(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153619
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】EUVリソグラフィ用マスクを検査するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/22 20120101AFI20241022BHJP
【FI】
G03F1/22
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024101467
(22)【出願日】2024-06-24
(62)【分割の表示】P 2022561549の分割
【原出願日】2021-03-24
(31)【優先権主張番号】102020204508.9
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100151987
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 信行
(72)【発明者】
【氏名】カペッリ レンツォ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】EUVリソグラフィ用マスクを検査するためのシステムと方法を改善すること。
【解決手段】システムは、マスクの光学的検査のための第1の部分システム、潜在的マスク欠陥の事前分類のための、潜在的マスク欠陥に信頼度パラメータを割り当てる第2の部分システム、信頼度パラメータに基づいて潜在的マスク欠陥をチェックするための第3の部分システムを備える。EUVリソグラフィ用マスクの検査中に、機械学習に基づく潜在的マスク欠陥の事前分類が行われる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUVリソグラフィ用のマスクを検査するためのシステムであって、
1.1.潜在的マスク欠陥を識別および/または位置特定するための、マスクの光学的検査のための第1の部分システム(2)、
1.2.前記潜在的マスク欠陥の事前分類のための第2の部分システム(3)、ならびに
1.3.前記潜在的マスク欠陥をチェックするための第3の部分システム(4)
を備え、
1.4.前記第2の部分システム(3)は、前記第1の部分システム(2)によって識別および/または位置特定された前記潜在的マスク欠陥に、前記識別の信頼性を特徴付けるため、および/またはその後の応用に対する前記欠陥の関連性を特性付けるための信頼度パラメータを割り当てるように、具現化されており、
1.5.前記第3の部分システム(4)は、前記第1の部分システム(2)によって識別および/または位置特定されたマスク欠陥のサブセットが、前記第2の部分システム(3)によって前記潜在的マスク欠陥に割り当てられた信頼度パラメータに基づいてチェックされるように、制御可能である、システム。
【請求項2】
前記潜在的マスク欠陥の事前分類のための前記第2の部分システム(3)は、自動化された像解析方法を利用することを特徴とする、請求項1に記載のシステム(1)。
【請求項3】
前記潜在的マスク欠陥の事前分類のための前記第2の部分システム(3)は、機械学習を利用することを特徴とする、請求項1または2に記載のシステム(1)。
【請求項4】
前記第2の部分システム(3)が、事前分類されたマスク欠陥を有するデータベースを記憶するためのメモリを有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項5】
前記第2の部分システム(3)が、前記潜在的マスク欠陥を2つ、3つ、または4つ以上のクラスに分割するように具現化されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項6】
前記第2の部分システム(3)が分類速度v2を有し、前記第3の部分システム(4)がチェック速度v3を有して、以下が当てはまる:v2>v3、ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項7】
前記マスクの検査のための前記第1の部分システム(2)が、30nmより長い波長の照明光線を利用することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項8】
前記潜在的マスク欠陥の事前分類のための前記第2の部分システム(3)および/または前記潜在的マスク欠陥のサブセットをチェックするための前記第3の部分システム(4)が、EUV範囲の波長の照明光線を有する光学系を備えることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項9】
EUVリソグラフィ用マスクを検査する方法であって、
9.1.EUVリソグラフィ用マスクを用意するステップ、
9.2.前記用意されたマスクの像を記録するため、および前記用意されたマスクにおける潜在的マスク欠陥を識別および/または位置特定するための、第1の検査ステップ、
9.3.前記潜在的マスク欠陥を少なくとも2つの空でないサブセットに事前分類するための第2の検査ステップ、ならびに
9.4.前記第2の検査ステップにおいて確認された前記サブセットの1つにおいて前記潜在的マスク欠陥をチェックするための、第3の検査ステップ
を含み、
9.5.前記潜在的マスク欠陥を事前分類するための前記第2の検査ステップが、機械学習に基づく方法を含む、方法。
【請求項10】
前記第1の検査ステップにおいて記録された前記マスクの前記像における1次元構造および/または2次元構造の分布が、前記潜在的マスク欠陥の事前分類の目的で解析されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の検査ステップにおいて記録される前記マスクの像における強度分布が、前記潜在的マスク欠陥を事前分類する目的で解析されることを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の検査ステップが、前記マスクの前記記録された像をデータベース内のデータと比較する、比較ステップを含むことを特徴とする、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第3の検査ステップ(4)が、化学線法を含むことを特徴とする、請求項9~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の検査ステップ(2)が、非化学線法を含むことを特徴とする、請求項9~13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
独国特許出願第DE102020204508.9号の内容が、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、EUVリソグラフィ用マスクを検査するシステムに関する。本発明はまた、EUVリソグラフィ用マスクを検査する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィ法は、微細構造化コンポーネントまたはナノ構造化コンポーネント、例えば、メモリチップを製造するために使用される。この文脈では、構造は、投影露光装置の補助により、マスクからウェーハ上に結像(image)される。マスクが想定された目的に適していることを確認するために、それらを使用する前に、マスクは、検査システム、特にAPMI(化学線パターンマスク検査)システムの補助によって試験される。特に、マスクブランクとも呼ばれる、マスクを製造するために提供される基板の検査を行うようにすることもできる。この目的で、ABI(化学線ブランク検査)システムを使用することができる。
【0004】
例として、ABIシステムは、米国特許出願公開第2017/0235031号によって知られている。EUVリソグラフィ用マスクを検査するためのシステムと方法を改善する必要性が常にある。
【発明の概要】
【0005】
これらの目的は、独立請求項の特徴によって達成される。
【0006】
本発明の中核は、リソグラフィマスクを検査する目的で、多段(multi-stage)法、または複数の部分システムを有するシステムを利用することからなる。この文脈において、潜在的マスク欠陥は、最初に、第1の部分システムの補助によって識別および/または位置特定される。次いで、潜在的マスク欠陥は、第2の部分システムの補助によって、事前分類され、特に信頼度パラメータを用いて評価がされる。次いで、潜在的マスク欠陥のサブセットが、事前分類に基づいて、特に事前分類の信頼度パラメータに基づいて、チェックされる。
【0007】
本発明によれば、第1の部分ステップで確認された潜在的マスク欠陥から、さらなるチェックを必要とせずに、それらが実際にマスク欠陥であるということを所与の信頼度で決定することを可能にするもの、を選別することが有利であると認識された。同様に、さらなるチェックを必要とせずに、これらが欠陥ではないこと、またはマスクのさらなる使用に関連しない欠陥であるということを所定の信頼度で決定することを可能にする、潜在的マスク欠陥(いわゆる偽陽性)を選別することが有利である。
【0008】
第3の部分システムによって実施されるチェックステップでは、第1の方法ステップで確認された潜在的マスク欠陥のサブセットをチェックすることだけが必要である。これは、かなりの時間の節約につながる。
【0009】
このシステムおよび方法は、マスクの検査とマスクブランクの検査とに等しく適している。以下では、マスクという用語は、実際に構造化されたマスクと構造化前のマスク、すなわちマスクブランク、の両方を意味すると理解される。
【0010】
EUV線は、5nm~30nmの範囲の波長の電磁放射線を意味すると理解される。特に、これは13.5nmまたは7nmの波長の放射に関係付けることができる。
【0011】
本発明の一態様によれば、潜在的マスク欠陥の事前分類のための第2の部分システムは、自動化された像解析方法、特に自動化されたパターン認識方法を利用する。特に、これは完全に自動的な方法とすることができる。特に、これは非アルゴリズム的な方法とすることができる。
【0012】
第2の部分システムにはまた、アルゴリズムによる前処理ステップまたは後処理ステップ、特にフィルタリングステップおよび/または変換ステップ、例えば1つもしくは複数のフーリエ変換を含めることもできる。特に、事前分類は、空間領域または周波数領域内のデータに基づいて実施することができる。
【0013】
本発明のさらなる態様によれば、潜在的マスク欠陥の事前分類のための第2の部分システムは、機械学習を利用する。特に、事前分類は、ソフトウェアベースの方式で実施することができる。
【0014】
特に、第2の部分システムは、データ処理デバイスを備えることができる。特に、データ処理デバイスは、潜在的マスク欠陥を識別および/または位置特定するために、第1の部分システムによって提供されるデータを処理する役割を果たす。
【0015】
第2の部分システムは、第1の部分システムにデータ接続することができる。また、第2の部分システムは、第1の部分システムの構成部分として具現化することもできる。また、第2の部分システムは、第3の部分システムの構成部分として、部分システムの共通制御デバイスの構成部分として、または別個の部分システムとして具現化することもできる。
【0016】
第2の部分システムは、別個の光学系を備えることができる。特に、第2の部分システムは、マスクを結像させる(image)ための光学系を備えることができる。特に、これは、化学線システム(actinic system)とすることができる。
【0017】
この文脈において、化学線システムとは、結像および/または試験のために、ウェーハを構造化するための投影露光装置における、その後のマスクの使用のために提供される波長に対応する波長の、照明光線(illumination radiation)を使用するシステムであると理解される。
【0018】
特に、第2の部分システムは、EUVシステムを備えることができる。
【0019】
本発明のさらなる態様によれば、第2の部分システムと第3の部分システムは、マスクをチェックするために同じ光学系を使用することができる。特に、第2の部分システムと第3の部分システムは、共通の光学系を備えることができる。これにより、システム全体の構造的費用が低減される。
【0020】
特に、第2の部分システムと第3の部分システムは、共通の光学系、特に、異なる測定モードで使用される、同一の光学系によって形成することができる。
【0021】
第2の部分システムと第3の部分システムは、それぞれ独立した光学系を備えることもできる。これにより、第2および第3の検査ステップを並行して実施することが可能となる。これにより、システムの全体的なスループットを向上させることができる。
【0022】
本発明のさらなる態様によれば、第2の部分システムは、事前分類されたマスク欠陥を含むデータベースを記憶するための、メモリを有する。特に、第2の部分システムは、事前分類されたマスク欠陥を含むデータベースを含むメモリを有することができる。データベースは交換可能にすることもできる。特に、データベースは更新可能および/またはアップグレード可能である。
【0023】
特に、第1の部分システムによって識別および/または位置特定された潜在的マスク欠陥を、データベースからの事前分類されたマスク欠陥と比較することができる。これにより、迅速で、その上信頼性の高いマスク欠陥の分類が容易になることがわかった。
【0024】
特に、データベースはアップグレード可能とすることができる。これにより、マスク欠陥の分類の予測可能性が向上する。
【0025】
データベースは交換可能にすることもできる。これにより、異なるマスクタイプ、例えば、異なる構造要素を含むマスクに対して使用可能な特定のデータベースを保持しておくことが可能となる。これにより、事前分類の信頼性をさらに向上させることができる。
【0026】
本発明のさらなる態様によれば、第2の部分システムは、潜在的マスク欠陥を少なくとも2つのクラス、特に2つ、3つまたは4つ以上のクラスに分割するように、具現化される。
【0027】
この文脈では、1つのクラスには、それ以上のチェックを必要としない、マスク欠陥が包含される。それとは別個のクラスには、第3の部分システムによってチェックされるべきである、マスク欠陥が包含される。
【0028】
特に、確実に誤って識別された欠陥(いわゆる偽陽性)、および確実に正しく識別された欠陥は、さらなるチェックを必要としないマスク欠陥を含む、第1のクラスとして分類される。
【0029】
十分な信頼性を有するステートメントを作成できない残りの欠陥は、さらに別のクラスとして分類される。
【0030】
異なるクラスに関係する潜在的欠陥の分類は、1つまたは複数のパラメータに基づいて判定することができる。これらは、連続パラメータまたは離散パラメータとすることができる。
【0031】
通常、第2の部分システムの補助によって実施される事前分類によって、第3の検査ステップでチェックされるマスク欠陥の数を大幅に低減することができることがわかった。
【0032】
第1の部分システムを用いて、または第1の検査ステップにおいて識別および/または位置特定されたマスク欠陥の全体数に対する、第3の部分システムの補助によって、または第3の検査ステップにおいてチェックされるマスク欠陥の数の比率は、特に20%以下であり、特に10%以下、特に5%以下、特に3%以下、特に2%以下、特に1%以下である。
【0033】
本発明のさらなる態様によれば、前記第2の部分システムの分類速度v2は、第3の部分システムのチェック速度v3よりも大きく、v2>v3である。
【0034】
第2の部分システムの分類速度v2は、特に1時間あたり少なくとも500の分類欠陥、特に1時間あたり少なくとも750の分類欠陥、特に1時間あたり少なくとも1000の分類欠陥、特に1時間あたり少なくとも1250の分類欠陥、特に1時間あたり少なくとも1500の分類欠陥、特に1時間あたり少なくとも2000の分類欠陥である。
【0035】
特に、以下が当てはまる:v2/v3>1.1、特にv2/v3>1.2、特にv2/v3>1.5、特にv2/v3>2、特にv2/v3>2、特にv2/v3>3、特にv2/v3>5、特にv2/v3>10。特に、v2/v3>1/(1-a)が当てはまり、ここで、aは、第2の部分システムによって分類される潜在的マスク欠陥の数に対する、第3の部分システムによってチェックされる潜在的マスク欠陥の数の予想される比を指定する。この文脈において、第2の部分システムによって分類される潜在的マスク欠陥の数は、第1の部分システムによって識別および/または位置特定される潜在的マスク欠陥の数とちょうど等しい。比aは、チェックされるマスクに基づいて実験的に決定することができる。
【0036】
本発明のさらなる態様によれば、マスクの検査のための第1の部分システムは、30nmより長い波長、特に100nmより長い波長の照明光線を使用する。特に、第1の部分システムは、非化学線光学系(non-actinic optical system)を備えることができる。特に、第1の部分システムは、DUVシステムを備えることができる。この点において、例示としてUS8,103,086B2が参照される。特に、第1の部分システムは、マスクの検査のために、193nm以上の波長の照明光線を使用する。
【0037】
本発明のさらなる態様によれば、潜在的マスク欠陥の事前分類のための第2の部分システム、および/または潜在的マスク欠陥のサブセットをチェックするための第3の部分システムは、EUV範囲の波長の照明光線を有する、光学系を含む。
【0038】
特に、第2の部分システムおよび/または第3の部分システムは、化学線光学系を備えることができる。
【0039】
特に、第2の部分システムおよび/または第3の部分システムは、化学線空中像システム、すなわちマスクの空中像を生成するためのEUV範囲の波長の照明光線を有する光学系、を備えることができる。特に、これはスキャンシステムとすることができる。化学線空中像システムに関して、例示的に、DE102010029049A1が参照される。本発明のさらなる態様によれば、このシステムは、第1の部分システムにデータ接続されたメモリユニットを備える。特に、このメモリユニットは、潜在的マスク欠陥に関するデータを含むデータレコードを記憶する役割を果たす。
【0040】
特に、メモリユニットは、第2の部分システムにデータ接続することができるか、または、データ接続する機能がある。
【0041】
第1の部分システムによって確認された潜在的マスク欠陥に関係するデータは、特に、物理記憶媒体または仮想メモリに記憶することができる。この文脈において、仮想メモリは、第1の部分システムから第2の部分システムへのデータ伝送を簡略化することができる。
【0042】
第2の部分システムによって確認された潜在的マスク欠陥の事前分類のデータは、物理記憶媒体または仮想メモリに記憶することができる。この文脈において、仮想メモリへの記憶は、第2の部分システムから第3の部分システムへのデータ伝送を簡略化する。
【0043】
本発明のさらなる態様によれば、第2の検査ステップは、潜在的マスク欠陥を事前分類するための自動像解析方法を含む。
【0044】
像解析方法には、前処理ステップ、例えばフィルタステップまたは変換ステップ、特に1つもしくは複数のフーリエ変換を含めることができる。
【0045】
像解析は、空間領域または周波数領域において実施することができる。
【0046】
本発明の一態様によれば、潜在的マスク欠陥を事前分類するための第2の検査ステップは、機械学習に基づく方法を含む。特に、これは教師あり学習(supervised learning)に基づく方法とすることができる。これは、強化学習(reinforcement learning)に関係付けることもできる。この文脈において、第3の検査ステップからの結果は、第2の検査ステップのさらなるトレーニングのために利用することができる。この文脈では、異なるタイプのマスクを、特に、別々に扱うことができる。これによって、事前分類の信頼性の向上に導くことができる。
【0047】
本発明のさらなる態様によれば、第1の検査ステップで記録されたマスクの像における1次元構造および/または2次元構造の分布が、潜在的マスク欠陥を事前分類する目的で解析される。
【0048】
これらの構造は、空間領域または周波数領域のいずれかにおいて解析することができる。
【0049】
特に、1次元構造は臨界寸法(CD)とすることができる。特に、2次元構造は、第1の検査ステップで記録されたマスクの像の輪郭、またはそのフーリエ変換とすることができる。また、これらの構造物の特性、例えばその直径を解析することもできる。
【0050】
本発明のさらなる態様によれば、第1の検査ステップにおいて記録されたマスクの像の強度(intensity)分布が、潜在的マスク欠陥を事前分類する目的で解析される。特に、マスクの像は、ピクセルごとに解析することができる。アップサンプリングまたはダウンサンプリングが可能である。
【0051】
部分システム2、3、4の1つまたは複数は、それぞれが1回の露光でマスクもしくはマスクブランクの全体像を記録する、結像システムとするか、またはマスクもしくはマスクブランクの像が複数の露光から集められる、スキャンシステムとすることができる。
【0052】
本発明のさらなる態様によれば、第2の検査ステップは、1つまたは複数の前処理ステップ、特にフォトンノイズ(photon noise)に関して第1の検査ステップで記録された1つまたは複数の像を補正するための、1つまたは複数の補正ステップを含む。
【0053】
本発明のさらなる態様によれば、第2の検査ステップは、第1の検査ステップで記録されたマスクの1つまたは複数の像を、データベースからのデータと比較するための、比較ステップを含む。
【0054】
本発明のさらなる態様によれば、第3の検査ステップは、化学線法、特に、特にEUV範囲の照明光線を使用して、空中像を確認および/または解析するための方法を含む。
【0055】
本発明のさらなる態様によれば、第1の検査ステップは、非化学線法を含む。特に、第1の検査ステップには、DUV波長範囲の照明光線、特に波長193nmの照明光線を使用して、マスクの像を確認するための方法を含めることができる。
【0056】
特に、本発明による方法には、マスクの像が、異なる波長の照明光線を用いて確認および/または解析される、少なくとも2つの光学検査ステップを含めることができる。これにより、第1にマスクの検査に必要な時間が短縮され、第2にマスク欠陥の特性評価の信頼性を向上させることができることがわかった。
【0057】
本発明のさらなる利点、詳細および特色は、図を参照しての例示的実施形態の説明から、明らかである。詳細は、次のとおりである:
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】EUVリソグラフィ用マスクを検査するための方法の過程を示す模式図である。
【
図2】EUVリソグラフィ用マスクを検査するためのシステムの構成部分を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図2は、EUVリソグラフィ用マスクを検査するためのシステム1を模式的に示している。
【0060】
システム1は、第1の部分システム2、第2の部分システム3、および第3の部分システム4を含む。
【0061】
好ましくは、マスク、特にマスクブランクの、いわゆるマルチレイヤ欠陥は、別個のシステム、特に化学線ブランク検査ツール(ABIツール)の補助によって別個に確認される。
【0062】
第1の部分システム2は、マスクの光学検査のための役割を果たす。特に、第1の部分システム2は、潜在的マスク欠陥を識別および/または定位する役割を果たす。
【0063】
第1の部分システム2は、特に、DUV範囲の照明光線を使用して、特には193nmの波長の照明光線を使用して、マスクを検査するための検査システムを含む。そのようなシステムの詳細に対しては、本願にその一部として組み入れられている、米国特許第8,103,086(B2)号を例示的に、かつ代表的に、参照すべきである。
【0064】
第2の部分システム3は、特に、第1の部分システム2によって識別および/または位置特定された潜在的マスク欠陥を事前分類する役割を果たす。
【0065】
第2の部分システム3には、EUV範囲の波長を有する光学系を含めることができる。
【0066】
特に、第3の部分システム4は、潜在的マスク欠陥をチェックする役割を果たす。
【0067】
第3の部分システム4は、特に、EUV範囲の波長を使用してマスクをチェックするための光学系を備える。そのようなシステムの詳細については、本願にその一部として組み入れられている、DE102010029049A1を、例示的に、かつ代表的に参照すべきである。
【0068】
図2に模式的に図解されているように、第1の部分システム2は、第1のメモリユニット5にデータ接続されている。これに対して、第1のメモリユニット5は、第2の部分システム3にデータ接続されている。
【0069】
第1のメモリユニット5は、別個のメモリユニットとして、特には別個の記憶媒体として、または仮想メモリとして、具現化することができる。また、第1のメモリユニット5は、第1の部分システム2の構成部分として、または第2の部分システム3の構成部分として、具現化することもできる。
【0070】
第1のメモリユニット5は、潜在的マスク欠陥を識別および/または位置特定するために、第1の部分システム2によって確認されたデータを記憶する役割を果たす。対応するデータは、第2の部分システム3の補助によるマスクのさらなる検査のための入力としての役割を果たす。
【0071】
第2の部分システム3は、第2のメモリユニット6にデータ接続されている。
【0072】
第2のメモリユニット6は、別個のメモリユニットとして、特には別個の記憶媒体として、または仮想メモリとして、具現化することができる。第2のメモリユニット6はまた、第2の部分システム3の構成部分として、または第3の部分システム4の構成部分として具現化することもできる。
【0073】
第2の部分システム3には、マスクを試験するための、特にはマスクの空中像を生成して解析するための、光学系を含めることができる。特に、これはEUVシステムとすることができる。
【0074】
第3の部分システム4は、潜在的マスク欠陥をチェックおよび解析するための光学系を含む。特には、第3の部分システム4の光学系は、化学線システムである。
【0075】
第2の部分システム3は、事前分類されたマスク欠陥を含むデータベースを記憶するためのメモリ7を備える。メモリ7は、第2の部分システム3と別個に具現化することができる。
【0076】
以下に、マスクを検査するための方法の基本過程を、
図1を参照して説明する。
【0077】
この方法は、多段法である。特に、この方法は、第1の検査ステップ8、第2の検査ステップ9、および第3の検査ステップ10を含む。
【0078】
検査ステップ8、9、10には、1つまたは複数の部分ステップを含めることができる。
【0079】
第1の検査ステップ8は、特に、供給されたマスクの像を記録して、供給されたマスクにおける潜在的マスク欠陥を識別および/または位置特定する役割を果たす。
【0080】
第2の検査ステップ9は、特に、潜在的マスク欠陥を事前分類する役割を果たす。
【0081】
第3の検査ステップ10は、特に、潜在的マスク欠陥のサブセットをチェックする役割を果たす。
【0082】
第1の検査ステップ8において、構造化されたリソグラフィマスクが、特に、光学系の補助によって解析される。第1の検査ステップ8において、特に、DUVシステムの補助によって、潜在的マスク欠陥のリストが作成される。潜在的マスク欠陥のリストは、第1のメモリユニット5に記憶することができる。
【0083】
第2の検査ステップ9では、化学線光学系、特にEUVシステムを使用してマスクが試験される。この文脈において、特に、第1の検査ステップ8で作成されたリストどおりの潜在的欠陥が、事前分類される。
【0084】
特に、前記第1の検査ステップ8で確認された潜在的欠陥が、少なくとも2つのクラスに分割することが可能にされており、一方のクラスにはそれ以上のチェックを必要としない潜在的欠陥のみが含まれ、他方のクラスには、これが実際に欠陥であるか、特に、想定されるマスクの使用に関する欠陥であるかどうかについての最終評価を、それに対して十分な信頼性をもって行うことができない、潜在的欠陥が含まれる。
【0085】
特に、第1のクラスとして分類されるのは、特に少なくとも95%、特に少なくとも97%、特に少なくとも99%の信頼度で、実際の欠陥ではない(いわゆる偽陽性)という十分な確率を有する、潜在的欠陥である。さらに、第1のクラスとして分類されるのは、少なくとも95%、特に少なくとも97%、特に少なくとも99%の信頼度で、真の欠陥である、特に、想定されるマスクの使用に関する欠陥である、潜在的欠陥である。
【0086】
少なくとも95%の信頼度での最終ステートメントがそれに対して可能ではない、残りの潜在的欠陥が、第2のクラスとして分類される。
【0087】
第2の検査ステップ9は、特に、潜在的マスク欠陥の急速処置(fast disposition)を含む。分類速度は、少なくとも1時間あたり500の分類欠陥、特に少なくとも1時間あたり750の分類欠陥、特に少なくとも1時間あたり1000の分類欠陥、特に少なくとも1時間あたり1250の分類欠陥、特に少なくとも1時間あたり1500の分類欠陥、特には少なくとも1時間あたり2000の分類欠陥である。
【0088】
特に、機械学習に基づく方法が、第2の検査ステップ9において潜在的マスク欠陥を事前分類するのに使用されている。
【0089】
潜在的マスク欠陥を事前分類するための方法ステップの異なる詳細と態様が以下に記述される。
【0090】
第1の部分システムは、急速処置モードを有することができる。この動作のモードにおいては、第1の検査ステップにおける像は、特に、迅速に記録することができる。この文脈において、潜在的欠陥の正確な光学解析に対して使用されるモードに要求される、精度、特に解像度、を不要にすることができる。十分な信頼性でフォトンノイズから潜在的欠陥の像の境界を定めることができれば十分である。
【0091】
第2の検査ステップ9には、パターン認識を含めることができる。パターン認識には、閾値法(閾値設定)および像輪郭解析を含めることができる。
【0092】
像輪郭解析の間に、1次元構造および/または2次元構造、ならびに/あるいは論理的構造を解析することができる。この文脈では、論理的構造は、非対称構造または非周期的構造と理解される。
【0093】
特に、マスクの全体像における各構造要素に対する臨界寸法(CD)を測定するために、自動化閾値を設定することを可能にすることができる。臨界寸法の値の分布の解析は、周波数領域において明確に規定されたピークを有することがわかった。これらのピークからの逸脱は、潜在的欠陥を示す可能性がある。空中像における臨界寸法のパワースペクトル密度(PSD)は連続部とピークを有し、ピークの特性が欠陥によって影響を受ける可能性があることがわかった。
【0094】
さらに、これらのピークの特性、例えば、その半値全幅(FWHM:full width at half maximum)が解析されるようにすることができる。この文脈において、フォトンノイズを考慮に入れることができる。
【0095】
機械学習のためのシステムのトレーニングを、空間領域または周波数領域において、行うことができる。
【0096】
さらに、フォトンノイズを補正する補正方法が、第2の検査ステップ9における像解析の前に実施されるようにすることができる。
【0097】
一変形形態によれば、場合によっては前処理された像、特にノイズ補正された像の測定された構造パラメータの、像輪郭または周波数分布の変動を解析して、無欠陥構造および欠陥のデータベースにおけるデータと比較することを可能にすることができる。
【0098】
特に、第2の検査ステップ9には、潜在的欠陥、特に潜在的欠陥の特定のパラメータを、データベース内の対応するデータと比較するための比較ステップを含めることができる。
【0099】
事前分類は、空間領域または周波数領域における、確認された臨界寸法の分布または輪郭の特定のパラメータの分布に基づき実行することができる。例示として、パワースペクトル密度(PSD)における低強度ピークは、欠陥を示すことができる。これに基づく事前分類は、適切な先行トレーニングの後に可能である。
【0100】
臨界寸法または輪郭に基づく事前分類の代替形態として、強度分布またはこの分布の変化の周波数を評価することを可能にすることもできる。特に、この評価は、ピクセルごとに実施することができる。アップサンプリングまたはダウンサンプリングも可能である。再び、この文脈で、フォトンノイズを考慮に入れるための補正を可能にすることができる。このようにして解析された分布は、機械学習法のためにシステムをトレーニングするのに使用された、データベースにおけるデータと比較することができる。この点において、特に輪郭のため、欠陥は、通常のマスク構造に対して異なる周波数、特に、規則的マスク構造、特に周期的マスク構造の周波数に対して異なる周波数、を有することに留意されたい。
【0101】
さらなる処理ステップ、例えばスムージング法(像スムージング)またはローパスフィルタステップを、特にノイズをフィルタ除去するために、すべての方法において設けることができる。
【0102】
さらなる代替形態によれば、第2の検査ステップ9において確認されたマスクの像、特にマスク欠陥の像を、データベースにおける像と直接的に比較することを可能にすることができる。
【0103】
データベースは、方法のすべてにおいて、継続的に補充することができる。結果として、第2の検査ステップ9における事前分類を連続的に改善すること、特にこれの信頼性をさらに高めることが可能である。これによって、結果として、平均的に減少する、第1の検査ステップ8において全体的に確認された潜在的マスク欠陥の数に対する、第3の検査ステップ10においてチェックされる潜在的マスク欠陥の比、が得られる。
【0104】
第2の検査ステップ9における事前分類の補助によって、第3の検査ステップ10においてチェックされる潜在的マスク欠陥の数を、第1の検査ステップ8において確認された数千の潜在的マスク欠陥から、200未満、特に100未満まで、低減させることが可能であることがわかった。
【0105】
化学線法、特に化学線空中像法が、第3検査ステップ10において、潜在的マスク欠陥をチェックするために提供される。
【0106】
検査方法、特に3つの検査ステップ8、9および10の全体的結果は、想定されるマスクの使用に対する、マスク欠陥の関連性に関するステートメントである。特に、マスクが特定の指定された品質基準を満たしているか否かは、この全体的結果に基づいて決定することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUVリソグラフィ用のマスクを検査するためのシステムであって、
1.1.潜在的マスク欠陥を識別および/または位置特定するための、マスクの光学的検査のための第1の部分システム(2)、
1.2.前記潜在的マスク欠陥の事前分類のための第2の部分システム(3)、ならびに
1.3.前記潜在的マスク欠陥をチェックするための第3の部分システム(4)
を備え、
1.4.前記第2の部分システム(3)は、前記第1の部分システム(2)によって識別および/または位置特定された前記潜在的マスク欠陥に、前記識別の信頼性を特徴付けるため、および/またはその後の応用に対する前記欠陥の関連性を特性付けるための信頼度パラメータを割り当てるように、具現化されており、
1.5.前記第3の部分システム(4)は、前記第1の部分システム(2)によって識別および/または位置特定されたマスク欠陥のサブセットが、前記第2の部分システム(3)によって前記潜在的マスク欠陥に割り当てられた信頼度パラメータに基づいてチェックされるように、制御可能であり、
1.6.前記第2の部分システム(3)が、事前分類されたマスク欠陥を有するデータベースを記憶するためのメモリを有することを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記潜在的マスク欠陥の事前分類のための前記第2の部分システム(3)は、自動化された像解析方法を利用することを特徴とする、請求項1に記載のシステム(1)。
【請求項3】
前記潜在的マスク欠陥の事前分類のための前記第2の部分システム(3)は、機械学習を利用することを特徴とする、請求項1または2に記載のシステム(1)。
【請求項4】
前記第2の部分システム(3)が、前記潜在的マスク欠陥を2つ、3つ、または4つ以上のクラスに分割するように具現化されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項5】
前記第2の部分システム(3)が分類速度v2を有し、前記第3の部分システム(4)がチェック速度v3を有して、以下が当てはまる:v2>v3、ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項6】
前記マスクの検査のための前記第1の部分システム(2)が、30nmより長い波長の照明光線を利用することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項7】
前記潜在的マスク欠陥の事前分類のための前記第2の部分システム(3)および/または前記潜在的マスク欠陥のサブセットをチェックするための前記第3の部分システム(4)が、EUV範囲の波長の照明光線を有する光学系を備えることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項8】
EUVリソグラフィ用マスクを検査する方法であって、
8.1.EUVリソグラフィ用マスクを用意するステップ、
8.2.前記用意されたマスクの像を記録するため、および前記用意されたマスクにおける潜在的マスク欠陥を識別および/または位置特定するための、第1の検査ステップ、
8.3.前記潜在的マスク欠陥を少なくとも2つの空でないサブセットに事前分類するための第2の検査ステップ、ならびに
8.4.前記第2の検査ステップにおいて確認された前記サブセットの1つにおいて前記潜在的マスク欠陥をチェックするための、第3の検査ステップ
を含み、
8.5.前記潜在的マスク欠陥を事前分類するための前記第2の検査ステップが、機械学習に基づく方法を含む、方法。
【請求項9】
前記第1の検査ステップにおいて記録された前記マスクの前記像における1次元構造および/または2次元構造の分布が、前記潜在的マスク欠陥の事前分類の目的で解析されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の検査ステップにおいて記録される前記マスクの像における強度分布が、前記潜在的マスク欠陥を事前分類する目的で解析されることを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の検査ステップが、前記マスクの前記記録された像をデータベース内のデータと比較する、比較ステップを含むことを特徴とする、請求項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第3の検査ステップ(4)が、化学線法を含むことを特徴とする、請求項8~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の検査ステップ(2)が、非化学線法を含むことを特徴とする、請求項8~12のいずれか1項に記載の方法。
【外国語明細書】