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特開2024-153657エンドソームのGタンパク質共役受容体を標的とするナノ粒子のカプセル化
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153657
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】エンドソームのGタンパク質共役受容体を標的とするナノ粒子のカプセル化
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/08 20060101AFI20241022BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241022BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20241022BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20241022BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20241022BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20241022BHJP
   A61K 31/451 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241022BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241022BHJP
   A61K 31/551 20060101ALI20241022BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20241022BHJP
   A61K 31/438 20060101ALI20241022BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20241022BHJP
   A61K 31/426 20060101ALI20241022BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 1/08 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 19/04 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
A61K9/08
A61K45/00
A61K47/32
A61K47/34
A61K31/5377
A61K31/454
A61K31/451
A61P43/00 111
A61K9/14
A61K31/551
A61K31/506
A61K31/438
A61K31/4545
A61K31/426
A61K31/55
A61P1/08
A61P25/24
A61P25/22
A61P39/02
A61P1/04
A61P1/00
A61P19/04
A61P11/00
A61P11/06
A61P13/00
A61P15/00
A61P25/04
A61P29/02
A61P17/04
A61P31/12
A61P31/04
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P25/06
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024108154
(22)【出願日】2024-07-04
(62)【分割の表示】P 2021521808の分割
【原出願日】2019-10-22
(31)【優先権主張番号】2018903997
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(72)【発明者】
【氏名】バネット、ナイジェル
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ウィテカー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】フェルトハイス、ニコラス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エンドソームGPCRシグナル伝達を調節する方法を提供する。
【解決手段】(i)ナノ粒子のコアを形成する酸応答性疎水性ポリマーブロック;および(ii)ナノ粒子のシェルを形成し、水性液体によって溶媒和される親水性ポリマーブロックを有し、ここで、該ナノ粒子は、そのコア内に、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩を含み、該酸応答性ポリマーブロックは、エンドソーム内腔の酸性環境において遷移を受け、これにより、集合したコポリマー鎖が解体し、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩がエンドソームに放出される、方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア/シェル構造を形成するように集合したコポリマー鎖のポリマーナノ粒子を含む水性液体であって、該コポリマー鎖は、
(i)ナノ粒子のコアを形成する酸応答性疎水性ポリマーブロック;および
(ii)ナノ粒子のシェルを形成し、水性液体によって溶媒和される親水性ポリマーブロックを有し、
ここで、該ナノ粒子は、そのコア内に、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩を含む、
水性液体。
【請求項2】
酸応答性疎水性ポリマーブロックが酸性環境においてプロトン化される第三級アミン官能基を含み、任意に該第三級アミン官能基が約pH=6.1でプロトン化される、請求項1に記載の水性液体。
【請求項3】
酸応答性疎水性ポリマーブロックが2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DiPAEMA)のホモポリマーまたはコポリマーを含む、請求項1または2に記載の水性液体。
【請求項4】
酸応答性疎水性ポリマーブロックが2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DiPAEMA)およびポリアルキレンオキシドメタクリレートのコポリマーを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項5】
酸応答性疎水性ポリマーブロックが2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DiPAEMA)およびジエチレングリコールメタクリレート(DEGMA)のコポリマーを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項6】
親水性ポリマーブロックがポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)および2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)のコポリマーを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項7】
ナノ粒子の直径が15から120nm、任意に15から100nmまたは25から50nmである、請求項1から6のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項8】
エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩がエンドソームGPCRの阻害剤である、請求項1から7のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項9】
エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩がエンドソームNKRシグナル伝達の阻害剤、またはその薬学的に許容される塩である、請求項1から8のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項10】
エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩がアプレピタント、フォサプレピタント、トラディピタント、マロピタント、HTX-019、ネツピタント、セルロピタント、オルベピタント、NAS-911B、ZD-6021、KD-018、DNK-333、NT-432、NK-949、NT-814、EU-C-001、ベスチピタント、1144814、SCH-900978、AZD-2738、BL-1833、カソピタント、AV-810、KRP-103、424887、シゾリルチン、ボフォピタント、L-742694、カプサゼピン、GR-82334、MEN-11149、L-732138、NiK-004、TA-5538、C
P-96345、ラネピタント、LY-2590443、ダピタント、ブラピタント、ベフェツピタント、CJ-17493、AVE-5883、CGP-49823、CP-122721、CP-99994、SLV-317、TAK-637、L-733060、L-703606、ジロペチン、MPC-4505、L-742311、FK-888、WIN-64821、NIP-530、SLV-336、エズロピタント、TKA-457、フィゴピタント、ZD-4794、CP-100263、GR-203040、L-709210、MEN-10930、MEN-11467、LY-306740、FK-355、WIN-67689、WIN-51708、FK-224、BL-1832、CAM-6108、CP-98984、WS-9326A、L-741671、L-737488、L-740141、L-760735、L-161664、YM-49244、Sch-60059、SDZ-NKT-343、S-18523、RPR-111905、S-19752、L-161644、LY-297911、RPR-107880、L-736281、アントロテニン、RP-73467、WIN-64745、WIN-68577、WIN-62577 WIN-66306、RP-67580、CP-0364、L-743986、S-16474、CGP-47899、FR-113680、YM-44778、GR-138676、CGP-73400、CAM-2445、MDL-105172A、L-756867、イスブフィリン、R-673、SR-48968およびSR-14033、GW679769、CP-0578、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項11】
エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩がアプレピタント、ボフォピタント、L-733060、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項12】
エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩がエンドソームCGRPおよび/若しくはCLRシグナル伝達の阻害剤またはその薬学的に許容される塩である、請求項1から8のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項13】
エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩がBI44370、MK-3207、オルセゲパント、ウブロゲパント、リメゲパント、SB-268262、テルカゲパント、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1から8および12のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項14】
エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩がオルセゲパント、MK-3207、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1から8および12から13のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項15】
エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩をさらに含み、該エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩が、ポリマーナノ粒子のコア内に含まれている、請求項1から11のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項16】
エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩がCGRP受容体、例えば、CLRシグナル伝達の阻害剤である、請求項15に記載の水性液体。
【請求項17】
エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に
許容される塩がBI44370、MK-3207、オルセゲパント、ウブロゲパント、リメゲパント、SB-268262、テルカゲパント、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項15から16のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項18】
エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩がオルセゲパント、MK-3207、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項15から17のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項19】
エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩とエンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩とのモル比が1:10から10:1である、請求項15から18のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項20】
エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩とエンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩とのモル比が1:4から4:1、任意に1:2から2:1、任意に1:1である、請求項15から19のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項21】
エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩がエンドソームNKRシグナル伝達の阻害剤またはその薬学的に許容される塩であり、エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩がエンドソームCGRP受容体、例えば、CLRシグナル伝達の阻害剤またはその薬学的に許容される塩である、請求項15から20のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項22】
エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩がアプレピタント、ボフォピタント、L-733060、またはそれらの薬学的に許容される塩であり;エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩がオルセゲパント、MK-3207、またはそれらの薬学的に許容される塩である請求項21に記載の水性液体。
【請求項23】
コア/シェル構造を形成するように集合したコポリマー鎖のポリマーナノ粒子を含む水性液体であって、該コポリマー鎖は、
(i)ナノ粒子のコアを形成する酸応答性疎水性ポリマーブロック;および
(ii)ナノ粒子のシェルを形成し、水性液体によって溶媒和される親水性ポリマーブロックを有し、
ここで、該ナノ粒子はそのコア内に、
c)エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩;および
d)エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩を含む、
水性液体。
【請求項24】
酸応答性疎水性ポリマーブロックが酸性環境においてプロトン化される第三級アミン官能基を含み、任意に該第三級アミン官能基が約pH=6.1でプロトン化される、請求項23に記載の水性液体。
【請求項25】
酸応答性疎水性ポリマーブロックが2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DiPAEMA)のホモポリマーまたはコポリマーを含む、請求項23または24に記載の水性液体。
【請求項26】
酸応答性疎水性ポリマーブロックが2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DiPAEMA)およびポリアルキレンオキシドメタクリレートのコポリマーを含む、請求項23から25のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項27】
酸応答性疎水性ポリマーブロックが2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DiPAEMA)およびジエチレングリコールメタクリレート(DEGMA)のコポリマーを含む、請求項23から26のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項28】
親水性ポリマーブロックがポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)および2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)のコポリマーを含む、請求項23から27のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項29】
ナノ粒子の直径が15から120nm、任意に15から100nmまたは25から50nmである、請求項23から28のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項30】
エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩がエンドソームGPCRの阻害剤である、請求項23から29のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項31】
エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩がエンドソームNKRシグナル伝達の阻害剤またはその薬学的に許容される塩である、請求項23から30のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項32】
エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩が、アプレピタント、フォサプレピタント、トラディピタント、マロピタント、HTX-019、ネツピタント、セルロピタント、オルベピタント、NAS-911B、ZD-6021、KD-018、DNK-333、NT-432、NK-949、NT-814、EU-C-001、ベスチピタント、1144814、SCH-900978、AZD-2738、BL-1833、カソピタント、AV-810、KRP-103、424887、シゾリルチン、ボフォピタント、L-742694、カプサゼピン、GR-82334、MEN-11149、L-732138、NiK-004、TA-5538、CP-96345、ラネピタント、LY-2590443、ダピタント、ブラピタント、ベフェツピタント、CJ-17493、AVE-5883、CGP-49823、CP-122721、CP-99994、SLV-317、TAK-637、L-733060、L-703,606、ジロペチン、MPC-4505、L-742311、FK-888、WIN-64821、NIP-530、SLV-336、エズロピタント、TKA-457、フィゴピタント、ZD-4794、CP-100263、GR-203040、L-709210、MEN-10930、MEN-11467、LY-306740、FK-355、WIN-67689、WIN-51708、FK-224、BL-1832、CAM-6108、CP-98984、WS-9326A、L-741671、L-737488、L-740141、L-760735、L-161664、YM-49244、Sch-60059、SDZ-NKT-343、S-18523、RPR-111905、S-19752、L-161644、LY-297911、RPR-107880、L-736281、アントロテニン、RP-73467、WIN-64745、WIN-68577、WIN-62577 WIN-66306、RP-67580、CP-0364、L-743986、S-16474、CGP-47899、FR-113680、YM-44778、GR-138676、CGP-73400、CAM-2445、MDL-105172A、L-756867、イスブフィリン、R-673、SR-48968およびSR-14033、GW679769、CP-0578、およびそれら
の薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項23から31のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項33】
第1の疎水性モジュレーターエンドソームGPCRシグナル伝達またはその薬学的に許容される塩がアプレピタント、ボフォピタント、L-733060、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項23から32のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項34】
エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩がCGRP受容体、例えば、CLRシグナル伝達の阻害剤である、請求項23から33のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項35】
エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩がBI44370、MK-3207、オルセゲパント、ウブロゲパント、リメゲパント、SB-268262、テルカゲパント、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項23から34のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項36】
エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩がオルセゲパント、MK-3207、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項23から35のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項37】
エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩とエンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩とのモル比が1:10から10:1である、請求項23から36のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項38】
エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩とエンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩とのモル比が1:4から4:1、任意に1:2から2:1または1:1である、請求項23から37のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項39】
請求項1から22のいずれか一項または請求項23から38のいずれか一項に記載の水性液体、および任意に、薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項40】
有効量の請求項1から11のいずれか一項に記載の水性液体をそれを必要とする対象に投与することを含む、該対象におけるエンドソームGPCRシグナル伝達を調節する方法。
【請求項41】
有効量のエンドソームGPCRシグナル伝達の第2のモジュレーターまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することをさらに含む、請求項40の方法。
【請求項42】
エンドソームGPCRシグナル伝達の第2のモジュレーターまたはその薬学的に許容される塩がエンドソームCGRPおよび/またはCLRシグナル伝達の阻害剤、任意にMK-3207、オルセゲパント、またはそれらの薬学的に許容される塩である、請求項41の方法。
【請求項43】
有効量の請求項1から8および12-14のいずれか一項に記載の水性液体をそれを必要とする対象に投与することを含む、該対象におけるエンドソームGPCRシグナル伝達を調節する方法。
【請求項44】
有効量のエンドソームGPCRシグナル伝達の第2のモジュレーターまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することをさらに含む、請求項43の方法。
【請求項45】
エンドソームGPCRシグナル伝達の第2のモジュレーターまたはその薬学的に許容される塩がエンドソームNKRシグナル伝達の阻害剤またはその薬学的に許容される塩、任意にアプレピタント、ボフォピタント、L-733060、またはそれらの薬学的に許容される塩である、請求項44の方法。
【請求項46】
有効量の
1)第1の水性液体またはその医薬組成物(ここで、該第1の水性液体は、請求項9から11のいずれか一項に従って定義されているとおりである);および
2)第2の水性液体またはその医薬組成物(ここで、該第2の水性液体は、請求項12から14のいずれか一項に従って定義されているとおりである)
をそれを必要とする対象に投与することを含む、該対象におけるエンドソームGPCRシグナル伝達を調節する方法。
【請求項47】
有効量の請求項15から22および23から38のいずれか一項に記載の水性液体、またはその医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、該対象におけるエンドソームGPCRシグナル伝達を調節する方法。
【請求項48】
コア/シェル構造を形成するように集合したコポリマー鎖のポリマーナノ粒子を含む水性液体をそれを必要とする対象に投与することを含む、該対象におけるエンドソームGPCRシグナル伝達を調節する方法であって、該コポリマー鎖は、
(i)ナノ粒子のコアを形成する酸応答性疎水性ポリマーブロック;および
(ii)ナノ粒子のシェルを形成し、水性液体によって溶媒和される親水性ポリマーブロックを有し、
ここで、該ナノ粒子は、そのコア内に、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩を含み;
およびここで、該酸応答性ポリマーブロックは、エンドソーム内腔の酸性環境において遷移を受け、これにより、集合したコポリマー鎖が解体し、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩がエンドソームに放出される、
方法。
【請求項49】
コア/シェル構造を形成するように集合したコポリマー鎖のポリマーナノ粒子を含む水性液体をそれを必要とする対象に投与することを含む、該対象におけるエンドソームGPCRシグナル伝達を調節する方法であって、該コポリマー鎖は、
(i)ナノ粒子のコアを形成する酸応答性疎水性ポリマーブロック;および
(ii)ナノ粒子のシェルを形成し、水性液体によって溶媒和される親水性ポリマーブロックを有し、
ここで、該ナノ粒子は、そのコア内に、
a)エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩;および
b)エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩を含み;
およびここで、該酸応答性ポリマーブロックは、エンドソーム内腔の酸性環境において遷移を受け、これにより、集合したコポリマー鎖が解体し、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩がエンドソームに放出される、
方法。
【請求項50】
有効量の請求項9から11のいずれか一項に記載の水性液体をそれを必要とする対象に投与することを含む、エンドソームNKRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害の治療方法。
【請求項51】
エンドソームNKRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害が化学療法誘発性の吐き気および嘔吐(CINV)、周期的嘔吐症候群、術後の吐き気および嘔吐、鬱病および不安を含む情動性および中毒性の障害、全般性不安障害(GAD)、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、胃麻痺および機能性消化不良を含む胃腸障害、関節炎を含む慢性炎症性障害、COPDおよび喘息を含む呼吸器障害、泌尿生殖器障害、感覚障害並びに体性痛および内臓痛を含む疼痛、掻痒、ウイルス性および細菌性感染症並びに増殖性疾患(癌)、並びにそれらの組合せから選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
エンドソームNKRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害が体性痛または内臓痛である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
エンドソームNKRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害が慢性疾患または障害である、請求項50から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
有効量のエンドソームGPCRシグナル伝達の第2のモジュレーターまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することをさらに含む、請求項50から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
エンドソームGPCRシグナル伝達の第2のモジュレーターまたはその薬学的に許容される塩がエンドソームCGRPおよび/またはCLRシグナル伝達の阻害剤、任意にMK-3207、オルセゲパント、またはそれらの薬学的に許容される塩である、請求項54の方法。
【請求項56】
エンドソームGPCRシグナル伝達の第2のモジュレーターまたはその薬学的に許容される塩がコポリマー鎖のポリマーナノ粒子のコア内に含まれる、請求項55の方法であって、
ここで、該コポリマー鎖は、コア/シェル構造を形成するように集合し、該コポリマー鎖は、
(i)ナノ粒子のコアを形成する酸応答性疎水性ポリマーブロック;および
(ii)ナノ粒子のシェルを形成し、水性液体によって溶媒和される親水性ポリマーブロックを有する、
方法。
【請求項57】
有効量の請求項12から14のいずれか一項に記載の水性液体をそれを必要とする対象に投与することを含む、エンドソームCGRPおよび/またはCLRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害の治療方法。
【請求項58】
エンドソームCGRP受容体、例えば、CLRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害が片頭痛並びに疼痛、光恐怖症、音声恐怖症、悪心および嘔吐を含む片頭痛に関連する症状、感覚障害、体性痛および内臓痛を含む疼痛、クラスターおよび慢性の毎日の頭痛に関連する疼痛、COPDおよび喘息を含む呼吸器障害、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、胃麻痺および機能性消化不良を含む胃腸障害、並びに変形性関節症および関節リウマチを含む慢性炎症性障害からなる群から選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
エンドソームCGRP受容体、例えば、CLRシグナル伝達によって媒介される疾患ま
たは障害が体性痛または内臓痛である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
エンドソームCGRP受容体、例えば、CLRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害が慢性疾患または障害である、請求項57から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
有効量のエンドソームGPCRシグナル伝達の第2のモジュレーターまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することをさらに含む、請求項57から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
エンドソームGPCRシグナル伝達の第2のモジュレーターまたはその薬学的に許容される塩がエンドソームNKRシグナル伝達の阻害剤、任意にアプレピタント、ボフォピタント、L-733060、またはそれらの薬学的に許容される塩である、請求項61の方法。
【請求項63】
エンドソームGPCRシグナル伝達の第2のモジュレーターまたはその薬学的に許容される塩がコポリマー鎖のポリマーナノ粒子のコア内に含まれる、請求項61から62のいずれか一項に記載の方法であって、
ここで、該コポリマー鎖は、コア/シェル構造を形成するように集合し、該コポリマー鎖は、
(i)ナノ粒子のコアを形成する酸応答性疎水性ポリマーブロック;および
(ii)ナノ粒子のシェルを形成し、水性液体によって溶媒和される親水性ポリマーブロックを含む、
方法。
【請求項64】
有効量の請求項15から22のいずれか一項または請求項23-38のいずれか一項に記載の水性液体をそれを必要とする対象に投与することを含む、エンドソームGPCRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害の治療方法であって、ここで、該疾患または障害は、CGRP受容体、例えば、CLR、および/またはNKRシグナル伝達によって媒介される、方法。
【請求項65】
疾患または障害が、エンドソームCGRP受容体、例えば、CLRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害、任意に片頭痛並びに疼痛、光恐怖症、音声恐怖症、悪心および嘔吐を含む片頭痛に関連する症状、感覚障害、体性痛および内臓痛を含む疼痛、クラスターおよび慢性の毎日の頭痛に関連する疼痛、COPDおよび喘息を含む呼吸器障害、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、胃麻痺および機能性消化不良を含む胃腸障害、または変形性関節症および関節リウマチを含む慢性炎症性障害である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
疾患または障害が、エンドソームNKRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害、任意に化学療法誘発性の吐き気および嘔吐(CINV)、周期的嘔吐症候群、術後の吐き気および嘔吐、鬱病および不安を含む情動性および中毒性の障害、全般性不安障害(GAD)、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、胃麻痺および機能性消化不良を含む胃腸障害、関節炎を含む慢性炎症性障害、COPDおよび喘息を含む呼吸器障害、泌尿生殖器障害、感覚障害並びに体性痛および内臓痛を含む疼痛、掻痒、ウイルス性および細菌性感染症並びに増殖性疾患(癌)、並びにそれらの組合せである、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
疾患または障害が体性痛または内臓痛である、請求項64から66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
疾患または障害が慢性疾患または障害である、請求項64から67のいずれか一項に記
載の方法。
【請求項69】
エンドソームNKRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害の治療における使用のための、請求項9から22および31から38のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項70】
エンドソームNKRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害の治療のための薬剤の製造における、請求項9から22および31から38のいずれか一項に記載の水性液体の使用。
【請求項71】
エンドソームNKRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害が、化学療法誘発性の吐き気および嘔吐(CINV)、周期的嘔吐症候群、術後の吐き気および嘔吐、鬱病および不安を含む情動性および中毒性の障害、全般性不安障害(GAD)、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、胃麻痺および機能性消化不良を含む胃腸障害、関節炎を含む慢性炎症性障害、COPDおよび喘息を含む呼吸器障害、泌尿生殖器障害、感覚障害並びに体性痛および内臓痛を含む疼痛、掻痒、ウイルス性および細菌性感染症並びに増殖性疾患(癌)、並びにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項69に記載の使用または請求項70の使用のための水性液体。
【請求項72】
エンドソームCGRP受容体、例えば、CLRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害の治療における使用のための、請求項12から14、16から22、および34から38のいずれか一項に記載の水性液体。
【請求項73】
エンドソームCGRP受容体、例えば、CLRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害の治療のための薬剤の製造における、請求項12から14、16から22、および34から38のいずれか一項に記載の水性液体の使用。
【請求項74】
エンドソームCGRP受容体、例えば、CLRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害が、片頭痛並びに疼痛、光恐怖症、音声恐怖症、悪心および嘔吐を含む片頭痛に関連する症状、感覚障害、体性痛および内臓痛を含む疼痛、クラスターおよび慢性の毎日の頭痛に関連する疼痛、COPDおよび喘息を含む呼吸器障害、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、胃麻痺および機能性消化不良を含む胃腸障害、または変形性関節症および関節リウマチを含む慢性炎症性障害からなる群から選択される、請求項72に記載の使用または請求項73の使用のための水性液体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2018年10月22日付で出願されたオーストラリア仮出願番号2018903997号の優先権を主張し、かかる仮出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、エンドソームGPCRシグナル伝達を調節する方法に関する。特に、本発明は、エンドソームGPCRの疎水性モジュレーターの標的化送達のためのポリマーナノ粒子の使用、並びに関連する疾患および障害の治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
細胞の細胞外環境に応答する能力は、細胞内シグナル伝達経路を迅速に開始する細胞外リガンドに結合するための、Gタンパク質共役受容体(GPCR)および受容体型チロシンキナーゼ(EGFまたはインスリン受容体などのRTK)などの細胞表面シグナル伝達タンパク質を必要とする。いったん細胞応答が達成されると、これらのシグナルは、β-アレスチン1/2アダプタータンパク質への結合、およびエンドソーム膜ネットワークへのリクルートメントのためのクラスリン/ダイナミン媒介経路を介したインターナリゼーションによって終結され得る。古典的な受容体シグナル伝達パラダイムは、インターナリゼーションが初期エンドソームにおける受容体結合リガンド複合体を解体し、受容体をリサイクルエンドソーム中にまたは分解性リソソーム経路に向けて分別することによってシグナル終結を促進すると仮定する。この仮説は、持続的なエンドソーム由来シグナル伝達プロセスを開始できる同族のGタンパク質に結合したままのインターナライズされた受容体の証拠によって異議を唱えられている。
【0004】
細胞表面受容体の最大ファミリーであるGタンパク質共役受容体(GPCR)は、大多数の病態生理学的プロセスに関与し、約30%の治療薬の標的である(Audet,M.&Bouvier,M. Nat Chem Biol 2008、4、397-403)。細胞表面GPCRは、細胞外リガンドと相互作用してヘテロ三量体Gタンパク質に結合し、これにより、原形質膜に限界を定められたシグナル(セカンドメッセンジャーの形成、成長因子受容体のトランス活性化、イオンチャネルの調節)が引き起こされる。リガンドの除去およびβ-アレスチン(βarr)との受容体の共役は、原形質膜シグナルを終結させる。
【0005】
最近まで、GPCRの活性化、引き続く下流シグナル伝達およびシグナル終結は、もっぱら原形質膜で起こると広く考えられていた。原形質膜シグナル伝達は、活性リガンド結合受容体コンフォメーションに選択的なGPCRキナーゼ(GRK)による受容体のリン酸化を介した活性化から数分以内に終結する。GRKはGPCRのC末端S/Tリッチドメインをリン酸化する(Sato,P.Y.ら、Physiological reviews 2015、95、377-404)。次いで、リン酸化された受容体は、βarrに結合し、これが受容体とGタンパク質との間の結合を立体的に防ぎ、アゴニストを介したGタンパク質の活性化を終結させる。βarrは、ダイナミンおよびクラスリン依存性エンドサイトーシスを介して、細胞表面から初期エンドソームへのリガンド結合受容体の移動をさらに促進する。いったんエンドサイトーシスが行われると、リガンドおよびリン酸基がGPCRから除去され、受容体は、細胞膜に迅速に再分配されるか、または分解
のためにリソソームに輸送される。
【0006】
しかしながら、最近、多様な範囲のGPCRが従来のパラダイムに常に従うわけではないことが発見されている。研究により、リガンドの結合および受容体の活性化に続いて、一部の細胞表面GPCRは、ヘテロ三量体Gタンパク質のシグナル伝達が長期にわたって維持される初期エンドソームにインターナライズし再分布することが見い出されている。従って、エンドソームは、単にリサイクルまたは分解経路へのGPCR輸送の導管として機能するというよりむしろ、シグナル伝達の重要な部位であり得る(Murphy,J.E.ら、Proc Natl Acad Sci USA 2009、106、17615-17622)。GPCRおよびマイトジェン活性化プロテインキナーゼをエンドソームにリクルートすることにより、βarrは、エンドソームGPCRシグナル伝達を媒介することができる(Murphy,J.E.ら、Proc Natl Acad Sci
USA 2009、106、17615-17622;DeFea,K.A.ら、Proc Natl Acad Sci USA 2000、97、11086-11091;DeFea,K.A.ら、J Cell Biol 2000、148、1267-1281)。
【0007】
βarrは、原形質膜およびエンドソーム膜の活性化受容体に多様なシグナル伝達タンパク質をリクルートし、シグナル伝達の重要なメディエーターである。MAPKカスケード[ERK、c-Junアミノ末端キナーゼ(JNK)、p38]は、最も完全に特徴付けられたβarr依存性シグナル伝達経路である。βarrがシグナル伝達に積極的に関与するものであるという最初の証拠は、βarrのドミナントネガティブ変異体がβARによって誘導されるERK1/2の活性化を阻害したという観察であった(Daaka
Yら、J Biol Chem 1998、273,685-688)。引き続いて、βarrは、βARをc-Srcに共役させてERK1/2の活性化を媒介することが見い出された(Lutterall L.M.ら、Science 1999、283、655-661)。βarrは、ニューロキニン-1受容体(NKR)、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR)、アンジオテンシンII型1A受容体(AT1AR)、およびバソプレシンV2受容体(VR)を含む他のGPCRによるERK1/2シグナル伝達にも同様に関与する。これらの観察は、βarrが活性化されたGPCRをMAPKシグナル伝達複合体と共役させる足場であるという見解につながった。βarrは、それによって原形質膜でのGタンパク質依存性シグナル伝達とは異なるGPCRシグナル伝達の第2波を媒介する。
【0008】
従って、エンドサイトーシスされたGPCRを調節することは、この大きな受容体ファミリーに関連する膨大な数の疾患および障害を治療する新規な方法を有利に提供し得る。
【発明の概要】
【0009】
GPCRのモジュレーターがエンドサイトーシスされた受容体と相互作用することができる、該モジュレーターをエンドソーム内腔に送達するための新しい方法が提供される。
【0010】
従って、一面においては、本発明は、コア/シェル構造を形成するように集合したコポリマー鎖のポリマーナノ粒子を含む水性液体を提供し、該コポリマー鎖は、
(i)ナノ粒子のコアを形成する酸応答性疎水性ポリマーブロック;および
(ii)ナノ粒子のシェルを形成し、水性液体によって溶媒和される親水性ポリマーブロックを有し、
ここで、該ナノ粒子は、そのコア内に、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0011】
一つの実施態様においては、本明細書で開示されるポリマーナノ粒子は、ミセルである
【0012】
別の面においては、本発明は、コア/シェル構造を形成するように集合したコポリマー鎖のポリマーナノ粒子を含む水性液体をそれを必要とする対象に投与することを含む、該対象におけるエンドソームGPCRシグナル伝達を調節する方法を提供し、該コポリマー鎖は、
(i)ナノ粒子のコアを形成する酸応答性疎水性ポリマーブロック;および
(ii)ナノ粒子のシェルを形成し、水性液体によって溶媒和される親水性ポリマーブロックを有し、
ここで、該ナノ粒子は、そのコア内に、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩を含み、
およびここで、該酸応答性ポリマーブロックは、エンドソーム内腔の酸性環境において遷移を受け、これにより、集合したコポリマー鎖が解体し、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩がエンドソームに放出される。
【0013】
一つの実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、エンドソームGPCRシグナル伝達の阻害剤またはその薬学的に許容される塩である。
【0014】
一面においては、本発明は、有効量の本発明による水性液体をそれを必要とする対象に投与することを含む、該対象におけるエンドソームGPCRシグナル伝達を調節する方法を提供する。
【0015】
別の実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、エンドソームNKRシグナル伝達の阻害剤またはその薬学的に許容される塩である。
【0016】
従って、本発明のさらなる面においては、有効量の本発明による水性液体をそれを必要とする対象に投与することを含む、エンドソームNKRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害の治療方法が提供される。
【0017】
別の実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、エンドソームCGRPおよび/若しくはCLRシグナル伝達の阻害剤またはその薬学的に許容される塩である。
【0018】
従って、本開示のさらなる面においては、有効量の本開示による水性液体をそれを必要とする対象に投与することを含む、エンドソームCGRP受容体シグナル伝達、例えば、CLRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害の治療方法が提供される。
【0019】
いくつかの実施態様においては、本明細書で開示される水性液体は、エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩をさらに含み、該エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、ポリマーナノ粒子のコア内に含まれる。
【0020】
従って、別の面においては、本明細書で提供されるのは、コア/シェル構造を形成するように集合したコポリマー鎖のポリマーナノ粒子を含む水性液体であり、該コポリマー鎖は、
(i)ナノ粒子のコアを形成する酸応答性疎水性ポリマーブロック;および
(ii)ナノ粒子のシェルを形成し、水性液体によって溶媒和される親水性ポリマーブロ
ックを有し、
ここで、該ナノ粒子はそのコア内に、
a)エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩;および
b)エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0021】
さらなる面においては、本明細書で提供されるのは、コア/シェル構造を形成するように集合したコポリマー鎖のポリマーナノ粒子を含む水性液体をそれを必要とする対象に投与することを含む、該対象におけるエンドソームGPCRシグナル伝達を調節する方法であり、該コポリマー鎖は、
(i)ナノ粒子のコアを形成する酸応答性疎水性ポリマーブロック;および
(ii)ナノ粒子のシェルを形成し、水性液体によって溶媒和される親水性ポリマーブロックを有し、
ここで、該ナノ粒子は、そのコア内に、
a)エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩;および
b)エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩を含み、
およびここで、該酸応答性ポリマーブロックは、エンドソーム内腔の酸性環境において遷移を受け、これにより、集合したコポリマー鎖が解体し、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩がエンドソームに放出される。
【0022】
いくつかの実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、エンドソームNKRシグナル伝達の阻害剤またはその薬学的に許容される塩である。
【0023】
いくつかの実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、CGRP受容体シグナル伝達、例えば、CLRシグナル伝達の阻害剤、またはその薬学的に許容される塩である。
【0024】
従って、別の実施態様においては、本明細書で提供されるのは、有効量の本開示による水性液体をそれを必要とする対象に投与することを含む、エンドソームGPCRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害の治療方法であり、ここで該疾患または障害は、CGRP受容体、例えば、CLR、および/またはNKRシグナル伝達によって媒介される疾患/障害である。
【0025】
別の態様においては、本明細書で提供されるのは、有効量の
1)第1の水性液体またはその医薬組成物(ここで、該第1の水性液体は、本明細書のどこにでも記載されているようにポリマーナノ粒子のコア内にNKR阻害剤を含む);および
2)第2の水性液体またはその医薬組成物(ここで、該第2の水性液体は、本明細書のどこにでも記載されているようにポリマーナノ粒子のコア内にCGRP受容体、例えば、CLRの阻害剤を含む)
をそれを必要とする対象に投与することを含む、該対象におけるエンドソームGPCRシグナル伝達を調節する方法である。
【0026】
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(「CGRP」)は、神経系全体で発現することが知られている。CGRP受容体は、カルシトニン受容体様受容体(「CLR」)、GPCR
、およびリガンド特異性を付与し、細胞表面へのCLR標的化を確実にする単一の膜貫通タンパク質である受容体活性修飾タンパク質1(RAMP1)を含む。有害な刺激は、脊髄の後角および末梢組織の一次感覚ニューロンの末端からのCGRP放出を引き起こす。CGRPは、CLR/RAMP1を活性化して脊髄ニューロンで痛覚を誘発し、末梢細動脈で神経原性炎症を引き起こす。Yarwoodら、(Proc.Natl.Acad.Sci. USA. 114(46):12309-12314。)を参照されたい。
【0027】
本発明のさらに別の面においては、本発明による水性液体を含む医薬組成物が提供される。
【0028】
本発明のこれらおよび他の面は、付随する実施例および特許請求の範囲に関連して以下の詳細な説明を読むと、当業者により明らかになるであろう。
本発明は、以下の非限定的な図は参照のみとして、例によって本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、DIPMAおよびBMAナノ粒子の概略図を示す。A)DIPMAナノ粒子は、P(PEGMA-co-DMAEMA)の疎水性コアおよびP(DIPMA-co-DEGMA)の親水性シェルで構成されている。一方、B)BMAナノ粒子は、同じ親水性シェルによって形成されるが、疎水性コアをBMAに置き換える。C)は、DIPMAナノ粒子のTEM画像を示す。上の画像はDIPMA-Apがロードされたナノ粒子を示し、下の画像はDIPMA-空ナノ粒子を示す。D)は、DIPMAおよびBMAナノ粒子のpH解体を示すグラフ表示を示す。ナイルレッドをロードした200μgのDIPMAおよびBMAナノ粒子を、7.4から5.0の範囲の異なるpHのPBS溶液に添加した。DIPMA-Nrナノ粒子の50%の解体が、pH6.08±0.064で観察されるが、BMA-Nrは、pHの変化に伴う解体特性を示さなかった。平均値±SEM。n=3。
図2図2は、H-NMRスペクトルのグラフ表示を示す。A)P(PEGMA-co-DMAEMA)を形成するための、カチオン性モノマーDMAEMAおよび親水性モノマーPEGMAの重合。B)P(PEGMA-co-DMAEMA)-b-(DIPMA-co-DEGMA)を形成するための、pH応答性モノマーDIPMAおよび電荷スクリーニングモノマーDEGMAの添加によるP(PEGMA-co-DMAEMA)の鎖延長。C)非pH応答性コポリマーP(PEGMA-co-DMAEMA)-b-(BMA)を形成するための、BMAによる、P(PEGMA-co-DMAEMA)の鎖延長。
図3図3は、P(PEGMA-co-DMAEMA)および結果として得られるジブロックコポリマーP(PEGMA-co-DMAEMA)-b-P(DIPMA-co-DEGMA)およびP(PEGMA-co-DMAEMA)-b-P(BMA-co-DEGMA)のGPCトレースのグラフ表示を示す。P(PEGMA-co-DMAEMA)-b-P(DIPMA-co-DEGMA)を形成するためのモノマーDIPMAおよびDEGMAによる鎖延長およびP(PEGMA-co-DMAEMA)-b-P(BMA-co-DEGMA)を形成するためのBMAによる鎖延長後に、高分子量へのシフト(すなわち、より短い保持時間)が観察された。
図4図4は、NKR-GFPでトランスフェクトされ、10nMのSPで刺激されたHEK-293細胞でのCy5で標識されたDIPMAナノ粒子の取り込みを示す画像を示す。DIPMA-Cy5ナノ粒子を、10nM SP添加の40分前にインキュベートした。画像を、SP添加のA)30分後およびB)60分後に撮った。原形質膜並びにエンドソームに局在するNKR-GFPが、観察される。DIPMA-Cy5ナノ粒子のNKRGFP陽性エンドソームとの共分布は、選択された全ての時点で観察される。スケールバー=1μm
図5図5は、SPによって刺激され、Apによって阻害された核ERKの濃度用量応答曲線のグラフ表示を示す。A)異なる濃度のSPを使用した経時的な核ERK応答。B)異なる濃度のApとプレインキュベートした後、5nM SPで刺激。C)SPおよびAp核の核ERK応答の65分の時間トレースのAUC。結果を、PDBu1μMに対する最大核ERK応答によって正規化された値として表す。平均値±SEM。n=6。
図6図6は、空のナノ粒子で刺激されたHEK-293およびHEK-hNKR細胞の細胞内カルシウム測定値のグラフ表示を示す。ベースラインを、10、3.16および1μgのナノ粒子を添加する前に5分間測定した A)およびB)は、DIPMAおよびBMAナノ粒子で刺激されたHEK-293およびHEK-hNKR細胞におけるi[Ca+2]測定にそれぞれ対応する。C)およびD)は、A)およびB)のAUCを示す。データを平均値±SEMとして示す。n=4。
図7図7は、HEK-hNKR細胞に対する核ERKシグナル伝達および細胞生存率の空のナノ粒子の効果を示す。A)ナノ粒子を、核ERKの活性化がないことを示す空のナノ粒子によって引き起こされる核ERK活性化の測定の前に30分間インキュベートした。B)核ERK時間トレースのAUC(n=6)。CおよびD)alamarBlue細胞生存率試薬を使用して評価した細胞の還元力に対するナノ粒子の効果(n=4)。データを平均値±SEMとして示す。
図8図8は、10μgの空のDIPMAおよびBMAナノ粒子で刺激されたHEK-hNKR細胞における核ERK測定値のグラフ表示を示す。ナノ粒子を、ベースライン読み取りの30分前に添加した。A)ベースラインを5分間測定した後、5nMのSPを添加した。B)Aに示す時間トレースの曲線下の面積。データを平均値±SEMとして示す。n=2
図9図9は、DIPMAナノ粒子の投与後の自発運動パターンの評価のグラフ表示を示す。動物をDIPMA-Apおよび対照ナノ粒子で処置し、落下までの潜時を処置後30~240分記録した。ナノ粒子は、ビヒクルと比較したとき、落下までの潜時に差を生じさせなかった。平均値±SEM。n=3。
図10図10は、髄腔内投与後のDIPMA-Cy5ナノ粒子の分布を示す。A)DIPMA-Cy5投与は、注射部位(L3-L4)内に投与後2時間で減少し始め、24時間後に完全に失われる局在した蛍光を示した。B)Aに示す画像の放射効率の定量化。平均値±SEM。n=3。C)ロータロッドを使用して評価したナノ粒子で処置した動物の自発運動(n=3)。
図11図11は、カプサイシン誘発性の急性疼痛モデルにおけるDIPMA-Apナノ粒子の鎮痛能力の評価を示す。ナノ粒子を、i.plカプサイシン注射の30分前にi.t投与し、機械的痛覚過敏を、A)カプサイシン刺激足(同側)およびB)非刺激足(対側)でフォンフレイ(von Frey)フィラメントを使用して評価した。値データを、基底フォンフレイ反応のパーセンテージとして示す。平均値±SEM。n=6
図12図12は、A)100、300nMおよび1μMのアプレピタント(濃度あたりn=4)、B)100、300若しくは500nMのアプレピタントをロードした10、30若しくは50μgのBMAナノ粒子(各濃度あたりn=6)、またはC)100、300若しくは500nMのアプレピタントをロードした10、30若しくは50μgの酸応答性DIPMAナノ粒子(各濃度あたりn=6)の投与後にランダルセリット(Randall-Selitto)電子痛覚計を使用して評価した慢性疼痛モデルにおけるDIPMA-Apナノ粒子の鎮痛能力の評価を示す。
図13図13は、DEAEMAおよびDIPMA粒子で処置した細胞における細胞生存率の指標としてのミトコンドリア機能のグラフ表示を示す。CellTiter Gloを使用してミトコンドリア活性を測定することにより、細胞生存率を決定した。細胞を、漸増で0%、5%、10%、20%および50%のDEGMAを含むDEAEMA(A~D)またはDIPMA(E~H)ナノ粒子で24時間まで処置した。細胞生存率を、ビヒクル対照のパーセンテージとして表した。平均値±S.E.M;n=4~5の個別実験。
図14図14は、DEAEMAおよびDIPMA粒子で処置した細胞における細胞死の指標としての核膜透過性のグラフ表示を示す。細胞死を、ヨウ化プロピジウムを使用して核膜透過性を測定することによって決定した。細胞を、漸増で0%、5%、10%、20%および50%のDEGMAを含むDEAEMA(A~D)またはDIPMA(E~H)ナノ粒子で24時間まで処置した。細胞死を、0.2%Triton X-100(最大細胞死)のパーセンテージとして表した。平均値±S.E.M;n=4~5の個別実験。
図15図15は、12時間、24時間、48時間、および72時間の曝露後の異なる濃度でのDEAMAおよびDIPMAナノ粒子の細胞生存率アッセイの結果を示す。
図16図16は、HEK-293細胞におけるDIPMAナノ粒子の取り込みおよび解体を示す。A)は、Rab5-GFPを発現する細胞へのDIPMA-Cy5ナノ粒子の取り込みを示す。B)は、30分後のRab5-GFP初期エンドソームおよびRab7-GFP後期エンドソームにおけるDIPMA-Cy5ナノ粒子の共局在を示す。C)は、NKRエンドサイトーシスを誘導するためのSPでの刺激および添加の30分後のNKR-GFPを含むエンドソームにおけるDIPMA-Cy5ナノ粒子の共局在を示す。D)~F)は、ハイコンテントイメージング(D、E)および共焦点顕微鏡(F)によって決定したDIPMA-COナノ粒子の取り込みを示す。D)は、クマリン153細胞蛍光の時間経過を示し;E)は、30分にわたる積分応答を示す。PitStop2(PS2)、Dyngo4a(Dy4)およびバフィロマイシンA(BFA)は、クマリン153細胞蛍光の蓄積を阻害した。A、B、C、F、代表的な結果、n=4~5の実験;D、E、n=4~5の実験。
図17図17は、HEK-293細胞におけるDIPMAナノ粒子の取り込みおよび解体を示す。A)60分後のRab5-GFP初期エンドソームおよびRab7-GFP後期エンドソームにおけるDIPMA-Cy5ナノ粒子の共局在を示す。B)は、NKRエンドサイトーシスを誘導するためのSPでの刺激の60分後のNKR-GFPを含むエンドソームにおけるDIPMA-Cy5ナノ粒子の共局在を示す。添加。代表的な結果、n=4~5の実験。
図18図18は、急性炎症性および神経因性疼痛に対するDIPMA-APおよびBMA-APナノ粒子の効果を示す。A)マウスにおける急性痛覚のカプサイシン(CAP)誘発性モデルにおいて、ビヒクル(Veh)、APまたはナノ粒子を、カプサイシンの足底内(i.pl.)注射の30分前に髄腔内(i.t.)注射によって投与した。マウスにおける持続性炎症性疼痛のCFA誘発性モデルにおいては、CFAを足底内注射によって投与し;48時間後、ビヒクル、APまたはナノ粒子が髄腔内注射によって投与した。慢性神経因性疼痛のSNSモデルを、ラットで研究した。ビヒクル、APまたはナノ粒子を、SNSの10日後に髄腔内注射によって投与した。足引っ込め反応を、マウスではフォンフレイフィラメント(VFF)を使用し、ラットではランダルセリット試験を使用して評価した。B)およびC)は、マウスにおけるカプサイシン誘発機械的アロディニアを示す。D)~F)は、マウスにおけるCFA誘発性の機械的痛覚過敏を示す。G)~I)は、ラットにおけるSNS誘発性の機械的痛覚過敏を示す。(n)は、動物数を示す。n=6。###=****、#=***。P<0.005。
図19図19は、SNSモデルにおける神経因性疼痛に対するDIPMA-APおよびBMA-APナノ粒子の効果を示す。慢性神経因性疼痛のSNSモデルを、ラットで研究した。ビヒクル、AP、DIPMA-AP、またはBMA-APを、SNSの10日後に髄腔内注射によって投与した。足引っ込め反応を、ランダルセリット試験を使用して評価した。A)は、時間経過に伴う引っ込め閾値の変動を示す。B)は、0~7時間の曲線下面積(AUC)プロットである。(n)は、動物数を示す。n=6。##=****、#=***。P<0.005。
図20図20は、DIPMA-APおよびBMA-APナノ粒子による疼痛の伝達の感作および活性化を示す。A)~F)は、SNSラットにおけるC線維反射およびワインドアップ(wind-up)を示す。C線維反射(A~C)およびワインドアップ(D~F)を、SNSの10日後に測定した。ビヒクル(Veh)、APまたはDIPMA-APを、髄腔内注射によって投与した。A)およびD)は、APおよびDIPMA-APを比較する代表的な記録を示す。B)およびE)は、効果の時間経過を示す。C)およびF)は、積分応答を示す。(n)動物数。n=5。##=****、P<0.05。G)~I)は、ラット脊髄のスライスにおけるニューロンのSP誘発興奮の細胞付着パッチクランプ記録を示す。G)は、代表的なトレース、n=6-8回の実験を示す。H)は、正規化された発火率を比較する。I)は、発火時間を比較する。n=6~8。**P<0.05。
図21図21は、DIPMA-APおよびBMA-APナノ粒子によるHEK293細胞のエンドソームにおけるNKRシグナル伝達の拮抗作用を示す。A)~C)は、ダイナミン野生型(Dyn WT、A)またはダイナミンK44E(Dyn K44E、B)を発現するHEK-hNKR細胞における核ERKのSP誘発活性化を示す。C)は、SP濃度-応答曲線を示す(n=6)。D)およびE)は、30分にわたるHEK293細胞における核ERK活性に対するBMA-空およびDIPMA-空の効果の欠如を示す(n=6~7)。F)は、24時間および48時間にわたるHEK293細胞の生存率に対するBMA-空およびDIPMA-空の効果の欠如を示す(n=4)。G)~I)は、HEK-hNKR細胞における核ERKのSP誘発活性化に対する遊離AP、BMA-APおよびDIPMA-APの効果を示す。細胞をAPまたはナノ粒子とともに30分間インキュベートし;それらを、SPでチャレンジした(洗浄なし、G)か、または洗浄し、アンタゴニストを含まない培地中に回収し、次いでSPでチャレンジした(洗浄後、H)。I)は、30分のERKアッセイのAUCである。結果を、PDBu1μMに対する最大核ERK応答によって正規化された値として表す。(n=6)。P<0.05。
図22図22は、HEK-hNKR細胞における核ERKのSP誘発活性化を示す。A)は、核ERK活性に対する段階的濃度のSPの効果を示す。B)は、SP濃度-応答曲線を示す。C)は、SP(5nM)に対する核ERK応答に対する段階的濃度のAPの効果を示す。D)は、AP濃度-応答曲線を示す。(n=7~8の実験)。
図23図23は、A)30nM、100nM、300nM、および1000nMのMK-3207(濃度あたりn=4)、およびB)30nM、50nM、および100nMのMK-3207(各濃度あたりn=4)をロードした酸応答性DIPMAナノ粒子の投与後にフォンフレイヘアによって評価した機械的アロディニアを伴うCFAモデルにおける酸応答性DIPMA-(MK-3207)ナノ粒子の鎮痛能力の評価を示す。
図24図24は、アプレピタント/MK-3207の初期ロード比(LC-MS評価)に対する1mg/mL DIPMAポリマー組成物中のロードされたアプレピタントおよびMK-3207(μM)の濃度を示す。平均値-/+ SD、n=4
図25図25は、120nMのアプレピタント+120nMのMK-3207(n=4);および(82nMのアプレピタント+12nMのMK-3207)、(81nMのアプレピタント+25nMのMK-3207)、および(80nMのアプレピタント+81nMのMK-3207)をロードした酸応答性DIPMAナノ粒子の投与後にフォンフレイヘアによって評価した機械的アロディニアを伴うCFAモデルにおける二重ロードDIPMA-(Ap+MK-3207)ナノ粒子の鎮痛能力の評価を示す(P<0.05、**P<0.01、#P<0.001;2元配置分散分析、ダネットの事後検定)。
図26図26は、120nMのアプレピタント+120nMのMK-3207(n=4);並びにDIPMA-Apナノ粒子(Apで30nM)+DIPMA-(MK-3207)ナノ粒子(MK-3207で30nM)、DIPMA-Apナノ粒子(Apで60nM)+DIPMA-(MK-3207)ナノ粒子(MK-3207で60nM)、およびDIPMA-Apナノ粒子(Apで120nM)+DIPMA-(MK-3207)ナノ粒子(MK-3207で120nM)の投与後にフォンフレイヘアによって評価した機械的アロディニアを伴うCFAモデルにおけるDIPMA-Apナノ粒子およびDIPMA-(MK3207)ナノ粒子の同時投与の鎮痛能力の評価を示す。(P<0.05、#P<0.001;2元配置分散分析、ダネットの事後検定)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の詳細な説明
この明細書では、当業者によく知られている多くの用語が使用されている。それにもかかわらず、明確化のために、多くの用語が定義される。
【0031】
用語「ハロ」は、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)、またはヨード(I)を指す。
用語「アシル」は、式-C(=O)-Rのラジカルを指し、ここで、Rは、化学置換基である。非限定的な例として、Rは、H、アルキル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、およびヘテロシクリルから独立して選択することができ、ここで、各Rは、本明細書の他の場所で定義されるように任意に置換されている。アシルの非限定的な例は、-C(=O)Meおよび-C(=O)Phを含む。
【0032】
用語「アシルオキシ」は、式-C(=O)-ORのラジカルを指し、ここで、Rは、化学置換基である。Rは、H、アルキル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、およびヘテロシクリルから独立して選択することができ、ここで、各Rは、本明細書の他の場所で定義されるように任意に置換されている。アシルオキシの非限定的な例は、-C(=O)OMeおよび-C(=O)OPhを含む。
【0033】
用語「アミノ」は、式-NRの窒素中心ラジカルを指し、ここで、各Rは、独立して置換基である。非限定的な例として、各Rは、H、アルキル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、およびヘテロシクリルから独立して選択することができ、ここで、各Rは、本明細書の他の場所で定義されるように任意に置換されている。アミノの非限定的な例は、N(アルキル)(例えば、NMe、NiPr)、NH、NH(アルキル)、およびN(Ph)を含む。
【0034】
用語「アルキル」は、示された数の炭素原子を含む、直鎖または分岐鎖であってもよい炭化水素鎖を指す。例えば、C1-10は、該基が1から10個(両端を含む)の炭素原子をその中に有してもよいことを示す。非限定的な例は、メチル、エチル、iso-プロピル、tert-ブチル、n-ヘキシルを含む。
【0035】
用語「ハロアルキル」は、1つ以上の水素原子が独立して選択されたハロで置き換えられているアルキルを指す。
【0036】
用語「アルコキシ」は、-O-アルキルラジカル(例えば、-OCH)を指す。
【0037】
用語「ハロアルコキシ」は、-O-ハロアルキルラジカル(例えば、-OCH)を指す。
【0038】
用語「アルキレン」は、分枝状または非分枝状の二価アルキル(例えば、-CH-)を指す。
【0039】
用語「アリーレン」などは、環系の二価形態、ここでは二価アリールを指す。
【0040】
用語「アルケニル」は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖であってもよい炭化水素鎖を指す。アルケニル部分は、示された数の炭素原子を含む。例えば、C2-6は、該基が2から6個(両端を含む)の炭素原子をその中に有してもよいことを示す。
【0041】
用語「アルキニル」は、1つ以上の炭素-炭素三重結合を有する直鎖または分枝鎖であってもよい炭化水素鎖を指す。アルキニル部分は、示された数の炭素原子を含む。例えば、C2-6は、該基が2から6個(両端を含む)の炭素原子をその中に有してもよいことを示す。
【0042】
用語「アリール」は、各環の0、1、2、3、または4個の原子が置換基で置換されていてもよい、6炭素単環式、10炭素二環式、または14炭素三環式芳香環系を指し、ここで、単環式ラジカルを含む環は、芳香族であり、二環式または三環式ラジカルを含む縮合環の少なくとも1つは、芳香族であり、例えばテトラヒドロナフチルである。アリール基の例は、フェニル、ナフチルなども含む。
【0043】
本明細書で使用される用語「シクロアルキル」または「カルボシクリル」は、3から10個の炭素、好ましくは3から8個の炭素、より好ましくは3から6個の炭素を有する飽和環状炭化水素基を含み、ここで、シクロアルキル基は、任意に置換されていてもよい。好ましいシクロアルキル基は、限定されることなく、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルを含む。
【0044】
用語「ヘテロアリール」は、単環式の場合は1-3個のヘテロ原子、二環式の場合は1-6個のヘテロ原子、または三環式の場合は1-9個のヘテロ原子を有する芳香族5-8員単環式、8-12員二環式、または11-14員三環式環系を指し、前記ヘテロ原子は、O、N、またはSから選択され(例えば、炭素原子、および単環式、二環式、または三環式の場合、それぞれ1-3、1-6、または1-9個のN、O、若しくはSのヘテロ原子)、ここで、各環の0、1、2、3、または4個の原子は、置換基で置換されていてもよく、およびここで、単環式ラジカルを含む環は、芳香族であり、二環式または三環式ラジカルを含む縮合環の少なくとも1つは、芳香族である(しかし、ヘテロ原子を含む環である必要はなく、例えばテトラヒドロイソキノリニル。例示的なヘテロアリール系は、以下の環系に由来するが、これらに限定されない:ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール(=[1,3]オキサゾール)、イソオキサゾール(=[1,2]オキサゾール)、チアゾール(=[1,3]チアゾール)、イソチアゾール(=[1,2]チアゾール)、[1,2,3]トリアゾール、[1,2,4]トリアゾール、[1,2,4]オキサジアゾール、[1,3,4]オキサジアゾール、[1,2,4]チアジアゾール、[1,3,4]チアジアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、[1,2,3]トリアジン、[1,2,4]トリアジン、[1,3,5]トリアジン、インドール、イソインドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン [1,3]ベンゾオキサゾール、[1,3]ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、インダゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、フタラジン、さまざまなナフチリジン、例えば[1,8]ナフチリジン、さまざまなチエノピリジン、例えばチエノ[2,3-b]ピリジンおよびプリン。
【0045】
用語「ヘテロシクリル」は、単環式の場合は1-3個のヘテロ原子、二環式の場合は1-6個のヘテロ原子、または三環式の場合は1-9個のヘテロ原子を有する非芳香族5-8員単環式、8-12員二環式、または11-14員三環式環系を指し、前記ヘテロ原子は、O、N、またはSから選択され(例えば、炭素原子、および単環式、二環式、または三環式の場合、それぞれ1-3、1-6、または1-9個のN、O、若しくはSのヘテロ原子)、ここで、各環の0、1、2または3個の原子は、置換基で置換されていてもよい。ヘテロシクリル基の例は、ピペラジニル、ピロリジニル、ジオキサニル、モルホリニル、テトラヒドロフランイルなどを含む。
【0046】
用語「置換された」は、分子の1つ以上の非水素原子上の水素を置換する置換基を有する部分を指す。「置換」または「で置換された」は、そのような置換が置換される原子および置換基の許容される原子価に従うという暗黙のただし書きを含み、置換は、例えば、転位、環化、脱離などによるものなどの変換を自発的に受けない安定な化合物に至ることが理解されるであろう。置換基は、例えば、任意に1つ以上のヒドロキシル、-NH、-NH(C1-3アルキル)、および-N(C1-3アルキル)で置換された-(C1-9アルキル);-(C1-9ハロアルキル);ハライド;ヒドロキシル;カルボニル[-C(O)OR、-C(O)Rなどの];チオカルボニル[-C(S)OR、-C(O)SR、および-C(S)Rなどの];任意に1つ以上のハライド、ヒドロキシル、-NH、-NH(C1-3アルキル)、および-N(C1-3アルキル)で置換された-(
1-9アルコキシ);-OPO(OH);ホスホネート[-PO(OH)および-PO(OR’)などの];-OPO(OR’)R’’;-NRR’;-C(O)NRR’;-C(NR)NR’R’’;-C(NR’)R’’;シアノ;ニトロ;アジド;-SH;-S-R;-OSO(OR);スルホネート[-SO(OH)および-SO(OR)などの];-SONR’R’’;および-SORを含み;ここで、R、R’およびR’’の各発生は、H;-(C1-9アルキル);任意に1-3個のR’’’で置換されたC6-10アリール;N、O、およびSから独立して選択される1-4個のヘテロ原子を有し任意に1-3個のR’’’で置換された5-10員のヘテロアリール;任意に1-3個のR’’’で置換されたC3-7カルボシクリル;並びにN、O、およびSから独立して選択される1-4個のヘテロ原子を有し任意に1-3個のR’’’で置換された3-8員のヘテロシクリルから独立して選択され;ここで、各R’’’は、-(C1-6アルキル)、-(C1-6ハロアルキル)、ハライド(例えば、F)、ヒドロキシル、-C(O)OR、-C(O)R、-(C1-6アルコキシル)、-NRR’、-C(O)NRR’、およびシアノから独立して選択され、ここで、RおよびR’の各発生は、Hおよび-(C1-6アルキル)から独立して選択される。いくつかの実施態様においては、置換基は、-(C1-6アルキル)、-(C1-6ハロアルキル)、ハライド(例えば、F)、ヒドロキシル、-C(O)OR、-C(O)R、-(C1-6アルコキシル)、-NRR’、-C(O)NRR’、およびシアノから選択され、ここで、RおよびR’の各発生は、Hおよび-(C1-6アルキル)から独立して選択される。
【0047】
用語「アプレピタント」、「ボフォピタント」、「L-733060」、「MK-3207」、および「オルセゲパント」は、以下の表の構造、化学名、およびCAS番号を有する化学物質を指す。
【0048】
【0049】
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「DIPMAナノ粒子」または「酸応答性DIPMAナノ粒子」は、P(PEGMA-co-DMAEMA)-b-P(DIPMA-co-DEGMA)ジブロックコポリマーから形成されるナノ粒子を意味する。図1に示すように、DIPMAナノ粒子は、P(PEGMA-co-DMAEMA)の疎水性コアおよびP(DIPMA-co-DEGMA)の親水性シェルで構成されている。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「DIPMA-Apナノ粒子」(または「DIPMA-APナノ粒子」)は、アプレピタントをロードした(すなわち、アプレピタントは、ナノ粒子のコア内に含まれている)P(PEGMA-co-DMAEMA)-b-P(DIPMA-co-DEGMA)ジブロックコポリマーから形成されたナノ粒子を意味する。従って、用語「DIPMA-(MK-3207)ナノ粒子」は、MK-3207をロードしたP(PEGMA-co-DMAEMA)-b-P(DIPMA-co-DEGMA)ジブロックコポリマーから形成されたナノ粒子を意味し;用語「DIPMA-(Ap+MK-3207)ナノ粒子」は、アプレピタントおよびMK-3207を二重にロードした(すなわち、アプレピタントおよびMK-3207の両方が、ナノ粒子のコア内に含まれている)P(PEGMA-co-DMAEMA)-bP(DIPMA-co-DEGMA)ジブロックコポリマーから形成されたナノ粒子を意味する。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「BMA-Apナノ粒子」は、アプレピタントがロードされた(すなわち、アプレピタントは、ナノ粒子のコア内に含まれている)P(PEGMA-co-DMAEMA)-b-P(BMA-co-DEGMA)ジブロックコポリマーから形成されたナノ粒子を意味する。
【0053】
サブスタンスP(SP)ニューロキニン1受容体(NKR)を、活性化時にエンドソームに盛んに輸送するプロトタイプのGPCRとして研究することにより、エンドソームGPCRが脊髄ニューロンにおける興奮および痛覚伝達の根底にある持続的なシグナルを伝達することが今や示された。SPは、細胞表面で迅速な一過性のシグナル伝達を開始し、その後、エンドソーム中へのアレスチン媒介インターナリゼーションおよび持続的なシグナル伝達を促進するためのシグナル伝達複合体のリクルートメントが続くことが見い出された。これは最終的に、持続的な脊髄ニューロンの興奮性および中枢性疼痛の伝達などの生理学的結果を伴う、MAPキナーゼERK1/2の長期活性および核移行を含む明確な細胞性の結果をもたらす。
【0054】
これらの知見は、エンドソームにおけるGPCRの標的化が最適な薬理学的介入に必要であることを示唆する。エンドソームが病態生理学的に重要なプロセスの根底にある区画化されたGPCRシグナル伝達のプラットフォームであるという概念は、受容体シグナル特異性および治療標的化にとって意味を有する。エンドソーム輸送により、GPCRは細胞内区画においてシグナルを生成し、これは同じGタンパク質およびβarrを活性化するさまざまな受容体がどのように応答を特異的に調節できるかを説明し得る。エンドソームへのGPCRモジュレーターの送達により、有効性および選択性が強化された、疾患関連プロセスの根底にあるシグナルの標的化が可能になり得る。
【0055】
驚くべきことに、本発明によるポリマーナノ粒子を利用して、GPCRの疎水性モジュレーターを有効にエンドソーム内腔にインタクトに送達できることができ、そこでそれらはエンドサイトーシスされた受容体と効率的に相互作用することができることが今や見い出された。
【0056】
本発明のポリマーナノ粒子のインビトロ評価は、空のナノ粒子の投与がi[Ca+2]流入を妨害も誘発もせず、対照ナノ粒子のみが核ERKを増加させたことを示す。逆に、NKRアンタゴニストアプレピタント(Ap)をロードしたポリマーナノ粒子は、エンドソームNKRシグナル伝達を媒介するとしてJensenらによって以前に記載されたSPにトリガーされる核ERKを減少させることができた(Jensen,D.D.ら、Sci.Transl.Med. 2017、31(9) 392)。ロータロッドを使用した評価では、ナノ粒子の髄腔内投与がマウスの自発運動パターンを変更しないことも見い出された。本発明のポリマーナノ粒子を、主にTRPV1受容体の活性化を介して引き起こされる(Story,G.M.ら、Cell. 2003、112(6)、81
9-29)カプサイシン急性疼痛モデル(Sakurada,T.ら、Neuropharmacology 1992、31(12)、1279-85)で試験したとき、4時間のカプサイシン効果を通して、DIPMA-Apナノ粒子で持続的かつ有意な鎮痛が観察された。カプサイシンは、ラミナI/IIにおけるNKR発現後角ニューロン上でNKR(Sakurada,T.ら、Neuropharmacology 1992、31(12)、1279-85)およびホスホノERKタンパク質(pERK)(Jensen,D.D.ら、Sci.Transl.Med. 2017、31(9) 392)の発現を増加させることも知られており、これは、ナノ粒子の鎮痛効果がNKRのエンドソームシグナル伝達のダウンレギュレーションに起因し得ることを示す。これらの知見は、ポリマーナノ粒子を介した疎水性GPCRモジュレーターの送達が、GPCRのエンドソームシグナル伝達を選択的に阻害するための適切かつ効率的な選択肢であり得ることを示唆する。
【0057】
一面においては、本発明は、コア/シェル構造を形成するように集合したコポリマー鎖のポリマーナノ粒子を含む水性液体を提供し、該コポリマー鎖は、
(i)ナノ粒子のコアを形成する酸応答性疎水性ポリマーブロック;および
(ii)ナノ粒子のシェルを形成し、水性液体によって溶媒和される親水性ポリマーブロックを有し、
ここで、該ナノ粒子は、そのコア内に、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩を含む。
【0058】
一つの実施態様においては、本明細書で開示されるポリマーナノ粒子は、ミセルである。
【0059】
別の面においては、本発明は、コア/シェル構造を形成するように集合したコポリマー鎖のポリマーナノ粒子を含む水性液体をそれを必要とする対象に投与することを含む、該対象におけるエンドソームGPCRシグナル伝達を調節する方法を提供し、該コポリマー鎖は、
(i)ナノ粒子のコアを形成する酸応答性疎水性ポリマーブロック;および
(ii)ナノ粒子のシェルを形成し、水性液体によって溶媒和される親水性ポリマーブロックを有し、
ここで、該ナノ粒子は、そのコア内に、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩を含み、
およびここで、該酸応答性疎水性ポリマーブロックは、エンドソーム内腔の酸性環境において遷移を受け、これにより、集合したコポリマー鎖が解体し、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩がエンドソームに放出される。
【0060】
いくつかの実施態様においては、方法は、有効量のエンドソームGPCRシグナル伝達の第2のモジュレーターまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することをさらに含む。エンドソームGPCRシグナル伝達の第2のモジュレーターは、本明細書のどこにでも記載されているとおりであり得る。
【0061】
「水性液体」または「水性環境」への言及は、少なくとも50重量%の水を含む液体媒体を意味すると理解されるであろう。従って、水性液体媒体は、1つ以上の他の混和性共溶媒を含んでもよい。いくつかの実施態様においては、液体媒体は、主に水、例えば、少なくとも約70重量%、または少なくとも約80重量%、または少なくとも約90重量%、または少なくとも約95重量%の水を含むであろう。本発明のいくつかの実施態様においては、液体媒体が実質的に水および/または重水からなることが望ましいこともある。「水性液体」または「水性環境」は、例えば、本明細書で定義される医薬組成物、並びに
細胞外および細胞内環境並びにエンドソーム内腔内の環境を含むがこれらに限定されない生理学的環境を含む。
【0062】
誤解を避けるために、本明細書での水性液体または水性環境への言及は、その媒体中の他の成分の存在を排除することを意図するものではない。水性液体は、ポリマーナノ粒子(例えば、ポリマーミセルナノ粒子)を含み、また、例えば、pHを調節し得る1つ以上の添加剤を含んでもよい。従って、実質的に水からなる液体媒体は、1つ以上の可溶性または不溶性の非液体添加剤を含んでもよい。
【0063】
本明細書で開示されるポリマーナノ粒子は、クラシン(clathin)依存性および非依存性エンドサイトーシスを介して迅速に細胞にインターナライズし得ることが今や示された。エンドソーム内の細胞小器官のpHは厳密に制御されており、初期エンドソームにおける弱酸性から後期エンドソーム/リソソームにおける強酸性まで及ぶ。pH制御は、プロトンリーク、CICクロライドチャネルまたはNa,K-ATPaseなどの多くの因子によって調節され得る。しかしながら、それは、主に液胞ATPaseの活性によって決定され、その機能は、プロトンを細胞質からエンドソームの内腔に汲み出すことである(Kane,P.M.、Microbiol.Mol.Biol.Rev. 2006、70、177-91)。
【0064】
従来のナノ粒子とは異なり、本発明に従って使用されるポリマーナノ粒子は、コポリマー鎖の集合で形成されており、該コポリマー鎖は、生理学的または塩基性pHで疎水性であり、ナノ粒子のコアを形成する酸応答性ポリマーブロック、および水性液体によって溶媒和される親水性ポリマーブロックを有する。当業者は、(a)液体媒体によって溶媒和される親水性ポリマーブロックがナノ粒子の「シェル」または「コロナ」を表し、(b)ナノ粒子のコアを形成する酸応答性疎水性ポリマーブロックが生理学的または塩基性pHの水性液体では不十分にしか溶媒和されないことを理解するであろう。当業者はまた、酸応答性ポリマーが酸性環境において物理的変化または遷移を受けるポリマーであることを理解するであろう。
【0065】
以下でより詳細に論じられるように、コポリマー鎖の酸応答性疎水性ポリマーブロックは、ナノ粒子のコアを形成するのみならず、ナノ粒子の解体を促進する手段も提供する。酸応答性疎水性ポリマーブロックは、酸性環境にさらされると遷移を受けることにより、解体のためのこの手段を提供する。
【0066】
エンドソーム内腔の酸性環境において「遷移を受ける」酸応答性疎水性ポリマーブロックへの言及は、エンドソーム内腔の酸性環境において、ポリマーコアの溶媒和、コポリマー鎖の解離およびエンドソームGPCRの疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩のエンドソームへの放出につながる親水性遷移を受ける酸応答性疎水性ポリマーブロックを指すことが理解されるであろう。
【0067】
一例として、本発明のナノ粒子の疎水性コア内に含まれる酸応答性官能基は、エンドソーム内腔の酸性環境においてプロトン化され、酸応答性ポリマーブロックの親水性遷移をもたらし、コアの溶媒和およびコポリマー鎖の解離につながり、これにより、次いでエンドソームGPCRの疎水性モジュレーターがエンドソーム内腔に放出されると考えられている。
【0068】
本明細書に記載の「酸性環境」は、生理学的pHすなわちpH7.4未満のpHを有する水性環境を指すことが理解されるであろう。従って、用語「酸性環境」は、強酸性環境並びに弱酸性環境を示すことが理解されるであろう。適切なpH範囲は、約pH1からpH7.3の範囲にあるであろう。一つの実施態様においては、pH範囲は、約pH2から
約pH7の範囲にあるであろう。別の実施態様においては、pHは、約pH3から約pH7、約pH4から約pH7、または約pH5から約pH7の範囲内であろう。好ましくは、pHは、約pH5.5から約pH7の範囲内であろう。より好ましくは、pHは、約pH5.9および約pH6.5の範囲内(例えば、約pH6.1)であろう。
【0069】
一つの実施態様においては、本明細書で開示されるポリマーナノ粒子は、ミセルである。用語「ミセル」は、液体媒体内に分散された両親媒性分子の集合または凝集体を定義するものとして当技術分野でよく知られている。水性液体媒体中の従来のミセルは、親水性を示し、周囲の水性液体媒体によって溶媒和される、またミセルの中心またはコアを形成するように分子の疎水性セクションまたは領域を隔離するセクションまたは領域を有する集合分子からなる。このタイプのミセルは、一般的に「順相ミセル」または「水中油ミセル」として呼ばれる。
【0070】
ミセルは、典型的には球形または回転楕円体の形状であるが、円筒形および二重層の形状も含み得る。与えられたミセルの形状およびサイズは、典型的にはそれが形成される両親媒性分子の性質並びに両親媒性分子の濃度、温度、pHおよびイオン強度などの液体媒体の特性によって決定される。ミセルを形成するプロセスは、一般的にミセル化と呼ばれる。集合した両親媒性分子はまた、「ミセル状の」集合した両親媒性分子として呼ばれることもある。
【0071】
いくつかの実施態様においては、本発明に従って使用されるナノ粒子は、1nm-1000nmの直径を有する。一つの実施態様においては、本発明に従って使用されるナノ粒子は、5nm-200nmの直径を有する。一つの実施形態においては、本発明に従って使用されるナノ粒子は、5nm-150nmの直径を有する。一つの実施態様においては、本発明に従って使用されるナノ粒子は、15-120nm(例えば、15-100nm、20-90nm、25-80nm、25-70nm、25-60nm、25-50nm、または25-45nm)の直径を有する。
【0072】
本発明に従って使用されるナノ粒子は、集合したコポリマー鎖のナノ粒子である。換言すると、ナノ粒子はコポリマー鎖から形成されるか、またはコポリマー鎖で形成される。コポリマー鎖は、ナノ粒子のコアを形成する酸応答性ポリマーブロック、および液体媒体によって溶媒和されているポリマーブロックを含む。従って、当業者は、コポリマー鎖が両親媒性を示すことを理解するであろう。本発明に従って使用されるナノ粒子は、図1Aを参照してさらに説明されてもよい。すなわち、コポリマー鎖は、一方のブロックが酸応答性疎水性ポリマーブロックによって表され、他方のブロックが水性液体によって溶媒和され得る親水性ポリマーによって表されるA-Bジブロックコポリマーとして説明されてもよい。コポリマー鎖の集合は、酸応答性疎水性ポリマーブロックがナノ粒子のコアを形成し、液体媒体によって溶媒和される親水性ポリマーブロックがシェルまたはコロナを形成するナノ粒子を生じさせる。
【0073】
図1Aに示され、本明細書で記載されるコポリマー鎖は、A-Bジブロックコポリマーであるが、本発明に従って使用されるコポリマー鎖は、そのような構造に限定されない。特に、コポリマー鎖がポリマーナノ粒子を形成することができ、(a)ナノ粒子のコアを形成する酸応答性疎水性ポリマーブロック、および(b)生理学的または塩基性pHで液体媒体によって溶媒和されている親水性ポリマーブロックを含む限り、コポリマーの組成または構造に関しては何の特別な制限もない。
【0074】
一例として、コポリマー鎖は、A-B-Aトリブロックコポリマー構造を有してもよく、ここで、Aブロックは、同一であっても異なっていてもよい液体媒体によって溶媒和されることができる親水性ポリマーを表し、Bブロックは、ナノ粒子のコアを形成する疎水
性酸応答性ポリマーを表す。
【0075】
コポリマー鎖は、線状または分枝状であってもよい。
【0076】
コポリマー鎖は、1つ以上の酸応答性疎水性ポリマーブロック、および生理学的または塩基性pHで液体媒体によって溶媒和される1つ以上の親水性ポリマーブロックを含んでもよい。各ポリマーブロックは、独立して線状または分枝状であってもよい。各ポリマーブロックは、独立してホモ-またはコポリマーであってもよい。
【0077】
本発明に従って使用されるコポリマー鎖は、一般に約600から約130,000の範囲の総数平均分子量を有するであろう。いくつかの実施態様においては、本発明に従って使用されるコポリマー鎖は、約1,000から約100,000の範囲の総数平均分子量を有する。特定の実施態様においては、本発明に従って使用されるコポリマー鎖は、約5,000から約75,000の範囲の総数平均分子量を有する。特定の実施態様においては、本発明に従って使用されるコポリマー鎖は、約10,000から約50,000の範囲の総数平均分子量を有する。
【0078】
これに関連して、液体媒体によって溶媒和されるポリマーブロックの数平均分子量は、一般に約100から約50,000(例えば、500から約50,000、1,000から約40,000、2000から約30,000、5,000から約30,000)の範囲であり、ナノ粒子のコアを形成する刺激応答性ポリマーブロックの数平均分子量は、一般に約500から約80,000(例えば、1,000から約70,000、2,000から約60,000、3,000から約50,000、5,000から約40,000、5,000から約30,000、10,000から約30,000)の範囲であろう。
【0079】
本明細書における数平均分子量への言及は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定されるものを意味することが意図される。
【0080】
酸応答性ポリマーブロック(例えば、酸応答性疎水性ポリマーブロック)は、第一級、第二級、および第三級アルキルアミンを含むアミン基、窒素含有ヘテロシクリル(例えば、モルホリニル、ピロリジニル、ピペラジニル、およびピペリジニル)、ピリジン、およびエンドソーム内腔の酸性環境においてプロトン化される他の窒素含有ヘテロアリール(例えば、イミダゾール)などの官能基を含むエチレン性不飽和モノマーに由来してもよい。酸応答性ポリマーブロックは、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルまたはアミノエチルなどのエチレン性不飽和モノマーから調製されてもよい。酸応答性ポリマーはまた、アミノ酸(例えばポリリジン)からの若しくはタンパク質(例えばリゾザイム、アルブミン、カゼイン)などの天然に存在するポリマー由来のポリペプチド、またはDNAなどの核酸として調製されてもよい。
【0081】
一つの実施態様においては、酸応答性ポリマーブロックは、以下から選択されるエチレン性不飽和モノマー由来であってもよい。
【0082】
【化1】
【0083】
一つの実施態様においては、酸応答性ポリマーブロックは、以下から選択されるエチレン性不飽和モノマー由来であってもよい。
【0084】
【化2】
【0085】
一つの実施態様においては、酸応答性ポリマーブロックは、以下から選択されるエチレン性不飽和モノマー由来であってもよい。
【0086】
【化3】
【0087】
一つの実施態様においては、酸応答性ポリマーブロックは、ポリアルキレンオキシドメタクリレートモノマーと共重合されるアミン基などの官能基を含むエチレン性不飽和モノマー由来であってもよい。理論に拘束されることを望まないが、官能基を含むモノマーとポリアルキレンオキシドメタクリレートモノマーとの共重合は、いったんポリマーナノ粒子の解離が起こったときに、プロトン化ポリマーに関連するいかなる細胞毒性をも低減するのに役立ち得ると考えられている。
【0088】
コポリマー鎖が水性液体中でナノ粒子を形成するように集合するという条件で、生理学的または塩基性pHで水性液体によって溶媒和されるポリマーブロックの性質または組成
に関して特に何の制限もない。このポリマーブロックは、通常は酸応答性ポリマーブロックではないであろう。
【0089】
ブロックは、ブロックに親水性を付与し、水性液体において溶媒和される能力を集合的に促進する十分に重合されたモノマー残基を含まなければならない。当業者は、ポリマー鎖に親水性を提供することができるエチレン性不飽和モノマーを知っているであろう。そのようなエチレン性不飽和モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、またはそれらのコポリマーを含むが、これらに限定されない。
【0090】
コポリマー鎖が本明細書に記載のように機能するナノ粒子を形成できるという条件で、コポリマー鎖の各ブロックは、さまざまなエチレン性不飽和モノマーに由来する重合されたモノマー残基を含んでもよい。
【0091】
ポリマー鎖の形成に使用される一般的なエチレン性不飽和モノマーは、ラジカル重合プロセスによって重合できるものを含む。モノマーは、他のモノマーと重合できるべきである。さまざまなモノマーの共重合性を決定する要因は、当技術分野で十分に文書化されており、例えば、Greenlee,R.Z.、ポリマーハンドブック第3版(Brandup,J.およびImmergut,E.H.編) Wiley:New York、1989 p II/53を参照されたい。
【0092】
そのようなエチレン性不飽和モノマーの例は、式(I):
【0093】
【化4】
【0094】
(式中、UおよびWは、-COH、-CO、-COR、-CSR、-CSOR、-COSR、-CONH、-CONHR、-CONR 、水素、ハロゲンおよび任意に置換されたC-Cアルキルから独立して選択されるかまたはUおよびWが一緒になってそれ自体任意に置換されていてもよいラクトン、無水物またはイミド環を形成し、ここで、任意の置換基は、ヒドロキシ、-COH、-CO、-COR、-CSR、-CSOR、-COSR、-CN、-CONH、CONHR、-CONR 、-OR、-SR、-OCR、-SCOR、および-OCSRから独立して選択され;
【0095】
Vは、水素、R、-COH、-CO、-COR、-CSR、-CSOR、-COSR、-CONH、-CONHR、-CONR 、-OR、-SR、-OCR、-SCOR、および-OCSRから選択され;
【0096】
UおよびVは、それぞれが結合している炭素と一緒になって、5-8個の環原子を含む複素環を形成し、ここで、1-3個の環原子は、それぞれN、N(H)、O、およびSから独立して選択されるヘテロ原子であり、ここで、該複素環は、C-Cアルキル、オキソ、およびC-Cアルコキシから選択される1つ以上の置換基で任意に置換され;
【0097】
各Rは、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたカルボシクリル、任意に置換されたヘテロシクリル、任意に置換されたアリールアルキル、任意に置換されたヘテロアリールアルキル、任意に置換されたアルキルアリール、任意に置換されたアルキルヘテロアリール、および任意に置換されたポリマー鎖から独立して選択される)のものを含む。
【0098】
各Rはまた、任意に置換されたC-C22アルキル(例えば、1つ以上のC10ジアルキルアミノで任意に置換されたアルキル;1つ以上のヘテロシクリルで任意に置換されたアルキル;1つ以上のカルボシクリルで任意に置換されたアルキル;1つ以上のアリールで任意に置換されたアルキル;または1つ以上のヘテロアリールで任意に置換されたアルキル、ここで、ヘテロシクリル、カルボシクリル、アリール、およびヘテロアリールは、本明細書の他の場所で定義されるようにそれぞれさらに任意に置換される)、任意に置換されたC-C22アルケニル、任意に置換されたC-C22アルキニル、任意に置換されたC-C18アリール、任意に置換されたC-C18ヘテロアリール、任意に置換されたC-C18カルボシクリル、任意に置換されたC-C18ヘテロシクリル、任意に置換されたC-C24アリールアルキル、任意に置換されたC-C18ヘテロアリールアルキル、任意に置換されたC-C24アルキルアリール、任意に置換されたC-C18アルキルヘテロアリール、および任意に置換されたポリマー鎖から独立して選択されてもよい。
【0099】
はまた、任意に置換されたC-C18アルキル、任意に置換されたC-C18アルケニル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたカルボシクリル、任意に置換されたヘテロシクリル、任意に置換されたアラルキル、任意に置換されたヘテロアリールアルキル、任意に置換されたアルカリール、任意に置換されたからアルキルヘテロアリールおよびポリマー鎖から選択されてもよい。
【0100】
一つの実施態様においては、Rは、任意に置換されたC-Cアルキルから独立して選択されてもよい。
【0101】
いくつかの実施態様においては、Rの任意の置換基の例は、それらの塩および誘導体を含む、アルキレンオキシジル(エポキシ)、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、ホルミル、アルキルカルボニル、カルボキシ、スルホン酸、アルコキシ-またはアリールオキシ-カルボニル、イソシアナート、シアノ、シリル、ハロ、アミノ(例えば、ジアルキルアミノ)、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、およびヘテロシクリルから選択されるものを含み、ここで、Rの各任意の置換基は、C-C18アルキル、C-C18アルケニル、C-C18アルキニル、ヒドロキシ、C-C18アルコキシ、アシル、およびアシルオキシから選択される1つ以上の置換基でさらに任意に置換される。
【0102】
ポリマー鎖の例は、ポリアルキレンオキシド、ポリアリーレンエーテルおよびポリアルキレンエーテルから選択されるものを含む。
【0103】
式(I)のモノマーの例は、無水マレイン酸、N-アルキルマレイミド、N-アリールマレイミド、フマル酸ジアルキルおよび環化重合可能なモノマー、アクリレートおよびメタクリレートエステル、アクリルおよびメタクリル酸、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、およびメタクリロニトリル、これらのモノマーの混合物、並びにこれらのモノマーと他のモノマーとの混合物を含む。
【0104】
式(I)のモノマーの他の例は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロ
ピルメタクリレート(全ての異性体)、ブチルメタクリレート(全ての異性体)、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、メタクリロニトリル、アルファ-メチルスチレン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート(全ての異性体)、ブチルアクリレート(全ての異性体)、2-エチルヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、アクリロニトリル、スチレン、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート(全ての異性体)、ヒドロキシブチルメタクリレート(全ての異性体)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、無水イタコン酸、グリシジルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート(全ての異性体)、ヒドロキシブチルアクリレート(全ての異性体)、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルアクリレート、トリエチレングリコールアクリレート、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミド、N-n-ブチルメタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-エチロールメタクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-N-ブチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-エチロールアクリルアミド、ジエチルアミノスチレン(全ての異性体)、ジエチルアミノα-メチルスチレン(全ての異性体)、p-ビニルベンゼンスルホン酸、p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、トリエトキシシリルプロピルメタクリレート、トリブトキシシリルプロピルメタクリレート、ジメトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジエトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジブトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジイソプロポキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジメトキシシリルプロピルメタクリレート、ジエトキシシリルプロピルメタクリレート、ジブトキシシリルプロピルメタクリレート、ジイソプロポキシシリルプロピルメタクリレート、トリメトキシシリルプロピルアクリレート、トリエトキシシリルプロピルアクリレート、トリブトキシシリルプロピルアクリレート、ジメトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジエトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジブトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジイソプロポキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジメトキシシリルプロピルアクリレート、ジエトキシシリルプロピルアクリレート、ジブトキシシリルプロピルアクリレート、ジイソプロポキシシリルプロピルアクリレートから選択される官能性メタクリレート、アクリレートおよびスチレン、酢酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、塩化ビニル、フッ化ビニル、臭化ビニル、無水マレイン酸、N-フェニルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール、ブタジエン、エチレンおよびクロロプレンを含む。このリストは網羅的ではない。
【0105】
いくつかの実施態様においては、コポリマー鎖の各ブロックは、式(I-a):
【0106】
【化5】
【0107】
(式中、Uは、-COH、-CO1U、-COR1U、-CSR1U、-CSOR1U、-COSR1U、-CONH、-CN、-CONHR1U、-CONR1U 、水素、ハロゲンおよび任意に置換されたC-Cアルキル、-OR1U、-SR1U
、-OCR1U、-SCOR1U、および-OCSR1Uから選択され;
【0108】
は、水素、R1V、-COH、-CO1V、-COR1V、-CSR1V、-CSOR1V、-COSR1V、-CONH、-CONHR1V、-CONR1V 、-OR1V、-SR1V、-OCR1V、-SCOR1V、および-OCSR1Vから選択されるか;または
【0109】
およびVは、それぞれが結合している炭素と一緒になって、5-8個の環原子を含む複素環を形成し、ここで、1-3個の環原子は、それぞれN、N(H)、O、およびSから独立して選択されるヘテロ原子であり、該複素環は、C-Cアルキル、オキソ、およびC-Cアルコキシから選択される1つ以上の置換基で任意に置換され;
【0110】
1UおよびR1Vのそれぞれは、独立して選択されるRであり、ここで、Rは、上記で式(I)について定義されたとおりである)のエチレン性不飽和モノマー由来の重合されたモノマー残基を含んでもよい。
【0111】
式(I-a)の特定の実施態様においては、Uは、-COH、-CO1U、-COR1U、-CONH、-CONHR1U、および-CONR1U から選択される。
上述の特定の実施態様においては、Uは、-CO1Uから選択される。
上述の特定の実施態様においては(Uが-COH、-CO1U、-COR1U、-CONH、-CONHR1U、および-CONR1U から選択されるとき)、各R1Uは、任意に置換されたC-C22アルキル[例えば、アミノ、例えば、ジアルキルアミノで置換されたC-C22アルキル;またはアルコキシで置換されたC-C22アルキル(ここで、アルコキシは、任意に置換され、例えば、R1Uは、
【0112】
【化6】
【0113】
である)]および任意に置換されたポリマー鎖(例えば、ポリエチレンオキシドなどのポリアルキレンオキシド)から選択される。
【0114】
式(I-a)の特定の実施態様においては、Vは、水素およびR1Vから選択される。
上述の特定の実施態様においては(Vが水素およびR1Vから選択されるとき)、R1Vは、任意に置換されたC-C22アルキル(例えば、非置換のC-Cアルキル、例えば、メチル)から独立して選択される。
【0115】
いくつかの実施態様においては、式(I-a)のエチレン性不飽和モノマーは、式(I-a0):
【0116】
【化7】
【0117】
[式中、Uは、水素、-COR1U、-CO1U、または-C(O)NHR1Uであり;
は、HまたはR1Vであり;
1Uは、
(i)1つ以上のN(C-C10アルキル)またはNH(C-C10アルキル)で置換されたC-C22アルキル;
(ii)4-10個の環原子を含むヘテロシクリルで置換されたC-C22アルキル(ここで、1-3個の環原子は、ヘテロ原子であり、それぞれがN、N(H)、N(C1-10アルキル)、およびOからなる群から独立して選択され、ただし、該ヘテロシクリルは、1つ以上の環窒素原子を含み、およびここで、該1つ以上のヘテロシクリル環炭素原子は、任意に置換されている);
【0118】
(iii)5-10個の環原子を含むヘテロアリールで置換されたC-C22アルキル(ここで、1-4個の環原子は、ヘテロ原子であり、それぞれがN、N(H)、N(C1-10アルキル)、O、およびSからなる群から独立して選択され、ただし、該ヘテロアリールは1つ以上の環窒素原子を含み、およびここで、該1つ以上のヘテロアリール環炭素原子は、任意に置換されている);および
【0119】
(iv)4-10個の環原子を含むヘテロシクリル(ここで、1-3個の環原子は、ヘテロ原子であり、それぞれがN、N(H)、N(C1-10アルキル)、およびOからなる群から独立して選択され、ただし、該ヘテロシクリルは、1つ以上の環窒素原子を含み、およびここで、該1つ以上のヘテロシクリル環炭素原子は、任意に置換されている)からなる群から選択され;
【0120】
1Vは、
(i)任意に置換されたC1-6アルキル;
(ii)5-10個の環原子を含むヘテロアリール(ここで、1-4個の環原子は、ヘテロ原子であり、それぞれがN、N(H)、N(C1-10アルキル)、O、およびSからなる群から独立して選択され、ただし、該ヘテロアリールは、1つ以上の環窒素原子を含み、およびここで、該1つ以上のヘテロアリール環炭素原子は、任意に置換されている);および
(iii)任意に置換されたC6-10アリール(ここで、該アリールは、1つ以上のアミノアルキル、モノアミノアルキル、またはジアミノアルキルで置換されている)からなる群から選択される]である。
【0121】
式(I-a0)のいくつかの実施態様においては、Uは、-COR1U、-CO1U、または-C(O)NHR1U(例えば、-CO1U、または-C(O)NHR1U)である。
式(I-a0)の特定の実施態様においては、Vは、HまたはR1Vであり;R1Vは、任意に置換されたC1-6アルキル(例えば、非置換のC1-6アルキル、例えば、メチル)である。
式(I-a0)の特定の実施態様においては、R1Uは、1つ以上のN(C-C10アルキル)(例えば、N(C-C10アルキル))で置換されたC-C22アルキルである。
式(I-a0)の特定の実施態様においては、R1Uは、1つ以上のNH(C-C10アルキル)(例えば、NH(C-C10アルキル))で置換されたC-C22アルキルである。
【0122】
式(I-a0)の特定の実施態様においては、R1Uは、5-7個の環原子を含むヘテロシクリルで置換されたC-C22アルキルであり、ここで、1-3個の環原子は、そ
れぞれN、N(H)、N(C1-10アルキル)、およびOからなる群から独立して選択されるヘテロ原子であり、ただし、該ヘテロシクリルは、1つ以上の環窒素原子を含み、およびここで、1つ以上のヘテロシクリル環炭素原子は、任意に置換されている。上述の実施態様の非限定的な例として、R1Uは、ピロリジニル、モルホリニル、またはピペリアジニルで置換されたC-Cアルキルであり得る。
【0123】
式(I-a0)の特定の実施態様においては、R1Uは、5-10個(例えば、5または6個)の環原子を含むヘテロアリールで置換されたC-C22アルキルであり、ここで、1-4の環原子は、それぞれN、N(H)、N(C1-10アルキル)、O、およびSからなる群から独立してから選択されるヘテロ原子であり、ただし、該ヘテロアリールは、1つ以上の環窒素原子を含み、およびここで、1つ以上のヘテロアリール環炭素原子は、任意に置換されている。上述の実施態様の非限定的な例として、R1Uは、イミダゾリルまたはピリジニルで置換されたC-Cアルキルであり得る。
【0124】
式(I-a0)の特定の実施態様においては、Uは、-CO1Uであり;R1Uは、N(C-C10アルキル)(例えば、N(C-C10アルキル))で置換されたC-C22アルキル(例えば、C2-4)である。
式(I-a0)の特定の実施態様においては、Uは、-CO1Uであり;R1Uは、NH(C-C10アルキル)(例えば、NH(C-C10アルキル))で置換されたC-C22アルキル(例えば、C2-4)である。
式(I-a0)の特定の実施態様においては、Uは、-CO1Uであり;R1Uは、5-7個の環原子を含むヘテロシクリルで置換されたC-C22アルキルであり、ここで、1-3個の環原子は、それぞれN、N(H)、N(C1-10アルキル)、およびOからなる群から独立して選択されるヘテロ原子であり、ただし、該ヘテロシクリルは、1つ以上の環窒素原子を含み、およびここで、1つ以上のヘテロシクリル環炭素原子は、任意に置換されている。
【0125】
式(I-a0)の特定の実施態様においては、Uは、-CO1Uであり;R1Uは、5-10個の環原子を含むヘテロアリールで置換されたC-C22アルキルであり、ここで、1-4個の環原子は、それぞれN、N(H)、N(C1-10アルキル)、O、およびSからなる群から独立して選択されるヘテロ原子であり、ただし、該ヘテロアリールは、1つ以上の環窒素原子を含み、およびここで、1つ以上のヘテロアリール環炭素原子は、任意に置換されている。
式(I-a0)の特定の実施態様においては、Uは、-C(O)NHR1Uであり;R1Uは、N(C-C10アルキル)(例えば、N(C-C10アルキル))で置換されたC-C22アルキルである。
【0126】
式(I-a0)の特定の実施態様においては、Uは、-C(O)NHR1Uであり;R1Uは、5-7個の環原子を含むヘテロシクリルで置換されたC-C22アルキルであり、ここで、1-3個の環原子は、それぞれN、N(H)、N(C1-10アルキル)、およびOからなる群から独立して選択されるヘテロ原子であり、ただし、該ヘテロシクリルは、1つ以上の環窒素原子を含み、およびここで、1つ以上のヘテロシクリル環炭素原子は、任意に置換されている。
式(I-a0)の特定の実施態様においては、Uは、-C(O)R1Uであり;R1Uは、5-7個の環原子を含むヘテロシクリルであり、ここで、1-3個の環原子は、それぞれN、N(H)、N(C1-10アルキル)、およびOからなる群から独立して選択されるヘテロ原子であり、ただし、該ヘテロシクリルは、1つ以上の環窒素原子を含み、およびここで、1つ以上のヘテロシクリル環炭素原子は、任意に置換されている。
【0127】
式(I-a0)のいくつかの実施態様においては、Uは、水素であり;Vは、R
であり、ここで、R1Vは、5-10個の環原子を含むヘテロアリールであり、ここで、1-4個の環原子は、それぞれN、N(H)、N(C1-10アルキル)、O、およびSからなる群から独立して選択されるヘテロ原子であり、ただし、該ヘテロアリールは、1つ以上の環窒素原子を含み、およびここで、1つ以上のヘテロアリール環炭素原子は、任意に置換されている。上述の実施態様の非限定的な例として、R1Uは、イミダゾリルまたはピリジニルであり得る。
式(I-a0)のいくつかの実施態様においては、Uは、水素であり;Vは、R1Vであり、ここで、R1Vは、任意に置換されたC6-10アリールであり、ここで、該アリールは、1つ以上のアミノアルキル、モノアミノアルキル、またはジアミノアルキルで置換されている。
【0128】
式(I-a)または(I-a0)のエチレン性不飽和モノマーの非限定的な例は、
【0129】
【化8】
【0130】
を含む。
式(I-a)または(I-a0)のエチレン性不飽和モノマーの非限定的な例はまた、
【0131】
【化9】
【0132】
も含む。
式(I-a)または(I-a0)のエチレン性不飽和モノマーのさらなる非限定的な例は、
【0133】
【化10】
【0134】
を含む。
いくつかの実施態様においては、式(I-a)のエチレン性不飽和モノマーは、式(I-a1):
【0135】
【化11】
【0136】
(式中、Uは、-CO1Uであり;
は、HまたはR1Vであり;
1Uは、1つ以上のN(C-C10アルキル)で置換されたC-C22アルキルであり;
1Vは、任意に置換されたC-Cアルキルである)である。
【0137】
式(I-a1)の特定の実施態様においては、R1Uは、1つ以上のN(C-Cアルキル)で置換されたC-Cアルキル(例えば、CHCHN(iPr))である。
式(I-a1)の特定の実施態様においては、R1Vは、非置換のC-Cアルキル(例えば、メチル)である。
式(I-a1)の特定の実施態様においては、R1Uは、1つ以上のN(C-Cアルキル)で置換されたC-Cアルキル(例えば、CHCHN(iPr))であり;R1Vは、非置換のC-Cアルキル(例えば、メチル)である。
【0138】
上述の実施態様の非限定的な例として、式(I-a1)のモノマーは、以下の式を有することができる。
【0139】
【化12】
【0140】
いくつかの実施態様においては、式(I-a)のエチレン性不飽和モノマーは、式(I-a2):
【0141】
【化13】
【0142】
(式中、Uは、-CO1Uであり;
は、HまたはR1Vであり;
1Uは、1つ以上のC-C18アルコキシで置換されたC-C22アルキルであり、ここで、C-C18アルコキシは、C-C18アルコキシから選択される1つ以上の置換基で任意に置換されており;
1Vは、任意に置換されたC-Cアルキルである)である。
【0143】
式(I-a2)の特定の実施態様においては、R1Uは、1つ以上のC-C18アルコキシで任意に置換されたC-Cアルキルであり、ここで、C-C18アルコキシは、C-C18アルコキシから選択される1つ以上の置換基で任意に置換されている(例えば、R1Uは、n-ブチルであり得;またはR1Uは、
【0144】
【化14】
【0145】
であり得る)。
式(I-a2)の特定の実施態様においては、R1Vは、非置換のC-Cアルキル(例えば、メチル)である。
式(I-a2)の特定の実施態様においては、R1Uは、1つ以上のC-C18アルコキシで任意に置換されたC-Cアルキルであり、ここで、C-C18アルコキシは、C-C18アルコキシから選択される1つ以上の置換基で任意に置換されており(例えば、R1Uは、n-ブチルであり得;またはR1Uは、
【0146】
【化15】
【0147】
であり得る);R1Vは、非置換のC-Cアルキル(例えば、メチル)である。
上述の実施態様の非限定的な例として、式(I-a2)のモノマーは、以下の式を有することができる。
【0148】
【化16】
【0149】
いくつかの実施態様においては、式(I-a)のエチレン性不飽和モノマーは、式(I-a3):
【0150】
【化17】
【0151】
(式中、Uは、-CO1Uであり;
は、HまたはR1Vであり;
1Uは、1つ以上のN(C-Cアルキル)で置換されたC-C22アルキルであり;
1Vは、任意に置換されたC-Cアルキルである)である。
【0152】
式(I-a3)の特定の実施態様においては、R1Uは、1つ以上のN(C-Cアルキル)で置換されたC-Cアルキル(例えば、CHCHN(Me))である。
式(I-a3)の特定の実施態様においては、R1Vは、非置換のC-Cアルキル(例えば、メチル)である。
式(I-a3)の特定の実施態様においては、R1Uは、1つ以上のN(C-Cアルキル)で置換されたC-Cアルキル(例えば、CHCHN(Me))であり;R1Vは、非置換のC-Cアルキル(例えば、メチル)である。
【0153】
上述の実施態様の非限定的な例として、式(I-a1)のモノマーは、以下の式を有することができる。
【0154】
【化18】
【0155】
いくつかの実施態様においては、式(I-a)のエチレン性不飽和モノマーは、式(I-a4):
【0156】
【化19】
【0157】
(式中、Uは、-CO1Uであり;
は、HまたはR1Vであり;
1Uは、任意に置換されたポリマー鎖であり;
1Vは、任意に置換されたC-Cアルキルである)である。
【0158】
式(I-a4)の特定の実施態様においては、R1Uは、ポリアルキレンオキシド鎖である(例えば、R1Uは、ポリエチレンオキシドであり得る)。
式(I-a4)の特定の実施態様においては、R1Vは、非置換のC-Cアルキル(例えば、メチル)である。
式(I-a4)の特定の実施態様においては、R1Uは、ポリアルキレンオキシド鎖であり(例えば、R1Uは、ポリエチレンオキシドであり得る);R1Vは、非置換のC-Cアルキル(例えば、メチル)である。
【0159】
上述の実施態様の非限定的な例として、式(I-a4)のモノマーは、以下の式を有することができる。
【0160】
【化20】
【0161】
[式中、nは、3-100の整数(例えば、n=5)である]
いくつかの実施態様においては、式(I-a)のエチレン性不飽和モノマーは、式(I-a5):
【0162】
【化21】
【0163】
(式中、UおよびVは、それぞれが結合している炭素と一緒になって、5-6個の環原子を含む複素環を形成し、ここで、1-3個の環原子は、それぞれN、N(H)、およびOから独立して選択されるヘテロ原子であり、ここで、該複素環は、C-Cアルキル、およびオキソから選択される1つ以上の置換基で任意に置換されている)である。
上述の実施態様の非限定的な例として、式(I-a5)のモノマーは、以下の式を有することができる。
【0164】
【化22】
【0165】
いくつかの実施態様においては、コポリマー鎖の親水性ブロックは、式(I-a3)のモノマーに由来する重合されたモノマー残基を含む。
いくつかの実施態様においては、コポリマー鎖の親水性ブロックは、式(I-a4)のモノマーに由来する重合されたモノマー残基を含む。
特定の実施態様においては、コポリマー鎖の親水性ブロックは、式(I-a3)のモノマーに由来する重合されたモノマー残基および式(I-a4)のモノマーに由来する重合されたモノマー残基を含む。
【0166】
いくつかの実施態様においては、コポリマー鎖の疎水性ブロックは、式(I-a0)のモノマーに由来する重合されたモノマー残基を含む。
いくつかの実施態様においては、コポリマー鎖の疎水性ブロックは、式(I-a1)のモノマーに由来する重合されたモノマー残基を含む。
いくつかの実施態様においては、コポリマー鎖の疎水性ブロックは、式(I-a2)のモノマーに由来する重合されたモノマー残基を含む。
特定の実施態様においては、コポリマー鎖の疎水性ブロックは、式(I-a1)のモノマーに由来する重合されたモノマー残基および式(I-a2)のモノマーに由来する重合されたモノマー残基を含む。
【0167】
いくつかの実施態様においては、コポリマー鎖は、式(I-a1)のモノマーに由来する重合されたモノマー残基;および式(I-a3)のモノマーに由来する重合されたモノマー残基を含む。
【0168】
いくつかの実施態様においては、コポリマー鎖は、
1)式(I-a3)のモノマーに由来する重合されたモノマー残基および式(I-a4)のモノマーに由来する重合されたモノマー残基を含む親水性ブロック;並びに
2)式(I-a1)のモノマーに由来する重合されたモノマー残基および式(I-a2)のモノマーに由来する重合されたモノマー残基を含む疎水性ブロック
を含む。
【0169】
本発明に従って使用されるコポリマー鎖は、当業者に知られている任意の適切な方法によって調製されてもよい。例えば、コポリマー鎖は、当業者に周知のラジカル、配位またはイオン重合技術によって(本明細書に記載されているものなどの)エチレン性不飽和モノマーを重合することによって調製されてもよい。
【0170】
コポリマー鎖を調製するために使用される重合技術は、リビングであっても非リビングであってもよい。
【0171】
リビング重合は、一般に、当技術分野では、不可逆的な連鎖停止が実質的に存在しない連鎖重合の一形態であると考えられている。リビング重合の重要な特徴は、モノマーおよび重合をサポートする反応条件が提供されている間、ポリマー鎖が成長し続けることである。リビング重合によって調製されたポリマー鎖は、明確に定義された分子構造、所定の分子量および狭い分子量分布または低い多分散性を有利に示すことができる。
【0172】
リビング重合の例は、イオン重合および制御ラジカル重合(CRP)を含む。CRPの例は、イニファーター重合、安定フリーラジカル媒介重合(SFRP)、原子移動ラジカル重合(ATRP)、および可逆的付加フラグメンテーション連鎖移動(RAFT)重合を含むが、これらに限定されない。
【0173】
本明細書に記載のナノ粒子のコポリマー鎖は、リビング重合技術を使用して調製されてもよいことが想定される。コポリマーを調製するためにリビング重合を実施するための当業者に周知の装置、条件、および試薬は、以下でより詳細に論じられるであろう。
【0174】
1つ以上のエチレン性不飽和モノマーがリビング重合技術によって重合される場合、一般に、1つ以上の反応物としてリビング重合剤を含むことが必要であろう。「リビング重合剤」によっては、1つ以上のエチレン性不飽和モノマーのリビング重合に関与し、制御または媒介して、リビングポリマー鎖(すなわち、リビング重合技術に従って形成されたポリマー鎖)を形成することができる化合物が意味される。
【0175】
本発明に従う1つ以上の反応物として含まれてもよいリビング重合剤は、イニファーター重合剤、SFRP剤、ATRP剤およびRAFT重合剤などのイオン重合およびCRPから選択されるリビング重合技術を促進するものを含むが、これらに限定されない。
【0176】
本発明に従う使用に適したRAFT剤は、(-C(S)S-によって表される二価部分である)チオカルボニルチオ基を含む。RAFT剤の例は、Moad G.;Rizzardo,E;Thang S,H. Polymer 2008、49、1079-1131(その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されており、キサントゲン酸塩、ジチオエステル、ジチオカーボネート、ジチオカーバネートおよびトリチオカーボネート化合物を含む。
【0177】
ポリマーナノ粒子のコア内に含まれているのは、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーターである。本明細書で使用される用語「エンドソームGPCRシグナル伝達のモジュレーター」は、エンドサイトーシスされてエンドソームにされたGPCRのアゴニストおよびアンタゴニストまたは阻害剤を指す。エンドソームGPCRシグナル伝達のモジュレーターは、有機分子、ポリペプチド配列、ホルモン、タンパク質フラグメントまたはこれらの任意のものの誘導体を含むがこれらに限定されない任意の形態であってもよい。
【0178】
本明細書で使用される用語「エンドソームGPCRシグナル伝達」は、エンドサイトー
シスされてエンドソーム、好ましくは初期エンドソームにされた活性化GPCRによって伝達されるシグナルを指す。
【0179】
一つの実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達は、原形質膜で最初に伝達され、受容体が初期エンドソームにエンドサイトーシスされるときに維持されるシグナル伝達であろう。
【0180】
別の実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達は、受容体エンドサイトーシスを必要とするおよび/またはもっぱらエンドソーム膜上で起こるシグナル伝達、例えば、β-アレスチン媒介シグナル伝達である。βarrは、細胞表面でアゴニスト占有Gタンパク質共役受容体キナーゼ(GRK)リン酸化GPCRと相互作用し、ダイナミンおよびクラスリン依存性エンドサイトーシスを介した細胞表面から初期エンドソームへのリガンド結合受容体の移動を促進すると考えられている。この経路が、原形質膜でのGタンパク質依存性シグナル伝達とは異なる第2の一連のエンドソームGPCRシグナル伝達を媒介し得ることが、最近発見された。このメカニズムの重要性は、GRKによるGPCRリン酸化の程度に依存して変動する、GPCRがβarrと相互作用する親和性に依存すると考えられている。「クラスA」GPCR(例えば、βAR、α1bAR)は、リン酸化部位をほとんど有さず、主に原形質膜で、βarr2に対してより高い親和性をもって、βarr1およびβarr2と一過性に相互作用する。「クラスB」GPCR(例えば、AT1AR、NKR、PAR)は、複数の部位でリン酸化され、原形質膜およびエンドソーム膜で長期間にわたって高い親和性でβarr1および2の両方と相互作用する。「クラスC」GPCR(例えば、ブラジキニンB受容体)は、βarrとともにエンドソームにインターナライズし、アゴニストを除去するとβarrが迅速に解離される。
【0181】
βarr誘発性のMAPKシグナル伝達の程度は、受容体の構造および7つの哺乳類GRKのいずれが受容体をリン酸化するかに依存する、βarrに対する受容体の親和性に依存すると考えられている。すなわち、AT1ARおよびVRの活性化は、α1bARおよびβARの活性化よりも大きなβarr結合ERK1/2のリン酸化を引き起こし、クラスB受容体がこの経路を通してより強力にシグナル伝達することを示唆する。クラスB GPCRは、セクレチン受容体、VPAC受容体、VPAC受容体、PAC受容体、グルカゴン受容体、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)受容体、グルカゴン関連ペプチド1(GLP-1)受容体、グルカゴン関連ペプチド2(GLP-2)受容体、胃抑制ポリペプチド(GIP)受容体、コルチコトロピン放出因子1(CRF1)受容体、コルチコトロピン放出因子2(CRF2)受容体、副甲状腺ホルモン1(PTH1)受容体、副甲状腺ホルモン2(PTH2)受容体、カルシトニン受容体様受容体(CLR)、カルシトニン受容体、アンジオテンシンII受容体1型、バソプレシン受容体2型、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体、ニューロキニン1受容体(NKR)、およびプロテアーゼ活性化2受容体(PAR)を含む。
【0182】
一つの実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達のモジュレーターは、エンドソームNK受容体のモジュレーターである。
【0183】
いくつかの実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達のモジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、エンドソームNKRシグナル伝達のモジュレーターである。これらの実施態様のいくつかにおいては、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、アプレピタント、フォサプレピタント、トラディピタント、マロピタント、HTX-019、ネツピタント、セルロピタント、オルベピタント、NAS-911B、ZD-6021、KD-018、DNK-333、NT-432、NK-949、NT-814、EU-C-001、ベスチピタ
ント、1144814、SCH-900978、AZD-2738、BL-1833、カソピタント、AV-810、KRP-103、424887、シゾリルチン、ボフォピタント、L-742694、カプサゼピン、GR-82334、MEN-11149、L-732138、NiK-004、TA-5538、CP-96345、ラネピタント、LY-2590443、ダピタント、ブラピタント、ベフェツピタント、CJ-17493、AVE-5883、CGP-49823、CP-122721、CP-99994、SLV-317、TAK-637、L-733060、L-703606、ジロペチン、MPC-4505、L-742311、FK-888、WIN-64821、NIP-530、SLV-336、エズロピタント、TKA-457、フィゴピタント、ZD-4794、CP-100263、GR-203040、L-709210、MEN-10930、MEN-11467、LY-306740、FK-355、WIN-67689、WIN-51708、FK-224、BL-1832、CAM-6108、CP-98984、WS-9326A、L-741671、L-737488、L-740141、L-760735、L-161664、YM-49244、Sch-60059、SDZ-NKT-343、S-18523、RPR-111905、S-19752、L-161644、LY-297911、RPR-107880、L-736281、アントロテニン、RP-73467、WIN-64745、WIN-68577、WIN-62577 WIN-66306、RP-67580、CP-0364、L-743986、S-16474、CGP-47899、FR-113680、YM-44778、GR-138676、CGP-73400、CAM-2445、MDL-105172A、L-756867、イスブフィリン、R-673、SR-48968およびSR-14033、GW679769、CP-0578、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0184】
非限定的な例として、疎水性モジュレーターエンドソームGPCRシグナル伝達またはその薬学的に許容される塩は、アプレピタント、ボフォピタント、L-733060、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択することができる。例えば、疎水性モジュレーターエンドソームGPCRシグナル伝達またはその薬学的に許容される塩は、アプレピタントまたはその薬学的に許容される塩である。
【0185】
一つの実施態様においては、本発明は、有効量の本発明による水性液体をそれを必要とする対象に投与することを含む、エンドソームNKRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害の治療方法を提供する(例えば、エンドソームGPCRシグナル伝達のモジュレーターが、上記のようにエンドソームNKRシグナル伝達のモジュレーター(例えば、阻害剤)であるとき)。
【0186】
別の実施態様においては、本発明は、エンドソームNKRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害の治療のための薬剤の製造における本発明による水性液体の使用を提供する(例えば、エンドソームGPCRシグナル伝達のモジュレーターが、上記のようにエンドソームNKRシグナル伝達のモジュレーター(例えば、阻害剤)であるとき)。
【0187】
さらなる実施態様においては、本発明は、エンドソームNKRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害の治療における使用のための本発明による水性液体を提供する(例えば、エンドソームGPCRシグナル伝達のモジュレーターが、上記のようにエンドソームNKRシグナル伝達のモジュレーター(例えば、阻害剤)であるとき)。
【0188】
好ましい実施態様においては、エンドソームNKRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害は、化学療法誘発性の吐き気および嘔吐(CINV)、周期的嘔吐症候群、術後の吐き気および嘔吐、鬱病および不安を含む情動性および中毒性の障害、全般性不
安障害(GAD)、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、胃麻痺および機能性消化不良を含む胃腸障害、関節炎を含む慢性炎症性障害、COPDおよび喘息を含む呼吸器障害、泌尿生殖器障害、感覚障害並びに体性痛および内臓痛を含む疼痛、掻痒、ウイルス性および細菌性感染症並びに増殖性疾患(癌)、並びにそれらの組合せから選択される。
【0189】
一つの実施態様においては、エンドソームNKRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害は、体性痛または内臓痛である。
【0190】
本発明の文脈において、用語「疼痛」は、慢性炎症性疼痛(例えば、関節リウマチ、変形性関節症、リウマチ性脊椎炎、痛風性関節炎および若年性関節炎に関連する疼痛);筋骨格痛、腰および首の疼痛、捻挫および緊張、神経因性疼痛、交感神経的に維持される疼痛、筋炎、癌および線維筋痛症に関連する疼痛、片頭痛に関連する疼痛、クラスターおよび慢性の毎日の頭痛に関連する疼痛、一般的な風邪などのインフルエンザまたは他のウイルス感染に関連する疼痛、リウマチ熱、非潰瘍性呼吸困難、非心臓胸部痛および過敏性腸症候群などの機能性腸障害に関連する疼痛、心筋虚血に関連する疼痛、術後の疼痛、頭痛、歯痛、月経困難症、神経痛、線維筋痛症候群、複雑な局所疼痛症候群(CRPSタイプIおよびII)、神経因性疼痛症候群(糖尿病性神経障害、化学療法によって誘発される神経因性疼痛、坐骨神経痛、非特異的腰痛、多発性硬化症疼痛、HIV関連神経障害、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛を含む)並びに身体的外傷、切断、癌、毒素または慢性炎症状態に起因する疼痛を含む。好ましい実施態様においては、疼痛は、体性痛または内臓痛である。
【0191】
別の実施態様においては、エンドソームNKRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害は、慢性疾患または障害である。
【0192】
いくつかの実施態様においては、本方法または使用は、有効量のエンドソームGPCRシグナル伝達の第2のモジュレーターまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することをさらに含む。
【0193】
特定の実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達の第2のモジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、MK-3207、オルセゲパントなどのエンドソームCGRPおよび/またはCLRシグナル伝達の阻害剤、またはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0194】
いくつかの実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達の第2のモジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、コポリマー鎖のポリマーナノ粒子のコア内に含まれ、
ここで、該コポリマー鎖は、コア/シェル構造を形成するように集合し、該コポリマー鎖は、
(i)ナノ粒子のコアを形成する酸応答性疎水性ポリマーブロック;および
(ii)ナノ粒子のシェルを形成し、水性液体によって溶媒和される親水性ポリマーブロックを有する。
【0195】
いくつかの実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、エンドソームCGRPおよび/若しくはCLRシグナル伝達の阻害剤または薬学的に許容される塩である。
【0196】
これらの実施態様のいくつかにおいては、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、BI 44370、MK-3207、オルセゲパント、ウブロゲパント、リメゲパント、SB-268262、テルカゲパン
ト、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0197】
非限定的な例として、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、オルセゲパント、MK-3207、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択することができる。例えば、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーターまたは薬学的に許容される塩は、MK-3207またはその薬学的に許容される塩である。
【0198】
別の面においては、本明細書で提供されるのは、有効量の本開示による水性液体をそれを必要とする対象に投与することを含む、エンドソームCGRP受容体シグナル伝達、例えば、CLRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害の治療方法である(例えば、エンドソームGPCR受容体シグナル伝達のモジュレーター(例えば、CLRシグナル伝達モジュレーター)が、上記のようにエンドソームCGRP受容体シグナル伝達、例えば、CLRシグナル伝達のモジュレーター(例えば、阻害剤)であるとき)。
【0199】
別の実施態様においては、本開示は、CGRP受容体シグナル伝達、例えば、CLRエンドソームシグナル伝達によって媒介される疾患または障害の治療のための薬剤の製造における本発明による水性液体の使用を提供する(例えば、エンドソームGPCRシグナル伝達モジュレーターが、上記のようにエンドソームCGRP受容体シグナル伝達、例えば、CLRシグナル伝達のモジュレーター(例えば、阻害剤)であるとき)。
【0200】
さらなる実施態様においては、本開示は、エンドソームCGRP受容体シグナル伝達、例えば、CLRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害の治療における使用のための本発明による水性液体を提供する(例えば、エンドソームGPCRシグナル伝達モジュレーターが、上記のようにエンドソームCGRP受容体シグナル伝達、例えば、CLRシグナル伝達のモジュレーター(例えば、阻害剤)であるとき)。
【0201】
特定の実施態様においては、エンドソームCGRP受容体シグナル伝達、例えば、CLRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害は、片頭痛並びに疼痛、光恐怖症、音声恐怖症、悪心および嘔吐を含む片頭痛に関連する症状、感覚障害、体性痛および内蔵痛を含む疼痛、クラスターおよび慢性の毎日の頭痛に関連する疼痛、COPDおよび喘息を含む呼吸器疾患、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、胃麻痺および機能性消化不良を含む胃腸障害、並びに変形性関節症および関節リウマチを含む慢性炎症性障害からなる群から選択される。
【0202】
特定の実施形態において、エンドソームCGRP受容体シグナル伝達、例えば、CLRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害は、体性痛または内臓痛である。
【0203】
特定の実施態様においては、エンドソームCGRP受容体シグナル伝達、例えば、CLRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害は、慢性疾患または障害である。
【0204】
特定の実施態様においては、本方法または使用は、有効量のエンドソームGPCRシグナル伝達の第2のモジュレーターまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することをさらに含む。
【0205】
特定の実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達の第2のモジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、アプレピタント、ボフォピタント、L-733060、またはそれらの薬学的に許容される塩などのエンドソームNKRシグナル伝達の阻害剤である。
【0206】
特定の実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達の第2のモジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、コポリマー鎖のポリマーナノ粒子のコア内に含まれ、
ここで、該コポリマー鎖は、コア/シェル構造を形成するように集合し、該コポリマー鎖は、
(i)ナノ粒子のコアを形成する酸応答性疎水性ポリマーブロック;および
(ii)ナノ粒子のシェルを形成し、水性液体によって溶媒和される親水性ポリマーブロックを有する。
【0207】
いくつかの実施態様においては、本明細書の水性液体は、エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩をさらに含み、ここで、該エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、ポリマーナノ粒子のコア内に含まれる。
【0208】
特定の実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、CGRP受容体シグナル伝達、例えば、CLRシグナル伝達の阻害剤である。
【0209】
特定の実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、BI 44370、MK-3207、オルセゲパント、ウブロゲパント、リメゲパント、SB-268262、テルカゲパント、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0210】
非限定的な例として、エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、オルセゲパント、MK-3207、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択することができる。例えば、エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、MK-3207、またはその薬学的に許容される塩である。
【0211】
いくつかの実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩とエンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩とのモル比は、1:10から10:1である。
【0212】
いくつかの実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩とエンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩とのモル比は、1:1から4:1(例えば、1:2から2:1(例えば、1:1))である。
【0213】
特定の実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、エンドソームNKRシグナル伝達の阻害剤またはその薬学的に許容される塩であり;エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、エンドソームCGRP受容体シグナル伝達、例えば、CLRシグナル伝達の阻害剤またはその薬学的に許容される塩である。
【0214】
非限定的な例として、エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、アプレピタント、ボフォピタント、L-733060、またはそれらの薬学的に許容される塩であり得;エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、オルセゲパント、
MK-3207、またはそれらの薬学的に許容される塩であり得る。
【0215】
従って、別の面においては、本明細書で提供されるのは、コア/シェル構造を形成するように集合したコポリマー鎖のポリマーナノ粒子を含む水性液体であり、該コポリマー鎖は、
(i)ナノ粒子のコアを形成する酸応答性疎水性ポリマーブロック;および
(ii)ナノ粒子のシェルを形成し、水性液体によって溶媒和される親水性ポリマーブロックを有し、
ここで、該ナノ粒子は、それらのコア内に、
a)エンドソームGPCRシグナル伝達の最初の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩;および
b)エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0216】
これらの実施態様のいくつかにおいては、水性液体は、本明細書のどこにでも記載されているような1つ以上の特徴を有することができる。例えば、
酸応答性疎水性ポリマーブロックは、酸性環境において(例えば、約pH=6.1で)プロトン化される第三級アミン官能基を含むことができ;
酸応答性疎水性ポリマーブロックは、2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DiPAEMA)のホモポリマーまたはコポリマーを含むことができ;
酸応答性疎水性ポリマーブロックは、2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DiPAEMA)およびポリアルキレンオキシドメタクリレートのコポリマーを含むことができ;
酸応答性疎水性ポリマーブロックは、2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DiPAEMA)およびジエチレングリコールメタクリレート(DEGMA)のコポリマーを含むことができ;
親水性ポリマーブロックは、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)および2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)のコポリマーを含むことができ;および/または
ナノ粒子の直径は、15から120nm(例えば、15から100nm(例えば、25から50nm))であり得る。
【0217】
特定の実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、エンドソームGPCRの阻害剤である。
特定の実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、エンドソームNKRシグナル伝達の阻害剤またはその薬学的に許容される塩である。
【0218】
これらの実施態様のいくつかにおいては、エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、アプレピタント、フォサプレピタント、トラディピタント、マロピタント、HTX-019、ネツピタント、セルロピタント、オルベピタント、NAS-911B、ZD-6021、KD-018、DNK-333、NT-432、NK-949、NT-814、EU-C-001、ベスチピタント、1144814、SCH-900978、AZD-2738、BL-1833、カソピタント、AV-810、KRP-103、424887、シゾリルチン、ボフォピタント、L-742694、カプサゼピン、GR-82334、MEN-11149、L-732138、NiK-004、TA-5538、CP-96345、ラネピタント、LY-2590443、ダピタント、ブラピタント、ベフェツピタント、CJ-17493、AVE-5883、CGP-49823、CP-122721、CP-99994、SLV-317、TAK-637、L-733060、L703,606、ジロペチン、MP
C-4505、L-742311、FK-888、WIN-64821、NIP-530、SLV-336、エズロピタント、TKA-457、フィゴピタント、ZD-4794、CP-100263、GR-203040、L-709210、MEN-10930、MEN-11467、LY-306740、FK-355、WIN-67689、WIN-51708、FK-224、BL-1832、CAM-6108、CP-98984、WS-9326A、L-741671、L-737488、L-740141、L-760735、L-161664、YM-49244、Sch-60059、SDZ-NKT-343、S-18523、RPR-111905、S-19752、L-161644、LY-297911、RPR-107880、L-736281、アントロテニン、RP-73467、WIN-64745、WIN-68577、WIN-62577 WIN-66306、RP-67580、CP-0364、L-743986、S-16474、CGP-47899、FR-113680、YM-44778、GR-138676、CGP-73400、CAM-2445、MDL-105172A、L-756867、イスブフィリン、R-673、SR-48968およびSR-14033、GW679769、CP-0578、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0219】
非限定的な例として、第1の疎水性モジュレーターエンドソームGPCRシグナル伝達またはその薬学的に許容される塩は、アプレピタント、ボフォピタント、L-733060、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択され得る。
【0220】
特定の実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、CGRPおよび/またはCLRシグナル伝達の阻害剤である。
特定の実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、BI 44370、MK-3207、オルセゲパント、ウブロゲパント、リメゲパント、SB-268262、テルカゲパント、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
非限定的な例として、エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、オルセゲパント、MK-3207、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択することができる。
【0221】
特定の実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩とエンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩とのモル比は、1:10から10:1である。
特定の実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩とエンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩とのモル比は、1:4から4:1(例えば、1:2から2:1(例えば、1:1))である。
【0222】
特定の実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、エンドソームNKRシグナル伝達の阻害剤またはその薬学的に許容される塩であり;エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、エンドソームCGRP受容体シグナル伝達、例えば、CLRシグナル伝達の阻害剤またはその薬学的に許容される塩である。
【0223】
非限定的な例として、エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、アプレピタント、ボフォピタント、L-7330
60、またはそれらの薬学的に許容される塩であり得;エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーターまたはその薬学的に許容される塩は、オルセゲパント、MK-3207、またはそれらの薬学的に許容される塩であり得る。
【0224】
従って、別の面においては、本明細書で提供されるのは、有効量の本開示による水性液体をそれを必要とする対象に投与することを含む、該対象におけるエンドソームGPCRシグナル伝達を調節する方法であり、ここで、ポリマーナノ粒子のコアは、上記のようにエンドソームGPCRシグナル伝達の第1のモジュレーターおよびエンドソームGPCRシグナル伝達の第2のモジュレーターを含む。
【0225】
別の面においては、本明細書で提供されるのは、コア/シェル構造を形成するように集合したコポリマー鎖のポリマーナノ粒子を含む水性液体をそれを必要とする対象に投与することを含む、該対象におけるエンドソームGPCRシグナル伝達を調節する方法であり、該コポリマー鎖は、
(i)ナノ粒子のコアを形成する酸応答性疎水性ポリマーブロック;および
(ii)ナノ粒子のシェルを形成し、水性液体によって溶媒和される親水性ポリマーブロックを有し、
ここで、該ナノ粒子は、そのコア内に、
a)エンドソームGPCRシグナル伝達の第1の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩;および
b)エンドソームGPCRシグナル伝達の第2の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩を含み;
およびここで、該酸応答性ポリマーブロックは、エンドソーム内腔の酸性環境において遷移を受け、これにより、集合したコポリマー鎖が解体し、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩がエンドソームに放出される。
【0226】
別の面においては、本明細書で提供されるのは、有効量の本開示による水性液体をそれを必要とする対象に投与することを含む、エンドソームGPCRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害の治療方法であり、ここで、該疾患または障害は、CGRP受容体シグナル伝達、例えば、CLRシグナル伝達、および/またはNKRシグナル伝達によって媒介され、ここで、ポリマーナノ粒子のコアは、上記のようにエンドソームGPCRシグナル伝達の第1のモジュレーターおよびエンドソームGPCRシグナル伝達の第2のモジュレーターを含む。
【0227】
いくつかの実施態様においては、本疾患または障害は、片頭痛並びに疼痛、光恐怖症、音声恐怖症、悪心および嘔吐を含む片頭痛に関連する症状、感覚障害、体性痛および内蔵痛を含む疼痛、クラスターおよび慢性の毎日の頭痛に関連する疼痛、COPDおよび喘息を含む呼吸器疾患、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、胃麻痺および機能性消化不良を含む胃腸障害、または変形性関節症および関節リウマチを含む慢性炎症性障害などの、エンドソームCGRP受容体シグナル伝達、例えば、CLRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害である。
【0228】
いくつかの実施態様においては、本疾患または障害は、化学療法誘発性の吐き気および嘔吐(CINV)、周期的嘔吐症候群、術後の吐き気および嘔吐、鬱病および不安を含む情動性および中毒性の障害、全般性不安障害(GAD)、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、胃麻痺および機能性消化不良を含む胃腸障害、関節炎を含む慢性炎症性障害、COPDおよび喘息を含む呼吸器障害、泌尿生殖器障害、感覚障害並びに体性痛および内臓痛を含む疼痛、掻痒、ウイルス性および細菌性感染症並びに増殖性疾患(癌)、並びにそれらの組合せなどの、エンドソームNKRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害で
ある。
【0229】
特定の実施態様においては、本疾患または障害は、体性痛または内臓痛である。
【0230】
特定の実施態様においては、本疾患または障害は、慢性疾患または障害である。
【0231】
別の面においては、本明細書で提供されるのは、有効量の
1)第1の水性液体またはその医薬組成物(ここで、該第1の水性液体は、本明細書のどこにでも記載されているように、ポリマーナノ粒子のコア内にNKR阻害剤を含む);および
2)第2の水性液体またはその医薬組成物(ここで、該第2の水性液体は、本明細書のどこにでも記載されているように、ポリマーナノ粒子のコア内にCGRP受容体、例えば、CLR阻害剤を含む)
をそれを必要とする対象に投与することを含む、該対象におけるエンドソームGPCRシグナル伝達を調節する方法である。
【0232】
別の面においては、本明細書で提供されるのは、有効量の
1)第1の水性液体またはその医薬組成物(ここで、該第1の水性液体は、本明細書のどこにでも記載されているように、ポリマーナノ粒子のコア内にNKR阻害剤を含む);および
2)第2の水性液体またはその医薬組成物(ここで、該第2の水性液体は、本明細書のどこにでも記載されているように、ポリマーナノ粒子のコア内にCGRP受容体、例えば、CLR阻害剤を含む)
を対象に投与することを含む、エンドソームGPCRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害の治療方法である。
【0233】
特定の実施態様においては、NKR阻害剤;CGRP受容体、例えば、CLR阻害剤;並びに/または第1のおよび/若しくは第2の水性液体は、本明細書のどこにでも記載されているような1つ以上の特徴を有することができる。
特定の実施態様においては、エンドソームGPCRシグナル伝達によって媒介される疾患または障害は、本明細書のどこにでも記載されているとおりであり得る。
本明細書に記載の上述の実施態様のいくつかにおいては、阻害剤は、アンタゴニストである。
【0234】
エンドソームGPCRの疎水性モジュレーターが、プロトン化または脱プロトン化され得る(例えば生理学的pHで)1つ以上の官能基を含む場合、該モジュレーターは、薬学的に許容される塩として調製および/または単離されてもよい。モジュレーターは、与えられたpHで双性イオン性であってもよいことが理解されるであろう。本明細書で使用される場合、表現「薬学的に許容される塩」は、与えられた化合物の塩を指し、ここで、塩は、医薬品としての投与に適している。そのような塩は、例えば、酸または塩基とそれぞれアミンまたはカルボン酸基との反応によって形成されてもよい。
【0235】
薬学的に許容される酸付加塩は、無機および有機酸から調製されてもよい。無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などを含む。有機酸の例は、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などを含む。
【0236】
薬学的に許容される塩基付加塩は、無機および有機塩基から調製されてもよい。無機塩基に由来する対応する対イオンは、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カ
ルシウム、およびマグネシウム塩を含む。有機塩基は、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N-アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、およびN-エチルピペリジンを含む、第一級、第二級および第三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、および環状アミンを含む。
【0237】
本発明はまた、治療有効量の本発明による水性液体を、少なくとも1つの薬学的に許容される担体または希釈剤と共に含む医薬組成物を提供する。
【0238】
エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーター、またはその薬学的に許容される塩を含むポリマーナノ粒子を含む本発明による水性液体は、対象に投与される唯一の有効成分であってもよいが、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーターとの他の有効成分(1つ以上)の投与は、本発明の範囲内である。1つ以上の実施態様においては、2つ以上のエンドソームGPCRシグナル伝達のモジュレーターの組合せが対象に投与されるであろうことが想定される。モジュレーター(1つ以上)はまた、1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて投与され得るであろうことも想定される。組合せは、本明細書で前述したようなエンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーター(1つ以上)と他の有効成分(1つ以上)との別々の、連続的なまたは同時の投与を許し得る。組合せは、医薬組成物の形態で提供されてもよい。
【0239】
本明細書で使用される用語「組合せ」は、上記で定義された組合せパートナーが、依存して若しくは独立してまたは異なる量の組合せパートナーとの異なる固定された組合せの使用によって、すなわち、同時にまたは異なる時点で投与され得る複数部分の組成物またはキットを指す。次いで、組合せパートナーは、例えば、同時にまたは時系列的にずらして、すなわち、異なる時点でかつ複数の部分のキットの任意の部分に対して等しいまたは異なる時間間隔で投与することができる。組合せで投与される組合せパートナーの総量の比率は、例えば、治療される患者の亜集団のニーズ、または患者の年齢、性別、体重などによって異なるニーズがあり得る単一の患者のニーズに対処するために、変えることができる。
【0240】
当業者によって容易に理解されるであろうように、投与経路および薬学的に許容される担体の性質は、状態の性質および治療される哺乳動物に依存するであろう。特定の担体または送達システム、および投与経路の選択は、当業者によって容易に決定できるであろうと考えられている。本発明による水性液体を含む任意の製剤の調製においては、エンドソームGPCRシグナル伝達の疎水性モジュレーターの活性がその過程で破壊されないこと、およびモジュレーターが破壊されることなくその作用部位に到達することができることを確実にするために注意を払うべきである。同様に、選択される投与経路は、化合物がその作用部位に到達するようなものであるべきである。
【0241】
当業者は、従来のアプローチを使用して、本発明の水性液体のための適切な製剤を容易に決定し得る。好ましいpH範囲および適切な薬学的に許容される賦形剤、例えば抗酸化剤の同定は、当技術分野では日常的である。緩衝系は、所望の範囲のpH値を提供するために日常的に使用されており、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩およびコハク酸塩などのカルボン酸緩衝液を含む。BHTまたはビタミンEなどのフェノール化合物、メチオニンまたは亜硫酸塩などの還元剤、およびEDTAなどの金属キレート剤を含む、さまざまな抗酸化剤が、そのような製剤に利用できる。
【0242】
本発明による水性液体は、静脈内、髄腔内、および脳内または硬膜外送達に適したもの
を含む、非経口剤形で調製されるであろうことが想定される。注射可能な使用に適した医薬剤形は、無菌の注射可能な溶液または分散液、および無菌の注射可能な溶液の即時調製のための無菌の粉末を含む。それらは、製造および保管の条件下で安定であるべきであり、還元または酸化および細菌または真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されてもよい。
【0243】
注射可能な溶液または分散液の溶媒または分散液は、活性化合物の従来の溶媒または担体システムのいずれを含んでもよく、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および植物油を含んでもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合は必要な粒子サイズの維持によっておよび界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、さまざまな抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどを含むことによって、必要によりもたらすことができる。多くの場合、浸透圧を調整するための剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。好ましくは、注射用の製剤は、血液と等張であろう。注射可能な組成物の長期吸収は、組成物における吸収を遅らせる剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によってもたらすことができる。注射可能な使用に適した医薬剤形は、静脈内、筋肉内、脳内、髄腔内、硬膜外注射または注入を含む任意の適切な経路によって送達されてもよい。
【0244】
無菌の注射可能な溶液は、本発明の水性液体を必要な量で適切な溶媒に、必要に応じて上記で列挙した成分などのさまざまな他の成分と共に組み込み、次いで濾過滅菌することによって調製される。一般に、分散液は、さまざまな滅菌された有効成分を、基礎の分散媒体および上記で列挙した成分からの必要な他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。
【0245】
薬学的に許容されるビヒクルおよび/または希釈剤は、ありとあらゆる溶媒、分散媒体、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。医薬活性物質のためのそのような媒体および剤の使用は、当技術分野でよく知られている。従来の媒体または剤が有効成分と適合しない場合を除いて、治療用組成物におけるそれらの使用が企図される。補足的な有効成分も組成物に組み込むことができる。
【0246】
投与の容易さおよび投与量の均一性のために、単位剤形で組成物を作製することは特に有利である。本明細書で使用される単位剤形は、治療される哺乳動物対象のための単一剤形として適した物理的に別個の単位を指し;各単位は、必要な薬学的に許容されるビヒクルに関連して所望の治療効果を生み出すように計算された所定量の活性物質を含む。本発明の新規な単位剤形の仕様は、(a)活性物質の固有の特性および達成されるべき特定の治療効果、並びに(b)本明細書に詳細に開示されるような身体の健康が損なわれている病状を有する生きている対象における疾患の治療のための活性物質を配合する技術に固有の制限によって影響され、直接依存する。
【0247】
上記のように、主要な有効成分は、便利で効果的な投与のために、治療上有効な量で適切な薬学的に許容されるビヒクルと単位剤形で配合されてもよい。単位剤形は、例えば、0.25μgから約2000mgの範囲の量の主要な活性化合物を含むことができる。比率で表される場合、活性化合物は、約0.25μgから約2000mg/mLの担体中に存在してもよい。補足的な有効成分を含む組成物の場合、投与量は、前記成分の投与の通常の用量および方法を参照することによって決定される。
【0248】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、所望の投薬レジメンに従って投与され
たときに、所望の治療活性を提供する化合物の量を指す。投与は、1回、または数分若しくは数時間の間隔で、またはこれらの期間のいずれかで継続的に行うことができる。適切な投与量は、投与量あたり体重1kgあたり約0.1ngから体重1kgあたり1gの範囲内にあってもよい。典型的な投与量は、投与量あたり体重1kgあたり1mgから1gの範囲にあるなどの、投与量あたり体重1kgあたり1μgから1gの範囲である。一つの実施態様においては、投与量は、投与量あたり体重1kgあたり1mgから500mgの範囲であってもよい。別の実施態様においては、投与量は、投与量あたり体重1kgあたり1mgから250mgの範囲であってもよい。さらに別の実施態様においては、投与量は、投与量あたり体重あたり50mgまでなどの、投与量あたり体重1kgあたり1mgから100mgの範囲であってもよい。
【0249】
本明細書で使用される用語「処置」および「処置すること」は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおける状態または疾患の任意の処置をカバーする。本明細書で使用される用語「予防」および「予防すること」は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおける状態または疾患の予防または予防法をカバーする。
【0250】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲を通じて、文脈上別段の求めがない限り、単語「含む(comprise)」、および「含む(comprises)」または「含むこと」などの変形は、記載された整数または整数若しくはステップのグループを含むことを意味すると理解されるであろうが、いかなる他の整数または整数のグループを排除することを意味するとは理解されないであろう。
【0251】
この明細書における以前のいかなる刊行物(またはそれから派生する情報)への、または既知のいかなる事項への言及も、その以前の刊行物(またはそれから派生する情報)または既知の事項が、この明細書が関連する努力の分野における共通の一般知識の一部を形成するということの了承または承認またはいかなる形式の示唆でもなく、またそのように解釈されるべきでない。
【0252】
次に、本発明を、以下の非限定的な実施例を参照して説明する。
【実施例0253】
実施例1:ジブロックコポリマーの合成および特性評価
ジブロックコポリマーは、スキーム5/スキーム5Bおよび以下に概説される方法に従って合成された。これらのジブロックコポリマーは、両方とも同じ親水性コポリマーP(PEGMA-co-DMAEMA)を含んでいたが、異なる疎水性コポリマーを含んでいた。P(DIPMA-co-DEGMA)を使用してポリマーおよびP(BMa)に酸応答特性を与え、非酸応答特性を有する対照ポリマーを形成した。各合成の前に、モノマーは、塩基性酸化アルミニウムを使用して脱抑制された。
【0254】
【化23】
【0255】
P(PEGMA-co-DMAEMA)-b-P(DIPMA-co-DEGMA-co-Cy5)ジブロックコポリマーは、スキーム5Bおよび以下に概説される方法に従って合成された。
【0256】
【化24】
【0257】
高分子連鎖移動剤:P(PEGMA-co-DMAEMA)親水性ブロックコポリマー。
高分子連鎖移動剤(Macro-CTA)は、RAFT剤としての2-シアノプロプ-2-イルジチオベンゾエート(CPBD)および開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を2:0.2の比率で使用して、可逆的付加フラグメンテーション連鎖移動(RAFT)重合によって合成された。ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート平均Mn約500(PEGMA)、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA、98%)、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(DEAEMA、99%)、2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DIPAEMA、97%)、ブチルメタクリレート(BMA、99%)、および4,4-ジメチル-2-ビニル-2-オキサゾリン-5-オン(VDM)は、Sigma Aldrichから入手した。
【0258】
P(PEGMA-co-DMAEMA)親水性ブロックコポリマー
高分子連鎖移動剤(Macro-CTA)、P(PEGMA-co-DMAEMA)は、RAFT剤としての2-シアノプロプ-2-イルジチオベンゾエート(CPBD)および開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を2:0.2の比率でを使用する可逆的付加フラグメンテーション鎖(RAFT)重合法によって合成された。PEGMAおよびDMAEMA(120:12の比率)をCPBDおよびAIBNを有する30mLのトルエンに溶解した。窒素を30分間散布することにより、溶液を脱酸素化した。70℃および400RPMで21時間重合した後、反応物を氷浴で0℃に冷却し、空気に曝した。溶液のアリコートをサンプリングし、HNMRにより変換率を決定した。次いで、溶液をアセトンに対して96時間透析し(MWCO 3500)、残っているモノマーを全て除去した。溶媒を蒸発させ、生成物を真空オーブン内で37℃および1000ミリバールで24時間乾燥させた。
【0259】
P(PEGMA-co-DMAEMA)-b-P(DIPMA-co-DEGMA)ジブロックコポリマー。 鎖延長反応は、親水性ブロックP(PEGMA-co-DMAEMA)並びにモノマーDIPMAおよびDEGMAを1:0.15:100:11の比率
で使用してAIBNの存在下で実施された。混合物をトルエンに溶解していったん脱酸素化し、70℃、400RPMで17.5時間反応させた。最終生成物を、前述のように精製した。
【0260】
P(PEGMA-co-DMAEMA)-b-P(BMA)ジブロックコポリマー。 BMAは、トルエン中のAIBNの存在下での鎖延長反応により、親水性P(PEGMA-co-DMAEMA)ブロックから重合された。[BMA]:[Macro-CTA]:[AIBN]の比率は120:1:0.2であった。溶液を脱酸素化し、バイアルの内容物を70℃および400RPMで15時間反応させた。最終生成物を、前述のように精製した。
【0261】
P(PEGMA-co-DMAEMA)-b-P(DIPMA-co-DEGMA-co-Cy5)ジブロックコポリマー。
P(PEGMA-co-DMAEMA)の鎖延長は、AIBNの存在下で、DIPMA、DEGMAおよび4,4-ジメチル-2-ビニル-2-オキサゾリン-5-オン(VDM)を1:100:11:0.15の比率で添加することによりトルエン中で行われた。混合物を脱酸素化し、70℃、400RPMで17.5時間反応させた。Cy5カップリングは、反応物をシアニン5アミンと混合することによって2番目のステップで実施された。混合物を室温、400RPMで72時間暗所条件で反応させ、最終生成物を、記載のように精製した。
【0262】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)。 ポリマーの分子量を決定するためのGPC分析は、40℃で作動する5.0μmビーズサイズガードカラム(50x7.8mm)、次いで3つのShodex KF-850Lカラム(300x8mm、ビーズサイズ:10μm、最大ポアサイズ:5000Å)に直列に接続された(RID-10A)示差屈折率検出器(λ=633nM)およびSPD-20A紫外線検出器を備えた島津(京都、日本)液体クロマトグラフィーシステムで実施された。溶離液は、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC、0.03%w/v LiBrを有するHPLCグレード)で、1mL/分で流れていた。分子量検量線は、500から2x10Daの範囲の狭い分子量分布を有するポリスチレン標準を使用して作成された。
【0263】
プロトン核磁気共鳴(H-NMR)。 ポリマーの変換率を決定するためのH-NMR分析は、重水素化クロロホルム(クロロホルム-d)を溶媒として使用し、Topspinバージョン1.3を実行するBruker Avance III 400 Ultrashield Plus分光計(MA、米国)を使用して400mHzで実施された。P(PEGMA-co-DMAEMA)の変換率は、生のH-NMR上の5.7ppmのモノマーピークの積分によって決定された。PEGMAおよびDMAEMAの組成は、4.25ppmのP(PEGMA-co-DMAEMA)のピークおよび2.5ppmのDMAEMAのピークを使用して決定された(図2A)。P(PEGMA-co-DMAEMA)-b-(DIPMA-co-DEGMA)上のDIPMAおよびDEGMAモノマーの組成は、2.99ppmのDIPMAピークの積分並びに3.375および3.395ppmのPEGMAおよびDEGMAモノマーのピークの積分の比率によって決定された。(図2B)。P(PEGMA-co-DMAEMA)-b-(DIPMA-co-DEGMA)の変換率は、DIPMAおよびDEGMAの初期比率(100:11)並びにH-NMRによって得られた比率(90:12)を使用して決定された。同様に、P(PEGMA-co-DMAEMA)-b-(BMA)変換率は、BMAおよびMacro-CTAの初期比率(120:1)並びにH-NMRによって得られた比率(98:1)を使用して決定された。BMAの単位は、3.94ppmのピークの積分によって決定された(図2C)。
【0264】
変換率(Conv%)および繰り返しモノマー単位(n)は、ピーク積分(I)を使用したH-NMRによって計算され、ここで、下付き番号は、ppmでピークの位置を示す(I)。P(PEGMA-co-DMAEMA)のConv%およびnは、H-NMRスペクトル(図2)を使用して
【0265】
【数1】
【0266】
で計算された。P(PEGMA-co-DMAEMA)-b-(DIPMA-co-DEGMA)のConv%およびnは、H-NMRスペクトル(図2)を使用して
【0267】
【数2】
【0268】
で計算された。P(PEGMA-co-DMAEMA)-b-(BMA)のConv%およびnは、H-NMRスペクトル(図2)を使用して
【0269】
【数3】
【0270】
で計算された。
表1は、合成されたコポリマーおよびジブロックコポリマーの結果として得られる特性を要約する。GPCによって決定された分子量は、GPCがポリスチレン標準に較正されているため、H-NMRによって得られた分子量よりも低いことがわかった。GPCクロマトグラムは、単峰性のピークを示し、ここで、ジブロックコポリマーは、分子量が増加するにつれてより高い保持時間にシフトした(図3)。ポリマーの化学構造はH-NMRによって確認され(図2)、マクロCTAの共重合は54%の変換率となったが、ジブロックコポリマーP(PEGMA-co-DMAEMA)-b-(DIPMA-co-DEGMA)およびP(PEGMA-co-DMAEMA)-b-(BMA)は、より高い変換率(92%および82%)に達した。全てのコポリマーの詳細な組成を、表1に示す。
【0271】
【表1】
【0272】
実施例2:本発明によるポリマーナノ粒子および対照ナノ粒子の自己集合および特性評価。
ナノ粒子の自己集合。 P(PEGMA-co-DMAEMA)-b-P(DIPMA-co-DEGMA)を、本発明による酸応答性ポリマーナノ粒子を自己集合させるためのジブロックコポリマーとして使用し、P(PEGMA-co-DMAEMA)-b-P(BMA)を、酸応答特性を有さない対照ナノ粒子を自己集合させるために使用した。
【0273】
アプレピタント(Ap)をロードしたポリマーナノ粒子の自己集合では、53.5μgのApおよび5mgのジブロックコポリマーの混合物を0.5mLのテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、空のナノ粒子は、Apの添加なしに自己集合された。次いで、混合物を、室温でハーバード装置のシリンジポンプ(MA、米国)を使用して、1.2mL/時の流速で激しく攪拌しながら、4.5mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に加えた。Apをロードした酸応答性ポリマーナノ粒子(DIPMA-Ap)およびロードした非酸応答性ナノ粒子(BMA-Ap)の集合は、透析バッグ(MWCO 3500、Membrane Filtration Products、米国)を使用して、窒素流下でPBSに対して24時間透析した。Apを含まない酸応答性ナノ粒子(DIPMA-空およびBMA-空)の集合は、Slide-A-Lyzerミニ透析装置MWCO 3.5K(Thermo Fisher Scientific、MA、米国)を使用して24時間透析した。生細胞イメージング用のナノ粒子の集合は、APなしのナノ粒子について記載したように行われた。使用したジブロックコポリマーは、疎水性部分でCy5と結合するP(PEGMA-co-DMAEMA)-b-P(DIPMA-co-DEGMA-co-Cy5)であり、Cy5がコアに局在するナノ粒子(DIPMA-Cy5)をもたらした。
【0274】
MK-3207をロードしたP(PEGMA-co-DMAEMA)-b-P(BMA)ポリマーナノ粒子(DIMPA-(MK-3207)ナノ粒子)は、上記と同様の方法で調製された。
動的光散乱。 ナノ粒子のサイズ分布は、Zetasizer Nano ZS ZE
N3600粒子サイズアナライザー(Malvern、UK)を使用した動的光散乱(DLS)によって決定された。1mg/mLの濃度のDIPMA-Ap、DIPMA-空、およびBMA-Apを、0.45μmナイロンフィルターを使用してろ過し、ポリスチレンキュベットに添加した。測定は、25℃および173°の後方散乱角で実施された。
【0275】
質量分析と組み合わせた超高速液体クロマトグラフィー(UPLC-MS)。 ポリマーナノ粒子のコアにロードされたApは、Waters Acquity UPLC(MA、米国)に接続されたWaters Micromass Quattro Premierトリプル四重極質量分析計を使用したUPLC-MSによって決定された。1mg/mLの濃度の凍結乾燥DIPMA-ApおよびBMA-Apを、水中のDMSO:0.1%ギ酸の5:2混合物に溶解した。サンプルは、各調製物のアリコートを内部標準溶液(ジアゼパム、5μg/mL)と5:2の比率で混合することによって分析用に調製され、希釈溶媒(50%アセトニトリルおよび0.1%ギ酸のの1:1混合物)で500μLとされた。クロマトグラフィー分離は、Synergi Polarカートリッジを装着したPhenomenex Security Guardプレカラムを備えたSupelco Ascentis Express RP Amideカラム(50mm x 2.1mm、2.7μmの粒子サイズ)で行われ、両方とも40℃のカラム温度に維持された。APロードは、AP標準(0.016から20μM)に対して定量化された。移動相は、水中の0.05%ギ酸およびアセトニトリルからなり、化合物は、グラジエント条件下で溶出された。質量分析は、ポジティブエレクトロスプレーイオン化条件で行われ、化合物の溶出は、複数反応モニタリングでモニターされた。
【0276】
pH依存の解体。 ナイルレッド(Nr)は、非極性溶媒中でのみ蛍光を発するソルベートクロミック色素であり、ナノ粒子の解体のpHの測定を可能にする。具体的には、解体のpHは、ナノ粒子のコアからのNRの放出によるNrの蛍光の損失を観察することによって同定される。ナノ粒子が、前述のように自己集合され、Apが、ポリマー1mgあたり0.5mgのナイルレッドに置き換えられ、記載のように透析された。ナイルレッド(DIPMA-Nr)をロードした酸応答性ポリマーナノ粒子および非酸応答性ポリマーナノ粒子(BMA-Nr)を200μg/mLの濃度で調製した。7.6から5.0のpH範囲のPBS溶液を調製し、FlexStation 3(Molecular Devices、CA、米国)を使用してナイルレッド(Sigma-Aldrich、MO、米国)の蛍光(励起/発光 552/636nm)を測定してpH解体特性を評価した。
【0277】
臨界ミセル濃度(CMC)。 CMCは、ピレンI/I比によって決定した。ピレンストック溶液(50μM)をTHF中で調製し、5μLのピレンストックを、ナノ粒子ストック溶液をPBS中で希釈して得られた995μLの段階的濃度のナノ粒子(400から0.5μg/mL)に添加した。混合物を室温で3時間撹拌し、ピレンの蛍光スペクトルを、島津分光蛍光光度計RF5301PC(京都、日本)で336nmの励起波長を使用して360から410nmで記録した。373nm(I)および384nm(I)で測定された発光強度を使用して、ピレンI/I比を計算した。
【0278】
表2は、酸応答性ナノ粒子にはP(PEGMA-co-DMAEMA)-b-P(DIPMA-co-DEGMA)を使用し、対照ナノ粒子にはP(PEGMA-co-DMAEMA)-b-P(BMA)を使用して自己集合したナノ粒子の特性を要約し、DIPMAおよびBMAナノ粒子は、疎水性NKRアンタゴニストであるアプレピタント(AP、MK-869)の存在下で自己集合し、それぞれP(PEGMA-co-DMAEMA)-b-P(DIPMA-co-DEGMA)-Ap(DIPMA-APと略記)およびP(PEGMA-co-DMAEMA)-b-P(BMA)-Apナノ粒子(BMA-APと略記)を形成した。DIPMA-APナノ粒子は、自己集合プロセスで最初に添加さ
れたAPの57±11.4%に相当する11.4±2.3μM APをロードした(表2)。BMA-APナノ粒子は、12.3±2.7μMのAP(60.9±13.4%)をロードした。自己集合ナノ粒子は、ポリマーの濃度がそれらの集合状態(臨界ミセル濃度、CMC)に有利になるのに十分高いときに集合したままである動的構造である。DIPMA-空(DIPMA-空)およびBMA-空ナノ粒子のCMCは、類似していた(それぞれ1.9±1.1および1.5±1.1μg/mL)。DIPMA-AP(2.4±0.5μg/mL)のCMCは、BMA-AP(1.5±0.8μg/mL)ナノ粒子よりもわずかに高かった。DIPMA-APナノ粒子は、透過型電子顕微鏡で評価したところ、均一に球形であるように見え、ここで、動的光散乱は、40.4±5.1nmの直径、-0.2±1.6mVの表面ζ電位を示した(表2、図1C)。DIPMA-空ナノ粒子は、直径37±4.2nmで、-0.5±2.0mVの表面ζ電位であった。BMA-APおよびBMA-空ナノ粒子は、直径がより小さかった(それぞれ、直径28±2.5および30±4.4nm)が、同様のζ電位(それぞれ、-1.1±2.8および-0.3±0.3mV)であった。
【0279】
【表2】
【0280】
実施例3:DIPMAナノ粒子は、SP NKR陽性エンドソームにインターナライズされる。
GFPでタグ付けされたrNKR(rNKR-GFP)でトランスフェクトされたHEK-293細胞を、Cy5とコンジュゲートしたDIPMA-空ナノ粒子(DIPMA-Cy5)と40分でインキュベートした。次いで、細胞を、rNKR-GFPの活性化およびインターナリゼーションを促進するために10nM SPでチャレンジし、SP添加の30分後および60分後に画像化した。30分時に、rNKR-GFPおよびDIPMA-Cy5ナノ粒子がエンドソームに共局在した(図4A)。この共局在は、SP添加の60分後に増加し(図4B)、DIPMAナノ粒子がHEK-293細胞によってインターナライズされ得るだけでなく、陽性のrNKR-GFPエンドソームに分布することもできることを示す。
【0281】
実施例4:核ERKシグナル伝達の特徴付け。
SP濃度応答曲線は、経時的に増加する迅速な核ERK活性化を示した。興味深いことに、SP 10nMは、シグナルに対して迅速な増加を示し、次いで徐々に減少を示した(図5A)。曲線下面積(AUC)は、実験期間(65分)で計算したときに14.9nMのSPのEC50を示し(図5C)、5nMのSP(EC30)を、その後の実験でHEK-hNKR細胞を刺激するのに選択した。Ap濃度応答曲線は、5nM SP刺激後、使用したApの最高の濃度(10μM、1μMおよび100nM)のみがSPによって引き起こされる核ERKを減少させることができることを示した(図5B)。AUCは、Apに対して123.9nMのIC50を示した(図5C)。
【0282】
実施例5:酸応答性ポリマーナノ粒子によるNKRシグナル伝達の制御。
細胞内カルシウムの測定を、細胞内カルシウムの増加を媒介するチャネルおよび受容体の活性化に対するナノ粒子および遊離ポリマーの効果を調査するために、DIPMA-空およびBMA-空ナノ粒子を用いてHEK-293およびHEK-hNKR細胞で実施した。ナノ粒子を、CMCの上(10μg/mL)および下(3.16および1μg/mL)の3つの異なる濃度で添加した。両方の細胞株において、観察された効果は、類似していた;DIPMA-空およびBMA-空ナノ粒子は、28分の実験中に細胞内カルシウム流入を増加させることができなかった。これらの知見は、ナノ粒子がin vitroで細胞内カルシウムを増加させないことを実証する(図6)。
【0283】
ERK活性に対するナノ粒子の効果を、HEK-h NKR細胞をビヒクル添加前の30分間DIPMA-空およびBMA-空ナノ粒子(10、20および30μg/mL)またはビヒクルとプレインキュベートすることによって評価した(図7)。DIPMA-空およびBMA-空は、調査した濃度のいずれにおいても核ERK活性化を引き起こなかった(図7A)。
【0284】
細胞の生存率を、蛍光によって検出できる、活性化合物レザスリン(Resasurin)をレソフリン(resofurin)に還元する生細胞の能力を評価するalamar Blueを使用して調べた。細胞は、ナノ粒子(1、3、10、30および100μg/mL)とのインキュベーションの24時間後(図7C)および48時間後(図7D)にレザスリンを還元するその能力のいかなる有意な減少も示さなかった。
【0285】
実施例6:核ERK活性に対するアプレピタントをロードしたポリマーナノ粒子の効果。
SP刺激およびNKRのインターナリゼーションの後、NKRは、一連のタンパク質をリクルートして、それからシグナル伝達できるシグナロソームを形成し、核ERKおよびcAMPを増加させる(Jensen,D.D.ら、Neurokinin 1 receptor signaling in endosomes mediates sustained nociception and is a viable therapeutic target for prolonged pain relief、Sci.Transl.Med. 2017 31(9)、392)。核ERKシグナル伝達を減少させるDIPMA-Apナノ粒子の能力を試験するために、HEK-hNKR細胞を、DIPMA-Ap(10μg/mL-100nM)ナノ粒子およびBMA-Ap(10μg/mL-100nM)ナノ粒子とプレインキュベートした後、SPを添加した。100nMのアプレピタントをロードした10μgのDIPMA-Apナノ粒子は、SPによって引き起こされる核ERKを減少させることができることが見い出された。同様の結果が、100nMのアプレピタントをロードした10μg/mLのBMA-Apナノ粒子で観察されたが、100nMの遊離アプレピタントはより低い減少を示した(図8)。
【0286】
実施例7:自発運動パターンに対するナノ粒子の効果。
ロータロッド試験を、動物の運動能力に対するナノ粒子の効果を評価するために使用した。処置は、調べたどの時点でも、ビヒクル群と比較して落下までの潜時に有意差を生じなかったが、これは、ナノ粒子のi.t.投与が自発運動パターンを変更せずマウスの神経筋協調に影響を与えないことを示す(図9)。
【0287】
実施例8:DIPMA-Cy5ナノ粒子の分布。
DIPMA-Cy5ナノ粒子の投与により、in vivoでのナノ粒子の動きの追跡が可能となった。単回投与後、ナノ粒子は、評価した時点を通して注射部位(L3-L4)内に局在した(図10)。Cy5蛍光の減少は、4~6時間の間に観察され、そのシグナルは8時間まで弱まった。24時間時には、何の蛍光も観察されなかったが、これは、
ナノ粒子の分解を示している可能性があるであろう。それにもかかわらず、DIPMA-Cy5ナノ粒子の解体およびジブロックコポリマー形成ユニットのさらなる分解の後、分解されたCy5コンジュゲートジブロックコポリマーがCy5蛍光を消光し、それがCy5蛍光の喪失を正確に解釈することにおける困難性につながったであろう可能性がある。
【0288】
実施例9:ポリマーナノ粒子の髄腔内投与は、急性疼痛モデルの痛覚反応を緩和する。
急性疼痛の発生に関与するNKRのエンドソームシグナル伝達を選択的に阻害する酸応答性ポリマーナノ粒子の有効性を評価するために、DIPMA-Apナノ粒子、対照(DIPMA-空、遊離アプレピタントと混合したDIPMA-空、BMA-Apおよび遊離アプレピタント)およびビヒクルの単回用量を、右後足(同側)にカプサイシンを皮下注射する30分前に髄腔内に投与した(図11)。ビヒクルおよびDIPMA-空は、カプサイシン誘発性の機械的アロディニアと一致して、フォンフレイ反応の強力かつ迅速な減少を示し、これは、24時間時に基底レベルに戻った。分離した鎮痛(30%)が、最初の1時間時に、遊離アプレピタントの群および遊離アプレピタントと混合されたDIPMA-空ナノ粒子の群において観察され、次いで、鎮痛が徐々に減衰し、3時間時にその効果が完全に失われた。興味深いことに、BMA-Apナノ粒子は、最初の30分時に遊離アプレピタントと同様の鎮痛値を示し、効果を1.5時間延長した。しかしながら、効果の減衰についての同じ挙動が観察された。対照的に、DIPMA-Apナノ粒子は、最初の60分間で対照群よりも高い鎮痛を示し、その後増加して4時間持続的な効果に達した。
【0289】
実施例10:ポリマーナノ粒子の髄腔内投与は、慢性疼痛モデルにおける痛覚反応を緩和する。
慢性疼痛モデルを、坐骨神経の結紮によって誘発し、疼痛に対する感作(アロディニア、痛覚過敏)を10日間発症させた。感作を、ランダルセリット電子痛覚計を使用してベースライン(手術前)および手術後の足の引っ込めを測定することで確認した(Eva Santos-Nogueiraら、J Neurotrauma. 2012、29(5):898-904)。
【0290】
次いで、ラットに、ポリマーナノ粒子(DIPMA、BMA:空またはアプレピタントをロード)、ビヒクル対照(人工脳脊髄液)または漸増濃度のアプレピタント(100、300nMおよび1μM、各濃度あたりn=4)を、髄腔内注射した(脊椎のL3-L4位置、総量10μL)。どの薬物濃度が慢性疼痛モデルにおいて鎮痛効果を示すために必要とされるかを決定するために、3つの異なる濃度のアプレピタントを試験した。10、30または50μgの非酸応答性BMAナノ粒子に100、300または500nMのアプレピタント(各濃度あたりn=6)をロードし、10、30または50μgの酸応答性DIPMAナノ粒子に100、300または500nMのアプレピタント(各濃度あたりn=6)をロードした。
【0291】
ランダルセリットを、15、30分1時間時に実施した後、30分ごとに5時間、次いで1時間ごとに7時間測定し、その結果を、図12A、12Bおよび13に示す。明らかなように、アプレピタントをロードしたナノ粒子は、より大きな鎮痛およびより長く続く効果を提供する。300nMの遊離アプレピタントは、圧力において20gの改善(約25%の疼痛の回復)をもたらしたが、この効果は2時間しか持続しなかった。一方、DIPMAポリマーナノ粒子にロードした300nMのアプレピタントは、圧力において5時間持続する60gの改善(<80%の回復)を提供した。
【0292】
実施例11:ATP生成に対するナノ粒子の効果の評価
歴史的に、ナノ粒子の毒性は、細胞の健康について無数の異なるアッセイを使用して評価されてきた。CellTiter Glo、ヨウ化プロピジウムおよびAlamarB
lueを使用して、ミトコンドリアの健康、核膜の完全性および細胞の酸化還元電位に対するナノ粒子の効果がそれぞれ評価される。これらは、アッセイを選択する前に考慮される必要がある細胞の健康のさまざまな指標を測定する一般的に使用されるアッセイである。
【0293】
CellTiter Gloアッセイを、ミトコンドリア活性の指標としてのATP生成に対するポリマーナノ粒子の効果を測定するために使用した。このアッセイは、ATP依存性のUltra-Glo組換えルシフェラーゼによるカブトムシルシフェリンの酵素変換を使用して、オキシルシフェリンおよび光を生成する。この酵素的相互作用からの生物発光を測定し、ATPおよび細胞生存率と相関させることができる。この分析を使用する利点は、感度が高く、血清またはフェノールレッド(増殖培地における一般的なpH指示薬)の影響を受けず、試薬を1回添加するだけでよく、定常的な発光シグナルを得るために室温で最低10分間のインキュベーションを必要とするだけであることである。これにより、必要な工程の数および手動の取扱いが減るため、エラーを制限できる。しかしながら、CellTiter Glo試薬は、また細胞を溶解して検出のためにATPを放出するための界面活性剤およびATPase阻害剤も含み、細胞生存率を経時的にモニターするために使用することはできない。細胞を、漸増濃度DEAEMAおよびDIPMAナノ粒子並びに0~50%で組み込んだDEGMAで処置した。細胞をナノ粒子とともに24時間までインキュベートし、CellTiterGloを使用して生存率を測定した。DEAEMAおよびDIPMAナノ粒子のインキュベーション8時間までで、毒性は50μg/mLの濃度でのみ観察された(図13)。24時間時に、10μg/mLおよび50μg/mLの濃度のナノ粒子は、細胞生存率を低下させた。50%DEGMAの導入により、測定した全ての時点で50μg/mLのDEAEMAナノ粒子で処置した細胞の細胞生存率が増加した。DIPMAで処置した細胞においては、0~20%のDEGMAナノ粒子は、0%のナノ粒子と比較して細胞生存率を低下させた。興味深いことに、50%のDEGMA-DIPMAナノ粒子のみが細胞生存率プロファイルを改善した。
【0294】
実施例12:膜の完全性および透過性に対するナノ粒子の効果の評価
ポリマーナノ粒子が膜の完全性を破壊したかどうかを決定するために、ヨウ化プロピジウム(PI)アッセイを実施した。この細胞不透過性色素は、核塩基をインターカレーとすることによって核および染色体を対比染色し、細胞死を検出するために使用される。CMC未満の濃度では、DEAEMAおよびDIPMAは、膜の完全性に影響を与えなかった。ATP検出アッセイと一致して、2~24時間インキュベートした50μg/mLのDEAEMAナノ粒子は、PI検出アッセイにおいて約40%の細胞死を誘導した(図14)。DEAEMAナノ粒子の毒性は、細胞と2、8および24時間インキュベートしたとき、50%DEGMAの導入により有意に減少した。DIPMAナノ粒子は、毒性が低く、24時間のインキュベーション後、粒子の最高濃度で細胞集団の約15%の死を示した。これは、同等の濃度および時間のDIPMAナノ粒子で約40%の細胞生存率低下を示したATP検出と比較して低い。DEAEMAおよびDIPMAの毒性における違いは、エンドソームネットワークを介した粒子移行の運命に影響を与え得るpKaに起因し得る。DEAEMAは、DIPMAよりも高いpKaを有し、報告されているpKaはそれぞれ7.1および6.1である。従って、DEAEMAは、より高いpHでのエンドソーム成熟プロセスにおいてより早く解体しそうであり、一方、DIPMAナノ粒子は、エンドソームネットワークにおいてさらにインタクトなままでありそうである。解離の遅延は、ポリカチオン依存性細胞死のよりゆっくりとした開始をもたらし得、また細胞死のメカニズムを決定し得る。
【0295】
実施例13:細胞内酸化還元電位に対するナノ粒子の効果の評価
膜の完全性およびATP生成アッセイは、DEAEMAおよびDIPMAナノ粒子が、試験された濃度および時間のパラメーターを使用して完全な細胞毒性に至らないことを示
した。従って、粒子の完全な細胞毒性プロファイルを観察するために、細胞内酸化還元電位に対するナノ粒子のより高い濃度(0.4~250μg/mL)および延長した曝露(12~72時間)の効果を、AlamarBlue試薬を使用して調査した。AlamarBlue(レサズリン(resazurin))は、代謝が活発な細胞の細胞質において蛍光生成物であるレゾルフィン(resorufin)に還元される細胞透過性酸化還元指示薬である。測定された蛍光は、集団内の生細胞の数と相関する。膜の完全性およびATP生成アッセイと一致して、DEAEMAナノ粒子は、72時間にわたって50μg/mLで細胞死を誘導した(図15)。250μg/mLのDEAEMAナノ粒子でも、100%の細胞毒性が観察された。50%DEGMAを組み込むと、72時間までそして72時間を含める50μg/mLの細胞生存率が完全に回復し、250μg/mL(12時間)で14.4±5.5%の細胞生存率が回復した。DIPMAナノ粒子は、50μg/mLおよび250μg/mLでの48時間の処置の後並びに10~250μg/mLでの72時間のインキュベーションの後に細胞死を誘発した。50%DEGMAを組み込むと、48時間処置した細胞におけるDIPMA粒子の生体適合性が改善された。しかしながら、50μg/mL(22.5±7.5%)および250μg/mL(19.6±2.0%)の濃度で細胞をインキュベートしたとき、50%DEGMAのシールド効果は、細胞生存率を部分的にしか改善しなかった。72時間時に、10μg/mLのナノ粒子とインキュベートしたとき、5%および10%DEGMAが細胞毒性を防ぎ、20%および50%が細胞生存率を部分的に増加させた。より高濃度のナノ粒子との72時間のインキュベーション後、DEGMAの組み込みは、細胞生存率に対する最小の効果を有した。
【0296】
実施例14:NKR陽性初期エンドソームにおけるナノ粒子のクラスリンおよびダイナミン依存性の細胞取り込みおよびpH依存性解体
シアニン5(DIPMA-Cy5)をロードしたDIPMAナノ粒子の取り込みおよび細胞内輸送を、共焦点顕微鏡で調べた。エンドソームへの輸送を調べるため、DIPMA-Cy5ナノ粒子を、初期エンドソームを同定するRab5-GFP、または後期エンドソームをマークするRab7-GFPを発現するHEK-293細胞とインキュベートした。DIPMA-Cy5ナノ粒子の取り込みは、150秒以内に検出され、300秒までにDIPMA-Cy5ナノ粒子が、Rab5-GFP陽性の初期エンドソームにおいて検出された(図16A)。30分および60分後、DIPMA-Cy5ナノ粒子は、Rab5-GFP初期エンドソームおよびRab7-GFP後期エンドソームに広範囲に局在した(図16B図17A)。ナノ粒子がNKRを含むエンドソームに移動するかどうかを決定するために、DIPMA-Cy5ナノ粒子をrNKR-GFPでトランスフェクトされたHEK-293細胞とインキュベートした。30分後、rNKR-GFPのインターナリゼーションを促進するために、細胞を10nM SPでチャレンジした。SPの30分後および60分後、rNKR-GFPおよびDIPMA-Cy5ナノ粒子は、エンドソームに共局在した(図16C図17B)。すなわち、DIPMA-Cy5ナノ粒子は、インターナライズし、rNKR-GFPを含む初期エンドソームに輸送される。
【0297】
水性環境では発光するが疎水性コアでは発光しないクマリン153をロードしたDIPMAナノ粒子(DIPMA-CO)の取り込みおよび解体を、ハイコンテントイメージング(共焦点顕微鏡)で調べた。DIPMA-COナノ粒子をHEK-293細胞とインキュベートしたとき、5分以内に細胞の蛍光が著しく増加し、30分間継続した(図16D、E)。クラスリン阻害剤PitStop2およびダイナミン阻害剤Dyngo4aは、細胞の蛍光を阻害した。エンドソームを酸性化する液胞HATPaseを阻害するバフィロマイシンA1、およびエンドソームをアルカリ化するNHClも、蛍光を抑制した(図16F)。これらの結果は、ナノ粒子のクラスリンおよびダイナミン依存性エンドサイトーシス、並びに酸性化された初期エンドソームにおけるpH依存性解体と一致する。
【0298】
実施例15:痛覚に対するナノ粒子カプセル化APの効果
APは、急性化学療法誘発性の悪心および嘔吐を抑制するが、NKRアンタゴニストは、うつおよび疼痛を含む慢性障害の回復には効果がなかった。NKRは、SPによる継続的な刺激後にエンドソームに再分布するため、アンタゴニストの失敗は、酸性エンドソームにおいてはNKRに接近および結合できないことに起因し得る。ナノ粒子への組み込みが脊髄ニューロンのNKR陽性エンドソームへの送達に起因するAPの抗痛覚作用を増幅するという仮説を検証するために、遊離AP、またはpH応答性(DIPMA-AP)および非応答性(BMA-AP)ナノ粒子に組み込まれたAPを含むAP製剤を、マウスまたはラットに髄腔内注射によって投与した。(図18A)。空のナノ粒子またはビヒクルを対照として使用した。急性および慢性の炎症性および神経因性痛覚を調べた。
【0299】
カプサイシン誘発性の機械的アロディニア。
AP、ナノ粒子またはビヒクル(5μl)を、TRPV1を活性化して急性アロディニアおよび神経性炎症を引き起こすカプサイシンの後足への足底内注射の30分前に、髄腔内注射によってマウスに投与した。カプサイシンの前後に、較正されたフォンフレイフィラメント(VFF)での、注射された後足の足底表面の刺激に対する引っ込め反応を測定した。ビヒクルまたはDIPMA-空ナノ粒子を受けたマウスにおいては、カプサイシンは、VFF閾値を0.5~4時間から減少させ、これは機械的アロディニアと一致し、24時間後にベースラインに戻った(図18B)。遊離AP(5μl、100nM)および遊離AP(100nM)と混合されたDIPMA-空ナノ粒子は、1時間後に中程度の抗アロディニアを引き起こしたが(それぞれ16±4%および15±3%阻害)、これは1.5時間後には検出されなかった。BMA-APナノ粒子(100nM AP)は0.5~1時間後に同様の効果を有したが、効果は遊離APよりも持続し、2時間延長した。同じ用量のAP(5μl、100nM)を送達したDIPMA-APナノ粒子は、0.5~1時間で顕著な抗アロディニアを引き起こし(1時間、34±3%阻害)、それは4時間(35±2%阻害)持続し、このとき他の処置は有効でなかった。積分応答(0~4時間の曲線下面積、AUC)の分析により、DIPMA-APナノ粒子がカプサイシン誘発性の機械的アロディニアの最も有効な阻害を提供することが確認された(図18C)。
【0300】
完全フロイントアジュバント誘発性の機械的痛覚過敏。
完全フロイントアジュバント(CFA)の足底内注射は、持続的な機械的痛覚過敏を引き起こし、これは、治療的様式で投与されるナノ粒子カプセル化APの、炎症性疼痛を逆転させる能力の検査を可能にした(図18A)。足底内CFAの48時間後までに、機械的痛覚過敏と一致して、VFF閾値の著しい減少があった(図18D)。CFAの48時間後のビヒクルの髄腔内注射は、機械的痛覚過敏に影響を与えず、これは24時間持続した。AP(5μl、100または300nM)は、2~3時間の間、用量依存的に痛覚過敏を逆転させた(1.5時間、%阻害:100nM、30±6;300nM、47±3%)。BMA-APナノ粒子(100nM AP)は、遊離AP(300nM)と同程度に有効であった。DIPMA-APナノ粒子(100nM AP)は、同じ用量の遊離APよりも大きなアロディニアの抑制をもたらし(1.5時間、%抑制:54±4%)、抑制は6時間維持され、このとき他のAP処置は有効でなかった。全身的なモルヒネ(3mg/kg、i.p.)は、0.5時間後に機械的痛覚過敏を完全に逆転させたが、効果は3時間後にベースラインに急速に減衰した。積分応答(0~8時間のAUC、半値幅応答)の分析は、DIPMA-APナノ粒子が痛覚過敏の最も持続的な逆転をもたらすことを示した(図18E、F)。
【0301】
神経損傷誘発性の機械的痛覚過敏。
腓腹神経温存(sural nerve spared)(SNS)モデルは、ラットに50日より長く続き得る安定した強力な機械的痛覚過敏をもたらし、これにより、別の種における慢性神経因性疼痛を緩和するナノ粒子カプセル化APの有効性を調べることが
できた。手術後10日時に、SNSは、偽手術ラットと比較したときに、機械的痛覚過敏を示す後足の引っ込めを誘発する圧力を低下させた(ランダルセリット試験)(図18A、G)。ビヒクルの髄腔内注射を受けたラットにおいては、機械的痛覚過敏は、7時間維持された(図18G)。AP(10μl、100nM)は、引っ込め閾値を変更しなかったが、AP(300nM)は、0.5時間後に、1時間後の最大40±2%の阻害まで引っ込め閾値を阻害し、2.5時間後にベースラインに戻った。AP(1μM)は、1時間後に痛覚過敏をほぼ完全に逆転させた(75±4%阻害)が、痛覚過敏は3時間後にベースラインに戻った(図19)。BMA-AP(10μl、100、300nM AP)は、遊離AP(300nM)と同程度に痛覚過敏を阻害した。DIPMA-AP(100、300nM AP)は、痛覚過敏を強く逆転させ、1.5時間後にほぼ完全に阻害し(300nM、80±4%阻害)、4.5時間維持し、このとき他の治療法のどれもが有効でなかった。DIPMA-AP(500nM)は、4.5時間痛覚過敏からの完全な緩和を提供した(図19)。モルヒネは、2時間痛覚過敏を完全に逆転させたが、その効果はDIPMA-APと比較して短命であり、2.5時間後にはなかった。積分応答(0~7時間のAUC、半値幅応答)の分析は、DIPMA-APナノ粒子が痛覚過敏の最も持続的な逆転をもたらすことを示した(図18H、I)。
【0302】
すなわち、pH応答性DIPMAナノ粒子へのカプセル化は、2つの種における急性(カプサイシン)、炎症性(CFA)および神経因性(SNS)疼痛のモデルにおいて、APの抗痛覚作用を増強し、応答の大きさおよび持続時間を増加させる。非pH応答性ナノ粒子にカプセル化されたAPは、遊離APよりも有効ではなかったため、DIPMA-APの有効性の増強は、pH応答性の送達に依存し、ナノ粒子のカプセル化自体には依存しない。
【0303】
実施例16:一次感覚および脊髄ニューロンの感作および活性化に対するナノ粒子カプセル化APの効果
脊髄後角の一次感覚ニューロン(C線維侵害受容器)の中央突起から放出されるSP、CGRPおよびグルタメートは、二次脊髄ニューロンの受容体を活性化して痛覚伝達を媒介する。一次感覚ニューロンおよび二次脊髄ニューロンの感作は、慢性的疼痛の特徴である。感作を調べるために、本発明者らは、C線維反射を活性化するために必要な閾値電流を測定し、ワインドアップ(C線維の電気刺激によって誘発される脊髄ニューロンの興奮性における周波数依存性の増加)を評価した。同側大腿二頭筋におけるC線維媒介反射応答の活性化に必要な閾値電流は、偽の対照と比較してSNSラットで減少した(SNS、3.2±2.8mA;偽、10.3±1.2mA、P<0.05)。電気刺激(0.1Hz)を適用すると、経時的に一定で安定したC反射活動並びに誘発されたワインドアップ活動が導かれる(図20A-F)。SNSラットへのAP(10μl、1μM髄腔内)の投与は、C反射を減少させたが、30分時のみであり、ワインドアップには影響を与えなかった。DIPMA-APナノ粒子(300nM AP)は、45分以内にC反射を、15分以内にワインドアップ活動を減少させ、観察期間(120分)の間応答を阻害した。
【0304】
痛覚を抑制するためのDIPMA-APの髄腔内注射の有効性は、エンドソームからのNKRシグナル伝達を必要とする脊髄ニューロンの持続的なSP誘発興奮の拮抗作用に起因し得る。この可能性を調べるために、本発明者らは、ラット脊髄のスライスのラミナIおよびIIのニューロンの細胞付着パッチクランプ記録を作製した。ビヒクルで処置したスライスにおいては、SP(1μM、2分)が活動電位発火の迅速な開始を引き起こし、これは、ウォッシュアウト(washout)後16分間持続した(図20G~I)。AP(100nM)またはBMA-AP(100nM AP)とのプレインキュベーションは、SP誘発発火の開始、速度または持続時間に影響を与えなかった。DIPMA-AP(100nM)は、SP誘発発火の最初の開始に影響を与えなかったが、ウォッシュアウト後の放電速度および興奮の持続時間を阻害した。これらの結果は、APが、pH応答性
ナノ粒子中で送達されるとき、酸性化エンドソームにおいてNKRに拮抗し、脊髄ニューロンの持続的な興奮および持続的な汎伝達(pan transmission)を駆動する信号を阻害するという仮説を支持する。
【0305】
実施例17:エンドソームNKRの拮抗作用
遺伝的にコード化されたFRETバイオセンサーの使用は、高い時空間忠実度での生存細胞のシグナル伝達経路の評価を可能にする。区画化されたシグナル伝達を評価するためのFRETバイオセンサー、並びにクラスリンおよびダイナミン媒介NKRエンドサイトーシスを阻害するための遺伝的および薬理学的アプローチを使用することにより、エンドソーム中のNKRが核中の細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)および細胞質ゾル中のプロテインキナーゼCおよびcAMPを活性化することを本発明者らは以前に示している。核ERKは、転写を調節し、脊髄ニューロンのSP誘発興奮を媒介する。従って、本発明者らは、核ERKのSP誘発活性化に拮抗するナノ粒子カプセル化APの能力を調べた。
【0306】
核ERKの活性化を調べるために、核を標的とするERKバイオセンサーであるNucEKARをHEK-hNKR細胞で発現させた。SP(100pM~1μM)は、核ERKの迅速(2分)、持続的(>35分)および濃度依存性の活性化を刺激した(EC50 5.9nM)(図22A、B)。5nM SP(約EC50)に対する核ERK応答に拮抗する遊離APの能力を調べた。APは、核ERKのSP誘発活性化を阻害したが、最高のAP濃度(0.1、1、10μM;IC50 45nM)のみであった(図22C、D)。NKRエンドサイトーシスおよびエンドソームシグナル伝達が核ERKのSP誘発性活性化に必要であるかを決定するために、本発明者らは、HEK-hNKRを野生型(WT)ダイナミンまたはNKRエンドサイトーシスを阻害するドミナントネガティブダイナミンK44Eでトランスフェクトした。WTダイナミンを発現する細胞において、SPは、核ERKの迅速かつ持続的な活性化を刺激した(EC50 11.1nM)(図21A、C)。ダイナミンK44Eは、全ての濃度のSPに対する応答を弱め、全ての時点で10nM SPに対する応答を阻害し、SPの効力を約2倍低下させ(EC50
19.8nM)、有効性を約30%低下させた(図21B、C)。すなわち、NKRエンドサイトーシスは、核ERKの持続的なSP誘発活性化に必要である。
【0307】
ロードなしのナノ粒子が核ERKの活性に影響を与えるかどうかを決定するために、HEK293細胞をDIPMA-空およびBMA-空のナノ粒子(10、20、30μg/mL)とともに30分間インキュベートした。DIPMA-空およびBMA-空ナノ粒子は、研究されたいかなる濃度でも核ERKを活性化しなかった(図21D~E)。細胞の生存率を、活性化合物レザスリンをレソフリンに還元する生細胞の能力を評価するalamar Blueを使用して調べた。HEK293細胞のDIPMA-空およびBMA-空ナノ粒子(1~100μg/mL)への24時間または48時間の曝露は、細胞生存率に影響を及ぼさなかった(図21F)。すなわち、ナノ粒子は、ERKを活性化しないか、またはHEK293細胞において細胞毒性作用を有さない。
【0308】
エンドソームにおいてNKRに拮抗する遊離APおよびナノ粒子カプセル化APの能力を比較するために、本発明者らは、HEK-hNKR細胞における核ERKのSP誘発活性化を測定した。細胞を、ビヒクル、遊離AP(100nM)、BMA-AP(100nM AP)、DIPMA-AP(100nM AP)と30分間プレインキュベートし、次いでSP(5nM)でチャレンジした。ビヒクルで処置した細胞においては、SPは、核ERKを迅速に活性化し、それは約30分間活性なままであった(図21G、I)。遊離APは、部分的に応答を阻害したが、BMA-APおよびDIPMA-APは、応答を消失させた。エンドソームにおいてNKRの持続的な拮抗作用を誘発する遊離APおよびナノ粒子カプセル化APの能力を比較するために、細胞を、ビヒクル、AP、BM
A-APまたはDIPMA-APと30分間インキュベートし、洗浄し、アンタゴニストを含まない培地中で30分間回復させ、次いでSPでチャレンジした。遊離APは、そのとき不活性であったが、BMA-APおよびDIPMA-APは、核ERKのSP誘発活性化を消失させた(図21H、I)。すなわち、ナノ粒子へのカプセル化は、細胞からのウォッシュアウト後でさえも、APの作用の持続時間を著しく増強する。
【0309】
実施例18:DIPMA-(MK-3207)ナノ粒子の髄腔内投与
酸応答性DIPMA-MK-3207ナノ粒子の鎮痛能力を、CFAモデルで評価した。機械的アロディニアは、フォンフレイヘアで評価した。
【0310】
30nM、100nM、300nM、および1μMのMK-3207(濃度あたりn=4)を、髄腔内(マウス)に投与した。足引っ込め閾値(PWT/g)を、経時的に測定した。結果を、図23(A)にグラフで要約した。
【0311】
30nM、50nM、および100nMのMK-3207(DIMPA-(MK-3207)ナノ粒子)を有する酸応答性DIPMAナノ粒子組成物を、髄腔内(マウス)に投与した(100nM MK-3207の投与と比較して)。足引っ込め閾値(PWT/g)を、経時的に測定した。結果を、図23(B)にグラフで要約する。
【0312】
実施例19:二重ロードしたDIMPAナノ粒子-DIPMA-(Ap+MK-3207)ナノ粒子の調製
アプレピタント(Ap)およびMK-3207を二重ロードした酸応答性DIPMAナノ粒子を、P(PEGMA-co-DMAEMA)-b-P(DIPMA-co-DEGMA)ジブロックポリマーを用いて本明細書の他所(例えば、実施例2)で記載されている方法と同様の方法を使用して調製した。1:0.5、1:1、1:2、および1:4の比率のロード比のアプレピタントおよびMK-3207は、以下の表に示される二重ロードナノ粒子組成をもたらした。ナノ粒子組成物中のロードされたアプレピタントおよびMK-3207の濃度を、LC-MSで評価し、以下の表に要約した(2番目と3番目の列を参照)(図24も参照)。
【0313】
【0314】
実施例20:二重ロードDIPMA-(Ap+MK-3207)ナノ粒子の髄腔内投与
アプレピタントおよびMK-3207を二重ロードした酸応答性DIPMAナノ粒子の鎮痛能力を、CFAモデルで評価した。機械的アロディニアを、フォンフレイヘアで評価した。
【0315】
82nMのアプレピタント+12nMのMK-3207、81nMのアプレピタント+25nMのMK-3207、および80nMのアプレピタント+81nMのMK-3207をロードした酸応答性DIPMAナノ粒子組成物を、髄腔内投与した(マウス)。足引っ込め閾値(PWT/g)を、経時的に測定した。これを、120nMのアプレピタント+120nMのMK-3207の髄腔内投与(マウス)と比較した。結果を、図25にグラフで要約する。
【0316】
二重ロードDIPMA-(Ap+MK-3207)ナノ粒子の投与により、遊離ApおよびMK-3207の投与と比較して、有効性および作用の持続時間が増強された。
【0317】
実施例21:DIPMA-(MK-3207)ナノ粒子およびDIPMA-Apナノ粒子の髄腔内同時投与
CGRP8-37(膜非透過性CLRアンタゴニスト)のコレスタノールコンジュゲート(すなわち、CGRP8-37-Chol)の投与は、機械的痛覚過敏を逆転させた(約20%)が、非コンジュゲートCGRP8-37は、そうではなかった。スパンタイド(NK阻害剤)コレスタノールコンジュゲート(すなわち、Span-Chol)およびCGRP8-37-Cholの同時投与は、CFA誘発機械的痛覚過敏の著しい(約75%)逆転を引き起こしたが、非コンジュゲートSpanおよびCGRP8-37の組合せは、効果がなかった(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.114(46):12309-12314。例えば、その中の図7Eおよび7Fを参照)。
【0318】
DIPMA-(MK-3207)ナノ粒子のDIPMA-Apナノ粒子との同時投与の鎮痛能力を、CFAモデルで評価した。機械的アロディニアを、フォンフレイヘアで評価した。
【0319】
DIPMA-Apナノ粒子(Apで30nM)+DIPMA-(MK-3207)ナノ粒子(MK-3207で30nM)、DIPMA-Apナノ粒子(Apで60nM)+DIPMA-(MK-3207)ナノ粒子(MK-3207で60nM)、およびDIPMA-Apナノ粒子(Apで120nM)+DIPMA-(MK-3207)ナノ粒子(MK-3207で120nM)を、髄腔内(マウス)に投与した。足引っ込め閾値(PWT/g)を、経時的に測定した。これを、120nMのアプレピタント+120nMのMK-3207の髄腔内投与(マウス)と比較した。結果を、図26にグラフで要約する。
【0320】
DIPMA-(MK-3207)ナノ粒子およびDIPMA-Apナノ粒子の同時投与は、CFA疼痛モデルにおいて有効であり:ナノ粒子をそれぞれ120nMで同時投与するとき、同じ濃度での遊離APおよびMK-3207の投与と比較して、鎮痛効果および持続効果の改善が観察される。
【0321】
材料および方法
透過型電子顕微鏡(TEM)。ナノ粒子の形態を、TEMイメージングによって決定した。TEMイメージングを、Tecnai F20透過型電子顕微鏡を使用して、周囲温度で200kVの加速電圧で実施した。0.1wt%ラテックス溶液(MiliQ水で希釈)のアリコート(5μL)を、Formvarコーティングされた銅グリッド(GSCu100F-50、Proscitech)に堆積し、空気中および室温で一晩乾燥させた。
【0322】
細胞株。CD8シグナル配列およびN末端FLAGタグを有するヒトNKR(hNKR)ORFを、Gibson Assembly(NEB)を使用して、pcDNA5 FRT/TOにKpnIおよびNotI制限部位の間でクローン化した。hNKRを発現する安定な細胞株(HEK-hNKR)を、ポリエチレンイミン(PEI、Polysciences、米国)を1:6のDNA:PEI比で使用して、0.5μgのhNKRベクターおよび4μgのpOG44でFlpn HEK-293細胞を同時トランスフェクトすることによって生成させた。約0.7x10個の細胞を、ペニシリン(50U/mL)およびストレプトマイシン(50U/mL)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM/pen/strep)中でT-25組織培養フラスコ(Perkin
Elmer、MA、米国)に播種し、24時間インキュベートした(37℃、5%CO)。トランスフェクション前に培地を新鮮なDMEM/pen/strepに交換し、次いでフラスコを24時間インキュベートした(37℃、5%CO)後、培地を10%(v/v)ウシ胎児血清(FBS)およびハイグロマイシンB(200μg/ml、Invitrogen)を補充したDMEM(DMEM/FBS/Hygro)に交換した。
【0323】
細胞培養。HEK-hNKR細胞を、FBSおよびハイグロマイシンB(5%CO、37℃)を補充したDMEMで培養した。細胞を、foster共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイ用のポリ-L-リジンでコーティングされた黒色の96ウェルCulturPlate(Perkin Elmer、MA、米国)、および細胞内カルシウム測定用の96ウェル透明プラスチックプレート(Corning、NY、米国)にプレーティングした。
【0324】
細胞株におけるナノ粒子の輸送。HEK-293細胞を、10%(v/v)FBS(DMEM/FBS)を補充したDMEM中のポリ-D-リジンでコーティングされたibidiチャンバー(ドイツ)にプレーティングした。24時間後、PEIを1:6の比率で使用して、300ngのラット(r)NKR-GFP/チャンバーで細胞をトランスフェクトし、さらに48時間培養した。エンドソーム区画を同定するために、HEK-293細胞を、Rab5a-GFP(初期エンドソームに常在)またはRab7a-GFP(後期エンドソーム)(CellLight、Thermo Fisher Scientific、米国)でイメージングの16時間前に感染させた。ナノ粒子の局在を調べるために、細胞を、DIPMA-Cy5ナノ粒子(20μg/mL、30分、37℃)またはビヒクルを含むLeibovitz L-15培地でインキュベートした後、SP(10nM)を添加した。細胞を、HCX PL APO 40x(NA1.30)およびHCX
PL APO 63x(NA1.40)オイル対物レンズを備えたLeica SP8共焦点顕微鏡を使用して、SP添加後30分および60分時に画像化した。Fijiを使用して画像を分析し、シグナル・ノイズ比10および100反復でCMLEアルゴリズムを使用して、Huygens Professionalバージョン18.04(Scientific Volume Imaging、オランダ)でデコンボリューションを行った。
【0325】
FRETバイオセンサーを使用した区画化されたシグナル伝達の決定。HEK-hNKR細胞(約2x10)をDMEM/FBS/Hygro中で90mmペトリ皿(Corning(商標)、米国)に播種し、24時間インキュベートした(37℃、5%CO)。トランスフェクションの前に、培地を新鮮なDMEM/FBS/Hygroに交換し、PEIを1:6の比率で使用して、核ERK(nucEKAR)センサーをトランスフェクトした(2.5μg nucEKAR DNA/ディッシュ)。24時間後、細胞を、ポリ-L-リジンでコーティングされた黒色の96ウェルCulturPlate(Perkin Elmer、米国)にプレーティングし、さらに24時間インキュベートした(37℃、5%CO)。アッセイ当日、細胞を、6~8時間血清飢餓状態にし、次いで12mMの4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸(HEP
ES)を補充したHBSS中で37℃でCOフリーのインキュベーター中で平衡化した。FRETを、光学モジュールFI 430 530 480を有するPHERAstar FS(BMG LABTECH、ドイツ)を使用して評価し、測定を1分ごとに行った。ベースラインを5分間測定した後、SP、ビヒクル(HBSS)または陽性対照であるホルボール12,13-ジブチレート(1μM、PDBu)で刺激し、さらに30分間測定した。SP濃度応答曲線については、SPの半対数希釈液を添加し(1μMから100pM)、SP添加後の曲線下面積(AUC)を使用して(30分の読み取り)最大半数効果濃度(EC50)を決定した。AP濃度応答曲線については、APの対数希釈液(10μMから1pM)をベースライン測定の30分前に添加した後、5nMのSPを添加した。記載されているように、APについて最大半数阻害濃度(IC50)を決定した。核ERKシグナル伝達に対するナノ粒子の効果を評価するために、DIPMA-空、DIPMA-APまたはBMA-AP(30、20、10μg/mL)を、ベースライン測定の30分前に添加した後、SP 5nMまたはビヒクルを添加した。データを、陽性対照に対する最大応答によって正規化されたビヒクル補正値として表した。
【0326】
細胞内カルシウム(iCa+2)測定。細胞を、Fura2-Amエステル色素1μM(Thermo Fisher Scientific、MA、米国)およびPluronic F-127(0.02%)を補充したHEPES緩衝生理食塩水(HBS;150mM NaCl、2.6mM KCl、1.2mM MgCl2、2.2mM CaCl2、10mM D-グルコース、0.5% BSA、10mM HEPES、4mM プロベネシド;pH7.4)中でCOフリーのインキュベーター中、37℃暗所で45分間インキュベートした。細胞を、HBSで2回洗浄し、37℃で10分間静置した。iCa2+の変化を観察するために、Fura-2蛍光を、FlexStation 3(Molecular Devices、CA、米国)を使用して1分ごとに30分間測定した。ベースラインを5分間測定した後、SP(5nM)、ビヒクル(HBS)、陽性対照のイオノマイシン(1μM)またはナノ粒子(10μg、DIPMA-空、DIPMA-ApおよびBMA-Ap)を添加し、さらに25分間測定した。
【0327】
HEK-293細胞におけるナノ粒子の取り込みおよび解体。クマリン153は、極性溶媒中でのみ蛍光を発するソルバトクロミック色素であり、インタクトな細胞におけるクマリン蛍光の出現として観察される、ナノ粒子のコアにロードされたクマリンの放出の検出を可能にする。ナノ粒子を、DIPMAポリマー1mgあたり0.5mgのクマリン153を使用して自己集合させた(DIPMA-CO)。HEK-293細胞を、ビヒクル(ハンクス平衡塩類溶液、HBSS)、ダイナミン阻害剤(Dyngo4a、Dy4、30μM)、クラスリン阻害剤(Pitstop、PS2、30μM)、液胞HATPase阻害剤(バフィロマイシンA1、BFA、1μM)またはエンドソームをアルカリ化するためのNHCl(20mM)とともに30分間プレインキュベートした。画像を、HCX PL APO 63x(NA2.0)オイル対物レンズを使用して、Leica SP8共焦点顕微鏡で取得した。画像を、10秒ごとに30分間撮影し、最初の5つの読み取りは、DIPMA-COナノ粒子(20μg/mL)を添加する前のベースライン画像に対応した。全ての画像を、Fijiを使用して分析した。
【0328】
動物。成体雄性C57BL/6マウス(6~10週)を、Monash Animal Research Platformから購入し、雄性Sprague-Dawleyラット(225~250g)を、チリ大学医学部の施設から入手した。全ての動物を、4匹の群で収容し、12時間の明暗サイクルで温度(22±4℃)および湿度が制御された環境で維持した。餌および水は、自由利用可能であった。動物に対するす全ての行動試験を、処置群に対して目隠しされた実験者によって盲検法で実施した。実験を、光サイクル中に実施し、各ケージの動物を、異なる処置群にランダムに割り当てた。動物を、麻酔薬の過剰摂取および開胸術によって安楽死させた。研究を、国立衛生研究所(NIH)の実験
動物のケアと使用に関するガイドに従って行い、IASPの倫理ガイドラインを遵守した。収容条件および実験手順は、Monash Institute of Pharmaceutical Sciencesの動物倫理委員会、Monash University、およびthe University of Santiago of Chileの生命倫理委員会によって承認された。
【0329】
薬物投与。マウス。以下の薬物を、意識のあるマウスの椎間腔(L4、L5)に髄腔内(i.t.)注射(5μL)によって投与した:AP(100、300nM)、APの等用量を送達するナノ粒子(DIPMA-AP、BMA-AP、10μg/mL-100nM、30μg/mL-300nM)、対照(10μg/mLのDIPMA-空並びに10μg/mLのDIPMA-空およびAP 100nMの混合物)またはビヒクル(人工脳脊髄液、aCSF)。処置を、ロータロッド実験および急性疼痛の誘発の30分前または炎症性疼痛の確立の48時間後に行った。生体内分布の研究については、DIPMA-Cy5ナノ粒子(10μg/mL)を、対照画像を取得した直後にi.t投与した。ラット。薬物を、意識のあるラットの椎間腔(L4、L5)にi.t.注射(10μL)によって投与した:AP(100、300nM、1μM)、APをロードしたナノ粒子(DIPMA-AP、BMA-AP、10μg/mL-100nM、30μg/mL-300nM、50μg/mL-500nM)、DIPMA-空ナノ粒子(10、30、50μg/mL)、またはビヒクル(aCSF)。処置を、腓腹神経切断の10日後に行った。電気生理学的研究については、薬物を、麻酔下(イソフルラン1.2~1.5%)でのi.t.注射によって投与した:AP(1μM)またはナノ粒子(DIPMA-AP、BMA-AP、30μg/mL-300nM)。
【0330】
ロータロッド試験。実験の前に、マウスを気候順応させ、2日間連続で3回連続実行するロータロッド装置でトレーニングして、運動能力を評価した。実験当日、3つのベースライン読み取り値を記録し、120秒のカットオフ閾値を事前設定した。DIPMA-Ap、BMA-Ap、DIPMA-空またはビヒクル(aCSF)を、髄腔内に注射した(5μL)。引き続いて、マウスの落下までの潜時(秒)を、注射後30分、60分、90分、120分、180分および240分時に記録した。
【0331】
NPの生体内分布。マウスを、鎮静させ(2%イソフルラン)、in vivoイメージングシステム(IVIS spectrum、Perkin Elmer、米国)に配置した。画像を、DIPMA-Cy5 NP(10μg/mL)のi.t投与前に取得した。後の画像を、マウスの2つの群から収集し、第1の群をDIPMA-Cy5投与後2および6時間時に、第2の群を4および8時間時に画像化した。
【0332】
マウスにおける急性および炎症性疼痛の誘導および評価
急性疼痛。カプサイシン(CAP、5μg)またはビヒクル(0.9%NaCl)を、薬物のi.t.注射30分後に鎮静させたマウス(2%イソフルラン)の左後足に皮下足底内(i.pl.)注射(10μL)によって投与した。
炎症性疼痛。完全フロイントアジュバント(CFA、0.5mg/mL)またはビヒクル(0.9%NaCl)を、鎮静させたマウス(2%イソフルラン)の左後足にi.pl.注射(10μL)によって投与した。薬物を、CFAの48時間後にi.t.注射によって投与した。
【0333】
機械的アロディニアおよび痛覚過敏。機械的痛覚を、較正されたフォンフレイフィラメント(VFF)での同側および対側の後足の足底表面の刺激に対する引っ込め閾値を測定することによって評価した。実験の前に、マウスを、実験装置および環境に2日間連続して2時間気候順応させた。VFF引っ込め閾値を3連で測定して、各マウスのベースラインを確立した。CAPモデルについては、VFF引っ込め閾値を、i.t.薬物投与後の最
初の2時間は30分間隔で、次いで次の2時間は60分間隔で、および最後に24時間後に測定した。CFAモデルについては、VFF引っ込め閾値を、i.t.薬物投与後の最初の3時間は30分ごとに、次いで次の5時間は60分間隔で、および最後に24時間後に測定した。結果を、各マウスのベースラインの引っ込め閾値に対して正規化した。結果を、ベースラインのパーセンテージとして、曲線下面積(AUC)として、および半値幅応答(最大鎮痛応答の50%を達成する時間として計算された各処置の効果の持続時間)として表す。
【0334】
ラットにおける神経因性疼痛の誘導および評価
神経因性疼痛。神経因性疼痛を、迅速な発症並びに持続的な機械的および温度痛覚過敏を誘発する、ラットの腓腹神経温存(SNS)損傷モデルの変形を使用してラットにおいて誘発した。麻酔下(2%イソフルラン)で、坐骨神経(脛骨、総腓骨、腓腹神経)の3つの末端遠位枝を同定し、腓腹神経を切断した。対照(偽)については、ラットに同様の手術を行ったが、腓腹神経の切断は行わなかった。手術後、ケトプロフェン(3mg/kg)およびエンロフロキサシン(5mg/kg)を2日間皮下(s.c.)投与した。
機械的痛覚過敏。機械的痛覚過敏を、損傷を防ぐための570gのカットオフ値で痛覚計(Ugo Basile、イタリア)を使用して後足引っ込め圧力閾値を測定することによってラットで評価した。機械的痛覚過敏を、手術の前(基底)並びに5、9および10日後に評価した。10日目の評価の後、薬物をi.t.注射によって投与し、引っ込め閾値を、30分ごとに7時間記録した。結果を、足引っ込め圧力閾値(g.cm)、AUCおよび半値幅応答として表す。
【0335】
ラットにおけるC線維誘発性痛覚反射およびワインドアップ活動の電気生理学的評価。
痛覚シナプス伝達を、腓腹神経のC線維の電気的活性化によって誘発される後肢屈曲痛覚反射(C反射)に関連する筋電(EMG)活動の測定によって評価した。ラットを、麻酔下で維持し(隔膜げっ歯類フェイスマスクを使用した酸素中の1.2-1.5%イソフルラン)、調節された熱パッド(37±0.5℃)上に置いた。EMG活動を、第3および第4趾の外側部分に皮下挿入された一対の白金刺激電極、および同側の大腿二頭筋に皮膚を通して挿入された記録電極を使用して測定した。C反射は、刺激後150~450msの時間枠への反射応答の積分に対応する。ワインドアップは、刺激周波数が1Hzに増加したときのC反射応答の増強である。ワインドアップは、1Hzの刺激で記録された最初の7つの連続するウィンドウの積分応答に適合させた回帰直線の傾きに対応する。安定したC反射応答(約30分)を取得するために記録した後、C反射の閾値を見積もり、実験期間中、ラットを閾値強度の2倍で刺激したままにした。C反射を、0.1Hzでの15回の連続刺激の平均値によって評価し、1Hzでの次の7回の刺激は、ワインドアップを評価するために使用した。記録を、手術10日後、i.t.薬物投与の前(基底)並びに30、60、90および120分後に行った。積分されたC反射応答を、基底応答のパーセンテージとして表した。
【0336】
ラット脊髄ニューロンの細胞付着パッチクランプ記録。傍矢状のスライス(300~400μm)を、記載されているようにラットの腰髄から調製した。スライスを記録チャンバーに移し、aCSF(2ml.min-1、36℃)を用いて表面灌流した。Dodtコントラスト光学を使用して、位置、サイズおよびラミナIに限定された樹状突起を有する紡錘状の形状に基づいて、ラミナIの大きな(静電容量≧20pF)推定のNKR陽性ニューロンを同定した。パッチ電極を使用して、細胞付着配置のNKR陽性のラミナIニューロンから、自発電流を記録した。スライスを、DIPMA-AP(10μg/ml-100nM AP)、BMA-AP(10μg/ml-100nM AP)またはAP(100nM)中で120分間プレインキュベートし、洗浄し、記録する前にアンタゴニストを含まないaCSF中でさらに30~60分インキュベートした。スライスを、SPでチャレンジし(1μM、2分)、各細胞についての発火率を2~4分の時点間の応答に
対して正規化し、これは群間で有意差はなかった。発火時間を、最後の活動電位に対する応答の持続時間として決定した。
【0337】
細胞生存率アッセイ。HEK-h NKR細胞を、DIPMA-空およびBMA-空ナノ粒子と1から100μg/mLの範囲の濃度で24時間および48時間インキュベートした。培地をフェノールレッドを含まないDMEMに置き換えた後、10%(v/v)alamarBlue試薬(Thermofisher Scientific、米国)を添加した。細胞をalamarBlueと2時間インキュベートし(37℃、5%CO)、還元された活性化合物であるレソフリンの蛍光を、ClarioStar(BMG LABTECH)を使用して測定した(510/610nm exc/em)。
【0338】
CellTiter Glo試薬を、Promegaによって供給された説明書に従って調製した。処置後、プレートを室温で30分間インキュベートした。最初に50μLの細胞培地を各ウェルから取り除き、廃棄した。各ウェルの残りの内容物を、50μLのCellTiter Glo試薬で処置した。細胞を、室温で最低10分間インキュベートし、生物発光をCLARIOstar(BMG labtech)を使用して、λ=555±40nmで測定した。次いで、TritonX-100対照を差し引いて、ビヒクル対照のパーセンテージとして値を表すことにより、細胞生存率を計算した。データを、5つの個別の実験の平均値±S.E.Mとして示す。
【0339】
ヨウ化プロピジウム細胞毒性アッセイを、500nMの最終ウェル濃度を使用して実施した。細胞を、色素と室温で30分間インキュベートした。CLARIOstarを使用して蛍光を検出した(ex:λ=535±10nmおよびem:λ=617±10nm)。細胞毒性値を、ビヒクルベースライン減算によって計算し、細胞死についてのTritonX-100対照のパーセンテージとして表した。データを、5つの個別の実験の平均値±S.E.Mとして示す。
【0340】
AlamarBlue細胞生存率アッセイにおいて、細胞培地を除去し、100μLの新鮮な培地で置き換えた。細胞を、ある範囲の粒子濃度(0.4~250μg/mL)で12、24、48および72時間、37℃、5%COで処置した。細胞を冷却したHEPES緩衝生理食塩水(HBSS)(Sigma Aldrich)で2回洗浄し、次いで培地中の10%(v/v)AlamarBlue試薬(Life Technologies)を添加した。細胞をさらに4時間インキュベートし、CLARIOstarを使用して蛍光を測定した(ex:λ=570±10nm、em:λ=605±15nm)。次いで、細胞生存率を、Triton X-100対照を差し引いて、ビヒクル対照のパーセンテージとして値を表すことによって計算した。データを、3つの個別の実験の平均値±S.E.Mとして示す。
【0341】
統計分析。特に断らない限り、データを、平均値±SEMとして示す。2つの比較について、スチューデントのt検定を使用して差異を評価した。複数の比較については、1または2元配置分散分析の後、ダネットの多重比較検定(機械的痛覚過敏および浮腫)およびテューキーの多重比較検定(FRETおよびiCa2+)を使用して差異を評価した。P<0.05を、有意であるとみなした。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図9
図10-1】
図10-2】
図11
図12-1】
図12-2】
図13-1】
図13-2】
図14-1】
図14-2】
図15-1】
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図16-1】
図16-2】
図17
図18-1】
図18-2】
図18-3】
図18-4】
図18-5】
図19
図20-1】
図20-2】
図20-3】
図20-4】
図20-5】
図21-1】
図21-2】
図21-3】
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図22-1】
図22-2】
図23
図24
図25
図26
【手続補正書】
【提出日】2024-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書及び/又は図面に記載された発明。
【外国語明細書】