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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153372
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】成膜装置及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20241022BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20241022BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20241022BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20241022BHJP
   H10K 71/16 20230101ALI20241022BHJP
【FI】
C23C14/24 U
C23C14/24 C
H01L21/68 R
H10K50/10
H10K59/10
H10K71/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067232
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】足立 将樹
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
5F131
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB08
3K107CC33
3K107CC45
3K107GG04
3K107GG28
3K107GG32
3K107GG33
3K107GG34
3K107GG54
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA62
4K029BB03
4K029BD01
4K029CA01
4K029DA03
4K029DB06
4K029DB23
4K029HA02
4K029HA03
4K029HA04
4K029JA01
4K029JA06
5F131AA03
5F131AA10
5F131AA33
5F131BA03
5F131CA01
5F131CA18
5F131DA02
5F131DA09
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA03
5F131EA13
5F131EA14
5F131EA15
5F131EA22
5F131EA23
5F131EA24
5F131EA25
5F131EB03
5F131EB11
5F131EB31
5F131EB63
5F131FA10
5F131FA17
5F131FA32
5F131FA33
5F131FA37
5F131FA39
5F131JA33
5F131KA14
5F131KA40
5F131KA72
5F131KB12
5F131KB32
5F131KB53
5F131KB54
5F131KB55
5F131KB56
(57)【要約】
【課題】成膜品質の低下を抑制する成膜装置を提供する。
【解決手段】成膜装置1は、基板8を保持する基板保持部231と、成膜材料を内部に収容し、基板保持部231に保持された基板8に向けて成膜物質を放出する成膜源101と、成膜源101を移動する移動機構と、基板保持部231に保持された基板8に対する成膜源101の相対的な位置関係を調整可能な相対位置調整部220と、相対的な位置関係に関する情報を検出する相対位置検出部103と、を備え、相対位置検出部の検出結果に基づいて相対的な位置関係を調整するように相対位置調整部103を制御する制御部400を更に備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持部と、
成膜材料を内部に収容し、前記基板保持部に保持された基板に向けて成膜物質を放出する成膜源と、
前記成膜源を移動する移動機構と、
前記基板保持部に保持された基板に対する前記成膜源の相対的な位置関係を調整可能な相対位置調整部と、
前記相対的な位置関係に関する情報を検出する相対位置検出部と、
を備え、
前記相対位置検出部の検出結果に基づいて前記相対的な位置関係を調整するように前記相対位置調整部を制御する制御部を更に備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記成膜源から成膜物質を放出する成膜動作において、前記成膜源を移動させながら、前記相対的な位置関係を逐次調整することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記相対的な位置関係が前記成膜源の移動前の基準位置関係となるように前記相対位置調整部を制御することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記基板保持部と前記成膜源が内部に配置されるチャンバーであって、前記成膜源を支持する床部を有するチャンバーを更に備え、
前記移動機構は、前記成膜源を前記床部に沿って移動させることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記相対的な位置関係に関する情報は、前記基板保持部に保持された基板に対する前記成膜源の相対角度を含むことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記相対位置検出部は、前記成膜源の角度変化を検出する第1角度検出センサーと、前記基板保持部に保持された基板の角度変化を検出する第2角度検出センサーと、を含むことを特徴とする請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記相対的な位置関係に関する情報は、前記基板保持部に保持された基板と前記成膜源との相対距離を含むことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記相対的な位置関係に関する情報は、前記基板保持部に保持された基板に対する前記成膜源の相対角度を含むことを特徴とする請求項7に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記基板保持部と前記成膜源との間に設けられる基準部材を更に備え、
前記相対位置検出部は、前記基板保持部に保持された基板と前記基準部材との相対距離を検出する複数の第1距離検出センサーと、前記成膜源と前記基準部材との相対距離を検出する複数の第2距離検出センサーと、を含むことを特徴とする請求項7に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記基準部材は、前記成膜源から放出される成膜物質に指向性を持たせるための開口が設けられた制限板であることを特徴とする請求項9に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記基板保持部と前記成膜源が内部に配置されるチャンバーであって、前記成膜源を支持する床部を有するチャンバーを更に備え、
前記相対位置検出部は、前記床部の変形を検出する変形検出センサーを含むことを特徴
とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項12】
前記相対位置調整部は、前記基板保持部に接続されて互いに独立して昇降可能に構成される複数の昇降部材を含み、
前記制御部は、前記複数の昇降部材を昇降させることで、前記基板保持部に支持される基板の姿勢と位置を変更して前記相対的な位置関係を調整することを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項13】
基板を保持する基板保持部と、成膜材料を内部に収容する成膜源と、前記成膜源を移動する移動機構と、前記基板保持部に保持された基板に対する前記成膜源の相対的な位置関係を調整可能な相対位置調整部と、前記相対的な位置関係を検出する相対位置検出部と、を備える成膜装置による成膜方法であって、
前記相対的な位置関係が変化した場合に前記相対位置調整部により前記相対的な位置関係を調整しながら、前記基板保持部に保持された基板に向けて前記成膜源から成膜物質を放出することを特徴とする成膜方法。
【請求項14】
前記移動機構により前記成膜源を移動させながら、且つ、前記基板に対する前記成膜源の相対角度が前記成膜源の移動開始前の角度となるように前記相対位置調整部により前記相対的な位置関係が逐次調整されることを特徴とする請求項13に記載の成膜方法。
【請求項15】
前記基板と前記成膜源との間の相対距離が前記成膜源の移動開始前の距離となるように前記相対位置調整部により前記相対的な位置関係が逐次調整されることを特徴とする請求項13又は14に記載の成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に成膜物質を成膜する成膜装置とその成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置(有機ELディスプレイ)は、スマートフォン、テレビ、自動車用ディスプレイ、VR HMD(Virtual Reality Head Mount Display)等、様々な分野で用いられている。有機EL素子の機能層及び電極層は、成膜装置内でそれぞれの層を構成する成膜物質が基板に向けて放出されて基板が成膜されることで形成される。
【0003】
高精度な成膜を行うためには、成膜動作時に基板と成膜源の相対距離や相対角度等が適切な値に制御されることが肝要である。特許文献1には、成膜材料を収容する成膜源(蒸着源)の角度変更手段と昇降手段を備え、基板の成膜面に対する成膜源の相対的な位置関係を制御する成膜装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-140669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の構成においては、予め基板と成膜源の相対的な位置関係を調整した上で成膜動作が実行される。このような構成では、成膜動作中に成膜装置や床が変形した場合に基板と成膜源の相対的な位置関係がずれて成膜品質が低下してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、成膜品質の低下を抑制する成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の成膜装置は、
基板を保持する基板保持部と、
成膜材料を内部に収容し、前記基板保持部に保持された基板に向けて成膜物質を放出する成膜源と、
前記成膜源を移動する移動機構と、
前記基板保持部に保持された基板に対する前記成膜源の相対的な位置関係を調整可能な相対位置調整部と、
前記相対的な位置関係に関する情報を検出する相対位置検出部と、
を備え、
前記相対位置検出部の検出結果に基づいて前記相対的な位置関係を調整するように前記相対位置調整部を制御する制御部を更に備えることを特徴とする。
また、本発明の成膜方法は、
基板を保持する基板保持部と、成膜材料を内部に収容する成膜源と、前記成膜源を移動する移動機構と、前記基板保持部に保持された基板に対する前記成膜源の相対的な位置関係を調整可能な相対位置調整部と、前記相対的な位置関係を検出する相対位置検出部と、を備える成膜装置による成膜方法であって、
前記相対的な位置関係が変化した場合に前記相対位置調整部により前記相対的な位置関係を調整しながら、前記基板保持部に保持された基板に向けて前記成膜源から成膜物質を
放出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、成膜品質の低下を抑制する成膜装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る成膜装置の模式的断面図である。
図2】第1実施形態に係る相対位置調整動作の説明図である。
図3】第1実施形態に係る成膜装置の制御フローである。
図4】第2実施形態に係る成膜装置の模式的断面図である。
図5】第2実施形態に係る成膜源とセンサーユニットの配置関係を示す図である。
図6】第2実施形態に係るマスクとセンサーユニットの配置関係を示す図である。
図7】第3実施形態に係る成膜装置の模式的断面図である。
図8】第3実施形態に係る直動ガイドとセンサーの配置関係を示す図である。
図9】電子デバイスの構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0011】
<第1実施形態>
まず、図1を参照して本発明の第1実施形態に係る成膜装置1について説明する。図1は、成膜装置1の模式的な正面断面図である。成膜装置1は、主にチャンバー2、成膜源部100、基板位置調整部200、磁石部300、制御部400により構成される。成膜装置1は、真空環境に保たれたチャンバー2内で基板8に向けて成膜源部100から蒸着物質を放出して真空蒸着による成膜(蒸着)を行う真空蒸着装置である。
【0012】
[チャンバー2]
チャンバー2は、チャンバー側壁3、チャンバー天板4、チャンバー底板5により構成され、成膜源部100が内部に配置される。これらの外壁部は溶接又はシール部材等によって互いに接続されており、チャンバー2は内部を真空環境に保つことができる。なお、ここでいう真空とは、通常の大気圧(典型的には1,023hPa)より低い圧力の気体で満たされた状態をいう。チャンバー2は、複数の支持台6によって下方から支持されている。支持台6は、設置する床に対して一部が据え付けされており、チャンバー2を床に対して固定している。
【0013】
[成膜源部100]
チャンバー2の床部(下部)を構成するチャンバー底板5には、成膜源部100が配置されている。成膜源部100は、成膜物質を放出する成膜源101と、成膜源101を移動可能に支持する直動ガイド102と、直動ガイド102を駆動して成膜源101を移動させる不図示の移動機構(成膜源駆動部)により構成される。成膜源101は成膜材料を内部に収容する。成膜材料が加熱されて蒸発することで、成膜物質が成膜源101から基板8に向けて放出される。直動ガイド102は、チャンバー底板5に沿って水平方向に直線的に移動可能に構成され、成膜源101をレールに沿って移動させる。移動機構は、モーター等の駆動源を含み、直動ガイド102を駆動して成膜源101を基板8や基板位置調整部200に対して水平方向に相対移動させる。以下、成膜源101の移動方向をX方向、X方向に直交する水平な方向をY方向、鉛直方向をZ方向とする。
【0014】
成膜源101より放出された成膜物質は、マスク7を介して基板8に成膜される。基板8及びマスク7は、成膜源部100に対して上方に位置するように基板位置調整部200に保持される。マスク7には金属性の薄い箔状のマスク箔が取付けされており、マスク箔によって覆われた基板8の領域は成膜物質が付着しないため、所望の成膜パターンを形成することができる。成膜源101による基板8を成膜可能な範囲は限られているため、成膜動作時には成膜源101は基板8に対して繰り返し直線移動しながら成膜物質を放出する。このように、基板8と成膜源101とを相対的に移動させながら成膜物質を基板8に向けて放出することで、基板8の全面が成膜される。
【0015】
成膜源101には、成膜源101の基準角度に対する角度検知が可能なセンサーユニット103が搭載されている。基準角度は、例えば成膜動作前の成膜源101の上面が水平面となす角である。センサーユニット103は、不図示のケーブルで制御部400と接続されている。センサーユニット103は、成膜源101の稼働状況に関わらず、制御部400に成膜源101の姿勢情報を逐次送信(フィードバック)可能に構成されている。センサーユニット103としては、公知の角度検知センサーを用いることができる。
【0016】
また、制御部400は不図示のケーブルによって基板位置調整部200の駆動部と接続されている。基板位置調整部200の駆動部は、制御部400からの信号を受取り、成膜源101の角度情報(姿勢情報)に基づいてマスク7及び基板8を所望の姿勢に変化させることが可能に構成されている。
【0017】
[基板位置調整部200]
基板位置調整部200は、チャンバー天板4上に設置され、基板8の位置や姿勢を調整する。基板位置調整部200は、基板8の水平方向位置(XY平面上の位置)を調整する第1調整部210と、基板8の鉛直方向位置(Z方向)を調整する第2調整部220と、マスク7を保持するマスク台231とにより構成される。基板8は、マスク台231によってマスク7を介して保持される。
【0018】
第1調整部210は、直動ガイド211a、211b、回転軸受212、駆動モーター213を含む。また、第1調整部210の上方には、第1調整部210と第2調整部220を連結する連結プレート214が配置されている。
【0019】
直動ガイド211aは、回転軸受212を介して連結プレート214を支持し、X方向に移動可能に構成されている。直動ガイド211bは、直動ガイド211aを下方から支持し、Y方向に移動可能に構成されている。直動ガイド211a、211bは、Z方向から見たときに連結プレート214の四辺近傍と重なるように配置されている。すなわち、直動ガイド211aと直動ガイド211bはねじれの位置にある。
【0020】
回転軸受212は、連結プレート214を支持し、Z方向を回転軸線としたθz方向に回転可能に構成されている。駆動モーター213は、連結プレート214をX方向及びY方向に移動し、θz方向に回転するための駆動源である。連結プレート214の位置や姿勢が調整されることで、第2調整部220を介してマスク7及び基板8の水平2軸と回転1軸の位置と姿勢が調整される。駆動モーター213は、直動ガイド211bの側面に取り付けられている。
【0021】
第2調整部220は、連結プレート214上に設置される昇降駆動部221、昇降駆動部221に支持される昇降プレート222、昇降プレート222に接続されて下方に延びる支持柱223を含む。支持柱223の先端部(下部)には、マスク台231が接続されている。
【0022】
昇降駆動部221は、Z方向に移動(昇降)可能に構成される複数の昇降部材であって、昇降プレート222と共に移動する複数の昇降部材を含む。複数の昇降部材は、互いに独立して昇降可能に構成されている。昇降部材の配置構成については特に限定されないが、昇降プレート222の四隅近傍に配置されると好適である。
【0023】
支持柱223は、昇降プレート222から下方に延伸するように配置される。支持柱223はチャンバー天板4に設けられた開口を通ってチャンバー2内部に進入している。チャンバー2内の真空環境を保つため、支持柱223とチャンバー天板4には伸縮可能なベローズ9が取付けられており、支持柱223とチャンバー天板4の間の隙間が封止されている。
【0024】
マスク台231は、支持柱223の先端部に取り付けられ、チャンバー2内で成膜源部100の上方に位置する。マスク台231は、マスク7を介して基板8を保持する基板保持部である。マスク台231はマスク7の外縁部を支持し、基板8の成膜動作を阻害しないように配置されている。
【0025】
マスク台231には、マスク台231の基準角度に対する角度検知が可能なセンサーユニット232が搭載されている。基準角度は、例えば成膜動作前のマスク台231のマスク7が載置される載置面が水平面となす角である。センサーユニット232は、マスク台231の姿勢変化(角度変化)を検知して基板8の姿勢変化を検知するためのセンサーである。このように、第1実施形態ではマスク7を介して基板8が載置されるマスク台231の姿勢変化を検知することで、間接的に基板8の姿勢変化が検知される。
【0026】
センサーユニット232は、不図示のケーブルで制御部400と接続されており、制御部400にマスク台231の姿勢情報を逐次送信可能に構成されている。第1実施形態では、第1角度検出センサーとしてのセンサーユニット232と、第2角度検出センサーとしてのセンサーユニット103が基板8と成膜源101の相対的な位置関係に関する情報として相対角度を検出する相対位置検出部を構成する。
【0027】
昇降駆動部221は、複数の昇降部材を同期駆動することで昇降プレート222をZ方向に昇降させることが可能である。また、各昇降部材が異なる移動量で駆動されることで、昇降プレート222はX方向を回転軸線としたθx方向やY方向を回転軸線としたθy方向に回転される。すなわち、昇降駆動部221により昇降プレート222はZ方向に移動し、X方向及びY方向を中心に回転可能である。そして、昇降プレート222の位置や姿勢が調整されることで、マスク7及び基板8の水平1軸と回転2軸の位置と姿勢が調整される。
【0028】
上述の通り、第1調整部210はマスク7及び基板8をX方向及びY方向に移動させ、θz方向に回転させる。また、第2調整部220はマスク7及び基板8をZ方向に移動させ、θx及びθy方向に回転させる。このような構成により、成膜装置1はマスク7及び基板8の水平3軸及び回転3軸の計6軸駆動が可能である。言い換えると、第1調整部210と第2調整部220が、基板8と成膜源101の相対距離や相対角度を含む相対的な位置関係を調整する相対位置調整部を構成する。
【0029】
[磁石部300]
磁石部300は、昇降プレート222上に設置されている。磁石部300は、磁石駆動部301と、磁石302と、磁性体で構成されるヨーク303と、磁石昇降軸304と、直動ガイド305により構成される。
【0030】
磁石昇降軸304は、チャンバー2の内部から外部までZ方向に延伸している。磁石昇降軸304は、チャンバー2の内部に配置される磁石302とヨーク303を介して接続している。磁石昇降軸304は、チャンバー2の外部に位置する直動ガイド305によってZ方向に移動可能に支持される。磁石駆動部301は、磁石302、ヨーク303及び磁石昇降軸304を直動ガイド305と共に昇降させる。成膜動作時には、磁石302は下降して基板8に上方から接近する。磁石302が基板8の上部近傍に配置されることで、成膜動作時に金属箔が磁石302に吸着されて基板8と金属箔とが密着状態となり、成膜物質が金属箔の裏側に回りこむことを防止できる。
【0031】
[制御部400]
制御部400は、成膜源部100と基板位置調整部200を動作して、成膜動作を実行する。成膜動作中、制御部400は、センサーユニット103とセンサーユニット232から成膜源101とマスク台231の角度情報をリアルタイムで収集する。
【0032】
[相対角度調整]
上述の通り、成膜装置1において成膜動作は成膜源101が移動しながら行われる。成膜源101が移動することで、チャンバー2に掛かる荷重点が変化するためチャンバー2は少なからず変形する。また、成膜装置1を支持する複数の支持台6のそれぞれに掛かる荷重も変化するため床の形状も変化しうる。チャンバー2のチャンバー底板5が変形や傾斜した場合、直動ガイド102のレールもチャンバー底板5に倣って変形、傾斜する。すると、直動ガイド102に支持される成膜源101の姿勢が成膜動作中に変化する。また、チャンバー底板5の変形や傾斜に伴ってチャンバー側壁3やチャンバー天板4が変形、傾斜すると、基板位置調整部200を介してチャンバー2内の基板8の姿勢も変化しうる。基板8や成膜源101の姿勢が変化し、基板8と成膜源101の相対角度が変化すると、所望の位置に向けて成膜物質が放出されなくなり成膜品質の低下を招くおそれがある。そこで第1実施形態では、成膜装置1は成膜動作中に基板8と成膜源101の相対角度が変化した場合に相対角度を調整するように構成されている。
【0033】
図2(a)~(c)を参照して、第1実施形態に係る基板8と成膜源101との相対角度の調整方法について説明する。図2(a)~(c)は、成膜動作中の基板8と成膜源101の相対角度の調整動作を示す。基板8と成膜源101の相対角度とは、例えば基板8の成膜面と成膜源101の上面がなす角度をいう。成膜源101の上面とは、例えば、成膜材料を内部に収容する坩堝の上端部の平面であり、成膜物質の放出方向と略直交する面である。
【0034】
図2(a)は、基板8と成膜源101の相対角度が所望の角度A1にある状態を示す。角度A1は、成膜動作時の理想の基板8と成膜源101の相対角度である。成膜動作中、センサーユニット103とセンサーユニット232によって基板8と成膜源101の角度情報はリアルタイムで検出され、制御部400はそれぞれの角度情報に基づいて基板8と成膜源101との相対角度を逐次算出する。
【0035】
図2(b)は、図2(a)の状態から成膜源101が移動し、チャンバー底板5が変形し、直動ガイド102のレールがチャンバー底板5に倣って変形した状態を示す。成膜動作中に成膜源101が移動することでチャンバー底板5が変形すると、成膜源101の姿勢が変化し、基板8と成膜源101の相対角度が角度A1から角度A2に変化する。そして、相対角度が変化したことは制御部400によりリアルタイムで検知される。
【0036】
図2(c)は、図2(b)の状態から相対角度が調整された状態を示す。基板8と成膜源101の相対角度が理想の角度A1から変化したことが検知されると、制御部400は相対角度を角度A1に戻すように基板位置調整部200を駆動して基板8の姿勢を変化さ
せる。基板8の姿勢は第2調整部220の昇降駆動部221の複数の昇降部材を同期駆動させることで調整可能である。このように、成膜動作中に成膜源101が移動しながら、基板8と成膜源101の相対角度が所望の角度となるように逐次調整されることで、成膜品質の低下が抑制される。
【0037】
[制御フロー]
次に、図3を参照して、本発明に係る相対角度調整動作について制御フローに沿って説明する。図3は、成膜動作中の相対角度調整動作のフローチャートである。
【0038】
成膜動作が開始されると、まず成膜源101の移動開始前の基板8と成膜源101の角度情報がセンサーユニット103とセンサーユニット232から制御部400へ発信される(S01)。制御部400は、これらの角度情報を基準角度として記憶する。以下、基板8と成膜源101のそれぞれの角度が基準角度であるときの基板8と成膜源101の相対角度を基準相対角度、基板8と成膜源101の相対的な位置関係を基準位置関係とする。
【0039】
次に、成膜源101が移動を開始する(S02)。そして、センサーユニット103は成膜源101の角度情報をリアルタイムで取得して制御部400に送信し、センサーユニット232は基板8の角度情報をリアルタイムで取得して制御部400に送信する(S03)。
【0040】
角度情報を取得した制御部400は、基板8と成膜源101の相対角度を算出し、基準相対角度との差分を算出して相対角度の変化量(以下、姿勢変化量)を取得する(S04)。第1実施形態においては、制御部400は回転3軸分の姿勢変化量を取得するよう構成されている。
【0041】
制御部400は相対角度が変化したことを検知すると、相対角度を所望の角度に調整するための補正量を算出する(S05)。補正値は、例えば、第2調整部220における昇降駆動部221の各昇降部材の昇降量として算出される。補正値を算出して相対角度の調整を実行するか否かについて、姿勢変化量に閾値を設けて判断するように構成してもよい。
【0042】
制御部400は、補正値を算出するとその補正値に基づいて基板位置調整部200を駆動する(S06)。そして、マスク台231と共にマスク7と基板8の姿勢が変化され、相対角度が基準相対角度に調整される。成膜動作が継続して実行されている間(S07でNO)は、上述のS03~S06の動作が繰り返し実行されて、基板8と成膜源101が基準位置関係となるように制御される。そして、成膜動作が終了すると(S07でYES)、角度情報の取得も終了される。
【0043】
以上より、第1実施形態の構成によれば、成膜動作中に基板8と成膜源101との相対角度を逐次調整するようフィードバック制御できるため、成膜物質を基板8の所望の位置に向けて放出でき、成膜品質の低下を抑制できる。また、成膜源101の移動時に基板8と成膜源101の相対角度をリアルタイムに補正できるため、想定外の外乱が発生した場合や経年による床の変形に対応できる点で、事前に情報を与えるフィードフォワード方式による姿勢補正制御に対して利点がある。
【0044】
なお、上述の実施形態は本発明の適用例の一つであり、本発明の適用にあたっては種々の変更が可能である。例えば、第1実施形態においては、基板8と成膜源101の相対的な位置関係として相対角度を逐次調整する構成とされていたが、基板8と成膜源101の相対距離が逐次調整される構成とされてもよい。成膜動作中に基板8と成膜源101の相
対距離が適切な距離に保たれる構成とすることによっても、成膜品質の低下を抑制できる。
【0045】
また、基板8と成膜源101の相対的な位置関係として、相対距離と相対角度の両方を検知、調整可能な構成としてもよい。例えば、第1実施形態の成膜源101に搭載するセンサーユニット103を角度検知機能に加えてマスク台231までの距離を測定可能な機能を有する構成とすることで、基板8と成膜源101の相対距離と相対角度が検知可能となる。このような場合、センサーユニット103がレーザー変位計などの非接触式の測長機器により構成されると好適である。成膜源101が移動することでチャンバー2が変形すると、成膜源部100が沈んでマスク台231と成膜源101の距離が変化しうる。センサーユニット103が距離測定機能を有していれば、成膜源101の移動時における成膜源101とマスク台231との相対距離をリアルタイムに測定し、基板8と成膜源101の相対距離を調整することが可能である。成膜動作中に制御部400が基板8と成膜源101の相対角度と相対距離を算出し、その相対角度と相対距離に基づいて補正量を算出して第2調整部220を駆動することで、基板8と成膜源101の相対角度と相対距離が逐次調整される。成膜動作中に基板8の成膜源101の相対角度と相対距離を逐次調整するフィードバック制御を実行可能な構成については、後述の第2実施形態や第3実施形態でより詳細に例示的に説明する。
【0046】
<第2実施形態>
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。第2実施形態は、成膜動作中に基板8と成膜源101の相対的な位置関係として相対距離及び相対角度を検知、調整する点で第1実施形態と異なる。以下、第2実施形態の説明において、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略し、第2実施形態の特徴的な構成についてのみ説明する。
【0047】
まず、図4を参照して第2実施形態に係る成膜装置1について説明する。図4は、成膜装置1の模式的な正面断面図である。以下、成膜装置1の第1実施形態と異なる構成についてのみ説明する。
【0048】
第2実施形態では、成膜装置1のチャンバー2内に基準板501が設けられている。基準板501は、基板8や成膜源101の位置や姿勢の変化を検知するための基準となる基準部材である。基準板501は成膜源101とマスク台231との間に配置され、成膜物質の放出方向に指向性を持たせるための開口が形成された制限板としても機能する。
【0049】
基準板501は、開口が形成される面が鉛直方向を向くように下方から支持部材502に支持される。支持部材502は、チャンバー底板5に形成された貫通穴503を通って、チャンバー2の内部から外部まで延伸して床に固定されている。基準板501がチャンバー2の変形等の影響を受けないようにするため、支持部材502はチャンバー2から独立した構造物として構成されている。チャンバー2内の真空環境を保つため、支持部材502とチャンバー底板5には伸縮可能なベローズ504が取付けられており、支持部材502とチャンバー底板5の間の隙間が封止されている。
【0050】
支持部材502の床への固定位置は、チャンバー2を支持する支持台6の床への固定位置から離れた位置とされることが望ましい。チャンバー2の重量により床が変形した場合に、支持部材502が受ける影響を抑えるためである。また、床の変形による影響を抑えるため、例えば、成膜装置1に面する壁に固定されて水平方向に延伸する支持部材502が、チャンバー側壁3に形成された貫通孔を通って基準板501を支持する構成としてもよい。
【0051】
第2実施形態に係る成膜装置1には、基板8と成膜源101の相対的な位置関係を検出する相対位置検出部として、成膜源101に複数のセンサーユニット601が搭載され、マスク7に複数のセンサーユニット602が取り付けられている。センサーユニット601とセンサーユニット602はそれぞれ基準板501との相対距離(第2実施形態ではZ方向距離)を検知可能に構成されている。センサーユニット601とセンサーユニット232は、不図示のケーブルで制御部400と接続されており、制御部400に検出結果を逐次送信する。
【0052】
次に、図5を参照してセンサーユニット601について詳細に説明する。図5は、図4のA-A断面図であり、基準板501を上方から見たときの成膜源101、センサーユニット601、基準板501の位置関係を示す図である。センサーユニット601は、対象物(本例では基準板501)との相対距離を検出可能な第1距離検出センサーである。センサーユニット601としては、例えばレーザー変位計や静電容量センサーを用いることができる。
【0053】
第2実施形態では、3つのセンサーユニット601が成膜源101の上面に取り付けられ、成膜源101から基準板501までのZ方向距離を検出する。成膜源101の姿勢変化を平面でとらえるために、3つのセンサーユニット601は成膜源101の中心に対して概等配に配置される。言い換えると、Z方向に見たときに3つのセンサーユニット601同士を結ぶ線分は、成膜源101の中心を重心とする正三角形を描く。
【0054】
図5には、成膜動作開始時の成膜源101の位置POS1と、成膜動作終了時の成膜源101の位置POS2が点線で示されている。成膜動作においては、成膜源101が位置POS1にあるときの各センサーユニット601の測定値が基準値として制御部400に送信されて記憶される。そして、成膜源101が移動を開始すると各センサーユニット601がリアルタイムに基準板501までの距離を測定し、制御部400へ測定結果を送信する。
【0055】
成膜源101がPOS1からPOS2まで移動する間、センサーユニット601は基準板501までの距離を測定し続け、制御部400へその値を送信し続ける。制御部400は測定値の基準値からの変化量を計算し、成膜源101の姿勢変化や移動を検知する。このように、制御部400は成膜動作中にセンサーユニット601の検出結果に基づいて、成膜源101の位置や姿勢の変化を検知する。
【0056】
次に、図6を参照してセンサーユニット602について詳細に説明する。図5は、図4のB-B断面図であり、基準板501を下方から見たときの基板8、マスク7、センサーユニット602、基準板501の位置関係を示す図である。センサーユニット602は、対象物(本例では基準板501)との相対距離を検出可能な第2距離検出センサーである。センサーユニット602としては、例えばレーザー変位計や静電容量センサーを用いることができる。
【0057】
第2実施形態では、3つのセンサーユニット602が成膜源101の上面に取り付けられ、マスク7から基準板501までのZ方向距離を検出する。すなわち、センサーユニット602は、基板8から基準板501までのZ方向距離を間接的に検出している。基板8の姿勢変化を平面でとらえるために、3つのセンサーユニット602は基板8の中心に対して概等配に配置される。言い換えると、Z方向に見たときに3つのセンサーユニット602同士を結ぶ線分は、基板8の中心を重心とする正三角形を描く。なお、センサーユニット602は、マスク7ではなくマスク台231に取り付けられてもよい。
【0058】
成膜動作においては、成膜源101が位置POS1にあるときの各センサーユニット6
02の測定値が基準値として、制御部400に送信されて記憶される。そして、成膜源101が移動を開始すると各センサーユニット602がリアルタイムに基準板501までの距離を測定し、制御部400へ測定結果を送信する。
【0059】
成膜源101がPOS1から成膜終了のPOS2まで移動する間に、センサーユニット602は基準板501までの距離を測定し続け、制御部400へその値を送信し続ける。制御部400は測定値の基準値からの変化量を計算し、基板8の姿勢変化や移動を検知する。このように、制御部400は成膜動作中にセンサーユニット602の検出結果に基づいて、基板8の位置や姿勢の変化を検知する。
【0060】
上述の通り、第2実施形態では、センサーユニット601が成膜源101の基準板501に対する相対的な位置関係を検出し、センサーユニット602が基板8の基準板501に対する相対的な位置関係を検出する。このような構成とすることで、これらの検出結果に基づいて制御部400が基板8と成膜源101の相対距離や相対角度などの相対的な位置関係に関する情報を検出可能となる。基板8と成膜源101の相対距離とは、例えば、基板8の下面(成膜面)から成膜源101の上面までの距離である。
【0061】
第2実施形態では、制御部400はセンサーユニット601とセンサーユニット602の検出結果に基づいて、基板8と成膜源101の相対角度と相対距離を成膜動作中にリアルタイムで算出する。そして、制御部400は基板8と成膜源101の相対角度や相対距離の変化量を逐次取得し、その変化量に基づいて相対角度や相対距離を所望の値に調整するための補正値を算出する。補正値は、例えば昇降駆動部221の各昇降部材の昇降量であり、制御部400は補正値に基づいて基板8と成膜源101の相対的な位置関係を調整する。このように、成膜動作中に相対角度や相対距離を逐次算出し、基板位置調整部200が基板8の位置や姿勢を逐次調整することで、基板8と成膜源101の相対的な位置関係が逐次調整される。
【0062】
以上より、第2実施形態の構成によれば、成膜動作中に基板8と成膜源101との相対距離や相対角度を逐次調整するようフィードバック制御できるため、成膜物質を基板8の所望の位置に向けて放出でき、成膜品質の低下を抑制できる。また、成膜源101の移動時に基板8と成膜源101の相対的な位置関係をリアルタイムに補正できるため、想定外の外乱が発生した場合や経年による床の変形に対応できる点で、事前に情報を与えるフィードフォワード方式による姿勢補正制御に対して利点がある。
【0063】
<第3実施形態>
次に、本発明に係る第3実施形態について説明する。第3実施形態は、成膜動作中に基板8と成膜源101の相対的な位置関係として相対距離及び相対角度を検知、調整する点で第1実施形態と異なる。以下、第3実施形態の説明において、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略し、第3実施形態の特徴的な構成についてのみ説明する。
【0064】
まず、図7を参照して第3実施形態に係る成膜装置1について説明する。図7は、成膜装置1の模式的な正面断面図である。以下、成膜装置1の第3実施形態と異なる構成についてのみ説明する。
【0065】
第3実施形態に係る成膜装置1には、基板8と成膜源101の相対的な位置関係を検出する相対位置検出部として、マスク7の上方にセンサーユニット701が配置され、チャンバー底板5の下方にセンサーユニット705が配置されている。センサーユニット701は、マスク7のZ方向位置や角度情報を検出して基板8の位置や姿勢の変化を検知するためのセンサーである。センサーユニット705は、チャンバー底板5のZ方向位置や角
度情報を検出して成膜源101の位置や姿勢の変化を検知するためのセンサーである。センサーユニット701とセンサーユニット705は、不図示のケーブルで制御部400と接続されており、制御部400に検出結果を逐次送信する。
【0066】
まず、センサーユニット701について詳細に説明する。センサーユニット701は、マスク7の上方に位置するようにチャンバー2の外部で支持部702に支持され、マスク7までのZ方向距離を測定する。センサーユニット701は、対象物(本例ではマスク7)との相対距離を検出可能な第1距離検出センサーである。第3実施形態では、3つのセンサーユニット701がマスク7の上方に配置され、マスク7までのZ方向距離を検出する。基板8の姿勢変化を平面でとらえるために、3つのセンサーユニット701は基板8の中心に対して概等配に配置されている。センサーユニット701としては、例えばレーザー変位計や静電容量センサーを用いることができる。
【0067】
支持部702は、チャンバー2と接触しない独立した構造物である。このような構成とすることで、チャンバー2が変形してもセンサーユニット701の位置や姿勢は変形せず、マスク7の位置や姿勢の変化を安定して検出できる。
【0068】
チャンバー天板4には覗き穴703が形成され、覗き穴703を上方から覆うようにビューポート704が設けられている。センサーユニット701は、ビューポート704を通じてマスク7までの距離を測定する。
【0069】
成膜動作においては、成膜源101の移動前の各センサーユニット701の測定値が基準値として、制御部400に送信されて記憶される。そして、成膜源101が移動を開始すると各センサーユニット701がリアルタイムにマスク7までの距離を測定し、制御部400へ測定結果を送信する。
【0070】
成膜源101が移動している間に、センサーユニット701はマスク7までの距離を測定し続け、制御部400へその値を送信し続ける。制御部400は測定値の基準値からの変化量を計算し、基板8を支持するマスク7の位置や姿勢の変化を検知する。このように、制御部400は成膜動作中にセンサーユニット701の検出結果に基づいて、間接的に基板8の位置や姿勢の変化を検知する。
【0071】
次に、図8を参照してセンサーユニット705について詳細に説明する。図8は、図7のC-C断面図であり、チャンバー2を下方から見たときの直動ガイド102、センサーユニット705の位置関係を示す図である。センサーユニット705は、対象物(本例ではチャンバー底板5)との相対距離を検出可能な第2距離検出センサーであり、チャンバー底板5の変形を検出する変形検出センサーである。センサーユニット705としては、例えばレーザー変位計や静電容量センサーを用いることができる。また、センサーユニット705としては非接触式の測定器に限られず、ダイヤルゲージなどの接触式の測定器を用いてもよい。
【0072】
センサーユニット705は、チャンバー底板5の下方の位置であって、Z方向に見たときに直動ガイド102と重なる位置に複数配置され、チャンバー底板5までのZ方向距離を測定する。センサーユニット705の配置数は多いほど成膜源101の姿勢情報を高精度に取得できる。高精度な成膜源101の姿勢変化検知のため、センサーユニット705は成膜源101の移動方向の幅の半分以下の間隔で配置され、且つ成膜源101の可動領域全域に配置されていることが望ましい。このように、成膜源101が移動することで起きるチャンバー底板5の変形をセンサーユニット705により検知することで、制御部400はその検知結果に基づいて間接的に成膜源101の位置や姿勢の変化を検知する。
【0073】
成膜動作においては、成膜源101の移動前の各センサーユニット705の測定値が基準値として、制御部400に送信されて記憶される。そして、成膜源101が移動を開始すると各センサーユニット705がリアルタイムにチャンバー底板5までの距離を測定し、制御部400へ測定結果を送信する。
【0074】
成膜源101が移動している間に、センサーユニット705はチャンバー底板5までの距離を測定し続け、制御部400へその値を送信し続ける。制御部400は測定値の基準値からの変化量を計算し、成膜源101を支持するチャンバー底板5の位置や姿勢の変化を検知する。このように、制御部400は成膜動作中にセンサーユニット705の検出結果に基づいて、間接的に成膜源101の位置や姿勢の変化を検知する。
【0075】
成膜源101の姿勢変化量としては、例えば、最も大きく傾斜度が変化したセンサーユニット705間の傾斜度の変化量を用いてもよい。又は、制御部400が成膜源101の稼働位置情報を取得して、成膜源101の位置に対応するセンサーユニット705の測定値に基づいて成膜源101の姿勢変化量を取得してもよい。
【0076】
センサーユニット705を支持する支持部材の床への固定位置は、チャンバー2を支持する支持台6の床への固定位置から離れた位置とされることが望ましい。チャンバー2の重量により床が変形した場合に、センサーユニット705が受ける影響を抑えるためである。
【0077】
上述の通り、第3実施形態では、センサーユニット701が基板8の位置や姿勢の変化を検知し、センサーユニット705が成膜源101の位置や姿勢の変化を検知する。このような構成とすることで、これらの検出結果に基づいて制御部400が基板8と成膜源101の相対距離や相対角度などの相対的な位置関係に関する情報を検出可能となる。
【0078】
第3実施形態では、制御部400はセンサーユニット701とセンサーユニット705の検出結果に基づいて、基板8と成膜源101の相対角度と相対距離を成膜動作中にリアルタイムで算出する。そして、制御部400は基板8と成膜源101の相対角度や相対距離の変化量を逐次取得し、その変化量に基づいて相対角度や相対距離を所望の値に調整するための補正値を算出する。補正値は、例えば昇降駆動部221の各昇降部材の昇降量であり、制御部400は補正値に基づいて基板8と成膜源101の相対的な位置関係を調整する。このように、成膜動作中に相対角度や相対距離を逐次算出し、基板位置調整部200が基板8の位置や姿勢を逐次調整することで、基板8と成膜源101の相対的な位置関係が逐次調整される。
【0079】
以上より、第3実施形態の構成によれば、成膜動作中に基板8と成膜源101との相対距離や相対角度を逐次調整するようフィードバック制御できるため、成膜物質を基板8の所望の位置に向けて放出でき、成膜品質の低下を抑制できる。また、成膜源101の移動時に基板8と成膜源101の相対的な位置関係をリアルタイムに補正できるため、想定外の外乱が発生した場合や経年による床の変形に対応できる点で、事前に情報を与えるフィードフォワード方式による姿勢補正制御に対して利点がある。
【0080】
更に、第3実施形態においては、センサーユニット701とセンサーユニット705のいずれもがチャンバー2の外部に設定されている。このような構成とすることで、チャンバー2の内部の真空環境の汚染を抑制するという利点がある。
【0081】
なお、本発明の構成は上述の構成に限られたものではなく、上述の実施形態に具現された発明と同一性を失わない範囲で種々の変更が可能である。また、上述の各実施形態の構成は、適宜組み合わせて使用しうる。例えば、第1実施形態のようにマスク台231に角
度検知センサーであるセンサーユニット232を設け、第3実施形態のようにチャンバー底板5の変形を検知する距離検知センサーであるセンサーユニット705を設けてもよい。このような構成としても、基板8と成膜源101の相対的な位置関係を検知し、逐次調整することができるため、チャンバー2や床の変形による成膜品質の低下を抑制できる。また上述の実施形態においては、基板8の位置や姿勢を変化させて基板8と成膜源101の相対的な位置関係を調整していたが、成膜源101の角度を変更可能な角度調整手段やZ方向の位置を調整可能な位置調整手段を設けて相対的な位置関係を調整してもよい。
【0082】
<電子デバイスの製造方法>
次に、上述の実施形態に係る成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成を示し、有機EL表示装置の製造方法を例示する。
【0083】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。図9(a)は有機EL表示装置800の全体図、図9(b)は1画素の断面構造を表している。
【0084】
図9(a)に示すように、有機EL表示装置800の表示領域801には、発光素子を複数備える画素802がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域801において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施例に係る有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子802R、第2発光素子802G、第3発光素子802Bの組み合わせにより画素802が構成されている。画素802は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組み合わせで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0085】
図9(b)は、図9(a)のD-D線における部分断面模式図である。画素802は、複数の発光素子からなり、各発光素子は、基板803上に、第1電極(陽極)804と、正孔輸送層805と、発光層806R、806G、806Bのいずれかと、電子輸送層807と、第2電極(陰極)808と、を有している。これらのうち、正孔輸送層805、発光層806R、806G、806B、電子輸送層807が有機層に当たる。また、本実施例では、発光層806Rは赤色を発する有機EL層、発光層806Gは緑色を発する有機EL層、発光層806Bは青色を発する有機EL層である。発光層806R、806G、806Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。
【0086】
また、第1電極804は、発光素子毎に分離して形成されている。正孔輸送層805と電子輸送層807と第2電極808は、複数の発光素子802R、802G、802Bで共通に形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極804と第2電極808とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極804間に絶縁層809が設けられている。更に、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層810が設けられている。
【0087】
図9(b)では正孔輸送層805や電子輸送層807は一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によっては、正孔ブロック層や電子ブロック層を備える複数の層で形成されてもよい。また、第1電極804と正孔輸送層805との間には第1電極804から正孔輸送層805への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、第2電極808と電子輸送層807の間にも電子注入層が形成することもできる。
【0088】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
【0089】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)及び第1電極804が形成された基板(マザーガラス)803を準備する。
【0090】
第1電極804が形成された基板803の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極804が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層809を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0091】
絶縁層809がパターニングされた基板803を粘着部材が配置された基板キャリアに載置する。粘着部材によって、基板803は保持される。第1の有機材料成膜装置に搬入し、反転後、正孔輸送層805を、表示領域の第1電極804の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層805は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層805は表示領域801よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0092】
次に、正孔輸送層805までが形成された基板803を第2の有機材料成膜装置に搬入する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板803の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層806Rを成膜する。
【0093】
発光層806Rの成膜と同様に、第3の有機材料成膜装置により緑色を発する発光層806Gを成膜し、更に第4の有機材料成膜装置により青色を発する発光層806Bを成膜する。発光層806R、806G、806Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域801の全体に電子輸送層807を成膜する。電子輸送層807は、3色の発光層806R、806G、806Bに共通の層として形成される。
【0094】
電子輸送層807まで形成された基板を金属性蒸着材料成膜装置で移動させて第2電極808を成膜する。
【0095】
その後プラズマCVD装置に移動して保護層810を成膜して、基板803への成膜工程を完了する。反転後、粘着部材を基板803から剥離することで、基板キャリアから基板803を分離する。その後、裁断を経て有機EL表示装置800が完成する。
【0096】
絶縁層809がパターニングされた基板803を成膜装置に搬入してから保護層810の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本実施例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気又は不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【符号の説明】
【0097】
1…成膜装置、2…チャンバー、8…基板、101…成膜源、103…センサーユニット(相対位置検出部)、220…マスク保持部(相対位置調整部)、400…制御部
図1
図2
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図5
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図7
図8
図9