IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人産業技術総合研究所の特許一覧 ▶ 富士電機株式会社の特許一覧

特開2024-153517超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法
<>
  • 特開-超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法 図1
  • 特開-超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法 図2
  • 特開-超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法 図3
  • 特開-超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法 図4
  • 特開-超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法 図5
  • 特開-超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法 図6
  • 特開-超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法 図7
  • 特開-超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法 図8
  • 特開-超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法 図9
  • 特開-超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法 図10
  • 特開-超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法 図11
  • 特開-超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法 図12
  • 特開-超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法 図13
  • 特開-超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法 図14
  • 特開-超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法 図15
  • 特開-超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法 図16
  • 特開-超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法 図17
  • 特開-超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153517
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20241022BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20241022BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241022BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H01L29/78 652H
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652T
H01L29/78 658A
H01L29/78 658E
H01L29/78 655A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067498
(22)【出願日】2023-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】竹中 研介
(72)【発明者】
【氏名】俵 武志
(72)【発明者】
【氏名】原田 信介
(57)【要約】
【課題】n型の半導体層の形成の際に、面内のキャリア濃度分布の影響を小さくできる超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】超接合炭化珪素半導体装置は、炭化珪素半導体基板1と、第1導電型の第1半導体層17と、第1導電型の第1カラム領域4と第2導電型の第2カラム領域3とが繰り返し交互に配置された並列pn領域21と、第1導電型の第2半導体層5と、第2導電型の第3半導体層6と、第1導電型の第1半導体領域7と、トレンチ16と、第2導電型の第2半導体領域14と、第2導電型の第3半導体領域15と、ゲート電極10と、第1電極12と、を備える。第1カラム領域4および第2カラム領域3は、不純物としてリンを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の炭化珪素半導体基板と、
前記炭化珪素半導体基板のおもて面に設けられた第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に設けられた、第1導電型の第1カラム領域と第2導電型の第2カラム領域とが前記おもて面に平行な面において繰り返し交互に配置された並列pn領域と、
前記並列pn領域の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に設けられた第1導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に設けられた第2導電型の第3半導体層と、
前記第3半導体層の内部に選択的に設けられた前記第1半導体層よりも不純物濃度の高い第1導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域および前記第3半導体層を貫通して前記第2半導体層に達するトレンチと、
前記第2半導体層内に設けられた、前記トレンチの底部と接する第2導電型の第2半導体領域と、
前記第2半導体層の表面層の、前記トレンチの間に設けられた、第2導電型の第3半導体領域と、
前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
前記第1半導体領域および前記第3半導体層に接する第1電極と、
を備え、
前記第1カラム領域および前記第2カラム領域は、不純物としてリンを含むことを特徴とする超接合炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記第1カラム領域は、前記炭化珪素半導体基板側の下部第1カラム領域と、前記第2半導体層側の上部第1カラム領域とから構成され、
前記下部第1カラム領域は、不純物として窒素を含み、前記上部第1カラム領域および前記第2カラム領域は、不純物としてリンを含むことを特徴とする請求項1に記載の超接合炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記第1半導体層は、不純物としてリンを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の超接合炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
第1導電型の炭化珪素半導体基板のおもて面に第1導電型の第1半導体層を形成する第1工程と、
前記第1半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に、第1導電型の第1カラム領域と第2導電型の第2カラム領域とが前記おもて面に平行な面において繰り返し交互に配置された並列pn領域を形成する第2工程と、
前記並列pn領域の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に第1導電型の第2半導体層を形成する第3工程と、
前記第2半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に第2導電型の第3半導体層を形成する第4工程と、
前記第2半導体層内に第2導電型の第2半導体領域を形成する第5工程と、
前記第2半導体層の表面層に第2導電型の第3半導体領域を形成する第6工程と、
前記第3半導体層の内部に選択的に前記第1半導体層よりも不純物濃度の高い第1導電型の第1半導体領域を形成する第7工程と、
前記第1半導体領域および前記第3半導体層を貫通して、前記第2半導体層に達し、底面が前記第2半導体領域と接するトレンチを形成する第8工程と、
前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する第9工程と、
前記第1半導体領域および前記第3半導体層に接する第1電極を形成する第10工程と、
を含み、
前記第2工程では、前記第1半導体層のおもて面に炭化珪素でできたエピタキシャル膜を形成し、前記エピタキシャル膜の表面から全面に、リンイオンを注入することにより、第1導電型の半導体領域を形成し、前記半導体領域内に、第2導電型となる不純物イオンを選択的に注入することにより、第2導電型の半導体領域を形成することを複数回繰り返すことで、並列pn構造を形成することを特徴とする超接合炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2工程では、前記第1半導体層のおもて面に炭化珪素でできたエピタキシャル膜を形成し、前記エピタキシャル膜の表面から全面に、前記炭化珪素半導体基板側の下部領域に、窒素イオンを注入し、前記エピタキシャル膜の表面から全面に、リンイオンを注入することにより、第1導電型の半導体領域を形成し、前記半導体領域内に、第2導電型となる不純物イオンを選択的に注入することにより、第2導電型の半導体領域を形成することを1回または複数回繰り返すことで、前記並列pn構造を形成することを特徴とする請求項4に記載の超接合炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1工程では、前記炭化珪素半導体基板のおもて面に前記エピタキシャル膜を形成し、前記エピタキシャル膜の表面から全面に、リンイオンを注入することにより前記第1半導体層を形成することを特徴とする請求項4または5に記載の超接合炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記エピタキシャル膜は、炭化珪素でできたノンドープ膜または、窒素原子を1×1013~1015/cm3でドーピングした炭化珪素でできた超低濃度膜であることを特徴とする請求項4または5に記載の超接合炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1半導体層は、不純物としてリンと窒素を含むことを特徴とする請求項4または5に記載の超接合炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の炭化珪素MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)では、エピタキシャル成長とイオン注入とを組み合わせることで、ゲート酸化膜と炭化珪素との高品質な界面を作り低抵抗を実現している。さらに、ゲート酸化膜に高電界が印加されないような構造とすることで高耐圧、高信頼性の半導体装置を実現している(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
例えば、低抵抗を実現するため、ゲート酸化膜と炭化珪素との高品質な界面を作り、JFET(Junction Field Effect Transistor)部分の不純物濃度を高くすることで低抵抗を実現している。また、ゲート電極下に電界を緩和させるためのp型領域を形成することで高耐圧、高信頼性を実現している。また、コンタクト領域の下に深いp型領域を形成し、ドレイン電極に性能限界以上の高電圧が印加された時に発生するアバランシェ電流をゲート電極近傍に流れなくすることで、ゲート電極の負荷を小さくしている。また、コンタクト領域の下の深いp型領域により、内蔵ダイオードを動作させる時でも大電流がゲート電極近傍に流れなくすることで、ゲート電極の負荷を小さくし信頼性を向上させている。
【0004】
ここで、通常のn型チャネル縦型MOSFETでは、半導体基板内に形成される複数の半導体層のうち、n型伝導層(ドリフト層)が最も高抵抗の半導体層である。このn型ドリフト層の電気抵抗が縦型MOSFET全体のオン抵抗に大きく影響を与えている。縦型MOSFET全体のオン抵抗を低減するためには、n型ドリフト層の厚みを薄くし電流経路を短くすることで実現できる。
【0005】
しかし、縦型MOSFETは、オフ状態において空乏層が高抵抗のn型ドリフト層まで広がることで、耐圧を保持する機能も有している。このため、オン抵抗低減のためにn型ドリフト層を薄くした場合、オフ状態における空乏層の広がりが短くなるため、低い印加電圧で破壊電界強度に達しやすくなり、耐圧が低下する。一方、縦型MOSFETの耐圧を高くするためには、n型ドリフト層の厚みを増加させる必要があり、オン抵抗が増加する。このようなオン抵抗と耐圧の関係をトレードオフ関係と呼び、トレードオフ関係にある両者をともに向上させることは一般的に難しい。このオン抵抗と耐圧とのトレードオフ関係は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)やバイポーラトランジスタ、ダイオード等の半導体装置においても同様に成立することが知られている。
【0006】
上述のような問題を解決する半導体装置の構造として、超接合(SJ:Super Junction:スーパージャンクション)構造が知られている(例えば、下記特許文献2、3参照)。図14は、従来の超接合炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
【0007】
図14では、超接合炭化珪素半導体装置として、超接合構造を有するMOSFET(以下、SJ-MOSFET)を示す。図14に示すように、SJ-MOSFET150は、高不純物濃度のn+型炭化珪素半導体基板101に、n型バッファ層117およびn型ドリフト層102を成長させたウエハを材料とする。このウエハ表面からn型ドリフト層102を貫きn+型炭化珪素半導体基板101に到達しないp型カラム領域103が設けられている。図14では、p型カラム領域103はn+型炭化珪素半導体基板101に到達しないが、n+型炭化珪素半導体基板101に到達してもよい。
【0008】
また、n型ドリフト層102中に、基板主面に垂直な方向に延び、かつ基板主面に平行な面において狭い幅を有するp型領域(p型カラム領域103)とn型領域(p型カラム領域103に挟まれたn型ドリフト層102の部分、以下n型カラム領域104と称する)とを基板主面に平行な面において交互に繰り返し並べた並列構造(以降、並列pn構造121と称する)を有している。並列pn構造121を構成するp型カラム領域103およびn型カラム領域104は、n型ドリフト層102に対応して不純物濃度を高めた領域である。並列pn構造121では、p型カラム領域103およびn型カラム領域104に含まれる不純物濃度と面積との積である不純物量を略等しくチャージバランスをとることで、オフ状態において擬似的にノンドープ層を作り出して高耐圧化を図ることができる。
【0009】
図14において、符号105、106、107、108、109、110、111、112、114、115および116は、それぞれn型高濃度領域、p型ベース層、n+型ソース領域、p+型コンタクト領域、ゲート絶縁膜、ゲート電極、層間絶縁膜、ソース電極、第1p+型ベース領域、第2p+型ベース領域およびトレンチを表している。
【0010】
また、第一導電型ドリフト領域と第二導電型仕切り領域とを交互に配置した並列pn層を備える超接合半導体素子において、第一導電型ドリフト領域の不純物がリンである超接合半導体素子が記載されている(例えば、下記特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2017/064949号
【特許文献2】国際公開第2013/0179820号
【特許文献3】特開2009-130106号公報
【特許文献4】特開2006-100862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
超接合炭化珪素半導体装置の製造方法では、炭化珪素(SiC)は不純物元素がほとんど拡散されないため、並列pn構造121をエピタキシャル成長とイオン注入とを組み合わせることで形成している。例えば、SJ-MOSFET150は、以下のように製造される。図15図18は、従来の超接合炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【0013】
まず、n型の単結晶4H-SiC(四層周期六方晶の炭化珪素)でできたn+型炭化珪素基板101を用意する。そして、このn+型炭化珪素基板101の第1主面上に、n型バッファ層117、第1n型ドリフト層102aをエピタキシャル成長させる。ここまでの状態が図15に記載される。
【0014】
次に、第1n型ドリフト層102aの表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口部を有するイオン注入用マスク122を例えばSiO2膜(以降、酸化膜と表記)で形成する。そして、アルミニウムイオン(以下、Alイオン)を、酸化膜の開口部に注入し、第1p型カラム領域103aを形成する。ここまでの状態が図16に記載される。
【0015】
次に、第1n型ドリフト層102aのおもて面側に、窒素原子をドーピングしながら炭化珪素でできた、第2n型ドリフト層102bをエピタキシャル成長させる。ここまでの状態が図17に記載される。
【0016】
次に、第2n型ドリフト層102bの表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口部を有するイオン注入用マスク122を酸化膜で形成する。そして、Alイオンを、酸化膜の開口部に注入し、第2p型カラム領域103bを形成する。ここまでの状態が図18に記載される。
【0017】
次に、図17のエピタキシャル成長と図18のイオン注入の工程を所定回繰り返し、p型カラム領域103およびn型カラム領域104を形成する。この後、エピタキシャル成長によりn型高濃度領域105を形成し、イオン注入により第1p+型ベース領域114および第2p+型ベース領域115を形成する。第1p型カラム領域103aと第2p型カラム領域103bは、p型カラム領域103の一部になり、第1n型ドリフト層102aと第2n型ドリフト層102bはn型カラム領域104の一部となる。
【0018】
次に、n型高濃度領域105の表面上に、アルミニウム等のp型不純物をドーピングしたp型ベース層106を形成する。次に、p型ベース層106の表面上に、n+型ソース領域107およびp+型コンタクト領域108を形成する。次に、イオン注入を行った領域にアニール処理を行い、活性化処理を実施する。
【0019】
次に、トレンチ116、ゲート絶縁膜109、ゲート電極110、層間絶縁膜111、ソース電極112、ソース電極パッド(不図示)、裏面電極(不図示)およびドレイン電極パッド(不図示)を形成する。以上のようにして、図14に示すSJ-MOSFET150が完成する。
【0020】
このように、従来の超接合炭化珪素半導体装置は、n型の単結晶4H-SiCのn型ドリフト層102の一部に、周期的に一定の深さでAlイオンなどのp型ドーパントの注入を行い、p型カラム領域103とn型カラム領域104を形成することで作製(製造)している。
【0021】
しかしながら、n型の半導体層(第1n型ドリフト層102a、第2n型ドリフト層102b)にn型の不純物のドーピングでキャリア濃度を制御したSiCエピタキシャル膜を用いると、エピタキシャル成長時の基板の反りや温度分布やガス流量分布などの影響によりキャリア濃度分布が大きくなるという課題がある。
【0022】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、n型の半導体層の形成の際に、面内のキャリア濃度分布の影響を小さくできる超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる超接合炭化珪素半導体装置は、次の特徴を有する。第1導電型の炭化珪素半導体基板のおもて面に第1導電型の第1半導体層が設けられる。前記第1半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に、第1導電型の第1カラム領域と第2導電型の第2カラム領域とが前記おもて面に平行な面において繰り返し交互に配置された並列pn領域が設けられる。前記並列pn領域の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に第1導電型の第2半導体層が設けられる。前記第2半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に第2導電型の第3半導体層が設けられる。前記第3半導体層の内部に選択的に前記第1半導体層よりも不純物濃度の高い第1導電型の第1半導体領域が設けられる。前記第1半導体領域および前記第3半導体層を貫通して前記第2半導体層に達するトレンチが設けられる。前記第2半導体層内に、前記トレンチの底部と接する第2導電型の第2半導体領域が設けられる。前記第2半導体層の表面層の、前記トレンチの間に、第2導電型の第3半導体領域が設けられる。前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介してゲート電極が設けられる。前記第1半導体領域および前記第3半導体層に接する第1電極が設けられる。前記第1カラム領域および前記第2カラム領域は、不純物としてリンを含む。
【0024】
また、この発明にかかる超接合炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1カラム領域は、前記炭化珪素半導体基板側の下部第1カラム領域と、前記第2半導体層側の上部第1カラム領域とから構成され、前記下部第1カラム領域は、不純物として窒素を含み、前記上部第1カラム領域および前記第2カラム領域は、不純物としてリンを含むことを特徴とする。
【0025】
また、この発明にかかる超接合炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1半導体層は、不純物としてリンを含むことを特徴とする。
【0026】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる超接合炭化珪素半導体装置の製造方法は、次の特徴を有する。まず、第1導電型の炭化珪素半導体基板のおもて面に第1導電型の第1半導体層を形成する第1工程を行う。次に、前記第1半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に、第1導電型の第1カラム領域と第2導電型の第2カラム領域とが前記おもて面に平行な面において繰り返し交互に配置された並列pn領域を形成する第2工程を行う。次に、前記並列pn領域の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に第1導電型の第2半導体層を形成する第3工程を行う。次に、前記第2半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に第2導電型の第3半導体層を形成する第4工程を行う。次に、前記第2半導体層内に第2導電型の第2半導体領域を形成する第5工程を行う。次に、前記第2半導体層の表面層に第2導電型の第3半導体領域を形成する第6工程を行う。次に、前記第3半導体層の内部に選択的に前記第1半導体層よりも不純物濃度の高い第1導電型の第1半導体領域を形成する第7工程を行う。次に、前記第1半導体領域および前記第3半導体層を貫通して、前記第2半導体層に達し、底面が前記第2半導体領域と接するトレンチを形成する第8工程を行う。次に、前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する第9工程を行う。次に、前記第1半導体領域および前記第3半導体層に接する第1電極を形成する第10工程を行う。前記第2工程では、前記第1半導体層のおもて面に炭化珪素でできたエピタキシャル膜を形成し、前記エピタキシャル膜の表面から全面に、リンイオンを注入することにより、第1導電型の半導体領域を形成し、前記半導体領域内に、第2導電型となる不純物イオンを選択的に注入することにより、第2導電型の半導体領域を形成することを複数回繰り返すことで、前記並列pn構造を形成する。
【0027】
また、この発明にかかる超接合炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第2工程では、前記第1半導体層のおもて面に炭化珪素でできたエピタキシャル膜を形成し、前記エピタキシャル膜の表面から全面に、前記炭化珪素半導体基板側の下部領域に、窒素イオンを注入し、前記エピタキシャル膜の表面から全面に、リンイオンを注入することにより、第1導電型の半導体領域を形成し、前記半導体領域内に、第2導電型となる不純物イオンを選択的に注入することにより、第2導電型の半導体領域を形成することを1回または複数回繰り返すことで、前記並列pn構造を形成することを特徴とする。
【0028】
また、この発明にかかる超接合炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第1工程では、前記炭化珪素半導体基板のおもて面に前記エピタキシャル膜を形成し、前記エピタキシャル膜の表面から全面に、リンイオンを注入することにより前記第1半導体層を形成することを特徴とする。
【0029】
また、この発明にかかる超接合炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記エピタキシャル膜は、炭化珪素でできたノンドープ膜または、窒素原子を1×1013~1015/cm3でドーピングした炭化珪素でできた超低濃度膜であることを特徴とする。
【0030】
また、この発明にかかる超接合炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第1半導体層は、不純物としてリンと窒素を含むことを特徴とする。
【0031】
上述した発明によれば、n型の半導体層の形成の際に、Pイオン注入を用いることにより、エピタキシャル成長により形成する場合よりも面内のキャリア濃度分布が改善できる。また、n型カラム領域へのイオン注入ダメージの総量を増やすことができる。また、Nイオンや、Alイオンよりも質量が重いPイオンをイオン注入することで、イオン注入ダメージの総量が増大してライフタイムが更に短縮する。これにより、インバータ等の回路で、部品点数やモジュールサイズの削減をするために、還流ダイオードとしてSiC SJ-MOSFETのボディダイオードを使用する際に、ドリフト層へのキャリア蓄積量の低減によるスイッチング損失の低減効果や、ドリフト層の電子・ホール密度の低減による通電劣化の抑制効果が得られる。
【発明の効果】
【0032】
本発明にかかる超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法によれば、n型の半導体層の形成の際に、面内のキャリア濃度分布の影響を小さくできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施の形態1にかかる超接合炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
図2】実施の形態1にかかる超接合炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その1)。
図3】実施の形態1にかかる超接合炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その2)。
図4】実施の形態1にかかる超接合炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その3)。
図5】実施の形態1にかかる超接合炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その4)。
図6】実施の形態1にかかる超接合炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その5)。
図7】実施の形態1にかかる超接合炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その6)。
図8】実施の形態1にかかる超接合炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その7)。
図9】実施の形態1にかかる超接合炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その8)。
図10】実施の形態1にかかる超接合炭化珪素半導体装置の製造方法においてPイオンとAlイオンを注入した領域のPとAlの濃度を示すグラフである。
図11】実施の形態2にかかるSiC中でのNイオンとAlイオンとPイオンの平均飛程のシミュレーション結果を示すグラフである。
図12】実施の形態2にかかる超接合炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
図13】実施の形態2にかかる並列pn構造のドーパント濃度プロファイルのシミュレーション結果である。
図14】従来の超接合炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
図15】従来の超接合炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その1)。
図16】従来の超接合炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その2)。
図17】従来の超接合炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その3)。
図18】従来の超接合炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その4)。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。+および-を含めたnやpの表記が同じ場合はばらつきを含め近い濃度であることを示し濃度が同等とは限らない。半導体の導電型の表記にはnやpの英語の小文字を使用する。不純物元素として窒素(N)やリン(P)が議論されるが、元素は英語の大文字で表記して区別する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。そして、同じまたは同等との記載は製造におけるばらつきを考慮して5%以内まで含むとするのがよい。
【0035】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1にかかる超接合炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。本発明にかかる超接合炭化珪素半導体装置について、SJ-MOSFET50を例に説明する。図1に示すSJ-MOSFET50は、炭化珪素からなる半導体基体(炭化珪素基体:半導体チップ)のおもて面(後述するp型ベース領域6側の面)側にMOS(Metal Oxide Semiconductor)ゲートを備えたSJ-MOSFET50である。図1では、2つの単位セル(素子の機能単位)のみを示し、これらに隣接する他の単位セルを図示省略する。
【0036】
図1に示すように、実施の形態1にかかるSJ-MOSFET50は、n+型炭化珪素基板(第1導電型の炭化珪素半導体基板)1の第1主面(おもて面)、例えば(0001)面(Si面)、にn型バッファ層(第1導電型の第1半導体層)17が堆積され、n型バッファ層の表面に並列pn構造21が設けられている。
【0037】
+型炭化珪素基板1は、例えば窒素(N)がドーピングされた炭化珪素単結晶基板である。並列pn構造21は、p型カラム領域3およびn型カラム領域4を含む。n型カラム領域4は、素子の多数キャリアの電子を導電させるので、n型ドリフト層2と呼ぶこともできる。n型カラム領域4の、n+型炭化珪素基板1側に対して反対側の表面層に選択的に、n型高濃度領域(第1導電型の第2半導体層)5が設けられている。n型高濃度領域5は、n+型炭化珪素基板1よりも低く、n型カラム領域4より高い不純物濃度の高濃度n型ドリフト層である。n型高濃度領域5は、キャリアの広がり抵抗を低減させる、いわゆる電流拡散層(Current Spreading Layer:CSL)である。
【0038】
並列pn構造21の、n+型炭化珪素基板1側に対して反対側の表面側には、p型ベース層(第2導電型の第3半導体層)6が設けられている。以下、n+型炭化珪素基板1と、n型バッファ層17と、並列pn構造21と、n型高濃度領域5と、p型ベース層6とを併せて炭化珪素半導体基体とする。並列pn構造21より上部が素子構造であり、図1ではトレンチ型MOSFETの素子を例示している。
【0039】
n型バッファ層17は、n+型炭化珪素基板1と同程度の不純物濃度のバッファ層である。n型バッファ層17は、ノンドープまたは超低濃度(1×1013~1015/cm3程度)の窒素をドーピングしたエピタキシャル膜22(図2参照)にn型となるP(リン)イオンを注入することで形成される。このため、n型バッファ層17には、不純物としてリンを含む。n型バッファ層17の形成の際に、Pイオン注入を用いることにより、窒素をドーピングしてエピタキシャル成長により形成する場合よりも面内のキャリア濃度分布が改善できる。n型バッファ層17内で電子-ホールの再結合を促進し、n+型炭化珪素基板1に注入されるホール密度を抑えることで、三角・帯状積層欠陥の発生を効果的に抑制できる。
【0040】
SJ-MOSFET50には、並列pn構造21が設けられている。並列pn構造21は、n型カラム領域(第1導電型の第1カラム)4とp型カラム領域(第2導電型の第2カラム)3とが、n+型炭化珪素基板1のおもて面に平行な面において交互に繰り返し配置されている。n型カラム領域4は、n型バッファ層17の表面から、n型高濃度領域5に達するように設けられている。
【0041】
また、並列pn構造21のチャージバランスとして、p型カラム領域3の幅とp型カラム領域3の不純物濃度との積(不純物量)が、n型カラム領域4の幅とn型カラム領域4の不純物濃度との積(不純物量)にほぼ等しくなっている。具体的に±5%以内にしている。このため、並列pn構造21は、低オン抵抗と高耐圧特性との両方の特性が同時に得られる構造として知られている。なお、図1においては並列pn構造21の中央に点線を付しているがこれは図9で後述するように例えば2層で形成することを示すためである。もちろん、並列pn構造21は1層で形成してもよいし、2層以上で形成してもよい。
【0042】
図1に示すように、n+型炭化珪素基板1の第2主面(裏面、すなわち炭化珪素半導体基体の裏面)には、裏面電極(不図示)が設けられている。裏面電極は、ドレイン電極を構成する。裏面電極の表面には、ドレイン電極パッド(不図示)が設けられている。
【0043】
炭化珪素半導体基体の第1主面側(p型ベース層6側)には、トレンチ構造が形成されている。具体的には、トレンチ16は、p型ベース層6のn+型炭化珪素基板1側に対して反対側(炭化珪素半導体基体の第1主面側)の表面からp型ベース層6を貫通してn型高濃度領域5に達する。トレンチ16の内壁に沿って、トレンチ16の底部および側壁にゲート絶縁膜9が形成されており、トレンチ16内のゲート絶縁膜9の内側にゲート電極10が形成されている。ゲート絶縁膜9によりゲート電極10が、n型高濃度領域5およびp型ベース層6と絶縁されている。ゲート電極10の一部は、トレンチ16の上方から後述するソース電極12側に突出してもよい。
【0044】
n型高濃度領域5の内部には、第1p+型ベース領域(第2導電型の第2半導体領域)14および第2p+型ベース領域(第2導電型の第3半導体領域)15がそれぞれ選択的に設けられている。第1p+型ベース領域14は、トレンチ16の底面および底面コーナー部のうち少なくとも底面を覆う。トレンチ16の底面コーナー部とは、トレンチ16の底面と側壁との境界である。第2p+型ベース領域15は、トレンチ16の間に設けられ、n型高濃度領域5のp型ベース層6側の表面から、第1p+型ベース領域14と同じ深さまで設けられている。
【0045】
第1p+型ベース領域14および第2p+型ベース領域15とn型カラム領域4とのpn接合は、トレンチ16の底面よりもドレイン側に深い位置に形成されている。第1p+型ベース領域14および第2p+型ベース領域15のドレイン側端部の深さ位置は、第1p+型ベース領域14および第2p+型ベース領域15とn型カラム領域4とのpn接合がトレンチ16の底面よりもドレイン側に深い位置にあればよく、設計条件に合わせて種々変更可能である。第1p+型ベース領域14および第2p+型ベース領域15により、トレンチ16の底面に沿った部分でゲート絶縁膜9に高電界が印加されることを防止することができる。
【0046】
p型ベース層6の表面層には、基体第1主面側にn+型ソース領域(第1導電型の第1半導体領域)7が選択的に設けられている。また、p+型コンタクト領域8が設けられてもよい。n+型ソース領域7はトレンチ16に接している。また、n+型ソース領域7およびp+型コンタクト領域8は互いに接する。なお、本明細書では、おもて面は、n+型炭化珪素基板1の第1主面、例えば(0001)面(Si面)を示し、半導体層の表面上に設けられたとは、当該半導体層の表面より上に半導体領域/半導体層が設けられていることを示し、半導体層の表面層に設けられたとは、当該半導体層の内部に、当該半導体層の表面に露出する半導体領域/半導体層が設けられていることを示す。
【0047】
層間絶縁膜11は、炭化珪素半導体基体の第1主面側の全面に、トレンチ16に埋め込まれたゲート電極10を覆うように設けられている。ソース電極12は、層間絶縁膜11に開口されたコンタクトホールを介して、n+型ソース領域7およびp型ベース層6に接する。p+型コンタクト領域8が設けられている場合は、n+型ソース領域7およびp+型コンタクト領域8に接する。ソース電極12は、例えば、NiSi膜からなる。ソース電極12は、層間絶縁膜11によって、ゲート電極10と電気的に絶縁されている。ソース電極12上には、AlまたはAlSiからなるソース電極パッド(不図示)が設けられている。ソース電極12と層間絶縁膜11との間に、例えばソース電極12からゲート電極10側への金属原子の拡散を防止するTi及びTiNからなるバリアメタル(不図示)が設けられていてもよい。
【0048】
後述するように、n型カラム領域4は、ノンドープまたは超低濃度のエピタキシャル膜23(図4参照)にn型となるPイオンを注入することで形成される。このため、n型カラム領域4には、不純物としてリンを含む。このイオン注入は全面で行われるため、p型カラム領域3にも不純物としてリンを含む。エピタキシャル膜23の形成の際に、Pイオン注入を用いることにより、窒素をドーピングしてエピタキシャル成長により形成する場合よりも面内のキャリア濃度分布が改善できる。また、n型カラム領域4へのイオン注入ダメージの総量を増やすことができる。
【0049】
また、質量数14のN(窒素)や、質量数27のAl(アルミニウム)よりも質量が重い質量数31のP(リン、燐)をイオン注入することで、イオン注入ダメージの総量が増大してライフタイムが更に短縮する。これにより、インバータ等の回路で、部品点数やモジュールサイズの削減をするために、還流ダイオードとしてSiC SJ-MOSFETのボディダイオードを使用する際に、ドリフト層へのキャリア蓄積量の低減によるスイッチング損失の低減効果や、ドリフト層の電子・ホール密度の低減による通電劣化の抑制効果が得られる。
【0050】
(実施の形態1にかかる超接合炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態1にかかる超接合炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。図2図9は、実施の形態1にかかる超接合炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を模式的に示す断面図である。
【0051】
まず、n型の単結晶4H-SiCでできたn+型炭化珪素基板1を用意する。そして、このn+型炭化珪素基板1の第1主面上に、エピタキシャル膜22を、エピタキシャル成長させる。エピタキシャル膜22は、不純物を含まない炭化珪素でできたノンドープ膜であってもよいし、n型の不純物、例えば窒素原子を、1×1013~1015/cm3程度でドーピングした炭化珪素でできた超低濃度膜であってもよい。また、エピタキシャル膜22をノンドープ膜として、その後窒素をイオン注入して所望量のドーピングをしてもよい。ここまでの状態が図2に示されている。次に、エピタキシャル膜22の表面から全面にリンをイオン注入することでn型バッファ層17を形成する。次に、1700℃程度の不活性ガス雰囲気でアニール処理を行い、n型バッファ層17の活性化処理を実施する。なお、アニール処理は、最後に各イオン注入領域をまとめて活性化させてもよい。ここまでの状態が図3に示されている。
【0052】
次に、n型バッファ層17の表面上に、エピタキシャル膜23を、エピタキシャル成長させる。ここまでの状態が図4に示されている。次に、エピタキシャル膜23の表面からの全面にリンをイオン注入することで下部n型ドリフト層2aを形成する。ここでPイオンを注入する際の加速エネルギーは、所望のライフタイムの低下を得られ、かつ結晶がダメージを受けすぎて特性劣化が起こらない範囲に設定する。この観点からPイオンを注入する際の加速エネルギーは700eV以上であることが望ましい。上限に関しては21.5MeV以下、好ましくは5.4MeV以下、更にイオン注入装置のスループットを考慮すると3.75MeV以下が好ましい。また、イオン注入法でのドーピング濃度の濃度分布を改善する上では、ビームスキャン方式のみを用いているイオン注入装置よりも、ウェハースキャン(メカニカルスキャン)方式を併用しているイオン注入装置を用いる方が、より好ましい。次に、1700℃程度の不活性ガス雰囲気でアニール処理を行い、下部n型ドリフト層2aの活性化処理を実施する。なお、アニール処理は、最後に各イオン注入領域をまとめて活性化させてもよい。ここまでの状態が図5に示されている。
【0053】
次に、下部n型ドリフト層2aの表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口部を有するイオン注入用マスク30を例えば酸化膜で形成する。そして、アルミニウムイオンを、酸化膜の開口部に注入し、下部p型カラム領域3aを形成する。アルミニウムイオンが注入されなかった領域が下部n型カラム領域4aとなる。ここまでの状態が図6に示されている。次に、イオン注入用マスク30を除去する。次に、1700℃程度の不活性ガス雰囲気でアニール処理を行い、下部p型カラム領域3aの活性化処理を実施する。なお、アニール処理は、最後に各イオン注入領域をまとめて活性化させてもよい。
【0054】
次に、下部p型カラム領域3aおよび下部n型カラム領域4aの表面上に、エピタキシャル膜24を、エピタキシャル成長させる。ここまでの状態が図7に示されている。次に、エピタキシャル膜24の表面から全面にリンをイオン注入することで上部n型ドリフト層2bを形成する。次に、1700℃程度の不活性ガス雰囲気でアニール処理を行い、上部n型ドリフト層2bの活性化処理を実施する。なお、アニール処理は、最後に各イオン注入領域をまとめて活性化させてもよい。ここまでの状態が図8に示されている。
【0055】
次に、上部n型ドリフト層2bの表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口部を有するイオン注入用マスク(不図示)を例えば酸化膜で形成する。そして、アルミニウムイオンを、酸化膜の開口部に注入し、上部p型カラム領域3bを形成する。アルミニウムイオンが注入されなかった領域が上部n型カラム領域4bとなる。次に、イオン注入用マスクを除去する。次に、1700℃程度の不活性ガス雰囲気でアニール処理を行い、上部p型カラム領域3bの活性化処理を実施する。なお、アニール処理は、最後に各イオン注入領域をまとめて活性化させてもよい。次に、イオン注入用マスクを除去する。ここまでの状態が図9に示されている。
【0056】
下部p型カラム領域3aと上部p型カラム領域3bは、p型カラム領域3となり、下部n型カラム領域4aと上部n型カラム領域4bは、n型カラム領域4となり、並列pn構造21が形成される。ここでは、エピタキシャル膜23、24を2段積層することで並列pn構造21を形成する例を示したが、3段以上の積層で形成してもよい。以上が図2図9の製造工程であり、図1における、n+型炭化珪素基板1、n型バッファ層17、並列pn構造21までが形成される。
【0057】
ここで、図10は、実施の形態1にかかる超接合炭化珪素半導体装置の製造方法において、シミュレーション結果に基づいて計算した、図9の構造のPイオンとAlイオンを注入した領域のPとAlの濃度を示すグラフである。図10において、縦軸はPとAlの濃度を示し、単位はatoms/cm3である。縦軸の例えば1.0E+18の表記は、1.0×1018を意味する。横軸は、エピタキシャル膜24の表面からの深さを示し、単位はμmである。図10において、細線は、原点(0μm)から順に、上部n型カラム領域4b、下部n型カラム領域4a、およびn型バッファ層17のPの濃度を示す。太線は、原点から順に、上部p型カラム領域3bおよび下部p型カラム領域3aのAlの濃度を示す。エピタキシャル膜23、24の膜厚は2μmとした。
【0058】
n型バッファ層17は、エピタキシャル膜22をノンドープで成膜した後、ボックスプロファイル部(PイオンまたはAlイオンの濃度が一定の部分)のPイオン注入濃度が平均約1.8×1016atoms/cm3となるようにPイオン注入処理することを想定した。
【0059】
また、下部n型ドリフト層2aは、エピタキシャル膜23をノンドープで成膜した後、ボックスプロファイル部のPイオン注入濃度が平均約3.0×1016atoms/cm3となるようにPイオン注入処理することを想定した。
【0060】
また、下部p型カラム領域3aは、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを酸化膜で形成して、ボックスプロファイル部のAlイオン注入濃度が平均約1.3×1017atoms/cm3となるようにAlイオンを酸化膜の開口部に注入処理することを想定した。
【0061】
また、上部n型ドリフト層2bは、酸化膜を除去後、エピタキシャル膜24をノンドープで成膜した後、ボックスプロファイル部のPイオン注入濃度が平均約3.0×1016atoms/cm3となるようにPイオン注入処理することを想定した。
【0062】
また、上部p型カラム領域3bは、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを酸化膜で形成して、ボックスプロファイル部のAlイオン注入濃度が平均約1.3×1017atoms/cm3となるようにAlイオンを酸化膜の開口部に注入処理することを想定した。なお、各層および各領域の連結部分については、イオン注入領域が重なるため、高濃度化によるピークが生じる。
【0063】
再び図1の半導体装置の製造方法の説明に戻る。以下の製造手順はよく知られているため、図は省略している。図9の工程の後、p型カラム領域3およびn型カラム領域4の表面上に、窒素をドーピングしたn型高濃度領域5をエピタキシャル成長で形成する。次に、n型高濃度領域5内に、第1p+型ベース領域14および第2p+型ベース領域15を選択マスクによる選択イオン注入で形成する。
【0064】
次に、n型高濃度領域5の表面上に、アルミニウム等のp型不純物をドーピングしたp型ベース層6をエピタキシャル成長で形成する。次に、p型ベース層6の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを例えば酸化膜、半導体膜、ないし酸化膜/半導体膜の積層構造で形成する。この開口部にリン(P)等のn型の不純物をイオン注入し、p型ベース層6の表面の一部にn+型ソース領域7を形成する。次に、n+型ソース領域7の形成に用いたイオン注入用マスクを除去し、同様の方法で、所定の開口部を有するイオン注入用マスクを形成し、p型ベース層6の表面の一部にアルミニウム等のp型の不純物をイオン注入し、p+型コンタクト領域8を形成してもよい。p+型コンタクト領域8の不純物濃度は、p型ベース層6の不純物濃度より高くなるように設定する。
【0065】
次に、1700℃程度の不活性ガス雰囲気でアニール処理を行い、n型カラム領域4、n+型ソース領域7、p+型コンタクト領域8等の活性化処理を実施する。なお、上述したように1回のアニール処理によって各イオン注入領域をまとめて活性化させてもよいし、イオン注入を行うたびにアニール処理を行って活性化させてもよい。
【0066】
次に、p型ベース層6の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するトレンチ形成用マスクを例えば酸化膜で形成する。次に、ドライエッチングによってp型ベース層6を貫通し、n型高濃度領域5に達するトレンチ16を形成する。トレンチ16の底部はn型高濃度領域5に形成された第1p+型ベース領域14に達してもよい。次に、トレンチ形成用マスクを除去する。
【0067】
次に、n+型ソース領域7の表面と、トレンチ16の底部および側壁と、に沿ってゲート絶縁膜9を形成する。このゲート絶縁膜9は、酸素雰囲気中において1000℃程度の温度の熱酸化によって形成してもよい。また、このゲート絶縁膜9は高温酸化(High Temperature Oxide:HTO)等のような化学気相成長反応によって堆積する方法で形成してもよい。
【0068】
次に、ゲート絶縁膜9上に、例えばリンがドーピングされた多結晶シリコン層を化学気相成長反応によって成膜する。この多結晶シリコン層はトレンチ16内を埋めるように形成してもよい。この多結晶シリコン層をフォトリソグラフィによりパターニングし、トレンチ16内部に残すことによって、ゲート電極10を形成する。
【0069】
次に、ゲート絶縁膜9およびゲート電極10を覆うように、例えばリンガラスを1μm程度の厚さで成膜し、層間絶縁膜11を形成する。次に、層間絶縁膜11を覆うように、チタン(Ti)または窒化チタン(TiN)からなるバリアメタル(不図示)を形成してもよい。層間絶縁膜11およびゲート絶縁膜9をフォトリソグラフィによりパターニングし、n+型ソース領域7を露出させたコンタクトホールを形成する。p+型コンタクト領域8を形成した場合、n+型ソース領域7およびn+型ソース領域7を露出させたコンタクトホールを形成する。その後、熱処理(リフロー)を行って層間絶縁膜11を平坦化する。
【0070】
次に、コンタクトホール内および層間絶縁膜11上にソース電極12となる導電性の膜を設ける。この導電性の膜を選択的に除去してコンタクトホール内にのみソース電極12を残し、n+型ソース領域7とソース電極12とを接触させる。p+型コンタクト領域8を形成した場合、n+型ソース領域7およびp+型コンタクト領域8とソース電極12とを接触させる。次に、コンタクトホール以外のソース電極12を選択的に除去する。
【0071】
次に、例えばスパッタ法によって、炭化珪素半導体基体のおもて面のソース電極12上および層間絶縁膜11の上部に、ソース電極パッド(不図示)となる電極パッドを堆積する。
【0072】
次に、n+型炭化珪素半導体基板1の第2主面上に、ニッケル等の裏面電極を設ける。この後、1000℃程度の不活性ガス雰囲気でアニール処理を行って、n+型炭化珪素半導体基板1とオーミック接合する裏面電極を形成する。なお、トレンチ16を形成しない場合は、p型ベース層6の表面領域の一部に、n型ウェル領域を形成し、炭化珪素半導体基体のおもて面側を熱酸化し、ゲート絶縁膜9を形成し、p型ベース層6およびp型ベース層6の表面に形成された各領域をゲート絶縁膜9で覆い、ゲート絶縁膜9上に、ゲート電極10として、多結晶シリコン層を形成し、多結晶シリコン層をパターニングして選択的に除去し、p型ベース層6のn+型ソース領域7とn型ウェル領域に挟まれた部分上に多結晶シリコン層を残し、ゲート電極7を覆うように、層間絶縁膜11を形成する。以上のようにして、図1に示す炭化珪素半導体装置が完成する。
【0073】
以上、説明したように、実施の形態1にかかる超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法によれば、n型の半導体層の形成の際に、Pイオン注入を用いることにより、エピタキシャル成長により形成する場合よりも面内のキャリア濃度分布が改善できる。また、n型カラム領域へのイオン注入ダメージの総量を増やすことができる。また、Nイオンや、Alイオンよりも質量が重いPイオンをイオン注入することで、イオン注入ダメージの総量が増大してライフタイムが更に短縮する。これにより、インバータ等の回路で、部品点数やモジュールサイズの削減をするために、還流ダイオードとしてSiC SJ-MOSFETのボディダイオードを使用する際に、ドリフト層へのキャリア蓄積量の低減によるスイッチング損失の低減効果や、ドリフト層の電子・ホール密度の低減による通電劣化の抑制効果が得られる。
【0074】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2は、図1の並列pn構造21を変形して並列pn構造21'としたものである。実施の形態1は、並列pn構造21を形成するエピタキシャル膜23の1層の膜厚を例えば約2μmとして、図10に示すように膜厚全体にn型カラム領域のPイオンの注入が可能である場合を想定している。これに対して実施の形態2では、エピタキシャル膜23の1層の膜厚が例えば約2.5μmを超えるような厚い層を想定して、膜厚全体にPイオンを注入することが困難である場合の素子構造及びその製造方法を提供する。後述するように、厚いエピタキシャル膜に対しては、浅い場所をPイオン注入で形成し、深い場所をNイオン注入で形成する2段構造でn型カラム領域を構成する。
【0075】
図11は、SiC中にイオン注入したNイオンとAlイオンとPイオンの各加速エネルギーに対する平均飛程のシミュレーション結果を示すグラフである。なお、SiCの密度は3.21g/cm3として平均飛程を求めた。また、SiCの結晶構造は考慮していない。図11において、縦軸は、SiC中でのNイオンとAlイオンとPイオンの平均飛程を示し、単位はμmであり、横軸は、NイオンとAlイオンとPイオンの加速エネルギーを示し、単位はMeVである。図11に示すように、Pイオンは最も質量が重いため、同一の加速エネルギーにおいて注入深さは最も浅くなっている。また、Nイオンは最も質量が軽いため、同一の加速エネルギーにおいて注入深さは最も深くなっている。つまり、PイオンはNイオンよりも深い層に注入するのが困難であるのに対して、実施の形態2はその解決方法を提示する。
【0076】
図12は、実施の形態2にかかる超接合炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。実施の形態2にかかる超接合炭化珪素半導体装置では、並列pn構造21'を例えば1層のエピタキシャル層とし、n型カラム領域4を、Pイオンを注入した第1n型カラム領域4'とNイオンを注入した第2n型カラム領域4''とで構成する。これによりp型カラム領域3も、AlイオンとPイオンが注入された第1p型カラム領域3'と、AlイオンとNイオンが注入された第2p型カラム領域3''とで構成される。
【0077】
図13は、図12の並列pn構造21'のドーパント濃度プロファイルのシミュレーション結果である。加速エネルギーは、Alイオンが8000keVまで、Pイオンは5400keVまで、Nイオンは6300keVまでしか加速できないイオン注入装置を使用すると仮定している。p型カラム領域3は、120keVから8000keVまで16段でAlイオンを注入した設定濃度1.3×1017atоms/cm3狙いのイオン注入プロファイルである。これに対して、n型カラム領域4は、Nイオンを3920keVから5780keVまで6段でボックスプロファイル注入した後、Pイオンを85keVから5400keVまで12段でボックスプロファイル注入した場合の平均濃度3.0×1016atoms/cm3狙いのイオン注入プロファイルである。図13に示されるように、n型カラム領域4の途中で、PイオンとNイオンが両方とも注入された重なり領域も発生するが、図12での図示は省略されている。なお、イオン注入法でのドーピング濃度の濃度分布を改善する上では、ビームスキャン方式のみを用いているイオン注入装置よりも、ウェハースキャン(メカニカルスキャン)方式を併用しているイオン注入装置を用いる方が、より好ましい。
【0078】
このような構造とすることで、イオン注入装置の性能に対して深くてPイオンが到達できない領域にも、Pイオンよりも質量が軽くて平均飛程が長いNイオンを併用することで、より深いn型カラム領域4を形成することができる。これにより、n型カラム領域4およびp型カラム領域3の一層あたりの深さを実施の形態1よりも深くすることができる。
【0079】
(実施の形態2にかかる超接合炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態2にかかる超接合炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。以下の作製工程では第1及び第2n型カラム領域4’、4''は、まず層構造として形成され、次にその層構造にp型カラム領域を選択的にイオン注入することで、残余の部分としてn型カラム領域が確定する。以下の製造方法の説明では第1及び第2n型カラム領域4’、4''は、作製工程の段階に応じて最初の層構造、または後に確定したn型カラム領域のいずれかを意味するものとする。
【0080】
まず、実施の形態1にかかる超接合炭化珪素半導体装置の製造方法と同様に、n型バッファ層17を形成し、n型バッファ層17の表面上に、エピタキシャル膜23を、エピタキシャル成長させる。ここまでは図2図3の工程と同一である。次に、図5においてはエピタキシャル膜23全体にPイオンを注入していたが、実施の形態2ではエピタキシャル膜23の表面から深い位置(n型バッファ層17に接する領域)に窒素をイオン注入することで第2n型カラム領域4''を形成する。
【0081】
次に、エピタキシャル膜23の表面からPイオン注入することで、エピタキシャル膜23の表面から浅い位置に第1n型カラム領域4'を形成する。次に、1700℃程度の不活性ガス雰囲気でアニール処理を行い、第1n型カラム領域4'及び第2n型カラム領域4''の活性化処理を実施する。なお、アニール処理は、最後に各イオン注入領域をまとめて活性化させてもよい。また、第2n型カラム領域4''のキャリア濃度は、リンをイオン注入することで形成した第1n型カラム領域4'のキャリア濃度と同じでもよいし、同じでなくともよい。
【0082】
次に、第1n型カラム領域4'の表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口部を有するイオン注入用マスク30を例えば酸化膜で形成する。そして、アルミニウムイオンを、酸化膜の開口部に注入し、p型カラム領域3を形成する。アルミニウムイオンが注入されなかった領域がn型カラム領域4となる。p型カラム領域3はn型カラム領域4に追加してAlを注入するので、第1p型カラム領域3'と第2p型カラム領域3''の構造が形成される。次に、イオン注入用マスク30を除去する。次に、1700℃程度の不活性ガス雰囲気でアニール処理を行い、p型カラム領域3の活性化処理を実施する。なお、アニール処理は、最後に各イオン注入領域をまとめて活性化させてもよい。このようにして、実施の形態2の並列pn構造21'が形成される。ここでは、エピタキシャル膜23を1段積層することで並列pn構造21'を形成する例を示したが、2段以上の積層で形成してもよい。この後、実施の形態1にかかる超接合炭化珪素半導体装置の製造方法と同様にn型高濃度領域5を形成する工程を行うことで、図12に示す炭化珪素半導体装置が完成する。
【0083】
以上、説明したように、実施の形態2にかかる超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法によれば、n型の半導体層の形成の際に、Pイオン注入を用いることにより、実施の形態1と同様の効果を有する。さらに、深くてPイオンが到達できない領域にも、Nイオン注入を用いることでn型カラム領域を形成することができ、n型カラム領域およびp型カラム領域の深さを実施の形態1よりも深くすることができる。なお、n型バッファ層についても、深くてPイオンが到達できない領域がある場合は、同様に深い領域についてNイオン注入を併用してもよい。
【0084】
以上において本発明では、炭化珪素でできた炭化珪素基板の主面を(0001)面とし当該(0001)面上にMOSを構成した場合を例に説明したが、これに限らず、ワイドバンドギャップ半導体、基板主面の面方位などを種々変更可能である。また、本発明の実施の形態では、トレンチ型MOSFETを例に説明したが、これに限らず、プレーナ型MOSFET、IGBTなどのMOS型半導体装置など様々な構成の半導体装置に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上のように、本発明にかかる超接合炭化珪素半導体装置および超接合炭化珪素半導体装置の製造方法は、電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置などに使用される高耐圧半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0086】
1、101 n+型炭化珪素基板
2、102 n型ドリフト層
2a 下部n型ドリフト層
2b 上部n型ドリフト層
3、103 p型カラム領域
3a 下部p型カラム領域
3b 上部p型カラム領域
3' 第1p型カラム領域
3'' 第2p型カラム領域
4、104 n型カラム領域
4a 下部n型カラム領域
4b 上部n型カラム領域
4' 第1n型カラム領域
4'' 第2n型カラム領域
5、105 n型高濃度領域
6、106 p型ベース層
7、107 n+型ソース領域
8、108 p+型コンタクト領域
9、109 ゲート絶縁膜
10、110 ゲート電極
11、111 層間絶縁膜
12、112 ソース電極
14、114 第1p+型ベース領域
15、115 第2p+型ベース領域
16、116 トレンチ
17、117 n型バッファ層
21、21'、121 並列pn構造
22、23、24 エピタキシャル膜
30、122 イオン注入用マスク
50、150 SJ-MOSFET
102a 第1n型ドリフト層
102b 第2n型ドリフト層
103a 第1p型カラム領域
103b 第2p型カラム領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18