(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153547
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】媒体供給装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 3/54 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
B65H3/54 330
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003531
(22)【出願日】2024-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2023067399
(32)【優先日】2023-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】枡 祐輔
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA02
3F343FB01
3F343FC01
3F343FC04
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343HA17
3F343HA21
3F343JD17
3F343JD19
3F343KB03
3F343KB17
3F343KB20
3F343LA02
3F343LA16
3F343LB01
3F343LB08
3F343LC11
3F343LC19
3F343LC22
3F343MA04
3F343MA09
3F343MA31
3F343MB04
3F343MC12
3F343MC26
(57)【要約】
【課題】積層された複数のシート状の媒体の分離性を向上させる媒体供給装置を提供する。
【解決手段】積載されたシート状の媒体を媒体毎に分離して供給する媒体供給装置において、媒体の供給方向との交差方向に対向配置され、当該媒体の両側端部に接触又は離間する端部整合部材と、端部整合部材に設けられ、当該端部整合部材の高さ方向を回転軸の方向とする回転部材と、を備え、回転部材は、当該端部整合部材が媒体に接触する状態で、回転により両側端部の一部分に対する断続的な押圧をする、媒体供給装置による。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載されたシート状の媒体を媒体毎に分離して供給する媒体供給装置であって、
前記媒体の供給方向との交差方向に対向配置され、当該媒体の両側端部に接触又は離間する端部整合部材と、
前記端部整合部材に設けられ、当該端部整合部材の高さ方向を回転軸の方向とする回転部材と、
を備え、
前記回転部材は、
当該端部整合部材が前記媒体に接触する状態で、回転により前記両側端部の一部分に対する断続的な押圧をする、
ことを特徴とする媒体供給装置。
【請求項2】
前記回転部材は、前記媒体の供給方向における前端近傍に設けられている、
請求項1に記載の媒体供給装置。
【請求項3】
前記回転部材は、前記回転軸との直交方向の形状が楕円形状である、
請求項1又は2に記載の媒体供給装置。
【請求項4】
前記回転部材は、前記回転軸との直交方向の形状が円形状であり、
当該回転軸が偏心している、
請求項1又は2に記載の媒体供給装置。
【請求項5】
前記回転部材は、前記媒体に接触する接触面に螺旋溝を有する。
請求項1に記載の媒体供給装置。
【請求項6】
前記螺旋溝の溝間隔は、前記高さ方向における下方から上方に向かって広くなっている、
請求項5に記載の媒体供給装置。
【請求項7】
前記螺旋溝の溝角度は、前記高さ方向における上方から下方に向かって鋭くなっている、
請求項5又は6に記載の媒体供給装置。
【請求項8】
前記回転部材は、前記高さ方向における下方から上方に向けてテーパー形状をなしている、
請求項1に記載の媒体供給装置。
【請求項9】
前記媒体の供給速度に応じて前記回転部材の回転速度を制御する制御部を備える、
請求項1に記載の媒体供給装置。
【請求項10】
前記媒体が収容位置から供給方向に移動した状態で停止したことを検知する媒体検知部を備え、
前記制御部は、前記媒体検知部において前記媒体の停止を検知したときに、前記回転部材を逆回転させる、
請求項9に記載の媒体供給装置。
【請求項11】
前記媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部に向けて供給されるシート状の媒体を積層して収容する媒体供給部と、を備え、
前記媒体供給部は、請求項1に記載の媒体処理装置である、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体供給装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積載したシート状の媒体を、最上位から順に分離して供給する媒体供給装置が知られている。当該媒体供給装置は、媒体に画像を形成する画像形成装置に対して媒体を供給する機能を提供する装置であり、画像形成装置と一体的に設置されるものが知られている。なお、画像形成装置と一体の場合、媒体供給装置は画像形成装置の最下部に設置されることが多い。
【0003】
積層されている状態から媒体を分離させて供給する技術として、搬送方向に対する水平方向に、対向配置されたシート両端側のシートガイド部材のそれぞれに、螺旋溝をもつ回転部材を設け、螺旋溝に嵌ったシート部材がスクリュー上側に進むほど押圧され撓むようにすることで、多数積載されて密着している媒体を分離する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術では、シート部材の裁断加工精度等の要因により、積載状態からの分離が困難な場合がある。例えば、シート部材の端部に返し(バリ)が存在している場合、シート部材の両端部を押圧するだけでは密着したまま撓むだけでシート部材同士の分離には至らない、という課題がある。
【0005】
本発明は、積層された複数のシート状の媒体の分離性を向上させる媒体供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、積載されたシート状の媒体を媒体毎に分離して供給する媒体供給装置に関し、前記媒体の供給方向との交差方向に対向配置され、当該媒体の両側端部に接触又は離間する端部整合部材と、前記端部整合部材に設けられ、当該端部整合部材の高さ方向を回転軸の方向とする回転部材と、を備え、前記回転部材は、当該端部整合部材が前記媒体に接触する状態で、回転により前記両側端部の一部分に対する断続的な押圧をする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、積層された複数のシート状の媒体の分離性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】媒体供給装置が備えるシートトレイの平面図。
【
図3】媒体供給装置が備えるシートトレイの正面図。
【
図4】媒体供給装置が備えるシートトレイの平面図。
【
図5】媒体供給装置が備えるシートトレイの左側面図。
【
図6】上記シートトレイが備える回転部材の別の実施形態を説明する図。
【
図7】上記シートトレイが備える回転部材の別の実施形態を説明する図。
【
図8】上記シートトレイが備える回転部材の別の実施形態を説明する図。
【
図9】上記シートトレイが備える回転部材の別の実施形態における課題を説明する図。
【
図10】媒体がシートトレイと本体部に跨って停止したときの対応を説明する図。
【
図11】上記シートトレイが備える回転部材の別の実施形態を説明する図。
【
図12】媒体供給装置が備える制御ブロックの構成を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る画像形成装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、画像形成装置の実施形態としてのMFP1の全体構成を示す図である。MFP1は、シート状の媒体の一例である用紙Pに画像を形成する機能を備える。
図1に示すように、MFP1は、画像形成部10と、用紙Pを画像形成部10へと供給する媒体供給装置としてのシートトレイユニット100と、を備える。
【0010】
画像形成部10は、用紙Pに画像を形成し、画像を形成した用紙Pを排出する。画像形成部10は、用紙Pを積載して収容する媒体供給部としてのシートトレイユニット100から、用紙Pをピックアップして搬送する搬送部11を備える(
図3参照)。搬送部11によって搬送された用紙Pが画像形成部10による画像形成位置に移動して、その用紙Pに対して画像が形成される。画像形成部10において画像形成処理を行う方式は、周知のものとして複数知られており、例えば、インクを用いて画像を形成するインクジェット方式や、トナーを用いて画像を形成する電子写真方式が知られている。本発明に係る媒体供給装置は、いずれの画像形成方式にも適用可能なものである。なお、画像形成部10の構成は既に周知なので、詳細な説明を省略する。
【0011】
シートトレイユニット100は、複数段のシートトレイ110を含んで構成されている。シートトレイユニット100を構成する複数のシートトレイ110はそれぞれ、様々な大きさの用紙Pを収容なものである。なお、以下説明するシートトレイユニット100の特徴は、収容する用紙Pの大きさによって異なるものではない。
【0012】
[第一実施形態]
次に、本発明に係る媒体供給装置の実施形態としてのシートトレイユニット100について、
図2及び
図3を用いて説明する。
図2は、シートトレイユニット100に含まれるシートトレイ110の平面図である。
図3は、シートトレイ110の正面図である。説明の便宜上、Y軸の方向が用紙Pの供給方向であって、いわゆる搬送方向となる。
【0013】
シートトレイ110は、用紙Pを載置する板状部材としての底板160を備える。底板160は上方向(Z方向)に付勢されている。積載されている用紙Pが搬送方向(
図2における矢印Rの方向)に供給されて底板160に積載されている量が減少したとき、底板160への用紙Pからの荷重が減少する。このとき底板160の付勢によって、底板160が水平に対し形成する角度が大きくなっていくように構成されている。これによって、積載されている用紙Pの最上位は、積載残量に関わらず、所定の位置(供給開始位置)に至るようになっている。この供給開始位置は、搬送部11が備える給紙コロ12に接触可能な位置に相当する。
【0014】
用紙Pの幅方向の両側には、一対のサイドフェンス120が対向配置されている。ここで、用紙Pの幅方向とは、用紙Pの搬送方向(
図2に示す矢印Rの方向であって用紙Pの供給方向に相当する)と交差する方向(直交方向)であって、用紙Pの面との平行する方向をいう。
【0015】
サイドフェンス120は、用紙Pの幅方向の端部を整合させる端部整合部材でもあり、一方側のサイドフェンス120を幅方向に移動させると、対向する側のサイドフェンスも幅方向に移動する。このとき、対向し合うサイドフェンス120同士は、互いに反対方向に移動しあう。すなわち、サイドフェンス120は、用紙Pの両側端部に接触又は離間するように移動することで、端部を整合させる。
【0016】
また、サイドフェンス120は、用紙Pに接触する接触面の一部分に、回転部材としての分離促進部材130を備えている。分離促進部材130には、例えば、外周面に螺旋溝132が形成されている。分離促進部材130は、用紙Pの高さ方向(Z方向)を軸方向とする回転軸131により回転するように構成されている。
【0017】
分離促進部材130は、
図2に例示するように、サイドフェンス120の端部の近傍に配置されている。サイドフェンス120は一対であるので、分離促進部材130も一対に配置されている。分離促進部材130は、それぞれサイドフェンス120の、用紙Pの供給方向側の端部近傍、すなわち、サイドフェンス120の前端近傍に設けられている。なお、サイドフェンス120における、用紙Pの供給方向側の端部近傍とは、少なくとも用紙Pの搬送方向(供給方向)におけるサイドフェンス120の中間位置よりも前端部側である。
【0018】
また、シートトレイユニット100には、回転部材としての分離促進部材130を回転させる駆動部140と、駆動部140を介して、分離促進部材130の動作を制御する制御部150と、を備えている。ここで、モータの動作制御は、例えば、モータの回転速度制御や、回転方向制御などを含む。また、シートトレイユニット100において適用可能なモータは、例えばDCモータやブラシレスモータなど、その形式や制御方法は限定されず、後述するような、分離促進部材130の動作を実現するものであればよい。
【0019】
図12を用いて制御部150の構成について説明する。
図12に示すように、制御部150は、制御部150は、一般的なサーバやPC(Personal Computer)等の情報処理端末と同様の構成を備える。
【0020】
制御部150は、CPU(Central Processing Unit)151、RAM(Random Access Memory)152、ROM(Read Only Memory)153、記憶部154及びI/F(Interface)155が、バス156を介して接続されている。CPU151は演算手段であり、媒体供給装置全体の動作を制御する。
【0021】
RAM152は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体である。CPU151が情報を処理する場合、RAM152はCPU151の作業領域に用いられる。
【0022】
ROM153は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。
【0023】
記憶部154は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)、各種の制御プログラム、及びアプリケーション・プログラム等が格納されている。記憶部154は、例えば、SSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)等である。
【0024】
I/F155は、バスと各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。I/F155を介して駆動部140は制御部150に接続されている。駆動部140は、CPU151の演算処理機能を利用して実行される制御プログラムに基づいて、動作が制御される。駆動部140は、例えば、分離促進部材130を回転させる駆動力を供給する電動モータや、電動モータの回転によって回転動作をするギヤなどの駆動伝達機構を含む。
【0025】
制御部150は、シートトレイ110から用紙Pを供給可能な状態であるか、シートトレイ110に用紙Pを補充するために位置に移動されているかなどを検知する位置や、用紙Pの供給が異常となったことを検知する媒体検知部としてのセンサなどからの信号に基づいて、駆動部140の動作を制御して、分離促進部材130を動作させる。
【0026】
なお、
図10に例示するシート検知センサ13は、用紙Pが収容位置から供給方向に移動した状態で停止したことを検知する媒体検知部の例である。このシート検知センサ13も、I/F155を介して制御部150と通信可能に接続されている。
【0027】
シートトレイ110における用紙Pの供給方向の端部近傍には、用紙Pを画像形成部10へと搬送する搬送部11が設けられている。搬送部11は、シートトレイ110に積載されている用紙Pの最上位を取り出して下流へと移動させる給紙コロ12を備えている。給紙コロ12によって最上位の用紙Pが供給方向に移動するには、積層されている用紙Pの一枚ずつ、特に上位の用紙Pは分離されていることが重要である。
【0028】
なお、
図12に例示したように、搬送部11も、I/F155を介して制御部150と接続されている。すなわち、搬送部11の動作も制御部150によって制御される。
【0029】
本実施形態に係るシートトレイユニット100は、後述するように、分離促進部材130の動作によって、用紙Pを一枚ずつ分離する。例えば、用紙Pの端部の加工精度が低く、バリ(返し)などがある場合、複数の用紙Pがバリによって一体化してしまい、給紙コロ12でピックアップされるとき、複数の用紙Pが一斉にピックアップされる状態になる。このような状態(分離して供給することの確実性が低下している状態)にならないように、分離促進部材130を回転させることで、用紙Pを一枚ずつ分離させる。
【0030】
図4は、分離促進部材130を回転軸方向(Z方向)から見た平面図である。
図5は、分離促進部材130を含むシートトレイ110を、用紙Pの供給方向の反対側から見た図(左側面方向からの図)である。
【0031】
図4に示すように、分離促進部材130は、平面視の形状が楕円形状であって、回転軸131から外周面までの距離が一様ではなく、回転によって分離促進部材130の外周面と用紙Pの相対的な関係が周期的に変化する形状である。したがって、
図4(a)に示す状態であるとき、分離促進部材130の外周面は用紙Pの側端部に接触してはいるが、側端部を幅方向中央に押圧はしない状態である。一方、
図4(b)に示す状態であるとき、分離促進部材130の外周面は用紙Pの側端部に接触し、かつ、幅方向中央に向けて押圧している状態である。
【0032】
また、
図5に示すように、分離促進部材130は外周面に螺旋溝132が形成されている。
図5(a)に例示するように、分離促進部材130が用紙Pの側端部を押圧していない状態(除荷状態)のとき、分離促進部材130は回転をしている。その結果、一定の周期をもって
図5(b)に例示するように、分離促進部材130が用紙Pの側端部を断続的に押圧する状態(押圧状態)になる。すなわち、分離促進部材130の回転によって、用紙Pに対して側端部から中央部に向かう圧力が周期的に加えられることで、除荷状態と押圧状態を周期的に繰り返される状態になる。
【0033】
この押圧状態と除荷状態を繰り返しながら分離促進部材130の外周面に形成されている螺旋溝132に用紙Pが引っ掛かる。この引っ掛かりにより、分離促進部材130の回転に伴う螺旋溝132に沿って用紙Pに対して上方に移動する力が加わる。また、分離促進部材130は、上方に向かうに連れて外周が長くなるような形状であって、いわゆるテーパー形状を有している。
【0034】
テーパー形状の分離促進部材130が回転することで、除荷状態と押圧状態を繰り返し行い、この動作ともに螺旋溝132に沿って用紙Pが上方に移動するに連れて、押圧状態のときの用紙Pに加わる力は大きくなる。この力の変化の繰り返しによって、積層されている状態では下位の用紙Pと密着していた上位の用紙Pが分離して、供給方向へと移動しやすくなる。
【0035】
[第二実施形態]
第一実施形態において説明した分離促進部材130は、平面視の形状が楕円形状であった。しかし、分離促進部材130の形状は、この形状に限定されるものではない。例えば、
図6に示すように、分離促進部材130aの平面視の形状は円形状でもよい。そして、分離促進部材130aの回転軸131aを、円形状の中心からずらして、分離促進部材130aの回転中心を偏心させるように設置してもよい。以上の構造からなる分離促進部材130aによれば、回転により、外周面が用紙Pの側端部を周期的に押圧することができる。すなわち、分離促進部材130aを回転させることで、除荷状態と押圧状態を繰り返すことが実現可能な構造であればよい。
【0036】
なお、分離促進部材130aの外周面にも螺旋溝132aが形成されていてもよい。
【0037】
[第三実施形態]
また、分離促進部材130に形成される螺旋溝132の間隔は、
図7に示すように、軸方向において一様の溝間隔dではなく、軸方向の下方から上方へ向かうごとに広くなるように形成されていてもよい。すなわち、
図6に例示している分離促進部材130であれば、最下端近傍の溝間隔dを「d1」とし、最上端近傍の溝間隔dを「d5」として、その中間の溝間隔を下方から順番に「d2」、「d3」、「d4」とした場合、「d1<d2<d3<d4<d5」のように螺旋溝132を形成すればよい。
【0038】
下方の溝間隔dを狭めることで、積載されている用紙Pの最上位のものを一枚分離するときに、一つの螺旋溝132に複数枚の用紙Pが入り込むことを防止できる。これによって、用紙Pの分離の確実性を向上できる。
【0039】
なお、分離促進部材130の上方に移動した用紙Pに対しては、下位の用紙Pとの分離度合いをより大きくすることで、供給方向への移動をより円滑化できる。したがって、分離促進部材130において上方の溝間隔dを下方の溝間隔dに比較して広くなるように形成するとよい。
【0040】
[第四実施形態]
また、分離促進部材130に形成される螺旋溝132の形成角度である溝角度は、
図8に示すように、分離促進部材130の軸方向において一様ではなく、積層されている用紙Pの最上位に近い螺旋溝132(下位の螺旋溝132)ほど、鋭角であって、上位ほど鈍角になるように形成されてもよい。なお、以下において、溝角度を「螺旋テーパー角度」と表記する。
【0041】
下位の螺旋溝132における螺旋テーパー角度を鋭角にすることで、積載されている用紙Pの最上位のものの分離の確実性を向上させることができ、用紙Pの分離性を向上できる。また、分離促進部材130の上方に移動した用紙Pに対しては、供給方向への移動の円滑化を考慮する観点から、螺旋テーパー角度を鈍角にするとよい。
【0042】
[第五実施形態]
分離促進部材130の回転により積層されていた用紙Pが、除荷状態と押圧状態を繰り返して上方に進んだとき、最も上位に進んだ用紙Pから順次供給されていくことが理想である。画像形成部10が動作したときに、用紙Pの供給の確実性を向上させるには、画像形成部10が動作をしていないタイミング(待機状態)においても、ある程度は、用紙Pの分離動作を実行することが求められる。
【0043】
この場合、例えば、最上位の用紙Pが分離される度合い(分離の進行度合い)に比べて、用紙Pの供給速度が遅い場合、分離促進部材130の回転を継続したままにすると、
図9(a)に例示するように、分離促進部材130の上方において複数の用紙Pが滞留することになる。これのような滞留が長時間に及ぶと、用紙Pが分離状態から密着状態に戻る可能性もある。なお、用紙Pの分離の進行度合いに対する供給速度が遅い場合とは、画像形成処理において用紙Pの供給待機時間が長い場合などが含まれる。
【0044】
そこで、用紙Pの供給動作の状況を制御部150において監視し、用紙Pが再密着することなく、供給されるように、供給動作の実行度合いに応じて、用紙Pの分離の進行度合いを調整するとよい。例えば、分離促進部材130の回転速度を調整することで分離の進行度合いを調整することができる。この場合、例えば、分離促進部材130の回転速度をゼロにすること、すなわち、分離促進部材130の回転を停止させることも、調整の一例に含むものとする。
【0045】
制御部150は、用紙Pが螺旋溝132に嵌っている状態で(滞留している状態ではなく)、供給されるように、分離促進部材130の回転速度を調整する。また、用紙Pが最上位に滞留しつつあるタイミングで供給動作が行われていないときは、分離促進部材130の回転方向を逆方向にすることで、最上位に移動した用紙Pを一時的に下方に移動させる。言い換えると、制御部150は、用紙Pが最上位において滞留している状態になっている可能性があるとき、用紙Pの供給が正常に行われていたときの回転方向とは逆方向に分離促進部材130を回転させる。
【0046】
すなわち、本実施形態に係る分離促進部材130及び制御部150によれば、積載された用紙Pから最上位のものを分離して供給可能な状態にしつつ、用紙Pの供給速度や、供給待機状態の長さなどに応じて、用紙PのZ軸方向における位置を適宜調整することができる。
【0047】
[第六実施形態]
分離促進部材130の動作によって、積層されている用紙Pが分離されて、給紙コロ12により供給開始された時点において、用紙Pの搬送不良が生ずることがある。例えば、
図10のように、シートトレイ110と搬送部11に跨る状態で用紙Pが停止している場合を想定する。この場合、搬送を停止された用紙Pを取り除くためにシートトレイ110を取り出すとしても、用紙Pが邪魔になる。
【0048】
搬送部11に備えられているシート検知センサ13が、用紙Pを検知したときは、
図10のように、収容位置から一部供給方向に移動したところの跨った位置に用紙Pが存在するものとして制御部150は判定する。そして、この状態が一定時間において継続しているとき制御部150は搬送停止をしていると判定し、かつ、用紙Pが収容位置から一部供給方向に移動したところの跨った位置に残置された状態であると判定する。
【0049】
このとき、制御部150が分離促進部材130を、分離動作の回転方向とは逆方向に回転させる。分離促進部材130が逆転すると、螺旋溝132に沿って用紙Pが下位に移動しながら、分離促進部材130の押圧の度合いの弱くなるので、用紙Pがシートトレイ110に戻る方向に移動する。
【0050】
すなわち、搬送部11との間に跨って停止していた用紙Pをシートトレイ110に戻すことができる。
【0051】
[第七実施形態]
分離促進部材130は、
図11に例示するように、サイドフェンス120の高さ方向の上端近傍に設置されていればよい。分離促進部材130が押圧と除荷を行う用紙Pは、シートトレイ110に積載されているものうちの、上位の10枚程度の間でよい。そこで、分離促進部材130による分離作用を提供すべき範囲を、積載されている用紙Pの上方の一定範囲と仮定し、この一定範囲に存在する用紙Pに接触するような位置及び大きさをもって分離促進部材130を設置すればよい。これによって、分離促進部材130の小型化を図ることができる。
【0052】
なお、本発明は、上記に例示する各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項のすべてが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0053】
すなわち、上記に例示した各実施形態では、媒体供給装置を画像形成装置のシートトレイユニットとして説明しているが、媒体供給装置を画像形成装置に外付けされる給紙装置としてもよい。
【0054】
また、上記の各実施形態ではシートトレイユニット100が制御部150を備える構成を例示した。しかし、これに限定されることはなく、制御部150に相当する構成を画像形成装置の全体を制御する制御構成によって実現されてもよい。
【0055】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1>
積載されたシート状の媒体を媒体毎に分離して供給する媒体供給装置であって、
前記媒体の供給方向との交差方向に対向配置され、当該媒体の両側端部に接触又は離間する端部整合部材と、
前記端部整合部材に設けられ、当該端部整合部材の高さ方向を回転軸の方向とする回転部材と、
を備え、
前記回転部材は、
当該端部整合部材が前記媒体に接触する状態で、回転により前記両側端部の一部分に対する断続的な押圧をする、
ことを特徴とする媒体供給装置である。
<2>
前記回転部材は、前記媒体の供給方向における前端近傍に設けられている、
前記<1>に記載の媒体供給装置である。
<3>
前記回転部材は、前記回転軸との直交方向の形状が楕円形状である、
前記<1>又は前記<2>に記載の媒体供給装置である。
<4>
前記回転部材は、前記回転軸との直交方向の形状が円形状であり、
当該回転軸が偏心している、
前記<1>又は前記<2>に記載の媒体供給装置である。
<5>
前記回転部材は、前記媒体に接触する接触面に螺旋溝を有するである。
前記<1>乃至前記<4>のいずれか一つに記載の媒体供給装置である。
<6>
前記螺旋溝の溝間隔は、前記高さ方向における下方から上方に向かって広くなっている、
前記<5>に記載の媒体供給装置である。
<7>
前記螺旋溝の溝角度は、前記高さ方向における上方から下方に向かって鋭くなっている、
前記<5>又は前記<6>に記載の媒体供給装置である。
<8>
前記回転部材は、前記高さ方向における下方から上方に向けてテーパー形状をなしている、
前記<1>乃至前記<6>のいずれか一つに記載の媒体供給装置である。
<9>
前記媒体の供給速度に応じて前記回転部材の回転速度を制御する制御部を備える、
前記<1>乃至前記<8>のいずれか一つに記載の媒体供給装置である。
<10>
前記媒体が収容位置から供給方向に移動した状態で停止したことを検知する媒体検知部を備え、
前記制御部は、前記媒体検知部において前記媒体の停止を検知したときに、前記回転部材を逆回転させる、
前記<9>に記載の媒体供給装置である。
<11>
前記媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部に向けて供給されるシート状の媒体を積層して収容する媒体供給部と、を備え、
前記媒体供給部は、前記<1>乃至前記<10>のいずれか一つに記載の媒体処理装置である、
ことを特徴とする画像形成装置である。
【符号の説明】
【0056】
1 :MFP
10 :画像形成部
11 :搬送部
12 :給紙コロ
13 :シート検知センサ
100 :シートトレイユニット
110 :シートトレイ
120 :サイドフェンス
130 :分離促進部材
131 :回転軸
132 :螺旋溝
132a :螺旋溝
140 :駆動部
150 :制御部
160 :底板
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】