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  • 特開-リチウム金属複合酸化物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153278
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】リチウム金属複合酸化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 53/00 20060101AFI20241022BHJP
   H01M 4/525 20100101ALN20241022BHJP
   H01M 4/505 20100101ALN20241022BHJP
【FI】
C01G53/00 A
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067067
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(74)【代理人】
【識別番号】100214215
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼梨 航
(72)【発明者】
【氏名】花房 竜也
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050DA02
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
【課題】安定な原料供給が可能であるリチウム金属複合酸化物の製造方法の提供。
【解決手段】被処理物を、焼成装置を用いて焼成し焼成物を得る工程を備えるリチウム金属複合酸化物の製造方法であって、前記焼成装置は、被処理物が投入される投入部と、前記投入部から投入された被処理物を搬送する搬送部と、筒状のキルン本体と、焼成物を排出する排出口と、ガス供給手段を備え、前記工程において、加熱手段よりも上流側から、露点が10℃以下の低露点ガスを供給し、加熱手段よりも下流側から酸素含有ガスを供給し、下記式(A)で表される値が0.0001Nm/kg以上0.30Nm/kg以下である、リチウム金属複合酸化物の製造方法。
式(A):低露点ガスの供給量(Nm/時間)/被処理物の供給量(kg/時間)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を、焼成装置を用いて焼成し焼成物を得る工程を備えるリチウム金属複合酸化物の製造方法であって、
前記被処理物は、金属複合化合物とリチウム化合物との混合物を含み、
前記焼成装置は、前記被処理物が投入される投入部と、前記投入部から投入された前記被処理物を搬送する搬送部と、筒状のキルン本体と、前記焼成物を排出する排出口と、ガス供給手段を備え、
前記キルン本体は加熱手段を備え、
前記工程において、
前記加熱手段よりも上流側から、露点が10℃以下の低露点ガスを供給し、
前記加熱手段よりも下流側から酸素含有ガスを供給し、
前記被処理物に前記酸素含有ガスを向流接触させて焼成し、
下記式(A)で表される値が0.0001Nm/kg以上0.30Nm/kg以下である、リチウム金属複合酸化物の製造方法。
式(A):低露点ガスの供給量(Nm/時間)/被処理物の供給量(kg/時間)
【請求項2】
前記焼成装置はロータリーキルンである、請求項1に記載のリチウム金属複合酸化物の製造方法。
【請求項3】
前記リチウム化合物に含まれるLiの割合は、5質量%以上50質量%以下である、請求項1又は2に記載のリチウム金属複合酸化物の製造方法。
【請求項4】
前記Liの割合は、5質量%以上30質量%以下である、請求項3に記載のリチウム金属複合酸化物の製造方法。
【請求項5】
下記式(C)で表される値が0.3Nm/kg以上1Nm/kg以下である、請求項1又は2に記載のリチウム金属複合酸化物の製造方法。
式(C):酸素含有ガスの供給量(Nm/時間)/被処理物の供給量(kg/時間)
【請求項6】
前記焼成装置は前記加熱手段よりも上流側に排気口を備え、前記工程において、前記焼成装置内の前記酸素含有ガスを前記排気口から排気しながら焼成する、請求項1又は2に記載のリチウム金属複合酸化物の製造方法。
【請求項7】
前記リチウム金属複合酸化物は下記組成式(I)を満たす、請求項1又は2に記載のリチウム金属複合酸化物の製造方法。
Li[Li(Ni(1-x-y)CoM11-a]O ・・・組成式(I)
(組成式(I)において、M1は、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Ca、Al、Zn、W、Nb、Sn、Zr、B、Si、SおよびPからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、組成式(I)は、-0.1≦a≦0.2、0≦x≦0.7、0<y≦0.7、及びx+y<1を満たす。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム金属複合酸化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池用正極活物質として用いられるリチウム金属複合酸化物の製造方法は、前駆体である金属複合化合物とリチウム化合物とを混合し、得られた混合物を焼成する工程を備える。このような焼成工程は、トンネル炉やローラーハースキルンのような連続焼成炉、又はロータリーキルンのような流動式焼成炉等を用いて行われる。
【0003】
焼成反応の促進を目的として、特許文献1は2系統の給気系統を備えた焼成炉を用いる正極活物質の製造方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】JP-A-2019-75253
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
流動式焼成炉は、リチウム金属複合酸化物を安定に生産し難いという問題がある。
【0006】
本発明は、安定な生産が可能であるリチウム金属複合酸化物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の[1]~[7]を包含する。
[1]被処理物を、焼成装置を用いて焼成し焼成物を得る工程を備えるリチウム金属複合酸化物の製造方法であって、前記被処理物は、金属複合化合物とリチウム化合物との混合物を含み、前記焼成装置は、前記被処理物が投入される投入部と、前記投入部から投入された前記被処理物を搬送する搬送部と、筒状のキルン本体と、前記焼成物を排出する排出口と、ガス供給手段を備え、前記キルン本体は加熱手段を備え、前記工程において、前記加熱手段よりも上流側から、露点が10℃以下の低露点ガスを供給し、前記加熱手段よりも下流側から酸素含有ガスを供給し、前記被処理物に前記酸素含有ガスを向流接触させて焼成し、下記式(A)で表される値が0.0001Nm/kg以上0.30Nm/kg以下である、リチウム金属複合酸化物の製造方法。
式(A):低露点ガスの供給量(Nm/時間)/被処理物の供給量(kg/時間)
[2]前記焼成装置はロータリーキルンである、[1]に記載のリチウム金属複合酸化物の製造方法。
[3]前記リチウム化合物に含まれるLiの割合は、5質量%以上50質量%以下である、[1]又は[2]に記載のリチウム金属複合酸化物の製造方法。
[4]前記Liの割合は、5質量%以上30質量%以下である、[3]に記載のリチウム金属複合酸化物の製造方法。
[5]下記式(C)で表される値が0.3Nm/kg以上1Nm/kg以下である、[1]~[4]のいずれか1つに記載のリチウム金属複合酸化物の製造方法。
式(C):酸素含有ガスの供給量(Nm/時間)/被処理物の供給量(kg/時間)
[6]前記焼成装置は前記加熱手段よりも上流側に排気口を備え、前記工程において、前記焼成装置内の前記酸素含有ガスを前記排気口から排気しながら焼成する、[1]~[5]のいずれか1つに記載のリチウム金属複合酸化物の製造方法。
[7]前記リチウム金属複合酸化物は下記組成式(I)を満たす、[1]~[6]のいずれか1つに記載のリチウム金属複合酸化物の製造方法。
Li[Li(Ni(1-x-y)CoM11-a]O ・・・組成式(I)
(組成式(I)において、M1は、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Ca、Al、Zn、Sn、Zr、W、Nb、B、Si、SおよびPからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、組成式(I)は、-0.1≦a≦0.2、0≦x≦0.7、0<y≦0.7、及びx+y<1を満たす。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安定な生産が可能であるリチウム金属複合酸化物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の一態様におけるリチウム金属複合酸化物の製造方法において用いられる焼成装置の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願明細書において、金属複合化合物(Metal Composite Compound)を以下「MCC」と称し、リチウム金属複合酸化物(Lithium Metal composite Oxide)を以下「LiMO」と称し、リチウム二次電池用正極活物質(Cathode Active Material for lithium secondary batteries)を以下「CAM」と称す。
【0011】
「Ni」とは、ニッケル金属ではなく、ニッケル原子を指す。「Co」、「Li」等も同様に、それぞれコバルト原子、リチウム原子等を指す。
【0012】
数値範囲を例えば「1-10μm」又は「1~10μm」と記載した場合、1μmから10μmまでの範囲を意味し、下限値である1μmと上限値である10μmを含む数値範囲を意味する。
【0013】
<LiMOの製造方法>
本実施形態は、被処理物を、焼成装置を用いて焼成し、焼成物を得る工程(以下、工程Aと称することがある)を備えるLiMOの製造方法である。前記焼成装置は、被処理物が投入される投入部と、投入部から投入された被処理物を搬送する搬送部と、筒状のキルン本体と、焼成物を排出する排出口と、ガス供給手段を備え、キルン本体は加熱手段を備える。
前記工程Aは、前記加熱手段よりも上流側から、露点が10℃以下の低露点ガスを供給する。これにより、被処理物の供給部付近に滞留する水蒸気を除湿して乾燥させることができる。その結果、結露水が発生しにくくなり、供給部付近での閉塞を回避でき、安定なLiMOの生産が可能となる。ここで「加熱手段よりも上流側」とは、加熱手段よりも投入部側を意味する。例えば、後述の低露点ガス供給部56から低露点ガスを供給することができる。
前記LiMOの製造方法に用いる焼成装置について図1を参照して説明する。
【0014】
≪全体構成≫
図1は、本実施形態のLiMOの製造方法に用いる焼成装置の模式断面図である。
図1に示す焼成装置50は、投入部51、搬送部58、キルン本体52、排出口53及びガス供給手段60を備える。搬送部58は、搬送機構581と、電動機582を備える。
【0015】
被処理物は、投入部51で投入されて搬送部58に供給された後、搬送部58の搬送機構581によってキルン本体52の内部に搬送される。
搬送部58は、例えばスクリューフィーダである。搬送機構581は、例えば搬送スクリューである。
【0016】
キルン本体52は、被処理物を焼成する設備である。キルン本体52に搬送された被処理物は、焼成され、得られた焼成物は排出口53から排出される。
【0017】
上述の通り、被処理物は、投入部51、搬送部58、キルン本体52を経由し、排出口53の方向に移動させてキルン本体52の内部で加熱され、最終的に排出口53から排出される。
【0018】
キルン本体52は筒状、具体的には円筒状であり、軸心Oを回転軸として回転可能である。キルン本体52は、加熱手段54を備える。加熱手段54により、キルン本体52の内部に供給された被処理物が焼成される。
【0019】
焼成装置50は、ガス供給手段60を備える。ガス供給手段60は、加熱手段54よりも下流側からキルン本体52の内部に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給部601を備える。「加熱手段54よりも下流側」とは、加熱手段54よりも排出口53側を意味する。
【0020】
キルン本体52内において被処理物の移動方向とは逆方向に酸素含有ガスが流れるよう、焼成装置50は、加熱手段54よりも上流側に排気口55を備え、前記工程Aにおいて、焼成装置50内の酸素含有ガスを排気口55から排気しながら焼成することが好ましい(図1のEG1)。
【0021】
キルン本体52の内部で被処理物が焼成されると、焼成時に起こる反応により水分が発生する場合がある。水分が発生する反応としては、例えば水酸化リチウムやMCCの脱水反応や、リチウム化合物とMCCが反応する際の水分子の脱離反応が挙げられる。発生した水分は水蒸気となって向流のガスに乗り、搬送部58の方向に流れる。加熱手段54よりも上流側に到達した水蒸気は、温度の低下により結露する。
【0022】
結露により生じた結露水が、搬送部58に供給された原料と接触すると、原料の塊が生じ、搬送部58が閉塞する。これにより、続く原料の供給を阻害するため、LiMOを安定に生産し難いという問題がある。
この問題を解決するために、原料を供給する速度を一定とするため搬送部58の電動機582の回転数を上げる方法が挙げられるが、長時間の運転を想定した場合には閉塞を解消することが難しい。
【0023】
本実施形態においては、結露が発生しやすい位置、即ち加熱手段54よりも上流側に低露点ガスを供給することで、被処理物の供給部付近に滞留する水蒸気を除湿し、乾燥させることができる。その結果、搬送部58の閉塞を回避し、原料を安定に供給でき、LiMOを安定に生産することができる。
【0024】
具体的には、ガス供給手段60は、酸素含有ガス供給部601とは別に、低露点ガスを供給する低露点ガス供給ライン602を備える。
酸素含有ガス及び低露点ガスの供給量は、制御部61によって制御される。
【0025】
ここで「低露点ガス」とは、露点が10℃以下のガスであって、具体的には露点10℃以下の酸素、窒素、空気、および前記3種のうち2種以上の混合ガスである。
また「酸素含有ガス」は、酸素を含有するガスであり、酸素や、酸素と窒素との混合ガスが挙げられる。
【0026】
低露点ガスの露点としては、-10℃以下が好ましく、-20℃以下がより好ましい。露点が上述の範囲である低露点ガスを用いることで、LiMOをより安定に生産することができる。
【0027】
低露点ガスは、低露点ガス供給部56に供給される。図1では、低露点ガス供給部56は、電動機582の上部に設置されている。しかし、加熱手段54よりも上流側であれば、これに限定されない。例えば、キルン本体52の加熱手段54より上流側の円周方向に設置されていてもよく、搬送機構581の中央上部に設置されていてもよい。また、低露点ガス供給部は2か所以上設置されていてもよい。
【0028】
焼成装置としては、流動式焼成炉であるロータリーキルンが好ましい。ロータリーキルンは、キルン本体の固定部にキルン本体が摺動しながら回転する。摺動部は隙間が生じやすいため、主に摺動部を密閉する目的で、シールガス供給部が標準的に備えられている。シールガス供給部は、摺動部付近に設置され、代表的にはキルン本体の加熱手段よりも上流側と、下流側のいずれか一方又は両方に設置される。
【0029】
ロータリーキルンは、上述のようにシールガス供給部が標準的に備えられているため、焼成装置を改造することなく、シールガスを低露点ガスに変更する操作により本実施形態の製造方法を実施できる。
【0030】
焼成装置としては、ロータリーキルン以外に、低露点ガスの供給部及び供給手段を設けた揺動型の筒型炉が使用できる。
【0031】
なお、一般的にシールガスとして使用されるガスは、露点が10℃を超えるガスであるため、本実施形態で導入する低露点ガスは、シールガスとは異なるガスである。
【0032】
キルン本体の加熱手段よりも上流側に設置されたシールガス供給部を低露点ガス供給部として使用することで、加熱手段よりも上流側から低露点ガスを供給することができる。
【0033】
次に、上述の焼成装置50を用いた上記工程Aについて説明する。
【0034】
キルン本体52を回転させながら、被処理物を投入部51から供給する。
焼成装置50は、搬送部58によって被処理物を投入部51からキルン本体52の方向に移動させながら、連続的に被処理物を焼成する工程Aは、加熱手段54よりも上流側から低露点ガスを供給し、加熱手段54よりも下流側から酸素含有ガスを供給する。
【0035】
工程Aは、下記式(A)で表される値が0.0001-0.30Nm/kgである条件で行われる。
式(A):低露点ガスの供給量(Nm/時間)/被処理物の供給量(kg/時間)
【0036】
式(A)で表される値は、0.06-0.25Nm/kgが好ましく、0.065-0.22Nm/kgがより好ましい。
【0037】
式(A)で表される値が上記下限値以上であると、被処理物の供給部付近に到達した水蒸気を除湿及び乾燥可能な量の低露点ガスが十分に供給されているため、被処理物の供給部付近で結露が生じにくく、安定に原料を供給することができる。
【0038】
式(A)で表される値が上記上限値以下であると、酸素含有ガス供給部601からの酸素含有ガスの供給が過多になりにくく、加熱手段54の加熱エネルギーが増大しにくくなる。
【0039】
工程Aでは酸素含有ガスを被処理物に向流接触させて焼成する。酸素含有ガスの供給量は下記式(X)を満たすことが好ましい。
式(X):低露点ガスの供給量(Nm/時間)<酸素含有ガスの供給量(Nm/時間)
【0040】
排気口55から焼成装置50内の酸素含有ガスを排気しながら焼成することで、キルン本体52内において被処理物の移動方向とは逆方向に酸素含有ガスが流れる条件下で焼成できる。
式(X)を満たす条件では、水蒸気を含むガスを、搬送部58を含む焼成装置50の内部から排気口55に短時間で排気できる(図1のEG1)。これにより、水蒸気を含むガスが焼成装置50の内部に滞留する時間を短縮でき、被処理物の供給部付近に水蒸気が滞留しにくくなる。
その結果、搬送部58の閉塞が回避されるため原料が安定に供給され、LiMOを安定に生産することができる。
【0041】
工程Aでは、下記式(C)で表される値が0.3-1Nm/kgとなるよう、キルン本体52内に酸素含有ガスを供給しながら被処理物を焼成することが好ましい。
式(C):酸素含有ガスの供給量(Nm/時間)/被処理物の供給量(kg/時間)
【0042】
上記式(C)で表される値は、0.4-1Nm/kgであることが好ましく、0.5-1Nm/kgであることがより好ましい。
【0043】
式(C)で表される値が上記下限値以上であると、キルン本体52内の酸素含有ガスの露点が上昇し、結露が生じにくくなる。
式(C)で表される値が上記上限値以下であると、加熱すべき酸素含有ガスの供給量が増加して加熱エネルギーが増大することを抑制することができる。
【0044】
工程Aにおいて、酸素含有ガスの供給量は0.5Nm/時間以上であることが好ましい。
酸素含有ガスの供給量が上記下限値以上であると、被処理物と酸素含有ガスとの反応を十分に高めることができる。酸素含有ガスの供給量の上限値は、例えば2Nm/時間である。酸素含有ガスの供給量は0.5-2Nm/時間であることがより好ましい。
【0045】
被処理物の焼成温度は、例えば650-900℃であり、660-850℃であることが好ましく、670-800℃であることがより好ましい。焼成温度が650℃以上であると、LiMOの粒子の成長を促進させ、強固な結晶構造を有するLiMOを得ることができる。また、加熱温度が900℃以下であると、LiMO中の粒子にクラックが形成されることを防止し、LiMOの強度を維持でき、且つLiMOに含まれる粒子表面のリチウムイオンの揮発を低減できる。
【0046】
本明細書における焼成温度とは、キルン本体52内雰囲気の最高温度を意味する。
【0047】
焼成における保持時間は、1-50時間が好ましい。焼成における保持時間が1時間以上であると、結晶の発達が良好となる。焼成における保持時間が50時間以下であると、リチウムイオンの揮発が生じにくい。
【0048】
本明細書において、焼成における保持時間とは、加熱手段54が設けられている領域に被処理物が到達してから、加熱手段54が設けられている領域の終端に到達するまでの時間と定義する。
【0049】
キルン本体52の内径は、0.05-10mであることが好ましく、0.07-5mであることがより好ましく、0.09-2mであることがさらに好ましい。
【0050】
キルン本体52への被処理物の充填率は、1~20%であることが好ましく、2~17%がより好ましく、3~15%がさらに好ましい。
【0051】
工程Aにおけるキルン本体52の回転速度は、0.003-0.5rad/secであることが好ましく、0.05-0.4rad/secであることがより好ましく、0.08-0.3rad/secであることがさらに好ましい。
【0052】
(被処理物)
被処理物は、MCCとリチウム化合物との混合物を含む。
MCCとリチウム化合物との混合物とは、MCCとリチウム化合物とを焼成することなく混合したものである。被処理物は、混合物を主に含んでいれば他の材料を含んでいてもよい。例えば、混合物の他に、MCCとリチウム化合物との反応物を含んでいてもよい。MCCとリチウム化合物との反応物とは、MCCとリチウム化合物とを焼成して得られた物質である。
【0053】
MCCとは、リチウム化合物と共に焼成することでLiMOを製造することができる化合物である。MCCは例えば、金属複合酸化物又は金属複合水酸化物である。
【0054】
前記リチウム化合物に含まれるLiの割合は、5-50質量%が好ましく、5-30質量%がより好ましく、10-25質量%がさらに好ましく、15-20質量%が特に好ましい。
【0055】
前記リチウム化合物は、具体的には、炭酸リチウム(Liの割合は19質量%)、硝酸リチウム(Liの割合は5-10質量%)、酢酸リチウム(Liの割合は7-11質量%)、水酸化リチウム(Liの割合は16-30質量%)、酸化リチウム(Liの割合は46質量%)、塩化リチウム(Liの割合は16質量%)及びフッ化リチウム(Liの割合は27質量%)のうちの少なくとも一つを使用することができる。これらの中では、MCCとの反応性が高いため、水酸化リチウム(Liの割合は16-30質量%)が好ましい。
【0056】
水酸化リチウムは、焼成時に水蒸気が生じやすい。しかし、前記LiMOの製造方法であれば、リチウム化合物として水酸化リチウムを使用した場合でも、安定にLiMOを生産できる。
【0057】
MCCとリチウム化合物の混合物は、付着水や結晶水が多く含まれるため、水蒸気が発生しやすい。しかし、前記LiMOの製造方法であれば、MCCとリチウム化合物の混合物を使用した場合でも、安定にLiMOを生産できる。
【0058】
なお、リチウム化合物の組成分析は、例えば、リチウム化合物を塩酸に溶解させた後、ICP発光分光分析装置(株式会社パーキンエルマー製、Optima7300)を用いて行うことができる。
【0059】
MCCは、Ni及び元素M1を含むことが好ましく、Ni、Co及び元素M1を含むことがより好ましい。元素M1は、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Ca、Al、Zn、Sn、Zr、W、Nb、B、Si、SおよびPからなる群から選択される1種以上の元素を表す。
【0060】
MCCは、例えば、Ni、Co及びAlを含む金属複合水酸化物又は金属複合酸化物である。
【0061】
MCCが金属複合水酸化物である場合、金属複合水酸化物は、例えば、JP-A-2002-201028に記載された連続式共沈殿法により製造することができる。例えば、以下の手順で製造することができる。まず、20-80℃の反応槽の温度下で、金属塩溶液及び錯化剤を含む混合液に、pH9-13の範囲となるようアルカリ性水溶液を添加する。次いで、得られた反応沈殿物を洗浄、脱水、及び乾燥して、金属複合水酸化物が得られる。金属塩溶液としては、硫酸ニッケル水溶液、硫酸コバルト水溶液、硫酸アルミニウム水溶液等が挙げられ、錯化剤としては、硫酸アンモニウム等が挙げられる。アルカリ性水溶液は、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等が使用できる。
【0062】
MCCが金属複合酸化物である場合は、金属複合水酸化物を300-700℃で加熱して金属複合酸化物を製造することができる。
【0063】
リチウム化合物とMCCとを、最終目的物の組成比を勘案して混合し、混合物を生成する。具体的には、MCCに含まれる金属元素の合計量1に対するLiの量(モル比)は、0.98以上が好ましく、1.04以上がより好ましく、1.05以上がさらに好ましい。前記Liの量は、1.20以下が好ましい。前記Liの量は、0.98-1.20が好ましく、1.04-1.20がより好ましく、1.05-1.20がさらに好ましい。
【0064】
前記工程Aの後、本焼成を行ってもよい。このとき、工程Aにより得られる焼成物を仮焼成物と称する。仮焼成物を本焼成すると本焼成物が得られる。本焼成に用いる焼成装置は、特に限定されず、例えば、連続式の静置式焼成炉又は流動式焼成炉の何れを用いて行ってもよい。流動式焼成炉としては、焼成装置50を用いてもよい。本焼成時の温度及び時間としては、例えば650-950℃、3-50時間が挙げられる。
【0065】
焼成物は、必要に応じて洗浄、脱水、及び乾燥されてもよい。以上の工程を経て、LiMOが得られる。
【0066】
[攪拌翼周波数の変動係数の測定方法]
安定な生産が可能であるLiMOの製造方法であるか否かは、攪拌翼の周波数の変動係数を測定することで評価する。
焼成装置50は、電動機582により攪拌翼が回転駆動し、投入部51から投入された被処理物が搬送される。
【0067】
攪拌翼の周波数を変更しない又はほとんど変更することなく、所望の原料供給速度(kg/h)が維持できると、安定な生産が可能であることを意味する。所望の原料供給速度(kg/h)を維持するため、運転中に周波数を調整した場合の周波数の変動の度合いを「攪拌翼周波数変動係数」として計算する。
【0068】
具体的には、攪拌翼周波数変動係数は下記の式により算出する。
攪拌翼周波数変動係数=搬送機構581の攪拌翼の周波数の標準偏差/搬送機構581の攪拌翼の周波数の平均値
【0069】
攪拌翼周波数変動係数の算出において、キルン本体52の内部に被処理物が滞留した後の、周波数の標準偏差を用いる。
【0070】
上述の攪拌翼周波数変動係数の値が大きいと、所望の原料供給速度(kg/h)を維持するため、運転中に都度周波数を調整していることを意味し、生産が不安定であることを意味する。
本実施形態において、攪拌翼周波数変動係数の値が0.035以下であると、長時間運転した際の閉塞リスクが生じにくく、「安定な生産が可能である」と評価する。
【0071】
<LiMO>
上述のLiMOは、以下の性質を有する。
【0072】
LiMOは、Li、Ni及び前記元素M1を含むことが好ましく、Li、Ni、Co及び前記元素M1を含むことがより好ましい。LiMOは、例えば組成式(I)で表される。
Li[Li(Ni(1-x-y)CoM11-a]O ・・・組成式(I)
(組成式(I)において、M1は、前記元素M1であり、組成式(I)は、-0.1≦a≦0.2、0≦x≦0.7、0<y≦0.7、及びx+y<1を満たす。)
【0073】
サイクル維持率が高いリチウム二次電池を得る観点から、前記式(I)におけるaは、-0.05以上であることがより好ましく、-0.01以上であることがさらに好ましい。また、初回クーロン効率がより高いリチウム二次電池を得る観点から、aは、0.08以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。
【0074】
aの上限値と下限値は、任意に組み合わせることができる。aは、-0.01-0.2であることが好ましく、-0.05-0.08であることがより好ましく、-0.01-0.05であることがさらに好ましい。
【0075】
サイクル特性を向上させる観点から、xは、0.01以上であることが好ましく、0.02以上であることがより好ましい。充電容量が高いリチウム二次電池を得る観点から、xは、0.5以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましい。
【0076】
xの上限値と下限値は、任意に組み合わせることができる。xは、0.01-0.5であることが好ましく、0.02-0.3であることがより好ましい。
【0077】
サイクル特性を向上させる観点から、yは、0.01以上であることが好ましく、0.02以上であることがより好ましい。充電容量が高いリチウム二次電池を得る観点から、yは、0.5以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましい。
【0078】
yの上限値と下限値は、任意に組み合わせることができる。yは、0.01-0.5であることが好ましく、0.02-0.3であることがより好ましい。
【0079】
x+yは、0を超え1未満であり、0を超え0.7以下であることが好ましく、0を超え0.3以下であることがより好ましく、0を超え0.25以下がさらに好ましい。
【0080】
サイクル維持率が高いリチウム二次電池を得る観点から、M1は、Mn、Ti、Mg、Al、W、Nb、B、及びZrからなる群より選択される1種以上の元素であることが好ましく、Mn、Al、W、B、及びZrからなる群より選択される1種以上の元素であることがより好ましい。
【0081】
なお、LiMOの組成分析は、例えば、LiMOを塩酸に溶解させた後、ICP発光分光分析装置(株式会社パーキンエルマー製、Optima7300)を用いて行うことができる。
【0082】
LiMOの結晶構造は、層状構造であり、六方晶型の結晶構造又は単斜晶型の結晶構造であることがより好ましい。
【0083】
六方晶型の結晶構造は、P3、P3、P3、R3、P-3、R-3、P312、P321、P312、P321、P312、P321、R32、P3m1、P31m、P3c1、P31c、R3m、R3c、P-31m、P-31c、P-3m1、P-3c1、R-3m、R-3c、P6、P6、P6、P6、P6、P6、P-6、P6/m、P6/m、P622、P622、P622、P622、P622、P622、P6mm、P6cc、P6cm、P6mc、P-6m2、P-6c2、P-62m、P-62c、P6/mmm、P6/mcc、P6/mcm、及びP6/mmcからなる群から選ばれるいずれか一つの空間群に帰属される。
【0084】
また、単斜晶型の結晶構造は、P2、P2、C2、Pm、Pc、Cm、Cc、P2/m、P2/m、C2/m、P2/c、P2/c、及びC2/cからなる群から選ばれるいずれか一つの空間群に帰属される。
【0085】
これらのうち、放電容量が高いリチウム二次電池を得るため、結晶構造は、空間群R-3mに帰属される六方晶型の結晶構造、又はC2/mに帰属される単斜晶型の結晶構造であることがさらに好ましい。
【0086】
<CAM>
前記LiMOは、CAMとして好適に使用できる。
【0087】
<リチウム二次電池>
前記LiMOをCAMとして用いる場合の好適なリチウム二次電池の一例は、正極及び負極、正極と負極との間に挟持されるセパレータ、正極と負極との間に配置される電解液を有する。
【0088】
さらにリチウム二次電池の一例は、正極及び負極、正極と負極との間に挟持されるセパレータ、正極と負極との間に配置される固体電解質を有する。リチウム二次電池については、WO2022/113904A1の[0104]~[0181]に記載の構成、材料及び製造方法を用いることができる。
【0089】
本発明は以下の[10]~[16]であってもよい。
[10]前記工程Aを備えるLiMOの製造方法であって、前記被処理物は、MCCとリチウム化合物との混合物を含み、前記焼成装置は、前記投入部と、前記搬送部と、筒状のキルン本体と、前記排出口と、前記ガス供給手段を備え、前記キルン本体は加熱手段を備え、前記工程Aにおいて、前記加熱手段よりも上流側から、露点が10℃以下の低露点ガスを供給し、前記加熱手段よりも下流側から酸素含有ガスを供給し、前記被処理物に前記酸素含有ガスを向流接触させて焼成し、前記式(A)で表される値が0.065-0.22Nm/kgである、LiMOの製造方法。
[11]前記焼成装置はロータリーキルンである、[10]に記載のLiMOの製造方法。
[12]前記リチウム化合物に含まれるLiの割合は、15-20質量%である、[10]又は[11]に記載のLiMOの製造方法。
[13]前記式(C)で表される値が0.3-1Nm/kgである、[10]~[12]のいずれか1つに記載のLiMOの製造方法。
[14]前記酸素含有ガスの供給量が前記式(X)を満たす、[10]~[13]のいずれか1つに記載のLiMOの製造方法。
[15]前記焼成装置は前記加熱手段よりも上流側に排気口を備え、前記工程Aにおいて、前記焼成装置内の前記酸素含有ガスを前記排気口から排気しながら焼成する、[10]~[14]のいずれか1つに記載のLiMOの製造方法。
[16]前記LiMOは下記組成式(I)-1を満たす、[10]~[16]のいずれか1つに記載のLiMOの製造方法。
Li[Li(Ni(1-x-y)CoM11-a]O ・・・組成式(I)-1
(組成式(I)-1において、M1は、Mn、Al、W、Zr、及びBからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、組成式(I)-1は、-0.01≦a≦0.5、0.02≦x≦0.3、0.02≦y≦0.3、及び0<x+y≦0.7に示す関係を満たす。)
【実施例0090】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0091】
<組成分析>
LiMO及びリチウム化合物の組成分析は、LiMOまたはリチウム化合物を塩酸に溶解させた後、ICP発光分光分析装置(株式会社パーキンエルマー製、Optima7300)を用いて行った。
<攪拌翼周波数変動係数>
上記[攪拌翼周波数変動係数の測定方法]に記載の方法に従って、変動係数を測定した。
【0092】
≪実施例1≫
攪拌器及びオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を50℃に保持した。
【0093】
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液と硫酸アルミニウム水溶液とを、NiとCoとAlとの原子比が0.88:0.09:0.03となる割合で混合して、混合原料液を調製した。
【0094】
次に、反応槽内に、攪拌下、この混合原料溶液に硫酸アンモニウム水溶液を錯化剤として連続的に添加した。反応槽内の混合液のpHが11.6(測定温度:40℃)になるよう水酸化ナトリウム水溶液を適時滴下し、反応沈殿物1を得た。
【0095】
反応沈殿物1を洗浄した後、遠心分離機で脱水し、単離して105℃で乾燥することで、Ni、Co及びAlを含む金属複合水酸化物1を得た。
【0096】
金属複合水酸化物1を大気雰囲気中650℃で5時間保持して加熱し、室温まで冷却して金属複合酸化物であるMCC1を得た。
【0097】
MCC1に含まれるNi、Co及びAlの合計量1に対するLiの量(モル比)が1.10となる割合で水酸化リチウムを秤量した。MCC1と水酸化リチウムを乳鉢により混合して混合物1を得た。
【0098】
使用した水酸化リチウムに含まれるLiの割合は、16.5質量%であった。
【0099】
この混合物1を焼成装置50に相当する流動式焼成炉(ノリタケカンパニーリミテド社製、商品名:デスクトップロータリーキルン)に投入した。式(X)の関係を満たす条件で酸素含有ガスを排出口側から供給し、排気口55に相当する排気口から排気しながら、混合物1に酸素含有ガスを向流接触させて、680℃で2時間仮焼成し、仮焼成物1を得た。
【0100】
この時、式(A)の値は0.20(Nm/kg)であり、式(C)で表される値は0.67(Nm/kg)であり、低露点ガス供給部から、低露点ガスとして露点が-23.6℃の酸素を供給した。
【0101】
仮焼成において、上記[攪拌翼周波数変動係数の測定方法]に記載の方法により得た変動係数は0であり、LiMOを安定に生産できることが確認できた。
【0102】
次いで、得られた仮焼成物1を静置式のバッチ型焼成炉(モトヤマ社製、商品名:酸化雰囲気炉 SKA-3050F-SP)に投入し、酸素雰囲気中にて、720℃で5時間保持して本焼成し、本焼成物1を得た。
【0103】
得られた本焼成物1を洗浄した後、遠心分離機で脱水し、単離して窒素雰囲気下で250℃で乾燥することで、LiMO1を得た。
【0104】
LiMO1の組成分析を行ったところ、組成式(I)において、a=0.02、x=0.09、y=0.03であり、元素M1はAlであった。
【0105】
≪実施例2≫
式(A)の値を0.07(Nm/kg)に変更した以外は実施例1と同様に仮焼成物2を得た。
【0106】
仮焼成において、変動係数は0.034であり、LiMOを安定に生産できることが確認できた。
【0107】
仮焼成物2を使用した以外は実施例1と同様の方法によりLiMO2を得た。
【0108】
LiMO2の組成分析を行ったところ、組成式(I)において、a=0.02、x=0.09、y=0.03であり、元素M1はAlであった。
【0109】
≪比較例1≫
低露点ガスを供給せず、式(C)で表される値を1.72(Nm/kg)に変更した以外は実施例1と同様の方法により仮焼成物11を得た。
【0110】
仮焼成において、変動係数は0.058であり、変動係数の値が大きく、運転を継続すると閉塞リスクが高いため、途中で仮焼成を停止した。
【0111】
≪比較例2≫
低露点ガスを供給せず、式(C)で表される値を0.10(Nm/kg)に変更した以外は実施例1と同様の方法により仮焼成物12を得た。
【0112】
仮焼成において、変動係数は0.040であり、変動係数の値が大きく、運転を継続すると閉塞リスクが高いため、途中で仮焼成を停止した。
【0113】
上記結果に示したように、向流接触型の焼成方法において、加熱手段より上流側から露点が10℃以下の低露点ガスを供給し、式(A)を満たす条件で焼成した場合には、原料供給部付近での結露に起因する閉塞が生じにくく、LiMOを安定に生産できることが確認できた。
【符号の説明】
【0114】
50:焼成装置、51:投入部、52:キルン本体、53:排出口、54:加熱手段、55:排気口、56:低露点ガス供給部、58:搬送部、581:電動機、582:搬送機構、60:ガス供給手段、601:酸素含有ガス供給部、602:低露点ガス供給ライン、61:制御部
図1