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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153318
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/12 20060101AFI20241022BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20241022BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20241022BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B24B49/12
B24B55/02 B
B24B7/04 A
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067132
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戎 聖吾
(72)【発明者】
【氏名】小澤 寛修
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
3C047
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034BB73
3C034BB93
3C034CA06
3C034CA09
3C034CA22
3C034CB14
3C034DD18
3C043BA03
3C043BA09
3C043BA12
3C043CC04
3C043CC13
3C043DD02
3C043DD03
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
3C043EE04
3C047FF04
3C047GG01
5F057AA20
5F057AA37
5F057BA11
5F057CA14
5F057DA11
5F057EB20
5F057EC27
5F057GB02
5F057GB18
(57)【要約】
【課題】研削加工中の研削砥石の欠けを高精度に検出することができる研削装置を提供すること。
【解決手段】ウェーハ(被加工物)を保持するチャックテーブルと、複数の研削砥石が環状に配置された研削ホイールを装着可能な研削ユニットと、研削砥石とウェーハとが接触する接触部に研削水を供給する研削水供給ユニットと、チャックテーブルと研削ユニットとを垂直方向に相対的に移動させる垂直移動機構と、を備える研削装置は、回転する研削砥石が通過可能な隙間Sを設けて対向配置された発光部62と受光部63を備える光透過センサ60と、受光部63の受光量によって研削砥石の欠けの有無を判断する判断部と、光透過センサ60に向かってエアを噴射するエア噴射ユニット70を設けて構成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、
複数の研削砥石が環状に配置された研削ホイールを装着可能な研削ユニットと、
該研削砥石と該被加工物とが接触する接触部に研削水を供給する研削水供給ユニットと、
該チャックテーブルと該研削ユニットとを垂直方向に相対的に移動させる垂直移動機構と、
を備える研削装置であって、
回転する該研削砥石が通過可能な隙間を設けて対向配置された発光部と受光部を備える光透過センサと、
該受光部の受光量によって該研削砥石の欠けの有無を判断する判断部と、
該光透過センサに向かってエアを噴射するエア噴射ユニットと、
を設けたことを特徴とする研削装置。
【請求項2】
該エア噴射ユニットは、該発光部からの光の出射方向と直交する方向にエアを噴射する噴射口を備えることを特徴とする請求項1記載の研削装置。
【請求項3】
該噴射口は、該発光部と該受光部との間の隙間を、該研削砥石の進入側からエアカーテンで全幅に亘って遮蔽するよう該隙間の幅方向に沿って開口していることを特徴とする請求項2記載の研削装置。
【請求項4】
該噴射口は、該発光部と該受光部との間の隙間を、該研削砥石の進入側と退出側の両側からエアカーテンで全幅に亘って遮蔽するよう該隙間の幅方向に沿って開口していることを特徴とする請求項2記載の研削装置。
【請求項5】
該噴射口は、該発光部の発光面と該受光部の受光面に沿ってエアを噴射するよう該発光面と該受光面の近傍にそれぞれ開口していることを特徴とする請求項2記載の研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルに保持されたウェーハなどの被加工物を研削砥石によって研削する研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイスの製造工程においては、円板状の半導体ウェーハ(以下、単に「ウェーハ」と称する)の表面が格子状に形成されたストリート(分割予定ライン)によって複数のデバイス領域に区画され、各デバイス領域にICやLSIなどのデバイスがそれぞれ形成される。そして、このように多数のデバイスが形成されたウェーハをストリートに沿って分割することによって、複数のチップが製造される。
【0003】
而して、近年の電子機器の薄型化や小型化などの要求に応えるため、ウェーハを分割する前に該ウェーハの裏面を研削装置によって研削することによって、ウェーハを所定の厚みまで薄化することが行われている。ここで、研削装置においては、チャックテーブルに保持されたウェーハが、回転する研削砥石によって研削されるが、研削加工中、研削砥石とウェーハとの接触部(研削部)には、研削屑の除去や冷却を目的として研削水が供給される。
【0004】
ところで、硬い被加工物を研削砥石で研削する場合、研削砥石を被加工物に強い力で押し付けて該研削砥石の砥粒を被加工物に噛み込ませて研削しているため、研削砥石に欠けが発生し、この研削砥石の欠けが被加工物の研削結果に悪影響を及ぼすという問題が発生する。そして、欠けが発生した研削砥石をそのまま使用し続けると、研削砥石の欠けた部分と被加工物の角部分(被加工物の外周部)とが衝突し、被加工物が割れるという問題が発生する。
【0005】
そこで、特許文献1には、研削砥石の欠けを光学的に検出する欠け検出手段を設けた研削装置が提案されている。この研削装置に設けられた欠け検出手段は、研削砥石が進入可能な隙間を隔てて対向配置された発光部と受光部を備える光透過センサと、受光部の受光量(出力電圧)によって研削砥石に欠けが発生したか否かを判断する判断部によって構成されており、判断部は、受光部の受光量(出力電圧)が予め設定された閾値以上である場合に研削砥石に欠けが発生したものと判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-127936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1において提案された研削装置においては、ウェーハの研削加工中は研削砥石の欠けを検出することができない。その理由は、研削加工中においては、前述のように研削砥石とウェーハとの接触部(研削部)に研削水が供給されており、この研削水が研削砥石の回転によって周囲に飛散し、飛散する研削水や該研削水に含まれる研削屑が光透過センサの発光部や受光部に付着するため、欠け検出手段による研削砥石の欠けの光学的な検出精度が低下するためである。このため、欠け検出手段による研削砥石の欠けの検出は、研削を行っていないタイミング(フルオートスタート前または後、もしくはウェーハごとの加工入れ替え時など)で行っている。
【0008】
したがって、特許文献1において提案された研削装置では、研削加工中において研削砥石に欠けが発生した瞬間の欠けの検出はできず、少なくとも1枚のウェーハについては割れなどの問題が発生する可能性がある。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、研削加工中の研削砥石の欠けを高精度に検出することができる研削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明は、被加工物を保持するチャックテーブルと、複数の研削砥石が環状に配置された研削ホイールを装着可能な研削ユニットと、該研削砥石と該被加工物との接触部に研削水を供給する研削水供給ユニットと、該チャックテーブルと該研削ユニットとを垂直方向に相対的に移動させる垂直移動機構と、を備える研削装置であって、回転する該研削砥石が通過可能な隙間を設けて対向配置された発光部と受光部を備える光透過センサと、該受光部の受光量によって該研削砥石の欠けの有無を判断する判断部と、該光透過センサに向かってエアを噴射するエア噴射ユニットと、を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回転する研削砥石による研削加工中にエア噴射ユニットから光透過センサの発光部と受光部に向けてエアを噴射するようにしたため、研削砥石と被加工物との接触部に供給されて飛散する研削水や該研削水に含まれる研削屑が光透過センサの発光部と受光部に付着することがなく、研削加工中の研削砥石の欠けを光透過センサによって光学的に高精度に検出することができる。したがって、研削加工中において研削砥石に欠けが発生した瞬間を検出することができ、研削砥石に欠けが発生した時点で研削加工を中止することによって、被加工物の割れを確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る研削装置の一部を破断して示す斜視図である。
図2】本発明に係る研削装置の要部(研削部)の破断側面図である。
図3】本発明に係る研削装置における研削砥石と光透過センサの配置を示す研削ユニットの斜視図である。
図4】(a)は本発明に係る研削装置の光透過センサとエア噴射ユニットの斜視図、(b)は同側面図である。
図5】本発明に係る研削装置における研削砥石と光透過センサの出力電圧との関係を示す図である。
図6】本発明に係る研削装置における研削手順を示すフローチャートである。
図7】(a),(b)は別形態1に係る光透過センサとエア噴射ユニットの斜視図、(c)は同側面図である。
図8】(a)は別形態2に係る光透過センサとエア噴射ユニットの斜視図、(b)は同平面図、(c)は(b)のA-A線断面図である。
図9】(a)は別形態2に係る光透過センサとエア噴射ユニット及び研削砥石との関係を示す部分側断面図、(b)は同部分破断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
[研削装置の構成]
先ず、本発明に係る研削装置の構成について説明すると、図1に示す研削装置1は、被加工物である円板状のウェーハWを研削加工するものであって、次の構成要素を備えている。なお、以下の説明においては、図1に示す矢印方向をそれぞれX軸方向(左右方向)、Y軸方向(前後方向)、Z軸方向(上下方向)とする。
【0015】
すなわち、研削装置1は、上面の円形の保持面10aでウェーハWを保持するチャックテーブル10と、該チャックテーブル10の保持面10aに吸引保持されたウェーハWを研削加工する研削ユニット20と、研削加工中のウェーハWの厚みを測定する厚み測定器30と、研削ユニット20の研削砥石25bとウェーハWとの接触部(研削部)に研削水を供給する研削水供給ユニット40と、研削ユニット20をチャックテーブル10の保持面10aに対して垂直方向(Z軸方向)に上下動させる垂直移動機構50と、回転する研削砥石25bの欠けを光学的に検出する光透過センサ60と、該光透過センサ60によって検出される受光量(出力電圧)によって研削砥石25bの欠けの有無を判断する判断部100と、光透過センサ60に向かってエアを噴射するエア噴射ユニット70を主要な構成要素として備えている。
【0016】
ここで、ウェーハWは、単結晶のシリコン母材で構成されており、図1に示す状態において下方を向いている表面には、複数の不図示のデバイスが形成されており、これらのデバイスは、ウェーハWの表面に貼着された保護テープTによって保護されている。そして、ウェーハWは、図2に示すように、その表面(図2においては下面)が保護テープT(図2には不図示)を介してチャックテーブル10の保持面10aに吸引保持され、裏面(図2においては上面)が研削水供給ユニット40から研削水の供給を受けながら研削ユニット20の研削砥石25bによって研削される。
【0017】
次に、研削装置1の主要な構成要素であるチャックテーブル10、研削ユニット20、厚み測定器30、研削水供給ユニット40、垂直移動機構50、光透過センサ60、判断部100、エア噴射ユニット70の構成についてそれぞれ説明する。
【0018】
(チャックテーブル)
チャックテーブル10は、円板状の部材であって、図2に示すように、その中央部には、多孔質のセラミックなどで構成された円板状のポーラス部材10Aが組み込まれている。そして、ポーラス部材10Aは、その上面が円板状のウェーハWを吸引保持する保持面10aを構成している。ここで、ポーラス部材10Aは、配管11によって吸引源12に接続されており、配管11には、電磁開閉式の開閉バルブV1が設けられている。なお、チャックテーブル10は、不図示の回転機構によって垂直な中心軸回りに図示矢印方向に所定の速度で回転駆動される。
【0019】
ここで、本実施の形態に係る研削装置1は、図1に示すように、Y軸方向(前後方向)に長い矩形ボックス状のベース2を備えており、このベース2の上面に開口するY軸方向に長い矩形の開口部2aにはチャックテーブル10が臨んでいる。そして、ベース2の上面の開口部2aのチャックテーブル10の周囲は、矩形プレート状のカバー3によって覆われており、開口部2aのカバー3の前後(-Y方向と+Y方向)の部分は、カバー3と共に移動して伸縮する蛇腹状の伸縮カバー4,5によってそれぞれ覆われている。
【0020】
ところで、図示しないが、ベース2内には、チャックテーブル10を保持面10aに対して水平方向(Y軸方向)に移動させる水平移動機構が設けられており、この水平移動機構は、例えば、公知のボールネジ機構などによって構成されている。
【0021】
(研削ユニット)
研削ユニット20は、ホルダ21に固定されたスピンドルモータ22と、該スピンドルモータ22によって回転駆動される垂直なスピンドル23と、該スピンドル23の下端に取り付けられた円板状のマウント24と、該マウント24の下面に着脱可能に装着された研削ホイール25とを備えている。ここで、研削ホイール25は、円板状の基台25aと、該基台25aの下面に円環状に取り付けられた複数の研削砥石25bによって構成されている。なお、複数の研削砥石25bは、円弧状ブロックによって構成されており、これらの研削砥石25bは、周方向に等角度ピッチで配置され、これらの間には所定の隙間が形成されている。
【0022】
(厚み測定器)
厚み測定器30は、チャックテーブル10に保持された研削加工中のウェーハWの厚みを測定するハイトゲージによって構成されており、チャックテーブル10の上面に接触する第1プローブ31とウェーハWの上面に接触する第2プローブ32を備えている。この厚み測定器30は、一方の第1プローブ31によって測定されるチャックテーブル10の上面の高さと他方の第2プローブ32によって測定されるウェーハWの上面の高さとの差に基づいてウェーハWの厚みを求めるものである。なお、本実施の形態では、厚み測定器30として接触式のハイトゲージを用いたが、光学的に厚みを測定する非接触式のものを使用しても良い。
【0023】
(研削水供給ユニット)
研削水供給ユニット40は、図1に示すように、研削水供給源41と、該研削水供給源41から配管42を経て供給される研削水を研削砥石25bとウェーハWとの接触部(研削部)に向けて噴射する不図示の噴射ノズルを含んで構成されている。ここで、配管42には、電磁開閉式の開閉バルブV2が設けられている。なお、研削ユニット20のスピンドルモータ22とスピンドル23、マウント24及び研削ホイール25の各中心には、不図示の供給路が垂直に貫設されており、この供給路の一端(上端)に配管42が接続されている。そして、供給路の他端(下端)が、研削ホイール25の研削砥石25bの中心部に開口している。
【0024】
(垂直移動機構)
垂直移動機構50は、研削ユニット20をチャックテーブル10の保持面10aに対して垂直な方向(Z軸方向)に沿って昇降動させるものであって、図1に示すように、ベース2の上面の+Y軸方向端部(後端部)上に垂直に立設された矩形ボックス状のコラム6の-Y軸方向端面(前面)に配置されている。この垂直移動機構50は、研削ユニット20のホルダ21の背面に取り付けられた矩形プレート状の昇降板51を、ホルダ21及び該ホルダ21に保持されたスピンドル23と研削ホイール25と共に左右一対のガイドレール52に沿ってZ軸方向に昇降動させるものである。ここで、左右一対のガイドレール52は、コラム6の前面に垂直且つ互いに平行に配設されている。
【0025】
また、左右一対のガイドレール52の間には、回転可能なボールネジ53がZ軸方向(上下方向)に沿って垂直に立設されており、該ボールネジ53の上端は、駆動源である正逆転可能なサーボモータ54に連結されている。ここで、サーボモータ54は、コラム6の上面に取り付けられた矩形プレート状のブラケット55を介して縦置き状態で取り付けられている。また、ボールネジ53の下端は、コラム6に回転可能に支持されており、このボールネジ53には、昇降板51の背面に後方(+Y軸方向)に向かって水平に突設された不図示のナット部材が螺合している。
【0026】
したがって、サーボモータ54を駆動してボールネジ53を正逆転させれば、このボールネジ53に螺合する不図示のナット部材が取り付けられた昇降板51が研削ユニット20と共にZ軸に沿って上下動する。
【0027】
(光透過センサ)
光透過センサ(フォトインタラプタ)60は、図1に示すように、チャックテーブル10の近傍、具体的には、チャックテーブル10の周囲を覆うカバー3の上面に配置されており、凹状のホルダ61を備えている。このホルダ61の中央部には、図2及び図3に示すように、研削加工中に回転する研削砥石25bが通過可能な隙間Sが形成されている。そして、図4(a)に示すように、ホルダ61の隙間Sを挟んで対向する位置、具体的には、ホルダ61の隙間Sの研削砥石25bの外側(図4(a)の左側)に発光部62が配置され、隙間Sの研削砥石25bの内側(図4(a)の右側)に受光部63が配置されている。
【0028】
ここで、発光部62は、例えば赤外線などの測定光Lを出射するフォトダイオードなどの発光素子(LED)によって構成されており、受光部63は、受光した測定光を電圧に変換するフォトトランジスタなどの受光素子によって構成されている。なお、発光部62は、不図示の電源に接続されており、受光部63は、図1及び図2に示すように、後述の判断部100に電気的に接続されている。
【0029】
而して、ウェーハWの研削中においては、前述のように、光透過センサ60のホルダ61に形成された隙間Sを図5の矢印方向に回転する研削砥石25bが通過するが、このとき、ホルダ61に配置された発光部62から出射する赤外線などの測定光Lは、図4(a)に示すように、受光部63に向かって水平に進む。このとき、この測定光Lは、ホルダ61の隙間Sを研削砥石25bが通過するときには、該研削砥石25bによって遮られるために受光部63に到達しない。このため、図5に示すように、1つの研削砥石25bがホルダ61の隙間Sを通過する時間Δt1(t~t)においては、受光部63の出力電圧Vは低い値Vを示す。
【0030】
他方、光透過センサ60のホルダ61の隙間Sを隣接する研削砥石25bの間の隙間が通過するとき(1つの研削砥石25bが通過して次の研削砥石25bが隙間Sに進入するまでの間)には、発光部62から出射する測定光Lは、研削砥石25bによって遮られることなく受光部63にそのまま到達するため、受光部63の受光量が増え、該受光部63の出力電圧Vは高い値Vを示す。したがって、回転する研削砥石25bが光透過センサ60のホルダ61に形成された隙間Sを通過すると、該光透過センサ60の受光部63の出力電圧Vは、周期Δtで高い値Vを示す矩形波状の特性を示す。
【0031】
ところが、図5に示すように、一部の研削砥石25bに欠けDが発生している場合には、この欠けDが発生した研削砥石25bが光透過センサ60のホルダ61の隙間Sを通過すると、この研削砥石25bの欠けDの部分を測定光Lの一部が通過して受光部63に到達して受光されるため、受光部63の出力電圧VにVよりも高い値Vを示す部分が現れる。
【0032】
(判断部)
判断部100は、研削砥石25bによるウェーハWの研削加工中における光透過センサ60の受光部63の出力電圧Vの値によって研削砥石25bに欠けが発生したか否かを判断するものであって、前述のように(図5参照)、研削砥石25bに欠けDが発生した場合には、この研削砥石25bの欠けDが発生した部分を測定光Lが通過するために受光部63の出力電圧Vが上昇する。したがって、判断部100は、光透過センサ60の受光部63の出力電圧Vが予め設定された閾値を超えたか否かを判断し、出力電圧Vが閾値を超えた場合には、研削砥石25bに欠けDが発生したものと判断する。
【0033】
(エア噴射ユニット)
エア噴射ユニット70は、研削砥石25bによるウェーハWの研削加工中において光透過センサ60によって研削砥石25bの欠けの有無を検出している際に、図4に示すエア供給源71から光透過センサ60に向けてエアを噴射するものである。本実施形態では、このエア噴射ユニット70は、光透過センサ60のホルダ61の近傍、具体的には、ホルダ61の隙間Sへの研削砥石25bの進入側(図4の右側)に配置されたノズル72と、該ノズル72にエアを供給するエア供給源71を含んで構成されている。なお、図4において、ホルダ61の左側は、該ホルダ61の隙間Sから研削砥石25bが退出する側(退出側)である。
【0034】
ここで、上記ノズル72は、ホルダ61の近傍であって、該ホルダ61の隙間Sへの研削砥石25bの進入側(研削砥石25bの回転方向上流側)にホルダ61に沿って配置された細長い矩形ボックス状に成形された部材であって、その上面には、光透過センサ60のホルダ61の隙間Sの幅よりも長い矩形スリット状の噴射口72aが上方に向かって開口している。したがって、研削砥石25bによるウェーハWの加工中において研削砥石25bの欠けの有無を光透過センサ60によって光学的に検出している際には、エア供給源71からノズル72へと供給されるエアは、該ノズル72の噴射口72aから上方(つまり、光透過センサ60の発光部62からの測定光Lの出射方向(水平方向)に直交する方向)に向かって噴射される。このため、光透過センサ60によって研削砥石25bの欠けの有無を検出している際には、該光透過センサ60のホルダ61に形成された隙間Sは、研削砥石25bの進入側からエアカーテンで全幅に亘って遮蔽される。
【0035】
[研削装置の作用]
次に、以上のように構成された研削装置1の作用を図6に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。
【0036】
研削装置1によってウェーハWを研削加工するには、図2に示すように、ウェーハWがその表面(図2においては、下面)に貼着された保護テープT(図2には不図示)を下にしてチャックテーブル10の保持面10a上に載置される。すると、吸引源12が駆動されるとともに、開閉バルブV1が開けられてチャックテーブル10のポーラス部材10Aが真空引きされる。すると、ポーラス部材10Aに負圧が発生し、この負圧に引かれてウェーハWがチャックテーブル10の保持面10a上に吸引保持される。
【0037】
上述のように、ウェーハWがチャックテーブル10の保持面10a上に吸引保持されると、ベース2内に配置された不図示の水平移動機能によってチャックテーブル10がこれに保持されたウェーハWと共に研削ユニット20の研削ホイール25に向かって+Y軸方向(後方)へと水平移動する。この状態から、図1に示す研削ユニット20のスピンドルモータ22が起動されて研削ホイール25(研削砥石25b)が所定の速度で図2の矢印方向に回転駆動されるとともに、不図示の回転機構によってチャックテーブル10とこれに保持されたウェーハWが図2の矢印方向に所定の速度で回転駆動される(図6のステップS1)。
【0038】
次に、上記状態から図1に示す垂直移動機構50によって研削ホイール25(研削砥石25b)が下方(-Z軸方向)に下降し(図6のステップS2)、図2に示すように、研削砥石25bがウェーハWの上面(裏面)に接触し、ウェーハWの研削加工が行われる(図6のステップS3)。このとき、研削砥石25bとウェーハWとの位置関係は、研削砥石25bの外接円がウェーハWの中心を通るように調整されるが、このとき、研削砥石25bのウェーハWから径方向外方へとはみ出す部分が光透過センサ60の発光部62と受光部63との間に形成された隙間Sを通過する。
【0039】
そして、研削砥石25bによるウェーハWの加工中においては、図1及び図2に示す研削水供給ユニット40の開閉バルブV2が開けられ、研削水供給源41から研削水が配管42と研削ユニット20のスピンドルモータ22、スピンドル23などの軸中心に形成された不図示の供給路を通って研削砥石25bとウェーハWとの接触部(研削部)に供給され、この研削水による洗浄によって研削屑が除去されるとともに、研削砥石25bとウェーハWとの接触部(研削部)が冷却される。なお、研削砥石25bとウェーハWとの接触部(研削部)に供給される研削水は、研削砥石25bの回転によって噴霧となって周囲に飛散する。
【0040】
また、研削砥石25bによるウェーハWの研削加工中においては、図4及び図5に示すように、光透過センサ60による研削砥石25bの欠けが光学的に検出されるとともに、エア噴射ユニット70からエアが光透過センサ60に向けて噴射される(図6のステップS4)。すなわち、図4に示すように、光透過センサ60の発光部62から受光部63に向けて赤外線などの測定光Lが出射され、これらの発光部62と受光部63との間の隙間Sを研削砥石25bが通過すると、受光部63から出力される出力電圧Vが図5に示すような矩形波状に変化するため、この出力電圧Vが検出される。そして、この光透過センサ60の出力電圧Vの検出と同時にエア噴射ユニット70によってエアが光透過センサ60に向けて噴出される。
【0041】
すなわち、図4に示すように、エア噴射ユニット70のエア供給源71からノズル72へと供給されるエアがノズル72に開口する細長いスリット状の噴射口72aから上方に向かって噴射される。ここで、前述のように、ノズル72は、光透過センサ60の隙間Sへの研削砥石25bの進入側(つまり、回転する研削砥石25bが研削水の噴霧を発光部62と受光部63との間の隙間Sに引き込む側)に配置され、このノズル72に開口する細長いスリット状の噴射口72aから上方に向かって噴射されるエアは、光透過センサ60の発光部62と受光部63との間の隙間Sを研削砥石25bの進入側からエアカーテンで全幅に亘って遮蔽する。このため、ウェーハWの研削加工中に供給される研削水の噴霧と該噴霧に含まれる研削屑の光透過センサ60の隙間Sへの進入がエアカーテンによって阻止される。この結果、光透過センサ60の発光部62の発光面と受光部63の受光面に研削水や研削屑が付着することがなく、研削砥石25bの欠けの光学的な検出(受光部63の出力電圧Vの検出)が高精度に行われる。
【0042】
また、ウェーハWの研削加工中には、図1に示す厚み測定器30によってウェーハWの厚みがリアルタイムに測定される(図6のステップS5)。
【0043】
以上のように、ウェーハWの研削加工中に光透過センサ60に向けてエアが噴射される状態で、光透過センサ60の出力電圧Vが検出されると、図1及び図2に示す判断部100は、光透過センサ60の受光部63の出力電圧Vが予め設定された閾値以下であるか否かを判定する(図6のステップS6)。この判定の結果、光透過センサ60の受光部63の出力電圧Vが予め設定された閾値以下である場合(ステップS6:Yes)には、研削砥石25bに欠けは発生していないものと判断し、厚み測定器30によって測定されるウェーハWの厚みが所定の厚みに達したか否かを判定する(図6のステップS7)。この判定の結果、研削加工されているウェーハWの厚みが所定の厚みに達していない場合(ステップS7:No)には、ステップS2~S7の処理が繰り返される。
【0044】
他方、研削加工されているウェーハWの厚みが所定の厚みに達した場合(ステップS7:Yes)には、図1に示す垂直移動機構50によって研削砥石25bが上昇してウェーハWから離間し(図6のステップS8)、1枚のウェーハWに対する一連の研削加工が終了する(図6のステップS9)。
【0045】
ところで、図6のステップS6での判定の結果、光透過センサ60の受光部63の出力電圧Vが所定の閾値を超えている場合(ステップS6:No)には、判断部100は、研削砥石25bに欠けが発生しているものと判断し(ステップS10)、図1に示す垂直移動機構50によって研削砥石25bを上昇させてウェーハWから離す(ステップS11)。このように、研削加工中に研削砥石25bの欠けが検出されると、研削砥石25bをウェーハWから離間させるようにしたため、研削砥石25bの欠けによるウェーハWの割れが防がれる。
【0046】
その後、研削砥石25bの回転が停止され(図6のステップS12)、研削砥石25bが欠けのない新しいものと交換され(ステップS13)、処理はステップS2へと移行し、以後、交換された研削砥石25bによるウェーハWの研削が再開される。そして、ウェーハWが所定厚みになるまで研削されると(ステップS7:Yes)、研削砥石25bが上昇し(ステップS8)、ウェーハWに対する一連の研削加工が終了する(ステップS9)。
【0047】
以上のように、本実施形態においては、回転する研削砥石25bによるウェーハWの研削加工中にエア噴射ユニット70から光透過センサ60の発光部62と受光部63に向けてエアを噴射するようにしたため、研削砥石25bとウェーハWとの接触部(研削部)に供給されて飛散する研削水や該研削水に含まれる研削屑が光透過センサ60の発光部62と受光部63に付着することがなく、研削加工中の研削砥石25bの欠けを光透過センサ60によって光学的に高精度に検出することができる。したがって、研削加工中において研削砥石25bに欠けが発生した瞬間を検出することができ、研削砥石25bに欠けが発生した時点で研削加工を中止することによって、ウェーハWの割れを確実に防ぐことができる。なお、本実施形態では、研削砥石25bに欠けが検出されると、該研削砥石25bを上昇させてウェーハWから離間させた後に該研削砥石25bの回転を停止し、研削砥石25bを交換するようにしたが、これらの処理に代えてアラームを発して作業者に注意を促すようにしてもよい。
【0048】
ところで、以上の実施形態では、エア噴射ユニット70のノズル72を光透過センサ60の一方の側(研削砥石25bの隙間Sへの進入側)のみに配置したが、図7に示すように、エア噴射ユニット70のノズル72を光透過センサ60の両側(研削砥石25bの隙間Sへの進入側と隙間Sからの退出側)に配置し、光透過センサ60の発光部62と受光部63との間の隙間Sを、研削砥石25bの進入側と退出側の両側からエアカーテンで全幅に亘って遮蔽するようにしてもよい。このように、光透過センサ60の隙間Sを、研削砥石25bの進入側と退出側の両側からエアカーテンで全幅に亘って遮蔽すれば、周囲に飛散する研削水の噴霧や該噴霧に含まれる研削屑の光透過センサ60の発光部62と受光部63への付着を一層効果的に防ぐことができ、研削砥石25bの欠けを光学的に一層高精度に検出することができる。なお、図7においては、図4に示したものと同一要素には、同一符号を付している。
【0049】
また、図8及び図9に別形態に係るエア噴射ユニット80を示す。このエア噴射ユニット80は、エア供給源81と、光透過センサ60のホルダ61の発光部62と受光部63の近傍、具体的には、発光部62の発光面と受光部63の受光面の直下の幅方向中央に垂直に貫設された円孔状のノズル82を備えており、各ノズル82は、エア供給源81に接続されている。そして、各ノズル82の上面には、円孔状の噴射口82aがそれぞれ開口している。
【0050】
而して、ウェーハWの研削砥石25bによる研削加工においては、光透過センサ60によって研削砥石25bの欠けが光学的に検出されるとともに、エア噴射ユニット80のエア供給源81から各ノズル82へと供給されるエアが各ノズル82の噴射口82aから上方に向かって噴射され、これらのエアは、光透過センサ60の発光部62の発光面と受光部63の受光面に沿って上方に向かって流れる。このため、研削加工時に周囲に飛散する研削水の噴霧やこれに含まれる研削屑が光透過センサ60の発光部62の発光面と受光部63の受光面に付着することがなく、研削加工中における光透過センサ60による研削砥石25bの欠けの光学的な検出が高精度になされる。
【0051】
ここで、エア噴射ユニット80によって光透過センサ60の発光部62の発光面と受光部63の受光面に沿ってエアを流しながら、光透過センサ60によって研削砥石25bの欠けを光学的に検出している状態を図9に示すが、図9(a)は、光透過センサ60の発光部62から出射する測定光Lの大部分が隙間Sを通過する研削砥石25bによって遮られている状態を示し、図9(b)は、光透過センサ60の発光部62から出射する測定光Lが隣接する研削砥石25bの間を通過して受光部63に到達している状態を示している。
【0052】
なお、以上の実施形態では、被加工物としてウェーハを研削する研削装置に対して本発明を適用した例について説明したが、本発明は、ウェーハ以外の任意の被加工物を研削する研削装置に対しても同様に適用可能である。
【0053】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
1:研削装置、2:ベース、3:カバー、4,5:伸縮カバー、6:コラム、
10:チャックテーブル、10A:ポーラス部材、10a:保持面、11:配管、
12:吸引源、20:研削ユニット、21:ホルダ、22:スピンドルモータ、
23:スピンドル、24:マウント、25:研削ホイール、25a:基台、
25b:研削砥石、30:厚み測定器、31:第1プローブ、32:第2プローブ、
40:研削水供給ユニット、41:研削水供給源、42:配管、50:垂直移動機構、
51:昇降板、52:ガイドレール、53:ボールネジ、54:サーボモータ、
55:ブラケット、60:光透過センサ、61:ホルダ、62:発光部、63:受光部、
70:エア噴射ユニット、71:エア供給源、72:ノズル、72a:噴射口、
80:エア噴射ユニット、81:エア供給源、82:ノズル、82a:噴射口、
D:研削砥石の欠け、L:測定光、S:隙間、T:保護テープ、
V1,V2:開閉バルブ、W:ウェーハ(被加工物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9