(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153501
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241022BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20241022BHJP
【FI】
H01L21/304 601Z
B23K26/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067436
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 彬
(72)【発明者】
【氏名】田中 圭
【テーマコード(参考)】
4E168
5F057
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168CA06
4E168CB23
4E168DA02
4E168EA19
4E168JA12
4E168JA13
5F057AA05
5F057BA19
5F057BB03
5F057BB07
5F057BB09
5F057BB12
5F057CA16
5F057DA22
5F057DA31
(57)【要約】
【課題】研削時のデバイス破損を抑制するとともにデバイスの取り個数を増加させることができるウエーハの加工方法を提供すること。
【解決手段】ウエーハの加工方法は、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザービームを、ウエーハの外周縁に沿って形成された面取り部と表面または裏面を構成する平坦面との境界領域に沿って裏面側から照射することで、内部に環状の改質層を形成する環状改質層形成ステップ3と、環状改質層形成ステップ3を実施した後、裏面を研削して所定の厚みまで薄化する薄化ステップと、を備え、環状改質層形成ステップ3では、境界領域より径方向外側の面取り部にはレーザービームが照射されず、境界領域より径方向内側の平坦面にはレーザービームが照射されるように、レーザービームの断面形状を半円形状、欠円形状、三日月形に欠けた円形状、または楕円形状に成形した状態でウエーハに対してレーザービームを集光照射する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周縁に沿って面取り部が形成されたウエーハを加工するウエーハの加工方法であって、
該ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザービームを、該面取り部と、該ウエーハの表面または裏面を構成する平坦面と、の境界領域に沿って、該ウエーハの該裏面側から照射することで、該ウエーハの内部に環状の改質層を形成する環状改質層形成ステップと、
該環状改質層形成ステップを実施した後、該ウエーハの該裏面を研削して所定の厚みまで薄化する薄化ステップと、を備え、
該環状改質層形成ステップでは、
該境界領域より径方向外側の面取り部には該レーザービームが照射されず、該境界領域より径方向内側の該平坦面には該レーザービームが照射されるように、該レーザービームの断面形状を半円形状、欠円形状、三日月形に欠けた円形状、または楕円形状に成形した状態で該ウエーハに対して該レーザービームを集光照射する
ことを特徴とする、ウエーハの加工方法。
【請求項2】
該環状改質層形成ステップを実施する前に、
該ウエーハの該外周縁から、該面取り部と該平坦面との該境界領域までの距離を測定する測定ステップを更に備える
ことを特徴とする、請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【請求項3】
該薄化ステップを実施する前に、
該ウエーハの該表面側を、該ウエーハとは異なる支持ウエーハに貼り合わせる貼り合わせステップを更に備える
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のデバイスチップの低背化や高集積化に伴い、3次元積層された半導体ウエーハの開発が進んでいる。例えばTSV(Through-Silicon Via)ウエーハは、貫通電極によって2つのチップ同士の貼り合わせによる両チップの電極の接続を可能にしている。
【0003】
こうしたウエーハは、基台となる支持ウエーハ(シリコンやガラス、セラミックス等)に貼り合わされた状態で研削して薄化される。通常、ウエーハは、外周縁が面取りされているため、極薄に研削されると外周縁が所謂ナイフエッジとなり、研削中にエッジの欠けが発生しやすい。これにより、デバイスにまで欠けが延長してデバイスの破損に繋がる可能性がある。
【0004】
ナイフエッジの対策として、ウエーハを貼り合わせてから、デバイスの外周縁に沿ってレーザービームを照射して環状の改質層を形成することで、その研削中に発生するウエーハのエッジ欠けがデバイスに伸展することを抑制するエッジトリミング方法も考案された(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、外周縁に沿って改質層を形成する際の加工位置は、デバイスの取り個数増加のためにもできるだけ外周縁に近い位置が好ましい。しかしながら、外周縁に沿って形成された面取り部は曲面で構成されているため、ウエーハの内部における改質層の形成や加工位置の制御が困難になるという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、研削時のデバイス破損を抑制するとともにデバイスの取り個数を増加させることができるウエーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウエーハの加工方法は、外周縁に沿って面取り部が形成されたウエーハを加工するウエーハの加工方法であって、該ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザービームを、該面取り部と、該ウエーハの表面または裏面を構成する平坦面と、の境界領域に沿って、該ウエーハの該裏面側から照射することで、該ウエーハの内部に環状の改質層を形成する環状改質層形成ステップと、該環状改質層形成ステップを実施した後、該ウエーハの該裏面を研削して所定の厚みまで薄化する薄化ステップと、を備え、該環状改質層形成ステップでは、該境界領域より径方向外側の面取り部には該レーザービームが照射されず、該境界領域より径方向内側の該平坦面には該レーザービームが照射されるように、該レーザービームの断面形状を半円形状、欠円形状、三日月形に欠けた円形状、または楕円形状に成形した状態で該ウエーハに対して該レーザービームを集光照射することを特徴とする。
【0009】
また、本発明のウエーハの加工方法は、該環状改質層形成ステップを実施する前に、該ウエーハの該外周縁から、該面取り部と該平坦面との該境界領域までの距離を測定する測定ステップを更に備えてもよい。
【0010】
また、本発明のウエーハの加工方法は、該薄化ステップを実施する前に、該ウエーハの該表面側を、該ウエーハとは異なる支持ウエーハに貼り合わせる貼り合わせステップを更に含んでもよい。
【発明の効果】
【0011】
本願発明は、研削時のデバイス破損を抑制するとともにデバイスの取り個数を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態に係るウエーハの加工方法の加工対象のウエーハの一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るウエーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図3に示す貼り合わせステップの一状態を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4の貼り合わせステップの後のウエーハの一部を拡大して示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図3に示す環状改質層形成ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
【
図7】
図7は、
図6の環状改質層形成ステップにおけるウエーハの一部を拡大して示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図6の環状改質層形成ステップにおけるレーザービームの断面形状の一例を示す平面図である。
【
図9】
図9は、
図6の環状改質層形成ステップにおけるレーザービームの断面形状の他の一例を示す平面図である。
【
図10】
図10は、比較例の環状改質層形成ステップにおけるウエーハの一部を拡大して示す断面図である。
【
図11】
図11は、
図3に示す薄化ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0014】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係るウエーハ10の加工方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態に係るウエーハ10の加工方法の加工対象のウエーハ10の一例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示すII-II線に沿う断面図である。
【0015】
図1および
図2に示すウエーハ10は、シリコン(Si)、サファイア(Al
2O
3)、ガリウムヒ素(GaAs)または炭化ケイ素(SiC)等を基板11とする円板状の半導体ウエーハ、光デバイスウエーハ等のウエーハであり、実施形態において、シリコンウエーハである。ウエーハ10は、
図2に示すように、外周縁12に沿って面取り部が形成されている。
【0016】
ウエーハ10は、デバイス面である表面13が、例えば、支持ウエーハ30(
図4等参照)と貼り合わされて貼り合わせウエーハを構成した後、裏面14側が研削されて薄化される。実施形態のウエーハ10では、表面13側の面取り部より、裏面14側の面取り部の方が、範囲が広く緩やかである。ウエーハ10の裏面14は、面取り部の傾斜面15と、平坦面16と、を含む。
【0017】
ウエーハ10は、
図1に示すように、基板11の表面13側にデバイス領域17と、デバイス領域17を囲繞する外周領域18と、を含む。デバイス領域17は、基板11の表面13に格子状に設定された複数の分割予定ライン19と、分割予定ライン19によって区画された各領域に形成されたデバイス20と、を有している。外周領域18は、全周に亘ってデバイス領域17を囲繞し、かつデバイス20が形成されていない領域である。なお、デバイス領域17と外周領域18との境界は、裏面14側の面取り部の傾斜面15と平坦面16との境界領域21と略同一の位置に位置するものとする。
【0018】
デバイス20は、実施形態において、3DNANDフラッシュメモリを構成し、電極パッドと、電極パッドに接続した貫通電極とを備える。貫通電極は、基板11が薄化されてデバイス20がウエーハ10から個々に分割された際に、基板11の裏面14側に貫通する。すなわち、実施形態のウエーハ10は、個々に分割されたデバイス20が貫通電極を有する所謂TSVウエーハである。なお、本発明のウエーハ10は、実施形態のような貫通電極を有するTSVウエーハに限定されず、貫通電極のないデバイスウエーハであってもよい。
【0019】
図3は、実施形態に係るウエーハ10の加工方法の流れを示すフローチャートである。
図3に示すように、実施形態のウエーハ10の加工方法は、貼り合わせステップ1と、測定ステップ2と、環状改質層形成ステップ3と、薄化ステップ4と、を備える。ウエーハ10の加工方法は、外周縁12に沿って面取り部が形成されたウエーハ10の面取り部(傾斜面15)と平坦面16との境界領域21に沿って環状の改質層23を形成した後、裏面14側を研削して所定の厚み25まで薄化するとともに外周領域18を除去する加工方法である。
【0020】
(貼り合わせステップ1)
図4は、
図3に示す貼り合わせステップ1の一状態を示す斜視図である。
図5は、
図4の貼り合わせステップ1の後のウエーハ10の一部を拡大して示す断面図である。貼り合わせステップ1は、ウエーハ10の表面13側を、ウエーハ10とは異なる支持ウエーハ30に貼り合わせるステップである。
【0021】
図4に示す支持ウエーハ30は、シリコンやガラス、セラミックス等を基板31とし、かつウエーハ10と同径である円板状のサブストレートウエーハであるが、本発明ではウエーハ10と同様のTSVウエーハであってもよい。支持ウエーハ30は、ウエーハ10と同様に、外周縁32に沿って面取り部が形成されている。また、実施形態の支持ウエーハ30は、ウエーハ10に貼り合わせる側の面である一方の面33側の面取り部より、他方の面34側の面取り部の方が、範囲が広く緩やかである。
【0022】
貼り合わせステップ1では、まず、
図4に示すように、ウエーハ10の表面13と、支持ウエーハ30の一方の面33とを、間隔をあけて対向させる。次に、
図5に示すように、ウエーハ10の表面13と支持ウエーハ30の一方の面33とを、貼り合わせる。これにより、貼り合わせウエーハを形成する。
【0023】
この際、ウエーハ10と支持ウエーハ30との間に接合層を設ける場合は、ウエーハ10の表面13と支持ウエーハ30の一方の面33とのうちの一方に接合層を積層してから、ウエーハ10の表面13と支持ウエーハ30の一方の面33とを、接合層を介して貼り合わせる。なお、接合層は、基材層の表裏面に粘着材層が積層された両面テープであってもよいし、酸化膜でもよいし、樹脂等を含む接着剤が塗布されることにより形成されるものでもよい。また、接合層を用いず、ウエーハ10と支持ウエーハ30とを直接接合してもよい。
【0024】
図3に示すフローチャートのとおり、実施形態の貼り合わせステップ1は、環状改質層形成ステップ3の前に実施されるが、測定ステップ2を実施した後、環状改質層形成ステップ3を実施する前に実施されてもよい。また、貼り合わせステップ1は、環状改質層形成ステップ3を実施した後、薄化ステップ4を実施する前に実施されてもよい。
【0025】
なお、実施形態のウエーハ10の加工方法では、ウエーハ10の表面13側に支持ウエーハ30を貼り合わせた状態において、ウエーハ10の各加工を実施するが、本発明で加工するウエーハ10は、必ずしも貼り合わせウエーハを構成するウエーハ10に限定されず、単独のウエーハ10を加工してもよい。すなわち、貼り合わせステップ1は、実施されなくてもよい。
【0026】
(測定ステップ2)
測定ステップ2は、ウエーハ10の外周縁12から、面取り部(傾斜面15)と平坦面16との境界領域21までの距離22(
図5参照)を測定するステップである。測定ステップ2は、環状改質層形成ステップ3を実施する前に実施される。実施形態の測定ステップ2は、貼り合わせステップ1を実施した後に実施されるが、貼り合わせステップ1を実施する前に実施されてもよい。
【0027】
測定ステップ2は、例えば、後述の環状改質層形成ステップ3を実施するレーザー加工装置40の保持テーブル41上に支持ウエーハ30を介してウエーハ10を保持した状態で実施される(
図6参照)。測定ステップ2では、まず、外周縁12および境界領域21の位置を検知し、次いで、外周縁12と境界領域21との距離22を算出する。外周縁12の位置は、例えば、撮像ユニットを用いて検知する。外周縁12の位置は、ウエーハ10の中心が保持テーブル41の軸心に正確に位置合わせされている前提で、既知のウエーハ10の直径に基づいて算出してもよい。なお、ウエーハ10の中心が保持テーブル41の軸心に正確に位置合わせされていなくても、ウエーハ10の外周縁12の3点以上の座標位置からウエーハ10の中心および直径を算出して、保持テーブル41の軸心からの位置ずれを検知することができるため、算出したウエーハ10の中心を基準に以降の加工を実施することは可能である。
【0028】
境界領域21の位置を検知する方法としては、例えば、撮像ユニットを用いる方法が挙げられる。撮像ユニットは、例えば、後述の環状改質層形成ステップ3を実施するレーザー加工装置40に搭載され、ウエーハ10を撮像するための撮像ユニットである。撮像ユニットでは、ウエーハ10の裏面14側を、裏面14に垂直な方向から、平坦面16に焦点を合わせた状態で撮像する。この際、面取り部の傾斜面15では、焦点が合わなくなるため、焦点が合う部分と合わない部分との境界を境界領域21として認識することができる。
【0029】
また、境界領域21の位置を検知する方法としては、例えば、非接触式高さセンサを用いる方法が挙げられる。非接触式高さセンサは、後述の環状改質層形成ステップ3を実施するレーザー加工装置40に搭載され、ウエーハ10の厚みを測定するための非接触式高さセンサである。非接触式高さセンサでは、ウエーハ10の裏面14の高さを測定する。この際、面取り部の傾斜面15では、平坦面16に対して高さが低くなるため、高さが略一定である部分と高さが低くなる部分との境界を境界領域21として認識することができる。
【0030】
外周縁12と境界領域21との距離22の算出は、例えば、後述の環状改質層形成ステップ3を実施するレーザー加工装置40に搭載され、各部を制御する制御装置が実施してもよい。また、境界領域21の検知と、外周縁12と境界領域21との距離22の算出とは、ウエーハ10の周方向の1点において実施してもよいが、複数点で実施して平均化してもよい。
【0031】
(環状改質層形成ステップ3)
図6は、
図3に示す環状改質層形成ステップ3の一状態を一部断面で示す側面図である。
図7は、
図6の環状改質層形成ステップ3におけるウエーハ10の一部を拡大して示す断面図である。
図8は、
図6の環状改質層形成ステップ3におけるレーザービーム43の断面形状の一例を示す平面図である。
図9は、
図6の環状改質層形成ステップ3におけるレーザービーム43の断面形状の他の一例を示す平面図である。環状改質層形成ステップ3は、ウエーハ10に対して透過性を有する波長のレーザービーム43を、面取り部(傾斜面15)と平坦面16との境界領域21に沿って、ウエーハ10の裏面14側から照射することで、ウエーハ10の内部に環状の改質層23を形成するステップである。
【0032】
ここで、改質層23とは、レーザービーム43が照射されることによって、密度、屈折率、機械的強度またはその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味する。改質層23は、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、およびこれらの領域が混在した領域等である。改質層23は、ウエーハ10の他の部分よりも機械的な強度等が低い。
【0033】
実施形態の環状改質層形成ステップ3では、レーザー加工装置40によるステルスダイシングによって、ウエーハ10の内部に環状の改質層23を形成する。レーザー加工装置40は、保持テーブル41と、レーザービーム照射ユニット42と、保持テーブル41とレーザービーム照射ユニット42とを相対的に移動させる不図示の移動ユニットと、支持ウエーハ30を介して保持テーブル41に保持されたウエーハ10を撮像する不図示の撮像ユニットと、を備える。
【0034】
保持テーブル41は、支持ウエーハ30を介してウエーハ10を保持面(上面)に保持し、垂直な軸心回りに回動可能である。レーザービーム照射ユニット42は、支持ウエーハ30を介して保持テーブル41に保持されたウエーハ10に対してレーザービーム43を照射する。レーザービーム照射ユニット42は、例えば、レーザー発振器と、レーザー発振器から出射されたレーザービーム43を保持テーブル41に支持ウエーハ30を介して保持されたウエーハ10に集光照射する集光器と、レーザー発振器から集光器までレーザービーム43を伝搬する各種の光学部品と、を有する。
【0035】
また、レーザービーム照射ユニット42は、レーザー発振器と集光器との間に、ウエーハ10に照射されるレーザービーム43の断面形状を成形する成形手段を有する。成型手段は、例えば、波面を制御するLCOS(Liquid-Crystal on Silicon)等の空間光変調器や、レーザービーム43の一部を遮光するピンホール等を含む。レーザービーム43は、例えば、
図8に示す半円形状(照射領域45)や、
図9に示す欠円形状(照射領域45-1)に成形される。
【0036】
環状改質層形成ステップ3では、ウエーハ10の裏面14側からレーザービーム43を照射し、面取り部(傾斜面15)と平坦面16との境界領域21に沿ってウエーハ10の内部に環状の改質層23を形成する。なお、レーザービーム43は、ウエーハ10に対して透過性を有する波長のレーザービームであり、例えば、赤外線(Infrared Rays;IR)である。
【0037】
環状改質層形成ステップ3では、まず、支持ウエーハ30の他方の面34側を保持テーブル41の保持面(上面)に吸引保持する。なお、測定ステップ2を保持テーブル41上で実施した場合、本手順は省略される。次に、ウエーハ10とレーザービーム照射ユニット42の集光器との位置合わせを行う。具体的には、不図示の移動ユニットによって、保持テーブル41をレーザービーム照射ユニット42の下方の加工領域まで移動させる。
【0038】
次に、不図示の撮像ユニットでウエーハ10を撮影しアライメントすることで、レーザービーム照射ユニット42の照射部をウエーハ10の裏面14の面取り部(傾斜面15)と平坦面16との境界領域21に向けて鉛直方向に対向させた後、レーザービーム43の集光点44を、ウエーハ10の内部に設定する。この際、レーザービーム43の照射領域45において、半円形状または欠円形状の弦となる欠部46、46-1がウエーハ10の径方向外側に向くように位置合わせする。なお、
図7に示すように、集光点44の位置は、境界領域21より若干ウエーハ10の径方向内側に設定してもよい。
【0039】
環状改質層形成ステップ3では、次に、保持テーブル41を垂直な軸心回りに回転させながら、レーザービーム照射ユニット42からレーザービーム43を、ウエーハ10の裏面14側から照射する。このように、レーザービーム43の集光点44をウエーハ10の外周縁12から所定距離内側の境界領域21に位置付けた状態で、境界領域21に沿って環状に照射することで、ウエーハ10の内部に環状の改質層23を形成する。
【0040】
レーザービーム43の照射によって形成された改質層23からは、クラック24が伸展し、ウエーハ10の内部から表面13に対して垂直な側面を有する円筒形状の分割起点が形成される。なお、環状改質層形成ステップ3では、改質層23から伸展したクラック24が、表面13に表出するように、レーザービーム43を照射することが好ましい。なお、ウエーハ10の表面13に対して垂直とは、伸展したクラック24全体を平面に近似した近似平面の垂直面に対する傾きが、±5度以内、好ましくは±2度以内であることを示す。
【0041】
環状改質層形成ステップ3では、レーザービーム43の集光点44の高さを、ウエーハ10の厚さ方向に変更して複数回レーザービーム43を照射する、すなわち、一つの集光点44を有するレーザービーム43をウエーハ10の境界領域21に沿って一周照射した後、集光点44の高さを、ウエーハ10の厚さ方向に変更して、複数回同様にレーザービーム43を照射することで、環状、かつウエーハ10の表面13に対して垂直な方向に複数の改質層23を形成してもよい。あるいは、ウエーハ10の厚さ方向に離れた複数の集光点44を有するレーザービーム43を照射することで、ウエーハ10の表面13に対して垂直な方向に複数の改質層23を形成してもよい。
【0042】
また、上記説明では、
図8および
図9に示すように、レーザービーム43を半円形状または欠円形状に成形する例を挙げたが、レーザービーム43の照射領域45、45-1が、円形に対して外周縁12側の一部が欠けた形状であれば、他の形状でも構わない。すなわち、レーザービーム43の照射領域45、45-1が境界領域21より外周縁12側に存在せず、かつレーザービーム43の光軸ができる限り境界領域21に近いことが好ましい。したがって、例えば、
図8に示す照射領域45は、真円から同径の半円を欠いた半円形状であり、
図9に示す照射領域45-1は、真円から同径の弓形を欠いた欠円形状であるが、真円から三日月形状を欠いた形状であってもよい。あるいは、ウエーハ10の径方向に短軸を有する楕円形状でもよい。
【0043】
ここで、環状改質層形成ステップ3の比較例について説明する。
図10は、比較例の環状改質層形成ステップ3におけるウエーハ10の一部を拡大して示す断面図である。比較例の環状改質層形成ステップ3では、ウエーハ10の裏面14側に照射されるレーザービーム43-1の断面形状が真円形状である。
【0044】
図10に示す例では、断面形状が真円形状のレーザービーム43-1が、面取り部(傾斜面15)に照射されないように、境界領域21より径方向内側に集光点44-1を位置づけている。
図10に示す集光点44-1の位置は、
図7に示す実施形態の集光点44の位置より径方向内側である。このため、形成される改質層23より内側の領域であるデバイス領域17は、実施形態と比較して小さくなるため、デバイス20の取り個数が減少してしまう。
【0045】
例えば、断面形状が真円形状のレーザービーム43-1の集光点44-1を
図7に示す実施形態の集光点44の位置と同一の位置に設定して改質層23を形成する場合、裏面14側に照射されるレーザービーム43-1の一部は、境界領域21より径方向外側の傾斜面15にも照射される。このように曲面に入射させると、レーザービーム43-1の集光の制御が難しくなり、改質層23の形成位置が意図せずずれたり、不安定な改質層23が形成されたりして、デバイス領域17側にクラック24が伸展してしまう可能性がある。
【0046】
(薄化ステップ4)
図11は、
図3に示す薄化ステップ4の一状態を一部断面で示す側面図である。
図12は、
図11の薄化ステップ4の後のウエーハ10の一部を拡大して示す断面図である。薄化ステップ4は、環状改質層形成ステップ3を実施した後に実施される。薄化ステップ4は、ウエーハ10の裏面14を研削して所定の厚み25まで薄化するステップである。
【0047】
実施形態の薄化ステップ4では、研削装置50によって、ウエーハ10の裏面14を研削して所定の厚み25まで薄化する。研削装置50は、保持テーブル51と、研削ユニット52と、保持テーブル51と研削ユニット52とを相対的に移動させる不図示の移動ユニットと、を備える。
【0048】
保持テーブル51は、保持面(上面)で支持ウエーハ30を介してウエーハ10を吸引保持し、鉛直な軸心回りに回転する。研削ユニット52は、回転軸部材であるスピンドル53と、スピンドル53の下端に取り付けられた研削ホイール54と、研削ホイール54の下面に装着される研削砥石55と、不図示の研削水供給ユニットと、を備える。スピンドル53および研削ホイール54は、保持テーブル51の軸心と平行な回転軸で回転する。研削ホイール54の直径は、少なくともウエーハ10の半径より大きい。
【0049】
薄化ステップ4では、まず、支持ウエーハ30の他方の面34側を保持テーブル51の保持面(上面)に吸引保持する。次に、支持ウエーハ30を介して保持テーブル51に保持されたウエーハ10と研削ホイール54との位置合わせを行う。具体的には、不図示の移動ユニットによって、保持テーブル51を研削ホイール54の下方の加工領域まで移動させ、研削砥石55とウエーハ10の裏面14側とを対向させる。
【0050】
次に、保持テーブル51を軸心回りに回転させた状態で、研削ホイール54を軸心回りに回転させる。不図示の研削水供給ユニットによって研削水を加工点に供給するとともに、研削ホイール54の研削砥石55を保持テーブル51に所定の送り速度で近付けることによって、研削砥石55でウエーハ10の裏面14側を研削し、
図12に示す所定の厚み25までウエーハ10を薄化する。この際、ウエーハ10の改質層23より外周縁12側の領域(外周領域18)は、研削負荷により除去される。
【0051】
以上説明したように、実施形態のウエーハ10の加工方法は、外周領域18を除去する分割起点となる環状の改質層23をウエーハ10の内部に形成する。ここで、改質層23を形成するためのレーザービーム43が照射される照射領域45、45-1は、外周縁12近傍であるため、外周縁12の面取り部、すなわち傾斜面15に設定される可能性がある。
【0052】
傾斜面15に対してレーザービーム43を照射すると、照射領域でのウエーハ10の厚みが一定ではないため、形成される改質層23の高さ位置が意図せずずれる可能性がある。また、曲面である傾斜面15に対してレーザービーム43が入射することで乱反射し、安定的に改質層23が形成できない可能性がある。
【0053】
これに対し、実施形態では、環状改質層形成ステップ3において、ウエーハ10の裏面14側に照射するレーザービーム43の断面形状を、半円形状、欠円形状、三日月形に欠けた円形状、または楕円形状にしている。すなわち、面取り部にはレーザービーム43が照射されないようにレーザービーム43を成形した状態で、面取り部(傾斜面15)と平坦面16との境界領域21に沿ってレーザービーム43を照射する。
【0054】
これにより、面取り部にレーザービーム43が照射された際にウエーハ10内部に形成される可能性のある不安定な改質層23やクラック24の影響を排除し、安定的に改質層23およびクラック24を形成することができる。また、レーザービーム43の光軸を、境界領域21近傍に設定できるので、改質層23およびクラック24を境界領域21近傍に形成でき、デバイス20の破損を抑制しつつ、デバイス20の取り個数の増加を実現できるという効果を奏する。
【0055】
なお、本発明は、上記実施形態および変形例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0056】
例えば、薄化ステップ4における外周領域18の除去を促進するため、外周領域18を複数の領域に予め分断するレーザー加工を薄化ステップ4より前に実施してもよい。この場合、例えば、ステルスダイシングにより、外周領域18に放射状の改質層を形成することによって、外周領域18を放射状に分割してもよい。
【0057】
あるいは、外力を付与することによって、外周領域18を除去してもよい。外力は、例えば、外周領域18を上方から押圧するまたは外周領域18を持ち上げることによるせん断方向への外力や、ローラによる破砕等、機械的な外力でもよいし、超音波による振動や、外周領域18への液体および固体の少なくともいずれかを吹き付けた際のこれらが衝突する力、ウエーハ10の研削仕上げ面に貼り付けたエキスパンドテープを拡張することによる放射方向への外力であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 ウエーハ
11 基板
12 外周縁
13 表面
14 裏面
15 傾斜面
16 平坦面
17 デバイス領域
18 外周領域
19 分割予定ライン
20 デバイス
21 境界領域
22 距離
23 改質層
24 クラック
25 厚み
30 支持ウエーハ
43、43-1 レーザービーム
44、44-1 集光点