その結果、この場合には、凹部15の底面15aにおける研削屑の固着を抑制することが可能である。
【0133】
また、上述した洗浄ステップS5においては、複数の研削砥石122のそれぞれの研削面から研削屑が分離しやすくなるように研削ホイール118とチャックテーブル88とを相対的に揺動させてもよい。
【0134】
例えば、上述した洗浄ステップS5においては、研削ユニット108のW軸方向に沿った僅かな移動とその反対の方向に沿った僅かな移動とが交互に繰り返されてもよい。これにより、研削ホイール118をW軸方向において揺動させることができる。なお、研削ホイール118をW軸方向において揺動させる際には、複数の研削砥石122の全ての研削面が研削液Lに接触していないタイミングがあってもよい。
【0135】
さらに、上述した洗浄ステップS5においては、研削ホイール118のZ軸方向における揺動に換えて又は加えて、チャックテーブル88のU軸方向に沿った僅かな移動とその反対の方向に沿った僅かな移動とが交互に繰り返されてもよい。これにより、チャックテーブル88をU軸方向において揺動させることができる。
【0136】
なお、研削ホイール118とチャックテーブル88とを相対的に揺動させる際の研削ホイール118の揺動幅、すなわち、特定の方向への移動を開始する地点とその反対の方向への移動を開始する地点との間隔は、例えば、1mm~20mmである。また、この時の研削ホイール118及びチャックテーブル88のそれぞれの揺動速度は、例えば、1mm/s~5mm/sである。
【0137】
また、研削ホイール118をU軸方向又はV軸方向に沿って移動させるための移動機構が研削装置68に追加して設けられる場合には、上述した洗浄ステップS5において、研削ホイール118をU軸方向又はV軸方向において揺動させてもよい。
【0138】
同様に、チャックテーブル88をW軸方向に沿って移動させるための移動機構が研削装置68に追加して設けられる場合には、上述した洗浄ステップS5において、チャックテーブル88をW軸方向において揺動させてもよい。なお、チャックテーブル88をW軸方向において揺動させる際には、複数の研削砥石122の全ての研削面が研削液Lに接触していないタイミングがあってもよい。
【0139】
その他、上述した実施形態にかかる構造及び方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0140】
2 :研削装置
4 :基台(4a:窪み)
6a,6b:カセットテーブル
8a,8b:カセット
10 :搬送機構
11 :被加工物(11a:表面,11b:裏面、11c:ノッチ)
12 :位置調整機構
13 :デバイス
14 :搬送機構
15 :凹部(15a:底面)
16 :ターンテーブル
18 :テーブルベース
20 :チャックテーブル
22 :枠体(22a:底壁、22b:側壁、22c:流路)
24 :ポーラス板
26a,26b:バルブ
28a:吸引源
28b:流体供給源
30 :支持構造
32 :移動機構
34 :ガイドレール
36 :Z軸移動プレート
38 :ねじ軸
40 :モータ
42 :固定具
44 :研削ユニット
46 :スピンドルハウジング
48 :スピンドル
50 :マウント
52 :ボルト
54 :研削ホイール
56 :ホイール基台
58 :研削砥石
60 :液体供給ユニット
62 :ノズル
64 :搬送機構
66 :洗浄ユニット
68 :研削装置
70 :基台(70a:窪み)
72 :ガイドレール
74 :U軸移動プレート
76 :ねじ軸
78 :モータ
80 :ナット
82 :従動プーリ
84 :可動軸
86 :テーブルベース
88 :チャックテーブル
90 :テーブルカバー
92 :防塵防滴カバー
94 :支持構造
96 :ガイドレール
98 :スライダ
100:W軸移動プレート
102:ねじ軸
104:モータ
106:ナット
108:研削ユニット
110:支持部材
112:スピンドルハウジング
114:スピンドル(114a:流路)
116:マウント
118:研削ホイール
120:ホイール基台
122:研削砥石
124:モータ
126:基台部(126a:流路)
128:突起部(128a:貫通孔)
図1
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